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特許7410569サルコペニアを治療し、高齢対象者の筋肉量と筋肉強度を維持又は増加させる方法
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  • 特許-サルコペニアを治療し、高齢対象者の筋肉量と筋肉強度を維持又は増加させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】サルコペニアを治療し、高齢対象者の筋肉量と筋肉強度を維持又は増加させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20231227BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61P 21/06 20060101ALI20231227BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231227BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P21/00
A61P21/06
A23L33/135
C12N1/20 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020509421
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2020050325
(87)【国際公開番号】W WO2020260958
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】108122113
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC13008
(73)【特許権者】
【識別番号】520052639
【氏名又は名称】シンバイオ テック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】リー チア チア
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ハン イン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チー チャン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ イー ルー
(72)【発明者】
【氏名】リー モン チェン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0055893(US,A1)
【文献】特開2018-000046(JP,A)
【文献】特表2014-519483(JP,A)
【文献】特開2016-216408(JP,A)
【文献】Nutrients, 2019, Vol.11,Article.2836
【文献】Nutrients, 2016, Vol.8 No.4,Article.205(p.1-15) doi: 10.3390/nu8040205.
【文献】日本医事新報, 2013, No.4677, p.27-31
【文献】Eur J Integr Med., 2018, Vol.23, p.32-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61P 21/00
A61P 21/06
A23L 33/135
C12N 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢性サルコペニアを治療するための組成物の製造用とする、中国普通微生物菌種保蔵管理センター (CGMCC)に受託番号CGMCC13008で寄託されているラクトバシラス・プランタルムTWK10の使用。
【請求項2】
高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力を維持及び/又は増加させるための組成物の製造用とする、中国普通微生物菌種保蔵管理センター (CGMCC)に受託番号CGMCC13008で寄託されているラクトバシラス・プランタルムTWK10の使用。
【請求項3】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含む医薬組成物である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記医薬組成物は、経口投与剤形である、請求項に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物は、食品組成物である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項6】
中国普通微生物菌種保蔵管理センター (CGMCC)に受託番号CGMCC13008で寄託されているラクトバシラス・プランタルムTWK10を含む、加齢性サルコペニアの治療に使用する組成物。
【請求項7】
中国普通微生物菌種保蔵管理センター (CGMCC)に受託番号CGMCC13008で寄託されているラクトバシラス・プランタルムTWK10を含む、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力の維持及び/又は増加に使用する組成物。
【請求項8】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含む医薬組成物である、請求項6または請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は、経口投与剤形である、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、食品組成物である、請求項6または請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サルコペニアを治療し、高齢対象者の筋肉量及び筋力を維持又は増加させるための、ラクトバシラス・プランタルムを含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サルコペニアは、加齢と動かないことに関連する骨格筋量、質及び強度の退化的な喪失であり、一般的に約60歳以上の高齢対象者に影響を与える。筋肉喪失の割合は、運動レベル、併存疾患、栄養及びその他の要因に依存する。高齢対象者の筋肉量と筋力の衰退は、多くの場合、身体機能能力の低下を示し、そして、生活の質の低下及び健康に悪影響を及ぼす出来事(例えば、転倒やその後の骨折)の発生リスク増加につながる。
