(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ウェハ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231227BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01L21/304 648A
H01L21/68 N
H01L21/304 651Z
(21)【出願番号】P 2019221231
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390000594
【氏名又は名称】株式会社レクザム
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】一二三 正晃
(72)【発明者】
【氏名】国重 秀則
(72)【発明者】
【氏名】関口 博文
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-033962(JP,A)
【文献】特開2017-183579(JP,A)
【文献】特開2011-009299(JP,A)
【文献】特開2013-030502(JP,A)
【文献】特開2013-131729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に搬入されるウェハを支持する支持手段が下面側に設けられた上部ユニット、及び前記上部ユニットと相対向してウェハを収容する空間を構成する下部ユニットを有し、前記ウェハに所定の処理を行うためのチャンバと、
前記上部及び下部ユニットの少なくとも一方を上下方向に移動させることによって前記チャンバを開閉する開閉手段と、
前記上部及び下部ユニットが離間した状態において、前記上部ユニットを垂直方向の軸周りに回転させる回転手段と、を備え、
前記回転手段は、前記上部ユニットへのウェハの搬入方向と、前記上部ユニットからの当該ウェハの搬出方向とが所定の角度となるように前記上部ユニットを回転させる、ウェハ処理装置。
【請求項2】
前記チャンバは、前記チャンバが閉じられた際に前記上部及び下部ユニットの間をシールするためのシール部をさらに有しており、
前記上部及び下部ユニットが離間した状態は、前記上部及び下部ユニットの一方に設けられた前記シール部が、前記上部及び下部ユニットの他方側から離れた状態である、請求項1記載のウェハ処理装置。
【請求項3】
前記所定の処理は、超臨界流体を用いたウェハの乾燥処理である、請求項1または請求項2記載のウェハ処理装置。
【請求項4】
前記所定の処理は、超臨界流体を用いたウェハの洗浄乾燥処理である、請求項1または請求項2記載のウェハ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハに所定の処理を行うウェハ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェハの表面に形成されるパターンの微細化が進んでおり、アスペクト比が高くなってきている。そのため、パターンの洗浄等に用いる有機溶剤などの処理液が表面に残ったまま乾燥させると、処理液の表面張力によってパターンが倒壊するという問題が生じる。その問題を解決するため、基板の表面から処理液を除去する乾燥処理に超臨界流体が用いられることがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-254904号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0114707号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乾燥処理等を行う従来のウェハ処理装置においては、チャンバへのウェハの出し入れが一方向から行われていた。そのため、チャンバへのウェハの搬入を行っている場合には、ウェハの搬出に関する準備等の作業を行うことができず、また、ウェハの搬出を行っている場合には、ウェハの搬入に関する準備等の作業を行うことができず、ウェハに所定の処理を行うためのタクトタイムが長くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ウェハに所定の処理を行う際のタクトタイムをより短くすることができるウェハ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によるウェハ処理装置は、水平方向に搬入されるウェハを支持する支持手段が下面側に設けられた上部ユニット、及び上部ユニットと相対向してウェハを収容する空間を構成する下部ユニットを有し、ウェハに所定の処理を行うためのチャンバと、上部及び下部ユニットの少なくとも一方を上下方向に移動させることによってチャンバを開閉する開閉手段と、上部及び下部ユニットが離間した状態において、上部ユニットを垂直方向の軸周りに回転させる回転手段と、を備え、回転手段は、上部ユニットへのウェハの搬入方向と、上部ユニットからのウェハの搬出方向とが所定の角度となるように上部ユニットを回転させる、ものである。
