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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20231227BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61F13/537 310
A61F13/537 210
A61F13/511 400
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019234318
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101865
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 裕介
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-061014(JP,A)
【文献】特開2019-097678(JP,A)
【文献】特開2009-273722(JP,A)
【文献】特開平09-056748(JP,A)
【文献】特開平02-218367(JP,A)
【文献】特開2019-042397(JP,A)
【文献】特開2008-86504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記トップシートと前記吸収体との間に配置されたセカンドシートと、を備える吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、
スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の一方の表面に一体化された木材パルプ層と、を含むパルプ含有不織布であり、
前記木材パルプ層には、露出する表面側に対して凸となる第一の凸部と露出する表面側に対して凹となる第一の凹部が所定のパターン形状で設けられた第一の凹凸部と、露出する表面側に対して凸となる第二の凸部と露出する表面側に対して凹となる第二の凹部が前記第一の凹凸部とは異なるパターン形状で設けられた第二の凹凸部とを有し、
前記第二の凸部の頂面に前記第一の凹部が設けられ、前記第二の凸部は前記第一の凸部を兼ねており、
前記パルプ含有不織布が、前記木材パルプ層の露出する表面の全面に前記第一の凹凸部と前記第二の凹凸部を有し、
前記パルプ含有不織布は、前記スパンボンド不織布と、前記木材パルプ層と、の水流交絡一体化物であることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記第一の凹部は略千鳥状の等間隔で上下左右に配置され、前記第二の凸部は千鳥格子状に配列されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第一の凹部は、深さ0.1mm以上0.25mm以下、底面面積0.1mm以上5mm以下であり、一の前記第一の凹部とそれに隣り合う他の前記第一の凹部との間隔が0.1mm以上5.0mm以下である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第二の凹部は、深さ0.2mm以上3.0mm、底面面積1.0mm以上25mm以下であり、一の前記第二の凸部とそれに隣り合う他の前記第二の凸部との間隔が0.3mm以上3.0mm以下であり、かつ第一の凹部と第二の凹部との距離が0.1mm以上4mm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記水流交絡一体化物は、少なくとも一部の木材パルプ繊維が前記スパンボンド不織布を構成する繊維及び/又は他の木材パルプ繊維と絡み合って、前記スパンボンド不織布の一方の面に固着した前記木材パルプ層と、前記スパンボンド不織布の他方の面から外方に露出した木材パルプ繊維と、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用紙おむつには、テープ止めタイプ、尿取りパッド、パンツタイプ等があり、これらの紙おむつは着用対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
また、これらの吸収性物品には、漏れ防止の他に、素早く吸収し、かつ液戻りが少ないことが基本的に求められている。そのためにトップシートと吸収体の間に、熱可塑性繊維よりなるエアースルー不織布を介在させたり、吸収体にスリットやエンボスを設けたりする技術が採用されている。
【0004】
特許文献1には、ポリウレタン連続多孔質体から構成されるシートをセカンドシートとして利用し、セカンドシートに取り込まれた尿等の体液が素早く厚さ方向に浸透、拡散することにより、吸収速度が向上した吸収性物品が開示されている。
【0005】
特許文献2には、尿等の体液を吸収する速度が高く、かつ保形性に優れた吸収体を備えた吸収性物品の提供を目的とし、液保持性の吸収性コアと、吸収性コアを被覆するコアラップシートと、を備え、コアラップシートが不織布、とくにSMS不織布(スパンボンド不織布ーメルトブローン不織布ースパンボンド不織布の複合型不織布)であり、尿等の体液の吸収速度が向上した吸収体、及び該吸収体を備える吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-164356号公報
【文献】特開2019-103789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2では、セカンドシートやコアラップシートとして不織布を利用することで、吸収体内での吸収速度を向上させる技術が開示されている。しかしながら、これらの特許文献で使用する不織布は元来親水性ではないため、吸収速度の向上は十分満足できるものではない。
【0008】
