(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】アクチュエータおよび触覚デバイス
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20231227BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B06B1/04 S
G06F3/01 560
(21)【出願番号】P 2019227941
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013069(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108199555(CN,A)
【文献】特開2016-096677(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030265(WO,A1)
【文献】特開2019-013088(JP,A)
【文献】特開2018-019458(JP,A)
【文献】特開2019-062627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00- 3/04
H02N 2/00- 2/18
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記支持体および前記可動体の双方に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
磁石および前記磁石に第1方向で対向するコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する方向に相対移動させる駆動力を発生させる磁気駆動回路と、
を有し、
前記支持体は、前記磁石および前記コイルの一方を保持するホルダを含み、
前記可動体は、前記磁石および前記コイルの他方を保持するヨークを含み、
前記接続体は、前記第1方向に対して直交する方向で前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され
、
前記第1方向に対して直交し、前記駆動力の発生方向に交差する方向を第2方向としたとき、
前記接続体は、前記第2方向において前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、
前記ヨークは、前記ホルダに対して前記第1方向の一方側で対向する第1端板部と、前記ホルダに対して前記第1方向の他方側で対向する第2端板部と、前記ホルダに対して前記第2方向の一方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第1連結部と、前記ホルダに対して前記第2方向の他方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記接続体は、前記ホルダと前記第1連結部との間、および前記ホルダと前記第2連結部との間の各々に配置されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項
1に記載のアクチュエータにおいて、
前記ヨークは、前記第1方向に重ねて配置された第1ヨークおよび第2ヨークからなり、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークは同一形状であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のアクチュエータにおいて、
前記コイルは、前記第2方向に対して斜めに交差する方向に長手方向が延在する空芯コイルであることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項
1または2に記載のアクチュエータにおいて、
前記コイルは、前記第2方向に長手方向が延在する空芯コイルであることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から
4までの何れか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記支持体は、前記コイルおよび前記ホルダを含み、
前記可動体は、前記磁石および前記ヨークを含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項
5に記載のアクチュエータにおいて、
前記支持体は、前記ヨークを外側から覆うカバーを有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
支持体と、
可動体と、
前記支持体および前記可動体の双方に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
磁石および前記磁石に第1方向で対向するコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する方向に相対移動させる駆動力を発生させる磁気駆動回路と、
を有し、
前記支持体は、前記磁石および前記コイルの一方を保持するホルダを含み、
前記可動体は、前記磁石および前記コイルの他方を保持するヨークを含み、
前記接続体は、前記第1方向に対して直交する方向で前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、
前記第1方向に対して直交し、前記駆動力の発生方向に交差する方向を第2方向としたとき、