【0007】
このような構成により、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とを異なる方向にすることができる。したがって、例えば、搬入用の搬送ロボットによってウェハを搬入すると共に、搬出用の別の搬送ロボットによってウェハを搬出するようにすることができる。その場合には、ウェハの搬入を行っている際にウェハの搬出の準備を行ったり、ウェハの搬出を行っている際にウェハの搬入の準備を行ったりすることができる。その結果、ウェハの搬入方向と搬出方向とが同じ場合と比較して、ウェハの搬入、搬出に関するタクトタイムをより短くすることができる。
【0008】
また、本発明によるウェハ処理装置では、チャンバは、チャンバが閉じられた際に上部及び下部ユニットの間をシールするためのシール部をさらに有しており、上部及び下部ユニットが離間した状態は、上部及び下部ユニットの一方に設けられたシール部が、上部及び下部ユニットの他方側から離れた状態であってもよい。
【0009】
このような構成により、上部ユニットを回転させる際に、上部及び下部ユニットの一方に設けられたシール部が、上部及び下部ユニットの他方側に接触することを防止することができ、その接触によるパーティクルの発生を回避することができる。
【0010】
また、本発明によるウェハ処理装置では、所定の処理は、超臨界流体を用いたウェハの乾燥処理であってもよい。また、本発明によるウェハ処理装置では、所定の処理は、超臨界流体を用いたウェハの洗浄処理や洗浄・乾燥処理であってもよい。
【0011】
このような構成により、例えば、ウェハの洗浄に用いた残留する有機溶剤などを、超臨界流体を用いて除去でき、ウェハを乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるウェハ処理装置によれば、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とを異なる方向にすることができ、ウェハの搬入及び搬出に関するタクトタイムをより短くすることができる。例えば、チャンバに対するウェハの搬入方向と搬出方向を異なる方向にすることにより、ウェハの挿脱を行う搬送ロボットを搬入用と搬出用に分離し、挿脱に係る時間を短縮できる。さらにまた、例えば、前工程である洗浄工程後のウェハと、乾燥工程後のウェハを異なるロボットで搬送することにより、乾燥後のウェハに洗浄剤等の再付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態によるウェハ処理装置の構成を示す一部切り欠き斜視図
【
図2】同実施の形態によるウェハ処理装置のチャンバの縦断面を示す断面図
【
図3】同実施の形態によるウェハ処理装置のチャンバの縦断面を示す断面図
【
図6】同実施の形態における上部ユニットを回転させる回転手段を示す上面図
【
図7】同実施の形態における上部ユニットの回転とウェハの搬入搬出とを示す図
【
図8】同実施の形態におけるウェハの搬入搬出について説明するための上面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるウェハ処理装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるウェハ処理装置は、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とが異なるようにするため、チャンバの上部ユニット及び下部ユニットが離間している状態で上部ユニットを所定の角度だけ回転させるものである。
【0015】
図1は、本実施の形態によるウェハ処理装置1の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
図2,
図3は、ウェハ処理装置1のチャンバ11の縦断面を示す断面図である。
図2は、チャンバ11が開いた状態を示しており、
図3は、チャンバ11が閉じた状態を示している。
図4は、
図3の一点鎖線の円領域の拡大図である。
図5は、上部ユニット21を下面側から見た斜視図である。
