(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/13 20060101AFI20231227BHJP
B41J 2/035 20060101ALI20231227BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231227BHJP
B41J 2/185 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B41J2/13
B41J2/035
B41J2/01 203
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/185 101
(21)【出願番号】P 2020076588
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】盛合 拓也
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157389(JP,A)
【文献】特開2017-042985(JP,A)
【文献】特開平02-251460(JP,A)
【文献】特開2012-206353(JP,A)
【文献】特開2014-147910(JP,A)
【文献】特開平07-205488(JP,A)
【文献】特開昭60-174657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、インクをインク液滴として噴出して印字対象物に印字するノズルと、インク液滴を帯電させる帯電電極と、帯電したインク液滴に偏向をかける正極偏向電極、及び負極偏向電極と、帯電されていないインク液滴を捕集するガターを有する印字ヘッドを備えるインクジェット記録装置であって、
帯電されていないインク液滴が飛翔する方向と同じ方向
で、印字される文字(以下、印字文字と表記する)の最下位ドットの着滴位置を通る軸を回転中心として、前記印字ヘッドを回転させるサーボモータと、前記印字対象物の移動速度、或いは前記印字ヘッドの移動方向に対応して
前記印字文字が正立するように、前記サーボモータによって前記印字ヘッドを前記回転中心の回りで回転させる制御手段とを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段とは別に設けられた外部制御装置によって、前記印字対象物の移動速度、或いは前記印字ヘッドの移動方向に対応して前記印字文字が正立するように、前記サーボモータによって前記印字ヘッドを前記回転中心の回りで回転させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項
1或いは請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記印字対象物の移動速度、或いは前記印字ヘッドの移動方向は、前記印字対象物を搬送する搬送コンベアに設けたエンコーダによって検出されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記印字ヘッドを前記回転中心の回りで回転させて前記印字ヘッドを傾ける傾き角度(Θ)を、1スキャン分のインク液滴の生成時間(T)と、前記印字対象物の移動速度(V)と、印字文字の高さ(Y)から求めることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記傾き角度(Θ)は、
Θ=tan
-1
(X/Y)=tan
-1
(T*V/Y)
から求められることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は入力装置を備えており、前記入力装置の操作部から前記印字ヘッドを前記回転中心の回りで回転させて傾ける傾き角度(Θ)を入力できることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記印字文字をカメラによって撮像した撮像印字文字が入力され、前記撮像印字文字の傾きから前記印字対象物の移動速度、或いは前記印字ヘッドの移動方向に対応した前記印字ヘッドを前記回転中心の回りで回転させて傾ける傾き角度(Θ)を求めることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御手段は、前記撮像印字文字と、正立した基準印字文字を比較して前記撮像印字文字の傾きを求めることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置は、本体にインクを貯留するインク容器を設けており、そのインク容器のインクをインク供給ポンプによって印字ヘッドへ供給している。印字ヘッドに供給されたインクは、インクノズルから連続的に噴出され、インク液滴化される。インク液滴のうち、印字に使用するインク液滴には、帯電・偏向処理を行い、印字対象物の所望の印字位置へ飛翔させて文字を形成(以下、印字された文字を「印字文字」と定義する)し、印字に使用しないインク液滴には、帯電・偏向処理を行わず、ガターで捕集してインク回収ポンプによりインク容器へ戻す構成とされている。
【0003】
ところで、インク液滴は一滴ずつ生成され、また、インク液滴毎に飛翔軌道の長さが異なる。そのため、印字対象物へのインク液滴の着滴までの時間差を生じる。一方、インクジェット記録装置による印字中において、印字対象物は搬送ライン上を常に移動している。
【0004】
