(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】光変調器の検査方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20231227BHJP
G02B 26/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B26/02 E
(21)【出願番号】P 2020053308
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】林 由起子
(72)【発明者】
【氏名】中西 健二
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-139074(JP,A)
【文献】特開2010-66415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G02B 6/35
G02B 26/00-G02B 26/08
G03F 7/20-G03F 7/24
G03F 9/00-G03F 9/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器の検査方法であって、
変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素
すべての前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返す、指令値変更工程と、
前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリア
における前記反射光の光量のピーク値を示す第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリア
における前記反射光の光量のピーク値を示す第2オン指令値を決定する、オン指令値決定工程と、
前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定する、オン指令値光量測定工程と、
前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する、位置関係決定工程と
を包含する、検査方法。
【請求項2】
前記オン指令値決定工程は、前記第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オフ指令値を決定し、前記第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オフ指令値を決定し、
前記オン指令値光量測定工程は、前記第1エリアのうちの前記第1オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第1オフ指令値を設定し、前記第2エリアのうちの前記第2オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第2オフ指令値を設定する、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器の検査方法であって、
変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素の前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返す、指令値変更工程と、
前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オン指令値を決定する、オン指令値決定工程と、
前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定する、オン指令値光量測定工程と、
前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する、位置関係決定工程と
を包含し、
前記オン指令値光量測定工程は、
前記第1エリア内の少なくとも2以上の変調画素に第1指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する工程と、
前記第1指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第1領域を特定する工程と、
前記第1エリア内の前記少なくとも2以上の変調画素に第2指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する工程と、
前記第2指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を前記複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第2領域を特定する工程と、
前記複数の領域のうちの前記第1領域に前記第1指令値を設定し、前記第2領域に前記第2指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する工程と
を含む
、検査方法。
【請求項4】
固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器を検査する検査装置であって、
前記光変調器にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記光変調器を撮像する撮像装置と、
前記光変調器、前記レーザ光源および前記撮像装置を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素
すべての前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返し、
前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリア
における前記反射光の光量のピーク値を示す第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリア
における前記反射光の光量のピーク値を示す第2オン指令値を決定し、
前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定し、
前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する、
検査装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オフ指令値を決定し、前記第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オフ指令値を決定し、
前記第1エリアのうちの前記第1オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第1オフ指令値を設定し、前記第2エリアのうちの前記第2オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第2オフ指令値を設定する、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器を検査する検査装置であって、
前記光変調器にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記光変調器を撮像する撮像装置と、
前記光変調器、前記レーザ光源および前記撮像装置を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素の前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返し、
前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オン指令値を決定し、
前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定し、
前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定し、
前記制御装置は、
前記第1エリア内の少なくとも2以上の変調画素に第1指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定し、
前記第1指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第1領域を特定し、
前記第1エリア内の前記少なくとも2以上の変調画素に第2指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定し、
前記第2指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を前記複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第2領域を特定し、
