(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】気象観測機能を備えた小河川用の水位測定装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/02 20060101AFI20231227BHJP
G01F 23/00 20220101ALI20231227BHJP
【FI】
G01W1/02 Z
G01F23/00 Z
(21)【出願番号】P 2021072349
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】592070579
【氏名又は名称】山田技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠幸
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3194252(JP,U)
【文献】特開2019-175147(JP,A)
【文献】特開2017-150348(JP,A)
【文献】特開2020-134503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00 - 1/18
G01F 23/00
G01F 23/14 - 23/2965
E02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小河川の水位を測定する装置において、
橋梁に起立したステンレス管支持柱に、通信機能を有すマイコン計測盤、電源となるソーラパネル、河川撮像カメラ、GPSアンテナを設け、さらに気象観測として雨量計、風向/風速計、気温/湿度/気圧計を備え、
上記ステンレス管支持柱の下端から水平に延びて一体化したアームの先端に水面までの距離を計測する距離計を取付け、上記マイコン計測盤は全ての計測データを集計し、無線通信回線を用いて専用サーバーへ伝送する機能を有し、上記ソーラパネルは向きの調整が出来るように方位調整金具を介してステンレス管支持柱に取付けられたことを特徴とする気象観測機能を備えた小河川の水位測定装置。
【請求項2】
上記気象観測として、雨量計、風向/風速計、気温/湿度/気圧計を備えることなく、気象庁などの外部機関が発表する情報を取得するようにした請求項1記載の気象観測機能を備えた小河川の水位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気象を観測する機能を備えた小河川の水位を計測することが出来る測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、地球温暖化に伴って降水量が多くなって各地で大雨が発生し、洪水発生の頻度が高まっている。国が直接管理する大河川(一級河川)の洪水対策用に用いる水位観測点は温暖化と共に増加している。しかし、大河川の毛細管と言われている小河川の数は多いが地方自治体の管理域にあり、その為に観測の手が届いていない。
【0003】
一般的に大河川には多くの小河川が流れ込み、その集水域は広く、その中における線状降水帯がもたらす部分的集中豪雨の位置を知ることで大河川が増水する原因となる地域の特定が可能となる。しかし広域に分散している小河川に使用される水位観測装置は殆どなく、気象観測も行うことが出来るように一体化して簡易に設置できる手頃な水位測定装置の開発が望まれている。
【0004】
その原因の一つに公共事業予算が縮減されていることで、その為に小河川の水位測定装置を増設することが困難になっている。気象観測や河川水位の情報を社会的に適用する場合、計測値の信憑性が問われる。測定機器の精度と検査基準があり、製造コストや維持管理費の増大が障害になっていることで、多数の小河川の水位を測定することは容易でない。
従来、豪雨によって上昇する大河川の水位を予測して、河川の氾濫を抑制することが出来る技術は色々知られている。
【0005】
特開2003-293344号に係る「河川の水位予測装置」は、 精度良く河川の水位を予測できる。
そこで、河川の水位予測装置11は、河川4の水位を計測し、記憶する水位計測部と、河川流域の降雨量を計測し、記憶する降雨量計測部と、これらの計測値に基づいて河川の水位を予測する水位予測モデルとを備えている。水位予測モデルは自己回帰部分とFIRモデル部分とを有し、この水位予測モデルはモデル同定部により同定される。モデル同定部は、上記の計測値に基づいて、自己回帰部分のパラメータとFIRモテル部分のパラメータを独立して別々に求める。
