(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】柑橘類果実用果皮剥離器
(51)【国際特許分類】
A23N 7/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A23N7/00 G
(21)【出願番号】P 2020027441
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】507062347
【氏名又は名称】株式会社豊國
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山路 惠司
(72)【発明者】
【氏名】新田 満
(72)【発明者】
【氏名】大室 昇久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和史
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05817360(US,A)
【文献】特開昭50-116674(JP,A)
【文献】実開昭63-082453(JP,U)
【文献】特開2012-135535(JP,A)
【文献】特開昭63-125199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類果実の果皮を果肉から剥離する柑橘類果実用果皮剥離器において、
流体圧力源に接続される流路を有し、当該流路の下流端が先端部の外面に複数箇所開口するとともに、果皮に挿通されるノズルと、
前記ノズルにおける前記開口が形成された部分よりも基端側に設けられ、前記ノズルの前記開口が果皮と果肉との間にアルベド部分に達したときに果皮の外面に当接する挿入ストッパとを備え、
前記ノズルの前記開口は、前記ノズルを軸方向から見たとき、流体を複数方向に放出可能となるように、複数方向に開口するように形成され、
前記挿入ストッパは、果皮における前記ノズルの挿通部分を覆うように形成され
、
前記ノズルには、前記挿入ストッパの前記ノズルの軸線方向の位置を調整する位置調整機構が設けられていることを特徴とする柑橘類果実用果皮剥離器。
【請求項2】
請求項
1に記載の柑橘類果実用果皮剥離器において、
前記位置調整機構は、前記ノズルの外周面に前記軸線方向の所定範囲に形成されたねじ山と、当該ねじ山に螺合するねじ溝を有する螺合部材とを備えており、
前記挿入ストッパは前記螺合部材に取り付けられていることを特徴とする柑橘類果実用果皮剥離器。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の柑橘類果実用果皮剥離器において、
前記挿入ストッパは、前記ノズルの径方向外方へ突出するとともに当該ノズルの周方向に連続していることを特徴とする柑橘類果実用果皮剥離器。
【請求項4】
請求項
3に記載の柑橘類果実用果皮剥離器において、
前記挿入ストッパは、弾性材で構成されていることを特徴とする柑橘類果実用果皮剥離器。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1つに記載の柑橘類果実用果皮剥離器において、
前記ノズルと前記流体圧力源との間に設けられる本体部を備え、
前記本体部には、前記ノズルへの流体の流量を制御する弁機構と、当該弁機構を操作する操作レバーとが設けられ、
前記操作レバーのストローク初期の流体の流量がストローク後期の流体の流量よりも少なくなるように設定されていることを特徴とする柑橘類果実用果皮剥離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類果実の果皮を果肉から剥離する柑橘類果実用果皮剥離器に関し、特に果皮と果肉との間に流体を圧送する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柑橘類果実の果皮を果肉から剥離する際に使用される果皮剥離器が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に開示されている果皮剥離器は、エアーコンプレッサーに接続され、当該エアーコンプレッサーから圧縮空気が供給されるノズルを有している。このノズルの先端部には圧縮空気を当該ノズルの径方向に噴射する噴射孔が形成されている。特許文献1の果皮剥離器を使用して果皮を剥離する際には、まず、ノズルを柑橘類果実の果頂から果芯に通して果硬の内面の皮下に達するまで挿入する。その後、ノズルに圧縮空気を供給して噴射孔から噴射させることで、圧縮空気が果皮と果肉との間に圧送されて果皮を果肉から剥離することができる。
