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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】水栓柱及び吐水口アダプタ
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/10 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
E03B7/10 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021072286
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022166891
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000150095
【氏名又は名称】株式会社竹村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貞治
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180287(JP,A)
【文献】特開平10-183702(JP,A)
【文献】実開昭50-055226(JP,U)
【文献】特開2019-218801(JP,A)
【文献】特開2022-087417(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153444(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置する水道立上管に配設した吐水口部を備える水栓柱において、水抜時を含む止水時に少なくとも内部の残留水を前記吐水口部から外部に排出可能な排水構造を備えるとともに、前記吐水口部の先端に至る通水路の内径の一部を、軸方向下流側へ行くに従って漸次大径となるテーパ面により形成し、かつこのテーパ面の先端の外開口径を12.5mm以上、当該テーパ面の勾配角度を25゜以上乃至45゜以下にそれぞれ設定することにより、当該テーパ面の先端を前記吐水口部の先端として形成することを特徴とする水栓柱。
【請求項2】
屋外に設置する水道立上管に配設した水栓柱吐水口に着脱する吐水口アダプタにおいて、上流端部に、前記水栓柱吐水口に対して着脱する入水口部を兼ねる着脱部を有するとともに、下流端部に吐水口部を設け、かつ前記吐水口部の先端に至る通水路の内径の一部を、軸方向下流側へ行くに従って漸次大径となるテーパ面により形成し、かつ当該テーパ面の先端の外開口径を12.5mm以上、当該テーパ面の勾配角度を25゜以上乃至45゜以下にそれぞれ設定することにより、当該テーパ面の先端を前記吐水口部の先端として形成したことを特徴とする吐水口アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置する水道立上管に配設した吐水口部を備える水栓柱及びこの水栓柱等に用いて好適な吐水口アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の庭などの屋外には、水道立上管に吐水口を備える水栓柱を設置する場合も多いとともに、特に、寒冷地の場合には、凍結を防止するため、不凍栓タイプの水栓柱を設置する場合も多い。ところで、不凍栓タイプの水栓柱は、通常、寒冷期に、不凍栓を閉めて水抜きを行う必要があり、管理が煩わしい課題も存在した。そこで、本出願人は、既に、この課題を解決するため、外気温度が設定温度以下のときに、自動で水抜きができるようにした自動水抜き機構を備える不凍水栓柱を特許文献1により提案した。
【0003】
