(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】糸のインライン処理のための処理ユニット
(51)【国際特許分類】
D05C 11/24 20060101AFI20231227BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
D05C11/24
D06B11/00 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022111542
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2019511721の分割
【原出願日】2017-08-25
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2016-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517441044
【氏名又は名称】カラーリール グループ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】マーティン エクリンド
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0135931(US,A1)
【文献】特開2006-299462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
D05C 1/00-97/12
D06B11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸消費デバイス(15)とともに使用する少なくとも1本の糸(20)のインライン処理用の処理ユニット(100)であって、前記処理ユニット(100)は、
前記少なくとも1本の糸(20)に対し異なる位置に配置された複数のインクジェットノズル(152a-g)と、
隣接する耐力構造体(30)に取り付けられるように構成された少なくとも1つの支持機構(110)
であって、当該支持機構(110)は前記処理ユニット(100)を支える支持機構(110)と、
前記インクジェットノズルの動作を制御するように構成された制御ユニット(190)と、
グラフィカルユーザインタフェイスを提供するよう構成され、さらに前記グラフィカルユーザインタフェイスを介してユーザ入力に基づいて前記複数のインクジェットノズルの動作を制御できるように、前記制御ユニット(190)と通信するよう構成されるディスプレイ(195)と、
を備え、
前記少なくとも1本の糸(20)は使用時に動いており、各ノズルは、作動された場合に少なくとも1本の糸(20)上に1つ以上のコーティング物質を分配するよう構成され
、
ここで前記処理ユニット(100)は
前記糸消費デバイス(15)からスタンドアロンユニットとして設けら
れる、処理ユニット。
【請求項2】
前記ノズル(152a-g)の反対側で、給糸方向に対応する方向で配置された第1の糸ガイドデバイスと第2の糸ガイドデバイス(140、160)とをさらに備える、請求項1に記載の処理ユニット(100)。
【請求項3】
前記支持機構(110)は、前記処理ユニット(100)が前記糸消費デバイス(15)に関連して移動可能であるよう調整可能である、請求項1または2に記載の処理ユニット(100)。
【請求項4】
少なくとも複数のノズル(152a-g)を囲むハウジング(105)をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理ユニット(100)。
【請求項5】
前記ハウジング(105)は処理ユニット全体用の防護カバーを形成する、請求項4に記載の処理ユニット(100)。
【請求項6】
前記ハウジング(105)は、前記糸(20)が前記処理ユニット(100)を通して送られた場合に水平方向に少なくとも部分的に延在するように、少なくとも部分的に、糸消費デバイス(1)と接続された場合に水平方向に延在する、請求項4または5に記載の処理ユニット(100)。
【請求項7】
前記ハウジング(105)はL字形である、請求項4~6のいずれか一項に記載の処理ユニット(100)。
【請求項8】
前記糸(20)上に1つ以上のコーティング物質を固定する少なくとも1つの固定デバイス(170)をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の処理ユニット(100)。
【請求項9】
少なくとも1つの給糸デバイス(130)をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の処理ユニット(100)。
