(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】放射線撮像装置および放射線撮像システム
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20231227BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20231227BHJP
H04N 5/32 20230101ALI20231227BHJP
H04N 23/30 20230101ALI20231227BHJP
H04N 25/30 20230101ALI20231227BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20231227BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H01L27/144 K
H01L27/146 D
H04N5/32
H04N23/30
H04N25/30
A61B6/00 300S
A61B6/00 300W
G01T7/00 A
(21)【出願番号】P 2019170805
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】多川 元気
(72)【発明者】
【氏名】小柳 隆宏
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-141357(JP,A)
【文献】特開2012-145541(JP,A)
【文献】特開2012-189487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0078530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 27/144
H04N 5/32
H04N 23/30
H04N 25/30
A61B 6/00
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像を撮像する複数の撮像画素および放射線を検知する検知画素を有するセンサ基板と、
前記センサ基板を支持するように前記センサ基板に結合された支持基板と、前記センサ基板
と前記支持基板とを収容する筺体と、を備える放射線撮像装置であって、
前記センサ基板は、前記筺体の変形によって応力が集中する応力集中部
であって、前記支持基板が有する起伏部から圧力を受ける部分を含む前記応力集中部を含む配置禁止領域を有し、前記検知画素は、前記配置禁止領域とは異なる領域に配置されている、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記起伏部は、前記支持基板に対してビスが締結された部分を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記部分は、前記支持基板に設けられた貫通孔と、前記貫通孔に挿入された部材とを含み、前記部材に前記ビスがねじ込まれている、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記起伏部は、前記支持基板が第1高さ面と、前記第1高さ面よりも高さが高い第2高さ面と、前記第1高さ面と前記第2高さ面とを接続する傾斜面とを有することによって形成され、前記第1高さ面を含む平面に対する前記傾斜面の傾斜角は15°以上であり、
前記配置禁止領域は、前記傾斜面と前記第1高さ面との境界からの距離が前記第1高さ面と前記第2高さ面との高低差の50倍以下の領域である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記起伏部は、2つの段差を含み、前記2つの段差の間の最短距離は、前記2つの段差の最大高さの200倍以下の距離である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記筺体は、前記筺体の内側の空間に突出した突起を含み、前記応力集中部は、前記センサ基板のうち前記筺体の変形に応じて前記突起によって圧力が加えられる部分を
更に含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
放射線画像を撮像する複数の撮像画素および放射線を検知する検知画素を有するセンサ基板と、
前記センサ基板を支持するように前記センサ基板に結合された支持基板と、前記センサ基板と前記支持基板とを収容する筺体と、を備える放射線撮像装置であって、
前記筺体は、前記筺体の内側の空間に突出した突起を含み、
前記センサ基板は、前記筺体の変形によって応力が集中する応力集中部
であって、前記センサ基板のうち前記筺体の変形に応じて前記突起が前記支持基板に接触することによって圧力が加えられる部分を含む前記応力集中部を含む配置禁止領域を有し、前記検知画素は、前記配置禁止領域とは異なる領域に配置されている、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
放射線画像を撮像する複数の撮像画素および放射線を検知する検知画素を有するセンサ基板と、前記センサ基板を支持するように前記センサ基板に結合された支持基板と、前記センサ基板と前記支持基板とを収容する筺体と、を備える放射線撮像装置であって、