同文献1に記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱は、外気温度が設定温度以下のときに自動で水抜きができる合理的な機構によって、出水及び水抜きの操作をより的確且つ容易に行うことができる不凍水栓柱の提供を目的としたものであり、具体的には、水抜き機構を備える通水弁機構と、立上げ通水路と、出水部と、操作部と、立上げ通水路と出水部との連通部を開閉する吸気遮断弁と、立上げ通水路に連通する自動水抜き用の吸気開閉機構とを備え、自動水抜き用の吸気開閉機構が、外部に連通する吸気口と、立上げ通水路に連通部の下方に設けられた吸気用連通部を介して連通する通気路とを有し、出水の際には通気路を閉じ、水抜きの際には通気路を開ける吸気逆止弁と、外気温度が設定温度より高いときは通気路を閉じ、外気温度が設定温度以下のときは水抜きが自動的にできるように通気路を開ける吸気用の温度感知弁部とを設けて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-180287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1記載の自動水抜き機構を備える不凍水栓柱は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、立上通水路(水道立上管)に出水部(吐水口)を備えるとともに、この出水部の内部に、水温の検知により開閉を行う吸気逆止弁やサーモエレメントを内蔵するため、止水時には、不凍栓が自動で閉じることにより立上通水路内の残留水が水抜き部位となるドレン部から排水が行われる。一方、出水部の内部にも水が残留するため、この出水部の残留水は、通常、出水部の先端の吐水口(出水口)から排水されるが、吸気通路が存在しないとともに、出水口に発生する表面張力により排出が円滑に行われない難点があった。
【0007】
結局、この場合、吐水口からの排水が十分に行われないことから、出水部の内部に凍結が発生したり、或いは出水部の出口に氷柱状に凍結が発生するなどにより、ユーザが使用したいときに速やかに使用できないという解決すべき課題も存在した。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した水栓柱及び吐水口アダプタの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る水栓柱1は、上述した課題を解決するため、屋外に設置する水道立上管2に配設した吐水口部3を備える水栓柱を構成するに際して、水抜時Prを含む止水時Pcに少なくとも内部の残留水Wrを吐水口部3から外部に排出可能な排水構造Miを備えるとともに、吐水口部3の先端に至る通水路Rの内径Liの一部を、軸方向Fs下流側Fsdへ行くに従って漸次大径となるテーパ面4tにより形成し、かつこのテーパ面4tの先端4tsを吐水口部3の先端として形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る吐水口アダプタAは、上述した課題を解決するため、屋外に設置する水道立上管2に配設した水栓柱吐水口3eに着脱するアダプタを構成するに際して、上流端部Auに、水栓柱吐水口3eに対して着脱する入水口部を兼ねる着脱部5を有するとともに、下流端部Adに吐水口部3を設け、かつ吐水口部3の先端に至る通水路Rの内径Liの一部を、軸方向Fs下流側Fsdへ行くに従って漸次大径となるテーパ面4tにより形成し、かつこのテーパ面4tの先端4tsを吐水口部3の先端として形成したことを特徴とする。
【0011】
加えて、本発明に係る水栓柱1及び吐水口アダプタAにおけるテーパ面4tは、このテーパ面4tの先端4tsの外開口径Loを12.5mm以上とし、当該テーパ面4tの勾配角度Qoを25゜以上乃至45゜以下に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る水栓柱1及び吐水口アダプタAによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 水抜時Prを含む止水時Pcにおける内部の残留水Wrは、ドレン部6から排水されるとともに、吐水口部3からも円滑に排出させることができるため、特に、寒冷地に設置された不凍水栓柱等の吐水口部3の上流側における内部凍結や下流側における氷柱状の凍結を回避することができる。これにより、ユーザが使用したいときに速やかに使用できない不具合を解消できるとともに、通常の水栓柱1であっても残水の迅速かつスムースな排出が可能になり、品質感及び商品性を高めることができる。加えて、吐水口部3の形状変更(加工変更)等により比較的簡易に実施できるなど、実施の容易性及び低コスト性に優れる。
【0014】
