(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20231227BHJP
【FI】
A61M25/10 510
(21)【出願番号】P 2019230873
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真弘
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼淵 崇亘
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220861(JP,A)
【文献】特開2016-096869(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185995(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0085022(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0177228(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0307992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠近方向に延在しているシャフトと、前記シャフトの遠位側に設けられているバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、
前記バルーンの近位端は、近位側固着部により前記シャフトに固着されており、
前記バルーンの遠位端は、遠位側固着部により前記シャフトに固着されており、
前記バルーンは、前記近位側固着部の遠位端よりも遠位側であって、前記遠位側固着部の近位端よりも近位側の途中部に、前記バルーンが前記シャフトに直接または間接に固定されている固定部と、前記バルーンが前記シャフトに固定されていない非固定部とを有し、
前記非固定部は、補強部を有し、
前記固定部と前記補強部は、前記バルーンの周方向に周長の1/4以上離れていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記シャフトは、前記バルーンの外側に位置する請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記シャフトは、前記途中部に前記バルーンとは反対側に向かって突出する突出部を備える請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記シャフトは、前記バルーンの内側に位置するものである請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記シャフトは、前記固定部側に向かって突出する突出部を備える請求項4に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記シャフトの中心軸は、前記バルーンの中心軸よりも前記固定部側に位置する請求項4または5に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記補強部は、前記バルーンの肉厚部により形成されているものである請求項1~6のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記補強部は、補強部材を備えているものである請求項1~7のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記シャフトは、中空の管状部材である請求項1~8のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記バルーンの径方向の断面において、前記補強部の最大厚さは、前記シャフトの最大厚さ以上である請求項
9に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記バルーンの径方向の断面において、前記補強部の最大厚さは、前記シャフトの最大外径よりも小さいものである請求項1~
10のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
前記バルーンは、前記シャフトの軸方向に延在する直管部を備え、前記固定部は、前記直管部に位置する請求項1~
11のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記バルーンは、遠位側に向かって拡径する近位側テーパ部と、直管部と、遠位側に向かって縮径する遠位側テーパ部とを有し、前記補強部は、少なくとも前記近位側テーパ部と、前記直管部と、前記遠位側テーパ部に位置する請求項1~
12のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
前記補強部は、長尺状である請求項1~
13のいずれかに記載のバルーンカテー
テル。
【請求項15】
前記補強部は、遠近方向に延在する孔を有する請求項1~
14のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
前記補強部は、前記補強部の近位端より遠位側であって、前記補強部の遠位端より近位側に前記孔に連通する開口部を有する請求項
15に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
前記孔には長尺体が摺動可能に配置されている請求項
15または
