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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】位置調整装置及び位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20231227BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20231227BHJP
   B66F 3/24 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E01D21/00 Z
E04G21/18 C
B66F3/24 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030766
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134538
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390027513
【氏名又は名称】大瀧ジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小熊 貴則
(72)【発明者】
【氏名】岩松 聖
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068434(JP,A)
【文献】国際公開第2006/065030(WO,A1)
【文献】特開昭60-237000(JP,A)
【文献】特開平05-059705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04G 21/18
B66F 1/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形状を呈する板状の載置台と、
所定の水平面に載置された前記載置台の上方に滑動可能に配置された状態で重量物を下方から支持する鉛直ジャッキと、
前記水平面に載置された前記載置台の対向する一組の辺に沿って前記鉛直ジャッキを挟んで取り付けられることにより前記鉛直ジャッキを第一の方向に沿って案内するための第一の経路を形成する一方、前記一組の辺から取り外されて前記載置台の対向する他の一組の辺に沿って取り付けられることにより前記鉛直ジャッキを前記第一の方向に垂直な第二の方向に沿って案内するための第二の経路を形成する一対の案内部材と、
前記水平面に載置された前記載置台の上方に配置された前記鉛直ジャッキを前記第一の方向及び前記第二の方向に移動させるための押圧力を加える水平ジャッキと、を備え、
前記載置台、前記鉛直ジャッキ、前記案内部材及び前記水平ジャッキは相互に分離可能とされている、
位置調整装置。
【請求項2】
前記載置台は、平面視正方形状を呈する、請求項1に記載の位置調整装置。
【請求項3】
前記載置台は、一辺が第一の長さを有する平面視正方形状の第一の板状部材と、一辺が前記第一の長さよりも短い第二の長さを有する平面視正方形状の第二の板状部材と、を有し、前記第二の板状部材が前記第一の板状部材の中央に配置されて固定されることにより各辺に鍔部が形成され、前記載置台が前記水平面に載置された際に前記第一の板状部材が上方に配置されることにより前記鍔部と前記水平面との間に間隙が形成されるようになっており、
前記案内部材は、前記水平面に載置された前記載置台に対して鉛直方向に立てられた状態で前記載置台の前記辺に沿って取り付けられる板状の部材であって、前記載置台の上面に当接する平坦な当接部と、前記載置台の前記鍔部の側面及び下面を外側から覆うように形成される断面L字状のフック部と、を有しており、
前記案内部材の前記フック部の少なくとも一部が前記載置台の前記鍔部の前記側面に当接することにより、前記案内部材から前記載置台へと押圧力を伝達することができるようになっている、請求項2に記載の位置調整装置。
【請求項4】
前記載置台の前記一組の辺に取り付けられた一対の前記案内部材同士の間隔を保持するための間隔保持手段を備える、請求項1から3の何れか一項に記載の位置調整装置。
【請求項5】
前記載置台の上方に配置されて前記鉛直ジャッキを支持する架台と、
前記載置台の上面と前記架台の下面との間に配置される滑り材と、を備え、