そして、正極偏向電極と負極偏向電極(接地の場合もある)は平板状で、インク液滴の飛翔方向と直交する平面で見た時に平行に配置されているため、それぞれの電極の間に一様な電場が形成される。そして、その間を飛翔するインク液滴は正極偏向電極の側に偏向される。そのため、夫々のインク液滴の着滴時間差と印字対象物の移動速度に応じて、印字対象物の移動方向に着滴位置のずれが大きくなるため、印字文字が搬送ラインの進行方向に対して傾きが生じて斜体文字になる現象がある。この印字文字の傾きを補正するため、インク液滴の偏向方向を微調整する必要がある。
【0005】
この印字文字の傾きを補正する方法として、特開2012-206385号公報(特許文献1)に記載されたインクジェット記録装置が知られている。特許文献1に記載されたインクジェット記録装置においては、印字ヘッドをインク液滴の吐出方向の回りで回転させ、結果として平行に配置された平板状の正極偏向電極と負極偏向電極を任意の角度だけ回転させることで、インク液滴の偏向方向を調整して印字文字の傾きを補正して文字が正立するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された調整作業においては、全て現場でオペレータの手作業で行われるものであり、オペレータの熟練度や作業感覚に依存するため、誰もが迅速に印字ヘッドを最適な傾き角度に調整して正立した文字を印字できないという課題があった。
【0008】
また、印字対象物の代わりに印字ヘッドを左右方向に移動させて印字する往復印字においては、印字ヘッドの移動方向よっても印字文字の傾き角度が異なるようになる。このような往復印字を行う場合は、オペレータが印字ヘッドの移動方向に対応して印字ヘッドの傾き角度を手動で調整することは現実的に不可能であり、印字ヘッドを最適な傾き角度に調整して正立した文字を印字できないという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、迅速に印字ヘッドを最適な傾き角度に調整して、文字を正立した状態で印字することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、帯電されていないインク液滴が飛翔する方向と同じ方向を軸とする所定の定められた回転中心で、サーボモータによって印字ヘッドが回転可能に支持されていると共に、印字対象物の移動速度、或いは印字ヘッドの移動方向に対応して印字文字が正立するように、サーボモータによって印字ヘッドを回転中心の回りで回転させる、ところにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、迅速に印字ヘッドを最適な傾き角度に調整して、文字を正立した状態で印字することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態になるインクジェット記録装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態になる印字ヘッドの回転機構を説明する説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態になる印字ヘッドの回転機構の制御を説明する制御フローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態において低速印字を行う時の説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態において高速印字を行う時の説明図である。
【
図6】印字ヘッドの傾き角度を設定する操作画面を説明する説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態になる印字ヘッドの回転機構の制御を説明する制御フローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態において左側から印字を行う時の説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態において右側から印字を行う時の説明図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態になる印字ヘッドの回転機構の制御を説明する制御フローチャートである。
【
図11】外部制御装置を用いて印字ヘッドの傾傾き角度を制御するインクジェット記録装置の概略構成図である。
【
図12】本発明における印字ヘッドの回転中心の例を説明する説明図である。
【
図13】印字ヘッドと印字対象物が直交する関係にある時の印字文字の傾きを説明する説明図である。
【
図14】従来の印字文字の傾きを調整する方法を説明する説明図である。
【
図15】従来の印字ヘッドにおいて低速印字を行う時の説明図である。
【
図16】従来の印字ヘッドにおいて高速印字を行う時の説明図である。
【
図17】従来の印字ヘッドにおいて左側から印字を行う時の説明図である。
【
図18】従来の印字ヘッドにおいて右側から印字を行う時の説明図である。
【
図19】左側から印字を行う時の印字文字の傾きを説明する説明図である。
【
図20】右側から印字を行う時の印字文字の傾きを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0014】
本発明を説明する前に、従来のインクジェット記録装置の課題、特に印字機構について簡単に説明する。
【0015】
図13において、印字ヘッド21は印字ヘッド固定アダプタ32に固定されており、印字ヘッド固定アダプタ32は印字ヘッド傾き調整ねじ34によって、固定台33にねじ止め固定されている。
【0016】
印字ヘッド21には、正極偏向電極24と、負極偏向電極(接地されている場合もある)25が備えられている。インクノズル(図示せず)から噴出されたインクはインク液滴28となり、帯電電極(図示せず)によって帯電されたインク液滴28は、正極偏向電極24と負極偏向電極25の間を飛翔して偏向され、帯電量に対応した軌道を飛翔しながら印字対象物20に着滴される。
