(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】大口径準広角撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20231227BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2020012462
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】菅野 靖之
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-101880(JP,A)
【文献】特開2004-020898(JP,A)
【文献】特開2013-125213(JP,A)
【文献】特開2011-180226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口絞りに対して物体側に配し、かつ物体側から負,正,正,負のパワーを有するレンズを配した第1部分対称レンズ群,及びこの第1部分対称レンズ群の前後の一方側に付加した一枚のレンズを含む五枚のレンズにより構成した第1レンズ群と、前記開口絞りに対して像側に配し、かつ物体側から負,正,正,負のパワーを有するレンズを配した第2部分対称レンズ群,及びこの第2部分対称レンズ群の前後の一方側に付加した一枚のレンズを含む五枚のレンズにより構成した第2レンズ群とを備える撮像光学系を有する大口径準広角撮像レンズにおいて、前記第1レンズ群の五枚のレンズのパワー配置と前記第2レンズ群の五枚のレンズのパワー配置を同じに設定し、かつ前記第1部分対称レンズ群の連続する二枚の正レンズ間の第1空気空間,開口絞りを配した中間空気空間,前記第2部分対称レンズ群の連続する二枚の正レンズ間の第2空気空間,の少なくとも一つの空気空間を、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として機能させるとともに、FナンバがF1.1乃至F1.5を満たし、かつ無限物体距離時に、〔全系焦点距離/Fナンバ〕をED1,及び最も物体側のレンズにおける物体側の面から像面までの光軸上の距離をTLとしたとき、
2.0<〔TL/ED1〕<5.1 …(条件式1)
の条件を満たすとともに、前記第1部分対称レンズ群の像側に一枚の正レンズを付加して前記第1レンズ群を構成し、かつ前記第2部分対称レンズ群の像側に一枚の正レンズを付加して前記第2レンズ群を構成し、最も物体側のレンズの物体側の面から開口絞りまでの光軸上の距離をTL1,及び開口絞りから最も像側のレンズの像側の面までの光軸上の距離をTL2としたとき、
0.5<〔TL1/TL2〕<2.0 …(条件式2)
の条件を満たし、かつ全系焦点距離をAFL,及び前記第1レンズ群の焦点距離をFL1としたとき、
0.35<〔AFL/FL1〕<1.20 …(条件式3)
の条件を満たすことを特徴とする大口径準広角撮像レンズ。
【請求項2】
前記第1空気空間,前記中間空気空間,前記第2空気空間,のいずれか一つの空気空間を、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として機能させることを特徴とする請求項1記載の大口径準広角撮像レンズ。
【請求項3】
前記第1レンズ群は、最も物体側に両凹レンズを配して構成することを特徴とする請求項1又は2記載の大口径準広角撮像レンズ。
【請求項4】
前記撮像光学系は、物体側に位置する負レンズと像側に位置する正レンズを接合した少なくとも一組の接合レンズを備えることを特徴とする請求項1-3のいずれかに記載の大口径準広角撮像レンズ。
【請求項5】
前記撮像光学系は、物体側から、両凹レンズ,両凸レンズ,両凸レンズ,両凹レンズにより構成した、前記第1部分対称レンズ群及び/又は前記第2部分対称レンズ群を備えることを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の大口径準広角撮像レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやビデオカメラなどの各種カメラ類に装着する交換レンズ等に用いて好適な大口径準広角撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等に使用する撮像素子は、より大型化及びより高画素化が進み、それ結え、撮像レンズに対しては、諸収差を良好かつ十分に補正可能にする、より高い光学性能が要求されているとともに、被写体の前景や後景のボケ(焦点像前後のボケ)を大きくするため、Fナンバが小さく、かつ短い撮影距離を可能にする撮像レンズも求められている。加えて、内部にリターンミラーの無いミラーレスタイプのカメラが出現することによりカメラ本体が小型化し、使用するレンズ(交換レンズ等)にも小型コンパクト化が求められている。
【0003】
従来、画角が56-70度,FナンバがF1.7より小さい広角レンズとしては、特許文献1に記載されるカメラ対物レンズ及び特許文献2に記載される大口径広角レンズが知られている。特許文献1のカメラ対物レンズは、像のエッジ領域における結像を改善することを目的としたものであり、具体的には、口径比が1:1.4,及び焦点距離が35mmとなり、かつ第1の構成要素,被写体側で凸状の複合レンズ要素としての第2の構成要素,絞りレンズ,単レンズとしての第3の構成要素,被写体側で凹状の複合レンズ要素としての第4の構成要素,第5の構成要素を備え、第1の構成要素が被写体側が凹状の複合レンズ要素であること、第5の構成要素が像側で凹状の複合レンズ要素であること、第2の構成要素と第5の構成要素の被写体側で凸状の面が非球面状であることを主たる構成としたものであり、特に、開口絞りよりも物体側に2組の接合レンズが配され、かつ開口絞りよりも像側に凸メニスカスの単レンズと2組の接合レンズが配されるとともに、開口絞りの前に位置する接合レンズと最後列に位置する接合レンズの各凸面が非球面に形成され、これにより、F1.4の明るさに対して諸収差が補正される。
【0004】
また、特許文献2の大口径広角レンズは、本出願人が既に提案した広角レンズである。この広角レンズは、レンズ径を大型化することなく、画角が60度以上、F1.4以下の大口径広角レンズの提供を目的としたものであり、具体的には、負レンズ,2組の接合レンズを配した第1レンズ群と、負レンズ,接合レンズ,正レンズ,負レンズを配した第2レンズ群とから構成し、接合レンズの正レンズの屈折率を1.7よりも大きくするとともに、負レンズと正レンズを非球面に形成し、さらに、広角レンズの焦点距離fと第1レンズ群の焦点距離f1との比が、0.4<f/f1<1.2を満たすように設定したものである。この場合、最も物体側と絞りの像側が非球面の負レンズとなり、レンズ径の大型化が抑えられるとともに、無限物体及びF1.2の明るさに対する諸収差が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-80252号公報
【文献】特開2004-101880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した画角条件及びFナンバ条件を満たす従来の広角レンズは、次のような解決すべき課題も存在した。
【0007】
即ち、準広角の撮影画角を有する撮像レンズ、即ち、F1.7よりも明るく、かつ近距離撮影までの十分な光学性能を確保する撮像レンズを実現する場合、上述した従来の広角レンズでは、近距離撮影時に悪化する諸収差を十分に抑制することができない難点があった。特に、F1.1-F1.5のFナンバを満たすとともに、併せて、撮影倍率が0.1倍程度となる近距離撮影を可能にする撮像レンズを得る場合、諸収差に対する良好な補正を行うことが容易でないため、十分な光学性能を有する大口径準広角撮像レンズを実現する観点からは更なる改善すべき課題が存在した。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した大口径準広角撮像レンズの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、開口絞りSTOに対して物体OBJ側に配し、かつ物体OBJ側から負,正,正,負のパワーを有するレンズL1,L2,L3,L4を配した第1部分対称レンズ群G1s,及びこの第1部分対称レンズ群G1sの前後の一方側に付加した一枚のレンズL5を含む五枚のレンズにより構成した第1レンズ群G1と、開口絞りSTOに対して像IMG側に配し、かつ物体OBJ側から負,正,正,負のパワーを有するレンズL6,L7,L8,L9を配した第2部分対称レンズ群G2s,及びこの第2部分対称レンズ群G2sの前後の一方側に付加した一枚のレンズL10を含む五枚のレンズにより構成した第2レンズ群G2とを備える撮像光学系GAを有する大口径準広角撮像レンズCを構成するに際して、第1レンズ群G1の五枚のレンズのパワー配置と第2レンズ群G2の五枚のレンズのパワー配置を同じに設定し、かつ第1部分対称レンズ群G1sの連続する二枚の正レンズL2とL3間の第1空気空間S1,開口絞りSTOを配した中間空気空間Sm,第2部分対称レンズ群G2sの連続する二枚の正レンズL7とL8間の第2空気空間S2,の少なくとも一つの空気空間を、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として機能させるとともに、FナンバがF1.1乃至F1.5を満たし、かつ無限物体距離時に、〔全系焦点距離/Fナンバ〕をED1,及び最も物体OBJ側のレンズにおける物体OBJ側の面(i=1)から像IMG面までの光軸上の距離をTLとしたとき、2.0<〔TL/ED1〕<5.1の条件(条件式1)を満たすとともに、第1部分対称レンズ群の像側に一枚の正レンズを付加して前記第1レンズ群を構成し、かつ前記第2部分対称レンズ群の像側に一枚の正レンズを付加して前記第2レンズ群を構成し、最も物体側のレンズの物体側の面から開口絞りまでの光軸上の距離をTL1,及び開口絞りから最も像側のレンズの像側の面までの光軸上の距離をTL2としたとき、0.5<〔TL1/TL2〕<2.0の条件(条件式2)を満たし、かつ全系焦点距離をAFL,及び前記第1レンズ群の焦点距離をFL1としたとき、0.35<〔AFL/FL1〕<1.20の条件(条件式3)を満たすことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔は、第1空気空間S1,中間空気空間Sm,第2空気空間S2,のいずれか一つの空気空間S1,Sm又はS2を選定することができる。一方、第1レンズ群G1は、最も物体OBJ側に両凹レンズL5cを配して構成することができる。なお、撮像光学系GAには、物体OBJ側に位置する負レンズL2…と像IMG側に位置する正レンズL3…を接合した少なくとも一組の接合レンズEj…を設けることができる。
【0011】
