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特許7410597MRI装置用補助トランスデューサー及びMRI装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】MRI装置用補助トランスデューサー及びMRI装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231227BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20231227BHJP
   G01R 33/36 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61B5/055
A61B5/055 355
G01N24/00 580Y
G01R33/36
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022564979
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044431
(87)【国際公開番号】W WO2022113321
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】500445000
【氏名又は名称】株式会社エム・アール・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100087479
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 好人
(72)【発明者】
【氏名】拝師 智之
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-526323(JP,A)
【文献】特開2019-202088(JP,A)
【文献】特表2009-520556(JP,A)
【文献】特開2020-146115(JP,A)
【文献】特開2013-165811(JP,A)
【文献】特開2011-206230(JP,A)
【文献】特開2004-298532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI装置の受信コイルを変更するためのMRI装置用補助トランスデューサーであって、
前記MRI装置のMRI装置送信コイルから出力される励起パルスを検出する励起パルス検出コイルと、
前記励起パルスにより被検体から発せられる共鳴信号を受信する共鳴信号受信コイルと、
前記共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整する信号調整部と、
前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を前記MRI装置のMRI装置受信コイルに送信する共鳴信号送信コイルと
を有する
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項2】
請求項1記載のMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、
前記共鳴信号受信コイルが前記励起パルスに基づいてデカップルされる
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、
前記共鳴信号送信コイルを包囲して電磁波をシールドするシールド部を更に有する
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、
前記信号調整部は、前記共鳴信号の位相とゲインを調整する
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、
前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を観察するモニタを更に有する
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、
電力を供給する電源が、非磁性である
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、
前記共鳴信号受信コイルと前記信号調整部と前記共鳴信号送信コイルとを複数組有する
ことを特徴とするMRI装置用補助トランスデューサー。
【請求項8】
MRI装置から出力される励起パルスを検出する励起パルス検出コイルと、前記励起パルスにより被検体から発せられる共鳴信号を受信する共鳴信号受信コイルと、前記共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整する信号調整部と、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を前記MRI装置のMRI装置受信コイルに送信する共鳴信号送信コイルとを有するMRI装置用補助トランスデューサーを設けたMRI装置の制御方法であって、
前記MRI装置のMRI装置送信コイルにより前記励起パルスを送信し、
前記励起パルス検出コイルにより、前記励起パルスを検出し、
前記共鳴信号受信コイルにより、前記被検体から発せられる前記共鳴信号を受信し、
前記信号調整部により、前記共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整し、
前記共鳴信号送信コイルにより、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を送信し、
前記MRI装置のMRI装置受信コイルにより、前記共鳴信号を受信する
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8記載のMRI装置の制御方法において、
前記MRI装置用補助トランスデューサーの前記共鳴信号受信コイルを前記励起パルスに基づいてデカップルする
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載のMRI装置の制御方法において、
前記MRI装置用補助トランスデューサーは、前記共鳴信号送信コイルを包囲して電磁波をシールドするシールド部を更に有する
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載のMRI装置の制御方法において、
前記MRI装置用補助トランスデューサーの前記信号調整部は、前記共鳴信号の位相とゲインを調整する
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載のMRI装置の制御方法において、
前記MRI装置用補助トランスデューサーは、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を観察するモニタを更に有する
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1項に記載のMRI装置の制御方法において、
前記MRI装置用補助トランスデューサーに電力を供給する電源が、非磁性である
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれか1項に記載のMRI装置の制御方法において、
前記MRI装置が、複数のMRI装置受信コイルを有し、
前記MRI装置用補助トランスデューサーが、前記共鳴信号受信コイルと前記信号調整部と前記共鳴信号送信コイルとを複数組有し、
前記複数組の各共鳴信号受信コイルにより、前記被検体から発せられる前記共鳴信号を受信し、
前記複数組の各信号調整部により、各共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整し、
前記複数組の各共鳴信号送信コイルにより、各信号調整部により調整された前記共鳴信号を送信し、
前記MRI装置の各MRI装置受信コイルにより、各共鳴信号を受信する
ことを特徴とするMRI装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMRI装置用補助トランスデューサー及びMRI装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診断用MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置は、強く均一な静磁場中の被検体である被検者にLarmorの歳差運動周波数である高周波の振動または回転磁場を与え、人体内の原子核に共鳴現象を起こさせる際に発生する巨視的な核磁化の減衰として現れる高周波電磁波を受信コイルで取得し、得られた信号データを画像再構成する非侵襲撮像装置である。
【0003】
MRI装置は大きな磁石による強い静磁場とAM/FMラジオに使われているような電磁波を使って画像を撮像するので、放射線による被ばくがなく、小児や健常な人も安心して検査を受けることができる。