【0017】
尚、
図13においては、正極偏向電極24と負極偏向電極25の間を飛翔するインク液滴28は、正極偏向電極24と負極偏向電極25を飛び出すと、紙面に対して垂直方向に偏向された軌道に沿って飛翔している。
【0018】
このように、印字に使用する黒丸(●)で示すインク液滴28の偏向方向と印字対象物20が、直交する関係で相対移動させることによってマトリックス状の印字文字を形成している。このため
図13に示すように、インク液滴28の偏向方向と印字対象物20の相対的な移動方向が直交(90°)する関係にある場合は、印字文字に傾きが発生している。
【0019】
従来では、この印字文字の傾きを補正するために、
図14示すように印字ヘッド傾き調整ねじ34を回転中心として印字ヘッド21を回転させて、正極偏向電極24と負極偏向電極25の角度を調整、すなわち印字対象物20、或いは印字ヘッド21の移動方向に対するインク液滴28の偏向方向の角度(Θ=n°)を調整することで、印字文字の傾きを補正している。この補正は、オペレータによって印字ヘッド21を回転させて調整されており、調整後に印字ヘッド21を固定台33に固定されている。
【0020】
この一連の調整作業はオペレータによる手作業であって、オペレータの熟練度や作業感覚に依存するため、誰もが迅速に印字ヘッド21を最適な傾き角度(Θ)に調整することができないという課題があった。
【0021】
ここで、傾き角度の調整が必要な事例を2つ紹介する。1つ目の事例は、印字対象物20の移動速度によって印字文字の傾き角度度(Θ)が変わる事例である。
【0022】
生産工場においては、生産状況(生産量の増減による)によっては印字対象物20を搬送する搬送コンベアの移動速度を変えることがある。例えば、
図15に示すように、移動速度が遅く設定された状態に合わせて、印字ヘッド21を傾き角度(Θ=n°)だけ傾けることで、正立した印字文字が得られるように調整したとする。
【0023】
そして、この印字ヘッド21を傾き角度(Θ=n°)だけ傾けたままの状態で、搬送コンベアの移動速度を速くすると、
図16に示すように印字文字が傾いた状態で印字されてしまうことになる。このようにインクジェット記録装置は、印字対象物20の移動速度によって印字文字の傾き角度(Θ)が異なり、搬送コンベアの移動速度が大きくなるほど印字文字の傾きが大きくなる。このため、従来では搬送コンベアの移動速度が変わるたびに、オペレータによって印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を調整する必要があり、この調整作業に時間が掛かるという問題があった。
【0024】
2つ目の事例は、印字対象物20に代えて印字ヘッド21を移動させて印字するものであり、印字ヘッド21の移動方向が双方向(以下、往復印字という)の事例である。この事例を
図17と
図18を用いて説明をする。この往復印字では、印字対象物20に対して、紙面で印字ヘッド21を左右に往復移動させながら、印字対象物20である包装フィルムに印字をする事例である。尚、包装フィルムもローラ36に巻き取られて紙面で上方向に移動される。
【0025】
この往復印字の動作順序としては、まず、印字対象物20が停止された状態において、印字ヘッド21を紙面で見て右方向Rの方向に移動させ印字対象物20に左側から「印字A」の印字を行う。次に、印字対象物20をローラ36で巻き取って上方向Uの方向に移動させ、印字対象物20が停止した後に印字ヘッド21を反対の方向である左方向Lの方向に移動させ、右側から「印字B」の印字を行う。このような一連の動作を繰返しすることで往復印字をする。
【0026】
図17に示すように、印字ヘッド21を傾き角度(Θ=n°)に傾けた状態で「印字A」を正立した状態で印字することはできるが、印字ヘッド21の移動方向が左方向Lに切り替わると、
図18に示すように、印字ヘッド21が傾き角度(Θ=n°)に傾けた状態では「印字B」を正立した状態で印字することができない。
【0027】
図19は、印字ヘッド21を
図13に示す状態に設定しておいて、印字ヘッド21を右方向に所定速度で移動させた場合を示しており、印字文字は右側に傾いた状態となり、一方、
図20は印字ヘッド21を左方向に所定速度で移動させた場合を示しており、印字文字は左側に傾いた状態となる。
【0028】
このようにインクジェット記録装置は、印字ヘッド21の移動方向によっても文字の傾き角度が異なるようになる。往復印字を行う場合は、例えば、1分間のうちに印字ヘッド21を何十回も往復移動させながら印字を行うため、オペレータが印字ヘッド21の移動方向に応じて印字ヘッド21の傾き角度を手動で調整することは現実的に不可能であり、往復印字を行う場合においては、双方向の移動ともに正立した文字を印字できないという問題があった。
【実施形態1】
【0029】
本実施形態は、上述した課題の1つ以上を解決することを目的とし、帯電されていないインク液滴が飛翔する方向と同じ方向を軸とする所定の定められた回転中心で、サーボモータによって印字ヘッドが回転可能に支持されていると共に、印字対象物の移動速度、或いは印字ヘッドの移動方向に対応して印字文字が正立するように、サーボモータによって印字ヘッドを回転中心の回りで回転させる構成を提案するものである。この構成によれば、迅速に印字ヘッドを最適な傾き角度に調整して印字文字を正立させることができる。
【0030】
次に、本実施形態になるインクジェット記録装置の全体構成について説明する。
