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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】受動協調ターゲットを有する測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20231227BHJP
   H04B 1/00 20060101ALI20231227BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20231227BHJP
   H04B 11/00 20060101ALI20231227BHJP
   G08C 23/02 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
G01H17/00 C
H04B1/00 107
H04B1/59
H04B11/00 C
G08C23/02
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020529807
(86)(22)【出願日】2018-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 DE2018100706
(87)【国際公開番号】W WO2019034206
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】102017007594.8
(32)【優先日】2017-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520048159
【氏名又は名称】アルベルト-ルートヴィヒ-ウニベルシタット-フライブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アフタブ,タイムール
(72)【発明者】
【氏名】ホッペ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シ,ディ
(72)【発明者】
【氏名】ショット,ドミニク ジャン
(72)【発明者】
【氏名】レインドル,レオンハルト
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-119729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0211260(US,A1)
【文献】特表2005-501235(JP,A)
【文献】特開昭61-181923(JP,A)
【文献】特表平09-508469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
H04B 1/00、1/30,1/59,1/72
H04B 11/00-13/02
G08C 13/00-25/04
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問ユニットに接続された第1電気音響変換器と、共振器に電気的に接続された少なくとも1つの第2電気音響変換器とを備えたシステムであって、前記第1電気音響変換器及び前記第2電気音響変換器は音響チャネルを形成し、前記第2電気音響変換器は、前記共振器と共に、受動協調ターゲットを形成し、前記ターゲットは、前記質問ユニットから質問信号を受信する時、前記音響チャネルを介して応答信号を送信し、前記質問信号のスペクトラムは前記共振器の共振周波数を含み、また、前記質問信号は前記応答信号より高いエネルギーを有する、システム。
【請求項2】
前記質問ユニットはソフトウェア質問ユニットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び/又は前記第2電気音響変換器は、超音波又は超低周波用の音響変換器である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記共振器は高Q係数を有する共振器である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記共振器は、前記質問信号の環境的に誘導された信号反射が減衰するまで、前記高Q係数により前記質問信号のエネルギーの少なくとも一部を蓄積する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記共振器は、薄膜共振器、圧電性の薄膜共振器、誘電体共振器、或いは水晶音叉共振器である、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記共振器は単一ポート共振器である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記共振器は測定量の関