前記センサ基板は、前記筺体の変形によって前記支持基板が有する起伏部から圧力を受ける部分を含む配置禁止領域を有し、前記検知画素は、前記配置禁止領域とは異なる領域に配置されている、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
放射線画像を撮像する複数の撮像画素および放射線を検知する検知画素を有するセンサ基板と、前記センサ基板を支持するように前記センサ基板に結合された支持基板と、前記センサ基板と前記支持基板とを収容する筺体と、を備える放射線撮像装置であって、
前記筺体は、前記筺体の内側の空間に突出した突起を含み、前記センサ基板は、前記センサ基板のうち前記筺体の変形に応じて前記突起が前記支持基板に接触することによって圧力が加えられる部分を含む配置禁止領域を有し、前記検知画素は、前記配置禁止領域とは異なる領域に配置されている、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項10】
前記複数の撮像画素のうち少なくとも1つは、前記配置禁止領域に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記支持基板は、結合部材を介して前記センサ基板と結合されている、
ことを特徴とする請求項
1又は10のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記センサ基板と前記支持基板との間に配置された放射線遮蔽板を更に備える、
ことを特徴とする請求項
1乃至11のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記放射線遮蔽板と前記センサ基板との間に結合部材が配置されている、
ことを特徴とする請求項
12に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
前記検知画素から出力される信号に基づいて、放射線の照射を停止させる信号が生成される、
ことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項15】
前記検知画素を含む複数の検知画素を備え、前記複数の検知画素は、共通の駆動線に接続された少なくとも2つの検知画素を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項16】
前記複数の撮像画素の一部と前記検知画素とが同じ行に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項17】
放射線を発生する放射線源と、
請求項1乃至
16のいずれか1項に記載の放射線撮像装置と、
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置および放射線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線等の放射線による医療画像診断や非破壊検査に用いる放射撮影装置として、TFT(薄膜トランジスタ)等のスイッチと光電変換素子等の変換素子とを組み合わせた画素が配列されたアレイを有する放射線撮像装置が実用化されている。スイッチは、変換素子と列信号線との間に配置されていて、スイッチを導通状態にすることによって、変換素子から列信号線を介して信号が読み出される。
【0003】
放射線撮像装置は、自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)機能を備えうる。AEC機能は、例えば、放射線源から放射線の照射が開始されるタイミングの検出、放射線の照射を停止させるべきタイミングの決定、放射線の照射量または積算照射量の検出などに利用されうる。
【0004】
特許文献1には、放射線画像撮影用の画素の他に放射線検出用の画素が配置された放射線画像撮影装置が記載されている。放射線検出用の画素は、放射線の照射開始を検出するために用いられる。放射線検出用の画素20Bは、放射線の照射開始を検出するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AEC機能を内蔵する放射線撮像装置では、患者による荷重が放射線撮像装置にかかる可能性を考慮すべきである。放射線撮像装置に荷重がかかり、例えば、放射線検出装置の筺体内のセンサ基板が変形すると、その変形した部分に配置されている画素のインピーダンスが変化し、ノイズ特性、オフセット特性などが変化しうる。その影響により、検出信号が変化し、放射線の照射量の適正な検知ができなくなりうる。特に、センサ基板が直接的あるいは間接的に筺体内の構造物と接触している構成においては、センサ基板が局所的に変形しやすい。そのような部分では、検知信号の変化の影響が顕著になりうる。特に、AECのための放射線の検知においては、時間分解能を上げるために、高速に検知信号を読み出す必要がある。そのため、1回のサンプル当りの信号量は非常に小さくなり、変形による検知信号の変化の影響が大きくなりうる。