【0003】
また、特許文献2に開示されている果皮剥離器は、エア供給機に接続され、当該エア供給機から圧縮空気が供給されるニードルノズルを有している。特許文献2の果皮剥離器を使用して果皮を剥離する際には、ニードルノズルを果皮に刺してその先端をアルベド部分に臨ませた状態で予め設定された所定圧のエアを所定時間供給することにより、アルベド部分の多くの領域で繊維がちぎれ、これにより、果皮を果肉から剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭50-116674号公報
【文献】特開2016-21882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のように、ノズルを果皮に刺して果実の内部に圧縮空気を供給するように構成された果皮剥離器の場合、ノズルを狙い通りの深さに刺す必要がある。すなわち、特許文献1のノズルは径方向に圧縮空気を噴射するものなので、例えばノズルの挿入を果芯部分で止めてしまうと、果肉に対して圧縮空気が当たることになり、果皮を剥離することができないばかりか、果肉が圧縮空気の圧力によって崩れてしまうおそれがある。また、特許文献2のものも、ニードルノズルが深いところまで挿入されると、果肉に刺さってしまい、その結果、特許文献1のものと同様な問題が生じ得る。また、ニードルノズルの挿入が浅いと、アルベド部分に圧縮空気を供給することができず、果皮を剥離することができない。
【0006】
このように、ノズルを狙い通りの深さに刺すことができなければ、果皮の剥離が困難になるとともに、場合によっては果肉を崩してしまうので、作業者には慎重な作業が求められるとともに、ある程度の熟練が必要になり、誰でも簡単に剥離作業を行うことができるものではなかった。
【0007】
加えて、特許文献1、2のように、果実の内部に圧縮空気を供給すると、果実の内部の圧力が高まるので、果皮におけるノズルを刺した所、即ちノズルの外周面と果皮の穿刺孔との間から果実の内部の空気が漏れ出しやすい。例えば、刺したノズルを若干動かすような操作を行ってしまうと、果皮の穿刺孔が広がってしまい、空気が洩れ出しやすくなるといった問題があった。果実の内部に供給した空気が外部に漏れてしまうと、果実の内部の圧力が十分に高まらず、果皮の剥離が困難になる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熟練を要することなく、果皮の剥離作業を誰でも簡単にかつ確実に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、流体を果皮と果肉との間に圧送するノズルの深さを所定深さとするための挿入ストッパを設け、果皮と果肉との間に圧送された流体が外部に漏れ出すのを挿入ストッパによって抑制するようにした。
【0010】
第1の発明は、柑橘類果実の果皮を果肉から剥離する柑橘類果実用果皮剥離器において、流体圧力源に接続される流路を有し、当該流路の下流端が先端部の外面に複数箇所開口するとともに、果皮に挿通されるノズルと、前記ノズルにおける前記開口が形成された部分よりも基端側に設けられ、前記ノズルの前記開口が果皮と果肉との間にアルベド部分に達したときに果皮の外面に当接する挿入ストッパとを備え、前記ノズルの前記開口は、前記ノズルを軸方向から見たとき、流体を複数方向に放出可能となるように、複数方向に開口するように形成され、前記挿入ストッパは、果皮における前記ノズルの挿通部分を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ノズルを果皮に挿通して当該ノズルの開口がアルベド部分に達したときに挿入ストッパが果皮の外面に当接するので、ノズルをそれ以上深く挿入することができなくなる。従って、作業者は、挿入ストッパが果皮の外面に当接するまでノズルを果皮に挿入するだけで、ノズルの開口を柑橘類果実内の適切な所に位置付けることが可能になるので、熟練を要しない。そして、流体圧力源から供給された流体は、ノズルの流路から開口を経て果皮と果肉との間に流入してアルベド部分の繊維をちぎるように作用する。これにより、果皮が果肉から剥離される。このとき、挿入ストッパが果皮におけるノズルの挿通部分を覆うように配置されているので、柑橘類果実の内部に供給された流体が果皮におけるノズルの挿通部分から外部へ漏れ出し難くなり、柑橘類果実の内部の圧力が十分に高まり、果皮を狙い通りにきれいに剥離することが可能になる。
