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特許7410760ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/14 20060101AFI20231227BHJP
   H02P 8/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G04C3/14 S
H02P8/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020043956
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143978
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】酒井 聡
(72)【発明者】
【氏名】野邉 哲也
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134049(JP,A)
【文献】特開平11-150988(JP,A)
【文献】特開平11-127595(JP,A)
【文献】特開2006-226927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00 - 99/00
G04R 20/00 - 60/14
H02P 8/00- 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N極とS極との少なくとも2極に着磁され、指針を回転させるロータと、
前記ロータに対して回転力を生じさせる磁束を与えるステータと、
前記ステータの両端のうち第1端に磁束を供給する第1コイルと、
前記ステータの両端のうち前記第1端と異なる第2端に磁束を供給する第2コイルと、
を備えるステッピングモータを駆動するステッピングモータ制御装置であって、
前記第1コイルと前記第2コイルとを励磁することにより前記ロータを回転させる駆動パルスを出力する駆動パルス発生回路と、
前記駆動パルスを印加した際に生じる残留磁束を低減させる消磁パルスを出力する消磁パルス発生回路と、
を備え
前記消磁パルスは、前記ロータの回転角度を、前記ロータの静止角度と一致する方向へ保持するトルクを発生する二相励磁パルスである
ステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記駆動パルスは、前記ロータを極数に応じた基準回転角度だけ回転させるパルスであり、
前記消磁パルス発生回路は、前記駆動パルス発生回路が前記駆動パルスの印加を終えた後、前記ロータの回転により、前記ロータの磁極軸と励磁された前記ステータの磁極軸とが一致する位置を少なくとも1回通過した後に、消磁パルスを出力する
請求項1に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記消磁パルスの極性は、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち、いずれかの前記駆動パルスの極性と逆である
請求項2に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記消磁パルスの極性は、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち、最後に印加される前記駆動パルスの極性と逆である
請求項から請求項3のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
前記消磁パルスの極性は、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち、エネルギーが最も大きい前記駆動パルスの極性と逆である
請求項から請求項4のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項6】
前記消磁パルスは、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち最初の前記駆動パルスが印加されてから、少なくとも5ms経過後に印加される
請求項から請求項5のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項7】
前記消磁パルスは、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスが、継続的に複数回印加された後、最後の前記駆動パルスが印加された後に印加される
請求項から請求項6のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項8】
前記消磁パルスは、連続して印加される前記駆動パルスの極性が互いに異なる場合に、前記連続して印加される前記駆動パルスの間に印加される
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項9】
前記消磁パルスは、前記駆動パルスが印加されることにより前記ステータに発生する保持トルクの方向と、前記ロータの静止位置における前記ロータの磁極軸の方向とが互いに異なる場合に印加される
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置と、
前記ステッピングモータと
を備えるムーブメント。
【請求項11】
請求項10に記載のムーブメントを備える時計。
【請求項12】
N極とS極との少なくとも2極に着磁され、指針を回転させるロータと、
前記ロータに対して回転力を生じさせる磁束を与えるステータと、
前記ステータの両端のうち第1端に磁束を供給する第1コイルと、
前記ステータの両端のうち前記第1端と異なる第2端に磁束を供給する第2コイルと、
を備えるステッピングモータを駆動するステッピングモータ制御方法であって、
前記第1コイルと前記第2コイルとを励磁することにより前記ロータを回転させる駆動パルスを出力し、
前記駆動パルスを印加した際に生じる残留磁束を低減させる消磁パルスを出力し、
前記消磁パルスは、前記ロータの回転角度を、前記ロータの静止角度と一致する方向へ保持するトルクを発生する二相励磁パルスである
ステッピングモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計が備えるステッピングモータを駆動する技術において、高速回転を安定して実施するために、2つのコイルによりステータを励磁することにより、ロータを回転させる技術があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-10570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、ロータが回転した後のステータ内に磁束が残留する場合がある。ステータ内に残留した磁束は、ロータの回転のために必要な磁束を打ち消すため、駆動を開始するときの動作が不安定になるという問題があった。このような課題は、特に高速回転をする際に、問題となる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、ロータを安定して駆動させることができるステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、N極とS極との少なくとも2極に着磁され、指針を回転させるロータと、前記ロータに対して回転力を生じさせる磁束を与えるステータと、前記ステータの両端のうち第1端に磁束を供給する第1コイルと、前記ステータの両端のうち前記第1端と異なる第2端に磁束を供給する第2コイルとを備えるステッピングモータを駆動するステッピングモータ制御装置であって、前記第1コイルと前記第2コイルとを励磁することにより前記ロータを回転させる駆動パルスを出力する駆動パルス発生回路と、前記駆動パルスを印加した際に生じる残留磁束を低減させる消磁パルスを出力する消磁パルス発生回路と、を備え、前記消磁パルスは、前記ロータの回転角度を、前記ロータの静止角度と一致する方向へ保持するトルクを発生する二相励磁パルスである
【0007】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記駆動パルスは、前記ロータを極数に応じた基準回転角度だけ回転させるパルスであり、前記消磁パルス発生回路は、前記駆動パルス発生回路が前記駆動パルスの印加を終えた後、前記ロータの回転により、前記ロータの磁極軸と励磁された前記ステータの磁極軸とが一致する位置を少なくとも1回通過した後に、消磁パルスを出力する。
【0008】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスの極性は、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち、いずれかの前記駆動パルスの極性と逆である。
【0009】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスの極性は、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち、最後に印加される前記駆動パルスの極性と逆である。
【0010】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスの極性は、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち、エネルギーが最も大きい前記駆動パルスの極性と逆である。
【0011】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスは、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスのうち最初の前記駆動パルスが印加されてから、少なくとも5ms経過後に印加される。
【0012】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスは、前記ロータが前記基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の前記駆動パルスが、継続的に複数回印加された後、最後の前記駆動パルスが印加された後に印加される。
【0014】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスは、連続して印加される前記駆動パルスの極性が互いに異なる場合に、前記連続して印加される前記駆動パルスの間に印加される。
【0015】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスは、前記駆動パルスが印加されることにより前記ステータに発生する保持トルクの方向と、前記ロータの静止位置における前記ロータの磁極軸の方向とが互いに異なる場合に印加される。
【0016】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記消磁パルスは、前記ロータの回転角度を、前記ロータの静止角度と一致する方向へ保持するトルクを発生する二相励磁パルスである。
【0017】
本発明の一態様に係るムーブメントは、上述したステッピングモータ制御装置と、前記ステッピングモータとを備える。
【0018】
本発明の一態様に係る時計は、上述したムーブメントを備える。
【0019】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御方法は、N極とS極との少なくとも2極に着磁され、指針を回転させるロータと、前記ロータに対して回転力を生じさせる磁束を与えるステータと、前記ステータの両端のうち第1端に磁束を供給する第1コイルと、前記ステータの両端のうち前記第1端と異なる第2端に磁束を供給する第2コイルと、を備えるステッピングモータを駆動するステッピングモータ制御方法であって、前記第1コイルと前記第2コイルとを励磁することにより前記ロータを回転させる駆動パルスを出力し、前記駆動パルスを印加した際に生じる残留磁束を低減させる消磁パルスを出力し、前記消磁パルスは、前記ロータの回転角度を、前記ロータの静止角度と一致する方向へ保持するトルクを発生する二相励磁パルスである
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ロータを安定して駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るアナログ電子時計の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るステッピングモータの概略図である。
図3】消磁パルスを印加しない場合のアナログ電子時計の制御処理のタイムチャートである。
図4】消磁パルスを印加しない場合のステッピングモータの動作図である。
図5】消磁パルスを印加する場合のアナログ電子時計の制御処理のタイムチャートである。
図6】消磁パルスを印加する場合のステッピングモータの動作図である。
図7】消磁パルスを印加しない場合において、衝撃によりロータが回転した場合の動作図である。
図8】消磁パルスを印加する場合において、衝撃によりロータが回転した場合の動作図である。
図9】実施形態の変形例に係るアナログ電子時計の制御処理のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
[アナログ電子時計1の構成]
図1は、実施形態に係るアナログ電子時計1を示すブロック図である。
図1に示すように、アナログ電子時計1は、発振回路101と、分周回路102と、制御回路103と、モータ駆動回路104と、駆動パルス発生回路121と、消磁パルス発生回路122と、ステッピングモータ105と、図示しない輪列と、アナログ表示部106と、を備えている。
【0024】
発振回路101は、所定周波数の信号を発生する。
分周回路102は、発振回路101で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する。
制御回路103は、アナログ電子時計1を構成する各電子回路要素の制御、およびモータ回転駆動用のパルス信号の制御を行う。
【0025】
