IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建設機械 図1
  • 特許-建設機械 図2
  • 特許-建設機械 図3
  • 特許-建設機械 図4
  • 特許-建設機械 図5
  • 特許-建設機械 図6
  • 特許-建設機械 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/20 20100101AFI20231227BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20231227BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F01N13/20 Z
E02F9/00 D
B60K13/04 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020041793
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143614
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 仁視
(72)【発明者】
【氏名】平松 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】平賀 正紀
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012385(JP,A)
【文献】実開平02-124218(JP,U)
【文献】実開平01-176712(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/20
E02F 9/00
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装カバーによって覆われた機械室内に配置されたエンジンと、
前記エンジンの排気管に接続して設けられ、前記エンジンから排出された排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、
前記排気ガス後処理装置から前記外装カバーの上面部に向けて突出し、処理後の排気ガスを噴出する尾管と、
前記外装カバーの前記上面部に形成されている上部開口に挿通され、前記外装カバーの前記上面部から下向きに延び、前記尾管が挿入された接続管と、を備えてなる建設機械において、
前記外装カバーの前記上面部には、ディフューザが設けられており、
前記ディフューザは、前記上部開口の周囲を囲む位置から立ち上がる周壁部と、前記周壁部に接続して前記接続管の上方を覆う天板部と、前記接続管を介して前記尾管から噴出されて前記周壁部と前記天板部によって案内された排気ガスを排出する排気口と、を有し、
前記周壁部の一部であって、前記上部開口を挟んで前記排気口と反対側に位置する第1周壁は、平板として形成され、
前記天板部は、前記第1周壁から斜め上方に向かって延びる平板として形成され、
前記第1周壁は、前記接続管の開口端から離間して配置され、
前記接続管と前記第1周壁との間には、前記接続管から排気ガスが噴出されたときに低圧エリアとなる拡開部が形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記ディフューザは、前記外装カバーの前記上面部に取付けられるフランジ部を有し、
前記周壁部は、前記フランジ部から立ち上がっていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
外装カバーによって覆われた機械室内に配置されたエンジンと、
前記エンジンの排気管に接続して設けられ、前記エンジンから排出された排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、
前記排気ガス後処理装置から前記外装カバーの上面部に向けて突出し、処理後の排気ガスを噴出する尾管と、
前記外装カバーの前記上面部に形成されている上部開口に挿通され、前記外装カバーの前記上面部から下向きに延び、前記尾管が挿入された接続管と、を備えてなる建設機械において、
前記外装カバーの前記上面部には、ディフューザが設けられており、
前記ディフューザは、前記上部開口の周囲を囲む位置から立ち上がる周壁部と、前記周壁部に接続して前記接続管の上方を覆う天板部と、前記接続管を介して前記尾管から噴出されて前記周壁部と前記天板部によって案内された排気ガスを排出する排気口と、を有し、
前記周壁部の一部であって、前記上部開口を挟んで前記排気口と反対側に位置する第1周壁は、平板として形成され、
前記天板部は、前記第1周壁から斜め上方に向かって延びる平板として形成され、
前記ディフューザの前記天板部は、前記排気口から排出された排気ガスが衝突する位置に水平方向に延びる衝突板を有していることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記周壁部は、前記第1周壁の一方の端部に接続する平板状の第2周壁と、前記第1周壁の他方の端部に接続する平板状の第3周壁と、を有し、
