(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】二次電池用アノード材料、二次電池用アノード、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20231227BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231227BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231227BHJP
C01B 33/20 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M10/058
H01M10/052
C01B33/20
(21)【出願番号】P 2022188474
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2021096418の分割
【原出願日】2021-06-09
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501008945
【氏名又は名称】国立清華大学
【氏名又は名称原語表記】National Tsing Hua University
【住所又は居所原語表記】No.101,Section 2,Kuang-Fu Road,Hsinchu,30013,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】游 萃蓉
(72)【発明者】
【氏名】藍 凱威
(72)【発明者】
【氏名】何 俊徳
(72)【発明者】
【氏名】郭 家▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】冀 天齊
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲イー▼廷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲ユン▼真
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/17949(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
H01M 10/058
H01M 10/052
C01B 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物を含む二次電池用アノード材料:
Cu
x7Mn
7-x7SiMO
12 式(7)、
ここで、x7は0より大きく1以下であり、Mは、Cr、Sn、Ni、Co、Zn、Al、Ti、In、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、Mの原子比率が、式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【請求項2】
式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物が、アブスウルムバカイト(Abswurmbachite)構造、パイロクスマンガント(Pyroxmangite)構造、又はブラウナイト(Braunite)構造を有する、請求項1に記載の二次電池用アノード材料。
【請求項3】
集電体;及び
前記集電体上に配置され、請求項1に記載の二次電池用アノード材料を含むアノード材料層を含む、二次電池用アノード。
【請求項4】
カソード;
前記カソードとは別に配置されたアノードであって、請求項3に記載の二次電池用アノードであるアノード;
前記カソードと前記アノードとの間に設けられた電解質;及び
前記カソード、前記アノード、及び前記電解質をパッキングするパッケージ構造体、とを含む二次電池。
【請求項5】
前記カソードと前記アノードとの間に配置されたセパレータをさらに含み、
前記セパレータ、前記カソード及び前記アノードは、貯蔵システムの収容領域を画定し、
前記電解質は前記収容領域に配置される、請求項4に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、電極、及び電池、特に、二次電池用アノード材料、二次電池用アノード、及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繰り返し充放電が可能で、軽量、高電圧値、高エネルギー密度といった特徴を持つリチウムイオン二次電池の市場要求が急速に高まっている。そのため、現在のリチウムイオン二次電池に求められる軽量性、耐久性、高電圧、高エネルギー密度、高い安全性などの要求は、ますます厳しくなっている。リチウムイオン二次電池は、小型電気自動車、電気自動車、大規模電力貯蔵産業などの用途や拡張性において、非常に高い可能性を秘めている。最も一般的な市販の電極材料は黒鉛だが、黒鉛の容量(理論値は372mAh/g)は低いため、それで作られた電池の性能には限界がある。そのため、安定性が高く、高容量の二次電池用電極材料を見つけることは、当業者にとって実現したい目標の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような観点から、本発明は、二次電池に使用され、二次電池の容量及び安定性を良好にすることができる、アノード材料及びアノードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの実施形態として提供される二次電池用アノード材料は、下記式(1)~(3)のいずれかで表されるコバルト-銅-スズ酸化物を含む:
Co5Cu1Sn3MOx1 式(1)、
Co2Cu1Sn1MOx2 式(2)、
Co1Cu1Sn1MOx3 式(3)、
ここで、x1は8、9又は14であり、x2は4、6又は8であり、x3は3、4又は5であり、Mは、Ni、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、Mの原子比率が、式(1)、式(2)又は式(3)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【0005】
本発明の他の実施形態による二次電池用アノード材料は、Co3O4、Co2O3及びCoOの少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、並びにSnO及びSnO2の少なくとも1つを混合する工程を行うことによって得られる酸化物混合物であって、酸化物混合物中のコバルトと銅とスズとの原子比が、5:1:3、2:1:1又は1:1:1である酸化物混合物を含む。
【0006】
本発明の他の実施形態により提供される二次電池用アノード材料は、下記式(4)~(6)のいずれかで表されるケイ素-スズ-鉄酸化物を含む:
Si4Sn1Fe16MOx4 式(4)、
Si1Sn1Fe1MOx5 式(5)、
Si4Sn1Fe1MOx6 式(6)、
ここで、x4は21~34であり、x5は3~5であり、x6は6~11.5であり、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、Mの原子比率が、式(4)、式(5)又は式(6)で表されるケイ素-スズ-鉄酸化物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【0007】
本発明の他の実施形態による二次電池用アノード材料は、SiO2及びSiOの少なくとも1つ、SnO及びSnO2の少なくとも1つ、並びにFe2O3、Fe3O4及びFeOの少なくとも1つを混合する工程を行うことによって得られる酸化物混合物であって、酸化物混合物中のケイ素とスズと鉄の原子比が、4:1:16、1:1:1又は4:1:1である酸化物混合物を含む。
【0008】
本発明の他の実施形態により提供される二次電池用アノード材料は、下記式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物を含む:
Cux7Mn7-x7SiMO12 式(7)、
ここで、x7は0より大きく1以下であり、Mは、Cr、Sn、Ni、Co、Zn、Al、Ti、In、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、Mの原子比率が、式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【0009】
本発明の他の実施形態による二次電池用アノード材料は、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、SiO2及びSiOの少なくとも1つ、並びにMnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つを混合する工程を行うことによって得られる酸化物混合物であって、酸化物混合物中の銅とマンガンとケイ素の原子比が、1:1:1、1:4:1、4:1:1又は1:1:4である酸化物混合物を含む。
【0010】
本発明の他の実施形態により提供される二次電池用アノード材料は、下記式(8)~(11)のいずれかで表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物を含む:
Sn1Mn2Ni1MOx8 式(8)、
Sn1Mn1Ni2MOx9 式(9)、
Sn2Mn1Ni1MOx10 式(10)、
Sn1Mn1Ni1MOx11 式(11)、
ここで、x8は4~7、x9は4~7、x10は4~7、x11は3~6、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、Mの原子比率は、式(8)、式(9)、式(10)又は式(11)で表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【0011】
本発明の他の実施態様により提供される二次電池用アノード材料は、SnO及びSnO2の少なくとも1つ、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つ、並びにNiO及びNi2O3の少なくとも1つを混合する工程を行うことによって得られる酸化物混合物であって、酸化物混合物中のスズとマンガンとニッケルの原子比が、1:2:1、1:1:1、1:1:2又は2:1:1である酸化物混合物を含む。
【0012】
本発明の他の実施態様により提供される二次電池用アノード材料は、下記式(12)~(14)のいずれかで表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物を含む:
Mn3Cu2Ni1MO8 式(12)、
Mn2Cu1Ni1MO4 式(13)、
Mn1Cu1Ni1MO4 式(14)、
ここで、Mは、Fe、Cr、Zn、Al、Ti、In、Mo、W及びSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、Mの原子比率は、式(12)、式(13)又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【0013】
本発明の他の実施態様により提供される二次電池用アノード材料は、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、並びにNiO及びNi2O3の少なくとも1つを混合する工程を行うことによって得られる酸化物混合物であって、酸化物混合物中のマンガンと銅とニッケルとの原子比が、3:2:1、2:1:1又は1:1:1である酸化物混合物を含む。
【0014】
本発明の他の実施態様により提供される二次電池用アノード材料は、下記式(15)~(17)のいずれかで表されるニッケル-銅-スズ酸化物を含む:
NiCuSn2MOx15 式(15)、
Ni2CuSn3MOx16 式(16)、
NiCu2Sn3MOx17 式(17)、
ここで、x15は3、6又は9であり、x16は4、6又は9であり、x17は4、6又は9であり、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、W及びCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、Mの原子比率は、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。
【0015】
本発明の他の実施態様による二次電池用アノード材料は、Ni2O3及びNiOの少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、並びにSnO及びSnO2の少なくとも1つを混合する工程を行うことによって得られる酸化物混合物であって、酸化物混合物中のニッケルと銅とスズとの原子比が、1:1:2、2:1:3又は1:2:3である酸化物混合物を含む。
【0016】
本発明の一実施形態による二次電池用アノードは、集電体及びアノード材料層を含む。アノード材料層は、前記集電体上に配置され、前述のいずれかの二次電池用アノード材料を含む。
【0017】
本発明の一実施形態により提供される二次電池は、カソード、アノード、電解質、パッケージ構造体を含む。前記アノードは、前記カソードとは別に配置され、前述の二次電池用アノードである。電解質は、カソードとアノードの間に設けられる。パッケージ構造体は、カソード、アノード、電解質をパッキングする。
【発明の効果】
【0018】