前記接続体は、前記第2方向において前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、
前記ヨークは、前記ホルダに対して前記第1方向の一方側で対向する第1端板部と、前記ホルダに対して前記第1方向の他方側で対向する第2端板部と、前記ホルダに対して前記第2方向の一方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第1連結部と、前記ホルダに対して前記第2方向の他方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記接続体は、前記ホルダと前記第1連結部との間、および前記ホルダと前記第2連結部との間の各々に配置されていることを特徴とする触覚デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータおよび触覚デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動機構によって振動を発生させる機器として、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体を支持体および記可動体の双方に接続する一方、磁石とコイルとが第1方向で対向する磁気駆動回路によって、可動体を支持体に対して第1方向に交差する第2方向に相対移動させるアクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。ここで、支持体には、コイルを保持するホルダが設けられ、可動体には、磁石を保持するヨークがホルダを覆うように設けられる。また、可動体を覆うようにカバーを支持体に設け、ヨークとカバーとが第1方向で対向する部分に接続体が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアクチュエータでは、第1方向にホルダ、ヨーク、接続体およびカバーが重なるため、アクチュエータの薄型化が困難である。一方、アクチュエータの薄型化を図ろうとする場合、第1方向に直交する方向でヨークとカバーとの間に広いスペースを設けて接続体を配置することが必要となる。その際、カバーの外形寸法が制限されていると、接続体を配置した方向におけるヨークの寸法およびホルダの寸法を小さくする必要があり、それに伴い、コイルおよび磁石の寸法が小さくなる。従って、特許文献1に記載の構成や特許文献1の記載から想到できる構成では、アクチュエータの小型化、および駆動力の増大の双方を図ることが困難である。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、小型化、および駆動力の増大の双方を図ることのできるアクチュエータおよび触覚デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記支持体および前記可動体の双方に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、磁石および前記磁石に第1方向で対向するコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する方向に相対移動させる駆動力を発生させる磁気駆動回路と、を有し、前記支持体は、前記磁石および前記コイルの一方を保持するホルダを含み、前記可動体は、前記磁石および前記コイルの他方を保持するヨークを含み、前記接続体
は、前記第1方向に対して直交する方向で前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、前記第1方向に対して直交し、前記駆動力の発生方向に交差する方向を第2方向としたとき、前記接続体は、前記第2方向において前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、前記ヨークは、前記ホルダに対して前記第1方向の一方側で対向する第1端板部と、前記ホルダに対して前記第1方向の他方側で対向する第2端板部と、前記ホルダに対して前記第2方向の一方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第1連結部と、前記ホルダに対して前記第2方向の他方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第2連結部と、を備え、前記接続体は、前記ホルダと前記第1連結部との間、および前記ホルダと前記第2連結部との間の各々に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、磁石とコイルとが対向する第1方向に対して直交する方向で、支持体に設けられたホルダと可動体に設けられたヨークとが対向する部分に接続体が設けられている。このため、アクチュエータの第1方向の寸法を小さくすることができる。また、ヨークを覆うように設けたカバーとヨークとの間に接続体を設けた場合と違って、ヨークの外側に接続体を設けるための大きなスペースを必要としない。このため、第1方向に直交する方向のうち、接続体を設けた方向におけるアクチュエータのサイズを小さくした場合でも
、ヨークおよびホルダを縮小する必要がないので、磁石およびコイルのサイズを大きくすることができる。それ故、大きな駆動力を得ることができる。よって、小型化、および駆動力の増大の双方を図ることができる。
【0010】