数として少なくとも1つの共振周波数を有している、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記共振周波数は温度応答補償される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記応答信号は前記質問信号に対して周波数シフトされる、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記質問信号は、前記質問ユニットによって送信される、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記質問信号は、前記質問ユニット以外の信号源によって送信される、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記受動協調ターゲットは能動電子部品を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記受動協調ターゲットはそれ自身のエネルギー源を含まない、請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記受動協調ターゲットは、前記応答信号を前記質問信号から前記音響チャネルを介して送信するために必要なエネルギーを生成する、請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記音響チャネルは、1kHzから10THzまでの周波数範囲に配置される、請求項1~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1及び/又は前記第2電気音響変換器は、双方向の音響変換器である、請求項3に記載のシステム。
【請求項18】
前記質問信号は、少なくとも1つの矩形の質問パルス、及び/又はビート信号、及び/又は周波数変調された質問信号として、前記質問ユニットによって送信される、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記質問信号は、少なくとも1つの矩形の質問パルスとして、前記質問ユニット以外の信号源によって送信される、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記音響チャネルは、
1kHzから10kHzまで、特に3kHzから5kHzまで、又は5kHzから10kHzまで、の第1周波数範囲、或いは
10kHzから50kHzまで、特に10kHzから19kHzまで、又は19kHzから50kHzまで、特に20kHzから45kHzまで又は20kHzから25kHzまで又は25kHzから44kHzまで又は44kHzから45kHzまで、の第2周波数範囲、或いは
50kHzから250kHzまで、特に50kHzから100kHzまで、又は100kHzから250kHzまで、の第3周波数範囲、或いは
250kHzから1MHzまでの第4周波数範囲、或いは
1MHzから10MHzまでの第5周波数範囲、或いは
10MHzから100MHzまでの第6周波数範囲、或いは
100MHzから400MHzまでの第7周波数範囲、或いは
400MHzから600MHzまでの第7周波数範囲、或いは
600MHzから900MHzまでの第8周波数範囲、或いは
900MHzから1GHzまでの第9周波数範囲、或いは
1GHzから5GHzまでの第10周波数範囲、或いは
5GHzから10GHzまでの更なる周波数範囲に配置される、請求項16項に記載のシステム。
【請求項21】
前記音響チャネルは、3kHzから5kHzまで、又は5kHzから10kHzまでの周波数範囲に配置される、請求項16項に記載のシステム。
【請求項22】
前記音響チャネルは、10kHzから19kHzまで、又は19kHzから50kHzまで、又は20kHzから45kHzまで、又は20kHzから25kHzまで、又は25kHzから44kHzまで、又は44kHzから45kHzまでの周波数範囲に配置される、請求項16項に記載のシステム。
【請求項23】
前記音響チャネルは、50kHzから100kHzまで、又は100kHzから250kHzまでの周波数範囲に配置される、請求項16項に記載のシステム。
【請求項24】
前記音響チャネルは、1mHzから1kHzまで、1mHzから0.5Hzまで、又は0.5Hzから1Hzまで、又は1Hzから500Hzまで、又は1Hzから100Hzまで、又は70Hzから95Hzまで、又は100Hzから250Hzまで、又は250Hzから1kHzまでの周波数範囲に配置される、請求項16項に記載のシステム。
【請求項25】
