IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-アクチュエータ 図1
  • 特許-アクチュエータ 図2
  • 特許-アクチュエータ 図3
  • 特許-アクチュエータ 図4
  • 特許-アクチュエータ 図5
  • 特許-アクチュエータ 図6
  • 特許-アクチュエータ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20231227BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
H02K33/16 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020079167
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021171735
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153688(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066688(WO,A1)
【文献】特開2020-054122(JP,A)
【文献】特開2015-135124(JP,A)
【文献】特開2003-145045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および可動体と、
前記支持体および前記可動体に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
磁石およびコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記可動体および前記支持体の一方は、前記可動体および前記支持体の他方の内周側で前記磁石および前記コイルのうちの一方を支持する支軸と、前記支軸を囲む内側環状部と、を備え、
前記可動体および前記支持体のうちの他方は、前記内側環状部と径方向で対向する外側環状部と、前記外側環状部の外周側を囲む筒状のケースと、前記ケースの端部を塞ぐ蓋部材と、を備え、
前記接続体は、前記内側環状部と前記外側環状部との径方向の隙間に配置され、
前記内側環状部、前記外側環状部、および前記接続体は、前記ケースの内部空間を前記支軸の軸線方向に仕切る仕切り部を構成し、
前記仕切り部を前記軸線方向に貫通する空気通路を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記内側環状部は、前記支軸に固定される内枠部材であり、
前記外側環状部は、前記内枠部材を囲む外枠部材と、前記外枠部材を囲む外枠部材固定部を備え、
前記接続体は、前記外枠部材と前記内枠部材とを接続し、
空気通路は、前記外枠部材と前記外枠部材固定部との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記接続体は、前記外枠部材と前記内枠部材との間で成形されたゲル状部材であることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記接続体は、前記可動体の前記軸線方向の一端と前記支持体とを接続する第1接続体、および、前記可動体の前記軸線方向の他端と前記支持体とを接続する第2接続体を備え、
前記内側環状部は、前記第1接続体に接続される第1内側環状部、および、前記第2接続体に接続される第2内側環状部を備え、
前記外側環状部は、前記第1接続体に接続される第1外側環状部、および、前記第2接続体に接続される第2外側環状部を備え、
前記仕切り部は、
前記第1内側環状部、前記第1外側環状部、および前記第1接続体を備えた第1仕切り部と、
前記第2内側環状部、前記第2外側環状部、および前記第2接続体を備えた第2仕切り部と、を備え、
前記空気通路は、前記第1仕切り部に設けられた第1空気通路、および、前記第2仕切り部に設けられた第2空気通路を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1内側環状部は、前記支軸に固定される第1内枠部材であり、
前記第1外側環状部は、前記第1内枠部材を囲む第1外枠部材、および、前記第1外枠部材を囲む第1外枠部材固定部を備え、
前記第1外枠部材固定部は、前記ケースの内周側に配置されるコイルホルダに設けられていることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1空気通路は、前記第1外枠部材と前記第1外枠部材固定部との間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1外枠部材固定部の内周面に前記軸線方向に延びる溝部が設けられ、
前記第1空気通路は、前記溝部と前記第1外枠部材の外周面との隙間であることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記コイルホルダは、前記ケースの内周面に接着されていることを特徴とする請求項5から7の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記蓋部材は、前記ケースの一端を塞ぐ第1蓋部材と、前記ケースの他端を塞ぐ第2蓋部材を備え、
前記ケースと前記第1蓋部材との隙間、および、前記ケースと前記第2蓋部材との隙間は、封止材で封止されることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記ケースは、前記コイルに給電する基板が配置される切欠き部を備え、
前記ケースと前記基板との隙間は、封止材で封止されることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記封止材は、接着剤であることを特徴とする請求項9または10に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記空気通路は、周方向に間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする請求項1から11の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を支持体に対して相対移動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、支持体および可動体と、支持体に対して可動体を振動させる磁気駆動機構を備えるとともに、可動体と支持体とを弾性および粘弾性を備えた接続体によって接続したものがある。特許文献1には、直方体状のカバーの内部に可動体を配置し、可動体をカバーの長手方向に振動させるアクチュエータが開示される。特許文献1のアクチュエータでは、接続体は、シート状ゲルを矩形に切断したゲル状部材である。可動体は、磁石が固定されたヨークを備えており、ゲル状部材は、厚さ方向の一方の面がヨークに接着され、他方の面がカバー部材に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-13086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、筒状のケースの内側に可動体を収容し、可動体を軸線方向に振動させるアクチュエータを提案している。可動体は、ケースの中心において軸線方向に延びるシャフトを備えており、シャフトの軸線方向の両端が円筒状のゲル状部材を介してケースに接続される。ケースの両端は蓋部材によって塞がれている。ケースの側面には、切欠き部が形成されてコイル線を接続する基板が固定される。