【0004】
現在、世界中で普及している診断用MRI装置は、最も検出感度が高い水素原子核(1Hプロトン)を標的とし、1Hプロトンに共鳴現象を起こさせて発生するNMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号から被写体のプロトン分布画像を構成している。撮像パラメタを調節することによって、1Hプロトンの密度分布画像だけでなく、信号の減衰時間(緩和時間)を反映した、様々なコントラスト画像が得られ、疾患描出能や診断能が高められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MRI装置には、一般に、検出コイルは送信パルスと受信パルスを1つの高周波コイルで扱う「送受信兼用RFコイル」方式のMRI装置の機能と、送信コイルと受信コイルを分離して役割分担させた「送受信分離型RFコイル」方式のMRI装置の機能がある。「送受信分離型RFコイル」方式のMRI装置の構成の場合、送信コイルは、大きな筐体であるMRI装置本体の大筒に内蔵されていて共通であるが、受信コイルは、被検体の被検部の形状に適したものであることが望ましい。
【0006】
しかしながら、MRI装置への受信コイルの接続は、MRI装置メーカーが使用する専用の接続コネクタを介して行われる。このため、そのMRI装置メーカーが用意した受信コイルしか利用することができない。また、MRI装置メーカー間で接続コネクタの互換性はないため、他のMRI装置メーカーの受信コイルを使用することはできない。更に、MRI装置の利用者が、被検体の被検部に最適な形状の受信コイルを考案しても、専用の接続コネクタの仕様が公開されていないため、MRI装置に接続することができない。
【0007】
本発明の目的は、MRI装置の受信コイルを変更することができるMRI装置用補助トランスデューサー及びMRI装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるMRI装置用補助トランスデューサーは、MRI装置の受信コイルを変更するためのMRI装置用補助トランスデューサーであって、前記MRI装置のMRI装置送信コイルから出力される励起パルスを検出する励起パルス検出コイルと、前記励起パルスにより被検体から発せられる共鳴信号を受信する共鳴信号受信コイルと、前記共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整する信号調整部と、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を前記MRI装置のMRI装置受信コイルに送信する共鳴信号送信コイルとを有することを特徴とする。
【0009】
上述したMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、前記共鳴信号受信コイルが前記励起パルスに基づいてデカップルされるようにしてもよい。
【0010】
上述したMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、前記共鳴信号送信コイルを包囲して電磁波をシールドするシールド部を更に有するようにしてもよい。
【0011】
上述したMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、前記信号調整部は、前記共鳴信号の位相とゲインを調整するようにしてもよい。
【0012】
上述したMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を観察するモニタを更に有するようにしてもよい。
【0013】
上述したMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、電力を供給する電源が、非磁性であってもよい。
【0014】
上述したMRI装置用補助トランスデューサーにおいて、前記共鳴信号受信コイルと前記信号調整部と前記共鳴信号送信コイルとを複数組有するようにしてもよい。
【0015】
本発明の一態様によるMRI装置の制御方法は、MRI装置から出力される励起パルスを検出する励起パルス検出コイルと、前記励起パルスにより被検体から発せられる共鳴信号を受信する共鳴信号受信コイルと、前記共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整する信号調整部と、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を前記MRI装置のMRI装置受信コイルに送信する共鳴信号送信コイルとを有するMRI装置用補助トランスデューサーを設けたMRI装置の制御方法であって、前記MRI装置のMRI装置送信コイルにより前記励起パルスを送信し、前記励起パルス検出コイルにより、前記励起パルスを検出し、前記共鳴信号受信コイルにより、前記被検体から発せられる前記共鳴信号を受信し、前記信号調整部により、前記共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整し、前記共鳴信号送信コイルにより、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を送信し、前記MRI装置のMRI装置受信コイルにより、前記共鳴信号を受信することを特徴とする。
【0016】
上述したMRI装置の制御方法において、前記MRI装置用補助トランスデューサーの前記共鳴信号受信コイルを前記励起パルスに基づいてデカップルするようにしてもよい。
【0017】
上述したMRI装置の制御方法において、前記MRI装置用補助トランスデューサーは、前記共鳴信号送信コイルを包囲して電磁波をシールドするシールド部を更に有するようにしてもよい。
【0018】
上述したMRI装置の制御方法において、前記MRI装置用補助トランスデューサーの前記信号調整部は、前記共鳴信号の位相とゲインを調整するようにしてもよい。
【0019】
上述したMRI装置の制御方法において、前記MRI装置用補助トランスデューサーは、前記信号調整部により調整された前記共鳴信号を観察するモニタを更に有するようにしてもよい。
【0020】
上述したMRI装置の制御方法において、前記MRI装置用補助トランスデューサーに電力を供給する電源が、非磁性であるようにしてもよい。
【0021】
上述したMRI装置の制御方法において、前記MRI装置が、複数のMRI装置受信コイルを有し、 前記MRI装置用補助トランスデューサーが、前記共鳴信号受信コイルと前記信号調整部と前記共鳴信号送信コイルとを複数組有し、前記複数組の各共鳴信号受信コイルにより、前記被検体から発せられる前記共鳴信号を受信し、前記複数組の各信号調整部により、各共鳴信号受信コイルにより受信された前記共鳴信号を調整し、前記複数組の各共鳴信号送信コイルにより、各信号調整部により調整された前記共鳴信号を送信し、前記MRI装置の各MRI装置受信コイルにより、各共鳴信号を受信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、MRI装置の受信コイルを変更するためのMRI装置用補助トランスデューサーであって、MRI装置のMRI装置送信コイルから出力される励起パルスを検出する励起パルス検出コイルと、励起パルスにより被検体から発せられる共鳴信号を受信する共鳴信号受信コイルと、共鳴信号受信コイルにより受信された共鳴信号を調整する信号調整部と、信号調整部により調整された共鳴信号をMRI装置のMRI装置受信コイルに送信する共鳴信号送信コイルとを有するようにしたので、MRI装置の受信コイルを任意のものに変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来のMRI装置の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーにおける補助トランスデューサー制御部を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーにおける受信専用コイルの詳細を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを従来のMRI装置の一例に装着した一態様を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを従来のMRI装置に装着した一態様での各部の信号を示す図である。
図7】従来のMRI装置の他の例を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーにおける補助トランスデューサー制御部を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを従来のMRI装置の他の例に装着した一態様を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを従来のMRI装置の他の例に装着した一態様での各部の信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[本発明の原理]
