(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】皮膚疾患を治療するための局所組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4436 20060101AFI20231227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231227BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231227BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231227BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20231227BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231227BHJP
C07D 409/06 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
A61K31/4436
A61P17/00
A61K9/107
A61K47/14
A61K47/32
A61K9/08
A61K9/06
A61P17/10
A61P17/06
C07D409/06
(21)【出願番号】P 2019562657
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032359
(87)【国際公開番号】W WO2018209262
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519363845
【氏名又は名称】ボシュ ヘルス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アンヘル,アルトゥーロ
(72)【発明者】
【氏名】ピライ,ラーダークリシュナン
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/205001(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1528328(CN,A)
【文献】Cutis,1999年,Vol.63,pp.349-354
【文献】J. Drug Dermatol.,2009年,Vol.8 Iss.7,pp.650-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4436
A61P 17/00
A61K 9/107
A61K 47/14
A61K 47/32
A61K 9/08
A61K 9/06
A61P 17/10
A61P 17/06
C07D 409/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニキビ治療のためのローションの形態の局所医薬組成物であって、
該組成物中に組成物に対し0.045重量%で存在するタザロテンまたは薬学的に許容されるタザロテン酸塩、および
皮膚科学的に許容される水中油型エマルションビヒクルを含み、
前記タザロテンまたはタザロテン酸塩を単一の活性医薬成分として含む、組成物。
【請求項2】
タザロテンまたはタザロテン酸塩が前記エマルションの液状油成分に溶解している請求項1に記載の局所医薬組成物。
【請求項3】
前記エマルションの油相は、式R
1OOC-(CH
2)
n-COOR
2(式中、R
1およびR
2は、C1~4含有アルキル基またはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよく、(CH
2)
nは直鎖または分岐鎖であり、nは1~12である。)で示されるジカルボン酸エステル(DCAE)、式CH
3-(CH
2)
n-COOR
1(式中、R
1は、C1~4のアルキル基またはアリール基であり、(CH
2)
nは直鎖または分岐鎖であり、nは1~12である。)で示されるモノカルボン酸エステル(MCAE)またはそれらの組み合わせを含む液状油成分を含む請求項1または2に記載の局所医薬組成物。
【請求項4】
前記エマルションの水相は、水およびカルボマーホモポリマーを含む請求項1~3のいずれかに記載の局所医薬組成物。
【請求項5】
水、カルボマーホモポリマーおよびポリマー乳化剤を含む水相と、ジカルボン酸エステルおよび鉱油からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分およびタザロテンまたはタザロテン酸塩を含む油相を含む請求項1~4のいずれかに記載の局所医薬組成物。
【請求項6】
前記エマルションの油相は、セバシン酸ジエチルを含む請求項1~5のいずれかに記載の局所医薬組成物。
【請求項7】
pHが約4~約6である請求項1~6のいずれかに記載の局所医薬組成物。
【請求項8】
1日1回少なくとも8週間、必要に応じて少なくとも12週間患部に
局所適用される、請求項1~7のいずれかに記載の局所医薬組成物。
【請求項9】