前記滑り材は、エンジニアリング・プラスチックで構成されている、請求項1から4の何れか一項に記載の位置調整装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の位置調整装置を用いて重量物の位置を調整する方法であって、
前記載置台を所定の水平面に載置する載置台載置工程と、
前記水平面に載置された前記載置台の上方に鉛直ジャッキを滑動可能に配置する鉛直ジャッキ配置工程と、
前記載置台の対向する一組の辺に沿って前記鉛直ジャッキを挟んで一対の前記案内部材を取り付けることにより前記鉛直ジャッキを第一の方向に沿って案内するための第一の経路を形成する第一経路形成工程と、
前記水平ジャッキで前記鉛直ジャッキを押圧することにより前記第一の方向に滑動させる第一滑動工程と、
前記案内部材を前記一組の辺から取り外し、前記載置台の対向する他の一組の辺に沿って一対の前記案内部材を取り付けることにより前記鉛直ジャッキを第一の方向に垂直な第二の方向に沿って案内するための第二の経路を形成する第二経路形成工程と、
前記水平ジャッキで前記鉛直ジャッキを押圧することにより前記第二の方向に滑動させる第二滑動工程と、
を含む、位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整装置及び位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、橋桁等の重量物を所定の方向に移送するための重量物移送装置が種々提案され、実用化されている(例えば、特許文献1~3参照)。かかる重量物移送装置には、重量物を鉛直方向に移動させる鉛直ジャッキや、重量物を水平方向に移動させる水平ジャッキが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭56-41903号公報
【文献】特開2007-112572号公報
【文献】特開2013-87441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年においては、水平面内の第一の方向に重量物を移動させることに加えて、この第一の方向とは異なる(例えば第一の方向に対して直角な)第二の方向にも重量物を移動させることにより、重量物の水平面内における位置を調整することを可能にした位置調整装置も提案されている。従来の位置調整装置は、第一の方向に重量物を移動させるための第一の水平ジャッキと、第二の方向に重量物を移動させるための第二の水平ジャッキと、を相互に移動可能に結合した比較的複雑な機構を有しているため、装置が必然的に大型で大重量となり、持ち運び難い上に小さなスペースに設置し難いという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、重量物の水平面内における位置を調整する位置調整装置において、小型化や軽量化を実現させて可搬性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る位置調整装置は、平面視矩形状を呈する板状の載置台と、所定の水平面に載置された載置台の上方に滑動可能に配置された状態で重量物を下方から支持する鉛直ジャッキと、水平面に載置された載置台の対向する一組の辺に沿って鉛直ジャッキを挟んで取り付けられることにより鉛直ジャッキを第一の方向に沿って案内するための第一の経路を形成する一方、これら一組の辺から取り外されて載置台の対向する他の一組の辺に沿って取り付けられることにより鉛直ジャッキを第一の方向に垂直な第二の方向に沿って案内するための第二の経路を形成する一対の案内部材と、水平面に載置された載置台の上方に配置された鉛直ジャッキを第一の方向及び第二の方向に移動させるための押圧力を加える水平ジャッキと、を備え、載置台、鉛直ジャッキ、案内部材及び水平ジャッキは相互に分離可能とされているものである。
【0007】
また、本発明に係る位置調整方法は、既に述べた位置調整装置を用いて重量物を移送する方法であって、載置台を所定の水平面に載置する載置台載置工程と、水平面に載置された載置台の上方に鉛直ジャッキを滑動可能に配置する鉛直ジャッキ配置工程と、載置台の対向する一組の辺に沿って鉛直ジャッキを挟んで一対の案内部材を取り付けることにより鉛直ジャッキを第一の方向に沿って案内するための第一の経路を形成する第一経路形成工程と、水平ジャッキで鉛直ジャッキを押圧することにより第一の方向に滑動させる第一滑動工程と、案内部材を一組の辺から取り外し、載置台の対向する他の一組の辺に沿って一対の案内部材を取り付けることにより鉛直ジャッキを第一の方向に垂直な第二の方向に沿って案内するための第二の経路を形成する第二経路形成工程と、水平ジャッキで鉛直ジャッキを押圧することにより第二の方向に滑動させる第二滑動工程と、を含むものである。