図6は、上部ユニット21を回転させる回転手段13を示す図である。
図7は、ウェハ2の搬入、搬出と上部ユニット21の回転とについて説明するための図である。
図8は、ウェハ処理装置1を内部に含む処理室3と、ウェハ2を処理室3に搬入、搬出する搬送ロボットのハンド4,5とを示す図である。
【0016】
本実施の形態によるウェハ処理装置1は、上部ユニット21及び下部ユニット22を有するチャンバ11と、チャンバ11の上部ユニット21及び下部ユニット22を開閉するための開閉手段12と、上部ユニット21を回転させる回転手段13とを備える。チャンバ11では、ウェハ2に所定の処理が行われる。本実施の形態では、その所定の処理が、超臨界流体を用いたウェハ2の乾燥処理である場合について主に説明するが、その他の処理がウェハ2に行われてもよい。ウェハ2の乾燥処理は、例えば、ウェハ2の表面に残留した有機溶剤などの処理液を、超臨界流体に置換することによって除去し、その超臨界流体を乾燥させることによって行われる。本実施の形態では、二酸化炭素の超臨界流体が用いられる場合について主に説明するが、他の超臨界流体が用いられてもよい。
【0017】
上部ユニット21の下面側には、水平方向に搬入されるウェハ2を支持する支持手段21aが設けられている。したがって、ウェハ2が搬入されると、
図2で示されるように、上部ユニット21の下方側にウェハ2が位置することになる。支持手段21aは、例えば、
図2,
図3,
図5で示されるように、断面が略L字形状であり、水平方向に延びる先端部分において、搬入されたウェハ2の周縁部を支持するものであってもよい。本実施の形態では、
図5,
図7で示されるように、上部ユニット21に3個の支持手段21aが設けられている場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。支持手段21aの個数は、例えば、1個や2個であってもよく、4個以上であってもよい。また、ウェハ2を適切に支持できるのであれば、支持手段21aの形状も問わない。
【0018】
上部ユニット21は、回転軸受21bを有しており、その回転軸受21bによって、上面板16に対して回転自在となるように設けられている。通常、上部ユニット21は重いため、回転させることは容易ではないが、このように回転軸受21bによって回転自在とされていることによって、回転手段13によって簡単に回転させることができるようになる。
【0019】
下部ユニット22は、上部ユニット21と相対向するものであり、ウェハ2を収容する空間22cが構成されている。また、下部ユニット22には、
図2,
図3で示されるように、二酸化炭素の注入路22aと排出路22bとが設けられている。なお、本実施の形態では、注入路22aが、上面視が円形状の空間22cにおける中心付近に設けられており、排出路22bが、空間22cにおける周縁付近に設けられている場合について示しているが、そうでなくてもよい。空間22cの中心付近に注入路22a及び排出路22bが設けられ、空間22cの周縁付近にも注入路22a及び排出路22bが設けられていてもよい。また、注入路22aは、ウェハ2の上面側から二酸化炭素を注入するように設けられていてもよい。また、クランプ41に影響しない範囲で、空間22cの横側(側面)に注入路22aや排出路22bが設けられてもよい。
【0020】
上部ユニット21及び下部ユニット22は、耐圧性のある材料によって構成されていることが好適である。その材料は、例えば、ステンレス鋼等であってもよい。また、パーティクルの発生を防止するため、その表面には所定のコーティング(例えば、DLC(Diamond‐Like Carbon)などの硬質膜のコーティング等)がなされてもよい。
【0021】
チャンバ11は、チャンバ11が閉じられた際に上部ユニット21及び下部ユニット22の間をシールするためのシール部23をさらに有していてもよい。シール部23は、円環状の部材であり、下部ユニット22における空間22cの開口の環状の縁部分、または、その縁部分に対向する上部ユニット21の部分に配置されてもよい。シール部23は、例えば、
図2~
図4で示されるように、上部ユニット21の下端側に装着されてもよい。シール部23は、
図4で示されるように、断面が略U字形状のものであってもよい。その場合には、チャンバ11が閉じている状態において、空間22cの流体がシール部23を介して外部に流出しようとする際に、略U字形状の内側部分の圧力が高まってシール性がより向上し、空間22cの流体の流出を効果的に防止することができる。なお、シール部23は、下部ユニット22側に設けられてもよい。シール部23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂によって構成されてもよく、シリコンなどの他の材料によって構成されてもよい。
