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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20231227BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61M25/00 610
A61M25/00 500
A61M25/14 510
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019211022
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021078980
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】兼子 誉生
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-18366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095641(US,A1)
【文献】特開2006-102537(JP,A)
【文献】特開平10-337331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
アウターチューブと、
前記アウターチューブに挿入された第1インナーチューブと、
前記アウターチューブに挿入された第2インナーチューブであって、前記第1インナーチューブと外接する第2インナーチューブと、
前記アウターチューブの内表面の一部に形成され、前記第1インナーチューブと前記第2インナーチューブとが外接する外接部と、前記アウターチューブと、の空隙に向けて突出する内部突起部と、
を備え
前記アウターチューブの横断面は、前記第1インナーチューブと前記第2インナーチューブとが挿入された箇所の少なくとも一部において楕円形状であり、
前記アウターチューブの横断面が楕円形状の部分において、前記第1チューブの外表面が前記アウターチューブの内表面と接触すると共に、前記第2チューブの外表面がアウターチューブの内表面に接触する箇所があり、
前記内部突起部は、前記アウターチューブの横断面における前記楕円形状の短軸方向に位置している、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
さらに、
前記アウターチューブの外表面において、前記内部突起部と対応する位置に形成され、外部に向けて突出する外部突起部を、
備える、カテーテル。
【請求項3】
カテーテルであって、
アウターチューブと、
前記アウターチューブに挿入された第1インナーチューブと、
前記アウターチューブに挿入された第2インナーチューブであって、前記第1インナーチューブと外接する第2インナーチューブと、
前記アウターチューブの内表面の一部に形成され、前記第1インナーチューブと前記第2インナーチューブとが外接する外接部と、前記アウターチューブと、の空隙に向けて突出する内部突起部と、
前記アウターチューブの外表面において、前記内部突起部と対応する位置に形成され、外部に向けて突出する外部突起部と、
を備える、カテーテル。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のカテーテルであって、
前記アウターチューブ内に、前記第1インナーチューブ及び前記第2インナーチューブと並行するように、前記空隙に配置されたコアワイヤをさらに備え、
前記内部突起部は、前記コアワイヤの先端よりも前記カテーテルの先端側に位置し、かつ前記カテーテルの横断面において前記コアワイヤの先端が位置する前記空隙に向けて突出している、
カテーテル。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のカテーテルであって、
前記内部突起部は、前記アウターチューブと同一の材料により、前記アウターチューブと一体的に形成されている、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、およびカテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウターチューブとインナーチューブとを有するカテーテルが知られている。このようなカテーテルにおいて、アウターチューブとインナーチューブとの空隙を設ける場合がある(例えば、特許文献1参照)。カテーテルにおいて、アウターチューブとインナーチューブとの空隙には、例えば、カテーテルの先端形状を変化させるための操作ワイヤや、カテーテルの押し込み力を向上させるためのコアワイヤが配置されることがある。
【0003】
このように空隙を設けると、アウターチューブに加えられた軸方向の力(押し込み力)や回転方向の力がインナーチューブに伝達され難く、カテーテルの操作性が優れない場合が生じるという問題がある。この問題を解決するべく、特許文献1では、アウターチューブに軸方向の力が加えられた場合に、アウターチューブとインナーチューブとの軸方向の相対位置を保持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-337331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、複数のインナーチューブを備えるカテーテルは検討されていない。カテーテルが複数のインナーチューブを備える場合に、アウターチューブの回転方向の力がインナーチューブに伝達され難いと、複数のインナーチューブの配置が手技者の所望の配置にならない場合があるので、特に問題となる。そのため、複数のインナーチューブを備えるカテーテルにおいて、カテーテルの回転伝達性を向上させる技術が望まれている。