【0005】
上記のような構造のアクチュエータでは、可動体を収容するケースと、ケースの両端を塞ぐ蓋部材との隙間、および、基板とケースとの隙間がケースの内外を連通する空気流動口になる。従って、空気流動口からコンタミが侵入するおそれがあり、コンタミが磁気駆動機構およびゲル状部材に付着して悪影響を及ぼすおそれがある。また、可動体が振動するときに発生する動作音が空気流動口からケースの外部に漏れるという問題がある。
【0006】
そこで、ケースと蓋部材との隙間、および、基板とケースとの隙間を接着剤等によって封止することにより、空気流動口ができない構造にすることが考えられる。しかしながら、上記のように、円筒状のゲル状部材によって可動体と支持体とを接続する構造では、ゲル状部材の内周部が可動体に全周で接続され、ゲル状部材の外周部が支持体に全周で接続されるので、空気を通さないゲル状部材により、ケースの内部を軸線方向に仕切る仕切り部が形成される。そのため、ケースの内部の空気流動性が低いので、ケース内外を連通する空気流動口を封止してしまうと、可動体が振動する際に空気抵抗が生じ、空気抵抗の影響によって振動特性がばらつくという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体が振動する際の空気抵抗を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体および可動体と、前記支持体および前記可動体に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、磁石およびコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記可動体および前記支持体の一方は、前記可動体および前記支持
体の他方の内周側で前記磁石および前記コイルのうちの一方を支持する支軸と、前記支軸を囲む内側環状部と、を備え、前記可動体および前記支持体のうちの他方は、前記内側環状部と径方向で対向する外側環状部と、前記外側環状部の外周側を囲む筒状のケースと、前記ケースの端部を塞ぐ蓋部材と、を備え、前記接続体は、前記内側環状部と前記外側環状部との径方向の隙間に配置され、前記内側環状部、前記外側環状部、および前記接続体は、前記ケースの内部空間を前記支軸の軸線方向に仕切る仕切り部を構成し、前記仕切り部を前記軸線方向に貫通する空気通路を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、可動体と支持体の一方が支軸を備え、他方が筒状のケースおよび蓋部材を備えている。可動体と支持体とを接続する接続体は、支軸を囲む内側環状部と、ケースの内周側に配置される外側環状部との隙間に配置されている。このため、ケースの内部空間は、接続体およびその内周部と外周部に接続される内側環状部と外側環状部によって構成される仕切り部が設けられているが、仕切り部は空気通路を備えている。従って、空気通路を通って空気が流動できるので、ケースと蓋部材との隙間を封止した場合でも、可動体が軸線方向に振動する際の空気抵抗を少なくすることができる。よって、空気抵抗による振動特性のばらつきを抑制できる。
【0010】
本発明において、前記内側環状部は、前記支軸に固定される内枠部材であり、前記外側環状部は、前記内枠部材を囲む外枠部材と、前記外枠部材を囲む外枠部材固定部を備え、前記接続体は、前記外枠部材と前記内枠部材とを接続し、空気通路は、前記外枠部材と前記外枠部材固定部との間に設けられていることが好ましい。このようにすると、外枠部材と外枠部材固定部とを組み立てることによって両部品の間に空気通路を形成できるので、部品単体には空気通路となる貫通部を形成する必要がない。従って、部品形状を単純化できる。
【0011】
本発明において、前記接続体は、前記外枠部材と前記内枠部材との間で成形されたゲル状部材である。このように、外枠部材と内枠部材との間に直接ゲル状部材を成形して部品化することにより、アクチュエータを組み立てる際のゲル状部材の取り扱いが容易である。従って、アクチュエータの製造を容易化できる。
【0012】
本発明において、前記接続体は、前記可動体の前記軸線方向の一端と前記支持体とを接続する第1接続体、および、前記可動体の前記軸線方向の他端と前記支持体とを接続する第2接続体を備え、前記内側環状部は、前記第1接続体に接続される第1内側環状部、および、前記第2接続体に接続される第2内側環状部を備え、前記外側環状部は、前記第1接続体に接続される第1外側環状部、および、前記第2接続体に接続される第2外側環状部を備え、前記仕切り部は、前記第1内側環状部、前記第1外側環状部、および前記第1接続体を備えた第1仕切り部と、前記第2内側環状部、前記第2外側環状部、および前記第2接続体を備えた第2仕切り部と、を備え、前記空気通路は、前記第1仕切り部に設けられた第1空気通路、および、前記第2仕切り部に設けられた第2空気通路を備える。このような構成では、可動体の両端を接続体によって支持できるので、可動体を安定して支持できる。また、仕切り部が2か所に形成されるが、いずれの仕切り部にも空気通路が設けられている。従って、可動体が軸線方向に振動する際の空気抵抗を少なくすることができる。
【0013】
本発明において、前記第1内側環状部は、前記支軸に固定される第1内枠部材であり、前記第1外側環状部は、前記第1内枠部材を囲む第1外枠部材、および、前記第1外枠部材を囲む第1外枠部材固定部を備え、前記第1外枠部材固定部は、前記ケースの内周側に配置されるコイルホルダに設けられている。このようにすると、コイルホルダを利用して接続体を支持できるので、コイルホルダとは別の部位に第1外枠部材固定部を設ける必要がない。従って、アクチュエータの構成を簡素化できる。また、コイルホルダの内周側に
接続体を配置できるので、アクチュエータの軸線方向の小型化を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記第1空気通路は、前記第1外枠部材と前記第1外枠部材固定部との間に設けられていることが好ましい。このようにすると、第1外枠部材と第1外枠部材固定部とを組み立てることによって両部品の間に空気通路を形成できるので、部品単体には空気通路となる貫通部を形成する必要がない。従って、部品形状を単純化できる。
