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特許7410703ロータシート、ロータ、電気機器、およびロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ロータシート、ロータ、電気機器、およびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20231227BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20231227BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20231227BHJP
   H02K 15/16 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
H02K15/02 K
H02K15/16 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019223471
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2020099188
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10 2018 132 502.9
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518334554
【氏名又は名称】ヴァレオ ジーメンス エーアオトモーティヴェ ゲルマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】カエ シュアン タン
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-184957(JP,A)
【文献】特開2012-100424(JP,A)
【文献】特開2007-274798(JP,A)
【文献】特開2002-010588(JP,A)
【文献】特開平06-133479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
H02K 15/02
H02K 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(53)のための中央の切り欠き(3)を有し、複数の扇部(4)に分割された、永久励磁電気機器(49)のためのロータシート(1)であって、
前記各扇部(4)は、第1半扇部(5)および前記第1半扇部(5)から中心線(7)により画定された第2半扇部(6)と、延長線(17)に沿って延びる2つのエッジ線(15、16)を有する磁石ポケット開口(9)を含むとともに第1半扇部(5)内に形成されている第1開口構造(8)と、前記中心線(7)に対して前記第1開口構造(8)と鏡像対称であるとともに前記第2半扇部(6)内に形成されている別の開口構造(14)を備えており、
前記第1開口構造(8)は、完全に第1半扇部(5)内に配置された緩和開口(10)を有し、前記磁石ポケット開口(9)の径方向最内側点(24)よりもさらに内側に位置する径方向最内側点(23)を有し、
前記緩和開口(10)は、前記中心線(7)と平行であって第1底辺(26)が第2底辺(27)よりも前記中心線(7)の近くに位置する2つの底辺(26、27)と、前記中心線(7)から第1角度間隔(32)をなす第1直線(29)上に延びる第1脚(28)と、前記中心線(7)から第2角度間隔(33)をなす第2直線(31)上に延びる第2脚(30)とを備える、内接円のない台形(25)の内部に内接しており、
前記第1直線(29)および前記第2直線(31)は前記第1底辺(26)側において鋭角で交差し、
前記第1角度間隔(32)および前記第2角度間隔(33)のぞれぞれは、前記延長線(17)が前記中心線(7)からなす磁石ポケット角度間隔(19)よりも大きいことを特徴とする、ロータシート(1)。
【請求項2】
前記緩和開口(10)は、少なくとも前記第1直線(29)の一部に沿って延びる第1エッジ線(34)および/または少なくとも前記第2直線(31)の一部に沿って延びる第2エッジ線(35)を有する、請求項1に記載のロータシート。
【請求項3】
前記第1エッジ線(34)に垂直で前記第2エッジ線(35)までの断面のうち、最大断面(a)と最小断面(a)との比(a/a)は、1.00以上、好ましくは1.15以上、特に好ましくは1.30以上であり、および/または、2.60以下、好ましくは2.10以下、特に好ましくは1.85以下である、請求項2に記載のロータシート。
