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特許7410653電気化学式二酸化炭素変換器及び液体再生器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電気化学式二酸化炭素変換器及び液体再生器
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20231227BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20231227BHJP
   B64G 1/48 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20231227BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20231227BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20231227BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231227BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20231227BHJP
【FI】
B01D53/14 200
C02F1/461 Z
B64G1/48
B01D53/22
B01D61/36
C02F1/44 A
B01D53/14 220
C25B9/00 Z
C25B9/00 G
C01B32/50
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019091835
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2019205997
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】15/985,475
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・カミレ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・イェーツ
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-271814(JP,A)
【文献】特開2015-199042(JP,A)
【文献】特開2010-075842(JP,A)
【文献】特表2014-520959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0065054(US,A1)
【文献】米国特許第03852180(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/22;61/00-71/82
C02F 1/44
B64B 1/00-1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00-5/60
B64G 1/00-99/00
B64U 10/00-80/86
C25B 9/00
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境用の二酸化炭素変換システムであって、
前記環境の下流にあり、二酸化炭素(CO )を含む汚染されたガス流れを前記環境から受容し、液体CO 吸着剤としてのイオン液体と接触させるための第1の気液接触器-分離器と、
前記第1の気液接触器-分離器の下流にあり、前記第1の気液接触器-分離器から放出された、使用されたイオン液体を受容するための電気化学変換セルであって、使用されたイオン液体中のCO を電気分解により、酸素へと変換し、酸素および洗浄されたイオン液体を別々に放出するように構成された、電気化学変換セルと、
前記第1の気液接触器-分離器と前記電気化学変換セルとの間に介在する、電気化学変換セルから放出された洗浄されたイオン液体を受容し、かつ洗浄されたイオン液体を第1の気液接触器-分離器に供給するための、洗浄されたイオン液体貯蔵器と、を含む、システム。
【請求項2】
