(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】回転電機の冷却構造、回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231227BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K5/20
(21)【出願番号】P 2020047907
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】平手 利昌
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌明
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022123(WO,A1)
【文献】特開2014-140276(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098328(WO,A1)
【文献】特開2014-068513(JP,A)
【文献】特開2009-247085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造により形成され、筒状の壁部内に冷媒が流れる流路が設けられているフレームと、
前記流路に前記冷媒を供給するための供給口と、
前記供給口から前記フレームの軸方向に離間した位置に設けられ、前記流路から前記冷媒を排出するための排出口と、
前記流路に設けられ、前記供給口から供給される前記冷媒を前記フレームの周方向に誘導しつつ前記排出口まで案内する案内壁と、を備え
、
前記案内壁には、前記供給口から供給された前記冷媒の一部を当該案内壁の逆側の領域にリークさせるリーク部が設けられており、
前記リーク部は、少なくとも前記供給口から周方向に離間した位置であって軸方向に延びていて前記供給口と対向する位置に設けられている回転電機の冷却構造。
【請求項2】
前記案内壁は、前記供給口から離間するにつれて前記流路が広くなるとともに、前記排出口に近づくにつれて前記流路が狭くなるように設けられている請求項1記載の回転電機の冷却構造。
【請求項3】
前記案内壁は、前記冷媒を前記フレームの周方向に少なくとも1周させるように設けられている請求項1または2記載の回転電機の冷却構造。
【請求項4】
前記案内壁は、前記供給口側から前記排出口側まで連続した1つの構造体として設けられている請求項1から3のいずれか一項記載の回転電機の冷却構造。
【請求項5】
前記案内壁は、前記供給口から前記排出口までの最短距離を、前記フレームの周方向および軸方向に塞ぐ状態で設けられている請求項1から4のいずれか一項記載の回転電機の冷却構造。
【請求項6】
前記供給口および前記排出口は、前記フレームの周方向に互いに離間して設けられている請求項1から5のいずれか一項記載の回転電機の冷却構造。
【請求項7】
前記案内壁に
おいて前記排出口から周方向に離間した位置であって軸方向に延びていて前記排出口と対向する位置に、前記リーク部を設けた請求項1から6のいずれか一項記載の回転電機の冷却構造。
【請求項8】
鋳造により筒状に形成されているフレームと、
前記フレームの内側に配置されるステータおよびロータと、を備え、
前記フレームは、筒状の壁部内に設けられている冷媒が流れる流路と、前記流路に前記冷媒を供給するための供給口と、前記供給口から前記フレームの軸方向に離間した位置に設けられ、前記流路から前記冷媒を排出するための排出口と、前記流路に設けられ、前記供給口から供給される前記冷媒を前記フレームの周方向に誘導しつつ前記排出口まで案内する案内壁と、
前記案内壁の軸方向に延びている部位において少なくとも前記供給口から周方向に離間した位置に設けられていて、前記供給口から供給された前記冷媒の一部を当該案内壁の逆側の領域にリークさせるリーク部と、を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の冷却構造、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の回転電機は、その高出力化に伴う温度上昇によって性能に影響がでることが懸念されている。そのため、例えば特許文献1では、回転電気のフレーム内部に冷媒が流れる流路を設けて冷却することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、温度上昇による影響を抑制するためには、回転電機の全体において温度のばらつきが生じないように冷却することが望ましいと考えられる。
【0005】