また、発明の好適な態様により、撮像光学系GAには、物体OBJ側から、両凹レンズL1c(L6c),両凸レンズL2p(L7p),両凸レンズL3p(L8p),両凹レンズL4c(L9c)により構成した、第1部分対称レンズ群G1s及び/又は第2部分対称レンズ群G2sを設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る大口径準広角撮像レンズCによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 第1レンズ群G1の五枚のレンズのパワー配置と第2レンズ群G2の五枚のレンズのパワー配置を同じに設定し、かつ第1部分対称レンズ群G1sの連続する二枚の正レンズL2とL3間の第1空気空間S1,開口絞りSTOを配した中間空気空間Sm,第2部分対称レンズ群G2sの連続する二枚の正レンズL7とL8間の第2空気空間S2,の少なくとも一つの空気空間を、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として機能させるとともに、FナンバがF1.1乃至F1.5を満たし、かつ無限物体距離時に、〔全系焦点距離/Fナンバ〕をED1,及び最も物体OBJ側のレンズにおける物体OBJ側の面(i=1)から像IMG面までの光軸上の距離をTLとしたとき、条件式1を満たすように構成したため、Fナンバの小さい範囲における必要な像距離を確保し、近距離撮影を可能にするとともに、諸収差に対する適切かつ容易な補正可能にして良好な収差特性を得ることができる。これにより、十分な光学性能を確保し、かつ小型コンパクト化を図ることができる大口径の準広角撮像レンズを実現することができる。
【0014】
(2) 撮像光学系GAを構成するに際し、第1部分対称レンズ群G1sの像IMG側に一枚の正レンズL5を付加して第1レンズ群G1を構成するとともに、第2部分対称レンズ群G2sの像IMG側に一枚の正レンズL10を付加して第2レンズ群G2を構成し、条件式2及び条件式3を満たすように構成したため、第1レンズ群G1のパワーを適度に確保できるとともに、第2レンズ群G2の最も像IMG側に位置する正レンズL10とこの正レンズL10に対向する負レンズL9により空気レンズを形成可能になる。これにより、Fナンバを小さくし、かつ良好な収差(コマ収差)を確保しつつレンズの大口径化を容易に行うことができる。加えて、第2レンズ群G2のレンズ径を小径化し、かつ全長を短くできるため、小型コンパクト化にも寄与できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として、第1空気空間S1,中間空気空間Sm,第2空気空間S2,のいずれか一つの空気空間S1,Sm又はS2を選定すれば、可変間隔は、最小限の一つの空気空間S1,Sm又はS2で済むため、レンズ群移動機構の簡易化及び単純化により全体の小型コンパクト化及びコストダウンに寄与できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、第1レンズ群G1を構成するに際し、最も物体OBJ側に両凹レンズL5cを配して構成すれば、画角が大きくなることに伴う軸外収差に対する適切な補正を容易に行うことができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、撮像光学系GAに、物体OBJ側に位置する負レンズL2…と像IMG側に位置する正レンズL3…を接合した少なくとも一組の接合レンズEj…を設ければ、アッベ数に差をつけることにより軸外色収差を補正できるとともに、屈折率に差をつけることにより球面収差の捕正を強化できるため、第2レンズ群G2により第1レンズ群G1の残存収差量に対する良好な補正及びバランスを図ることができる。特に、部分対称レンズ群G1s,G2sによりその効果が大きくなる。
【0018】
(6) 好適な態様により、撮像光学系GAに、物体OBJ側から、両凹レンズL1c(L6c),両凸レンズL2p(L7p),両凸レンズL3p(L8p),両凹レンズL4c(L9c)により構成した、第1部分対称レンズ群G1s及び/又は第2部分対称レンズ群G2sを設ければ、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2にそれぞれ配した第1部分対称レンズ群G1sと第2部分対称レンズ群G2sを相互に異ならせることが可能になるため、第2レンズ群G2において、第1レンズ群G1の残存収差を容易に補正できるとともに、全系内における相互間収差を良好にバランスさせることができる。しかも、対称性の高い部分対称レンズ群G1s,G2sを構築可能になるため、部分対称レンズ群G1s,G2sの内部,又は部分対称レンズ群G1s,G2s同士の収差打消し効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の好適実施形態に関連する参考例1に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図2】本発明に係る好適実施形態に関連する参考例1-4及び好適実施形態に係る実施例1-3における光学条件の一覧表、
【
図3】同参考例1に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【
図4】同参考例2に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図5】同参考例2に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【
図6】同参考例3に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図7】同参考例3に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【
図8】同参考例4に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図9】同参考例4に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【
図10】同参考例4に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの他の縦収差図、
【
図11】同好適実施形態の実施例1に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図12】同実施例1に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【
図13】同好適実施形態の実施例2に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図14】同実施例2に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【
図15】同好適実施形態の実施例3に係る大口径準広角撮像レンズの構成図、
【
図16】同実施例3に係る大口径準広角撮像レンズの撮影倍率をパラメータとしたときの縦収差図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
最初に、大口径準広角撮像レンズCの基本的な構成について、
図1(参考例1を兼用)を参照して説明する。
【0022】
この大口径準広角撮像レンズCは、デジタルカメラ用交換レンズに適用することを想定できる。
図1中、OBJは物体(被写体)を示し、IMGは像(撮像素子)を示している。したがって、物体OBJ側が光軸Dc方向の前方となり、像IMG側が光軸Dc方向の後方となる。
【0023】
大口径準広角撮像レンズCは、
図1に示すように、開口絞りSTOに対して物体OBJ側に配した第1レンズ群G1を備えるとともに、開口絞りSTOに対して像IMG側に配した第2レンズ群G2を備える。
【0024】
第1レンズ群G1は、物体OBJ側から(負)-(正)-(正)-(負)のパワーを有するレンズ、即ち、負レンズL1,正レンズL2,正レンズL3,負レンズL4を配した第1部分対称レンズ群G1sを備えるとともに、この第1部分対称レンズ群G1sの前後の一方側に一枚のレンズL5を付加した合計五枚のレンズにより構成する。また、第2レンズ群G2は、物体OBJ側から(負)-(正)-(正)-(負)のパワーを有するレンズ、即ち、負レンズL6,正レンズL7,正レンズL8,負レンズL9を配した第2部分対称レンズ群G2sを備えるとともに、この第2部分対称レンズ群G2sの前後の一方側に一枚のレンズL10を付加した合計五枚のレンズにより構成する。
図1は、第1部分対称レンズ群G1sの前方側にレンズL5を付加した例を示すとともに、第2部分対称レンズ群G2sの前方側にレンズL10を付加した例を示している。
【0025】
この場合、第1レンズ群G1の五枚のレンズのパワー配置と第2レンズ群G2の五枚のレンズのパワー配置は同じに設定する。即ち、各レンズの形態は異なるもパワー配置を同じに設定する意味であり、第1レンズ群G1の最も物体OBJ側のレンズから5番目までのレンズのパワー配置と第2レンズ群G2の最も開口絞りSTO側のレンズから5番目までのレンズのパワー配置は同じになる。開口絞りSTO及びこの開口絞りSTOの前後両側に配した第1レンズ群G1と第2レンズ群G2により撮像光学系GAが構成され、大口径準広角撮像レンズCの基本構成はこの撮像光学系GAにより構成される。
【0026】
ところで、撮像光学系GAにおいて、準広角領域の画角を確保する場合、最も物体OBJ側に、負レンズL5(又はL1)を配置するとともに、非球面レンズを取り入れることが望ましい。これにより、画角が広がり軸外収差の補正に有利になる。
【0027】
いわゆるレトロフォーカスタイプの広角レンズでは、通常、両面が物体OBJ側に湾曲する負メニスカスレンズを使用する。負メニスカスレンズは、光軸から離れた位置における広い撮影角度の軸外光束を、次のレンズに対して有利に収斂させることができるため、広い画角を確保することを目的として様々な広角系レンズに用いられている。
【0028】
しかし、物体OBJ側に湾曲する負メニスカスレンズを使用した場合、像IMG側に続く次のレンズとの間に形成される空気空間が広くなるため、物体OBJ側のレンズ径が大きくなるとともに、全長も長くなる傾向がある。したがって、比較的撮影画角の狭い広角レンズでは、最も物体OBJ側に位置する負レンズの物体OBJ側の面を凹面形成したり、両凹レンズを用いている。これにより、負メニスカスレンズよりも強い負のパワーを得れるため、レンズ全長や前玉径を小さくすることが可能になり、レンズの小型コンパクト化を図ることができる。特に、準広角系の大口径レンズでは、軸上光束(入射瞳径)が大きくなるため、この方式が有利となる。なお、通常、レンズ配置は、負レンズと正レンズ,又はその逆に並べることにより収差補正を有利に行うことができるが、上述のように、負のパワーの強いレンズが必要な場合、その相手となる正レンズも正のパワーを強くし、パワーをバランスさせる必要がある。
【0029】