上記に基づき、本発明の二次電池用アノード材料は、式(1)~(17)のいずれかで表される金属酸化物を含むか、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物、又は、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含み、前記酸化物混合物は、元素の特定の原子比率を有する。このような本発明の二次電池用アノード材料は、二次電池に使用することができ、その結果、二次電池に良好な容量、安定性、及び充放電サイクル寿命を付与することができる。
【0019】
本発明の上記特徴及び利点をより理解しやすくするために、実施形態を、以下の添付の図面とともに詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1及び比較例1の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図3】
図3は、実施例2及び比較例1の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図4】
図4は、実施例3及び比較例1の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図5】
図5は、実施例4及び比較例2~4の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図6】
図6は、実施例5及び比較例4~6の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図7】
図7は、実施例6及び比較例4~6の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図8】
図8は、実施例7の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図9】
図9は、実施例8と比較例3、5、7の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図10】
図10は、実施例9及び比較例4、8~9の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図11】
図11は、実施例10及び比較例4、8~9の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図12】
図12は、実施例11の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図13】
図13は、実施例12及び比較例3、8~9の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図14】
図14は、実施例13及び比較例3~4、9の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【
図15】
図15は、実施例14の二次電池のサイクル寿命曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書では、「数値から別の数値」で表される範囲は、明細書中に記載の範囲の全ての数値を挙げることを回避するための概略表現である。従って、特定の数値範囲の記述は、本明細書における任意の数値及びそれより小さい数値範囲の場合と同様に、数値範囲内の任意の数値及び数値範囲内の任意の数値により定義されるより小さい数値範囲もカバーする。
【0022】
本明細書で使用される、「約」、「ほぼ」、「本質的に」又は「実質的に」は、記載された値を含み、問題となっている測定と特定の量の測定に関連する誤差(すなわち、測定システムの限界)を考慮して、当業者によって決定される、特定の値に対する許容可能な偏差範囲内にあることを意味する。例えば、「約」は、1つ以上の標準偏差内、又は、例えば、記載された値の±30%、±20%、±15%、±10%、±5%以内を意味し得る。さらに、全ての特性にわたって1つの標準偏差を適用するのではなく、測定特性又は他の特性に基づいて、本明細書で使用される「約」、「ほぼ」、「本質的に」又は「実質的に」という用語に対して、偏差又は標準偏差の比較的許容可能な範囲を選択してもよい。
【0023】
二次電池のアノードに適用でき、二次電池に良好な安定性と容量を付与することができるアノード材料を用意するために、本発明は、前記利点を達成することができるアノード材料を提供する。以下では、本発明を確実に実施することができる例として、具体的な実施形態について説明する。
【0024】
本発明の一実施形態は、4つ以上の元素を含む金属酸化物、又は4つ以上の元素を含む酸化物混合物を含み得るアノード材料を提供する。本実施形態では、アノード材料は、粉末、フィルム、又はバルク材料であり得る。
【0025】
本実施形態において、4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製するための方法は、例えば、熱水法、共沈降法、ゾル-ゲル法、固体法、蒸発法、スパッタリング法、又は蒸着法を含むが、本発明はこれに限定されない。熱水法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、温度は約200℃以上、保温時間は約5時間以上、周囲圧力は約10-2Torr以上であり得る。共沈法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、最初に共沈を行い、反応温度が200℃以上、溶液のpHは、約2~約12、保温時間は約1時間以上であり得;反応終了後、焼成処理を行い、焼成温度は約300℃以上、保温時間は約1時間以上であり得る。ゾル-ゲル法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、温度は約100℃以上、溶液のpHは約2~約12、温度保持時間は約5時間以上であり得る。さらに、固体法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、温度は約100℃以上、保温時間は約8時間以上であり得る。蒸発法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、温度は約25℃以上、蒸発時間は約1時間以上、周囲圧力は約10-3Torr以上であり得る。スパッタリング法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、温度は約25℃以上、スパッタリング時間は約0.5時間以上、周囲圧力は約10-3Torr以上であり得る。蒸着法を用いて4つ以上の元素を含む金属酸化物を調製する一実施形態では、温度は約25℃以上、堆積時間は約1時間以上、周囲圧力は約10-3Torr以上であり得る。
【0026】
本実施形態では、4つ以上の元素を含む金属酸化物は、コバルト-銅-スズ酸化物、ケイ素-スズ-鉄酸化物、銅-マンガン-ケイ素酸化物、スズ-マンガン-ニッケル酸化物、マンガン-銅-ニッケル酸化物、又はニッケル-銅-スズ酸化物を含み得る。以下、上記の様々な酸化物について詳細に説明する。
【0027】
コバルト-銅-スズ酸化物
本実施形態では、コバルト-銅-スズ酸化物は、下記式(1)~(3)のいずれかで表すことができる:
Co5Cu1Sn3MOx1 式(1)、
Co2Cu1Sn1MOx2 式(2)、
Co1Cu1Sn1MOx3 式(3)。
【0028】
式(1)において、x1は、8、9、又は14である。式(2)において、x2は、4、6、又は8である。式(3)において、x3は、3、4、又は5である。x1、x2、x3がそれぞれ上記の特定の値を満たす場合、コバルト-銅-スズ酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量、改善された容量保持性、及び優れたサイクル寿命を備える。
【0029】
式(1)、(2)、及び(3)のそれぞれにおいて、Mは、Ni、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり得る。Mの原子比率は、式(1)、式(2)、又は式(3)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。換言すれば、式(1)、式(2)、又は式(3)によって表されるコバルト-銅-スズ酸化物は、元素Mを含まなくてもよく、4つの元素、すなわち、コバルト、銅、スズ、及び酸素のみを含み得る。なお、元素Mを含まないコバルト-銅-スズ酸化物と比較して、原子比率が0原子%より大きく10原子%以下のMを含むコバルト-銅-スズ酸化物は、電気伝導度が約10%以上増加している。さらに、本実施形態において、元素Mを含むコバルト-銅-スズ酸化物の場合、コバルト、銅、及び/又はスズの一部をMで置き換えることができる。例えば、一実施形態では、コバルトの一部をMで置き換えることができ;別の実施形態では、コバルトの一部及び銅の一部をMで置き換えることができ;さらに別の実施形態では、コバルトの一部、銅の一部、及びスズの一部をMで置き換えることができるが、本発明はそれに限定されない。なお、本実施形態において、式(1)、式(2)、又は式(3)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物の原子数は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散が原因で、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0030】
実施形態において、式(1)、式(2)、又は式(3)によって表されるコバルト-銅-スズ酸化物は、スピネル構造、ペロブスカイト構造、塩化ナトリウム構造、又はカルコパイライト(Chalcopyrite)構造を有し得る。なお、式(1)、式(2)、又は式(3)によって表されるコバルト-銅-スズ酸化物は、上記の構造を有することにより、より多くの酸素空孔を可能にし、それにより、前記コバルト-銅-スズ酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池において、リチウムイオンを容易に素早く出し入れできるため、リチウムイオンの拡散速度とイオン伝導度が効果的に向上する。さらに、式(1)、式(2)、又は式(3)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物は、上記構造を有しているため、充放電過程で崩壊しにくく、その結果、前記コバルト-銅-スズ酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、良好な充放電サイクル寿命を維持することができる。
【0031】
本実施形態において、コバルト-銅-スズ酸化物の平均粒子径は、例えば、約10nmから約1mmの間である。コバルト-銅-スズ酸化物の平均粒子径が上記の範囲内にある場合、良好な特性を備えたアノードを形成するのに有利である。固相法によりコバルト-銅-スズ酸化物を製造するための一実施形態において、特定の範囲の平均粒子径を有する上記のコバルト-銅-スズ酸化物を得るために、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、又は遊星ボールミルを使用して粉砕を行うことができるが、本発明はそれに限定されない。
【0032】
ケイ素-スズ-鉄酸化物
本実施形態では、ケイ素-スズ-鉄酸化物は、下記式(4)~(6)のいずれかで表すことができる:
Si4Sn1Fe16MOx4 式(4)、
Si1Sn1Fe1MOx5 式(5)、
Si4Sn1Fe1MOx6 式(6)。
【0033】
式(4)では、x4は、21~34である。式(5)では、x5は、3~5である。式(6)では、x6は、6~11.5である。x4、x5、x6が、それぞれ上記の範囲内にある場合、ケイ素-スズ-鉄酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0034】
式(4)、(5)、及び(6)のそれぞれにおいて、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり得る。Mの原子比率は、式(4)、式(5)、又は式(6)で表されるケイ素-スズ-鉄酸化物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。換言すれば、式(4)、式(5)、又は式(6)によって表されるケイ素-スズ-鉄酸化物は、元素Mを含まなくてもよく、4つの元素、すなわち、ケイ素、スズ、鉄、及び酸素のみを含み得る。なお、元素Mを含まないケイ素-スズ-鉄酸化物と比較して、原子比率が0原子%より大きく10原子%以下のMを含むケイ素-スズ-鉄酸化物は、電気伝導度が約10%以上増加している。また、本実施形態では、元素Mを含むケイ素-スズ-鉄酸化物の場合、ケイ素、スズ、及び/又は鉄の一部をMで置き換えることができる。例えば、一実施形態では、ケイ素の一部をMで置き換えることができ;別の実施形態では、ケイ素の一部及びスズの一部をMで置き換えることができ;さらに別の実施形態では、ケイ素の一部、スズの一部、及び鉄の一部をMで置き換えることができるが、本発明はそれに限定されない。なお、本実施形態において、式(4)、式(5)、又は式(6)で表されるケイ素-スズ-鉄酸化物の原子数は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散が原因で、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0035】