尋常性座瘡を患う患者の身体の患部に局所適用される請求項1~8のいずれかに記載の局所医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニキビおよび乾癬などの皮膚疾患を治療するための局所組成物および方法に関する。特に、本発明は、水中油型エマルションビヒクル中にタザロテンまたは薬学的に許容されるタザロテン酸塩を含む、皮膚疾患の治療のための局所医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノイドタザロテンは、商業的に入手可能で、ニキビおよび乾癬の局所的治療に用いられてきた。しかしながら、タザロテンは、特に治療の初期の第1週から第4週に著しい局所皮膚刺激を引き起こす可能性があり、多くの患者が皮膚刺激のために治療を中止することで長期間の使用を制限する。ニキビ、乾癬およびその他の皮膚疾患のケアのための副作用の少ない、より効果的で安全な局所用薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、広く、ニキビおよび乾癬などの皮膚疾患を治療するための局所組成物および方法を提供する。
【0004】
一態様において、本発明は、組成物に対し0.050重量%未満の正の濃度で組成物中に存在するタザロテンまたは薬学的に許容されるタザロテン酸塩、および皮膚科学的に許容できる水中油型エマルションビヒクルを含む、ニキビおよび乾癬を含む皮膚疾患の治療のための局所医薬組成物を提供する。
【0005】
他の態様において、本発明は、組成物に対し0.050重量%未満の正の濃度で組成物中に存在するタザロテンまたは薬学的に許容されるタザロテン酸塩、および皮膚科学的に許容できる水中油型エマルションビヒクルを含有する医薬組成物を皮膚疾患患者の身体の患部に局所的に適用することを含む、ニキビおよび乾癬を含む皮膚疾患の治療方法を提供する。
【0006】
他の態様によれば、本発明の局所医薬組成物は、タザロテンまたはその塩を、組成物に対し0.01~0.049重量%または組成物に対し約0.045重量%で含んでいてもよい。
【0007】
他の態様によれば、タザロテンまたはタザロテン酸塩は、前記エマルションの液状油成分中に溶解していてもよい。
【0008】
他の態様によれば、本発明の局所医薬組成物は、タザロテンまたはタザロテン酸塩を単一の活性医薬成分として含有していてもよい。
【0009】
さまざまな態様によれば、前記エマルションの油相は、DCAE、MCAEまたはそれらの組み合わせを含む液状油成分を含むことができる。他の態様において、前記油相は、DCAEとしてセバシン酸ジエチルを含む。
【0010】
他の態様によれば、前記エマルションの水相は、水およびカルボマーホモポリマーを含むことができる。
【0011】
他の態様によれば、本発明の局所医薬組成物は、水、カルボマーホモポリマーおよびポリマー乳化剤を含む水相と、ジカルボン酸エステルおよび鉱油からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分およびタザロテンまたはタザロテン酸塩を含む油相とを含み得る。
【0012】
他の態様によれば、前記水相は、保湿剤またはメチルパラベン、プロピルパラベンおよびソルビトールからなる群より選ばれる少なくとも1つの成分などの保存料をさらに含んでいてもよい。
【0013】
他の態様によれば、本発明の局所医薬組成物は、ローションまたはクリームの形態であり得る。
【0014】
他の態様によれば、本発明の局所医薬組成物は、pHが約4~約 6であり得る。
【0015】
本発明の方法について、前記適用工程は1日1回少なくとも8週間実施することができる。
【0016】
一態様によれば、前記適用は1日1回少なくとも12週間実施される。
【0017】
他の態様によれば、本組成物を、尋常性座瘡を患う患者の身体の患部にその症状を治療するために適用することができる。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面および以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、外来被検者によるEGSSのグラフである。
【
図2】
図2は、炎症性皮疹の基準からの変化のグラフである。
【
図3】
図3は、非炎症性皮疹の基準からの変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、広く、ニキビおよび乾癬を含む皮膚疾患を治療するための局所組成物および方法を提供する。
【0021】
本開示全体において、特に明記しない限り、組成物の成分濃度は、組成物全体の重量%である。
【0022】
一態様において、本発明の局所医薬組成物 は、タザロテンまたはタザロテン酸の薬学的に許容される塩を、現在、局所製剤に利用されている濃度よりも低い濃度で含む。たとえば、タザロテンまたはタザロテン酸塩は、0.05重量%未満の正の濃度で組成物中に含まれる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、タザロテンまたはタザロテン酸塩は、組成物重量に基いて0.05%未満の正の濃度で組成物中に存在する。たとえば、該成分は、約0.01~約0.049重量%または約0.01~約0.045重量%または約0.02~約0.045重量%または約0.03~約0.045重量%の範囲で、または約0.045重量%で存在する。該成分は、0.01重量%、0.015重量%、0.02重量%、0.025重量%、0.03重量%、0.035重量%、0.04重量%および0.045重量%の特定濃度であってもよい。
