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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】搬送車両車載器及び通知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231227BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231227BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/00 X
G08G1/09 F
G08G1/09 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020024964
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131586
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】今田 隼人
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-097592(JP,A)
【文献】特開2018-206248(JP,A)
【文献】特開2016-099831(JP,A)
【文献】特開2006-306601(JP,A)
【文献】特開2018-139033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0098146(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車両に搭載された搬送車両車載器であって、
車外の移動体により保有される信号発信端末からの信号の受信強度の情報を取得する受信強度取得手段と、
前記搬送車両の移動の有無を示す移動情報を取得する移動情報取得手段と、
前記受信強度取得手段、及び、前記移動情報取得手段により取得された情報に基づいて危険レベルを判断して通知処理を行う通知処理手段と、
前記搬送車両の周囲を撮像して得られた撮像画像の情報を取得する画像情報取得手段と、
前記画像情報取得手段により取得された前記撮像画像の情報に基づいて、前記搬送車両における搬送物により規定以上の運転者から見た視界を確保できているかを判断する視界判断手段とを備え、
前記通知処理手段は、前記受信強度取得手段により取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、前記移動情報取得手段により前記搬送車両の移動が確認される場合において、前記視界判断手段により規定以上の運転者から見た視界を確保できていないときに、危険レベルが高いと判断して通知処理を行い、
前記受信強度取得手段により取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合であっても前記移動情報取得手段により前記搬送車両の移動が確認されない場合、及び、前記受信強度取得手段により取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、前記移動情報取得手段により前記搬送車両の移動が確認される場合であっても、前記視界判断手段により規定以上の運転者から見た視界を確保できていると判断された場合には危険レベルが高くないと判断して通知処理を行うことを禁止する
ことを特徴とする搬送車両車載器。
【請求項2】
請求項に記載の搬送車両車載器と、
複数台の前記搬送車両車載器と通信可能なサーバーと、を備えた通知システムであって、
複数台の前記搬送車両車載器は、それぞれ、前記通知処理手段により通知処理が行われた場所の情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶された前記場所の情報を前記サーバーに送信する通信手段と、を更に備え、
前記サーバーは、複数台の前記搬送車両車載器の前記通信手段により送信された前記場所の情報を収集し、収集された前記場所の情報に基づいて危険エリアを判断してフィードバックし、
個々の前記搬送車両車載器の前記通知処理手段は、前記サーバーによりフィードバックされた前記危険エリアの情報に基づいて、事前に通知処理を行う
ことを特徴とする通知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車両車載器及び通知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソナー及びレーダーにより車両に接近してくる人等の移動体を検知して警報を鳴らすことができる車載器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-135957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車載器は、ソナー及びレーダーといった移動体との間隔を測定するための間隔センサを車両の前後左右等の多方向に設置しなければならず、構成の複雑化を招き、コスト的に不利となる可能性があった。