(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】プリント装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
B65H1/04 320B
B65H1/04 324
(21)【出願番号】P 2019155099
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2018169886
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】高原 浩行
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046313(JP,A)
【文献】特開平11-116069(JP,A)
【文献】特開2006-089278(JP,A)
【文献】特開2007-131422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置し、シートを支持する支持面を
複数のリブによって形成する支持部が配された圧板と、
前記圧板に設けられ、シートの幅方向に移動可能なシフト部材と、
前記圧板に前記幅方向に移動可能に設けられ、前記幅方向におけるシートの側端部を
それぞれ規制する
第1のサイドガイドおよび
第2のサイドガイドと、
前記
第1のサイドガイドに設けられ、前記シフト部材と係合する係合部材と、
前記圧板に載置されたシートを搬送方向に搬送する搬送手段
と、を備えるプリント装置であって、
前記シフト部材が移動しない状態で、前記第1のサイドガイドの移動と連動して前記第2のサイドガイドを移動させることができる連動手段を備え、
前記搬送手段によってシートの搬送を開始するときに、前記
第1のサイドガイドと前記シフト部材とが前記係合部材で係合した状態で前記幅方向に
移動するとともに、前記第2のサイドガイドは前記連動手段によって前記幅方向に移動し、前記
第1のサイドガイド
および前記第2のサイドガイドが
それぞれの前記側端部から離
間することを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記係合部材は、前記シフト部材と摩擦係合することを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
【請求項3】
前記係合部材は、係合爪であり前記シフト部材に設けられた鋸歯部と係合することを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記第1のサイドガイドに設けられ、シートと対向する第1の対向部と、
前記第2のサイドガイドに設けられ、シートと対向する第2の対向部と、を備え、
前記支持面は、前記幅方向に延びる第1のリブおよび前記搬送方向に離れた第2のリブで形成され、
前記第1の対向部および前記第2の対向部は、前記支持面の高さ以下で前記第1のリブと前記第2のリブの間を移動することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のプリント装置。
【請求項5】
前記連動手段は、前記第1のサイドガイドに設けた第1のラックと、前記第2のサイドガイドに設けた第2のラックと、前記圧板に設けられかつ前記第1のラックおよび前記第2のラックのそれぞれと連結するピニオンギアとで構成されることを特徴とする請求項1ないし
4の何れか1項に記載のプリント装置。
【請求項6】
シートを載置し、シートを支持する支持面を形成する支持部が配された圧板と、
前記圧板に設けられ、シートの幅方向に移動可能なシフト部材と、
前記圧板に前記幅方向に移動可能に設けられ、前記幅方向におけるシートの側端部をそれぞれ規制する第1のサイドガイドおよび第2のサイドガイドと、
前記第1のサイドガイドに設けられ、前記シフト部材と係合する係合部材と、
前記圧板に載置されたシートを搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によってシートの搬送を開始するときに、前記第1のサイドガイドと前記シフト部材とが前記係合部材で係合した状態で前記幅方向に移動して、前記第1のサイドガイドおよび前記第2のサイドガイドがそれぞれの前記側端部から離間するプリント装置であって、
前記第1のサイドガイドの移動と連動して前記第2のサイドガイドを移動させる連動手
段を備え、
