(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】塗布工具および塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20231227BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20231227BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231227BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20231227BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 B
(21)【出願番号】P 2019218973
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018232729
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019034880
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】林 敦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】彭 瑶
(72)【発明者】
【氏名】小倉 栄次
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-044643(JP,A)
【文献】実開平04-094423(JP,U)
【文献】特開平08-173878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0247723(US,A1)
【文献】特開2016-185504(JP,A)
【文献】特開2019-171292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に互いに隣接配置され、前記第1方向に直交する第2方向に延びる第1ヘッド部材および第2ヘッド部材と、
前記第1方向に互いに対向する前記第1ヘッド部材の内側面と前記第2ヘッド部材の内側面との間に設けられ、内部に塗布液が流通し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において前記第1ヘッド部材の先端部と前記第2ヘッド部材の先端部との間から外部に開口するスロットと、
前記第1ヘッド部材内を前記第2方向に延び、前記第1方向から前記スロットの内部に突出可能なチョークバーと、
前記スロット内への前記チョークバーの突出量を調整する調整機構と、を備え、
前記調整機構は、
前記第1ヘッド部材内を前記第1方向に延び、前記チョークバーと固定されるシャフトと、
前記第1ヘッド部材に対して前記第3方向に移動可能な移動部と、
前記移動部の前記第3方向への移動量を、前記シャフトの前記第1方向への移動量に変換するカム部と、を有する、
塗布工具。
【請求項2】
前記カム部は、前記移動部の前記第3方向への移動量を、前記移動量よりも小さな値の前記シャフトの前記第1方向への移動量に変換する、
請求項1に記載の塗布工具。
【請求項3】
前記カム部は、
前記移動部に配置され、前記第3方向に向かうに従い前記第1方向に向けて延びる傾斜面と、
前記シャフトに設けられ、前記傾斜面に前記第1方向から接触する接触部と、を有する、
請求項1または2に記載の塗布工具。
【請求項4】
前記接触部は、前記傾斜面上を転動可能なローラーである、
請求項3に記載の塗布工具。
【請求項5】
前記カム部は、
前記第2方向に延びる回動軸と、
前記回動軸の中心軸回りに回動可能な回動部材と、を有し、
前記回動部材は、
前記第3方向において前記移動部と接触する第1接触部と、
前記第1方向において前記シャフトと接触する第2接触部と、を有する、
請求項1または2に記載の塗布工具。
【請求項6】
前記調整機構は、前記第1方向において前記シャフトを前記移動部および前記カム部のいずれかに向けて付勢する付勢部を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項7】
前記調整機構が、前記第2方向に並んで複数設けられる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項8】
前記調整機構を前記第1ヘッド部材に固定する固定部を備え、
前記調整機構は、前記移動部を前記第3方向に移動可能に支持する本体部を有し、
前記固定部は、前記第2方向に延び、複数の前記調整機構の各前記本体部を支持する、
請求項7に記載の塗布工具。
【請求項9】
前記固定部は、
前記第1ヘッド部材に固定され、前記第2方向に延びる固定バーと、
前記固定バーに前記第2方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、複数の前記調整機構の各前記本体部を個別に支持する本体部支持部と、を有する、
請求項8に記載の塗布工具。
【請求項10】
前記固定バーと、複数の前記本体部支持部とが、単一の部材により一体に形成される、
請求項9に記載の塗布工具。
【請求項11】
前記固定部が、1つのみ設けられる、
請求項8から10のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項12】
前記固定部が、前記第2方向に並んで複数設けられる、
請求項8から10のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項13】
前記移動部は、前記第1ヘッド部材の前記第3方向を向く先端面と、前記第1ヘッド部材の前記第1方向を向く外側面との接続部に対して、前記第3方向の後端側に配置される、
請求項1から12のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項14】
前記調整機構は、前記移動部を前記第3方向に移動させる操作部を有する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項15】
前記調整機構は、前記移動部を前記第3方向に駆動する駆動部を有する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項16】
前記スロットから被塗布物に塗布された塗布液の膜厚を検出する塗布膜厚検出手段と、
前記塗布膜厚検出手段の検出結果に基づいて、前記膜厚が所定範囲となるように、前記駆動部により前記移動部を前記第3方向に移動させる制御部と、を備える、
請求項15に記載の塗布工具。
【請求項17】
請求項16に記載の塗布工具を用いて被塗布物に塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記調整機構は、前記第2方向に並んで複数設けられ、
前記塗布膜厚検出手段により、前記第2方向の複数の位置のデータ、および、前記複数の位置における各前記膜厚のデータを継続的に取得し、
前記位置のデータおよび前記膜厚のデータをネットワークを介して外部サーバに収集し、
前記膜厚のデータと予め設定された基準の膜厚のデータとの差の値を算出し、前記差の値と予め設定された閾値とを比較し、
前記差の値が前記閾値を超えた場合には、前記第2方向において前記閾値を超えた位置に最も近い前記調整機構の前記移動部を前記駆動部で前記第3方向に駆動して、前記差の値が前記閾値以下となるように前記スロット内への前記チョークバーの突出量を調整する、
塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布工具および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットダイ等と呼ばれる塗布工具が知られている。スロットダイ塗工において、塗布液を塗布幅方向に均等に吐出させるための手法として、チョークバーを流路内部に出し入れ可能にし、流路を任意に規制して吐出量を調整する方法がある。この方法は、特許文献1に示されるT-ダイのように、押出成形などで用いられている。このT-ダイでは、チョークバーの操作に主に調整ボルトが用いられ、ボルトの回転量とネジピッチからバーの移動量が操作される。
特許文献2に示される押出成形用ダイのように、チョークバーの移動量を正確に測定するような工夫もされている。
【0003】
特許文献3に示されるダイ塗工装置のように、チョークバーの移動量をより細かく調整するため、マイクロメータヘッドを用いた方法も考えられている。このダイ塗工装置は、塗工液流路に臨ませて配設され、塗工液流路の一方向に亘って分割した複数個の分割バーを連接したチョークバー本体と、各分割バー毎に設けた進退調節具と、を備える。各進退調節具で各分割バーを進退させることで、各分割バー毎に塗工液流路の隙間量を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭58-33213号公報
【文献】実開平4-94423号公報