【0006】
特開2001-215119号に係る「水位計算装置、水位予測システム及び水位予測方法」は、計算量が少なく且つ高精度な河川の水位予測を数値計算にて行うことが出来る。
そこで、所定の時間間隔で河川の水位を測定する水位測定部と、所定の時間間隔で降雨量を測定する降雨量測定部とを有する測定装置と、第1の関係式が蓄積された第1の蓄積部と、第2の関係式が蓄積された第2の蓄積部と、測定された水位と第1の関係式とから流路抵抗を求め、測定された降雨量と第2の関係式とから流入量を求め、求めた流路抵抗と流入量とから河川の予測水位を算出する演算部と、算出した予測水位と測定された水位とを比較し、その誤差に基づいて第1の蓄積部によって蓄積されている第1の関係式と第2の蓄積部によって蓄積されている第2の関係式とを更新する更新部とを有する水位計算装置とを備えている。
【0007】
【文献】特開2003-293344号に係る「河川の水位予測装置」
【文献】特開2001-215119号に係る「水位計算装置、水位予測システム及び水位予測方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、環境の温暖化の為に降水量が増加する状況において、大河川の水位上昇や氾濫予測を的確に早く行うには、大河川に集まる多くの小河川の水位を観測する必要がある。しかし、公共事業の予算が削減されて小河川までは手が届かない。
本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、各地域毎の自治会などが中心となり、自主防災体制における水位測定装置の設置と維持管理を行うことが出来るように、簡単な構造でコストも安くなる小河川の水位測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、各地区の自治会などを中心とする自主防災体制を活用し、この体制に対して国の補助予算を活かす方法で、気象観測と小河川用の水位計を一体化した装置を設置し、維持管理を簡便に行えるシステムを構成している。
気象観測は雨量を中心に、可能であれば風向/風速・気圧・気温・湿度を測定できるユニットとし、並びに、水位計として超音波距離計や電波距離計・レーザ距離計・水圧計、これらの内、経済的寸法的に可能な計測ユニット一つを組み合わせた水位計に観測位置を半径10m程度で明確にする簡易なGPSユニットを取付ける。
ところで、気象観測に関しては、独自に雨量、風向/風速・気圧・気温・湿度を測定することは出来るが、気象庁などの外部機関が発表する情報を取得して用いることも可能である。
【0010】
観測の時間管理はGPS信号に含まれる世界標準時間を用い、計測情報には自治会などの連絡先を含め、日常における異常信号の発生を地元の人が確認できるようにすることで、計測値の大まかな信憑性確保に用いる。
更に、河川の状態をリアルタイムに目視できる画像を添付し、これにより、観測値の信憑性を画像でも確認できるようにしている。
【0011】
このように、気象観測、小河川の水位観測、画像を同時に無線伝送する装置を具体化する為に次のように構成している。
観測電源として、日当部ではソーラパネルを用い、日陰部では河川水を用いて稼働するピコ水力発電を電源とする。場所によっては両方を装備し、観測値と画像取得、情報伝送で消費する電力の最小化を図るために専用のマイクロコンピュータを製作し、観測の時間間隔は電源状況に応じて可能な時間間隔、電力が不足する場所では15又は30分毎、不足しない場所や時間帯では5~10分毎に専用のサーバーに向け情報を送り、サーバー内にデータを記録すると共に専用ソフトで情報配信画像を生成する。
【0012】
情報配信はインターネットを用い、パスワードによる情報閲覧をスマートフォンやタブレットでも可能とする。
水位や気象観測値が設定値を超えた場合、予め設定した相手先、PC・スマートフォン・タブレットに警報を送る機能を付加する。
更に、地域防災の意識高揚を目指し、大型マーケットや最寄り駅に大型表示器を設けて通常時も観測値を表示する等の実践をすることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