(2) テーパ面4tを形成するに際し、テーパ面4tの先端4tsの外開口径Loを12.5mm以上とし、当該テーパ面4tの勾配角度Qoを25゜以上乃至45゜以下に設定したため、現状における上水道の規格等に基づく水栓柱1…の多くをカバーできる。これにより、十分なパフォーマンスを確保する観点から最適な形態として実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好適実施形態に係る水栓柱の水抜時における一部抽出拡大図を含む断面側面図、
図2】同水栓柱の給水時における断面側面図、
図3】本発明の好適実施形態に係る吐水口アダプタの断面構成図、
図4】同吐水口アダプタの下流側から見た外観図、
図5】同吐水口アダプタの外観正面図、
図6】同吐水口アダプタの評価試験時における判定基準表、
図7】同吐水口アダプタの評価試験の一次判定の結果表、
図8】同吐水口アダプタの評価試験の二次判定の結果表、
図9】同水栓柱の変更例を示す断面側面図、
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施形態に係る吐水口アダプタAを含む水栓柱1の構成について、図1図8を参照して説明する。
【0018】
最初に、本発明の理解を容易にするため、水栓柱1の概要について、図1図2を参照して説明する。なお、例示の水栓柱1は、水抜時Prに、検知した水温又は気温が設定温度以下になったなら、内部の残留水Wrをドレン部6から排出可能な自動不凍水栓柱1aを示す。
【0019】
自動不凍水栓柱1aは、図1に示すように、鉛直方向に起立する水道立上管2を備え、この水道立上管2の下部には水抜機構部11を備えるとともに、この水抜機構部11の下端に、給水管100に接続する給水管接続部12、さらに、水抜機構部11と給水管接続部12間に第一開閉弁13を備える。なお、自動不凍水栓柱1aは、通常、水抜機構部11を含む水道立上管2の下部は地中内部に埋設される。図1中、Gは地面の位置を示している。
【0020】
また、水道立上管2の上端部には、ハンドル14を備えるとともに、水道立上管2の中間部2mには、先端側に吐水口部3を有する出水管部15を備える。そして、水道立上管2の内部には通水路Rmを備えるとともに、中心線上には、回動可能な操作ロッド16を配置する。操作ロッド16の下端には、弁部13vを固定し、水道立上管2の固定部位に設けた弁座13sと共に前述した第一開閉弁13を構成する。水抜機構部11は、操作ロッド16の一部をスプール部16sとして利用したスプール弁17を構成し、スプール部16sの中間位置には、ドレン部6の内側開口6iを望ませるとともに、スプール部16sの下端位置には、通水路Rmを望ませる。また、ドレン部6の外側開口6eは外部に望ませるとともに、ドレン部6の中間位置には逆止弁18を介在させる。
【0021】
一方、操作ロッド16の上端はハンドル14に固定する。この場合、操作ロッド16の上端近傍の外周面は、水道立上管2の固定部位の内周面に対して螺合部19を介して係合させることによりハンドル14の回動変位を、操作ロッド16の昇降変位に変換させる。そして、操作ロッド16の中間位置には、弁部20vを固定し、水道立上管2の固定部位に設けた弁座20sと共に第二開閉弁20を構成するとともに、この第二開閉弁20の横側方に位置する水道立上管2の側面には、横方(前方)へ突出する筒形に形成した出水管部15の後端を固定する。そして、この出水管部15の底部面における前端寄りには下方に向けた吐水口部3を配設する。例示の吐水口部3は、少し斜め前方に放水するように、やや傾斜した水栓柱吐水口3eを備え、この水栓柱吐水口3eに吐水口アダプタAを装着して全体の吐水口部3を構成する。
【0022】
このように、吐水口アダプタAは、屋外に設置する水道立上管2を有する水栓柱1に備える水栓柱吐水口3eに装着することが可能であり、特に、止水時Pc及び水抜時Prを繰り返す自動不凍水栓柱1a等の各種水栓柱1に装着して汎用性の高い吐水口アダプタAとして利用することができる。
【0023】
さらに、前端面を閉塞した出水管部15の内部には、吸気弁ユニット7を配設する。この吸気弁ユニット7は、吸気逆止弁21及びサーモエレメント22を内蔵する。そして、吸気逆止弁21の通水路側は、水道立上管2の通水路Rmに連通させ、かつ吸気逆止弁21の通気路側は、サーモエレメント22の二次側に連通させるとともに、サーモエレメント22の一次側は通気路7iを通して大気に連通させる。
【0024】
次に、自動不凍水栓柱1aの機能について、図1及び図2を参照して説明する。図1は水抜時Pr又は止水時Pcの状態、図2は給水時Psの状態を示す。