【文献】特開2007-44643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ダイ塗工装置は、進退調節具がダイ本体から上方に突出して延びている。このため装置を設置するにあたり、装置上方にスペースを確保しなければならない。設置スペースを大きくとるため、設置が困難な場合があり、また塗工中に進退調節具を操作することが難しい。また、被塗布物の塗布液が塗布される部分(以下、塗工部と呼ぶ)を視認しにくかった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、設置スペースを小さく抑えることができ、塗工中でもチョークバーの位置を調整しやすく、塗工部を視認しやすい塗布工具、およびこれを用いた塗布方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗布工具の一つの態様は、第1方向に互いに隣接配置され、前記第1方向に直交する第2方向に延びる第1ヘッド部材および第2ヘッド部材と、前記第1方向に互いに対向する前記第1ヘッド部材の内側面と前記第2ヘッド部材の内側面との間に設けられ、内部に塗布液が流通し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向において前記第1ヘッド部材の先端部と前記第2ヘッド部材の先端部との間から外部に開口するスロットと、前記第1ヘッド部材内を前記第2方向に延び、前記第1方向から前記スロットの内部に突出可能なチョークバーと、前記スロット内への前記チョークバーの突出量を調整する調整機構と、を備え、前記調整機構は、前記第1ヘッド部材内を前記第1方向に延び、前記チョークバーと固定されるシャフトと、前記第1ヘッド部材に対して前記第3方向に移動可能な移動部と、前記移動部の前記第3方向への移動量を、前記シャフトの前記第1方向への移動量に変換するカム部と、を有する。
【0008】
この塗布工具では、調整機構の移動部を第3方向に移動させると、カム部によってシャフトが第1方向に移動させられる。これにより、シャフトとともにチョークバーが第1方向に移動させられて、チョークバーのスロット内への突出量が調整される。
本発明によれば、調整機構が第1ヘッド部材から第1方向に大きく出っ張ることを抑えられる。これにより、第1方向において塗布工具の設置スペースを小さく抑えることができ、塗布工具を設置しやすい。また、塗工中に操作するなどにより移動部を移動させて、チョークバーの位置を調整することが容易である。また、被塗布物の塗布液が塗布される部分(塗工部)を、塗工中でも観察しやすい。具体的には、例えば、塗布開始時に塗工状態を確認したり、塗工条件を調整したい場合などにおいて、塗工部を視認しやすい。
【0009】
上記塗布工具において、前記カム部は、前記移動部の前記第3方向への移動量を、前記移動量よりも小さな値の前記シャフトの前記第1方向への移動量に変換することが好ましい。
【0010】
この場合、カム部によって、移動部の第3方向への移動量よりもシャフトの第1方向への移動量が小さく抑えられるので、チョークバーのスロット内への突出量を微調整しやすい。
【0011】
上記塗布工具において、前記カム部は、前記移動部に配置され、前記第3方向に向かうに従い前記第1方向に向けて延びる傾斜面と、前記シャフトに設けられ、前記傾斜面に前記第1方向から接触する接触部と、を有することが好ましい。
【0012】
この場合、移動部が第3方向に移動したときに、傾斜面により接触部が第1方向に押され、接触部とともにシャフトが第1方向に移動させられる。上記構成によれば、シャフトの第1方向への移動量をより小さくして、チョークバーの位置を微調整可能である。具体的には、例えばミクロンオーダー(数μm単位)のチョークバーの位置調整を行うことが可能である。
【0013】
上記塗布工具において、前記接触部は、前記傾斜面上を転動可能なローラーであることが好ましい。
【0014】
この場合、接触部と傾斜面との摩擦抵抗が低減され、カム部の機能が安定する。
【0015】
上記塗布工具において、前記カム部は、前記第2方向に延びる回動軸と、前記回動軸の中心軸回りに回動可能な回動部材と、を有し、前記回動部材は、前記第3方向において前記移動部と接触する第1接触部と、前記第1方向において前記シャフトと接触する第2接触部と、を有することが好ましい。
【0016】
この場合、移動部が第3方向に移動して回動部材の第1接触部を押すと、回動部材が回動軸回りに回動させられる。これにより、回動部材の第2接触部がシャフトを第1方向に押して、チョークバーのスロット内への突出量が調整される。カム部を簡素な構成としつつ、移動部の第3方向への移動量が、カム部によって、シャフトの第1方向への移動量に安定して変換される。
【0017】
上記塗布工具において、前記調整機構は、前記第1方向において前記シャフトを前記移動部および前記カム部のいずれかに向けて付勢する付勢部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、付勢部によって、シャフトが移動部および前記カム部のいずれかに向け付勢された状態が維持されるので、移動部が第3方向のいずれの向きに移動しても、カム部が安定して機能し、シャフトが第1方向のいずれの向きにも安定して移動させられる。つまり、移動部を移動させることで、チョークバーをスロット内に前進させることも、スロット内から後退させることもできる。このため、チョークバーの位置調整が行いやすい。また、付勢部の付勢力により、カム部のがたつき(バックラッシュ)が抑えられ、カム部の機能がより安定する。
【0019】
上記塗布工具において、前記調整機構が、前記第2方向に並んで複数設けられることが好ましい。
【0020】
この場合、複数の調整機構によって、第2方向の各位置でチョークバーのスロット内への突出量を調整できる。したがって、被塗布物に塗布される塗布液の膜厚を、スロットの第2方向の各位置で調整できる。
【0021】
上記塗布工具において、前記調整機構を前記第1ヘッド部材に固定する固定部を備え、前記調整機構は、前記移動部を前記第3方向に移動可能に支持する本体部を有し、前記固定部は、前記第2方向に延び、複数の前記調整機構の各前記本体部を支持することが好ましい。
【0022】
この場合、複数の調整機構の各本体部が固定部により支持されて、複数の調整機構と固定部とがユニット化されている。このユニットを第1ヘッド部材に固定することにより、塗布工具を簡単に組み立てることができる。また、このユニットを塗布工具から取り外したり交換したりすることが容易であり、メンテナンスにかかる時間を削減できる。したがって、メンテナンス等のために塗布工具の稼働を停止させる時間を少なく抑えることができ、塗布効率(生産効率)が高められる。また、ユニット化された複数の調整機構のゼロ点合わせ(位置合わせ)を簡単に行うことができ、チョークバーのスロット内への突出量を正確に管理することが可能になり、塗布精度が安定して高められる。
【0023】
上記塗布工具において、前記固定部は、前記第1ヘッド部材に固定され、前記第2方向に延びる固定バーと、前記固定バーに前記第2方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、複数の前記調整機構の各前記本体部を個別に支持する本体部支持部と、を有することが好ましい。
【0024】
この場合、簡素な構造によって、上述した固定部の作用効果を得ることができる。
【0025】
上記塗布工具において、前記固定バーと、複数の前記本体部支持部とが、単一の部材により一体に形成されることが好ましい。
【0026】
この場合、固定バーおよび複数の本体部支持部が、単一の部材により構成されるので、塗布工具の部品点数を少なく抑えることができ、組み立てが容易である。また、固定バーと複数の本体部支持部とが相対的に位置ずれすることがなく、塗布精度が良好に維持される。また、固定バーと複数の本体部支持部との位置合わせが不要であり、メンテナンス時などの作業性が向上する。
【0027】
上記塗布工具において、前記固定部が、1つのみ設けられることとしてもよい。
【0028】
この場合、塗布工具の部品点数が少なく抑えられる。
【0029】
上記塗布工具において、前記固定部が、前記第2方向に並んで複数設けられることとしてもよい。
【0030】
この場合、固定部が第2方向に長くなり過ぎることが抑えられて、固定部の取り扱いが容易となり、塗布工具が組み立てやすい。
【0031】
上記塗布工具において、前記移動部は、前記第1ヘッド部材の前記第3方向を向く先端面と、前記第1ヘッド部材の前記第1方向を向く外側面との接続部に対して、前記第3方向の後端側に配置されることが好ましい。
【0032】
この場合、塗工部を観察する際に、移動部がより邪魔になりにくい。したがって、塗工部がより視認しやすい。
【0033】
上記塗布工具において、前記調整機構は、前記移動部を前記第3方向に移動させる操作部を有することが好ましい。
【0034】
この場合、操作部として例えばマイクロメータヘッドのダイヤル等を用い、オペレーターが操作部を手動により操作して、移動部を第3方向に適宜移動させることができる。つまり、操作部を操作することにより、スロット内へのチョークバーの突出量を適宜調整できる。
【0035】
上記塗布工具において、前記調整機構は、前記移動部を前記第3方向に駆動する駆動部を有することが好ましい。
【0036】
この場合、駆動部として例えば電動リニアアクチュエータのモータ等を用い、駆動部と電気的に接続された制御部等により駆動部を遠隔操作して、移動部を第3方向に適宜移動させることができる。つまり、遠隔操作により、スロット内へのチョークバーの突出量を適宜調整できる。
【0037】
