(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】独立基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
E02D27/00 C
(21)【出願番号】P 2020069451
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】松葉 悠剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】熊野 豪人
(72)【発明者】
【氏名】大堀 太志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089360(JP,A)
【文献】特開2001-090181(JP,A)
【文献】特開2000-273880(JP,A)
【文献】特開2001-140348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱脚のベース部を基礎フーチング内に埋め込む独立基礎構造であって、
前記ベース部が、鉄骨梁と柱梁仕口部とを有し、
前記柱梁仕口部が、前記鉄骨梁の上側のフランジが接合される上側ダイヤフラムと、前記鉄骨梁の下側のフランジが接合される下側ダイヤフラムと、を備え、
前記上側ダイヤフラムの厚みが、前記下側ダイヤフラムの厚みより大きい、独立基礎構造。
【請求項2】
前記上側ダイヤフラムの突出量が、前記下側ダイヤフラムの突出量より大きい、請求項1に記載の独立基礎構造。
【請求項3】
前記鉄骨梁のウェブに、スタッドが設けられている、請求項1又は2に記載の独立基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱脚のベース部を基礎フーチング内に埋め込む独立基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、柱脚のベース部を基礎フーチング内に埋め込む独立基礎構造が示されている。この独立基礎構造では、鉄骨梁を備えたベース部を基礎フーチング内に埋め込み、曲げモーメントを柱脚の鉄骨梁から基礎フーチングに伝達するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような独立基礎構造では、柱脚のベース部に鉄骨梁を基礎フーチング内に埋め込むことで、基礎梁を設けることなく柱脚の回転剛性を高めていた。しかし、柱脚に作用する軸力によって基礎フーチングにパンチング破壊が起こることが考えられ、パンチング破壊に対して改善の余地があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、パンチング破壊が起こり難い独立基礎構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、柱脚のベース部を基礎フーチング内に埋め込む独立基礎構造であって、前記ベース部が、鉄骨梁と柱梁仕口部とを有し、前記柱梁仕口部が、前記鉄骨梁の上側のフランジが接合される上側ダイヤフラムと、前記鉄骨梁の下側のフランジが接合される下側ダイヤフラムと、を備え、前記上側ダイヤフラムの厚みが、前記下側ダイヤフラムの厚みより大きい点にある。
【0007】
本構成によれば、基礎フーチング内に埋め込むベース部が鉄骨梁を有することで、柱脚の回転剛性を高めることができる。そして、ベース部における上側ダイヤフラムの厚みを下側ダイヤフラムの厚みより大きくすることで、上側ダイヤフラムの剛性を下側ダイヤフラムに比べて高くすることができる。そのため、柱脚に作用する軸力が、上側ダイヤフラムから基礎フーチングに伝達され易くなり、下側ダイヤフラムから基礎フーチングに伝達され易い場合に比べて、基礎フーチングのパンチング破壊が起こり難くなる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記上側ダイヤフラムの突出量が、前記下側ダイヤフラムの突出量より大きい点にある。
【0009】
本構成によれば、上側ダイヤフラムの突出量が下側ダイヤフラムの突出量より大きいことで、柱脚に作用する軸力が、上側ダイヤフラムから基礎フーチングへと更に伝達され易くなり、これによって基礎フーチングのパンチング破壊がより起こり難くなる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記鉄骨梁のウェブに、スタッドが設けられている点にある。
【0011】
本構成によれば、鉄骨梁にスタッドを設けることによって、柱脚の曲げモーメントが基礎フーチングに伝達され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る独立基礎構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、独立基礎構造は、柱脚1のベース部2が基礎フーチング3内に埋め込まれている。図示は省略するが、基礎フーチング3は、地盤5に複数設置されており、この複数の基礎フーチング3の上に建物の構造体が構築されている。柱脚1は、構造体の一部を構成している。尚、本実施形態では、柱脚1における基礎フーチング3内に埋め込まれている部分をベース部2としている。