前記複数の領域のうちの前記第1領域に前記第1指令値を設定し、前記第2領域に前記第2指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する
、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力光に対して出力光を画素ごとに変調可能な光変調器として、入射光を選択的に回折可能な光変調器が用いられる。この種の光変調器の一例として、GLV(Grating Light Valve)が知られている。GLVは、画素に印加する電圧に応じて異なる強度の光を出力する。
【0003】
一般に、光変調器は、画素に対する入力(印加電圧)に対する出力(光強度)を示す光学特性を測定した後で使用される。あるいは、出荷された光変調器を受け取る際に、光変調器は、画素の光学特性を測定することもある。光変調器は、測定された光学特性に基づいて使用される(特許文献1参照)。特許文献1には、光変調器に対して測定系を走査することにより、GLVの光学特性を得ることが記載されている。また、特許文献1の装置では、光変調器の両端の変調素子のみ光量が増大するように操作することにより、チャンネル位置とスキャン位置とを対応付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、光変調素子の入出力特性が変動することがある。この場合、チャンネル位置とスキャン位置との対応付けを正確に特定できないことがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光変調器の変調画素と反射光の測定された位置との間の位置関係を高精度に決定可能な光変調器の検査方法および検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器の検査方法である。前記検査方法は、変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素すべての前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返す、指令値変更工程と、前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアにおける前記反射光の光量のピーク値を示す第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアにおける前記反射光の光量のピーク値を示す第2オン指令値を決定する、オン指令値決定工程と、前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定する、オン指令値光量測定工程と、前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する、位置関係決定工程とを包含する。
【0008】
ある実施形態において、前記オン指令値決定工程は、前記第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オフ指令値を決定し、前記第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オフ指令値を決定し、前記オン指令値光量測定工程は、前記第1エリアのうちの前記第1オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第1オフ指令値を設定し、前記第2エリアのうちの前記第2オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第2オフ指令値を設定する。
【0009】
本発明の別の局面によれば、固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器の検査方法である。前記検査方法は、変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素の前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返す、指令値変更工程と、前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オン指令値を決定する、オン指令値決定工程と、前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定する、オン指令値光量測定工程と、前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する、位置関係決定工程とを包含する。前記オン指令値光量測定工程は、前記第1エリア内の少なくとも2以上の変調画素に第1指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する工程と、前記第1指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第1領域を特定する工程と、前記第1エリア内の前記少なくとも2以上の変調画素に第2指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する工程と、前記第2指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を前記複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第2領域を特定する工程と、前記複数の領域のうちの前記第1領域に前記第1指令値を設定し、前記第2領域に前記第2指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する工程とを含む。
【0010】
本発明のさらに別の局面によれば、検査装置は、固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器を検査する。前記検査装置は、前記光変調器にレーザ光を照射するレーザ光源と、前記光変調器を撮像する撮像装置と、前記光変調器、前記レーザ光源および前記撮像装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素すべての前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返し、前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアにおける前記反射光の光量のピーク値を示す第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアにおける前記反射光の光量のピーク値を示す第2オン指令値を決定し、前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定し、前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する。
【0011】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オフ指令値を決定し、前記第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オフ指令値を決定し、前記第1エリアのうちの前記第1オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第1オフ指令値を設定し、前記第2エリアのうちの前記第2オン指令値を設定された変調画素以外の変調画素に前記第2オフ指令値を設定する。
【0012】
本発明のさらに別の局面によれば、検査装置は、固定部材に対して可動する可動部材をそれぞれ含み、少なくとも一方向に配列された複数の変調画素を備える光変調器を検査する。前記検査装置は、前記光変調器にレーザ光を照射するレーザ光源と、前記光変調器を撮像する撮像装置と、前記光変調器、前記レーザ光源および前記撮像装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、変更可能な指令値のいずれかに設定された前記光変調器に含まれる前記複数の変調画素の前記可動部材を可動させ、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定することを、前記指令値を変更しながら繰り返し、前記光変調器に含まれる第1エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第1エリアの第1オン指令値を決定し、前記光変調器に含まれる前記第1エリアとは異なる第2エリア内における前記指令値の変更に対する前記反射光の光量の変化に基づいて前記第2エリアの第2オン指令値を決定し、前記複数の変調画素のうちの前記第1エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第1オン指令値を設定し、前記複数の変調画素のうちの前記第2エリア内の少なくとも1つの変調画素に前記第2オン指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光の光量を測定し、前記第1オン指令値の設定された変調画素と、前記第2オン指令値の設定された変調画素と、前記第1オン指令値および前記第2オン指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布に基づいて、前記光変調器の前記変調画素と前記反射光の測定された位置との位置関係を決定する。