【請求項10】
前記ディスプレイ(195)は、前記処理ユニット(100)の端部に設けられる、請求項1に記載の処理ユニット(100)。
【請求項11】
糸消費デバイス(15)と少なくとも1つの請求項1~10のいずれか一項に記載の糸処理ユニット(100)を備える、糸消費ユニット。
【請求項12】
前記少なくとも1つの糸処理ユニット(100)が前記糸消費デバイス(15)の上で少なくとも部分的に配置される、請求項11に記載の糸消費ユニット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの糸処理ユニット(100)が前記糸消費デバイス(15)上に配置される、請求項11に記載の糸消費ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刺繍機等の糸消費デバイスの技術分野に関する。本発明は特に、そのような糸
消費デバイスと関連して使用される処理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
糸にある処理を施すよう設計されたインライン装置を有する、刺繍機等の糸消費デバイ
スを提供することが示唆されている。そのようなインライン装置は、例えば糸を着色する
ため使用され得、ここで、刺繍機を使用して多色パターンを生産する場合に、多色ノズル
は複数の前着色した糸の現在の使用に取って代わり得る。
【0003】
ノズルが通過する糸を着色するよう配置される場合、ノズルと使用中の糸との間の高精
度のアラインメントを有することが重要である。しかしながら糸消費デバイス、特に刺繍
機は刺繍動作中、特に刺繍される織物を移送する可動ステージにより、通常、激しい振動
を受けやすい。したがって、既存の糸消費デバイスを使用して所望のインライン処理を達
成することが難しいことが証明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これを考慮すると、前記のデメリットに対処する、糸のインライン処理用の改善したシ
ステムが必要である。
【0005】
本発明の目的は、減少した処理品質に関連する前記の問題を生じることなく、既存の糸
消費デバイスと共に使用されることが可能な処理ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によると、糸消費デバイスを用いた使用のための処理ユニットが提供される
。処理ユニットは、少なくとも1本の糸のインライン処理を提供するよう構成され、また
、少なくとも1本の糸に関連して異なった位置に配置された複数のノズルを備える。前記
少なくとも1本の糸は使用中に動いており、各ノズルは作動された場合に少なくとも1本
の糸に1つ以上のコーティング物質を施すよう構成され、ここで、前記処理ユニットはス
タンドアロンユニットとして提供される。
【0007】
処理ユニットは、第1の糸ガイドデバイスと、ノズルの反対側に配置された第2の糸ガ
イドデバイスとを給糸方向に対応する方向でさらに備え得る。
【0008】
処理ユニットは少なくとも1つの支持機構をさらに備え得る。支持機構には、前記処理
ユニットを隣接する耐力構造体に取り付ける手段が設けられる。
【0009】
一実施形態では、支持機構は、処理ユニットが前記糸消費デバイスに関連して移動可能
であるように調整可能である。
【0010】
処理ユニットは、少なくとも複数のノズルを囲むハウジングをさらに備え得る。
【0011】
ハウジングは処理ユニット全体用の防護カバーを形成し得る。
【0012】
一実施形態では、ハウジングは、糸が処理ユニットを通して送られた場合に水平方向に
少なくとも部分的に延在するように、少なくとも部分的に、糸消費デバイスと接続された
場合に水平方向に延在する。
【0013】
ハウジングはL字形であり得る。
【0014】
処理ユニットは前記糸上に1つ以上のコーティング物質を固定する少なくとも1つの固
定デバイスをさらに備え得る。
【0015】
一実施形態では、処理ユニットは少なくとも1つの給糸デバイスをさらに備える。
【0016】
処理ユニットは、少なくとも前記複数のノズルの動作を制御する制御ユニットをさらに
備え得る。
【0017】
一実施形態では、処理ユニットはグラフィカルユーザインタフェイスを提供するよう構
成されたディスプレイをさらに備える。
【0018】
ディスプレイは、前記グラフィカルユーザインタフェイスを介してユーザ入力に基づい
て前記複数のノズルの動作を制御できるように、前記制御ユニットと通信するよう構成さ
れ得る。
【0019】
ディスプレイは、前記処理ユニットの端部に設けられ得る。