16に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに体内の血管等に狭窄が生じることにより、様々な疾患が発生することが知られている。例えば心臓に血液を供給する冠状動脈に狭窄が生じると、狭心症、心筋梗塞等の重篤な疾病をもたらすおそれがある。このような血管の狭窄部を治療する方法の一つとして、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる処置が行われており、これまでに種々のバルーンカテーテルが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、アウターシャフトのルーメンおよびバルーンの内部に挿通されてガイドワイヤルーメンを形成するインナーチューブと、インナーチューブの外周面に固着またはインナーチューブと一体的に形成され、インナーチューブの半径方向外側に突出し、バルーンの拡張時に当該バルーンの内表面を押圧する滑り防止要素とを備えるバルーンカテーテルが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、アウターシャフトの先端から延出しているガイドワイヤ挿通用チューブの外周に接触しながら軸方向に延びるよう配置されたバルーンと、バルーンが接触している外周上の位置に対し周方向の反対側の位置において、ガイドワイヤ挿通用チューブの外周に固着またはガイドワイヤ挿通用チューブと一体的に形成され、ガイドワイヤ挿通用チューブの半径方向外側に突出する滑り防止要素とを備えるバルーンカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-096869号公報
【文献】特開2016-220861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に開示されているようなバルーンカテーテルは、バルーンの膨張時において、滑り防止要素を備えるチューブに直接または間接に接触しているバルーンの一方側は膨張し難い一方で、直接または間接に接触していないバルーンの他方側は膨張し易い構造であった。このような構造では、バルーンが膨張時に湾曲して、チューブも湾曲してしまうことがあり、かえって狭窄部を拡張し難くなってしまう場合があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、狭窄部を拡張し易いバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできた本発明に係るバルーンカテーテルは、以下の構成からなる。
[1]遠近方向に延在しているシャフトと、上記シャフトの遠位側に設けられているバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、
上記バルーンの近位端は、近位側固着部により上記シャフトに固着されており、
上記バルーンの遠位端は、遠位側固着部により上記シャフトに固着されており、
上記バルーンは、上記近位側固着部の遠位端よりも遠位側であって、上記遠位側固着部の近位端よりも近位側の途中部に、上記バルーンが上記シャフトに直接または間接に固定されている固定部と、上記バルーンが上記シャフトに固定されていない非固定部とを有し、
上記非固定部は、補強部を有し、
上記固定部と上記補強部は、上記バルーンの周方向に周長の1/4以上離れていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【0009】
上記の通り、バルーンがシャフトに固定されている固定部とシャフトに固定されていない非固定部とを有し、非固定部が固定部からバルーンの周方向に周長の1/4以上離れた位置に補強部を備えることにより、シャフトの湾曲が抑制されるため、狭窄部を拡張し易くすることができる。
【0010】
更に本発明に係るバルーンカテーテルには、好ましくは以下の[2]~[16]の構成も含まれる。
[2]上記シャフトは、上記バルーンの外側に位置する[1]に記載のバルーンカテーテル。
[3]上記シャフトは、上記途中部に上記バルーンとは反対側に向かって突出する突出部を備える[2]に記載のバルーンカテーテル。
[4]上記シャフトは、上記バルーンの内側に位置するものである[1]に記載のバルーンカテーテル。
[5]上記シャフトは、上記固定部側に向かって突出する突出部を備える[4]に記載のバルーンカテーテル。
[6]上記シャフトの中心軸は、上記バルーンの中心軸よりも上記固定部側に位置する[4]または[5]に記載のバルーンカテーテル。
[7]上記補強部は、上記バルーンの肉厚部により形成されているものである[1]~[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[8]上記補強部は、補強部材を備えているものである[1]~[7]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[9]上記バルーンの径方向の断面において、上記補強部の最大厚さは、上記シャフトの最大厚さ以上である[1]~[8]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[10]上記バルーンの径方向の断面において、上記補強部の最大厚さは、上記シャフトの最大外径よりも小さいものである[1]~[8]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[11]上記バルーンは、上記シャフトの軸方向に延在する直管部を備え、上記固定部は、上記直管部に位置する[1]~[10]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[12]上記バルーンは、遠位側に向かって拡径する近位側テーパ部と、直管部と、遠位側に向かって縮径する遠位側テーパ部とを有し、上記補強部は、少なくとも上記近位側テーパ部と、上記直管部と、上記遠位側テーパ部に位置する[1]~[11]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[13]上記補強部は、長尺状である[1]~[12]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[14]上記補強部は、遠近方向に延在する孔を有する[1]~[13]のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
