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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】特殊バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/00 20060101AFI20231227BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20231227BHJP
   F23Q 9/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F23C1/00 301
F23D17/00 A
F23Q9/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018228758
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020091071
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519048584
【氏名又は名称】株式会社セイブ・ザ・プラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 光宏
(72)【発明者】
【氏名】楠原 功
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】竹下 和志
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130619(JP,A)
【文献】特開2006-17453(JP,A)
【文献】特開2017-180266(JP,A)
【文献】特開2010-127525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 1/00
F23Q 9/00
F23D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された燃料が内部で燃焼される燃焼器本体と、
前記燃焼器本体内に設けられ、第1燃料を前記燃焼器本体内に旋回気流として送り込むスワラと、
前記スワラの外部領域に複数配設されるパイロットバーナと、
を備え、
前記各パイロットバーナは、前記燃焼器本体の底部において、前記燃焼器本体の内壁と前記パイロットバーナとの第1最短距離が前記パイロットバーナと前記スワラとの第2最短距離よりも小さくなる距離となるように前記底部に配設され
前記各パイロットバーナは、前記第1燃料よりも燃焼性が高い第2燃料を噴出し、
前記第1燃料は、アンモニアガス又はアンモニア化合物、若しくはアンモニアガス又はアンモニア化合物に炭素化合物が混合された燃料である、特殊バーナ。
【請求項2】
前記各パイロットバーナは、前記燃焼器本体の内壁に沿って配設される請求項1に記載の特殊バーナ。
【請求項3】
前記各パイロットバーナは、円周方向に等ピッチで配設される請求項1又は2に記載の特殊バーナ。
【請求項4】
前記第1燃料はアンモニアガスであり、前記第2燃料はメタンガスである請求項1~3のうちのいずれか1つに記載の特殊バーナ。
【請求項5】
前記各パイロットバーナは、前記第2燃料を前記燃焼器本体の中心軸と平行方向に噴出する請求項1~4のうちのいずれか1つに記載の特殊バーナ。
【請求項6】
前記各パイロットバーナ及び前記スワラは、前記燃焼器本体の底部にそれぞれ支持される請求項1~のうちのいずれか1つに記載の特殊バーナ。
【請求項7】
前記各パイロットバーナを点火する点火プラグをさらに備えた請求項1~のうちのいずれか1つに記載の特殊バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特殊バーナに関し、より詳しくは、難燃性のアンモニア等を燃料とする特殊バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量削減に要求に伴い、炭素系の燃料に代わる燃料として、燃焼しても二酸化炭素を排出しないアンモニアへの期待が高まっている。一方で、アンモニアは、難燃性燃料であって、炭素系の燃料と比較すると、点火(着火)しにくく燃焼速度が遅いという特性を有している。具体的には、炭素系燃料を点火するのに必要とするエネルギーが80mJから120mJ程度であるのに対して、アンモニアを点火するには400mJから600mJ程度のエネルギーが必要となる。そして、アンモニアの層流燃焼速度は、炭素系燃料(例えばメタンやプロパンなどの一般的な炭化水素系燃料)の層流燃焼速度よりも約7倍程度遅い。
【0003】