さらに、撮像光学系では、全系自体のパワーを正にして結像させるため、正レンズの使い方も重要になる。正レンズのパワーを強くする場合、曲面の曲率半径が小さくなるため、加工が困難になるとともに、レンズ面に入出射する光線角度の急峻性により誤差変動も大きくなる等の不都合が生じる。特に、両凸レンズは、強い正パワーを得れるが、曲率半径が小さい場合、コバ(縁)厚を確保するため、レンズ厚を大きくする必要がある。
【0030】
なお、強い正パワーを必要としても、高屈折率ガラスだけでは捕えない場合、レンズ面の曲率半径を小さくする必要があるが、それでも目的のパワーを得られない場合、二枚の正レンズを連続使用し、パワーを分担させることができる。これにより、光線が通過するレンズ面への光線角度を小さくできため、収差発生及び誤差感度を抑制することができる。この際、一方のレンズに高屈折率レンズを用いることによりパワーを負担させれば、加工しやす形状にできるため、収差補正も効果的に行うことができる。
【0031】
大口径準広角撮像レンズCでは、部分的に対称性のあるレンズ群、即ち、第1部分対称レンズ群G1s及び第2部分対称レンズ群G2sを用いるため、レンズ群内における収差発生と補正をバランスさせた光束として射光させる場合に有利になる。特に、開口絞りSTOの前後に配する第1レンズ群G1と第2レンズ群G2のそれぞれに部分対称レンズ群G1sと部分対称レンズ群G2sを含ませているため、光学系全休において、相互の収差バランスを良好に保つことができる。撮像光学系GAでは、物体OBJまでの空間距離と像IMGまでの空間距離が対称ではなく、完全対称のレンズ構成では良好な収差補正を行うことができないため、第1レンズ群G1では、大きな物体OBJからの光線を収束できるように、収斂作用を強くさせている。
【0032】
また、開口絞りSTOに対して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の対称配置,及び部分対称レンズ群G1s及び部分対称レンズ群G2s内における対称配置は、各群内において収差を打ち消す効果を高めることができるため、軸上収差・軸外収差の補正に有利になり、物体OBJに対する距離変化による収差の変動を少なくすることができる。軸外収差を補正するため、正レンズと負レンズを用いた特性の異なるレンズ構成とすれば、収差の補正を容易に行なうことができる。
【0033】
さらに、開口絞りSTOの前後に、四枚のレンズにより、(負)-(正)-(正)-(負)のパワー配置を有する部分対称レンズ群G1s,G2sを配置し、対称性を確保するとともに、その前側又は後側に負又は正のパワーを有する一枚のレンズを付加することにより、部分対称レンズ群G1s,G2sのパワーを分担させ、バランスを取ることにより、収差補正の強化を図っている。
【0034】
一方、大口径準広角撮像レンズCは、第1部分対称レンズ群G1sの連続する二枚の正レンズL2とL3間の第1空気空間S1,開口絞りSTOを配した中間空気空間Sm,第2部分対称レンズ群G2sの連続する二枚の正レンズL7とL8間の第2空気空間S2,の少なくとも一つの空気空間、望ましくは、いずれか一つの空気空間S1,Sm又はS2を、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として機能させる。
図1は、中間空気空間Smをフォーカス調整の可変間隔として機能させる場合を示し、矢印Fma,Fmbは、第1レンズ群G1及び/又は第2レンズ群G2を中間空気空間Smに対して移動可能であることを示している。
【0035】
図1中、第1レンズ群G1において、最も物体OBJ側に位置するレンズL5,二番目に位置する負レンズL1及び三番目に位置する正レンズL2の三枚を第一前レンズ群G1fとし、物体OBJ側から四番目に位置する正レンズL3及び五番目に位置する負レンズL4の二枚を第一後レンズ群G1rとすれば、第一前レンズ群G1fと第一後レンズ群G1r間をフォーカス調整の可変間隔として機能させる第1空気空間S1となり、他方、
図1中、第2レンズ群G2において、最も開口絞りSTO側に位置するレンズL10,二番目に位置する負レンズL6及び三番目に位置する正レンズL7の三枚を第二前レンズ群G2fとし、開口絞りSTO側から四番目に位置する正レンズL8及び五番目に位置する負レンズL9の二枚を第二後レンズ群G2rとすれば、第二前レンズ群G2fと第二後レンズ群G2r間をフォーカス調整の可変間隔として機能させる第2空気空間S2となる。
【0036】
この場合、部分対称レンズ群G1s,G2sのパワー配置自体や全系における開口絞りSTOに対する対称性を持たせれば、撮影距離が遠点から近点に変わったとき、即ち、レンズ全体を物体OBJ側に移動させる際に発生する収差を、二つのフォーカス移動群(
図1の場合、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2)を異なる間隔を持たせて移動させることにより、発生する収差をキャンセルできる。例えば、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の場合、第2レンズ群G2の移動量が第1レンズ群G1の移動量よりも多ければ、近距離撮影距離になるに従って、二つのレンズ群G1とG2の間隔が狭くなり、逆の場合は広くなる。
【0037】
撮像光学系GAでは、物体OBJまでの距離を変化させて撮影を行うため、光学系の対称性を、少し変形(空気空間を変化)させながら撮像性能を保持している。この際、物体OBJまでの距離変化による収差変動を少なくするため、開口絞りSTOの前後の空気空間Smを変化させる場合、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の一方又は両方を移動させることにより第1レンズ群G1の結像位置(無限遠からの移動量)を少なくして像性能を保持する。このため、対称性のある光学系では対称点の前後において収差を打ち消す効果があることを利用し、例示では、開口絞りSTOの空気空間Sm,第1レンズ群G1における二枚の両凸レンズL2pとL3pの間の空気空間S1,第2レンズ群G2における二枚の両凸レンズL7pとL8pの間の空気空間S2により区切られる第1レンズ群G1と第2レンズ群G2を主に移動させている。
【0038】
即ち、空気空間S1に対して物体OBJ側を第1前レンズ群G1fとし、空気空間S1と開口絞りSTO間を第1後レンズ群G1rとし、開口絞りSTOと空気空間S2間を第2前レンズ群G2fとし、空気空間S2に対して像IMG側を第2後レンズ群G2rとし、各レンズ群のパワー分配と収差補正をバランスさせている。そして、三つの空気空間S1,Sm,S2の少なくとも一つを、フォーカス時の可変間隔として変化しやすいように構成し、物点(被写体)が無限から近距離に移動する際、この可変間隔に対して、一方に位置する前側のレンズ群と他方に位置する後側のレンズ群を移動させることにより、ピント調整を可能にしている。したがって、フォーカス時の可変間隔として使用する空気空間は、三つの空気空間S1,Sm,S2の全てを使用してもよいし、いずれか一つ又は任意の二つを選択して使用してもよい。
【0039】
フォーカス時の可変間隔となる空気空間S1,Sm,S2は、第1部分対称レンズ群G1s,開口絞りSTO前後のレンズ群G1とG2,第2部分対称レンズ群G2sのそれぞれの対称点になっているため、対称配置タイプのレンズ構成における、前後のレンズ群により収差を打ち消すメリットを利用でき、柔軟にフォーカス調整機構を構築することができる。
【0040】
したがって、フォーカス調整時に変化する空気空間S1,Sm,S2により、この前後で移動可能なレンズ群は、最大で四つのレンズ群G1f,G1r,G2f,G2rの組合わせとなる。この場合、いずれか一つの空気空間S1,Sm又はS2を選定すれば、可変間隔は最小限の一つの空気空間S1,Sm又はS2で済むため、レンズ群移動機構の簡易化及び単純化により、全体の小型コンパクト化及びコストダウンに寄与できる。これに対して、可変間隔に使用する空気空間S1,Sm,S2の数を増やせば、増えるに従って、レンズ鏡筒におけるフォーカス調整機構が複雑になり、コストアップや径方向の大径化を招き、小型コンパクト化を図れないとともに、重量も大きくなる。
【0041】
このため、比較的収差の変動が少ない概ね0.1倍までの撮影倍率では、三つのフォーカス可変間隔S1,Sm,S2のいずれか一つを選択し、これにより分離される前後二つのレンズ群、例示では、参考例4を除く他の参考例及び実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2を光軸Dc上で移動させている。これに対して、収差の変動が大きくなる概ね0.1倍以上の撮影倍率では、三つのフォーカス可変間隔S1,Sm,S2の全て、或いは任意の二つ以上を選択し、これらにより分離される前後のレンズ群G1f,G1r…を移動させ、収差の補正効果を高めることにより収差変動を少なくした。実施例4は、概ね0.1倍までの撮影倍率では一つの空気空間S2をフォーカス調整時の可変間隔として使用し、概ね0.1倍以上の撮影倍率では、それに伴う収差変動を少なくするため、二つの空気空間S1とS2をフォーカス調整時の可変間隔として使用した。
【0042】
他方、FナンバがF1.1乃至F1.5の範囲を満たすことを条件に、無限物体距離時において、
2.0<〔TL/ED1〕<5.1 … (条件式1)
の条件を満たすように設定する。この場合、TLは、最も物体OBJ側のレンズにおける物体OBJ側の面(i=1)から像IMG面までの光軸上の距離、ED1は、(全系焦点距離/Fナンバ)である。
【0043】
条件式1は、F1.1乃至F1.5のFナンバにより決定する軸上光束径と全長の範囲となる。したがって、条件式1において、〔TL/ED1〕の大きさが「2.0」を下回れば、大口径の大きな光束は、第1レンズ群G1により収斂された場合でも光線角度が鋭くなるため、収差発生を抑えられなくなるとともに、必要な像距離を確保できなくなる。一方、〔TL/ED1〕の大きさが「5.1」を超えれば、レンズ全長が長くなるため、小型コンパクト化を図れなくなる。
【0044】
このように、大口径準広角撮像レンズCは、基本的な構成として、開口絞りSTOに対して物体OBJ側に配し、かつ物体OBJ側から負,正,正,負のパワーを有するレンズL1,L2,L3,L4を配した第1部分対称レンズ群G1s,及びこの第1部分対称レンズ群G1sの前後の一方側に付加した一枚のレンズL5を含む五枚のレンズにより構成した第1レンズ群G1と、開口絞りSTOに対して像IMG側に配し、かつ物体OBJ側から負,正,正,負のパワーを有するレンズL6,L7,L8,L9を配した第2部分対称レンズ群G2s,及びこの第2部分対称レンズ群G2sの前後の一方側に付加した一枚のレンズL10を含む五枚のレンズにより構成した第2レンズ群G2とを備える撮像光学系GAを有する大口径準広角撮像レンズCを構成するに際し、第1レンズ群G1の五枚のレンズのパワー配置と第2レンズ群G2の五枚のレンズのパワー配置を同じに設定し、かつ第1部分対称レンズ群G1sの連続する二枚の正レンズL2とL3間の第1空気空間S1,開口絞りSTOを配した中間空気空間Sm,第2部分対称レンズ群G2sの連続する二枚の正レンズL7とL8間の第2空気空間S2,の少なくとも一つの空気空間を、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として機能させるとともに、FナンバがF1.1乃至F1.5を満たし、かつ無限物体距離時に、条件式1を満たすように構成したため、Fナンバの小さい範囲における必要な像距離を確保し、近距離撮影を可能にするとともに、諸収差に対する適切かつ容易な補正可能にして良好な収差特性を得ることができる。これにより、十分な光学性能を確保し、かつ小型コンパクト化を図ることができる大口径の準広角撮像レンズを実現することができる。