【0024】
一態様において、本発明の局所医薬組成物は、連続水相内に内相の油相が分散された水中油型エマルションを担体ビヒクルとして含む。該エマルションは、マクロエマルションでも、ミクロエマルションでも、ナノエマルションでもよい。本組成物は、ゲル、ローション、またはクリーム、または軟膏、または液体、または油、またはスプレーまたは泡の剤形であり得る。
【0025】
本発明の組成物は、タザロテン活性成分に加え、液状油、ワックス粘度調整剤、増粘剤、ゲル化剤、アルコール、界面活性剤、キレート剤、緩衝剤、保存料、保湿剤、皮膚軟化剤、安定剤、希釈剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、安定剤、pH調整剤、溶媒または共溶媒などの皮膚科学的に許容される賦形剤を1または複数含むことができる。
【0026】
本発明の組成物は、ゲル、ローション、クリームまたは軟膏の形態の製剤で提供され得るように、粘度を付与するための増粘剤を含むことが望ましい。増粘剤は、水性流体に混和性または溶解性であってもよい。適切な増粘剤の非限定的な例としては、アカシア、アルギン酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、カルボマー(架橋ポリアクリル酸であるカルボキシビニルポリマーとしても知られる)、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、トラガカント、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよびベントナイトなどが挙げられる。増粘剤は、製剤の油相または親油性部分に存在してもよい。適切な親油性増粘剤の例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、白蜜蝋、微晶質ワックス、水添ポリイソブタンポリマー、および乳化ワックスなどが挙げられる。
【0027】
好適な増粘剤は、カーボポール(Carbopol)(登録商標)およびポリカルボフィル(ルーブリゾール社(The Lubrizol Corporation),オハイオ州ウィクリフ)などのカルボマー類である。カーボポール(登録商標)ホモポリマー類は、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸ポリマーである。カーボポール(登録商標)コポリマー類は、アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸とC10-C30 アルキルアクリラートとのポリマーである。カーボポール(登録商標)インターポリマー類は、ポリエチレングリコールと長鎖アルキル酸エステルとのブロックコポリマーを含有するカルボマーホモポリマーまたはコポリマーである。ノベオン(Noveon)(登録商標)ポリカルボフィルは、ジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸ポリマーである。
【0028】
界面活性剤または乳化剤は、所望によりまたは必要に応じて、任意に含まれる。本発明の組成物は、薬学的に許容される陰イオン、陽イオンまたは非イオン界面活性剤を含んでいてもよい。非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の非限定的な例は、オクトキシノール 1、3、5、8、9、10、12、13、16、30、40、70(数字は、オキシエチレン繰り返し単位数を示す)、またはオキシエチレン繰り返し単位数の異なる側鎖を有する他のオクトキシノールなどのオクトキシノール(マクロゴールテトラメチルブチルフェニルエーテル、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、またはポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとしても知られる)、ソルビタンエステル(一般にそれらの商品名スパン(Span)80およびスパン60により知られている、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタンモノステアレートなど)、ポリソルベート(一般にそれらの商品名ツイーン(登録商標)80、ツイーン(登録商標)60、ツイーン(登録商標)20)により知られている、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)など)、ポロキサマー(一般にそれらの商品名プルロニック(Pluronic)(登録商標);たとえば、プルロニック(登録商標)F127またはプルロニック(登録商標)F108により知られているエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの合成ブロックポリマー)、または一般にそれらの商品名テトロニック(Tetronic)(登録商標); たとえば、テトロニック(登録商標)1508またはテトロニック(登録商標)908など)により知られているポロキサミン(エチレンジアミンに結合したエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの合成ブロックポリマー、Brij(登録商標)(式CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OHで示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル)、Myrj(登録商標)(40-100の繰り返しオキシエチレン単位を有するポリオキシエチレンでエステル化されたステアリン酸)などの他の非イオン性界面活性剤、および炭素原子約12以上(たとえば、約12~約24炭素原子)の炭素鎖を有する長鎖脂肪アルコール(たとえば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、 ミリスチルアルコール、ドコサヘキサノイルアルコールなど)である。
【0029】
さらに、ペムレン(Pemulen)(登録商標)(ルーブリゾール社,オハイオ州ウィクリフ)の商品名で知られているものなどのポリマー乳化剤を使用してもよい。これらは、長鎖(C10-C30)アルキルアクリラートにより変性され、アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸ポリマーである。
【0030】
アニオン性乳化剤、たとえばオレイン酸ナトリウムまたはカリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびドクサートナトリウムなどを用いることができる。四級アンモニウム塩などのカチオン性乳化剤はあまり好ましくない。さらに他の乳化剤としては、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、オレイン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどが挙げられる。
【0031】
本製剤は、所望により、グリセリン、ソルビトール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールまたは尿素などの皮膚科学的に許容される保湿剤を含有する。さらに、製剤は、ペトロラクタム、ラノリン、鉱油、軽油(light mineral oil)、ステアリン酸、シクロメチコンまたはジメチコンなどの皮膚軟化剤を含有することができる。本発明の製剤は、EDTAおよびその塩などのキレート剤を含有することができる。
【0032】
本組成物の液状油成分としては、水に実質的に不溶性であるかまたは不溶性であって、室温で液体である1または複数の材料が挙げられる。たとえば、一実施形態において、組成物の液状油成分としては、水に実質的に不溶性であるかまたは不溶性であって、22℃の室温で液体である1または複数の材料が挙げられる。液状油成分は、ジカルボン酸エステル(「DCAE」)、モノカルボン酸エステル(「MCAE」)、魚肝油、長鎖トリグリセリド(各側鎖の炭素数が14~18である、ピーナッツ油、ゴマ油、ココナッツ油、ヒマワリ油、コーン油、オリーブ油、綿実油またはそれらの誘導体など)、プロピレングリコールジエステル、中鎖トリグリセリド(それぞれ炭素数8-10の側鎖を有するものなど;たとえば、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド)、鉱油のような炭化水素、軽油、スクアレンおよびスクアラン、脂肪アルコール(オクチルドデカノールおよびイソステアリルアルコールなど)、および脂肪酸(イソステアリン酸およびオレイン酸など)からなる群からの1または複数の成分から選び得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、液状油成分は、ジカルボン酸エステルおよび軽油を含む。いくつかの他の実施形態では、液状油成分は、1または複数の長鎖トリグリセリドを含む。
【0034】
製剤は、他の親油性液体を、ジカルボン酸エステルおよび/またはモノカルボン酸エステルと混和するのに充分な量で含有していてもよい。親油性液体は、ラノリン油、鉱油、軽油、イソステアリン酸、スクアレン、オクチルドデカノール、分画ココナツオイル、シクロメチコン、またはジメチコンなどの皮膚軟化剤であってもよい。
【0035】
液状油成分に加えて、本製剤は、室温で液体ではないが液状油成分には溶解する、水に不溶性または実質的に不溶性の成分を含有することができる。
【0036】
本発明に好適なDCAEは、式R1OOC-(CH2)n-COOR2で示され、式中、R1およびR2は、C1~4含有アルキル基または アリール基であり、同一であっても異なっていてもよく、(CH2)nは直鎖または分岐鎖であり、nは1~12である。1または複数のアリール基を含有するDCAEの例は、ジカルボン酸のジベンジルエステルである。好ましいジカルボン酸エステルは、式CH3CH2OOC-(CH2)8-COOCH2CH3で示されるセバシン酸ジエチルである。他の好ましいジカルボン酸エステル(R1およびR2は同一の場合)の例は、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、およびアゼライン酸などのジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジイソプロピル、ジブチルおよびジイソブチルエステルである。好ましいジカルボン酸エステル(R1およびR2が異なる場合)の例は、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸のメチルエチル、メチルプロピル、メチルブチル、メチルイソプロピル、エチルプロピル、エチルブチル、エチルイソプロピル、およびプロピルブチルエステルである。