【請求項4】
前記第1角度間隔(32)と前記磁石ポケット角度間隔(19)との間の差(36)は、23.5°以上、好ましくは25°以上、特に好ましくは26.5°以上であり、および/または、45°以下、好ましくは38°以下、特に好ましくは31°以下であり、および/または
前記第2角度間隔(33)と前記磁石ポケット角度間隔(19)との間の差(37)は、12°以上、好ましくは15°以上、特に好ましくは21°以上であり、および/または、30°以下、好ましくは25°以下、特に好ましくは24°以下である、
請求項1から3のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項5】
前記第1底辺(26)と前記中心線(7)との間の距離(b)と前記第1磁石ポケット開口(9)の前記径方向最内側点(24)と前記中心線(7)との間の距離(b)との比(b/b)は、0.60以上、好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.9以上であり、および/または、2.5以下、好ましくは2.3以下、特に好ましくは2.2以下である、請求項1から4のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項6】
前記緩和開口(10)の径方向最外側点(38)からの外側の径方向距離(c)とロータシート(1)の外側半径(r)との比(c/r)は、0.21以上、好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.27以上であり、および/または、0.32以下、好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.29以下である、請求項1から5のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項7】
前記緩和開口(10)の前記径方向最内側点(23)からの内側の径方向距離(d)とロータシート(1)の外側半径(r)との比(d/r)は、0.55以上、好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.62以上であり、および/または、0.70以下、好ましくは0.68以下、特に好ましくは0.65以下である、請求項1から6のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項8】
前記緩和開口(10)は、前記第2脚(30)および前記第2底辺(27)と交差する第3直線(40)の一部の上に位置する第3エッジ線(39)をさらに有する、請求項1から7のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項9】
前記第1開口構造(8)は、第2延長方向(44)に沿って延びる2つの平行なエッジ線(42、43)を有する別の第2磁石ポケット開口(11)を有し、前記第2磁石ポケット開口(11)の前記各エッジ線(42、43)が位置する直線は、前記第1磁石ポケット開口(9)の前記各エッジ線(15、16)が位置する直線よりも径方向外側で前記中心線(7)と交差する、請求項1から8のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項10】
特に前記第1開口構造(8)の一部をなすとともに、前記緩和開口(10)の前記径方向最内側点(23)よりも内側に径方向最内側点を有する、少なくとも1つのバランス開口(12、13)をさらに備える、請求項1から9のいずれか1つに記載のロータシート。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載のロータシート(1)を複数積層して形成されるロータ積層コア(52)と、
積み重ねられた磁石ポケット開口(9、11)により形成される各磁石ポケット内に配置された永久磁石磁気要素(54、55)とを備える、
永久励磁電気機器(49)のためのロータ(51)。
【請求項12】
ステータ(50)と、
前記ステータ(50)に対して回転可能に搭載された、請求項11に記載のロータ(51)とを備える、
車両(48)のための電気機器(49)。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1つに記載の複数のロータシート(1)を、それぞれの開口構造(8、14)を一致させてロータ積層コア(52)を形成するように配置する、
永久励磁電気機器(49)のためのロータ(51)の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載のロータシートを使用し、