前記連動手段は、前記シフト部材に設けた第1のラックと、第2のサイドガイドに設けた第2のラックと、前記圧板に設けられかつ前記第1のラックと前記第2のラックのそれぞれと連結するピニオンギアとで構成されていることを特徴とするプリント装置。
【請求項7】
前記第1のサイドガイドに設けられ、シートと対向する第1の対向部と、
前記第2のサイドガイドに設けられ、シートと対向する第2の対向部と、を備え、
前記第1の対向部および前記第2の対向部は、前記支持面の高さ以下で前記幅方向に移動することを特徴とする請求項6に記載のプリント装置。
【請求項8】
前記シフト部材に設けられた突起と、前記プリント装置のベース部に設けられたカム部と、をさらに有し、
前記シフト部材は、前記突起が前記カム部と係合することによって移動することを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のプリント装置。
【請求項9】
前記カム部は前記圧板の揺動により前記シフト部材を移動させることを特徴とする請求項8に記載のプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの側端部の移動を規制するサイドガイドを備えるプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント装置には給送トレイの圧板に載置したシートをプリント位置に給送する給送装置が設けられている。シートは圧板に対して正確に位置決めする必要があるため、圧板にはシートの側端部を規制するサイドガイドが設けられている。このサイドガイドはシートとの摩擦抵抗によってシートに対するバックテンションを発生させ、シートの搬送精度に影響を与えることがあった。そのため、特許文献1の給送装置は、圧板が上下に揺動するのと連動してサイドガイドをシートの幅方向に移動する構成となっている。この結果、サイドガイドがシートの側端部から離間することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では圧板をシートの幅方向に移動させるため機構が大きくなる。また、圧板の移動と共にシートも幅方向に移動するおそれがある。仮に圧板の最下層近傍のシートのみが幅方向に移動すると、複数のシート間で側端部の位置にばらつきが生じる。このような場合に圧板が元の位置に戻るとシートの側端部に折れまたは傷が発生する。
【0005】
そこで本発明は、シートの幅方向に圧板を移動させることなくサイドガイドを移動させることができるプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント装置は、シートを載置し、シートを支持する支持面を複数のリブによって形成する支持部が配された圧板と、前記圧板に設けられ、シートの幅方向に移動可能なシフト部材と、前記圧板に前記幅方向に移動可能に設けられ、前記幅方向におけるシートの側端部をそれぞれ規制する第1のサイドガイドおよび第2のサイドガイドと、前記第1のサイドガイドに設けられ、前記シフト部材と係合する係合部材と、前記圧板に載置されたシートを搬送方向に搬送する搬送手段と、を備えるプリント装置であって、前記シフト部材が移動しない状態で、前記第1のサイドガイドの移動と連動して前記第2のサイドガイドを移動させることができる連動手段を備え、前記搬送手段によってシートの搬送を開始するときに、前記第1のサイドガイドと前記シフト部材とが前記係合部材で係合した状態で前記幅方向に移動するとともに、前記第2のサイドガイドは前記連動手段によって前記幅方向に移動し、前記第1のサイドガイドおよび前記第2のサイドガイドがそれぞれの前記側端部から離間することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
シートを搬送する際に、シフト部材が移動することによって圧板を移動させることなくサイドガイドを移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】(a)圧板の正面図、(b)圧板の背面図である。
【
図5】シートを圧板に載置した状態を示す断面図である。
【
図9】プリント時のシフト部材とカム部の位置関係を示す図である。
【
図10】プリント動作時のフローチャート図である。
【
図11】シートを載置する際の圧板の状態を示す正面図である。
【
図13】シフト部材によりサイドガイドがシートから離間する状態を示す図である。
