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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】三次元構造物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/04 20060101AFI20231227BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20231227BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20231227BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231227BHJP
   B29C 64/112 20170101ALN20231227BHJP
【FI】
A43B13/04 A
A43B13/04 Z
A43B13/14 B
A43B17/00 A
B33Y80/00
B29C64/112
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018102893
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019205686
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/革新的設計生産技術 リアクティブ3Dプリンタによるテーラーメイドラバー製品の設計生産と社会経済的な価値共創に関する研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】吉永 尚生
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】正尾 菜実
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208979(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/04
A43B 13/14
A43B 17/00
B33Y 80/00
B29C 64/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X,Y,Z方向により規定される三次元構造物であって、
内部空間を有し、ゴム組成物によって形成されている複数のクッション部材を備え、
前記クッション部材は、切頂多面体によって構成され、
複数の前記クッション部材は、XY平面においてX方向に複数個、Y方向に複数個並び、隣接する前記クッション部材が頂部同士を共有するように連結されたクッション層を形成し、
複数の前記クッション層が、前記Z方向に積層され、Z方向に隣接する前記クッション部材が頂部同士を共有するように連結されており
隣接する前記クッション部材の間には前記頂部以外の外面同士の間に隙間が形成されている、三次元構造物。
【請求項2】
少なくとも一部の隣接する前記クッション部材においては、それらの内部空間が連通している、請求項1に記載の三次元構造物。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、
液状ゴムと、
フィラーと、
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、
モノマーと、
を含む、請求項1または2に記載の三次元構造物。
【請求項4】
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上である、請求項に記載の三次元構造物。
【請求項5】
前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーは、2官能から6官能である、請求項3または4に記載の三次元構造物。
【請求項6】
前記モノマーは、単官能モノマーである、請求項3または4に記載の三次元構造物。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の三次元構造物により、少なくとも一部が形成されたソール部または中敷きを備えている、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造物、及びこれを備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元構造物の設計データに基づいて、樹脂を積層及び硬化させて三次元構造物を製造する三次元積層造形装置(いわゆる、3Dプリンタ)が実用化されている。このような三次元積層造形装置としては、インクジェット方式、レーザ光の照射により光硬化性樹脂を硬化させる方式、ABS樹脂等の溶融積層を行う方式など多数の方式が知られている。
【0003】
例えば、インクジェット方式では、光硬化性液状樹脂組成物の微小液滴をノズルから所定の形状パターンを描画するように吐出し、紫外線を照射して硬化薄膜を形成し、これを繰り返して積層することにより、三次元構造物を製造する。また、例えば、溶融積層方式では、固形のABS樹脂などを熱溶融させ、ノズルから滴下させることにより、所定の形状パターンを描画し、冷却することで流動性を低下させる工程を繰り返して積層することによって、三次元構造物を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-168135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような三次元積層造形装置によって製造される三次元構造物としては、樹脂製のものが一般に知られている。一方、ゴムは、樹脂に比して弾性率の温度依存性が低く、圧縮永久歪みも小さいことから、ゴム製の三次元構造物が製造できれば、樹脂製や金属製の三次元構造物とは異なる用途への使用が期待できる。
【0006】
