(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用正極及び鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20231227BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M4/62 B
H01M4/14 Q
(21)【出願番号】P 2019183585
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】原田 素子
(72)【発明者】
【氏名】瀬和 格
(72)【発明者】
【氏名】関戸 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】利光 祐一
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0346076(US,A1)
【文献】特開2006-004688(JP,A)
【文献】特開2006-294330(JP,A)
【文献】特開昭58-054561(JP,A)
【文献】特表2003-524281(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体に保持された正極活物質とを備え、
前記正極活物質が、繊維径が10μm以上である第一のポリマー繊維と、繊維径が7μm以下である第二のポリマー繊維と、を含み、
前記正極活物質中の前記第一のポリマー繊維及び前記第二のポリマー繊維の合計の含有量が、前記正極活物質の全質量を基準として、0.02質量%以上2.5質量%以下であり、
前記正極活物質中の前記第一のポリマー繊維の質量基準の含有量が、前記正極活物質中の前記第二のポリマー繊維の質量基準の含有量以上であり、かつ、前記正極活物質中の前記第一のポリマー繊維の質量基準の含有量が、前記正極活物質中の前記第二のポリマー繊維の質量基準の含有量に対して8倍以下であ
り、
前記第一のポリマー繊維及び前記第二のポリマー繊維がアクリル繊維である、鉛蓄電池用正極。
【請求項2】
請求項
1に記載の正極を備える、鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用正極及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、産業用に広く用いられており、例えば自動車のバッテリー、バックアップ用電源、及び電動車の主電源に用いられる。鉛蓄電池における正極には、集電体に保持された正極活物質の利用率を向上させることが求められる。正極活物質の利用率に優れる正極を用いると、例えば、所定の放電容量を得るための正極活物質の使用量を減らすことができ、その結果、鉛蓄電池の軽量化を図ることができる。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、正極の活物質利用率を高めるために、正極の活物質中に塩基性硫酸鉛及び黒鉛を添加し、電解液中にリン酸を1質量%以下含有した鉛蓄電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、活物質利用率には、未だ改善の余地がある。そこで、本発明は、活物質利用率に優れる鉛蓄電池用正極及び当該正極を備える鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、正極集電体と、正極集電体に保持された正極活物質とを備える鉛蓄電池用正極に関する。この正極活物質は、繊維径が10μm以上である第一の繊維と、繊維径が7μm以下である第二の繊維と、を含む。
【0007】
正極活物質中の第一の繊維の質量基準の含有量は、正極活物質中の第二の繊維の質量基準の含有量以上であってよい。第一の繊維及び第二の繊維は、ポリマー繊維であってよく、アクリル繊維であってよい。
【0008】
本発明の他の一側面は、上記の正極を備える鉛蓄電池に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、活物質利用率に優れる鉛蓄電池用正極及び当該正極を備える鉛蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る鉛蓄電池の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した鉛蓄電池の電極群を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る鉛蓄電池の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。
図1に示すように、鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋3とを備えている。電槽2及び蓋3は、例えばポリプロピレンで形成されている。蓋3には、負極端子4と、正極端子5と、蓋3に設けられた注液口を閉塞する液口栓6とが設けられている。
【0013】
電槽2の内部には、電極群7と、電極群7を負極端子4に接続する負極柱8と、電極群7を正極端子5に接続する正極柱(図示せず)と、電解液とが収容されている。
【0014】