前記上部開口は、前記第1周壁、前記第2周壁および前記第3周壁によってコ字状に囲まれていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ガス後処理装置を備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、外装カバーによって覆われた機械室内に動力源としてのエンジン(ディーゼルエンジン)を備えている。また、エンジンの排気管には、エンジンから排出された排気ガスを処理する排気ガス後処理装置が接続されている。さらに、排気ガス後処理装置には、処理後の排気ガスを噴出する尾管が外装カバーの上面部に向けて突出している。
【0003】
昨今では、環境汚染の問題に対する意識の高まりから、油圧ショベルに搭載されたエンジンについても、排気ガスの清浄化が図られている。ここで、排気ガス後処理装置としては、例えば、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)をフィルタで捕集して除去する粒子状物質捕集装置(DPF:Diesel Particulate Filter)が知られている。この粒子状物質捕集装置は、フィルタに一定量の粒子状物質を捕集すると、堆積した粒子状物質を燃焼して除去することによってフィルタを再生し、粒子状物質の捕集性能を維持している。
【0004】
しかし、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼した場合、排気ガスの温度は、約600度に達してしまう。一方で、高温の排気ガスは、高温のまま外部に排出することは好ましくない。そこで、排気ガス後処理装置を有する油圧ショベルは、排気ガスの温度を低減させる装置を備えている。この排気ガスの低減装置としては、外装カバーの上面部に設けられた排気口と、排気口の周囲に設けられたカバー部材とを含んで構成されている。この上で、カバー部材には、機械室内の空気や外部の空気をカバー部材内に導く開口部が設けられている(特許文献1)。これにより、特許文献1では、排気口から排出された高温な排気ガスに、温度の低い空気を合流させて温度を下げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-125432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1は、排気口から排出された排気ガスの周囲で温度の低い空気を流通させているだけであるから、高温の排気ガスに対して低温の空気が混ざり難く、排気ガスの温度を大幅に下げることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、高温の排気ガスに対して低温の空気を混合することにより、排気ガスの温度を低減できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、外装カバーによって覆われた機械室内に配置されたエンジンと、前記エンジンの排気管に接続して設けられ、前記エンジンから排出された排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、前記排気ガス後処理装置から前記外装カバーの上面部に向けて突出し、処理後の排気ガスを噴出する尾管と、前記外装カバーの前記上面部に形成されている上部開口に挿通され、前記外装カバーの前記上面部から下向きに延び、前記尾管が挿入された接続管と、を備えてなる建設機械において、前記外装カバーの前記上面部には、ディフューザが設けられており、前記ディフューザは、前記上部開口の周囲を囲む位置から立ち上がる周壁部と、前記周壁部に接続して前記接続管の上方を覆う天板部と、前記接続管を介して前記尾管から噴出されて前記周壁部と前記天板部によって案内された排気ガスを排出する排気口と、を有し、前記周壁部の一部であって、前記上部開口を挟んで前記排気口と反対側に位置する第1周壁は、平板として形成され、前記天板部は、前記第1周壁から斜め上方に向かって延びる平板として形成され、前記第1周壁は、前記接続管の開口端から離間して配置され、前記接続管と前記第1周壁との間には、前記接続管から排気ガスが噴出されたときに低圧エリアとなる拡開部が形成されている。

【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、高温の排気ガスに対して低温の空気を混合することができ、排気ガスの温度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】上部旋回体の機械室内を図1中の矢示II-II方向から見た断面図である。
図3】外装カバーの上面部、排気ガス後処理装置、尾管、ディフューザ等を図2中の矢示III-III方向から見た断面図である。
図4】外装カバーの上面部にディフューザを取付けた状態を示す斜視図である。
図5】外装カバーの上面部からディフューザを取外した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態によるディフューザを、外装カバーの上面部、排気ガス後処理装置、尾管等と一緒に図3と同様位置から見た断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態によるディフューザを、外装カバーの上面部と一緒に図4と同様位置から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、排気ガス後処理装置を搭載した油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