【0015】
例えば、前記第1外枠部材固定部の内周面に前記軸線方向に延びる溝部が設けられ、前記第1空気通路は、前記溝部と前記第1外枠部材の外周面との隙間である。従って、第1外枠部材固定部を備えたコイルホルダなどの部品を樹脂で製造する際、空気通路となる溝部を第1外枠部材が固定される面に成形しておけばよく、第1外枠部材と第1外枠部材固定部とを組み立てることによって両部品の間に空気通路を形成することができる。
【0016】
本発明において、前記コイルホルダは、前記ケースの内周面に接着されている。このように、ケースとコイルホルダとの隙間が接着剤によって封止された場合でも、本発明では、他の部位に空気通路が確保されている。従って、可動体が軸線方向に振動する際の空気抵抗を少なくすることができる。
【0017】
本発明において、前記蓋部材は、前記ケースの一端を塞ぐ第1蓋部材と、前記ケースの他端を塞ぐ第2蓋部材を備え、前記ケースと前記第1蓋部材との隙間、および、前記ケースと前記第2蓋部材との隙間は、封止材で封止されることが好ましい。このようにすると、コンタミの侵入を抑制できる。また、ケースの外部に漏れる動作音を小さくすることができる。
【0018】
本発明において、前記ケースは、前記コイルに給電する基板が配置される切欠き部を備え、前記ケースと前記基板との隙間は、封止材で封止されることが好ましい。このようにすると、給電用の配線を引き出した隙間からのコンタミの侵入を抑制できる。また、ケースの外部に漏れる動作音を小さくすることができる。
【0019】
本発明において、前記封止材は、接着剤であることが好ましい。このようにすると、部品同士を固定する接着剤を利用して隙間を封止できるので、隙間を封止しやすい。また、別途封止材を取り付ける工程を行う必要がない。
【0020】
本発明において、前記空気通路は、周方向に間隔を空けて複数設けられていることが好ましい。このようにすると、空気を均等に流動させることができる。また、空気の流動量が増大するので、空気抵抗をより少なくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、可動体と支持体の一方が支軸を備え、他方が筒状のケースおよび蓋部材を備えている。ケースの内部空間は、可動体と支持体とを接続する接続体およびその内周部と外周部に接続される内側環状部と外側環状部によって構成される仕切り部が設けられているが、仕切り部は空気通路を備えている。従って、空気通路を通って空気が流動できるので、ケースと蓋部材との隙間を封止した場合でも、可動体が軸線方向に振動する際の空気抵抗を少なくすることができる。よって、空気抵抗による振動特性のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1に示すアクチュエータの断面図(図1のA-A断面図)である。
図4図1に示すアクチュエータを図3と直交する方向で切断した断面図(図1のB-B断面図)である。
図5】第1蓋部材を取り外したアクチュエータを軸線方向の一方側から見た平面図である。
図6】第2蓋部材を取り外したアクチュエータを軸線方向の他方側から見た平面図である。
図7】第1仕切り部を構成する部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、可動体3の中心軸線が延在する方向を軸線L方向とし、軸線L方向の一方側をL1とし、軸線L方向の他方側をL2とする。本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3が支持体2に対して軸線L方向に振動する。
【0024】
以下に説明する実施形態では、可動体3は、支持体2の内周側に配置されるが、本発明では、可動体3が支持体2の外周側に配置される態様を採用してもよい。また、以下に説明する実施形態では、可動体3は、軸線L方向の一方側L1、および他方側L2の2箇所において、接続体10によって支持体2と接続されるが、本発明では、接続体10が1箇所もしくは3箇所以上に配置される態様を採用してもよい。また、以下に説明する実施形態では、可動体3を支持体2に対して振動させる磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えているが、本発明では、磁石61とコイル62の配置を逆にした構成を採用してもよい。すなわち、磁気駆動機構6は、可動体3に配置されるコイル62と、支持体2に配置される磁石61とを備えている態様であってもよい。
【0025】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図3図4は、図1に示すアクチュエータ1の断面図である。図3は、図1のA-A位置で切断した断面図である。図4は、図1のB-B位置で切断した断面図であり、図3と直交する方向で切断した断面図である。図5は、第1蓋部材21を取り外したアクチュエータ1を軸線L方向の一方側L1から見た平面図であり、図6は、第2蓋部材22を取り外したアクチュエータ1を軸線L方向の他方側L2から見た平面図である。図7は、第1仕切り部91を構成する部材の分解斜視図である。
【0026】
図1図4に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、支持体2および可動体3に接続された接続体10と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。接続体10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えており、支持体2に対して可動体3を軸線L方向に相対移動させる。図3図4に示すように、可動体3は、軸線L方向の一方側L1の端部、および軸線L方向の他方側L2の端部の各位置において、接続体10を介して支持体2と接続される。
【0027】
(支持体)
図2図4に示すように、支持体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線L方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線L方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内周側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を有する。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。また、支持体2は、コイルホルダ4の内周側に嵌まる第1外枠部材51と、第1外枠部材51に対して軸線L方向の他方側
L2に離間した位置でケース20の内周側に嵌まる第2外枠部材52を有する。第1外枠部材51と第2外枠部材52とは同一形状であり、軸線L方向で逆向きに配置される。
【0028】
(接続体)