上記塗布工具において、前記スロットから被塗布物に塗布された塗布液の膜厚を検出する塗布膜厚検出手段と、前記塗布膜厚検出手段の検出結果に基づいて、前記膜厚が所定範囲となるように、前記駆動部により前記移動部を前記第3方向に移動させる制御部と、を備えることが好ましい。
【0038】
この場合、被塗布物に塗布される塗布液の膜厚が自動的に所定範囲に収められ、塗布精度が安定して高められる。
【0039】
また本発明の一つの態様は、上述の塗布工具を用いて被塗布物に塗布液を塗布する塗布方法であって、前記調整機構は、前記第2方向に並んで複数設けられ、前記塗布膜厚検出手段により、前記第2方向の複数の位置のデータ、および、前記複数の位置における各前記膜厚のデータを継続的に取得し、前記位置のデータおよび前記膜厚のデータをネットワークを介して外部サーバに収集し、前記膜厚のデータと予め設定された基準の膜厚のデータとの差の値を算出し、前記差の値と予め設定された閾値とを比較し、前記差の値が前記閾値を超えた場合には、前記第2方向において前記閾値を超えた位置に最も近い前記調整機構の前記移動部を前記駆動部で前記第3方向に駆動して、前記差の値が前記閾値以下となるように前記スロット内への前記チョークバーの突出量を調整する。
【0040】
本発明の塗布方法によれば、被塗布物に塗布される塗布液の膜厚が第2方向の各位置において自動的に均等化され、塗布精度が安定して高められる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一つの態様の塗布工具および塗布方法によれば、設置スペースを小さく抑えることができ、塗工中でもチョークバーの位置を調整しやすく、塗工部を視認しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の第1実施形態の塗布工具を示す上面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の塗布工具を示す側面図である。
【
図3】
図1のIII-III断面を示す断面図である。
【
図4】塗布工具の要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】塗布工具の要部を拡大して示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の塗布工具を示す上面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の塗布工具を示す側面図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII断面を示す断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態の塗布工具を示す上面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態の塗布工具の一部を示す側面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態の塗布工具を示す背面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態の塗布工具を示す上面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態の塗布工具の一部を示す側面図である。
【
図14】本発明の第4実施形態の塗布工具を示す背面図である。
【
図15】本発明の第5実施形態の塗布工具を示す上面図である。
【
図17】塗布工具の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態の塗布工具10について、
図1~
図5を参照して説明する。
本実施形態の塗布工具10は、例えば、フィルムや金属箔などの被塗布物の表面に塗布液を塗布する、いわゆるROLL TO ROLL方式のスロットダイである。
【0044】
図1~
図5に示すように、本実施形態の塗布工具10は、第1ヘッド部材1と、第2ヘッド部材2と、シム部材(不図示)と、位置決めブロック3と、マニホールド4と、スロット5と、チョークバー6と、調整機構7と、カバー8と、を備える。
第1ヘッド部材1および第2ヘッド部材2は、それぞれ、略長方形板状または略直方体状である。第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2とは、互いの内側面同士を対向させた状態で、隣接して配置される。
【0045】
〔本実施形態で用いる方向の定義〕
本実施形態では、第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2とが対向する方向を、第1方向と呼ぶ。第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2とは、第1方向に互いに隣接配置される。本実施形態において第1方向は、鉛直方向である。第1方向は、上下方向と言い換えてもよい。各図において、第1方向は、Z軸方向である。第1方向のうち、第2ヘッド部材2から第1ヘッド部材1へ向かう方向(第1方向一方側)を上側(+Z側)と呼び、第1ヘッド部材1から第2ヘッド部材2へ向かう方向(第1方向他方側)を下側(-Z側)と呼ぶ。
【0046】
第1方向と直交する方向のうち、第1ヘッド部材1および第2ヘッド部材2が延在する方向を、第2方向と呼ぶ。つまり第1ヘッド部材1および第2ヘッド部材2は、第2方向に延びる。本実施形態において第2方向は、水平方向である。第2方向は、左右方向と言い換えてもよい。各図において、第2方向は、X軸方向である。後述する調整機構7の操作部22を操作するオペレーターから見て、第2方向一方側を右側(+X側)と呼び、第2方向他方側を左側(-X側)と呼ぶ。
【0047】
第1方向および第2方向と直交する方向を、第3方向と呼ぶ。本実施形態において第3方向は、水平方向である。第3方向は、前後方向と言い換えてもよい。各図において、第3方向は、Y軸方向である。第3方向のうち、第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2との間からスロット5が不図示の被塗布物に向けて開口する方向(第3方向一方側)を先端側(+Y側)と呼び、これとは反対の方向(第3方向他方側)を後端側(-Y側)と呼ぶ。
【0048】
〔第1ヘッド部材〕
第1ヘッド部材1は、例えばステンレス製である。
第1ヘッド部材1は、内側面1aと、外側面1bと、先端面1cと、後端面1dと、左側面1eと、右側面1fと、第1凹部11と、第2凹部12と、シャフト孔13と、押え板14と、第1塗布液供給路(不図示)と、を有する。
【0049】
内側面1aは、第1ヘッド部材1の外面のうち、第2ヘッド部材2に対向する面である。内側面1aは、第1ヘッド部材1において第1方向を向く面であり、下側を向く。内側面1aは、第1方向に垂直な平坦面状である。
【0050】
外側面1bは、第1ヘッド部材1の外面のうち、第2ヘッド部材2とは反対方向を向く面である。外側面1bは、第1ヘッド部材1において第1方向を向く面であり、上側を向く。外側面1bは、第1方向に垂直な平坦面状である。
【0051】
先端面1cは、第1ヘッド部材1の外面のうち、第3方向を向く面であり、先端側を向く。先端面1cは、第1方向に向かうに従い第3方向に向けて傾斜して延びる。具体的に、先端面1cは、下側に向かうに従い先端側に向けて傾斜する。図示の例では、先端面1cのうち、下端部における第1方向に沿う単位長さあたりの第3方向への変位量(つまり鉛直方向に対する傾き)が、下端部以外の部分における前記変位量よりも大きい。
【0052】
後端面1dは、第1ヘッド部材1の外面のうち、第3方向を向く面であり、後端側を向く。後端面1dは、第3方向に垂直な平坦面状である。
左側面1eは、第1ヘッド部材1の外面のうち、第2方向を向く面であり、左側を向く。左側面1eは、第2方向に垂直な平坦面状である。
右側面1fは、第1ヘッド部材1の外面のうち、第2方向を向く面であり、右側を向く。右側面1fは、第2方向に垂直な平坦面状である。
【0053】
第1凹部11は、内側面1aから第1方向に窪み第2方向に延びる溝状である。第1凹部11は、内側面1aから上側に窪む。図示の例では、第1凹部11の第1方向の長さが、第1凹部11の第3方向の長さよりも長い。第1凹部11の第2方向の長さは、第1ヘッド部材1の第2方向の全長よりも短い。第1凹部11は、第1ヘッド部材1の左側面1eおよび右側面1fには開口しない。
【0054】
第2凹部12は、外側面1bから第1方向に窪み第2方向に延びる溝状である。第2凹部12は、外側面1bから下側に窪む。図示の例では、第2凹部12の第1方向の長さが、第2凹部12の第3方向の長さよりも短い。第2凹部12は、第1ヘッド部材1の左側面1eおよび右側面1fに開口する。
本実施形態では、第1凹部11の溝幅(第3方向の長さ)が、第2凹部12の溝幅よりも小さい。
【0055】
シャフト孔13は、第1ヘッド部材1に複数設けられる。複数のシャフト孔13は、第2方向に互いに間隔をあけて配列する。
シャフト孔13は、第1ヘッド部材1の内部を第1方向に延びる。シャフト孔13の第1方向の両端部は、第1凹部11と第2凹部12とに開口する。シャフト孔13の下端部は、第1凹部11内に開口する。シャフト孔13の上端部は、第2凹部12内に開口する。つまり、第1凹部11、第2凹部12およびシャフト孔13は、互いに連通する。