また、上記のような三次元構造物をゴムで形成した場合、網目状に形成することで、緩衝材等のクッション部材として用いられることが考えられるが、そのクッション性の調整は容易ではなく、そのような調整を簡単に行うことができる三次元構造物が要望されていた。本発明は、クッション性の調整を容易に行うことができる、三次元構造物、及びこれを備えた靴を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る三次元構造物は、X,Y,Z方向により規定される三次元構造物であって、内部空間を有し、ゴム組成物によって形成されている複数のクッション部材を備え、複数の前記クッション部材は、XY平面に沿って並ぶように連結されたクッション層を形成し、複数の前記クッション層が、前記Z方向に積層されている。
【0008】
上記三次元構造物において、前記クッション部材は、多面体によって形成することができる。
【0009】
上記三次元構造物において、前記クッション部材は、切頂多面体によって形成することができる。
【0010】
上記三次元構造物において、隣接する前記クッション部材は、頂部同士を共有するように連結することができる。
【0011】
上記三次元構造物においては、隣接する前記クッション部材の内部空間を連通させることができる。
【0012】
上記三次元構造物において、前記ゴム組成物は、液状ゴムと、フィラーと、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーと、を含むことができる。
【0013】
上記三次元構造物においては、前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上とすることができる。
【0014】
上記三次元構造物において、前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーは、2官能から6官能とすることができる。
【0015】
上記三次元構造物において、前記モノマーは、単官能モノマーとすることができる。
【0016】
本発明に係る靴は、上述したいずれかの三次元構造物により、少なくとも一部が形成されたソール部または中敷きを備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クッション性を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る三次元構造物の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の三次元構造物を構成する切頂正八面体の斜視図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4図1の三次元構造物の製造装置の正面図である。
図5】三次元構造物の製造の過程を示す平面図である。
図6】三次元構造物の製造の過程を示す平面図である。
図7】三次元構造物の製造の過程を示す断面図である。
図8】三次元構造物の製造の過程を示す断面図である。
図9】本発明に係る三次元構造物が配置された靴のソール部の平面図である。
図10】本発明に係る三次元構造物が配置された靴の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態に係る三次元構造物の一実施形態について説明する。図1は三次元構造物の斜視図、図2図1の三次元構造物を構成する切頂正八面体の斜視図、図3図1のA-A線断面図である。この三次元構造物は、ゴム組成物で形成されている。なお、図1等に示すX,Y,Z方向にしたがって、三次元構造物等の説明を行う。但し、以下の説明では、Z方向を上下方向と称することがあるが、これに限定されない。以下では、まず、三次元構造物について説明し、その後、ゴム組成物及び三次元構造物の製造方法について説明する。
【0020】
<1.三次元構造物の概要>
図1に示すように、本実施形態に係る三次元構造物は、いわゆる切頂正八面体により構成された複数のクッション部材1を連結することで構成されている。図2に示すように、各クッション部材1は、正八面体の8つの頂部を切り取ったものであり、内部空間を有している。すなわち、正四角錐の部位を切り取り、頂部11として正方形の面を形成したものである。そして、各クッション部材1は、Z方向(上下方向)の頂部11aが、XY方向に平行に延びるように配置されている。一方、それ以外の頂部11bは、Z方向に平行に延びている。
【0021】
また、各クッション部材1の切頂八面体を構成する面は、板状に形成されており、これら板状の面を組み合わせることで、クッション部材1には内部空間が形成されている。但し、図2では図示を省略するが、各クッション部材1における上下の頂部11aの少なくとも一方は閉じておらず、頂部11aの輪郭に沿うように正方形状の貫通孔が形成されている。
【0022】
図1に示す三次元構造物は、一例として、X方向に3個、Y方向に3個、Z方向に3個の計27個のクッション部材1を連結したものである。ここでは、XY方向に沿って連結された9個のクッション部材1をクッション層10と称することとし、このクッション層10が3層連結されて、本実施形態に係る三次元構造物が形成されている。
【0023】
図3に示すように、XY方向に隣接するクッション部材1は、XY方向を向く頂部11b同士を連結している。すなわち、XY方向に隣接するクッション部材1においては、頂部11bである正方形の面を共有するように連結されている。また、Z方向に隣接するクッション部材1は、Z方向を向く頂部11a同士が連結されている。但し、上下に隣接する頂部11aには、上述したように正方形の貫通孔12が形成されているため、頂部11aの輪郭を共有するように連結されている。そして、この貫通孔12を介して上下のクッション部材1の内部空間が連通している。
【0024】
また、図1及び図3に示すように、最上層のクッション層10を構成するクッション部材1の上部の頂部11aも閉じられておらず、正方形の貫通孔12が形成されている。すなわち、最上層の各クッション部材1の内部空間は、外部に開放されている。
