(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】照明装置、計測装置、基板処理装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20231227BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G03F9/00 A
(21)【出願番号】P 2021157908
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】井阪 勇貴
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196943(JP,A)
【文献】特表2019-528444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041329(US,A1)
【文献】特開2014-095594(JP,A)
【文献】国際公開第2009/025261(WO,A1)
【文献】特開2021-089303(JP,A)
【文献】特開2004-004055(JP,A)
【文献】特表2019-511000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
G01J 3/00-G01J 3/52
G01B 11/00-G01B 11/30
G03F 7/00-G03F 9/02
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置であって、
照射された光のスペクトルを変化させる波長可変部と、
前記光源からの光を前記波長可変部に照射する光学系と、を有し、
前記光学系により照射された光が入射する前記波長可変部の入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して
傾斜角θだけ傾くように前記波長可変部が配置さ
れ、
前記光軸に沿って進んだ光線が前記入射面で反射して前記光学系の有効範囲の境界を通過する光線になるように前記入射面を傾けたときの前記平面に対する傾斜角をα、前記光学系の有効半径をr、前記光軸に沿った方向における前記光学系と前記波長可変部との距離をdとし、
tan(2α)=r/d、及び
α≦θ≦6α
を満たす、
ことを特徴とす
る照明装置。
【請求項2】
前記波長可変部を前記光軸に垂直な軸の方向に移動させる移動部を有し、
前記入射面が前記平面に対して前記軸回りの回転方向に傾くように前記波長可変部が配置される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記光学系からの光の光束径が前記入射面において最も短くなる方向に前記波長可変部を移動させる
ことを特徴とする請求項
2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記波長可変部は、前記光学系からの前記光が集光する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
照射された光のスペクトルを変化させる第2波長可変部と、
前記波長可変部からの光を前記第2波長可変部に照射する第2光学系と、を有し、
前記第2光学系からの光が入射する前記第2波長可変部の第2入射面が前記第2光学系の第2光軸に垂直な第2平面に対して傾くように前記第2波長可変部が配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第2入射面が前記第2平面に対して傾斜角θ
2だけ傾くように前記第2波長可変部が配置されており、
前記第2光軸に沿って進んだ光線が前記第2入射面で反射して前記第2光学系の有効範囲の境界を通過する光線になるように前記第2入射面を傾けたときの前記第2平面に対する傾斜角をα
2、前記第2光学系の有効半径をr
2、前記第2光軸に沿った方向における前記第2光学系と前記第2波長可変部との距離をd
2とすると、
tan(2α
2)=r
2/d
2、及び
α
2≦θ
2≦6α
2
を満たす、
ことを特徴とする請求項
5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第2波長可変部を前記第2光軸に垂直な第2軸の方向に移動させる第2移動部を有し、
前記第2入射面が前記第2平面に対して前記第2軸回りの回転方向に傾くように前記第2波長可変部が配置される、
ことを特徴とする請求項
5又は
6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第2移動部は、前記第2光学系からの光の光束径が前記第2入射面において最も短くなる方向に前記第2波長可変部を移動させる
ことを特徴とする請求項
7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記第2波長可変部は、前記第2光学系からの前記光が集光する集光位置に配置される、
ことを特徴とする請求項
5乃至
8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置であって、
照射された光のスペクトルを変化させる第1波長可変部と、
照射された光のスペクトルを変化させる第2波長可変部と、
前記光源からの光を前記第1波長可変部に照射し、前記第1波長可変部を介して前記光源からの光を前記第2波長可変部に照射する光学系と、を有し、
前記光学系により照射された光が入射する前記第1波長可変部の第1入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して
傾斜角θ
3
だけ傾くように前記第1波長可変部が配置され、
前記光学系により第1波長可変部を介して照射された前記光が入射する前記第2波長可変部の第2入射面が前記平面に対して
傾斜角θ
4
だけ傾くように前記第2波長可変部が配置さ
れ、
前記光軸に沿って進んだ光線が前記第1入射面で反射して前記光学系の有効範囲の境界を通過する光線になるように前記第1入射面を傾けたときの前記平面に対する傾斜角をα
3、前記光学系の有効半径をr
3、前記光軸に沿った方向における前記光学系と前記第1波長可変部との距離をd
3とすると、
tan(2α
3)=r
3/d
3、及び
α
3≦θ
3≦6α
3
を満たし、
前記光学系の光軸に沿って進んだ光線が前記第2入射面で反射して前記光学系の有効範囲の境界を通過する光線になるように前記第2入射面を傾けたときの前記平面に対する傾斜角をα
4、前記光軸に沿った方向における前記光学系と前記第2波長可変部との距離をd
4とすると、
tan(2α
4)=r
3/d
4、及び
α
4≦θ
4≦6α
4
を満たす、
ことを特徴とす
る照明装置。
【請求項11】
前記第1波長可変部を前記光学系の光軸に垂直な第1軸の方向に移動させる第1移動部を有し、
前記第2波長可変部を前記光学系の光軸に垂直な、前記第1軸の方向とは異なる第2軸の方向に移動させる第2移動部を有し、
前記第1入射面が前記平面に対して前記第1軸回りの回転方向に傾くように前記第1波長可変部が配置される、
前記第2入射面が前記平面に対して前記第2軸回りの回転方向に傾くように前記第2波長可変部が配置される、
ことを特徴とする請求項
10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記第1移動部は、前記光学系からの光の光束径が前記第1入射面において最も短くなる方向に前記第1波長可変部を移動させ、
前記第2移動部は、前記第1波長可変部からの光の光束径が前記第2入射面において最も短くなる方向に前記第2波長可変部を移動させ、
ことを特徴とする請求項
11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記第1波長可変部は、前記光学系からの前記光が集光する第1集光位置に配置され、
前記第2波長可変部は、前記第1波長可変部からの前記光が集光する第2集光位置に配置される、
ことを特徴とする請求項
10乃至
12のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項14】
前記第1波長可変部の前記第1入射面が傾けられることにより短波長側へ波長特性が変化した、前記第1波長可変部を透過した光が、前記第2波長可変部を透過することにより長波長側へ波長特性が変化するように前記第2波長可変部の前記第2入射面が傾けられる、
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項15】
前記第1波長可変部の前記第1入射面が傾けられることにより前記第1波長可変部を透過した光において生じた光路長差を小さくするように前記第2波長可変部の前記第2入射面が傾けられる、
ことを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項16】
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置であって、
照射された光のスペクトルを変化させる第1波長可変部と、
前記光源からの光を前記第1波長可変部に照射する第1光学系と、
照射された光のスペクトルを変化させる第2波長可変部と、
前記第1波長可変部からの光を前記第2波長可変部に照射する第2光学系と、を有し、
前記第1光学系により照射された光が入射する前記第1波長可変部の第1入射面が前記第1光学系の第1光軸に垂直な第1平面に対して傾くように前記第1波長可変部が配置され、
前記第2光学系からの光が入射する前記第2波長可変部の第2入射面が前記第2光学系の第2光軸に垂直な第2平面に対して傾くように前記第2波長可変部が配置される、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項17】
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置であって、
照射された光のスペクトルを変化させる第1波長可変部と、
照射された光のスペクトルを変化させる第2波長可変部と、