電解液は、希硫酸を含有する。希硫酸は、例えば、化成後の比重(20℃)が1.25~1.33である希硫酸であってよい。電解液は、例えば、ナトリウムイオンを更に含有していてもよい。ナトリウムイオンは、例えば硫酸ナトリウムを希硫酸に溶解させることにより電解液に含有させることができる。電解液におけるナトリウムイオンの濃度は、例えば、0.005mol/L以上であってよく、0.4mol/L以下であってよい。
【0015】
図2は、電極群7を示す斜視図である。
図2に示すように、電極群7は、負極9と、正極10と、負極9と正極10との間に配置されたセパレータ11と、を備えている。負極9は、負極集電体(負極格子体)12と、負極集電体12に保持された負極活物質13と、を備えている。正極10は、正極集電体(正極格子体)14と、正極集電体14に保持された正極活物質15と、を備えている。なお、本明細書では、化成後の負極から負極集電体を除いたものを「負極活物質」、化成後の正極から正極集電体を除いたものを「正極活物質」とそれぞれ定義する。
【0016】
電極群7は、複数の負極9と正極10とが、セパレータ11を介して、電槽2の開口面と略平行方向に交互に積層された構造を有している。すなわち、負極9及び正極10は、それらの主面が電槽2の開口面と垂直方向に広がるように配置されている。電極群7において、複数の負極9における各負極集電体12が有する耳部12a同士は、負極ストラップ16で集合溶接されている。同様に、複数の正極10における各正極集電体14が有する耳部14a同士は、正極ストラップ17で集合溶接されている。負極ストラップ16及び正極ストラップ17は、それぞれ、負極柱8及び正極柱を介して負極端子4及び正極端子5に接続されている。
【0017】
セパレータ11は、例えば袋状に形成されており、負極9を収容している。セパレータ11は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等で形成されている。セパレータ11は、これらの材料で形成された織布、不織布、多孔質膜等にSiO2、Al2O3等の無機系粒子を付着させたものであってよい。
【0018】
負極集電体12及び正極集電体14は、それぞれ、鉛合金で形成されている。鉛合金は、鉛に加えて、スズ、カルシウム、アンチモン、セレン、銀、ビスマス等を含有する合金であってよく、具体的には、例えば、鉛、スズ及びカルシウムを含有する合金(Pb-Sn-Ca系合金)であってよい。
【0019】
負極活物質は、Pb成分として少なくともPbを含み、必要に応じて、Pb以外のPb成分(例えばPbSO4)及び添加剤を更に含む。負極活物質は、好ましくは、多孔質の海綿状鉛(Spongy Lead)を含む。Pb成分の含有量は、負極活物質の全質量を基準として、90質量%以上又は95質量%以上であってよく、99質量%以下又は98質量%以下であってよい。なお、負極活物質の全質量は、例えば、鉛蓄電池から負極(負極集電体及び負極活物質)を取り出して水洗し、負極を十分に乾燥させた後に測定した負極の質量と、負極集電体の質量との差から算出することができる。乾燥は、例えば、50℃で24時間行う。
【0020】
添加剤としては、例えば、スルホ基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂、硫酸バリウム、炭素材料(炭素繊維を除く)及び繊維(アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等)が挙げられる。
【0021】
スルホ基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂は、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、及び、フェノール類とアミノアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、ビスフェノールとアミノベンゼンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラックが挙げられる。
【0022】
正極活物質は、Pb成分であるPbO2と、繊維径が10μm以上である第一の繊維と、繊維径が7μm以下である第二の繊維とを含む。第一の繊維及び第二の繊維は、カットファイバーとも呼ばれる。正極活物質は、必要に応じて、PbO2以外のPb成分(例えばPbSO4)及び添加剤を更に含んでいてよい。
【0023】
Pb成分の含有量は、低温高率放電性能及びサイクル性能が更に向上する観点から、正極活物質の全質量を基準として、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。Pb成分の含有量は、製造コストの低減及び軽量化の観点から、正極活物質の全質量を基準として、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。なお、正極活物質の全質量は、例えば、鉛蓄電池から正極(正極集電体及び正極活物質)を取り出して水洗し、正極を十分に乾燥させた後に測定した正極の質量と、正極集電体の質量との差から算出することができる。乾燥は、例えば、50℃で24時間行う。
【0024】
正極活物質は、好ましくは、Pb成分としてβ-PbO2を含む。正極活物質は、Pb成分として、α-PbO2を更に含んでいてもよい。すなわち、正極活物質は、一実施形態において、Pb成分としてβ-PbO2のみを含んでいてよく、他の一実施形態において、Pb成分としてα-PbO2及びβ-PbO2を含んでいてよい。