【0020】
第2の態様によると、糸消費ユニットが提供される。糸消費ユニットは、第1の態様に
よる糸消費デバイスと少なくとも1つの糸処理ユニットとを備える。
【0021】
前記糸消費デバイスの上で少なくとも部分的に、または、前記糸消費デバイス上に、少
なくとも1つの糸処理ユニットが配置され得る。
【0022】
(定義)
ここで「糸消費デバイス」とは、使用中に糸を消費する任意の装置である。それは例え
ば、刺繍機、織機、ミシン、編み機、表面処理または表面被覆、または、染色等の糸を物
質に曝すことを含む他の任意のプロセスの利益を受け得る、他の任意の糸消費装置であり
得る。
【0023】
ここで「スタンドアロン」とは、関連する作動機器、すなわち関連する糸消費デバイス
との関係を表す用語であり、スタンドアロンデバイスまたはスタンドアロンユニットと、
当該デバイスまたはユニットの所望の機能性を可能にするその周辺の作動機器との間に本
質的な機械的結合が無いことを意味する。
【0024】
ここで「ハウジング」とは、任意の支持構造物であり、その中に備えるその構成要素用
の必要な取り付け手段を提供する支持構造物である。したがって、ハウジングは必ずしも
周囲エンクロージャを形成するのではなく、むしろ支持体を形成し得る。
【0025】
ここで「処理」とは、糸のプロパティの変化を生じるよう設計された任意のプロセスで
ある。そのようなプロセスは着色、湿潤、潤滑、洗浄、固定、加熱、硬化等を含むが、こ
れらに限定されない。
【0026】
ここで「糸」とは、可撓性のある細長い部材または細長い基板であり、幅方向と高さ方
向とにおいて薄く、本明細書に記載されたシステムのいかなる部品の縦方向延長部よりも
、ならびに、その幅寸法と高さ寸法よりもはるかに大きい、縦方向延長部を有する。典型
的には、糸は一緒に束ねられ、または撚り合わせた複数の撚りから成り得る。したがって
、糸の用語は、ガラス繊維、羊毛、綿、またはポリマー、金属、または例えば羊毛、綿、
ポリマーまたは金属の混合物等の合成物質等の様々な異種材料から形成されるヤーン、ワ
イヤ、撚り糸、フィラメント等を含む。
【0027】
ここで、撚りとは、糸の部分を形成する可撓性部材である。典型的には、撚りは一緒に
撚り合わせられるいくつかのフィラメントから成る。均衡の取れた糸、すなわち、キンク
のない糸または非常に少ないキンクを有する糸を形成するため、撚りとフィラメントとは
いくつかのケースでは逆方向にねじることができる。
【0028】
当該明細書の中では、上流および/または下流についてのすべての言及は、糸消費デバ
イスの通常動作の間の、すなわち、デバイスが動作してデバイスを通って連続的に通常の
動作方向に移動する糸等の細長い基板を処理する場合の、相対位置として解釈されるべき
である。したがって上流構成要素は、糸の特定の部分が、下流構成要素を通過する前にそ
れを通過するよう配置される。
【0029】
発明の実施形態を本発明の以下の説明において記載するが、ここでは、発明概念をいか
にして実施することができるかについての非限定的実施例を示す添付図面の参照が指示さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来技術によるシングルヘッド刺繍機の概略図である。
【
図2】従来技術によるマルチヘッド刺繍機の概略図である。
【
図3a】一実施形態による糸消費ユニットの概略図である。
【
図3b】一実施形態による処理ユニットを有する糸消費ユニットの概略図である。
【
図4】一実施形態による処理ユニットの側面図である。
【
図5】一実施形態による処理ユニットの概略図である。
【
図6】一実施形態による、処理ユニットと伴に使用するノズルヘッドの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
始めに
図1において、従来技術によるシングルヘッド刺繍機1を概略的に示す。刺繍機
は、その上に機械1の作用部品が取り付けられた剛性スタンド2aと、刺繍される織物を
保持する可動ステージ2bとを含む。動作の間、可動ステージ2bは制御されて、高速に
その位置をX方向とY方向で(すなわち、水平面で)変更する。作用部品とは可動ステー
ジ2bと、刺繍ヘッド3と、その関連針4と、糸5a~fと、制御インタフェイス6とで
ある。制御インタフェイス6は、オペレータが、刺繍デザイン、保守等に関して刺繍機1
の動作を制御することを可能にするディスプレイとして形成される。刺繍用に使用する糸
5は、別個の糸駒5a~fとして提供され、各糸駒5a~fは固有の色の糸を保持する。
したがって、刺繍機1の動作の制御は、どの色が使用されるかについての制御、また結果