本実施形態において、式(4)、式(5)、又は式(6)によって表されるケイ素-スズ-鉄酸化物は、菱面体晶構造、立方晶ビクスビアイト(Cubic Bixbyite)構造、スピネル構造、又は斜方晶構造を有し得る。なお、式(4)、式(5)、又は式(6)によって表されるケイ素-スズ-鉄酸化物は、上記の構造を有することにより、より多くの酸素空孔を可能にし、それにより、前記ケイ素-スズ-鉄酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池において、リチウムイオンを容易に素早く出し入れできるため、リチウムイオンの拡散速度とイオン伝導度が効果的に向上する。さらに、式(4)、式(5)、又は式(6)で表されるケイ素-スズ-鉄酸化物は、上記構造を有しているため、充放電過程で崩壊しにくく、その結果、前記ケイ素-スズ-鉄酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、良好な充放電サイクル寿命を維持することができる。
【0036】
本実施形態において、ケイ素-スズ-鉄酸化物の平均粒子径は、例えば、約10nmから約1mmの間である。ケイ素-スズ-鉄酸化物の平均粒子径が上記の範囲内にある場合、良好な特性を備えたアノードを形成するのに有利である。固相法によりケイ素-スズ-鉄酸化物を製造するための実施形態において、特定の範囲の平均粒子径を有する上記のケイ素-スズ-鉄酸化物を得るために、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、又は遊星ボールミルを使用して粉砕を行うことができるが、本発明はそれに限定されない。
【0037】
銅-マンガン-ケイ素酸化物
本実施形態では、銅-マンガン-ケイ素酸化物は、以下の式(7)で表すことができる:
Cux7Mn7-x7SiMO12 式(7)。
【0038】
式(7)において、x7は、0より大きく1以下である。x7が上記の範囲内である場合、銅-マンガン-ケイ素酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0039】
式(7)において、Mは、Cr、Sn、Ni、Co、Zn、Al、Ti、In、Mo、及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり得る。Mの原子比率は、式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。換言すれば、式(7)によって表される銅-マンガン-ケイ素酸化物は、元素Mを含まなくてもよく、4つの元素、すなわち、銅、マンガン、ケイ素、及び酸素のみを含み得る。なお、元素Mを含まない銅-マンガン-ケイ素酸化物と比較して、原子比率が0原子%より大きく10原子%以下のMを含む銅-マンガン-ケイ素酸化物は、電気伝導度が約10%以上増加している。また、本実施形態では、元素Mを含む銅-マンガン-ケイ素酸化物の場合、銅、マンガン、及び/又はケイ素の一部をMで置き換えることができる。例えば、一実施形態では、銅の一部をMで置き換えることができ;別の実施形態では、銅の一部及びマンガンの一部をMで置き換えることができ;さらに別の実施形態では、銅の一部、マンガンの一部、及びケイ素の一部をMで置き換えることができるが、本発明はそれに限定されない。なお、本実施形態において、式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物の原子数は、不均一な拡散又は酸素空孔の形成が原因で、±10%の誤差が生じる可能性があり、それにより不定比化合物が形成される。
【0040】
本実施形態において、式(7)によって表される銅-マンガン-ケイ素酸化物は、アブスウルムバカイト(Abswurmbachite)構造、パイロクスマンガント(Pyroxmangite)構造、又はブラウナイト(Braunite)構造を有し得る。式(7)によって表される銅-マンガン-ケイ素酸化物は、上記の構造を有することにより、前記銅-マンガン-ケイ素酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池において、過電位によるエネルギー損失を低減することができ、リチウムイオン拡散率及びイオン伝導度を向上することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。
【0041】
本実施形態において、銅-マンガン-ケイ素酸化物の平均粒子径は、例えば、約10nmから約1mmの間である。銅-マンガン-ケイ素酸化物の平均粒子径が上記の範囲内にある場合、良好な特性を備えたアノードを形成するのに有利である。固相法により銅-マンガン-ケイ素酸化物を製造するための実施形態において、特定の範囲の平均粒子径を有する上記の銅-マンガン-ケイ素酸化物を得るために、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、又は遊星ボールミルを使用して粉砕を行うことができるが、本発明はそれに限定されない。
【0042】
スズ-マンガン-ニッケル酸化物
本実施形態では、スズ-マンガン-ニッケル酸化物は、以下の式(8)~(11)のいずれかで表すことができる:
Sn1Mn2Ni1MOx8 式(8)、
Sn1Mn1Ni2MOx9 式(9)、
Sn2Mn1Ni1MOx10 式(10)、
Sn1Mn1Ni1MOx11 式(11)。
【0043】
式(8)では、x8は、4~7である。式(9)では、x9は、4~7である。式(10)では、x10は、4~7である。式(11)では、x11は、3~6である。x8、x9、x10、x11が、それぞれ上記の範囲内にある場合、スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0044】
式(8)、式(9)、式(10)、及び式(11)のそれぞれにおいて、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり得る。Mの原子比率は、式(8)、式(9)、式(10)、及び式(11)で表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。換言すれば、式(8)、式(9)、式(10)、及び式(11)で表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物は、元素Mを含まなくてもよく、4つの元素、すなわち、スズ、マンガン、ニッケル、及び酸素のみを含み得る。なお、元素Mを含まないスズ-マンガン-ニッケル酸化物と比較して、原子比率が0原子%より大きく10原子%以下のMを含むスズ-マンガン-ニッケル酸化物は、電気伝導度が約10%以上増加している。また、本実施形態では、元素Mを含むスズ-マンガン-ニッケル酸化物の場合、スズ、マンガン、及び/又はニッケルの一部をMで置き換えることができる。例えば、一実施形態では、スズの一部をMで置き換えることができ;別の実施形態では、スズの一部及びマンガンの一部をMで置き換えることができ;さらに別の実施形態では、スズの一部、マンガンの一部、及びニッケルの一部をMで置き換えることができるが、本発明はそれに限定されない。なお、本実施形態において、式(8)、式(9)、式(10)、及び式(11)で表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物の原子数は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散が原因で、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0045】
本実施形態において、式(8)、式(9)、式(10)、又は式(11)によって表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物が、スピネル構造、ルチル構造、又は岩塩構造を有し得る。なお、式(8)、式(9)、式(10)、又は式(11)によって表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物は、上記の構造を有することにより、より多くの酸素空孔を可能にし、それにより、前記スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池において、リチウムイオンを容易に素早く出し入れできるため、リチウムイオンの拡散速度とイオン伝導度が効果的に向上する。さらに、式(8)、式(9)、式(10)、又は式(11)によって表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物は、上記構造を有しているため、充放電過程で崩壊しにくく、その結果、前記スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、良好な充放電サイクル寿命を維持することができる。
【0046】
本実施形態において、スズ-マンガン-ニッケル酸化物の平均粒子径は、例えば、約10nmから約1mmの間である。スズ-マンガン-ニッケル酸化物の平均粒子径が上記の範囲内にある場合、良好な特性を備えたアノードを形成するのに有利である。固相法によりスズ-マンガン-ニッケル酸化物を製造するための実施形態において、特定の範囲の平均粒子径を有する上記のスズ-マンガン-ニッケル酸化物を得るために、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、又は遊星ボールミルを使用して粉砕を行うことができるが、本発明はそれに限定されない。
【0047】
マンガン-銅-ニッケル酸化物
本実施形態では、マンガン-銅-ニッケル酸化物は、以下の式(12)~(14)のいずれかで表すことができる:
Mn3Cu2Ni1MO8 式(12)、
Mn2Cu1Ni1MO4 式(13)、
Mn1Cu1Ni1MO4 式(14)。
【0048】
つまり、本実施形態では、マンガン-銅-ニッケル酸化物におけるマンガンと銅とニッケルと酸素の原子比は、3:2:1:8、2:1:1:4、又は1:1:1:4であり得る。なお、マンガン-銅-ニッケル酸化物は、式(12)~(14)のいずれかで表され、当該マンガン-銅-ニッケル酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0049】
式(12)、式(13)、及び式(14)のそれぞれにおいて、Mは、Fe、Cr、Zn、Al、Ti、In、Mo、W、及びSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり得る。Mの原子比率は、式(12)、式(13)、又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。換言すれば、式(12)、式(13)、又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物は、元素Mを含まなくてもよく、4つの元素、すなわち、マンガン、銅、ニッケル、及び酸素のみを含み得る。なお、元素Mを含まないマンガン-銅-ニッケル酸化物と比較して、原子比率が0原子%より大きく10原子%以下のMを含むマンガン-銅-ニッケル酸化物は、電気伝導度が約10%以上増加している。また、本実施形態では、元素Mを含むマンガン-銅-ニッケル酸化物の場合、マンガン、銅、及び/又はニッケルの一部をMで置き換えることができる。例えば、一実施形態では、マンガンの一部をMで置き換えることができ;別の実施形態では、マンガンの一部及び銅の一部をMで置き換えることができ;さらに別の実施形態では、マンガンの一部、銅の一部、及びニッケルの一部をMで置き換えることができるが、本発明はそれに限定されない。なお、本実施形態において、式(12)、式(13)、又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物の原子数は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散が原因で、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0050】
本実施形態において、式(12)、式(13)、又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物が、正方晶構造、スピネル構造、ペロブスカイト構造、又はカルコパイライト(Chalcopyrite)構造を有し得る。なお、式(12)、式(13)、又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物は、上記の構造を有することにより、より多くの酸素空孔を可能にし、それにより、前記マンガン-銅-ニッケル酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池において、リチウムイオンを容易に素早く出し入れできるため、リチウムイオンの拡散速度とイオン伝導度が効果的に向上する。さらに、式(12)、式(13)、又は式(14)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物は、上記構造を有しているため、充放電過程で崩壊しにくく、その結果、前記マンガン-銅-ニッケル酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、良好な充放電サイクル寿命を維持することができる。
【0051】
本実施形態において、マンガン-銅-ニッケル酸化物の平均粒子径は、例えば、約10nmから約1mmの間である。マンガン-銅-ニッケル酸化物の平均粒子径が上記の範囲内にある場合、良好な特性を備えたアノードを形成するのに有利である。固相法によりマンガン-銅-ニッケル酸化物を製造するための実施形態において、特定の範囲の平均粒子径を有する上記のマンガン-銅-ニッケル酸化物を得るために、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、又は遊星ボールミルを使用して粉砕を行うことができるが、本発明はそれに限定されない。