前記音響チャネルは、20Hzから20kHzまで、又は20kHzから1GHzまで、又は1GHzから10THzまでの周波数範囲に配置される、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前文による受動協調ターゲットを有するシステムに関し、また、従属請求項に規定されるような、その更なる実施例におけるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の課題は、特に取り扱いが簡単で、コスト効率の良い、測定装置として受動協調ターゲットを有するシステムを提供することである。
【0003】
アンテナに結合された表面弾性波デバイスを用いた無線受動センシングと同様に、ここに提示された手法は、送信及び反射信号の時間領域分離に基づいている。無線センサーシステムは、能動部品に対して信号処理を行う励起及び受信素子と、受動センサーノードに発振荷重がかかるトランシーバーとを含んでいる。受動センサーノードは、放射素子すなわち超音波トランスデューサに電気的に接続された共振器から成る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この課題は、本発明に係る前述のタイプの測定装置に対して、独立請求項1の特徴部分の特徴によって解決される。本発明の更なる実施例は従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の趣旨内では、システムは、好ましくは、力、温度、電流、電圧、流量、湿度、のような所望の測定量やそれらの物理量を、好ましくは予め選択された位置で、測定するための測定装置である。本発明に係るそのような測定システムは、質問ユニットに接続される第1電気音響変換器を構成する。そのような質問ユニットは、好ましくはソフトウェア無線の原理に従う、ソフトウェアレーダシステムである。
【0006】
ソフトウェア無線(SDR)は、信号処理のより小さな部分或いはより大きな部分がソフトウェアで実現される高周波送信機及び受信機に対する概念について記述するために使用される用語である。アナログコンポーネントは、直線受信機或いはスーパーヘテロダイン受信機でありうる。最も一般には、選択及び変調/復調は、デジタル信号処理によりSDRにおいて実現される。
【0007】
SDR方式は、適宜、シグナルプロセッサー及び/又はFPGAのような専用ハードウェアと組み合わせて、汎用コンピューターで信号処理の大部分を実行する。数十MHzの受信機帯域幅は、PCのような汎用のコンピューターで達成することができる。より大きな帯域幅及びより複雑な処理アルゴリズムは、シグナルプロセッサーまたはFPGAのような特別なプロセッサを必要とする。本質的な特徴は、単にソフトウェアを変更することにより、変調、異なる帯域幅、時間的挙動及び異なるチャネルコーディング・プロシジャーのような、無線方式の異なるパラメータを実施することができるということである。SDRは、アマチュア無線、軍事及び移動体通信において使用されているばかりでなく、デジタル無線受信機のような民生用途でもますます使用されるようになっている。この場合、リアルタイムで異なるプロトコルへ変更することに対する柔軟性及び実施はとりわけ利点である。良い実例は、セルラーネットワークの基地局をSDRとして実施することである。このように、非常に短時間且つ低コストで、これらを新しい基準にアップグレードすることが可能である。SDRのハードウェアは、少なくとも1つの送受信モジュールと、また各1個のA/D及びD/A変換器と、それらの間のソフトウェアベースのデジタル信号処理とから成る。その信号処理は、信号パスがI/Q信号と呼ばれる一対の2つの並列実数シーケンスから成るという意味で、通常複雑である。最も簡単で理想的なSDR受信機は、アンテナを有するアナログデジタル変換器から成るであろう。そして、読み出されたデータは、アナログデジタル変換の後に、デジタルコンピューターによって直接処理されるであろう。理想的な送信機はこれに類似しているように見えるであろう。すなわち、コンピューターは、デジタルアナログ変換器を介してディジタルデータストリームを生成し、そして下流のアンテナがそれを送信する。
【0008】
SDRの作動原理
今日のSDRは3つの機能原則のうちの1つによって作動する。
入力信号の直接デジタル化
入力信号は、最も経済的なアナログ処理の後に、フィルター及び前置増幅器或いは減衰器によって直接デジタル化される。ナイキストの定理によれば、デジタル化のための入力信号は、信号を再構成するために、最大有用周波数の少なくとも2倍でサンプリングされなければならない。現今では、12ビット分解能(解像度)で3.6GSPSまでのサンプリング周波数を有するA/Dコンバーターがある。これは、1500MHzまでの受信範囲を可能にする。
【0009】
中間周波数レベルでのデジタル化