【0006】
また、アウターチューブとインナーチューブとを有するカテーテルの製造において、インナーチューブのアウターチューブへの挿入を容易にする技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、カテーテルが提供される。このカテーテルは、アウターチューブと、前記アウターチューブに挿入された第1インナーチューブと、前記アウターチューブに挿入された第2インナーチューブであって、前記第1インナーチューブと外接する第2インナーチューブと、前記アウターチューブの内表面の一部に形成され、前記第1インナーチューブと前記第2インナーチューブとが外接する外接部と、前記アウターチューブと、の空隙に向けて突出する内部突起部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、内部突起部が、第1インナーチューブと第2インナーチューブとの空隙に向けて突出するため、アウターチューブが回転したとき、内部突起部が第1インナーチューブ、第2インナーチューブに接触して、アウターチューブの回転力がインナーチューブに伝達される。そのため、カテーテルの回転伝達性を向上させることができる。
【0010】
(2)上記形態のカテーテルあって、前記内部突起部は、前記アウターチューブと同一の材料により、前記アウターチューブと一体的に形成されていてもよい。このようにすると、内部突起部の製造が容易なカテーテルを提供することができる。
【0011】
(3)上記形態のカテーテルであって、さらに、前記アウターチューブの外表面において、前記内部突起部と対応する位置に形成され、外部に向けて突出する外部突起部を、備えてもよい。このようにすると、カテーテルが接触する血管等の人体内の各器官や、併用デバイスとの接触面積が減少され、カテーテルと接触する部分との摩擦抵抗を減少させることができる。そのため、カテーテルの摺動性を向上させることができる。
【0012】
(4)本発明の他の形態によれば、カテーテルの製造方法が提供される。このカテーテルの製造方法は、インナーチューブと、前記インナーチューブの外径より内径が大きいアウターチューブと、を準備する準備工程と、前記アウターチューブに前記インナーチューブを挿入する挿入工程と、前記インナーチューブが挿入された前記アウターチューブを局所的に加熱して、前記アウターチューブの内側に突出する内部突起部を形成する内部突起部形成工程と、を備える。このカテーテルの製造方法によれば、アウターチューブを局所的に加熱することにより、容易に内部突起部を形成することができる。また、アウターチューブの内径がインナーチューブの外径より大きいため、インナーチューブをアウターチューブに容易に挿入することができる。
【0013】
(5)上記形態のカテーテルの製造方法であって、前記挿入工程において、2本の前記インナーチューブが挿入され、前記内部突起形成工程において、2本の前記インナーチューブが互いに外接する外接部と、前記アウターチューブと、の空隙に向けて前記内部突起部が形成され、前記準備工程において準備される前記アウターチューブは、自身の内周の長径が、2本の前記インナーチューブの外径の合計の長さより長くてもよい。このようにすると、2本のインナーチューブを有するカテーテルにおいて、容易に内部突起部を形成することができる。また、アウターチューブは、自身の内周の長径が、2本の前記インナーチューブの外径の合計の長さより長いため、インナーチューブをアウターチューブに容易に挿入することができる。
【0014】
(6)上記形態のカテーテルの製造方法であって、前記内部突起形成工程において、前記アウターチューブが収縮されてもよい。このようにすると、アウターチューブが収縮するため、アウターチューブとインナーチューブとの空隙が小さくなり、よりアウターチューブの回転のインナーチューブへの伝達が向上され、良好な操作性を有するカテーテルを製造することができる。また、内部突起部を形成すると共にアウターチューブを収縮させるため、回転性能に優れるカテーテルを容易に製造することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、カテーテルに用いられるアウターチューブとインナーチューブとを備えるチューブ製品などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のカテーテルの縦断面構成を例示した説明図である。
図2】カテーテルの横断面構成を例示した説明図である。
図3】本実施形態のカテーテルの突起部の形成方法を示す工程図である。
図4】突起部の形成方法を概念的に示す説明図である。
図5】第2実施形態のカテーテルの横断面構成を例示した説明図である。
図6】第3実施形態のカテーテルの横断面構成を例示した説明図である。
図7】第4実施形態のカテーテルの横断面構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のカテーテル10の縦断面構成を例示した説明図である。図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸はカテーテル10の軸線方向(カテーテル10の挿入方向)に対応し、Y軸はカテーテル10の高さ方向に対応し、Z軸はカテーテル10の幅方向に対応する。図1の左側(-X軸方向)をカテーテル10及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1の右側(+X軸方向)をカテーテル10及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、カテーテル10及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は、生体内部へ挿入される「遠位側」に相当し、基端側は、医師等の手技者により操作される「近位側」に相当する。これらの点は、図1以降においても共通する。