【0008】
かかる構成及び方法を採用すると、平面視矩形状を呈する板状の載置台を所定の水平面に載置し、この載置台の上方に鉛直ジャッキを滑動可能に配置し、載置台の対向する一組の辺に沿って鉛直ジャッキを挟んで一対の案内部材を取り付けることにより鉛直ジャッキを第一の方向に沿って案内するための第一の経路を形成し、水平ジャッキで鉛直ジャッキを押圧することにより第一の方向に滑動させることができる。従って、鉛直ジャッキによって支持した重量物を第一の方向に移動させることができる。また、一対の案内部材を載置台の一組の辺から取り外し、載置台の対向する他の一組の辺に沿って取り付けることにより鉛直ジャッキを第一の方向に垂直な第二の方向に沿って案内するための第二の経路を形成し、水平ジャッキで鉛直ジャッキを押圧することにより第二の方向に滑動させることができる。従って、鉛直ジャッキによって支持した重量物を第二の方向にも移動させることができる。この結果、第一の方向及び第二の方向それぞれに水平ジャッキを設けた機構を採用することなく重量物の水平面内における位置を調整することができるようになるため、装置の簡素化、小型化、軽量化を実現させることができる。また、本装置は、各構成要素(載置台、鉛直ジャッキ、案内部材、水平ジャッキ)を相互に分離させることができるため可搬性に優れ、比較的小さなスペースにも設置し易いという利点を有する。
【0009】
本発明に係る位置調整装置において、平面視正方形状を呈する載置台を採用することができる。
【0010】
かかる構成を採用すると、載置台は平面視正方形状を呈しており、各辺の長さが同一であるため、案内部材を一組の辺から取り外して他の一組の辺に取り付ける際に、余分な補助部材が不要となる。
【0011】
本発明に係る位置調整装置において、一辺が第一の長さを有する平面視正方形状の第一の板状部材と、一辺が第一の長さよりも短い第二の長さを有する平面視正方形状の第二の板状部材と、を有する載置台を採用するとともに、第二の板状部材を第一の板状部材の中央に配置して固定することにより載置台の各辺に鍔部を形成し、載置台を水平面に載置した際に第一の板状部材を上方に配置することにより鍔部と水平面との間に間隙を形成することができる。かかる場合において、案内部材として、水平面に載置された載置台に対して鉛直方向に立てられた状態で載置台の辺に沿って取り付けられる板状の部材を採用することができる。案内部材は、載置台の上面に当接する平坦な当接部と、載置台の鍔部の側面及び下面を外側から覆うように形成される断面L字状のフック部と、を有することができ、案内部材のフック部の少なくとも一部が載置台の鍔部の側面に当接することにより、案内部材から載置台へと押圧力を伝達することができる。
【0012】
かかる構成を採用すると、案内部材のフック部の少なくとも一部を載置台の鍔部の側面に当接させることにより、案内部材から載置台へと押圧力を伝達することができる。従って、載置台自体を移動させる必要が生じた場合に、案内部材に押圧力を加え、その押圧力を載置台に伝達して載置台を移動させることができる。
【0013】
本発明に係る位置調整装置において、載置台の一組の辺に取り付けられた一対の案内部材同士の間隔を保持するための間隔保持手段を備えることができる。
【0014】
かかる構成を採用すると、載置台の一組の辺に取り付けられた一対の案内部材同士の間隔を保持することができるので、形成した経路(第一の経路及び第二の経路)の幅を維持することができ、鉛直ジャッキの滑動(ひいては重量物の位置調整)を確実に行わせることができる。
【0015】
本発明に係る位置調整装置において、載置台の上方に配置されて鉛直ジャッキを支持する架台と、載置台の上面と架台の下面との間に配置される滑り材と、を備えることができる。滑り材は、エンジニアリング・プラスチックで構成することができる。
【0016】