【0045】
次に、本実施形態に関連する参考例1-4及び本実施形態に係る実施例1-3について、
図1-
図15を参照して説明する。
【0046】
参考例1-4は、F1.2前後の準広角となる大口径準広角撮像レンズCを示すとともに、実施例1-3は、F1.4前後の準広角となる大口径準広角撮像レンズCを示す。
【0047】
参考例1-4は、第1レンズ群G1の正パワーが強く、開口絞りSTOに近い位置が結像位置になる。このため、第1前レンズ群G1fでは、二枚の負レンズL5,L1により、広画角の光束を収斂する機能を強化した。同時に、大口径レンズの軸上光線の最大光線と収斂された軸外光束の最外光線を同じにするため、正レンズL2,L3のパワーを強くすることによりバランスさせている。なお、第1後レンズ群G1rの正レンズL3のパワーは、パワーの分配及びバランスの観点から強く設定することが望ましい。また、第1レンズ群G1の像点は、開口絞りSTO側に近くなり、この像点が第2レンズ群G2の物点になるため、第2前レンズ群G2fにおける二枚の負レンズL10,L6により、第2前レンズ群G2fを通過した後の像点を遠くして第2後レンズ群G2rの結像位置を設定している。
【0048】
実施例1-3は、第1レンズ群G1の正パワーが比較的緩く、第1レンズ群G1の結像位置は開口絞りSTO側の遠い位置となる。即ち、第1前レンズ群G1fにより広画角な光束に対する収斂を一枚の負レンズL1に負担させるため、この負レンズL1に続く正レンズL2による像点は遠い位置になる。したがって、光線は、この像点が物点となる第1後レンズ群G1rに入射した後、それより近い位置が第1後レンズ群G1rの像点となる。また、第1レンズ群G1の像点が第2レンズ群G2の物点となるため、第2前レンズ群G2fによる像点位置をより近くして第2後レンズ群2Grの結像位置を設定している。さらに、第2レンズ群G2の第2部分対称レンズ群G2sは、(負)-(正)-(正)-(負)の四枚のレンズ構成とし、特に、(負)-(正),及び(正)-(負)の二組の接合レンズEj,Ejによる対象配置とした。これにより、アッベ数に差をつけて軸外色収差補正や、屈折率に差をつけて球面収差捕正を強化できるため、開口絞りSTOの前におけるレンズ群の残存収差量を、開口絞りSTOの後におけるレンズ群により補正し、バランスさせる効果も生じる。
【0049】
したがって、大口径準広角撮像レンズCは、大きく分けて四つのレンズ群、即ち、大口径の軸上光束と広画角の軸外光束を収斂させる第1前レンズ群Glf,開口絞りSTOの光軸上に主光線を通すとともに、第1レンズ群G1に対して適切なパワーバランスを与える第1後レンズ群Glr,全系のパワーと像位置を決定する軸上と軸外の収差補正を行う第2前レンズ群G2f,軸外光束を適切な位置と高さに結像させるとともに、最終的な収差補正を行う第2後レンズ群G2rを備えている。
【0050】
そして、無限物点から近距離側へのフォーカス時において、各レンズ群Glf,Glr,G2f,G2rのパワーバランスが適切な値となるように設定し、第1前レンズ群Glfと第1後レンズ群Glr間の空気空間S1,第1後レンズ群Glrと第2前レンズ群G2f間、即ち、開口絞りSTOの空気空間Sm,第2前レンズ群G2fと第2後レンズ群G2r間の空気空間S2の三つの空気空間S1,Sm,S2の内の一つを可変させ、その前後を二つのフォーカスレンズ移動群、即ち、前移動群と後移動群とし、前移動群の像点範囲を、後移動群の物点として、結像面である像面に対して、二つの移動群が異なる移動量により移動しつつ収差量を一定に保てるようにした。
【0051】
以上より、開口絞りSTOの前後に部分対称レンズ群G1s,G2sをそれぞれ配置し、四枚のレンズ構成による(負)-(正)-(正)-(負)の対称性を確保しつつ、各部分対称レンズ群G1s,G2sの前後に一枚のレンズを追加、即ち、参考例1-4では、物体OBJ側に負パワーのレンズを付加することにより(負)-(負)-(正)-(正)-(負)のパワー配置となる構成を例示するとともに、実施例1-3では、像IMG側に正パワーのレンズを付加することにより(負)-(正)-(正)-(負)-(正)のパワー配置となる構成を例示する。
【0052】
以下、参考例1-4及び実施例1-3について、
図1-
図15及び表1-表7を参照して具体的に説明する。
【参考例1】
【0053】
まず、参考例1に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図1-
図3及び表1を参照して説明する。
【0054】
図1は、参考例1に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。参考例1は、撮像光学系GAを備え、この撮像光学系GAは、物体OBJ側から、第1レンズ群G1,開口絞りSTO,第2レンズ群G2を配して構成する。開口絞りSTOに対して、物体OBJ側の第1レンズ群G1は、最も物体OBJ側に位置する一枚のレンズL5と、開口絞りSTO側に配する四枚のレンズにより構成した第1部分対称レンズ群G1sを備える。
【0055】
レンズL5には、単体レンズによる両凹レンズL5cを用いる。第1レンズ群G1における最も物体OBJ側のレンズに、両凹レンズL5cを用いれば、画角が大きくなることに伴う軸外収差に対する適切な補正を容易に行うことができる。また、第1部分対称レンズ群G1sは、前後に位置する二組の接合レンズEj,Ejにより構成する。物体OBJ側の接合レンズEjは、物体OBJ側に位置する両凹レンズL1cを用いた負レンズL1と像IMG側(開口絞りSTO側)に位置する両凸レンズL2pを用いた正レンズL2の接合により構成するとともに、開口絞りSTO側の接合レンズEjは、物体OBJ側に位置する両凸レンズL3pを用いた正レンズL3と開口絞りSTO側に位置する両凹レンズL4cを用いた負レンズL4の接合により構成する。これにより、第1レンズ群G1は、(負)-(負)-(正)-(正)-(負)のパワーを有するレンズ構成となる。
【0056】
このように、物体OBJ側に位置する負レンズL2…と像IMG側に位置する正レンズL3…を接合した少なくとも一組の接合レンズEj…を設ければ、アッベ数に差をつけることにより軸外色収差を補正できるとともに、屈折率に差をつけることにより球面収差の捕正を強化できるため、第2レンズ群G2により第1レンズ群G1の残存収差量に対する良好な補正及びバランスを図ることができる。特に、部分対称レンズ群G1s,G2sによりその効果が大きくなる。
【0057】
一方、開口絞りSTOに対して、像IMG側の第2レンズ群G2は、最も物体OBJ側(開口絞りSTO側)に位置する一枚のレンズL10と、像IMG側に位置する四枚のレンズにより構成した第2部分対称レンズ群G2sを備える。
【0058】
レンズL10には、非球面を有する負メニスカスレンズL10cを用いる。また、第2部分対称レンズ群G2sは、開口絞りSTO側に配した接合レンズEj、即ち、開口絞りSTO側の両凹レンズL6cを用いた負レンズL6と像IMG側に位置する両凸レンズL7pを用いた正レンズL7の接合による接合レンズEjと、この正レンズL7に対して、像IMG側に配した単体レンズによる両凸レンズL8pを用いた正レンズL8と、この正レンズL8に対して、像IMG側に配した非球面を有する単体レンズによる両凹レンズL9cを用いた負レンズL9により構成する。これにより、第2レンズ群G2は、(負)-(負)-(正)-(正)-(負)のパワーを有するレンズ構成となる。
【0059】
この場合、非球面を有するレンズは、収差捕正力が強いため、レンズ中心と周辺において偏肉(厚みの差)が少なく、かつ小径のレンズを用いた方が加工容易性の観点から有利になる。特に、FナンバがF1.2クラスの大口径撮像レンズの場合、第1レンズ群G1のレンズ径は大きくなるが、第2レンズ群G2のレンズ径は撮像素子の対角方向の大きさに近くなるため、あまり変わらない。例示する参考例及び実施例においても、FナンバがF1.2レベルの方がF1.4レンズよりも第1レンズ群G1のレンズ径が大きくなるが、第2レンズ群G2のレンズ径は同程度のレンズ径となる。
【0060】
したがって、参考例1の撮像光学系GAは、第1レンズ群G1における五枚のレンズのパワー配置と第2レンズ群G2における五枚のレンズのパワー配置は同じになる。また、この場合、第1レンズ群G1に備える第1部分対称レンズ群G1sは、物体OBJ側から、両凹レンズL1c,両凸レンズL2p,両凸レンズL3p,両凹レンズL4cにより構成するとともに、第2レンズ群G2に備える第2部分対称レンズ群G2sは、物体OBJ側から、両凹レンズL6c,両凸レンズL7p,両凸レンズL8p,両凹レンズL9pにより構成する。
【0061】
このように、撮像光学系GAを構成するに際し、物体OBJ側から、両凹レンズL1c(L6c),両凸レンズL2p(L7p),両凸レンズL3p(L8p),両凹レンズL4c(L9c)により構成した、第1部分対称レンズ群G1s及び/又は第2部分対称レンズ群G2sを設ければ、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2にそれぞれ配した第1部分対称レンズ群G1sと第2部分対称レンズ群G2sを相互に異ならせることが可能になるため、第2レンズ群G2において、第1レンズ群G1の残存収差を容易に補正できるとともに、全系内における相互間収差を良好にバランスさせることができる。しかも、対称性の高い部分対称レンズ群G1s,G2sを構築可能になるため、部分対称レンズ群G1s,G2sの内部,又は部分対称レンズ群G1s,G2s同士の収差打消し効果をより高めることができる。
【0062】
さらに、第1レンズ群G1を構成するに際しては、最も物体OBJ側のレンズL5の物体OBJ側の面(i=1)から開口絞りSTOまでの光軸上の距離をTL1,及び開口絞りSTOから最も像IMG側のレンズL9の像IMG側の面(i=18)までの光軸上の距離をTL2としたとき、
0.5<〔TL1/TL2〕<2.0 … (条件式2)
の条件を満たすように設定する。
【0063】
この場合、第1前レンズ群G1fの全体のパワーは負に設定する。参考例1の構成では、第1レンズ群G1の物体OBJ側に、広角化の負レンズを二枚配置し、大口径の光束を収斂させる正レンズのパワーを強くしているため、第1レンズ群G1の長さは第2レンズ群G2よりも長くなる。なお、条件式2において、〔TL1/TL2〕の大きさが「0.5」を下回れば、収差の悪化を招くため、Fナンバを大きくしなければならず、大口径化が困難になる。他方、〔TL1/TL2〕の大きさが「2.0」を超えれば、大口径化のための収差補正を有利に行うことができるが、レンズ全長が長くなるため、小型コンパクト化の実現が困難になる。