前記各ロータシート(1)の少なくとも1つの開口構造(8,14)のバランス開口(12、13)にバランスウエイト(56)を配置して前記ロータ積層コア(52)をバランスさせる、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記積層されたロータシート(1)に少なくとも1つの開口を形成して前記ロータ積層コア(52)をバランスさせる、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトのための中央の切り欠きを有し、複数の扇部に分割された、永久励磁電気機器のためのロータシートであって、各扇部は、第1半扇部および第1半扇部から中心線により画定された第2半扇部と、延長線に沿って延びる2つの平行なエッジ線を有する磁石ポケット開口を含むとともに第1半扇部内に形成されている第1開口構造と、中心線に対して第1開口構造と鏡像対称であるとともに第2半扇部内に形成されている別の開口構造を備えている、ロータシートに関する。
【0002】
さらに、本発明は、永久励磁電気機器のためのロータ、車両のための電気機器、およびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
EP3352331A1(特許文献1)の開示によれば、永久励磁電気機器のためのロータシートは、永久磁石を収容するためにロータシートに周構造として形成された複数の細長い切り欠きを備え、各切り欠きは径方向に対して斜めに延びるように配置されている。ここで、互いに周方向に隣接してV字型に配置される2つの切り欠きは、それらの間に径方向に延びる鏡像軸に対して鏡像対称となっている切り欠きがロータポールを形成するために設けられている。
【0004】
高い出力密度を達成するためには、このようなロータシートで形成されるロータ積層コアを有する電気機器は、高回転速度で作動する必要がある。回転速度が高くなるほど、ロータシートやロータ積層コアが耐えるべき機械応力は大きくなる。この機械応力は、一方では永久磁石磁気要素の重量により発生する遠心力や積層ロータスタック固有の重量によって生じ、他方ではロータ積層コアのシャフトに対する締まりばめの結果としてアイドル状態においても存在する荷重により生じる。結果的に、機械応力がロータシートの機械強度の最大値を超えないように、電気機器の速度は制限される。これにより、電気機器の利用や性能も制限されたり、または、ロータ積層コアをより強くてより複雑に設計することが必要になったりする。
【0005】
US9246363B2(特許文献2)は、凸状ポールを有するロータシートにより形成されるロータを備えた回転電気機器を開示している。ロータ回転時に個々のシートに生じるピーク応力を低減するために、ポールには1つ以上の穴が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP3352331A1
【文献】US9246363B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、機械的安定性がより高い永久励磁電気機器を駆動する選択肢を提供することである。
【0008】
この目的を達成するために、本発明によれば、冒頭に述べたタイプのロータシートにおいて、第1開口構造は、完全に第1半扇部内に配置された緩和開口を有し、磁石ポケット開口の径方向最内側点よりもさらに内側に位置する径方向最内側点を有し、緩和開口は、中心線と平行であって第1底辺が第2底辺よりも中心線の近くに位置する2つの底辺と、中心線から第1角度間隔をなす第1直線上に延びる第1脚と、中心線から第2角度間隔をなす第2直線上に延びる第2脚とを備える、内接円のない台形の内部に内接しており、第1直線および第2直線は第1底辺側において鋭角で交差し、第1角度間隔および第2角度間隔のぞれぞれは、延長線が中心線からなす磁石ポケット角度間隔よりも大きくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2つの半扇部の磁石ポケット開口が互いに隣接している扇部の領域は構造的に特に弱く、遠心力により生じる機械応力は特にこの領域に集中するという認識に基づいている。非円形の場合に内接円のない台形の内部に内接するように緩和開口を設けることで、上記領域における機械応力を大きく低減することができる。ここで、第1直線および第2直線の各角度間隔が磁石ポケット角度間隔よりも大きくなるように、上記台形は内接する緩和開口とともに磁石ポケット開口に対して傾斜している。このように、機械応力を扇部の他の構造的に強い領域にずらすことで、構造的に弱い領域における機械応力を低減している。