【0003】
サルコペニアによる筋肉変化のメカニズムはまだ十分に解明されていないが、運動(筋力トレーニングなど)は、依然としてサルコペニアに対する最適な介入である。更に、高齢対象者の適切な栄養(例:タンパク質、カルシウム、ビタミンDなど)を確保することは、サルコペニアの進行を防ぐことに有意義である。
【0004】
米国特許公告第10188685B2号には、寄託番号CGMCC13008のラクトバシラス・プランタルムTWK10(ラクトバシラス・プランタルムLP10とも呼ばれる)が運動パフォーマンスを改善し、筋肉疲労を軽減できることが開示されている。該特許において、6週齢のマウス(即ち、青年期のマウス)が使用された実験で、ラクトバシラス・プランタルムTWK10による前処理がマウスの力尽きるまでの水泳時間を増加させ、マウスの前肢の握力を改善できることを実証した。ただし、異なる人生期間(例えば、授乳期、青年期、成人期及び高齢期など)の対象者の身体的及び生理学的状態は多様であり、同じ物質に対する薬物反応に影響を与える可能性がある。即ち、年齢は薬物に対する各種反応を引き起こす予測不能因子になる可能性があり、従って、異なる人生期間の対象者には異なる治療対策が必要になる。
【発明の概要】
【0005】
従って、第1の態様において、本開示は、中国普通微生物菌種保蔵管理センター(CGMCC)に受託番号CGMCC13008で寄託されているラクトバシラス・プランタルムTWK10を含む、サルコペニアの治療に使用する組成物を提供する。
【0006】
第2の態様によれば、本開示は、サルコペニアを治療するための組成物の製造用とする、ラクトバシラス・プランタルムTWK10の用途を提供する。
【0007】
第3の態様によれば、本開示は、サルコペニアの治療を必要とする対象に、第1又は第2の態様における前述組成物を投与することを含むサルコペニアを治療する方法を提供する。
【0008】
更に、第4の態様において、本開示は、ラクトバシラス・プランタルムTWK10を含む、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力の維持及び/又は増加に使用する組成物を提供する。
【0009】
第5の態様によれば、本開示は、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力を維持及び/又は増加させるための組成物の製造用とする、ラクトバシラス・プランタルムTWK10の用途を提供する。
【0010】
第6の態様によれば、本開示は、第4又は第5の態様において前述組成物を高齢対象者に投与することを含む、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力を維持及び/又は増加させる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。
図1】投与前の成体及び高齢対照群のマウスの前肢グリップ強度を示し、記号「***」は、成体対照群と比較した際、p<0.001であることを表す。
図2】8週間の投与後の各群のマウスの前肢の握力を示し、成体及び高齢対照群のマウスにはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与し、成体及び高齢実験群のマウスにはラクトバシラス・プランタルムTWK10を投与し、記号「**」は成人対照群と比較した際、p<0.01であることを表し、記号「***」は高齢対照群と比較した際、p<0.001であることを表す。
図3】12週間の投与後の高齢対照群及び実験群のマウスの筋肉量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の意図のために、「含む(comprising)」という単語は「含むが、これに限定されない」ことを意味し、「含む(comprises)」という単語は対応する意味を有することが明確に理解される。
【0013】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者であれば、本開示の実施において、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識し、利用することができる。実際、本開示は記載された方法及び材料に決して限定されない。明確にするために、本明細書では以下の定義を使用する。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」又は「治療」は、治療的処置及び予防又は予防処置の両方を指し、その目的は、状態、疾患又は障害を予防、改善、軽減又は抑制(減少)又は向上することである。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「予防する」、「予防」、「予防的」又は「予防の」は、治療的処置及び予防的又は防止的手段の両方を指し、その目的は、異常又は症状を含む状態、疾患、障害又は表現型の発生を防ぐ、或は該発生を妨害、防御又は保護することを指す。予防が必要な対象は、症状を発症する傾向がある人である。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「改善する」又は「改善」は、異常又は症状を含む状態、疾患、障害又は表現型の減少、軽減又は排除を指す。治療を必要とする対象は、すでに病状がある人、或は、病気にかかりやすい又は病気を予防すべき人である。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「維持する」は、治療前の段階で状態を維持することを指す。
【0018】