特に、限られた敷地内のみで使用されるフォークリフト等の搬送車両については、コスト的に不利となる高価な専用部品が搭載され難い傾向があり、構成の複雑化を抑えつつ移動体との衝突を避ける機能を搭載できることが望まれる。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、構成の複雑化を抑えつつ移動体との衝突の可能性を低減することができる搬送車両車載器及び通知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送車両車載器は、搬送車両に搭載された搬送車両車載器であって、車外の移動体により保有される信号発信端末からの信号の受信強度の情報を取得する受信強度取得手段と、前記搬送車両の移動の有無を示す移動情報を取得する移動情報取得手段と、前記受信強度取得手段、及び、前記移動情報取得手段により取得された情報に基づいて危険レベルを判断して通知処理を行う通知処理手段と、前記搬送車両の周囲を撮像して得られた撮像画像の情報を取得する画像情報取得手段と、前記画像情報取得手段により取得された前記撮像画像の情報に基づいて、前記搬送車両における搬送物により規定以上の運転者から見た視界を確保できているかを判断する視界判断手段とを備え、前記通知処理手段は、前記受信強度取得手段により取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、前記移動情報取得手段により前記搬送車両の移動が確認される場合において、前記視界判断手段により規定以上の運転者から見た視界を確保できていないときに、危険レベルが高いと判断して通知処理を行い、前記受信強度取得手段により取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合であっても前記移動情報取得手段により前記搬送車両の移動が確認されない場合、及び、前記受信強度取得手段により取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、前記移動情報取得手段により前記搬送車両の移動が確認される場合であっても、前記視界判断手段により規定以上の運転者から見た視界を確保できていると判断された場合には危険レベルが高くないと判断して通知処理を行うことを禁止する
【0007】
また、本発明に係る通知システムは、上記に記載の搬送車両車載器と、複数台の前記搬送車両車載器と通信可能なサーバーと、を備えた通知システムであって、複数台の前記搬送車両車載器は、それぞれ、前記通知処理手段により通知処理が行われた場所の情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶された前記場所の情報を前記サーバーに送信する通信手段と、を更に備え、前記サーバーは、複数台の前記搬送車両車載器の前記通信手段により送信された前記場所の情報を収集し、収集された前記場所の情報に基づいて危険エリアを判断してフィードバックし、個々の前記搬送車両車載器の前記通知処理手段は、前記サーバーによりフィードバックされた危険エリアの情報に基づいて、事前に通知処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成の複雑化を抑えつつ移動体との衝突の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る通知システムを示す構成図である。
図2図1に示した各搬送車両車載器の詳細を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る搬送車両車載器の動作の概要を示す概略図であり、(a)は搬送車両が後退している場合を示し、(b)は搬送車両が前進している場合を示している。
図4図2に示した搬送車両車載器による接近警報方法を示す第1のフローチャートである。
図5図2に示した搬送車両車載器による接近警報方法を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る通知システムを示す構成図である。図1に示す通知システム1は、複数の搬送車両車載器10と、サーバー20と、複数のビーコン送信機(信号発信端末)30とを備えて構成されている。複数の搬送車両車載器10は、それぞれがフォークリフト等の搬送車両TVに搭載されるものであり、搬送車両TVの乗務員認証を行う認証装置である。この搬送車両車載器10は、例えば搬送車両TVが使用される倉庫等の管理事務所に設置されるサーバー20と通信可能に構成されている。
【0012】
搬送車両TVが使用される敷地内では搬送車両TVの乗務員C以外の作業者(移動体の一例)Wがビーコン送信機30を携帯している。ビーコン送信機30は、電波を発信するものであり、例えば作業者Wの社員証等に内蔵されている。なお、ビーコン送信機30は、社員証に限らず、作業指示書やかんばん等の作業中の作業者Wに所持(携帯)されるものであれば、他のもの(ヘルメットや帽子等)に内蔵等されていてもよい。
【0013】
各搬送車両車載器10は、このようなビーコン送信機30からの電波を受信すると共に受信電波の強度等に基づいて危険レベルを判断し、作業者Wとの衝突を回避するように乗務員Cに対して通知(接近警報通知)を行う。
【0014】
