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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】植物処理のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A01H 1/02 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A01H1/02 A
A01H1/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019560700
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 IL2018050487
(87)【国際公開番号】W WO2018203337
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】62/501,393
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519388594
【氏名又は名称】アルッガ エー.アイ.ファーミング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトナー,イッド
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150584(JP,A)
【文献】特開2011-200196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物処理システムであって、
植物処理装置であって、
1つ以上の流体流路と、
1つ以上の流体流アプリケータと、
植物の少なくとも一部に処理を適用するよう構成されかつ動作可能である1つ以上の植物処理デバイスであって、前記1つ以上の植物処理デバイスのうちの少なくとも1つは、前記植物の少なくとも一部における振動パターンを制御可能に誘導することにより、前記処理を適用するよう構成されかつ動作可能であり、前記振動パターンは、前記1つ以上の流体流路および前記1つ以上の流体流アプリケータを介して、事前決定された流れプロファイルを有する空気流を、前記植物の少なくとも一部に向かって発生させることにより、望まれる種類の処理が適用されるよう仕立てられており、前記空気流の事前決定された流れプロファイルは、前記植物の少なくとも一部における特定の1つ以上の領域に向かって指向することができ、かつ前記特定の1つ以上の領域に前記振動パターンを誘導する、指向性でかつ標的化された空気ストリームである、植物処理デバイスと、
前記植物の少なくとも一部の状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能な1つ以上のセンサを備える検知システムであって、前記1つ以上のセンサは、前記植物の少なくとも一部の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能な光センサを含む、検知システムと、
を含む、植物処理装置と、
制御システムとのデータ通信のための通信ユーティリティであって、前記制御システムは、前記検知システムにより生成された検知信号を受信および処理し、前記1つ以上の植物処理デバイスが前記植物の少なくとも一部に適用される望まれる種類の処理に対応する振動パターンを誘導するための動作データを生成する、前記植物処理装置とのデータ通信のために構成されかつ動作可能であり、前記制御システムは、前記振動パターンの空気のパルス列の個数、パルス列間の時間間隔、各パルス列におけるパルスの個数、各パルス列における2つのパルス間の時間間隔、各パルスにおける圧力の振幅、および各パルスの持続時間のうちの少なくとも1つを定義するよう構成されかつ動作可能である、通信ユーティリティと、
を含む、植物処理システムであり、
前記1つ以上の植物処理デバイスは、前記植物の近傍部分に対する損傷を最少化しつつ、1つ以上の花に授粉が生じることを防止するよう、かつ/または、前記植物の少なくとも一部の中にある追加的な花の成長および開花を防止するよう構成されかつ動作可能な授粉抑制装置をさらに含み、前記授粉抑制装置は、
前記授粉抑制装置は、事前決定されたレーザパラメータをもって前記植物の少なくとも一部に照射し、それにより前記植物の少なくとも一部を損傷させるよう構成されかつ動作可能なレーザ装置を含むこと、および
前記授粉抑制装置は、前記植物の近傍部分に対する損傷を最少化しつつ、前記植物の少なくとも一部の1つ以上の領域を損傷させ、1つ以上の花に授粉が生じることを防止するために、または、前記植物の少なくとも一部の中にある追加的な花の成長および開花を防止するために、空気流出口のサイズを制御することにより空気流の指向性を維持しつつ、事前決定された温度を有する空気流を、前記1つ以上の流体流路を介して生成するよう構成されかつ動作可能であること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、植物処理システム
【請求項2】
前記望まれる種類の処理は授粉をさらに含み、前記植物処理装置は植物授粉装置をさらに含み、前記制御システムは、前記検知信号を処理し、前記植物の少なくとも一部の中にある花が授粉されることになると判定する際に、前記1つ以上の植物処理デバイスのうちの少なくとも1つのための対応する動作データを生成するよう構成されかつ動作可能であり、それにより誘導された振動パターンが、前記植物の少なくとも一部の中にある少なくとも1つの花の授粉を生じさせるように構成される、請求項1に記載の植物処理システム。
【請求項3】
記植物処理装置は、前記植物の少なくとも一部の1つ以上の領域に対して1つ以上の処理物質または花粉を局所的に送達または噴霧するよう構成されかつ動作可能な物質送達装置をさらに含み、前記処理物質は、植物の病気を治療するための医薬品、植物の成長を誘導する植物ホルモン、有害生物を殺す害虫駆除剤、および成長および/または授粉を防止する植物損傷物質のうちの1つ以上を含む、請求項に記載の植物処理システム。
【請求項4】
前記物質送達装置は、前記処理物質または前記花粉を送達または噴霧するために、前記1つ以上の流体流路および前記1つ以上の流体流アプリケータを利用する、請求項3に記載の植物処理システム。
【請求項5】
前記制御システムは、前記振動パターンの周波数、振幅、および持続時間のうちの少なくとも1つを定義するよう構成されかつ動作可能である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項6】
前記1つ以上のセンサは、前記光センサを形成し、かつ、処理される前記植物の少なくとも一部が前記光センサの視野域内に配置されるように配向される少なくとも1つの撮像装置を備え、前記光センサおよび前記流体流路は、前記光センサの見通し線の軸と、前記指向性でかつ標的化された空気ストリームの伝搬の軸との間にオフセットおよび角度差を含む事前決定された固定された相対的配向をもって構成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項7】
前記1つ以上の流体流路は1つ以上の可撓性チューブを備え、前記1つ以上の流体流路に接続された1つ以上の流体流アプリケータは可動架台上に配置され、
前記光センサの少なくとも1つの撮像装置は、前記可動架台上および前記可動架台を担持する固定支柱上のうちの少なくとも一方に配置され、
前記光センサの少なくとも1つの撮像装置のそれぞれは、流体出口アパーチャに対してオフセットされており、前記流体出口アパーチャは、前記可動架台の位置にしたがって、前記流体出口アパーチャの指向方向と前記少なくとも1つの撮像装置の見通し線との間にある角度を形成し、前記少なくとも1つの撮像装置のそれぞれは、処理される前記植物の一部に向かって前記流体出口アパーチャの指向を制御するために前記画像データを提供する、
請求項6に記載の植物処理システム。
【請求項8】
前記光センサの光収集面は前記流体流アプリケータの流体出口アパーチャに隣接して配置されているか、かつ/または、前記光センサおよび前記流体流アプリケータの流体出口アパーチャは固定的に取り付けられている、請求項7に記載の植物処理システム。
【請求項9】
記植物処理装置は、車両上のまたは農業地域内の容器から花粉を収集し、前記植物の少なくとも一部の中にある少なくとも1つの花の雌しべに収集された花粉を送達するよう構成されかつ動作可能な花粉輸送装置をさらに含む、請求項乃至8のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項10】
前記花粉輸送装置はパターン化された表面を有し、前記パターン化された表面は収集される花粉を前記表面に付着させるよう構成されている、請求項9に記載の植物処理システム。
【請求項11】
前記検知システムは、前記植物の少なくとも一部の近傍における1つ以上の環境状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能な1つ以上の環境センサをさらに含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項12】
前記1つ以上の植物処理デバイスは、前記植物の少なくとも一部の周囲の温度および湿度のうちの少なくとも1つを変更するよう構成されかつ動作可能である環境調整装置をさらに含む、請求項11に記載の植物処理システム。
【請求項13】
前記環境調整装置は、空気流により前記温度または前記湿度を変更するために、前記1つ以上の流体流路および前記1つ以上の流体流アプリケータを利用する、請求項12に記載の植物処理システム。
【請求項14】
前記検知システムは、a)前記検知システムが、前記植物の少なくとも一部の近傍における1つ以上の環境状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能な1つ以上の環境センサを含み、前記検知信号は授粉に関する不利な状態を示し、前記制御システムは、前記物質送達装置が単為結実による果実の成長を誘導するホルモンを送達または噴霧するための動作データを生成すること、および、b)前記検知システムが、前記植物の少なくとも一部の病気、または前記植物の少なくとも一部もしくはその周囲にいる有害生物を示す検知信号を提供し、前記制御システムは、前記物質送達装置がそれぞれ医薬品または害虫駆除剤を送達または噴霧するための動作データを生成すること、のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項3または4に記載の植物処理システム。
【請求項15】
前記植物処理装置は、前記1つ以上の植物処理デバイスの滅菌、洗浄、および消毒のうち少なくとも1つを行うよう構成されかつ動作可能な組立体をさらに含み、前記組立体は、空気送風機、洗浄剤アプリケータ、および洗浄剤または消毒剤または滅菌剤噴霧器のうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項16】
前記植物処理装置は、前記植物処理装置を前記植物の少なくとも一部の近傍に移動させ、それにより、前記植物の少なくとも一部を前記植物処理システムにより処理することを可能にするよう構成されかつ動作可能なナビゲーションおよび追跡組立体を含み、前記植物処理システムは、
