(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20231227BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20231227BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20231227BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231227BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20231227BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/91 K
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/86 301E
H01L29/44 P
H01L29/44 L
H01L29/48 F
(21)【出願番号】P 2020094936
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】谷平 圭
(72)【発明者】
【氏名】堀 陽一
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0302327(US,A1)
【文献】特開2013-140901(JP,A)
【文献】特開2015-056471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 29/06
H01L 29/41
H01L 29/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に設けられ、前記第1半導体領域に接し、第2導電形である第2半導体領域と、
前記第2半導体領域上に設けられ、前記第2半導体領域に接した複数の第1金属層及び複数の第2金属層と、
前記第1半導体領域と前記第1金属層との間に設けられ、
前記第1半導体領域と前記第2金属層の間には設けられておらず、前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域に接し、前記第1導電形であり、不純物濃度が前記第1半導体領域の不純物濃度よりも高い第3半導体領域と、
前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第1金属層、及び、前記第2金属層に接した第2電極と、
を備え
、
複数の前記第1金属層が第1方向に沿って配列された第1の列が複数構成されており、
複数の前記第2金属層が前記第1方向に沿って配列された第2の列が複数構成されており、
前記第1の列と前記第2の列は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って交互に配列されている半導体装置。
【請求項2】
上方から見て、前記第1金属層の面積は前記第2金属層の面積と等しい請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項3】
上方から見て、前記第1金属層の面積は前記第2金属層の面積よりも小さい請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の前記第1金属層は、前記第2方向に沿って周期的に配列されており、
複数の前記第2金属層は、前記第2方向に沿って周期的に配列されている請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1金属層及び前記第2金属層は、前記第1方向及び前記第2方向と交差した第3方向に沿って交互に配列されている請求項
1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2半導体領域は、前記第2方向に延びる複数の線状部分を有する請求項
1~
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
上方から見て、前記複数の第1金属層及び前記複数の第2金属層のうち、相互に最も近い3つの中心間を結ぶ三角形は正三角形である請求項1~
6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と半導体を接合したショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD)が知られている。SBDは順方向の電圧降下が少なく、スイッチング速度が高いという利点がある。その反面、一般的な構造のSBDは半導体側に空乏層が広がり、電荷(例えば電子)による電界は金属と半導体の境界面において最も高くなる。そこで、SBDとpn接合ダイオードを混在させたJBS(Junction Barrier Schottky)ダイオードが開発されている。JBSダイオードはpnダイオードを内包することにより、半導体表面よりn-層の一部に埋め込まれたp層とn-層の間に空乏層が広がる。逆バイアスの電圧が高くなると、p層の空乏層同士がパンチスルーし最大電界はp層の直下に移動する。これにより、欠陥などの多い表面の電界が下がり、リーク電流を抑えることが可能となる。また、SBDを構成するn-層の一部にp+層を埋め込んだ構造では、p+層と元々のSBDのn-層によるpn接合ダイオードを内包し、高電流(高サージ電流)が必要となるタイミングでオンする。これにより、電流輸送能力が高まり、大電流時の順方向電圧の上昇を抑制し高サージ耐量を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5550589号公報