【0037】
いくつかの態様において、セバシン酸ジエチルは、組成物重量に対し0.1~20重量%、または0.5~10重量%、または 2~4重量%で含まれる。
【0038】
別の態様では、またはDCAEとの組み合わせで、本製剤は、MCAEを含有していてもよい。本発明に好適なMCAEは、式CH3-(CH2)n-COOR1で示され、式中、R1は、C1~4のアルキル基またはアリール基であり、(CH2)nは直鎖または分岐鎖であり、nは1~12である。このようなモノカルボン酸エステルの例としては、ギ酸ベンジル、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはアリールエステルが挙げられる。好ましいモノカルボン酸エステルの例は、パルミチン酸イソプロピルおよびミリスチン酸イソプロピルである。
【0039】
液状油相は、エマルション内の1または複数の活性成分を溶解するために有益に使用される。一実施形態では、タザロテン成分は、室温で、製剤内の液状油相に溶解される。他の実施形態では、タザロテン成分は、室温で、製剤内に懸濁される。タザロテン成分が製剤中に懸濁される場合には、該懸濁された活性成分は、微粉にすることができ、より具体的に、平均粒径は、好ましくは直径約25マイクロメートル以下である。
【実施例】
【0040】
一態様において、本発明の組成物は、各成分を表1に示す濃度で含む。
【0041】
【0042】
本発明の組成物の非限定的な実施例を表2に示す。
【0043】
【0044】
表2に組成物Aとして示す組成のローションは、以下のとおり調製することができる。
水相を単独で調製する。混合器具(プロペラなど)および温度制御を装備した製造容器内で、純水およびエデト酸二ナトリウム二水和物を合わせ、透明な溶液となるまで混合物を撹拌する。次いで、ソルビトール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを混合物に加える。混合物を連続的に混合し、約75℃に加熱する。溶液が得られるまで混合物を撹拌する。その後、混合物を熱源から離し、混合を続けながら40℃未満まで冷却する。連続的に混合しながら、カーボポール(登録商標)981およびペムレン(Pemulen)(登録商標)TR-1カルボマーを混合物に添加し、分散させる。2つのカルボマーが充分に分散し水和するまで混合を続ける。
【0045】
油相を単独で調製する。プロペラなどの混合器具を装備した製造容器内で、セバシン酸ジエチルおよびタザロテンを合わせる。溶液となるまで混合物を撹拌する。混合を続けながら、軽油およびソルビタンモノオレエートを添加する。溶液が得られるまで混合を続ける。
【0046】
別の容器内で、約2.5N水酸化ナトリウム溶液を調製する。
【0047】
高速で混合しながら、活性成分(タザロテン)を含有する前記油相を前記水相に加える。均質エマルションが得られるまで混合を続ける。混合速度を落とし、さらに10分~1時間の間混合を続ける。混合を続けながら、pHが5.5±0.5となるまで適量の水酸化ナトリウム溶液を徐々に添加する。均質ローションが得られるまで、さらに混合を30分~3時間程度続ける。
【0048】
タザロテン(表2の「組成物A」ローション)を含有する本発明の組成物の有効性を比較するために、ニキビ患者の臨床試験を実施した。
【0049】
第1プラセボ(「プラセボローション」)は、タザロテンを含まないこと以外、組成物Aに相当し、かつ同一粘度を有する。第2プラセボ(「プラセボクリーム」) は、この研究で用いられた0.1%タザロテンクリームに匹敵する高粘度エマルションを得るためにカルボマーホモポリマータイプAに代えてカルボマーホモポリマータイプCを用いた以外は、プラセボローションに相当する。これにより、試験製剤のより良い盲検化が可能になり、臨床試験の制御が可能になる。以下に示す結果において、プラセボローションおよびプラセボクリームについてのデータは統合され、「プラセボ統合」として報告されることがある。
【0050】
さらに、この臨床試験では、商業的に入手可能な0.1%タザロテンクリーム(タゾラク(Tazorac)(登録商標)0.1%クリーム)を比較目的で用いた。
【0051】
尋常性座瘡を患う患者について、ニキビ患者だけでなく治験責任医師も割り当てられた試験組成物の正体を知ることなく、二重盲検、多重部位、ランダム化臨床試験を実施した。患者210人は、組成物Aローション、Tazorac(登録商標)0.1%クリーム、プラセボローションおよびプラセボクリームのどれが施されるか2:2:1:1のランダム化でランダム化された:
69被験者「組成物A ローション」
72被験者 「Tazorac(登録商標)0.1%クリーム」