シャフト孔13は、小径部13aと、大径部13bと、座金13cと、を有する。
【0056】
小径部13aは、シャフト孔13のうち下側部分に位置する。小径部13aは、上下方向に延びる円孔状である。小径部13aの下端部は、第1凹部11の溝底に開口する。
大径部13bは、シャフト孔13のうち上側部分に位置する。大径部13bは、上下方向に延びる円孔状である。大径部13bの上端部は、第2凹部12の溝底に開口する。大径部13bの下端部は、小径部13aの上端部と繋がる。大径部13bの内径は、小径部13aの内径よりも大きい。
座金13cは、大径部13bの底面に配置される。座金13cは、一対の板面が第1方向を向く円形リング板状である。図示の例では、座金13cが、第1方向に積層して複数設けられる。
【0057】
押え板14は、一対の板面が第1方向を向く板状である。押え板14は、第2方向に延びる。押え板14は、第2凹部12の底部に配置される。押え板14の一対の板面(上面および下面)のうち、下面は、第2凹部12の底面と接触する。押え板14の第2方向の長さは、第2凹部12の第2方向の長さよりも短い。押え板14は、複数のボルト23により第2凹部12の底部に固定される。
押え板14は、押え板14を第1方向に貫通する貫通孔14aを有する。貫通孔14aは、例えば円孔である。貫通孔14aは、押え板14に複数設けられる。複数の貫通孔14aは、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0058】
第1塗布液供給路(不図示)は、第1ヘッド部材1の内部を延び、後述するマニホールド4に開口する。第1塗布液供給路は、第1ヘッド部材1の内側面1aと、例えば外側面1bとに開口する。第1塗布液供給路は、例えば、第1ヘッド部材1に2つ設けられ、マニホールド4の第2方向の両端部に開口する。特に図示しないが、第1塗布液供給路は、塗布工具10の外部に設けられるポンプ等を介して、塗布液タンクと接続される。
【0059】
〔第2ヘッド部材〕
第2ヘッド部材2は、例えばステンレス製である。第2ヘッド部材2は、不図示のボルト等により、第1ヘッド部材1と固定される。
第2ヘッド部材2は、内側面2aと、外側面2bと、先端面2cと、後端面2dと、左側面2eと、右側面2fと、第2塗布液供給路2gと、を有する。
【0060】
内側面2aは、第2ヘッド部材2の外面のうち、第1ヘッド部材1に対向する面である。内側面2aは、第2ヘッド部材2において第1方向を向く面であり、上側を向く。内側面2aは、第1方向に垂直な平坦面状である。
【0061】
外側面2bは、第2ヘッド部材2の外面のうち、第1ヘッド部材1とは反対方向を向く面である。外側面2bは、第2ヘッド部材2において第1方向を向く面であり、下側を向く。外側面2bは、第1方向に垂直な平坦面状である。
【0062】
先端面2cは、第2ヘッド部材2の外面のうち、第3方向を向く面であり、先端側を向く。先端面2cは、第1方向に向かうに従い第3方向に向けて傾斜して延びる。具体的に、先端面2cは、上側に向かうに従い先端側に向けて傾斜する。図示の例では、先端面2cのうち、上端部における第1方向に沿う単位長さあたりの第3方向への変位量(つまり鉛直方向に対する傾き)が、上端部以外の部分における前記変位量よりも大きい。
【0063】
後端面2dは、第2ヘッド部材2の外面のうち、第3方向を向く面であり、後端側を向く。後端面2dは、第3方向に垂直な平坦面状である。
左側面2eは、第2ヘッド部材2の外面のうち、第2方向を向く面であり、左側を向く。左側面2eは、第2方向に垂直な平坦面状である。
右側面2fは、第2ヘッド部材2の外面のうち、第2方向を向く面であり、右側を向く。右側面2fは、第2方向に垂直な平坦面状である。
【0064】
第2塗布液供給路2gは、第2ヘッド部材2の内部を延び、後述するマニホールド4に開口する。第2塗布液供給路2gは、マニホールド4の内周面と、第2ヘッド部材2の後端面2dとに開口する。第2塗布液供給路2gは、例えば、第2ヘッド部材2に1つ設けられ、マニホールド4の第2方向の中央部に開口する。特に図示しないが、第2塗布液供給路2gは、塗布工具10の外部に設けられるポンプ等を介して、塗布液タンクと接続される。
【0065】
〔シム部材〕
シム部材は、例えば樹脂製である。
特に図示しないが、シム部材は、一対の板面が第1方向を向く板状である。シム部材の板厚は、例えば数百μmである。シム部材の板厚寸法は、後述するスロット5の第1方向の開口寸法と等しい。
シム部材は、第1方向から見て、略コ字状つまり略U字状であり、先端側に向けて開口する凹所を有する。シム部材の凹所の第2方向の寸法は、スロット5の第2方向の開口寸法(開口幅)と等しく、塗布工具10が被塗布物に塗布液を塗布する際の「塗布幅」と略同じである。
【0066】
特に図示しないが、シム部材は、マニホールド4およびスロット5の第2方向の両側に位置する一対の第1部分と、マニホールド4の後端側に位置する第2部分と、を有する。
一対の第1部分は、シム部材の第2方向の両端部に位置する。一対の第1部分は、シム部材の凹所の第2方向の両側に配置される。第1部分は、第3方向に延びる。
第2部分は、シム部材の後端部に位置する。第2部分は、シム部材の凹所の後端側に配置される。第2部分は、第2方向に延びる。
【0067】
〔位置決めブロック〕
位置決めブロック3は、特に第3方向において、第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2とを位置決めする。位置決めブロック3は、第1ヘッド部材1の先端部と、第2ヘッド部材2の先端部とを位置決めする。位置決めブロック3は、一対の板面が第3方向を向く板状であり、図示の例では長方形板状である。位置決めブロック3は、第1方向に延びる。
【0068】
位置決めブロック3の一対の板面のうち、前面は、第1ヘッド部材1の後端面1dおよび第2ヘッド部材2の後端面2dと接触する。位置決めブロック3は、不図示のボルト等により、第1ヘッド部材1および第2ヘッド部材2と固定される。
位置決めブロック3は、複数設けられる。複数の位置決めブロック3は、互いに第2方向に間隔をあけて配置される。
【0069】
〔マニホールド〕
マニホールド4は、第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2との間に設けられる。マニホールド4は、第1ヘッド部材1と第2ヘッド部材2との間に位置する空間(室)であり、内部に塗布液を一時的に保持する。マニホールド4には、第1塗布液供給路(不図示)および第2塗布液供給路2gから塗布液が流入し、この塗布液はマニホールド4内に一時的に保持されて、スロット5へ流出する。つまりマニホールド4の内部には、塗布液が流通する。
【0070】
本実施形態では、マニホールド4が、第2ヘッド部材2の内側面2aから第1方向に窪み第2方向に延びる溝状である。マニホールド4は、内側面2aから下側に窪む。マニホールド4の第2方向の長さは、第2ヘッド部材2の第2方向の全長よりも短い。マニホールド4は、第2ヘッド部材2の左側面2eおよび右側面2fには開口しない。
図3に示すように、マニホールド4は、第2方向に垂直な断面視で略半円形状である。
【0071】
〔スロット〕
スロット5は、第1方向に互いに対向する第1ヘッド部材1の内側面1aと第2ヘッド部材2の内側面2aとの間に設けられる。スロット5は、内部に塗布液が流通する。スロット5は、第3方向において第1ヘッド部材1の先端部(刃先部)と第2ヘッド部材2の先端部(刃先部)との間から外部に開口する。スロット5の先端部(開口部)は、第1方向において第1ヘッド部材1の先端部と第2ヘッド部材2の先端部との間に配置され、被塗布物へ向けて先端側に開口する。スロット5の後端部は、マニホールド4と連通する。スロット5の第2方向の両端部は、上述したシム部材の一対の第1部分により画成される。
【0072】
〔チョークバー〕
チョークバー6は、例えばステンレス製である。チョークバー6は、第1ヘッド部材1内を第2方向に延び、第1方向からスロット5の内部に突出可能である。チョークバー6は、スロット5のうち、第3方向においてマニホールド4とスロット5の先端部(開口部)との間に位置する部分に突出する。図示の例では、チョークバー6が、スロット5のうち、マニホールド4と接続する後端部近傍においてスロット5内に突出可能である。チョークバー6は、マニホールド4からスロット5の先端部へ向けてスロット5内を流れる塗布液の流量を調整する。
【0073】
チョークバー6は、第2方向に延びる角棒状であり、本実施形態では1つ設けられる。チョークバー6の第2方向の長さは、第1ヘッド部材1の第2方向の全長よりも短い。チョークバー6の第2方向の長さは、マニホールド4の第2方向の長さおよびスロット5の第2方向の長さと、略同じである。チョークバー6は、第1ヘッド部材1の第1凹部11内に収容される。チョークバー6は、第1方向において、第2ヘッド部材2の内側面2aと隙間をあけて対向する。
【0074】
チョークバー6は、第1凹部11内を第1方向に摺動する。
図4に示す状態では、チョークバー6の下面が、第1方向において第1ヘッド部材1の内側面1aと同じ位置に配置される。つまりチョークバー6の下面と、第1ヘッド部材1の内側面1aとが、互いに面一である。
図5に示す状態では、チョークバー6の下面が、第1ヘッド部材1の内側面1aよりも下側に突出する。チョークバー6が第1ヘッド部材1内を第1方向に移動することにより、スロット5内へのチョークバー6の突出量が変化し、スロット5の第1方向の内寸が変化する。