駆動パルス発生回路121は、制御回路103から出力される制御信号に基づいて、ステッピングモータ105を回転駆動させる駆動パルスを出力する。
消磁パルス発生回路122は、駆動パルス発生回路121がモータ回転駆動用の駆動パルスを印加した際に生じる残留磁束を低減させる消磁パルスを出力する。
モータ駆動回路104は、駆動パルス発生回路121から出力された駆動パルス、及び消磁パルス発生回路122から出力された消磁パルスに基づき、ステッピングモータ105を駆動する。なお、本出願において、駆動パルスおよび消磁パルスをパルス信号と称することがある。
【0026】
ステッピングモータ105は、駆動パルス発生回路121から出力されたモータ回転駆動用のパルス信号によって回転駆動する。
発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス発生回路121、消磁パルス発生回路122及びモータ駆動回路104は、アナログ電子時計1の制御部(ステッピングモータ制御装置)112を構成している。
【0027】
輪列(不図示)は、ステッピングモータ105によって回転駆動される。
アナログ表示部106は、輪列によって回転駆動される時針107、分針108及び秒針109(以下、時針107、分針108及び秒針109を区別しない場合には指針と記載する。)や、日にち表示用のカレンダ表示部110等を有している。
【0028】
また、アナログ電子時計1は、時計ケース113を備えている。時計ケース113の外面側には、アナログ表示部106が配設されている。アナログ表示部106は、目盛りが刻まれた文字盤である。
また、時計ケース113の内部には、上述した輪列を含む時計用ムーブメント114が配設されている。ムーブメント114は、アナログ電子時計1の各部を駆動させるための機械式の機構である。時計用ムーブメント114は、制御部112と、ステッピングモータ105とを備える。
【0029】
図2は、実施形態に係るステッピングモータ105の概略図である。
図2に示すように、ステッピングモータ105は、ロータ収容孔25を有するステータ20と、径方向に2極に着磁されることにより磁気的な極性を有し、ロータ収容孔25に回転可能に配設されたロータ30と、を備えている。ステッピングモータ105は、単位ステップ毎に動作し、指針を回転させる。
【0030】
ステータ20は、ステータ本体21と、ステータ本体21と磁気的に接合された第1磁心(第1端)40Aと、第2磁心(第2端)40Bと、第1磁心40Aに巻回された第1コイル50Aと、第2磁心40Bに巻回された第2コイル50Bと、を備えている。
【0031】
ステータ本体21は、例えばパーマロイ等の高透磁率材料を用いた板材により形成されている。ステータ本体21は、T字状の第1ヨーク22と、一対の第2ヨーク23及び第2ヨーク24とを有し、平面視H状に形成されている。すなわち、T字状の第1ヨーク22は、所定の第1方向に延びる直状部22a、及び直状部22aの一端部から第1方向に直交する第2方向の両側に張り出した一対の張出部22b及び張出部22cを備える。そして、第2ヨーク23は、直状部22aの他端部から張出部22bと同じ側に張り出すように設けられており、第2ヨーク24は、直状部22aの他端部から張出部22cと同じ側に張り出すように設けられている。このような第1ヨーク22、第2ヨーク23、及び第2ヨーク24の構成により、ステータ本体21は、平面視H状に形成されている。なお、第1ヨーク22、第2ヨーク23及び第2ヨーク24は、一体形成されている。
【0032】
ステータ本体21の第1ヨーク22と、第2ヨーク23と、第2ヨーク24との交点には、上述した円孔状のロータ収容孔25が形成されている。ロータ収容孔25の内周面には、一対の切欠部25aが第2方向に並んで互いに対向するように形成されている。切欠部25aは、円弧状に切り欠かれている。これら切欠部25aは、ロータ30の停止位置を決めるための位置決め部として構成されている。ロータ30は、その磁極軸が一対の切欠部25aを結ぶ線分と直交する位置、すなわち磁極軸が第1方向に沿う位置にあるときに、最もポテンシャルエネルギーが低くなり、安定して停止する。以下、ロータ30の磁極軸が第1方向に沿い、かつロータ30のN極が第1ヨーク22側を向くときのロータ30の停止位置(図2に示す位置)を第1停止位置という。また、ロータ30の磁極軸が第1方向に沿い、かつロータ30のS極が第1ヨーク22側を向くときのロータ30の停止位置を第2停止位置という。
【0033】
また、ステータ本体21におけるロータ収容孔25の周囲には、平面視におけるステータ本体21の外周縁からロータ収容孔25に向かって切り欠かれた切欠部26が3箇所に形成されている。各切欠部26は、第1ヨーク22と第2ヨーク23とが接続する隅部と、第1ヨーク22と第2ヨーク24とが接続する隅部と、第2ヨーク23と第2ヨーク24とが接続する部分と、に形成されている。各切欠部26は、円弧状に切り欠かれている。
【0034】
ステータ本体21におけるロータ収容孔25の周囲は、各切欠部26によって局所的に狭くなっている(以下、局所的に狭くなっている部分を狭小部と称する場合がある。)。狭小部はステータ本体21の他の部分と比較して磁気飽和しやすくなっており、狭小部の磁気飽和によって、ステータ本体21はロータ収容孔25の周囲において磁気的に3つに分割される。ステータ本体21は、ロータ30の周囲における第2ヨーク23に対応する位置に配設された第1磁極部20Aと、ロータ30の周囲における第2ヨーク24に対応する位置に配設された第2磁極部20Bと、ロータ30の周囲における第1ヨーク22の直状部22aに対応する位置に配設された第3磁極部20Cと、を有している。
【0035】
ここで、磁極軸Aと、直交する直線Bとによりロータ30の各部を符号30Aから符号30Dに区分する。第1磁極部20Aのうち、第2ヨーク23と第2ヨーク24とが接続する部分に形成された切欠部26から、第2ヨーク23に形成された切欠部25aにかけてロータ収容孔25に沿う部分は、第1停止位置に位置するロータ30の符号30Aに示される部分(第2停止位置に位置するロータ30の符号30Cに示される部分)と対向配置されている。第2磁極部20Bのうち、第2ヨーク23と第2ヨーク24とが接続する部分に形成された切欠部26から、第2ヨーク24に形成された切欠部25aにかけてロータ収容孔25に沿う部分は、第1停止位置に位置するロータ30の符号30Bに示される部分(第2停止位置に位置するロータ30の符号30Dに示される部分)と対向配置されている。
第3磁極部20Cは、第1停止位置に位置するロータ30のN極(第2停止位置に位置するロータ30のS極)に対向配置されている。
【0036】
第1磁心40A及び第2磁心40Bの各磁心は、例えばパーマロイ等の高透磁率材料により形成されている。第1磁心40Aは、張出部22cの先端部と、第2ヨーク24の先端部と、に磁気的に接続されている。第2磁心40Bは、張出部22bの先端部と、第2ヨーク23の先端部と、に磁気的に接続されている。第1磁心40A及び第2磁心40Bの各磁心の両端部は、ステータ本体21に対して例えばビス止め等により連結されている。
【0037】