【0012】
また、前記ノズルには、前記挿入ストッパの前記ノズルの軸線方向の位置を調整する位置調整機構が設けられていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、柑橘類果実には複数の種類があるとともに同一種であっても時期や産地によって果皮の厚みが異なる場合がある。挿入ストッパは果皮の外面に当接することによって開口の位置を決定するものなので、例えば果皮の厚みが厚くなると開口の位置がアルベド部分まで達しなくなり、また、果皮の厚みが薄くなると開口が果肉内に達してしまうおそれがある。本発明では、位置調整機構によって挿入ストッパのノズル軸線方向の位置を調整することができるので、例えば果皮の厚みが厚い場合には挿入ストッパをノズルの基端側に移動させ、また、果皮の厚みが薄い場合には挿入ストッパをノズルの先端側に移動させることで、長さの異なるノズルを複数種用意することなく、果皮の厚みの相違に対して簡単に対応することができる。
【0014】
第2の発明は、前記位置調整機構は、前記ノズルの外周面に前記軸線方向の所定範囲に形成されたねじ山と、当該ねじ山に螺合するねじ溝を有する螺合部材とを備えており、前記挿入ストッパは前記螺合部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、螺合部材のねじ溝をノズルのねじ山に螺合させた状態で螺合部材をノズルに対して回転させると、螺合部材の位置をノズルの軸線方向に無段階に変更することができる。この螺合部材に挿入ストッパが取り付けられているので、螺合部材を回転させるという簡単な操作で挿入ストッパの位置を無段階に調整することができる。
【0016】
第3の発明は、前記挿入ストッパは、前記ノズルの径方向外方へ突出するとともに当該ノズルの周方向に連続していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、挿入ストッパが果皮の外面に当接したときに、果皮におけるノズルの挿通部分を挿入ストッパによって周方向全体で覆うことができるので、柑橘類果実の内部に供給された流体がより一層漏れにくくなる。
【0018】
第4の発明は、前記挿入ストッパは、弾性材で構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、挿入ストッパが果皮の外面に当接したときに、果皮の外面の形状に対応するように挿入ストッパが弾性変形する。これにより、挿入ストッパと果皮の外面との間の隙間を極小化することができるので、柑橘類果実の内部に供給された流体がより一層漏れにくくなる。尚、挿入ストッパを構成する弾性材としては、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0020】
第5の発明は、前記ノズルと前記流体圧力源との間に設けられる本体部を備え、前記本体部には、前記ノズルへの流体の流量を制御する弁機構と、当該弁機構を操作する操作レバーとが設けられ、前記操作レバーのストローク初期の流体の流量がストローク後期の流体の流量よりも少なくなるように設定されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、作業者が操作レバーを操作すると、その操作レバーのストローク初期における流量が比較的少なくなるので、果皮を剥離し始めるときに果皮と果肉との間に大量の流体が一気に流入しなくなり、アルベド部分を徐々にちぎっていくことができる。これにより、大量の流体が一気に流入することによって生じ得る果皮の破れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、流体を果皮と果肉との間に圧送するノズルの深さを所定深さとするための挿入ストッパを設け、果皮と果肉との間に圧送された流体が外部に漏れ出すのを挿入ストッパによって抑制することができるので、熟練を要することなく、果皮の剥離作業を誰でも簡単にかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る柑橘類果実用果皮剥離器の側面図である。
【
図2】柑橘類果実用果皮剥離器の先端部の分解図である。
【
図3】挿入ストッパが最も基端側に配置された状態の先端部の断面図である。