【文献】特開2015-29046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、サージ耐量の向上が可能である半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に接続された第1導電形の第1半導体領域と、前記第1半導体領域上に設けられ、前記第1半導体領域に接し、第2導電形である第2半導体領域と、前記第2半導体領域上に設けられ、前記第2半導体領域に接した複数の第1金属層及び複数の第2金属層と、第3半導体領域と、第2電極と、を備える。前記第3半導体領域は、前記第1半導体領域と前記第1金属層との間に設けられ、前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域に接し、前記第1導電形であり、不純物濃度が前記第1半導体領域の不純物濃度よりも高い。前記第2電極は、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第1金属層、及び、前記第2金属層に接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図5】第1の比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図6】第2の比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図7】(a)は、横軸に順方向電圧をとり縦軸に順方向電流をとって半導体装置の特性を示すグラフであり、(b)は横軸に逆方向電圧をとり縦軸に逆方向電流をとって半導体装置の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1の実施形態>
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図2は、
図1に示すA-A'線による断面図である。
なお、各図は模式的なものであり、構成要素は適宜、強調、簡略化又は省略されている。また、図間において、構成要素の数及び寸法比は、必ずしも一致していない。後述する他の図についても、同様である。
【0008】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、カソード電極10が設けられている。カソード電極10は、例えばニッケル(Ni)等の金属からなり、半導体装置1の下面全体に配置されている。
【0009】
カソード電極10上には、半導体部分20が設けられている。半導体部分20は、半導体材料からなり、例えば、炭化シリコン(SiC)からなり、例えば、単結晶のSiCからなる。以下に説明するように、半導体部分20の各部には、例えば窒素(N)等のドナーとなる不純物、または、例えばアルミニウム(Al)もしくはボロン(B)等のアクセプタとなる不純物が注入されており、いくつかの半導体領域を形成している。
【0010】
半導体部分20上には、アノード電極30、複数の金属層31、複数の金属層32、絶縁膜40が設けられている。
【0011】
以下、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を採用する。カソード電極10からアノード電極30に向かう方向を「Z方向」とし、Z方向に対して直交する2方向であって、相互に直交する2方向を「X方向」及び「Y方向」とする。また、Z方向のうち、カソード電極10からアノード電極30に向かう方向を「上」ともいい、その反対方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。さらに、以下の説明においては、Z方向と直交し、X方向及びY方向と交差する「W方向」も使用する。
【0012】
図2に示すように、半導体部分20においては、n
+形半導体領域21、n
-形半導体領域22、複数のn形半導体領域23、p形半導体領域26、複数のp
+形半導体領域27、p
-形半導体領域28が設けられている。各半導体領域の平面配置は後述する。
【0013】
n+形半導体領域21は、例えば、導電形がn形のSiC基板である。n+形半導体領域21はカソード電極10に接している。n-形半導体領域22は、n+形半導体領域21上に配置されている。n-形半導体領域22の導電形はn形である。n-形半導体領域22の不純物濃度は、n+形半導体領域21の不純物濃度よりも低く、例えば、2×1016(cm-3)程度である。n-形半導体領域22はn+形半導体領域21を介してカソード電極10に電気的に接続されている。複数のn形半導体領域23は、n-形半導体領域22上の一部に設けられている。n形半導体領域23の導電形はn形であり、その不純物濃度は、n-形半導体領域22の不純物濃度よりも高い。n形半導体領域23の不純物濃度は、例えば、3×1017(cm-3)程度である。
【0014】
p形半導体領域26は、n-形半導体領域22上及びn形半導体領域23上に設けられており、n-形半導体領域22及びn形半導体領域23に接している。p+形半導体領域27はp形半導体領域26上に設けられており、p形半導体領域26と接している。p+形半導体領域27の不純物濃度は、p形半導体領域26の不純物濃度よりも高い。一部のp+形半導体領域27はn形半導体領域23の直上域に設けられており、他のp+形半導体領域27はn形半導体領域23の直上域から離れた位置に設けられている。すなわち、Z方向において、一部のp+形半導体領域27とn-形半導体領域22との間にはn形半導体領域23が設けられ、他のp+形半導体領域27とn-形半導体領域22との間にはn形半導体領域23が設けられていない。p-形半導体領域28はp形半導体領域26の周囲に設けられており、p形半導体領域26に接している。p-形半導体領域28の不純物濃度は、p形半導体領域26の不純物濃度よりも低い。p-形半導体領域28はp+形半導体領域27から離隔している。
【0015】
金属層31は、p+形半導体領域27上であって、n形半導体領域23の直上域に設けられており、p+形半導体領域27に接している。金属層32は、p+形半導体領域27上であって、n形半導体領域23の直上域を除く領域の一部に設けられており、p+形半導体領域27に接している。金属層31及び32は、例えば、ニッケル(Ni)からなる。
【0016】
絶縁膜40は、半導体部分20上であって、半導体装置1の終端部に設けられている。絶縁膜40は、例えば、酸化シリコン(SiO2)からなる。絶縁膜40は、n-形半導体領域22、p形半導体領域26、p-形半導体領域28、及び、アノード電極30に接している。
【0017】
アノード電極30は、半導体部分20上であって、半導体装置1の終端部を除く部分(以下、「セル部」という)に設けられている。半導体装置1の終端部はセル部を囲んでいる。アノード電極30の周辺部は、絶縁膜40の内側部上に乗り上げている。アノード電極30は、例えば、チタン(Ti)からなる。アノード電極30は、n-形半導体領域22、p形半導体領域26、金属層31、金属層32、及び、絶縁膜40に接している。また、上述したp-形層28は、終端部に設けられ、セル部に設けられた各半導体領域の一部を囲んでいる。