しかしながら、フレームを鋳造する場合には、温度のばらつきが生じないようにするために流路を複雑化すると、製造上の困難さが大幅に増加するという問題が生じる。その一方で、製造上の困難さを低減するために流路を単純化すると、温度のばらつきを抑制できなくなるという問題が生じる。
【0006】
そこで、フレームを鋳造する構成において、製造上の困難さが増加することを抑制しつつ、温度のばらつきを抑制することができる回転電機の冷却構造、回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の回転電機の冷却構造は、鋳造により形成され、筒状の壁部内に冷媒が流れる流路が設けられているフレームと、流路に冷媒を供給するための供給口と、供給口からフレームの軸方向に離間した位置に設けられ、流路から冷媒を排出するための排出口と、流路に設けられ、供給口から供給される冷媒をフレームの周方向に誘導しつつ排出口まで案内する案内壁と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】冷媒が流れる流路と案内壁の構成とを模式的に示す図
【
図5】他の冷媒が流れる流路および他の案内壁の構成を模式的に示す図その1
【
図6】他の冷媒が流れる流路および他の案内壁の構成を模式的に示す図その2
【
図7】他の冷媒が流れる流路および他の案内壁の構成を模式的に示す図その3
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の回転電機1は、全体として概ね中空円筒状に形成されているフレーム2と、フレーム2の内周側に配置されている概ね円筒状のステータ3と、ステータ3の内周側に所定のギャップを介して配置され、軸部材4を有するロータ5とを備えている。本実施形態で対象とする回転電機1の種類は限定されないが、例えば永久磁石型の電動機や誘導型の電動機あるいは発電機などに適用することができる。
【0010】
以下、フレーム2の中心に配置される軸部材4の回転中心を中心軸(J)と称し、その中心軸(J)に沿った向きを軸方向と称し、中心軸(J)回りの向きを周方向として説明する。なお、図示は省略するが、回転電機1には、周知のように配線用の接続部や設置用の取付部などがフレーム2と一体に、あるいは、例えばフレーム2の端部などに設けられている。
【0011】
フレーム2は、鋳造により製造されたいわゆる鋳物である。このフレーム2には、
図2に軸方向から見た断面視にて示すように、その壁部6内に冷媒が流れる流路7が設けられている。また、フレーム2には、流路7に冷媒を矢印F1で示す向きに供給するための供給口8、流路7から冷媒を矢印F2で示す向きに排出するための排出口9、および、供給口8から供給される冷媒を排出口9まで案内する案内壁10が設けられている。これら流路7、供給口8、排出口9および案内壁10は、フレーム2の鋳造時に一体で形成されている。なお、
図2では、説明のために、案内壁10を壁部6とは異なるハッチングにて識別可能に示している。
【0012】
流路7は、壁部6内の周方向の全体に広がっているとともに、
図2に側面視として示すように、フレーム2の軸方向の概ね全体に広がっている。つまり、流路7は、フレーム2の内周側に配置されるステータ3およびロータ5の周方向の全域と軸方向の概ね全域とを覆う状態で設けられている。以下、
図2の断面視において流路7よりも外周側となる部位を便宜的にフレーム2の外壁6aと称し、流路7よりも内周側となる部位を便宜的にフレーム2の内壁6bと称する。また、フレーム2の軸方向の両端側において流路7を閉鎖している部位を、便宜的にフレーム2の端板11と称する。
【0013】
供給口8および排出口9は、フレーム2の周方向において互いに離間した位置に設けられているとともに、フレーム2の軸方向において互いに離間した位置に設けられている。つまり、供給口8および排出口9は、フレーム2の周方向および軸方向にずれた状態で設けられている。なお、本実施形態では、
図2の側面視における図示左方側で外壁6aを通って流路7に連通している開口部を供給口8とし、図示右方側で外壁6aを通って流路7に連通している開口部を排出口9としている。ただし、供給口8と排出口9との位置は、回転電機1の設置向きや冷媒の配管経路などに応じて逆にすることもできる。
【0014】
案内壁10は、流路7内において、供給口8から供給される冷媒をフレーム2の周方向に誘導しつつ排出口9まで案内する。以下、
図3に示す斜視図および展開図を参照しながら案内壁10の詳細について説明する。
図3の斜視図は、フレーム2から内壁6bと端板11とを消去した状態、換言すると、流路7を形成している部分についての外壁6aと案内壁10とを抽出した状態を模式的に示している。また、
