(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】測定迎角と推定迎角との間の誤差に基づいて障害を判定するための飛行制御システム
(51)【国際特許分類】
B64D 45/00 20060101AFI20231227BHJP
G01P 5/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B64D45/00 A
G01P5/00 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019193540
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】シャーウィン・チュンシェク・リ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ホワイトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ケニオン・ルプニク
(72)【発明者】
【氏名】キオウマース・ナジマバディ
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0330455(US,A1)
【文献】米国特許第06131055(US,A)
【文献】米国特許第07043345(US,B2)
【文献】特開2012-126201(JP,A)
【文献】特開2019-038519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
G01P 5/00
G01P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(10)用の飛行制御システム(18)であって、前記飛行制御システム(18)は、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)と、
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)に結合されたメモリ(1034)であって、前記メモリ(1034)は、データベース(1044)と、前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)によって実行されたときに、前記飛行制御システム(18)に、
未加工の迎角(α
raw)に基づく測定迎角(α
m)を入力として受信させ、
全圧に基づく推定迎角(α
est)を入力として受信させ、
誤差を決定するために、前記測定迎角(α
m)と前記推定迎角(α
est)とを比較させ、
前記測定迎角(α
m)と前記推定迎角(α
est)との間の前記誤差がしきい値を超えていると判定した場合、迎角値を使用して障害の存在を判定させる、プログラムコードと、を含むデータを格納するメモリ(1034)と、
を備えている、飛行制御システム(18)
であって、
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
複数のピトー管(40)からの前記全圧と静圧(Ps)とに基づいて測定動圧(Q
bar(m)
)を決定し、
抗力係数(C
D
)と揚力係数(C
L
)の両方に基づいて推定動圧(Q
bar(e)
)を決定し、前記抗力係数(C
D
)と前記揚力係数(C
L
)とは前記航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づき、
差を決定するために、前記測定動圧(Q
bar(m)
)と前記推定動圧(Q
bar(e)
)とを互いに比較し、
前記測定動圧(Q
bar(m)
)と前記推定動圧(Q
bar(e)
)との前記差が、しきい値時間長さの間、別のしきい値を超えたとの判定に応じて、前記測定動圧(Q
bar(m)
)の共通モード障害の存在を判定する、
ための命令を実行する、
飛行制御システム(18)。
【請求項2】
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)と通信する複数の迎角センサー(60)をさらに備え、前記複数の迎角センサー(60)は、前記未加工の迎角(α
raw)を測定するように構成されている、請求項1に記載の飛行制御システム(18)。
【請求項3】
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
モーメントアーム補正項、前記未加工の迎角(α
raw)、前記航空機の真の対気速度(Vt
MDL)、および推定マッハ数(M
MDL)に基づいて前記測定迎角(α
m)を決定する、
ための命令を実行する、請求項1または2に記載の飛行制御システム(18)。
【請求項4】
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
モーメントアーム補正項、前記未加工の迎角α
raw、および前記推定動圧(Q
bar(e))に基づいて前記測定迎角(α
m)を決定する、
ための命令を実行する、
請求項1のいずれか一項に記載の飛行制御システム(18)。
【請求項5】
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
測定前後加速度(Ax
(mea))および測定垂直加速度(Az
(mea))を入力として受信し、
抗力係数(C
D)および揚力係数(C
L)に基づいて推定前後加速度(Ax
(est))および推定垂直加速度
(Az
(est)
)を決定し、前記抗力係数(C
D)および前記揚力係数(C
L)は、前記航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づいており、
前記推定前後加速度(Ax
(est))と前記推定垂直加速度(Az
(est))との第1の差、および前記測定前後加速度(Ax
(mea))と前記測定垂直加速度(Az
(mea))との第2の差の加速度誤差値を決定し、
前記第1の差と前記第2の差の前記加速度誤差値にカルマンゲイン値を乗算することにより残存カルマン値を決定する、
ための命令を実行する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の飛行制御システム(18)。
【請求項6】
前記1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
前記航空機(10)の推定垂直加速度成分A_N
(est)に基づいて前記迎角の推定変化率(
【数1】
)を決定し、
前記残存カルマン値と前記迎角の前記推定変化率(
【数2】
)とを合わせて合計し、
前記推定迎角(α
est)を決定するために、前記残存カルマン値と前記迎角の前記推定変化率(
【数3】
)との前記合計を積分する、
ための命令を実行する、
請求項5に記載の飛行制御システム。
【請求項7】
航空機(10)の迎角値を使用して障害を判定する方法であって、前記方法は、
コンピューター(1030)により、未加工の迎角α
rawに基づく測定迎角(α
m)を入力として受信するステップと、
前記コンピューター(1030)により、全圧に基づいて決定される推定迎角(α
est)を入力として受信するステップと、
誤差を決定するために、前記コンピューター(1030)によって前記測定迎角(α
m)と前記推定迎角(α
est)とを比較するステップと、
前記測定迎角(α
m)と前記推定迎角(α
est)との間の前記誤差がしきい値を超えているとの判定に応じて、前記迎角値を使用して前記障害の存在を判定するステップと、
を含む方法
であって、
複数のピトー管(40)からの前記全圧と静圧(Ps)とに基づいて測定動圧(Q
bar(m)
)を決定するステップと、
抗力係数(C
D
)と揚力係数(C
L
)の両方に基づいて推定動圧(Q
bar(e)
)を決定し、前記抗力係数(C
D
)および前記揚力係数(C
L
)は前記航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づく、ステップと、
差を決定するために、前記測定動圧(Q
bar(m)
)と前記推定動圧(Q
bar(e)
)を互いに比較するステップと、
前記測定動圧(Q
bar(m)
)と前記推定動圧(Q
bar(e)
)との前記差が、しきい値時間長さの間、別のしきい値を超えたとの判定に応じて、前記測定動圧(Q
bar(m)
)の共通モード障害の存在を判定するステップと、
をさらに含む、
方法。
【請求項8】
測定前後加速度(Ax
(mea))および測定垂直加速度(Az
(mea))を入力として受信するステップと、
抗力係数(C
D)および揚力係数(C
L)に基づいて推定前後加速度(Ax
(est))および推定垂直加速度
(Az
(est)
)を決定するステップと、
前記推定前後加速度(Ax
(est))と前記推定垂直加速度(Az
(est))との第1の差、および前記測定前後加速度(Ax
(mea))と前記測定垂直加速度(Az
(mea))との第2の差の加速度誤差値を決定するステップと、
前記第1の差と前記第2の差との前記加速度誤差値にカルマンゲイン値を乗算して、残存カルマン値を決定するステップと、
をさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行制御システムに関する。より具体的には、本開示は、測定迎角と推定迎角との間の誤差がしきい値を超えるときに障害の存在を判定する飛行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ピトー管が氷で詰まった場合の検出など、ピトー管の障害を検出するために、共通モードモニター(Common Mode Monitor:CMM)または障害検出器が使用される。ピトー管は、航空機の速度と高度とを計算するために使用される情報を提供する。動作中、各ピトー管、またはチャネルは、CMMにデータを送信する。ピトー管は圧力ベースのセンサーであるため、ピトー管がブロックされると、出力が不正確になる場合がある。したがって、ピトー管の障害が疑われる場合、ピトー管信号の代わりに使用できる信号を生成することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの態様によれば、航空機の飛行制御システムが開示されている。飛行制御システムは、1つまたは複数のプロセッサーと、1つまたは複数のプロセッサーに結合されたメモリとを備えている。メモリは、データベースと、1つまたは複数のプロセッサーで実行されたときに飛行制御システムに、未加工の迎角に基づく測定迎角を入力として受信させるプログラムコードとを含むデータを保存する。飛行制御システムは、全圧に基づく推定迎角も入力として受信する。飛行制御システムはまた、測定迎角と推定迎角とを比較して、誤差を決定する。測定迎角と推定迎角との間の誤差がしきい値を超えると判定したことに応答して、飛行制御システムは、迎角値を持つ障害の存在を判定する。
【0004】
本開示の追加の態様では、航空機用の飛行制御システムが開示される。飛行制御システムは、1つまたは複数のプロセッサーと、1つまたは複数のプロセッサーと通信する複数の迎角センサーとを備え、複数の迎角センサーは未加工の迎角を測定するように構成される。飛行制御システムはまた、1つまたは複数のプロセッサーと通信する複数のピトー管を備え、複数のピトー管は全圧を測定する。飛行制御システムはまた、1つまたは複数のプロセッサーに結合されたメモリを備え、メモリは、データベースと、1つまたは複数のプロセッサーによって実行されると、飛行制御システムに未加工の迎角に基づく測定迎角を入力として受信させるプログラムコードとを含むデータを格納する。飛行制御システムは、全圧に基づく推定迎角も入力として受信する。飛行制御システムは、測定迎角と推定迎角とを比較して誤差を決定する。測定迎角と推定迎角との間の誤差がしきい値を超えると決定したことに応答して、飛行制御システムは、複数の迎角センサーの過半数で障害の存在を決定する。
【0005】
本開示のさらに別の態様では、航空機の迎角値を用いて障害を判定する方法が開示される。この方法は、未加工の迎角に基づく測定迎角をコンピューターによって入力として受信することを含む。この方法はまた、全圧に基づいて決定される推定迎角をコンピューターにより入力として受信することを含む。この方法は、コンピューターによって、測定迎角を推定迎角と比較して誤差を決定することをさらに含む。測定迎角と推定迎角との間の誤差がしきい値を超えると判定したことに応答して、この方法は、迎角値を用いて障害の存在を判定することを含む。
【0006】
議論された特徴、機能、および利点は、様々な実施形態で独立して達成されてもよく、または以下の説明および図面を参照してさらなる詳細を見ることができる他の実施形態で組み合わされてもよい。
【0007】
本明細書で説明される図面は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】例示的な実施形態による航空機の例示的な飛行制御システムの概略図である。
【
図2】例示的な実施形態による様々な操縦翼面およびセンサーを示す航空機の立面斜視図である。
【
図3】例示的な実施形態による通常動作モード中の飛行制御システムを示すフローチャートである。
【
図4】例示的な実施形態による、共通モード空気圧事象に応答する
図3に示す飛行制御システムのフローチャートである。
【
図5】例示的な実施形態による推定動圧を決定するための拡張カルマンフィルタのブロック図である。
【
図6】例示的な実施形態による推定動圧を決定するための制御モジュールを示す図である。
【
図7】例示的な実施形態による重心を示す航空機の立面斜視図である。
【
図8】例示的な実施形態による、推定動圧に基づいて共通モード監視システムによって障害を検出するための例示的な方法を示すプロセスフロー図である。
【
図9】例示的な実施形態による、測定迎角が使用される通常動作モード中の飛行制御システムを示すフローチャートである。
【
図10】例示的な実施形態による、障害の検出に応答して測定迎角の代わりに推定迎角を利用する
図9に示された飛行制御システムのフローチャートである。
【
図11】例示的な実施形態による推定迎角を決定するための拡張カルマンフィルタのブロック図である。
【
図12】例示的実施形態による推定迎角を決定するための制御モジュールを示す図である。
【
図13】例示的な実施形態による推定迎角を決定する例示的な方法を示すプロセスフロー図である。
【
図14】例示的な実施形態による、測定動圧および迎角に基づいて共通モード空気圧事象を検出するためのシステムの図であり、システムは第1検出器および第2検出器を含む。
【
図15】例示的な実施形態による、複数のピトー管の同期障害を検出するための
図14に示すシステムの第1検出器の図である。
【