本発明の原理について説明する。
【0025】
世界中で普及している磁気共鳴診断装置MRIは、核磁気共鳴(NMR)の原理を用いて、被写体の内部の断層を非侵襲で可視化する。NMR対象原子核は最も検出感度の高い1Hプロトンが標的とされている。
【0026】
検出コイルは送信パルスと受信信号検出を1つの高周波コイルで扱う「送受信兼用RFコイル」、送信コイルと受信コイルを役割分担した「送受信分離型RFコイル」がある。後者の場合、送信RFコイルは大きな筐体であるMRI本体の大筒に内蔵されていることがほとんどで、受信RFコイルを、被検部の形状に合わせて使用する。これはMRI信号が微弱な高周波磁場であり、もっとも効率よく高周波磁場を検出するには、小口径の受信専用RFコイルを1つあるいは複数個組み合わせればよいことが科学的に証明されているからである。
【0027】
いっぽうで、受信専用RFコイルのMRI本体への接続は、MRI装置メーカーが使用する独自の専用コネクタを介して行われるため、メーカー間での接続互換性は無い。
【0028】
受信専用コイルは、受信専用とは言っても、送信パルスの発生時にはその照射から受信回路を保護する必要があり、また受信回路に残留してしまう照射パルスのエネルギーを、0.1ミリ秒に満たない時間内で、MRI信号の取り込みを開始するまでに速やかに廃棄する必要がある。
【0029】
受動的な保護をパッシブデカップル、能動的な保護をアクティブデカップルと呼ぶ。
【0030】
パッシブデカップルはRFコイル内にダイオードとインダクタを組み込めばよいが、デカップル効果は、高画質化のためには不十分である。このためにアクティブデカップルが不可欠であり、通常は、専用の接続コネクタを介して受信専用コイル内に配置されているダイオードにデカップル電流を流すことで、受信LC共振回路を離調させて実現している。
【0031】
このことから、MRIメーカーに合致した専用コネクタへの接続を行えなければ、通常は、アクティブデカップルが行えない。
【0032】
いっぽうで、基礎研究のためにハードウェア仕様を公開したり、電気的な接続を開放したりするのは、臨床用MRI装置の安全性の観点から懸念すべきであることも指摘されている。このような状況で、検出感度を最も決定づける初段のアンプともいえる受信専用RFコイルを、MRI装置へ自由に接続する方法が求められている。
【0033】
そこで、本発明は、任意の受信専用RFコイルが、MRI本体から独立してワイヤレスで動作しつつも、アクティブデカップル機能を具備する方法を提案する。
【0034】
デカップルのタイミングは、送信パルス検出コイルをMRI本体内側に配置することで、いち早く検出しこれをGATE信号化する。デカップル電流は、電池駆動等の電気回路によって、受信専用RFコイルに給電される。
【0035】
被写体から検出されたMRI信号は、電気回路で、例えば、10dBから20dB増幅されて、送信コイルへと送られる。送信コイルは、MRI本体の受信専用コイルの近傍に配置されて、あたかも被写体からMRI信号が出てきたかのように、MRI本体へMRI信号を送る。
【0036】
このように本発明を実施することで、MRI装置本体へは電気的な変更を加えないで、アクティブデカップルが可能な任意の受信専用RFコイルを、使用することができる。
【0037】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーについて図1乃至図6を用いて説明する。
【0038】
(MRI装置)
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを装着するMRI装置について図1を用いて説明する。
【0039】
MRI装置は、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)現象を利用した、核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging; MRI)による撮像システムである。MRI装置では、均一な強磁場中の被検体内部の主に1Hプロトンつまり水素原子核に電磁波を共鳴的手法で与えて観測可能な核磁化を発生させ、三軸傾斜磁場で位置情報を付与し、前記核磁化の緩和の際に発生する電磁波を受信コイルで取得し、得られた信号データを主にFourier変換を用いて画像に再構成する。MRI装置の送信コイル及び受信コイルの空間的な配置は、被写体の位置情報の弁別にも利用される。
【0040】
本実施形態におけるMRI装置12には、図1に示すように、水平方向、すなわち、被検体10の体軸の方向に静磁場を発生する静磁場コイル14が設けられている。静磁場コイル14内には、被検体10に三軸傾斜磁場を発生する三軸傾斜磁場コイル16が設けられている。三軸傾斜磁場コイル16内には、静磁場コイル14が発する静磁場強度に対応した、計測対象のNMR共鳴周波数に等しいRF(Radio Frequency)帯域の電磁波を送信する送信コイル18が設けられている。
【0041】
なお、送信コイル18は送受信兼用であってもよい。また、送信コイル18は、小型で、被検体10の一部を覆うものであってもよい。
【0042】
三軸傾斜磁場コイル16内の被検体10の近傍には、磁気共鳴により生じた被検体10からの電磁波を受信する受信コイル20が設けられている。受信コイル20は接続コネクタ20Cにより受信ヘッド22に接続されている。
【0043】
送信コイル18内の検査位置に被検体10を移動させるためのベッド24が設けられている。被検体10は、ベッド24に載せられて、MRI装置12の検査位置に移動する。
【0044】
MRI装置12には、MRI装置12を制御するためのMRI装置制御部26と、MRI画像等を表示するためのモニタ28が設けられている。
【0045】
MRI装置制御部26は、MRI装置全体を制御するための制御用PC26Aと、被検体10に照射する一連の高周波パルス磁場および三軸傾斜磁場を表すパルスシーケンスを生成するパルスシーケンサ26Bと、受信コイル20の受信ヘッド22に接続され、電磁波を検波する高周波トランシーバ26Cと、送信コイル18に接続され、送信コイル18にRF電力を供給するRF電力アンプ26Dと、三軸傾斜磁場コイル16に接続され、三軸傾斜磁場コイル16に電力を供給する磁場コイル電源26E等から構成されている。
【0046】
このMRI装置12は、1Hプロトンを標的としている。静磁場コイル14により、例えば、磁場強度が3.0テスラの静磁場を印加する。3.0テスラの静磁場強度での1Hプロトンの共鳴周波数は128MHz程度であるので、送信コイル18と受信コイル20は、コヒーレントな128MHzの共鳴周波数に適合するように調整されている。
【0047】
このMRI装置12を用いることにより、被検体10の体内の1Hプロトンの分布状態を示すMRI画像を得ることができる。撮像パラメタを調整することによって、1Hプロトンの状態の信号減衰時間を反映した、T1(ティーワン)緩和時間強調画像、T2(ティーツー)緩和時間強調画像、拡散強調画像等も得ることができる。
【0048】
このMRI装置12では、受信コイル20は接続コネクタ20Cにより受信ヘッド22に接続されている。この接続コネクタ20Cは、このMRI装置メーカー専用であり、その仕様も公開されていない。そのため、他のMRI装置メーカーの受信コイルや、利用者が考案した受信コイルを受信ヘッド22に接続することはできない。
【0049】
(MRI装置用補助トランスデューサー)
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーについて図2乃至図4を用いて説明する。
【0050】
図2は本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを示す図であり、図3は本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーにおける受信専用コイルの詳細を示す図であり、図4は本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーにおける補助トランスデューサー制御部を示す図である。
【0051】
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサー30は、従来のMRI装置12に装着することにより、任意の受信コイルにより被検体10からの共鳴信号を受信することを可能にするものである。
【0052】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、非磁性電源46から動作電力が供給される。MRI装置12の近傍で使用するため磁力で吸引されない非磁性であることが好ましい。非磁性電源46は一次電池でも、二次電池でもよく、あるいは商用交流電源から変換した直流電源であってもよい。