【
図4】柑橘類果実用果皮剥離器の先端部を
図1の矢印A方向から見た図である。
【
図5】挿入ストッパが最も先端側に配置された状態の先端部の側面図である。
【
図6】操作レバーがストローク初期にある柑橘類果実用果皮剥離器の側面図である。
【
図7】操作レバーがストローク後期にある
図6相当図である。
【
図8】柑橘類果実用果皮剥離器の使用状態を示す図である。
【
図9】供給された流体によって果皮が果肉から剥離している状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る柑橘類果実用果皮剥離器1を示すものである。柑橘類果実用果皮剥離器1は、柑橘類果実の果皮と果肉との間に流体を圧送し、その流体の力によって果皮を果肉から剥離する際に使用される器具である。柑橘類果実用果皮剥離器1によって果皮を剥離することが可能な柑橘類果実としては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、夏柑、八朔、伊予柑、ネーブル、グレープフルーツ等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、各種柑橘類果実の果皮を剥離する際に柑橘類果実用果皮剥離器1を使用することができる。
【0026】
柑橘類果実用果皮剥離器1は、大きく分けて、本体部10と先端部20とを備えている。本体部10は、例えば金属製の筒状部材で構成されており、果皮の剥離作業を行う作業者が把持することが可能な部分である。本体部10の内部には、流体圧力源100からの流体が流入する流入路10aが形成されている。流入路10aの上流端部には、ホース101の下流端部が接続されている。ホース101の上流端部は、流体圧力源100である水道管に接続されている。水道管には、上水が所定の圧力で供給されており、これにより、水道管は流体圧力源100となる。ホース101は、例えば蛇口等に接続することもできる。また、流体圧力源100としては、水を所定圧力で圧送するポンプ等であってもよい。この実施形態では、果皮を剥離する際に使用する流体として非圧縮性流体である水を挙げているが、これに限らず、空気等の圧縮性流体であってもよい。ただし、非圧縮性流体の方が、果皮と果肉との間に狙い通りに入り易いので、圧縮性流体よりも好ましい。
【0027】
本体部10の内部には、流入路10aの下流側に弁機構10bが設けられている。弁機構10bは、先端部20を構成しているノズル21へ供給される流体の流量を制御するためのものであり、従来から周知の構造である。本体部10には、弁機構10bを操作する操作ロッド10cが設けられている。操作ロッド10cの一端部(
図1における下端部)は弁機構10bに連結されている。操作ロッド10cの他端側は本体部10の長手方向の端面から当該本体部10の外部へ突出しており、操作ロッド10cの他端部は、本体部10に設けられている操作レバー30に連結されている。
【0028】
操作ロッド10cを本体部10内へ向けて押動(
図1の下方へ押動)すると、弁機構10bが開状態になり、流体がノズル21へ供給される。一方、操作ロッド10cは本体部10外(
図1の上方)へ向けて図示しないバネ等の付勢部材によって付勢されており、操作レバー30を操作しない状態では、操作ロッド10cが付勢部材の付勢力によって本体部10外へ移動する。この状態で弁機構10bが閉状態になる。弁機構10bが閉状態にある操作ロッド10cを本体部10内へ押動させると、その初期においては流体の流量が少なく、操作ロッド10cの押動量に応じて流体の流量が増加するように、弁機構10bが構成されている。つまり、操作ロッド10cの押動量に応じて弁機構10bの開度が変更されるようになっており、初期の開度が小さく、後期に向けて開度が次第に大きくなる。
【0029】
本体部10における流体の流れ方向下流側には、先端部20が接続される管部11が当該本体部10の径方向へ突出するように設けられている。管部11内に形成されている吐出流路11aの上流端が弁機構10bの吐出側に接続されている。
【0030】
管部11の外部には、操作レバー30を支持するレバー支持部12が突出するように設けられている。レバー支持部12には、操作レバー30を揺動自在に支持する支軸12aが設けられている。また、操作レバー30と操作ロッド10cとは、支軸30aにより回動可能に連結されている。操作レバー30は、支軸12a近傍から本体部10の側方まで湾曲ないし屈曲しながら延びており、その中間部に支軸30aが配置されている。従って、操作レバー30を本体部10と一緒に握り込むようにして持つことで、操作レバー30を、支軸12aを支点として揺動させることができるとともに、操作ロッド10cを本体部10内へ向けて移動させることができる。
