(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】非破壊検査方法及び非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/06 20180101AFI20231227BHJP
G01B 15/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01N23/06
G01B15/02 H
(21)【出願番号】P 2023100661
(22)【出願日】2023-06-20
【審査請求日】2023-06-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本工業出版株式会社主催-日工webセミナー2023 放射線透過法による検査事例と適用機器,2023年2月20日 〔刊行物等〕 日本工業出版株式会社,検査技術2023年1月号,2023年1月1日 〔刊行物等〕 日本工業出版株式会社,検査技術2023年2月号,2023年2月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399029905
【氏名又は名称】株式会社ウィズソル
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】松山 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】平岡 幸夫
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-068266(JP,A)
【文献】特開昭63-210707(JP,A)
【文献】特開平06-229747(JP,A)
【文献】特開2001-124708(JP,A)
【文献】特開昭57-008404(JP,A)
【文献】特開昭60-257308(JP,A)
【文献】特開平04-343007(JP,A)
【文献】特開平06-109457(JP,A)
【文献】特開昭61-274210(JP,A)
【文献】特開2020-118552(JP,A)
【文献】特開2010-266264(JP,A)
【文献】特開2012-037345(JP,A)
【文献】特開平11-201744(JP,A)
【文献】特開2014-071102(JP,A)
【文献】特開2008-268103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338262(US,A1)
【文献】特開2011-052968(JP,A)
【文献】特開昭53-077577(JP,A)
【文献】特開平04-151505(JP,A)
【文献】特開昭57-012307(JP,A)
【文献】特開平11-118735(JP,A)
【文献】特表2019-523418(JP,A)
【文献】特開昭54-020761(JP,A)
【文献】特開昭51-023164(JP,A)
【文献】特開平06-249637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 15/00-G01B 15/08
G01N 29/00-G01N 29/52
G01B 17/00-G01B 17/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
KAKEN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線透過法を用い構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを測定する非破壊検査方法であって、
センサを走査させ前記構造物を透過した放射線量(カウント数C
n)を測定する透過線量測定ステップと、
測定点の透過線量(カウント数C
n)と、
センサを走査させたときの測定点の位置に対する透過線量(カウント数C
n)
を回帰分析し得られる基準部推定曲線が与える基準点の透過線量(カウント数C
0)とを用い、式(4)により構造物の減肉量Δt又は構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを算出する高さ算出ステップと、
を有することを特徴とする非破壊検査方法。
Δt=ln(C
n/C
0)/μ ・・・・(4)
ここで C
n:測定点におけるカウント数(透過線量)
C
0:基準点におけるカウント数(透過線量)
Δt:減肉量又は堆積物の高さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm
-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm
-1)
【請求項2】
前記基準部推定曲線は、前記測定点の透過線量(カウント数C
n)のうち健全部のデータを
用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項3】
前記基準部推定曲線は、
センサを走査させたときの測定点の位置に対する透過線量(カウント数C
n)を回帰分析し仮基準部推定曲線を算出する仮基準部推定曲線算出ステップと、
前記仮基準部推定曲線から与えられる仮基準点の透過線量(カウント数C
0´)と前記測定点の透過線量(カウント数C
n)とから前記測定点の透過線量(カウント数C
n)のうちマスキングすべきデータを選出するマスキングデータ選出ステップと、
前記マスキングデータを除いた
測定点の位置に対する透過線量(カウント数C
n´)を回帰分析し基準部推定曲線を算出する基準部推定曲線算出ステップと、
により算出することを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項4】
さらに、線減弱係数μを取得する線減弱係数取得ステップを含み、
前記線減弱係数取得ステップは、
厚さt
0が既知の試験片を、放射線源と前記センサとの間に配置し、センサを走査させ前記構造物及び前記試験片を透過した放射線量(カウント数C
