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特許7410644電池性能を改良するための長鎖界面活性剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電池性能を改良するための長鎖界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/08 20060101AFI20231227BHJP
   H01M 6/06 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M6/08 A
H01M6/06 B
H01M6/06 C
H01M4/06 S
H01M4/62 C
H01M4/42
H01M4/46
H01M4/38 Z
H01M6/02 Z
H01M10/04 Z
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019033223
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2019160786
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】15/922,530
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519068249
【氏名又は名称】エナジャイザー ブランズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ チュファン
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン マリー ドーン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05626988(US,A)
【文献】米国特許第05401590(US,A)
【文献】特開平04-138667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/08
H01M 6/06
H01M 4/06
H01M 4/62
H01M 4/42
H01M 4/46
H01M 4/38
H01M 6/02
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)容器と、
b)容器内に配置され、カソードと、アノードと、カソードおよびアノードの間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液、および長鎖界面活性剤を含む電極アセンブリと、を備え、
前記長鎖界面活性剤が以下の構造を有するアルカリ電気化学セル。
1-(R2Y)-R3
(式中、R1は疎水性基であり、 R2は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され、Yは、OおよびSからなる群から選択され、
3は親水性のリン酸エステル基であり、16≦n≦40である。)
【請求項2】
a)容器と、
b)容器内に配置され、カソードと、アノードと、カソードおよびアノードの間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液、および長鎖界面活性剤を含む電極アセンブリと、を備え、
前記長鎖界面活性剤が以下の構造を有し、
前記セパレータは前記長鎖界面活性剤を含む、アルカリ電気化学セル。
1- (R 2 Y) -R 3
(式中、R 1 は疎水性基であり、 R 2 は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され、Yは、OおよびSからなる群から選択され、
3 は親水性基であり、16≦n≦40である。)
【請求項3】
1は、分岐または非分岐アルキル基、分岐または非分岐アルケニル基、分岐または非分岐アルキニル基、分岐または非分岐アリール基、分岐または非分岐フェニル基、分岐または非分岐ベンジル基、分岐または非分岐フェニルアルキル基、分岐または非分岐シクロアルキル基および分岐または非分岐シクロアルケニル基からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項4】
3は、リン酸基、リン酸エステル基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項5】
30≦n≦40である、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項6】
2はエチレンであり、YはOである、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項7】
2はエチレンである、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項8】
YはOである、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項9】
1はフェニルアルキル基である、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項10】
3はリン酸エステル基である、請求項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項11】
2はエチレンであり、YはOであり、R1はフェニルアルキル基である、請求項1又は10に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項12】
前記長鎖界面活性剤は以下の構造を有する、請求項1又は2に記載のアルカリ電気化学セル。
【化1】
【請求項13】
前記アノードは前記長鎖界面活性剤を含む、請求項1~12のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項14】
前記セパレータは前記長鎖界面活性剤を含む、請求項1に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項15】
前記電気化学セルは一次電池である、請求項1~14のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項16】
前記電気化学セルは二次電池である、請求項1~14のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項17】
前記長鎖界面活性剤は、3~5000μg/inの量でセパレータ中に含まれる、請求項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項18】
前記アノードは、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよびケイ素からなる群から選択される活物質を含む、請求項1~17のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項19】
前記アノードは、前記アノードの有効成分の重量に対して、または前記アノードの総重量に対して、1~15,000ppmの濃度で前記長鎖界面活性剤を含む、請求項1~18のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項20】
前記アノードは、前記アノードの有効成分の重量に対して、または前記アノードの総重量に対して、30ppm以上の濃度で前記長鎖界面活性剤を含む、請求項1~18のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項21】