また、複数の搬送車両車載器10は、通知(通知処理)を行った時間及び場所の情報をサーバー20に送信する。サーバー20は、複数の搬送車両車載器10から受信した情報に基づいて、特定の処理又はAIによる処理を行って危険エリアを判断し、危険エリアの情報を個々の搬送車両車載器10に対してフィードバックする。各搬送車両車載器10は、フィードバックされた危険エリアの情報に基づいて(例えば搬送車両TVが危険エリアに差し掛かる場合に)、乗務員Cに対して事前に通知を行う。
【0015】
図2は、図1に示した各搬送車両車載器10の詳細を示すブロック図である。図2に示すように、搬送車両車載器10は、ビーコン受信部11と、速度検出部12と、音声出力部13と、CPU(Central Processing Unit)14とを備えている。
【0016】
ビーコン受信部11は、作業者Wにより保有されるビーコン送信機30からの電波を受信するものであり、ビーコンアンテナ11aと、ビーコンモジュール11bとを備えている。ビーコン受信部11は、ビーコンアンテナ11aにより受信された電波の信号をビーコンモジュール11bを介してCPU14に送信する。
【0017】
速度検出部12は、搬送車両車載器10の速度を検出するものであり、例えば車速センサによって構成されている。速度検出部12は、車速に応じた信号をCPU14に送信する。音声出力部13は、搬送車両車載器10からの指示に従って接近警報通知を行うものであって、スピーカ13aと音声コーディック13bとを備えている。音声出力部13は、音声コーディック13bを介してスピーカ13aから接近警報通知の音声出力を行う。
【0018】
CPU14は、搬送車両車載器10の全体を制御するものであり、受信強度取得部(受信強度取得手段)14aと、移動情報取得部(移動情報取得手段)14bと、通知処理部(通知処理手段)14cとを備えている。
【0019】
受信強度取得部14aは、ビーコン受信部11から送信される信号に基づいて、車外の作業者Wにより保有されるビーコン送信機30からの信号の受信強度の情報を取得するものである。ここで、受信強度は、搬送車両TVとビーコン送信機30との距離が近くなるほど強くなる傾向にある。よって、受信強度取得部14aは、受信強度に基づいて作業者Wが近接しているか否かの情報を取得できることとなる。
【0020】
移動情報取得部14bは、速度検出部12からの速度信号に基づいて、搬送車両TVの移動の有無を示す移動情報を取得するものである。この移動情報取得部14bは、速度信号がゼロを示すものではない場合に搬送車両TVが移動中である旨の移動情報を取得し、速度信号がゼロを示すものである場合に搬送車両TVが移動中でない旨の移動情報を取得する。
【0021】
通知処理部14cは、受信強度取得部14a、及び、移動情報取得部14bにより取得された情報に基づいて危険レベルを判断して通知を行うものである。この通知処理部14cは、受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、移動情報取得部14bにより搬送車両TVの移動が確認される場合に、危険レベルが高いと判断して通知処理を行う。これにより、音声出力部13から接近警報通知が出力される。
【0022】
一方、通知処理部14cは、受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合であっても、移動情報取得部14bにより搬送車両TVの移動が確認されない場合に、危険レベルが高くないと判断して通知を行うことを禁止する。これにより、音声出力部13からの接近警報通知は行われないこととなる。また、通知処理部14cは、受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示さない場合にも、危険レベルが高くないと判断して通知処理を行うことを禁止する。
【0023】
さらに、搬送車両車載器10は、デジタル信号入力部15及び撮像部16を備えると共に、CPU14は、画像情報取得部(画像情報取得手段)14dと、視界判断部(視界判断手段)14eとを備え、これらの情報も加味して危険レベルを判断し通知処理を行うことが好ましい。
【0024】
デジタル信号入力部15は、搬送車両TVからのデジタル信号を入力する部位であり、本実施形態においてはシフトレバーがバックとされたときのバック信号を入力する。
【0025】
撮像部16は、搬送車両TVの前方を撮像する撮像手段として機能するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ16aと、カメラI/F(Interface)16bとを備えている。特に、CMOSカメラ16aは、搬送車両TVに搬送物を積載したときに、搬送物が画像内に含まれるように画角が設定されている。撮像部16は、CMOSカメラ16aにより撮像された搬送車両TVの前方画像の情報をカメラI/F16bを介してCPU14に送信する。なお、本実施形態においては搬送車両TVにフォークリフトを想定しているため、CMOSカメラ16aは車両前方を撮像しているが、これに限らず、前方以外に搬送物を積載する他の搬送車両TVについては搬送物が含まれるように他の方向(搬送物の積載方向)を撮像してもよい。
【0026】