本開示は、受託番号CGMCC13008で中国普通微生物菌種保蔵管理センター(CGMCC)に寄託されているラクトバシラス・プランタルムTWK10を含むサルコペニアの治療に使用する組成物を提供する。本開示は、また、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力を維持及び/又は増加させる際に使用するための組成物を提供する。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「サルコペニア」は、骨格筋量の退化的な喪失(例えば、筋線維の減少又は筋萎縮)及び/又は骨格筋機能の退化的な喪失(例えば、筋力の低下又は身体能力の低下)を指す。サルコペニアは、通常、老化過程で発生するが、肥満、脳卒中、進行がん、慢性の腎不全及び心不全、エイズなど他の病気の症状である可能性がある。特定の実施形態において、サルコペニアは、加齢性サルコペニアである。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス及びラットなどの関心対象としての動物を指す。特定の実施形態において、対象はヒトである。本明細書で使用する場合、「高齢」者は、肥満度指数及び筋肉量及び/又は筋力の少なくとも一方に加齢に伴う変化を経た者(例えば、年齢に関連するサルコペニア)、或は、筋肉量又は筋力の減少を特徴とする疾患又は障害を患う者である。一部の実施形態において、高齢対象者は、生涯最大筋肉量及び/又は筋力から少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%又は少なくとも60%の筋肉量の減少を経験した者である。肥満度指数及び筋肉量及び/又は筋力における少なくとも1つに対する加齢に伴う変化は、年齢の増加と関連することが知られているため、一部の実施形態において、高齢対象者は、単に年齢に基づいて特定又は定義された。従って、一部の実施形態において、「高齢」者は、肥満度指数と筋肉量及び/又は筋力の少なくとも1つの測定に頼ることなく、単に年齢が少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳、少なくとも80歳、少なくとも85歳、少なくとも90歳、少なくとも95歳又は少なくとも100歳であるという事実によって特定又は定義された。
【0021】
本開示によれば、ラクトバシラス・プランタルムTWK10は、濃縮又は非濃縮の、液体、ペースト、半固体又は固体(例えば、ペレット、顆粒又は粉末)のものであってもよく、凍結、乾燥又は凍結乾燥(例えば、凍結乾燥形態又は噴霧/流動床乾燥形態である)のものであってもよい。例示的な実施形態において、ラクトバシラス・プランタルムTWK10は、凍結乾燥粉末形態のものである。
【0022】
更に、本開示は、サルコペニアを治療するための組成物の製造用である、ラクトバシラス・プランタルムTWK10の使用に関する。
【0023】
本開示は、また、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力を維持及び/又は増加させるための組成物の製造用である、ラクトバシラス・プランタルムTWK10の使用に関する。
【0024】
特定の実施形態において、本開示による組成物は、医薬組成物の形態に調製された。本開示の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含むことができ、当業者に周知の技術を使用して経口投与に適した剤形にすることができる。経口投与剤形の例には、溶液、懸濁液、エマルジョン、粉末、錠剤、丸薬、シロップ、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、カプセル、スラリーなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本開示で使用することに適した薬学的に許容可能な担体の例には、溶媒、緩衝液、乳化剤、懸濁剤、分解剤、崩壊剤、分散剤、結合剤、賦形剤、安定剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、防腐剤、湿潤剤、潤滑剤、吸収遅延剤、リポソーム及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。前述の薬学的に許容可能な担体の選択及び量は、当業者の専門知識及び通常の技術の範囲内である。
【0026】
特定の実施形態において、本開示による組成物は、食用材料に加えて、ヒト又は動物が消費する食品を調製できる食品添加物などの食品組成物の形態に調製された。本開示による食品の例には、液体乳製品、例えばミルク及び濃縮乳、発酵乳、例えばヨーグルトと酸乳とフローズンヨーグルト、粉ミルク、アイスクリーム、クリームチーズ、ドライチーズ、豆乳、発酵豆乳、野菜果物ジュース、フルーツジュース、スポーツドリンク、菓子、ゼリー、キャンディー、健康食品、動物飼料及び栄養補助食品が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本開示は、また、サルコペニアの治療を必要とする対象に前述組成物を投与することを含む、サルコペニアを治療する方法を提供する。
【0028】
更に、本開示は、前述の組成物を高齢対象者に投与することを含む、高齢対象者の筋肉量及び/又は筋力を維持及び/又は増加させる方法を提供する。
【0029】
本開示による組成物の投与量及び投与頻度は、以下の要因:治療される疾患/障害の重症度、治療される対象の体重、年齢、身体状態及び反応、に応じて変化し得る。一般的に、本開示による組成物の1日投与量は、単回投与又は数回投与で投与できる。
【0030】
以下、本開示の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0031】
実施例1.サルコペニアの治療に対するラクトバシラス・プランタルムTWK10の効果の評価
実験材料
1.ラクトバシラス・プランタルムTWK10
ラクトバシラス・プランタルムTWK10株(ラクトバシラス・プランタルムLP10とも呼ばれる)は、中国普通微生物菌種保蔵管理センター(CGMCC)(中国科学院微生物学研究所、No.1 West Beichen Road、Chaoyang District、Beijing 100101、China)に2016年9月13日から受託番号CGMCC13008で寄託されているものである。
【0032】
ラクトバシラス・プランタルムTWK10を、種培地としてのMRS培地(BD Pharmingen(登録商標))に3%(v/v)で接種して、37℃で14時間~16時間培養した。得られた種培養物を大規模拡大のために、上記のようにMRS培地に注ぎ、更に37℃で12時間~14時間培養した。1200rpm、4℃で20分~40分間遠心分離した後、得られた細胞ペレットを回収してから、凍結乾燥して、細菌濃度が3.0×1011CFU/gのラクトバシラス・プランタルムTWK10の凍結乾燥粉末を得た。次に、以下の実験のために、凍結乾燥粉末をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁してラクトバシラス・プランタルムTWK10の懸濁液を得た。