前記電気化学変換セルの下流にあり、かつ、前記洗浄されたイオン液体貯蔵器の上流にある、第2の気液接触器-分離器を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記環境が周囲のガスに対して閉ざされている、請求項1又は2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年2月14日出願の米国特許出願第15/896,150号の利益及び優先権を主張し、本願は、2017年2月27日出願の米国特許仮出願第62/463,921号及び2018年2月14日出願の米国特許出願第15/896,156号の利益を主張し、並びに本願は、2017年2月27日出願の米国特許仮出願第62/463,921号の利益を主張するものであり、これらのすべてが参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、全般的には二酸化炭素変換に関し、特に気液接触分離及び電気化学セルを使用した二酸化炭素変換の装置及び方法に関する。
【0003】
火星などへの長期間のヒトの宇宙旅行では、宇宙飛行士が吐き出した二酸化炭素(CO)から酸素(O)を高収率で回収することができる生命維持システムが必要となる。この技術的課題は、宇宙船重量及び放射線への脆弱性の次に、宇宙空間での長期の居住に対するハードルとなる。国際宇宙ステーション上では、COを固体吸着剤への吸着によってキャビンから除去している。吸着剤は重く、また宇宙空間で交換又は整備することができない。偶発的な浸水が起こると、吸収された水を除去することは困難である。加えて、固体吸着剤からのCO脱着には、水を生成するサバチエ反応器内での水素(H)との下流反応のために高い再生温度が必要とされる。Oは、電気分解により水から回収される。これは、故障の機会が多く、最大のO収率が50%である、非常に複雑なシステムである。
【0004】
火星上にヒト用の環境を確立することは、呼吸用及び推進用の酸素の供給源を必要とする。吐き出した二酸化炭素から酸素を回収することに加えて、火星の大気から二酸化炭素を酸素に変換することも有用であり得る。火星の大気は、600Pa(0.087psi)の平均圧力及び-55℃の平均温度を有する。火星の大気は、96%のCO、1.9%のアルゴン、及び1.9%の窒素を含む組成を有する。
【0005】
見て分かるように、深宇宙用車両などの環境内において、供給ガスから二酸化炭素を取り出し、それを酸素に変換するための改良された装置及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、環境用の二酸化炭素変換システムは、環境の下流にある第1の気液接触器-分離器と、第1の気液接触器-分離器の下流にある電気化学変換セルと、第1の気液接触器-分離器と電気化学変換セルとの間に介在するイオン液体貯蔵器と、を含む。
【0007】
本発明の更なる態様では、周囲の空気又はガスに対して閉ざされている環境用の二酸化炭素変換システムは、環境の下流にあるスクラバと、スクラバの下流にある電気化学変換セルと、スクラバと電気化学変換セルとの間に介在するイオン液体貯蔵器と、を含み、スクラバは、汚染された空気を環境から受容し、洗浄された液体吸収剤をイオン液体貯蔵器から受容し、洗浄された空気を環境に放出するように構成されており、セルスタックは、酸素を環境に放出するように構成されている。
【0008】
本発明の別の態様では、周囲の空気又はガスに対して開かれている環境用の二酸化炭素変換システムは、環境の下流にあるスクラバと、スクラバの下流にある電気化学変換セルと、スクラバと電気化学変換セルとの間に介在するイオン液体貯蔵器と、を含み、スクラバは、汚染された空気を環境から受容し、洗浄された液体吸収剤をイオン液体貯蔵器から受容し、Ar、N、及びCOのうちの少なくとも1つを環境に放出するように構成されており、セルスタックは、O、CO、及びCHのうちの少なくとも1つを環境に戻すことなく放出するように構成されている。
【0009】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の図面、説明、及び特許請求の範囲を参照することでより良く理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による二酸化炭素変換システムの概略図である。
図1A】本発明の実施形態による二酸化炭素変換システム内の電気化学変換セルの概略図である。
図2】本発明の別の実施形態による二酸化炭素変換システムの概略図である。
図3A】本発明の更なる実施形態による二酸化炭素変換システムの概略図である。
図3B】本発明の更なる実施形態による二酸化炭素変換システムの概略図である。
図4A】本発明の実施形態によるスクラバの側面図である。
図4B】本発明の実施形態によるスクラバの側面図である。
図5A】本発明の別の実施形態によるスクラバの側面図である。
図5B】本発明の別の実施形態によるスクラバの側面図である。
図6A】本発明の実施形態によるストリッパの側面図である。
図6B】本発明の実施形態によるストリッパの側面図である。