【0007】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、荷重が加えられるような環境下においても、放射線の照射量を正確に検知するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、放射線撮像装置に係り、前記放射線撮像装置は、放射線画像を撮像する複数の撮像画素および放射線を検知する検知画素を有するセンサ基板と、前記センサ基板を支持するように前記センサ基板に結合された支持基板と、前記センサ基板と前記支持基板とを収容する筺体と、を備え、前記センサ基板は、前記筺体の変形によって応力が集中する応力集中部であって、前記支持基板が有する起伏部から圧力を受ける部分を含む前記応力集中部を含む配置禁止領域を有し、前記検知画素は、前記配置禁止領域とは異なる領域に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷重が加えられるような環境下においても、放射線の照射量を正確に検知するために有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の放射線撮像装置の構成を示す図。
【
図2】本発明の第1実施形態の放射線撮像装置における撮像画素および検知画素の構成を示す平面図。
【
図4】本発明の第1実施形態の放射線撮像装置を含む放射線撮像システムの構成例を示す図。
【
図5】本発明の第1実施形態の放射線撮像装置の動作を示す図。
【
図8】応力集中部を考慮した第1実施形態における検知画素の配置例を示す図。
【
図9】応力集中部を考慮した第1実施形態における検知画素の配置例を示す図。
【
図10】応力集中部を考慮した第2実施形態における検知画素の配置例を示す図。
【
図11】応力集中部を考慮した第2実施形態における検知画素の配置例を示す図。
【
図12】応力集中部を考慮した第2実施形態における検知画素の配置例を示す図。
【
図13】支持基板が互いに異なる高さの2つ面によって構成される起伏部を有する例を示す図。
【
図14】支持基板が凸型の起伏部を有する例を示す図。
【
図15】本発明の一実施形態の放射線撮像システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1には、本発明の第1実施形態の放射線撮像装置200の構成が示されている。放射線撮像装置200は、複数の行および複数の列を構成するように撮像領域IRに配列された複数の画素を有する。該複数の画素は、放射線画像を撮像する複数の撮像画素101と、放射線を検知する1又は複数の検知画素(放射線検知画素)121とを含みうる。撮像画素101は、放射線を電気信号に変換する第1変換素子102と、列信号線106と第1変換素子102との間に配置された第1スイッチ103とを含みうる。検知画素121は、放射線を電気信号に変換する第2変換素子122と、列信号線106と第2変換素子122との間に配置された第2スイッチ123とを含みうる。
【0013】
複数の撮像画素101および検知画素121は、複数の行および複数の列を構成するように撮像領域IRに排他的に配置されうる。つまり、複数の撮像画素101および検知画素121は、複数の行および複数の列を構成するように撮像領域IRに配置された複数の撮像画素101の一部が検知画素121によって置換されるように配置されうる。あるいは、複数の撮像画素101および検知画素121は、検知画素121のみが配置された行および/または列が存在するように配置されてもよい。
【0014】
第1変換素子102および第2変換素子122は、放射線を光に変換するシンチレータと、光を電気信号に変換する光電変換素子とで構成されうる。シンチレータは、一般的には、撮像領域IRを覆うようにシート状に形成され、複数の画素によって共有されうる。あるいは、第1変換素子102および第2変換素子122は、放射線を直接に光に変換する変換素子で構成されうる。第1スイッチ103、第2スイッチ123は、例えば、非晶質シリコンまたは多結晶シリコン(好ましくは多結晶シリコン)などの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含みうる。
【0015】
放射線撮像装置200は、複数の列信号線106および複数の駆動線104を有する。各列信号線106は、撮像領域IRにおける複数の列のうちの1つに対応する。各駆動線104は、撮像領域IRにおける複数の行のうちの1つに対応する。各駆動線104は、行選択部221によって駆動される。第1変換素子102の第1電極は、第1スイッチ103の第1主電極に接続され、第1変換素子102の第2電極は、バイアス線108に接続される。ここで、1つのバイアス線108は、例えば、列方向に延びていて、1つの列を構成する複数の撮像画素101のそれぞれの変換素子102の第2電極に共通に接続される。バイアス線108は、電源回路226からバイアス電圧Vsを受ける。1つの列を構成する複数の撮像画素101の第1スイッチ103の第2主電極は、1つの列信号線106に接続される。1つの行を構成する複数の撮像画素101の第1スイッチ103の制御電極は、1つの駆動線104に接続される。
【0016】