第1コイル50Aは、第1磁心40Aに巻回され、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cに磁気的に結合している。第1コイル50Aは、第1端子50Aa及び第2端子50Abを有している。第1コイル50Aは、第1端子50Aaから第2端子50Abに向けて電流を流したときに、第1コイル50A内に張出部22c側から第2ヨーク24側に向かう磁界が発生するように巻回されている。
【0038】
第2コイル50Bは、第2磁心40Bに巻回され、第1磁極部20A及び第3磁極部20Cに磁気的に結合している。第2コイル50Bは、第1端子50Ba及び第2端子50Bbを有している。第2コイル50Bの第2端子50Bbは、第1コイル50Aの第2端子50Abと同電位となるように設けられている。第2コイル50Bは、第1端子50Baから第2端子50Bbに向けて電流を流したときに、第2コイル50B内に第2ヨーク23側から張出部22b側に向かう磁界が発生するように巻回されている。
【0039】
第1コイル50Aの導線の線径は、第2コイル50Bの導線の線径と同じとなっている。また、第1コイル50Aの巻線回数は、第2コイル50Bの巻線回数と同じとなっている。第1コイル50A及び第2コイル50Bの端子は、駆動パルス発生回路121に接続されている。以下の説明では、第1コイル50Aの第1端子50Aaの電位をout1とし、第1コイル50Aの第2端子50Abの電位をout2とし、第2コイル50Bの第1端子50Baの電位をout3とし、第2コイル50Bの第2端子50Bbの電位をout4とする。
【0040】
このように構成されたステータ20は、第1コイル50A又は第2コイル50Bから磁束が生じると、第1磁心40A及び第2磁心40Bの各磁心と、ステータ本体21とに沿って磁束が流れる。そして、第1コイル50A又は第2コイル50Bへの通電状態に応じて、上述した第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cの極性が切り替えられる。
【0041】
すなわち、ステッピングモータ105は、ロータ30と、ステータ20と、第1コイル50Aと、第2コイル50Bとを備える。ステータ20は、ロータ30に対して回転力を生じさせる磁束を与える。ロータ30は、N極とS極との少なくとも2極に着磁され、指針を回転させる。第1コイル50Aは、ステータ20の両端のうち第1磁心40Aに磁束を供給する。第2コイル50Bは、ステータ20の両端のうち第2磁心40Bに磁束を供給する。
駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスは、第1コイル50Aと第2コイル50Bとを励磁することにより、ロータ30を極数に応じた基準回転角度だけ駆動させる。
【0042】
なお、ここでいう極数に応じた基準回転角度とは、ロータ30の1回転の角度を、ロータが着磁されている極数により除算した角度であってもよい。例えば、極数に応じた基準回転角度とは、ロータ30が2極に例示されている場合、1回転の角度を2で除算した角度(180°)である。また、ロータ30が4極に例示されている場合、極数に応じた基準回転角度とは、1回転の角度を4で除算した角度(90°)である。
【0043】
[消磁パルスを印加しない場合におけるステッピングモータ105の動作例]
図3及び図4を参照しながら、消磁パルスを印加しない場合のステッピングモータ105の動作について説明する。
図3は、消磁パルスを印加しない場合のアナログ電子時計の制御処理のタイムチャートである。図3は、out1、out2、out3及びout4のそれぞれの電位の時間変化を示す。所定の電位Vが印加されている状態をH、所定の電位Vが印加されていない状態をLと記載する。
図4は、消磁パルスを印加しない場合のステッピングモータの動作図である。同図は、駆動パルス又は消磁パルスにより生じる磁束の向き、及びロータの回転角度を示す。
【0044】
本実施形態の制御部112は、所定のパルス群PGを第1コイル50A及び第2コイル50Bに出力することで、ロータ30をパルス群PGの各々に応じて単位ステップ(180°)毎に制御する。アナログ電子時計1の制御部112は、第1コイル50A及び第2コイル50Bへのパルス群PGの印加制御を繰り返し実行することで指針を運針する。
【0045】
上述したパルス群PGは、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cのそれぞれの励磁状態に応じたパルスにより構成される。具体的には、パルス群PGを構成するパルスは、駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスと、消磁パルス発生回路122が出力する消磁パルスPeとを含む。駆動パルス発生回路121は、駆動パルスである第1パルスP1及び第2パルスP2を第1パルス群PG1として出力することにより、ロータ30を1ステップだけ回転させる。
なお、パルス群PGを構成するパルスは、この一例に限定されず、その他のパルスを含むことにより構成されていてもよい。
【0046】
図3に示すタイムチャート開始時(時刻t11以前;初期状態)においては、各磁極部(第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20C)は励磁されておらず、ロータ30が第1停止位置に位置している状態を示している(図4(A))。
制御部112は、第1パルス群PG1(PG)を第1コイル50A及び第2コイル50Bに印加して、ロータ30を第1停止位置から第2停止位置に向けて単位ステップ回転させる。
【0047】
時刻t11において、駆動パルス発生回路121は、第1パルス群PG1の第1パルスP1として、第1コイル50Aの第1端子50Aaに所定の電圧Vを印加する。これにより、第1コイル50Aには、第1端子50Aaから第2端子50Abに向けて電流が流れる。また、第2コイル50Bは、非通電状態となる。
【0048】
図4(B)に示すように、第1パルスP1が第1コイル50Aに印加されることで、ロータ30のN極に対向配置された第1磁極部20A及び第3磁極部20Cは、S極となるように励磁される。また、ロータ30のS極に対向配置された第2磁極部20Bは、N極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、1/4ステップだけ(例えば約45°程度)回転する。
【0049】
時刻t12において、駆動パルス発生回路121は、第1パルスP1の出力を停止し、第1パルス群PG1の第2パルスP2として、第2コイル50Bの第1端子50Baに所定の電圧Vを印加する。これにより、第2コイル50Bには、第1端子50Baから第2端子50Bbに向けて電流が流れる。また、第1コイル50Aは非通電状態となる。
【0050】
図4(C)に示すように、第2パルスP2が第2コイル50Bに印加されることで、第1磁極部20Aは、S極となるように励磁される。また、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、N極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、そのN極が第1磁極部20Aから離間して第2磁極部20Bに吸引されるとともに、S極が第3磁極部20Cに吸引されるように、1/2ステップだけ(例えば約90°程度)、所定回転方向に回転する。