この難燃性のアンモニアを燃料とした燃焼装置についての検討が特許文献1で報告されている。この特許文献1では、かかる燃料を安定的に燃焼させる為、燃焼器本体(燃焼筒)のアンモニアが滞留する領域に点火プラグを配置させる技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2018-022676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の燃焼装置では、燃焼器本体の内壁付近は燃焼器本体の外部の温度により低温となっており、火炎の急冷によって燃焼反応の停止(クエンチング)が発生してしまう。従って、このクエンチングにより、不完全燃焼ガスが発生してしまい、アンモニアによる火炎を形成させて安定的にアンモニアを燃焼させることができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は上記の問題点を解決し、燃焼器本体の内壁付近の低温によるクエンチングを防止し、難燃性燃料による火炎を形成させて安定的に難燃性燃料を燃焼させる特殊バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る特殊バーナは、投入された燃料が内部で燃焼される燃焼器本体と、前記燃焼器本体内に設けられ、第1燃料を前記燃焼器本体内に旋回気流として送り込むスワラと、前記スワラの外部領域に複数配設されるパイロットバーナとを備えている。
【0008】
本明細書では、「スワラの外部領域」とはスワラの周縁部から燃焼器本体の底部の周縁部までの領域のことを意味する。
【0009】
この発明の特殊バーナは、パイロットバーナがスワラの外部領域に配設されるので、パイロット火炎と燃焼器本体の内壁との間の距離を短くすることが可能となる。従って、燃焼器本体の内壁付近が高温となるので、燃焼器本体の内壁付近の低温によるクエンチングを防止することができる。その結果、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができるので、アンモニアによる火炎を形成させて安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0010】
さらに、パイロットバーナがスワラの外部領域に配設されるので、外部領域に発生する滞留領域内に生じる渦巻き流によって、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができる。従って、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0011】
ここで、「アンモニアによる火炎を形成させて安定的にアンモニアを燃焼させる」という効果には、燃料が燃焼状態を変化させる状態である燃焼変動を小さくするという効果を含み、さらには、燃焼が間歇的に起こることによる燃焼ガス圧の脈動に起因する装置全体を震わせる現象である燃焼振動を小さくするという効果も含んでいる。
【0012】
一実施形態の特殊バーナでは、前記各パイロットバーナは、前記燃焼器本体の内壁と前記パイロットバーナとの第1最短距離が前記パイロットバーナと前記スワラとの第2最短距離よりも小さくなる距離となるように前記外部領域に配設される。
【0013】
この一実施形態の特殊バーナでは、各パイロットバーナは、燃焼器本体の内壁と各パイロットバーナとの第1最短距離が各パイロットバーナとスワラとの第2最短距離よりも小さくなる距離となるように前記外部領域に配設されるので、パイロット火炎と燃焼器本体の内壁との間の距離をさらに短くすることが可能となる。従って、燃焼器本体の内壁付近をさらに高温とすることができるので、燃焼器本体の内壁付近の低温によるクエンチングをさらに防止することができる。その結果、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率をより向上させることができるので、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0014】
さらに、各パイロットバーナは、燃焼器本体の内壁と各パイロットバーナとの第1最短距離が各パイロットバーナとスワラとの第2最短距離よりも小さくなる距離となるように前記外部領域に配設されるので、該外部領域に発生する滞留領域内に生じる渦巻き流によって、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができる。従って、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0015】
一実施形態の特殊バーナでは、前記各パイロットバーナは、前記燃焼器本体の内壁近傍に配設される。
【0016】
この一実施形態の特殊バーナでは、各パイロットバーナが燃焼器本体の内壁近傍に配設されるので、燃焼器本体の内壁のさらに近傍を高温とすることができるので、燃焼器本体の内壁付近の低温によるクエンチングをさらに防止することができる。
【0017】
さらに、各パイロットバーナが燃焼器本体の内壁近傍に配設されるので、燃焼器本体の内壁近傍に発生する滞留領域内に生じる渦巻き流によって、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができる。従って、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0018】