図3の展開図は、斜視図に示したフレーム2を、符号Lで示す位置で軸方向に切断し、外壁6aを周方向に展開した状態を示している。
【0015】
まず、案内壁10は、
図2に示したように外壁6aと内壁6bとの間を接続しているとともに、
図3の斜視図における軸方向の両端、つまりは、展開図における壁部6の図示上端および図示下端が端板11に接続されて閉鎖されている。そして、案内壁10は、供給口8の近傍において、壁部6の図示上端に位置する一方の端板11に繋がっている。
【0016】
つまり、案内壁10は、基本的に供給口8側から排出口9側まで連続している1つの構造体として流路7内に設けられているとともに、供給口8の近傍では冷媒を誘導する向きとは供給口8を挟んだ逆側で端板11に繋がっており、排出口9の近傍では冷媒を誘導する向きから供給口8を挟んだ先で他方の端板11に繋がっている。また、案内壁10は、フレーム2の周方向という基本的に単一方向となる冷媒の主たる流れにおいて、最上流側に供給口8が位置し、最下流側に排出口9が位置するように設けられている。
【0017】
これにより、供給口8の近傍では、供給口8から供給された冷媒は、案内壁10が設けられている側への流れが妨げられ、矢印F3にて示すように案内壁10とは逆側に向かって流れることになる。つまり、案内壁10は、冷媒の流れをフレーム2の周方向に誘導している。
【0018】
また、案内壁10は、軸方向に延びた後、概ね供給口8を超えた辺りで周方向および軸方向にずれた状態に設けられている。このため、流路7は、フレーム2の軸方向おける幅が供給口8の付近では相対的に狭くなっている一方、供給口8から離間するにつれて相対的に広くなっている。そして、案内壁10は、フレーム2の周方向において供給口8を超える辺りまで延びた後、供給口8の近傍において、壁部6の図示下端つまりは他方の端板11に繋がっている。つまり、案内壁10は、供給口8から排出口9までの最短距離となる経路をフレーム2の周方向および軸方向に塞ぐ状態で、また、フレーム2を半周しない程度の範囲内で設けられている。
【0019】
このため、流路7は、排出口9の付近では相対的に狭くなっている一方、供給口8から離間するにつれて相対的に広くなっている。つまり、案内壁10は、供給口8から離間するにつれてフレーム2の軸方向おける流路7の幅が広くなるように、且つ、排出口9に近づくにつれてフレーム2の軸方向おける流路7の幅が狭くなるように設けられている。ただし、冷媒の流れにおいて供給口8と排出口9との間で冷媒の広さが最大になる位置が存在している。
【0020】
また、本実施形態では、供給口8および排出口9は、フレーム2の周方向に互いにずれて設けられている。このとき、供給口8の位置をフレーム2の周方向における0°とし、周方向におけるずれをα°とすると、上記した案内壁10は、フレーム2を周方向に360+α°、つまりは、フレーム2を1周以上した状態の流路7を形成する。その結果、供給口8から供給された冷媒は、矢印F3で示しているように、案内壁10によってフレーム2の周方向に誘導され、流路7内をフレーム2の周方向に1周以上流れた後、排出口9から排出される。
【0021】
また、本実施形態では、案内壁10に、冷媒の一部をリークさせるリーク部12を設けている。このリーク部12は、端板11との接続位置から軸方向に延びて供給口8と対向する位置に、案内壁10の一部を切り取る形状のリーク部12を設けている。このため、供給口8から供給された冷媒は、その大部分が周方向に誘導される一方、その一部が矢印F4にて示すようにリーク部12を経由して案内壁10と逆側の領域(R)にリークする。
【0022】
この領域(R)は、冷媒の流れにおいて下流側になる。また、領域(R)は、本実施形態のように供給口8と排出口9とを軸方向にずらして設けている場合には、排出口9から軸方向に離間した位置でもある。つまり、領域(R)は、フレーム2の周方向に流れる冷媒の主たる流れが、軸方向に延びている案内壁10によって妨げられる可能性のある部位、換言すると、流路7において冷媒が滞留する可能性が相対的に高くなる部位であると考えられる。
【0023】
そのため、リーク部12を設けて冷媒の一部をリークさせることにより、領域(R)に冷媒の流れが形成されるとともに、供給口8から供給された直後の相対的に温度が低い冷媒が領域(R)にリークするようになる。これにより、
図4に冷媒が流れる態様を抽出した冷媒図として示すように、供給口8から供給された冷媒は、案内壁10によって、フレーム2の周方向に誘導されつつ、軸方向にずれて設けられている排出口9まで案内される。つまり、フレーム2の内部には、案内壁10によって、供給口8から排出口9へと向かう螺旋状の冷媒の流れが形成される。なお、