nt0)を測定する試験片透過線量測定ステップと、
前記測定点の透過線量(カウント数C
n)と、前記試験片透過線量測定ステップで得られる透過線量(カウント数C
nt0)とを用い、式(6)により線減弱係数μを算出する線減弱係数算出ステップと、
を含み、
前記試験片透過線量測定ステップにおいて、構造物の減肉量Δtを測定するときは前記構造物と同じ材質の試験片を使用し、構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを測定するときは前記堆積物と同じ材質の試験片を使用することを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査方法。
μ=ln(C
n/C
nt0)/t
0 ・・・・(6)
ここで C
n:構造物を透過した測定点におけるカウント数(透過線量)
C
nt0:構造物及び試験片を透過した測定点におけるカウント数
(透過線量)
t
0:試験片の厚さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm
-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm
-1)
【請求項5】
前記試験片透過線量測定ステップにおいて、前記試験片を前記センサの上に取付け又は載置し行うことを特徴とする請求項4に記載の非破壊検査方法。
【請求項6】
検査対象物である前記構造物に放射線を照射する放射線源が、固定された固定式、又は前記センサと一体的に移動する一体式、又は前記センサと同期して移動する同期式であることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の非破壊検査方法を用い、前記構造物の減肉箇所又は堆積箇所を選出するスクリーニング工程を備えることを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の非破壊検査方法を用い、前記構造物の減肉箇所を選出するスクリーニング工程と、
前記減肉箇所を超音波厚さ計で測定する肉厚測定工程と、
を備えることを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項9】
放射線透過法を用い構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを測定する非破壊検査装置のデータ処理装置であって、
センサを走査させ
たときの測定点の位置に対する前記構造物を透過した放射線量(カウント数C
n)
を回帰分析し、基準部推定曲線を算出する基準部推定曲線算出手段と、
前記構造物を透過した放射線量(カウント数C
n)と前記基準部推定曲線が与える基準点の透過線量(カウント数C
0)とを用い、式(4)により構造物の減肉量Δt又は構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを算出する高さ算出手段と、
を有することを特徴とするデータ処理装置。
Δt=ln(C
n/C
0)/μ ・・・・(4)
ここで C
n:測定点におけるカウント数(透過線量)
C
0:基準点におけるカウント数(透過線量)
Δt:減肉量又は堆積物の高さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm
-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm
-1)
【請求項10】
請求項9に記載のデータ処理装置と、
検査対象物である構造物に放射線を照射する放射線源と、
前記構造物を透過した放射線量を検出するセンサと、
前記センサ、又は前記放射線源と前記センサとを走行させる走行手段と、
を備え、
前記放射線源及び前記センサが、前記放射線源が固定され前記センサが移動する固定式、又は前記放射線源が前記センサと一体的に移動する一体式、又は前記放射線源が前記センサと同期して移動する同期式であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項11】
前記センサがラインセンサであることを特徴とする請求項10に記載の非破壊検査装置。
【請求項12】
コンピュータを請求項9に記載のデータ処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管(含む被覆配管)、塔槽類などの構造物の減肉量、配管内部の堆積物の高さを測定する方法及び装置に関し、特に放射線透過法を用いた非破壊検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型プラントでは、被覆配管は総延長が数十kmと膨大であるため被覆体を解体せずにスクリーニングして、被覆解体後の2次検査が必要な範囲を絞り込むことが求められる。放射線透過法は、被覆材を解体せずに被覆配管の減肉状況が視覚的に把握できる優れたスクリーニング方法である。
【0003】
放射線透過法のうち平面撮影法は、透過厚さの差によって生じる画像の濃淡を評価対象とし、エッジ撮影法と比較して広範囲の減肉状況を把握できる。平面撮影法は、放射線源とセンサとを一体的に直管に沿って走査させ減肉量を測定する方法が一般的である。この方法は、放射線源とセンサと検査対象物との幾何学的配置が不変であるためデータ解析も比較的容易である。
【0004】
直管とエルボとの溶接部付近やエルボ背側の減肉量を測定する場合、放射線源とセンサを一体的に走査させる一体式装置を使用することができない。このような場合には、放射線源を固定し、センサのみ走査させる固定式装置を使用する必要がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固定式装置を用いた検査方法は、放射線源とセンサと検査対象物との幾何学的配置が刻々と変化するため一体式装置を用いた検査方法とは異なるデータ解析方法が必要となる。理論上は、検査対象配管と同じ配管仕様(外径、厚さ、材質)の対比試験片を用意し、両者の透過線量(カウント数)を比較すれば減肉量は算出できる。