【0025】
なお、図1に示す三次元構造物は、一例であり、連結するクッション部材1の数は特には限定されない。また、すべてのクッション部材は、概ね同じ形状であるが、各クッション層10が同じ形状でなくてもよく、異なる形状、つまりクッション部材1の数の異なるクッション層10をZ方向に連結してもよい。
【0026】
<2.ゴム組成物>
次に、上述した三次元構造物を形成するためのゴム組成物について説明する。このゴム組成物は、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーを含む。本発明において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーは、ウレタン結合のイソシアネート基に加えて、さらに窒素原子を有するウレタンアクリレートオリゴマーであれば特に制限されない。
【0027】
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーなどが挙げられる。(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーとしては、例えば、特開2016-113518号公報に記載のものが例示できる。また、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーとしては、特開2016-181370号公報に記載のものが例示できる。
【0028】
(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーは、末端または側鎖に(メタ)アクリルアミド基を有するウレタンオリゴマーである。(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーは、公知のウレタン化反応技術により合成することができる。具体的には、1分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物(a1)と、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物(a3)との反応から合成できる。また、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させ、分子中に1個以上のイソシアネート基を有するポリウレタンを合成し、その後、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーを用いてウレタン化合物中のイソシアネート基とさらに反応させ、目的の(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーを合成することもできる。
【0029】
1分子中に1個以上の水酸基を有するアルコール化合物(a1)としては、主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有する炭素数2~9のアルキレングリコール、炭素数2~6のポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
また、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソンアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート類、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、又は、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプ等の多量体が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物(a3)としては、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
一般式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、またはヒドロキシアルキル基であり、Rは炭素数1~6のアルキレン基、またはフェニレン基である。
【0034】
(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーの重量平均分子量としては、特に制限されないが、ゴム組成物を三次元構造物に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させ、さらに三次元構造物に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは1,000~50,000程度、より好ましくは2,000~20,000程度が挙げられる。
【0035】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーは、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドと、イソシアネート化合物との付加反応で製造され、光硬化性官能基としての(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴としている。
【0036】
アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーは、公知のウレタン化反応技術により合成することができる。具体的には、ブタジエン、ブタジエンの水素添加物、イソプレン、イソプレンの水素添加物、カーボネート、エーテル、エステル、シリコーンから選ばれる1種以上の繰り返し単位を有する重合体を骨格として有する単官能又は多官能のアルコール(b1)(以下、ポリオール(b1)と省略することがある)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート単量体(b2)、及び水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)との反応から合成できる。又、低分子量成分の含有率をより低減できる観点から、まず、ポリオール(b1)とイソシアネート単量体(b1)とを反応させ、分子中に1個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を合成し、その後、さらに水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)と反応させ、目的のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーが得られる。
【0037】
例えば、ポリブタジエン系のポリオール(b1)としては、ポリブタジエン、ポリブタジエンの水素添加物、ポリイソプレン、ポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる主鎖骨格を有し、かつ主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものが挙げられる。工業的に入手しやすく、取り扱い易い点から、分子中に1,4-ビニル結合及び/又は1,2-ビニル結合を含む、もしくはそれらビニル基の水素添加物を含む両末端に水酸基を有する液状のポリブタジエン系のポリオール(b1)が好ましい。
【0038】
また、ポリカーボネート系のポリオール(b1)としては、ジオール類と炭酸エステルを原料としてエステル交換反応によって得られるもので、カーボネート基からなる主鎖骨格を有し、主鎖の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものが挙げられる。工業的に入手しやすく、取り扱い易い点から、分子中にカーボネート骨格と両末端に水酸基を有する液状のポリカーボネート系のポリオール(b1)が好ましい。
【0039】
ポリエーテル系のポリオール(b1)(すなわち、ポリエステポリオール)は、分子中にポリエーテルの主鎖骨格を有し、かつ主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものである。シリコーン系のポリオール(b1)(すなわち、シリコーンポリオール)は、分子中にシリコーン主鎖骨格を有し、かつ主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の水酸基を有するものである。
【0040】
1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート単量体(b2)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4-、2,4,4-、又はそれらの混合物)等の脂肪族イソシアネート類、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-又は2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、もしくは、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプ等が挙げられる。イソシアネート単量体(b2)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)は、水酸基を含有するメタクリルアミドまたは水酸基を含有するアクリルアミドであり、1種を単独でも、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水酸基を含有するアクリルアミドを用いることにより硬化性が著しく向上されるので、特に好ましい。
【0042】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)としては、例えば、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-プロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリルアミド(b3)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーの重量平均分子量としては、特に制限されないが、ゴム組成物を三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させ、さらに三次元構造物に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは1,000~100,000程度、より好ましくは1,500~60,000程度が挙げられる。
【0044】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを有するウレタンオリゴマーの平均官能基数(すなわち、1分子中に含まれるアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド基の数)の平均値としては、同様の観点から、好ましくは1.2~20が挙げられ、さらに好ましくは1.5~10が挙げられる。
【0045】
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーの官能基数としては、特に制限されないが、同様の観点からは、好ましくは2官能から6官能程度、より好ましくは2官能から4官能程度、さらに好ましくは2官能が挙げられる。
【0046】
アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、KJケミカルズ社製の商品名「KJSA-7100」などが挙げられる。
【0047】