前記制御装置は、前記第1エリア内の少なくとも2以上の変調画素に第1指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定し、前記第1指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第1領域を特定し、前記第1エリア内の前記少なくとも2以上の変調画素に第2指令値を設定して前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定し、前記第2指令値を設定した際の前記反射光の光量の分布を前記複数の領域に分けて、前記複数の領域のうち前記反射光がピークを示す第2領域を特定し、前記複数の領域のうちの前記第1領域に前記第1指令値を設定し、前記第2領域に前記第2指令値を設定して、前記光変調器にレーザ光を照射して前記光変調器によって反射された反射光を測定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光変調器の変調画素と反射光の測定された位置との間の位置関係を高精度に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本実施形態の検査装置の検査対象となる光変調器の模式的な斜視図であり、(b)は、(a)の光変調器の模式的な平面図である。
【
図2】(a)は、
図1(b)のIIA-IIAに沿った断面図であり、(b)は、(a)とは異なる電圧が印加された場合の模式図である。
【
図4】本実施形態の検査装置による検査方法のフロー図である。
【
図5】(a)は、指令値を変更しながら光量を測定した結果を示すグラフであり、(b)は、(a)のグラフから求められる光学特性を示すグラフである。
【
図6】(a)は、2つの変調画素にオン指令値が設定された本実施形態の検査装置の模式的な斜視図であり、(b)は、(a)において測定される光量を示すグラフであり、(c)は、(b)のグラフから求められる位置関係を説明するための図である。
【
図7】(a)は、1つずつの変調画素にオン指令値が設定された本実施形態の検査装置の模式的な斜視図であり、(b)は、(a)において測定される光量を示すグラフであり、(c)は、3つずつの変調画素にオン指令値が設定された本実施形態の検査装置の模式的な斜視図であり、(d)は、(c)において測定される光量を示すグラフである。
【
図8】(a)~(n)は、本実施形態の検査装置による検査方法のフロー図である。
【
図9】本実施形態の検査装置の検査対象となる光変調器の模式的な平面図である。
【
図10】(a)は、本実施形態の検査装置の検査対象となる光変調器の模式的な平面図であり、(b)は、(a)の模式的な斜視図である。
【
図11】本実施形態の検査装置において検査された光変調器を備える三次元造形装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明による光変調器の検査方法および検査装置の実施形態を説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。典型的には、X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。また、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、X軸、Y軸およびZ軸とは別に、互いに直交するx軸、y軸およびz軸を記載することがある。典型的には、光変調器は、x軸方向およびy軸方向に広がっており、光変調器の主面の法線はz軸に平行である。
【0016】
まず、
図1を参照して、本実施形態の検査装置100の検査対象となる光変調器200を説明する。
図1(a)は、光変調器200の模式的な斜視図であり、
図1(b)は、光変調器200の模式的な平面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、光変調器200は、薄板形状である。光変調器200には、入射光Lが入射される。入射光Lはレーザ光であり、入射光Lの波長および強度は略一定に揃えられている。光変調器200は、入射光Lを反射光Laとして反射する。光変調器200は、反射光Laの強度を制御する。
【0018】
光変調器200は、基台210と、変調画素220とを有する。基台210上には複数の変調画素220が設けられる。変調画素220は、少なくとも一方向に沿って配列される。変調画素220が一方向に沿って配列される場合、変調画素220は、配列方向に対して直交する方向に延びた長手形状を有する。例えば、変調画素220の数は、100以上10000以下である。
【0019】
なお、変調画素220は、複数の行および複数の列のマトリクス状に配列されてもよい。この場合、例えば、変調画素220の数は、1000以上1000000以下である。
【0020】
光変調器200は、変調画素220ごとに入射光Lを変調した強度で反射光Laとして反射する。詳細には、光変調器200は、変調画素220ごとに光の回折を制御する。これにより、光変調器200は、入射光Lに対して変調画素220ごとに強度の異なる反射光Laを反射する。
【0021】
次に、
図1(a)および
図1(b)を参照して光変調器200を説明する。
図1(b)は、光変調器200の平面図である。
【0022】
複数の変調画素220は、光変調器200の上面に亘って設けられた共通の固定部材222、および、光変調器200の上面にマトリクス状(格子状)に配置された複数の可動部材224を有する。可動部材224は、固定部材222に対して可動である。z軸方向から視た場合、固定部材222には、複数の円形状の開口が形成される。固定部材222の上面には、固定反射面が設けられる。複数の開口は、2次元(S×V)に配列される。すなわち、複数の開口は、x方向に第1行から第S行まで順に並び、y方向に第1列から第V列まで順に並ぶ。ここでは、1つの変調画素220は、一部の固定部材222、および、複数の可動部材224から構成される。
【0023】
複数の可動部材224の各々は、円形状の板である。可動部材224の上面には可動反射面が設けられる。複数の可動部材224は、固定部材222に形成された複数の開口に配置されている。つまり、複数の可動部材224は、2次元状に(S×V)個、配列されている。このような光変調器200は、LPLV(Linear Planar Light Valve)とも呼ばれる。
【0024】
次に、
図1および
図2(a)を参照して、光変調器200を説明する。
図1(b)は、光変調器200の平面図であり、
図2(a)は、
図1(b)のIIA-IIA線の断面図である。
【0025】
図1(b)および
図2(a)に示すように、光変調器200は、基台210と、変調画素220とを有する。基台210の上面には、S個の共通電極212が設けられる。S個の共通電極212の各々は、y方向に沿って延びる。また、S個の共通電極212は、x方向に配列される。
【0026】
固定部材222の下面は、S個の共通電極212の上面と所定距離を空けて、基台210に対して固定される。また、(S×V)個の可動部材224は、固定部材222に対して、可動反射面に対して垂直な方向に移動可能である。すなわち、(S×V)個の可動部材224は、固定部材222に対して、z方向に移動可能である。
【0027】
光変調器200では、例えば、1列に並ぶV個の可動部材224の集合が1つの単位空間に対応する変調画素220となる。従って、光変調器200は、S個の変調画素220を有する光変調器として機能する。
【0028】
可動部材224と共通電極212との間に電圧(電位差)が与えられることにより、可動部材224は共通電極212側に変位する。詳細には、1本の共通電極212ごとに電圧が印加される。さらに、共通電極212に印加する電圧を調整することで、可動部材224の変位量を調整する。
【0029】
続いて、
図2(a)および
図2(b)を参照して、光変調器200の動作を詳細に説明する。
図2(b)は、光変調器200の一例を示す断面図である。
【0030】
図2(a)に示すように、共通電極212の面に対して垂直な方向において、可動部材224の位置と固定部材222の位置とが同じ高さにある。その結果、可動部材224で反射した光と、固定部材222で反射した光との位相差は、0(ゼロ)である。なお、可動部材224の位置と固定部材222の位置とが同じ高さにある状態で反射した0次光L0の強度は、入射光Lの強度の例えば70%から80%の範囲内である。また、このときの0次光以外の回折光の強度は、入射光Lの強度の例えば10%から20%範囲内であり、その内、+1次光L1aの強度は入射光Lの強度の数%であり、-1次光L1bの強度は入射光Lの強度の約数%である。