【0053】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスを検出するための検出コイル32が設けられている。これにより、MRI装置用補助トランスデューサー30をMRI装置12の励起パルスに同期させて稼働させることができる。
【0054】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスにより被検体10内の1Hプロトンからの電磁波を受信する受信専用コイル34が設けられている。受信専用コイル34には、接続コネクタ34Cを介して高周波ヘッド36が接続されている。
【0055】
受信専用コイル34を、被検体10の計測対象となる臓器等に適した形状とし、その臓器等の近くに配置することによって,臓器等に特異なNMR信号を抽出することができる。さらに受信専用コイル34を適切な大きさおよび配置にすることで、被写体が被る不必要な励起パルスの照射・吸収を避けることに寄与する。これでSAR比吸収率(Specific Absorption Rate)の低下が期待できる。
【0056】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、磁気的なカップリングによりMRI装置12にMRI信号を磁気的に送信するための送信コイル38が設けられている。
【0057】
送信コイル38を包囲するシールド部40が設けられ、送信コイル38を局所的にシールドする。このシールド部40によって、送信コイル38と受信専用コイル34の磁気的なカップリングの漏洩と外部から混入する外乱信号を取り除くことができる。
【0058】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、MRI装置用補助トランスデューサー30を制御するための補助トランスデューサー制御部42と、制御時の各種波形をモニタするための3つの波形モニタ44A、44B、44Cが設けられている。
【0059】
補助トランスデューサー制御部42は、ゲイン調整器42Aと、ゲート発生器42Bと、RF微小信号アンプ42Cとから構成されている。
【0060】
ゲイン調整器42Aは、MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスを検出する検出コイル32に接続され、検出コイル32のゲインを調整する。波形モニタ44A、44Bは、ゲイン調整器42Aに設けられている。
【0061】
ゲート発生器42Bは、ゲイン調整器42Aに接続され、検出コイル32が検出した励起パルスに応じて動作モードを切り替えるゲート信号を出力する。
【0062】
受信専用コイル34により受信された共鳴信号は高周波ヘッド36で初段の受信がなされ、RF微小信号アンプ42Cにより増幅され、MRI装置12にMRI信号を送信するための送信コイル38に接続コネクタ38Cを介して出力される。波形モニタ44Cは、RF微小信号アンプ42Cに設けられている。
【0063】
補助トランスデューサー制御部42の詳細を図3に示す。
【0064】
検出コイル32は減衰器42Dに接続されている。減衰器42Dはゲイン調整器42Aに接続されている。減衰器42Dの入力端に波形モニタ44Aが接続されている。
【0065】
MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスは、検出コイル32により検出され、減衰器42Dにより減衰され、LOGアンプ等のゲイン調整器42Aによりゲインが調整される。波形モニタ44Aにより、送信コイル18からの励起パルス信号がモニタされる。
【0066】
ゲイン調整器42Aの出力端にはゲート発生器42Bが接続されている。ゲート発生器42Bは、アンプ42Baと、ワンショット回路42Bbにより構成されている。ワンショット回路42Bbの出力端には波形モニタ44Bが接続されている。
【0067】
ゲイン調整器42Aから出力された励起パルス信号は、アンプ42Baにより増幅され、ワンショット回路42Bbにより、励起パルス信号に基づくゲート信号が生成される。
【0068】
ワンショット回路42Bbは、送信コイル18からの励起パルスが検出コイルで検出されれば速やかにゲート出力をオンとして、一度オン状態になった場合は、送信コイル18からの励起パルスが検出コイルで検出されなくなったタイミングから余分に1μ秒から1m秒の持続時間で余分にゲート出力をオンとする。ワンショット回路42Bbは、この動作を繰り返す。
【0069】
波形モニタ44Bによりゲート信号がモニタされる。波形モニタ44Aの励起パルス波形と波形モニタ44Bのゲート信号を比較しながら、上述の延長時間1μ秒から1m秒を調整する。最終的には装置システム全体を動作させ、MRI装置12が出力するMRI画像を評価しながら、または波形モニタ44CのMRI波形を確認しながら、ワンショット回路42Bbのゲート信号の余分の持続時間を最適化してもよい。
【0070】
このゲート信号により、後述する高周波ヘッド36、RF微小信号アンプ42Cの動作モードが切り替えられる。
【0071】
受信専用コイル34は、接続コネクタ34Cを介して高周波ヘッド36に接続されている。高周波ヘッド36は、RF微小信号アンプ42Cに接続されている。RF微小信号アンプ42Cは、位相及びゲイン調整器42Eに接続されている。位相及びゲイン調整器42Eは、接続コネクタ38Cを介して送信コイル38に接続されている。送信コイル38は、MRI装置12の受信コイル20と磁気的なカップリングを構成する。位相及びゲイン調整器42Eの出力端に波形モニタ44Cが接続されている。
【0072】
被検体10からの128MHzのMRI信号は、受信専用コイル34により受信され、高周波ヘッド36に入力される。高周波ヘッド36からのMRI信号は、RF微小信号アンプ42Cに出力される。RF微小信号アンプ42Cは、高周波ヘッド36からのMRI信号を増幅して、位相及びゲイン調整器42Eに出力する。
【0073】
位相及びゲイン調整器42Eは、RF微小信号アンプ42Cにより増幅されたMRI信号の位相及びゲインを調整して、接続コネクタ38Cを介して送信コイル38に出力する。送信コイル38に出力されたMRI信号は、磁気的なカップリングを介してMRI装置12の受信コイル20に送信される。送信コイル38に出力されるMRI信号は、波形モニタ44Cによりモニタされる。
【0074】
位相及びゲイン調整器42Eは、送信コイル38が送信するMRI信号の位相及びゲインを、MRI装置12の受信コイル20が想定している範囲となるように、MRI装置12を動作させながら調整する。この時、被検体10の代わりに、JIS等の規格で定められた疑似試料であるMRIファントーム等を用いてもよい。
【0075】
本実施形態では、励起パルス信号に基づくゲート信号により高周波ヘッド36の動作モードが切り替えられ、それにより、受信専用コイル34のアクティブデカップル機能をオンオフさせる。
【0076】
受信専用コイル34の詳細を図4に示す。
【0077】
受信専用コイル34は、図4に示すように、LC並列共振型であり、共鳴周波数f=1/2π√(LC)=1/2π√LCとなる。送信パルスのエネルギーが共振回路に溜まってしまうと、共鳴信号の受診時に問題となるので、パッシブデカップル回路34Aとアクティブデカップル回路34Bが設けられている。
【0078】
図4では、受信専用コイル34の左側のキャパシタ4Ctにパッシブデカップル回路34Aを設け、受信専用コイル34の右側、すなわち、接続コネクタ34C側のキャパシタ8Ctにアクティブデカップル回路34Bを設けている。
【0079】
なお、パッシブデカップル回路34Aとアクティブデカップル回路34Bは、共振回路への影響を避けつつインダクタを適切に使い、受信専用コイル34内のいずれのキャパシタに設けてもよい。パッシブデカップル回路34Aとアクティブデカップル回路34Bはいくつ設けてもよい。
【0080】
なお、パッシブデカップル回路34Aとアクティブデカップル回路34Bは、受信専用コイル34内のいずれのキャパシタに設けてもよい。パッシブデカップル回路34Aとアクティブデカップル回路34Bはいくつ設けてもよい。
【0081】
パッシブデカップル回路34Aは、図4に示すように、並列接続したダイオード34A1とダイオード34A2にインダクタ34A3を直列接続した回路として構成され、そのように構成したパッシブデカップル回路34Aを受信専用コイル34のキャパシタ4Ctに並列接続している。
【0082】
パッシブデカップル回路34Aは、送信パルスが発生する高周波磁場を受信専用コイルの中心ループあるいはインダクタ34A3で捉え、ダイオード34A1又はダイオード34A2にパッシブデカップル電流を流して導通させ、近接するキャパシタ4Ctを受信専用コイル34から受動的に除外することにより、共鳴周波数f=1/2π√LCの共振条件から受信専用コイル34を離調して、MRI信号の信号検出系からデカップリング(decoupling)する。
【0083】
アクティブデカップル回路34Bは、図4に示すように、受信専用コイル34のキャパシタ8Ctの両端にダイオード34B1を並列接続し、キャパシタ8Ctの一端を同軸ケーブル34C1のシールドと同電位とし、キャパシタ8Ctの他端に、並列接続したインダクタ34B2とキャパシタ34B3を直列接続している。