【
図17】第3の実施形態のサイドガイドとシフト部材の断面図である。
【
図18】第3の実施形態のサイドガイドと圧板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、給送ユニットを有するインクジェット方式のプリント装置である。なお、給送ユニットは、プリント装置に限定されず複写機、ファクシミリ等にシートを給送するものであってもよい。
図1はプリント装置の主要部の斜視図、
図2はその断面図である。プリント装置1は、給送ユニット2、プリントヘッド6、第1の搬送ローラ対4、第2の搬送ローラ対5などで構成される。プリント装置1には、プリント装置の制御を行う制御部、各種ローラを駆動する駆動部、画像のプリントを行うプリント部、コンピュータ等と通信を行うインタフェース部等のプリント動作に必要な機能を備えている。
【0011】
シートPのプリント位置への給送は、給送ユニット2を用いて行われる。まず、給送ユニット2の給送トレイにシートを載置する。給送ローラ3はリタードローラ15と対を成してシートPを挟持し、給送ローラ3の回転に伴って給送トレイから最上位のシートPを第1の搬送ローラ対4へ給送する。リタードローラ15はトルクリミッタ等が組み込まれており、給送トレイに積載された2枚目以降のシートを給送しない機構となっている。給送されたシートPは第1の搬送ローラ対4によりプリント位置へ搬送される。搬送経路においてシートの先端または後端を検知するため、給送ローラ3と第1の搬送ローラ対4の間のエッジ検知センサ30が設けられている。エッジ検知センサがシートPの先端を検知すると、搬送ローラ対4の動作が開始される。
【0012】
画像のプリントを行うプリントヘッド6は、シートPの搬送方向Aと交差するB方向に往復移動することができる。プリントヘッド6からインクを吐出することによってシートPに画像がプリントされる。シートPの搬送とプリントヘッド6の走査を交互に繰り返すことによりシートPに1ラインごとの画像が形成される。画像がプリントされたシートPは、第2の搬送ローラ対5によって排出部(不図示)へ排出される。なお、プリント装置1はコンピュータ(不図示)に接続されており、ユーザはコンピュータ等から画像のプリントを実行することができる。
【0013】
(給送トレイの圧板)
次に
図3~
図5を用いて給送ユニットに設けられた給送トレイの圧板について説明する。
図3は給送ユニットの斜視図である。給送ユニット2はベース部7にシートを載置する給送トレイが設けられている。給送トレイは、圧板8、第1のサイドガイド9、第2のサイドガイド10、シフト部材11で構成される。圧板8は、シートと当接する圧板リブ8Dと圧板リブ8Eで囲まれる範囲の支持面と、その両端に回転支点8A、8Bを有している。また、回転支点8Aおよび8Bは、ベース部7に設けられている穴7Aおよび7Bとそれぞれ嵌合してベース部7に対して上下方向に揺動できる。圧板8には圧板8に対して移動できるシフト部材11、シートPの側端部の位置を規制する第1のサイドガイド9と第2のサイドガイド10が設けられている。また、圧板8の中央部には、シートPに当接する摩擦パッド31が設けられている。
【0014】
図4(a)は、圧板の正面図、
図4(b)は圧板の背面図である。シフト部材11のリブ11Bおよびリブ11Cと圧板の開口8Fによって、シフト部材11は圧板8に対してガイドされC方向に移動可能である。また、第1のサイドガイド9はシフト部材11に設けられた開口11Eと係合し、圧板リブ8D、8Eでガイドされることでシフト部材11に対してC方向(シートの幅方向)に移動可能にシフト部材11に連結されている。したがって、シフト部材11および第1のサイドガイド9は、圧板8に対してそれぞれ移動することができる。一方第2のサイドガイド10は圧板8に設けられた開口8Gと係合し、圧板リブ8Dおよび圧板リブ8EでガイドされることでC方向に移動可能に圧板8に連結されている。このため、第1のサイドガイド9でシートPの一方の側端部を規制し、第2のサイドガイド10でシートPの他方の側端部を規制することができる。
【0015】
なお、第1のサイドガイドおよび第2のサイドガイドは、圧板に設けた複数の開口と係合する構造であってもよい。
【0016】