【0031】
図2(b)に示すように、S個の可動部材224は下降する。光変調器200への入射光Lの入射角Aと、可動部材224の位置と固定部材222の位置との高さの差Dfとに基づいて、可動部材224で反射した光と固定部材222で反射した光との光路差(2Df・cosA)が示される。
【0032】
可動部材224で反射した光と固定部材222で反射した光との光路差(2Df・cosα)が、例えば、(m+1/2)・λとなるように、高さの差Dfは調整される。mは0以上の整数であり、λは光の波長である。換言すれば、可動部材224で反射した光と固定部材222で反射した光との位相差が、π/radとなるように、可動部材224の位置と固定部材222の位置との高さの差Dfは調整される。位相差がπradである状態で反射した0次光L0の強度は、入射光Lの強度の1%未満であり、+1次光L1aおよび-1次光L1bを含む回折光の強度は、入射光Lの強度の例えば84%から89%の範囲内である。
【0033】
このように、可動部材224の可動によって0次光の強度が大きく変化する。このため、光変調器200は、0次光の光量を変調するために好適に用いられる。ただし、光変調器200は、0次光以外の光を用いてもよいことは言うまでもない。
【0034】
次に、
図1~
図3を参照して、光変調器200を検査する検査装置100を説明する。
図3は、本実施形態の検査装置100の模式図である。光変調器200は、検査装置100に装着される。検査装置100は、光変調器200を検査する。
【0035】
検査装置100は、レーザ光源110と、光量測定装置120と、制御装置130とを備える。制御装置130は、レーザ光源110、光量測定装置120および光変調器200を制御する。
【0036】
レーザ光源110は、光変調器200に向けてレーザ光を出射する。例えば、レーザ光源110は、ファイバーレーザ光源である。一例では、レーザ光の波長は、1064nmである。
【0037】
典型的には、光変調器200は、取付部に取り付けられる。光変調器200が取付部に取り付けられた状態で、光変調器200は、レーザ光源110から出射されたレーザ光を光量測定装置120に向けて反射する。詳細には、光変調器200は、レーザ光源110から出射されたレーザ光を光量測定装置120に向けて選択的に反射する。
【0038】
例えば、光変調器200は、固定して保持される。一例として、取付部として、光変調器200の外縁に対応した窪みの設けられたホルダを使用し、ホルダの窪みに光変調器200が装着されてもよい。
【0039】
光変調器200は、レーザ光源110からのレーザ光を光量測定装置120に反射する。ここでは、光変調器200によって反射された0次光は光量測定装置120に到達し、光量測定装置120によって反射された回折光は光量測定装置120に到達しない。本明細書の以下の説明において、発明の説明が過度に複雑になることを避ける目的で、光変調器200によって反射されて光量測定装置120に到達する光を単に「反射光」と記載することがある。光変調器200の複数の変調画素220は、変調画素220ごとに制御されており、制御に応じた光量の反射光を光量測定装置120に向けて反射する。
【0040】
光量測定装置120は、光変調器200によって反射された光の光量を検出する。ここでは、光量測定装置120は、撮像素子を含む。光変調器200によって反射された光は、光量測定装置120の撮像領域内に到達する。このため、光量測定装置120は、光変調器200の全体を撮像できる。
【0041】
光量測定装置120は、複数の行および複数の列からなるマトリクス状に配列された撮像画素を含んでもよい。例えば、光量測定装置120は、カメラまたはイメージセンサを含む。
【0042】
なお、光量測定装置120は、フォトディテクターを含んでもよい。ただし、光量測定装置120がフォトディテクターを含む場合、フォトディテクターおよび光変調器200の少なくとも一方は相対的に移動可能であることが好ましい。また、フォトディテクターの前には、光変調器200の1つの変調画素220に対応する開口の設けられた遮蔽部材が配置されてもよい。
【0043】
光量測定装置120は、光変調器200の変調画素220に応じて反射された反射光の光量を検出する。光変調器200の変調画素220に応じて全反射された反射光の光量を検出する。詳細には、光量測定装置120は、撮像画素ごとに、変調画素220に応じて反射された反射光の光量を検出する。
【0044】
制御装置130は、レーザ光源110、光変調器200および光量測定装置120を制御する。制御装置130の制御により、レーザ光源110は、光変調器200に向けてレーザ光を発振する(レーザ光源110をONにする)。なお、レーザ光源110をON・OFFする方法として、レーザ光を発振させた状態で、レーザ光源110内またはレーザ光源110外に設けられたシャッター機構を開閉する方法でもよい。
【0045】
例えば、制御装置130は、光変調器200の回折を変調画素220ごとに制御する。制御装置130は、光変調器200の変調画素220ごとに反射光の強度を制御できる。制御装置130は、光変調器200の変調画素220ごとに指令値を出力し、変調画素220は、指令値に応じて反射光を反射する。
【0046】
また、制御装置130は、光量測定装置120によって撮像された撮像データを受信する。制御装置130は、光量測定装置120の撮像データに基づいて、光変調器200を制御する。
【0047】
制御装置130は、制御部130Aと、記憶部140とを備える。制御部130Aは、プロセッサーを有する。制御部130Aは、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)を有する。または、制御部130Aは、汎用演算機を有してもよい。
【0048】
記憶部140は、データおよびコンピュータープログラムを記憶する。コンピュータープログラムにより、光変調器200の動作手順および光量測定装置120の撮像データの処理を実行する。
【0049】
記憶部140は、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部140はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0050】
例えば、記憶部140は、制御プログラムを記憶する。制御プログラムは、非一時的コンピューター読取可能記憶媒体からインストールされて、記憶部140に記憶されてもよい。非一時的コンピューター読取可能記憶媒体は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CD-ROM、磁気テープ、磁気ディスクまたは光データ記憶装置を含む。
【0051】
制御部130Aは、記憶部140に記憶された制御プログラムを実行することによって、検査装置100の各構成要素の動作を制御する。制御部130Aは、記憶部140に記憶されたコンピュータープログラムを実行して、レーザ光源110、光量測定装置120および光変調器200を制御する。
【0052】
制御部130Aは、変調制御部131と、光源制御部132と、撮像制御部133と、光学特性取得部134とを含む。変調制御部131は、光変調器200を制御する。光源制御部132は、レーザ光源110を制御する。撮像制御部133は、光量測定装置120を制御する。光学特性取得部134は、光変調器200の光学特性を取得する。
【0053】
変調制御部131は、光変調器200を変調画素220ごとに制御する。変調制御部131の制御により、光変調器200は、変調画素220ごとに反射光を生成する。変調制御部131は、光変調器200の各変調画素220に指令値を出力する。典型的には、指令値は、変調画素220に印加される電圧に相当する。指令値の変さらにより、各変調画素220によって反射される反射光の光量が変化する。
【0054】
光源制御部132は、レーザ光源110からの光の出射および停止を切り替えるようにレーザ光源110を制御する。
【0055】
撮像制御部133は、光量測定装置120からの撮像データを受信する。光学特性取得部134は、光量測定装置120からの撮像データから、光変調器200の光学特性を取得する。例えば、光学特性取得部134は、光量測定装置120からの撮像データから、光変調器200のIV曲線を取得する。さらに、光学特性取得部134は、光変調器200のIV曲線から、光変調器200の変調画素220と光量測定装置120との空間的な位置関係を決定する。
【0056】
なお、検査装置100は、光学素子150をさらに備えてもよい。例えば、光学素子150は、レーザ光源110と光変調器200との間に配置された前段光学素子150aと、光変調器200と光量測定装置120との間に配置された後段光学素子150bとを含んでもよい。