【0052】
ニッケル-銅-スズ酸化物
本実施形態では、ニッケル-銅-スズ酸化物は、以下の式(15)~(17)のいずれかで表すことができる:
NiCuSn2MOx15 式(15)、
Ni2CuSn3MOx16 式(16)、
NiCu2Sn3MOx17式 式(17)。
【0053】
式(15)では、x15は、3、6又は9である。式(16)では、x16は、4、6又は9である。式(17)では、x17は、4、6又は9である。x15、x16、x17が、それぞれ上記の範囲内にある場合、ニッケル-銅-スズ酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0054】
式(15)、式(16)、及び式(17)のそれぞれにおいて、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、W、及びCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり得る。Mの原子比率は、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。換言すれば、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物は、元素Mを含まなくてもよく、4つの元素、すなわち、ニッケル、銅、スズ、及び酸素のみを含み得る。なお、元素Mを含まないニッケル-銅-スズ酸化物と比較して、原子比率が0原子%より大きく10原子%以下のMを含むニッケル-銅-スズ酸化物は、電気伝導度が約15%以上増加している。また、本実施形態では、元素Mを含むニッケル-銅-スズ酸化物の場合、ニッケル、銅、及び/又はスズの一部をMで置き換えることができる。例えば、一実施形態では、ニッケルの一部をMで置き換えることができ;別の実施形態では、ニッケルの一部及び銅の一部をMで置き換えることができ;さらに別の実施形態では、ニッケルの一部、銅の一部、及びスズの一部をMで置き換えることができるが、本発明はそれに限定されない。なお、本実施形態において、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物の原子数は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散が原因で、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0055】
本実施形態において、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物が、ペロブスカイト構造、塩化ナトリウム構造、又はカルコパイライト(Chalcopyrite)構造を有し得る。なお、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物は、上記の構造を有することにより、より多くの酸素空孔を可能にし、それにより、前記ニッケル-銅-スズ酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池において、リチウムイオンを容易に素早く出し入れできるため、リチウムイオンの拡散速度とイオン伝導度が効果的に向上する。さらに、式(15)、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物は、上記構造を有しているため、充放電過程で崩壊しにくく、その結果、前記ニッケル-銅-スズ酸化物を含むアノード材料が適用された二次電池は、良好な充放電サイクル寿命を維持することができる。
【0056】
本実施形態において、ニッケル-銅-スズ酸化物の平均粒子径は、例えば、約10nmから約1mmの間である。ニッケル-銅-スズ酸化物の平均粒子径が上記の範囲内にある場合、良好な特性を備えたアノードを形成するのに有利である。固相法によりニッケル-銅-スズ酸化物を製造するための実施形態において、特定の範囲の平均粒子径を有する上記のニッケル-銅-スズ酸化物を得るために、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、又は遊星ボールミルを使用して粉砕を行うことができるが、本発明はそれに限定されない。
【0057】
また、本実施形態では、4つ以上の元素を含む酸化物混合物を調製する方法として、例えば、混合工程を行うことが挙げられる。混合工程は、例えば、物理的乾式混合法、又は物理的湿式混合法によって行われるが、本発明はこれに限定されない。物理的乾式混合法を用いて4つ以上の元素を含む酸化物混合物を調製する一実施形態では、混合温度は室温、例えば約25℃以上であってもよい。物理的湿式混合法を用いて4つ以上の元素を含む酸化物混合物を調製する一実施形態では、混合温度は室温、例えば約25℃以上であり得、溶媒は、水、アルコール、アセトン、又はメタノールであり得る。
【0058】
本実施形態では、4つ以上の元素を含む酸化物混合物は、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物、及び、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物、又は、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含み得る。以下、上記の様々な酸化物混合物について詳細に説明する。
【0059】
コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物
本実施形態では、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、Co3O4、Co2O3、及びCoOの少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、及びSnO及びSnO2の少なくとも1つを混合する工程を実行することによって得ることができる。すなわち、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、酸化コバルト、酸化銅、及び酸化スズの混合工程によって得ることができる。さらに、本実施形態では、コバルト、銅及びスズを含む酸化物混合物中のコバルトと銅とスズの原子比は、5:1:3、2:1:1、又は1:1:1であり得る。コバルト、銅、スズの原子比が上記の特定の比を満たしている場合、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0060】
本実施形態では、混合工程中に、Mを含む酸化物を、任意選択で、Co3O4、Co2O3及びCoOの少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、及びSnO及びSnO2の少なくとも1つと一緒に混合することができる。ここで、Mは、Ni、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。すなわち、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、必要に応じて元素Mを含み得る。Mの原子比率は、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。なお、Mを含む酸化物と混合されていない、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物と比較して、Mを含む酸化物と混合され、Mの原子比率が10原子%以下である、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、電気伝導度が約8%以上増加している。なお、本実施形態では、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物中の元素の原子比の数値は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散により、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0061】
本実施形態では、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含むアノード材料を用いてアノードを形成することにより、リチウムイオンを異なる経路で出入りさせることができ、分極効果を低減することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。これにより、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池の容量を大幅に増加させることができる。また、アノード材料として用いられる酸化スズは、高い容量性能を達成でき、アノード材料として用いられる酸化銅は、良好なサイクル寿命を達成でき、アノード材料として用いられる酸化コバルトは、良好なリチウムイオン伝導性を達成できるので、酸化コバルト、酸化銅、及び酸化スズの混合工程により得られる酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池は、優れた性能と安全性を備える。
【0062】
ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物
本実施形態では、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物は、SiO2、及びSiOの少なくとも1つ、SnO及びSnO2の少なくとも1つ、及びFe2O3、Fe3O4及びFeOの少なくとも1つを混合する工程を実行することによって得ることができる。すなわち、ケイ素、スズ、及び酸化鉄を含む酸化物混合物は、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化鉄の混合工程によって得ることができる。さらに、本実施形態では、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物中のケイ素とスズと鉄の原子比は、4:1:16、1:1:1、又は4:1:1であり得る。ケイ素、スズ、及び鉄の原子比が上記の特定の比を満たしている場合、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物を含むアノード材料を使用した二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0063】
本実施形態では、混合工程中に、Mを含む酸化物を、任意選択で、SiO2、及びSiOの少なくとも1つ、SnO及びSnO2の少なくとも1つ、及びFe2O3、Fe3O4及びFeOの少なくとも1つと一緒に混合することができる。ここで、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、及びWからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。すなわち、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物は、必要に応じて元素Mを含み得る。Mの原子比率は、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。なお、Mを含む酸化物と混合されていない、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物と比較して、Mを含む酸化物と混合され、Mの原子比率が10原子%以下である、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物は、電気伝導度が約10%以上増加している。なお、本実施形態では、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物中の元素の原子比の数値は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散により、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0064】
本実施形態では、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物を含むアノード材料を用いてアノードを形成することにより、リチウムイオンを異なる経路で出入りさせることができ、分極効果を低減することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。これにより、ケイ素、スズ、及び鉄を含む酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池の容量を大幅に増加させることができる。また、アノード材料として用いられる酸化スズは、高い容量性能を達成でき、アノード材料として用いられる酸化鉄は、良好なサイクル寿命を達成でき、アノード材料として用いられる酸化ケイ素は、良好なリチウムイオン伝導性を達成できるので、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化鉄の混合工程により得られる酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池は、優れた性能と安全性を備える。
【0065】
銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物
本実施形態では、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物は、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、SiO2及びSiOの少なくとも1つ、及びMnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つを混合する工程を実行することによって得ることができる。すなわち、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物は、酸化銅、酸化マンガン、及び酸化ケイ素の混合工程によって得ることができる。さらに、本実施形態では、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物中の銅とマンガンとケイ素の原子比は、1:1:1、1:4:1、4:1:1、又は1:1:4であり得る。銅、マンガン、及びケイ素の原子比が上記の特定の比を満たしている場合、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物を含むアノード材料を使用した二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0066】
本実施形態では、混合工程中に、Mを含む酸化物を、任意選択で、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、SiO2及びSiOの少なくとも1つ、及びMnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つと一緒に混合することができる。ここで、Mは、Cr、W、Sn、Ni、Zn、Al、Ti、In、及びMoからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。すなわち、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物は、必要に応じて元素Mを含み得る。Mの原子比率は、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物中の酸素元素以外の元素の全原子数に対して10原子%以下である。なお、Mを含む酸化物と混合されていない、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物と比較して、Mを含む酸化物と混合され、Mの原子比率が10原子%以下である、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物は、電気伝導度が約10%以上増加している。なお、本実施形態では、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物中の元素の原子比の数値は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散により、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0067】
本実施形態では、酸化銅、酸化マンガン、及び酸化ケイ素の混合工程を行って得られる銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物は、複数の酸化物の相互作用による相乗効果をもたらし、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池の容量を大幅に増加する。さらに、本実施形態では、銅、マンガン、及びケイ素を含む酸化物混合物を含むアノード材料を用いてアノードを形成することにより、リチウムイオンを異なる経路で出入りさせることができ、分極効果を低減することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。また、アノード材料として用いられる酸化銅は、良好なサイクル寿命を達成でき、アノード材料として用いられる酸化マンガンは、低過電圧を達成でき、アノード材料として用いられる酸化ケイ素は、良好なリチウムイオン伝導性を達成できるので、酸化銅、酸化マンガン、及び酸化ケイ素の混合工程により得られる酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池は、優れた性能と安全性を備える。
【0068】
スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物
本実施形態では、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物は、SnO及びSnO2の少なくとも1つ、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つ、及びNiO及びNi2O3の少なくとも1つを混合する工程を実行することによって得ることができる。すなわち、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物は、酸化スズ、酸化マンガン、及び酸化ニッケルの混合工程によって得ることができる。さらに、本実施形態では、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物中のスズとマンガンとニッケルの原子比は、1:2:1、1:1:1、1:1:2、又は2:1:1であり得る。スズ、マンガン、及びニッケルの原子比が上記の特定の比を満たしている場合、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0069】
本実施形態では、混合工程中に、Mを含む酸化物を、任意選択で、SnO及びSnO2の少なくとも1つ、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つ、及びNiO及びNi2O3の少なくとも1つと一緒に混合することができる。ここで、Mは、Cr、W、Si、Cu、Zn、Al、Ti、In、及びMoからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。すなわち、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物は、必要に応じて元素Mを含み得る。Mの原子比率は、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。なお、Mを含む酸化物と混合されていない、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物と比較して、Mを含む酸化物と混合され、Mの原子比率が10原子%以下である、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物は、電気伝導度が約10%以上増加している。なお、本実施形態では、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物中の元素の原子比の数値は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散により、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0070】
本実施形態では、酸化スズ、酸化マンガン、及び酸化ニッケルの混合工程を行って得られるスズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物は、複数の酸化物の相互作用による相乗効果をもたらし、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物を含むアノード材料を含む二次電池の容量を大幅に増加する。さらに、本実施形態では、スズ、マンガン、及びニッケルを含む酸化物混合物を含むアノード材料を用いてアノードを形成することにより、リチウムイオンを異なる経路で出入りさせることができ、分極効果を低減することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。また、アノード材料として用いられる酸化スズは、高い容量性能を達成でき、アノード材料として用いられる酸化マンガンは、低過電圧を達成でき、アノード材料として用いられる酸化ニッケルは、良好なリチウムイオン伝導性を達成できるので、酸化スズ、酸化マンガン、及び酸化ニッケルの混合工程により得られる酸化物混合物を含むアノード材料を使用した二次電池は、優れた性能と安全性を備える。
【0071】
マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物
本実施形態では、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物は、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、及びNiO及びNi2O3の少なくとも1つを混合する工程を実行することによって得ることができる。すなわち、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物は、酸化マンガン、酸化銅、及び酸化ニッケルの混合工程によって得ることができる。さらに、本実施形態では、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物中のマンガンと銅とニッケルの原子比は、3:2:1、2:1:1、又は1:1:1であり得る。マンガン、銅、及びニッケルの原子比が上記の特定の比を満たしている場合、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物を含むアノード材料が適用された二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0072】
本実施形態では、混合工程中に、Mを含む酸化物を、任意選択で、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4の少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、及びNiO及びNi2O3の少なくとも1つと一緒に混合することができる。ここで、Mは、Fe、Cr、Zn、Al、Ti、In、Mo、W、及びSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。すなわち、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物は、必要に応じて元素Mを含み得る。Mの原子比率は、マンガン、銅、及びスズを含む酸化物混合物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。なお、Mを含む酸化物と混合されていない、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物と比較して、Mを含む酸化物と混合され、Mの原子比率が10原子%以下である、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物は、電気伝導度が約5%以上増加している。なお、本実施形態では、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物中の元素の原子比の数値は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散により、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0073】
本実施形態では、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物を含むアノード材料を用いてアノードを形成することにより、リチウムイオンを異なる経路で出入りさせることができ、分極効果を低減することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。また、アノード材料として用いられる酸化マンガンは、低過電圧を達成でき、アノード材料として用いられる酸化銅は、良好なサイクル寿命を達成でき、アノード材料として用いられる酸化ニッケルは、高い容量性能を達成できるので、酸化マンガン、酸化銅、及び酸化ニッケルの混合工程により得られる酸化物混合物を含むアノード材料を使用した二次電池は、優れた性能と安全性を備える。
【0074】
ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物
本実施形態では、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、Ni2O3及びNiOの少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、及びSnO及びSnO2の少なくとも1つを混合する工程を実行することによって得ることができる。すなわち、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、酸化ニッケル、酸化銅、及び酸化スズの混合工程によって得ることができる。さらに、本実施形態では、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物中のニッケルと銅とスズの原子比は、1:1:2、2:1:3、又は1:2:3であり得る。ニッケル、銅、及びスズの原子比が上記の特定の比を満たしている場合、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含むアノード材料を使用した二次電池は、優れた容量と改善された容量保持性を備える。