【0033】
2.実験動物
成熟した成体雄ICRマウス(4ヶ月齢で平均体重が約40g)及び高齢雄ICRマウス(19から22ヶ月齢で平均体重が約40g)を、BioLASCO Taiwan Co.、Ltd.から購入した。これらのマウスを、次の実験室条件:温度24±2℃、相対湿度65±5%、12時間明/12時間暗サイクル下で動物室で飼育した。すべての実験動物に食べ物と水を自由に提供した。すべての動物実験は、国立台湾体育大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)のガイドライン及び米国国立衛生研究所(NIH)の実験動物の管理と使用ガイドに従って行われた。
【0034】
実験手順
成熟した成体マウスを成体対照群(n=8)と成体実験群(n=9)に分割し、高齢マウスを高齢対照群(n=9)と高齢実験群(n=7)に分割した。成体及び高齢の実験群のマウスには、109CFU/kgの用量でラクトバシラス・プランタルムTWK10の懸濁液を強制経口投与し、成体及び高齢の対照群のマウスには、同じ量のPBSを強制経口投与した。各マウスに対して、合計12週間の実験期間に亘って1日1回の投与が行なわれた。
【0035】
A.前肢の握力測定
低力試験システム(Model-RX-5、Aikoh Engineering、名古屋、日本)及び金属棒(直径2mm、長さ7.5cm)に取付けられている力変換器を使用して、投与前及び投与8週間後の各マウスに対して前肢握力強度試験を行った。具体的には、各マウスを尾で保持し、金属棒に向かって落下させて、マウスが前肢で金属棒を掴めるようにした。その後、掴みの動作が崩れるまで、尾でマウスを金属棒から離れる方向に引っ張って、生成された力が力変換器で記録された。上記の実験を10回繰り返し、記録された力の最大値を前肢の握力(グラム)と見なした。
【0036】
実験データは、平均±標準偏差(SD)として表され、グループ間の差異を評価するために、独立t検定を使用して分析された。統計的有意性はp<0.05で示される。
【0037】
B.筋肉量の測定
投与の12週間後、成体対照群及び成体及び高齢実験群の各マウスを屠殺して、下肢の後部の腓腹筋及びヒラメ筋を取得し、筋肉量測定に供した。
【0038】
C.筋線維の断面積の測定
形態学及び病理学の評価のために、上記のセクションBで得られた成体及び高齢実験群の各マウスの腓腹筋を10%ホルマリンで4時間固定した後、パラフィンに包埋し、スライスして厚さ4μmの組織切片を得た。組織切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した後、100倍の倍率でCCDカメラ(BX-51、Olympus、東京、日本)を備えた光学顕微鏡を使用して検査及び写真撮影した。筋肉繊維の断面積は、ImageJソフトウェアを使用して測定された。
【0039】
結果
A.前肢の握力強度
図1には、投与前の成体及び高齢対照群のマウスの前肢の握力強度が示される。図1から、高齢対照群の前肢の握力強度は成体対照群より著しく低く、高齢対照群のマウスは筋力が低下し、加齢性サルコペニアを患っている可能性があることが示されることがわかる。
【0040】
図2には、投与8週間後の各グループのマウスの前肢の握力が示される。図2から、成体実験群のマウスの前肢の握力は成体対照群と比較して増加し、高齢実験群のマウスの前肢の握力は高齢対照群と比較して大幅に改善されたことがわかる。その結果は、ラクトバシラス・プランタルムTWK10が成体マウス及び高齢マウス、特に高齢マウスの筋力を維持し、更に強化することに有効であることを示している。従って、ラクトバシラス・プランタルムTWK10は、加齢に起因する筋力低下の改善が期待される。
【0041】
B.筋肉量
12週間投与後のマウスの筋肉量が表1に示される。高齢対照群のマウスは、成体対照群と比較して筋肉量が著しく減少したことがわかる。図1と表1を合わせて見ると、高齢マウスは、サルコペニアを患って筋肉量と筋力が著しく低下したと考えられる。しかし、高齢実験群のマウスの筋肉量は増加しており、これは、ラクトバシラス・プランタルムTWK10が高齢化による筋肉量の減少を改善でき、サルコペニアの治療に適している可能性があることが示されている。
【0042】
【表1】
【0043】
C.筋線維の断面積
図3には、12週間の投与後の高齢対照群及び実験群のマウスの筋肉量が示される。図3から、高齢の対照群と比較して、高齢の実験群のマウスは筋線維の断面積がより大きくなっており、ラクトバシラス・プランタルムTWK10が筋線維のサイズを増加させることが示されていることがわかる。
【0044】
上記の実験結果は、ラクトバシラス・プランタルムTWK10が筋肉量の減少を効果的に予防及び改善し、加齢の過程で筋力を改善し且つ筋線維を増加させ、それによりサルコペニアを効果的に治療できることを明らかにしている。
【0045】
本明細書で引用されているすべての特許及び文献の参考文献、ならびにそこに記載されている参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。矛盾する場合は、定義を含み本説明が優先される。
【0046】
上記においては、説明のため、本発明の全体的な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一又はそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、又はこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一又はそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一又はそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神及び範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾及び均等な構成を包含するものとする。
図1
図2
図3