【0057】
本実施形態の検査装置100は、光変調器200を検査する。典型的には、光変調器200の複数の変調画素220は、高精細に形成されるため、光変調器200の変調画素220の特性がばらつくことがある。例えば、検査装置100は、光変調器200の変調画素220の光学特性の検査に用いられる。
【0058】
次に、
図1~
図4を参照して本実施形態の検査装置100による光変調器200の検査方法を説明する。
図4は、本実施形態の検査装置100による検査方法を示すフロー図である。
【0059】
図4に示すように、ステップS10において、光変調器200のすべての変調画素220に対する指令値を変更しながら光変調器200によって反射された反射光の光量を測定する。例えば、変調制御部131がすべての変調画素220を同一の指令値200に設定した状態で、レーザ光源110は光変調器200にレーザ光を出射し、光量測定装置120は、レーザ光源110から出射され光変調器200によって反射された反射光の各位置の光量を測定する。同様に、変調制御部131がすべての変調画素220に別の指令値に設定した状態で、レーザ光源110は光変調器200にレーザ光を出射し、光量測定装置120は、レーザ光源110から出射され光変調器200によって反射された反射光の各位置の光量を測定する。このように、変調画素220を同一の指令値を変更しながら、光量測定装置120は、レーザ光源110から出射され光変調器200によって反射された反射光の各位置の光量を測定する。
【0060】
ステップS20において、光変調器200のエリアごとのオン指令値およびオフ指令値を決定する。例えば、光変調器200を複数のエリアに分け、あるエリアのオン指令値およびオフ指令値ならびに別のエリアのオン指令値およびオフ指令値を決定する。
【0061】
例えば、光変調器200を、すべての変調画素220の半分を含む一方側のエリアと、すべての変調画素220の残り半分を含む他方側のエリアとに分け、一方側のエリアのオン指令値およびオフ指令値ならびに他方側のエリアのオン指令値およびオフ指令値を決定する。
【0062】
なお、ステップS20では、オン指令値とともにオフ指令値も決定するが、オフ指令値を決定することなくオン指令値のを決定してもよい。
【0063】
ステップS30において、光変調器200の複数のエリア内の一部の変調画素220に対してオン指令値を設定し、残りの変調画素220に対してオフ指令値を設定する。この状態で、レーザ光源110は光変調器200にレーザ光を出射し、光量測定装置120は、レーザ光源110から出射され光変調器200によって反射された反射光の各位置の光量を測定する。
【0064】
ステップS40において、光変調器200のうちのオン指令値に設定した変調画素220と、光量測定装置120の位置関係を決定する。例えば、光変調器200のうちのオン指令値に設定された変調画素220の位置と、光量測定装置120における光量のピークの位置との関係から、光変調器200の変調画素220と光量測定装置120の測定画素との関係を取得できる。
【0065】
以上のようにして、光変調器200を検査する。本実施形態によれば、光変調器200の変調画素220と、光量測定装置120の位置との対応関係を取得できる。
【0066】
次に、
図1~
図5を参照して本実施形態の検査装置100による光変調器200の検査方法を説明する。
図5(a)は、
図4のステップS10における測定結果を示す模式的なグラフであり、
図5(b)は、
図4のステップS20におけるオン指令値およびオフ指令値の決定を説明するためのグラフである。
【0067】
図5(a)に示すように、光変調器200のすべての変調画素220に同一の指令値を設定して、レーザ光源110は光変調器200に光を出射する。光量測定装置120は、光変調器200によって反射された反射光の光量を測定する。その後、光変調器200のすべての変調画素220に別の指令値を設定して、レーザ光源110は光変調器200に光を出射する。光量測定装置120は、光変調器200によって反射された反射光の光量を測定する。以上のように指令値を変更しながら、光変調器200による反射光量を測定する。
【0068】
図5(a)には、すべての変調画素220に指令値200を設定したときに光量測定装置120によって測定された光量分布D1を示す。典型的には、指令値200の光量分布D1において、光量は、光変調器200の位置に沿ってほぼ一定の値を示す。ただし、厳密には、光量は一定ではない。例えば、光変調器200の左側の光量は、光変調器200の右側の光量よりも若干高い。
【0069】
図5(a)には、指令値の代表値として、すべての変調画素220に指令値400、600、800を設定したときに光量測定装置120によって測定された光量分布D2、D3、D4をそれぞれ示す。光量分布D1と同様に、光量分布D2、D3、D4のそれぞれにおいて、光量は、光変調器200の位置に沿ってほぼ一定の値を示す。ただし、厳密には、光量は一定ではない。例えば、光量分布D4において、光変調器200の右側の光量は、光変調器200の左側の光量よりも若干高い。
【0070】
光学特性取得部134は、光変調器200のエリアごとに、光量分布に基づいた指令値に対する光量の変化を取得する。ここでは、光変調器200の左側半分の左側エリアA1および光変調器200の右側半分の右側エリアA2について検討する。
【0071】
図5(b)は、光量分布に基づいて取得された指令値に対する光量の変化を示した光学特性E1、E2を示す。
図5(b)において、光学特性E1は、光変調器200の左側エリアA1の指令値に対する光量の変化を示し、光学特性E2は、光変調器200の右側エリアA2の指令値に対する光量の変化を示す。
【0072】
図5(b)の光学特性E1と光学特性E2との比較から理解されるように、光学特性E1は、光学特性E2とは異なる。光学特性E1は、光学特性E2と比べて、指令値の増加に伴い速やかに増加するが、光量がピークに達した後に、指令値が増加すると、光量は低下する。光学特性E1において、光変調器200の左側エリアA1に関して、指令値SXaの場合に光量は最小値を示し、指令値SXbの場合に光量は最大値を示す。本明細書において、指令値SXaは第1オフ指令値に相当し、指令値SXbは第1オン指令値に相当する。
【0073】
一方、光学特性E2は、指令値の増加に伴って光量は一度増加した後で減少し、指令値がさらに増加すると、光量は光学特性E1に比べて遅れて徐々に増加し、最大指令値の近傍において、光量もほぼピークにする。光学特性E2において、光変調器200の右側エリアA2に関して、指令値SYaの場合に光量は最小値を示し、指令値SYbの場合に光量は最大値を示す。本明細書において、指令値SYaは第2オフ指令値に相当し、指令値SYbは第2オン指令値に相当する。
【0074】
以上のように、光変調器200に設定された指令値に対する光量測定装置120において測定された光量の変化から、光変調器200のエリアごとの光量の最大値および最小値となる指令値をそれぞれ取得できる。光変調器200のエリアごとに、光量が最大値となる指令値をオン指令値に設定し、光量が最小値となる指令値をオフ指令値に設定する。
【0075】
その後、光変調器200の位置合わせを行う際に、光変調器200のエリアごとの変調画素220の少なくとも1つをオン指令値に設定し、残りの変調画素をオフ指令値に設定する。例えば、光変調器200の左側エリアA1の少なくとも1つの変調画素220をオン指令値に設定し、残りの変調画素220をオフ指令値に設定する。同様に、光変調器200の右側エリアA2の少なくとも1つの変調画素220をオン指令値に設定し、残りの変調画素220をオフ指令値に設定する。
【0076】
図6(a)は、
図4のステップS30における光変調器200の模式的な斜視図である。
図6(a)に示すように、光変調器200の左側エリアA1の一部はオン指令値に設定されており、左側エリアA1の残りの一部はオフ指令値に設定される。このため、入射光Lは、オン指令値に設定された変調画素220によって反射光Laとして反射される。ここでは、左側エリアA1において、オン指令値に設定された変調画素220を変調画素220aと記載する。
【0077】
なお、変調画素220aは、光変調器200内の左側エリアA1のうちの端部に位置することが好ましい。例えば、変調画素220aは、光変調器200内の左側エリアA1の最も外側(すなわち、左側)に位置してもよい。
【0078】
同様に、光変調器200の右側エリアA2の一部はオン指令値に設定されており、右側エリアA2の残りの一部はオフ指令値に設定される。このため、入射光Lは、オン指令値に設定された変調画素220によって反射光Laとして反射される。ここでは、右側エリアA2において、オン指令値に設定された変調画素220を変調画素220bと記載する。
【0079】
なお、変調画素220bは、光変調器200内の右側エリアA2のうちの端部に位置することが好ましい。例えば、変調画素220bは、光変調器200内の右側エリアA2の最も外側(すなわち、右側)に位置してもよい。
【0080】