本発明において、前記ヨークは、前記第1方向に重ねて配置された第1ヨークおよび第2ヨークからなり、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークは同一形状である態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記コイルは、前記第2方向に対して斜めに交差する方向に長手方向が延在する空芯コイルである態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記コイルは、前記第2方向に長手方向が延在する空芯コイルである態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記支持体は、前記コイルおよび前記ホルダを含み、前記可動体は、前記磁石および前記ヨークを含む態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記支持体は、前記ヨークを外側から覆うカバーを有する態様を採用することができる。
【0015】
本発明に係る触覚デバイスは、支持体と、可動体と、前記支持体および前記可動体の双方に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、磁石および前記磁石に第1方向で対向するコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して前記第1方向に交差する方向に相対移動させる駆動力を発生させる磁気駆動回路と、を有し、前記支持体は、前記磁石および前記コイルの一方を保持するホルダを含み、前記可動体は、前記磁石および前記コイルの他方を保持するヨークを含み、前記接続体は、前記第1方向に対して直交する方向で前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、前記第1方向に対して直交し、前記駆動力の発生方向に交差する方向を第2方向としたとき、前記接続体は、前記第2方向において前記ホルダと前記ヨークとが対向する部分に配置され、前記ヨークは、前記ホルダに対して前記第1方向の一方側で対向する第1端板部と、前記ホルダに対して前記第1方向の他方側で対向する第2端板部と、前記ホルダに対して前記第2方向の一方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第1連結部と、前記ホルダに対して前記第2方向の他方側で前記第1端板部と前記第2端板部とを連結する第2連結部と、を備え、前記接続体は、前記ホルダと前記第1連結部との間、および前記ホルダと前記第2連結部との間の各々に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明では、磁石とコイルとが対向する第1方向に対して直交する方向で、支持体に設けられたホルダと可動体に設けられたヨークとが対向する部分に接続体が設けられている。このため、触覚デバイスの第1方向の寸法を小さくすることができる。また、ヨークを覆うように設けたカバーとヨークとの間に接続体を設けた場合と違って、ヨークの外側に接続体を設けるための大きなスペースを必要としない。このため、第1方向に直交する方向のうち、接続体を設けた方向における触覚デバイスのサイズを小さくした場合でも、ヨークおよびホルダを縮小する必要がないので、磁石およびコイルのサイズを大きくすることができる。それ故、大きな駆動力を得ることができる。よって、小型化、および駆動力の増大の双方を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、磁石とコイルとが対向する第1方向に対して直交する方向で、支持体に設けられたホルダと可動体に設けられたヨークとが対向する部分に接続体が設けられている。このため、アクチュエータや触覚デバイスの第1方向の寸法を小さくすることができる。また、ヨークを覆うように設けたカバーとヨークとの間に接続体を設けた場合と違って、ヨークの外側に接続体を設けるための大きなスペースを必要としない。このため、第1方向に直交する方向のうち、接続体を設けた方向におけるアクチュエータや触覚デバイスのサイズを小さくした場合でも、ヨークおよびホルダを縮小する必要がないので、磁石およびコイルのサイズを大きくすることができる。それ故、大きな駆動力を得ることができる。よって、小型化、および駆動力の増大の双方を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係るアクチュエータの外観斜視図。
【
図4】
図3に示す磁気駆動回路を第1方向の他方側からみた分解斜視図。
【
図5】
図3に示す磁気駆動回路を第1方向の一方側からみた分解斜視図。
【
図8】
図1に示すアクチュエータの振動特性を模式的に示す説明図。
【
図9】本発明の実施形態2に係るアクチュエータの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の例示的なアクチュエータの実施形態を説明する。以下の説明において、互いに直交する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。
【0020】
以下に説明するアクチュエータ1は、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路10を有する。磁気駆動回路10は、磁石5と、第1方向Zで磁石5と対向するコイル6とを有する。磁気駆動回路10は、コイル6が支持体2の側に設けられ、磁石5が可動体3の側に設けられる態様を採用することができる。また、磁気駆動回路10は、磁石5が支持体2の側に設けられ、コイル6が可動体3の側に設けられる態様を採用してもよい。以下に説明する実施形態は、コイル6が支持体2に設けられ、磁石5が可動体3に設けられている。