まず、図1ないし図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、クローラ式の建設機械を構成している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回動作が可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰の動作が可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより構成されている。
【0013】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を形成するものである。図2に示すように、旋回フレーム5は、前後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、底板5A上に立設され、左右方向に所定の間隔をもって前後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、各縦板5B,5Cの左右方向の外側に間隔をもって配置され、前後方向に延びた左サイドフレーム5D、右サイドフレーム5Eと、底板5A、各縦板5B,5Cから左右方向に張出し、その先端部にそれぞれのサイドフレーム5D,5Eを支持した複数本の張出しビーム5F(図2中に2本のみ図示)と、を含んで構成されている。旋回フレーム5は、後述する機械室9の下側を閉塞するものである。
【0014】
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5を形成する左右の縦板5B,5Cの後部に設けられている(図1参照)。このカウンタウエイト6は、作業装置4との重量バランスをとるもので、重量物として形成されている。
【0015】
キャブ7は、旋回フレーム5の左前側に設けられている。このキャブ7は、オペレータが搭乗するもので、その内部には、例えば、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)が配設されている。
【0016】
外装カバー8は、後述のエンジン10、油圧ポンプ11、熱交換装置12、排気ガス後処理装置14を含む機器を覆っている。外装カバー8は、カウンタウエイト6とキャブ7との間に位置して旋回フレーム5上に設けられている。具体的に、外装カバー8は、熱交換装置12の左側を覆うように旋回フレーム5の左サイドフレーム5Dから立上った左面部8Aと、油圧ポンプ11等の右側を覆うように旋回フレーム5の右サイドフレーム5Eから立上った右面部8Bと、エンジン10等の上側を覆うように左面部8Aの上部と右面部8Bの上部との間に亘って水平方向に延びた上面部8Cとを含んで構成されている。左面部8Aには、外気を冷却風として機械室9に向けて流入させる通気口が設けられている。
【0017】
上面部8Cは、例えば、平坦な板状体として形成されている。上面部8Cには、尾管15の直上に位置して上部開口8Dが設けられている。図3図5に示すように、上部開口8Dは、尾管15の外径寸法よりも大きな内径寸法をもった円形状の開口として形成されている。上部開口8Dには、後述する接続管16が挿通される。また、上部開口8Dの周囲には、複数個、例えば4個のねじ穴8Eが設けられている。なお、ねじ穴8Eには、例えば、溶接ナット等が用いられている。
【0018】
機械室9は、カウンタウエイト6の前側に配置されている。この機械室9は、旋回フレーム5と外装カバー8とによって覆われた左右方向に長尺な直方体状の空間として形成されている。また、機械室9は、外装カバー8の左面部8Aと熱交換装置12との間に位置する冷却風流入室9Aと、熱交換装置12とファイヤウォール13との間に位置するエンジン室9Bと、ファイヤウォール13と右面部8Bとの間に位置するポンプ室9Cとに仕切られている。
【0019】
エンジン10は、ディーゼルエンジンからなり、機械室9のエンジン室9B内に配置されている。エンジン10は、旋回フレーム5の後側に左右方向に延在する横置き状態で設けられている。エンジン10には、排気ガスを排出するための排気管10Aが設けられ、この排気管10Aには、後述の排気ガス後処理装置14が設けられている。エンジン10の左側には、熱交換装置12と対面する位置に冷却ファン10Bが設けられている。
【0020】
油圧ポンプ11は、ポンプ室9C内に位置するようにエンジン10の右側に設けられ、エンジン10によって駆動される。油圧ポンプ11は、後述の作動油タンク27から供給される作動油を、圧油として制御弁装置(図示せず)に向け吐出する。
【0021】
熱交換装置12は、冷却風の流れ方向(図2の左から右への流れ方向)で冷却ファン10Bの上流側に対面するように設けられている。熱交換装置12は、例えばエンジン冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラを含んで構成されている。熱交換装置12は、機械室9の左側のエリアを冷却風流入室9Aとエンジン室9Bとに仕切る仕切部材を構成している。
【0022】