【0007】
対比試験片の撮影では、撮影配置及び放射線源からセンサに至る放射線の透過経路について、実際の撮影状況を再現する必要がある。特に撮影配置と配管内の流体は測定結果に及ぼす影響が大きいが、これらを忠実に再現することはできないため対比試験片を用いた減肉測定は現実的ではない。
【0008】
本発明の目的は、構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを従来法に比べて精度よく測定できる非破壊検査方法及び非破壊検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、放射線透過法を用い構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを測定する非破壊検査方法であって、センサを走査させ前記構造物を透過した放射線量(カウント数Cn)を測定する透過線量測定ステップと、測定点の透過線量(カウント数Cn)と、センサを走査させたときの測定点の位置に対する透過線量(カウント数Cn)を回帰分析し得られる基準部推定曲線が与える基準点の透過線量(カウント数C0)とを用い、式(4)により構造物の減肉量Δt又は構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを算出する高さ算出ステップと、を有することを特徴とする非破壊検査方法である。
Δt=ln(Cn/C0)/μ ・・・・(4)
ここで Cn:測定点におけるカウント数(透過線量)
C0:基準点におけるカウント数(透過線量)
Δt:減肉量又は堆積物の高さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm-1)
【0010】
本発明に係る非破壊検査方法において、前記基準部推定曲線は、前記測定点の透過線量(カウント数Cn)のうち健全部のデータを用いて算出することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る非破壊検査方法において、前記基準部推定曲線は、センサを走査させたときの測定点の位置に対する透過線量(カウント数Cn)を回帰分析し仮基準部推定曲線を算出する仮基準部推定曲線算出ステップと、前記仮基準部推定曲線から与えられる仮基準点の透過線量(カウント数C0´)と前記測定点の透過線量(カウント数Cn)とから前記測定点の透過線量(カウント数Cn)のうちマスキングすべきデータを選出するマスキングデータ選出ステップと、前記マスキングデータを除いた測定点の位置に対する透過線量(カウント数Cn´)を回帰分析し基準部推定曲線を算出する基準部推定曲線算出ステップと、により算出することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る非破壊検査方法は、さらに、線減弱係数μを取得する線減弱係数取得ステップを含み、前記線減弱係数取得ステップは、厚さt0が既知の試験片を、放射線源と前記センサとの間に配置し、センサを走査させ前記構造物及び前記試験片を透過した放射線量(カウント数Cnt0)を測定する試験片透過線量測定ステップと、前記測定点の透過線量(カウント数Cn)と、前記試験片透過線量測定ステップで得られる透過線量(カウント数Cnt0)とを用い、式(6)により線減弱係数μを算出する線減弱係数算出ステップと、を含み、前記試験片透過線量測定ステップにおいて、構造物の減肉量Δtを測定するときは前記構造物と同じ材質の試験片を使用し、構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを測定するときは前記堆積物と同じ材質の試験片を使用することを特徴とする。
μ=ln(Cn/Cnt0)/t0 ・・・・(6)
ここで Cn:構造物を透過した測定点におけるカウント数(透過線量)
Cnt0:構造物及び試験片を透過した測定点におけるカウント数
(透過線量)
t0:試験片の厚さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm-1)
【0013】
本発明に係る非破壊検査方法は、前記試験片透過線量測定ステップにおいて、前記試験片を前記センサの上に取付け又は載置し行うことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る非破壊検査方法において、検査対象物である前記構造物に放射線を照射する放射線源が、固定された固定式、又は前記センサと一体的に移動する一体式、又は前記センサと同期して移動する同期式であることを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記非破壊検査方法を用い、前記構造物の減肉箇所又は堆積箇所を選出するスクリーニング工程を備えることを特徴とする非破壊検査方法である。
【0016】
本発明は、前記非破壊検査方法を用い、前記構造物の減肉箇所を選出するスクリーニング工程と、前記減肉箇所を超音波厚さ計で測定する肉厚測定工程と、を備えることを特徴とする非破壊検査方法である。
【0017】
本発明は、放射線透過法を用い構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを測定する非破壊検査装置のデータ処理装置であって、センサを走査させたときの測定点の位置に対する前記構造物を透過した放射線量(カウント数Cn)を回帰分析し、基準部推定曲線を算出する基準部推定曲線算出手段と、前記構造物を透過した放射線量(カウント数Cn)と前記基準部推定曲線が与える基準点の透過線量(カウント数C0)とを用い、式(4)により構造物の減肉量Δt又は構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを算出する高さ算出手段と、を有することを特徴とするデータ処理装置である。