一実施形態の特殊バーナでは、前記各パイロットバーナは、円周方向に等ピッチで配設される。
【0019】
この一実施形態の特殊バーナでは、各パイロットバーナが円周方向に等ピッチで配設されるので、燃焼器本体の内壁に形成される低温層を円周方向において均一とすることができる。従って、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率の低下を円周方向において均一的に抑制することができるので、予混合気の燃焼をより安定させることが可能となり、アンモニアによる火炎を形成させてさらに安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0020】
一実施形態の特殊バーナでは、前記各パイロットバーナは、前記第1燃料よりも燃焼性が高い第2燃料を噴出する。
【0021】
この一実施形態の特殊バーナでは、各パイロットバーナが第1燃料よりも燃焼性が高い第2燃料を噴出するので、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りを効率良く行うことが可能となる。
【0022】
一実施形態の特殊バーナでは、前記第1燃料はアンモニアガスであり、前記第2燃料はメタンガスである。
【0023】
この一実施形態の特殊バーナでは、第1燃料がアンモニアガスであり、第2燃料がメタンガスであるので、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りがより効率的となる。
【0024】
一実施形態の特殊バーナでは、前記第2燃料を前記燃焼器本体の中心軸と平行方向に噴出する。
【0025】
この一実施形態の特殊バーナでは、第2燃料が燃焼器本体の中心軸と平行方向に噴出されるので、燃焼器本体の内壁に形成される低温層を円周方向において均一とすることが可能となる。従って、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率の低下を円周方向において均一的に抑制することができるので、予混合気の燃焼をより安定させることが可能となり、アンモニアによる火炎を形成させてさらに安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0026】
一実施形態の特殊バーナでは、前記各パイロットバーナ及び前記スワラは、前記燃焼器本体の底部にそれぞれ支持される。
【0027】
この一実施形態の特殊バーナでは、各パイロットバーナ及びスワラは、燃焼器本体の底部にそれぞれ支持されるので、各パイロットバーナとスワラとの位置(距離)関係を容易に変更することが可能となる。従って、火移りの安定性の微調整を容易に行うことが可能となる。
【0028】
一実施形態の特殊バーナでは、前記パイロットバーナを点火する点火プラグをさらに備える。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る特殊バーナによれば、パイロットバーナがスワラの外部領域に配設されるので、パイロット火炎と燃焼器本体の内壁との間の距離を短くすることが可能となる。従って、燃焼器本体の内壁付近が高温となるので、燃焼器本体の内壁付近の低温によるクエンチングを防止することができる。その結果、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができるので、アンモニアによる火炎を形成させて安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0030】
また、パイロット火炎を形成するパイロットバーナが燃焼器本体の内壁近傍に配設されているので、外部領域に発生する滞留領域内に生じる渦巻き流によって、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができる。従って、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る特殊バーナ2の一部切り欠き側面図及びその周辺の構成要素を示すブロック図である。
図2図1の特殊バーナ2の底部18を上側から見た概略図である。
図3図1の特殊バーナ2の効果を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
実施形態.
図1は本発明の実施形態に係る特殊バーナ2の一部切り欠き側面図及びその周辺の構成要素を示すブロック図であり、図2図1の特殊バーナ2の底部18を上側から見た概略図である。図1の特殊バーナ2は、筒状の耐熱ガラス製又はスチール製であって、投入された燃料が内部で燃焼される燃焼器本体4と、該燃焼器本体4内に燃料が送り込まれる円形状の投入口22と、該投入口22の下方に位置し、燃焼器本体4内に設けられたスワラ(旋回羽根)6と、燃焼性の低い難燃性の第1燃料(例えばアンモニアガスなど)を格納する燃料タンク12aと、第1燃料より燃焼性の高い第2燃料(例えばメタンガスなど)を格納する燃料タンク12bと、酸化剤である空気を供給するエアコンプレッサ12cと、第1燃料、第2燃料及び空気の供給量をそれぞれ調整するバルブ30と、燃焼器本体4の底部18に支持されるパイロットバーナ14とを備えて構成される。ここで、図1の矢印Xが重力方向を示し、投入口22の外周(スワラ6の周縁部)から投入口22の中心部までの領域をスワラ6の内部領域といい、投入口22の外周(スワラ6の周縁部)から円形状の底部18の周縁部までの領域をスワラ6の外部領域という。