かかる構成を採用すると、載置台の上面と、載置台の上方に配置されて鉛直ジャッキを支持する架台の下面と、の間に滑り材を配置することにより、載置台に対する鉛直ジャッキ(及び鉛直ジャッキによって支持した重量物)の滑動を実現させることができる。また、耐摩耗性に優れるエンジニアリング・プラスチックで滑り材を構成することにより、複数回の滑動にも耐えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、重量物の水平面内における位置を調整する位置調整装置において、小型化や軽量化を実現させて可搬性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る位置調整装置の構成を説明するための分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る位置調整装置の平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る位置調整装置の底面図である。
図4】本発明の実施形態に係る位置調整装置の側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る位置調整装置の正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る位置調整装置の背面図である。
図7】本発明の実施形態に係る位置調整装置の(図2のVII-VII部分における)断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る位置調整方法(第一経路形成工程等)を説明するための説明図である。
図9】本発明の実施形態に係る位置調整方法(第一滑動工程等)を説明するための説明図である。
図10】本発明の実施形態に係る位置調整方法(第二経路形成工程等)を説明するための説明図である。
図11】本発明の実施形態に係る位置調整方法(第二滑動工程等)を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
【0020】
まず、図1図7等を用いて、本発明の実施形態に係る位置調整装置1の構成について説明する。
【0021】
本実施形態に係る位置調整装置1は、橋桁等の重量物の水平面内における位置を調整するように機能するものであり、図1及び図7に示すように、ベースプレート10、ベースプレート10の上方に架台20等を介して滑動可能に配置される鉛直ジャッキ30、一対のフックプレート40、鉛直ジャッキ30を水平方向に移動させるための水平ジャッキ50、等を備えている。
【0022】
ベースプレート10は、平面視正方形状を呈する板状の部材であり、本発明における載置台10に相当するものである。ベースプレート10は、図2図7に示すように、一辺が第一の長さL1を有する平面視正方形状の第一の板状部材11と、一辺が第一の長さよりも短い第二の長さL2を有する平面視正方形状の第二の板状部材12と、を有している。そして、図3図7に示すように、第二の板状部材12が第一の板状部材11の中央に配置されて固定されることにより各辺に鍔部13が形成され、ベースプレート10が所定の水平面Sに載置された際に第一の板状部材11が上方に配置されることにより鍔部13と水平面Sとの間に間隙Gが形成されるようになっている。このように形成された間隙Gには、フックプレート40のフック部42(後述)が挿入される。本実施形態においては、所定の水平面Sに載置されたベースプレート10の上面10U(第一の板状部材11の一方の面)もまた水平面となっている。
【0023】
ベースプレート10を構成する二枚の板状部材11、12を固定するための手段は特に限定されるものではなく、例えば図7に示すように両部材に形成して位置合わせしたネジ穴14と、ボルト15と、を用いて両部材を固定したり、接着剤を用いて両部材を固定したり、これら双方の手段を併用したりすることができる。ベースプレート10は、その上方に鉛直ジャッキ30等を介して重量物を載せるものであるため、比較的高い強度を有する材料(例えば、SS400、S45C等の金属材料や、繊維強化樹脂等の複合材料)で構成される。第一の板状部材11の一辺の長さ(第一の長さL1)は250~400mm程度に設定することができ、その厚さは12~25mm程度に設定することができる。また、第二の板状部材12の一辺の長さ(第二の長さL2)は200~350mm程度に設定することができ、その厚さは12~25mm程度に設定することができる。
【0024】