34被験者 「プラセボローション」
35被験者 「プラセボクリーム」。
【0052】
主要な選択基準は、中程度から重度のニキビで、炎症性皮疹数が20以上40以下で、非炎症性皮疹数が20以上100以下であった。盲検ラベルが付されたローションは、12週間にわたって1日1回、患部に適用され、2週、4週、8週および12週目に評価された。
【0053】
治験責任医師は、治療可能患部を評価し、総合重症度スコア(EGSS)を決定し、改善度合を決定することにより、各外来被検者(visit)における有効性を観察した。EGSSは、以下のグレードを含む:
消失=0、ほぼ消失=1、軽度=2、中等度=3、重度=4。
【0054】
臨床的有効性は、主に、12週目における治癒被験者の%に基づいて決定された。治療が成功したと判断するには、表4、6および7に示されるように、被験者は、基準から少なくとも2段階の改善と、「消失」または「ほぼ消失」に相当するEGGSスコアを示さなければならない。炎症性および非炎症性皮疹の数についても評価された。
【0055】
表3は基準特性を示す。
【0056】
【0057】
表4は、治療企図(ITT)に基づく治療成功率%を示す。
【0058】
【0059】
表5は、炎症性皮疹における基準からの絶対的変化を示す。炎症性および非炎症性皮疹における基準からの変化を
図2および3に示す。
【0060】
【0061】
表6は、EGSSについて治療企図(ITT)に基づく治療成功率%を示す。皮疹について、炎症性および非炎症性の平均個数における基準から12週目の絶対的変化を示す。
【0062】
【0063】
表7は、EGSSについてプロトコルごとの基準に基づく治療成功率%を示す。皮疹について、炎症性および非炎症性の平均個数における基準から12週目の絶対的変化を示す。
【0064】
【0065】
本組成物を皮膚の安全性および忍容性について試験した。皮膚忍容性は、被験者から報告された灼熱感、刺痛または掻痒感によって評価した。このデータを要約して
図4に示す。皮膚の安全性は、治験責任医師の判定した鱗屑、紅斑、色素沈着低下および色素沈着過剰により評価した。このデータを要約して
図5に示す。
【0066】
表8は、治療により生じた有害事象の特徴を報告する。
【0067】
【0068】
表9は、12週目における主な有効性についての治療成功率%を示す。EGSSについて、治療が成功したと判断するには、被験者は、基準から少なくとも2段階の改善と、「消失」または「ほぼ消失」に相当するEGGSスコアを示さなければならない。炎症性および非炎症性皮疹について、炎症性および非炎症性の平均個数における基準から12週目の絶対的変化を示す。
【0069】
とりわけ、本臨床試験は、タザロテン活性成分を半分以下しか含有しない組成物Aが、Tazorac(登録商標)0.1%クリームよりも数値的に優れた効果を有することを示した。有害事象プロファイルも、組成物Aの方がTazorac(登録商標)0.1%クリームよりも少なかった。
【0070】
他の態様において、本発明は、ニキビの治療方法を提供する。該方法は、ニキビ患者の身体の患部に、本明細書に記載の本発明の組成物のいずれか1つを、1日に1または複数回、そのようなニキビを治療するのに十分な期間適用することを含む。たとえば、そのような期間は、1~30日または必要に応じてそれ以上であってもよく、たとえば、そのような期間は、1週間、2週間、4週間、8週間、12週間、または必要に応じてそれ以上であってもよい。たとえば、本発明の組成物は、1日1回、7~14日間前記身体の患部に局所的に適用される。あるいは、1日に2~3回、7~14日間適用されてもよい。あるいは、1日1回、1週間~6月間適用されてもよい。たとえば、1日1回、2週間、4週間、8週間または12週間適用することができる。一実施形態において、治療は、別の治療継続期間を再開する前の継続期間の治療後、1~7日間(例えば、2、3、4、5、6または7日間)停止することができる。そのような継続期間は、さらなる治療が必要または所望される前に、7日間、7~14日間、7~21日間、7~30日間またはもっと長くてもよい。
【0071】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の医薬組成物のいずれかを用いるニキビの局所的治療方法を提供するが、該方法は、組成物を1日1回2週間以上、たとえば4週間、8週間または12週間適用し、重度の有害事象がないか、および/または0.1%タザロテンクリームに比べ改善された有害事象プロファイルを有する。
【0072】
さらなる別の態様において、本発明は、本発明の医薬組成物のいずれかを用いるニキビの局所的治療方法を提供するが、該方法は、1日1回12週間適用し、0.1%タザロテンを含有する商業的組成物よりも臨床的有効性に優れかつ少ない有害事象プロファイルを有する。
【0073】
本開示は、いくつかの実験的実施形態を示し説明するが、基本的な発明概念の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまなさらなる改変を行うことができること、および本明細書に提示および説明される特定の組成物、プロセス、方法または構造と同一であることに限定されないことは当業者には明らかであろう。