画像情報取得部14dは、撮像部16により得られた撮像画像、すなわち搬送車両TVの前方を撮像して得られた撮像画像の情報を取得するものである。視界判断部14eは、画像情報取得部14dにより取得された撮像画像に基づいて、規定以上の視界を確保できているかを判断するものである。この視界判断部14eは、例えば速度検出部12により搬送車両TVの移動が確認されているにも関わらず、画像内に所定時間以上変化がない停止物が存在する場合、この停止物を搬送物と判断し、画像内において搬送物が占める割合(すなわち停止物の大きさ)に基づいて規定以上の視界を確保できているかを判断する。
【0027】
このような構成を備えるため、通知処理部14cは、受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、移動情報取得部14bにより搬送車両TVの移動が確認される場合において、視界判断部14eにより規定以上の視界を確保できていないときに、危険レベルが高いと判断して通知処理を行うことが好ましい。一方、通知処理部14cは、受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の強度を示し、且つ、移動情報取得部14bにより搬送車両TVの移動が確認される場合であっても、視界判断部14eにより規定以上の視界を確保できていると判断された場合には危険レベルが高くないと判断して通知処理を行うことを禁止することが好ましい。これにより、視界が開けている場合に接近警報通知を行うことなく、視界が開けていないときに通知を実行して、通知の適正化を図ることができるためである。
【0028】
加えて、搬送車両車載器10は、記憶部(記憶手段)17と、通信部(通信手段)18とを更に備え、CPU14は通信処理部14fを備えている。
【0029】
記憶部17は、搬送車両車載器10を機能させるための動作プログラムの記憶領域や各種処理を行うための作業領域となるものであり、FROM(Flash Read Only Memory)17aと、DDR(Double Data Rate)17bとを備えている。FROM17aは、電源オフ時においてもデータが失われることがない不揮発性のメモリである。DDR17bは、ダブルデータレート方式のSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。本実施形態において記憶部17は、通知処理部14cにより通知処理が行われた場所及び時間の情報を記憶するようになっている。なお、場所の情報は不図示のGPS等を利用して取得される。時間の情報は例えば不図示の時計部からの情報が利用される。
【0030】
通信部18は、LTE(Long Term Evolution)による通信を行うためのLTEアンテナ18a及びLTEモジュール18bと、Wi-Fi(登録商標)による通信を行うためのWi-Fiアンテナ18c及びWi-Fiモジュール18dとを備えている。特に、本実施形態において通信部18は、通信処理部14fの制御に従って、記憶部17により記憶された場所及び時間の情報をサーバー20に送信するようになっている。
【0031】
サーバー20は、複数台の搬送車両車載器10の通信部18により送信された場所の情報を収集し、収集された場所の情報に基づいて(例えば所定範囲からなる特定エリアにおいて収集された場所の情報が所定数以上であるかに基づいて)危険エリアを判断して各搬送車両車載器10にフィードバックする。これにより、個々の搬送車両車載器10の通知処理部14cは、サーバー20によりフィードバックされた危険エリアの情報に基づいて、事前に通知処理を行うことができる。すなわち、接近警報通知が頻発する場所に搬送車両TVが差し掛かった場合に、予め乗務員Cに通知を行って事前に注意を促すことができる。
【0032】
加えて、サーバー20は、複数台の搬送車両車載器10の通信部18により送信された場所の情報のみならず、時間の情報についても考慮することが好ましい。例えば、サーバー20は、危険エリアにおいて所定数以上の通知処理が行われた時間帯を特定することで、危険エリアにおける危険時間を判断して各搬送車両車載器10にフィードバックすることが好ましい。これにより、接近警報通知が頻発する時間帯にその場所に搬送車両TVが差し掛かった場合に、予め乗務員Cに通知を行って事前に注意を促すことができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る搬送車両車載器10の動作の概要を説明する。図3は、本実施形態に係る搬送車両車載器10の動作の概要を示す概略図であり、(a)は搬送車両TVが後退している場合を示し、(b)は搬送車両TVが前進している場合を示している。
【0034】
図3(a)に示すように搬送車両TVが後退している場合、図2に示す速度検出部12から車速に応じた信号がCPU14に送信される。また、デジタル信号入力部15を介してバック信号がCPU14に入力される。これにより、移動情報取得部14bは搬送車両TVが移動中であると判断すると共に、CPU14は搬送車両TVが後退中であると判断する。
【0035】
そして、このような場合に通知処理部14cは、後退中において受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の受信強度を示す場合、危険レベルが高いと判断して通知処理を実行する。これにより、乗務員Cに対して接近警報通知が行われる。