【0075】
〔調整機構〕
調整機構7は、第1ヘッド部材1に対してチョークバー6を第1方向に移動させる。調整機構7は、スロット5内へのチョークバー6の突出量を調整する。
図1に示すように、調整機構7は、第2方向に並んで複数設けられる。
図1~
図5に示すように、調整機構7は、シャフト15と、シール部16と、本体部17と、移動部18と、カム部19と、付勢部21と、操作部22と、を有する。
【0076】
シャフト15は、例えばステンレス製である。シャフト15は、第1ヘッド部材1内を第1方向に延び、チョークバー6と固定される。シャフト15は、各調整機構7に1つ設けられる。調整機構7が塗布工具10に複数設けられることにより、シャフト15も塗布工具10に複数設けられる。複数のシャフト15は、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。シャフト15は、第1ヘッド部材1のシャフト孔13内に挿入される。シャフト15は、第1ヘッド部材1に対して、シャフト孔13内を第1方向に移動可能である。
【0077】
本実施形態では、シャフト15が略円柱状である。シャフト15の第1方向の長さは、シャフト孔13の第1方向の長さよりも長い。シャフト15の下端面は、チョークバー6の上面と接触する。図示の例では、シャフト15の下端部が、チョークバー6とネジにより固定される。シャフト15の下端部は、シャフト孔13から第1凹部11内に突出する。シャフト15の上端部は、シャフト孔13から第2凹部12内に突出する。シャフト15の上端部は、押え板14の貫通孔14aに挿入されて、押え板14よりも上側に突出する。図示の例では、シャフト15の上端部が、第1ヘッド部材1の外側面1bよりも上側に突出する。
図4に示すように、シャフト15は、シール溝15aと、鍔部15bと、ローラー支持部15cと、を有する。
【0078】
シール溝15aは、シャフト15の外周面からシャフト15の径方向内側に窪み、シャフト15の中心軸回りに沿ってシャフト15の外周面の全周にわたって延びる環状である。シール溝15aは、シャフト15の下側部分に配置される。シール溝15aは、シャフト15の径方向において、シャフト孔13の小径部13aの内周面と対向する。図示の例では、シール溝15aが、シャフト15の外周面に第1方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
【0079】
鍔部15bは、シャフト15の外周面からシャフト15の径方向外側に突出し、シャフト15の中心軸回りに沿ってシャフト15の外周面の全周にわたって延びる環状である。鍔部15bは、一対の板面が第1方向を向く円形リング板状である。鍔部15bは、シャフト15の上側部分に配置される。鍔部15bは、シャフト15の径方向において、シャフト孔13の大径部13bの内周面と対向する。鍔部15bは、シャフト15において最も外径が大きい。鍔部15bの上面は、押え板14の下面と離間可能に接触する。
【0080】
ローラー支持部15cは、シャフト15の上端部に配置される。ローラー支持部15cは、第3方向から見て、略コ字状つまり略U字状であり、上側に向けて開口する凹部を有する。ローラー支持部15cの凹部には、後述するカム部19のローラー(接触部)19bが配置される。ローラー支持部15cは、ローラー19bを回転自在に支持する。
【0081】
シール部16は、例えばゴム等の弾性材料により形成される。シール部16は、環状であり、シャフト15の中心軸回りに沿って延びる。シール部16は、例えばOリング等である。シール部16は、1つのシャフト15に複数設けられる。複数のシール部16は、第1方向に互いに間隔をあけて配置される。シール部16は、シール溝15a内に配置される。
【0082】
シール部16の内周部は、シール溝15aの溝底と接触する。シール部16の第1方向の両端部のうち少なくとも一方は、シール溝15aの溝壁と接触する。シール部16の外周部は、シャフト孔13の小径部13aの内周面と接触する。シール部16は、小径部13aの内周面に対して第1方向に摺動する。
【0083】
本実施形態において、本体部17の一部、移動部18の一部および操作部22は、例えばマイクロメータヘッド等を構成する部材である。
本体部17は、第1ヘッド部材1に不図示のボルト等により固定される。本体部17は、第1ヘッド部材1の外側面1bに設けられる。本体部17は、外側面1b上において第2凹部12の後端側に配置される。本体部17は、移動部18を第3方向に移動可能に支持する。
本体部17は、マイクロメータヘッド本体17aと、取付け金具17bと、を有する。
【0084】
マイクロメータヘッド本体17aは、第3方向に延びる筒状または柱状である。マイクロメータヘッド本体17aは、取付け金具17bと固定される。
取付け金具17bは、マイクロメータヘッド本体17aを支持し、不図示のボルト等により第1ヘッド部材1の外側面1bと固定される。
【0085】
移動部18は、第1ヘッド部材1に対して第3方向に移動可能である。移動部18は、第3方向に移動可能に本体部17に支持される。
図3に示すように、移動部18は、第1ヘッド部材1の先端面1cと、第1ヘッド部材1の外側面1bとの接続部1gに対して、第3方向の後端側に配置される。接続部1gは、第1ヘッド部材1において先端面1cと外側面1bとが接続する角部である。
図4に示すように、移動部18は、マイクロメータヘッド軸18aと、押圧ブロック18bと、を有する。
【0086】
マイクロメータヘッド軸18aは、第3方向に延びる軸状である。マイクロメータヘッド軸18aは、マイクロメータヘッド本体17aから先端側に向けて突出する。マイクロメータヘッド軸18aは、第3方向に移動可能にマイクロメータヘッド本体17aに支持される。
【0087】
押圧ブロック18bは、略直方体状である。押圧ブロック18bは、マイクロメータヘッド軸18aと固定される。押圧ブロック18bは、マイクロメータヘッド軸18aの先端部と接続され、マイクロメータヘッド軸18aの先端側に位置する。押圧ブロック18bは、第1方向から見て、シャフト15およびチョークバー6と重なって配置される。
【0088】
カム部19は、移動部18の第3方向への移動量を、シャフト15の第1方向への移動量に変換する。具体的に、カム部19は、移動部18の第3方向への移動量を、この移動量よりも小さな値のシャフト15の第1方向への移動量に変換する。
カム部19は、傾斜面19aと、接触部19bと、を有する。
【0089】
傾斜面19aは、移動部18に配置され、第3方向に向かうに従い第1方向に向けて延びる。傾斜面19aは、押圧ブロック18bの第1方向を向く面に配置される。本実施形態では、傾斜面19aが、押圧ブロック18bの下面に配置される。傾斜面19aは、先端側に向かうに従い上側に向けて延びる。傾斜面19aは、第3方向に沿う単位長さあたりの第1方向へ向けた変位量(つまり水平方向に対する傾き)が、傾斜面19aの第3方向の全長にわたって一定である。傾斜面19aは、第3方向に対して傾斜する平坦面状である。
【0090】
接触部19bは、シャフト15に設けられ、傾斜面19aに第1方向から接触する。接触部19bは、シャフト15の上端部に設けられる。本実施形態では、接触部19bが、傾斜面19a上を転動可能なローラーである。接触部19bは、ローラー支持部15cに回転自在に支持され、傾斜面19aに対して下側から接触する。接触部19bの回転中心軸は、第2方向に延びる。接触部19bは、傾斜面19a上を第3方向に転動しつつ、第1方向に移動する。
【0091】
付勢部21は、例えば圧縮コイルバネ等の弾性部材である。付勢部21は、第1方向に延びる円筒状であり、内部にシャフト15が挿入される。付勢部21は、シャフト孔13の大径部13b内に配置されて、第1方向に伸縮する。付勢部21の上端部は、鍔部15bの下面と接触する。付勢部21の下端部は、座金13cの上面と接触する。
付勢部21は、第1方向においてシャフト15を移動部18およびカム部19のいずれかに向けて付勢する。本実施形態では付勢部21が、第1方向においてシャフト15を、移動部18の押圧ブロック18bおよびカム部19の傾斜面19aに向けて付勢する。具体的に付勢部21は、シャフト15を押圧ブロック18bおよび傾斜面19aに向けて、上側に付勢する。すなわち本実施形態では、付勢部21が、第1方向においてシャフト15を移動部18およびカム部19に向けて付勢する。
【0092】
図1~
図3に示すように、操作部22は、マイクロメータヘッド本体17aの後端部に配置される。本実施形態では、操作部22が、第1ヘッド部材1の後端面1dよりも後端側に位置する。操作部22は、マイクロメータヘッド本体17aに対して、第3方向に延びる不図示のマイクロメータヘッド中心軸回りに回動される。操作部22は、例えばマイクロメータヘッドのダイヤル等である。
【0093】
操作部22が、マイクロメータヘッド本体17aに対してマイクロメータヘッド中心軸回りに回動されることにより、マイクロメータヘッド本体17aに対してマイクロメータヘッド軸18aが、第3方向に移動する。つまり操作部22は、本体部17および第1ヘッド部材1に対して、移動部18を第3方向に移動させる。マイクロメータヘッド本体17aに対して操作部22がマイクロメータヘッド中心軸回りの一方側に回転させられたときに、移動部18は第3方向の先端側に移動する。マイクロメータヘッド本体17aに対して操作部22がマイクロメータヘッド中心軸回りの他方側に回転させられたときに、移動部18は第3方向の後端側に移動する。