図4に示しているSaおよびSbは、後述する展開図における図示上方側(Sa)と図示下方側(Sb)を説明するために便宜的に付している。
【0024】
次に、上記した構成の作用および効果について説明する。
前述のように、温度上昇による性能への影響を抑制するためには、回転電機1を全体的に温度のばらつきが生じないように冷却することが望ましい。ただし、フレーム2を鋳造する場合には、温度のばらつきが生じないようにするために流路7を複雑化すると、製造上の困難さが大幅に増加するという問題が生じる。その一方で、製造上の困難さを低減するために流路7を単純化すると、温度のばらつきを抑制できなくなるという問題が生じる。
【0025】
そこで、フレーム2の壁部6内に形成される流路7に、冷媒を供給口8側から排出口9側まで案内する案内壁10を設けている。これにより、流路7が複雑化することが防止され、製造上の困難さが大幅に増加するという問題を解消することができる。
【0026】
そして、案内壁10は、供給口8から供給される冷媒をフレーム2の周方向に誘導しつつ、軸方向にずれて設けられている排出口9まで案内する。これにより、フレーム2内部では、冷媒がフレーム2の周方向に流れるとともに軸方向にも流れることになり、フレーム2全体が均等に冷却され、温度のばらつきを低減することが可能になる。
【0027】
すなわち、鋳造により形成され、筒状の壁部6内に冷媒が流れる流路7が設けられているフレーム2と、流路7に冷媒を供給するための供給口8と、供給口8からフレーム2の軸方向に離間した位置に設けられ、流路7から冷媒を排出するための排出口9と、流路7に設けられ、供給口8から供給される冷媒をフレーム2の周方向に誘導しつつ排出口9まで案内する案内壁10と、を備える回転電機1の冷却構造を採用することにより、フレーム2を鋳造する構成において、製造上の困難さが増加することを抑制しつつ、温度のばらつきを抑制することができる。
【0028】
また、案内壁10は、供給口8から離間するにつれて流路7が広くなるとともに、排出口9に近づくにつれて流路7が狭くなるように設けられている。これにより、供給された冷媒はフレーム2の周方向にスムーズに誘導され、冷媒の流れを円滑にすることができ、冷却効率を高めることができる。
【0029】
また、案内壁10は、供給口8側から排出口9側まで連続した1つの構造体として設けられている。これにより、案内壁10をより一層単純化することができ、製造上の困難さが大幅に増加することを抑制できる。また、案内壁10の構成そのものを単純化したことから、鋳造時に利用される中子の取り出しなどを容易に行うことができ、鋳造が容易になることに加えて、鋳造後の後処理の作業も容易にすることができる。
【0030】
このとき、案内壁10は、供給口8の近傍つまりは供給口8との間の距離がなるべく短くなる位置で端板11に繋がるように設けられているため、冷媒の主たる流れ逆側のスペースは相対的に狭くなり、冷媒の主たる流れをフレーム2の周方向に向けることができる。また、案内壁10は、フレーム2の周方向という単一方向への冷媒の流れにおいて、最上流側に供給口8が位置し、最下流側に排出口9が位置するように設けられていることから、冷媒をスムーズに流すことができるとともに、供給口8から排出口9へと向かう螺旋状の冷媒の流れが形成され、高い冷却効率を得ることができる。
【0031】
また、案内壁10は、供給口8から排出口9までの最短距離を、フレーム2の周方向および軸方向に塞ぐ状態で設けられている。これにより、冷媒をフレーム2の周方向および軸方向に広がるように誘導することができ、冷媒による冷却性能を向上させることができる。また、案内壁10は、フレーム2の周方向に延びているものの、フレーム2を半周しない程度の範囲内で設けられているため、構造が複雑化することを抑制できる。
【0032】
また、供給口8および排出口9は、フレーム2の周方向に互いに離間して設けられている。これにより、案内壁10により冷媒をフレーム2の周方向に例えば一周以上流れるようにすることができ、冷却性能を向上させることができる。
【0033】
また、案内壁10に冷媒の一部をリークさせるリーク部12を設けている。これにより、冷媒の流れにおいて下流側になり、その流れが案内壁10によって妨げられて冷媒が滞留する可能性が相対的に高くなる領域(R)に、冷媒を供給することができる。したがって、冷媒が滞留することによって温度のばらつきが生じてしまうことを抑制できる。
【0034】
また、リーク部12は、案内壁10において、少なくとも供給口8と対向する位置に設けられている。これにより、相対的に温度が低い供給された直後の冷媒を、冷媒が周方向に流れた後に滞留する可能性のある領域(R)にリークさせることができ、冷媒が滞留することによって温度のばらつきが生じてしまうことを抑制できる。