【0034】
図1の燃焼器本体4は、重力方向に細長い筒状の耐熱ガラス製又はスチール製の胴部16と、該胴部16の上側開口部を覆う蓋部20と、該胴部16の下側開口部を覆う底部18とを備えて構成される。図1の底部18の中央部(中心部)には、アンモニアガスなどの難燃性の第1燃料を燃焼器本体4内に送り込まれる円形状の投入口22が設けられる。また、図1の蓋部20の中央部には炎が噴出する出力口24が設けられている。
【0035】
スワラ6は、燃焼器本体4を水平に切断したときの中心部付近で燃焼器本体4の底部18に支持されている。スワラ6は駆動部(図示せず)により回転し、この回転により第1燃料が燃焼器本体4内に旋回気流S1として送り込まれる。ここで、第1燃料は燃料タンク12aに接続されたバルブ30と、エアコンプレッサ12cに接続されたバルブ30とを調整することにより、所定の濃度の第1燃料を燃焼器本体4内に旋回気流S1として送り込むことが可能となる。なお、投入口22から流れ込んだ旋回気流S1は、旋回しながら燃焼器本体4の内壁(内周面)に沿うように広がりつつ上方に進む。燃焼器本体4の中央部分の第1燃焼は、この流れに引っ張られ、燃焼器本体4の中央部分では、第1燃料は渦巻き状となりながら、下方から上方に流れる。
【0036】
また、パイロットバーナ14は、スワラ6の外部領域に複数配設される。詳細には、パイロットバーナ14は、スワラ6に対して同心で投入口22の周縁部(スワラ6の周縁部)を取り囲むように円周方向に等ピッチで燃焼器本体4の内壁近傍に複数配設されており、第1燃料よりも燃焼性が高い第2燃料を噴出する。ここで、第2燃料は燃料タンク12bに接続されたバルブ30と、エアコンプレッサ12cに接続されたバルブ30とを調整することにより、所定の濃度の第2燃料を各パイロットバーナ14に送り込むことが可能となる。
【0037】
さらに、各パイロットバーナ14には、該各パイロットバーナ14を点火する点火プラグ10が各パイロットバーナ14近傍にそれぞれ設けられている。ここで、点火プラグ10は、先端部が鉤状である放電極10aと、先端部が鉤状である接地電極10bとを有し、放電極10a及び接地電極10bは底部18から燃焼器本体4の内部に突出するようにそれぞれ形成されている。なお、放電極10aには、電圧発生部(図示せず)から高電圧が印加され、これにより、放電極10aの先端部と接地電極10bの先端部との間に火花が発生し、パイロットバーナ14から噴出された第2燃料に点火される。
【0038】
この構成により、各パイロットバーナ14がスワラ6の外部領域に配設されるので、パイロット火炎と燃焼器本体4の内壁との間の距離と短くすることが可能となる。従って、燃焼器本体の内壁付近が高温となるので、燃焼器本体の内壁付近の低温によるクエンチングを防止することができる。その結果、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができるので、アンモニアによる火炎を形成させて安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0039】
また、各パイロットバーナ14が円周方向に等ピッチで配設されるので、燃焼器本体4の内壁に形成される低温層を円周方向において均一とすることができる。従って、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率の低下を円周方向において均一的に抑制することができるので、予混合気の燃焼をより安定させることが可能となり、アンモニアによる火炎を形成させてさらに安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0040】
図1及び図2に示すように、パイロットバーナ14は、燃焼器本体4の内壁とパイロットバーナ14との第1最短距離L1がパイロットバーナ14とスワラ6との第2最短距離L2よりも小さくなるように配設される。この構成により、パイロット火炎を形成するパイロットバーナ14が燃焼器本体4の内壁近傍に配設されることとなるので、燃焼器本体4の内壁をより効率的に温めることが可能となる。
【0041】
以上のように構成された特殊バーナ2の作用効果について以下に説明する。
【0042】