【0018】
カテーテル10は、例えば、血管、胆管、膵管等に形成された狭窄部又は閉塞部を治療するために用いられるものである。図1に示すように、カテーテル10は、コネクタ20と、アウターチューブ30と、第1インナーチューブ50と、第2インナーチューブ60と、第1コアワイヤ70と、第2コアワイヤ80と、内部突起部32と、外部突起部34と、先端チップ90と、を備える。
【0019】
アウターチューブ30には、第1インナーチューブ50が、カテーテル10の略全長にわたって挿入されている。第1インナーチューブ50には、ガイドワイヤを挿入することができる。ガイドワイヤを挿入しやすくするために、アウターチューブ30の後端及び第1インナーチューブ50の後端には、コネクタ20が接続されている。第1インナーチューブ50の先端には、第1先端口52が設けられており、第1インナーチューブ50の後端には、コネクタ20を介して第1挿入口54が設けられている。
【0020】
さらに、アウターチューブ30には、第2インナーチューブ60が、第1インナーチューブ50に並行して、カテーテル10の途中から先端まで挿入されている。第1インナーチューブ50と同様に、第2インナーチューブ60にもガイドワイヤを挿入することができる。第2インナーチューブ60の先端には、先端チップ90が設けられている。第2先端口62が設けられており、第2インナーチューブ60の後端には、第2挿入口64が設けられている。第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60は、アウターチューブ30に固定されていない。
【0021】
アウターチューブ30、第1インナーチューブ50、および第2インナーチューブ60は、熱可塑性樹脂で形成されており、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ナイロンなどの樹脂を用いることができる。
【0022】
図2は、カテーテル10の横断面構成を例示した説明図であり、(A)は図1のA-A断面を示し、(B)はB-B断面を示し、(C)はC-C断面を示してある。図2には、図1と同様にXYZ軸を示してある。図2(A)に示すように、カテーテル10は、アウターチューブ30の内表面302の一部に形成され、第1インナーチューブ50と第2インナーチューブ60とが外接する外接部56と、アウターチューブ30と、の空隙Sに向けて突出する内部突起部32を有する。また、カテーテル10は、アウターチューブ30の外表面304において、内部突起部32と対応する位置に形成され、外部に向けて突出する外部突起部34を有する。内部突起部32および外部突起部34は、後述する方法により、アウターチューブ30と一体的に形成されている。なお、以下の説明において、内部突起部32と外部突起部34とをあわせて、単に、「突起部」とも呼ぶ。内部突起部32が、第1インナーチューブ50と第2インナーチューブ60との空隙Sに向けて突出しているため、アウターチューブ30が回転したとき、内部突起部32が第1インナーチューブ50、第2インナーチューブ60に接触して、アウターチューブ30の回転力が第1インナーチューブ50に伝達される。そのため、カテーテル10の回転伝達性を向上させることができる。
【0023】
第1インナーチューブ50は、カテーテル10の全長にわたって延びているため、手技者には、第1インナーチューブ50が長く内部に挿入したガイドワイヤを交換しにくいというデメリットがある反面、第1インナーチューブ50にガイドワイヤを挿入したとき、このガイドワイヤによりカテーテル10の剛性が向上して、手技者には、カテーテル10を先端方向への押し込みやすいというメリットがある。また、第2インナーチューブ60は、カテーテル10の途中から先端まで延びているに過ぎないため、手技者には、内部に挿入したガイドワイヤを交換しやすいというメリットがある反面、第2インナーチューブ60にガイドワイヤを挿入しても、カテーテル10の先端側しか剛性が向上せず、手技者がカテーテル10を先端方向へ押し込んだ際に剛性が急激に変化する第2インナーチューブ60の第2挿入口64付近でカテーテル10が折れてしまうというデメリットがある。カテーテル10では、第1インナーチューブ50と第2インナーチューブ60との両方を備えているため、第1インナーチューブ50に第1ガイドワイヤを挿入した状態で、手技者は、第2インナーチューブ60に挿入した第2ガイドワイヤを即座に交換することができ、かつ、カテーテル10を先端方向への押し込みやすい構成になっている。
【0024】
図1に示すように、カテーテル10には、アウターチューブ30と第1インナーチューブ50との間に、軸方向に延びた金属からなる第1コアワイヤ70及び第2コアワイヤ80が挿入されている。第1コアワイヤ70及び第2コアワイヤ80は、断面が円形であり、先端に向かって細径化されたテーパ状の金属製線材である(図2(B)及び(C))。第1コアワイヤ70及び第2コアワイヤ80の材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼やNi-Ti合金などの超弾性合金を用いることができる。
【0025】