的に刺繍の間、どの糸駒が使用されるかについての制御を含む。
【0032】
刺繍機1の正確な構成は製造者により異なり得るが、基本的な技術は当該技術分野でよ
く知られており、ここでは説明されない。
【0033】
図2に、既存の刺繍機10の別の実施例を示す。実施例の刺繍機10はマルチヘッド刺
繍機であり、これはいくつかのシングルヘッド刺繍機1が単一ステージ12によって接続
されることを意味する。動作の間、1つ以上のシングルヘッド刺繍機1は稼働し得る。図
2で示すように、マルチヘッド刺繍機10は、好ましくは一般的な可動ステージ2bに関
連する。
【0034】
図3aに、糸消費ユニットの概略図を示す。糸消費ユニットは、以下に詳述するように
、例えば刺繍機、織機、ミシン等の形式で糸消費デバイス15を備え、また、処理ユニッ
ト100を備える。
【0035】
ここで
図3bでは、糸消費デバイス15を刺繍機15として例示し、ここで処理ユニッ
ト100を備えたシングルヘッド刺繍機として図示する。処理ユニット100は、刺繍機
15が、従来の刺繍機に必要であるような、固有に前着色した糸の提供無しに動作するこ
とを可能にする。代わりに処理ユニット100は、色刺繍を製造し得るよう、所定の着色
パターンによる糸20のインライン着色を提供する。したがって、処理ユニット100は
図1~2に示した個々の糸駒5a~fに取って代わる。
【0036】
図3bに示すように、処理ユニット100と刺繍機15との唯一の接続は糸20ならび
に電気接続(図示せず)である。したがって処理ユニット100は、可動ステージ2bと
機械的接続を全く有しないスタンドアロンユニットとして提供される。
刺繍機15から処理ユニット100まで振動が伝達されることを防ぐため、多くの方法で
、処理ユニット100用の別個の取付が実現され得る。
図3bに、3つの代替的な取付を
示す。3つのすべての代替案に関し、処理ユニット100に支持機構110が設けられる
。支持機構110は例えば、処理ユニット100の全体を支えるよう設計されたビームま
たは他の剛性構成要素であり得る。
【0037】
支持機構110が耐力構造体30に取り付けられ得るように、またしたがって処理ユニ
ット100の全体が耐力構造体30に取り付けられ得るように、支持機構110に、例え
ばねじ/ボルト、および関連する穴の形状で、取付手段(図示せず)が設けられる。耐力
構造体30は例えば、壁30a、天井30b、または床30cであり得る。通常、処理ユ
ニット100の全体の重さを支える1つの耐力構造体30a~cのみを使用することが必
要であることに留意すべきである。任意の実施形態では、スタンドアロンの処理ユニット
100は、処理ユニット100への振動の伝達を抑えるサスペンション機構を介して糸消
費デバイス15に取り付けられる。
【0038】
動作の間、特にステージ2bの動きによって生ずる刺繍機15の激しい振動は、これが
スタンドアロンユニットとして提供されるため、処理ユニット100に伝達されない。し
たがって、動作の間の糸の正確な着色が可能である。
【0039】
図4に、処理ユニット100の実施形態の側面図を示す。ここで処理ユニット100に
沿って延在するビームの形状の支持機構110は伸縮自在であり、これは処理ユニット1
00が実線で示した動作位置または破線で示したサービス/保守位置に位置し得ることを
意味する。支持機構110の伸縮自在の機能は、例えば相互に関連して摺動可能に配置さ
れる2つのビーム部材を有することにより達成され得る。処理ユニット100が実質的に
鉛直な回転軸に沿って回転され得るように、支持機構110は、他の実施形態において回
転可能であり得る。
【0040】
可動支持機構110の提供は、
図2に示すように複数の処理ユニット100がマルチヘ
ッド刺繍機15に接続して配置される場合に特に有利であり、これは、それが無ければサ
ービスおよび/または保守のために処理ユニット100にアクセスすることは困難であろ
うからである。
【0041】
図5に、処理ユニット100の様々な構成要素を示す。
図5において見られるように、
構成要素の過半数はハウジング105の内部に配置され、また、ハウジング105はハウ
ジング105の上部で延在する支持機構110に接続する。ハウジング105は、処理さ
れた糸20が処理ユニット100を出る前端部から、後端部へと延在する。ハウジング1
05の後端部は、糸駒120を載せるため、好ましくは開いたままであり、または少なく
とも開閉可能である。糸駒120は好ましくは、着色されていない糸、または、様々なそ
の他の色へのインライン着色および/または、着色効果に適した任意の他の標準色の糸を
保持している。
【0042】