本発明の目的は、体液の吸収性、及び吸収速度に優れた吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、吸収体のトップシート側に配置するセカンドシートとして、表面にパターン形状の異なる複数の凹凸部を設けた所定の複合型不織布を用いることにより、目的に叶う吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(8)の吸収性物品を提供する。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記トップシートと前記吸収体との間に配置されたセカンドシートと、を備える吸収性物品であって、前記セカンドシートは、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の一方の表面に一体化された木材パルプ層と、を含むパルプ含有不織布であり、前記木材パルプ層には、露出する表面側に対して凸となる第一の凸部と露出する表面側に対して凹となる第一の凹部が所定のパターン形状で設けられた第一の凹凸部と、露出する表面側に対して凸となる第二の凸部と露出する表面側に対して凹となる第二の凹部が前記第一の凹凸部とは異なるパターン形状で設けられた第二の凹凸部とを有し、前記第二の凸部の頂面に前記第一の凹部が設けられ、前記第二の凸部は前記第一の凸部を兼ねており、前記パルプ含有不織布が、前記木材パルプ層の露出する表面の全面に前記第一の凹凸部と前記第二の凹凸部を有し、前記パルプ含有不織布は、前記スパンボンド不織布と、前記木材パルプ層と、の水流交絡一体化物であることを特徴とする、吸収性物品。
本明細書において、前記第一、第二の凹凸部のパターン形状が異なるとは、凸部の平面形状、凹部の平面形状、凸部の各種寸法(径、高さ、間隔)、凹部の各種寸法(径、深さ、間隔)、前記第一、第二の凹凸部の配列方式及び第一、第二の凹凸部の位置関係よりなる群から選ばれる少なくとも1つが異なることを意味する。
(2)前記第一の凹部は略千鳥状の等間隔で上下左右に配置され、前記第二の凸部は千鳥格子状に配列されている、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記第一の凹部は、深さ0.1mm以上0.25mm以下、底面面積0.1mm以上5mm以下であり、一の前記第一の凹部とそれに隣り合う他の前記第一の凹部との間隔が0.1mm以上5.0mm以下である、上記(1)又は(2)のいずれかの吸収性物品。
(4)前記第二の凹部は、深さ0.2mm以上3.0mm以下、底面面積1.0mm以上25mm以下であり、一の前記第二の凸部とそれに隣り合う他の前記第二の凸部との間隔が0.3mm以上3.0mm以下であり、かつ第一の凹部と第二の凹部との距離が0.1mm以上4.0mm以下である、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記水流交絡一体化物は、少なくとも一部の木材パルプ繊維が前記スパンボンド不織布を構成する繊維及び/又は他の木材パルプ繊維と絡み合って、前記スパンボンド不織布の一方の面に固着した前記木材パルプ層と、前記スパンボンド不織布の他方の面から外方に露出した木材パルプ繊維と、を含む、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、体液の吸収性、及び吸収速度に優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1のX-X切断線における幅方向の模式断面図である。
図3図1に示す吸収性物品に備わるパルプ含有不織布の構成を模式的に示す斜視図である。
図4図3の円領域部分を拡大して示す模式平面図である。(a)は第一の凹凸部及び第二の凹凸部の配列を示す模式平面図である。(b)は第一の凹部の配列を示す模式平面図である。
図5図3のY-Y切断線における幅方向の模式断面図である。(a)は第一の凹凸部及び第二の凹凸部の構成を示す模式平面図である。(b)は第一の凹凸部の構成を拡大して示す模式平面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す断面図である。
図8】比較例の吸収性物品の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。図1は、第一実施形態の吸収性物品1の模式平面図である。図2は、図1の吸収性物品1のX-X切断線による模式断面図である。図3は、図1の吸収性物品1が含むパルプ含有不織布11を示す模式斜視図である。図4は、図3のパルプ含有不織布11の円領域部分40を拡大した模式平面図である。(a)は第一、第二の凹凸部30、31の配列を示す。(b)は第一の凹部30bのみの配列を示す。図5は、図3のパルプ含有不織布11のY-Y切断線による模式断面図である。(a)は第一、第二の凹凸部30、31を示し、(b)は第一の凹凸部30のみを示す。図6図7は、第二実施形態、第三実施形態に係る吸収性物品2、3の模式断面図である。図8は、セカンドシート17を有する比較例の吸収性物品を示す断面図である。
【0014】
各図は、トップシート10、パルプ含有不織布11、吸収体12、バックシート13、立体ギャザー14等の各構成部材の寸法の大小関係を限定するものではなく、各構成部材の寸法は、吸収性物品1、2、3の用途、使用対象とする着用者の年齢等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。また、各図では、各構成部材が密接しているように記載しているが、各構成部材間の少なくとも1つに1又は複数の隙間が生じる場合も本実施形態に包含される。
【0015】