接続体10は、第1外枠部材51の内周面に接合された環状の第1接続体11と、第2外枠部材52の内周面に接合された環状の第2接続体12を備える。可動体3の軸線L方向の一端側に第1接続体11が配置され、可動体3の軸線L方向の一端側に第2接続体12が配置される。後述するように、第1接続体11および第2接続体12はゲル材料を成形したゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1外枠部材51および第2外枠部材52に接合される。本形態では、第1外枠部材51をコイルホルダ4に圧入して固定することにより、第1接続体11が支持体2に接続される。また、第2外枠部材52をケース20に圧入して固定することにより、第2接続体12が支持体2に接続される。
【0029】
(コイルホルダ)
図2に示すように、コイルホルダ4は、環状の第1外枠部材固定部41と、第1外枠部材固定部41から軸線L方向の他方側L2へ突出する胴部42とを備えており、胴部42の周りにコイル62が配置される。コイル62から引き出されたコイル線63の端部は、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41から径方向外側へ突出する2本の端子ピン64に絡げられている。図1に示すように、端子ピン64はケース20の外部へ突出しており、配線基板7に接続される。
【0030】
図4に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材51を軸線L方向に位置決めする第1段部44を備える。第1外枠部材固定部41は第1外枠部材51の外周側を囲んでいる。第1外枠部材固定部41の内周面には、軸線L方向の他方側L2に凹む第1凹部43が設けられ、第1外枠部材51は、第1凹部43に圧入される。第1段部44は、第1凹部43の軸線L方向の他方側L2の端部に設けられている。本形態では、第1外枠部材51の外周面に形成された環状段部511が第1段部44に対して軸線L方向に当接する。
【0031】
(ケース)
ケース20は、円筒状のケース本体24と、ケース本体24の内周側に配置される第2外枠部材固定部25を備える。図2に示すように、第2外枠部材固定部25は、ケース本体24の内周面から内周側に突出しており、ケース本体24と一体に成形される。図3図4に示すように、第2外枠部材固定部25は、コイルホルダ4に対して軸線L方向の他方側L2に離間した位置に配置される。
【0032】
ケース20は、第2外枠部材52を軸線L方向に位置決めする第2段部45を備える。図3図4に示すように、第2外枠部材固定部25の内周面には、軸線L方向の一方側L1に凹む第2凹部46が設けられ、第2外枠部材52は、第2凹部46に圧入される。第2段部45は、第2凹部46の軸線L方向の一方側L1の端部に設けられている。本形態では、第2外枠部材52の外周面に形成された環状段部521が第2段部45に対して軸線L方向に当接する。
【0033】
また、ケース20は、コイルホルダ4を軸線L方向に位置決めする第3段部47を備える。図4に示すように、第3段部47は、ケース本体24の内周面に形成される。図5に示すように、コイルホルダ4が嵌まるケース本体24の内周面には、軸線L方向に延びる複数の溝部29が形成され、各溝部29の軸線L方向の他方側L2の端部に第3段部47が形成されている(図4参照)。一方、図2図4図5に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材固定部41の外周面から突出する複数の凸部49を備える。支持体2を組み立てる際、コイルホルダ4の各凸部49は、ケース本体24の各溝部29に軸線L方
向の一方側L1から嵌め込まれ、第3段部47に対して軸線L方向に当接する。これにより、コイルホルダ4がケース本体24に圧入されて固定されるとともに、コイルホルダ4が軸線L方向に位置決めされる。
【0034】
(蓋部材)
図3図4に示すように、第1蓋部材21は、コイルホルダ4に設けられた第1外枠部材固定部41の軸線L方向の一方側L1からケース本体24に固定されている。また、第2蓋部材22は、第2外枠部材固定部25の軸線L方向の他方側L2からケース本体24に固定されている。図2に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、軸線L方向から見て円形の蓋部26と、蓋部26の外周縁に等間隔で配置された複数の係止部27を備える。本形態では、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3個所の係止部27を備える。係止部27は、蓋部26から外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪部である。
【0035】
係止部27は、径方向に弾性変形して蓋部26と共にケース本体24の内周側に押し込まれる。ケース20は、係止部27がケース20の内側から外れることを規制する規制部28を備える。規制部28は、ケース本体24の端部から内周側に突出する凸部である。図1図2に示すように、規制部28は、ケース本体24の軸線L方向の一方側L1および他方側L2の端部に、それぞれ、3個所ずつ等間隔で配置される。規制部28は、係止部27の先端に対して軸線L方向に当接する。
【0036】
第1蓋部材21は、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と、溶着とを併用してケース20に固定される。接着剤は、硬化後にケース20の一方側L1の端部と第1蓋部材21との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、第1蓋部材21とケース20との隙間は、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0037】
第1蓋部材21は、溶着によってコイルホルダ4に固定され、コイルホルダ4を介してケース20に固定される。図2図4に示すように、第1蓋部材21は、蓋部26から軸線L方向の他方側L2に突出する複数の溶着用凸部210を備える。本形態では、3個所の溶着用凸部210が周方向に等間隔で配置される。一方、図4図5に示すように、コイルホルダ4は、蓋部26と軸線L方向に対向する3個所の溶着用凹部410を備える。第1蓋部材21をケース20に固定する際には、図4に示すように、各溶着用凸部210がコイルホルダの溶着用凹部410に溶着される。
【0038】
第2蓋部材22は、第1蓋部材21と同様に、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と、溶着とを併用してケース20に固定される。接着剤は、硬化後にケース20の他方側L2の端部と第2蓋部材22との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、第2蓋部材22とケース20との隙間は、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0039】