前記アノードは、前記アノードの有効成分の重量に対して、または前記アノードの総重量に対して、100ppm以下の濃度で前記長鎖界面活性剤を含む、請求項1~18のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項22】
前記電解液は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)、塩化マグネシウム(MgCl)、または臭化マグネシウム(MgBr)を含む、請求項1~21のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項23】
前記アルカリ電気化学セルは1を超える長鎖界面活性剤を含まない、請求項1~22のいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項24】
前記電気化学セルは、長鎖界面活性剤を含まない類似のアルカリ電気化学セルの比容量またはランタイムよりも、1%から100%大きい比容量またはランタイムを有する、請求項1~23のうちいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項25】
電圧が、0.1V~2.0Vである、請求項1~22のいずれか1項に記載のアルカリ電気化学セル。
【請求項26】
電気化学セルの製造方法であって、
前記電気化学セルは、
a)容器と、
b)容器内に配置され、カソードと、アノードと、カソードおよびアノードの間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液、および長鎖界面活性剤を含む電極アセンブリと、を備え、
前記長鎖界面活性剤が以下の構造を有し、
1-(R2Y)-R3
式中、R1は疎水性基であり、 R2は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され、Yは、OおよびSからなる群から選択され、R3は親水性のリン酸エステル基であり、n≧12であり、
前記アノードは前記長鎖界面活性剤を含み、前記方法は、前記長鎖界面活性剤を、i)Zn粉末を含むアノード乾燥混合物およびii)ゲル化電解質、または、Znを含むアノードペーストおよびゲル化電解質とを調合することを含む、方法。
【請求項27】
請求項1~10のうちいずれか1項に記載の電気化学セルの製造方法であって、前記アノードは前記長鎖界面活性剤を含み、
1)Zn粉末を含むアノード乾燥混合物に前記長鎖界面活性剤を添加し、
2)前記アノード乾燥混合物をゲル化電解質と混合することを含む工程i)、または、
1)前記長鎖界面活性剤を前記ゲル化電解質に添加し、
2)Znを含むアノード乾燥混合物をゲル化電解質と混合することを含む工程ii)、または、
1)Znを含むアノードペーストおよびゲル化電解質に前記長鎖界面活性剤を添加する工程iii)、または、
1)前記長鎖界面活性剤を電解質に添加し、
2)ゲル化剤と電解質とを混合してゲル化電解質を形成し、
3)Znを含むアノード乾燥混合物を前記ゲル化電解質と混合することを含む工程iv)を含む方法。
【請求項28】
前記長鎖界面活性剤は、前記添加の前の溶液中に含まれる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
電気化学セルの製造方法であって、
前記電気化学セルは、
a)容器と、
b)容器内に配置され、カソードと、アノードと、カソードおよびアノードの間に配置されたセパレータと、アルカリ電解液、および長鎖界面活性剤を含む電極アセンブリと、を備え、
前記長鎖界面活性剤が以下の構造を有し、
1-(R2Y)-R3
式中、R1は疎水性基であり、 R2は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され、Yは、OおよびSからなる群から選択され、R3は親水性基であり、n≧12であり、
前記セパレータは前記長鎖界面活性剤を含み、
前記長鎖界面活性剤を含む溶液中にセパレータを浸漬する工程i)、または
前記長鎖界面活性剤を含む溶液をセパレータの少なくとも1つの層上に噴霧する工程ii)を含む方法。
【請求項30】
前記セパレータが前記セル容器の内部にある間に、前記セパレータの前記少なくとも1つの層上に前記溶液が噴霧される、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルカリ電気化学セルは、LR6(単3)、LR03(単4)、LR14(単2)、およびLR20(単1)として一般に知られているセルサイズが市販されている。これらのセルは円筒形であり、この円筒形は国際電気標準会議のような組織によって設定される寸法規格を満たさなければならない。これらの電気化学セルは、広範囲の電気機器(例えば、時計、ラジオ、玩具、電子ゲーム、一般的にストロボ電球ユニットを含むフィルムカメラ、およびデジタルカメラ)に電力を供給するために消費者に利用される。このような電気機器は、広範囲の放電条件(例えば、低ドレインから比較的高ドレインまで)を有する。
【背景技術】
【0002】
電池の形状およびサイズは固定されることが多いため、電池製造業者は、電池特性を修正することにより性能を改良しなければならない。デジタルカメラのような特定の機器における電池の性能を向上させる方法についての課題に対処しようとすれば、通常、セルの内部構造を変更することになる。例えば、セルの構造を変更するにあたり、セル内で利用される活物質が増量されてきた。
【0003】
初期のアノードシャットダウンは、中程度ドレイン試験においてうまく動作しないことの主要な原因の一つである。アノードシャットダウンでは、アノード放電生成物(すなわちZnO)により、Zn粒子表面が不動態化され、Zn放電が阻止される。加えて、アノード/セパレータ界面に近い高密度放電/反応ゾーンが、HOおよびOH輸送をブロックし、初期のアノードシャットダウンを引き起こす可能性もある。アノードシャットダウンは、アノード中のKOH濃度が低い(すなわち、24~28重量%のKOHを含む)か、または、亜鉛材料の粒子が粗い場合、さらに問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、アノードシャットダウンは、アルカリ電池中により多くの電解質を添加することによって妨げ得るが、これにより、活物質(ZnおよびMnO2)の容積空間が小さくなり、電池容量に負の影響が与えられる。また、KOH電解質の濃度を上昇させることにより、アノードシャットダウンの問題を妨げ得るが、これにより、セルの漏れ速度およびセルの直接短絡温度が上昇する。
【0005】
上述したセルおよび他の同様なセルの制約を克服するために、本実施形態が設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、a)容器と、b)容器内に配置され、カソード、アノード、カソードとアノードとの間に配置されたセパレータ、アルカリ電解液、および長鎖界面活性剤を含む電極アセンブリと、を備えるアルカリ電気化学セルである。
【0007】
一実施形態は、上述の電気化学セルの製造方法であって、上記アノードは上記長鎖界面活性剤を含み、上記方法は、上記長鎖界面活性剤を、i)Zn粉末を含むアノード乾燥混合物およびii)ゲル化電解質、または、Znを含むアノードペーストおよびゲル化電解質とを調合することを含む、方法である。
【0008】
一実施形態は、上述の電気化学セルの製造方法であって、上記アノードは上記長鎖界面活性剤を含み、1)Zn粉末を含むアノード乾燥混合物に上記長鎖界面活性剤を添加し、2)上記アノード乾燥混合物をゲル化電解質と混合することを含む工程i)または、1)上記長鎖界面活性剤を上記ゲル化電解質に添加し、2)Znを含むアノード乾燥混合物をゲル化電解質と混合することを含む工程ii)または、1)Znを含むアノードペーストおよびゲル化電解質に上記長鎖界面活性剤を添加する工程iii)または、1)上記長鎖界面活性剤を電解質に添加し、2)上記ゲル化剤と電解質とを混合してゲル化電解質を形成し、3)Znを含むアノード乾燥混合物を上記ゲル化電解質と混合することを含む工程iv)を含む方法である。