【0025】
まず、給水時Psには図2に示す状態となる。給水時Psには、ハンドル14を反時計方向へ回動操作する。これにより、操作ロッド16は、螺合部19に係合して回動するため、回動とともに上昇変位し、図2に示すように、第一開閉弁13の弁部13vが上昇変位して開状態になる。スプール部16sにより、ドレン部6の内側開口6iと通水路Rmは閉状態になる。また、第二開閉弁20の弁部20vも上昇変位して開状態となる。この結果、図2に示す矢印fwの経路に沿って給水が行われる。この場合、吸気弁ユニット7の吸気逆止弁21は水圧により閉じた状態になるとともに、気温又は水温により、サーモエレメント22は閉じた状態になり、吸気は遮断される。
【0026】
一方、止水時Pcには図1に示す状態となる。止水時Pcには、ハンドル14を時計方向へ回動操作する。これにより、操作ロッド16は、螺合部19に係合して回動するため、回動とともに下降変位し、図1に示すように、第一開閉弁13の弁部13vが下降して弁座13sに当接する。これにより、第一開閉弁13は閉状態となる。また、スプール部16sが下降変位して、ドレン部6の内側開口6iと通水路Rmが連通状態になるとともに、第二開閉弁20の弁部20vが下降変位して閉状態になる。この場合、気温又は水温により、吸気弁ユニット7のサーモエレメント22は閉じた状態になり、吸気は遮断されるため、水道立上管2の内部の負圧作用によりドレン部6からの排水は行われない。即ち、自動不凍水栓柱1aの内部における水流は発生せず、止水時Pcの状態となる。
【0027】
さらに、この状態(止水時Pc)において、気温が低下することにより水抜時Prの状態となる。水抜時Prの状態は、基本的に図1の示す状態となる。今、気温(水温)が低下し、設定温度以下に低下した場合を想定する。これにより、温度に反応するサーモエレメント22は開状態になり、吸気弁ユニット7は通気路7iを通して大気に連通し、吸気可能な状態になる。この結果、図1に示す点線矢印faの経路により吸気が行われるとともに、通水路Rm内の負圧が解除され、点線矢印frの経路により排水が行われる水抜時Prの状態となる。なお、ドレン部6の逆止弁18は、水抜時Prに開側(図1中、上昇位置)に変位する。
【0028】
ところで、このような構造を有する自動不凍水栓柱1aの場合、出水管部15を備えるとともに、この出水管部15と吸気弁ユニット7の間の空間が通水路Rmとして機能する。また、止水時Pc又は水抜時Prには、第二開閉弁20が閉状態になるため、吐水口部3を除いて密閉状態となる。この結果、出水管部15の内部に生じる負圧作用により、残留水Wrが吐水口部3から排出されない状態になる。これにより、水抜時Prには、吐水口部3からの排水が十分に行われず、出水部の内部に凍結が発生したり、或いは出水部の出口に氷柱状に凍結が発生するなどにより、ユーザが使用したいときに速やかに使用できないという課題が存在した。本発明はこの課題の解決を目的としたものである。
【0029】
次に、本実施形態に係る自動不凍水栓柱1aの要部の構成及び吐水口アダプタAの構成について、図1図8を参照して説明する。
【0030】
自動不凍水栓柱1aは、基本的な構成として、水抜時Prを含む止水時Pcに少なくとも内部の残留水Wrを吐水口部3から外部に排出可能な排水構造Miを備える。具体的には、水抜時Prを含む止水時Pcに残留水Wrが存在する上述した出水管部15及び吐水口部3が当該排水構造Miとなる。
【0031】
また、自動不凍水栓柱1aの吐水口部3は、図1に示すように、出水管部15の底面部に設ける。例示の吐水口部3は、前述したように、少し斜め前方に放水するように、やや傾斜した筒状の水栓柱吐水口3e,及びこの水栓柱吐水口3eに装着(着脱)した吐水口アダプタAにより構成される。この吐水口アダプタAは、単独のホースアダプタ等として使用することができるが、本実施形態の場合、水栓柱吐水口3eに装着することにより、自動不凍水栓柱1aに一体化された吐水口部3として機能する。
【0032】
吐水口部3を構成する吐水口アダプタAは、図1図5に示すように、筒形に形成した通水管部3mを備え、この通水管部3mの上流端部Auに、水栓柱吐水口3eの外周面に螺着(着脱)する内周面を有し、かつ入水口部を兼ねる着脱部5を備えるとともに、通水管部3mの下流端部Adに、吐水口部3の先端を設ける。そして、吐水口部3の先端に至る通水路Rの内径Liの一部を、軸方向Fsの下流側Fsdへ行くに従って漸次大径となるテーパ面4tにより形成し、かつこのテーパ面4tの先端4tsを吐水口部3の先端に形成する。