[15]上記補強部は、上記補強部の近位端より遠位側であって、上記補強部の遠位端より近位側に上記孔に連通する開口部を有する[14]に記載のバルーンカテーテル。
[16]上記孔には長尺体が摺動可能に配置されている[14]または[15]に記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成により、狭窄部を拡張し易いバルーンカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の領域Rの軸方向の断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面を示す断面図である。
【
図4】
図4は、従来のバルーンカテーテルの側面図である。
【
図5】
図5は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面の他の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面の他の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面の他の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面の他の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面の他の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
本発明のバルーンカテーテルは、遠近方向に延在しているシャフトと、シャフトの遠位側に設けられているバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、バルーンの近位端は、近位側固着部によりシャフトに固着されており、バルーンの遠位端は、遠位側固着部によりシャフトに固着されており、バルーンは、近位側固着部の遠位端よりも遠位側であって、遠位側固着部の近位端よりも近位側の途中部に、バルーンがシャフトに直接または間接に固定されている固定部と、バルーンがシャフトに固定されていない非固定部とを有し、非固定部は、補強部を有し、固定部と補強部は、バルーンの周方向に周長の1/4以上離れているものである。
【0015】
上記の通り、バルーンがシャフトに直接または間接に固定されている固定部を有するバルーンカテーテルにおいて、バルーンの非固定部が、上記固定部からバルーンの周方向に周長の1/4以上離れた位置に補強部を備えることにより、バルーンの湾曲が抑制されるため、狭窄部を拡張し易くすることができる。
【0016】
以下では
図1~13を参照して、本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテルについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
図2は、
図1の領域Rの軸方向の断面を示す断面図である。
図3は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面を示す断面図である。
図4は、従来のバルーンカテーテルの側面図である。
図5~9は、
図1のバルーンカテーテルのA-A断面の他の一例を示す断面図である。
図10は、
図1の領域Rの軸方向の断面の他の一例を示す断面図である。
図11は、本発明の他の実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
図12は、
図11のバルーンカテーテルのB-B断面を示す断面図である。
図13は、長尺体の斜視図である。
【0017】
図1、2に示す通り、バルーンカテーテル1は、遠近方向Xに延在しているシャフト10と、シャフト10の遠位側に設けられているバルーン20とを備えている。更に、バルーン20の近位端20Aは、近位側固着部20aによりシャフト10に固着されており、バルーン20の遠位端20Bは、遠位側固着部20bによりシャフト10に固着されている。
【0018】
近位側固着部20a、遠位側固着部20bは、溶着等によりバルーン20とシャフト10が強固に結合している部分である。
図1、2では、シャフト10は、内管11と、外管12とを有しており、バルーン20の遠位側固着部20bは、内管11の外側面に固着しており、バルーン20の近位側固着部20aは、内管11の外側面と、外管12の外側面とに固着している。近位側固着部20a、及び遠位側固着部20bは、それぞれシャフト10の周方向の一部にわたって存在していてもよいし、周方向の全体にわたって存在していてもよい。なお内管11は、ガイドワイヤ等の挿通路として用いることができる。また内管11と外管12の間の空間は流体の流路とすることができ、当該流路を介してバルーン20の加圧内腔20Iに流体を注入してバルーン20を膨張させることができる。流体として液体が挙げられ、液体として生理食塩水や造影剤等が挙げられる。
【0019】