第2蓋部材22は、溶着によってケース20の第2外枠部材固定部25に固定される。図2図4に示すように、第2蓋部材22は、蓋部26から軸線L方向の一方側L1に突出する複数の溶着用凸部220を備える。本形態では、3個所の溶着用凸部220が周方向に等間隔で配置される。一方、図2図4図6に示すように、第2外枠部材固定部25は、蓋部26と軸線L方向に対向する3個所の溶着穴250を備える。第2蓋部材22をケース20に固定する際には、図4に示すように、各溶着用凸部220が第2外枠部材固定部25の溶着穴250に溶着される。
【0040】
図2図5に示すように、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41は、ケース本体2
4に設けられた3個所の規制部28と軸線L方向で重なる部分を内周側に切り欠いた溝部48を備える。従って、コイルホルダ4をケース本体24の内部に挿入する際に、第1外枠部材固定部41と規制部28とが干渉することが回避される。
【0041】
(配線引き出し部)
図1図3に示すように、支持体2は、磁気駆動機構6のコイル62から引き出したコイル線63を絡げた端子ピン64を外部に引き出すための配線引き出し部60を備える。配線引き出し部60は、ケース20の軸線L方向の一方側L1の縁を軸線L方向の他方側L2に切り欠いた切欠き部65と、第1蓋部材21の外周縁の周方向の一部から軸線L方向の他方側L2に延びるカバー66との間に設けられた隙間である。
【0042】
図5に示すように、切欠き部65の内周側には、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41が配置される。本形態では、第1外枠部材固定部41から外周側に延びる2本の端子ピン64が配線引き出し部60に配置される。各端子ピン64の根本には、コイル62から引き出されたコイル線63が絡げられている。
【0043】
図2に示すように、切欠き部65の周方向の両側の縁には、それぞれ、径方向外側に開口する溝部67が形成されている。カバー66は、ケース本体24の外周面と略同一面上に位置する湾曲形状をしており、カバー66の周方向の両側の縁には、径方向内側に突出する係止部68が設けられている。切欠き部65に対して軸線L方向の一方側からカバー66が挿入される際、切欠き部65の周方向の両側の縁に設けられた2本の溝部67にそれぞれカバー66の係止部68が挿入される。これにより、切欠き部65の縁がカバー66によって係止されるので、切欠き部65の幅が拡がってケース20が変形することが抑制される。
【0044】
ケース20は、切欠き部65の他方側L2に形成された基板固定部69を備える。配線引き出し部60には、基板固定部69に固定される配線基板7の端部が配置される。端子ピン64は、配線基板7の縁に設けられた保持溝71に位置決めされ、保持溝71の縁に形成されたランドと電気的に接続される。配線基板7には、コイル62に対する給電用のリード線8が接続される。基板固定部69は、配線基板7に対して周方向に隣接する位置でリード線8を保持するリード線保持部690を備える。
【0045】
基板固定部69は、切欠き部65に配置された配線基板7の縁を係止する爪部691を備える。配線基板7は、爪部691による係止構造と、接着剤による固定とを併用して基板固定部69に固定される。配線基板7を固定する接着剤は、配線基板7とケース20との隙間、および、カバー66の先端と配線基板7との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、配線基板7とケース20との隙間、および、配線基板7と第1蓋部材21との隙間は、接着剤(図示せず)によって完全に封止されている。また、第1蓋部材21をケース20に固定する際、カバー66と切欠き部65との隙間にも接着材が塗布される。従って、カバー66と切欠き部65との隙間も、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0046】
(可動体3)
図2図4に示すように、可動体3は、支持体2の径方向の中心において軸線L方向に延びる支軸30を有する。支軸30には、筒状の第1内枠部材36、および筒状の第2内枠部材37によって、磁石61およびヨーク35が固定される。支軸30は金属製の丸棒である。第1内枠部材36および第2内枠部材37は、金属製の円筒体であり、第1内枠部材36および第2内枠部材37には円形の貫通穴が設けられている。第1内枠部材36および第2内枠部材37は同一形状であり、軸線L方向に逆向きに配置される。
【0047】
図3図4に示すように、第1内枠部材36の内周面には、軸線L方向の他方側L2の端部に径方向内側に突出した環状突部361が形成されている。従って、第1内枠部材36を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部361に圧入される。また、第2内枠部材37の内周面には、軸線L方向の一方側L1の端部に径方向内側に突出した環状突部371が形成されている。従って、第2内枠部材37を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部371に圧入される。
【0048】
磁石61は、支軸30が貫通する軸穴610が設けられており、支軸30の軸線L方向の略中央に固定される。ヨーク35は、磁石61に軸線L方向の一方側L1で重なる第1ヨーク31と、磁石61に軸線L方向の他方側L2で重なる第2ヨーク32を備える。第1ヨーク31は、支軸30が貫通する軸穴310が設けられた円板状であり、磁石61と第1ヨーク31とは外径が等しい。第2ヨーク32は、カップ状の第1磁性部材33と、円板状の第2磁性部材34の2つの部材からなる。第1磁性部材33は、支軸30が貫通する軸穴330が設けられた円形の端板部331と、端板部331の外縁から軸線L方向の一方側L1に延びる円筒部332とを有する。本形態では、第1磁性部材33の端板部331が磁石61の軸線L方向の他方側L2の端面に固定される。第2磁性部材34は、支軸30が貫通する軸穴340を備えており、第1磁性部材33の端板部331に対して磁石61とは反対側から固定される。
【0049】
可動体3は、磁石61およびヨーク35を構成する各部材の軸穴310、610、330、340に支軸30を貫通させた状態で、磁石61およびヨーク35の軸線L方向の両側で第1内枠部材36および第2内枠部材37を支軸30に固定する。その結果、第1内枠部材36が軸線L方向の一方側L1から磁石61およびヨーク35を支持し、第2内枠部材37が軸線L方向の他方側L2から磁石61およびヨーク35を支持する結果、磁石61およびヨーク35は、支軸30に固定される。
【0050】