また、本発明の三次元構造物用ゴム組成物に含まれるモノマーとしては、特に制限されないが、例えば単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられ、ゴム組成物を三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させ、さらに三次元構造物に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは単官能モノマーが挙げられる。好ましい単官能モノマーとしては、単官能アクリレートが挙げられる。
【0048】
単官能モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルモノマー(例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等)が挙げられる。これらのでも、ゴム組成物を三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させ、さらに三次元構造物に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点から、特にイソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。単官能モノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
また、多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0050】
本発明の三次元構造物用ゴム組成物において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー及びモノマーは、共架橋剤として機能する。
【0051】
本発明の三次元構造物用ゴム組成物には、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー及びモノマーに加えて、さらに他の共架橋剤が含まれてもよいし、含まれていなくてもよい。他の共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、スチレンなどが挙げられる。他の共架橋剤は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0052】
本発明において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの合計含有量は、特には限定されないが、例えば、液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上とすることができる。但し、ゴム組成物を三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させ、さらに三次元構造物に高い機械的強度と優れた伸びを付与する観点からは、好ましくは30~150質量部程度、より好ましくは35~120質量部程度、さらに好ましくは40~100質量部程度が挙げられる。
【0053】
本発明の三次元構造物用ゴム組成物において、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーとモノマーの質量比(アミン系ウレタンアクリレートオリゴマー:モノマー)としては、特に制限されないが、同様の観点からは、好ましくは1:9~9:1程度、より好ましくは2:8~8:2程度、さらに好ましくは3:7~7:3程度が挙げられる。
【0054】
本発明の三次元構造物用ゴム組成物は、ラジカル開始剤を含むことが好ましい。ラジカル開始剤を含むことにより、前述の液状ゴムの硬化を促進することができる。ラジカル開始剤としては、特に制限されず、加熱、光照射、電子線照射などによってラジカルを発生させる、公知のものを使用することができる。好ましいラジカル開始剤としては、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-2-カルボン酸、ベンゾフェノン-4-カルボン酸、ベンゾフェノン-2-カルボン酸メチル、N,N,N’,N’-テトラエチルー4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(モルフォリノ)フェニル]-1-ブタノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)などが挙げられる。ラジカル開始剤は、1種類単独で使用してもよいし、
2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
ラジカル開始剤の含有量としては、液状ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部程度が挙げられ、より好ましくは1~7質量部程度である。
【0056】
本発明の三次元構造物用ゴム組成物は、フィラーがさらに含まれる。フィラーを含むことにより、三次元構造物用ゴム組成物の粘度や、硬化によって得られる三次元構造物のゴム特性を調整することができる。さらに、この三次元構造物用ゴム組成物は、フィラーを含むことにより、三次元構造物により一層高い機械的強度と優れた伸びを付与することができる。この三次元構造物用ゴム組成物は、フィラーを含むことにより、機械的強度がより一層向上するだけでなく、フィラーを含むことによる伸びの低下が小さい、フィラーの添加によって伸び向上するか、僅かな低下に止まるという効果を発揮することができる。
【0057】
フィラーとしては、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルクなどが挙げられる。シリカをフィラーとする場合、表面改質されていないシリカを用いてもよい。また、シランカップリング剤などで表面改質された表面改質シリカ、またはシリカとシランカップリング剤との混合物などをフィラーとして使用することにより、硬化によって得られる三次元構造物の機械的強度をより一層高めることができる。フィラーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