【0084】
アクティブデカップル回路34Bは、高周波ヘッド36から接続コネクタ34Cを介し、同軸ケーブル34C1を介して供給されるアクティブデカップル電流をアクティブデカップル回路34Bのダイオード34B1に流し、近接するキャパシタ8Ctを受信専用コイル34から能動的に除外することにより、共鳴周波数f=1/2π√LCの共振条件から受信専用コイル34を離調して、MRIの信号検出系からデカップリング(decoupling)する。同時に、共振回路内の余剰エネルギーをキャパシタ8Ctの一端から同軸ケーブル34C1のシールド外側へ流して捨てる。
【0085】
高周波ヘッド36は、励起パルス信号に基づくゲート信号により動作モードが切り替えられる。ゲート信号がハイレベルのオンのとき、アクティブデカップル回路34Bにアクティブデカップル電流を供給する。ゲート信号がローレベルのオフのとき、アクティブデカップル回路34Bにアクティブデカップル電流を供給されない。これにより、励起パルス信号に基づくゲート信号により受信専用コイル34のアクティブデカップル機能をオンオフさせる。
【0086】
(MRI装置用補助トランスデューサーを装着したMRI装置)
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを装着したMRI装置について図5を用いて説明する。
【0087】
図1に示す従来のMRI装置12に、図2に示す本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30を装着する。MRI装置用補助トランスデューサー30のシールド部40内にMRI装置12の受信コイル20を挿入し、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル38と磁気的なカップリングを構成する。MRI装置12の受信コイル20とMRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル38とはシールド部40によりシールドされる。
【0088】
なお、シールド部40を取り付けるという遮蔽の代わりに、受信コイル20と送信コイル38の磁気的なカップリング構成を被検体10から遠ざけることでも、MRI装置12により計測することが可能である。
【0089】
被検体10を、MRI装置用補助トランスデューサー30のシールド部40上の適切の位置に載置するために補助ベッド50を新たに設ける。補助ベッド50は、MRI装置12のベッド24上に設けられ、被検体10を載置する。MRI装置用補助トランスデューサー30の受信専用コイル34は、被検体10の近傍に載置される。受信専用コイル34は、被検体10の撮像しようとする部位および位置に応じて、様々な位置に載置される。
【0090】
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサー30を装着したMRI装置12の動作の概要について説明する。
【0091】
MRI装置12は、1Hプロトンの磁気共鳴現象を測定するものして128MHzの励起パルスを送信コイル18から出力する。128MHzの励起パルスは、MRI装置用補助トランスデューサー30の検出コイル32により検出される。
【0092】
128MHzの励起パルスは被検体10に到達し、被検体10からは共鳴信号であるNMR信号あるいはMRI信号が発せられる。被検体10からの共鳴信号はMRI装置用補助トランスデューサー30の受信専用コイル34により受信される。
【0093】
MRI装置用補助トランスデューサー30の受信専用コイル34により受信された共鳴信号は、MRI装置用補助トランスデューサー30の補助トランスデューサー制御部42のRF微小信号アンプ42Cにより増幅され、MRI装置用補助トランスデューサー30の位相及びゲイン調整器42Eにより位相及びゲインが調整され、送信コイル38から出力される。
【0094】
MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル38から出力された共鳴信号は、磁気的なカップリングにより、MRI装置12の受信コイル20に伝達される。MRI装置12は、受信コイル20に伝達された共鳴信号であるNMR信号あるいはMRI信号により、NMRスペクトルを測定したりMRI画像を構成したりする。
【0095】
このように動作するMRI装置12及びMRI装置用補助トランスデューサー30の各部の波形を図6に示す。
【0096】
図6(1)は、従来のMRI装置12の送信コイル18から出力される励起パルス(128MHz)の波形の一例である。図6(2)は、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30の検出コイル32で検出される検出信号(128MHz)の波形である。図6(3)は、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30の補助トランスデューサー制御部42のゲート発生器42Bから出力されるゲート信号の波形である。図6(4)は、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30の高周波ヘッド36がアクティブデカップル回路34Bに供給するアクティブデカップル電流の波形である。
【0097】
図6(5)は、被検体10から発せられ受信専用コイル34により受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。図6(6)は、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル38から出力されるMRI信号(128MHz)の波形である。図6(7)は、従来のMRI装置12の受信コイル20で受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。
【0098】
図6(1)~(3)に示すように、従来のMRI装置12の送信コイル18から出力される励起パルス(128MHz)に基づいて、ゲート信号がオンレベル/オフレベルとなるように、波形モニタ44Aと波形モニタ44Bと波形モニタ44Cとを見ながらゲート発生器42Bの閾値レベルを調整する。
【0099】
図6(4)に示すように、図6(3)のゲート信号に同期して、アクティブデカップル回路34Bに供給するアクティブデカップル電流がオンオフされる。アクティブデカップル回路34Bの構成によっては、マイナス極性の電流であってもよい。
【0100】
図6(5)に示すように、ゲート信号のオンの場合でもオフの場合でも、図6(1)の励起パルスが存在する時間帯では、被検体10から混濁したMRI信号(128MHz)が出力されている状態がある。図6(5)の右端のように励起パルス(128MHz)から充分に時間がたった場合ではMRI信号は減衰してしまって観測できない。
【0101】
図6(6)、(7)に示すように、ゲート信号がオフレベルのときに、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル38からMRI信号(128MHz)が出力され、従来のMRI装置12の受信コイル20で受信される。
【0102】
受信コイル20はMRI装置12によるアクティブデカップルが実施されている場合があるが、MRI装置用補助トランスデューサー30は、MRI装置12側のアクティブデカップルのタイミングを知り得なくてもよく、図7(7)は便宜上のものである。
【0103】
なお、ゲート信号がオフレベルのときにMRI信号(128MHz)が減衰してしまって存在していないかのような時間もあるが、そのまま送信コイル38からMRI信号(128MHz)があるものとして出力して問題ない。MRI装置12の信号収集のタイミングはあらかじめ決められているもので、図6(7)の受信コイル20により受信されるMRI信号(128MHz)の波形の一部分が適切に信号処理される。送信コイル38の出力はシールド部40により遮蔽されているので計測に影響を与えない。一方で、大電力の励起パルスの発生時には微弱なMRI信号は発生していても検出できないので、MRI装置12の励起パルス(128MHz)が断続的に抑制されるのと同じタイミングで、励起パルス(128MHz)からMRI装置用補助トランスデューサー30を保護する必要がある。これがゲート信号によるオンオフ制御が必要な理由である。
【0104】
このようにして、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30を装着することにより、従来のMRI装置12を用いて、任意の受信専用コイル34により被検体10からの共鳴信号を計測することができる。
【0105】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーについて図7乃至図12を用いて説明する。
【0106】