図1~3に示すように、バルーン20は、近位側固着部20aの遠位端20Xよりも遠位側であって、遠位側固着部20bの近位端20Yよりも近位側の途中部20cに、バルーン20がシャフト10に直接に固定されている固定部20Fを有している。詳細には、途中部20cに存在する固定部20Fでは、バルーン20がシャフト10(内管11)の軸方向に沿って、シャフト10(内管11)の外側面に直接、接触することで固定されている。固定部20Fは、加圧内腔20Iを加圧してもシャフト10(内管11)の剛性により伸び難くなっている。また固定部20Fは、後述する
図11、
図12に示すように、バルーン20がシャフト10(内管11)に突出部13等の介在物を介して間接的に接触している部分であってもよい。また固定部20Fでは、バルーン20がシャフト10(内管11)に接着等されることにより固定されていてもよい。
【0020】
図1~3に示すように、バルーン20は、途中部20cに、バルーン20がシャフト10に固定されていない非固定部20Nを有しており、非固定部20Nは、補強部22を有しており、更に、固定部20Fと補強部22は、バルーン20の周方向に周長の1/4以上離れている。例えば
図4に示す従来のバルーンカテーテル100では、固定部20Fと、固定部20Fとは反対側の非固定部20N(以下では反対側非固定部20Nと呼ぶ場合がある)の間には固定の有無に起因する剛性差が生じていた。更に、従来のバルーンカテーテル100は、バルーン20とは反対側に向かって突出する滑り防止要素(突出部13)を備えることによって、上記剛性差が大きくなっており、バルーン20が膨張する際に湾曲し易かった。一方、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテル1では、
図3に示すように固定部20Fからバルーン20の周方向に周長の1/4以上離れた位置に補強部22を設けることにより、バルーン20の固定部20Fと、反対側非固定部20Nの剛性差を低減することができるため、バルーンの膨張時の湾曲、及びシャフト10の湾曲も低減することができ、病変部を拡張し易くすることができる。更にこれにより、シャフト10が突出部13を有する場合に、突出部13により高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れて拡張し易くすることができる。また、これにより突出部13に滑り止め機能等を発揮させ易くすることもできる。なお
図3中、1点鎖線はバルーン20の中心軸20Cを通る線であり、1点鎖線以下の部分は、固定部20Fからバルーン20の周方向に周長の1/4以上離れた部分に相当し、且つ反対側非固定部20Nに相当する。補強部22は、固定部20Fからバルーン20の周方向に周長の5/16以上離れていることが好ましく、周長の6/16以上離れていることがより好ましい。
【0021】
図示していないが、固定部20Fは、2箇所以上設けられていてもよい。その場合、隣接する固定部20Fと補強部22とがバルーン20の周方向に周長の1/4以上離れていればよい。
【0022】
補強部22は、
図5、
図6に示す通り、バルーン20の周方向に2箇所以上設けられていてもよい。一方、上限は特に限定されないが、補強部22は、バルーン20の周方向に10箇所以下設けられていてもよく、5箇所以下設けられていてもよい。また補強部22が周方向に3箇所以上設けられている場合、各補強部22は、
図6に示すようにバルーン20の周方向に一定間隔を空けて設けられていることが好ましい。
【0023】
図1、2に示すように補強部22は、長尺状であることが好ましい。これにより、バルーン20の湾曲を防止し易くすることができる。補強部22が長尺状である場合、シャフト10の軸方向に延在していることが好ましい。補強部22が長尺状である場合、
図1、2に示すような直線状に限らず、波線状、ジグザグ形状等であってもよい。これらは1種に限らず2種以上、組み合わせて設けてもよい。また補強部22は、長尺状に限らず網状等であってもよい。
【0024】
バルーン20の周方向の断面における補強部22の形状としては、三角形状、矩形状、台形状等の多角形状、半球形状、球形状等が挙げられる。また詳細は後述するが、
図9、
図10に示す通り、補強部22は、遠近方向Xに延在する孔22Hを有していてもよい。またバルーン20の周方向の断面における孔22Hの断面形状は、特に限定されないが、三角形、矩形、台形等の多角形、半球形、及び球形等が挙げられる。
【0025】
補強部22は、
図3、
図5、
図6に示す通り、補強部材を備えているものであってもよいし、
図7、
図8、
図9に示す通り、バルーン20の一部により形成されていてもよい。
【0026】
補強部材としては、金属線、樹脂線等が挙げられる。金属線を構成する素材として、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が挙げられる。金属線は、単線であってもよいし、撚線であってもよい。樹脂線を構成する素材として、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が挙げられる。これらの繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。その他に、樹脂線を構成する素材として、後述するバルーン20を構成する樹脂を用いてもよい。補強部材は、バルーン20に接着剤等により接着してもよいし、溶着等により固着させてもよい。
【0027】
補強部22がバルーン20の一部により形成されている態様として、
図7に示す通り、補強部22がバルーン20の突起状の肉厚部20Pにより形成されている態様、
図8に示す通り、補強部22が、バルーン20の丘状の肉厚部20Tにより形成されている態様、
図9に示す通り、補強部22がバルーン20のレール状の肉厚部20Rにより形成されている態様等が挙げられる。肉厚部の形状については、上記補強部22の形状の記載を参照することができる。また図示していないが、補強部22は、バルーン20の肉厚部と補強部材により形成されていてもよい。