複数の列信号線106は、読出部130に接続される。ここで、読出部130は、複数の検知部132と、マルチプレクサ134と、アナログデジタル変換器(以下、AD変換器)136とを含みうる。複数の列信号線106のそれぞれは、読出部130の複数の検知部132のうち対応する検知部132に接続される。ここで、1つの列信号線106は、1つの検知部132に対応する。検知部132は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ134は、複数の検知部132を所定の順番で選択し、選択した検知部132からの信号をAD変換器136に供給する。AD変換器136は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0017】
第2変換素子122の第1電極は、第2スイッチ123の第1主電極に接続され、第2変換素子122の第2電極は、バイアス線108に接続される。第2スイッチ123の第2主電極は、列信号線106に接続される。第2スイッチ123の制御電極は、検知駆動線124に電気的に接続される。1つの列信号線106には、1または複数の検知画素121が接続されうる。検知駆動線124は、行選択部221によって駆動される。1つの検知駆動線124には、1または複数の検知画素121が接続されうる。
【0018】
検知画素121に接続された列信号線106は、読出部130に接続されうる。読出部130は、検知画素121からの信号についても、撮像画素101からの信号と同様に、検知部132、マルチプレクサ134、AD変換器136を介して、デジタル信号として出力する。
【0019】
検知画素121からの信号は、読出部130(AD変換器136)から、信号処理部224に供給され、信号処理部224によって演算、記憶などの処理がされる。信号処理部224は、読出部130(AD変換器136)の出力に基づいて、放射線撮像装置200に対する放射線の照射を示す情報を出力する。具体的には、信号処理部224は、例えば、放射線撮像装置200に対する放射線の照射を検知したり、放射線の照射量および/または積算照射量を演算したりする。制御部225は、信号処理部224からの情報に基づいて、行選択部221および読出部130を制御する。制御部225は、信号処理部224からの情報に基づいて、例えば、露出(撮像画素101による照射された放射線に対応する電荷の蓄積)の開始および終了を制御する。
【0020】
放射線の照射量を検知する場合は、検知駆動線124のみを走査し、検知画素121からの信号を列信号線106に出力させる。そして、読出部130は、検知画素121に対応する列の信号を、放射線の照射量を示す情報として、出力する。そのような動作により、検知画素121によって検知された放射線の照射量を示す情報を、放射線の照射中に得ることができる。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態の放射線撮像装置200における撮像画素101および検知画素121の構成を示す平面図である。ここで、平面図は、放射線撮像装置200の撮像領域IRに平行な面への正投影と等価である。
図3は、
図2のA-A’線に沿った撮像画素の断面図である。
図2、
図3は、センサ基板SSの一部を示している。
【0022】
撮像画素101および検知画素121(これらを単に画素ともいう)は、この例では不図示のシンチレータによって放射線から変換された光を電荷に変換し蓄積する。ただし、それぞれの画素の変換素子は、放射線を直接に電荷に変換するように構成されてもよい。それぞれの画素のスイッチは、TFT(薄膜トランジスタ)でありうる。それぞれの画素の変換素子は、例えば、PIN型のフォトダイオードでありうる。第1変換素子102および第2変換素子122は、ガラス基板等の絶縁性からなる基板100の上に配置された第1スイッチ103および第2スイッチ123の上に層間絶縁層110を挟んで配置されうる。第1変換素子102および第2変換素子122は、例えば、第1電極131、フォトダイオード134、第2電極137で構成されうる。
【0023】
第1変換素子102および第2変換素子122の上には、保護膜138、第2層間絶縁層139、バイアス線108、保護膜140が順に配置されている。保護膜140の上には、不図示の平坦化膜およびシンチレータが配置されている。第2電極137は、コンタクトホールを介してバイアス線108に接続されている。第2電極137には、光透過性を有するITOが用いられ、不図示のシンチレータで放射線から変換された光が透過可能な構成となっている。本実施形態においては、検知画素121は、撮像画素101と同じ構造を有するが、検知画素121は、撮像画素101と異なる構造を有してよい。第1変換素子102、第2変換素子122は、例えば、MIS型のセンサによって構成されてもよい。
【0024】
図4には、放射線撮像装置200を含む放射線撮像システムの構成が例示されている。放射線撮像システムは、放射線撮像装置200の他、コントローラ1002、インターフェース1003、放射線源インターフェース1004および放射線源1005を備えうる。コントローラ1002には、線量A、照射時間B(ms)、管電流C(mA)、管電圧D(kV)、放射線をモニターすべき領域である関心領域(ROI)などが入力されうる。放射線源1005に付属された爆射スイッチが操作されると、放射線源1005から放射線が放射される。放射線撮像装置200の制御部225は、例えば、関心領域に配置された検知画素121から読み出された信号の積分値が線量A’に到達したら、インターフェース1003を介して放射線源インターフェース1004に曝射停止信号を送る。これに応答して、放射線源インターフェース1004は、放射線源1005に放射線の放射を停止させる。ここで、線量A’は、線量A、放射線照射強度、各ユニット間の通信ディレイ、処理ディレイ等に基づいて、制御部225によって決定されうる。放射線の照射時間が照射時間Bに達した場合は、放射線源1005は、爆射停止信号の有無にかかわらず、放射線の照射を停止する。