a)前記ナビゲーションおよび追跡組立体は、前記植物処理装置を担持するロボティックアームを含み、前記制御システムは、前記ロボティックアームを3次元において制御可能に移動させるよう構成されかつ動作可能であること、
b)前記ナビゲーションおよび追跡組立体は、前記植物処理装置を前記植物の少なくとも一部の近傍に制御可能に輸送するよう構成されかつ動作可能な地上車両を含むこと、
c)前記ナビゲーションおよび追跡組立体は、1つ以上の光センサおよび位置決めセンサのうちの少なくとも1つを含むこと、および
d)前記ナビゲーションおよび追跡組立体は、前記植物処理装置を担持するロボティックアーム、および、前記ロボティックアームの空間移動経路を判定し、それにより植物処理のプロセス、時間、およびエネルギーを最適化するよう構成されかつ動作可能な慣性モーメントユニットを含むこと
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項17】
前記制御システムは、
前記制御システムが、授粉の準備ができている花の画像を含む基準データと前記検知信号を比較することにより、かつ/または、前記画像データを処理して、前記画像(単数または複数)の中における花の存在を識別し、授粉の存在または不在を示す花パラメータを識別することにより、前記花(単数または複数)が授粉の準備ができていることを識別することにより、かつ/または、訓練された人工知能を利用することにより、前記植物の一部上にある少なくとも1つの花が授粉の準備ができているかどうかを、前記検知信号に基づいて判定するよう構成されかつ動作可能であること、および
前記制御システムが、前記光センサからの検知信号を分析し、処理されている間ならびにその処理後の前記植物の少なくとも一部の状態を判定し、対応するフィードバックデータを生成し、それにより、前記植物の少なくとも一部に誘導された振動パターンに影響する処理の少なくとも1つのパラメータの変更についての意志決定を可能にするよう構成されかつ動作可能であること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の植物処理システム。
【請求項18】
植物処理装置であって、
1つ以上の流体流路および1つ以上の流体流アプリケータを介して、植物の少なくとも一部上の事前決定された温度および流れプロファイルの空気を送風することにより、標的化された損傷を前記植物の少なくとも一部に対して生じさせるよう構成されかつ動作可能な1つ以上の植物処理デバイスと、
前記植物の少なくとも一部の状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能な1つ以上のセンサを含む検知システムであって、前記1つ以上のセンサは、前記植物の少なくとも一部の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能な光センサを含む、検知システムと、
前記検知信号を制御システムに送信し、前記1つ以上の植物処理デバイスが、病気、有害生物、およびすでに授粉済みである花の個数から成る群から選択される、前記植物の少なくとも一部の1つ以上の状態に基づいて、前記植物の少なくとも一部に対して前記標的化された損傷を生じさせるための動作データを前記制御システムから受け取る、前記制御システムとのデータ通信のための通信ユーティリティと、
を含む、植物処理装置。
【請求項19】
前記1つ以上の植物処理デバイスは、(i)その強度および波長のうちの少なくとも1つに関する事前決定されたパラメータのレーザビームを生成するレーザ装置、および(ii)物質送達装置のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項18に記載の植物処理装置。
【請求項20】
前記植物処理装置は、前記植物処理装置を前記植物の少なくとも一部の近傍に移動させ、それにより、前記植物の少なくとも一部を前記植物処理デバイスにより処理することを可能にするよう構成されかつ動作可能なナビゲーションおよび追跡組立体をさらに含み、前記ナビゲーションおよび追跡組立体は、
前記植物処理装置を担持し、かつ、3次元において移動するよう構成されかつ動作可能であるロボティックアーム、
前記植物処理装置を前記植物の少なくとも一部の近傍に制御可能に輸送するよう構成されかつ動作可能な地上車両、
1つ以上の光センサおよび位置決めセンサのうちの少なくとも1つ、および
前記植物処理装置を担持するロボティックアーム、および、前記ロボティックアームの空間移動経路を判定し、それにより植物処理のプロセス、時間、およびエネルギーを最適化するよう構成されかつ動作可能な慣性モーメントユニット
のうちの1つ以上を特徴とする、請求項18または19に記載の植物処理装置。
【請求項21】
前記植物の少なくとも一部は、単一の花または単一の花の中の領域である、請求項18乃至20のいずれか1項に記載の植物処理装置。
【請求項22】
植物処理のための方法であって、
- 植物の少なくとも一部の画像データを含む検知データを取得することと、
- 前記検知データを分析し、前記植物の少なくとも一部上において事前決定された個数の花がすでに授粉されたかどうかを判定することと、
- 前記事前決定された個数の花がすでに授粉されたと判定する際に、前記植物の少なくとも一部上において、他の花(単数または複数)の授粉を抑制するか、または他の花(単数または複数)の成長および開花を防止することであって、前記植物の少なくとも一部上において、他の花(単数または複数)の授粉を抑制すること、または他の花(単数または複数)の成長および開花を防止することは、事前決定された温度、速度、および空間プロファイルの流体ストリームを、前記植物の少なくとも一部に指向することにより実現されることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば温室栽培植物において実施される工業化農業における植物の自動化された処理に関する。特に、植物の処理は、例えば、標的化された人工授粉、病気の局所的予防および/または処置、授粉および/または植物成長の程度の抑制/制御を含む。
【背景技術】
【0002】
農作物は、植物のライフサイクルの全期を通して植物の健康を維持することに始まって、引き続き花の授粉、健康な農作物の確保など、かなりの手入れを必要とする。人口が絶え間なく増加し、健康な生活に対する関心が高まり、その一方で、出費が減少する中、従来の農業は日々困難に直面している。周知の通り、われわれが食べかつ使用する大部分の農作物は主に風または昆虫により授粉される。しかし多様な理由のために、これらの自然な過程は存在しないか、または最適化された状態で機能しない。例えば、農業地域における昆虫は量的に減少しまたは消滅し、環境状態により、昆虫は周囲を動き回り受粉する能力が制約されてしまっている。例えば温室では風および昆虫は進入することができず、したがって授粉することができない。加えて、食品およびコスト削減に対する需要が大きくなりつつあるため、より高い効率が要求される。それにより農業従事者は、実止まりの改善および天然授粉を越える産出高を達成するよう促進される。
【0003】
条件およびコストに応じて、解決策には、多様な方法における手動授粉から、ミツバチなどの昆虫(または人工的に育てられた昆虫(例えばマルハナバチ))の巣を農業地域に導入することまで、が含まれる。加えて、人工的な解決策(例えば自家受粉する、植物を保持するケーブルを振動させる、または、個々の植物、植物における房または花を手動振動させる)も存在する。
【0004】
多くの地域で、手動授粉は、労力およびコストの利用可能性のために、法外に高額である。ハチもいくつかの欠点を有する。ハチの欠点としては、ハチは特定の環境状態を必要とすること、害虫駆除剤に対して影響を受け易いこと、(温室から)逃げてしまうこと、または近隣のより収益性の高い農作物を授粉すること、が挙げられる。ハチはウイルスおよび菌類を伝達することが可能である。
【0005】
米国特許出願第20160353661号では植物を授粉する方法が説明されている。この方法は、処理回路を用いて花を有する植物に関する植物データを受け取り、処理回路により、植物データに基づいて複数の花の一部分を選択的に授粉するようロボット装置の動作を制御すること、を含む。ロボット装置は、植物データを取得するよう構成されたセンサと、植物の花を授粉させるよう構成された授粉装置と、花粉を収集するよう構成された収集装置と、花が授粉されることを防止するよう構成された授粉防止装置と、を含む。
【0006】
US20180065749では、農作物を授粉する方法およびシステムが記載されている。このシステムは、第1農作物の花から花粉を収集し、第1農作物の花から収集された花粉を第2農作物の花に塗布するよう構成された花粉アプリケータと、花粉アプリケータにより第1農作物の花から収集された花粉が花粉アプリケータにより第2農作物の花に正常に塗布されたことを確認するために、花粉アプリケータにより第2農作物の花に塗布された花粉の存在を検出するよう構成されたセンサと、を含む1つまたは複数の無人車両を含む。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、植物状態(例えば植物健康、授粉に対して準備が整った状態、授粉後など)を監視し、産出高に関して最大の有効性および効率を確保するために好適な処置を適用することにより前述の状態またはステージのうちのそれぞれに介入することを含むがこれらに限定されない、成長および結実の全サイクルにおいて植物を処理するための新規技術を提供する。
【0008】
本発明のシステムおよび方法は自律的であり、本発明のシステムおよび方法は、自律的かつ人的介入なしに、農業地域内の全植物を監視および処理するために、特定の植物または植物の部分にアプローチすることが可能であるロボット処置装置(単数または複数)に基づく。
【0009】
さらに、本発明の高度に有効であるシステムおよび方法は、適用される処理は、サブ植物レベルまで、単一の花まで、または花の特定部分まで、標的化され局所的であるという点で、資源、エネルギー、およびコストの面で効率的である。
【0010】
いくつかの態様では、本発明は花を授粉することによる(特に、例えば工業化農業において自動的に花を授粉することによる)植物処理のための新規技術を提供する。このシステムは、植物上の1つまたは複数の花を選択的に授粉するために、植物の1つまたは複数の領域において振動を誘導する。1つまたは複数の領域(植物の一部と呼ばれる場合もある)は、例えば植物の茎、小枝、葉柄、葉、1群の花、花、または花の一部であり得る。このシステムは、最適な時間、エネルギーにおいて要求されるかぎり多量の花を効率的かつ迅速に授粉し、これにより、大量の植物がカバーされるよう、花標的を検出し、花標的が授粉に対して準備できた状態にあるかどうかを判定し、花標的が未授粉の状態であるかどうかを判定することが可能である。
【0011】
他の態様では、本発明は、産出高を最適化するために花の過剰授粉を抑制することを含む植物処理のためのシステムおよび方法を提供する。
【0012】
さらに他の態様では、本発明は、病気を局所的に特定し、病気を選択的に処理することを含む、植物処理のためのシステムおよび方法を提供する。
【0013】