【0021】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ1の外観斜視図である。
図2は、
図1のアクチュエータ1の分解斜視図である。
図3は、
図1に示すアクチュエータ1のXZ断面図である。なお、
図3では、カバー9の図示を省略してある。
【0022】
以下の説明において、第1方向Zからみたとき第2方向Xおよび第3方向Yに対して交差する方向を第4方向Fとし、第1方向Zからみたとき第4方向Fに対して直交する方向を第5方向Gとする。以下に説明する形態において、第4方向Fおよび第5方向Gは、第2方向Xおよび第3方向Yによって規定される仮想面と平行であるため、第1方向Zに直交する。
【0023】
(全体構成)
図1、
図2および
図3に示すアクチュエータ1は、多角形のカバー9を含む支持体2と、カバー9の内部に収容された可動体3とを有する。支持体2は、第3方向Yにおいて対向する一対の第1側面部21と、第1方向Zにおいて対向する一対の第2側面部22と、第2方向Xにおいて対向する一対の底面部23とを有する。従って、アクチュエータ1は、第2方向Xに長手方向を向けた直方体形状である。
【0024】
可動体3は、可動体3と支持体2との間に配置された接続体4を介して、支持体2に支持される。接続体4は、弾性体または粘弾性体からなり、可動体3は、接続体4によって、第2方向Xおよび第3方向Yに相対的に移動可能な状態に支持体2に支持される。本形態において、接続体4は直方体形状の粘弾性体からなる。
【0025】
後述するように、支持体2は、コイル6、ホルダ7、カバー9および回路基板(図示せず)を有する。可動体3は、磁石5およびヨーク8を有し、磁石5とコイル6は、可動体3を第1方向Zに直交する方向に駆動する磁気駆動回路10を構成している。従って、アクチュエータは、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者に触覚を与える振動デバイスとして使用することができる。例えば、アクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材、操作パネル、自動車のハンドルや座席等に組み込んで使用することができる。
【0026】
(支持体2)
図4は、
図3に示す磁気駆動回路10を第1方向Zの他方側Z2からみた分解斜視図である。
図5は、
図3に示す磁気駆動回路10を第1方向Zの一方側Z1からみた分解斜視図である。
【0027】
図1、
図2および
図3に示すように、支持体2において、カバー9は、第1カバー部材91と、第2カバー部材92とを有しており、第1カバー部材91と第2カバー部材92との間には、可動体3、コイル6およびホルダ7が収容される。カバー9の第3方向Yの一方側Y1の側面には、開口部93が形成されている。
【0028】
第1カバー部材91は、第2方向Xを向く底板部911と、底板部911の端縁から第2方向Xの一方側X1に突出する側板部912とを有する。側板部912の第2方向Xの一方側X1の端部には、切り欠き部914が設けられる。第2カバー部材92は、第2方向Xを向く底板部921と、底板部921の端縁から第2方向Xの他方側Y2に突出する側板部922とを有する。側板部922の第2方向Xの他方側X1の端部には、切り欠き部924が設けられる。本形態では、第1カバー部材91の側板部912、および第2カバー部材92の側板部922のうち、第3方向Yにおいて対向する部分によって、支持体2の第1側面部21が構成され、第1方向Zにおいて対向する部分によって支持体2の第2側面部22が構成される。また、第1カバー部材91の底板部911、および第2カバー部材92の底板部921によって支持体2の底面部23が構成される。
【0029】
ホルダ7は、樹脂材料からなる。
図4および
図5に示すように、ホルダ7は、コイル6および回路基板(図示せず)を保持する。ホルダ7は、第1方向Zから見た形状が長方形の本体部71と、本体部71の端縁から第1方向Zの両側に突出する側壁72とを有する。本体部71には、第1方向Zの一方側Z1に凹んだ2つの凹部73が第2方向Xで並列するように設けられており、2つの凹部73の各々にコイル6が配置される。凹部73は、第5方向Gに沿って長手方向が延在する長円形である。
【0030】
凹部73は、第5方向Gの中央部分が第1方向Zに貫通するとともに、第5方向Gの両端部分に底部731を有する。底部731は、コイル6に第1方向Zの一方側Z1から当接することによって、凹部73の内側に配置されたコイル6を第1方向Zにおいて位置決めする。コイル6は、接着剤によってホルダ7の凹部73に固定される。コイル6は、第
5方向Gに沿って長手方向が延在する長円形の空芯コイルである。従って、コイル6は、第5方向Gに沿って延在する2つの直線部分61(有効部分)と、2つの直線部分61の端部を繋ぐ曲線部分62(無効部分)とを有する。
【0031】
側壁72は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部721と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部722と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部723と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部724とを有する。第3壁部723の第2方向Xの中央部分には、外側に向けて突出した突部725が形成されている。また、図示を省略するが、第4壁部724の第2方向Xの中央部分にも、第3壁部723と同様、外側に向けて突出した突部725が形成されている。