【0022】
開閉手段12は、上部ユニット21及び下部ユニット22の少なくとも一方を上下方向に移動させることによってチャンバ11を開閉する。上部ユニット21及び下部ユニット22が開閉手段12によって閉じられ、両者が嵌め合わされて一体化されることによって、ウェハ2に対して処理を行うための空間22cが形成される。また、シール部23が存在することによって、空間22cの気密性が高められる。本実施の形態では、開閉手段12が、ベース15に固定されたエアシリンダであり、ベース15に対して、矩形状の上面板16の四隅をそれぞれ同じタイミングで上下方向に移動させることによって、上部ユニット21を上下方向に移動させる場合について主に説明する。なお、
図1では、一部の開閉手段12を省略している。開閉手段12は、エアシリンダ以外のソレノイドや、ラックアンドピニオンとピニオンを駆動させる回転駆動手段、ボールねじとねじ軸を回転させる回転駆動手段等によって構成されてもよい。また、上面板16の四隅のうち、1個から3個の隅に開閉手段12が設けられており、それ以外の箇所には上面板16の頂点部分を上下方向にガイドするためのガイド部材が設けられていてもよい。なお、本実施の形態では、開閉手段12が、上部ユニット21を上下方向に移動させる場合について説明するが、そうでなくてもよい。開閉手段12は、下部ユニット22を上下方向に移動させてもよく、上部ユニット21及び下部ユニット22の両方をそれぞれ上下方向の逆向きに移動させてもよい。
【0023】
回転手段13は、上部ユニット21及び下部ユニット22が離間した状態において、上部ユニット21を垂直方向の軸周りに回転させるものであり、エアシリンダ31と、クランク32とを備えている。エアシリンダ31の基端側は、回転軸31bによって、上面板16に対して水平方向に回転自在に設けられている。また、エアシリンダ31のピストンロッド31aの先端は、クランク32に接続されている。そして、
図6で示されるように、ピストンロッド31aの長手方向の移動に応じて、クランク32、及びクランク32が固定されている上部ユニット21が、垂直方向の回転軸21cを中心として回転することになる。そのクランク32の回転に応じて、ピストンロッド31aの先端部分の位置が変化するが、その位置の変化に応じて、エアシリンダ31の基端側が回転軸31bを中心に回転する。なお、エアシリンダ31に代えて、ソレノイドなどを用いてもよい。また、回転手段13は、例えば、モータ等の回転駆動手段によって上部ユニット21を垂直方向の軸周りに回転させるものであってもよい。
【0024】
上部ユニット21及び下部ユニット22が離間した状態とは、上部ユニット21を回転させたとしても、上部ユニット21が下部ユニット22と摺れることのない状態であることが好適である。パーティクルの発生に起因するウェハ2の欠陥を防止するためである。したがって、上部ユニット21及び下部ユニット22が離間した状態は、上部ユニット21及び下部ユニット22の一方に設けられたシール部23が、上部ユニット21及び下部ユニット22の他方側から離れた状態であってもよい。例えば、
図2で示されるように、シール部23が上部ユニット21に設けられている場合には、シール部23が、下部ユニット22から離れた状態が、上部ユニット21及び下部ユニット22が離間した状態であってもよい。なお、シール部23が対向するユニットから離れた状態となることによって、空間22cは常圧となる。したがって、上部ユニット21及び下部ユニット22が離間した状態を、空間22cの圧力が常圧となったことによって検知してもよい。
【0025】
クランプ41は、チャンバ11が閉じた状態、すなわち上部ユニット21及び下部ユニット22が上下方向に嵌め合わされて、内部の空間22cが気密に保たれている状態において、チャンバ11の周縁部を締め付けるものである。クランプ41は、ステージ42の上面に固定されている。ベース15には、スライドレール43が固定されており、そのスライドレール43にはスライドガイド44が摺動可能に設けられている。そして、ステージ42にスライドガイド44が固定されていることによって、スライドレール43の長手方向にクランプ41が移動可能となっている。クランプ41の移動、すなわちステージ42の移動は、図示しない駆動手段を用いて実現されてもよい。その駆動手段は、例えば、エアシリンダやソレノイド、ラックアンドピニオンとピニオンを駆動させる回転駆動手段、ボールねじとねじ軸を回転させる回転駆動手段等であってもよい。クランプ41は、駆動手段によって、チャンバ11のロック位置と、リリース位置との間を移動することになる。本実施の形態では、