Δt=ln(Cn/C0)/μ ・・・・(4)
ここで Cn:測定点におけるカウント数(透過線量)
C0:基準点におけるカウント数(透過線量)
Δt:減肉量又は堆積物の高さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm-1)
【0018】
本発明は、前記データ処理装置と、検査対象物である構造物に放射線を照射する放射線源と、前記構造物を透過した放射線量を検出するセンサと、前記センサ、又は前記放射線源と前記センサとを走行させる走行手段と、を備え、前記放射線源及び前記センサが、前記放射線源が固定され前記センサが移動する固定式、又は前記放射線源が前記センサと一体的に移動する一体式、又は前記放射線源が前記センサと同期して移動する同期式であることを特徴とする非破壊検査装置である。
【0019】
本発明に係る非破壊検査装置において、前記センサがラインセンサであることを特徴とする。
【0020】
本発明は、コンピュータを前記データ処理装置として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを従来法に比べて精度よく測定できる非破壊検査方法及び非破壊検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態の非破壊検査方法の手順を示すフロー図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の非破壊検査方法の基礎をなす、撮影配置と透過線量との関係を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の非破壊検査方法を説明するための図であって、被覆配管を撮影し減肉評価を行ったサンプルである。
【
図4】本発明の第2実施形態の非破壊検査装置1の構成を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施例1の減肉量測定要領及び結果を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2の減肉量測定要領及び結果を示す図である。
【
図7】本発明の実施例3の耐火材の状況の測定要領を示す図である。
【
図8】本発明の実施例4の配管内の堆積物高さ又は耐水量の測定要領を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態の非破壊検査方法の手順を示すフロー図である。
図2は、本発明の第1実施形態の非破壊検査方法の基礎をなす、線源強度分布を説明するための図である。
図3は、本発明の第1実施形態の非破壊検査方法を説明するための図であって、放射線源を固定し、ラインセンサを走査させ被覆配管を撮影し減肉評価を行ったサンプルである。
【0024】
本発明の第1実施形態の非破壊検査方法は、放射線透過法を用い検査対象物である構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを測定するものである。検査対象物である構造物は、配管、塔槽類など単体の他、配管本体、塔槽類本体などに保温材、断熱材及び保温板金が施され被覆されたものも含まれる。また配管には直管、曲管、エルボ、レデューサ、さらにはこれらが連結されたものが含まれる。
【0025】
本発明の第1実施形態の非破壊検査方法の手順の説明に先立ち、減肉量Δtと透過線量Iとの関係を説明する。
【0026】
放射線源から照射され試験片を透過した放射線の透過線量の変化率ΔI/I0は、試験片厚さの変化量Δtに比例し、式(1)が成立する。
ΔI/I0=-μΔt・・・(1)
ここで I0:試験片を透過する透過線量
μ:比例定数(線減弱係数)
ΔI/I0:透過線量の変化率
Δt:試験片厚さの変化量
【0027】
減肉量をΔtとし、試験片の減肉部を透過する透過線量をI1とすると、式(1)から式(2)が得られる。
I1/I0=exp(μΔt)・・・(2)
【0028】
透過線量をセンサで検出する場合、センサから透過線量に応じたカウント数Cが得られる。透過線量I=カウント数Cとすれば、式(2)から式(3)が得られる。
ln(C1/C0)=μ・Δt・・・・(3)
ここで C0:試験片の健全部を透過する透過線量に対応するカウント数
C1:試験片の減肉部を透過する透過線量に対応するカウント数
【0029】
本発明の第1実施形態の非破壊検査方法では、式(3)を用い、構造物の減肉量Δt又は構造物内部の堆積物の高さΔtを算出する。構造物内部の堆積物には、水も含まれる。以下、具体的な算出要領を説明する。ここでは放射線源を固定し、センサを走査させる固定式の装置を使用し、構造物の減肉量Δt又は堆積物の高さΔtを算出するものとする。
【0030】
検査対象物である構造物を挟み放射線源とセンサとを対向配置し、センサを走査させながら構造物を透過する透過線量(カウント数Cn)を測定する(ステップS1)。測定されたカウント数Cnと、基準点におけるカウント数C0とを用い、式(4)により構造物の減肉量Δt又は構造物内部の堆積物の高さΔtを算出する(ステップS4)。
Δt=ln(Cn/C0)/μ ・・・・(4)
ここで Cn:測定点におけるカウント数(透過線量)
C0:基準点におけるカウント数(透過線量)
Δt:減肉量又は堆積物の高さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm-1)
【0031】
本発明の第1実施形態の非破壊検査方法で得られる構造物の減肉量Δtは、周辺の減肉がなく健全とみなせる部分に対する減肉量(相対減肉量)である。同様に本発明の第1実施形態の非破壊検査方法で得られる構造物内部の堆積物の高さΔtは、周辺の堆積物がないとみなせる部分に対する堆積物の高さである。
【0032】
ここで基準点におけるカウント数C0について説明する。構造物の減肉量Δt又は堆積物の高さΔtの算出において、基準点における透過線量(カウント数C0)は、減肉量Δtの算出においては減肉していない箇所(健全部)を透過する透過線量(カウント数)、構造物内部の堆積物の高さΔtの算出においては堆積物のない箇所(健全部)を透過する透過線量(カウント数)である。