【0025】
放射線の照射停止後、撮像画素101に対応する駆動線104(Vg1~Vgm)を順次に走査し、各撮像画素101の画像信号を読出部130によって読出し、これにより放射線画像を取得する。検知画素121の信号は放射線照射中に読み出されるため、検知画素121から画像信号を読み出すことはできないが、検知画素121の周囲の撮像画素101の画像信号を用いて補間処理を行うことで、それらの箇所の画像信号を生成することができる。
【0026】
図5を参照しながら本発明の第1実施形態の放射線撮像装置200の動作を説明する。以下の説明において、撮像画素101を駆動する駆動線104に印加される信号をVg1~Vgnとし、検知画素121を駆動する検知駆動線124に印加される信号をVd1~Vdnとする。第1スイッチ103、第2スイッチ123は、対応する駆動線に供給される信号がハイレベルであるときに導通状態となり、該駆動線に供給される信号がローレベルであるときに非導通状態となる。
【0027】
放射線の照射を開始する前は、各画素の変換素子に溜まった暗電流を除去する為、駆動線104、検知駆動線124に、順次に駆動信号を印加し、変換素子のリセット動作(画素リセット動作)が行われる。放射線撮像装置200は、放射線源1005からの放射線の照射を開始することを示す信号(照射開始信号)を受信すると、例えば、最終行まで画素のリセット動作を行う。続いて、放射線撮像装置200は、関心領域に対応した検知画素121からの信号を読み出すために、対応する検知駆動線124に駆動信号を印加する動作(AEC動作)に移行する。AEC動作に移行した後、放射線撮像装置200は、放射線の照射を許容することを示す信号(照射許容信号)をインターフェース1003に送信する。これに応答して、インターフェース1003は、放射線源インターフェース1004に放射線の照射を指示し、放射線源インターフェース1004は、放射線の照射を開始するように放射線源1005を制御する。
【0028】
放射線撮像装置200は、放射線の照射中に継続してAEC動作を実施する。具体的には、読出部130は、検知画素121から放射線の照射量に応じた信号を読み出す。この信号は、放射線の照射量に相当する信号と、AEC動作におけるオフセット信号とを含みうる。そこで、放射線が照射されていない状態で事前に取得しておいたAEC動作におけるオフセット信号を、検知画素121から読み出された、放射線の照射量に応じた信号から減じることで、放射線の正味の照射量を示す信号(以下、照射量信号)を得ることができる。このような処理は、オフセット補正と呼ばれる。
【0029】
放射線撮像装置200は、照射量信号の累積値が所定の閾値に達したら、放射線を停止させるための信号をインターフェース1003に送信する。これに応答して、インターフェース1003は、放射線源インターフェース1004に放射線の照射の終了を指示し、放射線源インターフェース1004は、放射線の照射を終了するように放射線源1005を制御する。その後、放射線撮像装置200では、複数の駆動線104に順次に駆動信号が印加され、第1スイッチ103が導通状態となることで、第1変換素子102に蓄積された電荷に応じた信号が放射線撮像装置200から出力される。
【0030】
ポータブル撮影においては、患者からの荷重が放射線撮像装置200にかかりうる。放射線の照射中(検出中)に荷重がかかると、センサ基板SS(基板100)が応力を受けて変形しうる。センサ基板SSのうち応力が集中する応力集中部では、検知画素121が応力の影響を受けて、検知画素121の特性、例えば、インピーダンス(寄生容量、抵抗など)が変化しうる。これにより、検知画素121の特性、例えば、ノイズ特性、オフセット特性が変化しうる。
【0031】
放射線の照射の検知時は、検知画素121から読み出された、放射線の照射量に応じた信号から、事前に取得したオフセット信号を減じることによって照射量信号が得られる。そのため、オフセット信号を取得したタイミングと、放射線の照射量中のタイミングとで、センサ基板SSに加わる荷重が変化し、検知画素121に加わる応力に差があると、オフセット補正に誤差が生じうる。非常に微弱な信号を処理するAEC動作においては、応力による検知画素121から出力される信号の変化を無視することはできない。
【0032】
ここで、
図6(a)、(b)および
図7(a)、(b)を参照しながら応力集中部SCPについて例示的に説明する。
図6(a)、
図7(a)には、放射線撮像装置200の一構成例が示されている。
図6(b)、