図7A】本発明の別の実施形態によるストリッパの側面図である。
図7B】本発明の別の実施形態によるストリッパの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明は、本発明を実施するための現在企図される最良の形態である。説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、単に本発明の一般原則を例示することを目的として行われているにすぎず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって明確に定義される。
【0012】
それぞれを互いに独立して又は他の特徴と組み合わせて使用することができる様々な発明的特徴が以下に記載される。しかしながら、任意の単一の発明的特徴は、上述の問題のいずれにも対処しないことも、上述の問題のうちの1つのみに対処することもあり得る。更に、上述の問題のうちの1つ以上が、以下に説明される特徴のいずれによっても十分に対処されないことがあり得る。
【0013】
概して、本発明、特に気液分離は、重力と無関係に動作するので、本発明は、長期間のミッションで使用される宇宙船などの環境、具体的には、宇宙ステーション並びに低地球軌道で及びそれを越えて使用される宇宙船及び居住環境に組み込むことができる。
【0014】
本発明は、全般的には、イオン液体(IL)が液体CO吸着剤として働くことができる、イオン液体吸着剤による二酸化炭素除去(CDRILS)システムを提供する。固体吸着剤と対照的に、液体CO吸着剤は、宇宙空間においてより簡単に交換することができると同時に、連続的な流れ処理が、システムの堅牢性の向上及び総質量の減少をもたらす可能性を有する。厳選したILは、COに対する高い容量、化学的及び電気化学的安定性、ガス流れ中の水分との相溶性、並びに無視できるほど小さい蒸気圧を有する。COと水の両方に対するILの容量は、CO除去と水分除去の二重機能を可能にし、その一方で、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(BMIM Ac)と1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(EMIM Ac)の両方の化学的安定性は、繰り返される吸着/脱着、温度サイクリング、及び電気化学的サイクリングを可能にする。蒸気圧の欠如により、ILは、空気汚染のリスク又は環境の外部への蒸発による液体の損失を避けなければならない宇宙空間での閉鎖環境に特に適したものとなる。CDRILS中空糸スクラバ膜は、IL内へのCO吸着用に大きい表面積を提供する。後に続くストリッパ膜は、固体吸着剤に必要な温度よりも低い温度でCOを除去し、スクラバへの再循環のためにILを再生する。
【0015】
本発明のCDRILSシステムは、スクラバの後に続いて、COを吸着したILと水の混合物を生成することができる。本発明のイオン液体中CO電気分解(CEIL)は、ILを電解質溶液として使用して、CO及び水を、O並びに一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、及び/又は他の生成物などの還元炭素種へと電気化学的に直接変換することができる。O及び還元炭素生成物は、COよりも容易にILから脱離する。
【0016】
CDRILS及びCEILシステムが生命維持に使用されるとき、O及びCOの生成は、二酸化炭素メタン化用のサバチエ反応器と同様の一酸化炭素メタン化用に構成されている反応器が後に続く場合、COからの最大可能O収率を50%から67%にまで増加させる。還元炭素種又は反応器の更なる還元生成物は、追加の貴重な生成物を回収するために更に転換されてよく、又は燃料として使用することができる。
【0017】
更に、CO供給源が火星の大気である場合、本発明は、現地資源利用(ISRU)に使用され得る。ISRUの所望の目標が生命維持である場合は、COをCO及びOに電気分解することができる。目標が推進用の燃料生成である場合は、CO及び水をCO、H、及び/又はメタン(CH)並びにOに電気分解することができる。CO及びHは更に第2の触媒でCHに転換され得、又は電気化学的に生成されたCHが直接利用され得る。O生成物は、燃料の燃焼時に使用するために貯蔵され得る。
【0018】
本発明はまた、CO転換と同じセルでのH及びOへの水電解も可能にする。同じ電気分解セルでの水電解は、現行のO生成セルスタックを不要にし得る。
【0019】