本発明に係る自律的システムおよび方法は、いくつかの重要な特長を有する。すなわち、この技術は、人間労働の利用可能性により制限されず、温度に対して、ならびに、ハチを効率的に使用するために要求される他の条件に対して、影響されにくく、ハチを殺し得る害虫駆除剤に対して影響されにくく、もしくは特定の時間量にわたり害虫駆除剤の除去を要求せず、ハチの使用が可能であるエリアに限定されず、いかなる脅威(例えばハチに刺されることによる)を従業員にもたらすことなく、後の剪定を要求する過剰授粉を防止するためにハチが選択的な授粉を行うことが不可能であるという事実により制約されず、ハチがあまりに多く花を訪問する場合には花に損傷を与えることもあるという事実に影響されない。
【0014】
したがって、本発明の第1の広範な態様によれば、植物処理装置を含む植物処理システムが提供される。なお、この植物処理システムは、
1つまたは複数の処理流路、および前述の1つまたは複数の処理流路と関連付けられた少なくとも1つの植物処理デバイスであって、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスは、植物の少なくとも1部分の振動を制御可能に誘導するよう構成されかつ動作可能であり、前述の振動は植物の前述の少なくとも1部分を処理するよう構成されている、少なくとも1つの植物処理デバイス、ならびに
植物の前述の少なくとも1部分の状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数のセンサであって、植物の前述の少なくとも1部分の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である光センサを含む、1つまたは複数のセンサを含む検知システム、
を含む、植物処理装置と、
検知システムにより生成された検知信号を受信および処理するために前述の植物処理装置とデータ通信するよう構成されかつ動作可能である、制御システムであって、検知信号を処理することは、植物の前述の少なくとも1部分の状態を判定すること、および植物の前述の少なくとも1部分の処理に対応する振動を誘導するために前述の少なくとも1つの植物処理デバイスを動作させることを含む、制御システムと、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前述の1つまたは複数の処理流路のうちの少なくとも1つは流体流路として構成され得る。少なくとも1つの処理デバイスは、事前決定された流れプロファイルを有する空気流を、流体流路を介して、流体流植物の前述の少なくとも1部分に向かって発生させることにより、振動を誘導するよう構成されかつ動作可能であり得る。少なくとも1つの処理デバイスは、指向性を有しかつ標的化された流体ストリームである空気流の流れプロファイルを生成するよう構成されかつ動作可能であり得る。なお、この流体ストリームは、植物の前述の少なくとも1部分における特定的な1つまたは複数の領域に向かって誘導されることが、および、係る領域において振動を誘導させることが、可能である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスは、振動中に植物の前述の少なくとも1部分に対して接触し、それにより植物の前述の少なくとも1部分に振動を誘導するよう構成されかつ動作可能である振動要素を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスは、前述の誘導された振動が、植物の前述の少なくとも1部分における少なくとも1つの花を授粉させるよう、植物授粉装置として構成されかつ動作可能であり得る。少なくとも1つの植物処理デバイスは、微生物、ウイルス、および/または他の有害な対象をブロックするよう、および、微生物、ウイルス、および/または他の有害な対象が空気または流体流により植物の少なくとも1部分に送達されることを防止するよう、構成されかつ動作可能であるフィルタを含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、前述の植物処理装置は、植物の前述の少なくとも1部分の1つまたは複数の領域に1つまたは複数の処理物質を局所的に送達または噴霧するよう構成されかつ動作可能である物質送達装置を含む追加的な植物処理デバイスをさらに含む。なお前述の処理物質は、植物の病気を処理するための医薬品、植物の成長を誘導する植物ホルモン、有害生物を殺す害虫駆除剤、または成長および/または授粉を防止する植物損傷物質のうちの1つまたは複数を含む。物質送達装置は前述の1つまたは複数の処理流路と関連付けられ得る。植物処理デバイスおよび追加的な植物処理デバイスは、前述の少なくとも1つの流体流路と関連付けられ得る。物質送達装置は、植物の前述の少なくとも1部分内の少なくとも1つの花に向かって花粉を噴霧するよう構成されかつ動作可能され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスは振動要素を含む。なお前述の制御システムは、振動の周波数、振幅、および持続時間のうちの少なくとも1つを制御することにより、振動要素の事前決定されたプロファイルの振動を提供するよう構成されかつ動作可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前述の少なくとも1つの処理デバイスは、空気流を発生させることにより振動を誘導するよう構成されかつ動作可能である。なお前述の制御システムは、空気のパルス列の個数、パルス列間の時間間隔、各パルス列におけるパルスの個数、各パルス列における2つのパルス間の時間間隔、各パルスにおける圧力の振幅、各パルスの持続時間のうちの少なくとも1つを制御することにより、事前決定されたプロファイルの空気流を提供するよう構成されかつ動作可能である。
【0021】
いくつかの実施形態では、光センサおよび流体流処理流路は、光センサの見通し線の軸と、指向性を有する流体ストリームの伝搬の軸と、の間が事前決定された固定された相対的方向となるよう、構成されている。事前決定された固定された相対方向は、光センサの視線の軸と指向性を有する流体ストリームの伝搬の軸との間のオフセットおよび/または角度差を含み得る。処理される植物の少なくとも1部分は光センサの視野域内に配置され得る。前述の光センサの光収集面は前述の指向性流体ストリームの流体出口アパーチャの近傍に配置され得る。光センサおよび流体出口アパーチャは固定的に取り付けられ得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、前述の植物処理装置は、花粉を、車両上のまたは農業地域内の容器から、収集し、収集された花粉を、植物の前述の少なくとも1部分内の少なくとも1つの花の雌しべに送達するよう構成されかつ動作可能である花粉輸送装置をさらに含む。花粉輸送装置はパターン化された表面を有し、このパターン化された表面は、収集された花粉を前述の表面上に付着させるよう構成され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、前述の検知システムは、植物の前述の少なくとも1部分の近傍における1つまたは複数の環境状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数の環境センサをさらに含む。植物処理装置は、植物の前述の少なくとも1部分の周囲の温度および湿度のうちの少なくとも1つを変更するよう構成されかつ動作可能である環境調整装置を含む追加的な植物処理デバイスをさらに含み得る。制御システムは、前述の環境調整装置を動作させるよう構成されかつ動作可能であり得る。環境調整装置は前述の1つまたは複数の処理流路と関連付けられ得る。植物処理デバイス、物質送達装置、および環境調整装置は、前述の少なくとも1つの流体流路と関連付けられ得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、制御システムは、検知信号を処理し、植物の前述の少なくとも1部分内の花が授粉されるべきであることが判定されたとき、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスが植物の少なくとも1部分において前述の振動を誘導するための対応する動作データを生成するよう構成されかつ動作可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、検知システムは、植物の前述の少なくとも1部分の近傍における1つまたは複数の環境状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数の環境センサを含む。検知信号は、授粉に対して不利な状態を示す場合があり、制御システムは、前述の物質送達システムが、単為結実による果実の成長を誘導するホルモンを送達または噴霧するための動作データを生成し得る。検知信号は、植物の前述の少なくとも1部分に病気が存在することを示す、または植物の前述の少なくとも1部分の周囲にもしくは前述の少なくとも1部分上に有害生物が存在することを示す、場合があり、制御システムは、前述の物質送達システムが、医薬品を送達または害虫駆除剤を噴霧するための動作データを生成し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、植物処理システムは、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスの滅菌および/または洗浄および/または消毒を実施するよう構成されかつ動作可能である、滅菌および/または洗浄および/または消毒組立体をさらに含む。滅菌および/または洗浄および/または消毒組立体は、高温空気送風機、洗浄剤アプリケータ、および洗浄剤または消毒剤または滅菌剤噴霧器のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、植物処理装置は、植物処理装置を植物の前述の少なくとも1部分の近傍に移動させ、それにより、植物の前述の少なくとも1部分を植物処理システムにより処理することを可能にするよう構成されかつ動作可能であるナビゲーションおよび追跡組立体を含む。ナビゲーションおよび追跡組立体は前述の植物処理組立体を担持するロボティックアームを含み得、制御システムはロボティックアームを3次元において制御可能に移動させるよう構成されかつ動作可能であり得る。ナビゲーションおよび追跡組立体は、植物処理装置を植物の前述の少なくとも1部分の近傍に制御可能に輸送するよう構成されかつ動作可能である地上車両を含み得る。ナビゲーションおよび追跡組立体は、1つまたは複数の光センサおよび位置決めセンサのうちの少なくとも1つを含み得る。ナビゲーションおよび追跡組立体は、ロボティックアームの空間移動経路を判定し、それにより植物処理のプロセス時間およびエネルギーを最適化するよう構成されかつ動作可能である慣性モーメントユニットを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、制御システムは、前述の検知信号と、授粉に対して準備ができた状態にある花の画像を含む基準信号と、を比較することにより、および/または、前述の画像データを処理して、画像(単数または複数)の中に花が存在することを識別し、授粉の存在または不在を示す花パラメータを識別すること、および/または、訓練された人工知能を利用することにより、花(単数または複数)が授粉に対して準備ができた状態であることを識別することにより、植物の前述の部分上の少なくとも1つの花が授粉に対して準備ができた状態にあるかどうかを前述の検知信号に基づいて判定するよう構成されかつ動作可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、制御システムは、少なくとも1つの光センサからの検知信号を分析し、処理中ならびに処理後の植物の前述の少なくとも1部分の状態を判定することを、および、対応するフィードバックデータを生成し、それにより、植物の前述の少なくとも1部分において誘導される振動に影響を及ぼす処理の少なくとも1つのパラメータを変更することについての意志決定を可能にすることを、実行するよう構成されかつ動作可能である。