【0010】
このように、本発明のロータシートは機械的安定性が高いという点で優位である。したがって、電気機器は、他の構造は同一のまま、構造的に弱い領域において機械応力の最大値に到達するまでのより高い速度で作動することができる。または、逆に、所定の最大速度用として設計されている場合には機械的強度を低く構成することで、製造的な複雑さを低減することができる。また、代案または追加として、遠心力による機械応力の低減により締まりばめを形成するための公差範囲をより大きくすることができる。これは、遠心力に耐えられるように強度が高くなるほど、アイドル状態ですでに存在している締まりばめに許容される機械応力も高くなり得るためである。
【0011】
本発明の解釈において、「内接している」という表現は、緩和開口が台形の辺、すなわち脚と底辺で画定され、各辺の少なくとも1つの点で接触していることを意味する。本発明の解釈において、「内接円のない」という表現は、台形の内部に内接可能な円が存在しないことを意味する。言い換えれば、台形が接線四角形でないことを意味する。本発明の解釈において、「角度間隔」という表現は、ロータシート面において緩和開口を通って延びる方向の角度の大きさを意味する。この面におけるすべての角度間隔の向きは同一である。
【0012】
全体として、ロータシートは典型的には円形であり、したがって、典型的には円形のエッジ輪郭を有している。ロータシートは典型的には軟磁性材で形成されている。磁石ポケット開口の平行なエッジ線の間の距離は典型的にはエッジ線の長さよりも小さく、特に半分以下となっている。さらに、エッジ線で画定されたフリースペースは中心線側で矩形受入空間と隣接し、搭載状態においてもフリースペースには磁気要素は配置されていない。エッジ線とフリースペースの間には凸部が形成されていてもよい。フリースペースは、実質的には三角形でもよく、特に径方向最内側の角は丸みをつけてもよい。フリースペースは典型的には磁石ポケット開口の径方向最内側点をなす。第1フリースペースについて言及した内容はこのフリースペースにも同様に適用できる。さらに、別のフリースペースが受入空間の反対側に形成されていてもよい。延長線の角度間隔は中心線から、典型的には40°以上、好ましくは45°以上、特に好ましくは50°以上であり、および/または、89°以下、好ましくは75°以下、特に好ましくは60°以下である。
【0013】
本発明のロータシートにおいて、緩和開口は、少なくとも第1直線の一部に沿って延びる第1エッジ線を有することが好ましい。代案または追加として、緩和開口は、少なくとも第2直線の一部に沿って延びる第2エッジ線を有していてもよい。
【0014】
以下の構成によれば、特に高い緩和が得られる。すなわち、第1エッジ線に垂直で第2エッジ線までの最大断面の、第1エッジ線に垂直で第2エッジ線までの最小断面に対する比を1.00以上、好ましくは1.15以上、特に好ましくは1.30以上とする。代案または追加として、第1エッジ線に垂直で第2エッジ線までの最大断面の、第1エッジ線に垂直で第2エッジ線までの最小断面に対する比を2.60以下、好ましくは2.10以下、特に好ましくは1.85以下とする。このような比にすることで、緩和開口は周方向に実質的に細長の有利な形状となる。
【0015】
第1エッジ線と第2エッジ線は、特に好ましくは弓状エッジ部で接続されている。弓状エッジ部は、典型的には第1底辺と1つの点でのみ接触している。しかし、弓状エッジ部は、部分的に第1底辺の沿って延び、そこから弓状に第1エッジ線および/または第2エッジ線に延びていてもよい。
【0016】
実験によって、第1角度間隔と磁石ポケット角度間隔との間の差は、23.5°以上、好ましくは25°以上、特に好ましくは26.5°以上であり、および/または、45°以下、好ましくは38°以下、特に好ましくは31°以下であることが確認された。代案または追加として、第2角度間隔と磁石ポケット角度間隔との間の差は、12°以上、好ましくは15°以上、特に好ましくは21°以上であり、および/または、30°以下、好ましくは25°以下、特に好ましくは24°以下であってもよい。
【0017】
典型的には、第1角度間隔は、120°以下、好ましくは100°以下、特に好ましくは90°以下である。
【0018】
便宜上、第1底辺と中心線との間の距離の、第1磁石ポケット開口の径方向最内側点と中心線との間の距離に対する比は、0.60以上、好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.9以上であり、および/または、2.5以下、好ましくは2.3以下、特に好ましくは2.2以下である。
【0019】