図7(b)には、放射線撮像装置200の他の構成例が示されている。放射線撮像装置200は、前述のセンサ基板SSを含むパネル構造体610と、パネル構造体610を収容する筺体690とを備えうる。パネル構造体610は、センサ基板SSに積層して配置されたシンチレータ701と、センサ基板SSを支持する支持基板707とを含みうる。支持基板707は、1又は複数の結合部材704、706を介してセンサ基板SSと結合されうる。パネル構造体610は、センサ基板SSと支持基板707との間に放射線遮蔽板705を有してもよい。センサ基板SSと放射線遮蔽板705とは、結合部材704によって結合されうる。放射線遮蔽板705と支持基板707とは、結合部材706によって結合されうる。結合部材704、705は、例えば、両面テープでありうる。
【0033】
筺体690は、第1カバー691と、第2カバー692と、第3カバー693とを含みうる。第1カバー691と第2カバー692は、パネル構造体610および回路基板620を挟むように対向して配置されうる。第3カバー693は、第1カバー691と第2カバー692とを結合するサイドカバーを構成しうる。パネル構造体610は、衝撃吸収シート702を介して第1カバー691に押し付けられ、および/または、結合されうる。
【0034】
図6(a)および
図7(a)に例示された放射線撮像装置200は、回路基板620と、回路基板620をパネル構造体610に固定する固定部630とを含みうる。固定部630は、例えば、パネル構造体610の支持基板707に設けられた貫通孔710に挿入された部材(例えば、スペーサまたはプラグ)632と、部材632にねじ込まれたビス631とを含みうる。部材632にビス631がねじ込まれることによって部材632の外形が大きくなり、これによって部材632が支持基板707に強固に結合されうる。部材632は、接着剤によって支持基板707に結合されてもよい。
【0035】
図6(a)および
図7(a)に例示された放射線撮像装置200では、応力集中部SCPは、支持基板707が有する起伏部から圧力を受ける部分を含みうる。該起伏部は、支持基板707に対して部材632が結合された部分や、ビス631が締結された部分を含みうる。該部分は、支持基板707に設けられた貫通孔710と、貫通孔710に挿入された部材632とを含み、部材632にビス631がねじ込まれている。該起伏部の高低差は、例えば、数十μm程度でありうる。放射線撮像装置200は、複数の回路基板620を備えうる。回路基板620の固定が不十分であると、ノイズの発生要因となりうるので、回路基板620は、パネル構造体610に対して確実に固定されるべきである。このような理由により、複数の応力集中箇所SCPが形成されうる。
【0036】
図6(b)および
図7(b)に例示された放射線撮像装置200では、筺体690は、筺体690の内側の空間に突出した突起650を含む。応力集中部SCPは、センサ基板SSのうち筺体690の変形に応じて突起650が支持基板707に接触することによって圧力が加えられる部分を含む。
【0037】
図8および
図9には、応力集中部SCPを考慮した第1実施形態における検知画素121の配置例が示されている。
図8の上部には、センサ基板SSの全体が模式的に示され、
図8の下部には、
図8の上部における領域Aの拡大図が模式的に示されている。
図9には、
図8の下部における領域Bの拡大図が等価回路によって模式的に示されている。
図8および
図9に示された例では、複数の検知画素121が行方向に連続的に並べて配置されている。換言すると、
図8および
図9に示された例では、複数の検知画素121が共通の検知駆動線124に接続され、同じ行を構成している。
【0038】
第1実施形態では、センサ基板SSは、筺体690の変形によって応力が集中する応力集中部SCPを含む配置禁止領域800を有し、検知画素121は、配置禁止領域800とは異なる領域に配置される。ここで、配置禁止領域800は、そこに検知画素121を配置することが禁止された領域であり、配置禁止領域800には検知画素121が配置されない。このような構成は、応力による検知画素121のノイズ特性およびオフセット特性の変化を抑制し、放射線の照射量をより正確に検知するために有利である。例えば、ポータブル仕様などにおいて関心領域150が限定されている場合は、その関心領域150においてのみ、検知画素121が配置禁止領域800とは異なる領域に配置されてもよい。
【0039】
以下、
図10、
図11および
図12を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。
図10の上部には、センサ基板SSの全体が模式的に示され、
図10の下部には、
図10の上部における領域Aの拡大図が模式的に示されている。
図11には、
図10の下部における領域Bの拡大図が等価回路によって模式的に示されている。
図12は、本発明の第2実施形態の放射線撮像装置200における撮像画素101および検知画素121の構成を示す平面図である。
【0040】
第2実施形態では、検知画素121の信号を読み出すための検知信号線126が列信号線106とは別に設けられていて、検知画素121の信号は、検知信号線126を介して読出部130によって読み出される。より具体的には、検知画素121は、第2変換素子122および第2スイッチ123を有し、第2変換素子122の第1電極は、第2スイッチ123の第1主電極に接続され、第2変換素子122の第2電極は、バイアス線108に接続される。第2スイッチ123の第2主電極は、検知信号線126に接続される。第2スイッチ123の制御電極は、検知駆動線124に電気的に接続される。