【0030】
いくつかの実施形態では、植物処理装置は、植物の近傍部分に対する損傷を最少化しつつ、1つまたは複数の花に授粉が生じることを防止するよう、および/または、植物の前述の少なくとも1部分内における追加的な花に成長および開花が発生することを防止するよう、構成されかつ動作可能である授粉抑制装置をさらに含む。授粉抑制装置は、事前決定されたレーザパラメータを植物の前述の少なくとも1部分に対して照射し、それにより植物の前述の少なくとも1部分を損傷させるよう構成されかつ動作可能であるレーザ装置を含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処理デバイスは、植物の近傍部分に対する損傷を最少化しつつ、植物の前述の少なくとも1部分の1つまたは複数の領域を焼き、1つまたは複数の花に授粉が生じることを防止するために、および/または、植物の前述の少なくとも1部分内における追加的な花に成長および開花が発生することを防止するために、流体ストリーム流出口のサイズを制御することにより流体ストリームの指向性を維持しつつ事前決定された高温を有する前述の流体ストリームを生成するよう構成されかつ動作可能である授粉抑制装置として構成されかつ動作可能である。
【0032】
本発明の他の態様によれば、
1つまたは複数の処理流路、および前述の1つまたは複数の処理流路に関連付けられた少なくとも1つの植物処理デバイスであって、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスは、植物の少なくとも1部分の振動を制御可能に誘導するよう構成されかつ動作可能であり、前述の振動は、植物の前述の少なくとも1部分を処理するよう構成されている、少なくとも1つの植物処理デバイスと、
植物の前述の少なくとも1部分の状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数のセンサであって、植物の前述の少なくとも1部分の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である光センサを含む、1つまたは複数のセンサを含む検知システムと、
検知信号を制御システムに伝達し、前述の少なくとも1つの植物処理デバイスが植物の前述の少なくとも1部分に対する処理に対応する振動を誘導するための動作データを、制御システムから受け取るために、制御システムとデータ通信を実施する通信ユーティリティと、を含む、植物処理装置が提供される。
【0033】
本発明のさらに他の態様によれば、
1つまたは複数の流体処理流路、ならびに前述の1つまたは複数の流体処理流路および1つまたは複数の物質貯蔵槽に関連付けられた少なくとも1つの植物処理デバイスであって、医薬品、害虫駆除剤、ホルモン、および/または高温空気からなる群より選択される物質を、植物の少なくとも1部分に送達もしくは噴霧するよう構成されかつ動作可能である、少なくとも1つの植物処理デバイスと、
植物の前述の少なくとも1部分の状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数のセンサであって、植物の前述の少なくとも1部分の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である光センサを含む、1つまたは複数のセンサを、および植物の前述の少なくとも1部分の近傍における1つまたは複数の環境状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数の環境センサを、含む検知システムと、
検知信号を制御システムに伝送し、植物の前述の少なくとも1部分の以下の1つまたは複数の状態(すなわち植物の近傍における病気、有害生物の存在、植物の近傍における環境状態)にそれぞれ基づいて前述の少なくとも1つの植物処理デバイスが前述の物質のうちの1つまたは複数を送達または噴霧するための動作データを制御システムから受け取るために、制御システムとデータ通信する通信ユーティリティと、を含む、植物処理装置が提供される。
【0034】
本発明のさらに他の態様によれば、
1つまたは複数の処理流路、および前述の1つまたは複数の処理流路に関連付けられた少なくとも1つの植物処理デバイスであって、標的化された損傷を植物の前述の少なくとも1部分に対して生じさせるよう構成されかつ動作可能である、少なくとも1つの植物処理デバイスと、
植物の前述の少なくとも1部分の状態を示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数のセンサであって、植物の前述の少なくとも1部分の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である光センサを含む、1つまたは複数のセンサを含む検知システムと、
検知信号を制御システムに伝送し、植物の前述の少なくとも1部分の以下の1つまたは複数の状態(すなわち、回復不可能な病気、事前決定された個数の花がすでに授粉済みであること)に基づいて前述の少なくとも1つの植物処理デバイスが植物の前述の少なくとも1部分に損傷を生じさせるための動作データを制御システムから受け取るために、制御システムとデータ通信する通信ユーティリティと、を含む、植物処理装置が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の処理流路は、強度および/または波長の事前決定されたパラメータのレーザ、事前決定された高温ならびに流れプロファイルの空気、および物質送達のうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
本発明の他の広範な態様によれば、
- 植物の少なくとも1部分の画像データを含む検知データを取得することと、
- 前述の検知データを分析し、植物の前述の少なくとも1部分上の1つまたは複数の花が授粉に対して準備ができた状態にあるかどうかを判定することと、
- 1つまたは複数の花が授粉に対して準備ができた状態にあることを検出した場合に、前述の授粉に対して準備ができた状態にある1つまたは複数の花において振動を誘導することにより前述の授粉に対して準備ができた状態にある1つまたは複数の花を授粉することと、を含む、植物処理の方法が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態では、検知データを取得および分析することは、植物の前述の少なくとも1部分の周囲における環境状態を示す環境データを取得および分析し、前述の環境状態が授粉を許容しないことを判定し、授粉の前に前述の環境状態を変更することを可能にすることをさらに含む。なお授粉の前に前述の環境状態を変更することは、以下のようにして実施され得る。すなわち、
- 前述の環境データが授粉に対して要求されるよりも高い湿度を示す場合には、前述の周囲に、または植物の前述の少なくとも1部分に、高温空気を加える、および、
- 前述の環境データが授粉に対して要求されるよりも低い湿度を示す場合には、前述の周囲に、または植物の前述の少なくとも1部分に、湿空気を加える。
【0038】
本発明のさらに他の態様によれば、
- 植物の少なくとも1部分の画像データを含む検知データを取得することと、
- 前述の検知データを分析し、植物の前述の少なくとも1部分上において事前決定された個数の花がすでに授粉されたかどうかを判定することと、
- 事前決定された個数の花がすでに授粉されたことを判定した場合には、植物の前述の少なくとも1部分上において、他の花(単数または複数)の授粉を抑制するか、または他の花(単数または複数)の成長もしくは開花を防止することと、を含む、植物処理の方法が提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、授粉を抑制することは、
- 事前決定された温度、速度、空間プロファイルの流体ストリームを、植物の前述の少なくとも1部分の少なくとも一部に誘導することと、
- 特定の物質を、植物の前述の少なくとも1部分の少なくとも一部に送達または噴霧することと、
- 植物の前述の少なくとも1部分の少なくとも一部を、植物の種類に対応する事前決定されたパラメータを有するレーザで照射することと
のうちの1つまたは複数により達成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、植物の前述の少なくとも1部分の少なくとも一部は、単一の花または単一の花の1領域を含む。
【0041】
本明細書で開示される発明主題をより良好に理解するために、および、本発明主題がいかに実施され得るかを例示するために、様々な実施形態について、以下の添付の図面を参照しつつ、単に非限定的な事例として、ここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る植物処理システムの例示的な実施形態のブロック図である。
図2】空気流により植物の少なくとも一部において振動を誘導する処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図3】接触により植物の少なくとも一部において振動を誘導する処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図4a】誘導された局所的な物質または流体を植物の少なくとも一部に送達する処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図4b】誘導された局所的な物質または流体を植物の少なくとも一部に送達する処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図4c】誘導された局所的な物質または流体を植物の少なくとも一部に送達する処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図5】空気流または流体送達処理流路のアパーチャを制御するデバイスを示す図である。
図6】接触により花に花粉を送達する処理システムの非限定的な事例を示す図である。
図7a】植物の一部に対して授粉抑制を生じさせる処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図7b】植物の一部に対して授粉抑制を生じさせる処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図7c】植物の一部に対して授粉抑制を生じさせる処理装置の非限定的な事例を示す図である。
図8】撮像センサと共に処理デバイスを取り付ける非限定的な事例を示す図である。
図9】洗浄/滅菌/消毒システムと共に、接触により植物の少なくとも一部における振動を誘導する処理装置を取り付ける非限定的な事例を示す図である。
図10】いくつかの異なる処理デバイスとともに使用するためのナビゲーションおよび追跡組立体の非限定的な事例を示す図である。