そのような受信機の第一段は、従来のスーパーヘテロダイン受信機とほとんど異ならない。アナログフィルターは、使用される最大有用信号帯域幅に対して設計されている。これにより、その後の処理のための高い信号強度に対する要件を低減するばかりでなく、サンプリング周波数を大幅に低減することを可能にする。すなわち、10kHzの中間周波数帯域幅では、例えば、丁度20kHzのサンプリング周波数で十分である(サブサンプリング)。十分に強力なデジタル信号プロセッサ(DSP)が、必要とされる帯域幅を有する様々な水晶フィルターより著しく安価であるため、この概念は今広く使われている。さらに、DSPはまた、従来のアナログ技術よりも著しく良い特性や多くの可能性を有する、利得制御や復調のような他の機能を実行することもできる。
【0010】
I/Q方式によるダイレクトミキサー
ダイレクトミックス受信機とは、入力信号が同一の搬送周波数の発振器信号と直接混合されて、復調される受信機の概念である。モールス信号を受信することを望んだ人々のために、オーディオンが1920年代にこの原理で既に作動していた。従来のダイレクトミキサーに関する問題点は、イメージ周波数抑制の欠如であり、すなわち、発振器周波数1kHzより下の正弦信号が発振器周波数の1kHzより上の正弦信号と正確に同一の出力信号を与えることである。SDRは、「複素」信号処理すなわちI/Q信号と呼ばれる実数部及び虚数部で計算することによって、この問題を解決する。そのI/Q信号の「I」は、「同位相(同調)」及び実数部を表す。また、「Q」は直角位相及び信号の虚数部を表わす。この目的のために、2つの並列のミキシング段がダイレクトミキサー受信機の入力部において使用され、その受信機の発振器信号は90°だけ位相変位される。そのような発振器信号は、デジタル技術で生成するのが非常に簡単である。それらの2つのミキサーの出力信号は並列にデジタル化され、デジタル処理される。ここでは、ヒルバート変換が中心的な役割を果たす。結局、ヒルバート変換は、信号振幅に影響を及ぼさずに、周波数依存遅延を生成し、その結果、信号は90°だけ位相回転される。
斯くして、1kHzの信号は、250μsだけ遅延され、10kHzの信号は25μsだけ遅延される。最終的には、0°の移相及び90°の移相を有する2つのダイレクトスーパーインポーズ信号が利用可能である。
2つの信号を加算する或いは減算することによって、2つの側波帯の間で切り替えることができる。
【0011】
更に、本システムは、共振器に接続された少なくとも1つの第2電気音響変換器を備え、第1電気音響変換器及び第2電気音響変換器は音響チャネルを形成し、第2電気音響変換器は、共振器を有する受動協調ターゲットを形成し、該ターゲットは、応答信号より高いエネルギーを有するインタロゲイション信号(以下、質問信号)を質問ユニットから受信する時、音響チャネルを経由して応答信号を送信する。
【0012】
また、本発明のシステムは、ソフトウェア無線の方式におけるソフトウェア質問ユニットである質問ユニットを含んでもよい。
【0013】
また、本発明に係るシステムでは、第1及び/又は第2電気音響変換器は、好ましくは双方向音響変換器、好ましくは超音波或いは超低周波音用の双方向音響変換器でもよい。
【0014】
本発明に係るシステムでは、共振器は高い品質係数(Q値)を有する共振器である。
【0015】
更に、本発明に係るシステムでは、質問信号の環境的に誘導された信号反射が減衰するまで、共振器は、その高い品質係数により質問信号のエネルギーの少なくとも一部を蓄積することができる。
【0016】
本発明に係るシステムでは、共振器は、圧電性の薄膜共振器、誘電体共振器、或いは水晶音叉共振器であってもよい。
【0017】
共振器はまた、1ポート共振器であってもよい。
【0018】
更に、本発明の範囲においては、共振器は、測定変量の関数として、温度応答補償される少なくとも1つの共振周波数を有していてもよい。
【0019】
本発明に係るシステムでは、それが、応答信号が質問信号に関して周波数変位される場合に、特に有利なことが分かった。
【0020】
本発明に係るシステムでは、質問信号は、好ましくは、少なくとも1つの矩形の質問パルス、及び/又はビート信号、及び/又は周波数変調された質問信号として、質問ユニットによって送信される。
【0021】
本発明の文脈では、質問パルスは、時間領域において矩形のエンベロープを有するパルス或いは信号でもよい。
【0022】
更に、本発明の文脈では、質問パルスは、時間領域において矩形の振幅を有するパルス或いは信号でもよい。
【0023】
また、本発明の文脈では、質問パルスは、時間領域において矩形のパワー(電力)を有するパルス或いは信号でもよい。
【0024】
更に、本発明の範囲内における質問信号は、その周波数がワイドビート信号(ビート信号、すなわち技術文献においてディザ信号とも呼ばれる信号)と共に周期的に増減される質問信号でもよい。この周波数変調された質問信号は、毎時間トランスポンダーの共振周波数より上を通過する場合、応答信号は共振時に増大され、そうでなければ減少される。応答信号のエンベロープは、最大及び最小周波数の両方で低下するので、ビート信号の2倍の周波数を有する。受信機において、質問信号の周波数が応答信号におけるビート周波数の二次高調波の最大値に固定される場合には、非常に正確な測定を許容するPLLを確立することができる。