本発明は、キャビンの空気又は火星の大気からのCO及び水分除去のために中空糸系の接触器を使用する。水と混合されたILは、中空糸モジュールのルーメン又はシェルのいずれかを通って流れ、一方、キャビンの空気又は火星の大気は、シェル又はルーメンのいずれか空いている方を通って逆方向に流れる。COを吸着したILと水の混合物は、電気化学変換セルのカソード区画を通って連続的に流れる。カソード区画は、イオン交換膜又は多孔質セパレータによってアニオン区画から分離されている。アノード区画は、COが含まれていないIL溶液又は水溶液のいずれかを含む。2つの電極の間に電圧を印加すると、カソードにおいてCO及び水が還元炭素種並びにH及び水酸化物に還元され、アノードにおいて水又は水酸化物がOに酸化される。必要なO生成速度を得るための適当なスケーリングを提供するために、追加のセルをスタックすることができる。
【0020】
次いで、アノードからのOを含有する液体は、O分離用のストリッパ又は遠心分離器に流れ、その後、キャビンに送られるか、貯蔵され得る。液体は、アノード区画に再循環される。カソードからの生成物を含有する液体は、中空糸ストリッパに流れる。液体がルーメン又はシェルを通って流れると同時に、中空糸のもう一方の側面への低い圧力により、生成物及び水がILから脱離して、スクラバ流入口に必要な混合物が回収される。生成物は、水及びメタン生成用のメタン化触媒に流れる。
【0021】
2017年2月1日出願の表題「Apparatus and Methods for Enhancing Gas-Liquid Contact/Separation」の米国特許出願第15/422,170号、2017年2月1日出願の表題「Ionic Liquid CO2 Scrubber for Spacecraft」の米国特許出願第15/422,166号、2018年2月14日出願の表題「Hollow Fiber Membrane Contactor Scrubber/Stripper for Cabin Carbon Dioxide and Humidity Control」の米国特許出願第15/896,150号、及び2018年2月14日出願の表題「Dual Stripper with Water Sweep Gas」の米国特許出願第15/896,156号は、本明細書に十分に記載されているかのごとく、参照により本明細書に援用される。
【0022】
本明細書において、用語「吸収剤」は、全般的に複数の吸収剤及び/又は複数の吸着剤を含むことが意図される。
【0023】
「使用された液体吸収剤」は、二酸化炭素を吸収した「クリーンな液体吸収剤」を意味する。
【0024】
「洗浄された液体吸収剤」は、吸収された二酸化炭素が実質的にない液体吸収剤を意味する。
【0025】
「再生された液体吸収剤」は、二酸化炭素の脱着が行われた使用された液体吸収剤を意味する。
【0026】
「洗浄されたガス」は、無視できるほどの量の二酸化炭素及び/又はHOを有するガスを意味する。「洗浄されたガス」は、洗浄される環境からのガスの二酸化炭素及び/又はHO濃度よりも小さい二酸化炭素及び/又はHO濃度を有する。
【0027】
図1は、宇宙空間用のシステムで使用され得る例示的な二酸化炭素変換システム(即ち、閉ループ空気再生システム)100の概略図である。「閉ループ空気再生システム」とは、廃棄二酸化炭素から貴重な酸素を回収することなど、廃棄生成物から貴重な資源を回収するシステムを示すことを意図している。システム100は、二酸化炭素の除去を実施する1つ以上の気液接触器-分離器を含み得るが、システム100は、以下に記載される接触器-分離器に限定されるものではない。
【0028】
二酸化炭素変換システム100は、宇宙船キャビンなど、ヒトの乗員に適した密閉環境140から汚染された空気101を受容し得る。したがって、環境140は、周囲の空気若しくはガスに対して閉じられている、又はそれから封止されているように構成されることができる。汚染された空気又はガス101は、N、CO、及び/又はHOなどの1つ以上のガス/蒸気汚染物質を含み得る。
【0029】
空気又はガス101は、第1の気液接触器-分離器(即ち、スクラバ)102に流入し得る。実施形態では、汚染された空気101は、スクラバ102に入る前に、フィルタ110を通って塵と微粒子がろ別され、更にファン又はコンプレッサ111を通ってスクラバ102に向かって押され得る。いくつかの実施形態では、汚染された空気101は、ファン111を出てから、スクラバ102に入る前に、冷却器113に入り得る。
【0030】
スクラバ102が汚染された空気101を受容することと同時に、又はそれと逐次的に、洗浄された液体吸収剤は、洗浄された液体吸収剤の貯蔵器105からポンプ112を通ってスクラバ102にポンピングされ得る。実施形態では、液体吸収剤は、以下に記載される1つ以上のイオン液体であり得る。スクラバ102では、洗浄されたイオン液体が、汚染された空気101からCOなどの汚染物質を吸収し得る。