ハウジング105は、処理ユニット100の様々な構成要素を収容するため、例えば箱
状エンクロージャであり得る。箱状エンクロージャは、閉鎖空間を形成するよう形成され
、または組み立てられた金属板によって形成され得る。支持機構110は、処理ユニット
100を支えてその支持を可能にするためだけでなく、ハウジング105用の取付手段を
提供するためにも使用され得る。ハウジング105は例えば、水平方向延長部、縦方向延
長部、または水平方向延長部と縦方向延長部との組み合わせを有し得る。好適な実施形態
を表す
図5では、ハウジング105はL字形を有する。ハウジング105の水平部分は第
1のいくつかの構成要素を取り囲み、また、ハウジング105の鉛直部分は第2のいくつ
かの構成要素を取り囲む。ハウジング105のこの特別な設計は、それが無ければ相容れ
ない2つの特徴間に非常に効率的なトレードオフを提供すること、すなわち水平方向にコ
ンパクトなユニットを提供し、また、内側構成要素への容易なアクセスを提供することを
証明した。完全に水平方向に延在するハウジング105が使用される場合、その水平方向
延長部は比較的大きくなり、それによって鉛直方向に延在するハウジング105はハウジ
ング105の内部の様々な構成要素にアクセスすることを困難にする。
【0043】
糸駒120のすぐ下流には、処理ユニット100を通して糸を前方に引っ張るよう構成
された糸供給装置130が配置され得る。糸供給装置130はここでは詳述しないが、よ
り一般的な理解のため、糸供給装置130は糸20を受け、また送るものである。このた
め、糸供給装置130は以下でさらに説明する制御ユニット190によって制御される。
糸供給装置130はまた、好ましくは、例えば、駆動ローラと、エンコーダホイールと、
1つ以上の糸ガイドとによって糸の張力を制御するよう構成される。糸供給装置130に
通過した後、糸20は糸ガイドデバイス140と係合する。例えば、1つ以上のガイドロ
ーラ142、144またはその他の適切な手段の形状であり得る糸ガイドデバイス140
は、糸20が、放出デバイス150の一部を形成する1つ以上の処理ノズルと整列するこ
とを確実にしている。放出デバイス150は、糸20が放出デバイス150を通るときに
着色物質等の処理物質を糸20上に放出するよう構成される。このため、ノズルは好まし
くは、
図6に関連してさらに説明するように、糸20の縦方向に配置される。
【0044】
放出デバイス150の下流では、別の糸ガイドデバイス160が設けられる。糸20の
位置が、それが放出デバイス150に沿って移動する間適正であるように、第2の糸ガイ
ドデバイス160は第1の糸ガイドデバイス140と連携する。第2の糸ガイドデバイス
160はまたその縦方向軸に沿って糸20の回転を引き起こすよう設計され得るが、第2
の糸ガイドデバイス160は、例えば1つ以上のガイドローラ162、164の形状であ
り得る。以下でまた説明するように、この付加的な機能は着色について利点を提供し得る
。
【0045】
そして、糸20は前方に供給され、糸20に処理物質を固定させるために提供される1
つ以上の固定ユニット170を通過する。処理物質、例えば着色物質が糸20上に硬化ま
たは固定されるよう、固定ユニット170は好ましくは、熱風供給要素または加熱した要
素、またはUV光源等の加熱手段を備える。
図5に示すように、固定ユニット170は、
水平方向に、鉛直方向に、または水平方向と鉛直方向の間の角度において配置され得る。
【0046】
ハウジング105から出る前に、糸20は、超音波浴等のクリーニングユニット180
を通過し、ここで不要な粒子が糸20から取り除かれる。処理物質が糸20に固定されて
いるので、クリーニングユニット180は、処理物質が影響を受けないようにする。
【0047】
処理ユニット100はハウジング105の内側に配置された潤滑ユニット185をさら
に備え得る。糸の経路の様々な位置に配置された、追加の糸緩衝装置と糸供給装置(図示
せず)とがまた、処理ユニット100内に含まれ得る。
【0048】
糸20は好ましくは開口部または類似のものを通って処理ユニット100を出て、これ
により糸20は、
図3a~bに示すように、刺繍機15等の関連付けられた糸消費デバイ
スへ送られる。
【0049】
動作の間、糸20と係合する糸供給装置130と他の構成要素は、好ましくは、処理ユ
ニット100から糸20を引っ張るのに必要な力、すなわち、下流の刺繍機15によって
付与された引張力が、処理ユニット100が従来技術の糸駒と取って代わられたときとほ
とんど同じであるよう構成される。
【0050】
また、電力エレクトロニクス、通信モジュール、メモリ等の関連エレクトロニクスを有