図1の特殊バーナ2による燃料の燃焼方法では、燃焼の開始時では、燃焼性の高い第2燃料(例えばメタンガスなど)が各パイロットバーナ14に送り込まれて、この第2燃料は燃焼器本体4の中心軸と平行方向に噴出される。この構成により、燃焼器本体4の内壁に形成される低温層を円周方向において均一とすることが可能となる。従って、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率の低下を円周方向において均一的に抑制することができるので、予混合気の燃焼をより安定させることが可能となり、アンモニアによる火炎を形成させてさらに安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0043】
ここで、先ず、各パイロットバーナ14から噴出された第2燃料が点火プラグ10により点火されてパイロット火炎が形成される。これにより、燃焼器本体4の内壁側が温められる。次に、難燃性の高い第1燃料(例えばアンモニアガスなど)がスワラ6を介して、燃焼器本体4内に旋回気流S1として送り込まれる。ここで、各パイロットバーナ14のパイロット火炎から第1燃料に火移りし、予混合火炎を形成し、出力口24から炎が噴出される。
【0044】
この構成により、パイロット火炎を形成するパイロットバーナ14が燃焼器本体4の内壁近傍に配設されているので、燃焼器本体4の内壁のさらに近傍を高温とすることができるので、燃焼器本体4の内壁付近の低温によるクエンチングを防止することができる。従って、パイロット火炎が予混合気を燃焼させて予混合火炎を形成するための火移りの効率を向上させることができるので、アンモニアによる火炎を形成させて安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態の特殊バーナ2のパイロットバーナ14が燃焼器本体4の内壁近傍に配設されていることによる更なる効果について図3を用いて説明する。図3図1の特殊バーナ2の効果を説明するための概念図である。
【0046】
図3に示すように、燃焼器本体4の中央部では、スワラ6の回転により第1燃料が旋回気流S1として旋回しながら上方に進む。燃焼器本体4の内壁近傍(投入口22の外周の外側)は、この旋回気流S1の流れから外れている。この旋回気流S1の流れから外れた位置は、滞留領域となる。ここで、旋回気流S1が流れる部分は気圧が低くなるため、各パイロットバーナ14から噴出された第2燃料はこの気圧が低くなる部分に引っ張られて渦巻き流S2が発生する。従って、滞留領域では渦巻き流S2が発生するので、第2燃料は各パイロットバーナ14の上方を繰り返して通過する。
【0047】
上述したように、燃焼器本体4の内壁付近に形成される滞留領域において渦巻き流S2が発生するので、パイロット火炎から予混合気にさらに効率的に火移りすることができる。従って、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0048】
本実施形態では、パイロット火炎を形成するパイロットバーナ14が燃焼器本体4の内壁近傍に配設されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、パイロット火炎を形成するパイロットバーナ14が燃焼器本体4の内壁に沿って配設されるように構成されてもよい。この場合においても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、本実施形態と比較すると、燃焼器本体4の内壁付近をさらに高温とすることが可能となるので、火移りの効率をさらに向上することができる。従って、本実施形態と比較すると、予混合気の燃焼をさらに安定させることが可能となるので、アンモニアによる火炎を形成させてより安定的にアンモニアを燃焼させることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、パイロットバーナ14から噴出される第2燃料が、燃焼器本体4の中心軸と平行方向に噴出されるように構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2燃料がスワラ6によって形成された再循環領域に向けて噴出されるように構成されてもよい。この場合においても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、本実施形態と比較すると、スワラ6によって形成される再循環領域に対してパイロットバーナ14から噴出された第2燃料が適度に供給されて、より安定したガス火炎を形成することが可能となる。
【0050】
さらに、本実施形態では、難燃性燃料としてアンモニアを用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、難燃性燃料としてアンモニア化合物や他の難燃性燃料を用いてもよく、さらに、それらを主原料として炭素系化合物などの他の物質が混合されていてもよい。
【0051】
上述の実施形態は例示に過ぎず、この発明の範囲から逸脱することなく種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 特殊バーナ
4 燃焼器本体
6 スワラ
14 パイロットバーナ
22 投入口
24 出力口
18 底部
20 蓋部

図1
図2
図3