【0028】
バルーン20を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、及び天然ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのうちポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリウレタン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、これらの樹脂として、エラストマー樹脂を用いてもよい。
【0029】
バルーン20は、樹脂を成形することにより製造することができる。例えば、押出成形によって押し出された樹脂チューブを金型に配置し、二軸延伸ブロー成形することによりバルーン20を製造することができる。またディップ成形、射出成形、圧縮成形などの公知の成形方法によりバルーン20を製造することもできる。
【0030】
バルーン20の寸法は、治療部位が血管の場合は、軸方向の長さを5mm~300mm、外径を1mm~12mmとすることが好ましく、治療部位が十二指腸乳頭等の消化管の場合は、軸方向の長さを10mm~100mm、外径を3mm~30mmとすることが好ましい。
【0031】
バルーン20は、
図1に示す通り、シャフト10の軸方向に延在する直管部21cを備え、固定部20Fは、直管部21cに位置することが好ましい。シャフト10が直管部21cを備えることにより、病変部を拡張し易くすることができる。また固定部20Fが直管部21cに位置することにより、直管部21cの拡張圧を病変部に加え易くすることができる。またバルーン20は、遠位側に向かって拡径する近位側テーパ部21aと、直管部21cと、遠位側に向かって縮径する遠位側テーパ部21bとを有し、固定部20Fは、少なくとも近位側テーパ部21aと、直管部21cと、遠位側テーパ部21bとに位置することも好ましい。
【0032】
バルーン20は、遠位側に向かって拡径する近位側テーパ部21aと、直管部21cと、遠位側に向かって縮径する遠位側テーパ部21bとを有し、補強部22は、少なくとも近位側テーパ部21aと、直管部21cと、遠位側テーパ部21bとに位置することが好ましい。このようにバルーン20が、近位側テーパ部21aと、直管部21cと、遠位側テーパ部21bとを有する場合、各部に補強部22を設けることにより、バルーン20の湾曲を防止し易くすることができる。また近位側テーパ部21a、直管部21c、及び遠位側テーパ部21bよりなる群から選択される少なくとも1部に補強部22が設けられていてもよい。また補強部22は、近位側テーパ部21aと、直管部21cと、遠位側テーパ部21b以外の場所、例えば近位側固着部20a、遠位側固着部20b等にも設けられていてもよい。例えば、補強部22は、近位側固着部20a、近位側テーパ部21a、直管部21c、遠位側テーパ部21b、及び遠位側固着部20bに設けられていてもよい。また各部の補強部22は一体化されて連続的に設けられていてもよいし、別個に設けられていてもよい。またバルーン20は、その他の形状を有するものであってもよく、例えば球状部、長球状部等を備えるものであってもよい。
【0033】
バルーン20は、シャフト10の軸方向に沿って、線状の薄肉部を備えていてもよい。これにより、膨張前のバルーン20を折り畳み易くすることができる。
【0034】
図1~3等に示す通り、シャフト10は、途中部20cにバルーン20とは反対側に向かって突出する突出部13を備えることが好ましい。突出部13により高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れて拡張し易くすることができる。また、突出部13に滑り止め機能等を発揮させてもよい。なおシャフト10が突出部13を有していない場合であっても、後述するように補強部22により亀裂を入れたり、滑り止め機能を発揮させたりすることもできる。
【0035】
シャフト10(内管11)は、バルーン20の外側に位置することが好ましい。これによりシャフト10(内管11)のバルーン20とは反対側の部分に突出部13等を設けることができる。
【0036】
一方、シャフト10(内管11)は、
図11、
図12に示す通り、バルーン20の内側に位置していてもよい。更に、シャフト10は、固定部20F側に向かって突出する突出部13を備えていてもよい。このような態様によっても、突出部13により凸状になった固定部20Fにより石灰化病変に亀裂を入れて拡張し易くすることができる。更にバルーン20の拡張時の位置ずれを起こり難くすることができる。更にこのような態様により、突出部13がシャフト10から離間して脱落してしまうことを防止することができる。なお
図11のバルーンカテーテル1は、内管11の一部がバルーン20の内側に位置することを除いては、
図1のバルーンカテーテル1と同様の構成を備える。
【0037】
シャフト10の中心軸10Cは、
図12に示す通り、バルーン20の中心軸20Cよりも固定部20F側に位置することが好ましい。これにより、突出部13が小さい場合であっても高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れて拡張し易くすることができる。また、これにより突出部13に滑り止め機能等を発揮させ易くすることができる。
【0038】
バルーン20の周方向の断面における突出部13の形状は、特に限定されないが、三角形状、矩形状、台形状等の多角形状、半球形状、球形状等が挙げられる。三角形状である場合、頂角(θ)は30°以上、100°以下が好ましく、40°以上、60°以下がより好ましい。
【0039】