【0033】
テーパ面4tを形成するに際しては、図3及び図4に示すように、テーパ面4tの先端4tsの外開口径Loを、12.5mm以上とし、当該テーパ面4tの勾配角度Qoを、25゜以上乃至45゜以下に設定することが望ましい。このように選定すれば、現状における上水道の規格等に基づく水栓柱1…の多くをカバーできるため、十分なパフォーマンスを確保する観点から最適な形態として実施することができる。そして、このテーパ面4tの下流端4tsは吐水口部3の先端に一致する。
【0034】
このテーパ面4tについては、その有効性を確認するための検証を行った。その検証結果を図6図8に示す。
【0035】
検証試験に際しては、図7に示すように、ディメンション条件、即ち、外開口径Lo〔mm〕,勾配角度Qo〔゜〕,内径Li〔mm〕の異なるサンプルA-Jの計10サンプルを用意し、一次試験と二次試験を行った。
【0036】
一次試験は、サンプルA-Jに係わる自動不凍水栓柱1a…を冷凍室に設置し、各サンプルについて、給水と水抜を3回以上繰り返して行い、水抜時における吐水口部3からの排水状態を3名で観察するとともに、その判定を行った。図6に判定基準を示す。これにより、一次試験では、図7に示す結果が得られた。具体的には、六本のサンプルA,C,D,F,I,Jが「◎(最良)」となり、四本のサンプルB,E,G,Hが「×(不良)」となった。
【0037】
二次試験は、一次試験で「◎(最良)」となったサンプルA,C,D,F,I,Jを、実際の設置環境に近い条件下となる屋外に設置して同様の試験を行った。即ち、各サンプルについて、給水と水抜を3回以上繰り返して行い、水抜時における吐水口部3からの排水状態を3名で観察するとともに、その判定を行った。判定基準は、一次試験で用いた図6と同じである。これにより、二次試験では、図8に示す結果が得られた。具体的には、サンプルA,C,D,Fが「△(普通)」となり、サンプルIが「○(良)」となり、Jが「◎(最良)」となった。
【0038】
図8の検証結果によれば、排水の状態は、ディメンション条件により大きく影響を受けることを確認できた。特に、今回の検証サンプル中では、サンプルJが「◎(最良)」の判定結果を得た。即ち、外開口径Loが、14.031〔mm〕,勾配角度Qoが、40〔゜〕,内径Liが、9.5〔mm〕のディメンションが最も良い結果を得た。
【0039】
また、図8の検証結果によれば、テーパ面4tの先端4tsの外開口径Loを、12.5mm以上とし、当該テーパ面4tの勾配角度Qoを、25゜以上乃至45゜以下に設定すれば、排水性の善し悪しを除けば、排水を確保して凍結を防止する観点からは、その目的を達成可能である点を確認できた。したがって、特に、テーパ面4tの先端4tsの外開口径Loを、12.5mm以上とし、当該テーパ面4tの勾配角度Qoを、25゜以上乃至45゜以下に設定すれば、現状における上水道の規格等に基づく水栓柱1…の多くをカバーできるため、十分なパフォーマンスを確保する観点から最適な形態として実施することができる。
【0040】
このように、本実施形態に係る自動不凍水栓柱1a(水栓柱1)は、基本的な構成として、水抜時Prを含む止水時Pcに少なくとも内部の残留水Wrを吐水口部3から外部に排出可能な排水構造Miを備えるとともに、吐水口部3の先端に至る通水路Rの内径Liの一部を、軸方向Fs下流側Fsdへ行くに従って漸次大径となるテーパ面4tにより形成し、かつこのテーパ面4tの先端4tsを吐水口部3の先端として形成するようにしたため、水抜時Prを含む止水時Pcにおける内部の残留水Wrは、ドレン部6から排水されるとともに、吐水口部3からも円滑に排出させることができるため、特に、寒冷地に設置された不凍水栓柱等の吐水口部3の上流側における内部凍結や下流側における氷柱状の凍結を回避することができる。これにより、ユーザが使用したいときに速やかに使用できない不具合を解消できるとともに、通常の水栓柱1であっても残水の迅速かつスムースな排出が可能になり、品質感及び商品性を高めることができる。加えて、吐水口部3の形状変更(加工変更)等により比較的簡易に実施できるなど、実施の容易性及び低コスト性に優れる。
【0041】