【0033】
図2は、線源強度分布を説明するための図であり、
図2(A)は、エックス線源と配管とラインセンサとの位置関係を示し、
図2(B)は、エックス線源を固定し、直管に沿ってラインセンサを走査させたときのラインセンサ位置と透過線量(カウント数)との関係を示す。パラメータは、エックス線源とラインセンサまでの中心軸における距離Lである。
【0034】
図2に示すように中心軸においてラインセンサが受信するカウント数は、エックス線源とラインセンサとの距離Lが短いほど大きい。エックス線源を固定しラインセンサを走査させると、エックス線源に対する配管及びラインセンサの幾何学的配置が変化するためセンサの位置により線源強度が異なり、ラインセンサが中心軸から左右方向(X方向)に離れるに従ってラインセンサが受信するカウント数は減少し、その減少割合は、距離Lが短いほど大きい。
【0035】
以上のように放射線源を固定しセンサを走査させると、放射線源に対する構造物及びセンサの幾何学的配置が変化するためセンサの位置により線源強度が異なることが分かる。このため放射線源を固定し、センサを走査させ構造物の減肉量Δt又は構造物内部の堆積物の高さΔtを算出する場合には、線源強度分布を考慮し基準点におけるカウント数C0を求める必要がある。
【0036】
直管に対して放射線源とセンサとを一体的に走査させる一体式の場合、一般的には放射線源とセンサと直管との幾何学的配置が一定であるため透過線量(カウント数C0)は一定となる。しかし、被覆材が配管に対してずれている場合には、被覆材に沿って放射線源とセンサとを一体的に走査させると、放射線源とセンサと直管との幾何学的配置が変化するため透過線量(カウント数C0)は一定とならない(後述の実施例2参照)。
【0037】
以上のように放射線源とセンサと検査対象物との幾何学的配置が変化する場合、検査対象物の厚さが同一であっても透過線量(カウント数C0)は一定値とならない。このため本実施形態においては測定位置とその位置における健全部の透過線量(カウント数C0)との相関式を求め、その相関式が与える各測定位置の基準点におけるカウント数C0を使用し、減肉量Δt又は構造物内部の堆積物の高さΔtを算出する。
【0038】
本実施形態において測定位置(測定箇所)とその位置における健全部の透過線量(カウント数C
0)との相関式を基準部推定曲線という。以上のように基準部推定曲線は、各測定位置における基準点を連続的に並べたものである(
図3(B)参照)。以下、基準部推定曲線の算出要領を説明する。
【0039】
基準部推定曲線は、ステップS1においてセンサを走査し得られる各測定点におけるカウント数Cnを回帰分析し算出する(ステップS2)。全ての測定点におけるカウント数Cnには、減肉部、あるいは溶接部など健全部以外の箇所のカウント数Cnも含まれる。誤差の少ない基準部推定曲線を得るには減肉部、溶接部などを除いた健全部におけるカウント数Cnを使用し基準部推定曲線を算出する必要がある。
【0040】
減肉部、溶接部箇所におけるカウント数C
nは、周囲の健全部におけるカウント数C
nと比較し、大きく変動する(
図3(B)参照)。よって全ての測定点におけるカウント数C
nのうち、周囲の健全部におけるカウント数C
nと比較し大きく変動するカウント数(以下、突出値)をマスキングし、これを回帰分析することで減肉部、溶接部などを除いた健全部のカウント数C
n´を用いた基準部推定曲線を算出することができる。
【0041】
突出値を機械的にマスキングする方法を説明する。まず全ての測定点におけるカウント数Cnを用いて回帰分析により仮基準部推定曲線を算出する(ステップS2-1)。次に仮基準部推定曲線から与えられる基準点におけるカウント数C0´と測定点におけるカウント数Cnとを用い、式(5)により各測定点におけるΔt´・μを算出する。
Δt´・μ=ln(Cn/C0´)・・・・(5)
ここで Cn:測定点におけるカウント数(透過線量)
C0´:仮基準部推定曲線から与えられる基準点におけるカウント数
(透線線量)
Δt´:配管減肉測定の場合は、配管の透過厚さ変化(mm)
:堆積物測定の場合は、堆積物の高さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm-1)
【0042】
得られたΔt´・μと予め定めた閾値Sとから突出値を選出する(ステップS2-2)。閾値Sを超えるΔt´・μの測定点におけるカウント数(透過線量)を突出値とする。突出値をマスキングし残りの測定点におけるカウント数Cn´を健全部データとし、再度、回帰分析し基準部推定曲線を算出する(ステップS2-3)。精度を高めたい場合には得られた基準部推定曲線を仮基準部推定曲線とし、ステップS2-1~ステップS2-3を複数回繰り返せばよい。
【0043】
本実施形態の非破壊検査方法は、基本的に構造物の減肉箇所又は堆積物箇所を検出するスクリーニングと位置付けられるため基準部推定曲線の算出におけるマスキング回数は1回行えばよい。
【0044】
減肉部、溶接部などの箇所が健全部の箇所に比較して圧倒的に少ない場合、減肉部、溶接部を含む全ての測定点におけるカウント数Cnを用いて算出する仮基準部推定曲線と、減肉部、溶接部を除いた健全部のみのカウント数Cn´を用いて算出する基準部推定曲線との間に差は殆どない。よって簡易に行う場合は、全ての測定点におけるカウント数Cnを回帰分析し得られる仮基準部推定曲線を基準部推定曲線として使用してもよい。
【0045】
次に線減弱係数μの算出要領を説明する(ステップS3)。検査対象物と同じ材質でかつ厚さt0が既知の試験片をセンサ本体に載置し又は貼付した状態で、構造物を透過する透過線量(カウント数Cnt0)を測定する(ステップS3-1)。よって構造物の減肉量Δtを測定するときは、構造物と同じ材質の試験片を使用し、構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを測定するときは堆積物と同じ材質の試験片を使用する。