【0025】
第一の繊維及び第二の繊維は、繊維状(細長形状)の材料である。本明細書において、「繊維」は、アスペクト比が100以上である形状を有する材料として定義される。当該アスペクト比は、繊維の光学顕微鏡像から算出される、繊維径の最大長さと、当該最大長さを有する方向に垂直な方向における繊維の最小長さ(繊維径)との比(最大長さ/最小長さ)として定義される。
【0026】
第一の繊維及び第二の繊維は、それぞれ、例えば、ポリマー繊維、炭素繊維等であってよい。ポリマー繊維としては、例えば、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等を含む繊維)、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート等を含む繊維)、アクリル繊維(ポリアクリレート、ポリメタクリレート等を含む繊維)などが挙げられる。第一の繊維及び第二の繊維は、優れた充放電性能(充電受入性能、低温高率放電性能等)が得られる観点から、それぞれ、好ましくはポリマー繊維、より好ましくはアクリル繊維である。第一の繊維及び第二の繊維は、互いに同じ材料の繊維であってよく、互いに異なる材料の繊維であってもよい。
【0027】
第一の繊維の繊維径は、繊維の強度を確保し、正極活物質中の繊維の分散性を向上させる観点から、上述したとおり10μm以上であり、好ましくは10.5μm以上、より好ましくは11μm以上である。第一の繊維の繊維径は、例えば15μm以下であってよい。
【0028】
第二の繊維の繊維径は、正極活物質中に硫酸の拡散パスを好適に形成できる観点から、上述したとおり7μm以下であり、好ましくは6.5μm以下、より好ましくは6μm以下、更に好ましくは5.5μm以下である。第二の繊維の繊維径は、2μm以上であってよく、活物質利用率を更に向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4μm以上、特に好ましくは4.5μm以上である。
【0029】
正極活物質が第一の繊維及び第二の繊維を含むことは、光学顕微鏡を用いて正極活物質の任意の断面を観察することで確認できる。また、第一及び第二の繊維の繊維径は、上述した繊維の最小長さに相当するものであり、繊維の光学顕微鏡像から測定される。
【0030】
第一の繊維は、例えば、日本エクスラン工業株式会社(型番K-701-1.0TS30等)から入手可能である。第二の繊維は、例えば、三菱ケミカル株式会社(型番D122等)から入手可能である。
【0031】
正極活物質中の第一の繊維の質量基準の含有量は、耐久性を向上させる観点から、正極活物質中の第二の繊維の質量基準の含有量以上であることが好ましい。同様の観点から、正極活物質中の第一の繊維の質量基準の含有量は、正極活物質中の第二の繊維の質量基準の含有量に対して、より好ましくは、1.3倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、3.5倍以上、又は4倍以上であってよい。利用率を更に向上させる観点から、正極活物質中の第一の繊維の質量基準の含有量は、正極活物質中の第二の繊維の質量基準の含有量に対して、好ましくは、8倍以下、7倍以下、又は6倍以下である。
【0032】
正極活物質中の第一の繊維及び第二の繊維の合計の含有量は、正極活物質の泥状化による脱落を抑制できる観点から正極活物質の全質量を基準として、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。第一の繊維及び第二の繊維の合計の含有量は、優れた充放電性能(充電受入性能、低温高率放電性能等)が得られる観点から、正極活物質の全質量を基準として、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下である。
【0033】
添加剤としては、例えば、炭素材料(炭素繊維を除く。)が挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラックが挙げられる。
【0034】
以上のとおり、正極活物質が第一の繊維及び第二の繊維を含むことにより、正極における活物質利用率が向上する。利用率が向上する理由として、正極活物質中に互いに異なる繊維径の繊維が存在することにより、硫酸の拡散パスが増加し、その結果、充放電に寄与する正極活物質の量が増加するためであると本発明者らは推察している。
【0035】
鉛蓄電池1は、車両のエンジン始動用及び補機用の鉛蓄電池として好適に用いられる。すなわち、本発明の一実施形態は、上述した鉛蓄電池1の車両のエンジン始動、又は車両の補機への応用である。
【0036】
鉛蓄電池1は、例えば、電極(負極及び正極)を得る電極製造工程と、電極を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池1を得る組立工程とを備える製造方法により製造される。
【0037】
電極製造工程では、例えば、負極集電体12に負極活物質ペーストを保持させた後に、熟成及び乾燥することにより未化成の負極9を得ると共に、正極集電体14に正極活物質ペーストを保持させた後に、熟成及び乾燥することにより未化成の正極10を得る。
【0038】