【0014】
基礎フーチング3は、地盤5の掘削された凹部7に構築されている。説明を加えると、地盤5を掘削し、地盤改良によって柱状改良体6を造成すると共に凹部7を形成し、柱状改良体6上に捨てコンクリート8を敷設する。そして、基礎フーチング3は、その全体が凹部7内に位置するように、捨てコンクリート8上に構築されている。基礎フーチング3は、鉄筋コンクリートにより構成されている。また、ベース部2が基礎フーチング3内に埋め込まれた状態に柱脚1を基礎フーチング3に立設した後、土間コンクリート9を敷設している。
【0015】
図3に示すように、ベース部2は、鉄骨梁11と柱梁仕口部12とを有している。鉄骨梁11は、H型鋼によって構成されており、上側のフランジ(以下、上側フランジ16と称する)、下側のフランジ(以下、下側フランジ17と称する)、及び、ウェブ18を有している。柱梁仕口部12は、鉄骨梁11の上側フランジ16が突き合わせ状態で接合される上側ダイヤフラム13と、鉄骨梁11の下側フランジ17が突き合わせ状態で接合される下側ダイヤフラム14と、を備えている。上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14は、柱脚1の支柱部19に接合されている。
図2及び
図4に示すように、支柱部19は、筒形状に形成されており、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14は、平面視形状が多角形状に形成されている。本実施形態では、支柱部19は、円筒形状に形成されており、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14は、平面視形状が正方形状に形成されている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14は、辺の長さが柱脚1の外径より大きくなっており、通しダイヤフラムとなっている。説明を加えると、
図3に示すように、上側ダイヤフラム13は、支柱部19を第1支柱部分19aと第2支柱部分19bとに上下方向に分断するように第1支柱部分19aと第2支柱部分19bとの間に位置しており、第1支柱部分19aの下端及び第2支柱部分19bの上端に溶接接合されている。下側ダイヤフラム14は、上側ダイヤフラム13より下側に設置されており、第2支柱部分19bを下側から塞ぐように第2支柱部分19bの下端に溶接接合されている。
【0017】
上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14に複数本の鉄骨梁11が接合されており、ベース部2は、複数本の鉄骨梁11を備えている。本実施形態では、矩形状の上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14の各辺のそれぞれに鉄骨梁11が接合されており、ベース部2は、第1鉄骨梁11aと第2鉄骨梁11bと第3鉄骨梁11cと第4鉄骨梁11dとの4本の鉄骨梁11が備えられている。第1鉄骨梁11aと第2鉄骨梁11bとは、柱梁仕口部12から互いに反対側に延びるように柱梁仕口部12に接合され、第3鉄骨梁11c及び第4鉄骨梁11dは、第1鉄骨梁11a及び第2鉄骨梁11bが延びる方向に対して直交する方向であって、柱梁仕口部12から互いに反対側に延びるように柱梁仕口部12に接合されている。このように接合された4本の鉄骨梁11は、
図2及び
図4に示すように、平面視で十字状となるように柱梁仕口部12に接合されている。
【0018】
ちなみに、上側ダイヤフラム13の各辺の長さは、接合する上側フランジ16の幅より長く、上側ダイヤフラム13の厚みは、接合する上側フランジ16の厚みより大きい。また、下側ダイヤフラム14の各辺の長さは、接合する下側フランジ17の幅より長く、下側ダイヤフラム14の厚みは、接合する下側フランジ17の厚みより大きい。第1鉄骨梁11aと第2鉄骨梁11bとは同じ長さに形成され、第3鉄骨梁11cと第4鉄骨梁11dとは同じ長さに形成されている。そして、第1鉄骨梁11a及び第2鉄骨梁11bは、第3鉄骨梁11c及び第4鉄骨梁11dより長手方向の長さが長く形成されている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、鉄骨梁11のウェブ18には、スタッド21が設けられている。説明を加えると、平面視で鉄骨梁11の長手方向に対して直交する方向を幅方向として、鉄骨梁11のウェブ18には、幅方向の両側に向けて突出する状態で、複数のスタッド21が接合されている。ウェブ18には、上下方向に複数段(