第2ヨーク32は、第1磁性部材33の円筒部332の内径が、磁石61および第1ヨーク31の外径より大きい。従って、磁石61および第1ヨーク31を円筒部332の底部である円形の端板部331に重ねると、円筒部332は、磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面から径方向外側に離間した位置で磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面に対向する。本形態では、円筒部332と磁石61の外周面との間にコイル62の一部が配置される。また、円筒部332と第1ヨーク31の外周面との間にコイル62の一部が配置される。
【0051】
(接続体の製造方法)
本形態では、第1接続体11および第2接続体12は、ゲル材料を成形したゲル状部材である。第1接続体11を成形するときは、治具によって第1外枠部材51および第1内枠部材36を同軸に位置決めして第1外枠部材51と第1内枠部材36との間に環状の隙間を形成し、この隙間にゲル材料を充填して熱硬化させる。これにより、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1接続体11が第1外枠部材51の内周面、および、第1内枠部材36の外周面に接合される。なお、ゲル材料を充填する前に、第1外枠部材51の内周面、および第1内枠部材36の外周面にプライマー等の接合促進剤を塗布することによって接合強度を高めることができる。第2接続体12についても、同様に、第2外枠部材52と第2内枠部材37との間に環状の隙間を形成し、この隙間にゲル材料を充填して熱硬化させることにより成形される。
【0052】
このように、本形態では、第1接続体11は、成形時に第1外枠部材51および第1内枠部材36が接合されて部品化されている。また、第2接続体12も同様に、成形時に第2外枠部材52および第2内枠部材37が接合されて部品化されている。従って、アクチュエータ1を組み立てる際には、ゲル状部材を接着する工程を行わずに、支持体2と可動
体3とを接続することができる。
【0053】
第1接続体11および第2接続体12は粘弾性部材である。例えば、第1接続体11および第2接続体12として、シリコーンゲル等からなるゲル状部材、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いることができる。本形態では、第1接続体11および第2接続体12は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。
【0054】
(仕切り部)
アクチュエータ1は、円筒状の接続体10を可動体3と支持体2との径方向の隙間に配置して、全周で可動体3と支持体2とを接続する構造である。このため、アクチュエータ1は、ケース20の内部空間が接続体10を含む仕切り部9によって軸線L方向に仕切られている。本形態では、可動体3の軸線L方向の両端を接続体10によって支持体2に接続している。そのため、軸線L方向に離間した2か所に仕切り部9が設けられている。以下、軸線L方向の一方側L1に配置される仕切り部9を第1仕切り部91とし、軸線L方向の他方側L2に配置される仕切り部9を第2仕切り部92とする。第1仕切り部91は、第1接続体11を備える。また、第2仕切り部92は、第2接続体12を備える。
【0055】
ここで、可動体3は、支軸30を囲む内側環状部を備えており、支持体2は、内側環状部と径方向で対向する外側環状部を備える。接続体10は、内側環状部と外側環状部を接続する。本形態では、内側環状部は、支軸30に固定される内枠部材(第1内枠部材36および第2内枠部材37)である。一方、外側環状部は、内枠部材を囲む外枠部材(第1外枠部材51および第2外枠部材52)と、外枠部材が固定される外枠部材固定部(第1外枠部材固定部41および第2外枠部材固定部25)を備える。
【0056】
仕切り部9は、内側環状部、接続体10、および、外側環状部によって構成される。本形態では、第1仕切り部91は、第1内枠部材36(第1内側環状部)、第1接続体11、第1外枠部材51、および第1外枠部材固定部41によって構成される。第1外枠部材51および第1外枠部材固定部41は、第1外側環状部を構成している。第1内枠部材36は支軸30の一方側L1の端部に固定され、第1外枠部材固定部41はケース20の内周面に固定されたコイルホルダ4に設けられている。従って、第1仕切り部91は、ケース20の内部空間を軸線L方向に仕切っている。同様に、第2仕切り部92は、第2内枠部材37(第2内側環状部)、第2接続体12、第2外枠部材52、および第2外枠部材固定部25によって構成される。第2外枠部材52および第2外枠部材固定部25は、第2外側環状部を構成している。第2内枠部材37は支軸30の他方側L2の端部に固定され、第2外枠部材固定部25はケース20と一体に形成されている。従って、第2仕切り部92は、ケース20の内部空間を軸線L方向に仕切っている。
【0057】
(空気通路)
仕切り部9には、アクチュエータ1の内部空間における空気の流動性を高めるための空気通路Pが設けられている。空気通路Pは、仕切り部9を軸線L方向に貫通する貫通部である。空気通路Pは、第1仕切り部91および第2仕切り部92のそれぞれに設けられている。以下、第1仕切り部91に設けられた空気通路Pを第1空気通路P1とし、第2仕切り部92に設けられた空気通路Pを第2空気通路P2とする。
【0058】
図3に示すように、第1空気通路P1は、第1外枠部材51と第1外枠部材固定部41の間に設けられており、第1仕切り部91の一方側L1および他方側L2に連通する。図
7に示すように、第1外枠部材固定部41の内周面には、軸線L方向に延びる溝部93が形成されている。図5に示すように、第1外枠部材固定部41の内周側に第1外枠部材51を圧入すると、第1外枠部材51の外周面と溝部93によって第1空気通路P1が形成される。本形態では、6本の溝部93が周方向に等間隔で設けられているため、第1空気通路P1は、周方向に等間隔で6箇所に設けられている。
【0059】
図3図7に示すように、溝部93の上端は、第1外枠部材固定部41の上端面に開口する。従って、第1空気通路P1は、第1仕切り部91の一方側L1に連通する。一方、図7に示すように、溝部93の下端は、第1外枠部材51を軸線方向に位置決めする第1段部44よりも他方側L2まで延びており、第1外枠部材51の他方側L2の端面よりも他方側L2まで延びている(図3参照)。従って、第1空気通路P1は、第1仕切り部91の他方側L2に連通する。
【0060】
第1仕切り部91の他方側L2には、可動体3を構成する第1ヨーク31および磁石61が配置されている。コイルホルダ4は、第1外枠部材固定部41の他方側L2に設けられた胴部42を備えているが、胴部42の内周面と、第1ヨーク31および磁石61の外周面との間には、空気通路となる隙間S1が設けられている。従って、第1空気通路P1および隙間S1を通って、コイルホルダ4の一方側L1から他方側L2まで空気が流通する。
【0061】