【0075】
本実施形態では、混合工程中に、Mを含む酸化物を、任意選択で、Ni2O3及びNiOの少なくとも1つ、CuO及びCu2Oの少なくとも1つ、及びSnO及びSnO2の少なくとも1つと一緒に混合することができる。ここで、Mは、Cr、Mn、Zn、Al、Ti、In、Mo、W、及びCoからなる群から選択される少なくとも1つの元素である。すなわち、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、必要に応じて元素Mを含み得る。Mの原子比率は、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物中の金属元素の全原子数に対して10原子%以下である。なお、Mを含む酸化物と混合されていない、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物と比較して、Mを含む酸化物と混合され、Mの原子比率が10原子%以下である、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物は、電気伝導度が約8%以上増加している。なお、本実施形態では、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物中の元素の原子比の数値は、酸素空孔の形成又は不均一な拡散により、±10%の誤差が生じる可能性がある。
【0076】
本実施形態では、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含むアノード材料を用いてアノードを形成することにより、リチウムイオンを異なる経路で出入りさせることができ、分極効果を低減することができ、充放電サイクル寿命を向上させることができる。これにより、ニッケル、銅、及びスズを含む酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池の容量を大幅に増加させることができる。また、アノード材料として用いられる酸化スズは、高い容量性能を達成でき、アノード材料として用いられる酸化銅は、良好なサイクル寿命を達成でき、アノード材料として用いられる酸化ニッケルは、良好なリチウムイオン伝導性を達成できるため、酸化ニッケル、酸化銅、及び酸化スズの混合工程により得られる酸化物混合物を含むアノード材料を適用した二次電池は、優れた性能と安全性を備える。
【0077】
本発明の別の実施形態は、上記実施形態で提案されたアノード材料のいずれかを用いた二次電池を提供する。
【0078】
図1は、本発明の一実施形態による二次電池の概略断面図である。
図1を参照すると、二次電池100は、アノード102、カソード104、電解質108、及びパッケージ構造体112を含むことができる。本実施形態では、二次電池100は、セパレータ106をさらに含むことができる。さらに、本実施形態では、二次電池100は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0079】
本実施形態において、アノード102は、集電体102aと、集電体102a上に配置されたアノード材料層102bとを含むことができる。本実施形態において、集電体102aは、銅箔、ニッケル箔、高導電性箔等の金属箔であってもよい。本実施形態では、集電体102aの厚さは、約5μm~約300μmであってもよい。
【0080】
本実施形態では、アノード材料層102bは、上記実施形態で提案されたアノード材料のいずれかを含む。本実施形態において、アノード材料は、例えば、コーティング、スパッタリング、ホットプレス、焼結、物理蒸着、又は化学蒸着によって集電体102a上に配置することができる。また、本実施形態では、アノード材料層102bは、導電剤とバインダーとをさらに含んでいてもよい。本実施形態において、導電剤は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、導電性ブラック(VGCF、Super P、KS 4、KS 6、又はECP等)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、金属粉末、金属繊維、又はセラミックス材料であってもよい。詳細には、導電剤は、アノード材料の分子間の電気的接触を改善するために使用される。本実施形態において、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、メラミン樹脂、又はこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、アノード材料は、バインダによって集電体102aに接着されてもよい。
【0081】
本実施形態では、カソード104とアノード102とを別々に配置している。本実施形態では、カソード104は、集電体104aと、集電体104a上に配置されたカソード材料層104bとを含む。本実施形態において、集電体104aは、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、高導電性箔等の金属箔であってもよい。本実施形態では、集電体104aの厚さは、約5μm~約300μmであってもよい。
【0082】
本実施形態では、カソード材料層104bは、カソード材料を含む。本実施形態では、カソード材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、又はこれらの組み合わせを含み得る。本実施形態において、カソード材料は、例えば、コーティング、スパッタリング、ホットプレス、焼結、物理蒸着、又は化学蒸着によって、集電体104a上に配置することができる。また、本実施形態において、カソード材料層104bは、さらにバインダーを含んでいてもよい。本実施形態において、バインダーは、PVDF、SBR、ポリアミド、メラミン樹脂、又はこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、カソード材料は、バインダによって集電体104aに接着され得る。
【0083】
本実施形態では、電解質108は、アノード102とカソード104との間に設けられており、電解質108は、液体電解質、ゲル電解質、溶融塩電解質、又は固体電解質を含んでいてもよい。
【0084】
本実施形態では、セパレータ106は、アノード102とカソード104との間に配置され、セパレータ106、アノード102、及びカソード104は、貯蔵システムにおける収容領域110を画定し、電解質108は、収容領域110に配置されている。本実施形態では、セパレータ106の材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の絶縁材料、又はこれらの材料からなる複合構造体(例えば、PE/PP/PE)であってもよい。
【0085】
本実施形態では、二次電池100は、アノード102をカソード104から分離し、イオンを透過させるためのセパレータ106を含むが、本発明はそれに限定されない。他の実施形態では、電解質108は、固体電解質であり、二次電池100はセパレータを含まない。
【0086】
本実施形態では、パッケージ構造体112は、アノード102、カソード104、及び電解質108をカバーする。本実施形態では、パッケージ構造体112の材料は、例えば、アルミホイル又はステンレス鋼である。
【0087】
本実施形態では、二次電池100の構造は、
図1に示す構造に限定されない。他の実施形態では、二次電池100は、アノード、カソード、及び必要に応じて設けられるセパレータが巻かれたロール型構造、又は平坦な層を積層することによって形成される積層構造を有し得る。さらに、本実施形態では、二次電池100は、例えば、紙型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層電池、円筒型電池、又は長方形電池である。
【0088】
特に、二次電池100のアノード102は、前述の実施形態で提案されたアノード材料のいずれかを使用するので、上記のように、二次電池100は、良好な容量、安定性、及び充放電サイクル寿命を有することができる。
【実施例】
【0089】
本発明の特徴は、実施例1~14、及び比較例1~9を参照して以下により詳細に記載される。以下に実施例1~14が記載されているが、使用される材料、それらのそれぞれの量及び比率、及び詳細なプロセスフロー等は、本開示の範囲から逸脱することなく適切に改変することができる。従って、本開示の範囲は、以下の実施形態によって限定されるべきではない。
【0090】
実施例1
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、CoO粉末(コバルトを含む前駆体)、CuO粉末(銅を含む前駆体)、SnO粉末(スズを含む前駆体)、及びW酸化物粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(1)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例1のアノード材料)。ここで、x1は8であり、元素MはWであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、コバルト-銅-スズ酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0091】
二次電池の準備
実施例1の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例1のアノードに切断した。
【0092】
作用電極として実施例1のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例1の二次電池を準備した。
【0093】
実施例2
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、CoO粉末(コバルトを含む前駆体)、CuO粉末(銅を含む前駆体)、SnO粉末(スズを含む前駆体)、及びW酸化物粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(2)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例2のアノード材料)。ここで、x2は4であり、元素MはWであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、コバルト-銅-スズ酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0094】
二次電池の準備
実施例2の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例2のアノードに切断した。
【0095】
作用電極として実施例2のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例2の二次電池を準備した。
【0096】
実施例3
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、CoO粉末(コバルトを含む前駆体)、CuO粉末(銅を含む前駆体)、SnO粉末(スズを含む前駆体)、及びW酸化物粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(3)で表されるコバルト-銅-スズ酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例3のアノード材料)。ここで、x3は4であり、元素MはWであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、コバルト-銅-スズ酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0097】
二次電池の準備
実施例3の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例3のアノードに切断した。
【0098】
作用電極として実施例3のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例3の二次電池を準備した。
【0099】
実施例4
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、CoO粉末(コバルト酸化物)、CuO粉末(銅酸化物)、SnO2粉末(スズ酸化物)、及びW酸化物粉末(元素Mを含む酸化物)を粉砕・混合して、コバルト、銅、及びスズを含む酸化物混合物を得た(すなわち、実施例4のアノード材料)。ここで、コバルトと銅とスズの原子比は、1:1:1であり、元素MはWであり、元素Mの原子比率は10原子%以下である。
【0100】
二次電池の準備
実施例4のアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例4のアノードに切断した。
【0101】
作用電極として実施例4のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例4の二次電池を準備した。
【0102】
実施例5