【0046】
試験片を使用することなく測定した構造物の透過線量(カウント数Cn)と、得られたカウント数Cnt0を用い式(6)によりμを算出し、その平均値を線減弱係数μとする(ステップS3-2)。
μ=ln(Cn/Cnt0)/t0・・・・(6)
ここで Cn:構造物を透過した測定点におけるカウント数(透過線量)
Cnt0:構造物及び試験片を透過した測定点におけるカウント数
(透過線量)
to:試験片の厚さ(mm)
μ:配管減肉測定の場合は、配管の線減弱係数(mm-1)
堆積物測定の場合は、堆積物の線減弱係数(mm-1)
【0047】
線減弱係数μの算出において、試験片及び構造物を透過する透過線量(カウント数Cnt0)を測定するとき、試験片は放射線源とセンサとの間に位置すればよい。よって試験片を検査対象物である構造物に貼付してもよいが、試験片をセンサ本体に載置し又は貼付する方法は簡便であり好ましい。
【0048】
厚さt0が異なる複数の試験片を使用して透過線量Cnt0を測定する、あるいは厚さが階段状に変化する階段状試験片を用いて透過線量Cnt0を測定することで精度よく線減弱係数μを算出することができる。
【0049】
図4に示す第2実施形態のように区間をA区間、B区間、C区間のように区切って減肉量を測定するような場合は、A区間の減肉量測定の際に試験片を用いて透過線量(カウント数C
nt0)を測定し線減弱係数μを算出すれば、他の区間において線減弱係数μを算出しなくてもよい。
【0050】
図3に本発明の第1実施形態の非破壊検査方法を用い被覆配管を撮影し減肉評価を行ったサンプルを示す。ここでは放射線源を固定し、ラインセンサを走査させ被覆配管を撮影している。
図3(A)は撮影画像であり、横軸がラインセンサの走査距離、縦軸がラインセンサのチャンネル番号である。
図3(B)はラインセンサのチャンネル38番のデータであり、横軸がセンサの走査距離、縦軸が透過線量(カウント数C
n)であり、併せて基準部推定曲線を示す。
図3(C)はラインセンサのチャンネル38番の測定結果であり、横軸がセンサの走査距離、縦軸が相対減肉量Δtである。
図3(C)中の最大減肉部(2.1d)のdは、深さ(depth)を表し、単位はmmである。よって2.1dは、2.1mmを表す。
【0051】
上記のとおり本発明に係る非破壊検査方法は、基準部推定曲線を導入し、各測定点における透過線量と基準部推定曲線が与える基準点の透過線量とから構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを算出するので、放射線源とセンサと構造物との幾何学的配置が変化し、測定位置により線源強度が異なる場合であっても従来法に比べ精度よく構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを算出することができる。
【0052】
上記のような特徴を有する本発明に係る非破壊検査方法は、センサの走査方向が配管長手方向に限定されず、従来法では測定が難しかった配管周方向の減肉測定等も行える。また従来測定が難しかったエルボ、レデューサ、直管とエルボとの溶接部近傍のように長手方向には撮影できない構造物の減肉測定等も行える。
【0053】
本発明に係る非破壊検査方法は、被覆材が施された直管の減肉量Δtを、放射線源とセンサとを一体的に走査させる一体式の装置又は放射線源とセンサとを同期させ走査させる同期式の装置を用いて測定するとき、被覆材が配管に対してずれていても従来法に比べ精度よく直管の減肉量を算出することができる。
【0054】
また本発明に係る非破壊検査方法は、検査対象配管と同じ配管仕様(外径、厚さ、材質)の対比試験片を用意し、両者の透過線量(カウント数)から減肉量を算出する対比試験法を用いないため、稼働中の設備の配管、塔・槽類の減肉量、堆積物量、滞水量、耐火材の劣化・剥落の測定に好適に使用することができる。
【0055】
図4は、本発明の第2実施形態の非破壊検査装置1の構成を説明するための図である。本実施形態において、配管101は検査対象の配管であり、配管本体105に保温材106及び保温板金107が施された配管であり、配管の管軸xが水平(X軸に平行)に配置されているものとする。
【0056】
本実施形態において、検査対象の配管101は、保温材等で被覆されているが、検査対象の配管101は、配管本体のみからなる配管であってもよい。図面及び明細書に記載のX方向、Y方向、Z方向は、それぞれ3次元直交座標系のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を表す。また軸方向は、管軸xに平行な方向、径方向は、管軸yに直交する方向、周方向は、管軸yを中心とする円弧に沿う方向をいう。
【0057】
本実施形態の非破壊検査装置1は、配管101の減肉箇所を検出するスクリーニング装置2と、スクリーニング装置2で検出された減肉箇所の肉厚を測定する超音波厚さ計70とに大別される。
【0058】
スクリーニング装置2は、配管101に対して放射線を照射する放射線源10と、配管101を透過する放射線量を検出するセンサ20と、センサ20を配管101に沿って走行させる走行手段30と、データ処理装置50とを備える。
【0059】
放射線源10は、特に限定されるものではなく配管101の検査に適したものを適宜選択して使用することができる。センサ20も特に限定されるものではなく、ラインセンサなど配管101の検査に適したものを適宜選択して使用することができる。ラインセンサは、複数の素子が直線状に配列されたセンサである。
【0060】
走行手段30は、走行レール31と、走行台車38と、走行台車38を移動させる駆動装置40とを含む。走行レール31は、走行台車38が走行する一対のガイドレール32と、ガイドレール32を連結するベルト34とを含み、ガイドレール32は、取付具36を介してベルト34の左右(Z方向)に固定される。ベルト34は、ゴム素材からなり可撓性を有し、配管101の外周面(外壁面)に接し、走行レール31のずれを防止する。