【0031】
スクラバ-分離器102からは、洗浄された空気103が、漏れたイオン液体を捕捉するため、及び/又は調和させる環境140に戻ることができる更に洗浄された空気を生成するために、任意追加的にフィルタ114を通って流れ得る。実施形態では、洗浄された空気103は、汚染された空気101のものよりも低いガス汚染物質濃度、及び/又はHO濃度を有し得る。
【0032】
また、スクラバ-分離器102からは、使用された液体吸収剤も出てき得る。使用された液体吸収剤は、電気化学変換セル130、又は実施形態によっては複数の電気化学変換セル、に流入し得る。実施形態では、複数のセルは、スタック構成で存在し得る。
【0033】
図1Aは、例示的な電気化学変換セル130を模式的に描写している。セル130は、アノード、カソード及びそれらの間にあるイオン膜を有し得、これらのすべてがイオン液体に浸されている。酸素を生成するアノードでの半反応は、pHに応じて、2H2O→O2+4H+ +4e-又は4OH-→2H2O+4e- +O2のいずれかである。複数の反応がカソードで起こるように提案されている。これらには、水素の生成:2H+ +2e-→H2又は2H2O+2e-→2OH- +H2、及び一酸化炭素の生成:CO2+2H+ +2e-→CO+H2O又は2H2O+2CO2+4e-→2CO+4OH-が含まれる。状況によっては、カソード材料に応じて、メタンも生成され得る:CO2+8H+ +8e-→CH4+2H2O又は6H2O+CO2+8e-→CH4+8OH-。
【0034】
セル130は、COを有する使用されたイオン液体を受容することができる。セル130は、Oを環境140に放出することができる。O放出と同時に、又はそれと逐次的に、セル130は、洗浄されたイオン液体をイオン液体貯蔵器105に放出し得る。O及び洗浄されたイオン液体の放出と同時に、又はそれと逐次的に、セル130は、CO及び/又はHをCOメタン化反応器115に放出し得る。COメタン化反応器は、一酸化炭素を水素と反応させてメタン及び水に変換することによって動作する。次いで、水は、水素及び酸素を生成するように電気分解され得、これにより、閉ループ空気再生システムが形成される。
【0035】
上述したように、電気化学変換セル130は、セルのスタックの形態で存在し得る。このようなスタックは、Fry,A.J.,Electrochemical Processing,Organic.In Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley & Sons,Inc.:2000,Figure 10に記載されているものであり得、その内容全体が本明細書に援用される。
【0036】
図2は、本発明の別の例示的な実施形態の概略図である。図2は、図1に関連して説明されたものと同様である。これに合わせて、図2中の参照番号は、図1中の同様の参照番号に対応する。
【0037】
しかしながら、図2の例示的な実施形態では、二酸化炭素変換システム200は、図1の閉鎖環境140とは対照的に、火星の大気など、周囲の空気又はガスに対して開いている環境240に関して提供される。この例では、環境240は火星の大気である。火星の大気240からのシステムへの供給ガス201は、CO、Ar、N、O、HO、CO、及び/又は火星の大気240中に存在する他のガスを含み得る。
【0038】
図2では、スクラバ202は、COを供給ガス201から分離し、供給ガス201よりも少ないCOを含有する洗浄されたガス203を火星の大気240に放出し得る。放出されたガス203は、Ar、N、O、CO、及び/又は火星の大気240中に存在する若しくは変換セル230によって生成される他のガスを含み得る。電気化学変換セル230(又はセルスタック)は、図1のようにCOメタン化反応器115に送るのではなくて、火星の大気240にCOを放出し得る。また、例えば、宇宙船又は宇宙居住環境内でのヒトの乗員による最終的な使用のために、変換セル230から放出されたOを酸素貯蔵ユニット250に送ることもできる。これは、図1においてOが変換セル130からキャビン140に送られるのと対照的である。
【0039】
図3Aは、本発明の別の例示的な実施形態の概略図である。図3Aは、図2に関連して説明されたものと同様である。これに合わせて、図3A中の参照番号は、図2中の同様の参照番号に対応する。
【0040】
しかしながら、図3Aの実施形態では、冷却器313がポンプ312とスクラバ302との間に介在し得るが、図2に同様の冷却器は存在しない。熱交換器306は、スクラバ302、クリーンなイオン液体の貯蔵器305、電気化学変換セル330(又はセルスタック)、及び第2の気液接触器-分離器(即ち、ストリッパ)308の間に介在し得る。図2の実施形態では、同様の加熱器又はストリッパは存在しない。