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、SiO2粉末(ケイ素を含む前駆体)、SnO2粉末(スズを含む前駆体)、Fe2O3粉末(鉄を含む前駆体)、TiO2粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(4)で表されるケイ素-スズ-鉄酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例4のアノード材料)。ここで、x4は21であり、元素MはTiであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、ケイ素-スズ-鉄酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0103】
二次電池の準備
実施例5の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例5のアノードに切断した。
【0104】
作用電極として実施例5のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例5の二次電池を準備した。
【0105】
実施例6
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、SiO2粉末(酸化ケイ素)、SnO2粉末(酸化スズ)、Fe2O3粉末(酸化鉄)、TiO2粉末(元素Mを含む酸化物)を粉砕・混合して、ケイ素、スズ、鉄を含む酸化物混合物を得た(すなわち、実施例6のアノード材料)。ケイ素とスズと鉄の原子比は、4:1:16であり、元素MはTiであり、元素Mの原子比率は10原子%以下である。
【0106】
二次電池の準備
実施例6のアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例6のアノードに切断した。
【0107】
作用電極として実施例6のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例6の二次電池を準備した。
【0108】
実施例7
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、CuO粉末(銅を含む前駆体)、MnO粉末(マンガンを含む前駆体)、SiO2粉末(ケイ素を含む前駆体)、及びTiO2粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(7)で表される銅-マンガン-ケイ素酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例7のアノード材料)。ここで、x7は1であり、元素MはTiであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、銅-マンガン-ケイ素酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0109】
二次電池の準備
実施例7の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例7のアノードに切断した。
【0110】
作用電極として実施例7のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例7の二次電池を準備した。
【0111】
実施例8
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、CuO粉末(酸化銅)、MnO粉末(酸化マンガン)、SiO2粉末(酸化ケイ素)、TiO2粉末(元素Mを含む酸化物)を粉砕・混合して、銅、マンガン及びケイ素を含む酸化物混合物を得た(すなわち、実施例8のアノード材料)。銅とマンガンとケイ素の原子比は、1:4:1であり、元素MはTiであり、元素Mの原子比率は10原子%以下である。
【0112】
二次電池の準備
実施例8のアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例8のアノードに切断した。
【0113】
作用電極として実施例8のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例8の二次電池を準備した。
【0114】
実施例9
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、SnO2粉末(スズを含む前駆体)、MnO2粉末(マンガンを含む前駆体)、NiO粉末(ニッケルを含む前駆体)、Mo酸化物粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(8)で表されるスズ-マンガン-ニッケル酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例9のアノード材料)。ここで、x8は7であり、元素MはMoであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、スズ-マンガン-ニッケル酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0115】
二次電池の準備
実施例9の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例9のアノードに切断した。
【0116】
作用電極として実施例9のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例9の二次電池を準備した。
【0117】
実施例10
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、SnO2粉末(酸化スズ)、MnO2粉末(酸化マンガン)、NiO粉末(酸化ニッケル)、Mo酸化物粉末(元素Mを含む酸化物)を粉砕・混合して、スズ、マンガン及びニッケルを含む酸化物混合物を得た(すなわち、実施例10のアノード材料)。スズ、マンガン、ニッケルの原子比は、1:2:1であり、元素MはMoであり、元素Mの原子比率は10原子%以下である。
【0118】
二次電池の準備
実施例10のアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例10のアノードに切断した。
【0119】
作用電極として実施例10のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例10の二次電池を準備した。
【0120】
実施例11
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、MnO2粉末(マンガンを含む前駆体)、CuO粉末(銅を含む前駆体)、NiO粉末(ニッケルを含む前駆体)、Mo酸化物粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(13)で表されるマンガン-銅-ニッケル酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例11のアノード材料)。ここで、元素MはMoであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、マンガン-銅-ニッケル酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0121】
二次電池の準備
実施例11の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例11のアノードに切断した。
【0122】
作用電極として実施例11のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例11の二次電池を準備した。
【0123】
実施例12
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、MnO2粉末(酸化マンガン)、CuO粉末(酸化銅)、NiO粉末(酸化ニッケル)、Mo酸化物粉末(元素Mを含む酸化物)を粉砕・混合して、マンガン、銅、及びニッケルを含む酸化物混合物を得た(すなわち、実施例12のアノード材料)。ここで、マンガン、銅、ニッケルの原子比は、2:1:1であり、元素MはMoであり、元素Mの原子比率は10原子%以下である。
【0124】
二次電池の準備
実施例12のアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例12のアノードに切断した。
【0125】
作用電極として実施例12のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例12の二次電池を準備した。
【0126】
実施例13
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、NiO粉末(酸化ニッケル)、CuO粉末(酸化銅)、SnO2粉末(酸化スズ)、及びW酸化物粉末(元素Mを含む酸化物)を粉砕・混合して、ニッケル、銅及びスズを含む酸化物混合物を得た(すなわち、実施例13のアノード材料)。ニッケル、銅、スズの原子比は、1:1:2であり、元素MはWであり、元素Mの原子比率は10原子%以下である。
【0127】
二次電池の準備
実施例13のアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例13のアノードに切断した。
【0128】
作用電極として実施例13のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例13の二次電池を準備した。
【0129】
実施例14
アノード材料の準備
室温で、ボールミルを使用して、NiO粉末(ニッケルを含む前駆体)、CuO粉末(銅を含む前駆体)、SnO2粉末(スズを含む前駆体)、W酸化物粉末(元素Mを含む前駆体)を粉砕し、得られた粉末を混合し、プレスして直径約1cmのグリーンペレットにした。グリーンペレットを高温炉に入れて、前述の式(15)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物のバルク材料を得た(すなわち、実施例14のアノード材料)。ここで、x15は6であり、元素MはWであり、元素Mの原子比率は10原子%以下であり、ニッケル-銅-スズ酸化物の平均粒子径は、約0.1μm~約10μmの範囲である。
【0130】
二次電池の準備
実施例14の粉砕して細かくされたアノード材料と、スーパーP導電性炭素及びバインダー(すなわち、水に溶解されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))は、7:2:1の重量比で混合された。次に、ジルコニアボールを加え、約30分間混合して、アノードスラリーを形成した。次に、スパチュラ(100μm)を使用して、前記スラリーを銅箔(上記の集電体)に均一に塗布し、次に、スラリーを塗布した銅箔を真空オーブンに入れて、約110℃で約12時間乾燥させた。その後、乾燥した銅箔を、切断機により、直径約12.8mmの実施例14のアノードに切断した。
【0131】
作用電極として実施例14のアノード、対電極としてリチウム金属、電解質として有機溶媒に添加された1M LiPF6、セパレータとしてポリプロピレンフィルム(商品名:Celgard#2400、Celgard製)、パッケージ構造体としてステンレス鋼304又は316カバーを使用してボタン型電池(モデル:CR2032)が組み立てられた。ここまでで、実施例14の二次電池を準備した。
【0132】
比較例1
二次電池の準備
比較例1の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例1の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例1の二次電池では、作用電極の材料がCo2SnO4である。
【0133】
比較例2
二次電池の準備
比較例2の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例2の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例2の二次電池では、作用電極の材料がCoOである。
【0134】
比較例3
二次電池の準備
比較例3の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例3の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例3の二次電池では、作用電極の材料がCuOである。
【0135】
比較例4
二次電池の準備
比較例4の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例4の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例4の二次電池では、作用電極の材料がSnO2である。
【0136】
比較例5
二次電池の準備
比較例5の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例5の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例5の二次電池では、作用電極の材料がSiO2である。
【0137】
比較例6
二次電池の準備
比較例6の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例6の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例6の二次電池では、作用電極の材料がFe2O3である。