架台20は、図1図2図5図7に示すように円柱状の鉛直ジャッキ30を支持するための背の低い円筒状の部材であり、その上方には、鉛直ジャッキ30を収納するための凹部21が形成されている。架台20は、ベースプレート10の上面10Uに滑動プレート60を介して配置されており、鉛直ジャッキ30及び重量物を載せた状態でベースプレート10上を滑動することができるようになっている。架台20もまた、その上方に鉛直ジャッキ30等を介して重量物を載せるものであるため、比較的高い強度を有する材料(例えば、SS400、S45C等の金属材料や、繊維強化樹脂等の複合材料)で構成される。架台20の下面の径や高さは、鉛直ジャッキ30を支持することができるようなサイズに適宜設定されるが、ベースプレート10上を比較的広い範囲で移動できるように、その径はベースプレート10の上面10Uの一辺の長さ(L1)の1/2以下に設定されるのが好ましい。
【0025】
滑動プレート60は、本発明における滑り材に相当するものであり、架台20の下面に固定されて、ベースプレート10に対する架台20(及びそれによって支持される鉛直ジャッキ30並びに鉛直ジャッキ30によって支持される重量物)の滑動を可能にするものである。滑動プレート60を架台20に固定するための手段は特に限定されるものではなく、例えば図7に示すように両部材に形成して位置合わせしたネジ穴71と、ボルト72と、を用いて両部材を固定したり、接着剤を用いて両部材を固定したり、これら双方の手段を併用したりすることができる。滑動プレート60は、摩擦係数が低くかつ耐摩耗性に優れる材料(例えば、ウルトラスライド、MCナイロン、テフロン等のエンジニアリング・プラスチック)で構成することができる。このように耐摩耗性に優れる材料で滑り材を構成することにより、複数回の滑動にも耐えることができる。滑動プレート60の径は、架台20の下面の径とほぼ同一の寸法に設定される。滑動プレート60の厚さは、架台20等のサイズに応じて適宜(例えば5~10mm程度に)設定することができる。
【0026】
鉛直ジャッキ30は、所定の水平面Sに載置されたベースプレート10の上方に滑動プレート60及び架台20を介して滑動可能に配置された状態で、重量物を下方から支持しつつ鉛直方向に沿って移動させるように機能するものである。鉛直ジャッキ30としては、例えば図7に示すように、シリンダ31及びロッド32を有し、油圧によるロッド32の伸縮により重量物を鉛直方向に沿って移動させる油圧ジャッキを採用することができる。
【0027】
一対のフックプレート40は、本発明における一対の案内部材に相当するものであり、図2図8図9等に示すように、所定の水平面Sに載置されたベースプレート10の対向する一組の辺10A、10Bに沿って鉛直ジャッキ30を挟んで取り付けられることにより、鉛直ジャッキ30を第一の方向D1に沿って案内するための第一の経路P1を形成するように機能する。また、フックプレート40は、図10及び図11に示すように、ベースプレート10の前述した一組の辺10A、10Bから取り外されて、ベースプレート10の対向する他の一組の辺10C、10Dに沿って鉛直ジャッキ30を挟んで取り付けられることにより、鉛直ジャッキ30を第一の方向D1に垂直な第二の方向D2に沿って案内するための第二の経路P2を形成するようにも機能する。既に述べたようにベースプレート10の上面10Uは水平面となるため、第一の方向D1及び第二の方向D2は何れも水平方向となる。
【0028】
各フックプレート40は、図4図7に示すように、所定の水平面Sに載置されたベースプレート10に対して鉛直方向に立てられた状態でベースプレート10の辺10A、10B、10C、10Dに沿って取り付けられる板状の部材である。フックプレート40は、ベースプレート10の上面10Uに当接する平坦な当接部41と、ベースプレート10の鍔部13の側面13a及び下面13bを外側から覆うように形成される断面L字状のフック部42と、を有している。そして、フックプレート40のフック部42の少なくとも一部がベースプレート10の鍔部13の側面13aに当接することにより、フックプレート40からベースプレート10へと押圧力を伝達することができるようになっている。フックプレート40は、金属材料や樹脂材料等で構成することができる。フックプレート40のベースプレート10の辺に沿った長さ、鉛直方向に立てたときの高さ、厚さは、ベースプレート10等のサイズに応じて適宜設定することができる。
【0029】
水平ジャッキ50は、所定の水平面Sに載置されたベースプレート10の上方に配置された鉛直ジャッキ30を、第一の方向D1及び第二の方向D2に移動させるための押圧力を加えるように機能するものである。水平ジャッキ50としては、例えば図1図7に示すように、シリンダ51及びロッド52を有し、油圧によるロッド52の伸縮により鉛直ジャッキ30を支持する架台20に押圧力を加える油圧ジャッキを採用することができる。