【0064】
したがって、このような構成、即ち、第1部分対称レンズ群G1sの物体OBJ側に一枚の負レンズL5を付加して第1レンズ群G1を構成するとともに、第2部分対称レンズ群G2sの物体OBJ側に一枚の負レンズL10を付加して第2レンズ群G2を構成し、かつ第1レンズ群G1の全体のパワーを負に設定するとともに、条件式2を満たすように構成すれば、第1レンズ群G1の物体OBJ側に広角の負レンズを二枚配置し、大口径の光束を収斂させる正レンズのパワーを強くできるため、レンズ全体の小型コンパクト化を図れるとともに、Fナンバを小さくし、かつ良好な収差を確保して、レンズの大口径化を容易に行うことができる。
【0065】
また、参考例1は、単体レンズを第一エレメントEs,接合レンズ(Ej)を第二エレメントEjとしたとき、合計7つのエレメントEs…,Ej…により構成し、物体OBJ側から、負レンズを用いた第一エレメントEs,負レンズと正レンズの接合レンズを用いた第二エレメントEj,正レンズと負レンズの接合レンズを用いた第二エレメントEj,非球面レンズを用いた第一エレメントEs,負レンズと正レンズの接合レンズを用いた第二エレメントEj,正レンズを用いた第一エレメントEs,負レンズを用いた第一エレメントEsを備える。そして、このような合計七つのエレメントEs…,Ej…により構成することを前提に、接合レンズ(Ej)における正レンズの屈折率が1.7よりも大きい条件を満たし、かつ全系焦点距離をAFL,及び第1レンズ群G1の焦点距離をFL1としたとき、
0.35<〔AFL/FL1〕<1.20 … (条件式3)
の条件を満たすように設定する。
【0066】
この場合、三組の接合レンズ(第二エレメントEj…)に使用される各正レンズL2,L3,L7の屈折率が1.7よりも小さければ、非点収差及び像面湾曲の悪化を招くため、これらの補正が困難になる。なお、条件式3において、〔AFL/FL1〕が「1.20」を超えれば、第1レンズ群G1のパワーが全系に対して強くなるため、第1レンズ群G1のレンズ径が大径化し、これに伴って発生するコマ収差の補正が困難になるとともに、〔AFL/FL1〕が「0.35」を下回れば、第1レンズ群G1のパワーが弱くなるため、第2レンズ群G2のレンズ径が大型化し、カメラ本体への取付が困難になる。
【0067】
したがって、このような条件により構成すれば、非点収差及び像面湾曲の悪化を回避できるとともに、これらの補正も容易に行うことができる。しかも、全系に対する第1レンズ群G1の適切なパワーを確保できるため、第1レンズ群G1におけるレンズ径の小径化及びコマ収差の容易な補正を実現できるとともに、第2レンズ群G2におけるレンズ径の小型化及びカメラ本体への容易な取付けを実現できる。
【0068】
さらに、撮像光学系GAを構成するに際しては、第1レンズ群G1の全体のパワーを正に設定し、かつ第1レンズ群G1の第1空気空間S1から物体OBJ側のレンズによる全体のパワーを負に設定するとともに、第1空気空間S1から中間空気空間Smまでのレンズによる全体のパワーを正に設定し、全系焦点距離をAFL,第1レンズ群の焦点距離をFL1,及び第1空気空間から中間空気空間までのレンズによる焦点距離をFL1Bとしたとき、
0.8<〔FL1/AFL〕<1.8 … (条件式4)
0.8<〔FL1B/AFL〕<1.6 … (条件式5)
0.6<〔FL1B/FL1〕<1.5 … (条件式6)
0.4<〔│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)
-(FL1B/FL1)│〕<1.5
… (条件式7)
の全ての条件を満たすように設定する。
【0069】
撮像光学系GAは、広角化及び小型コンパクト化を図るため、第1前レンズ群G1fにおける物体OBJ側に配した二枚の負レンズL5,L1により、第1前レンズ群G1fによる像点位置を物体OBJ側に位置させることにより短くしているが、全系の収差やパワーを適切にバランスさせるには、ある程度の長さを確保することが望ましい。また、大口径化のための収差補正を有利にし、光学系の小型コンパクト化を確保するには、第1後レンズ群G1rのパワー及び第1レンズ群G全体のパワーを適正な範囲に設定する必要がある。
【0070】
このため、第1レンズ群G1の全体のパワーを正に設定し、かつ第1レンズ群G1の第1空気空間S1から物体OBJ側のレンズによる全体のパワーを負に設定するとともに、各条件式4-7を満たすように設定することにより、これら三つのパワーのバランスを確保する必要がある。したがって、これらの条件を満たさない場合には、全系において収差補正の不足、更には全長が長くなる不具合を招く。なお、第1前レンズ群G1fの最後面から物体OBJ側に対する第1前レンズ群G1fの像点位置は、全系の焦点距離AFL×(全系のFナンバ)の2乃至10倍の範囲に設定することが望ましい。
【0071】
これにより、第1空気空間S1から物体OBJ側のレンズによる像点位置を物体OBJ側の適切な位置に設定できるため、大口径化のための収差補正を有利にしてレンズ全体の小型コンパクト化を図ることができる。しかも、第1レンズ群G1の全体のパワー,第1レンズ群G1の第1空気空間S1から物体OBJ側のレンズによる全体のパワー及び第1空気空間S1から中間空気空間Smまでのレンズによる全体のパワーの適正な範囲を確保し、かつ各パワーのバランスを適正な範囲に設定できるため、全系における収差補正が不足になる不具合を回避できるとともに、レンズ全長を短くすることができる。
【0072】
他方、参考例1の場合には、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として中間空気空間Smを設定した。したがって、第1前レンズ群G1fと第1後レンズ群G1rを含む第1レンズ群G1,及び第2前レンズ群G2fと第2後レンズ群G2rを含む第2レンズ群Gは、それぞれ一体となって移動するフォーカス移動群として機能する。
【0073】
このように、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として、第1空気空間S1,中間空気空間Sm,第2空気空間S2,のいずれか一つの空気空間S1,Sm又はS2を選定すれば、可変間隔には最小限の一つの空気空間S1,Sm又はS2で済むため、レンズ群移動機構の簡易化及び単純化、更には全体の小型コンパクト化に寄与できる。
【0074】
表1に、参考例1の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:36.00mm,Fナンバ:1.24,半画角:31.25゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.105」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。この場合、撮影倍率の「0.000」は被写体が無限物点にあることを示す。なお、光学的な横倍率では、物体高に対して像高は倒置するので負の値となるが、この撮影倍率は、像高/(-物体高)として表した。
【0075】
【0076】
表1の「面データ」は、物体OBJ側から数えたレンズ面の面番号をiで示した。この面番号iは、
図1に示した一部の符号(一部の数字)に一致する。これに対応して、レンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、硝材の屈折率nd(i)、硝材のアッベ数νd(i)をそれぞれ示す。nd(i)及びνd(i)はd線(587.6〔nm〕)に対する数値である。軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚或いは空気空間を示す。また、FL(i)は、空気中に置いた単体レンズ(接合レンズは複数として扱う)の焦点距離を示す。曲率半径R(i),面間隔D(i),焦点距離FL(i)の単位は〔mm〕である。面番号のOBJは物体、STOは開口絞り、IMGは像の位置を示す。曲率半径R(i)のInfinityは平面であり、面番号iの後にAが付いた面は面形状が非球面であることを示す。屈折率nd(i)とアッベ数νd(i)の空欄は空気であることを示す。
【0077】
表1の「非球面係数」は、面の中心を原点とし、光軸Dc方向をZとした直交座標系(X,Y,Z)において、ASPを非球面の面番号としたとき、Zは数1により表される。数1において、Rは中心曲率半径、Kは円錐定数、A4,A6,A8,A10は、それぞれ4次,6次,8次,10次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。なお、表4において、「E」は「×10」を意味する。
【0078】
【0079】
表1の「フォーカス可変間隔」は、フォーカス調整を行う可変間隔を示す。なお、「撮影倍率」で同じ数値の場合は、その前後のレンズ群が光軸Dc上を同時に移動することを示す。
【0080】
表1及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは75.23mm,ED1は29.03mmとなる。したがって、TL/ED1=75.23/29.03=2.59となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は33.86mm,TL2は21.51mmとなる。したがって、TL1/TL2=33.86/21.51=1.57となるため、条件式2(1.0<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは36.00mm,FL1は40.00mmとなる。したがって、AFL/FL1=36.00/40.00=0.90となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。条件式4におけるAFLは36.00mm,FL1は40.00mmとなる。したがって、FL1/AFL=40.00/36.00=1.11となるため、条件式4(0.8<〔FL1/AFL〕<1.8)を満たす。条件式5におけるFL1Bは36.51mm,AFLは36.00mmとなる。したがって、FL1B/AFL=36.51/36.00=1.01となるため、条件式5(0.8<〔FL1B/AFL〕<1.6)を満たす。条件式6におけるFL1Bは36.51mm,FL1は40.00mmとなる。したがって、FL1B/FL1=36.51/40.00=0.91となるため、条件式6(0.6<〔FL1B/FL1〕<1.5)を満たす。条件式7におけるFL1は40.00mm,AFLは36.00mm,FL1Bは36.51mmとなる。したがって、│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│=│(40.00/36.00)-(36.51/36.00)-(36.51/40.00)│=│1.11-1.01-0.91│=0.81となるため、条件式7(0.4<〔│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│〕<1.5)を満たす。