また、この三次元構造物用ゴム組成物がフィラーを含む場合、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。特に、表面改質されていないフィラーを配合する場合、シランカップリング剤を含んでいることにより、液状ゴムとフィラーとを強固に結合することができ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させることができる。
【0059】
フィラーの含有量としては、特に制限されないが、三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~70質量%程度、さらに好ましくは10~50質量%程度が挙げられる。
【0060】
また、この三次元構造物用ゴム組成物は、三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させる観点から、加硫ゴムを含んでいてもよい。加硫ゴムとしては、特に制限されず、天然ゴムまたは合成ゴムを加硫した、公知の加硫ゴムを使用することができる。加硫ゴムを構成するゴム成分としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらの中でも、三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、天然ゴムを加硫した加硫ゴムが好ましい。加硫ゴムは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0061】
三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、加硫ゴムは、微粒子状であることが好ましい。加硫ゴムの粒子径としては、特に制限されないが、同様の観点から、中心粒径が200μm程度以下であることが好ましく、100μm程度以下であることがより好ましく、50μm程度以下であることがさらに好ましい。
【0062】
なお、本発明において、加硫ゴムの中心粒径とは、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置を用いたメディアン径(積算50%の粒径)である。
【0063】
この三次元構造物用ゴム組成物における加硫ゴムの含有量としては、特に制限されないが、三次元構造物用に適した粘度としつつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20~80質量%程度、さらに好ましくは30~50質量%程度が挙げられる。
【0064】
この三次元構造物用ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されず、例えば、ポリマー、染料、顔料、レべリング剤、流動性調整剤、消泡剤、可塑剤、重合禁止剤、難燃化剤、分散安定化剤、保存安定化剤、酸化防止剤、金属、金属酸化物、金属塩、セラミックス、などが挙げられる。ゴム組成物に含まれる添加剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0065】
この三次元構造物用ゴム組成物の粘度は、三次元構造物の製造装置によって描画・積層可能な粘度であれば特に制限されないが、三次元構造物用に適し、かつ、硬化によって得られる三次元構造物に優れたゴム特性を発揮させる観点からは、温度60℃(誤差は±2℃)、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計を用いて測定された粘度が、好ましくは1500Pa・s以下、より好ましくは0.1~1500Pa・s程度、さらに好ましくは1~1000Pa・s程度が挙げられる。なお、この粘度は、より具体的には、E型粘度計(Anton-Paar社製のMCR301)を用いて、振り角1%、周波数1Hzにて測定した場合の粘度である。
【0066】
この三次元構造物用ゴム組成物は、アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと、モノマーとを、前記アミン系ウレタンアクリレートオリゴマーと前記モノマーの合計含有量が、前記液状ゴム100質量部に対して、30質量部以上となるよう混合することにより、容易に製造することができ、さらに必要に応じて、ラジカル開始剤、フィラー、加硫ゴム、各種添加剤等を混合することもできる。
【0067】
また、三次元構造物用ゴム組成物の物性は、次のようにすることが好ましい。すなわち、このゴム組成物のショアA硬度としては、製品に求められる硬さに応じて適宜設定すればよいが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは35~90の範囲が挙げられる。また、このゴム組成物のショアC硬度としては、製品に求められる硬さに応じて適宜設定すればよいが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは45~90の範囲が挙げられる。なお、このゴム組成物のショアA硬度及びショアC硬度は、それぞれ、JIS K6253及びJIS K7312に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0068】
このゴム組成物の破断伸び率としては、製品に求められる破断伸び率に応じて適宜設定すればよく、例えば、100~1000%程度、100~500%などが一般的であるが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは90%以上、より好ましくは90~280%程度が挙げられる。破断伸び率の上限値としては、通常、500%程度である。なお、このゴム組成物の伸び率は、JIS K6251に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0069】