前記光源からの光を前記第1波長可変部に照射し、前記第1波長可変部を介して前記光源からの光を前記第2波長可変部に照射する光学系と、を有し、
前記光学系により照射された光が入射する前記第1波長可変部の第1入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して傾くように前記第1波長可変部が前記光学系からの前記光が集光する第1集光位置に配置され、
前記光学系により第1波長可変部を介して照射された前記光が入射する前記第2波長可変部の第2入射面が前記平面に対して傾くように前記第2波長可変部が前記第1波長可変部からの前記光が集光する第2集光位置に配置される、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項18】
パターンの位置を計測する計測装置であって、
請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の照明装置と、
前記照明装置からの光により照明された前記パターンからの光を検出する検出部と、を有する、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項19】
パターンが形成された基板を処理する基板処理装置であって、
請求項
18に記載の計測装置を有し、
前記計測装置により計測された前記パターンの位置に基づき位置合わせされた前記基板を処理する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項20】
請求項
19に記載の基板処理装置を用いて基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、を有する
ことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項21】
パターンの位置を計測する計測装置であって、
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置と、
前記照明装置からの光により照明された前記パターンからの光を検出する検出部と、を有し、
前記照明装置は、
照射された光のスペクトルを変化させる波長可変部と、
前記光源からの光を前記波長可変部に照射する光学系と、を有し、
前記光学系により照射された光が入射する前記波長可変部の入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して傾くように前記波長可変部が配置される、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項22】
パターンが形成された基板を処理する基板処理装置であって、
パターンの位置を計測する計測装置を有し、
前記計測装置により計測された前記パターンの位置に基づき位置合わせされた前記基板を処理し、
前記計測装置は、
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置と、
前記照明装置からの光により照明された前記パターンからの光を検出する検出部と、を有し、
前記照明装置は、
照射された光のスペクトルを変化させる波長可変部と、
前記光源からの光を前記波長可変部に照射する光学系と、を有し、
前記光学系により照射された光が入射する前記波長可変部の入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して傾くように前記波長可変部が配置される、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項23】
パターンが形成された基板を処理する基板処理装置を用いて基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、を有し、
前記基板処理装置は、
パターンの位置を計測する計測装置を有し、
前記計測装置により計測された前記パターンの位置に基づき位置合わせされた前記基板を処理し、
前記計測装置は、
光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置と、
前記照明装置からの光により照明された前記パターンからの光を検出する検出部と、を有し、
前記照明装置は、
照射された光のスペクトルを変化させる波長可変部と、
前記光源からの光を前記波長可変部に照射する光学系と、を有し、
前記光学系により照射された光が入射する前記波長可変部の入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して傾くように前記波長可変部が配置される、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、計測装置、基板処理装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、MEMS、カラーフィルターまたはフラットパネルディスプレイなどの物品の製造において、基板上に形成されるパターンの微細化が進み、パターンの寸法精度の向上への要求が高まっている。
【0003】
そのため、基板に対する処理を行う基板処理装置において、パターンが形成される基板の位置の計測に高い精度が要求される。基板処理装置の例として、基板上にパターンを形成するために基板を露光する露光装置がある。露光装置においては、投影光学系を介して露光光を基板上の所定の位置に結像させて、基板を載せたステージを移動させることにより、基板上にパターンを形成する。また、パターンが形成される基板上の所定の位置と露光光との相対位置を合わせるために基板上のパターンを計測する精度や、基板上の異なる層(レイヤ)に形成されたパターン同士の相対位置を計測する精度が重要になる。
【0004】
基板上に形成されたパターン(以下、単にパターンとする。)の位置を計測する方法として、パターンを照明して、パターンで反射された光を検出する方法がある。また、パターンをより高精度に計測する方法として、パターンおよびパターンの周辺部の物理的特性や光学的特性に応じて、パターンを照明する光の波長を選択する方法がある。パターンを構成する材料の物性やパターンの形状は、基板が処理される工程に応じて変化する。そのため、基板が処理される工程に応じて選択された波長の光でパターンを照明することにより、パターンから反射された光の検出信号の強度が向上し、検出信号の誤差が低減して、パターンの位置計測の精度が改善する。
【0005】
特許文献1には、試料を撮像する撮像システムにおいて、試料に照射される光の波長を変化させながら、波長の変化に同期して試料を撮像することが記載されている。また、撮像システムに構成された光源装置は、フィルタを駆動することによりフィルタを透過して試料に照射される光の波長を変化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において、光源から照射された光がフィルタの表面で反射するとその反射光が戻り、光源を照射する可能性がある。これにより、光源の温度が上昇するなどの原因で、光源の性能や耐久性が劣化するおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、光源の性能や耐久性の劣化を抑制する照明装置、計測装置、基板処理装置、及び物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一側面としての照明装置は、光源からの光のスペクトルを変化させて照明する照明装置であって、照射された光のスペクトルを変化させる波長可変部と、前記光源からの光を前記波長可変部に照射する光学系と、を有し、前記光学系により照射された光が入射する前記波長可変部の入射面が前記光学系の光軸に垂直な平面に対して傾斜角θだけ傾くように前記波長可変部が配置され、前記光軸に沿って進んだ光線が前記入射面で反射して前記光学系の有効範囲の境界を通過する光線になるように前記入射面を傾けたときの前記平面に対する傾斜角をα、前記光学系の有効半径をr、前記光軸に沿った方向における前記光学系と前記波長可変部との距離をdとし、tan(2α)=r/d、及びα≦θ≦6αを満たす。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光源の性能や耐久性の劣化を抑制する照明装置、計測装置、基板処理装置、及び物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る計測装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態の比較例に係る照明部を示す図である。
【
図3】第1実施形態の比較例に係る照明装置に関する波長特性を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る照明部の光路と変形例に係る照明部を示す図である。
【
図6】第2実施形態の第1変形例に係る照明部を示す図である。
【
図7】第2実施形態の第2変形例に係る照明部を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る照明部に関する波長特性を示す図である。
【
図9】第2実施形態の第1変形例に係る照明部に関する波長特性を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る照明部に関する波長特性を示す図である。
【
図11】第2実施形態の第2変形例に係る照明部に関する波長特性を示す図である。
【
図12】第3実施形態に係る照明部を示す図である。
【
図13】第4実施形態に係る露光装置を示す図である。
【
図14】第4実施形態に係る露光処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。各図において、同一の部材については、同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決のために必須のものであるとは限らない。