図16】例示的な実施形態による、複数のピトー管の非同期障害を検出するための
図14に示すシステムの第2検出器の図である。
【
図17】例示的な実施形態による、
図15に示すシステムに基づいて同期障害を判定する例示的な方法を示すプロセスフロー図である。
【
図18】例示的な実施形態による、
図16に示すシステムに基づいて非同期障害を判定する例示的な方法を示すプロセスフロー図である。
【
図19】例示的な実施形態による
図1の飛行制御システムによって使用されるコンピューターシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、迎角値に基づいて障害を検出する航空機用の飛行制御システムを対象とする。飛行制御システムは、障害の検出に応じて、測定迎角から推定迎角値に切り替わる。測定迎角は、複数の迎角センサーから収集されたデータに基づいて決定される。対照的に、推定迎角は、迎角センサーによって測定された値に基づいていない。代わりに、推定迎角は、航空機の一部である複数のピトー管によって測定された全圧に基づいて決定される。
【0010】
一実施形態では、共通モードの空気圧事象の存在の検出の判定に応じて、飛行制御システムは、航空機の真対気速度および測定マッハ数を使用せずに測定迎角を決定する。共通モードの空気圧事象は、複数のピトー管の過半数がブロックされているか、正確な測定値を生成しない状態を表す。
【0011】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、用途、または使用を限定することを意図するものではない。
【0012】
図1を参照すると、飛行制御システム18を含む航空機10の例示的な概略図が示されている。飛行制御システム18は、1つ以上の航空機システム20に送信される信頼できる対気速度信号を決定するように構成された飛行制御モジュール16を含む。信頼できる対気速度信号には、推定マッハ数M
MDL、較正された対気速度Vcas
MDL、および航空機の真の対気速度Vt
MDLが含まれる。飛行制御モジュール16は、測定動圧Q
bar(m)および合成または推定動圧Q
bar(e)を決定する。測定動圧Q
bar(m)は、複数の空気データセンサー22から収集されたデータに基づいて、空気データ制御モジュール28によって決定される。具体的には、空気データセンサー22は、複数のピトー管40(
図2)を含む。しかしながら、推定動圧Q
bar(e)は、推定器制御モジュール30によって決定された推定値である。推定動圧Q
bar(e)は、複数の操縦翼面と、慣性と、迎角センサー24とから収集されたデータに基づいている。推定動圧Q
bar(e)は、空気データセンサー22(すなわち、複数のピトー管40)から収集されたデータに基づいて決定されないことを理解されたい。
【0013】
飛行制御システム18は、CMPE制御モジュール36と呼ばれる共通モード空気圧事象(CMPE)障害検出器および信号セレクタを含む。本開示では、複数のピトー管40(
図2)の過半数がブロックされるか、さもなければ同時にまたは比較的短い時間内(例えば、一実施形態において約0.001~約10秒以内)に正しく動作しない場合、共通モード空気圧事象が発生する。例えば、複数のピトー管40は、着氷のために、または火山灰などの異物によってブロックされる場合がある。複数のピトー管40はそれぞれ圧力を測定するように構成されており、各ピトー管40からの測定値は単一の測定値に組み合わされる。各ピトー管40からの測定値は、平均化または中間値選択によって組み合わされ、これにより、全圧P
TOTが生成される。しかしながら、複数のピトー管40がブロックされると、正確ではない全圧P
TOTが生じる。具体的には、全圧P
TOTの読み取り値が非常に低いため、非現実的な計算された対気速度になる。計算された対気速度は、航空機システム20に提供される。
【0014】
図1を参照すると、測定動圧Q
bar(m)は、通常の動作状態における推定マッハ数M
MDL、較正された対気速度Vcas
MDL、および航空機の真の対気速度Vt
MDL(すなわち、信頼できる対気速度値)を決定するために使用される。本開示の目的のために、通常の動作状態または通常動作モードは、複数のピトー管40(
図2)の過半数が機能しているときである。しかし、通常動作モードは、例えば慣性データセンサーなどの航空機10の他の動作パラメータにも基づいていることを理解されたい。
【0015】
ピトー管40の過半数がブロックされている(すなわち、対気速度値が現在非現実的に低い)という通知を受信したことに応答して、CMPE制御モジュール36は、測定動圧Qbar(m)から推定動圧Qbar(e)に切り替えて、推定マッハ数MMDL、較正された対気速度VcasMDL、および航空機の真の対気速度VtMDLを決定する。言い換えれば、複数のピトー管40の過半数がブロックされていない場合、飛行制御システム18は、複数のピトー管40からの測定値に基づいて信頼できる対気速度を決定する。しかしながら、飛行制御システム18がピトー管の過半数がブロックされていると判定すると、飛行制御システム18は推定動圧Qbar(e)に基づいて信頼できる対気速度を決定する。
【0016】
航空機システム20は、航空機の操縦制御を提供するためのハードウェアとソフトウェアとの両方を含む。一実施形態では、航空機システム20は、統合飛行制御電子コンピューター、航空電子コンピューター、エンジン電子制御コンピューター、ディスプレイおよび乗務員警告コンピューターを含むが、これらに限定されない。統合飛行制御電子コンピューターは、主飛行制御、自動操縦、統合信号管理、航空データ参照機能などの機能を提供するソフトウェアパーティションを含み得るが、これらに限定されない。航空電子コンピューターは、オートスロットル制御、飛行計画、およびウェイポイントガイダンスを提供する。エンジン電子制御コンピューターは、エンジン推力の推進制御を提供する。ディスプレイおよび乗組員警告コンピューターは、高度、対気速度、ピッチおよびバンク角、気温、ならびにシステム警告メッセージなどのリアルタイムの航空機状態情報を提供するが、これらに限定されない。
【0017】
図2は、航空機10の外部42の立面斜視図である。複数のピトー管40は、レードーム44に隣接する航空機の機首46に配置される。具体的に、非限定的な一例では、複数のピトー管40のうちの2つが航空機の左側50に配置され、別のピトー管40が航空機10の右側52(
図2では見えない)に配置される。航空機10の左側50および右側52のピトー管40は、操縦士、副操縦士、およびバックアップに対応する。3つのピトー管40が記載されているが、より多くのピトー管またはより少ないピトー管も同様に使用できることを理解されたい。本実施例では、3つのピトー管40のうち少なくとも2つがブロックされるか、または動作不能になり、共通モード空気圧事象が誘発される。
【0018】
複数のピトー管40に加えて、
図2に示す例示的な実施形態では、航空機10はまた、複数の迎角センサー60(
図2では1つのみが見える)および2つの全気温(total air temperature:TAT)プローブ62(
図2では1つのみが見える)を含む。複数の迎角センサー60およびプローブ62は、航空機10の機首46の左側50および右側52に配置されている。航空機10は、航空機10の左側50と右側52の両方に配置された静的ポート64も含む(
図2では左側のみが見える)。静的ポート64は、複数のピトー管40の後方で翼70に隣接した箇所の胴体66に配置されている。
【0019】
ナセル74は、パイロン76によって各翼70に取り付けられている。各ナセル74は、対応する航空機エンジン78を収容している。エンジンの全気温(TAT)プローブ(
図2では見えない)は、各ナセルの入口カウル82に配置されている。エンジン速度センサー(
図2では見えない)は、対応する1つの航空機エンジン78の回転速度を測定する。一実施形態では、エンジン速度センサーは、高圧ステータベーンリング(
図2では見えない)の前のエンジンコア内に配置される。
【0020】
次に、航空機10の操縦翼面68(
図3)について説明する。翼70は両方とも、前縁84と後縁86とを含む。両翼70は、各翼70の前縁84に位置する対応する前縁スラット88と、各翼70の後縁86に位置する対応する後縁フラップ90とを含む。翼70はまた、各翼70の上面94に沿って配置された1つ以上のスポイラ92と、各翼70の後縁86に位置する一対の補助翼98とを含む。航空機10の尾部または後端100は、排気口102で終端する。排気口102は、航空機10の後端に位置する補助動力装置(auxiliary power unit:APU)104用である。航空機10の後端100は、垂直安定板106と2つの水平安定板108とを含む。舵110は垂直安定板106の後縁112に配置され、エレベータ114は各水平安定板108の後縁116に配置される。舵110は、航空機10のヨーを制御するために移動可能であり、エレベータ114は、航空機10のピッチを制御するために移動可能である。
【0021】
図3は、航空機10の通常動作モードを示すブロック図である。通常動作モードの間、複数のピトー管40(
図2)の過半数はブロックされない。
図3に示す実施形態では、共通モード空気圧事象は発生していない。したがって、CMPE制御モジュール36によって生成された出力96は、偽値に設定される(すなわち、CMPE障害=偽)。
図2および
図3の両方を参照すると、複数のピトー管40からの全圧P
TOTおよび静的ポート64からの静圧Psは、空気データ参照機能ブロック120に送られる。空気データ参照機能ブロック120は、複数のピトー管40からの総空気圧P
TOTと静圧Psとに基づいて、測定動圧Q
bar(m)を決定する。具体的には、測定動圧Q
bar(m)は、総空気圧P
TOTと静圧Psとの差である。
図3に示す実施形態では、複数のピトー管40がブロックされていないため、測定動圧Q
bar(m)は正確である。したがって、空気データ参照機能ブロック120によって決定された測定動圧Q
bar(m)は、主飛行制御モジュール140、自動操縦制御モジュール142、自動スロットル制御モジュール144、および1つまたは複数のディスプレイ146によって入力として受信される。
【0022】
図1および
図3を参照すると、飛行制御システム18は、航空機10が通常動作モードである限り、信頼できる対気速度(推定マッハ数M
MDL、較正対気速度Vcas
MDL、および航空機の真対気速度Vt
MDL)を決定する。飛行エンベロープ保護モード、自動操縦機能、および自動スロットル機能は、通常動作モードで使用できる。
【0023】
複数のディスプレイ146は、乗組員警告システム(CAS)ディスプレイを含み得る。CASディスプレイに表示されるメッセージは、航空機10の通常のしきい値または許容範囲外の測定値および事象によって誘発され、操縦士130および他の乗組員に見える。航空機10が通常動作モードにあるとき、空気データ参照機能ブロック120によって決定された測定動圧Q
bar(m)は、主飛行制御モジュール140、自動操縦制御モジュール142、自動スロットル制御モジュール144、および複数のディスプレイ146によって入力として受信される。しかしながら、複数のピトー管40(
図2)の過半数がブロックされると、航空機10は通常動作モードから拡張動作モードに切り替わり、このことについて、以下でより詳細に説明し、
図4に示す。
【0024】
図3を参照すると、航空機10が通常動作モードにあり、自動操縦機能が作動している場合、自動操縦制御モジュール142は、主飛行制御モジュール140に自動操縦命令を送信する。主飛行制御モジュール140は、操縦翼面68に送られる翼面制御命令を決定し、自動スロットル制御モジュール144は、航空機エンジン78(
図2)のエンジン推力145を決定する。航空機10が通常動作モードにあるが、自動操縦機能が作動していない場合、操縦士130によって生成されたホイールおよびコラム命令は、例えばピッチ制御法および横方向制御法などの航空機制御法則に従って主飛行制御モジュール140によって処理される。さらに、飛行エンベロープ制御保護機能が有効になっている。
【0025】
拡張カルマンフィルタ(EKF)制御モジュール122は、推定動圧Q
bar(e)を決定する。EKF制御モジュール122は、以下においてより詳細に説明され、
図5および
図6に示される。共通モードモニター(CMM)126は、空気データ参照機能ブロック120からの測定動圧Q
bar(m)、EKF制御モジュール122からの推定動圧Q
bar(e)、およびCMPE制御モジュール36からの出力96を入力として受信する。CMM126は、測定動圧Q
bar(m)の共通モード障害(障害とも呼ばれる)を判定する。測定動圧Q
bar(m)の共通モード障害は、複数のピトー管40(
図2)の過半数の障害を表す。
【0026】
測定動圧Q
bar(m)の共通モード障害は、測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)との差に基づいて判定される。具体的には、CMM126は、測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)との差がしきい値時間長さの間しきい値を超えたときに、測定動圧Q
bar(m)の共通モード障害が発生したと判定する。例示的な一実施形態では、しきい値は50パーセントを超え、しきい値時間長さは約5秒~約15秒の範囲である。しかし、他の値も同様に使用できることを理解されたい。
図3に示す実施形態では、CMM126は、共通モード障害が発生していないと判定する(例えば、測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)との間のしきい値および出力96は、CMPE障害=偽を示す)。したがって、CMM126は、通常動作モード(すなわち、通常モード=真)を示す出力99を主飛行制御モジュール140に送信する。
【0027】
次に
図4を参照すると、拡張された通常動作モードが示されている。拡張された通常動作モードの間、複数のピトー管40(