【0032】
このように構成した第1カバー部材91および第2カバー部材92を第2方向Xで組付ける際、溶接等により固定される。また、第1カバー部材91および第2カバー部材92が固定されると、切り欠き部914および切り欠き部924は、突部725が内側に位置する開口部93を構成する。従って、突部725とカバー9の側板部912、922とを接着等の方法で固定することによってホルダ7とカバー9とが固定される。
【0033】
(可動体3)
図6は、
図4に示すヨーク8の斜視図である。
図4および
図5に示すように、可動体3において、磁石5は、2つのコイル6の直線部分61に第1方向Zの一方側Z1で対向する2つの第1磁石51と、2つのコイル6の直線部分61に第1方向Zの他方側Z2で対向する2つの第2磁石52とを有する。磁石5(第1磁石51および第2磁石52)は各々、磁性材料からなるヨーク8(第1ヨーク81および第2ヨーク82)に保持されている。
【0034】
第1磁石51および第2磁石52において、コイル6を介して対向する部分は異なる極に着磁されている。また、第1磁石51および第2磁石52において、コイル6の2つの直線部分61に対向する部分は異なる極に着磁されている。従って、コイル6に通電すると、磁気駆動回路10は、可動体3を支持体2に対して第1方向Zに交差する方向に相対移動させる駆動力を発生させる。本形態において、駆動力の発生方向は第4方向Fである。
【0035】
ヨーク8は、第1ヨーク81と、第1ヨーク81に対して第1方向Zの他方側Z2に配置された第2ヨーク82とによって構成される。本形態において、第1ヨーク81および第2ヨーク82は、同一形状であり、第3方向Yから見たときの形状は、第1ヨーク81および第2ヨーク82のいずれもがL字形状である。より具体的には、第1ヨーク81は、ホルダ7の本体部71に第1方向Zの一方側Z1で対向する第1端板部811と、第1端板部811の第2方向Xの一方側X1の縁から第1方向Zの他方側Z2に折れ曲がった第1連結部812とを有する。第2ヨーク82は、ホルダ7の本体部71に第1方向Zの他方側Z2で対向する第2端板部821と、第2端板部821の第2方向Xの他方側X2の縁から第1方向Zの一方側Z1に折れ曲がった第2連結部822とを有する。第1連結部812の第1方向Zの他方側Z2の端部の中央部分には、凸部813が設けられ、第2連結部822の第1方向Zの一方側Z2の端部の中央部分には、凸部823が設けられている。第1端板部811の第2方向Xの他方側X2の端部の中央部分には、凸部823が嵌る凹部814が設けられ、第2端板部821の第2方向Xの一方側X1の端部の中央部分には、凸部813が嵌る凹部824が設けられている。
【0036】
従って、
図4、
図5および
図6に示すように、第1ヨーク81と第2ヨーク82とを重ねると、第1連結部812は、ホルダ7に対して第2方向Xの一方側X1で第1端板部811と第2端板部821とを連結し、第2連結部822は、ホルダ7に対して第2方向X
の他方側X2で第1端板部811と第2端板部821とを連結する。また、凸部813、823を凹部814、824に嵌めた状態で、凸部813、823の縁と凹部814、824の縁とを溶接等で固定することによって、第1ヨーク81と第2ヨーク82とを連結することができる。
【0037】
このように、第1ヨーク81および第2ヨーク82は同一形状であるため、共通の部品を第1ヨーク81および第2ヨーク82として用いることができる。それ故、アクチュエータ1に用いる部品の種類を削減することができる。
【0038】
本形態において、第1磁石51は、第1ヨーク81の第1端板部811の第1方向Zの他方側Z2の面に接着等の方法で固定され、コイル6に第1方向Zの一方側Z1で対向する。第2磁石52は、第2ヨーク82の第2端板部821の第1方向Zの一方側Z1の面に接着等の方法で固定され、コイル6に第1方向Zの他方側Z2で対向する。ここで、第1端板部811の第1方向Zの他方側Z2の面には、第1磁石51を位置決めするための突部816が形成されている。また、第2端板部821の第1方向Zの一方側Z1の面には、第2磁石52を位置決めするための突部826が形成されている。突部816、826は、例えば、半抜き加工により形成された複数のダボからなる。第1磁石51は、突部816で区画された領域に配置された際、突部816に当接することにより、第1端板部811に位置決めされる。第2磁石52は、突部826で区画された領域に配置された際、突部826に当接することにより、第2端板部821に位置決めされる。
【0039】
(磁気駆動回路10)
図7は、
図3に示す磁気駆動回路10の平面図である。
図7において、磁石5は右上がりの斜線を付した部分であり、磁石5に付した一点鎖線は着磁境界線50である。
図7に示すように、アクチュエータ1は、磁石5と長円形のコイル6との対からなる磁気駆動回路10を2組有する。各磁気駆動回路10は、第2方向Xおよび第3方向Yによって規定される面内方向であって、第2方向Xおよび第3方向Yに対して交差する第4方向Fに働く駆動力を発生させる。例えば、第4方向Fは、第2方向Xおよび第3方向Yに対して45°傾いた方向である。