図1で示されるように、3個のクランプ41によってチャンバ11の上部ユニット21と下部ユニット22とがロックされる場合について主に説明するが、クランプ41の個数は、例えば、2個であってもよく、4個以上であってもよい。複数のクランプ41のロック位置とリリース位置との間の移動は、独立して行われてもよく、連動して行われてもよい。
【0026】
次に、
図7を参照して、回転手段13によって上部ユニット21を回転させ、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とが所定の角度となるようにする処理について説明する。
【0027】
図7は、上部ユニット21を下方側から見た底面図である。
図7(a)で示されるように、ウェハ2は矢印の方向に搬入される。その後、チャンバ11が閉じられ、ウェハ2に対して所定の処理が行われることになる。所定の処理が終了すると、チャンバ11が開けられ、
図7(b)で示されるように、上部ユニット21は、ウェハ2を支持手段21aによって支持している状態で、回転手段13によって矢印の向きに90度だけ回転され、
図7(c)で示されるようになる。次に、
図7(d)で示されるように、矢印の方向にウェハ2が搬出されることになる。なお、その搬出後に、上部ユニット21は、再度、
図7(a)の状態になるように90度だけ回転手段13によって回転される。
図7では、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とのなす角度が90度となっている。なお、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とのなす角度は、後述するウェハ2の搬入口3aに設けられた扉と搬出口3bに設けられた扉が干渉しない範囲であればよく、好ましくは90度から180度の範囲であればよい。また、上部ユニット21が回転されるタイミングは問わない。例えば、チャンバ11が閉じられる前に上部ユニット21が回転され、その回転後にチャンバ11が閉じられてウェハ2に所定の処理が行われてもよい。
【0028】
次に、本実施の形態によるウェハ処理装置1の動作について具体的に説明する。ここでは、
図8で示されるように、処理室3内にウェハ処理装置1が設置されており、処理室3には、ウェハ2の搬入口3aと搬出口3bが設けられ、それぞれ搬入や搬出時以外は扉によって閉鎖されている。次に搬入口3aを介してウェハ2がウェハ処理装置1に挿入され、搬出口3bを介してウェハ2がウェハ処理装置1から取り出される場合について説明する。
【0029】
まず、ウェハ処理装置1の上部ユニット21及び下部ユニット22が上下方向に離間した状態において、処理室3の搬入口3aの扉が開けられる。そして、前工程の洗浄装置において、例えばIPA(イソプロピルアルコール)等の洗浄剤によって洗浄されたウェハ2が、搬送ロボットのハンド4によって搬送され、搬入口3aから、上部ユニット21の下面側に搬入される。その搬入されたウェハ2は、支持手段21aによって支持される(
図2)。
【0030】
次に、ハンド4が搬入口3aの外に出たタイミングで扉が閉じられる。そして、開閉手段12によって上面板16が下降されることによってチャンバ11が閉じられる。また、ステージ42がチャンバ11の軸心に向かって移動されることによって、クランプ41によって上部ユニット21及び下部ユニット22がロックされる(
図3)。
【0031】
次に、二酸化炭素の注入路22aに接続された注入バルブが開けられ、チャンバ11の空間22cに二酸化炭素が注入される。例えば、加圧ポンプなどの昇圧機構を用いて昇圧された二酸化炭素を空間22cに注入供給する。注入された二酸化炭素は、空間22c内の臨界圧力が7.38MPa、臨界温度が31.1℃以上になると、超臨界状態となり、ウェハ上のIPA等は、超臨界状態の二酸化炭素に溶解される。なお、空間22cは、少なくともIPA等が溶解されるまで二酸化炭素が超臨界状態となる圧力及び温度に保たれることが好適であり、圧力は7.4~15MPaに、また、温度は電気ヒータなどによって31~50℃に加温されることが好ましい。
【0032】