第1のサイドガイド9の背面には第1のラック12が開口11Eを介して固定されており、第2のサイドガイド10の背面には第2のラック13が開口8Gを介して固定されている。また、第1のラック12および第2のラック13の間には、圧板8の回転支軸8Cで自在に回転できるピニオンギア14が設けられている。ピニオンギア14は第1のラック12および第2のラック13とそれぞれ噛み合っている。このため、第1のサイドガイド9を移動するとそれと連動して第2のサイドガイド10も逆方向に移動する。第1のサイドガイド9と第2のサイドガイド10は給送ローラ3を基準として移動するため、シートPの中心を給送ローラ3に対してシートのサイズに関わらず位置決めすることができる。なお、第1のサイドガイド9と第1のラック12は、二部材で構成してもよいし一体的な一部材で構成しても良い。また、第2のサイドガイド10と第2のラック13とを二部材で構成してもよいし一体的な一部材で構成しても良い。
【0017】
摩擦パッド31は、載置されたシートPのうち給送ローラ3と当接する1枚以外を圧板8に引き留める役割を果たす。この摩擦パッド31とシートとの間の摩擦係数はシート間の摩擦係数より大きい。
【0018】
図5はシートを圧板に載置した状態を示す断面図である。シートPが圧板8に載置されると、シートPは圧板8の2つの圧板リブ8D、8E(支持部)で形成される支持面に当接して支えられる。なお、中央の圧板リブ8Hが支持面の一部を形成しても良い。一方、シフト部材11のリブ11Bと11Cは、2つの圧板リブ8D、8Eで形成される支持面に対して低い構成になっている。このため、シフト部材11のシートに対向する範囲はシートPの表面と当接しにくい構成となっている。同様に、第1のサイドガイド9と第2のサイドガイド10のシートPの表面と対向する対向部(平面9Aと平面10A)は、圧板リブ8D、8Eで形成される支持面に対して低い構成になっている。このように、対向部は、支持面の面内の領域でシートPの下側を移動する。したがって、シフト部材11、第1のサイドガイド9、第2のサイドガイド10が移動しても圧板8がシートPと当接することになるためシートPの位置をずらすことがない。なお、対向部でシートPを支持するときの静止摩擦力が、圧板で形成される平面でシートPを支持するときの静止摩擦力より小さい場合、対向部は支持面と同じ高さであっても良い。
【0019】
(シフト部材によるサイドガイドの移動)
ここで、第1のサイドガイド9がシフト部材11に固定される仕組みを説明する。
図6はサイドガイドのロック機構の断面図である。第1のサイドガイド9にはロック部材16が設けられており、ロック部材16は矢印Rで示す方向に回転可能である。ロック部材16の一端には係合爪16Aが設けられており、他端にはロックを外すための操作部16Bが設けられている。係合爪16Aは、シフト部材11に設けられた第1のサイドガイド9の移動方向に鋸歯状の形状が連続した鋸歯部11A(係合部材)に付勢されることで固定される。
【0020】
第1のサイドガイド9は、ユーザがロック部材16Bを外側に倒すことでシフト部材11に対して移動可能となる。この場合圧板8に対して第1のサイドガイド9とそれと連動して第2のサイドガイド10を移動することができる。また、ユーザがロック部材16Bを放すと係合爪16Aが鋸歯部11Aに付勢され、第1のサイドガイド9がシフト部材11に位置が固定される。この場合シフト部材11と共に第1のサイドガイド9が移動する。また、第1のサイドガイド9が移動するとそれと連動して第2のサイドガイド10も逆向きに移動する。
【0021】
なお、第1のサイドガイド9をシフト部材11に固定する手段として、鋸歯部と係合爪の代わりに摩擦係合を用いてもよい。また、ロック機構に操作部がなく、第1のサイドガイド9とシフト部材を接触させる摩擦係合であってもよい。この場合、シフト部材はサイドガイドとの間で発生する摩擦力より強い力で圧板に付勢される。この結果、シートを載置する際にサイドガイドのみが移動でき、シートの搬送の際にシフト部材と共にサイドガイドを移動させることができる。
【0022】
次にシフト部材11を移動させる機構について説明をする。
図7はシフト部材とカム部の断面斜視図、
図8はベース部のカム部の上視図である。シフト部材11にはフォロワー突起11Dが設けられており、ベース部7にはフォロワー突起11Dに対する溝からなるカム部7Cが設けられている。フォロワー突起11Dとカム部7Cは互いに係合して圧板8の揺動によるカム機構を構成している。カム部7Cの溝には第1ポジション7C1と第2ポジション7C2の2つのポジションを有する。第1ポジション7C1はシートの載置時、第2ポジション7C2はプリント時の位置である。