本明細書において、吸収性物品1を着用するときとは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、吸収性物品1を身体に装着した状態をいう。吸収性物品1は、通常衣類の内部で身体に装着するものであるが、吸収性物品1の少なくとも一部が外部に露出するように身体に装着してもよい。吸収性物品1及び各構成部材の長手方向とは、吸収性物品1を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、図中符号Yで示す。吸収性物品1及び各構成部材の幅方向とは、長手方向に対して直交する方向であり、図中符号Xで示す。吸収性物品1及び各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向であり、図中Zで示す。また、吸収性物品1及び各構成部材の肌側面とは、吸収性物品1、2、3を身体に着用したときに着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側表面とは、吸収性物品1を身体に着用したときに着用者の衣類に接触する表面又は衣類を臨む表面である。また、本明細書では、第一実施形態と同一又は類似の機能及び/又は作用効果を有する構成部材に同一の参照符号を付し、第一実施形態の説明を援用する。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。以上は、吸収性物品2、3についても同様である。
【0016】
<吸収性物品>
本実施形態の吸収性物品1は、図1及び図2に示すように、これを身体に着用したときに、相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、相対的に非肌側に位置する、液不透過性のバックシート13と、トップシート10とバックシート13との間に肌側から順に介在する、セカンドシートとしてのパルプ含有不織布11と、吸収体12と、トップシート10及びバックシート13に取り付けられた一対の立体ギャザー14と、を備え、パルプ含有不織布11は、スパンボンド不織布20と木材パルプ層21との一体化物であり、木材パルプ層21の露出する表面21aには、パターン形状の異なる第一、第二の凹凸部30、31が形成されている。
【0017】
本実施形態では、吸収体12が、セカンドシートとしてのパルプ含有不織布11とバックシート13との間に挟まれた構造となり、尿等の体液は、トップシート10及びパルプ含有不織布11を通って、吸収体12に吸収及び保持される。
【0018】
本実施形態で使用するパルプ含有不織布11は、スパンボンド不織布20と木材パルプ層21との一体化物であり、通気性に優れ、体液の透過性や拡散性等が良好で、高い強度を有し、全体として薄層である。また、パルプ含有不織布11は、木材パルプ層21の露出する表面21aに、パターン形状、特にサイズや凹凸形状の異なる複数の第一、第二の凹凸部30、31が適切に配置されていることから、表面21aの表面積が大きく増加し、パルプ含有不織布11全体としての体液の透過性及び拡散性が顕著に向上し、体液が不均一な状態で局所的に排出されても、体液の透過性や拡散性は実質的には低下しない。したがって、着用時のごわごわ感や違和感、蒸れが少なく、体液吸収の前後を問わず吸収体12を十分に保形することにより、液戻りや横漏れが防止され、特にパルプ含有不織布11の存在により、体液の吸収性、及び吸収速度に顕著に優れた吸収性物品1、2、3を提供できる。
【0019】
吸収性物品1の、長手方向及び幅方向の寸法は特に限定されないが、それぞれ例えば100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記の範囲に調整することにより、種々の用途に使用できる吸収性物品1を得ることができる。
【0020】
本実施形態の吸収性物品1は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的なものとして、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とを組み合わせて用いることもできる。
【0021】
図1及び図2に示す本実施形態では、吸収体12全体を、トップシート10及びパルプ含有不織布11と、バックシート13とで覆うように構成しているが、これに限定されず、従来の吸収性物品における各構造部材の積層形態を特に限定なく採用できる。例えば、吸収体12の側面をトップシート10及びパルプ含有不織布11で覆うことなく、これらを立体ギャザー14で覆う実施形態が挙げられる。この実施形態では、トップシート10、パルプ含有不織布11、及び吸収体12の全長及び/又は最大幅をほぼ同じに構成することが好ましい。
以下、シート状又は板状の各構成部材について、順を追って詳しく説明する。本実施形態において、各構成部材は、シート状及び板状以外の立体形状を有していてもよい。
【0022】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体12に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、セカンドシート11及び吸収体12を介して、バックシート13に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、やわらかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積合体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0023】
また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0024】
強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート10の目付は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体12へと誘導するために必要とされる、吸収体12を覆う形状であればよい。
【0025】
(パルプ含有不織布)