【0035】
この場合、
図4に示した冷媒図を展開して内周側から見た状態に対応する展開図として示すように、排出口9と対向する位置の案内壁10にもリーク部12を設けることにより、矢印F5にて示すように、冷媒の排出時に相対的に滞留しやすいと考えられる領域(R1)から排出口9への冷媒の流れを形成することができる。これにより、矢印F3にて示す冷媒の主たる流れから、矢印F5にて示す流れが形成され、領域(R1)で冷媒が滞留することによる温度のばらつきの発生を抑制することができる。
【0036】
また、鋳造により筒状に形成されているフレーム2と、フレーム2の内側に配置されるステータ3およびロータ5と、を備え、フレーム2は、筒状の壁部6内に設けられている冷媒が流れる流路7と、流路7に冷媒を供給するための供給口8と、供給口8からフレーム2の軸方向に離間した位置に設けられ、流路7から冷媒を排出するための排出口9と、流路7に設けられ、供給口8から供給される冷媒をフレーム2の周方向に誘導しつつ排出口9まで案内する案内壁10とを備える回転電機1によっても、上記した冷却構造と同様に、流路7が複雑化することが防止され、冷媒がフレーム2の周方向および軸方向に流れることからフレーム2全体を均等に冷却することが可能となる、したがって、フレーム2を鋳造する構成において、製造上の困難さが増加することを抑制しつつ、温度のばらつきを抑制することができる。
【0037】
(その他の実施形態)
冷却構造および回転電機1は、以下に説明する構成とすることができるとともに、以下に説明する構成によっても、上記した実施形態と同様の各種の効果を得ることができる。なお、以下では、説明の簡略化のために、上記した実施形態と同一符号を付して説明する。
【0038】
例えば、冷却構造および回転電機1は、
図5に示す構成とすることができる。
図5の冷媒図は、上記した
図4と同様に、冷媒が流れる態様を抽出したものである。また、
図5の展開図は、冷媒図を展開して内周側から見た状態に対応しており、上記した
図3と同様に、冷媒図に示した流路7を形成するための案内壁10の形状を、外壁6aを周方向に展開した状態で示すものである。このとき、供給口8および排出口9は、フレーム2の周方向および軸方向に互いにずれて設けられている。ただし、排出口9は、冷媒の流れにおいて1周未満となる位置、つまり、供給口8に対して周方向に360-β°となる位置に設けられている。
【0039】
そして、案内壁10は、実施形態と同様に、供給口8の近傍において壁部6の図示上端つまりは一方の端板11に繋がっており、供給口8の近傍では冷媒を誘導する向きとは供給口8を挟んだ逆側で端板11に繋がっている。つまり、案内壁10は、供給口8側から排出口9側まで連続した直線状の1つの構造体として流路7内に設けられている。また、案内壁10は、案内壁10は、供給口8から排出口9までの最短距離を、フレーム2の周方向および軸方向に塞ぐ状態で設けられている。
【0040】
このような構成によっても、供給口8から供給された冷媒は、案内壁10が設けられている側への流れが妨げられ、矢印F3にて示すように案内壁10とは逆側に向かってフレーム2の内部を周方向に流れた後、軸方向にずれた位置から排出される。これにより、供給口8から排出口9へと向かう螺旋状の冷媒の流れが形成され、フレーム2全体を均等に冷却することが可能になる。
【0041】
また、案内壁10は、フレーム2を半周しない程度の範囲内で設けられているため、流路7の構造が複雑化することを抑制できる。したがって、フレーム2を鋳造する構成において、製造上の困難さが増加することを抑制しつつ、温度のばらつきを抑制することができるなど、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
この場合、冷媒の供給時や排出時に相対的に滞留しやすいと考えられる領域(R)、領域(R1)の近傍にリーク部12を設けることにより、矢印F4にて示す供給口8から領域(R)への冷媒の流れや、矢印F5にて示す領域(R1)から排出口9への冷媒の流れを形成することにより、温度のばらつきの発生をより一層抑制することができる。勿論、供給口8側にのみリーク部12を設ける構成とすることもできる。
【0043】
あるいは、冷却構造および回転電機1は、
図6に示す構成とすることができる。この場合、冷媒図およびその冷媒図を展開して内周側から見た状態に対応する展開
図Aとして示すように、供給口8と排出口9とを周方向で一致した0°の位置に設けることができる。あるいは、展開
図Bとして示すように、排出口9を冷媒の流れにおいて1周以上となる位置、つまり、供給口8に対して周方向に360+γ°となる位置に設けることができる。
【0044】
これら展開
図Aおよび展開