図2)の過半数がブロックされる。したがって、CMPE制御モジュール36は、共通モードの空気圧事象を検出する。しかしながら、拡張動作モードの間、CMPE制御モジュール36は、遅延中に共通モード空気圧事象を抑制し、このことは、共通モード空気圧事象が検出されないことを示す出力96を生成し続けることによって達成される(すなわち、CMPE障害=偽)。言い換えれば、たとえ共通モード空気圧事象が検出されたとしても、CMPE制御モジュール36は、共通モード空気圧事象が発生していないことを示すメッセージをCMM126に送信する。しかしながら、CMM126は、共通モード障害が発生した(すなわち、測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)との差が、しきい値時間長さの間しきい値を超える)と判定する。CMPE制御モジュール36から偽値を受信する(これは共通モード空気圧事象が無いことを示す)と同時に共通モード障害の存在を判定したことに応答して、CMM126は、通常動作モード(すなわち、通常モード=真)を示す出力99の生成および送信を続ける。CMPE制御モジュール36は、時間遅延の間、共通モード空気圧事象を抑制し続ける。一実施形態では、時間遅延は約120秒である。この長さは、断続的な共通モード空気圧事象が発生する可能性がある時間の長さに基づいて変化し得るが、時間遅延の長さに制限があることを理解されたい。時間遅延は少なくとも60秒である必要がある。
図4に見られるように、航空機10が拡張通常動作モードにあるとき、EKF制御モジュール122によって決定された推定動圧Q
bar(e)は、主飛行制御モジュール140、自動操縦制御モジュール142、自動スロットル制御モジュール144、および複数のディスプレイ146に送信される。
【0028】
一部のタイプの航空機では、飛行制御システムが第2の動作モードの場合、飛行エンベロープ保護システム、ピッチ制御、横方向制御、および自動操縦機能が利用できない。代わりに、単純なピッチとロールの制御のみが利用可能である。他のタイプの航空機では、ピトー空気データ信号とは独立した基本的な自動操縦操作制御を提供する第2の自動操縦機能が利用できる場合がある。
図4に示される実施形態では、拡張動作モードにより、主飛行制御モジュール140、自動操縦制御モジュール142、および自動スロットル制御モジュール144は、時間遅延中に障害が検出されなかったかのように動作することができる。ただし、時間遅延が完了すると、共通モード空気圧事象は抑制されなくなる。したがって、CMPE制御モジュール36が共通モードの空気圧事象の検出を継続する場合、出力96は真(すなわち、CMPE障害=真)に設定され、航空機10は第2の動作モードに切り替わる。
【0029】
図5は、EKF制御モジュール122の拡張カルマンフィルタのブロック図である。ブロック図は、複数の操縦翼面、慣性、および迎角センサー24(
図1)から収集されたデータに基づいて推定動圧Q
bar(e)を決定するためのシステム148を表す。言い換えると、推定動圧Q
bar(e)は、複数のピトー管40(
図2)からの測定値に基づいて決定されない。EKF制御モジュール122は、測定モデル150、動的制御モジュール152、カルマンゲインブロック154、積分器ブロック156、誤差ブロック158、乗算器160、および加算器162を含む。測定モデル150は、式1の測定加速度(前後加速度Ax、垂直加速度Az)の期待値を次のように予測する:
【数1】
ここで、mは航空機10の質量を表し、C
Dは航空機10の抗力係数を表し、C
Lは航空機10の揚力係数を表し、P
Sは静圧であり、Sは翼の平面形状の基準面積であり、αは迎角であり、xは推定量(推定動圧Q
bar(e))であり、R(α)は航空機10(
図7)の機体軸線X
Bおよび機体軸線Z
Bに対する前方安定軸線X
Sの回転行列である。迎角αは、測定値(すなわち、複数の迎角センサー60によって測定される)であると想定されることを理解されたい。
【0030】
引き続き
図5を参照すると、動的制御モジュール152は、動圧の推定変化率
【数2】
と呼ばれる推定動圧の変化率を決定する。動圧の推定変化率
【数3】
は、前方安定軸線X
S(
図7に見られる)に沿った前後加速度を表す航空機10の推定前後加速度成分A_D
(est)に基づいて決定される。具体的には、動圧の推定変化率
【数4】
は、航空機10の気圧高度、迎角α、ピッチ角θ、推定動圧Q
bar(e)、および推定前後加速度成分A_D
(est)の関数である。一実施形態では、動圧の推定変化率
【数5】
は、式2に基づいて決定される。
【数6】
αは迎角、gは重力加速度、ρは空気密度である。
【0031】
カルマンゲインブロック154は、カルマンゲイン値Kを格納する。カルマンゲイン値Kは、航空機10の現在の状態(すなわち、動作条件)に与えられる重みを表す。カルマンゲイン値Kはスカラー値ではなく、2×2行列に基づいて表される。カルマンゲイン値Kは、航空機10の動作パラメータに基づいて変化する。具体的には、カルマンゲイン値Kは、データベース228に格納されたルックアップテーブル226(
図6に見られる)のセットによって決定される動的な値である。ルックアップテーブル226は、航空機10の動作条件に基づいて生成され、ルックアップテーブルへの入力は、迎角αおよび航空機10の推定マッハ数M
MDLである。
【0032】
誤差ブロック158は、測定モデル150からの推定前後加速度Ax(est)および推定垂直加速度Az(est)、ならびに加速度計によって測定され、以下で詳細に説明されている測定前後加速度Ax(mea)および測定垂直加速度Az(mea)を入力として受信する。誤差ブロック158は、推定前後加速度Ax(est)と推定垂直加速度Az(est)との間の第1の差と、測定前後加速度Ax(mea)と測定垂直加速度Az(mea)との間の第2の差とを決定することにより、加速度誤差値Eを決定する。乗算器160は、加速度誤差値Eおよびカルマンゲイン値Kを入力として受信し、加速度誤差値Eにカルマンゲイン値Kを乗算することにより推定状態更新を決定する。
【0033】
加算器162は、乗算器160からの残存カルマン値および動的制御モジュール152からの動圧の推定変化率
【数7】
を入力として受信する。加算器162は、残存カルマン値と動圧の推定変化率
【数8】
とを一緒に組み合わせる。次いで、組み合わされた残存カルマン値と動圧の推定変化率
【数9】
は、積分器ブロック156に送信される。次いで、積分器ブロック156は、残存カルマン値と動圧の推定変化率
【数10】
との合計を積分して、推定動圧Q
bar(e)を決定する。
【0034】
図6は、複数のサブモジュール200、202、204、206、208、210、212を含むEKF制御モジュール122の図である。サブモジュール200、202、204、206、208、210、212は、モジュール式プログラミング技術の使用を示し得る別個の構成要素として示されている。しかしながら、ソフトウェア設計は、複数のモジュールの少なくともいくつかのプログラム機能を単一のモジュールに結合することにより、サブモジュール200、202、204、206、208、210、212が区別される程度を減少させてもよい。さらに、サブモジュール200、202、204、206、208、210、212に起因する機能は、他の方法で、または図示されたもの以外の他のシステムで配布されてもよい。したがって、本開示の実施形態は、
図6に示されるシステムまたはモジュールの特定の配置に限定されない。
【0035】
ここで
図5および
図6の両方を参照すると、EKF制御モジュール122およびシステム148は互いに対応している。具体的には、EKF制御モジュール122の係数サブモジュール200および推進サブモジュール202は両方ともシステム148の測定モデル150に対応する。EKF制御モジュール122の測定サブモジュール204は、システム148の加算器162に対応する。EKF制御モジュール122の誤差サブモジュール206は、システム148の誤差ブロック158に対応する。EKF制御モジュール122のカルマンゲインサブモジュール208は、システム148のカルマンゲインブロック154に対応する。EKF制御モジュール122の動的サブモジュール210は、システム148の動的制御モジュール152に対応する。最後に、積分サブモジュール212は、システム148の積分器ブロック156に対応する。
【0036】
EKF制御モジュール122は、航空機10(
図1および
図2)の複数の動作パラメータを入力として受信する。動作パラメータには、測定された加速度係数Ax
(mea)およびAz
(mea)、迎角α、気圧高度、ピッチ角θ、航空機10の操縦翼面のたわみδ、全気温T
TOT、両方の航空機エンジン78(
図2)のエンジン速度N1、および静圧Psが含まれるが、これらに限定されない。操縦翼面のたわみδは、
図2に示す操縦翼面の少なくともいくつかを含む。具体的には、
図2に示す実施形態では、操縦翼面のたわみδは、前縁スラット88、後縁フラップ90、スポイラ92、補助翼98、垂直安定板106、水平安定板108、舵110、およびエレベータ114を含む。
【0037】
図7は、航空機10の機体軸線を示している。パラメータX
B、Y
B、およびZ
Bは、それぞれ航空機10のx機体軸線、y機体軸線、およびz機体軸線を表し、CGは航空機10の重心を表す。迎角αは、航空機10の機体軸線X
Bと、航空機10の前方安定軸線を表すベクトルX
Sとの間で測定される。前方安定軸線X
Sは、航空機10の対気速度方向X
Wの、x軸およびz軸によって規定される平面への投影である。
【0038】
ここで
図6および
図7を参照すると、測定前後加速度Ax
(mea)は、航空機の機体軸線X
Bの方向において測定された航空機10の加速度であり、測定垂直加速度Az
(mea)は、機体軸線Z
Bの方向における航空機10の加速度である。測定前後加速度Ax
(mea)および測定垂直加速度Az
(mea)は、航空機10の重心CGにある1つ以上の加速度計によって決定される。ただし、多くのタイプの加速度計は実際に荷重倍数を測定する。したがって、加速度計が実際に加速度を測定する場合、対応する荷重倍数は、各軸線に沿った重力による加速度を差し引くことで計算される。
【0039】
係数サブモジュール200は、それぞれが航空機10の動作状態を表す複数の第1の動作パラメータを入力として受信する。係数サブモジュール200は、複数の第1の動作パラメータに基づいて抗力係数CDおよび揚力係数CLを決定する。したがって、EKF制御モジュール122は、抗力係数CDおよび揚力係数CLの両方に基づいて推定動圧Qbar(e)を決定することを理解されたい。第1の複数の係数は、迎角α、航空機10の操縦翼面のたわみδ、現在の反復の直前の反復で決定された以前の推定動圧Qbar(p)、および推定マッハ数MMDLを含む。シミュレーションの最初に、以前の推定動圧Qbar(p)が測定動圧Qbar(m)に設定されることを理解されたい。
【0040】
係数サブモジュール200は、1つまたは複数の係数3次元ルックアップテーブル220に基づいて抗力係数C
Dおよび揚力係数C
Lを決定する。係数3次元ルックアップテーブル220は、複数の第1の動作パラメータの特定の値(迎角α、航空機10の操縦翼面のたわみδ、以前の推定動圧Q
bar(p)、および推定マッハ数M
MDL)に基づいて、抗力係数C
D値および揚力係数C
L値を提供する。係数3次元ルックアップテーブル220は、試験中に収集されたデータ(例えば、風洞試験データ)および飛行試験中に収集されたデータから導出される。係数3次元ルックアップテーブル220は、1つ以上の推進データベース222に格納される。データベース222は、EKF制御モジュール122の一部として示されているが、データベース222は、EKF制御モジュール122から離れた場所に配置されてもよく、
図6に示される実施形態は3次元のルックアップテーブルが格納され得る場所の例を示すだけの意図であることを理解されたい。
【0041】
係数3次元ルックアップテーブル220は、航空機10の個々の操縦翼面(例えば、前縁スラット88、後縁フラップ90、スポイラ92、補助翼98、垂直安定板106、水平安定板108、舵110、およびエレベータ114)の揚力値および抗力値に基づいていることを理解されたい。各操縦翼面には、低速条件(つまり、推定マッハ数が0.4未満)および高速条件(つまり、推定マッハ数が0.4以上)のルックアップテーブルが含まれている。さらに、各操縦翼面は、抗力係数と揚力係数の個々のルックアップテーブルに関連付けられている。ルックアップテーブルはすべて、例えば高度や迎角などの航空機10の様々な動作パラメータの影響を受ける場合がある。係数3次元ルックアップテーブル220にリストされている抗力係数と揚力係数とを決定するために、個々のルックアップテーブルはすべて組み合わされる。
【0042】
推進サブモジュール202は、航空機10の複数の第2の動作パラメータを入力として受信する。具体的には、航空機10の複数の第2の動作パラメータは、気圧高度、ピッチ角θ、全気温T
TOT、両方の航空機エンジン78(
図2)のエンジン速度N1、および静圧Psを含む。推進サブモジュール202は、複数の第2の動作パラメータに基づいて、航空機10の推定正味推力Tを決定する。より具体的には、推進サブモジュール202は、気圧高度の特定の値に基づいて推定正味推力Tを提供する推力ベースの3次元ルックアップテーブル230、ピッチ角θ、全気温T
TOT、両方の航空機エンジン78のエンジン速度N1(
図2)、および静圧Psに基づいて航空機10の推定正味推力Tを決定する。3次元ルックアップテーブル230は、航空機10の特定のタイプまたはモデルに対して実行されたシミュレーションに基づいて生成される。3次元ルックアップテーブル230は、1つ以上の推進データベース232に格納される。
【0043】
測定サブモジュール204は、抗力係数C
D、揚力係数C
L、および推定正味推力Tを入力として受信する。測定サブモジュール204は、抗力係数C
D、揚力係数C
L、および推定正味推力Tに基づいて推定加速度Ax
(est)および推定加速度Az
(est)を決定する。具体的には、測定サブモジュール204は、航空機10に作用する等価力を表す運動方程式に基づいて推定加速度Ax
(est)、Az
(est)について解く。運動方程式は、式3で次のように表される。
【数11】
ここで、A
Dは抗力加速度、A
Lは揚力加速度、Sは翼の平面形状の基準面積、mは航空機10の質量、αは迎角、P
Sは静圧、
【数12】
は航空機10(
図7)の機体軸線X
Bおよび機体軸線Z
Bに対する前方安定軸線X
Sの回転行列、X
Tは航空機10の機体軸線X
Bに対する推力、Y
Tは航空機10の機体軸線Y
Bに対する推力、h
ftは気圧高度、N
1cはエンジン速度(温度に対して補正)、xは状態ベクトルである。抗力加速度A
Dは、抗力から機体軸線X
Bの正味推力を減算し、その結果を航空機10の質量で除算することによって決定される。揚力加速度A
Lは、揚力から機体軸線Z
Bの正味推力を減算し、その結果を航空機10の質量で除算することにより決定される。
【0044】
誤差サブモジュール206は、推定横加速度Ax(est)、推定垂直加速度Az(est)、測定横加速度係数Ax(mea)、および測定垂直加速度係数Az(mea)を入力として受信する。誤差サブモジュール206は、推定前後加速度Ax(est)と推定垂直加速度Az(est)との第1の差、および測定前後加速度Ax(mea)と測定垂直加速度Az(mea)との第2の差を決定することにより、加速度誤差値Eを決定する。