【0009】
一実施形態は、上述の電気化学セルの製造方法であって、上記セパレータは上記長鎖界面活性剤を含み、上記長鎖界面活性剤を含む溶液中にセパレータを浸漬する工程i)、または、上記長鎖界面活性剤を含む溶液をセパレータの少なくとも1つの層上に噴霧する工程ii)を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態のアルカリ電気化学セルの断面立面図である。
図2】エトキシレート鎖長が異なる界面活性剤で調製したセルを使用した2つの異なる中程度ドレイン動作試験から得られた結果を示す。
図3】アノード中にPE-510界面活性剤を含むセルおよびアノード中にTriton XQS-20界面活性剤を含むセルを3.9オームで1日1時間放電したときの放電曲線を示す。
図4】アノード中に50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルと、アノード中に20ppmのPE-510界面活性剤を含むアノードハーフセルと、アノード中に界面活性剤を含まないアノードハーフセルとの動電位スキャンを示す。
図5a】3.9オームで1日1時間放電したときの試験において420分間放電した後のセルのCTスキャンを示す。
図5b】3.9オームで1日1時間放電したときの試験において420分間放電した後のセルのCTスキャンを示す。
図6】2つの異なるKOH濃度における、50ppmのTriton QS-44界面活性剤を含むセルおよび50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルの電荷移動(CT)抵抗を示す。
図7】50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルおよび50ppmのTriton QS-44界面活性剤を含むセルを3.9オームで1日1時間放電したときの放電曲線を示す。
図8】アノード中に50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルおよびアノード中に50ppmのTriton QS-44界面活性剤を含むセルを50mAで1日4時間放電したときの放電曲線を示す。
図9】アノード中に50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルおよびアノード中に50ppmのTriton QS-44界面活性剤を含むセルを50mAで8時間につき1時間放電したときの放電曲線を示す。
図10】アノード中に50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルおよびアノード中に50ppmのTriton QS-44界面活性剤を含むセルを100mAで1日1時間放電したときの放電曲線を示す。
図11】アノード中に10ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルおよびアノード中に50ppmのTriton XQS-20界面活性剤を含むセルを3.9オームで1日1時間放電したときの放電曲線を示す。
図12】アノード中に異なる濃度のTriton XQS-20界面活性剤を含むセルを10オームで連続的に放電したときの放電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、様々な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。実施形態のいくつかを示すが、すべてを示すわけではない。実際に、様々な実施形態は、多くの異なる形態で実施が可能であり、本明細書に記載される実施形態のみに限定解釈されるものではない。そうではなく、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提示されるものである。全体を通じて同様の番号は同様の要素を示す。以下の説明では、様々な構成要素が特定の値またはパラメータを有するものとして特定され得るが、これらの特徴は例示的な実施形態として提供される。実際に、例示的実施形態は、多くの同等パラメータ、サイズ、範囲、および/または値を実現し得るので、実施形態の様々な態様および概念を限定するものではない。「第1」、「第2」等、「一次」、「例示的な」、「二次」等の用語は、順序、量、または重要度を示すものではなく、1つの要素を別の要素と区別するために使用するものである。さらに、「1つの(aまたはan)」、および「前記(the)」の用語は、数量の制限を意味するのではなく、指示対象の「少なくとも一つ」の存在を示している。例えば、「1つの長鎖界面活性剤」は、2つ以上の長鎖界面活性剤を示し得る。
【0012】
本明細書に開示される各実施形態は、他の開示された実施形態の各々に適用可能であると考えられる。本明細書に記載される様々な要素のすべての組み合わせおよび部分的な組み合わせは、実施形態の範囲内である。
【0013】
パラメータ範囲が提示される場合、その範囲内のすべての整数および範囲、ならびにその小数点第1位および小数点第2位も、実施形態によって提示されることが理解されたい。例えば、「5~10%」には、5%、6%、7%、8%、9%、および10%、5.0%、5.1%、5.2%、・・・9.8%、9.9%、および10.0%、ならびに5.00%、5.01%、5.02%、9.98%、9.99%、および10.00%、ならびに、例えば、6~9%、5.1%~9.9%、および5.01%~9.99%が含まれる。
【0014】
数値または数値範囲の文脈における「約(about)」は、本明細書中で使用される場合、説明または特許請求の範囲に記載される数値または数値範囲の±10%以内を意味する。
【0015】
作用に関して「相乗的」とは、本明細書で使用する場合、2つの長鎖界面活性剤(LCS1およびLCS2)を含む電気化学セルが、2つの電気化学セル(そのうち1つがLCS1を含み、もう1つがLCS2を含む)の改良に基づいて予想されるものよりも、長鎖界面活性剤を含まない電気化学セルと比較して、比容量、ランタイムまたはいくつかの他の特性(すなわち、性能の測定基準)においてより大きな改良を示す場合を指す。
【0016】
比容量に関する「改良」は、本明細書で使用される場合、比容量が大きくなることを意味する。一般に、材料または電気化学セルの1つの特徴または性能の測定基準の「改良」は、材料またはセルの使用者または製造業者が望ましいと考える(すなわち、コストが低くなり、より長持ちし、電力量が大きくなり、耐久性が向上し、製造が容易または迅速になるなどする)ように、特徴または性能の測定基準が(他の材料または他の電気化学セルの特徴または性能の測定基準と比較して)異なることを意味する。
【0017】
「比容量」とは、本明細書で使用される場合、特定の速度で放電されたときの電気化学セル中の電荷の総量である。これは、典型的には、アンペア時で測定される。
【0018】
「ランタイム」とは、本明細書で使用される場合、電気化学セルがあるレベルの電荷を供給することができる時間の長さである。
【0019】
「長鎖界面活性剤」は、本明細書中で使用される場合、ポリマー鎖によって互いに連結された疎水性基を含む界面活性剤である。
【0020】
「疎水性」とは、本明細書中で使用される場合、水をはじく特徴、水に容易に溶解しない特徴、および/または非極性である特徴を有する分子または基を示す。
【0021】
「親水性」は、本明細書中で使用される場合、水に誘引される特徴、水に容易に溶解する特徴、および/または極性である特徴を有する分子または基を示す。