図4に示す例では2段)及び長手方向に複数列(
図4に示す例では4列又は5列)並ぶ状態でスタッド21が設けられている。このように、柱脚1のベース部2に鉄骨梁11を設けることに加えて、鉄骨梁11のウェブ18にスタッド21が設けられていることで、柱脚1の曲げモーメントが基礎フーチング3に伝達され易くなる。
【0020】
図3に示すように、上側ダイヤフラム13の厚み(上下幅)は、下側ダイヤフラム14の厚みより大きい。例えば、上側ダイヤフラム13の厚み(上下幅)は、下側ダイヤフラム14の厚みの1.4~1.8倍、より具体的には、上側ダイヤフラム13の厚みは、下側ダイヤフラム14の厚みの1.6倍としている。尚、上側ダイヤフラム13と下側ダイヤフラム14とは、同じ材質で構成されている。このように、上側ダイヤフラム13の厚みを下側ダイヤフラム14の厚みより大きくすることで、上側ダイヤフラム13の剛性を下側ダイヤフラム14の剛性より高くしている。
【0021】
また、上側ダイヤフラム13の支柱部19からの突出量L1は、下側ダイヤフラム14の支柱部19からの突出量L2より大きい。説明を加えると、上側ダイヤフラム13の支柱部19からの四方(4本の鉄骨梁11が存在する方向)への突出量L1のそれぞれが、下側ダイヤフラム14の支柱部19からの四方への突出量L2のそれぞれより大きい。そのため、上側ダイヤフラム13の平面視の広さは、下側ダイヤフラム14の平面視の広さより大きくなっている。例えば、上側ダイヤフラム13の平面視の広さは、下側ダイヤフラム14の平面視の広さの1.2~1.4倍、より具体的には、上側ダイヤフラム13の平面視の広さは、下側ダイヤフラム14の平面視の広さの1.3倍としている。
【0022】
上述の如く、上側ダイヤフラム13の剛性を下側ダイヤフラム14の剛性より高くすることで、下側ダイヤフラム14よりも上側フランジ16から基礎フーチング3に伝達され易くなる。そして、上側ダイヤフラム13が下側ダイヤフラム14より上側にあり、また、上側ダイヤフラム13の突出量L1が、下側ダイヤフラム14の突出量L2より大きいため、
図3に示すように、上側ダイヤフラム13から下側に向けて延びる破壊線Lが、下側ダイヤフラム14からのびる破壊線に比べて下側の面積が広くなり、基礎フーチング3のパンチング破壊を起こり難くなる。
【0023】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0024】
(1)上記の実施形態では、平面視で十字状となるように鉄骨梁11をベース部2に備える構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、ベース部2を、平面視でI字状となるように鉄骨梁11をベース部2に備える構成としてもよく、平面視でT字状となるように鉄骨梁11をベース部2に備える構成としてもよい。また、平面視でT字状となる鉄骨梁11を有する2つのベース部2を接合して、これらのベース部2が有する鉄骨梁11が全体としてH字状となるように構成してもよい。
【0025】
(2)上記の実施形態では、上側ダイヤフラム13の平面視の広さを、下側ダイヤフラム14の平面視の広さより大きくしたが、このような構成に限定されない。例えば、上側ダイヤフラム13の平面視の広さを、下側ダイヤフラム14の平面視の広さと同じとしてもよい。
【0026】
(3)上記の実施形態では、鉄骨梁11のウェブ18にスタッド21を設けたが、鉄骨梁11のウェブ18にスタッド21を設けなくてもよい。また、鉄骨梁11の上側フランジ16及び下側フランジ17の一方又は双方にスタッド21を設けてもよい。
【0027】
(4)上記の実施形態では、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14を、平面視の形状を正方形状としたが、平面視の形状を長方形状とする等、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14の平面視の形状は適宜変更してもよい。また、上記の実施形態では、支柱部19を円筒形状としたが、支柱部19を四角筒形状としてもよく、支柱部19の形状は適宜変更してもよい。
【0028】
(5)上記の実施形態では、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14を通しダイヤフラムとしたが、上側ダイヤフラム13及び下側ダイヤフラム14を外ダイヤフラムとしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 柱脚
2 ベース部
3 基礎フーチング
11 鉄骨梁
12 柱梁仕口部
13 上側ダイヤフラム
14 下側ダイヤフラム
16 上側フランジ(フランジ)
17 下側フランジ(フランジ)
18 ウェブ
21 スタッド
L1 突出量
L2 突出量