【0094】
〔カバー〕
図2に示すように、カバー8は、第1ヘッド部材1に着脱可能に装着される。カバー8は、塗工中であっても第1ヘッド部材1から取り外し可能であることが好ましい。カバー8は、例えば有頂の箱状等である。カバー8は、調整機構7の移動部18、カム部19、シャフト15の上端部および第2凹部12等を、第1方向の上側、第2方向の両側および第3方向の両側から覆う。
【0095】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具10では、
図4および
図5に示すように、調整機構7の移動部18を第3方向に移動させると、カム部19によってシャフト15が第1方向に移動させられる。これにより、シャフト15とともにチョークバー6が第1方向に移動させられて、チョークバー6のスロット5内への突出量が調整される。
本実施形態によれば、調整機構7が第1ヘッド部材1から第1方向に大きく出っ張ることを抑えられる。これにより、第1方向において塗布工具10の設置スペースを小さく抑えることができ、塗布工具10を設置しやすい。また、塗工中に操作するなどにより移動部18を移動させて、チョークバー6の位置を調整することが容易である。また、被塗布物の塗布液が塗布される部分(塗工部)を、塗工中でも観察しやすい。具体的には、例えば、塗布開始時に塗工状態を確認したり、塗工条件を調整したい場合などにおいて、オペレーターが調整機構7の上側のスペースを通して、塗工部を視認しやすい。
【0096】
また本実施形態では、カム部19が、移動部18の第3方向への移動量を、この移動量よりも小さな値のシャフト15の第1方向への移動量に変換する。
この場合、カム部19によって、移動部18の第3方向への移動量よりもシャフト15の第1方向への移動量が小さく抑えられるので、チョークバー6のスロット5内への突出量を微調整しやすい。
【0097】
また本実施形態では、カム部19が傾斜面19aと接触部19bとを有しており、移動部18が第3方向に移動したときに、傾斜面19aにより接触部19bが第1方向に押され、接触部19bとともにシャフト15が第1方向に移動させられる。上記構成によれば、シャフト15の第1方向への移動量をより小さくして、チョークバー6の位置を微調整可能である。具体的には、例えばミクロンオーダー(数μm単位)のチョークバー6の位置調整を行うことが可能である。
【0098】
また本実施形態では、接触部19bが、傾斜面19a上を転動可能なローラーであるので、接触部19bと傾斜面19aとの摩擦抵抗が低減され、カム部19の機能が安定する。
【0099】
また本実施形態では、付勢部21によって、シャフト15が移動部18およびカム部19のいずれかに向け付勢された状態が維持されるので、移動部18が第3方向のいずれの向きに移動しても、カム部19が安定して機能し、シャフト15が第1方向のいずれの向きにも安定して移動させられる。つまり、移動部18を移動させることで、チョークバー6をスロット5内に前進させることも、スロット5内から後退させることもできる。このため、チョークバー6の位置調整が行いやすい。また、付勢部21の付勢力により、傾斜面19aと接触部19bとの接触状態が良好に維持されるので、カム部19のがたつき(バックラッシュ)が抑えられ、カム部19の機能がより安定する。
【0100】
また本実施形態では、調整機構7が、第2方向に並んで複数設けられる。
この場合、複数の調整機構7によって、第2方向の各位置でチョークバー6のスロット5内への突出量を調整できる。したがって、被塗布物に塗布される塗布液の膜厚を、スロット5の第2方向の各位置で調整できる。
【0101】
また本実施形態では、移動部18が、第1ヘッド部材1の先端面1cと外側面1bとの接続部分に位置する接続部1gに対して、後端側に配置される。
この場合、オペレーターが塗工部を観察する際に、移動部18がより邪魔になりにくい。したがって、塗工部がより視認しやすい。
【0102】
また本実施形態では、調整機構7が、移動部18を第3方向に移動させる操作部22を有する。
この場合、操作部22として例えばマイクロメータヘッドのダイヤル等を用い、オペレーターが操作部22を手動により操作して、移動部18を第3方向に適宜移動させることができる。つまり、操作部22を操作することにより、スロット5内へのチョークバー6の突出量を適宜調整できる。
【0103】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の塗布工具20、およびこれを用いて被塗布物に塗布液を塗布する塗布方法について、
図6~
図8を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0104】
本実施形態の塗布工具20は、前述の塗布工具10が備える第1ヘッド部材1、第2ヘッド部材2、シム部材(不図示)、位置決めブロック3、マニホールド4、スロット5、チョークバー6、調整機構7およびカバー8以外に、さらに、塗布膜厚検出手段(不図示)と、制御部(不図示)と、を備える。
また塗布工具20は、前述の実施形態で説明した塗布工具10とは、調整機構7の構成が異なる。
【0105】
〔調整機構〕
図6~
図8に示すように、本実施形態の調整機構7は、シャフト15と、シール部16と、本体部17と、移動部18と、カム部19と、付勢部21と、駆動部24と、を有する。
本実施形態において、本体部17の一部、移動部18の一部および駆動部24は、例えば電動アクチュエータ等を構成する部材である。
【0106】
本体部17は、アクチュエータ本体17cと、取付け金具17bと、を有する。
アクチュエータ本体17cは、第3方向に延びる筒状または柱状である。アクチュエータ本体17cは、取付け金具17bと固定される。
取付け金具17bは、アクチュエータ本体17cを支持し、不図示のボルト等により第1ヘッド部材1の外側面1bと固定される。
【0107】
移動部18は、アクチュエータ軸18cと、押圧ブロック18bと、を有する。
アクチュエータ軸18cは、第3方向に延びる軸状である。アクチュエータ軸18cは、アクチュエータ本体17cから先端側に向けて突出する。アクチュエータ軸18cは、第3方向に移動可能にアクチュエータ本体17cに支持される。
押圧ブロック18bは、アクチュエータ軸18cと固定される。押圧ブロック18bは、アクチュエータ軸18cの先端部と接続され、アクチュエータ軸18cの先端側に位置する。
【0108】
駆動部24は、アクチュエータ本体17cの内部に配置される。駆動部24は、例えばサーボモータ等の直動モータである。駆動部24は、本体部17および第1ヘッド部材1に対して、移動部18を第3方向に駆動する。駆動部24は、移動部18を第3方向の先端側および後端側に駆動させることが可能である。
【0109】
〔塗布膜厚検出手段〕
特に図示しないが、塗布膜厚検出手段は、スロット5から被塗布物に塗布された塗布液の膜厚を検出する。塗布膜厚検出手段は、塗布液が塗布された被塗布物に対して非接触に、被塗布物上の塗布液の第2方向の各位置(複数の位置)での膜厚を検出する。
【0110】
〔制御部〕
特に図示しないが、制御部は、駆動部24と電気的に接続される。制御部は、例えば制御基板等である。制御部と駆動部24とは、配線を介して(つまり有線で)電気的に接続されてもよく、無線により電気的に接続されてもよい。
制御部は、塗布膜厚検出手段の検出結果に基づいて、被塗布物に塗布された塗布液の膜厚が所定範囲となるように、駆動部24により移動部18を第3方向に移動させる。
【0111】
〔塗布方法〕
次に、本実施形態の塗布工具20を用いて被塗布物に塗布液を塗布する塗布方法について説明する。なお、本実施形態の塗布工具20においても、調整機構7は、第2方向に並んで複数設けられている。
本実施形態の塗布方法は、塗布膜厚検出手段により、第2方向の複数の位置のデータ、および、複数の位置における各膜厚のデータを継続的に取得し、位置のデータおよび膜厚のデータをネットワークを介して外部サーバに収集し、膜厚のデータと予め設定された基準の膜厚のデータとの差の値を算出し、差の値と予め設定された閾値とを比較し、差の値が閾値を超えた場合には、第2方向において閾値を超えた位置に最も近い調整機構7の移動部18を駆動部24で第3方向に駆動して、差の値が閾値以下となるようにスロット5内へのチョークバー6の突出量を調整する。
【0112】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具20によれば、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0113】
また本実施形態では、調整機構7が、移動部18を第3方向に駆動する駆動部24を有する。
この場合、駆動部24として例えば電動リニアアクチュエータのモータ等を用い、駆動部24と電気的に接続された制御部等により駆動部24を遠隔操作して、移動部18を第3方向に適宜移動させることができる。つまり、遠隔操作により、スロット5内へのチョークバー6の突出量を適宜調整できる。
【0114】
また、本実施形態の塗布工具20は、塗布膜厚検出手段および制御部を備えるので、被塗布物に塗布される塗布液の膜厚が自動的に所定範囲に収められ、塗布精度が安定して高められる。
【0115】