【0022】
xmAでz時間につきy時間放電する試験は、セルが、y時間、xmAの放電負荷下にあり、次にz-y時間休止し、次にサイクルが再び開始されることを意味することを理解すべきである。例えば、50mAで8時間につき1時間放電する試験は、セルが、1時間、50mAの放電負荷下にあり、次に7時間休止し、続いてサイクルが再開することを意味する。「連続的な」試験は休止期間を有さないことも理解されるべきである。
【0023】
一実施形態は、a)容器と、b)容器内に配置され、カソード、アノード、カソードとアノードとの間に配置されたセパレータ、アルカリ電解液、および長鎖界面活性剤を含む電極アセンブリと、を備えるアルカリ電気化学セルである。
【0024】
一実施形態では、長鎖界面活性剤が以下の構造を有する。
1-(R2Y)-R3
式中、R1は疎水性基であり、
2は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択され、
Yは、OおよびSからなる群から選択され、
3は親水性基であり、
n≧8である。
【0025】
一実施形態では、R1は、分岐または非分岐アルキル基、分岐または非分岐アルケニル基、分岐または非分岐アルキニル基、分岐または非分岐アリール基、分岐または非分岐フェニル基、分岐または非分岐ベンジル基、分岐または非分岐フェニルアルキル基、分岐または非分岐シクロアルキル基および分岐または非分岐シクロアルケニル基からなる群から選択される。一実施形態では、R3は、リン酸基、リン酸エステル基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、n≧9、n≧10、n≧11、n≧12、n≧13、n≧14、n≧15、n≧16、n≧17、n≧18、n≧19、n≧20、n≧21、n≧22、n≧23、n≧24、n≧25、n≧26、n≧27、n≧28、n≧29、n≧30、n≧31、n≧32、n≧33、n≧34、n≧35、n≧36、n≧37、n≧38、n≧39、またはn≧40である。別の実施形態では、n=9、n=10、n=11、n=12、n=13、n=14、n=15、n=16、n=17、n=18、n=19、n=20、n=21、n=22、n=23、n=24、n=25、n=26、n=27、n=28、n=29、n=30、n=31、n=32、n=33、n=34、n=35、n=36、n=37、n=38、n=39、またはn=40である。別の実施形態では、n≦9、n≦10、n≦11、n≦12、n≦13、n≦14、n≦15、n≦16、n≦17、n≦18、n≦19、n≦20、n≦21、n≦22、n≦23、n≦24、n≦25、n≦26、n≦27、n≦28、n≦29、n≦30、n≦31、n≦32、n≦33、n≦34、n≦35、n≦36、n≦37、n≦38、n≦39、またはn≦40である。
【0027】
一実施形態では、R2はエチレンであり、YはOである。一実施形態では、R1はフェニルアルキル基である。一実施形態では、R3はリン酸エステル基である。一実施形態では、R2はエチレンであり、YはOであり、R1はフェニルアルキル基であり、R3はリン酸エステル基である。一実施形態では、上記長鎖界面活性剤は以下の構造を有する。
【化1】
【0028】
一実施形態では、上記アノードは上記長鎖界面活性剤を含む。一実施形態では、上記セパレータは上記長鎖界面活性剤を含む。
【0029】
一実施形態では、上記電気化学セルは、一次電池すなわち使い捨て電池である。一実施形態では、上記電気化学セルは、二次電池すなわち再充電可能な電池である。
【0030】
一実施形態では、上記長鎖界面活性剤はセパレータ中に含まれる。一実施形態では、上記長鎖界面活性剤は、セパレータ上に噴霧される溶液中にある。一実施形態では、セパレータは、上記長鎖界面活性剤を含む溶液中に浸漬される。一実施形態では、上記長鎖界面活性剤は、3~5000μg/in、20~4000μg/in、50~3000μg/in、100~2000μg/in、500~1000μg/in、3~100μg/in、100~500μg/in、500~1000μg/in、1000~2000μg/in、2000~3000μg/in、3000~4000μg/in、または4000~5000μg/inの量でセパレータ中に含まれる。「in」は、セパレータの表面積を意味することを理解されたい。一実施形態では、上記長鎖界面活性剤は、3μg/in以上、10μg/in以上、25μg/in以上、50μg/in以上、100μg/in以上、500μg/in以上、1000μg/in以上、2000μg/in以上、3000μg/in以上、または4000μg/in以上の量でセパレータ中に含まれる。一実施形態では、上記長鎖界面活性剤は、5μg/in以下、10μg/in以下、25μg/in以下、50μg/in以下、100μg/in以下、500μg/in以下、1000μg/in以下、2000μg/in以下、3000μg/in以下、4000μg/in以下、または5000μg/in以下の量でセパレータ中に含まれる。
【0031】
一実施形態では、上記アノードは、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムおよびケイ素からなる群から選択される活物質を含む。
【0032】
一実施形態では、上記アノードは、上記アノードの有効成分の重量に対して、または上記アノードの総重量に対して、1~15,000ppm、10~10,000ppm、20~5,000ppm、50~2,000ppm、100~1,000ppm、または200~500ppmの濃度で上記長鎖界面活性剤を含む。
【0033】
一実施形態では、上記アノードは、上記アノードの有効成分の重量に対して、または上記アノードの総重量に対して、10ppm以上、15ppm以上、20ppm以上、25ppm以上、30ppm以上、35ppm以上、40ppm以上、45ppm以上、50ppm以上、55ppm以上、60ppm以上、65ppm以上、70ppm以上、75ppm以上、80ppm以上、85ppm以上、90ppm以上、95ppm以上、または100ppm以上の濃度で上記長鎖界面活性剤を含む。
【0034】
一実施形態では、上記アノードは、上記アノードの有効成分の重量に対して、または上記アノードの総重量に対して、10ppm以下、15ppm以下、20ppm以下、25ppm以下、30ppm以下、35ppm以下、40ppm以下、45ppm以下、50ppm以下、55ppm以下、60ppm以下、65ppm以下、70ppm以下、75ppm以下、80ppm以下、85ppm以下、90ppm以下、95ppm以下、または100ppm以下の濃度で上記長鎖界面活性剤を含む。
【0035】
一実施形態では、上記アノードは、上記アノードの有効成分の重量に対して、または上記アノードの総重量に対して、約10ppm、約15ppm、約20ppm、約25ppm、約30ppm、約35ppm、約40ppm、約45ppm、約50ppm、約55ppm、約60ppm、約65ppm、約70ppm、約75ppm、約80ppm、約85ppm、約90ppm、約95ppm、または約100ppmの濃度で上記長鎖界面活性剤を含む。
【0036】
一実施形態では、上記電解液は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)、塩化マグネシウム(MgCl)、または臭化マグネシウム(MgBr)を含む。
【0037】
一実施形態では、上記アルカリ電気化学セルは2以上の長鎖界面活性剤を含む。
【0038】
一実施形態では、上記電気化学セルは、長鎖界面活性剤を含まない類似のアルカリ電気化学セルの比容量またはランタイムよりも大きい比容量またはランタイムを有する。別の実施形態では、上記比容量またはランタイムは、1%~100%、5%~90%、10%~80%、15%~70%、20%~60%、25%~50%、または30%~40%増加する。一実施形態では、上記アルカリ電気化学セルは、2以上の長鎖界面活性剤を含み、前記比容量の増加が相乗的になる。