【0013】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る照明部(照明装置)を有する計測装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る計測装置を示す図である。また、以下では、後述の照明光学系362の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面に沿う方向で互いに垂直な2方向をX軸方向およびY軸方向とする。また、X軸回りの回転方向、Y軸回りの回転方向、Z軸回りの回転方向をそれぞれωX軸方向、ωY方向、ωZ方向とする。
【0014】
図1(a)は、計測装置100の構成を示す図である。計測装置100は、例えば、基板73に設けられたパターンのX軸方向、Y軸方向の位置を計測する計測装置である。また、計測装置100は、例えば、基板73上の異なる層のそれぞれに設けられたパターンのX軸方向、Y軸方向の位置を計測して、それぞれのパターン間の距離を計測する計測装置であってもよい。また、計測装置100は、基板73を保持する基板ステージWSと、計測部50と、制御部1100とを有する。
【0015】
ここで、基板73は、計測装置100によって位置合わせ誤差や重ね合わせ誤差が計測される対象物である。基板73は、例えば、半導体素子や液晶表示素子などのデバイスを製造するのに用いられる基板であって、具体的には、ウエハ、液晶基板、その他の被処理基板などを含む。
【0016】
基板ステージWSは、基板チャック(不図示)を介して基板73を保持し、ステージ駆動部(不図示)により駆動可能に構成されている。ステージ駆動部は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、ωX軸方向、ωY方向、及びωZ方向に、基板ステージWSを駆動することで、基板ステージWSに保持された基板73を移動させることができる。また、基板ステージWS上にはミラー82が設けられている。また、このミラー82に対向する位置にはレーザ干渉計81が設けられている。レーザ干渉計81は、X軸方向におけるミラー82までの距離を計測することにより、X軸方向における基板ステージWSの位置を計測する。また、同様にY軸方向、Z軸方向における基板ステージWSの位置を計測するためのレーザ干渉計(不図示)がそれぞれ設けられている。これらのレーザ干渉計により基板ステージWSの位置はリアルタイムで計測され、計測された結果は制御部1100に出力されことにより、制御部1100の制御下において基板ステージWSは所定の位置に駆動される。また、計測装置100は、基板ステージWSに配置されたスケールと、当該スケールの位置を検出することにより基板ステージWSの位置を計測するエンコーダとを有してもよい。
【0017】
制御部1100は、計測装置100の各部を統括的に制御して、計測装置100を動作させる。また、制御部1100は、計測装置100における計測処理や計測装置100で得られた計測値の演算処理も実行する。制御部1100は、コンピュータ(情報処理装置)で構成される。制御部1100は、例えば、プログラムに従って制御のための演算などを行うCPUなどのプロセッサを有する処理部、制御プログラムや固定的なデータを保持するROM、処理部のワークエリア及び一時的なデータを保持するRAMなどの記憶部を有する。また、制御部1100は、ROM、RAMよりも大容量のデータを保存することができる磁気記憶装置(HDD)を記憶部として有してもよい。また、制御部1100は、CD、DVD、メモリカードといった外部メディアを装填してデータの読み込みや書き込みを行うドライブ装置を記憶部として有してもよい。本実施形態において、ROM、RAM、磁気記憶装置、ドライブ装置のうち少なくとも1つを記憶部として、記憶部に制御プログラム、固定的なデータ、処理部のワークエリア、及び一時的なデータを保持するものとする。
【0018】
計測部50は、基板73に設けられているパターンを照明して、パターンからの光を検出して、基板73に設けられたパターンを撮像する。
図1(b)は計測部50の構成を示す図である。計測部50は、照明部(照明装置)301からの光を用いて基板73を照明する照明系と、パターン72からの光を検出部75に結像する(パターン72の像を形成する)結像系(検出系)と、を有する。検出部75は、パターン72からの光を受光する受光部(不図示)を有し、受光部により受光された光の検出信号を取得する。また、検出部75は、受光部によってパターン72を撮像するための撮像領域を形成する撮像部として機能しうる。ここで、パターン72は、基板73における位置合わせ誤差や重ね合わせ誤差を計測するためのパターンであり、検出部75により取得された検出信号に基づきパターン72の位置が計測される。
【0019】
ここで、照明部301について説明する、
図1(c)は照明部301の構成を示す図である。照明部301は、光源361、照明光学系(光学系)362、波長可変部340、及び駆動部341を有する。
【0020】
光源361から照射された光は、照明光学系362を介して波長可変部340に導かれる。光源361には、例えば、レーザ光源やLED、ハロゲンランプ等の光源を用いることができる。
【0021】
照明光学系362は、光源361から照射された光を波長可変部340に照射する。また、照明光学系362は、例えば、光が透過するレンズを含む、軸対称な透過光学系を用いることができる。また、照明光学系362は、例えば、凹面鏡、凸面鏡などのミラーを含む反射光学系、シリンドリカルレンズを含むシリンドリカル光学系などを用いることもできる。
【0022】
波長可変部340は、光が入射する位置や角度に応じて照射された光の波長と強度に関する関係(以下、スペクトルとする。)を変化させる波長可変素子を含む。また、スペクトルには、例えば、光の波長に対する光の強度の関係を示す情報が含まれうる。また、スペクトルには、例えば、光の強度が最大、最小、又は所定の値となる光の波長の情報が含まれうる。また、スペクトルには、例えば、光の強度が所定の範囲内の値となる光の波長帯域の情報が含まれうる。また、スペクトルには、例えば、スペクトルの波形の情報が含まれうる。波長可変部340は、透過型の波長可変素子を有するものとして説明するが、反射型の波長可変素子を有してもよい。
【0023】
波長可変部340は、照明光学系362の光軸上で照明光学系362の集光位置に配置されており、駆動部341(移動部)により照明光学系362の光軸に沿った方向(光軸方向)に垂直な方向(
図1(c)の例では、X軸方向)に駆動(移動)される。ここで、本実施形態での説明では、波長可変部340は、駆動部341によりX軸方向に駆動されるものとして説明するが、駆動部341の駆動軸の方向(駆動方向)はX軸方向に限られない。なお、波長可変部340に入射する光の光束径が方向によって異なる場合には、波長特性の観点から光の光束径が最も短くなる方向に波長可変部340を駆動することが望ましい。また、例えば、照明光学系362にシリンドリカル光学系が用いられている場合には、シリンドリカル光学系のパワー方向に波長可変部340を駆動することが望ましい。
【0024】
駆動部341は、リニアモータなどの駆動手段を有し、光軸に垂直な所定の方向に波長可変部340を駆動させることができる。また、波長可変部340の位置は、例えば、エンコーダや干渉計などで計測され、制御部1100により波長可変部340は所定の位置に駆動されるように制御される。
【0025】
ここで、波長可変部340は、波長可変部340に光が入射する面(以下、波長可変部の入射面とする。)が、照明光学系362の光軸に垂直な平面に対して、所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。さらに、波長可変部340は、
図1(c)の例では、波長可変部340の入射面が、光軸に垂直なX軸回りの回転方向(ωX軸方向)に所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。つまり、波長可変部340は、駆動部341の駆動軸回りに所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。なお、波長可変部340の配置については後述する。
【0026】
照明部301は、波長可変部340の光軸に垂直な所定の方向の位置と波長可変部340を透過する光の波長の関係に基づき、駆動部341により波長可変部340を位置合わせすることにより、所望の波長の光により基板73を照明することができる。ここで、光軸に垂直な所定の方向とは、照明光学系362の光軸に垂直な方向であり、例えば、X軸方向、又はY軸方向である。ここで、位置と波長の関係については後述する。
【0027】
このように、駆動部341により波長可変部340の位置を変更することにより、波長可変部340を透過する光の波長を変化させることができる。波長可変部340として、例えば、透過波長可変フィルタを用いることができる。ここで、透過波長可変フィルタとは、例えば、光が入射する面に形成された多層積層膜を有するバンドパスフィルタであり、多層積層膜の膜厚が波長変化方向に沿って厚く形成される。これにより、光の干渉によって透過する光の波長が連続的に変化する。また、波長可変部340として、例えば、光を透過する部材に形成された回折格子により異なる波長の光に分離する透過型回折格子を用いることもできる。ここで、波長可変部340として、例えば、所定の波長の光よりも短い波長の光を透過させる短波長パスフィルタ(ローパスフィルタ、ショートパスフィルタ)を用いることができる。また、波長可変部340として、例えば、所定の波長の光よりも長い波長の光を透過させる長波長パスフィルタ(ハイパスフィルタ、ロングバスフィルタ)を用いることができる。
【0028】
ここで、
図1(b)の説明に戻る。照明部301から出射した光は、照明光学系(第1光学系)63を介して、照明開口絞り64に入射する。照明開口絞り64において光の光束径は、照明部301における光の光束径よりも小さくなる。照明開口絞り64を透過する光は、リレーレンズ67を介して、ビームスプリッタ68に入射する。ビームスプリッタ68は、例えば、偏光ビームスプリッタであり、Y軸方向に平行なP偏光の光を透過し、X軸方向に平行なS偏光の光を反射する。ビームスプリッタ68を透過する光は、開口絞り69を介して、λ/4板70を透過して円偏光に変換され、対物光学系71を介して、基板73に設けられたパターン72をケーラー照明する。