【0051】
時刻t13において、駆動パルス発生回路121は、第2パルスP2の出力を停止する。すなわち、時刻t13において、第1パルスP1及び第2パルスP2のいずれのパルスも出力されていないため、第1コイル50A及び第2コイル50Bのいずれもが非通電状態となる。
【0052】
図4(D)に示すように、第2パルスP2により生じた磁束は、残留磁束として第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cに残留する場合がある。この一例において、制御部112は消磁パルスPeを出力しないため、駆動パルスP2により生じた磁束は、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cに残留する。
ロータ30は、S極が、第3磁極部20Cと対向する位置である第2停止位置において安定するところ、残留磁束とロータ30が引き合うことにより、第2停止位置とは異なる位置で停止する。
【0053】
時刻t14から時刻t17において、制御部112は、駆動パルスである第3パルスP3及び第4パルスP4を第2パルス群PG2として出力することにより、ロータ30を第2停止位置から第1停止位置に向けて単位ステップ回転させる。また、時刻t17から時刻t20において、制御部112は、駆動パルスである第1パルスP1及び第2パルスP2を第1パルス群PG1として出力することにより、ロータ30を第1停止位置から第2停止位置に向けて単位ステップ回転させる。
【0054】
[消磁パルスを印加する場合におけるステッピングモータ105の動作例]
図5及び図6を参照しながら、消磁パルスを印加する場合のステッピングモータ105の動作について説明する。
図5は、消磁パルスを印加する場合のアナログ電子時計の制御処理のタイムチャートである。図5は、out1、out2、out3及びout4のそれぞれの電位の時間変化を示す。所定の電位Vが印加されている状態をH、所定の電位Vが印加されていない状態をLと記載する。
図6は、消磁パルスを印加する場合のステッピングモータの動作図である。同図は、駆動パルス又は消磁パルスにより生じる磁束の向き、及びロータの回転角度を示す。図3及び図4と同様の動作については、同様の符号を付すことで説明を省略する場合がある。
図5における時刻t13までの動作と、図6における図6(A)、図6(B)及び図6(C)の動作とは、図3及び図4を参照しながら説明した動作と同様である。
【0055】
図3において説明したように、時刻t12から時刻t13において、駆動パルス発生回路121が、第2パルスP2を出力すると、図4(C)において説明したように、第2コイル50Bには、第1端子50Baから第2端子50Bbに向けて電流が流れる。第1端子50Baから第2端子50Bbに向けて電流が流れると、第1磁極部20AはS極に、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、N極となるように励磁される。
このとき、ロータ30の磁極軸は、図6(B)に示す磁極軸Aの回転位置から、図6(C)に示す磁極軸Aの回転位置まで1/2ステップだけ(例えば約90°程度)、回転駆動される。
【0056】
時刻t21から時刻t22において、消磁パルスPeが印加される。消磁パルスPeは、例えば、時刻t11から、少なくとも5ms経過後に印加される。
消磁パルス発生回路122は、ロータ30の回転により、ロータ30の磁極軸Aと励磁されたステータ20の磁極軸とが一致する位置を少なくとも1回通過した後に、消磁パルスPeを出力する。また、消磁パルス発生回路122は、駆動パルス発生回路121が駆動パルスの印加を終えた後、すなわち、図5において駆動パルス発生回路121が第2パルスP2の出力を終える時刻t13以降に、消磁パルスPeを出力する。
【0057】
消磁パルス発生回路122が出力する消磁パルスPeの極性は、ロータ30が基準回転角度(例えば約180°程度)だけ回転する際に印加された複数の駆動パルス(第1パルス群PG1においては、第1パルスP1及び第2パルスP2)のうち、いずれかの駆動パルスの極性と逆である。例えば、消磁パルスPeの極性は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスのうち、最後に印加される駆動パルスの極性と逆である。この場合、時刻t21以前に印加された最後の駆動パルスは、第2パルスP2であるため、第2パルスP2の極性と逆特性のパルスが、消磁パルスPeとして出力される。
【0058】
なお、消磁パルス発生回路122は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスのうち、エネルギーが最も大きい駆動パルスの極性と逆であるパルスを、消磁パルスPeとして出力してもよい。この場合、第1パルスP1に比べ、第2パルスP2のエネルギーが大きいため、第2パルスP2の極性と逆特性のパルスが、消磁パルスPeとして出力される。
【0059】
消磁パルス発生回路122は、駆動パルス発生回路121が出力した駆動パルスの極性に応じた極性のパルスを、消磁パルスとして出力する。消磁パルス発生回路122は、駆動パルス発生回路121が出力した駆動パルスのエネルギーの大きさに応じたエネルギーの大きさのパルスを、消磁パルスとして出力するよう構成してもよい。
【0060】
図6(D)に示すように、消磁パルスPeが第2コイル50Bに印加されることで、第1磁極部20Aには、N極となるような磁束が生じる。また、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cには、S極となるような磁束が生じる。その結果、消磁パルスPeにより生じた磁束は、ステータ20に残留していた残留磁束を低減させ、又はステータ20に残留していた残留磁束を打ち消す。
【0061】
時刻t22において、消磁パルス発生回路122は、消磁パルスPeの出力を停止すると、図6(E)に示すように、残留磁束が打ち消され、ロータ30は、S極が、第3磁極部20Cと対向する位置である第2停止位置において安定して停止する。
【0062】
[衝撃によりロータ30が回転した場合の動作]
図7及び図8を参照しながら、外部からの衝撃によりロータ30が回転した場合の動作について説明する。図7は、消磁パルスPeを印加しない場合におけるステッピングモータ105の動作例であり、図8は、消磁パルスPeを印加する場合におけるステッピングモータ105の動作例である。
【0063】
[消磁パルスを印加しない場合において、衝撃によりロータ30が回転した場合の動作]
図7は、図3に示した一例のうち、時刻t13から時刻t14までの間に外部からの衝撃によりロータ30が回転した場合の動作を示した図である。