【0039】
一実施形態では、上記電圧は、0.1V~2.0V、0.2V~1.9V、0.3V~1.8V、0.4V~1.7V、0.5V~1.6V、0.6V~1.5V、0.7V~1.4V、0.8V~1.3V、0.9V~1.2V、または1.0V~1.1Vであるか、あるいは、0.1V、0.2V、0.3V、0.4V、0.5V、0.6V、0.7V、0.8V、0.9V、1.0V、1.1V、1.2V、1.3V、1.4V、1.5V、1.6V、1.7V、1.8V、1.9V、または2.0Vである。
【0040】
一実施形態は、上述の電気化学セルのうちのいずれかの製造方法であって、上記アノードは上記長鎖界面活性剤を含み、上記方法は、上記長鎖界面活性剤を、i)Zn粉末を含むアノード乾燥混合物およびii)ゲル化電解質、または、Znを含むアノードペーストおよびゲル化電解質とを調合する工程を含む、方法である。
【0041】
一実施形態は、上述の電気化学セルのうちのいずれかの製造方法であって、上記アノードは上記長鎖界面活性剤を含み、
1)Zn粉末を含むアノード乾燥混合物に前記長鎖界面活性剤を添加し、
2)前記アノード乾燥混合物をゲル化電解質と混合することと、を含む工程i)または、
1)前記長鎖界面活性剤を前記ゲル化電解質に添加し、
2)Znを含むアノード乾燥混合物をゲル化電解質と混合することを含む工程ii)、または、
1)Znを含むアノードペーストおよびゲル化電解質に前記長鎖界面活性剤を添加する工程iii)、または、
1)前記長鎖界面活性剤を電解質に添加し、
2)前記ゲル化剤と電解質とを混合してゲル化電解質を形成し、
3)Znを含むアノード乾燥混合物を前記ゲル化電解質と混合することを含む工程iv)を含む方法である。
【0042】
別の実施形態では、上記長鎖界面活性剤は、上記添加前の溶液中に含まれる。
【0043】
一実施形態は、上述の電気化学セルのうちのいずれかの製造方法であって、上記セパレータは上記長鎖界面活性剤を含み、上記方法は、
上記長鎖界面活性剤を含む溶液中にセパレータを浸漬する工程i)、または
上記長鎖界面活性剤を含む溶液をセパレータの少なくとも1つの層上に噴霧する工程ii)と、を含む方法である。
【0044】
別の実施形態では、上記セパレータが上記セル容器の内部にある間に、上記セパレータの上記少なくとも1つの層上に上記溶液が噴霧される。
【0045】
前述の実施形態は、図1を参照することにより、より適切に理解されるであろうが、この図1は、釘型またはボビン型の構造と、実施形態に特によく適している従来のLR6(単3)サイズのアルカリ電池に匹敵する寸法と、を有する円筒形セル1の断面立面図である。しかしながら、実施形態によるセルは、プリズム形状またはボタン形状のような他のサイズおよび形状や、当該技術分野で知られているような電極構成を有してもよいことを理解されたい。図1に示す電気化学セルの構成要素の材料および設計は、例示の目的のためであり、他の材料および設計を代用することができる。さらに、特定の実施形態では、カソード材料およびアノード材料は、セパレータおよび/または集電体の表面に塗布されて、「ゼリーロール」構成を形成するように巻かれてもよい。
【0046】
図1には、閉鎖底端部24と、頂端部22と、それらの間にある側壁26とを有する容器または缶10を含む電気化学セル1を示す。閉鎖底端部24は、突出部を含む端子カバー20を含む。缶10は内壁16を有する。本実施形態では、正端子カバー20は、底端部24に溶接されるか、または他の方法で取り付けられる。一実施形態では、端子カバー20は、例えば、その中央領域に突出部を有するめっき鋼で形成できる。容器10は、好ましくはその内部がニッケル、コバルトおよび/または他の金属または合金でメッキされた鋼のような金属、または電気化学セルの様々な入力部に適合する十分な構造特性を有する他の材料で形成できる。ラベル28は、容器10の外面の周囲に形成でき、負端子カバー46が容器10および正端子カバー20から電気的に絶縁されている限り、正端子カバー20および負端子カバー46の周縁部を覆うように形成できる。
【0047】
第1の電極18および第2の電極12が、セパレータ14を間に挟んで容器10内に配置されている。第1の電極18は、容器10の開口端部22に固定されたセパレータ14と閉鎖組立体40とによって区画された空間内に配置されている。閉鎖端部24、側壁26、および閉鎖組立体40により、セルの電極が収容されるキャビティが区画される。
【0048】
閉鎖組立体40は、ガスケットなどの閉鎖部材42と、集電体44と、集電体44と電気的に接触する導電端子46とを備える。閉鎖部材42は、好ましくは、セルの内部圧力が過剰になると閉鎖部材を破裂させる圧力解放孔を含む。閉鎖部材42は、ポリマー材料やエラストマー材料(例えばナイロン-6,6)、ポリ(フェニレンオキシド)やポリスチレンと結合されたポリプロピレンマトリックスなどの射出成形可能なポリマーブレンド、または金属などの他の材料から形成されてもよい。ただし、集電体44および導電端子46は、第2の電極12の集電体として機能する容器10から電気的に絶縁されている。図示の実施形態では、集電体44は、細長い釘またはボビン形状の構成要素である。集電体44は、銅または黄銅などの金属または合金、導電性めっきが施された金属またはプラスチックの集電体等で形成されている。他の適切な材料を用いてもよい。集電体44は、閉鎖部材42における好ましくは中央に配置された孔を通して挿入される。
【0049】
第1の電極18は、好ましくは、負極またはアノードである。負極は、1種以上の活物質と、導電性材料と、固体酸化亜鉛と、界面活性剤との混合物を含む。負極は、場合によっては、他の添加剤(例えば、結合剤またはゲル化剤など)を含んでもよい。
【0050】
本実施形態の負極用の主な活物質の一例として亜鉛が挙げられる。水銀およびマグネシウムを用いてもよい。好ましくは、負極に用いる活物質の体積は、所望の粒子同士の接触および所望のアノード対カソード(A:C)比を維持するのに十分なものにする。
【0051】
粒子同士の接触は、電池寿命の間は維持されるべきである。負極中の活物質の体積が過度に小さい場合、セルの電圧は、セルが機器に電力を供給しているときに、許容できないほど低い値まで急激に低下する可能性がある。電圧降下は、負極の導電性マトリックスにおいて連続性がなくなることによって引き起こされると考えられる。導電性マトリックスは、未放電の活物質粒子、電気化学的に形成された導電性酸化物、またはそれらの組み合わせから形成できる。酸化物が形成され始めた後で、且つ、存在するすべての活物質粒子の間を架橋するのに十分なネットワークが形成される前に、電圧降下が生じる可能性がある。
【0052】
上記実施形態での使用に適した亜鉛は、BIA100、BIA115などの様々な名称のもとに、多数の異なる商業的供給源から購入できる。ベルギー国ブルッセルのユミコア社は、亜鉛供給業者の一例である。好ましい実施形態において、亜鉛粉末は、一般に、75μm未満の微粒子を25~40パーセント、好ましくは75μm未満の微粒子を28~38パーセント有する。一般に、微粒子の割合が低くなると、色素増感太陽電池(DSC)の所望の動作を実現することができず、より高い割合の微粒子を用いると、ガス発生の増加につながる可能性がある。セル内の負極のガス発生を低減し、試験で得られた動作結果を維持するために、適切な亜鉛合金が必要とされる。
【0053】