このゴム組成物の破断応力としては、製品に求められる破断応力に応じて適宜設定すればよく、例えば、3~45MPa程度、3~20MPa程度などが一般的であるが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは2.0~8.0MPa程度が挙げられる。破断応力の上限値としては、通常、20MPa程度である。なお、このゴム組成物の破断応力は、JIS K6251に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0070】
このゴム組成物において、破断応力(MPa)の値と破断伸び率(%)の値との積である破壊エネルギーは、好ましくは400以上、より好ましくは400~2500程度、さらに好ましくは700~2200程度、特に好ましくは1600~2200程度が挙げられる。
【0071】
このゴム組成物の圧縮永久歪み(24時間後)としては、製品に求められる圧縮永久歪みに応じて適宜設定すればよいが、ゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下が挙げられる。また、圧縮永久歪み(0.5時間後)としては、製品に求められる圧縮永久歪みに応じて適宜設定すればよいが、ゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下が挙げられる。なお、このゴム組成物の圧縮永久歪みは、JIS K6262に規定された方法に準拠して測定された値である。
【0072】
このゴム組成物の密度としては、製品に求められる密度に応じて適宜設定すればよいが、優れたゴム特性を発揮する観点からは、好ましくは0.8~2.2g/cm程度が挙げられる。
【0073】
<3.三次元構造物の製造方法>
次に、上記のように構成された三次元構造物の製造方法について説明する。この製造方法では、必要に応じて加熱により上記ゴム組成物の粘度を低下させて、ゴム組成物をノズルから滴下させることにより、所定の形状、パターンの薄膜を形成する。そして、滴下された薄膜のゴム組成物に対し、加熱、光照射、または電線照射によりゴム組成物を硬化させる。その後、ゴム組成物の滴下と、硬化を繰り返しながら、ゴム組成物を積層し、三次元構造物を形成する。したがって、ゴム組成物の粘度が高くない場合には、加熱することなく、滴下させることができ、またゴム組成物の粘度がある程度高い場合であっても、装置によっては加熱することなく、滴下させることが可能である。したがって、ゴム組成物の加熱は必須ではない。
【0074】
具体的には、例えば、図4に示すような製造装置を準備する。この製造装置8は、水平なテーブル81と、このテーブル81の上方で、上下、前後、及び左右に移動可能なノズル82と、を備えている。また、ノズル82からは加熱されたゴム組成物が滴下されるようになっている。ゴム組成物の加熱温度は、特に制限されないが、15~170程度とすることが好ましく、30~160程度とすることがさらに好ましい。また、加熱時間は、1~60分間程度とすることが好ましく、5~30分間程度とすることがより好ましい。なお、ノズル82の吐出口の径は、特には限定されないが、例えば、0.001~1mm程度とすることが好ましく、0.01~0.5mm程度とすることがより好ましい。これにより、ゴム組成物が滴下されると、次に説明するように、線幅及び厚みが吐出口の径と同程度のラインが形成される。
【0075】
さらに、この製造装置8において、ノズル82には、光照射装置83が取り付けられており、ノズル82とともに移動可能となっている。そして、この光照射装置83から照射される光によって、滴下されたゴム組成物を硬化させる。例えば、このような光照射としては、紫外線照射が好ましく、365nm程度の波長において紫外線強度1mW/cm~10W/cm程度、積算光量1mJ/cm~100J/cm~程度の条件で硬化させることが好ましい。
【0076】
続いて、上記三次元構造物の具体的な製造方法について説明する。図5に示すように、まず、ノズル82をXY方向に移動させながら、テーブル81上にゴム組成物を滴下し、一層目のクッション層10の各クッション部材1の下側の頂部11aを形成する。このとき、ノズル82から滴下されたゴム組成物は、ノズル82とともに移動する光照射装置83から照射される紫外線等の光により硬化される。これにより、テーブル81上には、硬化した9個の矩形状の頂部11aが所定間隔をおいて形成される。
【0077】
続いて、図6及び図7に示すように、ノズル82を移動させながら、頂部11aの周縁に矩形状の閉じた線分11cを積層する。そして、このような線分11cをXY方向にずらせながら積層させていくと、これがクッション部材1の外面となる。そして、積層を続けると、図8に示すように複数のクッション層10が積層された三次元構造物が成形される。なお、テーブル81上以外では、ゴム組成物によってXY方向に延びる平面を形成することができないため、上下に隣接するクッション部材1の連結部分、つまり頂部11aは閉じないで開いており、これによって、上下に隣接するクッション部材1は、内部空間が隣接している。また、上述したように、最上層のクッション部材1の頂部11aも開いている。但し、各クッション層10において、XY方向に隣接するクッション部材1は閉じた頂部11b同士が共有されるように連結されているが、この頂部11bは、Z方向に延びるものであるため、ゴム組成物を積層することにより成形することができる。
【0078】
<4.特徴>
以上のように,本実施形態に係る三次元構造物は、ゴム組成物で形成されるとともに、複数の切頂八面体で形成されたクッション部材1を組み合わせることで形成されている。具体的には、XY方向に9個のクッション部材1を連結したクッション層10を形成し、さらにZ方向に3層のクッション層10を積層することで構成されている。このように、各クッション部材1は、点対称の図形であり、これをX,Y,Z方向に概ね均等に連結しているため、この三次元構造物は、X,Y,Z方向に作用する力に対して、偏った変形を示さず、バランスよく変形することができる。したがって、高いクッション性を得ることができる。よって、この三次元構造物は、緩衝材として有効に用いることができるほか、例えば、靴のソール部、中敷き、建築用ガスケット、自転車サドル、医療用装具などに有効に活用することができる。