【0045】
カルマンゲインサブモジュール208は、入力として誤差サブモジュール206から加速度誤差値Eを受信する。カルマンゲインサブモジュール208は、第1の差および第2の差の加速度誤差値Eにカルマンゲイン値Kを乗算することにより、残存カルマン値を決定する。
【0046】
動的サブモジュール210は、航空機10の気圧高度、迎角α、ピッチ角θ、推定動圧Q
bar(e)、および推定前後加速度Ax
(est)を入力として受信する。動的サブモジュール210は、入力に基づいて、動圧の推定変化率
【数13】
を決定する。具体的には、動圧の推定変化率
【数14】
は、上記の式2に基づいて決定される。
【0047】
積分サブモジュール212は、乗算器160からの残存カルマン値と、動的制御モジュール152からの動圧の推定変化率
【数15】
とを入力として受信する。積分サブモジュール212は、残存カルマン値を動圧の推定変化率
【数16】
と一緒に組み合わせ、次いで、残存カルマン値と動圧の推定変化率
【数17】
との合計を積分し、これにより、推定動圧Q
bar(e)が得られる。推定動圧Q
bar(e)は、従来のアプローチを使用して計算された動圧値と比較した場合、精度が向上することを理解されたい。
【0048】
図3および
図6の両方を参照すると、CMM126は、測定動圧Q
bar(m)および推定動圧Q
bar(e)を入力として受信する。CMM126は、差を決定するために、測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)とを互いに比較する。測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)との間の差が、しきい値時間長さの間しきい値を超えると判定することに応答して、CMM126は、障害を判定する。開示されたCMM126は、既存のCMMシステムと比較した場合、改善された精度で障害を検出することを理解されたい。CMM126の改善された精度により、飛行制御システム18によって生成される誤警報または偽警報が少なくなる。
【0049】
図8は、推定動圧Q
bar(e)に基づいてCMM126により障害を判定するための方法300を示す例示的なプロセスフロー図である。
図1、
図2、
図3、
図6、および
図8を参照すると、方法300はブロック302で始まる。ブロック302において、空気データ参照機能ブロック120は、複数のピトー管40から総空気圧P
TOTを入力として受信する。次いで、方法300は、ブロック304に進み得る。
【0050】
ブロック304において、空気データ参照機能ブロック120は、複数のピトー管40からの総空気圧PTOTおよび静圧Psに基づいて、測定動圧Qbar(m)を決定する。次いで、方法300はブロック306に進み得る。
【0051】
ブロック306で、EKF制御モジュール122は、推定動圧Qbar(e)を決定する。具体的には、方法300はサブルーチンすなわち方法310を含む。方法310は、推定動圧Qbar(e)を決定するために再帰的に実行される。
【0052】
方法310は、ブロック312、314、316、318、320、322、および324を含む。ブロック312において、EKF制御モジュール122は、複数の第1の動作パラメータに基づいて抗力係数(C
D)および揚力係数(C
L)を決定する。次に、方法310はブロック314に進み、ここで、EKF制御モジュール122は、航空機10の複数の第2の動作パラメータに基づいて航空機10の推定正味推力Tを決定する。次いで、方法310はブロック316に進み、そこで、EKF制御モジュール122は、抗力係数C
D、揚力係数C
L、および推定正味推力Tに基づいて推定加速度Ax
(est)および推定加速度Az
(est)を決定する。次いで、方法はブロック318に進み、そこで、EKF制御モジュール122は、推定前後加速度Ax
(est)と推定垂直加速度Az
(est)との第1の差および測定前後加速度Ax
(mea)と測定垂直加速度Az
(mea)との第2の差の加速度誤差値Eを決定する。次いで、方法310はブロック320に進み、そこで、EKF制御モジュール122は、加速度誤差値Eにカルマンゲイン値Kを乗算することにより、残存カルマン値を決定する。次いで、方法310は、ブロック322に進み、そこでEKF制御モジュール122は、航空機10の推定前後加速度Ax
(est)に基づいて動圧の推定変化率
【数18】
を決定する。次いで、方法310はブロック324に進み得る。ブロック324では、推定動圧Q
bar(e)を決定するために、残存カルマン値が動圧の推定変化率
【数19】
と一緒に組み合わされ、残存カルマン値と動圧の推定変化率
【数20】
との合計が積分される。次いで、方法310はブロック312に戻り得る。
【0053】
推定動圧Qbar(e)が決定されると、方法300はブロック326に進み得る。ブロック326で、CMM126は、差を決定するために、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)とを互いに比較する。次いで、方法300は、ブロック328に進み得る。
【0054】
ブロック328において、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との差がしきい値時間長さの間しきい値を超えない場合、CMM126は障害が発生していないと判定する。次いで、方法300はブロック302に戻り得る。しかしながら、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の差がしきい値時間長さの間しきい値を超えると判定することに応答して、方法300は、ブロック330に進む。
【0055】
ブロック330において、CMM126は、測定動圧Q
bar(m)における共通モード障害の存在を判定する。次いで、飛行制御システム18は、
図3に示されるような通常動作モードから、
図4に示される拡張通常動作モードに切り替わる。次に、方法300は終了する場合がある。
【0056】
図1~
図9を全体的に参照すると、開示された飛行制御システムは、揚力係数と抗力係数との両方に基づいて推定動圧を決定し、これにより精度が改善される。推定動圧の精度が向上するため、従来のシステムと比較した場合、共通モードモニターによって生成される偽警報が少なくなる。結果として、航空機が通常動作モードから第2の動作モードに不必要に切り替わる発生が減少する。さらに、推定動圧はまた、航空機の完全なエンベロープ動作もサポートする。
【0057】
ここで
図1および
図9を参照すると、別の実施形態では、飛行制御モジュール16は、迎角値に使用される値に基づいて障害を検出するように構成される。障害の検出に応答して、飛行制御モジュール16は、複数の迎角センサー60によって測定された値に基づかない迎角の合成値または推定値を決定する。より具体的には、飛行制御モジュール16は、測定迎角α
mを入力として受信し、測定迎角α
mは、航空機10の複数の迎角センサー60からの測定に基づく。飛行制御モジュール16はまた、推定迎角α
estを入力として受信する。測定迎角α
mとは異なり、推定迎角α
estは、複数の迎角センサー60からの測定値を使用せずに決定される。代わりに、推定迎角α
estは、複数のピトー管40(
図2)によって測定された全圧P
TOTに基づいて決定される。
【0058】
飛行制御モジュール16は、誤差を決定するために測定迎角αmを推定迎角αestと比較する。測定迎角αmと推定迎角推定迎角αestとの間の誤差がしきい値を超えると判定することに応答して、飛行制御モジュール16は、迎角値を有する障害の存在を判定する。いくつかの実施形態では、複数の迎角センサー60が障害を引き起こす。複数の迎角センサー60で障害を引き起こす可能性のある事象のいくつかの例には、例えば、複数の迎角センサー60に影響を与える破片、あるいは、着氷により迎角レゾルバ(図示せず)が固着することが含まれる。
【0059】
飛行制御モジュール16は、迎角センサー60の過半数が正確なデータを提供していないと判定したことに応答して、航空機10の迎角を表す合成値を提供する。具体的には、以下で説明するように、推定動圧Qbar(e)を使用して、航空機の真の対気速度VtMDLおよび推定マッハ数MMDLの新しい値を再計算する必要がある。これは、航空機の真の対気速度VtMDLおよび推定マッハ数MMDLの値が、共通モード空気圧事象中は誤って低いためである。
【0060】
ここで
図9を参照すると、迎角補正モジュール420は、複数の迎角センサー60によって導入されるバイアスを補正するように構成される。具体的には、複数の迎角センサー60(
図2)は、自動調心羽根を使用して未加工の迎角α
rawを測定するように構成される。各迎角センサー60は、固有の未加工の迎角α
raw値を提供する。未加工の迎角α
raw値の1つは、信号選択および障害検出(signal selection and failure detection:SSFD)ロジックに基づいて選択される。SSFDロジックは、冗長センサーのセットから単一の値を選択するように構成されており、選択された値は、センサーによって測定された動作パラメータの実際の値を表している可能性が最も高くなる。複数の迎角センサー60によって直接測定される未加工の迎角α
rawは、補正係数によって調整される必要がある局所的な流れを表すことを理解されたい。一実施形態では、補正係数は約45度である。未加工の迎角α
rawの補正値は、測定迎角α
mと呼ばれる。
【0061】
迎角補正モジュール420は、未加工の迎角α
rawおよび複数のピトー管40(
図2)によって測定された総空気圧P
TOTを入力として受信する。迎角補正モジュール420は、モーメントアーム補正項(すなわち、自動調心羽根に基づく補正項)、未加工の迎角α
raw、航空機の真の対気速度Vt
MDL、および推定マッハ数M
MDLに基づいて、測定迎角α
mを決定する。航空機の真の対気速度Vt
MDL、および推定マッハ数M
MDLは、全圧P
TOTに基づいて決定される。
【0062】
上で説明した共通モードの空気圧事象中、航空機の真の対気速度の値Vt
MDLおよび推定マッハ数M
MDLは、推定動圧Q
bar(e)を使用して再計算されることを理解されたい。具体的には、CMM126(
図3および
図4)が、測定動圧Q
bar(m)と推定動圧Q
bar(e)との差がしきい値時間長さの間しきい値を超えると判定したことに応答して、CMM126は、測定動圧Q
bar(m)における共通モード障害の存在を判定する。共通モード空気圧事象が判定されると、次に、迎角補正モジュール420は、推定動圧(Q
bar(e))に基づいて、測定迎角α
mを決定する。具体的には、迎角補正モジュール420は、合成マッハ数M
EKF(式4)および航空機の合成真対気速度Vt
EKF(式5)に基づいて決定される。
【数21】
【数22】
【0063】
引き続き
図9を参照すると、拡張カルマンフィルタ(EKF)制御モジュール422は、以下でより詳細に説明され、
図11および
図12に示される推定迎角α
estを決定するように構成される。しかし、測定迎角α
mとは異なり、推定迎角α
estは、複数の迎角センサー60によって得られた測定に基づいていないことを理解されたい。CMM426と呼ばれる迎角共通モードモニターCMM426は、測定迎角α
m、推定迎角α
est、およびCMPE制御モジュール36からの出力96を入力として受信する。CMM426は、障害とも呼ばれる共通モード障害を決定する。具体的には、CMM426は、測定迎角α
mと推定迎角α
estとの間の誤差がしきい値時間長さの間しきい値を超えるときに障害が発生したと判定する。
【0064】
しきい値は、複数の迎角センサー60の精度に基づいて決定される(すなわち、比較的高い精度の割合は、比較的低いしきい値をもたらす)。例えば、比較的遅い誤差率は約15秒であるのに対し、比較的速い誤差率には約15秒のはるかに長い持続時間が含まれる。しかし、他の値も同様に使用できることを理解されたい。
【0065】
図9は、CMM426によって障害が検出されていない非障害状態を示している。したがって、測定迎角α
mは、主飛行制御モジュール140、自動操縦制御モジュール142、自動スロットル制御モジュール144、および複数のディスプレイ146によって入力として受信される。また、航空機10が通常動作モードで動作していることも理解されたい。
図10は、CMM426によって検出された障害状態を示している。CMM426が迎角値に関する障害を検出することに応答して、推定迎角α
estが、主飛行制御モジュール140、自動操縦制御モジュール142、自動スロットル制御モジュール144、および複数のディスプレイ146に提供される。
図9および
図10に示す実施形態では、推定動圧Q
bar(e)の共通モード障害は存在しない(すなわち、複数のピトー管40の過半数はブロックされない)。したがって、CMPE制御モジュール36によって生成された出力96は、偽値(すなわち、CMPE障害=偽)に設定される。ただし、共通モード障害の検出に応じて、航空機の真の対気速度Vt
MDLおよび推定マッハ数M
MDLの値が正確でなくなる場合がある。代わりに、迎角補正モジュール420は、合成マッハ数M
EKF(式4)および航空機の合成真対気速度Vt
EKF(式5)を使用して、主飛行制御モジュール140によって使用される推定迎角α
est信号を保存する。
【0066】
図11は、EKF制御モジュール422の拡張カルマンフィルタのブロック図である。ブロック図は、空気データセンサー22(
図1)から収集されたデータに基づいて推定迎角α
estを決定するためのシステム448を表す。EKF制御モジュール422は、測定モデル450、動的制御モジュール452、カルマンゲインブロック454、積分器ブロック456、誤差ブロック458、乗算器460、および加算器462を含む。
図5に示す測定モデル150と同様に、測定モデル450は、式1(上記に示す)に基づいて、測定加速度(例えば、測定前後加速度Ax
(mea)および測定垂直加速度Az
(mea))の期待値を予測する。
【0067】
動的制御モジュール452は、迎角の推定変化率
【数23】
と呼ばれる推定迎角の変化率を決定する。迎角の推定変化率
【数24】
は、航空機10の推定垂直加速度成分A_N
(est)に基づいて決定され、推定垂直加速度成分A_N
(est)は、航空機10の安定フレーム内の垂直加速度である。具体的には、推定迎角変化率
【数25】
は、ピッチq
(dps)、航空機の真の対気速度Vt