(MRI装置)
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを装着するMRI装置について図7を用いて説明する。
【0107】
本実施形態におけるMRI装置12は、複数組の受信コイルと受信ヘッドを有する点が図1に示すMRI装置と異なる。その他の構成は基本的に同じである。
【0108】
三軸傾斜磁場コイル16内の被検体10の近傍には、磁気共鳴により生じた被検体10からの電磁波を受信する、例えば、3個の受信コイル201、203、203が設けられている。
【0109】
3個の受信コイル201、203、203は、それぞれ、接続コネクタ201C、202C、203Cを介して、受信ヘッド221、222、223に接続されている。なお、接続コネクタ201C、202C、203Cを、ひとつあるいは複数のコネクタとしてまとめてもよい。
【0110】
MRI装置12には、MRI装置12を制御するためのMRI装置制御部26と、MRI画像等を表示するためのモニタ28が設けられている。3個の受信ヘッド221、222、223は、高周波トランシーバ26Cに接続されている。
【0111】
このMRI装置12を用いることにより、3個の受信コイル201、203、203により、被検体10の体内の3つの領域の1Hプロトンの分布状態を示すMRI画像を得ることができる。3個の受信コイル201、203、203の受信信号強度と受信信号位相の相対関係は、必要に応じて、MRI装置制御部26に記憶され、適宜参照される。
【0112】
このMRI装置12では、3個の受信コイル201、203、203は、それぞれ、接続コネクタ201C、202C、203Cを介して、受信ヘッド221、222、223に接続されている。これら接続コネクタ201C、202C、203Cは、このMRI装置メーカー専用であり、その仕様も公開されていない。そのため、他のMRI装置メーカーの受信コイルや、利用者が考案した受信コイルを受信ヘッド221、222、223に接続することはできない。
【0113】
(MRI装置用補助トランスデューサー)
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーについて図8及び図9を用いて説明する。
【0114】
図8は本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを示す図であり、図9は本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーにおける補助トランスデューサー制御部を示す図である。
【0115】
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサー30は、従来のMRI装置12に装着することにより、複数の任意の受信コイルにより被検体10からの共鳴信号の受信することを可能にするものである。
【0116】
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーは、複数組の受信専用コイルと信号調整部と送信コイルを有する点が、図2乃至図4に示すMRI装置用補助トランスデューサーと異なる。その他の構成は基本的に同じである。
【0117】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスを検出するための検出コイル32が設けられている。この構成は、複数組の受信専用コイルと信号調整部と送信コイルに対して共通である。これにより、MRI装置用補助トランスデューサー30をMRI装置12の励起パルスに同期させて稼働させることができる。
【0118】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスにより被検体10内の1Hプロトンからの電磁波を受信する、例えば、3個の受信専用コイル341、342、343が設けられている。受信専用コイル341、342、343には、それぞれ、図4に示すような、パッシブデカップル回路(図示せず)とアクティブデカップル回路(図示せず)が設けられている。
【0119】
受信専用コイル341、342、343には、それぞれ、接続コネクタ341C、342C、343Cを介して高周波ヘッド361、362、363が接続されている。
【0120】
3個の受信専用コイル341、342、343を、被検体10の計測対象となる、例えば、臓器等に適した形状とし、臓器等の近くに網羅的に配置することによって,臓器等の形状に応じた位置に特異的なNMR信号もしくはMRI信号を抽出することができる。さらに受信専用コイル341、342、343を適切な大きさおよび配置にすることで、被写体が被る不必要な励起パルスの照射・吸収を避けることができる。
【0121】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、磁気的なカップリングによりMRI装置12にMRI信号を送信するための3個の送信コイル381、382、383が設けられている。
【0122】
送信コイル381、382、383をそれぞれ包囲する3個のシールド部401、402、403が設けられ、送信コイル381、382、383を局所的にシールドする。このシールド部401、402、403によって、送信コイル381、382、383と受信専用コイル341、342、343の磁気的なカップリングの漏洩と外部から混入する外乱信号を取り除くことができる。
【0123】
MRI装置用補助トランスデューサー30には、MRI装置用補助トランスデューサー30を制御するための補助トランスデューサー制御部42と、制御時の各種波形をモニタするための2個の波形モニタ44A、44Bと、3個の波形モニタ44C1、44C2、44C3が設けられている。
【0124】
補助トランスデューサー制御部42は、共通のゲイン調整器42A及びゲート発生器42Bと、3個のRF微小信号アンプ42C1、42C2、42C3とから構成されている。
【0125】
ゲイン調整器42Aは、MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスを検出する検出コイル32に接続され、検出コイル32のゲインを調整する。波形モニタ44A、44Bは、ゲイン調整器42Aに設けられている。
【0126】
ゲート発生器42Bは、ゲイン調整器42Aに接続され、検出コイル32が検出した励起パルスに応じて動作モードを切り替えるゲート信号を出力する。
【0127】
受信専用コイル341、342、343により受信された共鳴信号は、それぞれ、高周波ヘッド361、362、363で受信され、それぞれ、RF微小信号アンプ42C1、42C2、42C3により増幅され、MRI装置12にMRI信号を送信するための送信コイル381、382、382に接続コネクタ38C1、38C2、38C3を介して、それぞれ出力される。波形モニタ44C1、44C2、44C3は、それぞれ、RF微小信号アンプ42C1、42C2、42C3に設けられている。
【0128】
補助トランスデューサー制御部42の詳細を図9に示す。
【0129】
検出コイル32は減衰器42Dに接続されている。減衰器42DはLOGアンプ等のゲイン調整器42Aに接続されている。減衰器42Dの入力端に波形モニタ44Aが接続されている。
【0130】
MRI装置12の送信コイル18からの励起パルスは、検出コイル32により検出され、減衰器42Dにより減衰され、ゲイン調整器42Aによりゲインが調整される。波形モニタ44Aにより、送信コイル18からの励起パルス信号がモニタされる。
【0131】
ゲイン調整器42Aの出力端にはゲート発生器42Bが接続されている。ゲート発生器42Bは、アンプ42Baと、ワンショット回路42Bbにより構成されている。ワンショット回路42Bbの出力端には波形モニタ44Bが接続されている。
【0132】
ゲイン調整器42Aから出力された励起パルス信号は、アンプ42Baにより増幅され、ワンショット回路42Bbにより、励起パルス信号に基づくゲート信号が生成される。波形モニタ44Bによりゲート信号をモニタされる。
【0133】
このゲート信号により、後述する高周波ヘッド361、362、363、RF微小信号アンプ42C1、42C2、42C3の動作モードが切り替えられる。
【0134】
受信専用コイル341は、接続コネクタ34C1を介して高周波ヘッド361に接続されている。高周波ヘッド361は、RF微小信号アンプ42C1に接続されている。RF微小信号アンプ42C1は、位相及びゲイン調整器42E1に接続されている。位相及びゲイン調整器42E1は、接続コネクタ38C1を介して送信コイル381に接続されている。送信コイル381は、MRI装置12の受信コイル201と磁気的なカップリングを構成する。位相及びゲイン調整器42E1の出力端に波形モニタ44C1が接続されている。
【0135】
被検体10からの128MHzのMRI信号は、受信専用コイル341により受信され、高周波ヘッド361に入力される。高周波ヘッド361からのMRI信号は、RF微小信号アンプ42C1に出力される。RF微小信号アンプ42C1は、高周波ヘッド361からのMRI信号を増幅して、位相及びゲイン調整器42E1に出力する。