第1コアワイヤ70は、第2コアワイヤ80よりも長い金属製線材である。そのため、第1コアワイヤ70の先端72は、第2インナーチューブ60の第2挿入口64よりも先端側に位置する一方、第2コアワイヤ80の先端82は、第2インナーチューブ60の第2挿入口64よりも後端側に位置する。
【0026】
図3は、本実施形態のカテーテル10の突起部の形成方法を示す工程図である。図4は、突起部の形成方法を概念的に示す説明図である。カテーテル10の製造方法は、以下に示す突起部の形成方法を含む。
【0027】
図3に示すように、工程P1において、インナーチューブ(第1インナーチューブ50、第2インナーチューブ60)と、アウターチューブ30が準備される(準備工程)。ここで、アウターチューブ30は、自身の内周の長径L1が、2本のインナーチューブ50、60の直径の合計の長さL2より長い(図4紙面左側の図)。なお、完成品の寸法のアウターチューブ30(図4紙面右側の図)に対して、予め、所定の処理を施すことにより、径を拡大したアウターチューブ30(図4紙面左側の図)を準備している。
【0028】
工程P2において、第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60が、アウターチューブ30内に挿入される(挿入工程)。このとき、上述の通り、アウターチューブ30の内周の長径L1が、2本のインナーチューブ50、60の直径の合計の長さL2より長いため、アウターチューブ30内に第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60を容易に挿入することができる。
【0029】
工程P3において、第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60が挿入されたアウターチューブ30の外接部56に対向する箇所(図4において、破線で囲んで示す)を、レーザー等により局所的に加熱する。アウターチューブ30を局所的に加熱することにより、アウターチューブ30が局所的に溶融して、アウターチューブ30の内側に突出する32と、外側に突出する外部突起部34が形成される。また、アウターチューブ30を局所的に加熱することにより、アウターチューブ30が収縮し、第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60と、アウターチューブ30と、の空隙が小さくなる。このようにして、突起部が形成される(図4紙面右側の図)。
【0030】
以上説明したように、本実施形態のカテーテル10によれば、内部突起部32が、第1インナーチューブ50と第2インナーチューブ60との空隙Sに向けて突出しているため、カテーテル10の回転伝達性を向上させることができる。上述の通り、第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60は、アウターチューブ30と固定されていないため、内部突起部32を備えない場合は、アウターチューブ30に加えられた回転力が第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60に伝達され難い。これに対し、本実施形態のカテーテル10は、内部突起部32を有するため、アウターチューブ30が回転したとき、内部突起部32が第1インナーチューブ50、第2インナーチューブ60に接触して、アウターチューブ30の回転力がインナーチューブ50に伝達される。そのため、カテーテル10の回転伝達性を向上させることができる。
【0031】
カテーテル10は、外部に向けて突出する外部突起部34を備えるため、カテーテル10が接触する血管等の人体内の各器官や、併用デバイスとの接触面積が減少され、カテーテル10と接触する部分との摩擦抵抗を減少させることができる。そのため、カテーテル10の摺動性を向上させることができる。
【0032】
カテーテル10は、内部突起部32および外部突起部34を有するため、突起部を有さない構成と比較してカテーテルの剛性を向上させることができる。
【0033】
本実施形態のカテーテルの製造方法によれば、アウターチューブ30を局所的に加熱することにより、容易に内部突起部32および外部突起部34を形成することができる。
【0034】
この製造方法において、準備されるアウターチューブ30の内周の長径L1が、第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60の外径の合計の長さL2より長いため、第1インナーチューブ50および第2インナーチューブ60をアウターチューブに容易に挿入することができ、カテーテル10を容易に製造することができる。
【0035】
本実施形態において準備されるアウターチューブ30は、完成品の寸法のアウターチューブ30(図4紙面右側の図)に対して、予め、所定の処理を施すことにより、径が拡大されている。そのため、アウターチューブ30を局所加熱することによりアウターチューブ30が収縮する際の寸法精度を向上させることができる。
【0036】
突起部形成工程において、アウターチューブ30が収縮するため、カテーテルの外径を小さくすることができる。また、アウターチューブ30とインナーチューブ50、60との空隙が小さくなり、よりアウターチューブ30の回転のインナーチューブ50、60への伝達が向上され、良好な操作性を有するカテーテルを製造することができる。
【0037】
インナーチューブのアウターチューブへの挿入性を考慮して、内径が大きいアウターチューブを用いて、インナーチューブを挿入した後に、熱収縮チューブを被せることによりアウターチューブ収縮させる場合と比較して、アウターチューブを直接局所加熱することにより収縮させているため、容易に収縮させることができる。