MDL、ピッチ角θ、推定垂直加速度成分A_N
(est)、および推定迎角α
estの関数である。一実施形態では、推定迎角α
estの推定変化率は、式6に基づいて決定される。
【数26】
ここで、gは重力定数を表す。
【0068】
カルマンゲインブロック454は、カルマンゲイン値Kを格納する。
図5に示される実施形態と同様に、カルマンゲイン値Kは、航空機10の現在の状態(すなわち、動作条件)に与えられる重みを表し、データベース528に格納されたルックアップテーブル526(
図12に見られる)のセットにより決定される動的な値である。誤差ブロック458は、測定モデル450からの推定前後加速度Ax
(est)および推定垂直加速度Az
(est)、ならびに測定された前後加速度Ax
(mea)および測定された垂直加速度Az
(mea)を入力として受信して、推定前後加速度Ax
(est)と推定垂直加速度Az
(est)との第1の差と、測定前後加速度Ax
(mea)と測定垂直加速度Az
(mea)との第2の差とを決定することにより、加速度誤差値Eを決定する。乗算器460は、加速度誤差値Eおよびカルマンゲイン値Kを入力として受信し、加速度誤差値Eにカルマンゲイン値Kを乗算することにより推定状態更新を判定する。
【0069】
加算器462は、乗算器460からの残存カルマン値と、動的制御モジュール452からの迎角の推定変化率
【数27】
とを入力として受信する。加算器462は、残存カルマン値を、迎角の推定変化率
【数28】
と組み合わせる。組み合わされた残存カルマン値と迎角の推定変化率
【数29】
は、その後、積分器ブロック456に送信される。次に、積分器ブロック456は、残存カルマン値と推定迎角変化率
【数30】
との合計を積分して、推定迎角α
estを決定する。
【0070】
図12は、複数のサブモジュール480、482、484、486、488、490、492を含むEKF制御モジュール422の図である。サブモジュール480、482、484、486、488、490、492は、モジュール式プログラミング技術の使用を示し得る別個の構成要素として示されている。ここで
図11および
図12の両方を参照すると、EKF制御モジュール422およびシステム448は互いに対応している。具体的には、EKF制御モジュール422の係数サブモジュール480および推進サブモジュール482は、両方ともシステム448の測定モデル450に対応する。EKF制御モジュール422の測定サブモジュール484は、システム448の加算器462に対応する。EKF制御モジュール422の誤差サブモジュール486は、システム448の誤差ブロック458に対応する。EKF制御モジュール422のカルマンゲインサブモジュール488は、システム448のカルマンゲインブロック454に対応する。EKF制御モジュール422の動的サブモジュール490は、システム448の動的制御モジュール452に対応する。最後に、積分サブモジュール492は、システム448の積分器ブロック456に対応する。
【0071】
EKF制御モジュール422は、航空機10(
図1および
図2)の複数の動作パラメータを入力として受信する。動作パラメータには、測定加速度係数Ax
(mea)およびAz
(mea)、ピッチq
(dps)、航空機の真の対気速度Vt
MDL、ピッチ角θ、推定垂直加速度成分A_N
(est)、推定迎角α
est、以前の推定動圧Q
bar(p)、推定マッハ数M
MDL、気圧高度、航空機10の操縦翼面のたわみδ、両方の航空機エンジン78(
図2)のエンジン速度N1、ならびに静圧Psが含まれるが、これらに限定されない。
図6に示される係数サブモジュール200と同様に、係数サブモジュール480は、それぞれ、推定迎角α
est、航空機10の操縦翼面のたわみδ、測定動圧Q
bar(m)、および測定されたマッハ数Mを含む航空機10の動作状態を表す複数の第1の動作パラメータを入力として受信する。係数サブモジュール480は、複数の第1の動作パラメータおよび1つまたは複数の係数3次元ルックアップテーブル520に基づいて抗力係数C
Dおよび揚力係数C
Lを決定する。係数3次元ルックアップテーブル520は、複数の第1の動作パラメータの特定の値に基づいて抗力係数C
Dおよび揚力係数C
L値を提供する。
【0072】
図6に示される推進サブモジュール202と同様に、推進サブモジュール482は、気圧高度、ピッチ角θ、航空機の真の対気速度Vt
MDL、両方の航空機エンジン78(
図2)のエンジン速度N1、全気温T
TOT、および静圧Psを含む航空機10の複数の第2の動作パラメータを入力として受信する。推進サブモジュール482は、複数の第2の動作パラメータと、複数の第2の動作パラメータの特定の値に基づいて推定正味推力Tを提供する推進ベースの3次元ルックアップテーブル530とに基づいて航空機10の推定正味推力Tを決定する。
【0073】
測定サブモジュール484は、抗力係数CD、揚力係数CL、および推定正味推力Tを入力として受信する。測定サブモジュール484は、抗力係数CD、揚力係数CL、および上記の式3で表される運動方程式に基づく推定正味推力Tに基づいて推定加速度Ax(est)および推定加速度Az(est)を決定する。
【0074】
誤差サブモジュール486は、推定横加速度Ax(est)、推定垂直加速度Az(est)、測定横加速度係数Ax(mea)、および測定垂直加速度係数Az(mea)を入力として受信する。誤差サブモジュール486は、推定前後加速度Ax(est)と推定垂直加速度Az(est)との第1の差および測定前後加速度Ax(mea)と測定垂直加速度Az(mea)との第2の差を決定することにより、加速度誤差値Eを決定する。
【0075】
カルマンゲインサブモジュール488は、誤差サブモジュール486から加速度誤差値Eを入力として受信する。カルマンゲインサブモジュール488は、第1の差および第2の差の加速度誤差値Eにカルマンゲイン値Kを乗算することにより、残存カルマン値を決定する。
【0076】
動的サブモジュール490は、ピッチq
(dps)、航空機の真の対気速度Vt
MDL、ピッチ角θ、推定垂直加速度成分A_N
(est)、および推定迎角α
estを入力として受信し、上記の式6に基づく迎角の推定変化率
【数31】
を決定する。積分サブモジュール492は、乗算器460からの残存カルマン値と、動的サブモジュール490からの迎角の推定変化率
【数32】
とを入力として受信する。積分サブモジュール492は、残存カルマン値と迎角の推定変化率
【数33】
とを合わせてから、推定迎角α
estになる残存カルマン値と迎角の推定変化率
【数34】
との合計を積分する。
【0077】
図9を参照すると、CMM426は、測定迎角α
mおよび推定迎角α
estを入力として受信する。CMM426は、差を判定するために、測定迎角α
mと推定迎角α
estとを互いに比較する。測定迎角α
mと推定迎角α
estとの間の差がしきい値時間長さの間しきい値を超えることの判定に応答して、CMM426は、迎角値に影響を及ぼす障害があると判定する。
【0078】
図13は、CMM426による迎角値の障害を判定するための方法570を示す例示的なプロセスフロー図である。
図1、
図9、
図10、
図11、
図12および
図13を参照すると、方法570はブロック572で始まる。ブロック302において、迎角補正モジュール420は、未加工の迎角α
rawと複数のピトー管40(
図2)によって測定された総空気圧P
TOTとを入力として受信する。次いで、方法300は、ブロック574に進み得る。
【0079】
ブロック574で、迎角補正モジュール420は、モーメントアーム補正項、未加工の迎角αraw、合成された航空機の真の対気速度VtEKF、および推定マッハ数MMDLに基づいて、測定迎角αmを決定する。前述のように、共通モード空気圧事象中、合成された航空機の真の対気速度VtEKFの値および合成マッハ数MEKFの値は、推定動圧Qbar(e)(式4および式5を参照)を使用して計算される。次いで、方法570はブロック576に進み得る。
【0080】
ブロック576では、EKF制御モジュール422は、推定迎角αestを決定する。具体的には、方法570はサブルーチンすなわち方法580を含む。方法580は、推定迎角αestを決定するために再帰的に実行される。
【0081】
方法580は、ブロック582、584、586、588、590、592、および594を含む。ブロック592で、EKF制御モジュール422は、複数の第1の動作パラメータに基づいて抗力係数(C
D)および揚力係数(C
L)を決定する。次いで、方法580はブロック584に進み、EKF制御モジュール422は、航空機10の複数の第2の動作パラメータに基づいて航空機10の推定正味推力Tを決定する。次いで、方法580はブロック586に進み、そこで、EKF制御モジュール422は、抗力係数C
D、揚力係数C
L、および推定正味推力Tに基づいて、推定加速度Ax
(est)および推定加速度Az
(est)を決定する。次いで、方法580はブロック588に進み、そこで、EKF制御モジュール422は、推定前後加速度Ax
(est)と推定垂直加速度Az
(est)との第1の差、および測定前後加速度Ax
(mea)と測定垂直加速度Az
(mea)との第2の差の加速度誤差値Eを決定する。次いで、方法580はブロック590に進み、EKF制御モジュール422は、加速度誤差値Eにカルマンゲイン値Kを乗算することにより残存カルマン値を決定する。次いで、方法580はブロック592に進み、EKF制御モジュール422は、航空機10の推定垂直加速度成分A_N
(est)に基づいて迎角の推定変化率
【数35】
を決定する。次いで、方法580はブロック594に進み得る。ブロック594では、残存カルマン値は、迎角の推定変化率
【数36】
と一緒に組み合わされ、残存カルマン値と迎角の推定変化率
【数37】
との合計は、推定迎角α
estを決定するために積分される。次いで、方法580はブロック582に戻り得る。
【0082】
推定迎角αestが決定されると、方法570はブロック596に進み得る。ブロック596で、CMM426は、誤差を決定するために測定迎角αmと推定迎角αestとを互いに比較する。次いで、方法580は、ブロック598に進み得る。
【0083】
ブロック598で、誤差がしきい値時間長さの間しきい値を超えない場合、CMM426は、障害が発生していないと判定する。次いで、方法570はブロック572に戻り得る。しかしながら、誤差がしきい値時間長さの間しきい値を超えていると判定することに応答して、方法570はブロック599に進む。
【0084】
ブロック599で、CMM426は、迎角値の共通モード障害の存在を判定する。次いで、飛行制御システム18は、測定迎角α
m(
図9に示される)の利用から切り替わり、代わりに推定迎角α
est(
図10に示される)を使用する。次いで、方法570は終了し得る。
【0085】
図9~
図13を全体的に参照すると、開示されたシステムは、迎角センサーによって収集された測定値から独立した推定迎角を決定するためのアプローチを提供する。したがって、システムは、測定迎角がもはや使用できないと判定したことに応答して、推定迎角を置き換える。さらに、共通モード空気圧事象が検出された場合(つまり、航空機のピトー管の過半数がブロックされた場合)、開示されたシステムは、航空機の真の対気速度と測定されたマッハ数とを使用せずに測定迎角を決定するためのアプローチも提供する。共通モード空気圧事象の間、航空機の真の対気速度の値と推定マッハ数の値とは誤って低く、したがって、これらの値に基づいて決定される値は正確ではない場合があることを理解されたい。したがって、システムは、航空機の真の対気速度と推定動圧に基づいた推定マッハ数との合成値を決定する。
【0086】
次に、CMPE制御モジュール36による共通モード空気圧事象の検出について説明する。ここで
図14を参照すると、CMPE制御モジュール36は、測定動圧Q
bar(m)および推定迎角α
estを入力として受信し、入力に基づいて共通モード空気圧事象を決定する。より具体的には、CMPE制御モジュール36は、複数のピトー管40による同期障害または非同期障害の検出に応じて、共通モード空気圧事象(例えば、CMPE障害=真)の存在を判定する。
図14~
図18に記載の実施形態では、推定迎角α
estは、
図9~
図13を参照して説明した値である(すなわち、測定迎角は使用されない)ことを理解されたい。
【0087】
CMPE制御モジュール36は、第1のCMPE検出器600および第2のCMPE検出器602を含む。第1のCMPE検出器600は、測定動圧Qbar(m)および推定迎角αestを入力として受信し、両方の入力に基づいて第1の共通モード空気圧事象を判定する。より具体的には、第1のCMPE検出器600は、第1の共通モード空気圧事象を検出するように構成される。第1の共通モード空気圧事象は、同時障害を経験する複数のピトー管40の過半数に基づく同期共通モード空気圧事象である。対照的に、第2のCMPE検出器602は、測定動圧Qbar(m)のみに基づいて、非同期障害である第2の共通モード空気圧事象を検出するように構成される。非同期障害は、特定の時間間隔中に互いに相殺される時間間隔で障害が発生する複数のピトー管40に基づいている。例えば、複数のピトー管40のうちの1つにおいて最初に障害が発生し、約2秒後に第2のピトー管40において障害が発生し、次に第3のピトー管40において第2のピトー管40の約2秒後に障害が発生すると、非同期障害が発生する。
【0088】
次に
図15を参照して、第1のCMPE検出器600について説明する。第1のCMPE検出器600は、測定動圧ウォッシュアウトフィルタ610、迎角ウォッシュアウトフィルタ612、動圧しきい値614、迎角しきい値616、動圧比較器618、迎角比較器620、ANDブロック622、およびラッチ624を含む。第1のCMPE検出器600は、第1の共通モード空気圧事象が検出されると真に設定され、共通モード空気圧事象が検出されないと偽に設定される出力信号642を生成する。
【0089】
複数のピトー管40はそれぞれ、圧力値Pを測定するように構成される。例えば、示される非限定的な実施形態では、3つの圧力値P(すなわち、左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PR)が示される。各ピトー管40からの圧力値PL、PC、PRは、信号選択および障害検出(SSFD)ブロック630に送られる。SSFDロジックは、冗長センサーのセットから単一の値を選択するように構成されている。選択された値は、センサーによって測定された動作パラメータの実際の値を表す可能性が最も高い。したがって、SSFDブロック630は、圧力値PL、PC、PRのうちの1つを選択するように構成される。圧力値PL、PC、PRの選択された1つは、複数のピトー管40によって測定された残りの圧力値PL、PC、PRと比較した場合の測定動圧Qbar(m)の最も代表的な値である。次いで、測定動圧Qbar(m)は、第1のCMPE検出器600によって入力として受信される。