図Bのいずれにおいても、案内壁10は、供給口8の近傍において壁部6の図示上端つまりは一方の端板11に繋がっており、供給口8の近傍では冷媒を誘導する向きとは供給口8を挟んだ逆側で端板11に繋がっている。また、案内壁10は、供給口8側から排出口9側まで連続した直線状の1つの構造体として流路7内に設けられている。また、案内壁10は、案内壁10は、供給口8から排出口9までの最短距離を、フレーム2の周方向および軸方向に塞ぐ状態で設けられている。
【0045】
このような構成によっても、供給口8から供給された冷媒は、案内壁10が設けられている側への流れが妨げられ、矢印F3にて示すように案内壁10とは逆側に向かってフレーム2の内部を周方向に流れた後、軸方向にずれた位置から排出される。これにより、供給口8から排出口9へと向かう螺旋状の冷媒の流れが形成され、フレーム2全体を均等に冷却することが可能になる。
【0046】
また、案内壁10は、フレーム2を半周しない程度の範囲内で設けられているため、流路7の構造が複雑化することを抑制できる。したがって、フレーム2を鋳造する構成において、製造上の困難さが増加することを抑制しつつ、温度のばらつきを抑制することができるなど、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
この場合、冷媒の供給時や排出時に相対的に滞留しやすいと考えられる領域(R)、領域(R1)の近傍にリーク部12を設けることにより、矢印F4にて示す供給口8から領域(R)への冷媒の流れや、矢印F5にて示す領域(R1)から排出口9への冷媒の流れを形成することにより、温度のばらつきの発生をより一層抑制することができる。勿論、供給口8側にのみリーク部12を設ける構成とすることもできる。
【0048】
さらに、冷却構造および回転電機1は、
図7に示す構成とすることができる。この場合、冷媒図として示すように、供給口8と排出口9とはフレーム2の周方向および軸方向にずれて設けられている。このとき、排出口9は、冷媒の流れにおいて1周未満となる位置、つまり、供給口8に対して周方向に360-δ°となる位置に設けられている。そして、冷媒図を展開して内周側から見た状態に対応する展開図として示すように、供給口8と排出口9との間に、フレーム2の軸方向に沿った直線状の案内壁10が設けられている。
【0049】
このような構成によっても、供給口8から供給された冷媒は、案内壁10が設けられている側への流れが妨げられ、矢印F3にて示すように案内壁10とは逆側に向かってフレーム2の内部を周方向に流れた後、軸方向にずれた位置から排出される。これにより、供給口8から排出口9へと向かう螺旋状の冷媒の流れが形成され、フレーム2全体を均等に冷却することが可能になる。
【0050】
また、案内壁10は、フレーム2の軸方向に沿って設けられているため、流路7の構造が最も単純化される。したがって、フレーム2を鋳造する構成において、製造上の困難さが増加することを抑制しつつ、温度のばらつきを抑制することができるなど、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
この場合、冷媒の供給時や排出時に相対的に滞留しやすいと考えられる領域(R)、領域(R1)の近傍にリーク部12を設けることにより、矢印F4にて示す供給口8から領域(R)への冷媒の流れや、矢印F5にて示す領域(R1)から排出口9への冷媒の流れを形成することにより、温度のばらつきの発生をより一層抑制することができる。勿論、供給口8側にのみリーク部12を設ける構成とすることもできる。
【0052】
実施形態では外形が円形となる円筒状のフレーム2を例示したが、中空部分にステータ3およびロータ5を配置できれば、外形が矩形状のものを採用することもできる。
実施形態では案内壁10を切り取って不連続にする形状のリーク部12を例示したが、リーク部12は、案内壁10に孔部を設けた形状としたり、外壁6a側あるいは内壁6b側において一部分が不連続なっている形状としたりすることができる。
【0053】
供給口8と排出口9の大きさを異ならせることができる。より詳細に言えば、供給口8と排出口9とで冷媒の最大流量が異なる構成とすることができる。例えば、供給口8よりも排出口9を大きくすることにより、供給口8から排出口9への冷媒の流れをスムーズにすることができるとともに、リーク部12からのリークを促進することができ、冷媒による冷却効率を向上させることができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は回転電機、2はフレーム、3はステータ、5はロータ、6は壁部、6aは外壁、6bは内壁、7は流路、8は供給口、9は排出口、10は案内壁、12はリーク部を示す。