図11】空気流により振動を誘導するいくつかの処理装置をロボット車両上に取り付ける非限定的な事例を示す図である。
図12】植物の少なくとも1部分において振動を誘導するための空気流のパターンの非限定的な事例を示す図である。
図13】ロボット車両上に取り付けられた授粉抑制装置の非限定的な事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明に係る植物の少なくとも1部分を処理するための植物処理システム100の非限定的な実施形態の特徴に関する全般的な概略図を示す図1を参照する。データライン107a植物処理システム100は、植物処理装置102と、例えばおよび/または制御ライン107bを介して、植物処理装置102に接続され、かつ、植物処理装置102と通信する、制御システム107と、を含む。植物処理装置102は、1つまたは複数の処理流路106と、1つまたは複数の処理流路と関連付けられた少なくとも1つの植物処理デバイス103と、を含む。植物処理装置102は、植物の少なくとも1部分の状態を示す検知信号105bを制御システム107に提供するよう構成されかつ動作可能である1つまたは複数のセンサ105を含む検知システム104も含む。
【0044】
したがって植物処理システム100は、開花期、受粉期、および結実期を含むその成長期のすべての期間にわたり検知システム104により植物を監視するよう構成されかつ動作可能であり、植物成長期のうちの1つまたは複数に関する植物の事前決定された状態がひとたび特定されると、植物処理システム100は、1つまたは複数の処理流路104と関連付けられた少なくとも1つの植物処理デバイス103により、対応する処理を適用するよう構成されかつ動作可能である。例えば、植物処理システム100が、検知システム104の好適なセンサ(単数または複数)により、授粉に関する状態(例えば、植物上の1つまたは複数の花が授粉される準備ができた状態にあるかどうか)を特定すると、植物処理システム100は、1つまたは複数の花を授粉するために、少なくとも1つの植物処理デバイス103を動作させる。いくつかの実施形態では、以下でさらに詳細に説明されるように、植物処理システム100は、例えば検知システム104の好適なセンサ(単数または複数)により植物の健康状態を監視することが可能であり、植物が特定の病気を有することを特定した場合には、植物処理システムは、病気を有する植物に、例えば好適な薬剤または医薬品を送達することなどにより、対応する処理を適用するために、少なくとも1つの処理デバイス103を動作させる。
【0045】
上記のように、検知システム104は、植物の状態をその1つまたは複数のセンサ105により監視し、対応する検知データを生成し、その検知データを制御システム107に送る。制御システム107はデータライン107aを介して検知データを受け取り、その検知信号を処理して植物の少なくとも1部分の状態を判定し、次いで、植物のその少なくとも1部分に対応する処理を適用するために、動作データを生成しその動作データを制御ライン107bを介して送ることにより、少なくとも1つの植物処理デバイス103を動作させる。
【0046】
この具体例では制御システム107が別個の要素であることが図示されているが、制御システム107が別の様式で構成されることが可能であることが注目されるべきである。例えば制御システム107は、検知システム104に対して、または、少なくとも1つの処理デバイス103に対して一体化されたパーツであることが可能であり、または検知システム104と処理デバイス103との間に分散され得る。その場合、データラインおよび制御ラインは、伝達/通信ラインにマージされる。さらに、制御システム107が植物処理装置102の内部または外部に配置され得ることが注目される。例えば、制御システム107は、ネットワーク(有線または無線ネットワークのいずれであってもよい)を介して他のシステムの要素と通信する外部サーバ上で実行され得る。
【0047】
少なくとも1つの処理デバイス103は、植物の少なくとも1部分において振動パターンを制御可能に誘導することにより、植物の少なくとも1部分に処理を適用するよう構成されかつ動作可能である。振動パターンは、振動パターンのプロファイルのパラメータを制御することにより、望まれる種類の処理が適用されるよう衣装を着せられる。少なくとも1つの処理デバイス103は、植物の少なくとも1部分における1つまたは複数の領域に振動パターンを適用し、それにより要求される処理が最小のエネルギーおよび/または時間において達成されるよう、構成され得る。植物の少なくとも1部分の1つまたは複数の領域において誘導される振動パターンは、以下でさらに説明されるように、接触様式または非接触様式で植物処理デバイス103により適用され得る。
【0048】
上述のように、植物処理装置102は1つまたは複数の処理流路106を含む。少なくとも1つの処理デバイスは、これらの処理流路106のうちの1つまたは複数の処理流路106と関連付けられている。1つまたは複数の処理流路は、植物に処理を適用するために植物処理デバイス103が使用/要求する流路(単数または複数)を含む。処理流路(単数または複数)106は、植物処理システムの内側パーツを形成してもよく、またはいくつのかの場合では、植物処理システムの外部に配置されてもよい。処理流路(単数または複数)106は、1つまたは複数の植物処理デバイス103に対して、流入パーツ、中間パーツ、または流出パーツであり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の植物処理デバイスが単一の共有処理流路と関連付けられ得ることが注目されるべきである。いくつかの実施形態では、単一の植物処理デバイスが2つ以上の処理流路と関連付けられ得る。例えば、処理流路は、植物処理デバイスが処理を適用するために利用する流体(気相、液相、またはエアロゾル相のいずれか)の流れを提供するよう構成されかつ動作可能である流体流路を含み得る。1具体例では、流体流路は、空気流を生成し、植物の少なくとも1つ部分の1つまたは複数の領域に向かって送風するために、植物処理デバイスにより利用される。
【0049】
試験下にある植物の部分の状態を示す信号を検知する能力を有する検知システム104の1つまたは複数のセンサ105は、少なくとも、植物の少なくとも試験下の部分の画像データを示す検知信号を提供するよう構成されかつ動作可能である光センサ105aを含む。光センサ105aは当該技術分野で周知の任意の光学センサとして構成され得る。特に光センサ105aは、試験下の植物の部分に向かって直接的に指向するカメラであってもよく、または植物の当該部分に向かって指向するアパーチャを有するか、もしくは係るアパーチャと関連付けられてもよく(例えばセンサ自体が植物の当該部分に対して直接的な見通し線を有さない場合には、光ファイバを利用することにより)、または、植物の部分、その他を含む視野域を有してもよい。画像データは植物の当該部分の多様な状態を示し得、係る多様な状態が特定されることにより、好適な処理デバイスによりそれぞれの処理が実施されることとなる。例えば、画像データは、植物の病気について、1つまたは複数の花が授粉に対して準備ができた状態にあるかについて、すでに授粉済みの花が存在するかについて、教示することが可能である。
【0050】
図2には、本発明にしたがって植物の少なくとも1部分において事前決定されたプロファイルの振動を誘導する植物処理デバイス103aの非限定的な事例が示されている。この事例では、処理デバイスは、制御されかつ指向性を有する空気流を、植物の少なくとも1部分に向かって提供することにより、振動パターンを植物の少なくとも1部分において非接触的に誘導する。植物処理デバイス103aの遠位側から出て植物の標的部分(例えば単一の花)に向かって伝搬する指向性の空気流は実際に、事前決定された速度プロファイル、時間プロファイル(例えば、その間に間隙を有するパルスとして構成される)、および、例えば伝搬の軸およびストリーム幅により定義され得る方向および体積を含む空間プロファイルを有する、画成された空気/流体ストリームである。したがって図2の処理デバイスは流体流路を含む処理流路と関連付けられている。上記の事例では、処理デバイスは、制御ライン212を通して処理デバイスの構成要素を制御する制御器211を含む。制御器211は上述のように、制御システムのパーツであってもよく、または処理デバイス103aの直接的なパーツであってもよい。いくつかの実施形態では、制御器は、検知システムにより提供された検知データを示す動作データを制御システムから受け取るために、制御システムとデータ通信するよう構成されている。圧縮器201は空気を、事前決定値に、または、データライン201bを通して圧力ゲージ201aから圧力表示値を受け取り、制御ライン212を使用して圧縮器を動作させる制御器211により決定された値に、圧縮する。圧縮器201は、チューブ201cを通してタンク202を充填する空気を圧縮する。タンク202は配管205を通して流体流アプリケータ203に接続する。圧縮空気は、制御ライン212を通して制御器211による制御バルブ206により要求されると、流体流アプリケータ203に送達される。空気は、各バルブ206を別個に制御することにより、互いに対して独立的に流体流アプリケータ203に送達され得る。空気圧は、制御ライン212を通して制御器211により制御される圧力調節器208によりさらに制御される。
【0051】
空気圧縮器201は、デバイスが使用するよう計画された最大値に空気を圧縮し得、調節器208およびバルブ206を制御することにより、各流体流アプリケータ203は独立的に設定された圧力を受け取り得る。空気圧縮器201は、微生物/ウイルスまたは他の有害な対象物をアプリケータを通して植物または植物の部分に送達することを防止するために、微生物フィルタまたは他のフィルタ(図示せず)が装備され得る。
【0052】
チューブ205は、可動架台204上にアプリケータ203を取り付けることにより、植物の要求される部分に対する空気送達を誘導するために、アプリケータ203が移動可能となるよう、可撓性を有し得る。なお可動架台204もまた制御ライン212を通して制御器211により制御される。
【0053】
流体流アプリケータ203は、要求される処置を植物の少なくとも1部分に提供するために、事前決定されたプロファイルの空気流を提供し得る。事前決定されたプロファイルの空気流は、制御器211により制御された、要求されたタイミングでバルブ206を間欠的に開閉することによる、かつ、調節器208により空気圧を変化させる事による、一連の空気パルスであり得る。
【0054】
図3には、植物の少なくとも1部分に対する直接的な物理的接触による、植物の少なくとも1部分において事前定義されたプロファイルの振動を誘導する植物処理デバイス103bの他の非限定的な事例が示されている。したがって処理デバイス103bは接触力印加を含む処理流路と関連付けられる。処理デバイス103bは振動要素302に取り付けられた接触アプリケータ301を含む。接触アプリケータ301および振動要素302の両方は架台303に接続される。架台303は、以下で説明されるように、処理デバイスを処理装置102の好適なパーツに接続し得る。
【0055】