図7(A)は、時刻t13において、第2パルスP2の出力を停止した後の状態を示す図である。同図に示すように、駆動パルスP2により生じた磁束は、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cに残留している。第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cには磁束が残留しているため、ロータ30は、第2停止位置からずれた状態において静止している。
【0064】
図7(B)は、図3における時刻t13から時刻t14までの間に外部からの衝撃によりロータ30が回転した場合のロータ30の状態を示す図である。この場合、制御部112は、ロータ30が回転したことを検知しないため、通常の制御によりロータ30の駆動を行う。
【0065】
図7(C)は、図3の時刻t14において、駆動パルス発生回路121が、第2パルス群PG2の第3パルスP3として、第1コイル50Aの第2端子50Abに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第1コイル50Aには、第2端子50Abから第1端子50Aaに向けて電流が流れる。また、第2コイル50Bは、非通電状態となる。
第3パルスP3が第1コイル50Aに印加されることで、第1磁極部20A及び第3磁極部20Cは、N極となるように励磁される。また、第2磁極部20Bは、S極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、1ステップだけ(例えば約180°程度)反転する。
【0066】
図7(D)は、図3の時刻t15において、駆動パルス発生回路121が、第2パルス群PG2の第4パルスP4として、第2コイル50Bの第2端子50Bbに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第2コイル50Bには、第2端子50Bbから第1端子50Baに向けて電流が流れる。また、第1コイル50Aは、非通電状態となる。
第4パルスP4が第2コイル50Bに印加されることで、第1磁極部20Aは、N極となるように励磁される。また、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、S極となるように励磁される。その結果、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、ロータ30を吸引することができず、ロータ30を回転させることができない。
【0067】
図7(E)は、図3の時刻t16において、駆動パルス発生回路121が、第4パルスP4の出力を停止した場合における図である。同図に示すように、第4パルスP4により生じた磁束は残留し、ロータ30は180°反転した状態において静止している。
【0068】
図7(F)は、図3の時刻t17において、駆動パルス発生回路121が、第1パルス群PG1の第1パルスP1として、第1コイル50Aの第1端子50Aaに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第1コイル50Aには、第1端子50Aaから第2端子50Abに向けて電流が流れる。また、第2コイル50Bは、非通電状態となる。
第1パルスP1が第1コイル50Aに印加されることで、第1磁極部20A及び第3磁極部20Cは、S極となるように励磁される。また、第2磁極部20Bは、N極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、1ステップだけ(例えば約180°程度)反転する。
【0069】
図7(G)は、図3の時刻t18において、駆動パルス発生回路121が、第1パルス群PG1の第2パルスP2として、第2コイル50Bの第1端子50Baに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第2コイル50Bには、第1端子50Baから第2端子50Bbに向けて電流が流れる。また、第1コイル50Aは、非通電状態となる。
第2パルスP2が第2コイル50Bに印加されることで、第1磁極部20Aは、S極となるように励磁される。また、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、N極となるように励磁される。その結果、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、ロータ30を吸引することができず、ロータ30を回転させることができない。
【0070】
図7(H)は、図3の時刻t19において、駆動パルス発生回路121が、第2パルスP2の出力を停止した場合における図である。同図に示すように、第2パルスP2により生じた磁束は残留し、ロータ30は180°反転した状態において静止している。
【0071】
図7を参照しながら説明したように、残留磁束が生じている場合において、ロータ30が外部からの振動により回転すると、駆動パルス発生回路121が駆動パルスを出力しても、ロータ30を回転させることができず、反対方向に回転してしまう。本実施形態においては、このような現象を抑止するため、消磁パルスPeを印加することにより残留磁束を低減させる。残留磁束を低減させることにより、外部からの衝撃によりロータ30が回転した場合においても、再びロータ30を、駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスに追従させる。
【0072】
[消磁パルスを印加する場合において、衝撃によりロータ30が回転した場合の動作]
図8は、図5に示した一例のうち、時刻t13から時刻t14までの間に外部からの衝撃によりロータ30が回転した場合の動作を示した図である。
図8(A)は、時刻t13において、第2パルスP2の出力を停止した後の状態を示す図である。同図に示すように、駆動パルスP2により生じた磁束は、消磁パルスPeにより低減されるため、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cには、磁束が残留していない。また、ロータ30は、S極が、第3磁極部20Cと対向する位置である第2停止位置において安定して停止している。
【0073】
図8(B)は、図5における時刻t13から時刻t14までの間に外部からの衝撃によりロータ30が回転した場合のロータ30の状態を示す図である。この場合、制御部112は、ロータ30が回転したことを検知しないため、通常の制御によりロータ30の駆動を行う。
【0074】
図8(C)は、図5の時刻t14において、駆動パルス発生回路121が、第2パルス群PG2の第3パルスP3として、第1コイル50Aの第2端子50Abに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第1コイル50Aには、第2端子50Abから第1端子50Aaに向けて電流が流れる。また、第2コイル50Bは、非通電状態となる。
第3パルスP3が第1コイル50Aに印加されることで、第1磁極部20A及び第3磁極部20Cは、N極となるように励磁される。また、第2磁極部20Bは、S極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、S極が、N極に励磁されている第1磁極部20A及び第3磁極部20Cと引き合う回転角度まで反転する。
【0075】