図1は、インクジェット記録装置の全体構成を示している。印字の処理順序としては、まず、オペレータが入力装置5より印字する内容等の情報を入力すると、MPU1は、ROM3に記憶されているプログラムにより、インク液滴へ帯電させるビデオデータを印字情報に応じて作成し、バスライン13を介してRAM2へ格納する。
【0031】
印字対象物センサ16が、搬送コンベア19によって移動される印字対象物20を検知すると、印字対象物検知回路10を通して、MPU1へ印字開始の指令が送られる。MPU1は、RAM2に記憶しているビデオデータを、バスライン13を介して文字信号発生回路12へ送る。
【0032】
文字信号発生回路12は、送られてきたビデオデータを帯電信号に変換する。印字制御回路11は、バスライン13を介して、この帯電信号を帯電電極23へ送出するタイミングを制御する。ノズル22より噴出されたインクは、帯電電極23内で液滴化して電荷を受け、正極偏向電極24と負極偏向電極25によって形成される電界を飛翔して通過することにより偏向され、印字対象物20へとインク液滴28が飛翔し着滴して印字される。
【0033】
印字に使用されなかったインク、すなわち、電荷を帯びないインク液滴27は、ガター26より回収され回収ポンプ29を介してインク容器31に回収される。更にインク容器31のインクは供給ポンプ30によって再びノズル22へ供給される。
【0034】
そして、本実施形態では、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を制御すべく、印字ヘッド21を所定の傾き角度(Θ)に設定するサーボモータ14と、このサーボモータ14の回転を印字ヘッド21に伝達する減速機構15と、サーボモータ14の動作量(印字ヘッド21の傾き角度)を演算する傾き角度調整回路6とを備えている、また、印字ヘッド21が所定の傾き角度(Θ)まで回転されたことを検出する傾き角センサ(図示せず)が、印字ヘッド21に備えられている。
【0035】
更に、本実施形態では、印字対象物20の移動速度を検出するため、搬送コンベア19の移動速度を検出するエンコーダ18、このエンコーダ18の信号に基づいて、印字対象物20の移動速度を検出する移動速度検知回路7が備えられている。
【0036】
また、印字ヘッド21の移動方向を検出する移動方向検知回路8も備えられている。移動方向は、印字が終了した時点の印字ヘッドの位置を検出する移動方向検出スイッチ(図示せず)の信号を監視しておくことで検出することができる。また、エンコーダ18のA相とB相の信号から移動方向を検出することも可能である。更に、カメラ17、画像検知回路9も備えられている。
【0037】
次に、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を変更する機構的な構成を
図2に基づき説明する。
図2において、固定台33にはサーボモータ14が固定されており、減速機構15の最終的な駆動軸35によって、印字ヘッド固定アダプタ32が駆動軸35を中心にして、矢印で示すように回転可能に取り付けられている。
【0038】
この駆動軸35の回転中心は、印字ヘッド21の外部に位置しており、印字ヘッド21の長手方向、つまり、帯電されていないインク液滴27が飛翔する方向と同じ方向を軸として、印字ヘッド21は回転可能とされている。つまり、帯電されていないインク液滴が飛翔する方向と同じ方向を軸とする所定の定められた回転中心で、印字ヘッドが回転可能に支持され、印字ヘッドを回転中心の回りで回転させるように構成されている。
【0039】
このような構成を備えたインクジェット記録装置において、次に印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を、印字対象物20の移動速度に対応して調整する制御フローについて、
図3に示す制御フローチャートを用いて簡単に説明する。
【0040】
[ステップS10]
ステップS10においては、エンコーダ18、移動速度検知回路7によって搬送コンベア19の移動速度を検出する。搬送コンベア19の移動速度は、印字対象物20の移動速度である。搬送コンベア19の移動速度を検出するとステップS11に移行する。
【0041】
[ステップS11]
ステップS11においては、検出された搬送コンベア19の移動速度から、印字ヘッド21の傾き角度(Θset)を演算する。この演算は、例えば「速度-傾き角度」マップから傾き角度(Θ)を読み出すことができる。具体的には、横軸を印字対象物20の移動速度とし、縦軸を印字ヘッド21の傾き角度(Θset)とする二次元マップを予め求めておき、検出された移動速度に対応した傾き角度(Θset)を読み出せばよい。
【0042】
ただ、以下で説明する演算式(1)を利用して、演算によって傾き角度(Θset)を求めることもできる。傾き角度(Θset)を演算するとステップS12に移行する。
【0043】
[ステップS12]
ステップS12においては、ステップS11で演算された傾き角度(Θset)に対応する電力をサーボモータ14に与えて、減速機構15で印字ヘッド21を回転させて傾き角度(Θ)の調整を行う。基本的には傾き角度(Θset)で十分な制御が実行できるが、更に傾き角度(Θ)の精度を上げるために以下の制御を実行する。印字ヘッド21の傾き角度(Θ)の調整が終了するとステップS13に移行する。
【0044】
[ステップS13]
ステップS13においては、ステップS12で調整された印字ヘッド21の実際の傾き角度(Θact)を検出する。この実際の傾き角度(Θact)は、印字ヘッド21に設けた傾き角センサで検出することができる。実際の傾き角度(Θact)を検出するとステップS14に移行する。
【0045】
[ステップS14]