【0090】
測定動圧ウォッシュアウトフィルタ610は、測定動圧Q
bar(m)を入力として受信し、
【数38】
と呼ばれる測定動圧Q
bar(m)の変化率を決定する。具体的には、測定動圧ウォッシュアウトフィルタ610は、定常値を拒否し、測定動圧Q
bar(m)の過渡値を通過させて、測定動圧
【数39】
の変化率を決定するハイパスフィルタとして動作する。測定動圧の変化率
【数40】
は動圧比較器618に送られる。動圧比較器618は、動圧しきい値614および測定動圧の変化率
【数41】
を入力として受信し、値を互いに比較する。測定動圧の変化率
【数42】
が動圧しきい値614未満であるとの判定に応答して、動圧比較器618は、測定動圧の変化率
【数43】
は制限内であることを示す出力信号636(真信号など)を生成する。しかしながら、測定動圧の変化率
【数44】
が動圧しきい値614以上であると判定したことに応答して、動圧比較器618は出力信号636として偽信号を生成する。
【0091】
動圧しきい値614は、複数のピトー管40の過半数において障害が発生する(例えば、ブロックされる)ときに測定動圧Qbar(m)が経験する変化率を表す。例えば、一実施形態では、測定動圧Qbar(m)の変化または低下の割合は、約マイナス100メガバール毎秒(mBar/秒)である。動圧しきい値614は、現場使用から収集された定量的評価データに基づいて決定される。より具体的には、動圧しきい値614は、他の航空機の動作中に発生した以前の同期共通モード空気圧事象から収集されたデータを分析することにより決定される。しかしながら、推定迎角しきい値616は、シミュレートされた同期共通モード空気圧事象中に収集されたデータに基づいて決定される。シミュレートされた同期共通モード空気圧事象は、コンピューターシミュレーションと、テストベンチデータから取得したテストデータのいずれかを指す。推定迎角しきい値616は、複数のピトー管40の過半数で障害が発生したときの推定迎角αestの変化率を表す。例えば、一実施形態では、推定迎角αestの変化率またはステップ増加は約+10度/秒である。
【0092】
推定迎角ウォッシュアウトフィルタ612は、推定迎角α
estを入力として受信し、推定迎角の変化率
【数45】
を決定する。推定迎角ウォッシュアウトフィルタ612は、定常値を拒否し、推定迎角の過渡値を通過させて、推定迎角の変化率
【数46】
を決定するハイパスフィルタとして機能する。推定迎角比較器620は、推定迎角
【数47】
の変化率および推定迎角しきい値616を入力として受信し、値を互いに比較する。推定迎角の変化率
【数48】
の変化率の変化率が推定迎角しきい値616より大きいと判定したことに応答して、推定迎角比較器620は、ANDブロック622に対して、推定迎角の変化率
【数49】
は、限界外であることを示す出力信号638(例えば、真信号)を生成する。推定迎角の変化率
【数50】
の変化率の変化率が推定迎角のしきい値616より大きいと判定したことに応答して、推定迎角比較器620は出力信号638として偽信号を生成する。
【0093】
ANDブロック622は、動圧比較器618からの出力信号636と、推定迎角比較器620からの出力信号638とを入力として受信する。両方の出力信号636、638が真であることに応答して、ANDブロック622は、ラッチ624に送られる出力信号640を生成する。出力信号640は、第1の共通モード空気圧事象が検出されたことを示す。より具体的には、測定動圧の変化率
【数51】
は動圧しきい値614未満であり、推定迎角の変化率の変化率
【数52】
は推定迎角しきい値616よりも大きいことの決定に応じて、ANDブロック622は、第1の共通モード空気圧事象が発生したと判定する。第1の共通モード空気圧事象は、同時障害を経験する複数のピトー管40の過半数に基づいて決定される同期共通モード空気圧事象である。
【0094】
共通モードの空気圧事象(例えば、真)を示す出力信号640に応じて、時間遅延中にラッチ624が設定される。時間遅延の間、測定動圧Qbar(m)が正確であることに応答して、いつでもラッチ624をリセットできることを理解されたい。例えば、測定動圧Qbar(m)が時間遅延の26秒で正確であると決定された場合、ラッチ624はリセットされ、時間遅延は終了する。しかしながら、リセット信号が受信されない場合、ラッチ624は設定されたままである。換言すれば、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がしきい値未満であることに応答して、ラッチ624はリセット信号を受信する。ただし、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がまだしきい値を超えている場合、時間遅延の終わりに、永続的な共通モード空気圧事象が検出される。したがって、第1のCMPE検出器600の出力信号642は、第1の共通モード空気圧事象の存在を示す。
【0095】
次に
図16を参照して、第2のCMPE検出器602について説明する。第2のCMPE検出器602は、クランプ650、中間値セレクタ652、および出力信号656を生成するラッチ654を含む。第2のCMPE検出器602は、複数のピトー管40の非同期障害に基づいて第2の共通モード空気圧事象を検出するように構成される。より具体的には、複数のピトー管40が同時に非作動にならない場合がある。その代わりに、単一のピトー管40のみが詰まることがあり、その後数秒後に別のピトー管40が詰まることがある。
【0096】
第1のCMPE検出器600と同様に、複数のピトー管40のそれぞれからの圧力値(すなわち、左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PR)は、SSFDブロック648に送られる。SSFDブロック648は、複数のピトー管40のそれぞれから左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PRを入力として受信する。SSFDブロック648は、左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PRを互いに比較することにより、1つ以上のブロックされたピトー管40の存在を判定する。圧力値PL、PC、PRのうちの1つまたは複数がしきい値誤差値だけ残りの圧力値PL、PC、PRと異なることの判定に応じて、SSFDブロック648は特定の圧力値を不一致としてマークし、これも障害として参照される。しきい値誤差値は、ピトー管40がブロックされているか、または動作していない場合のピトー管の読み取り値の差を表す。図示の実施形態では、3つの圧力測定値(左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PR)が示されているが、3つよりも多いまたは少ない圧力測定値を同じように使用できることを理解されたい。
【0097】
クランプ650は、SSFDブロック648から複数の圧力値(例えば、左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PR)を入力として受信し、複数の圧力値のそれぞれは、複数のピトー管40のうちの1つに対応する。クランプ650はまた、SSFDブロック648からの個々の圧力値ごとの障害インジケータを入力として受信する。言い換えれば、左圧力値PL、中心圧力値PC、および右圧力値PRは、それぞれインジケータに関連付けられている。障害が検出されると、インジケータは真に設定される。それ以外の場合、インジケータは偽に設定される。障害インジケータが存在しないと判定されることに応答して、クランプ650は圧力値を中間値セレクタ652に送信する。次に、中間値セレクタ652は、圧力値PL、PC、PRのうちの1つを選択する。選択された圧力値は、中間値選択アルゴリズムに基づいて、全圧PTOTとして設定される。
【0098】
圧力値PL、PC、PRのうちの1つまたは複数が障害を示すと判断したことに応答して、クランプ650は、時間間隔中に障害を延長する時間遅延機能を実行する。換言すれば、クランプ650は、複数の圧力値を互いに比較することにより、1つ以上のブロックされたピトー管40の存在を判定し、各ブロックされたピトー管40は障害状態であり、障害状態の判定に応答して、クランプ650は、時間間隔の障害状態を延長する時間遅延機能を実行する。時間間隔は、第2の(すなわち、非同期の)共通モード空気圧事象中に複数のピトー管40で発生する2つ以上の障害を捕捉するように設定される。非限定的な一実施形態では、時間間隔は約2~5秒である。特定のピトー管40の障害状態は、比較的短時間しか存在しない可能性があることを理解されたい。一例では、障害状態は数十分の一秒だけ続く場合がある。複数のピトー管40のうちの1つに障害状態が発生すると、その後すぐに第2のピトー管40に障害状態が発生する可能性がある。しかしながら、第2のピトー管40の障害は、他のピトー管の障害と同時には生じない。言い換えれば、複数のピトー管40間の障害は非同期である。
【0099】
中間値セレクタ652は、クランプ650が時間間隔にわたって障害を拡大するため、非同期共通モード空気圧事象を検出する。言い換えれば、中間値セレクタ652は、障害が拡大されない限り、非同期障害を生成する複数のピトー管40の過半数(例えば、3つのピトー管40のうちの2つ)を検出することができない。クランプ650は、時間間隔の間、ピトー管40の1つで発生する障害を拡大するように構成される。したがって、別のピトー管40で障害状態が発生すると、中間値セレクタ652は第2の共通モード空気圧事象を検出する。例えば、左圧力PLの読み取り値は、0.5秒間だけ障害状態を示す場合がある(例えば、障害状態は0.5秒間真に設定され、その後偽に戻る)。しかしながら、クランプ650は、この例では4秒である時間間隔の間、障害を拡大する。したがって、中心圧力値PCの読み取り値が左圧力PLの約1秒後に障害状態を示すとき、中間値セレクタ652は依然としてクランプ650から2つの障害状態を受信する。
【0100】
中間値セレクタ652は、2つ以上の圧力値および障害インジケータを入力として受信する。各圧力値および障害インジケータは、複数のピトー管40のうちの1つに対応する。障害状態の判定に応じて、中間値セレクタ652は出力信号660を生成する。出力信号660は、第2の共通モード空気圧事象が発生したことを示す。すなわち、換言すると、出力信号660は、複数のピトー管40の非同期障害を検出する。出力信号660はラッチ654に送られる。第2の共通モード空気圧事象の存在を示す出力信号660の受信に応答して、ラッチ654は時間遅延に対して設定される。ラッチ654は、測定動圧Qbar(m)が正確であると判定されることに応じてリセットされる(すなわち、複数のピトー管40の過半数はもはや障害を表示しない)。より具体的には、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がしきい値未満であることに応答して、ラッチ654はリセット信号を受信する。ただし、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がまだしきい値を超えている場合、時間遅延の終わりに、永続的な共通モード空気圧事象が検出される。したがって、第2のCMPE検出器602の出力信号656は、第2の共通モード空気圧事象の存在を示す。
【0101】
図14を参照すると、第1のCMPE検出器600の出力信号642が第1の共通モード空気圧事象の存在を示すか、第2のCMPE検出器602の出力信号656が第2の共通モード空気圧事象の存在を示すとき、CMPE制御モジュール36の出力96は真に設定され、そうでなければ出力96は偽に設定される。第1の共通モード空気圧事象(第1のCMPE検出器600によって決定される)および第2のモード空気圧事象(第2のCMPE検出器602によって決定される)の両方が高速レート共通モード空気圧事象を表すことを理解されたい。高速レートの共通モード空気圧事象は、複数のピトー管40の過半数の圧力が何らかの異物(例えば、氷、火山灰など)によってブロックされることを指し、複数のピトー管40の圧力は特定のレートで比較的急速に低下する。例えば、一実施形態では、特定の速度は約-100mBar/秒であるが、速度は用途に基づいて変化する可能性があることを理解されたい。高速レートの共通モード空気圧事象とは対照的に、複数のピトー管40も低速レートの共通モード空気圧事象に基づいてブロックされる場合がある。複数のピトー管40で発生する可能性のあるより遅い閉塞に基づいて、低速レート共通モードの空気圧事象が発生する。代わりに、すでに存在する従来の手法に基づいて、低速レートの共通モードの空気圧事象を検出して対処することができる。低速レートの共通モードの空気圧事象は、第1のCMPE検出器600および第2のCMPE検出器602によって検出されないことを理解されたい。
【0102】
図1、
図4、
図6、および
図14を参照すると、CMPE制御モジュール36が共通モードの空気圧事象を決定すると、推定迎角α
estを計算するときに、測定動圧Q
bar(m)が推定動圧Q
bar(e)に置き換えられる。より具体的には、第1の同期共通モード空気圧事象が第1のCMPE検出器600によって検出されるか、第2の非同期空気圧事象が第2のCMPE検出器602によって検出されると、動圧Q
bar(m)が推定動圧Q
bar(e)に置き換えられ、開示された飛行制御システム18は、拡張された通常動作モードにある。
【0103】
図17は、複数のピトー管40の同期障害を決定する方法700を示す例示的なプロセスフロー図である。
図14および
図17を全体的に参照すると、方法700はブロック702で開始することができる。ブロック702で、CMPE制御モジュール36は、測定動圧Q
bar(m)および推定迎角α
estを入力として受信する。次いで、方法700はブロック704に進み得る。
【0104】
ブロック704において、第1のCMPE検出器600は、測定動圧の変化率
【数53】
および推定迎角の変化率
【数54】
を決定する。特に
図15および
図17を参照すると、測定動圧ウォッシュアウトフィルタ610は、入力として測定動圧Q
bar(m)を受信し、測定動圧の変化率
【数55】
を決定する。推定迎角ウォッシュアウトフィルタ612は、推定迎角α
estを入力として受信し、推定迎角の変化率
【数56】
を決定する。次いで、方法700はブロック706に進み得る。