厚み方向においてトップシート10と吸収体12との間に配置されるセカンドシートとして、図2及び図3に示すパルプ含有不織布11を用いる。パルプ含有不織布11は、スパンボンド不織布20と、スパンボンド不織布20の少なくとも一方の面に一体化された木材パルプ層21と、を含む。木材パルプ層21は、例えば、その表面21aに後述する第一、第二の凹凸部30、31を有することで、元来良好であった体液の吸収性及び拡散性がより一層向上し、トップシート10から供給された体液を整流し、その全面に拡散させる。また、木材パルプ層21は、体液の大部分を素早く吸収し、素早く排出する。したがって、体液がパルプ含有不織布11を通過すると、比較的短時間で、体液がパルプ含有不織布11の面方向のほぼ全体に拡散し、吸収体12がその全表面を使って体液を吸収できるように構成される。
【0026】
本実施形態では、パルプ含有不織布11は、木材パルプ層21をトップシート10側に配置しかつスパンボンド不織布20を吸収体12側に配置しているが、これに限定されず、木材パルプ層21を吸収体12側に配置しかつスパンボンド不織布20をトップシート10側に配置してもよい。前者及び後者の実施形態によれば、吸収性物品1の体液吸収性、及び吸収速度を高めることができる。これらの吸収特性をより一層向上させる観点からは、木材パルプ層21の第一、第二の凹凸部30、31を有する表面21aがトップシート10を臨む前者の実施形態がより好ましい。なお、スパンボンド不織布20と木材パルプ層21との一体化とは、これらが強固に固着し、吸収性物品1の使用中にこれらの剥離が生じないことを意味する。ただし、パルプ含有不織布11の四周の縁辺の一部における、ごく部分的な剥離等は一体化を損なうものではない。
【0027】
本実施形態のパルプ含有不織布11は、木材パルプ層21の露出する表面21a(スパンボンド不織布20との一体化面)の少なくとも一部、好ましくは表面21a全面に、パターン形状の異なる第一、第二の凹凸部30、31を有する。木材パルプ層21に深さ0.1mm以上0.25mm以下の第一の凹部30bを含む第一の凹凸部30の加工を施し、さらに複数の多角形(本実施形態ではほぼ六角形の第二の凸部31a)を互いに等間隔で上下左右に配置されたパターン形状である第二の凹凸部31を加工することにより、木材パルプ層21が持つ体液の吸収速度及び拡散性がより顕著に向上する。なお、第二の凹凸部31を先に加工し、次いで第一の凹凸部30を加工してもよく、これらを同時に加工してもよい。
【0028】
第一の凹凸部30は、第一の凸部30aと、第一の凹部30bと、を含み、第二の凹凸部31は、第二の凸部31aと、第二の凹部31bと、を含む。ここで、パターン形状とは、第一、第二の凸部30a、31aの平面形状、第一、第二の凹部30b、31bの平面形状、第一、第二の凸部30a、31aの径、高さ、間隔等の各種寸法、第一、第二の凹部30b、31bの径、深さ、間隔等の各種寸法、及び第一、第二の凹凸部30、31の各配列方式及び位置関係等を意味する。本明細書では、これらの項目のうちの少なくとも1つ(例えば第一、第二の凸部30a、31aの平面形状)が異なることにより、パターン形状が異なるとする。
【0029】
図4(a)及び図5(a)に示すように、第二の凹凸部31は、複数の第二の凸部31aと、一の第二の凸部31aとそれに隣り合う他の第二の凸部31aとの間に介在する溝状の第二の凹部31bと、を含む。第二の凸部31aは、頂面の平面形状がほぼ正六角形である略六角柱であり、上下左右に略千鳥格子状又は格子状にほぼ等間隔に配列されている。第二の凹部31bは全体的に略等間隔(略同じ幅)である。第二の凹部31bが全体的に略等間隔であり、かつ溝状であることにより、木材パルプ層21の表面21aに形成された第一、第二の凹凸部30、31による体液の整流効果ひいては拡散効果がより一層高まり易い。また、図4(a)に示すように、第二の凸部31aの平面形状を正六角形に比べて横長の六角形とし、これを千鳥格子状又は格子状に配列することにより、横方向に隣り合う一対の第二の凸部31aの間の第二の凹部31bの幅を、斜め方向等に隣り合う一対の第二の凸部31aの間の第二の凹部31bの幅より大きくなるように構成してもよく、さらに小さくなるようにしてもよい。
【0030】
本実施形態では、第二の凸部31aは平面形状が略六角形であり、千鳥格子状又は格子状に配列されているが、これに限定されず、第二の凸部31aの平面形状を略三角形、略長方形、略正方形、略正八角形、略円形、略長円形、略楕円形、略ひし形、略平行四辺形、四角形の4角が丸まった角丸四角形等としてもよく、また、第二の凸部31aの配列方式を碁盤目配列、市松模様配列、ドット状、エイコンパターン状(どんぐりの連続形状)、水玉模様状、鱗文様状等の幾何学的な配列方式や不規則な配列方式を限定なく採用することができる。
【0031】
本実施形態において、吸収性物品1の各構成部材の標準的な寸法を勘案した場合、図4(a)及び図5(a)に示すように、第二の凸部31aの高さh(又は第二の凹部31bの深さ)は例えば0.2mm以上3.0mm(好ましくは0.5mm以上2mm)、第二の凸部31aの頂面の面積(後述する第一の凹部30bの面積をも含む)は、例えば、1.0mm以上25mm以下(好ましくは10mm以上15mm以下)、第二の凸部301aの間隔(又は第二の凹部31bの幅)a、aが、例えば0.3mm以上1.0mm以下(好ましくは0.7mm以上1.0mm)である。
【0032】
本実施形態の第一の凹凸部30は、図4図5に示すように、第二の凹凸部31における第二の凸部31a自体である第一の凸部30aと、その頂面のほぼ中央部に形成された第一の凹部30bと、を含む。すなわち、第二の凸部31aは、第一の凸部30aをも兼ねている。本実施形態では、第一の凹凸部30は、第二の凹凸部31の中に設けられている。第一の凹凸部30は、例えば、図4(a)及び図5(b)に示すように、第一、第二の凸部30a、31aがそれぞれ千鳥格子状又は格子状に配置されている。なお、第二の凹凸部31とは別体として第一の凹凸部30を設ける場合、第一の凸部30aの配列方式は、千鳥格子状及び格子状に限定されず、碁盤目配列、市松模様配列、ドット状、エイコンパターン状(どんぐりの連続形状)、水玉模様状、鱗文様状等の幾何学的な配列方式や不規則な配列方式を限定なく採用することができる。第一の凸部30aの平面形状を略三角形、略長方形、略正方形、略ひし形、略平行四辺形、略正八角形、略円形、略長円形、略楕円形、四角形の4角が丸まった角丸四角形等としてもよい。