【0029】
ここで、照明光学系63は、照明部301からの光に対して透過率が互いに異なる複数のNDフィルタを切替可能な光量調整部(不図示)を有してもよい。制御部1100は、光量調整部を制御することで、基板73を照明する光の強度を高精度に調整することができる。また、照明光学系には、照明光を引き回すためのファイバやオプティカルロッドを設けてもよいし、照明光を均一化するためのマイクロレンズアレイを設けてもよい。
【0030】
パターン72からの光は、対物光学系71を介して、λ/4板70を透過して円偏光からS偏光に変換され、開口絞り69に入射する。ここで、パターン72からの光には、パターン72で反射、回折、又は散乱される光が含まれる。また、パターン72からの光の偏光状態は、パターン72を照明する円偏光の光とは逆回りの円偏光となる。したがって、パターン72を照明する光の偏光状態が右回りの円偏光であれば、パターン72からの光の偏光状態は左回りの円偏光となる。開口絞り69を透過した光は、ビームスプリッタ68で反射され、結像光学系74を介して、検出部75に入射する。
【0031】
このように、計測部50では、ビームスプリッタ68によって、基板73を照明する光の光路と基板73からの光の光路とが分離され、パターン72の像が検出部75に形成される。そして、制御部1100は、レーザ干渉計81で得られる基板ステージWSの位置情報と、パターン72の像を検出して得られる検出信号の波形とに基づいて、パターン72を構成するパターン要素の位置やパターン72の位置を取得する。
【0032】
ここで、計測部50においては、ビームスプリッタ68と検出部75との間に複数のレンズを配置することによって、検出開口絞りを構成してもよい。また、照明開口絞り64及び検出開口絞りのそれぞれに、照明系及び検出系のそれぞれに対して異なる開口数を設定可能な複数の開口絞りを設け、かかる複数の開口絞りを切替可能としてもよい。これにより、照明系の開口数と検出系の開口数との比を表す係数であるσ値を調整することができるようになる。
【0033】
図1(d)は、波長可変部340を透過した光の波長と強度の関係を示す図である。波長可変部340を、X軸方向における複数の離散的な位置に配置した場合に、波長可変部340を透過した光の波長と強度の関係が示されている。波長可変部340の位置に応じて光が入射する位置が変化して、波長可変部340を透過する光の波長が変化する。ここで、計測部50において波長可変部340に入射する光の絶対的な位置は変わらないため、駆動部341により波長可変部340を駆動させることにより、波長可変部340に対して入射する光の相対的な位置が変化する。このため、
図1(c)に示す照明部301において、駆動部341により波長可変部340はX軸方向に駆動され、入射する光に対して波長可変部340の位置が変化することにより、基板73を照明する光の波長を調整することができる。
【0034】
ここで、
図2及び
図3を用いて、比較例に係る照明部901について説明する。
図2は、比較例に係る照明部901を示す図である。照明部901は、光源961、照明光学系962、波長可変部940、及び駆動部941を有する。光源961、照明光学系962、波長可変部940、及び駆動部941は、
図1(c)における光源361、照明光学系362、波長可変部340、及び駆動部341にそれぞれ対応するものであるため、詳細な説明は省略する。また、
図1(c)の波長可変部340と異なる点として、波長可変部940の入射面が、照明光学系962の光軸に垂直な平面に対して平行になるように波長可変部940が配置されている。
【0035】
図3は、本実施形態の比較例に係る照明部に関する波長特性を示す図である。波長可変部940は光が入射するX軸方向の位置に応じて透過する光の波長が連続的に変化する。このため、照明光学系962によって波長可変部940に入射する光の光束径に応じて、透過する光の波長特性が変化する。
図3(a)は、波長可変部940に入射する光910を含む領域が領域910a~910eに分割されていることを示している。また、
図3(b)、(c)は、波長可変部940を透過する光の波長特性を示している。
図3(b)において、領域910a~910eに入射した光のそれぞれが波長可変部940を透過した場合の光の波長特性が980a~980eで示されている。波長可変部940の入射するX軸方向の位置に応じて中心波長が変化するため、領域910a~910eを透過する光の波長特性は980a~980eのように変化する。波長可変部940を透過する光全体の波長特性は、波長特性980a~980eの足し合わせになるため、
図3(c)に示された波長特性980のようになる。つまり、波長可変部940に入射する光910の光束径が、波長可変部940において波長特性が変化する方向(X軸方向)に大きくなるほど、波長可変部940を透過した光の波長の範囲が広くなる。このことは、所望の中心波長以外の波長の光が波長可変部940を透過した光により多く含まれることになり望ましくない。そのため、波長可変部940に入射する光の光束径がより小さくなる位置に、波長可変部940が配置されることが望ましい。つまり、波長可変部940に入射する光910が集光する位置の近傍に波長可変部940が配置されることが望ましく、さらに、波長可変部940に入射する光910が集光する位置に波長可変部940が配置されることがより望ましい。ここで、以下の説明では、波長可変部が入射する光の集光する位置に配置されるものとする場合、波長可変部が入射する光の集光する位置に配置される場合と、波長可変部が入射する光の集光する位置の近傍に配置される場合を含むものとする。
【0036】
しかし、波長可変部940を光910が集光する位置に配置すると、波長可変部940で反射した光が照明光学系962によって光源961で集光されうる。このことは、例えば、光源961の温度が上昇するなどして、光源961の性能や耐久性を劣化の原因になりうる。特に光源961が点光源を含む場合には顕著な影響が生じうる。
【0037】
ここで、
図2(b)を用いて、波長可変部940で反射した反射光の光路について説明する。光源961から照射された入射光921aは照明光学系962を介して波長可変部940へ入射する。波長可変部940は照明光学系962の光軸に垂直な平面に対して平行になるように配置されているため、波長可変部940からの反射光921bは照明光学系962の光軸に対称な光路を進み、光源961に入射する。
図2(b)の例では、入射光921a、反射光921bについて図示しているが、他の光路を進む入射光に対する反射光も光源961に入射するため、波長可変部940で反射した光は照明光学系962を介して光源961で集光する。そのため、光源961の性能や耐久性が劣化しうる。
【0038】
そこで、本実施形態に係る照明部301において、波長可変部340は、照明光学系362の光軸方向に垂直な軸(
図1(c)の例では、X軸)回りの回転方向に所定の傾斜角だけ傾くように配置される。つまり、波長可変部340の入射面が、照明光学系362の光軸に垂直な平面に対して平行にならないように、波長可変部340が配置されている。これにより、波長可変部340からの反射光が光源361に入射することを低減でき、光源361の性能や耐久性が劣化することを抑制できる。
【0039】
図4は、本実施形態に係る照明部の光路と変形例に係る照明部を示す図である。
図4(a)を用いて、本実施形態に係る波長可変部340で反射した反射光の光路について説明する。光源361から照射された入射光321aは照明光学系362を介して波長可変部340へ入射する。波長可変部340の入射面は、照明光学系362の光軸に垂直な平面に対して、所定の傾斜角だけ傾けて配置されているため、波長可変部340からの反射光が照明光学系362を介して光源361に入射することを低減することができる。
図4(a)の例は、反射光321bは照明光学系362の有効範囲の外に進み、光源361に戻らないことを示している。
【0040】
ここで、波長可変部340の入射面を照明光学系362の光軸に垂直な平面に対して傾ける傾斜角をθと定義する。また、傾斜角θは照明光学系362の光軸と、波長可変部340の入射面の垂線とがなす角度とすることができる。傾斜角θを大きくすれば、反射光が光源361に入射することを低減できる効果が得られるが、波長可変部340の波長特性に影響をおよぼすことがある。そのため、傾斜角θは、照明光学系362の有効半径rと、照明光学系362の光軸に沿った方向における照明光学系362と波長可変部340との距離dと、に応じて決めるとよい。光源361から照射され照明光学系362の光軸に沿って進んだ光線が波長可変部340の入射面で反射して照明光学系362の有効範囲の境界を通過する光線(マージナル光線)になるように波長可変部340の入射面を傾けたときの傾斜角をαとすると、傾斜角αは、以下の式(1)で表される。
tan(2α)=r/d ・・・(1)
【0041】
例えば、θ>6αとすると光源361に入射する光の低減の効果は十分に得られるが、波長可変部340の波長特性への影響が生じる可能性がある。また、θ<αとすると波長可変部340の波長特性への影響の低減の効果は十分に得られるが、光源361に入射する光の低減が抑制される可能性がある。そこで、光源361に入射する光の低減と波長可変部340の波長特性への影響の低減とを両立するために、α≦θ≦6αとすることが望ましく、さらに、2α≦θ≦4αとすることがより望ましい。
【0042】
また、波長可変部340の波長特性におよぼす影響は、波長可変部340の入射面を傾ける方向によって異なる場合がある。
図4(b)は、波長可変部340に入射する光310の光束を示す図である。