【0041】
これに合わせて、図3Aの実施形態では、スクラバ302は、例えば、CO及びHOを有する使用された液体吸収剤を放出し得る。その使用された液体吸収剤は、熱交換器306によって受容され、次いで変換セル330に放出されることができる。上述のプロセスと同時に、又はそれと逐次的に、熱交換器306は、ストリッパ308から洗浄された液体吸収剤を受容し、同液体吸収剤をクリーンなイオン液体の貯蔵器305に放出し得る。したがって、洗浄された液体吸収剤は、COが供給ガス301から分離されるスクラバ302にポンピングされることができ、Ar、N、O、CO、及び/又は火星の大気340中に存在する若しくは変換セル330によって生成される他のガスを含有する洗浄された放出ガス303が、火星の大気に放出され得る。
【0042】
電気化学変換セル330は、CO及びHOを含むイオン液体をスクラバ302から受容し、電気化学変換を行うとき、CHを含むイオン液体を加熱器307に放出し得、その後、同イオン液体はストリッパ308に流れ得る。CHは、カソードの特性及びイオン液体中のCHの可溶性の結果として、放出されたイオン液体中に存在し得る。ストリッパ308は、CHをイオン液体から除去して、それにより、イオン液体貯蔵器305に流入することができる洗浄されたイオン液体を放出し得る。ストリッパ308によって除去されたCHは、メタン貯蔵器361による受容のために、ポンプ317、凝縮器318、及び水抽出器322に放出され得る。システムはまた、加熱器307、ストリッパ308、及びポンプ317がなくても運用され得、変換セル330カソードのガス状生成物は、イオン液体中のCHの可溶性が低ければ、凝縮器318に放出される。その後、貯蔵されたメタンは、例えば、宇宙船の燃料として使用され得る。
【0043】
変換セル330がCHを含むイオン液体を放出することと同時に、又はそれと逐次的に、変換セル330はまた、酸素貯蔵器360による受容のために、Oをポンプ351、凝縮器352、及び水抽出器353に通して放出し得る。その後、貯蔵された酸素は、例えば、宇宙船内のヒトの乗員によって使用され得る。
【0044】
水抽出器353からは、液体水が水気化器323に流れ得る。そこから放出された液体水は水貯蔵器316に受容され得、それと同時に、そこから放出された水蒸気はストリッパ308に流れ得、水蒸気をスイープガスとして使用することができる。
【0045】
図3Bは、本発明の別の例示的な実施形態の概略図である。図3Bは、図3Aに関連して説明されたものと同様である。これに合わせて、図3B中の参照番号は、図3A中の同様の参照番号に対応する。
【0046】
図3Bの実施形態は、大部分は図3Aの実施形態と同じである。しかしながら、図3Bでは、電気化学変換セル330は、図3AのようにCHを含むのではなくてCOを含むイオン液体を放出する。したがって、ストリッパ308は、CHではなくてCOを放出する。また、放出されたCOは、例えば、宇宙船又は宇宙居住環境内でのヒトの乗員による最終的な使用のために、CO貯蔵器371によって受容される。
【0047】
本発明はまた、いくつかの他の構成でも使用され得る。
【0048】
一実施形態では、アノード区画は、イオン液体及び/又は電解質水溶液を収容する。O2は、図3A及び図3BのOのようにガス拡散電極によって直接回収されるか、又は図3A及び図3Bのメタン及びCOのようにアノード区画から溶液をストリッパ、ポンプ、コンプレッサ、及び水抽出器に通すことによって回収される。
【0049】
この実施形態では、アノード区画は、カソード区画の溶液からのIL又は水溶液分離を含まない。代わりに、水又は水酸化物がカソード区画からイオン交換膜又は多孔質セパレータを通り抜け、アノード表面上でOに電気分解される。これにより、電解質溶液からのO分離は不要となる。Oは、図3A及び図3BのOの場合と同じように回収される。
【0050】
閉ループO回収が不要であるCO除去用途(例えば、航空機、潜水艦)では、電気化学的なH及びCO燃料生成が目標となり得る。O、H、及びCO生成物が、燃料電池で使用するために収集され得る。
【0051】
図4A図4Bは、例えば、二酸化炭素変換システム100で使用され得るスクラバ402の例示的な実施形態を描写している。図4Aでは、スクラバ402は、中空糸バンドル402bを囲む円筒状ハウジング402aを含み得る。CO分の濃いガスはハウジング402aにその一端から入り得、CO分の薄いガスはその反対端から出ていき得る。再生された又は洗浄された液体吸収剤はハウジング402aにその一側面から入り得、二酸化炭素を含む使用された液体吸収剤はハウジング402aからその反対側面で出ていき得る。この実施形態では、再生された又は洗浄された吸収液は、ガス流と対向して(即ち、逆に)流れる。更に、この対向流により、二酸化炭素はガスから中空糸バンドル402bの外へ出て液体に流入する。