また、胴部42およびコイル62の外周面と、第1磁性部材33の円筒部332との間にも空気通路となる隙間S2があり、円筒部332の外周面とケース本体24の内周面との間には空気通路となる隙間S3がある。従って、コイルホルダ4の他方側L2へ通り抜けた空気は、隙間S2、S3を通って第1磁性部材33および第2磁性部材34の他方側L2へ流通する。
【0062】
次に、第2仕切り部92には、第2外枠部材固定部25を貫通する第2空気通路P2が設けられている。図3図6に示すように、第2外枠部材固定部25には、6箇所の貫通部94が周方向に等間隔で設けられている。各貫通部94は、第2外枠部材固定部25の外周側の部分を軸線L方向に貫通する第2空気通路P2である。従って、第2空気通路P2を通って、第2仕切り部92の一方側L1から他方側L2まで空気が流通する。
【0063】
(アクチュエータの動作)
アクチュエータ1は、コイル62に通電することにより、磁気駆動機構6が、可動体3を軸線L方向に駆動する駆動力を発生させる。コイル62への通電を切ると、可動体3は、接続体10の復帰力によって原点位置へ戻る。従って、コイル62への通電を断続的に行うことにより、可動体3は、軸線L方向で振動する。また、コイル62に印加する交流波形を調整することで、可動体3が軸線L方向の一方側L1に移動する加速度と、可動体3が軸線L方向の他方側L2に移動する加速度を異なるものとすることができる。それ故、アクチュエータ1を触覚デバイスとして取り付けた機器を手にした者は、軸線L方向において方向性を有する振動を体感することができる。また、アクチュエータ1を利用してスピーカを構成することもできる。
【0064】
可動体3が支持体2に対して軸線L方向に振動する際、第1接続体11および第2接続体12は、可動体3の振動に追従してせん断方向に変形する。シリコーンゲル等のゲル状部材は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。ゲル状部材がせん断方向に変形する際は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を持つ。従って、可動体3が支持体2に対して軸線L方向に振動する際、第1接続体11および第2接続体12は、線形性が高い範囲で変形するので、リニアリティが良好な振動特性を得ることができる。
【0065】
なお、可動体3が径方向に移動する場合には、第1接続体11および第2接続体12が潰れる方向に変形する。ここで、ゲル状部材が潰れる方向に変形する場合のバネ定数は、ゲル状部材がせん断方向に変形する場合のバネ定数の3倍程度である。このため、可動体3が振動方向(軸線L方向)とは異なる方向に移動することを抑制でき、可動体3と支持体2との衝突を抑制できる。
【0066】
本形態では、第1接続体11の外周側に第1空気通路P1が設けられ、第2接続体12の外周側に第2空気通路P2が設けられている。従って、ケース20の内部空間の空気流動性が良いので、可動体3が振動する際の空気抵抗が少ない。よって、空気抵抗が振動特性に悪影響を及ぼす恐れが少ない。
【0067】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、支持体2および可動体3と、支持体2および可動体3に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体10と、磁石61およびコイル62を備え、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6と、を有する。可動体3は、支持体2の内周側で磁石61を支持する支軸30と、支軸30を囲む内側環状部(第1内枠部材36、第2内枠部材37)と、を備える。支持体2は、内側環状部(第1内枠部材36、第2内枠部材37)と径方向で対向する外側環状部(第1外枠部材51および第1外枠部材固定部41、第2外枠部材52および第2外枠部材固定部25)と、外側環状部の外周側を囲む筒状のケース20と、ケース20の端部を塞ぐ第1蓋部材21および第2蓋部材22と、を備える。接続体10は、内側環状部と外側環状部との径方向の隙間に配置されている。内側環状部、外側環状部、および接続体10は、ケース20の内部空間を支軸30の軸線L方向に仕切る仕切り部9を構成し、仕切り部9を軸線L方向に貫通する空気通路Pを備える。
【0068】
本形態のアクチュエータ1は、ケース20の端部が第1蓋部材21と第2蓋部材22によって塞がれている。ケース20の内部空間には、接続体10、内側環状部、および外側環状部によって構成される仕切り部9が設けられているが、仕切り部9は空気通路Pを備えている。従って、空気通路Pを通って仕切り部9の一方側L1と他方側L2との間で空気が流動できるので、ケース20の内外を連通させる空気流動口ができないようにした場合でも、可動体3が軸線L方向に振動する際の空気抵抗を少なくすることができる。よって、空気抵抗による振動特性のばらつきを抑制できる。例えば、音漏れ防止やコンタミ侵入防止のために、第1蓋部材21および第2蓋部材22とケース20との隙間を封止した場合でも、空気抵抗による振動特性のばらつきを抑制できる。
【0069】
本形態では、内側環状部は、支軸30に固定される内枠部材(第1内枠部材36、第2内枠部材37)であり、外側環状部は、内枠部材を囲む外枠部材(第1外枠部材51、第2外枠部材52)と、外枠部材を囲む外枠部材固定部(第1外枠部材固定部41、第2外枠部材固定部25)を備える。接続体10は、外枠部材と内枠部材とを接続しており、空気通路Pは、外枠部材と外枠部材固定部との間(第1外枠部材51と第1外枠部材固定部41との間)に設けられている。従って、外枠部材と外枠部材固定部とを組み立てることによって両部品の間に空気通路Pを形成できるので、部品単体には空気通路Pとなる貫通部を形成する必要がない。よって、部品形状を単純化できる。
【0070】
本形態の接続体10は、外枠部材と内枠部材との間で成形されたゲル状部材である。すなわち、第1接続体11は、第1外枠部材51と第1内枠部材36との間に直接成形されており、第2接続体12は、第2外枠部材52と第2内枠部材37との間に直接成形されている。このように、外枠部材と内枠部材との間に直接ゲル状部材を成形して部品化することにより、アクチュエータ1を組み立てる際のゲル状部材の取り扱いが容易である。従
って、アクチュエータ1の製造を容易化できる。
【0071】