ファイヤウォール13は、油圧ポンプ11の周囲に位置して旋回フレーム5と外装カバー8の上面部8Cとの間に設けられている。ファイヤウォール13は、エンジン10と油圧ポンプ11との間を遮るもので、機械室9の右側のエリアをエンジン室9Bとポンプ室9Cとに仕切る仕切部材を構成している。ファイヤウォール13は、例えば複数枚の鋼板を折り曲げて互いに固着することにより、エンジン10に対する油圧ポンプ11の取付基部を跨ぐように形成されている。これにより、ファイヤウォール13は、油圧ポンプ11の周囲で作動油の漏れが生じた場合でも、漏れ出た作動油がエンジン10側(エンジン室9B側)に飛散するのを防止することができる。
【0023】
排気ガス後処理装置14は、エンジン10の排気管10Aに接続して設けられ、エンジン10から排出された排気ガスを処理する。排気ガス後処理装置14の構成、レイアウト等の一例について述べる。排気ガス後処理装置14は、油圧ポンプ11の上方となるエンジン10の上部右側位置に前後方向に延びて設けられている。図3に示すように、排気ガス後処理装置14は、前後方向に延びる円筒体として形成された筒状ケース14Aと、筒状ケース14Aの前側位置から左側に向けて径方向の外側に突出した流入管14B(図2参照)と、筒状ケース14Aの後側位置に上下方向に延びて設けられた後述の尾管15とを含んで構成されている。筒状ケース14Aは、外装カバー8の上面部8Cの下側近傍に配置されている。また、流入管14Bは、エンジン10の排気管10Aに接続されている。
【0024】
ここで、排気ガス後処理装置14の筒状ケース14A内には、排気ガスを浄化するための処理装置、例えば、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するために酸化触媒やフィルタから構成された粒子状物質捕集装置(図示せず)が収容されている。なお、筒状ケース14A内には、粒子状物質捕集装置以外にも、尿素水溶液を用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するNOx浄化装置、排気ガスの騒音を低減する消音装置(排気マフラ)等を収容することができる。筒状ケース14Aは、例えば、取付ブラケット14Cを介して油圧ポンプ11と共にエンジン10の右側部位に取付けられている。
【0025】
ここで、筒状ケース14A内に収容された粒子状物質捕集装置は、排気ガスに含まれる粒子状物質をフィルタで捕集する。この粒子状物質捕集装置は、フィルタに一定量の粒子状物質を捕集すると、堆積した粒子状物質を燃焼して除去することによってフィルタを再生し、粒子状物質の捕集性能を維持している。例えば、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼した場合、排気ガスの温度は、約600度に達する。
【0026】
尾管15は、排気ガス後処理装置14から外装カバー8の上面部8Cに向けて突出し、処理後の排気ガスを噴出する。尾管15は、排気ガス後処理装置14を形成する筒状ケース14Aの後側位置に上側に突出して設けられている。尾管15は、円筒体からなり、外装カバー8の上面部8Cに設けられた上部開口8Dの直下に配置されている。尾管15の上部は、後述する接続管16に挿通される。即ち、尾管15の外径寸法Dは、接続管16の内径寸法dよりも小さな値に設定されている。これにより、尾管15と接続管16との間には、機械室9内の空気をディフューザ17内に向けて流通させるための後述の環状空間24が形成されている。
【0027】
接続管16は、外装カバー8の上部開口8Dに挿通され、外装カバー8の上面部8Cから下向きに延びている。接続管16には、尾管15が下側から挿入されている。接続管16は、ディフューザ17のフランジ部18から下向きに延びた円筒体として形成されている。図3に示すように、接続管16は、上端がフランジ部18の円形開口18Aに嵌合されている。一方、円形開口18Aから下側に延びた接続管16の下端は、尾管15を取囲んでいる。ここで、接続管16は、例えば、上下方向に延びた円筒体として形成され、全長に亘って均等な内径寸法dは、尾管15の外径寸法Dよりも大きな値となっている(d>D)。これにより、接続管16は、尾管15との間に後述の環状空間24を形成している。なお、接続管16は、外装カバー8の上部開口8Dと同軸となるように、上面部8Cに取付ける構成としてもよい。
【0028】
次に、本実施形態の特徴部分となるディフューザ17の構成および排気ガス等の流れ方について詳細に説明する。
【0029】
ディフューザ17は、外装カバー8の上面部8Cに設けられている。ディフューザ17は、後述する接続管16の開口端の周囲に設けられている。ディフューザ17は、尾管15から噴出された排気ガスを機械室9の外部に導く。そして、ディフューザ17は、後述のフランジ部18、周壁部21、天板部22、排気口23を含んで構成されている。
【0030】
図4図5に示すように、フランジ部18は、外装カバー8の上面部8Cに取付けられている。フランジ部18は、例えば、左右方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。フランジ部18の中央には、接続管16が取付けられる円形開口18Aが設けられている。また、フランジ部18には、円形開口18Aを挟んだ長手方向の両側に、前後方向に間隔をもって2個、合計で4個のボルト挿通孔18Bが設けられている。フランジ部18は、各ボルト挿通孔18Bに挿通されたボルト19を外装カバー8の各ねじ穴8Eに螺着することにより、上面部8Cに取付けることができる。