本発明のロータシートにおいて、以下の構成によればさらに有利となる。すなわち、緩和開口の径方向最外側点からの外側の径方向距離の、ロータシートの外側半径に対する比を、0.21以上、好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.27以上とし、および/または、0.32以下、好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.29以下とする。
【0020】
本発明のロータシートにおいて、緩和開口の径方向最内側点からの内側の径方向距離の、ロータシートの外側半径に対する比を、0.55以上、好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.62以上とし、および/または、0.70以下、好ましくは0.68以下、特に好ましくは0.65以下としてもよい。
【0021】
本発明のロータシートの特に好ましい実施形態によれば、緩和開口は、第2脚および第2底辺と交差する第3直線の一部の上に位置する別のエッジ線をさらに有する。この別のエッジ線は、典型的には弓状部により第1エッジ線に接続され、および/または、弓状部により第2エッジ線に接続されている。第3直線の、磁石ポケット開口のエッジ線の延長線からの角度間隔は、好ましくは60°以上150°以下である。なお、好ましい実施形態ではこの角度間隔は60°から75°の範囲とされている。
【0022】
磁気要素の特に有利なダブルV字型配置を実現するために、本発明のロータシートにおいて、第1開口構造は、第2延長方向に沿って延びる2つの平行なエッジ線を有する別の磁石ポケット開口を有し、この別の磁石ポケット開口の各エッジ線が位置する直線は、第1磁石ポケット開口の各エッジ線が位置する直線よりも径方向外側で中心線と交差している。特に、この別の磁石ポケット開口も上記フリースペースを有していてもよい。この別の磁石ポケット開口のエッジ線の間の距離は、典型的には第1磁石ポケット開口のエッジ線の間の距離よりも小さい。
【0023】
電気機器をできるだけスムーズに作動させるために、本発明のロータシートは、特に第1開口構造の一部をなすとともに、緩和開口の径方向最内側点よりも内側に径方向最内側点を有する、少なくとも1つのバランス開口をさらに備えてもよい。各バランス開口は典型的には円形である。2つのバランス開口を異なる面領域に形成してもよい。
【0024】
本発明の目的は、本発明のロータシートを複数積層して形成されるロータ積層コアを備える、永久励磁電気機器のためのロータによっても達成できる。ここで、永久磁石磁気要素が積み重ねられた磁石ポケット開口により形成される各磁石ポケット内に配置されている。典型的には、積み重ねられた磁石ポケット開口は空洞である。ロータは、ロータシートの切り欠きを貫通し、ロータ積層コアに締まりばめで取り付けられたシャフトをさらに有していてもよい。
【0025】
本発明の目的は、ステータと、そのステータに対して回転可能に搭載された本発明のロータとを備える、車両のための電気機器によっても達成できる。
【0026】
さらに、本発明の目的は、本発明の複数のロータシートを、それぞれの開口構造を一致させてロータ積層コアを形成するように配置する、永久励磁電気機器のためのロータの製造方法によっても達成できる。
【0027】
本発明の方法において、特定のロータシートの少なくとも1つの開口構造のバランス開口内に少なくとも1つのバランスウエイトを配置することでロータ積層コアをバランスさせてもよい。これにより、ロータ積層コアまたはロータのいわゆるプラスバランシングが達成できる。
【0028】
代案または追加として、積層されたロータシートに少なくとも1つの開口を形成することでロータ積層コアをバランスさせてもよい。これにより、ロータ積層コアまたはロータのマイナスバランシングが達成できる。
【0029】
本発明のロータシートに関する上記記載は、本発明のロータ、本発明の電気機器、および本発明の方法にも同様に適用でき、これらによっても上記効果を達成することができる。
【0030】
また、本発明の効果や詳細については、以下に記載される例示的実施形態や図面により明らかとなる。なお、図面は概要を示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のロータシートの第1の例示的実施形態における上面図である。
図2図1に示すロータシートの扇部における第1半扇部の具体的な図である。
図3】本発明のロータシートの別の例示的実施形態の扇部における第1半扇部を示す。
図4】本発明のロータシートの別の例示的実施形態の扇部における第1半扇部を示す。
図5】本発明のロータシートの別の例示的実施形態の扇部における第1半扇部を示す。