接触アプリケータ301の長さは処理される植物に応じて変動し得る。接触アプリケータ301の長さは、接触アプリケータを振動要素302に取り付ける保持要素上において手動で接触アプリケータを延長または収縮させることにより変化され得る。接触アプリケータ301の長さは、上記の制御器211と同様に構成され得る制御器305からのコマンドに応じて接触アプリケータ304の長さを変動させることが可能であるモータ304によっても制御され得る。接触アプリケータ301の剛性/硬さは標的植物に応じて変動し得る。接触アプリケータ301は、振動される標的植物部分が厚い/硬い/大きい/振動させるのが困難である場合には剛性を示し得、植物部分が小さいかまたは柔らかい場合には可撓性を示し得る。
【0056】
振動要素302は常時振動してもよく、または、アプリケータの保持要素上に配置された近接センサまたはフォースゲージ(図示せず)からの信号に応じて制御器305により動作されてもよい。振動の振幅および周波数も、制御器305を通して振動要素を制御することにより変化され得る。
【0057】
図4a~図4cには、本発明に係る、植物の少なくとも1部分に処理を施すための植物処理デバイス103cのさらに他の非限定的な事例が示されている。特に植物処理デバイス103cは、指向性を有しかつ局所的な流体および/または物質を植物の少なくとも1部分に送達するよう構成されかつ動作可能である。したがって処理デバイス103cは物質を吐出するための処理流路と関連付けられ、いくつかの実施形態では処理流路は流体流路である。処理デバイス103cは、その特徴のうちのいくつかにおいて、図2で説明した処理デバイス103aと類似している。処理デバイス103cは図2の処理デバイスの全要素を有することに加えて、追加的な流体槽401を含む。槽401はバルブ403を通してチューブ205に接続する。これらのチューブ205は制御ライン212を通して制御器211により制御される。槽401はコネクタ401aを通して充填され得る。
【0058】
植物の1部分に流体を送達するために、バルブ403は、圧搾空気がタンク202から流れること、および、流体が槽401から流れること、の両方が可能となるよう、作動される。空気および流体の混合物がバルブ206を開放することによりチューブ205を通って流体流アプリケータ/アパーチャ203に一緒に送達される。いくつかの実施形態では、槽401は粉体を含み得、この粉体は流体の場合と同様に植物の1部分に送達される。
【0059】
流体送達処理デバイス103cの他の非限定的な実施形態が図4bに示されている。この実施形態では、タンク202からの圧搾空気がチューブ404を通して槽401内の流体を圧縮するために使用される。圧力は、制御器211により動作される圧縮器201により制御される。槽401内の加圧流体は、制御ライン212を通して制御器211により制御されるバルブ403を通って植物に送達される。槽401は、コネクタ401aを通して圧搾空気を接続することによっても加圧され得る。
【0060】
図4aおよび図4bに記載の両方の非限定的な実施形態は、2つ以上の槽を含むよう拡張可能である。係る実施形態の1例が、3つの槽401d~401fを用いて図4cにおいて説明されている。この実施形態では、処理デバイスは、制御ライン212を通して制御器211によりバルブ403のタイミングを制御することにより、例えば3種類の流体を植物に、別個の流体としてまたは混合物として、送達することが可能である。同様に、1つの槽401fは、異なる流体/物質を加える操作間に配管205、バルブ403ならび206、調節器208、および流体アプリケータ203を洗い流す洗浄液を含み得る。
【0061】
図5には、図2および図4において示されたアプリケータ/アパーチャ203の非限定的な事例が示されており、ここではアプリケータ/アパーチャ203は調整可能な開口部501をその遠位先端部において有する。図5には、アパーチャ203がその架台204に示されている。なおここでは、配管205がバルブ206を通して接続されている。調整可能な開口部501が制御ライン502を通して制御器211に接続されている。図4a~図4cで記載の流体送達のためのシステムとともに使用されたとき、調整可能な開口部のサイズは、流体の種類に応じて変化されることが可能である。例えば流体の粘性が高い場合、開口部501は大きいサイズを有し得る。開口部のサイズは、流体の適用を調整するために、指向性の噴霧とエアロゾルとの間で変化されることが可能である。図2に記載の空気流デバイスとともに使用されるとき、開口部のサイズは、開口部のサイズが小さい場合の指向性状態から、開口部のサイズが大きい場合の発散状態に、空気流パターンを変化させるために変化し得る。開口部のサイズは、振動されるべき植物の部分の種類、アプリケータ203からの当該部分までの距離に応じて、または振動の振幅を制御するために流速を変化させるために、変化されることが可能である。振動が植物の大きい部分上に誘導されるか、または距離が大きい場合、または振動の振幅が大きい場合、開口部サイズは、空気流を増大するために、拡大される必要がある。振動されるべき植物の部分が近接しているかまたは小さい場合、誘導される振動は穏やかであるべきであり、開口部サイズは減少され得る。一般に開口部のサイズは、特に処理デバイスがバッテリーで動作する場合、または、圧搾空気が処理デバイスの貯蔵槽から送達される場合、空気流を最少化し、かつ、エネルギーを保存するために、最小に保たれるべきである。
【0062】
図6には、植物上の少なくとも1つの花に花粉を送達するための植物処理デバイス103dの非限定的な事例が説明されている。処理デバイス103dは図3において示されている処理デバイスに類似するが、ここではブラシまたはパッド601がアプリケータ301の遠位先端部に配置されている。ブラシまたはパッドは植物上の花と接触させられる。ブラシ/パッド601上に事前装填された花粉(例えばブラシ/パッドを花粉槽に浸漬することにより)は、振動要素302を振動させることにより、ブラシを花の雌性器官に当接させて振動させることにより、花の雌性器官に送達される。振動起動、持続時間、周波数、および振幅が制御器305により制御される。
【0063】
図7a~図7cには、植物の1部分を損傷するために使用され得る授粉抑制植物処理デバイス103eの非限定的な事例が説明されている。図7aにおいて示される一実施形態では、処理デバイスは、ビームを要求される方向に向けることが可能である架台204に接続する保持器703上に配置された、レーザ702およびアプリケータ701を含む。レーザ702およびアプリケータ701を通してレーザビームが植物の部分に向かって誘導される。レーザビームはパルス化され得、長いパルスを、または短いピコ秒もしくはフェムト秒のパルスを有し、多様な波長(例えばIR、可視、またはUVスペクトル)を有し得る。
【0064】
図7bにおいて示される他の実施形態では、送風機706により作られ、かつ、流体流アプリケータ/アパーチャ705により植物に向かって誘導される、高温指向性空気ストリームが植物の部分に向かって送風される。高温空気に指向性を与えそれにより植物の周囲部分に対する損傷が最少化されるためには、アプリケータ/アパーチャ705の開口部のサイズは小さすぎてはならない(1~3mmのオーダー)。
【0065】
図7cにおいて示されるさらに他の実施形態では、図2において示される植物処理デバイスの遠位先端部は、加熱器707およびアプリケータ/アパーチャ708を有するよう構成されている。空気はチューブ205およびバルブ206を通して供給され、加熱器707を用いて加熱された後、アプリケータ/アパーチャ708を通して植物に誘導される。全構成要素は架台204上に配置される。
【0066】
図8には、本発明に係る植物処理デバイスおよび検知システムを有する植物処理装置の非限定的な事例が説明されている。図2図4、および図7に記載の植物処理デバイスの近位先端部が架台204上に配置されている。この架台は図8に記載のように固定支柱801上に配置され得る。架台204は、処理されるべき植物の部分に対してアプリケータ/アパーチャ203を指向させるために、2つの角自由度を有し得る。検知システム104の2つの光センサを形成する撮像装置803が架台204上でアパーチャ203の近傍に配置され得る。撮像装置803は、アパーチャに対して固定されたオフセット816で配置されている。このオフセットは、並進のみのオフセット(すなわち同一の方向に向けられつつ、ずれている)であってもよく、または、角度オフセット814を有してもよい。撮像装置803の見通し線812が、アパーチャ203の指向方向811に対して平行である場合、オフセットは平行方向のみである。検知システムの他の光センサを形成する他の撮像装置804が支柱801上に配置されてもよい。この撮像装置804はオフセット817を有するようアパーチャ203に対してオフセットされる。角度815はアパーチャ203の指向方向811と撮像装置804の見通し線813との間の角度である。角度815は架台204の位置に依存する。これらの撮像装置のうちの一方または両方は、処理されるべき植物の部分に対してアパーチャ203を指向させるために使用され得る。両方の撮像装置はデータライン806を通して制御器211に画像データを送り得る。制御器211は、処理されるべき植物の部分の位置および距離を判定し、次いで制御ライン802を通して架台204の位置を制御することにより植物の標的部分に対してアパーチャ203を指向させ得る。架台204の位置は1つの撮像装置または両方を使用して判定され得る。アパーチャ203および撮像装置803のオフセットのようにアパーチャおよび撮像装置のオフセットが固定されており、このオフセットが制御器211に既知である場合、アパーチャ203の指向は、標的される植物の部分に対するオフセットを用いて撮像装置803を指向させることによりなされ得る。アパーチャ203および撮像装置804の場合におけるようにオフセットが調整可能である場合、標的までの距離は、撮像装置804により提供された画像データの画像分析により測定可能であり、制御器211は既知の並進オフセット817を用いることにより植物の標的部分に対して正確にアパーチャを指向させることが可能である。この場合には距離に関する追加的なデータが要求されるが、この利点は、アパーチャからのオフセットが大きい状態で配置された撮像装置が、アパーチャの近位に配置された撮像装置に対しては不可視である標的を見ることが可能であるという点である。2つ以上の撮像装置は、秘匿された標的の問題を克服可能であり、または、標的を見失う可能性を少なくとも減少させることが可能である。加えて、互いからのオフセットが存在する状態で配置された2つ以上の撮像装置からの画像データを立体的に分析すると、標的までの距離を判定することが可能である。
【0067】
図9には、図3に記載の処理デバイス103bを取り付けることの事例が示されている。上述のように、処理デバイス103bは接触を通して植物の1部分に対して振動を誘導するよう構成されかつ動作可能である。処理デバイス103bは、接触アプリケータ301、その振動要素302、モータ304、制御器305、および架台303を含む。架台は処理デバイスをマニピュレータアーム901に接続する。マニピュレータアーム901は、この具体例では、接合部902で接続され、かつ、他の接合部として機能する架台303も有する、2つのアーム区域901aおよび901bを含む。アーム901は基部903上に配置されており、基部903も他の接合部として機能し得る。
【0068】