図9にプリント時のシフト部材とカム部の位置関係を示す。フォロワー突起11Dが第2ポジション7C2に係合している状態である。フォロワー突起11Dが第2ポジション7C2に移動することによって、シフト部材11が外側(シートの幅方向)に移動する。シフト部材11と連動して第1のサイドガイドおよび第2のサイドガイドが移動する。この結果、第1および第2のサイドガイドは、シートPはから離間することができる。また、シフト部材11が移動する距離はシート幅によらず一定となる。なお、シフト部材の移動は、圧板の揺動を用いず、モータや電磁ソレノイド等のアクチュエーターで行っても良い。
【0023】
(フローチャート)
図10は、プリント装置のプリント動作時のフローチャートである。
【0024】
S200工程で開始する。ユーザは第1のサイドガイド9と第2のサイドガイド10をシート幅より開いて、シートPを圧板8に載置する(
図11(a))。次に、第1のサイドガイド9と第2のサイドガイド10をシート幅になるところまで移動し、サイドガイドとシートPを当接させる(
図11(b))。これにより、シートPの幅方向の位置が確定する。
【0025】
S201工程で給送を開始する。ユーザはコンピュータからプリント装置1にプリントの指示を行う。
【0026】
S202工程で給送動作を開始する。ここで給送開始時の動作について
図12を用いて説明する。圧板8にシートPが載置された状態において、給送ローラ3はシートPと離れた位置にある(
図12(a))。プリントの指示により給送ローラ3が回転すると共に、圧板8がシートPと給送ローラ3を当接させる位置まで移動する(
図12(b))。これにより給送ローラ3によるシートPの給送が開始される。
【0027】
S203工程でシートのエッジ検知を行う。シートPが正常に給送されると給送開始から所定時間でエッジ検知センサ30によりシートPの先端が検知される。シートPが検知されるとS205工程に進む。S203工程で所定時間を経過してもシートPの先端が検知されない場合は、S204工程で給送動作を停止する。また、コンピュータにエラーを表示させる。
【0028】
S205工程で斜行矯正を行う。エッジ検知センサ30がシートPの先端を検知した時から所定距離だけシートPを搬送方向Aに送る。所定距離は、エッジ検知センサ30と第1の搬送ローラ対4との距離より少し長い距離である。この際、第1の搬送ローラ対4は回転しない。このためシートPの先端は第1の搬送ローラ対4で下流方向への移動を阻止され、第1の搬送ローラ対4に対して平行になる。また、第1のサイドガイド9と第2のサイドガイド10はシートPの側端部から離れず、搬送方向Aと直角方向にずれないようにシートPをガイドする。つまり、シートPが斜行していた場合、シートPに多少のたわみが発生することになる。
【0029】
S206工程で搬送ローラの回転駆動を開始する。プリント動作の際、シートPは給送ローラ3に対して高精度な第1の搬送ローラ対4で搬送される。つまり、シートPを給送ローラ3から第1の搬送ローラ対4に渡す必要がある。給送ローラ3はシートPをさらに所定距離給送する。同時に第1の搬送ローラ対4が回転を開始する。この結果、シートPが第1の搬送ローラ対4に挟持される。このように搬送ローラ対4がシートPを搬送できるようになる。
【0030】
S207工程でサイドガイドを離間する。第1の搬送ローラ対4でシートPの搬送が開始されると圧板8は給送ローラ3から離れる方向に移動する(
図12(c))。圧板8が移動すると、シフト部材11のフォロワー突起11Dが第2ポジション7C2まで移動する。この結果、第1のサイドガイド9および第2のサイドガイド10はそれぞれD方向、E方向に移動してシートPから離間する(
図13)。また、リタードローラ15が給送ローラ3から離間し、給送ローラ3の回転が終了する。
【0031】
S208工程で画像のプリントをする。搬送ローラ対4でのシートPの搬送とプリントヘッド6の走査を交互に行うことにより1ラインごとの画像を形成する。プリントの際、第1のサイドガイド9および第2のサイドガイド10はシートPの側端部から離れているため、シートPに対する搬送中のバックテンションを軽減することができる。この結果、シートPを良好な搬送精度で搬送することができる。
【0032】
S209工程でシートを排出する。シートPを第2の搬送ローラ対5で排紙トレイへ排出すると圧板8を初期位置まで移動させる(