【0031】
周壁部21は、例えば、矩形状の筒状体として形成され、フランジ部18の上面から立ち上がっている。周壁部21は、第1周壁21A~第4周壁21Dから形成されている。第1周壁21Aは、周壁部21の一部であって、上部開口8Dを挟んで排気口23と反対側、例えば前側に位置している。第1周壁21Aは、横方向に長尺な長方形状の平板として形成されている。また、第1周壁21Aは、上部開口8Dよりも前側に離れた位置に配置されている。
【0032】
第2周壁21Bは、第1周壁21Aの一方の端部、例えば左側の端部に接続する平板として形成されている。第2周壁21Bは、上部開口8Dよりも左側に離れた位置でフランジ部18の上面から上側に延びて形成されている。第2周壁21Bの上辺は、第1周壁21Aの上部から後側に向けて斜め上側に延びた斜辺部21B1となっている。
【0033】
一方、第3周壁21Cは、第1周壁21Aの他方の端部、例えば右側の端部に接続する平板として形成されている。第3周壁21Cは、上部開口8Dよりも右側に離れた位置でフランジ部18の上面から上側に延びて形成されている。第3周壁21Cの上辺は、第2周壁21Bと同様に、第1周壁21Aの上部から後側に向けて斜め上側に延びた斜辺部21C1となっている。
【0034】
さらに、第4周壁21Dは、上部開口8Dを挟んで排気口23側、例えば第1周壁21Aと前後方向に間隔をもった後側に配置されている。第4周壁21Dは、第1周壁21Aよりも上下方向の寸法が小さな長方形状の平板として形成され、第1周壁21Aと同様に、フランジ部18の上面から立ち上がっている。また、第4周壁21Dの長さ方向の両端は、第2周壁21Bの後端と第3周壁21Cの後端に接続されている。
【0035】
これにより、周壁部21は、上部開口8Dから離れた矩形状の枠体として形成されている。図5に示すように、第1周壁21Aと第4周壁21Dとの距離は、寸法L1に設定され、第2周壁21Bと第3周壁21Cとの距離は、寸法L2に設定されている。寸法L1と寸法L2とは、いずれも接続管16の内径寸法dよりも大きな値に設定されている(L1>d、L2>d)。また、第2周壁21Bの上辺は、第1周壁21Aの上部から後側に向けて斜め上側に延びた斜辺部21B1となっている。同様に、第3周壁21Cの上辺は、第1周壁21Aの上部から後側に向けて斜め上側に延びた斜辺部21C1となっている。
【0036】
ここで、周壁部21は、第1周壁21Aと第4周壁21Dとの距離寸法L1と第2周壁21Bと第3周壁21Cとの距離寸法L2を接続管16の内径寸法dよりも大きな値に設定することにより、接続管16の開口端の周囲の通路面積を急激に大きくしている。これにより、ディフューザ17は、接続管16の開口端の周囲の圧力を下げて天板部22側から周壁部21側(接続管16の開口端の周囲)に向かう逆向きの流れを発生させている。この場合に重要になるのは、天板部22の下部と接している第1周壁21Aの位置であり、第1周壁21Aを接続管16の開口端よりも前側に離れた位置に設置することで、天板部22、第1周壁21Aに沿わせて排気ガスを後述の低圧エリア26へと導くことができる。
【0037】
また、周壁部21は、円形の接続管16を取囲む矩形状の枠体として形成している。従って、接続管16と周壁部21とは、枠体の隅部と接続管16との間隔が広く、隣合う隅部間の中間位置と接続管16との間隔が狭くなる。このように、接続管16と周壁部21との間隔を周方向で異ならせた構造では、接続管16と周壁部21との間で生じる圧力(負圧)をばらつかせることができ、乱流を形成することができる。この乱流は、接続管16から排気口23に向けて流れる排気ガスと冷えた空気を積極的に混合する。
【0038】
なお、本実施形態では、ディフューザ17は、排気ガスを上部旋回体3の後方向に排出する構成であるから、この排出方向と反対側の第1周壁21Aを接続管16の開口端から離間させることが重要となっている。即ち、ディフューザが排気ガスを上部旋回体の右方向に排出する構成である場合には、この排出方向と反対側の左壁を排気口から離間させることが重要となる。
【0039】
天板部22は、周壁部21を形成する第1周壁21Aの上部から、第2周壁21Bの斜辺部21B1、第3周壁21Cの斜辺部21C1に沿って、第2周壁21Bおよび第3周壁21Cの上端まで延びた長方形状の平板として形成されている。即ち、天板部22は、前側が低く、後側が高い傾斜面として形成されている。
【0040】
排気口23は、接続管16を介して尾管15から噴出されて周壁部21と天板部22によって案内された排気ガスを排出する。排気口23は、第2周壁21B、第3周壁21C、第4周壁21Dおよび天板部22によって囲まれた矩形状の開口として形成されている。排気口23は、例えば後方に向けて開口している。
【0041】
環状空間24は、尾管15と接続管16との間に形成されている。環状空間24は、尾管15から上向きに噴出される排気ガスを利用したエゼクタ効果によって、機械室9(エンジン室9B)内の空気を接続管16内に流入させる通路となっている。
【0042】