【0033】
本実施形態の第一、第二の凹凸部30、31は、以上のような構成を有しているが、これに限定されず、略等面積の第一、第二の凹凸部30、31を交互に配したような実施形態、面21aの中心部に例えば長方形状の第一の凹凸部30を設け、その周囲に第二の凹凸部31を設ける実施形態、面21aの中心部に例えば長方形状の第二の凹凸部31を設け、その周囲に第一の凹凸部30を設ける実施形態、面21aの長手方向又は幅方向の半分に第一の凹凸部30を設け、残部に第二の凹凸部31を設ける実施形態等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の第一の凹凸部30において、第一の凹部30bの深さhが例えば0.25mm以下(好ましくは0.1mm以上0.25mm以下)、第一の凹部30bの面積(開口部又は底面の面積)が例えば0.1mm以上5mm以下(好ましくは1mm以上5mm以下)、第一の凹部30bの間隔(一の第一の凹部30bとそれに隣り合う他の第一の凹部30bとの間隔)bが例えば0.1mm以上5.0mm以下(好ましくは2mm以上5.0mm以下)である。また、第一の凹部30bと第二の凹部31bとの距離a図4(a))は例えば0.1mm以上4mm以下(好ましくは0.5mm以上1.5mm以下)である。
【0035】
図4及び図5において、各寸法の一例を示せば、寸法aは4.5mm、寸法aは1.5mm、寸法aは1.6mm、寸法aは1.0mm、寸法aは1.0mm、寸法aは2.8mm、寸法aは3.0mm、寸法bは3.5mm、寸法bは1.2mm、寸法bは1.0mm、寸法bは1.0mm、寸法hは0.5mm、寸法hは0.25mmである。これらの寸法を基準にして、適切な範囲で加減して寸法を調整すれば、体液の整流性及び拡散性に優れたパルプ含有不織布11を得ることができる。
【0036】
第一、第二の凹凸部30、31の各寸法の測定は、例えば、ワンショット3D形状測定機(商品名:コントローラ VR-3000 Series、(株)キーエンス製)の解析アプリケーションを使用して行なった。例えば、第一の凹部30bの深さhは、前記解析アプリケーションを用いて第一の凸部30a(又は第二の凸部31a)の頂面と第一の凹部30bの底面との高低差を測定することにより求めることができる。また,寸法aは、前記解析アプリケーションを用いて第二の凸部31aの中心間の距離を測定することにより求められる。各寸法の測定は、第一、第二の凹凸部30、31の任意の10か所で行ない、その平均値を求めた。実施例では、深さは小数点第三位を四捨五入した数値であり、それ以外は小数点二位を四捨五入した数値である。
【0037】
ここで、スパンボンド不織布20としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等で作製された不織布を特に限定なく使用できるが、その材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布は、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。これらの中でも、強度、柔らかさ、吸収性等の観点から、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布が好ましい。また、スパンボンド不織布20の目付は特に限定されないが、引張強度と触感の柔らかさの観点から、好ましくは7g/m以上20g/m以下である。
【0038】
木材パルプ層21としては特に制限されないが、例えば、木材パルプ繊維を主体とする不織布(以下「木材パルプ不織布」ともいう)からなる層、木材パルプ繊維が互いに絡み合った層、木材パルプ繊維をごく少量の接着剤やバインダーで固着した層等が挙げられる。これらの中でも、強度、柔らかさ等の観点から、木材パルプ繊維が互いに絡み合った層が好ましい。ここで使用される木材パルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。木材パルプ層21の目付は特に限定されないが、例えば、均一性、触感、吸収性等の観点から、好ましくは30g/m以上70g/m以下である。
【0039】
木材パルプ繊維の含有量は、パルプ含有不織布11全量の65質量%以上90質量%以下であり、残部がスパンボンド不織布20であることが好ましく、70質量%以上85質量%以下であり、残部がスパンボンド不織布20であることがさらに好ましい。木材パルプ繊維の含有量が65質量%未満であると体液の吸収性、拡散性等の面で安定したパルプ含有不織布11が形成されない傾向があり、90質量%超えるとパルプ含有不織布11が硬くなる傾向がある。
【0040】
パルプ含有不織布11全体としての目付は、40g/m以上80g/m以下であることが好ましく、40g/m以上60g/m以下であることがさらに好ましい。40g/m未満であると柔らかくなりすぎる傾向があり、80g/m超えるとパルプ含有不織布11が硬くなりすぎる傾向がある。
【0041】
パルプ含有不織布11の厚さは特に限定されないが、シックネスゲージ(商品名:ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK(登録商標)」、(株)尾崎製作所製)を用いて測定したときに、好ましくは0.20mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.25mm以上0.50mm以下、さらに好ましくは0.30mm以上0.45mm以下である。この範囲より低い値の場合、パルプ含有不織布11が柔らかくなりすぎ、吸収性物品1の製造時にパルプ含有不織布11を安定して固定できない傾向がある。また、この範囲よりも高い値の場合、パルプ含有不織布11が硬くなる傾向がある。