図1(c)に示すように、波長可変部340の入射面を、波長可変部340の駆動軸(X軸)回り(ωX軸方向)に傾けた場合、波長可変部340に入射する光310の光束径は、Y軸方向に長くなるが、X軸方向には変わらない。また、波長可変部340を透過する光の波長は、波長可変部340の駆動方向であるX軸方向に変化する。よって、波長可変部340の入射面を波長可変部340の駆動軸回りに傾けた場合、波長可変部340の波長特性への影響は抑制される。
【0043】
ここで、変形例として、波長可変部の入射面を波長可変部の駆動軸に垂直な軸回り(ωY軸方向)に傾けた場合の実施形態について説明する。
図4(c)は、変形例に係る照明部801を示す図である。照明部801は、光源861、照明光学系862、波長可変部840、及び駆動部841を有する。波長可変部840の入射面は、照明光学系862の光軸に垂直であり、波長可変部840の駆動軸に垂直な軸(Y軸)回りの回転方向(ωY軸方向)に所定の傾斜角だけ傾けて配置されている。その他の構成は、
図1(c)の照明部301と同様である。
【0044】
図4(d)は、波長可変部840に入射する光810の光束を示す図である。
図3(c)に示すように、波長可変部840の入射面を、波長可変部840の駆動軸に垂直な軸(Y軸)回り(ωY軸方向)に傾けた場合、波長可変部840に入射する光810の光束径は、Y軸方向には変わらないが、X軸方向には長くなる。また、波長可変部840を透過する光の波長は、波長可変部840の駆動方向であるX軸方向に変化する。よって、波長可変部840の入射面を波長可変部840の駆動軸に垂直な軸回りに傾けた場合、波長可変部840の波長特性は、
図4(b)の場合と比較してより大きく変わる。つまり、波長可変部の波長特性におよぼす影響の観点から、波長可変部の入射面は、波長可変部の駆動軸回りに傾けることが望ましい。
【0045】
また、波長可変部は、透過させる光の波長の範囲を広くするため、駆動方向に長い形状を有する。照明部801のように、波長可変部840の入射面をY軸回りに傾けた場合、Z軸方向により多くのスペースが必要になり、傾ける傾斜角の大きさによっては照明光学系862と干渉する可能性がある。つまり、省スペースの観点からも、波長可変部の入射面は、波長可変部の駆動軸回りに傾けることが望ましい。
【0046】
なお、本実施形態において、波長可変部340は入射する光の集光する位置に配置されるものとして説明したが、波長可変部340は入射する光の集光する位置から離間した位置に配置してもよい。また、波長可変部340に入射する光は、波長可変部340の入射面に対して平行に入射する平行光としてもよい。
【0047】
また、本実施形態において、波長可変部340の波長可変素子は直線方向に変化する波長特性を有していたが、これに限られない。例えば、波長可変部340は円周方向に波長特性が変化する円盤状の波長可変素子を回転させる方法を用いてもよい。その場合、円周方向を駆動方向とみなすことができる。また、波長可変部340は光が入射する位置に応じて線形に変化する波長特性を有していてもよいし、非線形に変化する波長特性を有していてもよい。さらに、波長可変部340は、複数の波長可変部(波長可変素子)から構成されてもよい。
【0048】
以上、本実施形態に係る照明装置によれば、波長可変部が照明光学系の光軸に垂直な平面に対して傾いて配置されるので、波長可変部で反射された反射光が光源に入射することを抑制するので、光源の性能や耐久性の劣化を抑制することができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本実施形態に係る照明装置について説明する。ここで言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。
図5は、本実施形態に係る照明部401を示す図である。照明部401は、第1実施形態に係る照明部301に相当しており、照明部301とは波長可変部440a及び440bの2つの波長可変部が構成されている点で異なっている。
【0050】
図5(a)は、本実施形態に係る照明部401の構成を示している。光源461から照射された光は、照明光学系462a(光学系)を介して波長可変部440aに導かれる。波長可変部440aを透過した光は、照明光学系462b(第2光学系)を介して波長可変部440b(第2波長可変部)へ導かれる。また、波長可変部440a及び440bはそれぞれ、駆動部441a及び441bによって、照明光学系462a及び462bの光軸方向に垂直な方向(
図5(a)の例では、X軸方向)に駆動(移動)される。ここで、駆動部441a及び441bの駆動方向は同じ方向(X軸方向)になっているが、これに限られない。例えば、駆動部441aの駆動方向をX軸方向、駆動部441bの駆動方向をY軸方向としてもよい。つまり、駆動部441a及び441bの駆動方向を、照明光学系462a及び462bの光軸方向に垂直な方向でそれぞれ異なる方向としてもよい。
【0051】
波長可変部440aとして長波長パスフィルタを用い、波長可変部440bとして短波長パスフィルタを用いることで、照明部401においては、任意の中心波長、任意の波長幅を持つ光を照明することが可能となる。また、波長可変部440aとして、所定の波長の光よりも長い波長の光を透過させる長波長パスフィルタを用いることにより、照明光学系462b及び波長可変部440bに入射する短波長光を低減することができる。特に、波長可変部440aとして、10~380nmの範囲にある波長の光よりも長い波長の光を透過させる長波長パスフィルタを用いることにより、紫外光を低減することができる。これにより、照明光学系462b及び波長可変部440bの性能や耐久性の劣化を抑制することができる。
【0052】
波長可変部440a及び440bは、それぞれ照明光学系462a及び462bの集光位置に配置されている。また、波長可変部440a及び440bは、それぞれ波長可変部440a及び440bの入射面が、照明光学系462a及び462bの光軸に垂直な平面に対して、同じ方向に傾くように配置されている。また、
図5の例では、波長可変部440a及び440bのそれぞれは、波長可変部440a及び440bの入射面が光軸に垂直なX軸回りの回転方向(ωX軸方向)に所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。つまり、波長可変部540a及び540bのそれぞれは、駆動部441a及び駆動部441bの駆動軸回りに所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。
【0053】
ここで、波長可変部440aの入射面を照明光学系462aの光軸に垂直な平面に対して傾ける傾斜角をθ1と定義する。また、波長可変部440bの入射面(第2入射面)を照明光学系462bの光軸(第2光軸)に垂直な平面(第2平面)に対して傾ける傾斜角をθ2と定義する。また、傾斜角θ1は照明光学系462aの光軸と、波長可変部440aの入射面の垂線とがなす角度とすることができる。また、傾斜角θ2は照明光学系462bの光軸と、波長可変部440bの入射面の垂線とがなす角度とすることができる。
【0054】
傾斜角θ1及びθ2を大きくすれば、反射光が光源461に入射することを低減できる効果が得られるが、波長可変部440a及び440bの波長特性に影響をおよぼすことがある。そのため、傾斜角θ1は、照明光学系462aの有効半径r1と、照明光学系462aの光軸に沿った方向における照明光学系462aと波長可変部440aと距離d1と、に応じて決めるとよい。また、傾斜角θ2は、照明光学系462bの有効半径r2と、照明光学系462bの光軸(第2光軸)に沿った方向における照明光学系462bと波長可変部440bとの距離d2(第2距離)に応じて決めるとよい。
【0055】
光源461から照射され照明光学系462aの光軸に沿って進んだ光線が波長可変部440aの入射面で反射して照明光学系462aの有効範囲の境界を通過する光線になるように波長可変部440aの入射面を傾けたときの傾斜角をα1とすると、傾斜角α1は、以下の式(2)で表される。
tan(2α1)=r1/d1 ・・・(2)
【0056】
例えば、θ1>6α1とすると光源461に入射する光の低減の効果は十分に得られるが、波長可変部440aの波長特性への影響が生じる可能性がある。また、θ1<α1とすると波長可変部440aの波長特性への影響の低減の効果は十分に得られるが、光源461に入射する光の低減が抑制される可能性がある。そこで、光源461に入射する光の低減と波長可変部440aの波長特性への影響の低減とを両立するために、α1≦θ1≦6α1とすることが望ましく、さらに、2α1≦θ1≦4α1とすることがより望ましい。
【0057】
同様に、光源461から波長可変部440aを介して照射され照明光学系462bの光軸に沿って進んだ光線が波長可変部440bの入射面で反射して照明光学系462bの有効範囲の境界を通過する光線になるように波長可変部440bの入射面を傾けたときの傾斜角をα2とすると、傾斜角α2は、以下の式(3)で表される。
tan(2α2)=r2/d2 ・・・(3)
【0058】
例えば、θ2>6α2とすると光源461及び波長可変部440aに入射する光の低減の効果は十分に得られるが、波長可変部440bの波長特性への影響が生じる可能性がある。また、θ2<α2とすると波長可変部440bの波長特性への影響の低減の効果は十分に得られるが、光源461及び波長可変部440aに入射する光の低減が抑制される可能性がある。そこで、光源461及び波長可変部440aに入射する光の低減と波長可変部440bの波長特性への影響の低減とを両立するために、α2≦θ2≦6α2とすることが望ましく、さらに、2α2≦θ2≦4α2とすることがより望ましい。
【0059】
また、波長可変部440a及び440bは、それぞれの波長特性がX軸方向において同じになるように配置される。つまり、
図5(a)において、波長可変部440a及び440bの波長特性が、+X軸方向が長波長側、-X軸方向が短波長になるように、波長可変部440a及び波長可変部440bが配置されている。
【0060】
図5(b)に示すように、光源461から照射される光のうち、異なる角度で照射され、照明光学系462aによって波長可変部440aに導かれる光をそれぞれ、光421a、422a、及び423aとし、光421a、422a、及び423aが波長可変部440aを透過し、照明光学系462bを介して波長可変部440bに導かれた光をそれぞれ、光421b、422b、及び423bとする。また、