ステップS14においては、「速度-傾き角度」マップから読み出された傾き角度(Θset)と、傾き角センサで検出された実際の傾き角度(Θact)との偏差(ΔΘ)を演算する。この偏差(ΔΘ)は、ステップS11で設定された傾き角度(Θset)に対して、ステップS12で調整された実際の傾き角度(Θact)が十分な精度で調整されたかどうかを判断するために求められている。偏差(ΔΘ)を演算するとステップS15に移行する。
【0046】
[ステップS15]
ステップS15においては、ステップS14で求められた偏差(ΔΘ)が、所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいか、或いは小さいかを判断している。偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さいと、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されたと見なされる。一方、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいと、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されていないと見なされる。
【0047】
したがって、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さいとステップS17に移行し、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいとステップS16に移行する。
【0048】
[ステップS16]
ステップS16においては、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されていないと見なされているので、マップから読み出された傾き角度(Θset)に所定の傾き角度、ここでは偏差(ΔΘ)を加算、或いは減算して、新たな傾き角度(Θset)を演算し、再びステップS12に戻ることになる。尚、所定の傾き角度は、偏差(ΔΘ)に限られるものではない。
【0049】
そして、ステップS13、S14、S15の制御を繰り返して、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さくなると、ステップS17に移行する。
【0050】
[ステップS17]
ステップS17においては、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されたので、この状態を維持して印字動作を実行することになる。ステップS17に至ると、エンドに抜けて次の起動周期に備えることになる。
【0051】
以上の動作を実行することで、印字文字を正立させることができる。例えば、
図4は、印字対象物20の移動速度が遅い場合を示し、
図5は印字対象物20の移動速度が速い場合を示している。
【0052】
印字対象物20の移動速度が遅い場合には、
図4に示すように印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を傾き角度(Θ=n°)のように小さく設定することで、印字文字を正立させることができる。また、印字対象物20の移動速度が速い場合には、
図5に示すように印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を傾き角度(Θ=m°)のように大きく設定することで、印字文字を正立させることができる。
【0053】
上述した印字文字の傾き角度、つまり印字ヘッド21の傾き角度(Θ)は、以下に示す演算式(1)で求めることができ、上述したステップS11の制御ステップで使用することができる。また、これに基づいて、「速度-傾き角度」マップを予め作成することができる。
Θ=tan
-1(X/Y)=tan
-1(T*V/Y)……(1)
ここで、
図19、
図20に示しているように、「Θ」は印字文字の傾き角度、「X」は基準となる原点(最下位ドット)に対し1スキャンのずれ量、「Y」は印字文字の高さ、「T」は1スキャンでのインク液滴の生成時間、「V」は印字対象物(或いは印字ヘッド)の移動速度である。尚、X=T*Vとなる。
【0054】
このように、演算式(1)には、「X」、「Y」、「T」、「V」の因数が含まれている。「T」は1スキャン分のインク液滴の生成時間であり、この値は印字するフォント、段数と帯電アルゴリズムの条件によって決まる。「V」は印字対象物の移動速度であり、
図1に示すエンコーダ18を用いることで、印字対象物20の移動速度を測定することが可能である。「X」は1スキャンのずれ量であり、「T」と「V」を用いて算出することができる。「Y」は印字文字の高さであり、この値は印字距離と文字高さの設定値によって決まる。
【0055】
そして、
図6に示すような操作画面を設けることで、フォント、段数、帯電アルゴリズム、印字文字高さ、印字距離、移動速度を入力することができる。これらの入力によって、「X」、「Y」、「T」、「V」のパラメータが求められ、演算式(1)に代入することで傾き角度(Θ)を演算することができる。したがって、MPU1がこの傾き角度(Θ)の値を算出し、上述した制御ステップ(S11~S17)を実行すれば傾きのない印字文字の形成が可能となる。
【0056】
また、エンコーダ18が常に搬送コンベア19の移動速度を検出可能であるため、
図3に示すように、エンコーダ18の移動速度を用いて傾き角度(Θ)を算出すれば、移動速度の変化に追従して最適な印字ヘッド21の傾き角度(Θ)に自動調整することが可能となる。
【0057】
また、自動調整が不要な場合は、