このように構成されたディフューザ17は、図5に示すように、外装カバー8の上面部8Cに設けられた上部開口8Dに上側から接続管16を挿入し、フランジ部18を上面部8Cに当接させる。この状態で、フランジ部18に設けられた各ボルト挿通孔18Bにボルト19を挿通し、各ボルト19をねじ穴8Eに螺着する。これにより、図4に示すように、ディフューザ17は、外装カバー8の上面部8Cに一体的に取付けることができる。また、接続管16は、隙間をもって尾管15を取囲むことにより、尾管15との間に環状空間24を形成することができる。
【0043】
次に、尾管15およびディフューザ17における排気ガス等の流れについて、図3を参照しつつ説明する。
【0044】
まず、矢示Aで示すように、尾管15から噴出された排気ガスは、直上に位置する天板部22の中央付近に衝突する。これにより、ディフューザ17内には、排気ガスの衝突圧によって天板部22の中央付近に高圧エリア25が形成される。一方、矢示Bで示すように、尾管15から噴出された排気ガスは、環状空間24を通じて機械室9(エンジン室9B)内の空気を接続管16内に引き込む。そして、環状空間24を通じて接続管16内に引き込まれた空気は、排気ガスと一緒にディフューザ17内に噴出される。この場合、エンジン室9Bの空気は、排気ガスに比較して十分に低温であるから、エンジン室9Bから接続管16内に引き込まれた空気は、排気ガスと一緒に流通することで排気ガスの熱を奪って温度を下げる。
【0045】
ここで、ディフューザ17を構成する周壁部21の各周壁21A~21Dは、外装カバー8の上部開口8D(接続管16の開口端)よりも尾管15の径方向の外側に離れた位置に配設されている。これにより、接続管16の開口端と各周壁21A~21Dとの間は、急激に通路面積が拡大する拡開部となっている。
【0046】
このため、接続管16内を流通し、接続管16から排気ガスと空気とが一緒に上向きに噴出されると、矢示Cで示すように、噴出された排気ガスと空気は、接続管16の周囲(拡開部)の空気を引き込む。これにより、接続管16と各周壁21A~21Dとの間の拡開部には、低圧エリア26が形成される。
【0047】
このように、ディフューザ17内に高圧エリア25と低圧エリア26とが形成されると、矢示Eで示すように、排気ガスと空気は、高圧エリア25から低圧エリア26に向けて流れる。そして、排気ガスと空気は、その一部が通常の排気ガスの流れと異なる矢示C方向の流れと矢示E方向の流れを発生することで、互いに積極的に混ざることになる。これにより、高温の排気ガスは、比較的に低温なエンジン室9Bの空気によって温度が下げられる。矢示Fで示すように、温度が下げられた排気ガス等は、ディフューザ17の排気口23から外部に排出される。
【0048】
図2に示すように、作動油タンク27は、ポンプ室9Cの前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。作動油タンク27は、油圧ショベル1に搭載された各種油圧アクチュエータに供給する作動油を貯えるものである。また、作動油タンク27の前側には、エンジン10に供給する燃料を貯える燃料タンク(図示せず)が配置されている。
【0049】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0050】
まず、オペレータは、キャブ7に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を作業現場まで移動させることができる。また、オペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0051】
油圧ショベル1を稼動しているときには、エンジン10が排出する排気ガスを排気ガス後処理装置14によって浄化する。具体的には、排気ガス後処理装置14の粒子状物質捕集装置は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するために酸化触媒やフィルタから構成されている。また、捕集した粒子状物質を燃焼して除去した場合、このときの排気ガスの温度は、例えば600度以上の高温になることがある。
【0052】
然るに、本実施形態によれば、外装カバー8の上面部8Cには、ディフューザ17が設けられている。また、ディフューザ17は、外装カバー8の上部開口8Dの周囲を囲む位置から立ち上がる周壁部21と、周壁部21に接続して接続管16の上方を覆う天板部22と、接続管16を介して尾管15から噴出されて周壁部21と天板部22によって案内された排気ガスを排出する排気口23と、を備えている。この上で、上部開口8Dを挟んで排気口23と反対側に位置する第1周壁21Aは、平板として形成され、天板部22は、第1周壁21Aから斜め上方に向かって延びる平板として形成されている。
【0053】
従って、接続管16から噴出された排気ガスを平板からなる天板部22に衝突させることで天板部22側に高圧エリア25を形成できる。また、接続管16と第1周壁21Aとの間の拡開部には、低圧エリア26を形成できる。これにより、排気ガスの一部を高圧エリア25から低圧エリア26に向けて流通(逆流)させることができ、ディフューザ17内で排気ガスとエンジン室9Bから引き込んだ低温の空気とを積極的に混ぜることができる。この結果、高温の排気ガスに対してエンジン室9B側の低温の空気を混合することができるから、排気ガスの温度を低減することができる。