組立工程では、例えば、得られた負極及び正極を、セパレータ11を介して積層し、同極性の電極の集電部をストラップで溶接させて電極群を得る。この電極群を電槽内に配置して未化成の鉛蓄電池を作製する。次に、未化成の鉛蓄電池に希硫酸を入れて、直流電流を通電して電槽化成する。続いて、化成後の硫酸の比重(20℃)を適切な電解液の比重に調整することで、鉛蓄電池1が得られる。
【0039】
化成に用いる硫酸の比重(20℃)は、1.15~1.25であってよい。化成後の硫酸の比重(20℃)は、好ましくは1.25~1.33、より好ましくは1.26~1.30である。化成条件及び硫酸の比重は、電極のサイズに応じて調整することができる。化成処理は、組立工程において実施されてもよく、電極製造工程において実施されてもよい(タンク化成)。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
(正極の作製)
鉛粉100質量部に対して、繊維A(アクリル繊維、繊維径(最小長さ)11μm、最大長さ3mm)0.224質量部と、繊維B(アクリル繊維、繊維径5.0μm、繊維長さ3mm)0.051質量部、硫酸ナトリウム0.025質量部、鉛丹とを加えて乾式混合した。次に、鉛粉及び繊維からなる混合物100質量部に対して、水10.5質量部を加えると共に、鉛丹を含む希硫酸(比重1.28)16.3質量部を段階的に加え、40分混練して正極活物質ペーストを作製した。なお、鉛丹の配合量は、合計で10質量部とした。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式正極集電体に、正極活物質ペーストを充填した後、温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後、温度60℃で24時間乾燥して、未化成の正極を得た。
【0042】
(負極の作製)
鉛粉100質量部に対して、バニレックスN(高純部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、商品名、日本製紙株式会社製)0.3質量部、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維0.1質量部、硫酸バリウム1.0質量部、及びファーネスブラック0.1質量部の混合物を添加し、乾式混合した。次に、この混合物に水を加えて混練した後、比重1.280の希硫酸を少量ずつ添加しながら更に混練して、負極活物質ペーストを作製した。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式負極集電体に、この負極活物質ペーストを充填した後、温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後、温度50℃で16時間乾燥して、未化成の負極を得た。
【0043】
(評価用鉛蓄電池の組み立て)
袋状に加工したポリエチレン製のセパレータに、未化成の負極を挿入した。次に、未化成の正極1枚と、袋状セパレータに挿入された未化成の負極2枚とを交互に積層した。続いて、各電極に対して、板状の鉛シートを用いてアーク溶接することで端子を作製した。その後、電極を電槽に挿入すると共に、ナトリウムイオン濃度が0.05mol/Lになるように硫酸ナトリウムを溶解させた比重1.26の希硫酸を電槽内に注入し、40℃の水槽に入れて40分間静置した。その後、課電量(基準:正極活物質の理論化成電気量)300%で化成を行った。なお、化成後の電解液(硫酸溶液)の比重を1.29(20℃)に調整した。以上のようにして、2V単板セル(評価用鉛蓄電池)を組み立てた。
【0044】
<実施例2>
正極活物質ペースト作製時に用いる繊維Bの含有量を0.106質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池の作製及び各測定を行った。
【0045】
<実施例3>
正極活物質ペースト作製時に用いる繊維Bの含有量を0.161質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
【0046】
<実施例4>
正極活物質ペースト作製時に用いる繊維Bを繊維C(アクリル繊維、繊維径(最小長さ)3.3μm、最大長さ3mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
【0047】
<比較例1>
正極活物質ペースト作製時に繊維Bを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
【0048】
<比較例2>
正極活物質ペースト作製時に用いる繊維Aの含有量を0.33質量部に変更し、繊維Bを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池の作製及び各測定を行った。
【0049】
(活物質利用率の評価)
各実施例及び比較例の鉛蓄電池の正極における活物質利用率を以下のとおり評価した。
25℃環境下において、0.2Cの電流値で終止電圧1.75Vの定電流放電を行い、このときの放電容量を測定した。測定された放電容量を用いて、活物質利用率を下記式により算出した。結果を表1に示す。
活物質利用率(%)=[測定された放電容量]/[正極活物質の理論容量]×100
なお、正極活物質の理論容量は、「正極内の酸化鉛重量(g)×0.22(Ah/g)」により求められる。
【0050】
【符号の説明】
【0051】
1…鉛蓄電池、9…負極、10…正極、11…セパレータ、12…負極集電体、13…負極活物質、14…正極集電体、15…正極活物質。