突出部13は、突出部材を備えているものであってもよいし、シャフト10の一部により形成されていてもよい。突出部材を構成する素材としては、金属、樹脂等が挙げられる。当該金属として、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が挙げられる。また当該樹脂については、上記バルーン20を構成する樹脂の記載を参照することができる。突出部材は、シャフト10に接着剤等により接着してもよいし、溶着等により固着させてもよい。また突出部13がシャフト10の一部により形成されている態様として、例えば突出部13がシャフト10の突起により形成されている態様、突出部13がシャフト10の肉厚部により形成されている態様等が挙げられる。
【0040】
突出部13と、補強部22との組み合わせとしては、突出部13がシャフト10の一部により形成されており、補強部22がバルーン20の一部により形成されている組み合わせ;突出部13が突出部材を備えるものであり、補強部22がバルーン20の一部により形成されている組み合わせ;突出部13がシャフト10の一部により形成されており、補強部22が補強部材を備えるものである組み合わせ;又は突出部13が突出部材を備えるものであり、補強部22が補強部材を備えるものである組み合わせ;が挙げられる。突出部13は、バルーン20の湾曲が低減されればされる程、高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れて拡張し易くすることができる。また、これにより突出部13に滑り止め機能等を発揮させ易くすることができる。一方、バルーン20の湾曲を防止するのみならず、ある程度バルーン20の膨張時の湾曲を残しておいて当該湾曲を利用してもよい。例えば、突出部13及びシャフト10と、補強部22との剛性差をある程度、設けることにより、バルーン20の補強部22は湾曲の外側に位置し外側に向かって凸状となり易くなり、補強部22により高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れて拡張し易くすることができる。また、これにより突出部13に滑り止め機能等を発揮させ易くすることができる。
【0041】
突出部13は1つに限らず、2つ以上、シャフト10に設けられていてもよい。この場合、複数の突出部13は、シャフト10の軸方向に沿って直線状に配置されていることが好ましい。突出部13を構成する素材のJIS K 7171(2016)に基づいて測定できる曲げ弾性率は、50MPa以上が好ましい。これにより狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れ易くすることができる、そのため曲げ弾性率は、100MPa以上がより好ましく、150MPa以上が更に好ましい。一方、曲げ弾性率は、10,000MPa以下であれば突出部13等と補強部22の剛性差を低減して湾曲を防止し易くすることができる。そのため曲げ弾性率は、5,000MPa以下がより好ましく、2,000MPa以下が更に好ましい。また、突出部13とシャフト10の曲げ弾性率と、補強部22の曲げ弾性率との差は、10,000MPa以下が好ましい。これにより剛性差による湾曲を防止し易くすることができる。そのため曲げ弾性率の差は、1,500MPa以下がより好ましく、100MPa以下が更に好ましい。また、ある程度バルーン20の膨張時の湾曲を残しておいて当該湾曲を利用する場合には、曲げ弾性率の差は、50MPa以上であってもよく、150MPa以上であってもよい。
【0042】
図3、
図12に示す通り、バルーン20の径方向の断面において、補強部22の最大厚さ22Tは、シャフト10の最大厚さ10T以上であることが好ましい。これにより非固定部20Nと固定部20Fの剛性差によるシャフト10の湾曲を抑制し易くすることができる。そのため、最大厚さ22Tは、シャフト10の最大厚さの1.1倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。なお補強部22の最大厚さ22Tは、補強部22が補強部材を備えている場合、補強部材の厚さとバルーン20の厚さの合計の最大厚さである。またシャフト10の最大厚さ10Tは、シャフト10が突出部13を備えている場合、シャフト10の厚さと突出部13の厚さの合計の最大厚さである。
【0043】
バルーン20の径方向の断面において、補強部22の最大厚さ22Tは、シャフト10の最大外径10Dよりも小さいものであることが好ましい。これによりバルーンカテーテル1の取り扱い性が向上する。更にこれにより、補強部22が外側になるようにシャフト10をある程度、湾曲させた状態にし易くできるため、補強部22を病変部に引っ掛けたり、補強部22により石灰化病変に亀裂を入れたりし易くすることができる。このようにバルーンカテーテル1においては、補強部22をバルーン20の膨張時の湾曲を抑制するだけでは無く、ある程度バルーン20の膨張時の湾曲を残しておいて、当該湾曲を利用して、補強部22により高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れてもよいし、補強部22に滑り止め機能等を発揮させてもよい。なおシャフト10の最大外径10Dは、シャフト10が突出部13を備えている場合、シャフト10の外径と突出部13の厚さの合計の最大長さに相当する。
【0044】
補強部22は、
図9、
図10に示す通り、遠近方向Xに延在する孔22Hを有していてもよい。更に補強部22は、補強部22の近位端22Aより遠位側であって、補強部22の遠位端22Bより近位側に孔22Hに連通する開口部22Oを有していてもよい。これらの構成により、