図6(b)は、
図4のステップS30における測定結果を示す模式図である。
図6(b)に示すように、光量は、光量測定装置120の位置Laおよび位置Lbに対応してピークを示す。
【0081】
光量測定装置120の位置Laにおいて測定され、光量分布Daで示される光は、光変調器200の変調画素220aによって反射されたものである。このため、光量測定装置120においてピークの示された位置Laは、光変調器200の変調画素220aに対応する。同様に、光量測定装置120の位置Lbにおいて測定され、光量分布Dbで示される光は、光変調器200の変調画素220bによって反射されたものである。このため、光量測定装置120においてピークの示された位置Lbは、光変調器200の変調画素220bに対応する。
【0082】
図6(c)は、
図4のステップS40における光変調器200の変調画素220と光量測定装置120の位置との対応付けを示す模式図である。
図6(c)に示すように、光量測定装置120における位置Laおよび位置Lbは、光変調器200の変調画素220aおよび変調画素220bに対応する。このため、位置Laと位置Lbとの間の距離Dは、光変調器200の変調画素220aと変調画素220bとの間の変調画素220の数Nに対応する。以上のようにして、光量測定装置120の位置と光変調器200の変調画素220との位置関係を決定できる。
【0083】
図4~
図6を参照した上述の説明から理解されるように、本実施形態では、異なるエリアごとにオン指令値およびオフ指令値を取得し、エリアごと取得されたオン指令値およびオフ指令値に基づいて、光量測定装置120の位置と光変調器200の変調画素220との位置関係を決定する。このため、オン指令値に対応する光量は比較的多く、オフ指令値に対応する光量は比較的少ないため、光量測定装置120の位置と光変調器200の変調画素220との位置関係を特定する際の誤りを抑制できる。
【0084】
なお、
図5(b)を参照した上述の説明では、あるエリアの光学特性において光量の最大値をオン指令値とし、光量の最小値をオフ指令値としたが、本実施形態はこれに限定されない。オン指令値は、光量の最大値でなくてもよい。ただし、オン指令値は、指令値の増加に応じて光量の単調変化する範囲において、最大値の光量の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0085】
同様に、オフ指令値は、光量の最小値でなくてもよい。ただし、オフ指令値は、指令値の増加に応じて光量の単調変化する範囲において、最小値の光量との違いは20%以下であることが好ましく、最小値の光量との違いは10%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
また、
図5および
図6を参照した上述の説明では、変調画素220のすべては、左側エリアA1および右側エリアA2の2つの領域のいずれかに分けられたが、本実施形態はこれに限定されない。変調画素220のいくつかが左側エリアA1を構成し、変調画素220の別のいくつかが右側エリアA2を構成し、残りの変調画素220は、左側エリアA1、右側エリアA2のいずれも構成しなくてもよい。
【0087】
さらに、
図5および
図6を参照した上述の説明では、変調画素220は、左側エリアA1および右側エリアA2の2つの領域に分けられたが、本実施形態はこれに限定されない。変調画素220は、3以上の領域に分けられてもよい。
【0088】
なお、
図6では、1つの変調画素220がオン指令値に設定されたが、1つの変調画素220によって反射される反射光の光量が低いと、光量のピークを適切に特定できないことがある。このため、2以上の変調画素220をオン指令値に設定してもよい。
【0089】
さらに、オン指令値に設定される変調画素220が一方向に偶数だけ配列されると、変調画素220によって反射された反射光の光量のピークが隣接する変調画素220の間に位置し、光量のピークを適切に特定できないことがある。このため、オン指令値に設定される変調画素220の一方向の配列数は奇数であることが好ましい。
【0090】
次に、
図7を参照して変調画素220の画素数による測定の違いを説明する。
図7(a)は、オン指令値に設定される変調画素が1つの場合の光変調器200の模式的な斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)の場合の光量測定装置120の測定結果を示すグラフである。なお、
図7(a)および
図7(b)は、それぞれ
図6(a)および
図6(b)に相当する。
【0091】
図7(a)および
図7(b)に示すように、変調画素220aおよび変調画素220bをオン指令値に設定すると、変調画素220aおよび変調画素220bに対応して光量測定装置120の位置Laおよび位置Lbにおいて光量のピークを検出できる。
【0092】
ただし、変調画素220aおよび変調画素220bをそれぞれオン指令値に設定しても変調画素220aおよび変調画素220bに対応して検出される光量が少ない場合、光量測定装置120の位置Laおよび位置Lbを正確に特定できないことがある。その場合、隣接する2以上の変調画素220をオン指令値に設定してもよい。
【0093】
図7(c)は、隣接する3つの変調画素にオン指令値を設定した場合の光変調器200の模式的な斜視図であり、
図7(d)は、
図7(c)の場合の光量測定装置120の測定結果を示すグラフである。
【0094】
図7(c)および
図7(d)に示すように、変調画素220のうち左側エリアA1内に位置して隣接する変調画素220a1、220a2、220a3をオン指令値に設定する。例えば、変調画素220a1、220a2、220a3に左側エリアA1のオン指令値(SXb)を設定する。
【0095】
同様に、変調画素220のうち右側エリアA2内に位置して隣接する変調画素220b1、220b2、220b3をオン指令値に設定する。例えば、変調画素220b1、220b2、220b3に右側エリアA2のオン指令値(SYb)を設定する。
【0096】
この場合、変調画素220a1、220a2、220a3に対応して光量測定装置120の位置Laにおいて比較的高いピークを検出できる。同様に、変調画素220b1、220b2、220b3に対応して光量測定装置120の位置Lbにおいて比較的高いピークを検出できる。したがって、オン指令値に対応する光量は比較的多くできるため、光量測定装置120の位置と光変調器200の変調画素220との位置関係を特定する際の誤りを抑制できる。
【0097】
なお、
図7(c)および
図7(d)を参照した上述の説明では、隣接する3つの変調画素220(すなわち、3つの変調画素220a1、220a2、220a3および、3つの変調画素220b1、220b2、220b3)に対して同じオン指令値を設定したが、本実施形態はこれに限定されない。隣接する3つの変調画素220に対して異なるオン指令値を設定してもよい。
【0098】
次に、
図8を参照して、本実施形態によるオン指令値の設定方法を説明する。ここでは、図面および説明が過度に複雑になることを避ける目的で、左側エリアA1内の変調画素220a1、220a2、220a3および対応する光量について説明する。
【0099】
まず、
図8(a)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3にオン指令値S1を設定する。例えば、オン指令値S1として、
図5(b)に示したオン指令値SXbを設定してもよい。
【0100】
ここで、3つの変調画素220a1、220a2、220a3のうち、変調画素220a1は左側(端側)に位置し、変調画素220a2は、変調画素220a1と変調画素220a3との間に位置し、変調画素220a3は、変調画素220の中央側に位置する。
【0101】
次に、
図8(b)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3をオン指令値S1で設定した場合の光量を測定する。
図8(b)において光量分布を光量分布Da1と示す。光量分布Da1は、中心位置を基準として対称であることが理想的であるが、ここでは、光量分布Da1は、対称ではない。
【0102】
次に、
図8(c)に示すように、光量分布Da1を複数の領域に分割する。ここでは、オン指令値S1として3つの変調画素220a1、220a2、220a3を設定したため、光量分布Da1を3つの領域R1a、R1b、R1cに分割する。ここで、3つの領域R1a、R1b、R1cのうち、領域Ra1は左側(端側)に位置し、領域R1bは領域R1aと領域R1cとの間に位置し、領域R1cは変調画素220の中央側に位置する。
【0103】
その後、
図8(d)に示すように、光量分布Da1のピークの位置する領域を特定する。ここでは、光量分布Da1のピークは、領域R1cに位置する。以上から、少なくとも変調画素220a3については、オン指令値S1に設定すると高い光量を示すことが理解される。
【0104】