【0079】
特に、各クッション部材1は、切頂八面体で形成されているため、頂部11a,11b同士を連結することができる。したがって、各クッション部材1の形状を変更することなく、連結することができる。すなわち、この三次元構造物は、幾何学性を崩すことなく、クッション部材1を隙間なく敷き詰めることができるため、三次元構造物自体に歪みが生じるのを防止することができる。
【0080】
また、三次元構造物のクッション性を調整するには、ゴム組成物の材料、各クッション部材1の大きさ、形状、壁の厚さ、数、クッション層10を構成するクッション部材1の数、クッション層10の数などを調整すればよいため、クッション性の調整が容易である。また、上記の三次元構造物では、XY方向に隣接するクッション部材1を閉じた頂部11bが共有されるように連結しているが、これを開いた頂部にすることもでき、これによってもクッション性を調整することができる。
【0081】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す変形例は,適宜組合せが可能である。
【0082】
<5-1>
上記実施形態では、隣接するクッション部材1の連結方法は特には限定されない。上記実施形態では、切頂八面体の頂部同士を連結しているが、他の面を連結してもよい。但し、他の面を連結する場合には、一部のクッション部材1の形状を変更しなければならない場合がある。また、他のゴム組成物からなる部材を介して連結することもできる。
【0083】
<5-2>
クッション部材1は、上記のような切頂八面体のみならず、他の正多角形を連結することもできる。この場合、頂部を切り取って平面にした切頂正多面体を用いることもできる。このようにすると、頂部同士の連結が容易であり、クッション部材1の形状を変更しなくてもよいため、クッション性が崩れるのを防止することができる。なお、正多面体のほか、通常の多面体、球や異形の立体をクッション部材1とすることもできる。また、Z方向の連結箇所である頂部以外の箇所に、内部に通じる開口を少なくとも一つ設けることもできる。
【0084】
<5-3>
クッション部材1間の連結部分は種々の構成が可能であり、上記実施形態のように、貫通孔12を形成するほか、閉じてもよい。上記のような製造装置8を用い、ゴム組成物を滴下しながら、三次元構造物を成形する場合には、テーブル81上以外では平面は形成しがたいが、例えば、予め板状に形成された部材を配置することで、上下方向に隣接するクッション部材1間であっても閉じた面を介して連結することもできる。
【0085】
<5-4>
クッション部材1の内部にさらにクッション部材1を配置することもできる。例えば、切頂八面体の内部に、さらに八面体などの多面体を配置することもできる。これにより、クッション性を調整することができる。また、一部のクッション部材1の内部空間がゴム組成物で充填された中実の部分を有していてもよい。
【0086】
<5-5>
上記実施形態では、三次元構造物を製造する際、テーブル81に対して、ノズル82を移動させたが、ノズル82を固定し、テーブル81を移動させながら、ゴム組成物を積層させることもできる。あるいは、ノズル82及びテーブル81の両方を移動させてもよい。
【0087】
また、ノズル82の移動経路は、とくには限定されず、上記のような三次元構造物を形成できるのであれば、移動経路はとくには限定されない。
【0088】
また、ノズル82の吐出口の形状は特には限定されず、上記のようなゴム組成物を線状に塗布できるような形状のほか、ゴム組成物をフィルム状に塗布できるような細長い吐出口であってもよい。
【0089】
<5-6>
また、紫外線等の光は、ゴム組成物一層を形成する毎に照射することもできるし、複数層を形成する毎に照射することもできる。この点は、紫外線以外の光の照射でも同様である。また、硬化状態を調整するため、複数回に亘って、光を照射したり、光の強度を調整することもできる。
【0090】
<5-7>
本発明に係る三次元構造物は、種々の用途に用いることができるが、例えば、上述した靴のソール部や中敷きに用いる場合には、これらの全部を上記のような三次元構造物によって形成することもできるし、その一部を三次元構造物で形成することもできる。そして、上述した三次元構造物は、硬さの分布や重量分布を変化させることができるため、違法性のある衝撃吸収体を形成することができ、例えば、靴や中敷きとして、利用することができる。例えば、靴や中敷きとして、応力方向に対して垂直に力を吸収する用途(マラソンなど)、あるいは応力方向に対して水平方向に力を吸収する用途(テニスや100m層など加速度が大きい競技など)に適したクッション性を付与することができる。
【0091】
そして、ソール部または中敷きの一部、例えば、図9のような踵部分のみを三次元構造物で形成することができる。あるいは、図10に示すように、ソール部や中敷きを複数層で形成し、その一部を三次元構造物で形成することもできる。ソール部や中敷きの全部を三次元構造物で形成する場合には、仕切り部の数を領域によって調整し、クッション性を高める場合には、仕切り部の数を少なくし、クッション性を低下する場合には、仕切り部の数を増やすなど、用途に応じて適宜変更することができる。
【0092】
<5-8>
上記各三次元構造物の使用の向きや、製造の向きは、上記したものに限定されず、その用途などによって適宜変更することが可能である。したがって、本発明においては、X,Y,Z方向を規定しているが、例えば、必ずしもZ方向が鉛直方向でなくてもよく、X,Y,Z方向が互いに直交する向きであれば、これをどのように配置しても本発明に影響を与えるものではない。
【符号の説明】
【0093】
1 クッション部材
10 クッション層
12 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10