【0038】
突起部を形成すると共にアウターチューブ30を収縮させるため、回転性能に優れるカテーテルを容易に製造することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のカテーテル10Aの横断面構成を例示した説明図である。図5は、図2(A)に相当する。後述する図6図7も、同様に、図2(A)に相当する。第2実施形態のカテーテル10Aは、外部突起部34を備えない。このようにしても、内部突起部32を備えるため、第1実施形態のカテーテル10と同様に、カテーテルの回転伝達性を向上させることができる。
【0040】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態のカテーテル10Bの横断面構成を例示した説明図である。第3実施形態のカテーテル10Bは、3本のインナーチューブを備える。具体的には、第1インナーチューブ50、第2インナーチューブ60B、および第3インナーチューブ63を備える。なお、第2インナーチューブ60は、第1実施形態のカテーテル10よりも管径が小さい。カテーテル10Bにおいても、内部突起部32が、第1インナーチューブ50と第2インナーチューブ60Bとの空隙に向けて突出するため、アウターチューブ30が回転したとき、内部突起部32が第1インナーチューブ50、第2インナーチューブ60に接触して、アウターチューブ30の回転力がインナーチューブに伝達される。そのため、カテーテル10Bの回転伝達性を向上させることができる。
【0041】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態のカテーテル10Cの横断面構成を例示した説明図である。第4実施形態のカテーテル10Cは、2つの内部突起部(32、32C)と、2つの外部突起部(34、34C)と、を備える。このようにすると、さらにカテーテル10C回転伝達性を向上させることができる。
【0042】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0043】
・上記各実施形態において、内部突起部32および外部突起部34がアウターチューブ30と同一材料によりアウターチューブ30と一体的に形成されている例を示したが、内部突起部32および外部突起部34は、アウターチューブ30と別部材として構成してもよい。内部突起部32および外部突起部34を、アウターチューブ30と別部材として構成し、アウターチューブ30に接着等により接合してもよい。また、アウターチューブ30と異なる材料により内部突起部32および外部突起部34を形成してもよい。
【0044】
・アウターチューブに挿入されるインナーチューブの本数は、4以上であってもよい。また、各インナーチューブの管径は互いに異なっても、同一であってもよい。
【0045】
・内部突起部および外部突起部の数は、上記実施形態に限定されない。カテーテルが、内部突起部および外部突起部を、それぞれ3つ以上備える構成にしてもよい。
【0046】
・カテーテルにおいて突起部を形成する方法は、上記実施形態に限定されない。例えば、アウターチューブ30の内部にアウターチューブ30と同一材料から成る小片を配置して加熱することにより、内部突起部を形成してもよい。同様に、例えば、アウターチューブ30の外部にアウターチューブ30と同一材料から成る小片を配置して加熱することにより、外部突起部を形成してもよい。さらに、異なる材料から成る小片を用いてもよい。
【0047】
・カテーテルの製造方法において、予め、内部突起部が形成されたアウターチューブを用いて、アウターチューブ内にインナーチューブを挿入してもよい。
【0048】
・上記実施形形態におけるカテーテルの製造方法の突起部形成工程において、アウターチューブ30を局所加熱することによりアウターチューブ30が収縮する例を示したが、アウターチューブ30は収縮しなくてもよい。
【0049】
・上記実施形態おけるカテーテルの製造方法の準備工程において、完成品の寸法のアウターチューブ30(図4紙面右側の図)に対して、予め、所定の処理を施すことにより、径を拡大したアウターチューブ30(図4紙面左側の図)を準備しているが、準備工程において、アウターチューブ30の径を大きくする処理を行ってもよい。また、予め、径が大きく形成されたアウターチューブを準備してもよい。
【0050】
上記実施形態のカテーテルの製造方法において、2本のインナーチューブを備えるカテーテルの製造方法を例示したが、1本のインナーチューブを備えるカテーテルを製造してもよい。インナーチューブが1本の場合、アウターチューブとして、その内径が、インナーチューブの外径より大きいものを用意する。このようにしても、容易に、回転伝達性能が良好なカテーテルを製造することができる。
【0051】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、10A、10B、10C…カテーテル
20…コネクタ
30…アウターチューブ
32…内部突起部
34…外部突起部
50…第1インナーチューブ
52…第1先端口
54…第1挿入口
56…外接部
60、60B…第2インナーチューブ
62…第2先端口
63…第3インナーチューブ
64…第2挿入口
70…第1コアワイヤ
72…先端
80…第2コアワイヤ
82…先端
90…先端チップ
302…内表面
304…外表面
L1…長径
S…空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7