【0136】
位相及びゲイン調整器42E1は、RF微小信号アンプ42C1により増幅されたMRI信号の位相及びゲインを調整して、接続コネクタ38C1を介して送信コイル381に出力する。送信コイル381に出力されたMRI信号は、磁気的なカップリングを介してMRI装置12の受信コイル201に送信される。送信コイル381に出力されるMRI信号は、波形モニタ44C1によりモニタされる。
【0137】
受信専用コイル342は、接続コネクタ34C2を介して高周波ヘッド362に接続されている。高周波ヘッド362は、RF微小信号アンプ42C2に接続されている。RF微小信号アンプ42C2は、位相及びゲイン調整器42E2に接続されている。位相及びゲイン調整器42E2は、接続コネクタ38C2を介して送信コイル382に接続されている。送信コイル382は、MRI装置12の受信コイル202と磁気的なカップリングを構成する。位相及びゲイン調整器42E2の出力端に波形モニタ44C2が接続されている。
【0138】
被検体10からの128MHzのMRI信号は、受信専用コイル342により受信され、高周波ヘッド362に入力される。高周波ヘッド362からのMRI信号は、RF微小信号アンプ42C2に出力される。RF微小信号アンプ42C2は、高周波ヘッド362からのMRI信号を増幅して、位相及びゲイン調整器42E2に出力する。
【0139】
位相及びゲイン調整器42E2は、RF微小信号アンプ42C2により増幅されたMRI信号の位相及びゲインを調整して、接続コネクタ38C2を介して送信コイル382に出力する。送信コイル382に出力されたMRI信号は、磁気的なカップリングを介してMRI装置12の受信コイル202に送信される。送信コイル382に出力されるMRI信号は、波形モニタ44C2によりモニタされる。
【0140】
受信専用コイル343は、接続コネクタ34C3を介して高周波ヘッド363に接続されている。高周波ヘッド363は、RF微小信号アンプ42C3に接続されている。RF微小信号アンプ42C3は、位相及びゲイン調整器42E3に接続されている。位相及びゲイン調整器42E3は、接続コネクタ38C3を介して送信コイル383に接続されている。送信コイル383は、MRI装置12の受信コイル203と磁気的なカップリングを構成する。位相及びゲイン調整器42E3の出力端に波形モニタ44C3が接続されている。
【0141】
被検体10からの128MHzのMRI信号は、受信専用コイル343により受信され、高周波ヘッド363に入力される。高周波ヘッド363からのMRI信号は、RF微小信号アンプ42C3に出力される。RF微小信号アンプ42C3は、高周波ヘッド363からのMRI信号を増幅して、位相及びゲイン調整器42E3に出力する。
【0142】
位相及びゲイン調整器42E3は、RF微小信号アンプ42C3により増幅されたMRI信号の位相及びゲインを調整して、接続コネクタ38C3を介して送信コイル383に出力する。送信コイル383に出力されたMRI信号は、磁気的なカップリングを介してMRI装置12の受信コイル203に送信される。送信コイル383に出力されるMRI信号は、波形モニタ44C3によりモニタされる。
【0143】
位相及びゲイン調整器42E1は、送信コイル381が送信するMRI信号の位相及びゲインを、MRI装置12の受信コイル201が想定している範囲となるように、MRI装置12を動作させ、波形モニタ44C1を適宜確認しながら調整する。
【0144】
位相及びゲイン調整器42E2は、送信コイル382が送信するMRI信号の位相及びゲインを、MRI装置12の受信コイル202が想定している範囲となるように、MRI装置12を動作させ、波形モニタ44C2を適宜確認しながら調整する。
【0145】
位相及びゲイン調整器42E3は、送信コイル383が送信するMRI信号の位相及びゲインを、MRI装置12の受信コイル203が想定している範囲となるように、MRI装置12を動作させ、波形モニタ44C3を適宜確認しながら調整する。
【0146】
MRI装置12の受信コイル201と受信コイル202と受信コイル203とが一体となって設計されている場合には、そもそもの位相及びゲインの相対関係は予期されているものの範囲内に納まっている必要があり、この調整が必要となる。
【0147】
本実施形態では、励起パルス信号に基づくゲート信号により高周波ヘッド361、362、363の動作モードが切り替えられ、それにより、受信専用コイル341、342、343のアクティブデカップル機能をオンオフさせる。
【0148】
受信専用コイル341、342、343には、それぞれ、図4に示すような、パッシブデカップル回路(図示せず)とアクティブデカップル回路(図示せず)が設けられている。
【0149】
受信専用コイル341、342、343にそれぞれ設けられたアクティブデカップル回路(図示せず)は、高周波ヘッド361、362、363から接続コネクタ341C、342C、343Cを介して、それぞれ供給されるアクティブデカップル電流をアクティブデカップル回路(図示せず)内のダイオード(図示せず)に流し、近接するキャパシタを受信専用コイル341、342、343から機能的に除外することにより、共鳴周波数f=1/2π√LCの共振条件から受信専用コイル341、342、343をデカップリング(decoupling)する。同時に、共振回路内の余剰エネルギーを受信専用コイル341、342、343のキャパシの一端から接地に流して捨てる。
【0150】
高周波ヘッド361、362、363は、励起パルス信号に基づくゲート信号により動作モードが切り替えられる。ゲート信号がハイレベルのオンのとき、受信専用コイル341、342、343のアクティブデカップル回路(図示せず)にアクティブデカップル電流を供給する。ゲート信号がローレベルのオフのとき、受信専用コイル341、342、343のアクティブデカップル回路(図示せず)にアクティブデカップル電流を供給されない。これにより、励起パルス信号に基づくゲート信号により受信専用コイル341、342、343のアクティブデカップル機能をオンオフさせる。
【0151】
(MRI装置用補助トランスデューサーを装着したMRI装置)
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサーを装着したMRI装置について図10を用いて説明する。
【0152】
図7に示す従来のMRI装置12に、図8に示す本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30を装着する。
【0153】
MRI装置用補助トランスデューサー30のシールド部401内にMRI装置12の受信コイル201を挿入し、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル381と磁気的なカップリングを構成する。MRI装置12の受信コイル201とMRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル381とはシールド部401によりシールドされる。
【0154】
MRI装置用補助トランスデューサー30のシールド部402内にMRI装置12の受信コイル202を挿入し、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル382と磁気的なカップリングを構成する。MRI装置12の受信コイル202とMRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル382とはシールド部402によりシールドされる。
【0155】
MRI装置用補助トランスデューサー30のシールド部403内にMRI装置12の受信コイル203を挿入し、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル383と磁気的なカップリングを構成する。MRI装置12の受信コイル203とMRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル383とはシールド部403によりシールドされる。
【0156】
被検体10を、MRI装置用補助トランスデューサー30のシールド部40上の適切の位置に載置するために補助ベッド50を新たに設ける。補助ベッド50は、MRI装置12のベッド24上に設けられ、被検体10を載置する。MRI装置用補助トランスデューサー30の受信専用コイル341、342、343は、被検体10の近傍に載置される。受信専用コイル341、342、343は、被検体10の撮像しようとする部位および位置に応じて、様々な位置に載置される。
【0157】
本実施形態によるMRI装置用補助トランスデューサー30を装着したMRI装置12の動作の概要について説明する。
【0158】
MRI装置12は、1Hプロトンの磁気共鳴現象を測定するものして128MHzの励起パルスを送信コイル18から出力する。128MHzの励起パルスは、MRI装置用補助トランスデューサー30の検出コイル32により検出される。