【0061】
走行レール31は、ラッシングベルトなどの固定用ベルトを使用し、配管101に固定してもよい。ラッシングベルトなどの固定用ベルトを使用すれば、配管101に対して、走行レール31を斜め方向、例えば鉛直軸(Z軸)に対して30°、60°の検査も可能となる。
【0062】
走行台車38は、車輪を有し、センサ20を搭載し走行レール31を走行する。走行台車38の構造、形状は、特に限定されるものではなく、センサ20をしっかりと固定し、センサ20を搭載した状態で走行レール31を安定して走行できればよい。
【0063】
駆動装置40は、ワイヤ巻取り器42を主に構成され、ワイヤ43を走行台車38に連結し、ワイヤ43を巻き取ることで走行台車38を移動させる。ワイヤ巻取り器42は、スピードコントローラ及び距離エンコーダ45を備え、ワイヤ43の巻取り速度を調整可能であり、ワイヤ43の巻取量を検知する。
【0064】
走行手段30は、上記実施形態に限定されるものではなく、センサ20を配管101に沿って安定的に走行できるものであればよい。
【0065】
データ処理装置50は、データ入力手段51、データ出力手段52、記憶手段53、制御手段54、減肉量算出手段55を備え、放射線源10、センサ20及び駆動装置40と接続し、これら機器を制御するとともに撮影画像データを取得する。減肉量算出手段55は、基準部推定曲線算出手段56及び高さ算出手段57を備える。データ処理装置50は、第1実施形態の非破壊検査方法を実行するためのプログラムを搭載しており、当該プログラムに基づき減肉量算出手段55が減肉量を算出する。
【0066】
超音波厚さ計70は、表示部73、操作部74を備える本体71と、探触子75を備え、スクリーニング装置2で検出された減肉箇所の肉厚を測定する。超音波厚さ計70は、スクリーニング装置2のデータ処理装置50と接続し、測定データをデータ処理装置50に送信する。ここで使用する超音波厚さ計70は、特に限定されるものではなく、公知の超音波厚さ計を使用することができる。
【0067】
本実施形態の非破壊検査装置1を用いた検査方法について説明する。ここでは検査対象物の配管101を複数の区間に区分けし、区間を順次変更しながら検査を行う。具体的には、配管101の検査区間を、区間A,区間B,区間Cの3区間に区分けする。各区間の区分けは、区間の境界部に鉛マーク150を設置することで行う。また各区間の中央にも鉛マーク151を設置する。鉛マーク150は、配管101の上部外壁に、鉛マーク151は、配管101の底部外壁に取付ける。
【0068】
検査対象物の配管101を検査する場合は、第1に、区間Aの中心(X方向)に放射線源10を設置し、走行手段30を介してセンサ20を区間A内を走行させ、区間Aの検査を行う。放射線源10の設置は、鉛マーク151を目印に、走行区間は、鉛マーク150を目印に行う。次に区間Bの中心(Y方向)に放射線源10を設置し、走行手段30を介してセンサ20を区間B内を走行させ、区間Bの検査を行う。区間Cについても同様に検査する。
【0069】
検査区間の長さは、放射線源10、センサ20、配管101の仕様、さらには放射線源10、センサ20及び配管101の幾何学的配置に基づく線源強度の変化を考慮して決定する。
【0070】
スクリーニング装置2で減肉箇所が検知されれば(スクリーニング工程)、該当箇所の保温板金、保温材を取外し、超音波厚さ計70を用いて肉厚を測定する(肉厚測定工程)。
【0071】
以上、第2実施形態の非破壊検査装置1を用い、装置の構成及びその使用方法について説明したが、本発明に係る非破壊検査装置の構成及びその使用方法は、上記実施形態に限定されるものでない。要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。
【0072】
第2実施形態の非破壊検査装置1は、スクリーニング装置2が、放射線源10を固定し、センサ20を走査させる固定式装置であるが、固定式装置に代えて放射線源10とセンサ20とを一体的に走査させる一体式装置、放射線源10とセンサ20と同期させ走査させる同期式装置であってもよい。一体式装置又は同期式装置の場合、それに対応した走行手段を設ける必要があるがデータ処理装置50及び超音波厚さ計70は、第2実施形態の非破壊検査装置1と同じものを使用することができる。
【0073】
また第2実施形態の非破壊検査装置1は、配管101の減肉箇所を検出するスクリーニング装置2と、スクリーニング装置2で検出された減肉箇所の肉厚を測定する超音波厚さ計70とで構成されるが、本発明に係る非破壊検査装置は、スクリーニング装置2を用いて減肉量を算出し、超音波厚さ計70を省略してもよい。
【0074】
図面を参照しながら好適な非破壊検査方法及び、非破壊検査装置及びデータ処理装置について説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【実施例】
【0075】
<実施例1>
本発明に係る固定式の非破壊検査装置を用い、以下の要領で直管とエルボとの溶接線近傍の減肉量を測定した。
図5(A)に撮影要領を、
図5(B)に測定結果を示した。放射線源には、エックス線源を使用した。センサには、浜松ホトニクス株式会社の配管減肉検査用エネルギー弁別型放射線ラインセンサ(型番C13247)を使用した。このラインセンサの検出素子寸法は、3.3mm×3.3mm、検出素子数(チャンネル数)は64であり、検出幅は211mmである。
【0076】
撮影対象は650A、Sch.10の被覆配管(φ660.4、厚さ7.9mm)であり、内部はミストである。
図5(A)に示すようにエックス線源を固定し、配管を挟みラインセンサを対向配置させ、ラインセンサを周方向に走行させ直管とエルボとの溶接線近傍の減肉量を測定した。撮影範囲は、管軸を中心に約400mmとした。
図5(A)中の最大減肉部(2.2d)のdは、深さ(depth)を表し、単位はmmである。よって2.2dは、2.2mmを表す。
【0077】