【0054】
ディフューザ17は、外装カバー8の上面部8Cに取付けられるフランジ部18を有し、周壁部21は、フランジ部18から立ち上がっている。これにより、ディフューザ17は、例えば、フランジ部18に挿通したボルト19を上面部8Cに螺着することにより、周壁部21を上面部8Cに容易に取付けることができる。
【0055】
次に、図6は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、ディフューザの天板部は、排気口から排出された排気ガスが衝突する位置に水平方向に延びる衝突板を有していることにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0056】
図6において、第2の実施形態によるディフューザ31は、第1の実施形態によるディフューザ17と同様に、周壁部33と天板部34と排気口35とを備えている。天板部34は、接続管16から排出された排気ガスが衝突する位置に衝突板34Aを有している。
【0057】
衝突板34Aは、接続管16(尾管15)の直上に位置して水平方向に延びたガス受部34A1を有している。従って、衝突板34Aは、そのガス受部34A1に対して下側の正面から排気ガス等を衝突させることができ、衝突圧を高めて高圧エリア36の圧力を上昇させることができる。これにより、高圧エリア36と低圧エリア26との圧力差が大きくなるから、高圧エリア36側の排気ガス等は、低圧エリア26へと積極的に流通させることができる。
【0058】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施形態によれば、ディフューザ31を形成する天板部34は、接続管16から排出された排気ガスが衝突する位置に水平方向に延びる衝突板34Aを有している。これにより、接続管16から排気ガスを排出したときには、この排気ガスを衝突板34Aに衝突させて高圧エリア36の圧力を上昇させることができる。この結果、高圧エリア36と低圧エリア26との圧力差が大きくなるから、高圧エリア36側の排気ガス等を、低圧エリア26へと積極的に流通させることができる。
【0059】
次に、図7は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、周壁部は、第1周壁の一方の端部に接続する平板状の第2周壁と、第1周壁の他方の端部に接続する平板状の第3周壁と、を有し、上部開口は、第1周壁、第2周壁および第3周壁によってコ字状に囲まれていることにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0060】
図7において、第3の実施形態によるディフューザ41の周壁部42は、第1周壁42Aと、第1周壁42Aの一方の端部に接続する平板状の第2周壁42Bと、第1周壁42Aの他方の端部に接続する平板状の第3周壁42Cとを有している。これにより、外装カバー8の上部開口8Dは、第1周壁42A、第2周壁42Bおよび第3周壁42Cによってコ字状に囲まれている。また、ディフューザ41は、天板部43と排気口44とを有している。
【0061】
かくして、このように構成された第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第3の実施形態によれば、ディフューザ41の構成を簡略化することができる。
【0062】
なお、第1の実施形態では、ディフューザ17は、フランジ部18、周壁部21、天板部22、排気口23によって形成し、フランジ部18を介して外装カバー8の上面部8Cに取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、外装カバーの上面部にディフューザの周壁部を直接的に固着する構成としてもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0063】
第1の実施形態では、ディフューザ17の周壁部21は、第1周壁21A、第2周壁21B、第3周壁21Cおよび第4周壁21Dによって矩形状の筒状体として形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ディフューザの周壁部は、5角形以上の筒体として形成してもよい。この構成は、他の実施形態にも同様に適用することができる。
【0064】
各実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等のエンジンを備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 油圧ショベル(建設機械)
8 外装カバー
8C 上面部
8D 上部開口
9 機械室
10 エンジン
10A 排気管
14 排気ガス後処理装置
15 尾管
16 接続管
17,31,41 ディフューザ
18 フランジ部
21,33,42 周壁部
21A,42A 第1周壁
21B,42B 第2周壁
21C,42C 第3周壁
21D 第4周壁
22,34,43 天板部
23,35,44 排気口
34A 衝突板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7