【0030】
水平ジャッキ50は、図1図4図6図7に示すように、ジャッキブラケット80によって支持されている。ジャッキブラケット80は、水平ジャッキ50のシリンダ51を収納して支持する円筒部81と、円筒部81を水平方向に延在させた状態で所定の水平面Sに設置するための台部82と、円筒部81の両側面から水平方向に延在するように設けられた上下一対の板状部83(上方板状部83U及び下方板状部83L)と、を有している。ジャッキブラケット80は、金属材料や樹脂材料等で構成することができる。
【0031】
ジャッキブラケット80の円筒部81の左右に配置された上下一対の板状部83の間には、左右のフックプレート40の内側面から水平方向に延在するように設けられたジャッキ側板状部43が挿入される。そして、ジャッキブラケット80の板状部83に設けられた貫通孔83aと、フックプレート40のジャッキ側板状部43に設けられた貫通孔43aと、を位置合わせして両貫通孔83a、43aにピン84を挿通させることにより、左右のフックプレート40とジャッキブラケット80とを連結することができ、かつ、一対のフックプレート40同士の水平ジャッキ50側の間隔を保持することができるようになっている。すなわち、フックプレート40のジャッキ側板状部43、ジャッキブラケット80の板状部83及びピン84は、本発明における間隔保持手段に相当するものである。
【0032】
また、鉛直ジャッキ30を挟んでジャッキブラケット80と反対側には、図1図3図5図7に示すように、一枚の間隔保持プレート90が配置される。間隔保持プレート90は、ベースプレート10の一組の辺10A、10B(又は10C、10D)に取り付けられた一対のフックプレート40同士の間隔を保持するためのものであり、例えば金属材料や樹脂材料等で構成することができる。間隔保持プレート90のベースプレート10の辺に沿った長さは、図2及び図3に示すように、ジャッキブラケット80の左右の板状部83の水平方向に延在する長さとほぼ同一とされる。間隔保持プレート90の厚さは、例えば6~16mm程度に設定することができる。
【0033】
左右のフックプレート40の内側面から水平方向に延在するように設けられたプレート側板状部44の上に間隔保持プレート90を載置し、間隔保持プレート90に設けられた貫通孔91と、プレート側板状部44に設けられた貫通孔44aと、を位置合わせして両貫通孔91、44aにピン92を挿通させることにより、左右のフックプレート40と間隔保持プレート90とを連結することができ、かつ、一対のフックプレート40同士の間隔保持プレート90側の間隔を保持することができるようになっている。すなわち、フックプレート40のプレート側板状部44、間隔保持プレート90及びピン92は、本発明における間隔保持手段に相当するものである。
【0034】
本実施形態に係る位置調整装置1の構成要素のうち、ベースプレート10と、架台20と、鉛直ジャッキ30と、フックプレート40と、水平ジャッキ50と、ジャッキブラケット80と、間隔保持プレート90と、ピン84、92と、は相互に分離可能とされ、別々に持ち運ぶことができる。
【0035】
次に、図8図11を用いて、本発明の実施形態に係る位置調整装置1を用いて重量物の位置を調整する方法(位置調整方法)について説明する。
【0036】
まず、ベースプレート10を所定の水平面Sに載置し(載置台載置工程)、この水平面Sに載置されたベースプレート10の上方に、図8に示すように架台20を介して鉛直ジャッキ30を滑動可能に配置する(鉛直ジャッキ配置工程)。次いで、図8に示すように、ベースプレート10の対向する一組の辺10A、10Bに沿って鉛直ジャッキ30を挟んで一対のフックプレート40を取り付けることにより、鉛直ジャッキ30を第一の方向D1に沿って案内するための第一の経路P1を形成する(第一経路形成工程)。
【0037】
次いで、ジャッキブラケット80の円筒部81に水平ジャッキ50のシリンダ51を収納した保持した状態で、円筒部81の左右に配置された上下一対の板状部83の間に左右のフックプレート40のジャッキ側板状部43を挿入し、ジャッキブラケット80の板状部83の貫通孔83aと、フックプレート40のジャッキ側板状部43の貫通孔43aと、を位置合わせして両貫通孔83a、43aにピン84を挿通させることにより、左右のフックプレート40とジャッキブラケット80とを連結し、かつ、一対のフックプレート40同士の水平ジャッキ50側の間隔を保持する(第一間隔保持工程)。