【0040】
(接続体4)
図3および
図7に示すように、接続体4は、第1方向Zおよび駆動力の発生方向(第4方向F)の双方に交差する方向でホルダ7とヨーク8とが対向する部分に配置されている。本形態において、ヨーク8は、ホルダ7に対して第2方向Xの一方側X1で第1端板部811と第2端板部821とを連結する第1連結部812と、ホルダ7に対して第2方向Xの他方側X2で第1端板部811と第2端板部821を連結する第2連結部822とを備えていることから、接続体4は、ホルダ7と第1連結部812との間、およびホルダ7と第2連結部822との間の各々に配置されている。より具体的には、接続体4は、ホルダ7の第1壁部721と第1連結部812との間に配置された第1接続体41と、ホルダ7の第2壁部722と第2連結部822とのの間に配置された第2接続体42とからなる。第1接続体41は、ホルダ7の第1壁部721、および第1連結部812に接着剤等により固定され、第2接続体42は、ホルダ7の第2壁部722、および第2連結部822に接着剤等により固定されている。また、第1接続体41および第2接続体42は各々、第2方向Xに圧縮された状態にある。
【0041】
第1接続体41および第2接続体42として、シリコーンゲル等からなるゲル状部材、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム
材料及びそれらの変性材料を用いることができる。本形態において、第1接続体41および第2接続体42は、シリコーンゲル等からなるゲル状部材である。
【0042】
(駆動方法1)
本形態のアクチュエータ1において、コイル6に通電すると、磁気駆動回路10は、第1方向Zに直交する第4方向Fの駆動力を発生させる。従って、可動体3を支持体2に対して第1方向Zに直交する第4方向Fに駆動し、可動体3を第4方向Fに振動させることができる。従って、コイル6に印加する交流波形を調整することで、可動体3が第4方向Fの一方側に移動する加速度と、可動体3が第4方向Fの他方側に移動する加速度を異なるものとすることができる。したがって、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者は、第4方向Fにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0043】
(駆動方法2)
図8は、
図1に示すアクチュエータ1の振動特性を模式的に示す説明図であり、
図8の横軸は磁気駆動回路10の駆動周波数fであり、コイル6へ流す駆動電流の周波数である。また、
図8の縦軸は、可動体3が振動する際の加速度である。
図7において、第1接続体41および第2接続体42は、伸縮方向に変形する際のばね定数とせん断方向に変形する際のばね定数が異なる。本形態では、第1接続体41および第2接続体42は粘弾性体である。例えば、第1接続体41および第2接続体42は、シリコーンゲル等からなるゲル状部材である。シリコーンゲルは、伸縮方向に変形する際のばね定数が、せん断方向に変形する際のばね定数の3倍程度になる粘弾性体である。粘弾性体は、厚さ方向と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を備える。また、厚さ方向に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい伸縮特性を備える。
【0044】
ここで、磁気駆動回路10が発生させる駆動力は、第2方向Xの成分と第3方向Yの成分を含む第4方向Fの駆動力である。また、可動体3が第3方向Yに振動する際、アクチュエータ1は、第1接続体41および第2接続体42がせん断方向に変形する第1振動系を構成する。これに対して、可動体3が第2方向Xに振動する際、アクチュエータ1は、第1接続体41および第2接続体42が伸縮方向に変形する第2振動系を構成する。
【0045】
また、可動体3が第3方向Yに振動する第1振動系を構成する場合と、可動体3が第2方向Xに振動する第2振動系を構成する場合とでは、接続体4が全体として異なるばね定数で変形するように構成されている。そのため、アクチュエータ1は、第1振動系の共振周波数fAと、第2振動系の共振周波数fBとが異なり、
図8に示すように、2つの共振周波数fA、fBで可動体3の加速度最大周波数が大きくなっている。
【0046】
従って、磁気駆動回路10の駆動周波数を変化させると、共振周波数fAと一致あるいは共振周波数fAに近い値の駆動周波数にしたとき、可動体3が第3方向Yに大きく振動する。この結果、アクチュエータ1は、共振周波数fAの第3方向Yの振動を出力することができる。また、磁気駆動回路10の駆動周波数を共振周波数fBと一致あるいは共振周波数fBに近い値にしたとき、可動体3が第2方向Xに大きく振動する。この結果、アクチュエータ1は、共振周波数fBの第2方向Xの振動を出力することができる。よって、アクチュエータ1は、共通の磁気駆動回路10の駆動周波数を調節するだけで、異なる振動方向で、且つ、異なる周波数の振動を出力することができる。また、コイル6に印加する交流波形を調整して、可動体3が一方側に移動する加速度と、可動体3が他方側に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、方向性を有する振動を体感することができる。それ故、アクチュエータ1は、可動体3が第2方向Xまたは第3方向Yに振動すること