図12(a))。これにより、第1のサイドガイドおよび第2のサイドガイドはシフト部材11が移動することによって再度シートPと当接する位置に戻る。なお、次のシートに画像をプリントする場合は、S202工程に戻る。
【0033】
S210工程で終了する。
【0034】
このように本発明により、シートを搬送する際にシフト部材が移動することによってサイドガイドを移動することができる。この結果、シートに折れや傷を発生させることはない。
【0035】
(第2の実施形態)
第1の実施形態はシートを載置する際にシートの両端のサイドガイドが移動可能な構成であったが、第2の実施形態はシートの両端のサイドガイドの一方がユーザによって移動可能な構成である。ここでは圧板108について説明し、その他の部分については第1の実施形態と同じであるため省略する。
図14は圧板108の正面図、
図15は圧板108の背面図である。
【0036】
給送トレイは、圧板108、シフト部材111、第1のサイドガイド109、第2のサイドガイド110で構成されている。シフト部材111は圧板108に対して移動可能に設けられている。また、第1のサイドガイド109はシフト部材111に対してF方向(シートの幅方向)に移動可能に連結されている。このため第1のシフト部材111と第1のサイドガイド109は、それぞれ圧板108に対して移動することができる。一方、第2のサイドガイドは圧板108に移動可能に連結されている。
【0037】
第1の実施形態と異なり、シフト部材111の背面には第1のラック112が固定されている。また第1の実施形態と同様、第2のサイドガイド110の背面には第2のラック113が固定されている。第1のラック112と第2のラック113との間には圧板108の回転支軸108Cにより自在に回転できるピニオンギア114が設けられている。ピニオンギア114は第1のラック112および第2のラック113とそれぞれ噛み合っている。このため、シフト部材111と第2のサイドガイド110は互いに逆方向に移動できる。
【0038】
第1のサイドガイド109には、ロック部材116が設けられており第1の実施形態と同様に係合爪がシフト部材111の鋸歯部111A(係合部材)と係合してシフト部材111に固定される。ロックを外すと第1のサイドガイドのみを第2のサイドガイドに対して移動することができる。
【0039】
また、シフト部材111にはフォロワー突起111Dが設けられ、ベース部7には第1の実施例と同様にカム部7Cが設けられている。フォロワー突起111Dとカム部7Cは互いに係合して圧板108の揺動によるカム機構を構成している。
【0040】
ここで圧板108の動作を説明する。ユーザがシートPを第2のサイドガイド110の側端部に突き当てることにより圧板108に載置する。ユーザはロックを外した状態で第1のサイドガイド109を
図14中のG方向に移動させて、シートPの幅になったところで、第1のサイドガイド109の位置を確定させる。圧板108が揺動してフォロワー突起111Dが第2ポジション7C2に移動するとシフト部材111がH方向に移動する。シフト部材111がH方向に移動すると第1のサイドガイド109も同じ距離だけ移動する。また、第2のラック113に固定されている第2のサイドガイド110もI方向に同じ距離だけ移動する。このようにプリント時に、第1のサイドガイド109および第2のサイドガイド110はシートPの側端部から離れるため、シートPに対する搬送中のバックテンションを軽減することができる。
【0041】
なお、フォロワー突起211をシフト部材111ではなく、第2のサイドガイド110の背面に設けてもよい(
図16)。圧板108の揺動によりフォロワー突起211DをJ方向に移動することで、第1のサイドガイドをK方向に移動することができる。
【0042】
このように本発明により、シートを搬送する際にシフト部材が移動することによってサイドガイドを移動することができる。この結果、シートに折れや傷を発生させることはない。
【0043】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、ロック機構16によってサイドガイドをシフト部材に固定していた。第3の実施形態では、サイドガイドを摩擦係合によってシフト部材に係合させる。ここではサイドガイドとシフト部材について説明し、その他の部分については第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