【0036】
また、図3(b)に示すように搬送車両TVが前進している場合、図2に示す速度検出部12から車速に応じた信号がCPU14に送信される。この際、バック信号については入力されない。これにより、移動情報取得部14bは搬送車両TVが移動中であると判断すると共に、CPU14は搬送車両TVが前進中であると判断する。
【0037】
加えて、搬送車両TVが前進中である場合、画像情報取得部14dは撮像部16による撮像によって得られた撮像画像の情報を取得する。そして、視界判断部14eは、搬送車両TVの前方側に規定以上の視界が確保されているかを判断する。
【0038】
そして、通知処理部14cは、前進中に受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の受信強度を示し、且つ、視界判断部14eにより規定以上の視界が確保されていないと判断された場合、危険レベルが高いと判断して通知処理を実行する。これにより、乗務員Cに対して接近警報通知が行われる。
【0039】
一方、通知処理部14cは、前進中に受信強度取得部14aにより取得された受信強度の情報が所定値以上の受信強度を示した場合であっても、視界判断部14eにより規定以上の視界が確保されていると判断されたときには、危険レベルが高くないと判断して通知処理の実行を禁止する。
【0040】
また、図3において図示を省略するが、搬送車両車載器10は、通知処理を行った場所及び時間を記憶部17に記憶し、記憶した場所及び時間の情報を通信部18を介してサーバー20に送信する。サーバー20は、複数の搬送車両車載器10から受信した情報を収集して危険エリアにおける危険時間帯を判断し、これを各搬送車両車載器10にフィードバックする。
【0041】
これにより、通知処理部14cは、危険時間帯に危険エリアへ差し掛かった場合、事前に通知処理を行って、乗務員Cに対して注意喚起を行う。
【0042】
図4は、図2に示した搬送車両車載器10による接近警報方法を示す第1のフローチャートである。なお、図4に示す処理は、搬送車両TVのイグニッションスイッチがオフされて搬送車両車載器10の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0043】
まず、図4に示すように、移動情報取得部14bは、速度検出部12からの速度信号に基づいて搬送車両TVが移動中であるかを判断する(S1)。搬送車両TVが移動中でない場合(S1:NO)、移動中であると判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、搬送車両TVが移動中である場合(S1:YES)、CPU14はデジタル信号入力部15に入力されるバック信号の有無に基づいて、搬送車両TVが後退中であるかを判断する(S2)。
【0044】
搬送車両TVが後退中でない場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。搬送車両TVが後退中である場合(S2:YES)、受信強度取得部14aは、ビーコン受信部11からの信号に基づいて、ビーコン送信機30からの電波が受信されているかを判断する(S3)。
【0045】
ビーコン送信機30からの電波が受信されていない場合(S3:NO)、処理はステップS1に移行する。ビーコン送信機30からの電波が受信されている場合(S3:YES)、受信強度取得部14aは、ビーコン受信部11からの信号に基づいて、電波の受信強度が所定値以上であるかを判断する(S4)。
【0046】
電波の受信強度が所定値以上でないと判断した場合(S4:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、電波の受信強度が所定値以上である場合(S4:YES)、通知処理部14cは、危険レベルが高いと判断して通知処理を実行する。これにより、音声出力部13から接近警報通知が行われる(S5)。その後、図4に示す処理は終了する。
【0047】
図5は、図2に示した搬送車両車載器10による接近警報方法を示す第2のフローチャートである。なお、図5に示す処理についても、搬送車両TVのイグニッションスイッチがオフされて搬送車両車載器10の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0048】
まず、図5に示すように、移動情報取得部14bは、速度検出部12からの速度信号に基づいて搬送車両TVが移動中であるかを判断する(S11)。搬送車両TVが移動中でない場合(S11:NO)、移動中であると判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、搬送車両TVが移動中である場合(S11:YES)、CPU14はデジタル信号入力部15に入力されるバック信号の有無に基づいて、搬送車両TVが前進中であるかを判断する(S12)。
【0049】
搬送車両TVが前進中でない場合(S12:NO)、処理はステップS11に移行する。搬送車両TVが前進中である場合(S12:YES)、視界判断部14eは前方視界判定処理を実行する(S13)。この処理において視界判断部14eは、撮像部16からの撮像画像の情報を入力し、画像内における停止物に基づいて搬送物を特定する。