図6の操作画面にて印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を手動で設定することも可能である。以上のような構成を採用することにより、印字対象物20の移動速度によって印字文字の傾きが変わるという問題を解決することができる。
【実施形態2】
【0058】
先に述べたように、往復印字における印字ヘッド21の移動方向によって文字の傾きが異なるという現象がある。このため、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を、印字ヘッド21の移動方向に対応して調節することが必要である。この印字ヘッド21の移動方向に対応した印字ヘッドの傾き角度(Θ)を調整する制御フローについて、
図7に示す制御フローチャートを用いて簡単に説明する。
【0059】
[ステップS20]
ステップS20においては、移動方向検出スイッチ、或いはエンコーダ18、移動方向検知回路8によって印字ヘッド21の移動方向が左方向か、或いは右方向かを検出する。印字ヘッド21の移動方向を検出するとステップS21に移行する。
【0060】
[ステップS21]
ステップS21においては、検出された印字ヘッド21の移動方向から印字ヘッド21の傾き角度(Θset)を演算する。この演算は、例えば「方向-傾き角度」テーブルから傾き角度(Θ)を読み出すことができる。具体的には、右方向における傾き角度(Θset)と、左方向における傾き角度(Θset)を予め求めておき、検出された移動方向に対応した傾き角度(Θset)を読み出せばよい。
【0061】
また、印字ヘッド21の移動速度も考慮することもでき、印字ヘッド21の移動方向と移動速度(実施形態1と同様の手法)の両方から、傾き角度(Θset)を求めても良い。傾き角度(Θset)を演算するとステップS22に移行する。
【0062】
[ステップS22]
ステップS22においては、ステップS21で演算された傾き角度(Θset)に対応する電力をサーボモータ14に与えて、減速機構15で印字ヘッド21を回転させて傾き角度(Θ)の調整を行う。基本的には傾き角度(Θset)で十分な制御が実行できるが、更に傾き角度(Θ)の精度を上げるために、実施形態1と同様の制御を実行する。印字ヘッド21の傾き角度(Θ)の調整が終了するとステップS23に移行する。
【0063】
[ステップS23]
ステップS23においては、ステップS22で調整された印字ヘッド21の実際の傾き角度(Θact)を検出する。この実際の傾き角度(Θact)は、印字ヘッド21に設けた傾き角センサで検出することができる。実際の傾き角度(Θact)を検出するとステップS24に移行する。
【0064】
[ステップS24]
ステップS24においては、「方向-傾き角度」マップから読み出された傾き角度(Θset)と、傾き角センサで検出された実際の傾き角度(Θact)との偏差(ΔΘ)を演算する。この偏差(ΔΘ)は、ステップS21で設定された傾き角度(Θset)に対して、ステップS22で調整された実際の傾き角度(Θact)が十分な精度で調整されたかどうかを判断するために求められている。偏差(ΔΘ)を演算するとステップS25に移行する。
【0065】
[ステップS25]
ステップS25においては、ステップS24で求められた偏差(ΔΘ)が、所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいか、或いは小さいかを判断している。偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さいと、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されたと見なされる。一方、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいと、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されていないと見なされる。
【0066】
したがって、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さいとステップS27に移行し、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいとステップS26に移行する。
【0067】
[ステップS26]
ステップS26においては、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されていないと見なされているので、マップから読み出された傾き角度(Θset)に所定の傾き角度、ここでは偏差(ΔΘ)を加算、或いは減算して、新たな傾き角度(Θset)を演算し、再びステップS22に戻ることになる。所定の傾き角度は、偏差(ΔΘ)に限られるものではない。
【0068】
そして、ステップS23、S24、S25の制御を繰り返して、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さくなると、ステップS27に移行する。
【0069】
[ステップS27]
ステップS27においては、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されたので、この状態を維持して印字動作を実行することになる。ステップS27に至ると、エンドに抜けて次の起動周期に備えることになる。
【0070】
以上の動作を実行することで、印字文字を正立させることができる。例えば、
図8は、印字ヘッド21の移動方向が右方向の場合を示し、
図9は印字ヘッド21の移動方向が左方向の場合を示している。
【0071】
印字ヘッド21の移動方向が右方向の場合には、