図6】本発明のロータシートの別の例示的実施形態の扇部における第1半扇部を示す。
図7】本発明のロータシートの別の例示的実施形態の扇部における第1半扇部を示す。
図8】本発明のロータシートの別の例示的実施形態の扇部における第1半扇部を示す。
図9】本発明の例示的実施形態のロータを有する、本発明の例示的実施形態の電気機器を備えた車両の概要図である。
図10】磁気要素を有する、図9に示すロータのロータシートの扇部における第1半扇部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明のロータシート1の第1の例示的実施形態の上面図である。
【0033】
ロータシート1は円形の輪郭2と中央の切り欠き3とを有する。ロータシート1は、互いに当接する8つの扇部4に分けられる。よって、各扇部4はロータシート1全体における45°を占める。各扇部4は、径方向の中心線7に沿って第1半扇部5と第2半扇部6とに分けられる。第1磁石ポケット開口9、緩和開口10、第2磁石ポケット開口11、第1バランス開口12、および第2バランス開口13を有する第1開口構造8が第1半扇部5に設けられる。
【0034】
中心線7に対して第1半扇部5の第1開口構造8と鏡像対称である別の開口構造14が第2半扇部6に設けられる。図1の例示的実施形態においては半扇部5、6の全体が互いに鏡像対称であるが、開口構造8、14が互いに鏡像対称であるという説明はこの意味に限定されない。具体的には、切り欠き3は備えられるシャフトに対応して円形でなくてもよく、たとえば2つの対面する側にまっすぐな平面の領域を有してもよい。したがって、本例示的実施形態においてはそうであるものの、すべての扇部4が同一でなくてもよい。このように、上記鏡像対称は開口構造8、14の一部を形成する第1半扇部5と第2半扇部6の位置における開口のみを対象とする。
【0035】
図2は、図1の1つの扇部4の第1半扇部5の詳細を示す。開口構造8、14が鏡像対称であるため、第1半扇部5に関しての説明は適宜第2半扇部6にも適用できる。同様に、扇部4に関しての説明は他の扇部にも適用できる。
【0036】
第1磁石ポケット開口9は、延長方向17に沿って延びてほぼ矩形の受入空間18を画定する2つの平行なエッジ線15、16を有する。延長方向17は中心線7から磁石ポケット角度間隔19をなす。第1フリースぺース20は受入空間18と中心線側で隣接し、第2フリースぺース21は反対側で隣接する。第1フリースぺース20と第2フリースぺース21はエッジ線15、16と隣接するエッジ輪郭によって画定され、少なくとも断面形状において弓状の凸部を有する。
【0037】
ロータシート1によって形成される積層コアからなる電気機器の動作中、受入空間18に配置される磁気要素による遠心力およびロータシート1の固有の重みのために、過度の局所的な機械応力が領域22に生じる。第1半扇部5における磁石ポケット開口9と第2半扇部6における鏡像対称な磁石ポケット開口との間のロータシート1の材料の薄さにより領域22は構造的に弱いため、遠心力および付加的な負荷による荷重に対してロータシート1が耐えることができる最大速度が存在する。この最大速度は切り欠き3の締まりばめの結果としてアイドル状態においても存在する。緩和開口10が設けられていない従来のロータシートと比べて、緩和開口10によって領域22における機械応力が低減され得る。
【0038】
緩和開口10は全体が第1半扇部5内に位置する。径方向における緩和開口部10の最も内側の点23は、径方向における磁石ポケット開口9の最も内側の点24よりもより内側に位置する。緩和開口部10は、内接円のない台形25の内部に内接する。台形25は中心線7と平行な2つの底辺26、27を有し、第1底辺26は第2底辺27よりも中心線7の近くに位置する。台形25の第1脚28は第1直線29の上に延び、台形25の第2脚30は第2直線31の上に延びる。直線29、31は中心線7側において鋭角で交差し、第1直線29と中心線7との間の第1角度間隔32は、第2直線31と中心線7との間の第2角度間隔33よりも大きく、かつ磁石ポケット角度間隔19よりも大きい。第2角度間隔33も磁石ポケット角度間隔19よりも大きい。
【0039】
緩和開口10は、第1直線29の一部に沿って延びる第1エッジ線34と、第2直線31の一部に沿って延びる第2エッジ線35とを有する。第1エッジ線34に垂直で第2エッジ線35までの断面のうち、最大断面aと最小断面aとの比a/aは、本例示的実施形態においては1.38である。さらに、第1角度間隔32と磁石ポケット角度間隔19との間の差36は27°であり、第2角度間隔33と磁石ポケット角度間隔19との間の差37は22°である。