アルカリ性電解液は、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ金属水酸化物、またはそれらの混合物を含む。水酸化カリウムが特に好ましい。負極のゲル化電解質を形成するために使用されるアルカリ性電解質は、アルカリ金属水酸化物を、アルカリ性電解質の総重量を基準にして、約26重量%~約36重量%(例えば、約26重量%~約32重量%、具体的には約26重量%~約30重量%)の量で含有する。負極のアルカリ金属水酸化物と添加された固体酸化亜鉛との間で相互作用が起こり、アルカリ金属水酸化物が少なくなると、DSCの動作が改良されることが見出されている。アルカリ性が低い電解質が好ましいが、アノードの電解質分離が急速に起こる可能性がある。アルカリ金属水酸化物濃度の上昇により、アノードがより安定するが、DSCの動作が低下する可能性がある。電解質は、添加剤を含んでいてもよい。この添加剤の濃度は、例えば、1~50,000ppmであってもよい。
【0054】
好ましくは、米国オハイオ州クリーブランドのノベオン社から購入可能なCarbopol(登録商標)940などの架橋ポリアクリル酸のようなゲル化剤を、公知のように負極に用いる。カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミドおよびポリアクリル酸ナトリウムは、アルカリ電解質溶液中で使用するのに適した他のゲル化剤の一例である。負極中の亜鉛および固体酸化亜鉛粒子の実質的に均一な分散を維持するためには、ゲル化剤が使用されることが望ましい。含まれるゲル化剤の量は、電解質分離の速度が低くなるように選択され、アノード粘度および降伏応力はあまり大きくないので、アノードの計量分配に関する問題につながる可能性がある。
【0055】
負極内に場合によって存在し得る他の成分には、ガス発生防止剤、有機防食剤または無機防食剤、めっき剤、結合剤、または追加の界面活性剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。ガス発生防止剤または防食剤としては、例えば、水酸化インジウムなどのインジウム塩、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、アルカリ金属硫化物などが挙げられる。一実施形態では、溶解された酸化亜鉛は、好ましくは電解液中への溶解によって存在し、ボビンまたは釘状集電体上のめっきを改良し、負極の棚状のガス発生(shelf gassing)を抑制する。添加された溶解酸化亜鉛は、アノード組成物中に存在する固体酸化亜鉛とは明確に別ものである。一実施形態では、負極電解質の総重量を基準にして約1重量%の濃度の溶解酸化亜鉛が好ましい。可溶性酸化亜鉛または溶解酸化亜鉛は、一般に、約4m/g以下のBET表面積を有し、約1ミクロンの粒径D50(平均粒径)を有する。このBET表面積は、酸化亜鉛が150℃で1時間脱気された後、多点較正を有するMicromeritics(登録商標)のTristar3000BET比表面積分析器を用いて測定される。この粒径D50は、上記のように、CILAS粒径分析器を用いて測定される。別の実施形態では、セル放電中にセパレータを通るセルの短絡を実質的に防止するために、負極電解質の総重量を基準にして約0.3重量パーセントのケイ酸ナトリウムを陰極に用いることが好ましい。追加の界面活性剤は、非イオン性、またはアニオン性、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0056】
負極は、公知なように、多数の異なる方法で形成できる。例えば、負極成分は、ドライブレンドされた状態でセルに添加され、アルカリ電解質は別個に添加される。あるいは、好ましい実施態様のように、予備ゲル化された負極プロセスを用いる。
【0057】
一実施形態では、亜鉛粉末と、固体酸化亜鉛粉末と、ゲル化剤以外の他の任意の粉末とを結合して調合する。その後、界面活性剤を、亜鉛および固体酸化亜鉛を含有する混合物中に導入する。アルカリ電解質、可溶性酸化亜鉛およびゲル化剤、および場合によっては他の液体成分を含むプレゲルを、界面活性剤と、亜鉛と、固体酸化亜鉛との混合物に導入し、これらをさらに混合することにより、セルに添加する前に実質的に均質な混合物が得られる。あるいは、別の好ましい実施形態において、固体酸化亜鉛は、アルカリ電解質、ゲル化剤、可溶性酸化亜鉛および他の所望の液体を含む負極プレゲル中に予備分散され、例えば約15分間調合される。次いで、固体酸化亜鉛および界面活性剤を添加し、例えば、約20分間さらに負極を調製する。負極で使用されるゲル化電解質の量は、一般に、負極の総重量を基準にして、約25重量%~約35重量%であり、例えば、約32重量%である。ゲル化電解質の体積百分率は、負極の総体積を基準にして約70%であってもよい。負極製造プロセス中にゲル化剤によって吸収されたアルカリ電解液だけでなく、アルカリ金属水酸化物水溶液(すなわち、「遊離電解質」)も、製造プロセス中にセルにさらに添加してもよい。遊離電解質は、正極または負極、あるいはそれらの組み合わせによって区画されるキャビティ内に配置することによって、セル内に組み込まれてもよい。遊離電解質をセルに組み込むために使用される方法は、遊離電解質が負極、正極、およびセパレータと接触している場合には、重要ではない。一実施形態では、遊離電解質は、負極合剤の添加前および添加後の両方で添加される。一実施形態では、約0.97グラムの29重量パーセントKOH溶液を、遊離電解質としてLR6型セルに添加する。そのうち約0.87グラムを、負極を挿入する前に、セパレータで区画されたキャビティに添加する。29重量パーセントKOH溶液の残りは、負極を挿入した後に、セパレータで区画されたキャビティ内に注入される。
【0058】
本明細書において正極またはカソードとも呼ばれる第2の電極12は、電気化学的活物質として電解二酸化マンガン(EMD)を含んでもよい。他の実施形態では、カソード材料は、酸化銀(Ag2O)またはオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)であってもよい。EMDは、一般に、正極、すなわち、二酸化マンガン、導電性材料、正極電解質および添加剤(存在する場合、有機添加剤を含む)の総重量を基準にして、約80重量%~約86重量%(好ましくは約81重量%~85重量%)の量で含まれる。正極は、電極の所望の成分を結合して調合した後、容器の開口端に多量の混合物を分配し、次にラムを使用して、この混合物を、セパレータ14と第1の電極18とが後に配置される容器内のキャビティを区画する固体管状構造に成形することによって形成される。第2の電極12は、図1に示すように、棚状部30と内面32とを有する。あるいは、正極は、EMDおよび場合によっては添加剤を含む混合物から複数のリングを予め形成し、次にリングを容器内に挿入して管状の第2の電極を形成することによって構成されてもよい。図1に示すセルは、典型的には、3つまたは4つのリングを含む。
【0059】
正極は、EMDと調合されると実質的に正極の全体にわたって導電性マトリックスを構成する導電性材料(例えば、黒鉛)のような他の成分を含んでもよい。導電性材料は、天然(すなわち、採掘されたもの)でも合成(すなわち、製造されたもの)でもよい。一実施形態では、セルは、約12から約14までの範囲の活物質(すなわち、酸化物)対炭素比(O:C比)を有する正極を含む。酸化物対炭素の比率が高すぎると、容器とカソードとの間の抵抗が下がる。これにより、全体的なセル抵抗に影響を及ぼし、DSC試験のようなハイレート試験、または高めのカットオフ電圧に潜在的な影響を及ぼす可能性がある。さらに、黒鉛は膨張性でも非膨張性でもよい。アルカリ電池に用いる黒鉛の供給業者としては、オハイオ州ウエストレイクのティムカルアメリカ社と、イリノイ州シカゴのスーペリアグラファイト社と、スイス国バーゼルのロンザ社とが挙げられる。導電性材料は、一般に、正極の総重量を基準にして、約5重量%~約10重量%の量で含まれる。黒鉛が多すぎると、EMD投入量ひいてはセル容量が小さくなる可能性がある。一方、黒鉛が少なすぎると、容器とカソードとの間の接触抵抗および/またはバルクカソード抵抗が大きくなる。追加の添加剤の例としては、イタリア国マッサのバリオ・エ・デリヴァティブ社(Bario E.Derivative S.p.A.)から購入できる硫酸バリウム(BaSO)がある。硫酸バリウムは、正極の総重量を基準にして、一般に約1~2重量パーセントの量で含まれる。他の添加剤としては、例えば、酢酸バリウム、二酸化チタン、コアチレンなどの結合剤、およびステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0060】