【0025】
本発明によれば、周波数変調信号は、振幅変調信号に変換されることができる。受動音響電子センサーの共振周波数の正確な判定のために、高周波共振器による周波数変調から振幅変調へのこの無線変換の詳細。ここで、放射された周波数変調高周波パルスが、表面波センサーを走査するために、パルス発生レーダーによって生成される。振幅変調された受信信号のシャープ記号トランジションは、フィードバックループが共振信号をモニターするために調節される信号を与える。
【0026】
その伝達関数により、共振器は周波数振幅変調コンバーターのように動作する。複数の共振エッジのうちの1つに対して、FM信号により角周波数ωの割合でその共振周波数から離れるように狭帯域共振器を励起することにより、帰還信号はωで振幅変調される。伝達関数の多項式展開のための一次係数が零になり、二次係数が支配的になるところの共振周波数では、ωでの周波数変調は、ωでの寄与が零に近いため、2ωでの振幅変調になる。共振周波数以上では、ωでの周波数変調は再びωでの振幅変調になるが、この時には、周波数変調信号に対する振幅変調は、前の場合に比べて、90°の位相変位になる。
【0027】
本発明の文脈では、質問信号は、好ましくは少なくとも1つの矩形の質問パルスとして、質問ユニット以外の信号源によって送信されてもよい。
【0028】
本発明に係るシステムでは、受動協調ターゲットは能動電子部品によって構成されない。これは、非常に高温な環境や水中のように厳しい状態においてシステムを使用することができるという利点を有する。
【0029】
本発明に係るシステムでは、受動協調ターゲットはそれ自身のエネルギー源を有しない。これは、バッテリーが必要ではないという利点を有する。誘導伝送やいわゆるニアフィールド通信(NFCシステム)によってエネルギーを伝送することも必要ではない。これにより、本システムを完全にエネルギー自律的にして、非常に高温な環境や水中のような過酷な条件において本システムを使用できるようにする。
【0030】
更に、本発明に係るシステムでは、受動協調ターゲットは、音響チャネルを介して質問信号から応答信号を送信するために必要になるエネルギーを生成する。これにより、本システムを完全にエネルギー自律的にして、非常に高温な環境や水中のような過酷な条件において本システムを使用できるようにする。
【0031】
水中や、例えば本システムの1つの構成要素、すなわち質問ユニット或いは受動協調ターゲット、がファラデー箱の内部に配置されるような環境における、本発明に係るシステムの適用は、音響チャネルによって可能である。本発明におけるこの音響チャネルは、好ましくは、1kHzから10THzまでの周波数範囲にありうる音響信号によって形成される。また、該周波数範囲は、
好ましくは1kHzから10kHzまで、特に3kHzから5kHzまで、又は5kHzから10kHzまで、の第1周波数範囲、或いは
10kHzから50kHzまで、特に10kHzから19kHzまで、又は19kHzから50kHzまで、特に20kHzから45kHzまで又は20kHzから25kHzまで又は25kHzから44kHzまで又は44kHzから45kHzまで、の第2周波数範囲、或いは
50kHzから250kHzまで、特に50kHzから100kHzまで、又は100kHzから250kHzまで、の第3周波数範囲、或いは
250kHzから1MHzまでの第4周波数範囲、或いは
1MHzから10MHzまでの第5周波数範囲、或いは
10MHzから100MHzまでの第6周波数範囲、或いは
100MHzから400MHzまでの第7周波数範囲、或いは
400MHzから600MHzまでの第7周波数範囲、或いは
600MHzから900MHzまでの第8周波数範囲、或いは
900MHzから1GHzまでの第9周波数範囲、或いは
1GHzから5GHzまでの第10周波数範囲、或いは
5GHzから10GHzまでの更なる周波数範囲、或いはまた、
1mHzから1kHzまで、特に1mHzから0.5Hzまで、又は0.5Hzから1Hzまで、特に好ましくは1Hzから500Hzまで、特に1Hzから100Hzまで、好ましくはまた70Hzから95Hzまで、又はまた100Hzから250Hzまで、又はまた250Hzから1kHzまで、の周波数範囲、及び
20Hzから20kHzまで、又は20kHzから1GHzまで、又は1GHzから10THzまで、の更なる周波数範囲、である。
【0032】
音響及び/又は超音波結合された受動無線振動センサーシステム
この発表は、初めて、無線超音波チャネルを介して高Q共振器の共振周波数を受動的に抽出するための計装方法を提示する。第1の用途として、受動無線温度測定が、本装置の無線及び受動動作の証拠と共に提示される。0.17°Cの温度分解能及び350mmの測定範囲が実証された。