図5(c)に示すように、波長可変部440aに導かれた光410aのうち、波長可変部440aの短波長側の位置に導かれる光を光411a、長波長側の位置に導光される光を光413a、その中間の波長特性を有する位置に導かれる光を光412aとする。また、波長可変部440bに導かれた光410bのうち、波長可変部440bの長波長側の位置に導かれる光を光411b、短波長側の位置に導光される光を光413b、その中間の波長特性を有する位置に導かれる光を光412bとする。
【0061】
ここで、本実施形態の変形例について説明する。
図6は、本実施形態の第1変形例に係る照明部701を示す図である。
図6に示されるように、波長可変部740a及び740bは、ωX軸方向において逆の方向に傾けて配置されている。また、
図5に示される照明部401と比較して、波長可変部740aは波長可変部440aとωX軸方向において同じ方向に傾けて配置されている。また、照明部401と比較して、波長可変部740bは波長可変部440bとωX軸方向において逆の方向に傾けて配置されている。
【0062】
また、
図7は、本実施形態の第2変形例に係る照明部601を説明するための図である。
図7に示されるように、波長可変部740a及び波長可変部740bは、波長可変部740a及び波長可変部740bの波長特性がX軸方向において逆になるように配置されている。つまり、波長可変部740aは、波長特性が+X軸方向が長波長側、-X軸方向が短波長になるように配置されている。一方、波長可変部740bは、波長特性が+X軸方向が短波長側、-X軸方向が長波長になるように配置されている。また、
図5に示される照明部401と比較して、波長可変部640aは波長可変部440aと波長特性がX軸方向において同じになるように配置されている。また、照明部401と比較して、波長可変部640bは波長可変部440bと波長特性がX軸方向において逆になるように配置されている。
【0063】
次に、
図8及び
図9を用いて、照明部401を用いた場合と照明部701を用いた場合の違いについて説明する。
図8は、照明部401に関する波長特性を示す図である。
図8(a)は波長可変部440aを透過した光の波長特性、
図8(b)は波長可変部440bを透過した光の波長特性を示している。また、
図8(c)は、波長可変部440a及び440bを透過した光の波長特性を示している。
図8(a)において、波長特性481a、482a、及び483aはそれぞれ、
図5(b)における光421a、422a、及び423aが波長可変部440aを透過したときの波長特性である。また、
図8(b)において、波長特性481b、482b、及び483bはそれぞれ、
図5(b)における光421b、422b、及び423bが波長可変部440bを透過したときの波長特性である。
【0064】
一般に、波長可変素子へ入射する光の角度が大きくなるほど、波長特性のグラフは短波長側に移動する。
図5(b)において光423aは、光421aより大きい角度で波長可変部440aに入射するため、
図8(a)において波長特性483aのグラフは波長特性481aのグラフよりも短波長側に移動することとなる。また、同様の理由で、
図8(b)において波長特性481bのグラフは波長特性483bのグラフよりも短波長側に移動する。
図8(c)において、波長特性481、482、及び483はそれぞれ、波長特性481a及び481bの積、波長特性482a及び482bの積、並びに波長特性483a及び483bの積である。また、照明部401により照明される光の波長特性は、波長特性481、482、及び483の和になるため、
図8(d)に示される波長特性480のようになる。
【0065】
また、
図9は、照明部701に関する波長特性を示す図である。
図9(a)は波長可変部740aを透過した光の波長特性、
図9(b)は波長可変部740bを透過した光の波長特性を示している。また、
図9(c)は、波長可変部740a及び740bを透過した光の波長特性を示している。
図9(a)において、波長特性781a、782a、及び783aはそれぞれ、
図6(b)における光721a、722a、及び723aが波長可変部740aを透過したときの波長特性である。また、
図9(b)において、波長特性781b、782b、及び783bはそれぞれ、
図6(b)における光721b、722b、及び723bが波長可変部740bを透過したときの波長特性である。
【0066】
波長可変部740bは、波長可変部440bとは逆の方向に傾けて配置されるため、照明部701では、
図9(b)において波長特性783bのグラフが短波長側へ異動している。そのため、
図9(c)における波長特性781、782、及び783は、
図8(c)における波長特性481、482、及び483と異なる波長特性となる。波長特性781、782、及び783は波長幅が一定で中心波長が変化しているのに対し、波長特性481、482、及び483は中心波長が一定で波長幅が変化している。そのため、波長特性781、782、及び783は、波長特性481、482、及び483と比較して、中心付近の光量が少なくなる。その結果、照明部701により照明される光の波長特性は、
図9(d)に示される波長特性780のようになる。このことから、
図8(d)に示される波長特性480の方が
図9(d)で示される波長特性780よりも急峻な波長特性になることがわかる。よって、照明部401により照明される光は、照明部701より照明される光よりも、光の波長特性の点で有利である。
【0067】
また、波長可変部440a及び440bが傾いて配置されることにより、波長可変部440a及び440bを透過する光の光路長は、波長可変部440a及び440bの厚さと傾斜角に応じて変化する。照明部401において、波長可変部440a及び440bは、波長可変部440a及び440bが傾いて配置されることによって生じる光421bと光423bとの間の光路長差が小さくなる方向に傾いて配置されている。一方、照明部701において、波長可変部740a及び740bは、波長可変部740a及び740bが傾いて配置されることによって生じる光721bと光723bとの間の光路長差が大きくなる方向に傾いて配置されている。このことから、照明部401は、光721bと光723bとの間の光路長差と比較して、光421bと光423bとの間の光路長差を小さくすることができることがわかる。よって、照明部401により照明される光は、照明部701より照明される光よりも、光の品質の点で有利である。ただし、光421bと光423bとの間の光路長差が同じになるように波長可変部440a及び440bが配置されていることが望ましいが、これに限られない。波長可変部440a及び440bが異なる傾斜角で傾けて配置されてもよいし、波長可変部440a及び440bがωX軸方向に異なる方向に傾けて配置されてもよい。
【0068】
次に、
図10及び
図11を用いて、照明部401を用いた場合と照明部601を用いた場合の違いについて説明する。
図10は、照明部401に関する波長特性を示す図である。
図10(a)は波長可変部440aを透過した光の波長特性、
図10(b)は波長可変部440bを透過した光の波長特性を示している。また、
図10(c)は、波長可変部440a及び440bを透過した光の波長特性を示している。
図10(a)において、波長特性491a、492a、及び493aはそれぞれ、
図5(c)における光411a、412a、及び413aが波長可変部440aを透過したときの波長特性である。また、
図10(b)において、波長特性491b、492b、及び493bはそれぞれ、
図5(c)における光411b、412b、及び413bが波長可変部440bを透過したときの波長特性である。
図10(c)において、波長特性491、492、及び493はそれぞれ、波長特性491a及び491bの積、波長特性492a及び492bの積、並びに波長特性493a及び493bの積である。また、照明部401により照明される光の波長特性は、波長特性491、492、及び493の和になるため、
図10(d)に示される波長特性490のようになる。
【0069】
また、
図11は、照明部610に関する波長特性を示す図である。
図11(a)は波長可変部640aを透過した光の波長特性、
図11(b)は波長可変部640bを透過した光の波長特性を示している。また、
図11(c)は、波長可変部640a及び640bを透過した光の波長特性を示している。
図11(a)において、波長特性681a、682a及び683aはそれぞれ、
図7(b)における光621a、622a、及び623aが波長可変部640aを透過したときの波長特性である。また、
図11(b)において、波長特性681b、682b、及び683bはそれぞれ、
図7(b)における光621b、622b、及び623bが波長可変部640bを透過したときの波長特性である。
【0070】
波長可変部640bは、波長可変部440bと比較して、波長特性がX軸方向において逆になるように配置されるため、
図11(b)において、波長特性693bが長波長側の特性を有し、波長特性691bが短波長側の特性を有する。そのため、
図11(c)における波長特性691、692、及び693は、
図10(c)における波長特性491、492、及び493と異なる波長特性となる。波長特性691、692、及び693は波長幅が一定で中心波長が変化しているのに対し、波長特性491、492、及び493は中心波長が一定で波長幅が変化している。そのため、波長特性691、692、及び693は、波長特性491、492、及び493と比較して、中心付近の光量が少なくなる。その結果、照明部601により照明される光の波長特性は、
図11(d)に示される波長特性690のようになる。このことから、
図10(d)に示される波長特性490の方が
図11(d)で示される波長特性690よりも急峻な波長特性になることがわかる。よって、照明部401により照明される光は、照明部601により照明される光よりも、波長特性の点で有利である。
【0071】
また、