特に、実施形態では、水栓柱1として、水抜時Prに、検知した水温又は気温が設定温度以下になったなら、自動で開側に切換えることにより内部への吸気を可能にする吸気弁ユニット7を備え、少なくとも水道立上管2の内部の残留水Wrをドレン部6から排出可能な自動不凍水栓柱1aに適用したため、水抜時Prにおける内部の残留水Wrを迅速かつスムースに排出可能となり、自動不凍水栓柱1aにおいて発生しやすい吐水口部3の上流側及び下流側における凍結を有効に解消することができる。
【0042】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0043】
例えば、実施形態では、一例として、自動不凍水栓柱1aを例示して詳細に説明したが、他の各種変更例についても同様に実施可能である。他の変更例を図9に示す。図9は、自動不凍水栓柱1aという点では、図1及び図2に示した自動不凍水栓柱1aと同じである。図1図2)と異なる点は、出水管部15の位置を変更した点が異なる。
【0044】
即ち、図1図2)の実施形態では、出水管部15の内部に吸気弁ユニット7を配設するとともに、出水管部15に設けた水栓柱吐水口3eに、吐水口アダプタAを装着することにより、この吐水口アダプタAの吐出口3を自動不凍水栓柱1aの吐水口部として利用した形態を示したが、図9の変更例では、吸気弁ユニット7を出水管部15の外部に配設、即ち、出水管部15に対して、水道立上管2の後面に配設し、さらに、角度を90゜変更して鉛直方向に配した点が異なる。さらに、図9の変更例では、出水管部15における内部の全体を通水路Rとして利用できるため、図1の出水管部15よりも内径を小さくし、かつ先端の水栓柱吐水口3eを、自動不凍水栓柱1aの吐水口部3として形成した。したがって、変更例の出水管部15の先端に設けた吐水口部3の形状は、吐水口アダプタAの先端に設けた吐水口部3の形状と同じになる。
【0045】
図9における他の構成は、図1の構成と同じになる。したがって、図9における図1図2)と同一部分には同一符号を付して、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。図9に示す自動不凍水栓柱1aも、基本的な機能及び動作は、図1及び図2に示した自動不凍水栓柱1aの機能及び動作と同じになる。
【0046】
なお、図9は、自動不凍水栓柱1aの変更例として示したが、本発明は、吐水口部3の形状を要部として構成するため、いわゆるマニュアル操作により水抜きを行う不凍水栓柱であっても同様に適用できる。したがって、水栓柱1として、水抜時Prに、少なくとも水道立上管2の内部の残留水Wrをドレン部6から排出可能な不凍水栓柱に適用することも可能であり、特に、水抜時Prにおける内部の残留水Wrを迅速かつスムースに排出できるため、不凍水栓柱における吐水口部3の内外で発生する凍結を効果的に解消することができる。さらに、凍結防止機能を持たない通常の水栓柱1にも同様に適用することができる。
【0047】
また、実施形態では、テーパ面4tの軸方向における傾斜面は、平坦に形成した場合を示したが、湾曲面や凹凸面が一部又は全部に含まれている場合や表面にコーティング処理を施すなどの表面処理や表面加工か施されている場合を排除するものではない。一方、吐水口アダプタAは、装着する水栓柱吐水口として、屋外に設置する水道立上管2を有する水栓柱1に備える水栓柱吐水口3eに適用することができるが、他の各種の吐水口や排水口に着脱することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る水栓柱及び吐水口アダプタは、屋外に設置する水道立上管に配設した吐水口部を備える各種水栓柱に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:水栓柱,1a:自動不凍水栓柱,2:水道立上管,3:吐水口部,3e:水栓柱吐水口,4t:テーパ面,4ts:テーパ面の先端,5:着脱部,6:ドレン部,7:吸気弁ユニット,Pr:水抜時,Pc:止水時,A:吐水口アダプタ,Au:上流端部,Ad:下流端部,Lo:外開口径,Li:通水路の内径,Qo:勾配角度,Wr:残留水,Mi:排水構造,R:通水路,Fs:軸方向,Fsd:軸方向の下流側,
図1
図2
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図9