アーム区域の個数ならびに長さ、接合部、およびそれらのそれぞれの自由度により決定されるアームの長さおよび自由度は、植物の最高部分および最低部分を含むがこれらに限定されない、処理されるよう計画された植物の要求されるすべての部分に接触により到達することが可能となるよう構成されるべきである。加えて、マニピュレータアームの全リーチは、異なるアプローチ角度から植物の部分に到達する(例えば、下方から葉に到達する、または一方または両方の側面から茎に到達する)ことが可能となるよう構成され得る。このように構成される目的の両方は、異なるアプローチ角度で植物の部分に接触し、アプローチの際に他の植物の部分に損傷が加えられることを防止すること、または、1つまたは複数の撮像装置を有する遠位端部を構成する際に多様な角度から植物の部分を撮像することを可能にすること、である。
【0069】
図9においても示されているように、洗浄装置911は、アプリケータ301または植物に接触する処理デバイスの任意の他の部分(例えば図6に記載のブラシ/パッド601など)を洗浄/消毒/滅菌するよう意図される。洗浄装置911は、高温空気912を送風する高温空気送風機として、または、任意の他の要求される物質912(液体、エアロゾル、または噴霧であり得る)をアプリケータ301に対して送達するための吐出器/噴霧器として、構成され得る。洗浄装置911は、マニピュレータアーム901が、洗浄装置911により適用される洗浄剤により到達されるように、アプリケータ301を既知の固定位置に配置することが可能となるよう、アーム901とともに同一の基部904上に配置され得る。他の選択肢は、マニピュレータアーム901が、アプリケータ301または植物処理デバイス(単数または複数)の任意の他の植物接触部分を、これを洗浄/消毒/滅菌するために、タンク914内部に浸漬することが可能となるよう、洗浄/消毒/滅菌物質を含むタンク914を基部904上に固定位置に配置することである。洗浄のタイミングは、植物処理デバイス/装置により実行される動作の完了にしたがって、または、例えば経過した時間により、または、環境状態により、または、動作の際に、農業地域において知られる、もしくは検知システムにより検出された、病気および/または有害生物により、ユーザにより、または制御システムにより自動的に、制御され得る。
【0070】
図10には、本発明にしたがって構成された植物処理装置102aの非限定的な事例が示されている。この植物処理装置は、複数の植物処理デバイスと、検知システムと、を含む。この事例では、接触を通して振動を誘導するための1つの植物処理デバイス103bと、空気流を通して振動を誘導するための1つの植物処理デバイス103aと、が示されており、これらの両方が同一の支柱801上に取り付けられている。支柱801は、図9に記載され、かつ、静止型または可動型であり得る、基部903上に配置されている。以前の図面に記載の処理デバイスの任意の組み合わせが支柱801上に一緒に配置され得ることに留意すべきである。検知システムは、光センサ(撮像装置803)と、1組の環境センサ1020(温度センサ1020a、湿度センサ1020b、および光/雰囲気センサ1020c)と、を含む。これらのセンサは、処理されるべき植物の周囲エリアにおける環境状態を検出し得る。
【0071】
図10においても示されているように、植物処理装置102aは、植物の少なくとも1部分の近傍に植物処理装置を近接させ、それにより、植物処理システムにより植物の少なくとも1部分を処理することが可能となるよう構成されかつ動作可能であるナビゲーションおよび追跡組立体1000を含む。ナビゲーションおよび追跡組立体は、処理されるべき植物の近傍に処理装置を搬送することが可能である可動プラットフォーム1001(例えば地上車両)を含む。車両1001は、車両1001のボディー内にあるモータにより駆動される、ホイール1002を有するロボット車両であり得る。ロボット車両は、ナビゲーションおよび追跡センサを使用して自律的に植物にアプローチすることが可能である。例えば、ロボット車両は、必要に応じて、前方および側方における撮影センサ1014と、レーダ(MWベースまたはレーザーベース)1015と、他の周辺センサと、が装備され得る。
【0072】
ロボット車両1001の動きは、専用の処理ユニット1016により、および/または、制御システム107により、制御され得る。処理ユニット1016は、ワイヤレス通信、慣性モーメントユニット、およびGPSを含み得る。なお、これらの構成要素はそれぞれのアンテナ1018を有する。処理ユニット1016は、農耕エリア内の植物に沿って車両1001を案内するためにカメラ、センサ、慣性モーメントユニット、およびGPSからデータを収集する。処理ユニットは、ホイール1002ならびに処理デバイスを動作させるモータを制御する。ワイヤレス通信は、農業地域のカバー領域を連係させるために他の車両と、または、中央コンピュータと、通信するために使用され得る。そのすべてが以前の図面に示され、部分的に図10にメシされている、処理装置の構成要素(すなわち、モータ、架台、バルブ、撮像センサ、マニピュレータアーム、圧縮器、および調節器)を制御するために、処理ユニット1016は制御器211と置き換えられることが可能であり、または制御器211は処理ユニット1016と置き換えられ得る。
【0073】
上述の構成要素のうちのいくつかの構成要素は明瞭化のために図10に示されていないが、以前の図面に記載のすべての要素は、処理デバイス(単数または複数)を支持するために車両1001上に配置され得る。
【0074】
図11には、車両1001により搬送される処理装置の他の可能な非限定的な設定が示されている。1つまたは複数の処理デバイスおよび所望による検知システムのセンサを担持する2つの支柱801aおよび801bは両側の植物を同時にまたは交代的に(車両を反転させる必要なしに)処理するために車両の両側に配置されている。図示のように、異なる処理デバイスが、例えば、異なる高さにある植物の2つ以上の部分を同時に処理するために、同一の支柱上に配置され得る。マニピュレータアームが支柱(図示せず)上に配置されている場合、このような配置は、要求するアーム延長を短縮化させ、それにより、遠位先端部配置確度を向上させ、アーム接合部を回転させるにあたり必要なモータ強度、サイズ、およびコストを低減化させるよう機能する。非接触式の振動誘導処理デバイスが通常は2自由度で移動し、接触式の処理デバイスが通常は少なくとも3自由度を要求し(実際には、植物の他の部分を回避すること、ならびに、植物の部分に対して特定の角度にデバイスを配置することが必要であり、茎であり得る植物の部分が例えばランダムな後方/位置を有し得るため、アプリケータを植物の部分と接触状態に配置するためには、より大きい自由度が要求され得る)、それによりシステムが複雑化されることが注目されるべきである。
【0075】
各担持車両上に2つ以上の支持支柱が、いくつかの植物を並列して処理するために、配置され得る。例えば、各側部上に1つの支柱(列の両側部の植物を処理するために)、および/または、3つ以上の連続的な植物を同時に処理するために、車両の各側部に2つ以上の支柱が、配置され得る。
【0076】
必要に応じて、植物処理装置/システムは、農業地域内を移動し、処理デバイス/装置を各植物へと搬送することが可能である、可動式システムであり得る。輸送/ナビゲーションシステムは、図10に示されるように車輪に基づくものであってもよく、または、農業地域内の植物列に沿って設けられたレールもしくは軌道に基づくものであってもよい。レールは、マーク付けが施された箇所を有し得、これらのマーク付け箇所は、各植物において停止するようシステムに信号を送り得る。レールは、地面上に配置されてもよく、または、空中に配置されてもよい。制御システム、GPSなどの位置特定装置、および周辺カメラと協働して、植物処理装置/システムは、同一の部分/花に戻るため、または、すでに処理済みである場合にはそれらの処理を回避するために、植物を検出し、それらの位置を登録し、それらの処理を追跡することが可能である。
【0077】
図12には、植物の処理される部分において振動パターンを誘導するために使用される係るパルスシーケンスの非限定的な事例が示されている。このグラフは、空気流アプリケータ/アパーチャ203から出る空気の時間(X軸)の関数としての圧力出力(Y軸)を示す。図示される実例は、時間間隔T3を有する2つのパルス列(S1およびS2)を含む。なお各パルス列は、持続時間T1の3つのパルス、および、間隙T2を有する。振動パターンは、各パルス列間に異なる時間間隔(T3)を有する1つまたは複数のパルス列を含み得る。各パルス列は、特定範囲の持続時間(T1)および間隙(T2)を有する。例えば一実施形態では、3つの列(S1、S2、S3)が存在し得る。これら列の間にはT3=0.5秒の時間間隔が存在し、各列はT2=0.1秒の間隙を有する3つのパルスを有し、各パルスはT1=0.1秒間持続する。
【0078】
花粉を放出するための花の振動は、空気圧バーストにより誘導され得る。これは、授粉を誘導するための、花(単数または複数)および/または全般的な花房もしくは花序の振動の非接触式の誘導/生成である。非接触式の授粉は、病気およびウイルスが伝達する機会を低減させ、不適切な接触により植物に損傷が生じる可能性を低減させる。送風機などの非指向性の空気流とは対照的に、本発明はいくつかの利点を提供する。送風機はより大きいエネルギーを消費し、パルス化されていない。したがって、振動周波数を制御することは不可能であり、圧力の正確な調整は不可能である。空気流が大きく、流れが指向性を有さず、局所化されないため、送風機は、病気、ウイルス、および有害生物を拡散させる可能性を増大させてしまう。
【0079】
空気の量、バースト回数、持続時間、および花に対する角度は、ユーザにより定義されたパラメータにより、または、例えば視認による、もしくは、処理ユニットにおいて適用されるアルゴリズムによる、花の種類の自動化された検出後の事前定義されたパラメータにより、授粉される農作物と合致すべきである。
【0080】
空気パルス列は以下の特性を有するべきである。すなわち、1)十分な植物の処理を可能にするために、パルス列全体は数秒を越えてはならない。2)パルス長さおよびパルス間の距離/間隙は、要求される範囲の周波数および振幅/強度における花の振動を可能にするべきである。3)タンク内のエネルギーおよび/または圧力を保存するために、パルス圧力および空気流速は最小に維持されるべきである。4)アパーチャ径/開口部は、空気が発散して花に到達しないため、小さすぎてはならず、空気が早く使い尽くされるため、大きすぎてはならない。空気をアパーチャに放出するバルブは、パルス列の形状を保存するため、および、アパーチャから出る前にパルスが拡がることがないよう、アパーチャから離れすぎてはならない。流動パラメータは、花および/または植物部分を損傷することがないためにも、最適化されるべきである。
【0081】
図11において示される植物処理システム/装置は植物を授粉するためにも使用され得る。図示のシステムを使用することにより植物の自家受粉する花序を授粉するための1つの可能な非限定的な方法は、以下を含み得る:
1.上述の方法により植物に対して車両1001を近接させるステップ、
2.撮像装置803を用いて植物を閲覧するステップ、