図8(D)は、図5の時刻t15において、駆動パルス発生回路121が、第2パルス群PG2の第4パルスP4として、第2コイル50Bの第2端子50Bbに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第2コイル50Bには、第2端子50Bbから第1端子50Baに向けて電流が流れる。また、第1コイル50Aは、非通電状態となる。
第4パルスP4が第2コイル50Bに印加されることで、第1磁極部20Aは、N極となるように励磁される。また、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、S極となるように励磁される。その結果、ロータ30の極性は、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cの極性と一致する。すなわち、第1磁極部20A、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、ロータ30を吸引することができる。
【0076】
図8(E)は、図5の時刻t16において、駆動パルス発生回路121が、第4パルスP4の出力を停止した場合における図である。同図に示すように、第4パルスP4により生じた磁束は、時刻t23から時刻t24において印加される消磁パルスPeにより打ち消されている。ロータ30は、駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスの制御と極性が一致した状態において静止している。ロータ30は、駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスの制御と極性が一致しているので、時刻t17以降において、ロータ30は、正常に駆動される。
【0077】
図8(F)は、図5の時刻t17において、駆動パルス発生回路121が、第1パルス群PG1の第1パルスP1として、第1コイル50Aの第1端子50Aaに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第1コイル50Aには、第1端子50Aaから第2端子50Abに向けて電流が流れる。また、第2コイル50Bは、非通電状態となる。
第1パルスP1が第1コイル50Aに印加されることで、第1磁極部20A及び第3磁極部20Cは、S極となるように励磁される。また、第2磁極部20Bは、N極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、1/4ステップだけ(例えば約45°程度)回転する。
【0078】
図8(G)は、図5の時刻t18において、駆動パルス発生回路121が、第1パルス群PG1の第2パルスP2として、第2コイル50Bの第1端子50Baに所定の電圧Vを印加した場合の図である。これにより、第2コイル50Bには、第1端子50Baから第2端子50Bbに向けて電流が流れる。また、第1コイル50Aは、非通電状態となる。
第2パルスP2が第2コイル50Bに印加されることで、第1磁極部20Aは、S極となるように励磁される。また、第2磁極部20B及び第3磁極部20Cは、N極となるように励磁される。その結果、ロータ30は、1/2ステップだけ(例えば約90°程度)回転する。
【0079】
図8(H)は、図5の時刻t19において、駆動パルス発生回路121が、第2パルスP2の出力を停止した場合における図である。同図に示すように、第2パルスP2により生じた磁束は図5の時刻t25から時刻t26において印加される消磁パルスPeにより打ち消されている。ロータ30は、第1停止位置において、安定して静止している。
【0080】
図8を参照しながら説明したように、消磁パルスPeを印加する場合においては、外部からの衝撃によりロータ30が回転してしまっても、再びロータ30を、駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスに追従させることができる。
【0081】
[実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、制御部112は、駆動パルス発生回路121と、消磁パルス発生回路122とを備え、駆動パルスを印加した際に生じる残留磁束を低減させる。ここで、残留磁束が残っている状態においてロータ30を駆動する場合、ロータ30が制御部112の制御に追従しない場合がある。特に、ロータ30が静止している間において、外部からの衝撃によりロータ30が回転してしまうと、ロータ30は、制御部112の制御とは逆に、意図しない方向に反転してしまう場合がある。本実施形態によれば、消磁パルスPeを印加することにより残留磁束を低減させるため、ロータ30が静止している間において、外部からの衝撃によりロータ30が回転してした場合においても、再度、ロータ30の極性を、制御部112が制御する極性と一致させることができる。
したがって、本実施形態によれば、制御部112は、ロータ30を安定して駆動させることができる。
【0082】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部112において、消磁パルス発生回路122は、駆動パルス発生回路121が駆動パルスの印加を終えた後、ロータ30の回転により、ロータ30の磁極軸と、励磁されたステータ20の磁極軸とが一致する位置を少なくとも1回通過した後に、消磁パルスPeを出力する。したがって、本実施形態によれば、制御部112は、ロータ30が回転した後、消磁パルスPeを出力することにより、ロータ30が回転した後に生じた磁束を消磁させることができる。
【0083】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部112において、消磁パルスPeの極性は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスのうち、いずれかの駆動パルスの極性と逆である。したがって、本実施形態によれば、制御部112は、駆動パルスと同一の極性のパルスを消磁パルスPeとして印加してしまうことがないため、消磁パルスPeを増してしまうような誤動作を抑止することができる。
【0084】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部112において、消磁パルスPeの極性は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスのうち、最後に印加される駆動パルスの極性と逆である。すなわち、本実施形態によれば、制御部112は、最後に印加される駆動パルスにより生じた残留磁束を抑止することができる。
【0085】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部112において、消磁パルスPeの極性は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスのうち、エネルギーが最も大きい駆動パルスの極性と逆である。したがって、本実施形態によれば、制御部112は、残留磁束として残留している磁束の極性と逆の極性のパルスを消磁パルスPeとして印加することがないため、消磁パルスPeを増してしまうような誤動作を抑止することができる。