【0038】
また、左右のフックプレート40のプレート側板状部44の上に間隔保持プレート90を載置し、間隔保持プレート90の貫通孔91と、プレート側板状部44の貫通孔44aと、を位置合わせして両貫通孔91、44aにピン92を挿通させることにより、左右のフックプレート40と間隔保持プレート90とを連結し、かつ、一対のフックプレート40同士の間隔保持プレート90側の間隔を保持する(第二間隔保持工程)。
【0039】
これら間隔保持工程により、一対のフックプレート40同士の間隔を保持して鉛直ジャッキ30の経路及び進行方向を第一の経路P1及び第一の方向D1に規定することができる。その後、鉛直ジャッキ30で重量物を支持し(重量物支持工程)、水平ジャッキ50で鉛直ジャッキ30を押圧することにより、図9に示すように、鉛直ジャッキ30及びそれによって支持された重量物を第一の方向D1に滑動させる(第一滑動工程)。
【0040】
続いて、ベースプレート10の一組の辺10A、10Bから一対のフックプレート40を取り外し、図10に示すように、ベースプレート10の対向する他の一組の辺10C、10Dに一対のフックプレート40を取り付けることにより、鉛直ジャッキ30を第二の方向D2に沿って案内するための第二の経路P2を形成する(第二経路形成工程)。
【0041】
次いで、既に述べた第一及び第二間隔保持工程と同様の工程を実施することにより、図10に示すようにジャッキブラケット80や間隔保持プレート90を用いて一対のフックプレート40同士の間隔を保持した後、鉛直ジャッキ30で重量物を支持する(重量物支持工程)。その後、水平ジャッキ50で鉛直ジャッキ30を押圧することにより、図11に示すように鉛直ジャッキ30及びそれによって支持された重量物を第二の方向D2に滑動させる(第二滑動工程)。以上の工程群により、重量物の水平面内における位置を調整することができる。
【0042】
以上説明した実施形態に係る位置調整装置1においては、板状のベースプレート10を所定の水平面Sに載置し、このベースプレート10の上方に鉛直ジャッキ30を滑動可能に配置し、ベースプレート10の対向する一組の辺10A、10Bに沿って鉛直ジャッキ30を挟んで一対のフックプレート40を取り付けることにより鉛直ジャッキ30を第一の方向D1に沿って案内するための第一の経路P1を形成し、水平ジャッキ50で鉛直ジャッキ30を押圧することにより第一の方向D1に滑動させることができる。従って、鉛直ジャッキ30によって支持した重量物を第一の方向D1に移動させることができる。また、一対のフックプレート40をベースプレート10の一組の辺10A、10Bから取り外し、ベースプレート10の対向する他の一組の辺10C、10Dに取り付けることにより鉛直ジャッキ30を第一の方向D1に垂直な第二の方向D2に沿って案内するための第二の経路P2を形成し、水平ジャッキ50で鉛直ジャッキ30を押圧することにより第二の方向D2に滑動させることができる。従って、鉛直ジャッキ30によって支持した重量物を第二の方向D2にも移動させることができる。この結果、第一の方向D1及び第二の方向D2それぞれに水平ジャッキを設けた機構を採用することなく重量物の水平面内における位置を調整することができるようになるため、装置の簡素化、小型化、軽量化を実現させることができる。また、本装置1は、各構成要素(ベースプレート10、架台20、鉛直ジャッキ30、フックプレート40、水平ジャッキ50等)を相互に分離させることができるため可搬性に優れ、比較的小さなスペースにも設置し易いという利点を有する。
【0043】
また、以上説明した実施形態に係る位置調整装置1におけるベースプレート10は平面視正方形状を呈しており、各辺の長さが同一であるため、フックプレート40を一組の辺10A、10Bから取り外して他の一組の辺10C、10Dに取り付ける際に、余分な補助部材が不要となる。
【0044】
また、以上説明した実施形態に係る位置調整装置1においては、フックプレート40のフック部42の少なくとも一部をベースプレート10の鍔部13の側面13aに当接させることにより、フックプレート40からベースプレート10へと押圧力を伝達することができる。従って、ベースプレート10自体を移動させる必要が生じた場合に、フックプレート40に押圧力を加え、その押圧力をベースプレート10に伝達してベースプレート10を移動させることができる。