【0105】
ブロック706において、動圧比較器618は、入力として動圧しきい値614および測定動圧の変化率
【数57】
を受信し、値を互いに比較する。加えて、推定迎角比較器620は、推定迎角の変化率
【数58】
および推定迎角しきい値616を入力として受信し、値を互いに比較する。次いで、方法700は、決定ブロック708に進み得る。
【0106】
決定ブロック708で、動圧比較器618が、測定動圧の変化率
【数59】
が動圧しきい値614以上であると判定した場合、および推定迎角比較器620が、推定迎角の変化率
【数60】
が推定迎角しきい値616より大きくないと判定した場合、方法700はブロック710に進む。
【0107】
ブロック710では、ラッチ624は設定されず、方法700はブロック702に戻る。しかしながら、動圧比較器618が、測定動圧の変化率
【数61】
が動圧しきい値614よりも小さいと判定した場合、および推定迎角比較器620が推定迎角
【数62】
の変化率が推定迎角しきい値616より大きいと判定する場合、方法700はブロック712に進む。
【0108】
ブロック712では、ラッチ624が設定される。方法700は、決定ブロック714に進み得る。
【0109】
決定ブロック714で、時間遅延中のいずれかの時点で測定動圧Qbar(m)が正確である場合、方法700はブロック716に進む。より具体的には、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がしきい値未満であることに応答して、方法700はブロック716に進む。ブロック716で、ラッチ624はリセット信号を受信する。次いで、方法700はブロック702に戻り得る。しかしながら、時間遅延が終了し、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がまだしきい値を超えている場合、方法700はブロック718に進む。ブロック718では、第1のCMPE検出器600のラッチ624および出力信号642は、第1の共通モード空気圧事象の存在を示す。次いで、方法700は終了し得る。
【0110】
図18は、複数のピトー管40の非同期障害を判定する方法800を示す例示的なプロセスフロー図である。
図16および
図18を全体的に参照すると、方法800はブロック802で開始することができる。ブロック802において、第2のCMPE検出器602のクランプ650は、SSFDブロック648から圧力値(例えば、左圧力値P
L、中心圧力値P
C、および右圧力値P
R)を入力として受信する。クランプ650はまた、SSFDブロック648からの個々の圧力値ごとの障害インジケータを入力として受信する。次いで、方法800は、決定ブロック804に進み得る。
【0111】
決定ブロック804で、インジケータが偽に設定されている(すなわち、障害が検出されていない)場合、方法はブロック806に進む。ブロック806では、クランプ650は圧力値を中間値セレクタ652に送る。次に、中間値セレクタ652は、圧力値の1つを選択する。選択された圧力値は、中間値選択アルゴリズムに基づいて、全圧PTOTとして設定される。次いで、方法800は終了し得る。
【0112】
インジケータが真に設定されている(すなわち、障害が検出されている)場合、方法800はブロック808に進み得る。ブロック808において、クランプ650は、時間間隔の間障害を延長する時間遅延機能を実行する。上述のように、時間間隔は、第2の(すなわち、非同期の)共通モード空気圧事象中に複数のピトー管40で発生する2つ以上の障害を捕捉するように設定される。次いで、方法800はブロック810に進み得る。
【0113】
ブロック810において、中間値セレクタ652は、2つ以上の圧力値および障害インジケータを入力として受信し、各圧力値およびインジケータは、複数のピトー管40のうちの1つに対応する。次いで、方法は決定ブロック812に進み得る。
【0114】
決定ブロック812では、中間値セレクタ652が障害状態が存在しないと判定したことに応答して、方法800は終了し得る。中間値セレクタ652が障害状態が存在すると判定したことに応答して、方法800はブロック814に進み得る。ブロック814において、中間値セレクタ652は出力信号660を生成する。上述のように、出力信号660は、第2の共通モード空気圧事象が検出されたことを示す。次いで、方法800はブロック816に進み得る。
【0115】
ブロック816では、出力信号660がラッチ654に送られる。次いで、方法800は、ブロック818に進み得る。
【0116】
ブロック818では、出力信号660の受信に応答して、ラッチ654が設定される。方法800は、決定ブロック820に進み得る。
【0117】
決定ブロック820において、時間遅延中のいずれかの時点で測定動圧Qbar(m)が正確である場合、方法800はブロック822に進む。より具体的には、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がしきい値未満であることに応答して、方法800はブロック822に進む。ブロック822で、ラッチ654はリセット信号を受信する。次いで、方法800はブロック802に戻り得る。しかしながら、時間遅延が終了し、測定動圧Qbar(m)と推定動圧Qbar(e)との間の誤差がまだしきい値を超えている場合、方法800はブロック824に進む。ブロック824において、ラッチ654および第2のCMPE検出器602の出力信号656は、第2の共通モード空気圧事象の存在を示す。次いで、方法800は終了し得る。
【0118】
図14~
図18を全体的に参照すると、現在利用可能な従来の飛行制御システムは、誤った動圧測定または誤った推定迎角測定の判定に応じて、通常動作モードから脱落して第2の動作モードに直ちに切り替わることを理解されたい。つまり、従来のシステムは、どちらの測定でも障害が検出された場合に誤差の原因を特定しようとはしない。対照的に、開示されたシステムは、誤った測定動圧または推定迎角測定値の検出に応じて、測定動圧を推定動圧で置き換える。したがって、開示された飛行制御システムは、従来のシステムのように直ちに第2の動作モードに切り替えず、代わりに拡張通常動作モードで動作する。
【0119】
ここで
図19を参照すると、飛行制御システム18は、例示的なコンピューターシステム1030などの1つまたは複数のコンピューターデバイスまたはシステム上で実施される。コンピューターシステム1030は、プロセッサー1032、メモリ1034、大容量記憶装置1036、入出力(I/O)インターフェース1038、およびヒューマンマシンインターフェース(HMI)1040を含む。コンピューターシステム1030は、ネットワーク1026またはI/Oインターフェース1038を介して1つまたは複数の外部リソース1042に動作可能に結合されている。外部リソースには、サーバー、データベース、大容量記憶装置、周辺機器、クラウドベースのネットワークサービス、またはコンピューターシステム1030で使用できる他の適切なコンピューターリソースが含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
プロセッサー1032は、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー、マイクロコンピューター、中央処理装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックデバイス、ステートマシン、ロジック回路、アナログ回路、デジタル回路、またはメモリ1034に保存されている操作命令に基づいて信号(アナログまたはデジタル)を操作するその他のデバイスから選択された1つ以上のデバイスを含む。メモリ1034は、単一のメモリデバイス、または読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、フラッシュメモリ、キャッシュメモリ、または情報を保存できるその他のデバイスを含む複数のメモリデバイスを含むがこれらに限定されない。大容量記憶装置136は、ハードドライブ、光学ドライブ、テープドライブ、揮発性または不揮発性ソリッドステートデバイス、または情報を保存できる他のデバイスなどのデータ記憶装置を含む。
【0121】
プロセッサー1032は、メモリ1034に存在するオペレーティングシステム1046の制御下で動作する。オペレーティングシステム1046は、メモリ1034に常駐するアプリケーション1048などの1つまたは複数のコンピューターソフトウェアアプリケーションとして実施されるコンピュータープログラムコードがプロセッサー1032によって実行される命令を有することができるように、コンピューターリソースを管理する。別の実施形態では、プロセッサー1032は、アプリケーション1048を直接実行してもよく、その場合、オペレーティングシステム1046は省略されてもよい。1つまたは複数のデータ構造1049もメモリ1034に存在し、データを格納または操作するために、プロセッサー1032、オペレーティングシステム1046、またはアプリケーション1048によって使用され得る。
【0122】
I/Oインターフェース1038は、プロセッサー1032をネットワーク1026または外部リソース1042などの他のデバイスおよびシステムに動作可能に結合するマシンインターフェースを提供する。これにより、アプリケーション1048は、I/Oインターフェース1038を介して通信することによりネットワーク1026または外部リソース1042と協働して動作し、本発明の実施形態を含む様々な特徴、機能、アプリケーション、プロセス、またはモジュールを提供する。アプリケーション1048はまた、1つ以上の外部リソース1042によって実行されるプログラムコードを含むか、そうでなければ、コンピューターシステム1030の外部の他のシステムまたはネットワーク構成要素によって提供される機能または信号に依存する。実際、可能な限り無限のハードウェアおよびソフトウェア構成が与えられると、当業者は、本発明の実施形態が、コンピューターシステム1030の外部に配置され、複数のコンピューターまたは他の外部リソース1042に分散され、またはクラウドコンピューティングサービスなど、ネットワーク1026を介してサービスとして提供されるコンピューティングリソース(ハードウェアおよびソフトウェア)によって提供されるアプリケーションを含み得ることを理解するだろう。
【0123】
HMI1040は、既知の方法でコンピューターシステム1030のプロセッサー1032に動作可能に結合され、ユーザーがコンピューターシステム1030と直接対話できるようにする。HMI1040は、ビデオまたは英数字ディスプレイ、タッチスクリーン、スピーカ、およびユーザーにデータを提供できる他の適切な音声および視覚インジケータを含み得る。また、HMI1040には、ユーザーからの命令または入力を受け入れ、入力された入力をプロセッサー1032に送信できる、英数字キーボード、ポインティングデバイス、キーパッド、プッシュボタン、制御ノブ、マイクなどの入力デバイスおよび制御が含まれる。
【0124】
データベース1044は、大容量記憶装置1036上に常駐することができ、本明細書で説明される様々なシステムおよびモジュールによって使用されるデータを収集および編成するために使用され得る。データベース1044は、データと、データを格納および編成するサポートデータ構造とを含み得る。特に、データベース1044は、リレーショナルデータベース、階層データベース、ネットワークデータベース、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意のデータベース編成または構造で配置されてもよい。プロセッサー1032上の命令として実行するコンピューターソフトウェアアプリケーションの形態のデータベース管理システムを使用して、クエリに応じてデータベース1044のレコードに格納された情報またはデータにアクセスすることができ、クエリはオペレーティングシステム1046、他のアプリケーション1048、または1つ以上のモジュールによって動的に決定および実行することができる。
【0125】
さらに、本開示は、以下の条項による実施形態を含む。
【0126】
条項1.航空機(10)用の飛行制御システム(18)であって、飛行制御システム(18)は、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)と、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)に結合されたメモリ(1034)であって、メモリ(1034)は、データベース(1044)と、1つまたは複数のプロセッサー(1032)によって実行されたときに、飛行制御システム(18)に、
未加工の迎角(αraw)に基づく測定迎角(αm)を入力として受信させ、
全圧に基づく推定迎角(αest)を入力として受信させ、
誤差を決定するために、測定迎角(αm)と推定迎角(αest)とを比較させ、
測定迎角(αm)と推定迎角(αest)との間の誤差がしきい値を超えていると判定した場合、迎角値を使用して障害の存在を判定させる、プログラムコードと、を含むデータを格納するメモリ(1034)と、
を備えている、飛行制御システム(18)。
【0127】
条項2.1つまたは複数のプロセッサー(1032)と通信する複数の迎角センサー(60)をさらに備え、複数の迎角センサー(60)は、未加工の迎角(αraw)を測定するように構成されている、条項1に記載の飛行制御システム(18)。
【0128】
条項3.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
モーメントアーム補正項、未加工の迎角(αraw)、航空機の真の対気速度(VtMDL)、および推定マッハ数(MMDL)に基づいて測定迎角(αm)を決定する、
ための命令を実行する、条項2に記載の飛行制御システム(18)。
【0129】
条項4.1つまたは複数のプロセッサー(1032)と通信する複数のピトー管(40)をさらに備え、複数のピトー管(40)は全圧を測定する、条項1に記載の飛行制御システム(18)。
【0130】
条項5.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
複数のピトー管(40)からの全空気圧と静圧(Ps)とに基づいて測定動圧(Qbar(m))を決定し、
抗力係数(CD)と揚力係数(CL)の両方に基づいて推定動圧(Qbar(e))を決定し、抗力係数(CD)と揚力係数(CL)とは航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づき、
差を決定するために、測定動圧(Qbar(m))と推定動圧(Qbar(e))とを互いに比較し、