一実施形態では、正極成分(EMD)、導電性材料および硫酸バリウム、ならびに場合によっては添加剤を一緒に調合して、均質な混合物を形成する。調合プロセス中、場合によっては有機添加剤を含む約37%~約40%KOH溶液などのアルカリ電解質溶液を混合物中に均一に分散させ、それによって正極材料全体にわたって溶液の均一な分布を保証する。次に、この混合物を容器に加え、ラムを使用して成形する。成形前および成形後の容器内の水分および正極合剤、ならびにこの合剤の成分は、好ましくは、良質の正極を成形することができるように最適化される。水分含有量を最適化すれば、湿潤混合物により、ばりやはねが最小の正極が成形され、乾燥混合物により、剥離が最小且つ工具摩耗が過剰な正極が形成される。最適化により、所望のように大きいカソード重量を実現する。正極合剤中の水分含有量は、全体的なセル電解質のバランスに影響を及ぼし、ハイレート試験に影響を及ぼす。
【0061】
セル設計者が利用するパラメータの一つは、アノード(A)対カソード(C)比(すなわち、A:C比)のような1つの電極の電気化学容量と対向電極の電気化学容量との比として、セル設計を特徴付ける。負極すなわちアノード中に亜鉛を用いるとともに正極すなわちカソード中にMnOを用いるLR6型アルカリ一次電池の場合、インパクト成形された正極については、A:C比は1.32:1よりも大きく、例えば1.34:1よりも大きく、具体的には1.36:1であってもよい。リング成形された正極のA:C比は、例えば約1.2:1~約1.1:1のように低くすることができる。
【0062】
セパレータ14は、第1の電極18と第2の電極12とを分離するために設けられている。セパレータ14は、負極の電気化学的活物質から正極の電気化学的活物質を物理的に誘電分離した状態を維持し、電極材料間のイオンの輸送を可能にする。さらに、セパレータは、電解質のためのウィッキング媒体として、また、負極の断片化した部分が正極の頂部に接触するのを防ぐ環としても機能する。セパレータ14は、層状のイオン透過性不織布繊維であってもよい。典型的なセパレータは、通常、2層以上の紙を含む。従来のセパレータは、通常、以下のいずれかの方法で形成される。すなわち、セパレータ材料をカップ状バスケットに予備成形し、次いで、このカップ状バスケットを、第2の電極12および閉鎖端部24によって画定されるキャビティおよびその上にある何らかの正極材料の内側に挿入するか、あるいは、2つの矩形シート状セパレータを互いに対して90°回転させてキャビティ内に挿入することによってセル組み立て中にバスケットを形成する。従来の予備成形されたセパレータは、典型的には、第2の電極の内壁と一致するとともに閉鎖底端部を有する円筒状に巻かれた不織布のシートから構成される。
【0063】
上に引用された全ての参考文献、ならびに本明細書中に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0064】
実施形態は、図示されるとともに詳しく上述されているが、このような図示および記述は、説明的または例示的なものと考えられるべきであり、限定的なものではない。以下の請求項の範囲および趣旨内で、当業者によって変更および修正がなされ得ることが理解される。具体的には、実施形態は、上述および以下に記載される異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせを含む。
【0065】
実施形態は、実施形態およびこれらの実施形態の多くの効果をより適切に理解できるようにする以下の例示的な非限定的実施例によってさらに説明される。以下の実施例は、好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、実施形態を実施する際に十分に機能するために実施形態において使用される技術であることが当業者によって理解されるべきであり、したがって、実施のための好ましいモードを構成すると考えることができる。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示される特定の実施形態において多くの変更を行えることを理解すべきであり、実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく同等または同様の結果を得ることができる。
【0066】
実施例および考察
【0067】
実施例1‐中程度ドレイン動作試験
【0068】
セル内の亜鉛アノードに、それぞれ式(OCHCH)x(式中、xは8以上である)のエトキシレート鎖を有する3つの異なる長鎖界面活性剤を添加して、中程度のドレイン動作(3.9オームで1日1時間放電したとき、および250mAで1日1時間放電したとき)に対するこれらの異なる界面活性剤の効果を試験した。(Zn重量に対して)10~200ppmの界面活性剤をアノードに添加した。試験の対象となった界面活性剤は、Triton X-165(x=16)、Triton X-305(x=30)、およびTriton XQS-20(x=35)であり、全てダウ化学社(ミシガン州ミッドランド)から入手した。PE-510(x=6)を対照として使用し、ソルベイ社(ベルギー国ブリュッセル)から入手した。
【0069】
3.9オームで1日1時間放電する試験および250mAで1日1時間放電する試験の結果を図2にまとめる。3.9オームで1日1時間放電する試験および250mAで1日1時間放電する試験の両方により、対照の界面活性剤からTriton X-165界面活性剤へ、さらにはTritonX-305界面活性剤およびTriton XQS-20界面活性剤への改良が見られた。
【0070】
界面活性剤は、放電中のアノードシャットダウンを遅延させ、中程度のドレイン動作を改良するために使用される。長鎖界面活性剤は、アノード放電生成物の形態を変更するか、または、アノード全体のアノード放電を均一にすることにより、アノードシャットダウンを遅延させると考えられる。
【0071】
実施例2‐TritonXQS-20および亜鉛アノード分析
【0072】
前述の実施例において分かるように、TritonXQS-20界面活性剤は、中程度のドレイン試験において電池の特性を改良できる。この改良は、アノードシャットダウンを遅延させることによるものと考えられる。この界面活性剤を追加の試験で検査した。
【0073】
TritonXQS-20は、以下の構造を有するリン酸エステル界面活性剤である。
【化2】
【0074】
Triton XQS-20は、疎水性オクチルフェニルテールを有する。親水性部分はリン酸基である。エトキシレート鎖は、35のエトキシレート単位を含み、その親水性は、エトキシレート鎖長が大きくなるにつれて上昇する。
【0075】
亜鉛アノード中に50ppmのTritonXQS-20を含むセル(ここで、50ppmは、総亜鉛重量に対するものである。)が、対照としてアノード中に20ppmのPE-510を含むセル、およびアノード中に界面活性剤がないセルと共に用意された。放電曲線(図3)に示すように、Triton XQS-20界面活性剤は、アノードシャットダウンを遅延させるので、PE-510セルと比較して、3.9オームでの1日1時間の動作を大幅に改良する。同様の傾向がアノードハーフセルの動電位走査において観察された(図4)。50ppmのTritonXQS-20界面活性剤を含むセルは、20ppmのPE-510を含むセルまたは界面活性剤を含まないセルと比較して、アノードシャットダウンが遅延した(アノード放電流が減少した)。