次に、変調画素220a1、220a2、220a3に対するオン指令値S1を変更する。例えば、オン指令値S1は、所定数だけ変化させたオン指令値S2に変更される。ここでは、オン指令値S1を所定数だけ増加してオン指令値S2に変更する。
【0105】
次に、
図8(e)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3にオン指令値S2を設定する。ここでも、変調画素220a1、220a2、220a3には同一のオン指令値S2が設定される。
【0106】
次に、
図8(f)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3をオン指令値S2で設定した場合の光量を測定する。
図8(f)において光量分布を光量分布Da2と示す。光量分布Da2は、光量分布Da1よりは対称形に近いが、厳密には、光量分布Da2でも対称ではない。
【0107】
次に、
図8(g)に示すように、光量分布Da2を複数の領域に分割する。ここでは、オン指令値S1として3つの変調画素220a1、220a2、220a3を設定したため、光量分布Da2を3つの領域R2a、R2b、R2cに分割する。ここで、3つの領域R2a、R2b、R2cのうち、領域Rb1は左側(端側)に位置し、領域R2bは、領域R2bと領域R2cとの間に位置し、領域R2cは変調画素220の中央側に位置する。
【0108】
その後、
図8(h)に示すように、光量分布Da2のピークの位置する領域を特定する。ここでは、光量分布Da2のピークは、領域R2bに位置する。以上から、少なくとも変調画素220a2については、オン指令値S2に設定すると高い光量を示すことが理解される。
【0109】
次に、さらに、変調画素220a1、220a2、220a3に対するオン指令値を変更する。例えば、最初に指定されたオン指令値S1は、所定数だけ変化させたオン指令値S3に変更される。オン指令値S1を所定数だけ減少してオン指令値S3に変更する。
【0110】
次に、
図8(i)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3にオン指令値S3を設定する。ここでも、変調画素220a1、220a2、220a3には同一のオン指令値S3が設定される。
【0111】
次に、
図8(j)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3をオン指令値S3で設定した場合の光量を測定する。
図8(j)において光量分布を光量分布Da3と示す。ここでも、光量分布Da3は対称ではない。
【0112】
次に、
図8(f)に示すように、光量分布Da3を複数の領域に分割する。ここでは、オン指令値S1として3つの変調画素220a1、220a2、220a3を設定したため、光量分布Da3を3つの領域R3a、R3b、R3cに分割する。ここで、3つの領域R3a、R3b、R3cのうち、領域R3aは左側(端側)に位置し、領域R3bは領域R3aと領域R3cとの間に位置し、領域R3cは変調画素220の中央側に位置する。
【0113】
その後、
図8(d)に示すように、光量分布Da3のピークの位置する領域を特定する。ここでは、光量分布Da3のピークは、領域R3aに位置する。以上から、少なくとも変調画素220a1については、オン指令値S3に設定すると高い光量を示すことが理解される。
【0114】
次に、
図8(m)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3に異なるオン指令値をそれぞれ設定する。例えば、変調画素220a1にはオン指令値S3を設定し、変調画素220a2にはオン指令値S1を設定し、変調画素220a3にはオン指令値S2を設定する。
【0115】
その後、
図8(n)に示すように、変調画素220a1、220a2、220a3をオン指令値S3、S1、S2でそれぞれ設定した場合の光量を測定する。
図8(n)において光量分布を光量分布Da4と示す。このように、変調画素220a1、220a2、220a3に対応してピークを示したオン指令値S3、S1、S2を変調画素220a1、220a2、220a3にそれぞれ個別に設定することにより、変調画素220a1、220a2、220a3のそれぞれの光量を高くすることができ、位置関係を誤って決定することを抑制できる。
【0116】
なお、上述の説明では、特に
図1(b)および
図2を参照して、光変調器200がLPLV(Linear Planar Light Valve)の形態について詳細に説明したが、本実施形態はこれに限定されない。光変調器200がPLVであってもよい。あるいは、光変調器200は、GLVであってもよい。
【0117】
次に、
図9を参照して、光変調器200としてPLVを用いた場合の光変調器200を説明する。
図9は、本実施形態の検査装置100によって検査される光変調器200の模式的な平面図である。なお、
図9の光変調器200では、
図1(b)を参照して上述した光変調器200とは異なり、基台210の上に、共通電極212が分離されることなく設けられる。
【0118】
また、
図2の光変調器200では、共通電極212ごとに独立した電圧を印加可能であったが、
図9の光変調器200では、可動部材224ごとに独立した電圧を印加可能である。このため、
図9の光変調器200では、
図1(b)を参照して上述した光変調器200とは異なり、変調画素220が、x方向およびy方向の両方にマトリクス状に配列される。
【0119】
このように、変調画素220がマトリクス状に配列される光変調器200にも、本実施形態の検査装置100は好適に用いられる。なお、光変調器200としてGLVを用いてもよい。
【0120】
次に、
図10(a)および
図10(b)を参照して、別形状の光変調器200について説明する。
図10(a)は、光変調器200の模試的な平面図である。また、
図10(b)は、光変調器200の一部の拡大斜視図である。ここでは、所定方向(x方向)に並んだ複数の単位空間に対してビームを同時に導く光変調器200として、GLVを用いる。
【0121】
図10(a)および
図10(b)に示すように、光変調器200は、基台210と、変調画素220とを有する。基台210の上面には、共通電極212が配置される。
【0122】
変調画素220は、複数の固定リボン222aおよび複数の可動リボン224aを有する。複数の固定リボン222aの下面は、共通電極212の上面と所定距離を空けて、基台210に対して固定される。固定リボン222aの上面には固定反射面が設けられる。複数の可動リボン224aの下面は、共通電極212の上面と所定距離を空けて、基台210に対して、可動反射面に垂直な方向に移動可能である。可動リボン224aの上面には可動反射面が設けられる。複数の可動リボン224a及び複数の固定リボン222aは、所定方向(x方向)に交互に平行に配列形成される。
【0123】
そして、光変調器200では、1本の可動リボン224aと1本の固定リボン222aとを格子要素とすると、例えば、隣接する4個の格子要素の集合が1つの単位空間に対応する変調画素となる。
【0124】
変調制御部131は、可動リボン224aと共通電極212との間に電圧(電位差)を与えることにより、可動リボン224aを共通電極212側に変位させる。詳細には、変調制御部131は、1本の可動リボン224aごとに電圧を印加する。更に、変調制御部131は、可動リボン224aに印加する電圧を調整することで、可動リボン224aの変位量を調整する。
【0125】
なお、本実施形態の検査装置100において検査された光変調器200は、三次元造形装置に好適に用いられる。
【0126】
次に、
図11を参照して、光変調器200を備えた三次元造形装置300を説明する。
図11は、三次元造形装置300の模式図である。なお、本明細書の以下の説明おいて、三次元造形装置300を単に造形装置300と記載することがある。
【0127】
造形装置300は、光変調器200と、ビーム照射部300Aと、制御装置330とを備える。ビーム照射部300Aは、造形材料にビームLfを照射する。制御装置330は、ビーム照射部300Aを制御する。具体的には、制御装置330は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含む。
【0128】
また、造形装置300は、走査機構(走査部)320と、供給機構360と、記憶部340とをさらに備える。記憶部340は、記憶装置を含む。具体的には、記憶部340は、半導体メモリのような主記憶装置、並びに、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブのような補助記憶装置を含む。
【0129】
造形装置300は、所定造形空間SP中に三次元造形物を製造する。所定造形空間SPは、三次元空間である。所定造形空間SPは、複数の単位空間を含む。例えば、複数の単位空間は、それぞれ互いに同じ体積を有する立方体形状を有する。例えば、複数の単位空間は、N行×M列×S層の単位空間を含む。N、MおよびSのうちの少なくとも1つは2以上の整数を示す。複数の単位空間は、Y方向に第1行から第N行まで順に並び、X方向に第1列から第M列まで順に並び、Z方向に第1層から第S層まで順に並んでいる。供給機構360の所定の空間に所定造形空間SPが設定されたデータを、記憶部340は記憶する。