【0052】
図4Bは、図4Aの場合と同じ流れを描写しているが、中空糸バンドル402bの一部であり得る単一の中空糸402cに関して描写している。
【0053】
図5A図5Bは、例えば、二酸化炭素変換システム100で使用され得るスクラバ502の別の例示的な実施形態を描写している。図4Aの場合と同じように、図5Aでは、スクラバ502は、中空糸バンドル502bを囲む円筒状ハウジング502aを含み得る。しかしながら、CO分の濃いガスはハウジング502aにその一側面から入り得、CO分の薄いガスはその反対側面から出ていき得る。再生された又は洗浄された吸収液はハウジング502aにその一端から入り得、二酸化炭素を含む使用された吸収液はハウジング502aからその反対端で出ていき得る。図4Aの場合と同じように、この実施形態では、洗浄された吸収液は、ガス流と対向して(即ち、逆に)流れる。しかしながら、この対向流により、二酸化炭素はガスから中空糸バンドル502b内の液体に流入する。
【0054】
図5Bは、図5Aの場合と同じ流れを描写しているが、中空糸バンドル502bの一部であり得る単一の中空糸502cに関して描写している。
【0055】
図6A図6Bは、例えば、二酸化炭素変換システム300で使用され得るストリッパ608の例示的な実施形態を描写している。図6Aでは、ストリッパ608は、中空糸バンドル608bを囲む円筒状ハウジング608aを含み得る。スイープガスはハウジング608aにその一端から入り得、汚染物質(CO、HO、CH、及び/又はCO)はその反対端から出ていき得る。汚染物質を含む使用された吸収液はハウジング608aにその一側面から入り得、再生された又はクリーンな吸収液はハウジング608aからその反対側面で出ていき得る。この実施形態では、汚染物質を含む使用された吸収液は、スイープガス流と対向して(即ち、逆に)流れる。更に、この対向流により、汚染物質は液体から中空糸バンドル608b内のガスに流入する。
【0056】
図6Bは、図6Aの場合と同じ流れを描写しているが、中空糸バンドル608bの一部であり得る単一の中空糸608cに関して描写している。
【0057】
図7A図7Bは、例えば、二酸化炭素変換システム300で使用され得るストリッパ708の別の例示的な実施形態を描写している。図6Aの場合と同じように、図7Aでは、ストリッパ708は、中空糸バンドル708bを囲む円筒状ハウジング782aを含み得る。しかしながら、スイープガスはハウジング708aにその一側面から入り得、汚染物質はその反対側面から出ていき得る。汚染物質を含む使用された吸収液はハウジング708aにその一端から入り得、再生された又はクリーンな吸収液はハウジング708aからその反対端で出ていき得る。図6Aの場合と同じように、この実施形態では、スイープガスは、汚染物質を含む使用された吸収液の流れと対向して(即ち、逆に)流れる。しかしながら、この対向流により、汚染物質は液体から中空糸バンドル708bの外へ出てガスに流入する。
【0058】
図7Bは、図7Aの場合と同じ流れを描写しているが、中空糸バンドル708bの一部であり得る単一の中空糸708cに関して描写している。
【0059】
本発明によれば、液体吸収剤は、過酷な一連の基準を満たすことができる。この液体は、ヒトに対して安全かつ無毒になることができ、また浄化された空気を臭気又は有機性蒸気で汚染してはならない。同液体は、ミッション中に想定される分圧において二酸化炭素を吸収し得、また水を同時に吸収したときに性能を喪失してはならない。同液体はまた、CO及び水を宇宙空間に逃さないように、宇宙真空を使用せずに再生可能で、かつ、過大な温度又は電力を使用せずに再生可能であり得る。同液体は、耐久性があり、かつ、ミッションの期間にわたって劣化せずに長もちし得る。同液体は電気化学セル内で電解質の役目も果たすので、同液体は明らかな導電性を有し得、またプロセスの電位窓の範囲内において電気化学的な酸化又は還元に関して安定であり得る。
【0060】