【0081】
一方、
図3(a)及び(b)には、参考例1の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.105」)とした縦収差図を示す。各縦収差図は、左側から、球面収差(656.3nm,587.6nm,435.8nm)、非点収差(587.6nm)、歪曲収差(587.6nm)を示す。各スケールは、±0.50mm,±0.50mm,±3.0%である。
図3(a)及び(b)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.105」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、参考例1の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.24であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【参考例2】
【0082】
次に、参考例2に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図4,
図5,
図2及び表2を参照して説明する。
【0083】
図4は、参考例2に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。参考例2は、第2部分対称レンズ群G2sの前側に対して付加する負レンズL10の向きを、参考例1に対して反転させたものである。即ち、参考例1は、負レンズL10として物体OBJ側に湾曲した非球面を有する負メニスカスレンズL10cを使用したが、参考例2は、負レンズL10として像IMG側に湾曲した非球面を有する負メニスカスレンズL10cを使用したものである。
【0084】
この点を除いて他の構成は参考例1と同じである。このため、参考例2(
図4)の構成において、参考例1(
図1)と同一部分及び同一機能部分には、同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0085】
表2に、参考例2の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:36.00mm,Fナンバ:1.24,半画角:31.26゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.104」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。
【0086】
【0087】
表2及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは84.14mm,ED1は29.03mmとなる。したがって、TL/ED1=84.14/29.03=2.90となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は37.43mm,TL2は27.32mmとなる。したがって、TL1/TL2=37.43/27.32=1.37となるため、条件式2(0.5<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは36.00mm,FL1は40.00mmとなる。したがって、AFL/FL1=36.00/40.00=0.90となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。条件式4におけるAFLは36.00mm,FL1は40.00mmとなる。したがって、FL1/AFL=40.00/36.00=1.11となるため、条件式4(0.8<〔FL1/AFL〕<1.8)を満たす。条件式5におけるFL1Bは39.92mm,AFLは36.00mmとなる。したがって、FL1B/AFL=39.92/36.00=1.11となるため、条件式5(0.8<〔FL1B/AFL〕<1.6)を満たす。条件式6におけるFL1Bは39.92mm,FL1は40.00mmとなる。したがって、FL1B/FL1=39.92/40.00=1.00となるため、条件式6(0.6<〔FL1B/FL1〕<1.5)を満たす。条件式7におけるFL1は40.00mm,AFLは36.00mm,FL1Bは39.92mmとなる。したがって、│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│=│(40.00/36.00)-(39.92/36.00)-(39.92/40.00)│=│1.11-1.11-1.00│=1.00となるため、条件式7(0.4<〔│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│〕<1.5)を満たす。
【0088】
一方、
図5(a)及び(b)には、参考例2の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.104」)とした縦収差図を示す。
図5(a)及び(b)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.104」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、参考例2の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.24であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【参考例3】
【0089】
次に、参考例3に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図6,
図7,
図2及び表3を参照して説明する。
【0090】
図6は、参考例3に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。参考例3は、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として第1空気空間S1を選定したものであり、この点を除いて他の基本的構成は参考例2と同じである。
【0091】
即ち、前述した参考例2(参考例1)は、フォーカス調整を行う可変間隔として中間空気空間Smを選定し、第1前レンズ群G1f+第1後レンズ群G1rを一体にした前側の移動群と、第2前レンズ群G2f+第2後レンズ群G2rを一体にした後側の移動群を設定したものである。
【0092】
これに対して、参考例3は、フォーカス調整を行う可変間隔として第1空気空間S1を選定し、第1前レンズ群G1f、即ち、レンズL5,L1及びL2を一体にした前側の移動群と、第1後レンズ群G1r+第2前レンズ群G2f+第2後レンズ群G2r、即ち、レンズL3,L4,L10,L6,L7,L8及びL9を一体にした後側の移動群を設定した。
図6中、矢印Fma,Fmbは、第1空気空間S1に対して前側の移動群と後側の移動群を移動可能であることを示している。その他、参考例3(
図6)の構成において、参考例1(
図1)及び参考例2(
図4)と同一部分及び同一機能部分には、同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0093】
表3に、参考例3の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:31.06mm,Fナンバ:1.24,半画角:39.94゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.098」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。
【0094】
【0095】
表3及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは85.00mm,ED1は25.05mmとなる。したがって、TL/ED1=85.00/25.05=3.39となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は33.76mm,TL2は29.56mmとなる。したがって、TL1/TL2=33.76/29.56=1.14となるため、条件式2(0.5<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは31.06mm,FL1は46.46mmとなる。したがって、AFL/FL1=31.06/46.46=0.67となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。条件式4におけるAFLは31.06mm,FL1は46.46mmとなる。したがって、FL1/AFL=46.46/31.06=1.50となるため、条件式4(0.8<〔FL1/AFL〕<1.8)を満たす。条件式5におけるFL1Bは39.65mm,AFLは31.06mmとなる。したがって、FL1B/AFL=39.65/31.06=1.28となるため、条件式5(0.8<〔FL1B/AFL〕<1.6)を満たす。条件式6におけるFL1Bは39.65mm,FL1は46.46mmとなる。したがって、FL1B/FL1=39.65/46.46=0.85となるため、条件式6(0.6<〔FL1B/FL1〕<1.5)を満たす。条件式7におけるFL1は46.46mm,AFLは31.06mm,FL1Bは39.65mmとなる。したがって、│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│=│(46.46/31.06)-(39.65/31.06)-(39.65/46.46)│=│1.50-1.28-0.85│=0.63となるため、条件式7(0.4<〔│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│〕<1.5)を満たす。
【0096】
一方、
図7(a)及び(b)には、参考例3の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.098」)とした縦収差図を示す。
図7(a)及び(b)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.098」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、参考例3の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.24であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【参考例4】
【0097】