【0159】
128MHzの励起パルスは被検体10に到達し、被検体10からは共鳴信号であるNMR信号あるいはMRI信号が発せられる。被検体10からの共鳴信号はMRI装置用補助トランスデューサー30の受信専用コイル341、342、343により受信される。
【0160】
MRI装置用補助トランスデューサー30の受信専用コイル341、342、343により受信された共鳴信号は、MRI装置用補助トランスデューサー30の補助トランスデューサー制御部42のRF微小信号アンプ42C1、42C2、42C3により増幅され、MRI装置用補助トランスデューサー30の位相及びゲイン調整器42E1、42E2、42E3により位相及びゲインが調整され、それぞれ、送信コイル381、382、383から出力される。
【0161】
MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル381、382、383から出力された共鳴信号は、磁気的なカップリングにより、それぞれ、MRI装置12の受信コイル201、202、203に伝達される。MRI装置12は、受信コイル201、203、203に伝達された共鳴信号であるNMR信号あるいはMRI信号により、3種類のNMRスペクトルを測定したりMRI画像を構成したりする。
【0162】
このように動作するMRI装置12及びMRI装置用補助トランスデューサー30の各部の波形を図11に示す。
【0163】
図11(1)は、従来のMRI装置12の送信コイル18から出力される励起パルス(128MHz)の波形の一例である。図11(2)は、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30の検出コイル32で検出される検出信号(128MHz)の波形である。図11(3)は、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30の補助トランスデューサー制御部42のゲート発生器42Bから出力されるゲート信号の波形である。図11(4)は、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30の高周波ヘッド361、362、363が受信専用コイル341、342、343のアクティブデカップル回路(図示せず)に供給するアクティブデカップル電流の波形である。
【0164】
図11(5)は、被検体10から発せられ受信専用コイル341により受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。図11(6)は、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル381から出力されるMRI信号(128MHz)の波形である。図11(7)は、従来のMRI装置12の受信コイル201で受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。
【0165】
図11(8)は、被検体10から発せられ受信専用コイル342により受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。図11(9)は、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル382から出力されるMRI信号(128MHz)の波形である。図11(10)は、従来のMRI装置12の受信コイル202で受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。
【0166】
図11(11)は、被検体10から発せられ受信専用コイル343により受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。図11(12)は、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル383から出力されるMRI信号(128MHz)の波形である。図11(13)は、従来のMRI装置12の受信コイル203で受信されるMRI信号(128MHz)の波形である。
【0167】
図11(5)~(7)はチャンネル1の波形、図11(8)~(10)はチャンネル2の波形、図11(11)~(13)はチャンネル3の波形である。図11では同じ波形で示されているが、受信するMRI信号の発生源と受信コイルの配置によって信号位相及びゲインも特徴的な波形となる。
【0168】
図11(1)~(3)に示すように、従来のMRI装置12の送信コイル18から出力される励起パルス(128MHz)に基づいて、ゲート信号がオンレベル/オフレベルとなるように、波形モニタ44Aおよび波形モニタ44Bを見ながら、波形モニタ44C1、波形モニタ44C2、波形モニタ44C3のMRI信号を確認して、ゲート発生器42Bの閾値レベルを調整する。
【0169】
図11(4)に示すように、図11(3)のゲート信号に同期して、受信専用コイル341、342、343のアクティブデカップル回路(図示せず)に供給するアクティブデカップル電流がオンオフされる。
【0170】
図11(5)、(8)、(11)に示すように、ゲート信号のオンの場合でもオフの場合でも、図11(1)の励起パルスが存在する時間帯では、被検体10から混濁したMRI信号(128MHz)が出力されている状態がある。図11(5)、(8)、(11)の右端のように励起パルス(128MHz)から充分に時間がたった場合ではMRI信号は減衰してしまって観測できない。
【0171】
図11(6)、(7)、(9)、(10)、(12)、(13)に示すように、ゲート信号がオフレベルのときに、MRI装置用補助トランスデューサー30の送信コイル381、382、383からMRI信号(128MHz)が出力され、従来のMRI装置12の受信コイル201、202、203で受信される。
【0172】
このようにして、本実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー30を装着することにより、従来のMRI装置12を用いて、任意の受信専用コイル34により被検体10からの共鳴信号を計測することができる。
【0173】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0174】
例えば、上記実施形態のMRI装置用補助トランスデューサー及びMRI装置の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0175】
また、最適化の調整が完了したMRI装置用補助トランスデューサーから波形モニタをすべて取り除いたものを、電気的絶縁のためにプラスチック樹脂等の筐体に内蔵して、MRI計測の際に使用するようにしてもよい。
【0176】
また、MRI装置用補助トランスデューサーの補助トランスデューサー制御部にコンピュータとWifi機能を内蔵させ、MRI装置用補助トランスデューサーを遠隔で制御できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0177】
10…被検体
12…MRI装置
14…静磁場コイル
16…三軸傾斜磁場コイル
18…送信コイル
20、201、202、203…受信コイル
20C、201C、202C、203C…接続コネクタ
22、221、222、223…受信ヘッド
24…ベッド
26…MRI装置制御部
26A…制御用PC
26B…パルスシーケンサ
26C…高周波トランシーバ
26D…RF電力アンプ
26E…磁場コイル電源
28…モニタ
30…MRI装置用補助トランスデューサー
32…検出コイル
34、341、342、343…受信専用コイル
34A…パッシブデカップル回路
34A1、34A2…ダイオード
34A3…インダクタ
34B…アクティブデカップル回路
34B1…ダイオード
34B2…インダクタ
34B3…キャパシタ
34C、341C、342C、343C…接続コネクタ
34C1…同軸ケーブル
36、361、362、363…高周波ヘッド
38、381、382、383…送信コイル
38C、381C、382C、383C…接続コネクタ
40、401、402、403…シールド部
42…補助トランスデューサー制御部
42A…ゲイン調整器
42B…ゲート発生器
42Ba…アンプ
42Bb…ワンショット回路
42C、42C1、42C2、42C3…RF微小信号アンプ
42D…減衰器
42E、42E1、42E2、42E3…位相及びゲイン調整器
44A、44B…波形モニタ
44C、44C1、44C2、44C3…波形モニタ
46…非磁性電源
50…補助ベッド
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、核磁気共鳴画像法(MRI)による画像撮像システムの分野においてその利用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11