液体吸収剤は、1つ以上のイオン液体であり得る。それらは塩類であり、全般的にはアニオン及び有機カチオンからなっており、これらはその使用温度において液体である。それらは塩類であるため、実質的にゼロの蒸気圧を有しており、したがって、臭気は取り除かれ、浄化された空気を汚染する可能性は減少する。また、それらは塩類であるため、良好な導電性も有する。それらは全般的に無毒であり、劣化に抵抗するのに十分な安定性を有する。イオン液体は、全般的に、比較的大きな有機カチオン(四級アンモニウム又はホスホニウム化合物)及び任意の多様なアニオンを含有しており、所望の特性が得られるようにこれらの両方を適合させることができる。イオン液体は、二酸化炭素を物理的に溶解することと、二酸化炭素との特異的な化学相互作用を有することの両方が可能である。二酸化炭素及び電極表面との一部のイオン液体の相互作用は、特定の生成物への二酸化炭素の電気化学変換を優先する。種類として、ほぼすべてのイオン液体は水溶性かつ吸湿性であり、したがって、それらは空気から水分を吸収することになるが、それらの無視できるほどわずかな揮発性のおかげで、温度を上げること又は水分圧を下げることのいずれかによる蒸発によって水を除去することができる。非常に多くのイオン液体が存在しており、また所望の特性を得るためにカチオンとアニオンの両方を適合させることができるので、この種類の化合物は、二酸化炭素の除去及び変換システムのための液体吸収剤及び電解質としての柔軟性を有する。
【0061】
本発明での使用に適したイオン液体は、20℃未満の融点、低い蒸気圧、及び、30℃にて3.8トルの二酸化炭素分圧の存在下で、>0.3wt%二酸化炭素容量を有するイオン液体を含む。このようなイオン液体の例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロ酢酸塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩、トリブチルメチルホスホニウム酢酸塩、トリエチルメチルホスホニウム酢酸塩などが挙げられる。これらのイオン液体は吸湿性であり、二酸化炭素だけでなく水も吸収することができる。したがって、有効作動流体は、多くの場合、指定されたイオン液体と水の混合物を含むことができる。状況によっては、二酸化炭素と接触させる前に、水をイオン液体に添加することが有用であり得る。これは、二酸化炭素容量を減少させ得るが、同時に粘度も減少させ得る。
【0062】
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム酢酸塩(BMIM Ac)は、高いCO容量及び十分に理解されている物理的性質を有する。BMIM Acは、有人車両内での吸収剤に対する基本要件を満たす。BMIM Acは、有害な物質でも混合物でもなく、他に分類されない危険も有しない。水溶液のpHは6.1であり、自然発火温度は435℃である。この化合物は透明で、いくぶん粘着性のある液体であり、容易に取り扱うことができる。表面張力は極性有機溶媒の表面張力と同様であり、密度は水の密度と同様である。熱劣化の始まりは、処理の上限温度を決定するものであり、脱着に必要な温度よりも十分に高い。このイオン液体の粘度は水の粘度よりも高いが、温度又は含水率のいずれかを上げることによって減少させることができる。通常の使用では、イオン液体はCOと水の両方を吸収し、したがって、粘度の値は水の存在下において様々である。粘度は、COの吸着及び脱着のための物質移動速度の決定において役割を担う。したがって、粘度の制御は、接触器-分離器の重量及び容積を減少させることができる。
【0063】
本発明によれば、O回収率の有意な増加は、火星又は宇宙居住環境への旅行を追い求めるNASA及び商業関係者にとってゲームチェンジャとなり得る。電気化学技術は、各ミッションで持っていくことが必要となるO(及び/又は水)の量を大幅に減少させ得る。これにより、船上の空間と打ち上げ重量の両方を節約することができる。加えて、本発明は、同じ量のOの回収に代替のCO変換技術よりも少ない電力を必要とし得る。
【0064】
当然のことながら、上述の内容は本発明の例示的な実施形態に関するものであること、並びに以下の特許請求の範囲に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく修正を行えることは理解されよう。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]
環境用の二酸化炭素変換システムであって、
前記環境の下流にある第1の気液接触器-分離器と、
前記第1の気液接触器-分離器の下流にある電気化学変換セルと、
前記第1の気液接触器-分離器と前記電気化学変換セルとの間に介在する洗浄されたイオン液体貯蔵器と、を含む、システム。
[2]
前記電気化学変換セルの下流にあり、かつ、前記洗浄されたイオン液体貯蔵器の上流にある、第2の気液接触器-分離器を更に含む、[1]に記載のシステム。
[3]
前記環境が周囲のガスに対して閉ざされている、[1]又は[2]に記載のシステム。
図1
図1A
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B