また、本実施形態の塗布工具20を用いた塗布方法によれば、被塗布物に塗布される塗布液の膜厚が第2方向の各位置において自動的に均等化され、塗布精度が安定して高められる。
【0116】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の塗布工具30について、
図9~
図11を参照して説明する。第3実施形態の塗布工具30は、第1実施形態で説明した塗布工具10と構成が一部異なっている。なお、本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0117】
図9~
図11に示すように、本実施形態の塗布工具30は、第1実施形態の塗布工具10が備える第1ヘッド部材1、第2ヘッド部材2、シム部材(不図示)、位置決めブロック3、マニホールド4、スロット5、チョークバー6、調整機構7およびカバー8(不図示)以外に、さらに、固定部25を備える。
また塗布工具30は、第1実施形態で説明した塗布工具10と調整機構7の構成が一部異なる。本実施形態の調整機構7は、取付け金具17bを有しておらず、塗布工具30は、取付け金具17bの代わりに固定部25を備える。
【0118】
〔固定部〕
固定部25は、調整機構7を第1ヘッド部材1に固定する。固定部25は、第1ヘッド部材1の外側面1bに設けられ、第2方向に延びる。固定部25は、複数の調整機構7の各本体部17を支持する。具体的に、本実施形態において固定部25は、各調整機構7のマイクロメータヘッド本体17aを、第1ヘッド部材1に固定する。本実施形態では固定部25が、1つのみ設けられる。
固定部25は、固定バー25aと、本体部支持部25bと、固定ネジ25cと、クランプネジ25dと、を有する。
【0119】
固定バー25aは、第1ヘッド部材1に固定され、第2方向に延びる。固定バー25aは、第2方向に延びる長方形板状である。固定バー25aの一対の板面(上面および下面)は、第1方向を向く。固定バー25aの下面は、第1ヘッド部材1の外側面1bと接触する。本実施形態では固定バー25aが、外側面1bのうち第2凹部12よりも後端側に位置する。固定バー25aは、複数の固定ネジ25cにより、第1ヘッド部材1に固定される。複数の固定ネジ25cは、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。固定バー25aの第2方向の長さは、マニホールド4の第2方向の長さよりも小さく、スロット5の第2方向の開口寸法(開口幅)よりも小さい。
【0120】
本体部支持部25bは、固定バー25aに第2方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、複数の調整機構7の各本体部17を個別に支持する。本体部支持部25bは、固定バー25aの上面に設けられる。本体部支持部25bは、固定バー25aの上面から上側に突出する。本実施形態では、固定バー25aと、複数の本体部支持部25bとが、単一の部材により一体に形成される。
【0121】
図11に示すように塗布工具30を後端側から見た背面視で、本体部支持部25bは、略C字状である。本体部支持部25bは、挿入孔と、スリットと、を有する。挿入孔は、本体部支持部25bを第3方向に貫通する。本実施形態では挿入孔が、円孔である。挿入孔の内部には、本体部17が挿入される。挿入孔の内部には、本体部17の先端部が配置される。スリットは、本体部支持部25bの第2方向を向く側面(本実施形態では右側面)と挿入孔とに開口する。これにより本体部支持部25bは、挿入孔の内径を変化させるように弾性変形可能である。
【0122】
クランプネジ25dは、各本体部支持部25bにそれぞれ設けられる。クランプネジ25dは、本体部支持部25bのスリットの上側部分と下側部分とにわたって、第1方向に延びる。クランプネジ25dを締め込むことにより、本体部支持部25bは弾性変形し、挿入孔の内径が狭められる。これにより、本体部17は本体部支持部25bに固定される。また、クランプネジ25dを緩めることにより、本体部支持部25bは復元変形し、挿入孔の内径が元の大きさに戻される。これにより、本体部17が本体部支持部25bに固定された状態が解除される。
【0123】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具30によれば、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0124】
また本実施形態では、複数の調整機構7の各本体部17が固定部25により支持されて、複数の調整機構7と固定部25とがユニット化されている。このユニットを第1ヘッド部材1に固定することにより、塗布工具30を簡単に組み立てることができる。また、このユニットを塗布工具30から取り外したり交換したりすることが容易であり、メンテナンスにかかる時間を削減できる。したがって、メンテナンス等のために塗布工具30の稼働を停止させる時間を少なく抑えることができ、塗布効率(生産効率)が高められる。また、ユニット化された複数の調整機構7のゼロ点合わせ(位置合わせ)を簡単に行うことができ、チョークバー6のスロット5内への突出量を正確に管理することが可能になり、塗布精度が安定して高められる。
【0125】
また本実施形態では、固定部25が、固定バー25aと、複数の本体部支持部25bと、を有する。この場合、簡素な構造によって、上述した固定部25の作用効果を得ることができる。
【0126】
また本実施形態では、固定バー25aおよび複数の本体部支持部25bが、単一の部材により構成されるので、塗布工具30の部品点数を少なく抑えることができ、組み立てが容易である。また、固定バー25aと複数の本体部支持部25bとが相対的に位置ずれすることがなく、塗布精度が良好に維持される。また、固定バー25aと複数の本体部支持部25bとの位置合わせが不要であり、メンテナンス時などの作業性が向上する。
【0127】
また本実施形態では、固定部25が1つのみ設けられるので、塗布工具30の部品点数が少なく抑えられる。
【0128】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態の塗布工具40について、
図12~
図14を参照して説明する。第4実施形態の塗布工具40は、第2実施形態で説明した塗布工具20と構成が一部異なっている。なお、本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0129】
図12~
図14に示すように、本実施形態の塗布工具40は、第2実施形態の塗布工具20が備える第1ヘッド部材1、第2ヘッド部材2、シム部材(不図示)、位置決めブロック3、マニホールド4、スロット5、チョークバー6、調整機構7、カバー8(不図示)、塗布膜厚検出手段(不図示)および制御部(不図示)以外に、さらに、固定部25を備える。
また塗布工具40は、第2実施形態で説明した塗布工具20と調整機構7の構成が一部異なる。本実施形態の調整機構7は、取付け金具17bを有しておらず、塗布工具40は、取付け金具17bの代わりに固定部25を備える。
本実施形態において固定部25は、各調整機構7のアクチュエータ本体17cを、第1ヘッド部材1に固定する。
【0130】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具40によれば、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0131】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態の塗布工具50について、
図15~
図17を参照して説明する。第5実施形態の塗布工具50は、第4実施形態で説明した塗布工具40と構成が一部異なっている。なお、本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0132】
図15~
図17に示すように、本実施形態の塗布工具50は、第4実施形態の塗布工具40が備える第1ヘッド部材1、第2ヘッド部材2、シム部材(不図示)、位置決めブロック3、マニホールド4、スロット5、チョークバー6、調整機構7、カバー8(不図示)、塗布膜厚検出手段(不図示)、制御部(不図示)および固定部25を備える。なお
図15においては、位置決めブロック3の図示を省略している。
塗布工具50は、第4実施形態で説明した塗布工具40とは、固定部25の構成が一部異なり、また調整機構7の構成が一部異なる。
【0133】
〔固定部〕
本実施形態では、固定部25が、固定バー25aと、本体部支持部25bと、固定ネジ25cと、クランプネジ25dと、軸支部25eと、ボルト部材25fと、を有する。
【0134】
軸支部25eは、固定バー25aの第3方向の先端側の端部に接続される。軸支部25eは、ボルト部材25fにより固定バー25aと固定される。本実施形態ではボルト部材25fが、第1方向に延びる。軸支部25eは、固定バー25aの先端側を向く端面から、先端側へ突出する。軸支部25eの先端部は、第2凹部12の上側に位置する。すなわち、軸支部25eの先端部は、第1方向つまり上下方向から見て、第2凹部12と重なって配置される。軸支部25eの先端部は、第1方向から見て、第3方向の先端側へ向けて開口するU字状である。軸支部25eは、軸支部25eの先端部に配置される一対の腕部25gを有する。一対の腕部25gは、第2方向に互いに間隔をあけて配置される。軸支部25eのうち先端部以外の部分の下面は、第1ヘッド部材1の外側面1bに接触する。