【0033】
受動無線センシングは、変換素子のアナログ無線計測を可能にする計装方法である。
【0034】
モノのインターネット(IoT)(インターネット・オブ・シングス)の時代に、この技術には、過酷な環境用の産業センサー技術の現在のニッチ市場から主流市場へ移行する十分な可能性がある。電磁波伝搬に基づく従来の無線通信は、センサーノードが伝導性ハウジング、すなわちファラデー箱、内に配置されるシチュエーション(情況)では効果がないので、超音波伝搬に基づく方法が、次の刊行物において最近提案された。Hagelauer, A.; Ussmueller, T.; Weigel, R.、「SAW and CMOS RFID transponder-based wireless systems and their applications」In Proceedings of the 2012 IEEE International Frequency Control Symposium (FCS), Baltimore, MD, 米国, 2012年5月21日-24日、p. 1-6。
【0035】
超音波伝搬のこの原理は、次の出版物に詳細に記述されている。Hagelauer, A.; Ussmueller, T.; Weigel, R.、「SAW and CMOS RFID transponder-based wireless systems and their applications」、In Proceedings of the 2012 IEEE International Frequency Control Symposium (FCS), Baltimore, MD, 米国, 2012年5月21日-24日、p. 1-6。この刊行物はここで明示的に参照される。
【0036】
ここで提示された著作物では、超音波トランスデューサを音叉共振器に取り付けることにより、チップフリーアプローチを調査する試みである。先ず、高Q共振器の無線質問の概念を議論し、次いで、以下の仮説を検証する実験について記述する。すなわち、受動無線センサーとして、超音波トランスデューサと水晶共振子とを使用することができるであろうか。そして、検出素子のキャラクタリゼーション(特性評価)及びそのパフォーマンス(性能)のその後の解析がこれに続いて行われる。
【0037】
無線センサーシステムに対する概念
表面弾性波デバイスに結合されたアンテナを用いた無線受動センシングと同様に、ここに提示された手法は、送信及び反射信号の時間領域分離に基づいており、これは次の刊行物において議論されている。Reindl, L.; Scholl, G.; Ostertag, T.; Scherr, H.; Wolff, U.; Schmidt, F.、「Theory and application of passive SAW radio transponders as sensors」、IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 1998, 45, 1281-1292。表面弾性波デバイスを用いた無線受動検知に関するその詳細においては、それはここで明示的に参照されるが、その提示された手法は、送信及び反射信号の時間領域分離に基づいている。無線センサーシステムは、能動部品に信号処理を行う励起及び受信素子と、受動センサーノードに発振荷重がかかるトランシーバーとを含んでいる。受動センサーノードは、放射素子すなわち超音波トランスデューサに電気的に接続された共振器から成る。品質係数、すなわち本出願における共振器用の主要な品質係数は、以下のように定義される。
【数1】
ここで、ω0は共振周波数、Wは共振器に蓄積されたエネルギー、及びPは電力損失である。放射素子に結合された共振器では、内部材料による電力損失及び抵抗損は低く、また、発振時間は周囲のエコーより長くなりうるため、共振周波数のチャネルインバリアント測定が無線により可能である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は超音波伝搬による共振周波数の無線読み取りの基本的な概念を示す。
【0039】
温度のような外部環境の影響は、圧電共振器の 剛性テンソルのような材料特性に影響を及ぼす。これは、高調波外乱理論によって説明されるように、共振モードの周波数シフトを引き起こす。この効果は、無線接続を介して受動的に温度を測定するために使用することができ、また、セクション4において実証される。
【0040】
また、識別を可能にし、且つ、特定の測定点への測定値の割当を可能にするために、受動協調ターゲットに識別特徴(ID)を割り当てることも、本発明の範囲内で可能である。信号質問の動作モードと実施及びそのような組み合わされた識別及び/又はセンサーシステムの共振器のコーディング並びにタイプ、デザイン、動作モードについての詳細は、ドイツ特許出願公開明細書(DE 44 13 211 A1)に記述されており、それはここで明示的に参照される。