次に、参考例4に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図8-
図10,
図2及び表4を参照して説明する。
【0098】
図8は、参考例4に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。参考例4は、撮影距離が無限から近距離に移動する際のフォーカス調整を行う可変間隔として、二つの空気空間S1(ZD5)とS2(ZD14)をフォーカス調整時の可変間隔として使用したものである。参考例4は、二つの態様を例示する。
【0099】
即ち、概ね0.1倍までの撮影倍率では一つの空気空間S2(ZD14)をフォーカス調整を行う可変間隔として選定し、移動させるレンズ群として、第1前レンズ群G1f+第1後レンズ群G1r+第2前レンズ群G2f、即ち、レンズL5,L1,L2,L3,L4,L10,L6及びL7を一体にした前側の移動群と、第2後レンズ群G2r、即ち、レンズL8及びL9を一体にした後側の移動群を設定した。
【0100】
一方、概ね0.1倍以上の撮影倍率では、それに伴う収差変動を少なくするため、二つの空気空間S1(ZD5)とS2(ZD14)をフォーカス調整を行う可変間隔として選定し、移動させるレンズ群として、第1前レンズ群G1f、即ち、レンズL5,L1,L2を一体とした前側の移動群と、第1後レンズ群G1r+第2前レンズ群G2f、即ち、
L3,L4,L10,L6及びL7を一体にした中間の移動群と、第2後レンズ群G2r、即ち、レンズL8及びL9を一体にした後側の移動群を設定した。
【0101】
これらの点を除いて他の基本的構成は参考例2と同じである。このように、フォーカス調整を行う可変間隔としては、比較的収差の変動が少ない概ね0.1倍までの撮影倍率では、三つのフォーカス可変間隔S1,Sm,S2のいずれか一つを選択し、これにより分離される前後二つのレンズ群、即ち、参考例4を除く他の参考例のように、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2を光軸Dc上で移動させればよい。これに対して、収差の変動が大きくなる概ね0.1倍以上の撮影倍率では、三つのフォーカス可変間隔S1,Sm,S2の全てを使用し、或いは任意の二つ以上を選択し、これらにより分離される前後のレンズ群G1f,G1r…を移動させればよい。これにより、収差の補正効果を高めることにより収差変動を少なくすることができる。
【0102】
図8中、矢印Fma,Fmb,Fmcは、第1空気空間S1,第2空気空間S2に対して前後の移動群を移動可能であることを示している。その他、参考例4(
図8)の構成において、参考例1(
図1)及び参考例2(
図4)と同一部分及び同一機能部分には、同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0103】
表4に、参考例4の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:36.00mm,Fナンバ:1.24,半画角:31.25゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.104」,「0.149」,「0.197」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。
【0104】
【0105】
表4及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは85.00mm,ED1は29.03mmとなる。したがって、TL/ED1=85.00/29.03=2.93となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は36.41mm,TL2は26.62mmとなる。したがって、TL1/TL2=36.41/26.62=1.37となるため、条件式2(0.5<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは36.00mm,FL1は39.62mmとなる。したがって、AFL/FL1=36.00/39.62=0.91となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。条件式4におけるAFLは36.00mm,FL1は39.62mmとなる。したがって、FL1/AFL=39.62/36.00=1.10となるため、条件式4(0.8<〔FL1/AFL〕<1.8)を満たす。条件式5におけるFL1Bは42.00mm,AFLは36.00mmとなる。したがって、FL1B/AFL=42.00/36.00=1.17となるため、条件式5(0.8<〔FL1B/AFL〕<1.6)を満たす。条件式6におけるFL1Bは42.00mm,FL1は39.62mmとなる。したがって、FL1B/FL1=42.00/39.62=1.06となるため、条件式6(0.6<〔FL1B/FL1〕<1.5)を満たす。条件式7におけるFL1は39.62mm,AFLは36.00mm,FL1Bは42.00mmとなる。したがって、│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│=│(39.62/36.00)-(39.92/36.00)-(39.92/40.00)│=│1.10-1.17-1.06│=1.13となるため、条件式7(0.4<〔│(FL1/AFL)-(FL1B/AFL)-(FL1B/FL1)│〕<1.5)を満たす。
【0106】
一方、
図9(a)及び
図10(b)-(d)には、参考例4の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.104」,「0.149」,「0.197」)とした縦収差図を示す。
図9(a)及び
図10(b)-(d)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.104」,「0.149」,「0.197」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、参考例4の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.24であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【実施例1】
【0107】
次に、実施例1に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図11,
図12,
図2及び表5を参照して説明する。
【0108】
図10は、実施例1に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。実施例1は、撮像光学系GAを構成するに際し、第1部分対称レンズ群G1sと第2部分対称レンズ群G2sの基本的な構成は、参考例1と同じに構成するが、第1部分対称レンズ群G1sと第2部分対称レンズ群G2sのそれぞれに対して一枚のレンズを付加するに際し、第1部分対称レンズ群G1sの像IMG側に一枚の正レンズL5を付加して第1レンズ群G1を構成するとともに、第2部分対称レンズ群G2sの像IMG側に一枚の正レンズL10を付加して第2レンズ群G2を構成したものである。
【0109】
この場合、正レンズL5には、物体OBJ側に湾曲した非球面を有する正メニスカスレンズL5pを用いるとともに、正レンズL10には非球面を有する両凸レンズL10pを用いた。また、実施例1では、第2部分対称レンズ群G2sを構成するに際し、正レンズL8と負レンズL9は両者を接合した接合レンズEjにより構成した。
【0110】
そして、前述した条件式2、即ち、最も物体OBJ側のレンズL1の物体OBJ側の面(i=1)から開口絞りSTOまでの光軸上の距離をTL1,及び開口絞りSTOから最も像IMG側のレンズの像IMG側の面(i=17)までの光軸上の距離をTL2としたとき、0.5<〔TL1/TL2〕<2.0を満たし、かつ全系焦点距離をAFL,及び前記第1レンズ群の焦点距離をFL1としたとき、
【0111】
0.35<〔AFL/FL1〕<1.20 … (条件式3)
の条件を満たすように構成した。
【0112】
条件式3において、〔AFL/FL1〕が「0.35」を下回る場合には、収差の悪化を回避するため、Fナンバを大きくする必要があり、大口径化の実現が困難になる。一方、〔AFL/FL1〕が「1.20」を超える場合には、大口径化を図るための収差補正を有利に行うことができるもののレンズ全長が長くなり、小型コンパクト化を図れない。また、第1レンズ群G1のパワーが条件式3の「1.20」を超える場合には、第1レンズ群G1のパワーが全系に対して強くなるため、第1レンズ群G1のレンズ径が大型化し、これに伴って発生するコマ収差の補正が困難になる。一方、「0.35」を下回る場合には、第1レンズ群G1のパワーが弱くなるため、第2レンズ群G2のレンズ径が大径化し、カメラ本体への取付けが困難になる。
【0113】
したがって、このような条件を満たすように構成すれば、第1レンズ群G1のパワーを適度に確保できるとともに、第2レンズ群G2の最も像IMG側に位置する正レンズL10とこの正レンズL10に対向する負レンズL9により空気レンズを形成可能になるため、Fナンバを小さくし、かつ良好な収差(コマ収差)を確保しつつレンズの大口径化を容易に行うことができる。加えて、第2レンズ群G2のレンズ径を小径化し、かつ全長を短くできるため、小型コンパクト化にも寄与できる。
【0114】
以上の点を除いて他の基本的な構成は参考例1と同じである。したがって、正レンズL2と正レンズL3間の第1空気空間S1,開口絞りSTOが存在する中間空気空間Sm,正レンズL7と正レンズL8間の第2空気空間S2がフォーカス調整を行う可変間隔として選択する点も参考例1と同じである。このため、実施例1(
図11)の構成において、参考例1(
図1)と同一部分及び同一機能部分には、同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0115】
表5に、実施例1の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:40.00mm,Fナンバ:1.45,半画角:28.65゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.100」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。
【0116】
【0117】