する制御ユニット190がまた提供される。制御ユニット190は、糸供給装置130と
、放出デバイス150と、固定ユニット170とに接続され、これらの構成要素の動作の
制御を可能にする。さらに、制御ユニット190は、クリーニングユニット180と、潤
滑ユニット185と、糸20の分断と、処理ユニット100に沿った糸の様々な位置での
速度と、糸緩衝装置等を含む処理ユニット100全体の動作の制御をするよう構成される
。制御ユニット190は、処理ユニット100の1つ以上の構成要素から、例えば、特定
の制御の引き金となる制御信号、または例えば刺繍機15による糸の消費に関連する他の
情報を受けるよう構成され得る。
【0051】
ユーザインターフェースがまた、好ましくはハウジング105の前端部に配置されたデ
ィスプレイ195を介して提供される。糸供給装置130、放出デバイス150、固定ユ
ニット170等の制御パラメータがプロセス仕様によって設定され得るよう、ディスプレ
イ195は、ユーザが制御ユニット190と相互作用し、したがってそこに接続すること
を可能にする。ディスプレイ195はまた、好ましくは、危機的状況にあるユーザに警告
するために使用され得、これによりディスプレイ195を制御ユニット190に関して使
用して警告音または同様のものを発し得る。
【0052】
上述した構成要素が、スタンドアロンの処理ユニット100に必ずしも含まれ得ないが
、代わりに、処理ユニット100の構成要素は、少なくとも1つのユニットがスタンドア
ロンユニットであるいくつかのユニットに分けられ得ることに留意すべきである。好まし
くは、スタンドアロンユニットは少なくとも放出デバイス150と、隣接する糸ガイドデ
バイス140、160とを含む。
【0053】
図6を参照して放出デバイス150の実施例をさらに説明する。
図6において、放出デ
バイス150が複数のノズルアレイ151a~dを有するインクジェットノズルヘッドと
して形成される実施形態を示す。各ノズルアレイ151a~dは、例えば何千個ものノズ
ルを備えるインクジェットノズルアレイであり得る。1つのノズルアレイ151a用の6
つのノズル152a~fを例示目的限定で示す。しかしながら、各ノズルアレイ151a
~dにはそれぞれ何千個ものノズル152が設けられ得ることは理解されるべきである。
実施例として、各ノズルアレイ151a~dは、CMYK標準に従って例示した単一の色
に関連付けられ得る。しかしながら、他の着色モデルもまた使用され得る。また、ノズル
アレイ151a~dを、処理ユニット100内で別個のユニットとして配置することも可
能であり得る。
【0054】
この実施形態では、各ノズル152a~fはCMYKカラーモデルによる色を有するコ
ーティング物質を分配し、ここで原色はシアンと、マゼンタと、イエローと、ブラックと
である。したがって、糸20の特定の長さの全体の着色物質がノズル152a~fによっ
て分配された着色物質の混合物となるよう、ノズル152a~fを作動させることにより
多種多様な色を糸上に分配することが可能であり得る。別の実施形態では、各ノズル15
2a~fはCMYKカラーモデルの2つ以上の原色の混合物を備える色を有するコーティ
ング物質を分配する。
【0055】
制御ユニット190は、糸20が処理ユニット100を通るときにコーティング物質が
糸20上に放出されるようノズル152a~fの起動を制御するよう構成される。そのよ
うな構成により、例えば処理ユニット100によって提供された着色によって視覚的に非
常に洗練された高度な刺繍パターンを提供するため、例えば糸20の非常に正確な着色が
可能である。
【0056】
特定の実施形態を参照して本発明を以上説明したが、本発明はここで説明した特定のも
のに限定されることを意図したものではない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲に
よってのみ限定される。
【0057】
特許請求の範囲では、「含む(comprises/comprising)」という
用語は、他の要素またはステップの存在を除外するものではない。さらに、個々の特徴が
異なる請求項に含まれることもあるが、これらの特徴を組み合わせ得ることも有利であり
、かつ異なる請求項に含むことは、特徴の組み合わせが実行可能でないおよび/または有
利でないことを暗示するものではない。さらに、単数引用は、複数を除外しない。「1つ
(a,an)」、「第1」、「第2」等の用語は、複数を除外しない。特許請求の範囲の
参照記号は、単に、明確な例として提供されるものであり、如何なる場合にも、特許請求
の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。