図13に示すような長尺体30の線状部31を近位側とし、ブレード部32を遠位側として、長尺体30を孔22Hに挿入して、開口部22Oからブレード部32を露出させることができる。これにより、ブレード部32を病変部に接触させ易くなるため、補強部22により高度な狭窄病変や石灰化病変に対して亀裂を入れ易くすることができる。またこれにより、補強部22に滑り止め機能等を発揮させ易くすることもできる。また孔22Hを経由して開口部22Oから薬剤を体内に注入してもよい。薬剤は、薬理活性物質であれば特に限定されず、例えば、非遺伝子治療薬、生体分子、小分子、細胞等の医薬として許容される薬剤が挙げられる。より具体的には、抗増殖剤や免疫抑制剤などの抗再狭窄剤等が挙げられる。薬剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
孔22Hには長尺体30が摺動可能に配置されていることが好ましい。これにより、補強部22の剛性の強弱を調節することができ、バルーン20の湾曲を制御し易くすることができる。
【0046】
長尺体30は、線状部31と、ブレード部32とを備えることが好ましい。長尺体30を構成する素材については、補強部22の素材の記載を参照することができる。
【0047】
ブレード部32の厚さ方向の断面における形状として、三角形状、矩形状、台形状等の多角形状、半球形状、球形状等が挙げられる。このうち多角形状が好ましく、三角形状がより好ましい。またブレード部32には厚さ方向に切れ込みが入れられていてもよい。
【0048】
線状部31の厚さ方向の断面における形状として、三角形状、矩形状、台形状等の多角形状、半球形状、球形状等が挙げられる。このうち多角形状が好ましく、矩形状がより好ましい。
【0049】
シャフト10の内管11は、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、及び天然ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。また、これらの樹脂として、エラストマー樹脂を用いてもよい。
【0050】
シャフト10の外管12は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、及び天然ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。また、これらの樹脂として、エラストマー樹脂を用いてもよい。なお外管12は1つに限らず2つ以上連結させて用いてもよい。2つ以上連結させる場合には、軸方向に連結することが好ましい。なお外管12は、
図10に示すような補強部22の孔22Hに連通する遠近方向Xに延在する内腔を備えていてもよい。
【0051】
また内管11、外管12は、線材が編組された編組体、または線材が螺旋状に巻回されたコイル体等を有していてもよい。これにより内管11、外管12の強度を向上し易くすることができる。当該線材として、金属線、繊維等が挙げられる。金属線を構成する素材として、例えばステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が好ましい。金属線は、単線であってもよいし、撚線であってもよい。繊維として、例えばポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が挙げられる。繊維は、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。
【0052】
内管11、外管12は、X線不透過性物質を含むX線不透過部を備えていてもよい。X線不透過性物質として、例えば鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、白金イリジウム合金、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、パラジウム、及びタンタルよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0053】
図1、
図11等に示す通り、バルーンカテーテル1、近位側にハンドル部40を有することが好ましい。ハンドル部40は、バルーン20の加圧内腔20Iに流体を注入するための流路である内管11と外管12との間の空間と、連通する内腔を有していることが好ましい。またバルーンカテーテル1は、ハンドル部40より遠位側に設けられた内管11の近位端11Aより、ガイドワイヤを挿入することが可能なラピッドエクスチェンジ型(RX型)である。但し、バルーンカテーテル1は、内管11の近位端11Aがハンドル部40内に位置して、近位端から遠位端までガイドワイヤを挿通することが可能なオーバーザワイヤ型(OTW型)であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 バルーンカテーテル
10 シャフト
10T シャフトの最大厚さ
10C シャフトの中心軸
10D シャフトの最大外径
11 内管
12 外管
13 突出部
20 バルーン
20A バルーンの近位端
20B バルーンの遠位端
20C バルーンの中心軸
20F 固定部
20I 加圧内腔
20N 非固定部
20P バルーンの突起状の肉厚部
20T バルーンの丘状の肉厚部
20R バルーンのレール状の肉厚部
20a 近位側固着部
20b 遠位側固着部
20X 近位側固着部の遠位端
20Y 遠位側固着部の近位端
20c 途中部
21a 近位側テーパ部
21c 直管部
21b 遠位側テーパ部
22 補強部
22A 補強部の近位端
22B 補強部の遠位端
22H 遠近方向に延在する孔
22O 孔に連通する開口部
22T 補強部の最大厚さ
30 長尺体
31 線状部
32 ブレード部
40 ハンドル部
100 従来のバルーンカテーテル