【0040】
さらに、図2には、第1磁石ポケット開口9の径方向の最も内側の点24と中心線7との間の距離bと第1底辺26と中心線7との間の距離bが示されている。ここで、比b2/b1は本例示的実施形態においては2.1である。
【0041】
さらに、図2には、緩和開口10の径方向の最も外側の点38からの外側の径方向距離cが示されている。ここで、外側の径方向距離cとロータシート1の外側半径rとの比c/rは本例示的実施形態においては0.28である。
【0042】
さらに、図2には、緩和開口10の径方向の最も内側の点23からの内側の径方向距離dが示されている。ここで、内側の径方向距離dとロータシート1の外側半径径rとの比d/rは0.65である。
【0043】
緩和開口10は、第2脚30および第2底辺27と交差する第3直線40の一部の上に位置する第3エッジ線39をさらに有する。磁石ポケット開口9の延長方向17に対する第3直線40の第3角度間隔41は本例示的実施形態においては67°である。
【0044】
同様に、第2磁石ポケット開口11は、第2延長方向44に沿って延びる2つの平行なエッジ線42、43を有する。中心線7は、第2磁石ポケット開口11の各エッジ線42、43が位置する直線(不図示)が交差する位置よりも内側で、第1磁石ポケット開口9の各エッジ線15、16が位置する直線(不図示)と交差する。このように、第2磁石ポケット開口11は第1磁石ポケット開口よりも外側に配置される。ここで、第2磁石ポケット開口11の受入空間45は、第1磁石ポケット開口9のそれよりも小さくなっている。第2磁石ポケット開口11もまた、受入空間45と隣接するフリースペース46、47をさらに有する。
【0045】
各バランス開口12、13は、緩和開口10よりも内側に配置され円形状となっている。ここで、第1バランス開口12の中心は、第2バランス開口13の中心よりも外側に位置している。
【0046】
図1および図2に示されたロータシート1を使用すると、図9に示すような電気機器の例示的な構成において、たとえば回転数16800rpmのときに最大機械応力419.64MPaが領域22に発生する。
【0047】
図3から図8は、それぞれロータシートの他の例示的実施形態における扇部の第1半扇部5を示している。ここで、同一または同様な機能の要素には同じ参照番号を付している。磁石ポケット開口9、11は、第1の例示的実施形態のそれらに相当する。
【0048】
図3から図8の例示的実施形態においては、緩和開口10がそれぞれ異なる形状を有している。各形状は、図2に示すパラメータに関して下の表に基づいて規定されている。上記例示的構成における領域22に生じる最大機械応力σmaxも示されている。
【0049】
【表1】
【0050】
ここで、図4は、他の例示的実施形態にも適用可能なバランス開口12、13の配置の他の実施形態を示している。図6の例示的実施形態によれば、バランス開口12は半円状で、隣接する扇部4の第2半扇部6のバランス開口を補完する。これも同様に、他の例示的実施形態に適用可能である。図5図7および図8の例示的実施形態にはバランス開口は形成されていないが、他の例示的実施形態によるバランス開口が代わりに形成されていてもよい。
【0051】
図9は、永久励磁電気機器の一例示的実施形態を備えた車両48の概略図である。
【0052】
電気機器49は車両48を駆動するように構成され、ステータ50を備えている。ロータ積層コア52とシャフト53を備えたロータ51はステータ50内に回転可能に搭載されている。ロータ積層コア52は、上記例示的実施形態のいずれかによる複数の同じロータシート1により形成されている。ロータシート1は、それぞれの開口構造8、14が一致するように順次積み重ねられる。また、ロータシート1は、互いに電気的に絶縁されるように積層される。
【0053】
さらに、図9は、第1磁石ポケット開口9内に延びる第1磁気要素54と第2磁石ポケット開口11内に延びる第2磁気要素55を示している。緩和開口10は空いた状態のままになっている。
【0054】
ロータ51の製造において、バランスウエイト56が1つ以上の扇部4のバランス開口12内に配置され、それによりロータ51はプラス側にバランスされる。ロータ51の製造における代案または追加として、ロータ積層コア52を形成するように積層されたロータシート1に開口を形成してもよく、それによりロータ51はマイナス側にバランスされる。
【0055】
図10は、図2による第1半扇部5がロータ51に搭載されている状態を示し、磁気要素54、55およびシャフト53の位置が視認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10