表5及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは77.00mm,ED1は27.61mmとなる。したがって、TL/ED1=77.00/27.61=2.79となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は23.13mm,TL2は29.46mmとなる。したがって、TL1/TL2=23.13/29.46=0.79となるため、条件式2(0.5<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは40.00mm,FL1は82.55mmとなる。したがって、AFL/FL1=40.00/82.55=0.48となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。なお、条件式4-7は、実施例1-3には適用しない。
【0118】
一方、
図12(a)及び(b)には、実施例1の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.100」)とした縦収差図を示す。
図12(a)及び(b)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.100」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、実施例1の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.45であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【実施例2】
【0119】
次に、実施例2に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図13,
図14,
図2及び表6を参照して説明する。
【0120】
図13は、実施例2に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。実施例2は、実施例1と基本構成は同じになるが、異なる点は、第1レンズ群G1を構成するに際し、実施例1では、負レンズL1と正レンズL2,正レンズL3と負レンズL4をそれぞれ接合レンズEj,Ejにより構成したが、実施例2では、負レンズL1,正レンズL2,正レンズL3をそれぞれ単体レンズEs,Es,Esにより構成するとともに、負レンズL4と正レンズL5を接合レンズEjにより構成し、さらに、負レンズL1を、非球面を有する両凹レンズL1cにより構成した点が異なる。なお、実施例2における第2レンズ群G2の構成は実施例1と同じである。
【0121】
以上の点を除いて他の基本的な構成は実施例1と同じである。このため、実施例2(
図13)の構成において、実施例1(
図11)と同一部分及び同一機能部分には、同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0122】
表6に、実施例2の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:37.69mm,Fナンバ:1.44,半画角:30.11゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.100」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。
【0123】
【0124】
表6及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは77.00mm,ED1は26.18mmとなる。したがって、TL/ED1=77.00/26.18=2.94となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は23.55mm,TL2は29.58mmとなる。したがって、TL1/TL2=23.55/29.58=0.80となるため、条件式2(0.5<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは37.69mm,FL1は79.53mmとなる。したがって、AFL/FL1=37.69/79.53=0.47となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。なお、条件式4-7は、実施例1-3には適用しない。
【0125】
一方、
図14(a)及び(b)には、実施例2の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.100」)とした縦収差図を示す。
図14(a)及び(b)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.100」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、実施例2の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.44であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【実施例3】
【0126】
次に、実施例3に係る大口径準広角撮像レンズCについて、
図15,
図16,
図2及び表7を参照して説明する。
【0127】
図15は、実施例3に係る大口径準広角撮像レンズCの構成を示す。実施例3は、実施例2と基本構成は同じになるが、異なる点は、第1レンズ群G1を構成するに際し、実施例2では、負レンズL1,正レンズL2をそれぞれ単体レンズEs,Esにより構成し、また、負レンズL1を、非球面を有する両凹レンズL1cにより構成したが、実施例3では、負レンズL1と正レンズL2を接合レンズEjにより構成し、正レンズL3を、非球面を有する両凸レンズL3pにより構成した点が異なる。なお、実施例3における第2レンズ群G2の構成は実施例1と同じである。
【0128】
以上の点を除いて他の基本的な構成は実施例2と同じである。このため、実施例3(
図15)の構成において、実施例2(
図13)と同一部分及び同一機能部分には、同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0129】
表7に、実施例3の大口径準広角撮像レンズCにおけるレンズ全系のレンズデータを示す。無限物点時の大口径準広角撮像レンズCは、焦点距離:38.00mm,Fナンバ:1.45,半画角:29.92゜である。また、撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.100」)としたデータ(フォーカス可変間隔)を示す。
【0130】
【0131】
表7及び
図2に示すように、前述した条件式1におけるTLは74.61mm,ED1は26.22mmとなる。したがって、TL/ED1=74.61/26.22=2.85となるため、条件式1(2.0<〔TL/ED1〕<5.1)を満たす。条件式2におけるTL1は19.97mm,TL2は31.53mmとなる。したがって、TL1/TL2=19.97/31.53=0.63となるため、条件式2B(0.5<〔TL1/TL2〕<2.0)を満たす。条件式3におけるAFLは38.00mm,FL1は79.48mmとなる。したがって、AFL/FL1=38.00/79.48=0.48となるため、条件式3(0.35<〔AFL/FL1〕<1.20)を満たす。なお、条件式4-7は、実施例1-3には適用しない。
【0132】
一方、
図16(a)及び(b)には、実施例3の大口径準広角撮像レンズCにおける撮影倍率をパラメータ(「0.000」,「0.100」)とした縦収差図を示す。
図16(a)及び(b)に示すように、撮影倍率が「0.000」,「0.100」のいずれの場合であっても良好な収差、即ち、撮像性能が得られることを確認できる。なお、実施例3の大口径準広角撮像レンズCは、FナンバがF1.45であり、F1.1乃至F1.5の条件を満たしている。
【0133】
以上、実施例1-3を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0134】
例えば、撮像光学系GAには、物体OBJ側に位置する負レンズL2…と像IMG側に位置する正レンズL3…を接合した少なくとも一組の接合レンズEj…を設けることが望ましいが、設ける組数は任意であり、また、設けない場合を排除するものではない。さらに、撮像光学系GAに、物体OBJ側から、両凹レンズL1c(L6c),両凸レンズL2p(L7p),両凸レンズL3p(L8p),両凹レンズL4c(L9c)により構成した、第1部分対称レンズ群G1s及び/又は第2部分対称レンズ群G2sを設ける場合が望ましいが、片凹レンズ,片凸レンズ,メニスカスレンズ,非球面レンズなど、使用するレンズの形態は任意である。他方、撮像光学系GAとして、合計七つのエレメントEs…,Ej…により構成し、物体OBJ側から、負レンズを用いた第一エレメントEs,負レンズと正レンズの接合レンズを用いた第二エレメントEj,正レンズと負レンズの接合レンズを用いた第二エレメントEj,非球面レンズを用いた第一エレメントEs,負レンズと正レンズの接合レンズを用いた第二エレメントEj,正レンズを用いた第一エレメントEs,負レンズを用いた第一エレメントEsを備え、接合レンズ(Ej)における正レンズの屈折率が1.7よりも大きい条件を満たし、かつ条件式3を満たすように構成する場合が望ましいが、このような構成に限定されるものではない。同様に、撮像光学系GAとして、第1レンズ群G1の全体のパワーを正に設定し、かつ第1レンズ群G1の第1空気空間S1から物体OBJ側のレンズによる全体のパワーを負に設定するとともに、第1空気空間S1から中間空気空間Smまでのレンズによる全体のパワーを正に設定し、条件式4-条件式7の全ての条件を満たす構成例を挙げたが、この構成に限定されるものではなく、いずれか一つの条件式又は二以上の条件を満たす構成を排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明に係る大口径準広角撮像レンズは、デジタルカメラや銀塩カメラ等の静止画撮影装置,及びビデオカメラやシネマカメラ等の動画映写装置等を含む各種光学機器における専用レンズ或いは交換レンズ等に利用できる。
【符号の説明】
【0136】
1:大口径準広角撮像レンズ,STO:開口絞り,OBJ:物体,IMG:像,L1:レンズ,L1c(L6c):両凹レンズ,L2:レンズ,L2p(L7p):両凸レンズ,L3:レンズ,L3p(L8p):両凸レンズ,L4:レンズ,L4c(L9c):両凹レンズ,L5:レンズ,L5c:両凹レンズ,L6:レンズ,L7:レンズ,L8:レンズ,L9:レンズ,L10:レンズ,GA:撮像光学系,G1:第1レンズ群,G1s:第1部分対称レンズ群,G2:第2レンズ群,G2s:第2部分対称レンズ群,S1:第1空気空間,S2:第2空気空間,Sm:中間空気空間,TL:最も物体側のレンズにおける物体側の面から像面までの光軸上の距離,TL1:最も物体側に位置するレンズの物体側の面から開口絞りまでの光軸上の距離,TL2:開口絞りから最も像側に位置するレンズの像側の面までの光軸上の距離,AFL:全系焦点距離,ED1:全系焦点距離/Fナンバ,FL1:第1レンズ群の焦点距離,FL1B:第1空気空間から中間空気空間までのレンズによる焦点距離,Ej:接合レンズ(第二エレメント),Es:第一エレメント