図1に示す操作レバー30の位置が、弁機構10bが閉状態にある位置であり、上記付勢部材の付勢力によって自動的にこの位置に戻るようになっている。
【0031】
操作ロッド10cには、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等からなる弾性材14が設けられている。操作ロッド10cは弾性材14を貫通するように配置されている。弾性材14は、本体部10の端面と操作レバー30との間に位置している。
図6に示すように、操作レバー30を支軸12a周りに揺動させていくと、当該操作レバー30のストローク初期の段階では、操作レバー30が弾性材14に殆ど接触しないように、弾性材14の形状及び位置が設定されている。操作レバー30のストローク中期以降の段階で、操作レバー30が弾性材14に強く接触する。これにより、弾性材14からの反発力が大きくなり、作業者は操作レバー30からの反力を強く感じるようになる。弾性材14が弾性変形することで操作レバー30はストローク後期まで揺動可能である。尚、弾性材14はバネ等であってもよい。また、弾性材14を配設する位置は図示する位置に限られるものではなく、任意の位置に配設することができる。
【0032】
図2や
図3に示すように、先端部20は、ノズル21と、ナット25と、螺合部材26と、挿入ストッパ27とを有している。ノズル21は、例えばステンレス等の金属製部材からなるものであり、細長い形状を持っている。ノズル21の基端部には、大径基部22がフランジ状に形成されている。大径基部22が本体部10の管部11の突出方向先端部に固定されている。また、大径基部22よりも先端に近い部分には、小径基部23が大径基部22と重なるように形成されている。
【0033】
ノズル21の内部には、本体部10を介して流体圧力源100に接続される流路21aが形成されている。流路21aは大径基部22及び小径基部23内をノズル21の基端部まで延び、当該流路21aの上流部は、ノズル21の基端面に開口している。ノズル21の先端部は先鋭形状部21bとされており、先鋭形状部21bを設けることによってノズル21を果皮へ挿通させやすくなっている。流路21aは先鋭形状部21b内をノズル21の先端部まで延びている。流路21aの下流端は、先鋭形状部21bの外面において径方向に向けて開口している。これにより、流体がノズル21の径方向に噴射することになる。流路21aの下流端開口を符号21cで示す。ノズル21を先端側から見た
図4に示すように、下流端開口21cは先鋭形状部21bの外面に4つ形成されており、流体が4方向に噴射されるようになっている。ノズル21を軸方向(先端側)から見たとき、流体を少なくとも4方向に放出可能となるように、下流端開口21cが形成されている。すなわち、4つの下流端開口21cは、それぞれ異なる方向に向いて開口しており、ノズル21の周方向に略等間隔(90度おき)で形成されている。尚、下流端開口21cの数は3つ以下、または5つ以上であってもよい。また、流体が複数方向に噴射可能であればよく、下流端開口21cは2つ以上が異なる方向に向けて開口していればよい。
【0034】
図2に示すように、ノズル21の外周面にはねじ山21dが形成されている。ねじ山21dが形成された範囲は、ノズル21の外周面において小径基部23よりも先端側、かつ、先鋭形状部21bよりも基端側の所定範囲である。この実施形態では、ノズル21の軸線方向中央部よりも基端側寄りにねじ山21dの形成範囲が設定されている。ナット25はノズル21のねじ山21dに螺合するものである。
【0035】
螺合部材26もノズル21のねじ山21dに螺合するものであり、ナット25よりもノズル21の先端側に位置付けられている。すなわち、螺合部材26は、例えば硬質樹脂や金属等からなる円筒状の部材であり、
図3に示すように、螺合部材26の内周面には、ノズル21のねじ山21dに螺合するねじ溝26aが形成されている。
図2に示すように、螺合部材26の外周面には、その先端側に基端側よりも小径の小径部26bが形成されている。小径部26bの先端部には、径方向外方へ突出して周方向に延びる突条部26cが形成されている。突条部26cは挿入ストッパ27が係合する係合部であり、周方向に非連続に設けられていてもよい。