ウェハ2上のIPA等が超臨界流体によって溶解されると、排出路22bに接続された排出バルブ(圧力調整バルブ)によって、空間22c内の圧力を保ちながらIPA等が溶解している超臨界二酸化炭素流体を徐々に排出する。この間、空間22cには二酸化炭素の注入が継続されている。IPA等が溶解している超臨界二酸化炭素流体の排出が終了すると、注入バルブが閉じられ、空間22c内を排出バルブ(圧力調整バルブ)によって降圧し、超臨界二酸化炭素流体を気体に相転換させてから排出する。その後、排出バルブが閉じられる。空間22cは、加温が停止されてもよく、31~50℃に維持されていてもよい。なお、超臨界流体によるIPA等の排出が終了したかどうかは、例えば、IPA等を検知するセンサによって空間22c内においてIPA等を検知することによって確認されてもよい。IPA等を検知するセンサは、例えば、アルコール検知センサ等であってもよい。
【0033】
その後、各クランプ41は、リリース位置に移動される。また、開閉手段12によって上面板16が上昇されることによってチャンバ11が開けられ、上部ユニット21と下部ユニット22とが離間する。また、シール部23が下部ユニット22から離れたタイミングで、回転手段13によって、上部ユニット21が90度だけ回転される。また、処理室3の搬出口3bの扉が開けられる。そして、超臨界流体を用いて乾燥されたウェハ2が、搬送ロボットのハンド5によって搬出口3bの扉を介して搬出され、搬出口3bの扉が閉じられる。その後、回転手段13によって上部ユニット21を逆方向に90度だけ回転させることによって、上部ユニット21は、ウェハ2の搬入を行うことができる角度となる。その後、上記の処理が繰り返さてもよい。なお、通常、ハンド4,5はそれぞれ異なる搬送ロボットによって操作されるものである。また、上記した一連の処理に関するタイミング等の制御は、図示しない制御手段によって行われてもよい。
【0034】
以上のように、本実施の形態によるウェハ処理装置1によれば、チャンバ11へのウェハ2の搬入方向と搬出方向とを異なるようにすることができる。例えば、両方向が同じであり、また、1つの搬送ロボットによって搬入と搬出とを行った場合には、ウェハの搬出後にすぐにウェハの搬入を行うことができず、タクトタイムが長くなる。また、例えば、ウェハの搬入方向と搬出方向とが同じであり、また、処理前のウェハを搬送する搬送ロボットと、処理後のウェハを搬送する搬送ロボットとをそれぞれ備えた場合(例えば、上記特許文献1参照)には、両ロボットの操作だけでウェハの搬入及び搬出を行うことができず、ウェハの受け渡しに時間がかかることになると共に、装置の設置面積が大きくなるというデメリットがある。一方、本実施の形態によるウェハ処理装置1のように、ウェハ2の搬入方向と搬出方向とが異なるようにすることによって、設置面積を増やすことなく、ウェハ2の搬入と搬出とをそれぞれ別の搬送ロボットによって行うことができる。その結果、ウェハ2を搬出した直後に、別のウェハ2を搬入することによってタクトタイムを短くすることができ、効率的な処理を実現することができるようになる。
【0035】
また、チャンバ11での処理前のウェハ2を搬送する搬送ロボットと、チャンバ11での処理後のウェハ2を搬送する搬送ロボットとを異なるものにすることができるため、例えば、搬入用ロボットのハンド4に付着しているIPA等が、処理後のウェハ2に付着することを防止することができる。また、処理前のウェハ2が取り扱われる領域と、処理後のウェハ2が取り扱われる領域とを分けることもでき、処理前のウェハ2から、処理後のウェハ2にIPA等が飛散して付着することを防止することもできる。
【0036】
なお、本実施の形態では、1個のウェハ処理装置1について説明したが、そのウェハ処理装置1が上下に並べて配置されて用いられてもよい。そのようにすることで、複数のウェハ2に対して、同時に処理を行うことができるようになる。
【0037】
また、本実施の形態では、ウェハの乾燥を行うウェハ処理装置を示したが、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。ウェハ処理装置は、例えば、ウェハの洗浄や、ウェハの洗浄乾燥にも適用できることは、特開2006-135106号公報からも明らかであり、またそれらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上より、本発明によるウェハ処理装置によれば、チャンバへのウェハの搬入方向と搬出方向とを異なる方向とすることができ、より短いタクトタイムでウェハの処理を行うことができるウェハ処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 ウェハ処理装置
2 ウェハ
11 チャンバ
12 開閉手段
13 回転手段
21 上部ユニット
21a 支持手段
22 下部ユニット
23 シール部