図5(c)において、光411bが波長可変部440bの長波長側の位置に、光413bが短波長側の位置に導かれるよう、波長可変部440bが配置されている形態について説明したが、これに限られない。例えば、光411bが波長可変部440bの短波長側の位置に、光413bが長波長側の位置に導かれるよう波長可変部440bが配置されていてもよい。また、照明光学系462bがオプティカルロッド、又はファイバを含み、光411b、412b、及び413bが混ぜ合わされた状態で波長可変部440bに導かれるようにしてもよい。
【0072】
また、波長可変部440aとして長波長パスフィルタを用い、波長可変部440bとして短波長パスフィルタを用いる形態について説明したが、これに限られない。波長可変部440aとして短波長パスフィルタを用い、波長可変部440bとして長波長パスフィルタを用いてもよい。また、波長可変部440a及び440bうちの少なくとも1つにバンドパスフィルタを用いてもよい。また、波長可変部440a及び440bのそれぞれは、複数の波長可変部(波長可変素子)から構成されてもよい。
【0073】
以上、本実施形態に係る照明装置によれば、波長可変部が照明光学系の光軸に垂直な平面に対して傾いて配置されるので、波長可変部で反射された反射光が光源に入射することを抑制するので、光源の性能や耐久性の劣化を抑制することができる。また、複数の波長可変部を構成することにより、光源だけでなく照明光学系や波長可変部の性能や耐久の劣化を抑制することができる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本実施形態に係る照明装置について説明する。ここで言及しない事項は、第1実施形態、及び第2実施形態に従いうる。本実施形態に係る照明部501は、第1実施形態に係る照明部301、第2実施形態に係る照明部401に相当している。照明部501は、波長可変部540a及び540bの2つの波長可変部が構成されている点で照明部301とは異なっている。また、照明部501は、光源561と波長可変部540aとの間に配置されている照明光学系562が、照明する光を異なる2つの位置で集光させる特性を有する点で照明部401とは異なっている。また、波長可変部540aと波長可変部540bの間に照明光学系が配置されていない点で照明部401とは異なっている。
【0075】
図12は、本実施形態に係る照明部501を示す図である。照明部501は、光源561、照明光学系562、波長可変部540a及び540b、並びに駆動部541a及び541bを有する。
【0076】
光源561から照射された光は、照明光学系562(光学系)を介して波長可変部540a(第1波長可変部)に導かれる。また、波長可変部540aから照射された光は、波長可変部540b(第2波長可変部)に導かれる。照明光学系562は、例えば、シリンドリカルレンズを含むシリンドリカル光学系で構成され、照射する光を異なる2つの位置で集光させる特性を有している。
図12に示されるように、照明光学系562により照射された光は、第1集光位置においてXZ平面上の光が集光し、第2集光位置においてYZ平面上の光が集光する。つまり、照明光学系562により照射された光は、第1集光位置においてY軸方向に沿って光が集光し、第2集光位置においてX軸方向に沿って光が集光する。
【0077】
波長可変部540aは第1集光位置に配置され、波長可変部540bは第2集光位置にそれぞれ配置されている。
【0078】
駆動部541a(第1移動部)及び駆動部541b(第2移動部)のそれぞれは、波長可変部540a及び波長可変部540bを、照明光学系562の光軸方向に垂直であって、互いに異なる2つの方向に駆動する。駆動部541aは波長可変部540aをX軸方向(第1軸の方向)に駆動し、駆動部541bは波長可変部540bをY軸方向(第2軸の方向)に駆動する。つまり、第1集光位置及び第2集光位置のそれぞれで光が集光する方向に波長可変部540a及び波長可変部540bのそれぞれが駆動される。つまり、駆動部541aは、照明光学系562からの光の光束径が波長可変部540aの入射面において最も短くなる方向に波長可変部540aを駆動させる。また、駆動部541bは、波長可変部540aからの光の光束径が波長可変部540bの入射面において最も短くなる方向に波長可変部540bを駆動させる。これにより、波長可変部540a及び波長可変部540bを照射する光束の幅を、波長可変部540a及び波長可変部540bの波長が変化する方向に縮小することができ、波長特性の観点から有利となる。
【0079】
波長可変部540a及び540bは、それぞれ波長可変部540a及び540bの入射面が、照明光学系562の光軸に垂直な平面に対して傾くように配置されている。また、
図12の例では、波長可変部540aは、波長可変部540aの入射面(第1入射面)が光軸に垂直なX軸回りの回転方向(ωX軸方向)に所定の傾斜角だけ傾くように配置され、波長可変部540bは、波長可変部540bの入射面(第2入射面)が光軸に垂直なY軸回りの回転方向(ωY軸方向)に所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。つまり、波長可変部540a及び540bのそれぞれは、駆動部541a及び駆動部541bの駆動軸回りに所定の傾斜角だけ傾くように配置されている。
【0080】
ここで、波長可変部540a及び540bの入射面を傾ける傾斜角をそれぞれθ3及びθ4と定義する。また、傾斜角θ3及びθ4のそれぞれは照明光学系562の光軸と、波長可変部540a及び540bの入射面の垂線とがなす角度とすることができる。傾斜角θ3及びθ4を大きくすれば、反射光が光源561に入射することを低減できる効果が得られるが、波長可変部540a及び540bの波長特性に影響をおよぼすことがある。そのため、傾斜角θ3は、照明光学系562の有効半径r3と、照明光学系562の光軸に沿った方向における照明光学系562と波長可変部540aと距離d3と、に応じて決めるとよい。また、傾斜角θ4は、照明光学系562の有効半径r3と、照明光学系562の光軸に沿った方向における照明光学系562と波長可変部540bとの距離d4と、に応じて決めるとよい。
【0081】
光源561から照射され照明光学系562の光軸に沿って進んだ光線が波長可変部540aの入射面で反射して照明光学系562の有効範囲の境界を通過する光線になるように波長可変部540aの入射面を傾けたときの傾斜角をα3とすると、傾斜角α3は、以下の式(4)で表される。
tan(2α3)=r3/d3 ・・・(4)
【0082】
例えば、θ3>6α3とすると光源561に入射する光の低減の効果は十分に得られるが、波長可変部540aの波長特性への影響が生じる可能性がある。また、θ3<α3とすると波長可変部540aの波長特性への影響の低減の効果は十分に得られるが、光源561に入射する光の低減が抑制される可能性がある。そこで、光源561に入射する光の低減と波長可変部540aの波長特性への影響の低減とを両立するために、α3≦θ3≦6α3とすることが望ましく、さらに、2α3≦θ3≦4α3とすることがより望ましい。
【0083】
同様に、光源561から波長可変部540aを介して照射され照明光学系562の光軸に沿って進んだ光線が波長可変部540bの入射面で反射して照明光学系562の有効範囲の境界を通過する光線になるように波長可変部540bの入射面を傾けたときの傾斜角をα4とすると、傾斜角α4は、以下の式(5)で表される。
tan(2α4)=r3/d4 ・・・(5)
【0084】
例えば、θ4>6α4とすると光源561及び波長可変部540aに入射する光の低減の効果は十分に得られるが、波長可変部540bの波長特性への影響が生じる可能性がある。また、θ4<α4とすると波長可変部540bの波長特性への影響の低減の効果は十分に得られるが、光源561及び波長可変部540aに入射する光の低減が抑制される可能性がある。そこで、光源561及び波長可変部540aに入射する光の低減と波長可変部540bの波長特性への影響の低減とを両立するために、α4≦θ4≦6α4とすることが望ましく、さらに、2α4≦θ4≦3α4とすることがより望ましい。
【0085】
また、本実施形態では、照明光学系562は、シリンドリカルレンズを含むシリンドリカル光学系で構成されるものと説明したが、これに限られない。照明光学系562は、照射する光を異なる2つの位置で集光させる特性を有する光学系であれば、他の光学系で構成されてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、波長可変部540aは照明光学系562のXZ平面上の光が集光する第1集光位置に、波長可変部540bは照明光学系562のYZ平面上の光が集光する第2集光位置にそれぞれ配置したが、これに限定されない。波長可変部540a及び540bのそれぞれを、第1集光位置及び第2集光位置から離れた位置に配置してもよい。
【0087】
以上、本実施形態に係る照明装置によれば、波長可変部が照明光学系の光軸に垂直な平面に対して傾いて配置されるので、波長可変部で反射された反射光が光源に入射することを抑制するので、光源の性能や耐久性の劣化を抑制することができる。また、複数の波長可変部を構成することにより、光源だけでなく照明光学系や波長可変部の性能や耐久の劣化を抑制することができる。また、複数の波長可変部の間に照明光学系を配置する必要がないので、省スペースの観点から有利である。
【0088】
<第4実施形態>
本実施形態では、基板処理装置としての露光装置が計測装置(計測部)を有する形態について説明する。ここで言及しない事項は、第1乃至3実施形態に従いうる。
図13を参照して、本実施形態に係る露光装置を説明する。露光装置EXAは、半導体素子や液晶表示素子などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に用いられ、基板73にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置EXAは、レチクル(原版、マスク)31を介して基板73(ウエハ)を露光して、レチクル31のパターンを基板73に転写する露光処理(基板に対する処理)を行う。