【0086】
また、以上説明した実施形態によれば、制御部112において、消磁パルスPeの極性は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスのうち最初の駆動パルスが印加されてから、少なくとも5ms経過後に印加される。したがって、本実施形態によれば、駆動パルス印加中に消磁パルスPeを印加してしまうような誤動作を抑止することができる。
【0087】
[実施形態の変形例]
図9は、実施形態の変形例に係るアナログ電子時計1の制御処理のタイムチャートである。同図を参照しながら、上述したアナログ電子時計1の変形例について説明する。
図9は、消磁パルスPeを、印加する場合のアナログ電子時計の制御処理のタイムチャートである。図9は、out1、out2、out3及びout4のそれぞれの電位の時間変化を示す。所定の電位Vが印加されている状態をH、所定の電位Vが印加されていない状態をLと記載する。
【0088】
図9を参照しながら説明する変形例では、制御部112は、駆動パルス発生回路121
が、駆動パルスを継続的に複数回印加した後、その駆動を停止する場合において、最後の駆動パルスが印加された後に消磁パルスPeを印加する場合の一例である。
【0089】
時刻t51において、制御部112は、ステッピングモータ105の駆動を開始する。制御部112は、時刻t51から時刻t54において、パルス群PG1を印加することにより、ロータ30を基準回転角度(例えば約180°程度)だけ回転させる。このとき、制御部112は、消磁パルスPeを印加しない。
【0090】
制御部112は、ロータ30を連続駆動させる。具体的には、制御部112は、時刻t54以降において、駆動パルスを継続して複数回印加する。制御部112は、継続駆動されている間において、消磁パルスPeを印加しない。
【0091】
時刻t55において、制御部112は、継続駆動における最後のパルス群PG2を印加する。制御部112は、時刻t55から時刻t60において、パルス群PG2を印加することにより、ロータ30を基準回転角度(例えば約180°程度)だけ回転させる。
【0092】
この一例において、消磁パルスPeは、時刻t58から時刻t59において、印加される。すなわち、消磁パルス発生回路122は、ロータ30が基準回転角度だけ回転する際に印加された複数の駆動パルスが、継続的に複数回印加された後、最後の駆動パルスが印加された後に印加する。
【0093】
なお、継続駆動とは、駆動パルス発生回路121が出力する駆動パルスのうち、時刻を計時する通常駆動(例えば、秒針109を1秒間隔で駆動させる通常駆動。)より速い周期で駆動させる高速駆動であってもよい。
【0094】
ここで、消磁パルスPeは、継続的に駆動されるパルス群PGの間に印加される場合よりも、継続駆動が終了した後の、静止時において印加される場合の方が、より大きな効果がある。すなわち、本実施形態の変形例によれば、制御部112は、継続的に複数回駆動パルスを印加した後、最後の駆動パルスを印加した後に消磁パルスPeを印加するため、不要なタイミングで、消磁パルスPeが出力されることを抑止することができる。
また、不要なタイミングで、消磁パルスPeが出力されることを抑止することができるため、制御部112は誤動作を抑止することができる。さらに制御部112は、消費電力を抑止することができる。
【0095】
また、制御部112は、ロータ30を高速駆動する場合において、最後の駆動パルスが印加された後に消磁パルスPeを印加する。
したがって、本実施形態の変形例によれば、高速駆動中の不要なタイミングで、消磁パルスPeが出力されることを抑止することができるため、制御部112は誤動作を抑止することができる。さらに制御部112は、消費電力を抑止することができる。
【0096】
なお、制御部112は、継続駆動の後、次の駆動パルスの極性が異なる極性である場合に、消磁パルスPeを印加するよう構成してもよい。すなわち、この場合、消磁パルスPeは、連続して印加される駆動パルスの極性が互いに異なる場合に、連続して印加される駆動パルスの間に印加される。
ここで消磁パルスPeは、連続して印加されるパルスの極性が同じ場合よりも、連続して印加されるパルスの極性が互いに異なる場合の方が、より大きな効果がある。
したがって、本実施形態の変形例によれば、不要なタイミングで、消磁パルスPeが出力されることを抑止することができるため、制御部112は誤動作を抑止することができる。さらに制御部112は、消費電力を抑止することができる。
【0097】
また、ステータ20に発生する保持トルクの方向と、ロータ30の静止位置におけるロータの磁極軸の方向とが同一である場合、残留磁束を消磁する必要はなく、ステータ20に発生する保持トルクの方向と、ロータ30の静止位置におけるロータの磁極軸の方向とが互いに異なる場合に、残留磁束を消磁する必要がある。
この場合、消磁パルスPeは、駆動パルスが印加されることによりステータ20に発生する保持トルクの方向と、ロータ30の静止位置におけるロータの磁極軸の方向とが互いに異なる場合に印加されてもよい。
したがって、制御部112は、不要なタイミングで、消磁パルスPeが出力されることを抑止することができるため、制御部112は誤動作を抑止することができる。さらに制御部112は、消費電力を抑止することができる。
【0098】
上述した実施形態においては、消磁パルスPeが一相励磁による場合の具体例について説明したが、消磁パルスPeを二層励磁により出力してもよい。この場合、消磁パルスPeは、ロータ30の回転角度を、ロータ30の静止角度と一致する方向へ保持するトルクを発生する二相励磁パルスである。
制御部112は、消磁パルスPeを二層励磁パルスとした場合、より確実に残留磁束を消磁することができる。
【0099】
なお、上述した実施形態においては、コイルが2つである場合について説明したが、本発明の実施形態は、コイルが3つ以上である場合においても、同様に適用することができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1…アナログ電子時計、101…発振回路、102…分周回路、103…制御回路、104…モータ駆動回路、105…ステッピングモータ、121…駆動パルス発生回路、122…消磁パルス発生回路、106…アナログ表示部、107…時針、108…分針、109…秒針、110…カレンダ表示部、112…制御部、113…時計ケース、114…時計用ムーブメント、25…ロータ収容孔、20…ステータ、20A…第1磁極部、20B…第2磁極部、20C…第3磁極部、21…ステータ本体、22a…直状部、22b…張出部、22c…張出部、22…第1ヨーク、23…第2ヨーク、24…第2ヨーク、25a…切欠部、26…切欠部、30…ロータ、40A…第1磁心、40B…第2磁心、50A…第1コイル、50Aa…第1端子、50Ab…第2端子、50B…第2コイル、50Ba…第1端子、50Bb…第2端子、PG…パルス群
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