【0041】
更に、信号質問の動作モードと実施、及びそのような組み合わされた識別及び/又はセンサーシステムの共振器のコーディング並びにタイプ、構成、動作モードについての詳細は、米国特許明細書(US5,691,698)に記載されており、それはここで明示的に参照される。
【0042】
更に、質問ユニットの動作モード、デザイン及び実施、並びにそのような組み合わされた識別及び/又はセンサーシステムの超音波トランスデューサの場合におけるトランスデューサのタイプ、デザイン、動作モードについての詳細は、米国特許明細書(US7,061,381 B2)に記載されており、それはここで明示的に参照される。
【0043】
更に、質問ユニットの動作、構成及び実施、信号質問、及び質問信号の信号伝送、並びに、本発明の範囲内で信号散乱の物理的原理に関して音響信号の散乱に相似的に適用されるであろう、電磁気信号の場合における拡散していない最初の質問信号より長い伝播時間を有する環境からの拡散した信号の受信の場合における共振器内のエネルギー貯蔵のタイプ、構成及び動作についての詳細は、ドイツ特許出願公開明細書(DE 10 057 059 A1)に詳細に記載されおり、また、それはここで明示的に参照される言及される。
【0044】
概念設計
概念設計のための主要な焦点は、無線超音波質問を行う共振周波数の受動抽出である。高Q値を有する温度補償水晶音叉共振器が使用される。本センサーシステムを実現するために、温度計測音叉共振器が本明細書において以降に提示されるであろう。計装セットアップが図2に示される。市販の電子部品は、40kHzの中心周波数を有しており、非常に正確なインピーダンス測定で分析された。
【0045】
図2は、音叉共振器を有する概念設計用の研究用機器での測定セットアップを示す。
【0046】
0.5s(秒)の幅を有するパルスが送信機に印加され、共振周波数付近の2.4Hzの帯域幅に帰着する。これにより、高Q共振器を発振させ、これによりTxとRxの時間領域分離を可能にする。図3は超音波受信機での測定された時間領域信号を示す。励起周波数はバースト後に2ms(ミリセカンド)未満で減衰し、高Q共振器はその共振周波数で発振し始める。この提示された概念は、励起から共振周波数への周波数シフトから成る。後方散乱された信号を、36dBmVのチャネルパワーで、10dBのSNRで、2Vppの100ms(ミリセカンド)のバーストで、350mmの距離に亘って測定することができた。
【0047】
図3は、後方散乱された信号を示す。(a)0.502sの励磁パルス幅、及びQ係数の計算のための減衰用エンベロープ整合(赤破線)を有する共振周波数で高Q係数共振器がリンギング。(b)励起周波数から共振周波数へのシフト。
【0048】
センサーのキャラクタリゼーション
使用されるセンサーは温度測定オシレーター(TSXO)であり、それは音叉共振器として設計されている。該センサーは、その高Q係数及びkHz範囲の低周波により、長い発振時間を達成する。図4における測定のために、-30°Cから+90°Cへの温度勾配が人工気象室内の共振器に付加される。それはバーストモード技術を使用してサンプリングされ、また、温度に依存する共振周波数が、赤色領域として図3aに示されるように、非拘束の時間フレームにおいて多重FFTで計測される。励起周波数は、それを予め得られた共振周波数に設定し、提示されたデジタル制御位相ロックループのフィードバックチェーンを完成させることにより、温度勾配により調節される。励起周波数を予め得られた共振周波数に設定し、測定発振器或いは共振器用の、提示されたデジタル制御位相ロックループのフィードバックチェーンを完成させることにより、励起周波数が温度勾配によって調整されるというこの原理は、次の刊行物に詳細に記載されている。Pohl, A.; Ostermayer, G.; Seifert, F.、「Wireless sensing using oscillator circuits locked to remote high-Q SAW resonators」、IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 1998, 45, 1161-1168。この刊行物はここで明示的に参照される。
【0049】
図4:(a)二乗適合を有する温度の関数としての検出素子の共振周波数のキャラクタリゼーション。(b)mHzでの近似曲線の残差。
【0050】
TSXOは、25°Cで-1.94Hz/°Cの感度を有する二次曲線の温度レスポンスを示す。その等化曲線は、1819ポイントを有する残差に対するノルムとして1.0と4.3552のR二乗に対する値を有する。残差における放物線パターンは、残差の主要な理由が0.1°Cの分解能を有する基準値として使用される温度センサーの量子化誤差によることを示唆する。0.34Hzの現用のFFT周波数帯域幅分解能は、温度分解能を0.17°Cに制限する。