本形態では、接続体10を備えた仕切り部9が可動体3の両端に配置されているので、可動体3の両端を接続体10によって支持できる。従って、可動体3を安定して支持できる。すなわち、接続体10は、可動体3の軸線L方向の一端と支持体2とを接続する第1接続体11、および、可動体3の軸線L方向の他端と支持体2とを接続する第2接続体12を備える。内側環状部は、第1接続体11に接続される第1内側環状部(第1内枠部材36)、および、第2接続体12に接続される第2内側環状部(第2内枠部材37)を備える。外側環状部は、第1接続体11に接続される第1外側環状部(第1外枠部材51および第1外枠部材固定部41)、および、第2接続体12に接続される第2外側環状部(第2外枠部材52および第2外枠部材固定部25)を備える。仕切り部9は、第1内側環状部(第1内枠部材36)、第1外側環状部(第1外枠部材51および第1外枠部材固定部41)、および第1接続体11を備えた第1仕切り部91と、第2内側環状部(第2内枠部材37)、第2外側環状部(第2外枠部材52および第2外枠部材固定部25)、および第2接続体12を備えた第2仕切り部92と、を備える。空気通路Pは、第1仕切り部91に設けられた第1空気通路P1、および、第2仕切り部92に設けられた第2空気通路P2を備える。従って、本形態では、2か所の仕切り部9のいずれにも空気通路Pが設けられているので、可動体3が軸線L方向に振動する際の空気抵抗を少なくすることができる。
【0072】
本形態では、第1内側環状部は、支軸30に固定される第1内枠部材36である。また、第1外側環状部は、第1内枠部材36を囲む第1外枠部材51、および、第1外枠部材51を囲む第1外枠部材固定部41を備える。第1外枠部材固定部41は、ケース20の内周側に配置されるコイルホルダ4に設けられている。このように、本形態では、コイルホルダ4を介して接続体10を支持体2に接続する。従って、コイルホルダ4とは別に外枠部材固定部を設ける必要がないので、アクチュエータ1の構成を簡素化できる。また、コイルホルダ4の内周側に第1接続体11を配置できるので、アクチュエータの軸線L方向の小型化を図ることができる。
【0073】
本形態では、第1空気通路P1は、第1外枠部材51と第1外枠部材固定部41との間に設けられている。従って、第1外枠部材51と第1外枠部材固定部41とを組み立てることによって両部品の間に空気通路Pを形成できるので、部品単体には空気通路Pとなる貫通部を形成する必要がない。従って、部品形状を単純化できる。
【0074】
本形態では、第1外枠部材固定部41の内周面に軸線L方向に延びる溝部93が設けられ、溝部93と第1外枠部材51の外周面との隙間が第1空気通路P1になっている。従って、第1空気通路P1を設けるためには、第1外枠部材固定部41を備えたコイルホルダ4を樹脂で製造する際、第1空気通路P1となる溝部93を第1外枠部材固定部41の内周面に成形しておけばよく、第1外枠部材51と第1外枠部材固定部41とを組み立てることによって両部品の間に第1空気通路P1を形成することができる。
【0075】
本形態では、コイルホルダ4は、ケース20の内周面に接着されている。このように、ケース20とコイルホルダ4との隙間が接着剤によって封止された場合でも、本形態では、他の部位に空気通路Pが確保されている。従って、可動体3が軸線L方向に振動する際の空気抵抗が少ない。
【0076】
本形態では、ケース20の一端を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の他端を塞ぐ第2第2蓋部材22を備えており、ケース20と第1蓋部材21との隙間、および、ケース20と第2蓋部材22との隙間は接着剤などの封止材によって封止される。従って、ケース20の内外を連通する空気流動口を減少させるもしくは空気流動口をなくすことができる
ので、ケース20の内部へのコンタミの侵入を抑制できる。よって、コンタミが磁気駆動機構6および接続体10に悪影響を及ぼす恐れが少ない。また、ケース20の外部に漏れる動作音を小さくすることができる。
【0077】
本形態では、ケース20は、コイル62に給電する配線基板7が配置される切欠き部65を備え、ケース20と配線基板7との隙間は、接着剤などの封止材によって封止される。従って、給電用の配線を引き出した隙間からのコンタミの侵入を抑制できる。また、ケース20の外部に漏れる動作音を小さくすることができる。
【0078】
本形態では、封止材として接着剤を用いており、部品同士を固定する接着剤を利用して隙間を封止する。よって、隙間を封止しやすい。また、別途封止材を取り付ける工程を行う必要がない。
【0079】
本形態では、第1空気通路P1および第2空気通路P2は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。従って、空気を均等に流動させることができる。また、空気の流動量が増大するので、空気抵抗をより少なくすることができる。
【0080】
(変形例)
上記形態では、第1外枠部材固定部41と第1外枠部材51との間に第1空気通路P1が設けられているが、第1空気通路P1は、第1仕切り部91のどの部位に設けられていてもよい。例えば、第1外枠部材51の内部もしくは第1内枠部材36に貫通部を形成し、貫通部を空気通路としてもよい。あるいは、第1外枠部材固定部41に貫通部を形成し、貫通部を空気通路としてもよい。また、第1内枠部材36と第1接続体11の内周面との間、もしくは、第1外枠部材51と第1接続体11の外周面との間に空気通路を形成してもよい、同様に、第2空気通路P2は、第2仕切り部92のどの部位に設けられていてもよい。
【0081】
上記形態では、複数の第1空気通路P1を周方向に等間隔に設けているが、第1空気通路P1の数およびその配置は、上記形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。同様に、第2空気通路P2の数およびその配置は、上記形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、7…配線基板、8…リード線、9…仕切り部、10…接続体、11…第1接続体、12…第2接続体、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…ケース本体、25…第2外枠部材固定部、26…蓋部、27…係止部、28…規制部、29…溝部、30…支軸、31…第1ヨーク、32…第2ヨーク、33…第1磁性部材、34…第2磁性部材、35…ヨーク、36…第1内枠部材、37…第2内枠部材、41…第1外枠部材固定部、42…胴部、43…第1凹部、44…第1段部、45…第2段部、46…第2凹部、47…第3段部、48…溝部、49…凸部、51…第1外枠部材、52…第2外枠部材、60…配線引き出し部、61…磁石、62…コイル、63…コイル線、64…端子ピン、65…切欠き部、66…カバー、67…溝部、68…係止部、69…基板固定部、71…保持溝、91…第1仕切り部、92…第2仕切り部、93…溝部、94…貫通部、210…溶着用凸部、220…溶着用凸部、250…溶着穴、310、330、340…軸穴、331…端板部、332…円筒部、361…環状突部、371…環状突部、410…溶着用凹部、511、521…環状段部、610…軸穴、690…リード線保持部、691…爪部、L…軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、P…空気通路、P1…第1空気通路、P2…第2空気通路、S1、S2、S3…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7