測定動圧(Qbar(m))と推定動圧(Qbar(e))との差が、しきい値時間長さの間、別のしきい値を超えたとの判定に応じて、測定動圧(Qbar(m))の共通モード障害の存在を判定する、
ための命令を実行する、条項4に記載の飛行制御システム(18)。
【0131】
条項6.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
モーメントアーム補正項、未加工の迎角αraw、および推定動圧(Qbar(e))に基づいて測定迎角(αm)を決定する、
ための命令を実行する、条項5に記載の飛行制御システム(18)。
【0132】
条項7.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
測定前後加速度(Ax(mea))および測定垂直加速度(Az(mea))を入力として受信し、
抗力係数(CD)および揚力係数(CL)に基づいて推定前後加速度(Ax(est))および推定垂直加速度(Ax(est))を決定し、抗力係数(CD)および揚力係数(CL)は、航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づいており、
推定前後加速度(Ax(est))と推定垂直加速度(Az(est))との第1の差、および測定前後加速度(Ax(mea))と測定垂直加速度(Az(mea))との第2の差の加速度誤差値を決定し、
第1の差と第2の差の加速度誤差値にカルマンゲイン値を乗算することにより残存カルマン値を決定する、
ための命令を実行する、条項1に記載の飛行制御システム(18)。
【0133】
条項8.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
航空機(10)の推定垂直加速度成分A_N
(est)に基づいて迎角の推定変化率(
【数63】
)を決定し、
残存カルマン値と迎角の推定変化率(
【数64】
)とを合わせて合計し、
推定迎角(α
est)を決定するために、残存カルマン値と迎角の推定変化率(
【数65】
)との合計を積分する、
ための命令を実行する、条項7に記載の飛行制御システム。
【0134】
条項9.航空機(10)用の飛行制御システム(18)であって、飛行制御システム(18)は、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)と、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)と通信し、未加工の迎角(αraw)を測定するように構成された複数の迎角センサー(60)と、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)と通信し、全圧を測定する複数のピトー管(40)と、
1つまたは複数のプロセッサー(1032)に結合されたメモリ(1034)であって、データベース(1044)と、1つまたは複数のプロセッサー(1032)によって実行されたときに、飛行制御システム(18)に、
未加工の迎角(αraw)に基づく測定迎角(αm)を入力として受信させ、
全圧に基づく推定迎角(αest)を入力として受信させ、
誤差を決定するために、測定迎角(αm)と推定迎角(αest)とを比較させ、
測定迎角(αm)と推定迎角(αest)との間の誤差がしきい値を超えていると判定した場合、複数の迎角センサー(60)の過半数を使用して障害の存在を判定させる、プログラムコードと、を含むデータを格納するメモリ(1034)と、
を備えている、飛行制御システム(18)。
【0135】
条項10.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
モーメントアーム補正項、未加工の迎角(αraw)、航空機の真の対気速度(VtMDL)、および推定マッハ数(MMDL)に基づいて測定迎角(αm)を決定する、
ための命令を実行する、条項9に記載の飛行制御システム(18)。
【0136】
条項11.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
複数のピトー管(40)からの全空気圧と静圧(Ps)とに基づいて測定動圧(Qbar(m))を決定し、
抗力係数(CD)と揚力係数(CL)の両方に基づいて推定動圧(Qbar(e))を決定し、抗力係数(CD)と揚力係数(CL)とは航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づき、
差を決定するために、測定動圧(Qbar(m))と推定動圧(Qbar(e))とを互いに比較し、
測定動圧(Qbar(m))と推定動圧(Qbar(e))との差が、しきい値時間長さの間、別のしきい値を超えたとの判定に応じて、測定動圧(Qbar(m))の共通モード障害の存在を判定する、
ための命令を実行する、条項9に記載の飛行制御システム(18)。
【0137】
条項12.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
モーメントアーム補正項、未加工の迎角αraw、および推定動圧(Qbar(e))に基づいて測定迎角(αm)を決定する、
ための命令を実行する、条項11に記載の飛行制御システム(18)。
【0138】
条項13.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
測定前後加速度(Ax(mea))および測定垂直加速度(Az(mea))を入力として受信し、
抗力係数(CD)および揚力係数(CL)に基づいて推定前後加速度(Ax(est))および推定垂直加速度(Ax(est))を決定し、
推定前後加速度(Ax(est))と推定垂直加速度(Az(est))との第1の差、および測定前後加速度(Ax(mea))と測定垂直加速度(Az(mea))との第2の差の加速度誤差値を決定し、
第1の差と第2の差との加速度誤差値にカルマンゲイン値を乗算して、残存カルマン値を決定する、
ための命令を実行する、条項9に記載の飛行制御システム(18)。
【0139】
条項14.1つまたは複数のプロセッサー(1032)が、
航空機(10)の推定垂直加速度成分A_N
(est)に基づいて迎角の推定変化率(
【数66】
)を決定し、
残存カルマン値と迎角の推定変化率(
【数67】
)とを合わせて合計し、
推定迎角(α
est)を決定するために、残存カルマン値と迎角の推定変化率(
【数68】
)との合計を積分する、
ための命令を実行する、条項13に記載の飛行制御システム。
【0140】
条項15.航空機(10)の迎角値を使用して障害を判定する方法であって、方法は、
コンピューター(1030)により、未加工の迎角αrawに基づく測定迎角(αm)を入力として受信するステップと、
コンピューター(1030)により、全圧に基づいて決定される推定迎角(αest)を入力として受信するステップと、
誤差を決定するために、コンピューター(1030)によって測定迎角(αm)と推定迎角(αest)とを比較するステップと、
測定迎角(αm)と推定迎角(αest)との間の誤差がしきい値を超えているとの判定に応じて、迎角値を使用して障害の存在を判定するステップと、
を含む方法。
【0141】
条項16.モーメントアーム補正項、未加工の迎角(αraw)、航空機の真の対気速度(VtMDL)、および推定マッハ数(MMDL)に基づいて測定迎角(αm)を決定するステップをさらに含む、条項15に記載の方法。
【0142】
条項17.複数のピトー管(40)からの全空気圧と静圧(Ps)とに基づいて測定動圧(Qbar(m))を決定するステップと、
抗力係数(CD)と揚力係数(CL)の両方に基づいて推定動圧(Qbar(e))を決定し、抗力係数(CD)および揚力係数(CL)は航空機(10)の複数の第1の動作パラメータに基づく、ステップと、
差を決定するために、測定動圧(Qbar(m))と推定動圧(Qbar(e))を互いに比較するステップと、
測定動圧(Qbar(m))と推定動圧(Qbar(e))との差が、しきい値時間長さの間、別のしきい値を超えたとの判定に応じて、測定動圧(Qbar(m))の共通モード障害の存在を判定するステップと、
をさらに含む、条項15に記載の方法。
【0143】
条項18.モーメントアーム補正項、未加工の迎角(αraw)、および推定動圧(Qbar(e))に基づいて測定迎角(αm)を決定するステップをさらに含む、条項17に記載の方法。
【0144】
条項19.測定前後加速度(Ax(mea))および測定垂直加速度(Az(mea))を入力として受信するステップと、
抗力係数(CD)および揚力係数(CL)に基づいて推定前後加速度(Ax(est))および推定垂直加速度(Ax(est))を決定するステップと、
推定前後加速度(Ax(est))と推定垂直加速度(Az(est))との第1の差、および測定前後加速度(Ax(mea))と測定垂直加速度(Az(mea))との第2の差の加速度誤差値を決定するステップと、
第1の差と第2の差との加速度誤差値にカルマンゲイン値を乗算して、残存カルマン値を決定するステップと、
をさらに含む、条項15に記載の方法。
【0145】
条項20.航空機(10)の推定垂直加速度成分(A_N
(est))に基づいて迎角の推定変化率(
【数69】
)を決定するステップと、
残存カルマン値と迎角の推定変化率(
【数70】
)とを合わせて合計するステップと、
推定迎角(α
est)を決定するために、残存カルマン値と迎角の推定変化率(
【数71】
)との合計を積分するステップと、
をさらに含む、条項19に記載の方法。
【0146】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示の要旨から逸脱しない変形は、本開示の範囲内であることが意図されている。そのような変形は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0147】
10 航空機
16 飛行制御モジュール
18 飛行制御システム
20 航空機システム
22 空気データセンサー
24 迎角センサー
28 空気データ制御モジュール
30 推定器制御モジュール
36 CMPE制御モジュール
40 ピトー管
42 外部
44 レードーム
46 機首
50 左側
52 右側
60 迎角センサー
62 全気温(TAT)プローブ
64 静的ポート
66 胴体
68 操縦翼面
70 翼
74 ナセル
76 パイロン
78 航空機エンジン
82 入口カウル
84 前縁
86 後縁
88 前縁スラット
90 後縁フラップ
92 スポイラ
94 上面
96 出力
98 補助翼
99 出力
100 後端
102 排気口
104 補助動力装置(APU)
106 垂直安定板
108 水平安定板
110 舵
112 後縁
114 エレベータ
116 後縁
120 空気データ参照機能ブロック
122 EKF制御モジュール
126 共通モードモニター(CMM)
130 操縦士
136 大容量記憶装置
140 主飛行制御モジュール
142 自動操縦制御モジュール
144 自動スロットル制御モジュール
145 エンジン推力
146 ディスプレイ
148 システム
150 測定モデル
152 動的制御モジュール
154 カルマンゲインブロック
156 積分器ブロック
158 誤差ブロック
160 乗算器
162 加算器
200 係数サブモジュール
202 推進サブモジュール
204 測定サブモジュール
206 誤差サブモジュール
208 カルマンゲインサブモジュール
210 動的サブモジュール
212 積分サブモジュール
220 係数3次元ルックアップテーブル
222 推進データベース
226 ルックアップテーブル
228 データベース
230 3次元ルックアップテーブル
232 推進データベース
300 方法
310 方法
420 迎角補正モジュール
422 拡張カルマンフィルタ(EKF)制御モジュール
426 迎角共通モードモニターCMM
448 システム
450 測定モデル
452 動的制御モジュール
454 カルマンゲインブロック
456 積分器ブロック
458 誤差ブロック
460 乗算器
462 加算器
480 係数サブモジュール
482 推進サブモジュール
484 測定サブモジュール
486 誤差サブモジュール
488 カルマンゲインサブモジュール
490 動的サブモジュール
492 積分サブモジュール
520 係数3次元ルックアップテーブル
530 推進力ベースの3次元ルックアップテーブル
570 方法
580 方法
600 第1のCMPE検出器
602 第2のCMPE検出器
610 測定動圧ウォッシュアウトフィルタ
612 推定迎角ウォッシュアウトフィルタ
614 動圧しきい値
616 迎角しきい値
618 推定迎動圧比較器
620 迎角比較器
622 ANDブロック
624 ラッチ
630 信号選択および障害検出(SSFD)ブロック
642 出力信号
648 信号選択および障害検出(SSFD)ブロック
650 クランプ
652 中間値セレクタ
654 ラッチ
656 出力信号
660 出力信号
700 方法
800 方法
1026 ネットワーク
1030 コンピューターシステム
1032 プロセッサー
1034 メモリ
1036 大容量記憶装置
1038 入出力(I/O)インターフェース
1040 ヒューマンマシンインターフェース(HMI)
1042 外部リソース
1044 データベース
1046 オペレーティングシステム
1048 アプリケーション
1049 データ構造
Qbar(m) 測定動圧
Qbar(e) 推定動圧
Qbar(p) 以前の推定動圧
PTOT 全圧
Ps 静圧
MMDL 推定マッハ数
VcasMDL 較正対気速度
VtMDL 真対気速度
m 航空機の質量
CD 航空機の抗力係数
CL 航空機の揚力係数
S 翼の平面形状の基準面積
α 迎角
x 推定量(推定動圧Qbar(e))
R(α) 航空機の機体軸線XBと機体軸線ZBに対する前方安定軸線XSとの回転行列
θ ピッチ角
A_D(est) 推定前後加速度成分
g 重力加速度
ρ 空気密度
K カルマンゲイン値
E 加速度誤差値
Ax(est) 推定前後加速度
Az(est) 推定垂直加速度
Ax(mea) 測定前後加速度
Az(mea) 測定垂直加速度
δ たわみ
TTOT 総空気温度
N1 エンジン速度
XB x機体軸線
YB y機体軸線
ZB z機体軸線
CG 重心
XW 対気速度方向
T 推定正味推力
AD 抗力加速度
AL 揚力加速度
XT 機体軸線XBに対する推力
YT 機体軸線YBに対するスラスト力
hft 気圧高度
N1c エンジン速度(温度に対して補正)
x 状態ベクトル
MEKF 合成マッハ数
VtEKF 合成真対気速度
PL 左圧力値
PC 中心圧力値
PR 右圧力値