【0041】
第2実施形態では、撮像領域IRに配置された複数の撮像画素101の一部と撮像領域IRに配置された複数の検知画素121の一部とが同じ行に配置されている。第2実施形態においても、センサ基板SSは、筺体690の変形によって応力が集中する応力集中部SCPを含む配置禁止領域800を有し、検知画素121は、配置禁止領域800とは異なる領域に配置される。第2実施形態も、応力による検知画素121のノイズ特性およびオフセット特性の変化を抑制し、放射線の照射量をより正確に検知するために有利である。
【0042】
以下、配置禁止領域800について説明する。ここで説明する事項は、第1実施形態および第2実施形態の双方に関連しうる。
図13には、支持基板707が互いに異なる高さの2つ面によって構成される起伏部1301を有する例が示されている。放射線撮像装置200に荷重が加わると、センサ基板SSは、支持基板707が有する起伏部1301から圧力を受ける。これによって、センサ基板SSの応力集中部SCPに応力が集中する。起伏部1301は、支持基板707が第1高さ面1311と、第1高さ面1311よりも高さが高い第2高さ面1312と、第1高さ面1311と第2高さ面1312とを接続する傾斜面1313を有することによって形成されうる。実験の結果、第1高さ面1311を含む平面に対する傾斜面1313の傾斜角が15°以上であると、放射線撮像装置200に応力が加わった場合に、応力集中部SCPに配置された画素からの信号に対する影響が現れる。また、このような影響は、傾斜面1313と第1高さ面1311との境界からの距離が第1高さ面1311と第2高さ面1312との高低差hの50倍以下の領域において現れうる。そこで、配置禁止領域800は、傾斜面1313と第1高さ面1311との境界からの距離が第2高さ面1312の最大高さhの50倍以下の領域とされることが好ましい。
【0043】
また、ある地点から他の地点に向かって進むときに、上がって下がるような凸型や、下がって上がるような凹型などの、2つの段差によって囲まれている部分は、2つの段差の双方から応力を受けうる。例えば、
図14には、支持基板707が凸型の起伏部を有する例が示されている。その凸型の起伏部をセンサ基板SSに正投影した部分aにおいて、センサ基板SSが最も応力を受けうる。
図14の下部には、放射線が照射されていないが荷重が加えられた状態において、部分aおよびその周辺に配置された複数の検知画素から出力された信号が示されている。この結果より、少なくとも部分aには検知画素を配置しないことが好ましく、部分aを含むより広い領域を配置禁止領域とすることが更に好ましいことが分かる。
図14に例示されるように、起伏部(凸部または凹部)が2つの段差で構成される場合において、該2つの段差の間の最短距離(a)が該2つの段差の最大高さの200倍以下の距離である場合、応力集中部SCPが形成されうる。したがって、このような起伏部がセンサ基板SSに正投影された領域を含む領域を配置禁止領域とすることが好ましい。
【0044】
2つの段差で構成される起伏部の外側の領域においては、1つの段差のみを考慮すればよい。したがって、起伏部の外側の領域においては、傾斜面1313と第1高さ面1311との境界からの距離が第2高さ面1312の最大高さhの50倍以下の領域を除けば、荷重が加わることによる影響は無視可能である。
【0045】
以下、
図15を参照しながら放射線撮像装置200を放射線撮像システムに応用した例を説明する。放射線源であるX線チューブ6050で発生したX線6060は、患者あるいは被験者6061の胸部6062を透過し、前述の放射線撮像装置200に代表される放射線撮像装置6040に入射する。この入射したX線には被験者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応してシンチレータが発光し、これを変換素子で光電変換して、電気的情報を得る。この情報はデジタルに変換され信号処理手段となるイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室の表示手段となるディスプレイ6080で観察できる。
【0046】
また、この情報は電話回線6090等の伝送処理手段により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなど表示手段となるディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の記録手段に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。また記録手段となるフィルムプロセッサ6100により記録媒体となるフィルム6110に記録することもできる。
【0047】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0048】
101:撮像画素、121:検知画素、200:放射線撮像装置、106:列信号線、125:検知信号線、102:第1変換素子102、103:第1スイッチ、122:第2変換素子、123:第2スイッチ、800:配置禁止領域、IR:撮像領域、SCP:応力集中部