【0042】
スパンボンド不織布20と木材パルプ層21との一体化は、例えば、熱圧着法、水流交絡法、接着剤による一体化等の方法により実施できる。これらの方法の中でも、得られるパルプ含有不織布11の外観、触感の柔らかさと強度の両立の観点から、水流交絡法が好ましい。水流交絡法によれば、バインダーや接着剤を用いることなく、スパンボンド不織布20の一方の表面に水流と共に木材パルプ繊維を吹き付けることにより、木材パルプ層21中にて木材パルプ繊維が絡み合うとともに、スパンボンド不織布20の構成繊維と木材パルプ繊維とが絡み合い、スパンボンド不織布20と木材パルプ層21とが強固に一体化した水流交絡一体化物が得られる。
【0043】
このような水流交絡一体化物の中でも、少なくとも一部の木材パルプ繊維がスパンボンド不織布20を構成する繊維(合成樹脂繊維)及び/又は他の木材パルプ繊維と絡み合って、スパンボンド不織布20の一方の面に固着した木材パルプ層21と、スパンボンド不織布20の他方の面から外方に露出した木材パルプ繊維と、を含む実施形態が好ましい。このような実施形態によれば、木材パルプ層21の表面21aの、第一、第二の凹凸部30、31と、表面に露出する木材パルプ繊維と、木材パルプ層21と、が協働して相乗的に体液の拡散性ひいては吸収速度を高め、ウェットバックを向上させることができる。前記実施形態の水流交絡一体化物は、例えば、スパンボンド不織布20に吹き付ける水流の圧力を適宜調整することにより得ることができる。前記実施形態の水流交絡一体化物の中でも、強度、柔らかさ、吸収性の観点から、スパンボンド不織布20がポリプロピレンからなるスパンボンド不織布であることがより好ましい。

【0044】
パルプ含有不織布11への第一、第二の凹凸部30、31の形成は、例えば、エンボス加工により行われる。エンボス加工としては、例えば、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等の公知の方法が挙げられる。加圧及び/又は加熱と、エンボス加工と、を同時に実施してもよい。
【0045】
(吸収体)
吸収体12は、例えば、吸収性物品1を身体に装着したときに、体液を吸収及び保持する機能を有するシート状又は板状の構成部材であり、本実施形態では、厚み方向においてパルプ含有不織布11とバックシート13との間に配置される。吸収体12としては、この分野で常用されるものを特に限定なく使用できる。たとえば、基材である吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)と、を含有するものが好ましい。
【0046】
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0047】
SAPとしては、体液を吸収し、かつ、体液の逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の、カルボキシル基含有モノマーを含む重合体が挙げられる。SAPは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらSAPの中でも、重量当たりの体液吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0048】
SAPを含有する液吸収性シートとしては、特に限定されないが、液吸収性シート中にSAP粒子を混合したもの、液吸収性シート間にSAP粒子を固着したSAPシート等が好ましい。それ以外にも、SAPを繊維の形態で含有する液吸収性シート等もある。
【0049】
吸収体12の平面形状は本実施形態では砂時計状(不図示)であるが、これに限定されず、例えば、略長方形(矩形状)、I字状、長円形状、楕円形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形等の形状とすることができる。吸収体12は、2層以上を重ねて用いてもよい。また、吸収体12の厚みは、吸収しようとする体液の種類や、吸収体12の形態や材質等に応じて適宜選択される。また、体液の吸収性、保持性や、吸収体12の形状保持性、SAPの脱落防止等の観点から、必要に応じて吸収体12全体を親水性フィルムで被覆してもよい。
【0050】
吸収体12はキャリアシート(図示しない)で被覆されていることが好ましい。キャリアシートは、例えば木材パルプからなるクレープ紙、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布を使用することができる。
【0051】
(バックシート)
バックシート13は、吸収性物品1の最も非肌側に配置され、例えば、吸収体12が保持している体液が衣類を濡らしたり、皮膚表面に付着したりしないような通気性又は非通気性の液不透過性基材からなる。バックシート用の液不透過性基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体である複合不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布などが挙げられる。
【0052】
バックシート13の目付は特に限定されないが、強度及び加工性の観点から、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート13には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート13に通気性を付与する方法としては特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、バックシート用基材である樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート用基材にエンボス加工を施す方法などが挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては例えば炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0053】