多数の小河川は大河川に流れ込んで合流するが、これら小河川の水位を測定することで、近い将来の大河川の水位を推測することが出来る。しかも、現実の水位のみならず気象観測を行うことで、小河川の現在の水位の他に近い将来の水位を予測することが可能となる。
【0014】
そして、数多くある小河川の管理は地方自治体が組織する自治会などが主体と成って維持管理することが出来る。
小河川の水位や気象観測値が設定値を超えた場合、予め設定した相手先、PC・スマートフォン・タブレットに警報を送って知らせることが可能となる。
更に、大型マーケットや最寄り駅に大型表示器を設けて通常時も観測値を表示することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る気象観測機能を備えた小河川の水位測定装置を示す実施例。
【
図2】橋梁に起立する支持柱に方位調整金具を介して取付けたソーラパネル。
【
図3】橋梁に起立する支持柱に方位調整金具を介して取付けたソーラパネル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る「気象観測機能を備えた小河川用の水位測定装置」を示す実施例である。
同図の1は水面間距離を測る距離計、2は通信機能を有すマイコン計測盤、3はソーラパネル、4は河川撮像カメラ、5は雨量計、6は風向/風速計、7は気温/湿度/気圧計、8はステンレス管支持柱、9はガードレール支柱、10はガードレール板、11は小河川の水面、12はGPSアンテナ、13は方位調整金具をそれぞれ表わしている。
【0017】
上記ステンレス管支持柱8に通信機能を有すマイコン計測盤2、ソーラパネル3、河川撮像カメラ4、雨量計5、風向/風速計6、気温/湿度/気圧計7、GPSアンテナ12が取付けられ、そしてステンレス管支持柱8の下端から水平にアームを延ばし、該アームの先端に上記距離計1を取付けている。
このように、本発明はステンレス管支持柱8とアームに取付けられて一体化して構成し、橋梁のガードレールや欄干、例えば、同図に示すようにガイドレール支柱9に簡易に取付けることが出来る構造とし、しかも比較的軽い重量を有している。
【0018】
上記距離計1の取付け個所が橋梁であれば、真下が河川水面である為に水位の測定に最良の場所である。
従来、橋梁のステンレス管支持柱8及びアームを橋梁の欄干に取り付ける場合、欄干のデザインや強度を考慮した形状とし、重量、並びに、風圧荷重を考慮する必要があり、特に車両の衝突も考慮する必要がある。
橋梁欄干への車両の衝突については、ガードレールへの衝突と似た考え方で衝突の衝撃を適度に吸収する為に変形を前提としている。また、水位計の衝突に対して適度な強度と変形が考慮されている。
【0019】
ところで、上記アーム先端に取付けた距離計1で水面11までの距離を測定し、河川撮像カメラ4を用いて河川の流れ状況の画像を取得する。そして、風向/風速計6にて10分毎の瞬間最大と平均風を測定する。
また、雨量計5にて10分毎の雨量を0.1mm単位で測定し、気温/湿度//気圧計7にて10分毎の平均を測定し、ソーラパネル3で電力を供給し、昼間の余剰電力をマイコン計測盤2内の蓄電池に充電して夜間と雨天時の電力をカバーすることが出来る。
【0020】
マイコン計測盤2は全ての計測データを集計し、無線通信回線を用いて専用サーバーへ伝送することが出来る。
ステンレス管支持柱8は適度な肉厚を有し、車両が衝突した時には衝撃を吸収して曲がることが出来る強度としている。
ステンレス管支持柱8はガードレール支柱9に取付けられているが、化粧欄干に取り付ける場合もあり、欄干形状にあった金具を製作して同様の方法で取り付ける。
【0021】
図2、
図3はステンレス管支持柱8に取付けた場合のソーラパネル3を表している実施例であり、
図2は正面を向いている場合、
図3は左右方向を向いている場合を示している。
すなわち、ソーラパネル3は太陽が昇る方向を向いているが、方位調整金具13を介してステンレス管支持柱8に取付けられている。したがって、ステンレス管支持柱8を中心に±40度の角度でソーラパネル3の方位調整が出来る構造としている。
【符号の説明】
【0022】
1 距離計
2 マイコン計測盤
3 ソーラパネル
4 河川撮像カメラ
5 雨量計
6 風向/風速計
7 気温/湿度/気圧計
8 ステンレス管支持柱
9 ガイドレール支柱
10 ガイドレール板
11 小河川の水面
12 GPSアンテナ
13 方位調整金具
14 アーム