【0050】
次いで、視界判断部14eは、画像内における搬送物が占める割合に基づいて、規定以上の視界が確保されているかを判断する(S14)。規定以上の視界が確保されている場合(S14:YES)、処理はステップS11に移行する。
【0051】
規定以上の視界が確保されていない場合(S14:NO)、受信強度取得部14aは、ビーコン受信部11からの信号に基づいて、ビーコン送信機30からの電波が受信されているかを判断する(S15)。
【0052】
ビーコン送信機30からの電波が受信されていない場合(S15:NO)、処理はステップS11に移行する。ビーコン送信機30からの電波が受信されている場合(S15:YES)、受信強度取得部14aは、ビーコン受信部11からの信号に基づいて、電波の受信強度が所定値以上であるかを判断する(S16)。
【0053】
電波の受信強度が所定値以上でないと判断した場合(S16:NO)、処理はステップS11に移行する。一方、電波の受信強度が所定値以上である場合(S16:YES)、通知処理部14cは、危険レベルが高いと判断して通知処理を実行する。これにより、音声出力部13から接近警報通知が行われる(S17)。その後、図5に示す処理は終了する。
【0054】
このようにして、本実施形態に係る搬送車両車載器10によれば、車外の作業者Wにより保有されるビーコン送信機30からの信号を受信して、その受信強度の情報を取得するため、作業者Wの接近度合いを知ることができる。また、搬送車両TVの移動の有無を示す移動情報を取得するため、搬送車両TVの移動の有無を考慮することができる。よって、これらの情報に基づいて危険レベルを判断して通知することで、搬送車両TVの各方向にソナーやレーダーを備える必要がなく、構成の複雑化を抑えつつ作業者Wとの衝突の可能性を低減することができる。
【0055】
また、受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合に危険レベルが高いと判断して通知処理を行う一方で、受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合であっても搬送車両TVの移動が確認されない場合には危険レベルが高くないと判断して通知処理を行うことを禁止するため、搬送車両TVの停止時という作業者Wから搬送車両TVへ衝突することがあっても搬送車両TV側からの衝突の可能性がない場合には通知処理を禁止して通知の適切化を行うことができる。
【0056】
また、受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合に危険レベルが高いと判断して通知処理を行う一方で、受信強度の情報が所定値以上の強度を示す場合であっても規定以上の視界を確保できていると判断された場合には危険レベルが高くないと判断して通知処理を行うことを禁止するため、搬送車両TVという搬送物を運ぶ際の視界悪化時に危険レベルが高いと判断して通知することとなり、通知の適切化を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態に係る通知システム1によれば、複数台の搬送車両車載器10において通知処理が行われた場所の情報を収集し、個々の搬送車両車載器10は、収集された場所の情報に基づいて事前に通知処理を行うため、過去に通知処理が多かった場所を予め搬送車両TVの乗務員Cに知らせることとなり、より一層作業者Wとの衝突の可能性を低減することができる。
【0058】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0059】
例えば、本実施形態において搬送車両TVはフォークリフトを想定しているが、これに限らず、ブルドーザ、トラック、又は、不整地運搬車等の他の種類の搬送車両TVであってもよい。
【0060】
さらに、本実施形態において移動情報取得部14bは速度検出部12からの信号に基づいて移動情報を取得するが、これに限らず、GPS電波等の他の手段を利用して移動情報を取得してもよい。
【0061】
また、前進中及び後退中の判断についてはバック信号の有無によって行われているが、これに限らず、車速パルスに基づいて前進中及び後退中を判断してもよいし、GPS電波等を利用して前進中及び後退中を判断してもよい。
【0062】
また、本実施形態においては作業者Wとの衝突の可能性を減じることを説明したが、これに限らず、移動する他の物体との衝突の可能性を減じるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 :通知システム
10 :搬送車両車載器
14a :受信強度取得部(受信強度取得手段)
14b :移動情報取得部(移動情報取得手段)
14c :通知処理部(通知処理手段)
14d :画像情報取得部(画像情報取得手段)
14e :視界判断部(視界判断手段)
17 :記憶部(記憶手段)
18 :通信部(通信手段)
20 :サーバー
30 :ビーコン送信機(信号発信端末)
TV :搬送車両
W :作業者(移動体)
図1
図2
図3
図4
図5