(立体ギャザー)
立体ギャザー14は、例えば、吸収性物品1の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために設けられる。立体ギャザー14は、本実施形態では幅方向一端がバックシート13の肌側表面に固定され、幅方向途中部がトップシート10の幅方向両端部近傍に固定され、幅方向他端が自由端14aとなって、トップシート10の幅方向両端部周辺を覆い、かつトップシート10の長手方向に延びる、固定された幅方向途中部を起点にして折り曲げ自在に設けられた構成部材である。立体ギャザー14をこのように構成することで、立体ギャザー14の自由端14a付近に起立性が付与され、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。本実施形態では、立体ギャザー14の幅方向一端をバックシート13の肌側表面に固定しているが。これに限定されず、例えば、該幅方向一端をバックシート13の非肌側表面に固定してもよく、トップシート10とバックシート13とで構成される袋体に固定してもよく、さらに、トップシート10の肌側表面に固定してもよい。
【0054】
より具体的には、立体ギャザー14は、例えば、立体ギャザーシート(不図示)と、立体ギャザーシートの幅方向一端に固定される立体ギャザー用弾性部材(不図示)と、から構成され、立体ギャザーシートの幅方向他端がバックシート13の肌側表面に固定され、また、立体ギャザー用弾性部材の立体ギャザーシートに固定されていない幅方向端部が自由端になる。立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。なお、本実施形態の吸収性物品1、2は、立体ギャザー14を含まない実施形態をも含んでいる。
【0055】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート13、吸収体12、パルプ含有不織布11、トップシート10の順に積層し、トップシート10とバックシート13とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定し、さらに立体ギャザー14を取り付けることで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【0056】
図6は、第二実施形態の吸収性物品2の構成を示す。吸収性物品2は、吸収体12に代えて吸収体12aを用いる以外は、吸収性物品1と同じ構成及び変形例を含んでいる。吸収性物品2は、吸収性物品1と同様の寸法に構成でき、同様の用途に使用でき、同様の効果を有している。
【0057】
本実施形態の吸収体12aは、その幅方向の一端部近傍から幅方向他端部近傍に延びる略直線状(不図示)のスリット22を有している。パルプ含有不織布11を配置するとともに、吸収体12aにスリット22を設けることにより、体液の拡散性及び吸収速度を含めた吸収性が顕著に向上する。スリット22は本実施形態に限定されず、例えば、幅方向の一端部から幅方向途中部まで延びるスリット、長手方向の一端部近傍又は一端部周辺から長手方向の他端部近傍又は他端部周辺まで延びるスリット、長手方向の一端部から長手方向途中部まで延びるスリット、吸収体12の対角線方向に延びるスリット等でもよい。また、本実施形態のスリット22は1本であるが、これに限定されず、複数本でもよい。また、本実施形態のスリット22は直線状であるが、これに限定されず、例えば、波線状、曲線状、点線状等でもよい。
【0058】
ここで、スリット22の幅及び長さは特に限定されないが、体液の拡散性及び吸収速度を含めた吸収性の向上と吸収体12aの強度、体液の保持性の確保とをバランスよく両立させる観点から、例えば、スリット幅は10mm以上40mm以下が好ましく、スリット長が150mm以上300mm以下が好ましい。また、吸収体12aの厚みは、吸収しようとする体液の種類や、吸収体12aの材質等に応じて適宜選択されるが、体液の拡散性、吸収性、吸収速度、保持性、着用感等の観点から、好ましくは1mm以上10mm以下の範囲である。また、吸収体12aの、長手方向の寸法(全長)は好ましくは50mm以上750mm以下(より好ましくは300mm以上600mm以下)、幅方向の寸法は好ましくは20mm以上470mm以下である。また、親水性基材16を含むことなく、2つの吸収体12aを直接積層して吸収体12bとしてもよい。
【0059】
図7は、第三実施形態の吸収性物品3の構成を示す。吸収性物品3は、吸収体12又は吸収体12aに代えて吸収体12bを用いる以外は、吸収性物品1、2と同じ構成及び変形例を含んでいる。吸収性物品3は、吸収性物品1と同様の寸法に構成でき、同様の用途に使用でき、同様の効果を有している。
【0060】
本実施形態の吸収体12bは、親水性基材16を介して2つの吸収体12aを積層したものである。ここで、吸収性物品3の厚み方向において、トップシート10側の吸収体12aを上層吸収体、バックシート13側の吸収体12aを下層吸収体と呼ぶことがある。このような形態でも、体液吸収の前後を問わず、吸収体12bの良好な形状保持性を保ちつつ、所定のセカンドシート11の存在により、体液の吸収性及び吸収速度を顕著に高めることができる。本実施形態では、上層吸収体(吸収体12a)及び下層吸収体(吸収体12a)のスリット22が延びる方向を、例えば、一方は長手方向、他方は幅方向等とすることもできる。
【実施例
【0061】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