【0076】
アノード放電パターン/均一性に対する界面活性剤の影響
【0077】
アノード放電の均一性を改良することにより界面活性剤がアノードシャットダウンを遅延させる可能性を調査するために、最初に、セルを3.9オームで1日1時間放電する試験で420分間放電させた。次に、CTスキャンを使用してアノード放電の均一性を調べた。図5aに示すように、PE-510界面活性剤を有するセルのアノード/セパレータ界面に近い領域に高密度のZnO層(色の濃いリングとして示されている)が形成された。また、TritonXQS-20界面活性剤(図5b)を含むセルでも高密度のZnO層が観察されたが、ZnOの分布は、アノード全体にわたってより均一であった。放電はアノード/セパレータ界面で開始するが、アノード中にTritonXQS-20界面活性剤が含まれる場合、TritonXQS-20界面活性剤がZn放出を抑制するので、アノード放電はセパレータ/アノード界面からさらに離れる方向に延び、特定の放電速度を維持することが知られている。
【0078】
アノードシャットダウンを遅延させるための界面活性剤の要件
上述したように、Triton XQS-20界面活性剤は、アノード放電を抑制するので、アノードシャットダウンを遅延させる際に重要な役割を果たす。Triton XQS-20界面活性剤がアノード放電を抑制する理由を理解することが重要である。長いエトキシレート鎖は、TritonXQS-20界面活性剤に関連する独特の特徴である。エトキシレート鎖長がアノードシャットダウンを遅延させる効果に影響を与える重要なパラメータであることを確認するために、この研究用に、関連する界面活性剤であるTritonQS-44(ダウ化学社(ミシガン州ミッドランド))を選択した。TritonQS-44の構造を以下に示す。
【化3】
【0079】
QS-44は、XQS-20と同様の分子構造を有するが、はるかに短い鎖長(合計8個のエトキシレート単位)を有する。これらの2つの界面活性剤は、アノード放電に対する鎖長の影響を研究するために使用できる。
【0080】
50ppmのXQS-20界面活性剤を含むセルと50ppmのQS-44界面活性剤を含むセルとの電荷移動(CT)抵抗を比較し、その結果が図6から分かる。XQS-20を含むセルは、アノードが26%KOHを含む場合およびアノードが36%KOHを含む場合の両方において、かなり高いCT抵抗を有する。アノードに同じ濃度の界面活性剤が含まれる場合、QS-44の分子量が小さいため、QS-44はXQS-20と比較してZn表面上の表面被覆率が高くなるはずである。しかしながら、XQS-20アノードは、はるかに高いCT抵抗を示している。このことは、鎖長がアノード放電の抑制のための主要な要素であることを示している。
【0081】
アノードシャットダウンに対する鎖長の影響は、図7に見られる3.9オームで1日1時間放電する試験において確認される。界面活性剤濃度レベルが同じであれば、より長い鎖長を有する界面活性剤(TritonXQS-20)が、アノードシャットダウンを遅延させる際にQS-44よりも有利である。実際、長鎖界面活性剤のプラス効果も、50mAで1日4時間放電する試験(図8に示す結果)、50mAで8時間につき1時間放電する試験(図9)、および100mAで1日1時間放電する試験(図10)を含む他の試験において観察された。
【0082】
上記の考察に基づいて、長いエトキシレート鎖は、アノードシャットダウンを遅延させるためのXQS-20界面活性剤の重要な特徴であるが、長鎖界面活性剤が一般に大きな分子量を有するので、その有効性を維持するために最小の界面活性剤濃度が必要であることが明らかなようである。界面活性剤は、Zn表面上のあるレベルの表面被覆率に達しなければ、アノードシャットダウンを遅延させる機能がなくなる可能性がある。図11に示すように、TritonXQS-20界面活性剤濃度が10ppmである場合には、アノードシャットダウンの問題が依然として存在する。10オームでの連続試験(図12に示す結果)では、早期アノードシャットダウンを避けるために、界面活性剤濃度は30ppm以上である必要がある。場合によっては、TritonXQS-20界面活性剤の長いエトキシレート鎖は、アノード放電の抑制に起因して、高ドレイン試験に悪影響を及ぼす。界面活性剤濃度および他のアノードパラメータ(すなわち、KOH濃度、Zn濃度)は、全体的な動作に対する長鎖界面活性剤の利点を最大にするために最適化する必要がある。
【0083】
結論:
【0084】
1.CTスキャンは、対照の界面活性剤(PE-510)を含むセルのアノード/セパレータ界面の近くに、高密度ZnO層が形成されることを示す。高密度のZnO層は、電解質およびHOの拡散を阻止し、その結果、3.9オームで1日1時間放電する試験においてアノードシャットダウンを引き起こす。
【0085】
2.TritonXQS-20界面活性剤は、放電の終わりごろにアノードシャットダウンを遅延させることができるので、3.9オームでの1日1時間の動作を改良する。
【0086】
3.TritonXQS-20界面活性剤は、アノード/セパレータ界面に近い領域で局所的な放電の代わりにアノード全体における均一なアノード放電を可能にするので、アノードシャットダウンを遅延させる。TritonXQS-20界面活性剤の存在により、アノード放電は、アノード放電に対する抑制を起因として、アノード/セパレータ界面からさらに離れる方向に延ばされる。
【0087】
4.長いエトキシレート鎖は、TritonXQS-20がアノードシャットダウンを遅延させる能力に大きく寄与する。長鎖により、アノードの電荷移動抵抗が高くなり、アノード放電が減速する。
【0088】
5.TritonXQS-20界面活性剤は、他の中程度および低ドレイン試験(すなわち、100mAで1日1時間放電する試験、50mAで8時間につき1時間放電する試験)においてアノードシャットダウンを遅延させるのにも有用であり、これにより、アノードシャットダウンを遅延させる能力がさらに確認される。
【0089】
6.長いエトキシレート鎖に関連する高いアノード電荷移動抵抗が原因で、場合によっては、TritonXQS-20界面活性剤(50ppm)は、高ドレイン動作(DSCおよび750mAグルーミング(grooming))に悪影響を与える。界面活性剤濃度および他のアノードパラメータ(すなわち、KOH濃度、Zn濃度)の最適化は、全体的な動作に対する利点を最大にするために必要である。
【0090】
上記の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する、これらの実施形態が関係する当業者には、多くの修正および他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、実施形態は開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、修正および他の実施形態は、本明細書に開示される実施形態のリストおよび添付の請求項内に含まれることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書中で使用されるが、これらの用語は、一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。本出願に記載される実施形態について、本明細書に開示される各実施形態は、他の開示された実施形態の各々に適用可能であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12