【0130】
三次元造形物は、造形材料によって所望の形状に製造される。造形材料は、粉末またはペーストであり、例えば、金属粉体、エンジニアリングプラスチック、セラミックス、合成樹脂である。金属粉体は、チタン、アルミニウムまたはステンレスである。三次元造形物を製造する造形材料には、複数の種類の造形材料が含まれてもよい。
【0131】
造形材料は、例えば、供給機構360によって所定の単位空間に供給される。そして、ビームLfが照射されると造形材料の温度が上昇して、造形材料の表面または全体が溶融して、ビームLfの照射が停止されると、造形材料は焼結体となる。また、所望の形状としては、特に限定されない。所望の形状を示す造形データは、例えば、製造者により記憶部340に記憶される。造形データは、例えば、CAD(Computer Aided Design)データである。
【0132】
引き続き、造形材料にビームLfを照射するビーム照射部300Aの詳細を説明する。ビーム照射部300Aは、レーザ光源310と、光変調器200と、光学素子350とを有する。
【0133】
光学素子350は、照明光学素子350aと、投影光学素子350bとを含む。照明光学素子350aは、レーザ光源310と光変調器200との間に配置される。また、投影光学素子350bは、光変調器200と走査機構320との間に配置される。
【0134】
レーザ光源310は、レーザ光Ldを照明光学素子350aに発振する。レーザ光源310は、例えば、ファイバーレーザ光源である。レーザ光Ldの波長は、例えば、1064nmである。例えば、レーザ光Ldの進行方向に対して垂直な面におけるレーザ光の断面形状は、略円形である。また、レーザ光Ldの進行方向に対して垂直な面におけるレーザ光の断面寸法は、進行方向に進行すればするほど大きくなっていく。
【0135】
照明光学素子350aは、レーザ光LdをラインビームLeに整形して、ラインビームLeを光変調器200に導く。具体的には、照明光学素子350aは、複数のレンズを備える。例えば、ラインビームLeは、ラインビームLeの進行方向に対して垂直な面において進行方向に進行しても大きさが略一定な略平行光である。また、ラインビームLeは、垂直な面において略均一な強度を有する。例えば、ラインビームLeは、垂直な面において所定方向に長い略長方形を有する。所定方向は、例えばY軸方向である。
【0136】
光変調器200は、ラインビームLeをビームLfに変調して、ビームLfを投影光学素子350bに出射する。光変調器200は、制御装置330によって制御される。その結果、ビームLfは、少なくとも所定方向において異なる強度の分布を有する。
【0137】
投影光学素子350bは、ビームLfで中間像を形成した後、ビームLfを走査機構320に出射する。例えば、投影光学素子350bは、複数のレンズを備える。
【0138】
引き続き、走査機構320の詳細を説明する。走査機構320は、ビームLfを反射して、ビームLfを造形材料に照射する。走査機構320は、例えば、ガルバノミラーを有する。ガルバノミラーは、例えば、所定方向を回転軸として回転する。
【0139】
詳細には、走査機構320は、複数の単位空間のうち少なくとも2つの単位空間に対して、それぞれ、互いに異なる強度を有するビームLfを導く。具体的には、走査機構320は、所定方向に並んだ複数の単位空間に対してビームLfを導く。例えば、第1の単位空間に対して、第1の強度を有するビームLfを導く。また、第2の単位空間に対して、第2の強度を有するビームLfを導く。その結果、複数の単位空間に造形材料が供給されていると、第1の単位空間に存在する造形材料に第1の強度を有するビームLfが照射され、第2の単位空間に存在する造形材料に第2の強度を有するビームLfが照射される。
【0140】
また、走査機構320は、複数の単位空間のうち選択された所定の複数の単位空間に順次、ビームLfを導く。すなわち、走査機構320は、ビームLfを走査する。例えば、ガルバノミラーは、ビーム照射部300Aから出射されたビームLfの進行方向を変更する。具体的には、ガルバノミラーが回転して、ビームLfを走査方向に走査する。走査方向は、所定方向に垂直な方向であり、例えば、X軸方向である。具体的には、第m列の複数の単位空間に対してビームLfを導く。例えば、第m列第n行の単位空間に対して、第1の強度を有するビームLfを導くと同時に、第m列第(n+1)行の単位空間に対して、第2の強度を有するビームLfを導く。その後、第(m+1)列の複数の単位空間に対してビームLfを導く。例えば、第(m+1)列第n行の単位空間に対して、第3の強度を有するビームLfを導くと同時に、第(m+1)列第(n+1)行の単位空間に対して、第4の強度を有するビームLfを導く。
【0141】
引き続き、複数の単位空間に造形材料を供給する供給機構360の詳細を説明する。詳細には、供給機構360は、複数の単位空間のうち選択された所定の複数の単位空間に順次、造形材料層を形成する。造形材料層は、造形材料からなる。例えば、第s層の複数の単位空間に第1の造形材料層を形成する。その後、第(s+1)層の複数の単位空間に第2の造形材料層を形成する。具体的には、供給機構360は、パートシリンダー362と、フィードシリンダー364と、スキージ366とを備える。
【0142】
フィードシリンダー364は、フィードシリンダー364の内部に下面を有する。下面は、フィードシリンダー364の内部でZ軸方向に移動可能である。フィードシリンダー364の内部で下面の上部には、造形材料が収容されている。一方、パートシリンダー362は、パートシリンダー362の内部に下面を有する。下面は、パートシリンダー362の内部でZ軸方向に移動可能である。パートシリンダー362の内部で下面の上部には、所定造形空間SPが設定されている。
【0143】
パートシリンダー362の内部には、フィードシリンダー364から造形材料が供給される。具体的には、パートシリンダー362の下面を所定距離、下降させる。一方、フィードシリンダー364の下面を所定距離、上昇させる。そして、フィードシリンダー364からパートシリンダー362へ向かって、スキージ366を移動させる。その結果、所定量の造形材料がフィードシリンダー364の内部からパートシリンダー362の内部へ移動する。
【0144】
次に、制御装置330の詳細を説明する。制御装置330は、ビーム照射部300Aおよび供給機構360を制御する。制御装置330のプロセッサーは、記憶部340の記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行する。
【0145】
制御装置330は、ビーム照射部300Aを制御する。具体的には、制御装置330は、変調制御部331と、光源制御部332とを有する。
【0146】
光源制御部332は、レーザ光源310を制御する。詳細には、光源制御部332は、レーザ光源310からレーザ光Ldを発振させる。
【0147】
変調制御部331は、ビームLfを造形材料に照射するように、光変調器200を制御する。ビームLfは、強度の分布を有する。強度の分布は、造形データおよび流動情報に基づいて作成される。流動情報は、少なくとも2つの単位空間が隣接する場合に、少なくとも2つの単位空間の間で、造形材料が流動する情報を含む。流動情報は、例えば、対流情報および/または表面張力情報を含む。流動情報は、造形材料の種類の情報を含んでもよい。また、2つの単位空間の間に隙間(空間)が形成されている場合に、2つの単位空間の間で造形材料が移動するときには、2つの単位空間は隣接することに含まれる。
【0148】
制御装置330は、走査制御部334をさらに有する。走査制御部334は、走査機構320を制御する。
【0149】
強度の分布を示すデータは、露光データ(露光強度のプロファイル)BPとして、記憶部340に記憶されている。すなわち、変調制御部331は、露光データBPに基づいて光変調器200を制御することによって、造形データおよび流動情報に基づいて作成された強度の分布を有するビームLfを作成する。
【0150】
なお、
図2に示した検査装置100のレーザ光源110および光学素子150として、
図11に示したレーザ光源310および光学素子350を用いてもよい。
【0151】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、光変調器の検査方法および検査装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0153】
100 検査装置
110 レーザ光源
120 光量測定装置
130 制御装置
130A 制御部
131 変調制御部
132 光源制御部
133 撮像制御部
140 記憶部
150 光学素子
200 光変調器
210 基台
220 変調画素