3.処理ユニット1016または制御システム107により画像を分析し、閲覧された植物の部分上の少なくとも1つの花が授粉に対して準備ができた状態にあるかどうかを判定するステップ(このステップは、a)前述の画像データと、1つまたは複数の花の授粉状態を示す発達段階または成長期を示す基準データ(例えば、授粉に対して準備ができた状態にある花の画像を有するデータセット)と、を比較することにより、または、b)授粉の存在または不在を示す花パラメータ(例えば花(単数または複数)の1つまたは複数の部分の色および形状など)を特定することにより、画像(単数または複数)における花の存在、および授粉に対して準備ができた状態にあることを特定するために画像データを分析することにより、または、c)訓練された人工知能技術(システムおよび/または方法)を利用することにより、により実行され得る)、
4.図8に対して上記で説明したように架台204を制御することにより、アパーチャ203からのそれぞれのオフセットを考慮して撮像装置803および/または804により見られた画像にしたがって流体/空気ストリーム811の軸/線を調整することにより、植物の要求される部分に対して指向させるためにアプリケータ/アパーチャ203の位置を調整するステップ、
5.撮像装置により閲覧される振動される植物の部分にしたがって、または、植物の部分に対して、および/または、植物の部分までの距離、および/または他のパラメータに応じて事前定義された値にしたがって、振動パラメータ(圧力、パルスの個数および振幅、各パルス幅、パルス間の間隙)を設定するステップ、
6.植物の部分を制御可能に振動させるために空気パルス列を放出するステップ。
【0082】
上記の授粉方法に加えて、空気パルス列が送達された後、撮像装置/カメラは花の振動を検出することが可能である。期待された振幅および/または周波数が満足されない場合、振動パターンは、振動の量、周波数、および振幅を変化させるために、調節器を制御することにより圧力が増減され得るか、パルス列においてパルス幅およびパルス間の時間間隔が変化され得るか、または、パルス列におけるパルス数またはパルス列数、のうちの1つにおいて調整され得る。パルス方向も変化され得る。いくつかのの花序を一緒に振動させる目的で、および、すべての花を一緒に振動させるために、主要な花序軸(花軸)または植物のより大きい茎に向かって指向させることに代わって、パルスは個々の花に向かって誘導され得る。
【0083】
剪定に対する必要性を防止するために、植物処理システムは、授粉される正確な植物を事前定義し、アルゴリズムを集中させ、その標的の検出を改善する他に、各植物内の各花序または全体において授粉されるべき花の量を決定するために、操作員との通信(ワイヤレス通信またはシステムに対する直接的接続による)を含み得る。加えて、システムはシステム自体により植物を検出するようプログラムされ、授粉されるべきいくつかの花に対する事前決定されたパラメータを有し得る。
【0084】
植物処理システム/装置は、後に参照するためおよび農業従事者に対する報告のために、各訪問された植物の正確な位置およびその花の状態を(1組のカメラから)記録するために、GPSまたは視覚的合図を使用し得る。本装置は、温室内に配置された標識/マーク(例えば、植物または列毎のバーコード標識)も利用し得る。カメラは、ハイパースペクトルまたは任意の種類のカメラ(例えばIR)であり得、視認性および検出の能力を向上させるために、多様な波長における追加的な照明を有し得る。
【0085】
上述のように、植物処理システムは、温度、湿度、および光センサ(図10、1020a~1020c)が装備されるか、または、農業地域内に配置されたセンサと通信し、それにより、(授粉される農作物を自動的に検出した後に)各農作物に対して事前定義されたパラメータにしたがって、もしくは、ユーザの定義による設定にしたがって、植物処理(例えば授粉)を開始するかもしくは停止するかどうかを自動的に判定してもよい。
【0086】
植物処理システム/装置が、植物の周囲に関する環境データを提供する環境センサが装備されている場合、環境データに基づいて花序を授粉するための方法は、
1.農業地域から環境データを収集するステップと、
2.状態が、振動により誘導される授粉に適合する場合、システムは空気パルスを利用する処理デバイス(単数または複数)を使用し得るステップと、
3.状態が、係る振動により誘起される授粉に適合しない場合、植物微環境が事前調整され得るステップと、
3a.状態の乾燥度が過剰に高い場合、空気は、図4aに記載の植物処理デバイス(1つの貯蔵槽が水を含み得る)により加湿され得るステップと、
3b.状態の湿度が過剰に高い場合、相対湿度は、処理される植物の部分に対して加えられる空気を、(図7cにおいて説明されているように)加熱要素を用いることにより、加熱することにより、低下され得るステップと、
4.状態が、振動による花粉の放出を許可せず、事前調整する構成要素が利用可能でないが、花粉が雌性器官に付着可能である場合、花粉は、図4a~図4cにおいて記載の処理デバイス(1つの貯蔵槽が花粉を含む)により局所的にかつ指向性を有する状態で加えられ、および/または、花粉は、図6において記載の接触式の振動処理デバイスにより投与され得る、ステップと、
5.花粉が雌性器官に付着することを状態が許可しない場合、例えば図4a~図4cに記載の処理デバイスが、単為結実性の果物の成長を誘導するために花に対して植物ホルモンを噴霧するために使用され得るステップと、を含み得る。花における雌性器官の正確な位置を打撃することが必要であるため、局所的かつ指向性を有する状態で植物ホルモンを投与することは、きわめて重要であり、それにより、節約目的のため、および、大量のホルモンは植物を損傷し得るため、その両方の目的のために、量が低減される。
【0087】
植物処理システムは花を選択的に授粉することが可能である。1組の撮像装置からの視覚的合図、またはカメラとGPSもしくは他の方法による位置判定との組み合わせにより、このシステムは、各植物上の花を特定し、各花が授粉に対して準備ができた状態にあるか、またはすでに授粉されたかどうかを判定し、特定の花序上で事前定義された個数の花がすでに授粉されたかどうかを判定するであろう。次に、このシステムは特定の花を授粉するかどうかを判定するであろう。授粉方法に応じて、このシステムは授粉されるべき花のみを標的とするであろう。授粉装置が図3におけるように振動を利用する場合、選択的授粉は、振動装置を花の近傍に配置し、隣接する花が授粉されないよう振動振幅を設定することにより、実行され得る。花が集団化されている場合、振動は、集団内のすべての花の状態を視覚的に判定することにより正しい個数の花が授粉に対して準備ができた状態にあるときに、時間指定され得る。同一のことが、空気圧方法(図4)および上述の花粉またはホルモン噴霧方法に関して、実行され得る。この方法は可逆的である。すなわち、異なる個数の花が授粉されなければならないとき、装置は植物に戻り、追加的な花を授粉し得る。
【0088】
図3に記載の植物処理装置の一実施形態では、振動要素は、花粉を雌性器官に放出するにあたり振動を要求する自家受粉性の花を授粉するために使用され得る。振動振幅および周波数は、視認および処理ユニット内のアルゴリズムにより花を自動的に検出した後、ユーザによる定義にしたがって、または事前定義されたパラメータにより、変化され得る。振動要素の配置は、授粉される農作物にも合致しなければならない。車両上の、および/または植物処理デバイスを保持する延長アーム/支柱上の、およびデバイスの先端部上の、1組のカメラは、振動要素を正確な配置位置(例えば、各花の基部、花序の花軸、またはいくつかの花序を保持する枝など)に配置するよう、システムを案内するであろう。
【0089】
花を授粉するための植物処理装置の他の実施形態は、マニピュレータアーム(図6)の遠位先端部上に配置されたブラシと、振動先端部301と、に基づき得る。マニピュレータアームは、ブラシ上に花粉を配置するために、花粉槽にまたは農地内の場所に、車両上のブラシを案内し得る。次に、ブラシは、振動先端部と同様に、ブラシを花の雌性器官に対して近接配置し、雌性器官に対してブラシを優しく擦りつける(振動により)ことにより、花を授粉するために案内され得る。
【0090】
図7を再び参照すると、授粉抑制装置のいくつかの事例が説明されている。係る授粉抑制装置を、単体でまたは上述の他の装置とともに、図10および図11に記載のように車両上に配置することにより、植物の部分が意図的に損傷され得る。例えば、撮像装置に近接配置されたレーザにより、ひとたび要求される個数の花が授粉されると、後に授粉されることを防止するために、残余の花は意図的に損傷され得る。植物に応じて、授粉を抑制するために損傷されるべき部分は異なり得る。例えば、自家受粉性の花は雄性器官または雌性器官を損傷することにより抑制され得る。
【0091】
図13には、係る授粉抑制システムの非限定的な事例が示されている。植物1300の部分が示されている。レーザ702は、空気流アプリケータ/アパーチャ203に対して近接配置され、レーザ702および空気流アプリケータ/アパーチャ203の両方は架台204により指向される。レーザは個々の花1302~1305に対して、または花軸1301に沿った位置に対して、指向されてもよい。それにより、地点1306を越える花の全部(すなわち花1304および1305)が損傷され、追加的な花が花軸上で発達することが防止されるであろう。これにより、剪定に対する必要性が排除される。なぜなら、授粉が、風および昆虫により、または農地要員による植物の移動により、自発的にまたは自然に、発生するためである。同様に、損傷は、高温空気(上記の加熱機構から発せられる。なお高温空気は、システムの撮像装置および/または環境センサにより検出された植物、花、花の状態、および/または環境状態の種類に対して事前定義され得、処理ユニット1016または制御システム107により分析され得る温度に設定される)により、または、損傷物質をタンク内に配置し、近接範囲から花に向かって他の花を損傷することなく正確に噴霧することにより、なされ得る。このことは、図4に記載の指向性を有する状態で局所的に物質/流体を送達するための装置を必要とする。指向性を有しかつ局所的な物質の送達と、指向性を有しかつ局所的な高温空気の送達と、両方は、物質の量の制御または高温空気ストリームの熱の制御と併せると、周囲の花、植物の部分、または周囲の植物に対する損傷を最少化することが可能である。同様に、植物の周囲部分に対する損傷を防止するために、レーザエネルギーは花の種類、花、花の状態、および/または環境状態に応じた事前定義された値に最少化され得るとともに、花の器官および花序の花軸が数ミリメートルのオーダーにあるために標的上のレーザスポットサイズは数ミリメートル以下に設定され得る(標的される正確な花序に応じて)。
【0092】
複数のカメラが様々な架台および支柱上に存在する状態で、各植物は、近接した状態で多くの角度および高さから閲覧されることが可能である。このことにより有害生または病気を検出することが可能となる。上述のタンク401(図4a~図4cにおいて示される)は他の処理物質(例えば害虫駆除剤)を含み得る。局所的かつ効率的に有害生物、病気、菌類、その他を処理する目的のために、空気圧力機構が係る処理物質を噴霧するために使用され得る。このシステムは、発見およびその処理についてユーザに通知し得る。後に訪問した際、システムは各植物の位置を登録しているため、問題がすでに解決されたことを保証するために、病気または有害生物の状態が更新され得る。システムが図4cにおいて説明されているものと同じである(すなわち、いくつかのタンクからなる)場合、いくつかの物質が同一の車両上に配置され得、検出されたいくつかの病気または有害生物が処理され得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12
図13