軸支部25eは、第2方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。軸支部25eの数は、シャフト15の数と同じである。
【0135】
〔調整機構〕
本実施形態では、調整機構7のシャフト15が、ローラー支持部15cを有していない。また鍔部15bは、シャフト15と螺着されている。このため、シャフト15に対して鍔部15bをシャフト15の中心軸回りに回転させることにより、鍔部15bは、シャフト15に対して上下方向の位置を調整可能である。シャフト15のうち鍔部15bよりも上側に位置する部分つまり上端部は、第1方向に延びる略円柱状である。シャフト15の上端面は、第1方向に垂直な平坦面状である。
【0136】
本実施形態では、調整機構7の移動部18が、押圧ブロック18bを有していない。アクチュエータ軸18cの先端面は、第3方向に垂直な平坦面状である。
【0137】
本実施形態では、調整機構7のカム部19が、傾斜面19aおよびローラー(接触部)19bを有する代わりに、回動軸19cと、回動部材19dと、を有する。
回動軸19cは、第2方向に延びる軸状である。回動軸19cの両端部は、軸支部25eの一対の腕部25gに支持される。
【0138】
回動部材19dは、板状であり、一対の板面が第2方向を向く。回動部材19dは、一対の腕部25g間に位置して回動軸19cに取り付けられる部分を有する。回動部材19dは、回動軸19cの中心軸C回りに回動可能である。
回動部材19dは、第1接触部19eと、第2接触部19fと、を有する。
【0139】
第1接触部19eは、回動部材19dの外面の一部を構成する。本実施形態では第1接触部19eが、回動部材19dの上端部に配置され、第3方向の後端側を向く。第1接触部19eは、回動軸19cの中心軸Cよりも上側に位置する。また第1接触部19eは、中心軸Cよりも第3方向の後端側に位置する。第1接触部19eは、第3方向の後端側へ向けて凸となる凸曲面状である。第1接触部19eは、アクチュエータ軸18cの先端面と接触する。つまり第1接触部19eは、第3方向において移動部18と接触する。移動部18が第3方向の先端側へ移動することにより、第1接触部19eは、移動部18によって先端側へ向けて押圧される。
【0140】
第2接触部19fは、回動部材19dの外面の一部を構成する。本実施形態では第2接触部19fが、回動部材19dの下端部に配置され、第1方向の下側を向く。第2接触部19fは、回動軸19cの中心軸Cよりも第3方向の先端側に位置する。また第2接触部19fは、中心軸Cよりも下側に位置する。第2接触部19fは、第1方向の下側へ向けて凸となる凸曲面状である。第2接触部19fは、シャフト15の上端面と接触する。つまり第2接触部19fは、第1方向においてシャフト15と接触する。移動部18が第1接触部19eを第3方向の先端側へ押圧したときに、回動部材19dは回動軸19cの中心軸C回りに回動し、これにより第2接触部19fは、シャフト15を第1方向の下側へ向けて押圧する。
【0141】
本実施形態においてもカム部19は、移動部18の第3方向への移動量を、シャフト15の第1方向への移動量に変換する。
図17に示すように、回動軸19cの中心軸Cに垂直な断面視において、第1接触部19eと移動部18が接触する接点(以下、第1接点と呼ぶ)と、中心軸Cとの間の距離は、第2接触部19fとシャフト15が接触する接点(以下、第2接点と呼ぶ)と、中心軸Cとの間の距離とは、異なる。
具体的に本実施形態では、第2接点と中心軸Cとの間の距離が、第1接点と中心軸Cとの間の距離よりも小さい。このためカム部19は、移動部18の第3方向への移動量を、この移動量よりも小さな値のシャフト15の第1方向への移動量に変換する。
【0142】
本実施形態では、調整機構7の付勢部21が、第1方向においてシャフト15をカム部19に向けて付勢する。具体的に付勢部21は、シャフト15を、カム部19の第2接触部19fに向けて上側に付勢する。
【0143】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具50によれば、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
具体的に、移動部18が第3方向に移動して回動部材19dの第1接触部19eを押すと、回動部材19dが回動軸19c回りに回動させられる。これにより、回動部材19dの第2接触部19fがシャフト15を第1方向に押して、チョークバー6のスロット5内への突出量が調整される。カム部19を簡素な構成としつつ、移動部18の第3方向への移動量が、カム部19によって、シャフト15の第1方向への移動量に安定して変換される。
【0144】
また本実施形態では、第1接点と中心軸Cとの間の距離と、第2接点と中心軸Cとの間の距離とを適宜設定することにより、移動部18の第3方向への移動量と、この移動量に応じたシャフト15の第1方向への移動量と、の割合を調整可能である。
【0145】
また本実施形態では、固定部25にカム部19が連結されており、これらがユニット化されているため、このユニットを第1ヘッド部材1に着脱することにより、塗布工具50の組み立て性を高めたり、メンテナンスを効率よく行うことができる。
【0146】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0147】
前述の実施形態では、スロット5が、水平方向に向けて外部に開口しているが、スロット5が開口する第3方向は、水平方向に限らない。第3方向は、例えば鉛直方向等でもよい。この場合、塗布工具10、20、30、40、50の設置スペースを水平方向等において小さく抑えることができる。
【0148】
前述の実施形態では、チョークバー6が1つ設けられるとしたが、これに限らない。チョークバー6は、複数設けられてもよい。この場合、複数のチョークバー6は、第1凹部11内において第2方向に互いに隣接して配置される。各チョークバー6は、各調整機構7のシャフト15と個別に固定されてもよい。
【0149】
前述の第1~第4実施形態では、カム部19の接触部19bがローラーであるとしたが、これに限らない。接触部19bは、例えば、傾斜面19aに対して摺動可能な摺動部材等でもよい。ただし接触部19bがローラーの場合には、傾斜面19aと接触部19bとの摩擦抵抗を顕著に低減でき、より好ましい。
【0150】
前述の実施形態では、マニホールド4が、第2ヘッド部材2の内側面2aから第1方向に窪み第2方向に延びる溝状であるが、これに限らない。マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内側面1aから第1方向に窪み第2方向に延びる溝状でもよい。この場合、マニホールド4は、内側面1aから上側に窪む。
また、マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内側面1aから上側に窪み第2方向に延びる第1溝部と、第2ヘッド部材2の内側面2aから下側に窪み第2方向に延びる第2溝部と、を有していてもよい。第1溝部と第2溝部とは、第1方向において対向し、互いに連通する。この場合、マニホールド4は、第2方向に垂直な断面視で、全体として例えば略円形状に形成される。
【0151】
また、前述の第3~第5実施形態では、固定部25が1つのみ設けられる例を挙げたが、これに限らない。固定部25は、第2方向に並んで複数設けられてもよい。この場合、固定部25が第2方向に長くなり過ぎることが抑えられて、固定部25の取り扱いが容易となり、塗布工具30、40、50が組み立てやすい。
【0152】
また、前述の第5実施形態では、軸支部25eが固定バー25aとボルト部材25fにより固定される例を挙げたが、これに限らない。軸支部25eは、固定バー25aおよび本体部支持部25bと、単一の部材により一体に形成されてもよい。この場合、固定バー25a、複数の本体部支持部25bおよび複数の軸支部25eが、単一の部材により構成されるので、塗布工具50の部品点数を少なく抑えることができ、組み立てが容易である。また、固定バー25aと、複数の本体部支持部25bと、複数の軸支部25eとが相対的に位置ずれすることがなく、塗布精度が良好に維持される。また、固定バー25aと、複数の本体部支持部25bと、複数の軸支部25eとの位置合わせが不要であり、組み立て時やメンテナンス時などの作業性が向上する。
【0153】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の塗布工具および塗布方法によれば、設置スペースを小さく抑えることができ、塗工中でもチョークバーの位置を調整しやすく、塗工部を視認しやすい。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0155】
1…第1ヘッド部材
1a,2a…内側面
1b…外側面
1c…先端面
1g…接続部
2…第2ヘッド部材
5…スロット
6…チョークバー
7…調整機構
10,20,30,40,50…塗布工具
15…シャフト
17…本体部
18…移動部
19…カム部
19a…傾斜面
19b…接触部(ローラー)
19c…回動軸
19d…回動部材
19e…第1接触部
19f…第2接触部
21…付勢部
22…操作部
24…駆動部
25…固定部
25a…固定バー
25b…本体部支持部
C…回動軸の中心軸