【0045】
また、以上説明した実施形態に係る位置調整装置1においては、ベースプレート10の一組の辺10A、10B(又は10C、10D)に取り付けられた一対のフックプレート40同士の間隔を、間隔保持手段(ジャッキブラケット80、間隔保持プレート90、ピン84、92等)によって保持することができるので、形成した第一の経路P1(又は第二の経路P2)の幅を維持することができ、鉛直ジャッキ30の滑動(ひいては重量物の位置調整)を確実に行わせることができる。
【0046】
また、以上説明した実施形態に係る位置調整装置1においては、ベースプレート10の上面10Uと、鉛直ジャッキ30を支持する架台20の下面と、の間に滑動プレート60を配置することにより、ベースプレート10に対する鉛直ジャッキ30(及び鉛直ジャッキ30によって支持した重量物)の滑動を実現させることができる。また、耐摩耗性に優れるエンジニアリング・プラスチックで滑動プレート60を構成することにより、複数回の滑動にも耐えることができる。
【0047】
なお、以上の実施形態においては、一辺の長さが全て等しい平面視正方形状のベースプレート(載置台)10を採用した例を示したが、ベースプレート10の平面形状はこれに限られるものではない。例えば、隣接する辺の長さが異なる平面視長方形状のベースプレートを採用することもできる。このように平面視長方形状のベースプレートを採用した場合には、ベースプレートの一組の長辺に沿って一対のフックプレートを取り付けて第一の経路を形成した後、一組の長辺からフックプレートを取り外しベースプレートの一組の短辺に取り付けて第二の経路を形成する際に、補助部材によってベースプレートとフックプレートとの間に形成される隙間を埋めるようにするとよい。
【0048】
また、以上の実施形態においては、案内部材として、水平面Sに載置されたベースプレート10に対して鉛直方向に立てられた状態でベースプレート10の辺に沿って取り付けられる板状の部材(ベースプレート10の上面10Uに当接する平坦な当接部41と、ベースプレート10の鍔部13の側面13a及び下面13bを外側から覆うように形成される断面L字状のフック部42と、を有するフックプレート40)を採用した例を示したが、案内部材の構成はこれに限られるものではない。すなわち、水平面Sに載置されたベースプレート10の対向する一組の辺(例えば辺10A、辺10B)に沿って鉛直ジャッキ30を挟んで取り付けられることにより鉛直ジャッキ30を第一の方向に沿って案内するための第一の経路を形成する一方、これら一組の辺から取り外されてベースプレート10の対向する他の一組の辺(例えば辺10C、辺10D)に沿って取り付けられることにより鉛直ジャッキ30を第一の方向に垂直な第二の方向に沿って案内するための第二の経路を形成することができるような構成であればよい。
【0049】
また、以上の実施形態においては、間隔保持手段として、フックプレート40の板状部43・44、ジャッキブラケット80の板状部83、間隔保持プレート90及びピン84・92を採用した例を示したが、間隔保持手段の構成はこれに限られるものではない。すなわち、ベースプレート10の一組の辺10A、10B(又は10C、10D)に取り付けられた一対のフックプレート40同士の間隔を保持することができるような構成であればよい。
【0050】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、かかる実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1…位置調整装置
10…ベースプレート(載置台)
10U…上面
10A・10B…対向する一組の辺
10C・10D…対向する他の一組の辺
11…第一の板状部材
12…第二の板状部材
13…鍔部
13a…側面
13b…下面
20…架台
30…鉛直ジャッキ
40…フックプレート(案内部材)
41…当接部
42…フック部
43…ジャッキ側板状部(間隔保持手段)
44…プレート側板状部(間隔保持手段)
50…水平ジャッキ
60…滑動プレート(滑り材)
83…ジャッキブラケットの板状部(間隔保持手段)
84…ピン(間隔保持手段)
90…間隔保持プレート(間隔保持手段)
92…ピン(間隔保持手段)
1…第一の方向
2…第二の方向
G…間隙
1…第一の経路
2…第二の経路
S…水平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11