図17にサイドガイドとシフト部材の断面図、
図18にサイドガイドと圧板の斜視図を示す。
【0044】
シフト部材211は、シートの幅方向に移動可能に圧板208に設けられている。また、シートの一方の側端部を規制する第1のサイドガイド209が、シートの幅方向に移動可能に圧板208に設けられている。なお、シートの他方の側端部を規制する第2のサイドも、シートの幅方向に移動可能に圧板208に設けられている。第1のサイドガイド209の背面には第1のラックが固定されており、第2のサイドガイドの背面には第2のラックが固定されている。また、第1のラックおよび第2のラックの間には、圧板208に対して自由に回転できるピニオンギアが設けられている。ピニオンギアは第1のラックおよび第2のラックとそれぞれ噛み合っている。
【0045】
第1のサイドガイド209のシフト部材211と対向する側には、摩擦負荷を与える摩擦パッド260(係合部材)が設けられている。摩擦パッド260は、例えば角状のウレタンフォームが用いられる。ただし、摩擦係数を調整するためにテフロン(登録商標)シート、ゴム、プラスチック材料であっても良い。摩擦パッド260は、シフト部材211の摺動平面211Aに付勢されている。摺動平面211Aは、鏡面であるが、粗面などにして摩擦係数を大きくしても良い。また、シフト部材211は、シフト部材211とサイドガイド209との間の静止摩擦力より強い力がかかった時にシートの幅方向に圧板208に対して移動できる。
【0046】
したがって、第1のサイドガイド209の摩擦パッド260がシフト部材211に付勢されることによって、シートの幅方向の力に対して反対に摩擦力を発生させることができる。この摩擦力により、第1のサイドガイド209はシフト部材211と係合している。すなわち、第1のサイドガイド209に静止摩擦力より大きな力を加えればシフト部材211に対して第1のサイドガイド209を移動させることができる。この際、第2のサイドガイドは、第1のサイドガイド209と連動して第1のサイドガイド209の移動方向と逆方向に移動する。このときの動摩擦力は、自然に違和感なく操作するために通常300~800gf程度である。
【0047】
また、第1のサイドガイド209に力を加えない状態でシフト部材211を移動させると、第1のサイドガイド209は、静止摩擦力によってシフト部材211とともに移動する。この際、第2のサイドガイドは、第1のサイドガイド209と連動して第1のサイドガイド209の移動方向と逆方向に移動する。このようにロック部材16がなくてもシフト部材211に第1のサイドガイド209を固定させることができる。
【0048】
ユーザは、シートPをトレイに載置する際、第1のサイドガイド209をシート幅より開ける。この際、第1のサイドガイド209と第2のサイドガイドが互いにシートの側端部から離れる側に移動する。シートPを載置した後に、第1のサイドガイド209と第2のサイドガイドをシート幅になるところまで移動する。これらのサイドガイドの移動において、シフト部材211は移動しない。シートPは圧板208の2つの圧板リブ208D、208Eで形成される支持面に当接して支えられる。
【0049】
一方、シフト部材211は、2つの圧板リブ208D、208Eで形成される支持面に対して低い構成になっている。このため、シフト部材211のシートに対向する範囲はシートPの表面と当接しにくい構成となっている。同様に、第1のサイドガイド209と第2のサイドガイドのシートPの表面と対向する対向部(平面209A、第2のサイドガイドの平面)は、圧板リブ208D、208Eで形成される支持面に対して低い構成になっている。この結果、対向部は支持面の面内の領域でシートの下側を移動する。したがって、シフト部材211とともに、第1のサイドガイド209および第2のサイドガイドがシートの幅方向に移動しても、圧板208がシートPと当接しているためシートPの位置をずらすことがない。なお、対向部でシートPを支持するときの静止摩擦力が、圧板で形成される平面でシートPを支持するときの静止摩擦力より小さい場合、対向部は支持面と同じ高さであっても良い。
【0050】
このように本発明により、シートを搬送する際にシフト部材が移動することによってサイドガイドを移動することができる。この結果、シートに折れや傷を発生させることはない。
【符号の説明】
【0051】
2 給送ユニット
8 圧板
9 第1のサイドガイド
10 第2のサイドガイド
11 シフト部材