図5(B)の右側の写真は、撮影画像であり、
図5(B)の左側のグラフは、
図5(B)の右側の写真中に示す破線位置の減肉量を、第1実施形態の非破壊検査方法で算出したものである。
図5(B)の右側の写真中の数値は、別途、被覆解体後、超音波厚さ計により測定した残肉量(mm)である。この結果から直管(炭素鋼)側では減肉による濃淡が散在しているのに対し、エルボ(ステンレス鋼)側では著しい減肉指示は認められない。
【0078】
最大減肉部の周辺を被覆解体して超音波厚さ計により残肉量を測定し、両者の結果を比較した。被覆解体範囲では、配管外面は塗装が健全で外面減肉は認められず、ラインセンサの減肉指示は全て内面減肉である。また配管上面(線源側)において抜き取りで残肉量を測定した結果、著しい減肉は認められなかった。従って、減肉指示は全て配管底面(ラインセンサ側)である。
【0079】
最大減肉部周辺の残肉厚は概ね7.3mm、ラインセンサが検出した最大減肉部の残肉厚は4.9mmであった。周辺を多点測定し、これが最小残肉厚であることを確認した。従って超音波厚さ測定による減肉評価は最大2.4d(=7.3mm-4.9mm)である。以上からラインセンサによるスクリーニング結果と超音波厚さ測定の結果は概ね一致していた。
【0080】
<実施例2>
本発明に係る一体式の非破壊検査装置を用い、以下の要領で被覆配管の減肉量を測定した。放射線源にはIr-192を使用した。センサには、浜松ホトニクス株式会社の配管減肉検査用エネルギー弁別型放射線ラインセンサ(型番C13247)を使用した。このラインセンサの検出素子寸法は、3.3mm×3.3mm、検出素子数(チャンネル数)は64であり、検出幅は211mmである。
【0081】
フレームの一方に放射線源を固定し、配管を挟みフレームの他方にラインセンサを固定し、被覆板金(外装板)に平行に走行レールを取付け、放射線源及びラインセンサを搭載したフレームを走行レールに沿って走行させ、被覆配管の減肉量を測定した。配管は直管であり、1回当たりの撮影長は最大2mとした。
【0082】
結果を
図6に示した。
図6(A)は、撮影画像であり、横軸が走査距離、縦軸がラインセンサのチャンネル番号である。
図6(B)は、ラインセンサのチャンネル22番のデータであり、横軸が走査距離、縦軸が透過線量(カウント数C
n)である。図中の基準部推定曲線は、第1実施形態の非破壊検査方法により算出したものである。
図6(C)は、ラインセンサのチャンネル22番の測定結果であり、横軸が走査距離、縦軸が相対減肉量Δtである。
【0083】
この結果から本発明に係る一体式の非破壊検査装置を用い、被覆配管の減肉量を測定できることが分かる。また
図6(B)に示す基準部推定曲線は、右下がりの曲線となっている。このことから被覆板金(外装板)の軸心と配管の軸心とがずれていることが分かる。このような場合であっても本発明に係る非破壊検査方法では、基準部推定曲線を用いて減肉量を算出するので従来法に比べ精度よく減肉量を算出することができる。
【0084】
<実施例3>
本発明に係る固定式の非破壊検査装置を用い、以下の要領で耐火材の劣化状況を確認した。
図7に撮影配置を示した。検査対象物は、鉛直ガス配管(外径φ2600×t12)であり、配管内面に厚さ60mmの耐火材が施工されている。放射線源には、エックス線源を使用し、センサには、浜松ホトニクス株式会社の配管減肉検査用エネルギー弁別型放射線ラインセンサ(型番C13247)を使用した。
【0085】
エックス線源とラインセンサとを配管を挟み対向配置させ、ラインセンサを上下方向に走行させ撮影した。ラインセンサの移動速度は、2.5mm/秒、蓄積時間:1秒、測定ピッチ2.5mmとした。測定の結果、広範囲において耐火材の脱落が認められた。
【0086】
<実施例4>
本発明に係る固定式の非破壊検査装置を用い、以下の要領でブタジエン配管内の堆積物の確認をした。ブタジエン配管は、12B×sch30(t8.4)であり、被覆材なしである。放射線源には、エックス線源を使用し、センサには、浜松ホトニクス株式会社の配管減肉検査用エネルギー弁別型放射線ラインセンサ(型番C13247)を使用した。
【0087】
エックス線源とラインセンサとを配管を挟み対向配置させ、ラインセンサを配管に沿って水平方向又は上下方向に走行させ撮影した。エックス線源とラインセンサとの距離Lは、1200~1500mmとし、撮影1回当たりの有効長は400mmとした。ラインセンサの移動速度は、7.5mm/秒、蓄積時間:0.1秒、測定ピッチ0.75mmとした。測定の結果、重合物の詰まりは認められなかった。
【0088】
なお、配管内の堆積物又は堆水の高さについては、
図8に示すようにセンサを上下方向に走査させることで、高さが一様でないものも測定できる。
【符号の説明】
【0089】
1 非破壊検査装置
2 スクリーニング装置
10 放射線源
20 センサ
30 走行手段
50 データ処理装置
51 データ入力手段
52 データ出力手段
53 記憶手段
54 制御手段
55 減肉量算出手段
56 基準部推定曲線算出手段
57 高さ算出手段
70 超音波厚さ計
101 配管
【要約】
【課題】構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを従来法に比べて精度よく測定できる非破壊検査方法及び非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】放射線透過法を用い構造物の減肉量又は構造物内部に堆積する堆積物の高さを測定する非破壊検査方法であって、センサを走査させ前記構造物を透過した放射線量(カウント数C
n)を測定する透過線量測定ステップ(ステップS1)と、測定点の透過線量(カウント数C
n)と、測定点の透過線量(カウント数C
n)を用いこれを回帰分析し得られる基準部推定曲線が与える基準点の透過線量(カウント数C
0)とを用い、構造物の減肉量Δt又は構造物内部に堆積する堆積物の高さΔtを算出する高さ算出ステップ(ステップS4)と、を有する。
【選択図】
図1