【0138】
比較例7
二次電池の準備
比較例7の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例7の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例7の二次電池では、作用電極の材料がMnOである。
【0139】
比較例8
二次電池の準備
比較例8の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例8の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例8の二次電池では、作用電極の材料がMnO2である。
【0140】
比較例9
二次電池の準備
比較例9の二次電池は、実施例1と同様の作製手順で準備した。比較例9の二次電池と実施例1の二次電池との相違は、主に、実施例1の二次電池では、作用電極が実施例1のアノードであり;比較例9の二次電池では、作用電極の材料がNiOである。
【0141】
実施例1~14の二次電池及び比較例1~9の二次電池を準備した後、実施例1~14の二次電池及び比較例1~9の二次電池のそれぞれについて、充放電サイクル試験を行った。
【0142】
充放電サイクル試験
実施例1~14の二次電池及び比較例1~9の二次電池のそれぞれについて、電圧0.01V~3V、約15℃~約30℃の環境下で、電池サイクル寿命容量試験を行った。測定結果を
図2~15に示す。
【0143】
図2~4から分かるように、比較例1の二次電池と比較して、実施例1~3の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0144】
式(1)で表され、x1が9又は14である、コバルト-銅-スズ酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、コバルト-銅-スズ酸化物の前述の説明及び実施例1の試験結果によれば、当業者は、式(1)で表され、x1が9又は14であるコバルト-銅-スズ酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0145】
式(2)で表され、x2が6又は8である、コバルト-銅-スズ酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、コバルト-銅-スズ酸化物の前述の説明及び実施例2の試験結果によれば、当業者は、式(2)で表され、x2が6又は8である、コバルト-銅-スズ酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0146】
式(3)で表され、x3が3又は5である、コバルト-銅-スズ酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、コバルト-銅-スズ酸化物の前述の説明及び実施例1の試験結果によれば、当業者は、式(3)で表され、x3が3又は5である、コバルト-銅-スズ酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0147】
図5から分かるように、比較例2~4の二次電池と比較して、実施例4の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0148】
コバルト、銅及びスズを含み、コバルトと銅とスズの原子比が5:1:3又は2:1:1である酸化物混合物を含む二次電池については、前述の試験を実施しなかったが、コバルト、銅及びスズを含む酸化物混合物の前述の説明及び実施例4の試験結果によれば、当業者は、コバルト、銅及びスズを含み、コバルトと銅とスズの原子比が5:1:3又は2:1:1である酸化物混合物を含む二次電池は、良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0149】
図6及び
図7から分かるように、比較例4~6の二次電池と比較して、実施例5及び6の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0150】
式(4)で表され、x4が21より大きく34以下である、ケイ素-スズ-鉄酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、ケイ素-スズ-鉄酸化物の前述の説明及び実施例5の試験結果によれば、当業者は、式(4)で表され、x4が21より大きく34以下である、ケイ素-スズ-鉄酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0151】
式(5)又は(6)で表される、ケイ素-スズ-鉄酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、ケイ素-スズ-鉄酸化物の前述の説明及び実施例5の試験結果によれば、当業者は、式(5)又は(6)で表される、ケイ素-スズ-鉄酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0152】
ケイ素、スズ及び鉄を含み、ケイ素とスズと鉄の原子比が1:1:1又は4:1:1である酸化物混合物を含む二次電池については、前述の試験を実施しなかったが、ケイ素、スズ及び鉄を含む酸化物混合物の前述の説明及び実施例6の試験結果によれば、当業者は、ケイ素、スズ及び鉄を含み、ケイ素とスズと鉄の原子比が1:1:1又は4:1:1である酸化物混合物を含む二次電池は、良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0153】
図8から分かるように、実施例7の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、良好な容量及び容量保持性を有する。
【0154】
式(7)で表され、x7が0より大きく1より小さい、銅-マンガン-ケイ素酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、銅-マンガン-ケイ素酸化物の前述の説明及び実施例7の試験結果によれば、当業者は、式(7)で表され、x7が0より大きく1より小さい、銅-マンガン-ケイ素酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0155】
図9から分かるように、比較例3、5及び7の二次電池と比較して、実施例8の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0156】
銅、マンガン及びケイ素を含み、銅とマンガンとケイ素の原子比が1:1:1、4:1:1又は1:1:4である酸化物混合物を含む二次電池については、前述の試験を実施しなかったが、銅、マンガン及びケイ素を含む酸化物混合物の前述の説明及び実施例8の試験結果によれば、当業者は、銅、マンガン及びケイ素を含み、銅とマンガンとケイ素の原子比が1:1:1、4:1:1又は1:1:4である酸化物混合物を含む二次電池は、良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0157】
図10及び
図11から分かるように、比較例4、8及び9の二次電池と比較して、実施例9及び10の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0158】
式(8)で表され、x8が4以上7より小さい、スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、スズ-マンガン-ニッケル酸化物の前述の説明及び実施例9の試験結果によれば、当業者は、式(8)で表され、x8が4以上7より小さい、スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0159】
式(9)、(10)又は(11)で表される、スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、スズ-マンガン-ニッケル酸化物の前述の説明及び実施例9の試験結果によれば、当業者は、式(9)、(10)又は(11)で表される、スズ-マンガン-ニッケル酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0160】
スズ、マンガン及びニッケルを含み、スズとマンガンとニッケルの原子比が1:1:1、1:1:2又は2:1:1である酸化物混合物を含む二次電池については、前述の試験を実施しなかったが、スズ、マンガン及びニッケルを含む酸化物混合物の前述の説明及び実施例10の試験結果によれば、当業者は、スズ、マンガン及びニッケルを含み、スズとマンガンとニッケルの原子比が1:1:1、1:1:2又は2:1:1である酸化物混合物を含む二次電池は、良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0161】
図12から分かるように、実施例11の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、良好な容量及び容量保持性を有する。
【0162】
式(12)又は(14)で表される、マンガン-銅-ニッケル酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、マンガン-銅-ニッケル酸化物の前述の説明及び実施例11の試験結果によれば、当業者は、式(12)又は(14)で表される、マンガン-銅-ニッケル酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0163】
図13から分かるように、比較例3、8及び9の二次電池と比較して、実施例12の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0164】
マンガン、銅及びニッケルを含み、マンガンと銅とニッケルの原子比が3:2:1又は1:1:1である酸化物混合物を含む二次電池については、前述の試験を実施しなかったが、マンガン、銅及びニッケルを含む酸化物混合物の前述の説明及び実施例12の試験結果によれば、当業者は、マンガン、銅及びニッケルを含み、マンガンと銅とニッケルの原子比が3:2:1又は1:1:1である酸化物混合物を含む二次電池は、良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0165】
図14から分かるように、比較例3、4及び9の二次電池と比較して、実施例13の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、より良好な容量及び容量保持性を有する。
【0166】
ニッケル、銅及びスズを含み、ニッケルと銅とスズの原子比が2:1:3又は1:2:3である酸化物混合物を含む二次電池については、前述の試験を実施しなかったが、ニッケル、銅及びスズを含む酸化物混合物の前述の説明及び実施例13の試験結果によれば、当業者は、ニッケル、銅及びスズを含み、ニッケルと銅とスズの原子比が2:1:3又は1:2:3である酸化物混合物を含む二次電池は、良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0167】
図15から分かるように、実施例14の二次電池は、高いサイクル数(>250回)の後、良好な容量及び容量保持性を有する。
【0168】
式(15)で表され、x15が3又は9である、ニッケル-銅-スズ酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、ニッケル-銅-スズ酸化物の前述の説明及び実施例14の試験結果によれば、当業者は、式(15)で表され、x15が3又は9であるニッケル-銅-スズ酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0169】
式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物を含む二次電池では、前述の試験は実施されなかったが、ニッケル-銅-スズ酸化物の前述の説明及び実施例14の試験結果によれば、当業者は、式(16)又は式(17)で表されるニッケル-銅-スズ酸化物を含む二次電池が良好な容量及び容量保持性を有し得ることを理解すべきである。
【0170】
前述の試験結果から、本発明の二次電池用アノード材料を用いてアノードを作製することにより、当該アノードを適用した二次電池が、良好な容量、安定性、及び充放電サイクル寿命を有し得ることが確認された。
【0171】
また本発明の二次電池用アノード材料からなるアノードを用いた二次電池は、市販の黒鉛(容量の理論値は372mAh/g)と比較して、より大きい容量を有するため、二次電池用アノード材料は、電池性能を効果的に向上させることができる。
【0172】
上記の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、記載された実施形態の変更が可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本発明の範囲は、上記の詳細な説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本明細書の開示により、本発明のアノード材料及びアノードは、二次電池に適用することができ、その結果、二次電池の容量及び安定性が向上される。
【符号の説明】
【0174】
100:二次電池
102:アノード
102a、104a:集電体
102b:アノード材料層
104:カソード
104b:カソード材料層
106:セパレータ
108:電解質
110:収容領域
112:パッケージ構造体