図8に示すように印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を左側に向けて傾き角度(Θ=n°)のように設定することで印字文字を正立させることができる。また、印字ヘッド21の移動方向が左方向の場合には、
図9に示すように印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を右側に向けて傾き角度(Θ=n°)のように設定することで印字文字を正立させることができる。このように、印字ヘッド21の移動方向に対して反対の側に傾けることによって、印字文字を正立させることができる。
【0072】
また、
図6の操作画面において、往復印字における移動方向に対応して印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を手動で設定することも可能である。これによって、印字ヘッド21の移動方向によって印字文字の傾きが変わるという問題を解決することができる。
【実施形態3】
【0073】
実施形態1、実施形態2においては、印字対象物20の移動速度や印字ヘッド21の移動方向を検出して印字ヘッドの傾き角度(Θ)を調整していたが、本実施形態では、印字対象物の移動速度、或いは印字ヘッドの移動方向に基づく印字文字の実際の傾きを画像解析で求め、印字文字の傾きをなくすように印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を調整するものである。
【0074】
次に、印字文字の傾きを画像解析することで印字ヘッドの傾き角度(Θ)を調整する制御フローについて、
図10を用いて簡単に説明する。
【0075】
[ステップS30]
ステップS30においては、カメラ17、画像検知回路9によって印字文字の画像が撮像される。この印字文字の画像はインク液滴の組み合わせからなっているので、それぞれ座標を有することになる。もちろん、1つのインク液滴の画像は複数の画素の組み合わせであるが、これらを丸めて1つのドットとして定義する。したがって、印字文字は、座標を備える複数のドットの組み合わせとなる。印字文字の画像が撮像されると、ステップS31に移行する。
【0076】
[ステップS31]
ステップS31においては、撮像された印字文字(以下、撮像印字文字という)と、正立した基準印字文字とから、撮像印字文字の傾きを演算する。この場合、撮像印字文字と基準印字文字は、同じ文字が使用される。印字文字は予め設定されているので、これに合わせて、基準印字文字をROM等の記憶手段から読み出し撮像印字文字と比較することで傾きを求めることができる。
【0077】
具体的には、撮像印字文字を形成する各ドットの座標と、基準印字文字を形成する各ドットの座標とから、撮像印字文字の傾きを求めることができる。この撮像印字文字の傾きは、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)に対応している。したがって、本ステップでは、撮像印字文字から印字ヘッド21の傾き角度(Θset)を演算することになる。傾き角度(Θset)を演算するとステップS32に移行する。
【0078】
[ステップS32]
ステップS32においては、ステップS31で演算された傾き角度(Θset)に対応する電力をサーボモータ14に与えて、減速機構15で印字ヘッド21を回転させて傾き角度(Θ)の調整を行う。基本的には傾き角度(Θset)で十分な制御が実行できるが、更に傾き角度(Θ)の精度を上げるために、実施形態1と同様の制御を実行する。印字ヘッド21の傾き角度(Θ)の調整が終了するとステップS33に移行する。
【0079】
[ステップS33]
ステップS33においては、ステップS32で調整された印字ヘッド21の実際の傾き角度(Θact)を検出する。この実際の傾き角度(Θact)は、印字ヘッド21に設けた傾き角センサで検出することができる。実際の傾き角度(Θact)を検出するとステップS34に移行する。
【0080】
[ステップS34]
ステップS34においては、撮像印字文字から求められた傾き角度(Θset)と、傾き角センサで検出された実際の傾き角度(Θact)との偏差(ΔΘ)を演算する。この偏差(ΔΘ)は、ステップS31で設定された傾き角度(Θset)に対して、ステップS32で調整された実際の傾き角度(Θact)が十分な精度で調整されたかどうかを判断するために求められている。偏差(ΔΘ)を演算するとステップS35に移行する。
【0081】
[ステップS35]
ステップS35においては、ステップS34で求められた偏差(ΔΘ)が、所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいか、或いは小さいかを判断している。偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さいと、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されたと見なされる。一方、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいと、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されていないと見なされる。
【0082】
したがって、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さいとステップS37に移行し、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より大きいとステップS36に移行する。
【0083】
[ステップS36]