【0089】
ここで、レチクル31は、回路パターンなどの所定のパターンが形成されたレチクル、原版、またはマスクであり、例えば、石英から構成される。レチクル31は、後述の照明光学系91により照明された光を透過する。また、基板73は、レチクル31のパターンが転写される被処理体であって、例えば、シリコンウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板、その他の被処理基板である。また、基板73は、フォトレジストが塗布された状態で露光されることにより、パターンが転写される。
【0090】
また、ここでは、露光装置EXAとしてレチクル31と基板73とを走査方向に互いに同期して移動させつつレチクル31に形成されたパターンを基板73に露光する走査型露光装置(スキャナ)を使用する場合を例にして説明する。なお、本実施形態はレチクル31を固定しレチクルパターンを基板73に露光するタイプの露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0091】
露光装置EXAは、光源部90、照明光学系91、レチクルステージRS、投影光学系32、基板ステージWS、計測部50、及び制御部1100を有する。
【0092】
光源部90は、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ、及びArFエキシマレーザのうち少なくとも1つの光源を含む。また、波長が数nm~百nmの極端紫外光(Extreme Ultra Violet:EUV光)の光源を含んでもよい。
【0093】
照明光学系91は、光源部90から射出される光を露光に最適な所定の形状を有するスリット光に成形し、レチクルステージRSに保持されたレチクル31に照射して、レチクル31上の所定の照明領域を照明する。照明光学系91は、レチクル31上の所定の照明領域を均一な照度分布の光で照明する。照明光学系91は、例えば、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレータ、絞りなどを含み、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順に配置することで構成される。
【0094】
レチクルステージRSは、レチクル31を保持して移動する。レチクルステージRSは、例えば、投影光学系32の光軸に垂直な平面内、すなわちXY平面内で移動可能及びθZ方向に回転可能である。レチクルステージRSはリニアモ-タ等の駆動装置(不図示)により駆動され、駆動装置はX、Y、θZの3軸方向に駆動可能であり、後述の制御部1100により制御される。なお、駆動装置は、3軸方向に駆動可能としたが、1軸方向から6軸方向のいずれかで駆動可能としてもよい。
【0095】
投影光学系32は、レチクル31を透過した光を基板ステージWSに保持された基板73に照射して、レチクル31に形成されたパターンの像を所定の投影倍率βで基板73に投影する。このように、基板73は投影光学系32から照射される光により露光され、基板73上にパターンが形成される。また、投影光学系32は複数の光学素子で構成されており、所定の投影倍率βは例えば1/4、または1/5である。
【0096】
基板ステージWSについては、第1実施形態と共通の構成については説明を省略する。基板ステージWSには、基準マークを備えた基準プレート39が設置されている。基準プレート39の表面の高さは、基板ステージWSに保持された基板73の表面と同じ高さになるように定められ、計測部50は基準プレート39の基準マークの位置も計測する。
【0097】
制御部1100は、計測装置100を含む露光装置EXAの各部を統括的に制御する。制御部1100の構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0098】
計測部50は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。また、本実施形態では、第1実施形態の照明部を有する計測装置が用いられる形態について説明するが、第2及び3実施形態のいずれかに記載の照明部を有する計測装置が用いられてもよい。
【0099】
次に、
図14を参照して、本実施形に係る露光処理について説明する。
図14に示される露光処理は、制御部1100が露光装置EXAの各部を統括的に制御することにより行われる。
【0100】
S101において、制御部1100は、露光装置EXAに基板73を搬入させる。S102において、制御部1100は、形状計測装置(不図示)に、基板73の表面(高さ)を検出して基板73の全域の表面形状を計測する。
【0101】
S103において、制御部1100は、キャリブレーションを行う。具体的には、基準プレート39に設けられた基準マークの位置に基づいて、計測部50の光軸上に基準マークが位置するように、制御部1100は、基板ステージWSを駆動させる。次に、制御部1100は、計測部50の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測し、かかる位置ずれに基づいて、基板ステージWSの座標系の原点が計測部50の光軸と一致するように、基板ステージWSの座標系を再設定する。次に、計測部50の光軸と投影光学系32の光軸との位置関係に基づいて、基準マークが露光光の光軸上に位置するように、制御部1100は、基板ステージWSを駆動させる。そして、制御部1100は、TTL(スルー・ザ・レンズ)計測系(不図示)に、投影光学系32を介して、露光光の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測させる。S104において、制御部1100は、S103におけるキャリブレーションの結果に基づいて、計測部50の光軸と投影光学系32の光軸とのベースラインを決定する。
【0102】
ここで、S103において基準マークの位置ずれを計測するために、パターンの計測処理が行われる。制御部1100は、計測部50により基準マークに含まれるパターンを計測する。パターンの計測処理、例えば、所定の計測回数ごとや露光処理が行われる基板73の所定の枚数ごとなどに行われてもよい。
【0103】
S105において、制御部1100は、計測部50に基板73に設けられたパターン72の位置を計測させる。S106において、制御部1100は、グローバルアライメントを行う。具体的には、S105における計測結果に基づいて、制御部1100は、基板73のショット領域の配列に関して、シフト、マグニフィケーション(倍率)、ローテーション(回転)を算出し、ショット領域の配列の規則性を求める。そして、ショット領域の配列の規則性及びベースラインから補正係数を求め、かかる補正係数に基づいて、レチクル31(露光光)に対して基板73を位置合わせ(アライメント)する。
【0104】
ここで、S105においてパターン72の位置を計測するために、パターンの計測処理が行われる。制御部1100は、計測部50によりパターン72を計測する。パターンの計測処理は、例えば、所定の計測回数ごとや露光処理が行われる基板73の所定の枚数ごとなどに行われてもよい。
【0105】
S107において、制御部1100は、レチクル31と基板73とを走査方向(Y方向)に走査させるようにレチクルステージRSと基板ステージWSとを制御しながら、基板73を露光する。この際、形状計測装置によって計測した基板73の表面形状に基づいて、制御部1100は、Z方向及び傾き(チルト)方向に基板ステージWSを駆動させて、基板73の表面を投影光学系32の結像面に逐次合わせ込む。
【0106】
S108において、制御部1100は、基板73の露光すべきショット領域の全てに対する露光が完了したかどうか(即ち、露光すべきショット領域のうち、未露光のショット領域が存在していないかどうか)を判定する。露光すべきショット領域の全てに対する露光が完了していないと判定された場合には、制御部1100は処理をS107に移行させる。つまり、露光すべきショット領域の全てに対する露光が完了するまで、S107及びS108が繰り返される。一方、露光すべきショット領域の全てに対する露光が完了したと判定された場合には、制御部1100は処理をS109に移行させる。S109において、制御部1100は、露光装置EXAから基板73を搬出させる。
【0107】
<物品の製造方法>
物品として、例えば、デバイス(半導体デバイス、磁気記憶媒体、液晶表示素子等)、カラーフィルター、又はハードディスク等の製造方法について説明する。かかる製造方法は、リソグラフィ装置(例えば、露光装置、インプリント装置、描画装置等)を用いてパターンを基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)に形成する工程を含む。かかる製造方法は、パターンを形成された基板を処理する工程を更に含む。該処理ステップは、該パターンの残膜を除去するステップを含みうる。また、該パターンをマスクとして基板をエッチングするステップなどの周知の他のステップを含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0109】
また、基板処理装置の一例として、露光装置について説明したが、これらに限定されるものではない。基板処理装置の一例として、凹凸パターンを有するモールド(型、テンプレート)を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であっても良い。また、基板処理装置の一例として、凹凸パターンがない平面部を有するモールド(平面テンプレート)を用いて基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化装置であってもよい。また、基板処理装置の一例として、荷電粒子光学系を介して荷電粒子線(電子線やイオンビームなど)で基板に描画を行って、基板にパターン形成を行う描画装置などの装置であっても良い。
【0110】
また、第1実施形態乃至第4実施形態は、単独で実施するだけでなく、第1実施形態乃至第4実施形態のいずれかの組合せで実施することができる。