により、アクチュエータ1や、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者に振動を与える触覚デバイスとして使用することができる。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1(触覚デバイス)では、磁石5とコイル6とが対向する第1方向Zに対して直交する第2方向Xで、支持体2に設けられたホルダ7と可動体3に設けられたヨーク8とが対向する部分に接続体4が設けられている。このため、アクチュエータ1の第1方向Zの寸法を小さくすることができる。また、ヨーク8を覆うように設けたカバー9とヨーク8との間に接続体を設けた場合と違って、ヨーク8の外側に接続体4を設けるための大きなスペースを必要としない。このため、第1方向Zに直交する方向のうち、接続体4を設けた第2方向Xにおけるアクチュエータ1のサイズを小さくした場合でも、ヨーク8およびホルダ7を第2方向Xにおいて縮小する必要がない。従って、磁石5およびコイル6のサイズを大きくすることができるので、大きな駆動力を得ることができる。よって、本形態のアクチュエータ1によれば、小型化、および駆動力の増大の双方を図ることができる。
【0048】
[実施形態2]
図9は、本発明の実施形態2に係るアクチュエータ1の説明図であり、磁気駆動回路10および接続体4の平面構造を示してある。なお、本形態の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
図9に示すように、本形態のアクチュエータ1においては、磁気駆動回路10は、1つのコイル6に対して第1方向Zの一方側Z1および他方側Z2の双方に磁石5が設けられている。ここで、コイル6は、第2方向Xに沿って長手方向が延在する長円形の空芯コイルである。より具体的には、コイル6では、2つの直線部分61(有効部分)が第2方向Xに延在しており、磁石5は、2つの直線部分61に異なる磁極が対向している。従って、磁気駆動回路10は、第1方向Zおよび第2方向Xに対して直交する第3方向Yの駆動力を発生させる。それ故、可動体3は、支持体2に対して第3方向Yに振動する。
【0049】
本形態においても、実施形態1と同様、第1方向Zおよび駆動力の発生方向(第3方向Y)の双方に交差する方向でホルダ7とヨーク8とが対向する部分に配置されている。より具体的には、接続体4は、ホルダ7の第1壁部721とヨーク8の第1連結部812との間に配置された第1接続体41と、ホルダ7の第2壁部722とヨーク8の第2連結部822との間に配置された第2接続体42とからなる。第1接続体41は、ホルダ7の第1壁部721、および第1連結部812に接着剤等により固定され、第2接続体42は、ホルダ7の第2壁部722、および第2連結部822に接着剤等により固定されている。また、第1接続体41および第2接続体42は各々、第2方向Xに圧縮された状態にある。本形態において、第1接続体41および第2接続体42は、シリコーンゲル等からなるゲル状部材である。
【0050】
このように本形態のアクチュエータ1(触覚デバイス)でも、実施形態1と同様、磁石5とコイル6とが対向する第1方向Zに対して直交する第2方向Xで、支持体2に設けられたホルダ7と可動体3に設けられたヨーク8とが対向する部分に接続体4が設けられている。このため、アクチュエータ1や触覚デバイスの第1方向Zの寸法を小さくすることができる。また、ヨーク8を覆うように設けたカバー9とヨーク8との間に接続体を設けた場合と違って、ヨーク8の外側に接続体4を設けるための大きなスペースを必要としない。このため、第1方向Zに直交する方向のうち、接続体4を設けた第2方向Xにおけるアクチュエータ1のサイズを小さくした場合でも、ヨーク8およびホルダ7を第2方向Xにおいて縮小する必要がない。従って、磁石5およびコイル6のサイズを大きくすることができるので、大きな駆動力を得ることができる。よって、本形態のアクチュエータ1によれば、小型化、および駆動力の増大の双方を図ることができる。
【0051】
[他の実施形態]
上記形態では、コイル6に対する第1方向Zの両側に磁石5(第1磁石51および第2磁石52)を配置しているが、コイル6に対する第1方向Zの一方側Z1または他方側Z2のみに磁石5を配置してもよい。
【0052】
上記形態では、コイル6およびホルダ7を支持体2に設け、磁石5(第1磁石51および第2磁石52)およびヨーク8(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を可動体3に設けたが、コイル6およびホルダ7を可動体3に設け、磁石5(第1磁石51および第2磁石52)およびヨーク8(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を支持体2に設けたアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…アクチュエータ(触覚デバイス)、2…支持体、3…可動体、4…接続体、5…磁石、6…コイル、7…ホルダ、8…ヨーク、9…カバー、10…磁気駆動回路、41…第1接続体、42…第2接続体、50…着磁境界線、51…第1磁石、52…第2磁石、61…直線部分、62…曲線部分、71…本体部、72…側壁、81…第1ヨーク、82…第2ヨーク、91…第1カバー部材、92…第2カバー部材、721…第1壁部、722…第2壁部、811…第1端板部、812…第1連結部、813、823…凸部、821…第2端板部、822…第2連結部、F…第4方向、G…第5方向、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向