ステップS36においては、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されていないと見なされているので、マップから読み出された傾き角度(Θset)に所定の傾き角度、ここでは偏差(ΔΘ)を加算、或いは減算して、新たな傾き角度(Θset)を演算し、再びステップS32に戻ることになる。所定の傾き角度は、偏差(ΔΘ)に限られるものではない。
【0084】
そして、ステップS33、S34、S35の制御を繰り返して、偏差(ΔΘ)が所定の許容偏差(ΔΘset)より小さくなると、ステップS37に移行する。
【0085】
[ステップS37]
ステップS37においては、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)が十分な精度をもって調整されたので、この状態を維持して印字動作を実行することになる。ステップS37に至ると、エンドに抜けて次の起動周期に備えることになる。
【0086】
以上のような構成を採用することにより、印字対象物20の移動速度によって印字文字の傾きが変わるという問題を解決することができる。
【0087】
以上に説明した実施形態は、インクジェット記録装置がサーボモータ14の電力を制御することで印字文字の傾きを補正する例であるが、インクジェット記録装置とは別のプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)等の外部制御装置を使用することも可能である。尚、印字ヘッド21の印字機能である帯電電極23、偏向電極24、25の制御は、インクジェット記録装置側で行われる。
【0088】
図11に示すように、外部制御装置37がサーボモータ14を直接的に制御する構成になっており、上述したように印字対象物20の移動速度、印字ヘッド21の移動方向、印字文字の画像情報等を外部制御装置37に入力することで、外部制御装置37が上述した制御フローにしたがって、印字ヘッド21の傾き角度(Θ)を算出し、算出した傾き角度(Θ)をもとにサーボモータ14の動作量を制御すれば、実施形態1から実施形態3と同様に傾きの少ない印字文字を形成することが可能となる。
【0089】
次に、印字ヘッド21の回転中心について説明する。回転中心は、帯電されていないインク液滴が飛翔する方向と同じ方向を軸とするもので、印字ヘッド21をこの回転中心の回りで回転して傾き角度を調整するものである。実施形態1~実施形態3においては、
図2に示すように減速機構15の駆動軸35を回転中心としているが、これに限らず、以下に説明する回転中心を採用することもできる。以下の3つの例は、傾き角度(Θ)を45°に設定した例である。
【0090】
図12(A)は、印字ヘッド21の回転中心が、印字文字の最下位ドットの着滴位置に設定された例である。このように、回転中心を印字文字の最下位ドットの着滴位置にすると、印字ヘッド21の傾き角度を変えても、印字する文字の位置にずれが殆ど生じないようになる。この場合は、
図13にあるような構成を基礎にして、サーボモータ14、減速機構15によって、印字ヘッド21を印字ヘッド固定アダプタ32の内部で回転させることによって、回転中心を印字文字の最下位ドットの着滴位置にすることができる。
【0091】
図12(B)は、印字ヘッド21の回転中心が、インクを噴射するノズルのインク噴出口の位置に設定された例である。このように、回転中心をノズルのインク噴出口の位置にすると、印字する文字の位置に若干のずれが生じる。この場合も、
図13にあるような構成を基礎にして、サーボモータ14、減速機構15によって、印字ヘッド21を印字ヘッド固定アダプタ32の内部で回転させることによって、回転中心をインク噴出口にすることができる。
【0092】
図12(C)は、実施形態1~実施形態3の例であり、印字ヘッド21の回転中心が、印字ヘッド21の外部に設定された例である。このように、回転中心を印字ヘッド21の外部の位置にすると、
図12(B)の例に比べて印字する文字の位置に更にずれが生じる。この場合は、
図2にあるような構成を採用すれば、回転中心を印字ヘッド21の外部にすることができる。
【0093】
以上に印字ヘッド21の回転中心について3つの例を説明したが、これらはインクジェット記録装置の仕様、印字文字の仕様等によって、適切な構成を選択すればよいものである。
【0094】
以上の説明からわかるように本発明においては、帯電されていないインク液滴が飛翔する方向と同じ方向を軸とする所定の定められた回転中心で、サーボモータによって印字ヘッドが回転可能に支持されていると共に、印字対象物の移動速度、或いは印字ヘッドの移動方向に対応して印字文字が正立するように、サーボモータによって印字ヘッドを回転中心の回りで回転させることを特徴としている。これによれば、迅速に印字ヘッドを最適な傾き角度に調整して、文字を正立した状態で印字することができる。
【0095】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…MPU、2…RAM、3…ROM、4…表示装置、5…入力装置、6…傾き角度制御回路、7…移動速度検知回路、8…移動方向検知回路、9…画像検知回路、10…印字対象物検知回路、11…印字制御回路、12…文字信号発生回路、13…バスライン、14…サーボモータ、15…減速機構、16…印字対象物検知センサ、17…カメラ、18…エンコーダ、19…搬送コンベア、20…印字対象物、21…印字ヘッド、22…ノズル、23…帯電電極、24…正極偏向電極、25…負極偏向電極、26…ガター、27…帯電されないインク液滴、28…帯電されたインク液滴、29…回収ポンプ、30…供給ポンプ、31…インク容器、32…印字ヘッド固定アダプタ、33…固定台、34…印字ヘッド傾き調整ねじ、35…サーボモータの駆動軸、36…ローラ、37…外部制御装置(PLC)。