【0051】
音響部品用の信号処理及び信号評価に関する次の刊行物においてクラメール・ラオの限界が詳細に記載されているように、温度に対するより良い分解能を達成することができる。Kalinin, V.、「Comparison of frequency estimators for interrogation of wireless resonant SAW sensors」、In Proceedings of the 2015 Joint Conference of the IEEE International Frequency Control Symposium & the European Frequency and Time Forum, Denver, CO, 米国, 2015年4月12日ー16日、p. 498-503。この刊行物はここで明示的に参照される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
結論
この著作物は、無線超音波チャネルを介して高Q共振器の共振周波数を抽出するための計装方法を提示した。本装置の無線及び受動動作の草案の概念に加えて、受動無線温度測定が提示される。0.17°Cの温度分解能及び350mmの測定範囲が実証された。この提示されたシステムの設計及び実施には、共振周波数及び変換器と共振器との間のインピーダンスを慎重にチューニングする必要があることが示された。更に、環境の雑音レベルによっては、共振周波数の正確な無線抽出のために、共振器のQ係数を高く(~100,000)しなければならない。本明細書において提示された新しい無線検出技術は、可動部や、閉じた空胴内や、水中の環境における測定に関して、大きな潜在的用途を有している。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明は、添付図面に示される典型的な実施例に関連してより詳細に以下に説明される。
図1図1は、質問ユニットとしてソフトウェアレーダーを有している、本発明に係るシステムの概略図である。
図2図2は測定条件の設定概念設計の概略図である。
図3図3は受信信号(帰還信号)の時間領域測定を示す。
図5-1】図5は測定条件の設定の実例である。
図5-2】同上。
図4図4の上段は温度の関数としてのセンサー素子の特性を示す。 図4の下段は受信信号解析を示す。
図6図6は、32.8kHz共振器用の、温度に対する共振周波数の測定図である。
【0054】
図1:この場合には、超音波トランスデューサとして設計された音響変換器を介して音響信号を放射するための質問ユニットとして機能するソフトウェアレーダーとしての信号発生器を有する測定条件の設定。超音波トランスデューサは音響信号を音響チャネルを介して更なる音響変換器に送信し、該音響変換器は協調受動ターゲットとしての共振器に接続される。共振器は、自然環境からの信号が減衰するまで、受信した質問信号、すなわち、電気音響変換器(特に、該共振器)によって電気エネルギーに変換された音響信号のエネルギー、を蓄積する。そして、共振器は電気エネルギーを音響エネルギーに再変換し、それを音響チャネルを介して第1音響変換器へ送信する。無線実験セットアップ:
この測定は、10Vss質問ソースによって50mmの距離で行なわれる。1kmまでの範囲が著者(本発明者)によって達成された。
【符号の説明】
【0055】
1 ソフトウェア超音波レーダー
2 マイクロコントローラ
3 DAC
4 フィルター
5 Tx AMP
6 Rx AMP
7 フィルター
8 ADC
9 Tx信号
10 Rx信号
11 超音波センサー/ラベル
12 調整
13 共振器
14 負荷
15 関数発生器 Tektronix AFG3102
16 超音波送信機
17 オシロスコープ Rohde & Black RTO1044
18 超音波受信機
19 計装電圧(V)
20 励起周波数 =39995.20Hz
21 パルス持続時間 =0.502秒
22 共振周波数 =39996.56Hz
23 減衰時間 =0.502秒
24 品質係数 =101788
25 時間(s)
26 計装電圧(V)
27 時間(s)
28 共振周波数(kHz)
29 32.718kHz共振器
30 二次曲線近似
31 二次曲線近似の残差(mHz)
32 温度(°C)
33 関数発生器
34 超音波送信機
35 超音波受信機
36 オシロスコープ
37 共振器
38 超音波コンバーター
39 決定された共振周波数(kHz)
40 DUTレスポンス
41 Pt100基準値
42 温度(°C)
43 時間(hours)
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6