【0062】
(実施例1)
表1に示す構成のセカンドシート(ポリプロピレン製スパンボンド不織布と木材パルプ繊維層との水流交絡一体化物、表1に示す寸法の第一、第二の凹凸部を肌側表面全面に有し、第二の凸部の平面形状が略正六角形である、木材パルプ繊維含有量80質量%、厚み0.5mm、目付60g/m)、及び吸収体(表1では上層吸収体、SAPとフラップパルプとを含む層)を用い、かつセカンドシート及び吸収体と同寸のトップシート(エアスルー不織布、目付20g/m)、幅寸法170 mm、長さ寸法510mmのバックシート(ポリプロピレン製樹脂フィルム、目付20g/m)を用い、所定順序で積層し、所定箇所を接着して、図2に示す構成を有する本発明の吸収性物品を作製した。
【0063】
なお、ポリプロピレン製スパンボンド不織布と木材パルプ繊維層との水流交絡一体化物であるパルプ含有不織布を顕微鏡観察したところ、木材パルプ層内では木材パルプ繊維が互いに絡み合い、また、スパンボンド不織布と木材パルプ層との界面では、木材パルプ繊維が、該不織布を構成するポリプロピレン繊維に絡みつき、強固な固着が認められた。また、パルプ含有不織布の凹凸が形成された面では、木材パルプ繊維がスパンボンド不織布を厚み方向に貫通して、その一部が露出していた。
【0064】
(実施例2)
吸収体(上層吸収体)に、表1に記載の幅及び長さを有し、吸収体の幅方向中央部において長手方向に延びるスリットを形成する以外は、実施例1と同様にして、図6に示す構成を有する本発明の吸収性物品を作製した。
【0065】
(実施例3)
吸収体(上層吸収体)に、表1に記載の幅及び長さを有し、吸収体の幅方向中央部において長手方向に延びるスリットを形成し、その下層に同じ構成を有する吸収体(下層吸収体)を積層する以外は、実施例1と同様にして、図7に示す構成を有する本発明の吸収性物品を作製した。
【0066】
(比較例1)
セカンドシートがその肌側表面に第二の凹凸部を有しない以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成を有する、比較用の吸収性物品を作製した。
【0067】
(比較例2)
セカンドシートがその肌側表面に第一、第二の凹凸部を有しない以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成を有する、比較用の吸収性物品を作製した。
【0068】
(比較例3)
セカンドシートとして、パルプ含有不織布に代えてポリプロピレン製エアスルー不織布(厚み0.5mm、目付20g/m)を用いる以外は、実施例1と同様にして、図8に示す構成を有する比較用の吸収性物品を作製した。
【0069】
(比較例4)
セカンドシートとして、パルプ含有不織布に代えてティシュー(厚み0.04mm、目付10g/m)を用いる以外は、実施例1と同様にして、図8に示す構成を有する比較用の吸収性物品を作製した。
上記で得られた実施例1~3、及び比較例1~4の吸収性物品について、次のようにして吸収速度の測定、及び官能試験(吸収後の違和感、吸収性)を実施した。結果を表1に示す。
【0070】
(吸収速度)
中央に内径30mmの穴が開いており、質量2kgとした測定治具を、実施例1~3及び比較例1~4の各吸収性物品のトップシート中心部の上に置き、35gf/cmの荷重下において上部の穴から0.9%生理食塩水を20ml注入し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点を開始点とし、測定治具の中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれる時点を終了点として時間(s)を計測した。この試験を3回実施した。数値が小さいほど吸収性能に優れることを示す。
【0071】
(官能試験)
実施例1~3及び比較例1~4の吸収性物品であるパッドを紙おむつのインナーとして、日常的に紙おむつを着用するパネラー10名に一晩(10時間)着用してもらい、排尿吸収後の装着時の違和感(表1では「体液吸収後の違和感」)と吸収性の良否(表1では「体液吸収性」)について以下の基準で評価した。
○:「吸収後に装着時の違和感がほとんどなかった」「排尿後すぐに吸収していた」が8人以上10人以下のとき
△:「吸収後の装着時の違和感が多少あった」「排尿後、吸収までに多少時間がかかった」が5人以上7人以下のとき
×:「吸収後の装着時の違和感があった」「排尿後、吸収までに時間がかかった」がいないか4人以下のとき
【0072】
【表1】
【0073】
比較例1の吸収性物品は、セカンドシートとしてのパルプ含有不織布がスパンボンド不織布の表面に第一の凹凸部を有することにより、官能評価(体液吸収後の違和感)は良好であったものの、官能評価(体液吸収性)は△であり、吸収速度も遅かった。また、比較例2の吸収性物品は、セカンドシートとしてスパンボンド不織布面に凹凸部を有しないパルプ含有不織布を用いることにより、2つの官能評価は良好であったものの、吸収速度の点でさらなる改良の余地が残されていた。また、セカンドシートとしてエアスルー不織布 又はティッシュを用いた場合には、2つの官能評価及び吸収速度がいずれも不十分であった(比較例3、4)。これに対し、スパンボンド不織布面に第一、第二の凹凸部を有するパルプ含有不織布をセカンドシートとして用いた実施例1~3の吸収性物品は、2つの官能評価は良好であり、かつ吸収速度が顕著に向上していた。
【0074】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0075】
1、2、3 吸収性物品
10 トップシート
11 パルプ含有不織布(セカンドシート)
12、12a、12b 吸収体
13 バックシート
14 立体ギャザー
15 親水性基材
17 セカンドシート(エアスルー不織布又はティッシュ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8