【0036】
図1、
図3及び
図5に示すように、挿入ストッパ27は、ノズル21における下流端開口21cが形成された部分(先鋭形状部21b)よりも基端側に設けられており、詳細は後述するが、ノズル21の下流端開口21cが果皮と果肉との間にアルベド部分に達したときに果皮の外面に当接するように形成されている。すなわち、挿入ストッパ27は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等からなる環状部27aと傘部27bとを有しており、環状部27a及び傘部27bは一体成形されている。環状部27aは傘部27bよりも基端側に位置しており、環状部27aが螺合部材26の小径部26bの外側に嵌合するようになっている。また、環状部27aの内周面には、螺合部材26の突条部26cに対応するように、凹条部27cが周方向に連続して形成されている。凹条部27cに螺合部材26の突条部26cが嵌入することによって突条部26cと凹条部27cとが係合し、これにより、挿入ストッパ27が螺合部材26に取り付けられた状態になる。突条部26cと凹条部27cとを係合させる際には、挿入ストッパ27が弾性材からなるものなので、主に環状部27aを弾性変形させることによって容易に係合させることができる。
【0037】
傘部27bは、ノズル21を果皮に刺して挿通状態にしたとき、当該果皮におけるノズル21の挿通部分を覆うように形成されており、ノズル21の径方向外方へ突出するとともに当該ノズル21の周方向に連続している。傘部27bは、径方向外方へ行くほどノズル21の先端側に位置するように形成されており、果皮に接触したときに果皮の外面に沿って弾性変形するように硬度及び肉厚が設定されている。
【0038】
上記ノズル21のねじ山21d、ナット25及び螺合部材26により、挿入ストッパ27のノズル21軸線方向の位置を調整する位置調整機構40が構成されている。
図1に示すように、ナット25をノズル21に対して回転させてノズル21の基端側へいっぱいまで寄せ、かつ、螺合部材26も同様にノズル21の基端側へいっぱいまで寄せると、挿入ストッパ27もノズル21の基端側に移動する。挿入ストッパ27がノズル21の基端側へ移動した状態では、先鋭形状部21bを果皮に最も深く挿通させることができる状態である。
【0039】
一方、
図5に示すように、ナット25をノズル21に対して反対方向に回転させてノズル21の先端側へいっぱいまで寄せ、かつ、螺合部材26も同様にノズル21の先端側へいっぱいまで寄せると、挿入ストッパ27もノズル21の先端側に移動する。挿入ストッパ27がノズル21の先端側へ移動した状態では、先鋭形状部21bを果皮に最も浅く挿通させる状態である。螺合部材26を固定する際にはナット25を螺合部材26に締め付けるように回転させておけばよい。
【0040】
従って、挿入ストッパ27の軸線方向の位置は、ナット25及び螺合部材26のノズル21に対する位置に対応することになる。ナット25及び螺合部材26を回転させることによって挿入ストッパ27の軸線方向の位置を無段階に調整することができる。果皮を剥離しようとする柑橘類果実に応じて挿入ストッパ27の軸線方向の位置を調整することができ、例えば果皮の厚みが厚い場合には挿入ストッパ27をノズル21の基端側に移動させ、また、果皮の厚みが薄い場合には挿入ストッパ27をノズル21の先端側に移動させることで、長さの異なるノズル21を複数種用意することなく、果皮の厚みの相違に対して簡単に対応することができる。
【0041】
(果皮の剥離方法)
次に、果皮の剥離方法について説明する。まず、
図1に示すように、ホース101によって本体部10と流体圧力源100とを接続する。接続する前に、操作レバー30が弁機構10bを閉状態にした位置にあるか否かを確認しておく。そして、流体圧力源100が水道である場合には、水道の蛇口を開く。このとき、柑橘類果実用果皮剥離器1の各部から水漏れがないか確認する。
【0042】
そして、
図8に示すように、柑橘類果実としてのレモン200を用意し、柑橘類果実用果皮剥離器1のノズル21の先鋭形状部21bをレモン200に刺す。すると、
図9に示すように、ノズル21の先鋭形状部21bがレモン200の果皮201に挿通されて、下流端開口21cが果皮201と果肉202との間のアルベド部分203に達したときに挿入ストッパ27が果皮201の外面に当接するので、ノズル21をそれ以上深く挿入することができなくなる。従って、作業者は、挿入ストッパ27が果皮201の外面に当接するまでノズル21を果皮201に挿入するだけで、ノズル21の下流端開口21cをレモン200の内部の適切な所に位置付けることが可能になるので、熟練を要しない。このとき、挿入ストッパ27の傘部27aが果皮201におけるノズル21の挿通部分201aを覆うように配置される。挿入ストッパ27が果皮201の外面に当接したときに、果皮の外面の形状に対応するように挿入ストッパ27の傘部27bが弾性変形する。これにより、挿入ストッパ27と果皮201の外面との間の隙間を極小化することができる。
【0043】
その後、作業者が操作レバー30を揺動させて閉状態にある弁機構10bを開状態にする。操作レバー30を揺動させていくと、操作レバー30が弾性材14に当接するまでのストローク初期の段階では操作力が小さく、ストローク中期の段階に入ると弾性材14の反発力によって操作力が大きくなる。したがって、ストローク初期の段階で操作レバー30を一旦止めて流体の流量が少ない状態を維持することができる。
【0044】
図9に矢印で示すように、ノズル21の下流端開口21cから噴射された流体は、果皮201と果肉202との間に流入してアルベド部分203の繊維をちぎるように作用する。このとき、流体が果皮201におけるノズル21の挿通部分201aに向けても流れようとするが、この挿通部分201aが挿入ストッパ27の傘部27aによって覆われているので、流体が外部へ漏れ出しにくい。
【0045】
流体の供給によって果皮201が果肉202から剥離される。このとき、4つの下流端開口21cが4方向に向けて開口しているので、流体が4方向に噴射されることになり、果皮201と果肉202との間の広い範囲に一度に行き渡る。初期噴射時の流体の流量が少なく設定されているので、果皮201に対して極部的に無理な力が作用し難くなり、果皮201の破れを抑制することができる。
【0046】
ストローク初期の段階でしばらく維持した後、作業者が操作レバー30を更にストロークさせると、流体の流量が多くなるので、流体がレモン200の裏側にまで確実に達し、果皮201の全部が果肉202から剥離される。つまり、この実施形態では、作業者が操作レバー30を操作すると、その操作レバー30のストローク初期における流量が比較的少なくなるので、果皮を剥離し始めるときに果皮と果肉との間に大量の流体が一気に流入しなくなり、アルベド部分203を徐々にちぎっていくことができる。これにより、大量の流体が一気に流入することによって生じ得る果皮201の破れを抑制することができる。多くの流体が果皮201におけるノズル21の挿通部分201aから逆流するようになったら、操作レバー30を、弁機構10bを閉状態とする位置にする。
【0047】
しかる後、ノズル21を果皮201から抜く。次いで、果皮201を破ることで、果肉202を取り出すことができる。果肉202を取り出す方法としては、例えば水や湯に漬ける方法や、冷凍する方法等を用いることができる。
【0048】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る柑橘類果実用果皮剥離器1によれば、ノズル21を果皮に挿通して当該ノズル21の下流端開口21cがアルベド部分に達したときに挿入ストッパ27が果皮の外面に当接するので、作業者は、熟練を要することなく、ノズル21の下流端開口21cを柑橘類果実内の適切な所に位置付けることができる。そして、流体圧力源100から供給された流体により、果皮を果肉から剥離することができ、このとき、挿入ストッパ27の傘部27bが果皮におけるノズル21の挿通部分を覆っているので、柑橘類果実の内部に供給された流体が外部へ漏れ出し難くなり、柑橘類果実の内部の圧力を十分に高めることができる。したがって、果皮の剥離作業を誰でも簡単にかつ確実に行うことができる。
【0049】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明に係る柑橘類果実用果皮剥離器は、例えばレモン等の果皮を果肉から剥離する際に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 柑橘類果実用果皮剥離器
10 本体部
10b 弁機構
21 ノズル
21a 流路
21c 下流端開口
21d ねじ山
26 螺合部材
26a ねじ溝
27 挿入ストッパ
30 操作レバー
40 位置調整機構
100 流体圧力源