【0018】
次に、各半導体領域の平面配置について説明する。
図1は、半導体部分20及び金属層32を示し、金属層31、アノード電極30、絶縁膜40を省略している。また、図を見やすくするために、金属層32にのみハッチングを付している。
【0019】
図1及び
図2に示すように、Z方向から見て、n
+形半導体領域21及びn
-形半導体領域22は、半導体装置1の全体に配置されている。上述の如く、アノード電極30は半導体装置1のセル部に配置されており、絶縁膜40は半導体装置1の終端部に配置されており、Z方向から見て、一部同士が重なっている。
【0020】
金属層31及び金属層32は、半導体装置1のセル部に配置されている。Z方向から見て、各金属層31及び32の形状は、例えば、角部が丸められた正方形又は円形である。但し、金属層31及び32の形状は、これには限定されない。Z方向から見て、各金属層31の面積は各金属層32の面積と等しい。金属層31及び32は、XY平面上に周期的に配列されており、例えば、六方最密状に配列されている。
【0021】
具体的には、複数の金属層31がX方向に沿って周期的に配列された第1の列が複数構成されており、複数の金属層32がX方向に沿って周期的に配列された第2の列が複数構成されている。そして、金属層31により構成された第1の列と、金属層32により構成された第2の列が、Y方向に沿って交互に且つ周期的に配列されている。
【0022】
また、複数の金属層31は、Y方向に沿っても周期的に配列された列を複数構成し、複数の金属層32も、Y方向に沿って周期的に配列された列を複数構成している。そして、金属層31により構成されたY方向に延びる列と、金属層32により構成されたY方向に延びる列は、X方向に沿って交互に且つ周期的に配列されている。
【0023】
更に、金属層31及び金属層32は、W方向に沿って交互に配列されている。W方向は、X方向に対して例えば60°傾斜し、Y方向に対して例えば30°傾斜している。これにより、Z方向から見て、複数の金属層31及び複数の金属層32のうち、相互に最も近い3つの中心間を結ぶ三角形は正三角形となる。
【0024】
言い換えると、Y方向に延びる第1列C1と第2列C2には金属層31のみが周期的に配置され、金属層32は配置されていない。Y方向に延び、且つX方向において第1列C1と第2列C2との間に位置する第3列C3には金属層32のみが周期的に配置され、金属層31は配置されていない。さらに、X方向において隣接する第1列C1の金属層31と、第2列C2の金属層31との間には金属層32は配置されていない。
【0025】
p+形半導体領域27は、金属層31及び32の直下域に配置されており、金属層31又は32に接している。p+形半導体領域27は、金属層31及び32とオーミック接続されている。p+形半導体領域27の形状及び大きさは、金属層31又は32の形状及び大きさと略同じである。
【0026】
p形半導体領域26は、概ね、半導体装置1のセル部に配置されている。p形半導体領域26には、枠状部分26a、複数の線状部分26b、複数の円状部分26cが設けられている。Z方向から見て、枠状部分26aの形状は枠状であり、例えば、角部が丸められた長方形又は正方形である。枠状部分26aはセル部の外縁に沿って配置されている。
【0027】
複数の線状部分26bは、枠状部分26a内に配置されている。各線状部分26bの形状はY方向に延びる直線状であり、その両端部は枠状部分26aに繋がっている。複数の線状部分26bは、X方向に沿って周期的に配列されている。
【0028】
複数の円状部分26cは、枠状部分26a内に配置されている。円状部分26cは複数の線状部分26bと繋がっている。円状部分26cは、p+形半導体領域27の直下域に配置されており、したがって、金属層31及び32の直下域に配置されている。円状部分26cはp+形半導体領域27に接している。Z方向から見て、円状部分26cの形状及び大きさは、p+形半導体領域27と略等しい。
【0029】
n形半導体領域23は、p形半導体領域26の円状部分26cの直下域であって、金属層31の直下域のみに設けられている。n形半導体領域23は、金属層32の直下域には設けられていない。このため、複数のn形半導体領域23は、X方向及びY方向に沿って周期的に配列されている。すなわち、複数のn形半導体領域23はマトリクス状に配列されている。但し、X方向において隣り合うn形半導体領域23間の距離は、Y方向において隣り合うn形半導体領域23間の距離よりも短い。n形半導体領域23は、円状部分26cに接している。
【0030】
p-形半導体領域28は、p形半導体領域26の枠状部分26aの外側に配置されている。p-形半導体領域28の上面は絶縁膜40に接している。但し、p-形半導体領域28は半導体装置1の終端縁までは到達していない。
【0031】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の動作及び効果について説明する。
半導体装置1においては、n-形半導体領域22とアノード電極30によりショットキーバリアダイオード(SBD)が形成される。ショットキーバリアダイオードはスイッチング速度が高く、順方向の電圧降下が少ない。
【0032】
アノード電極30にはp形半導体領域26の線状部分26bが接続されているため、逆電圧が印加されたときに、n-形半導体領域22と線状部分26bとの界面を起点に空乏半導体領域が形成される。このため、線状部分26bが設けられていない場合と比較して、電界が集中する位置を、n-形半導体領域22とアノード電極30との界面よりも下方に変位させることができる。この結果、リーク電流を抑制できる。
【0033】
アノード電極30は、金属層31及び32、並びに、p+形半導体領域27を介して、p形半導体領域26にオーミック接続されている。これにより、p形半導体領域26とn-形半導体領域22の接合部分、及び、p形半導体領域26とn形半導体領域23の接合部分に、pnダイオードが形成される。pnダイオードにより、順方向に大きな電流を流すことができ、電流サージ耐量が向上する。
【0034】
n形半導体領域23の不純物濃度はn-形半導体領域22の不純物濃度よりも高いため、n形半導体領域23とp形半導体領域26の接合部分に形成されるpnダイオードは、n-形半導体領域22とp形半導体領域26の接合部分に形成されるpnダイオードよりも、耐圧が低い。このため、高い逆電圧が印加されたときに、n形半導体領域23とp形半導体領域26の接合部分に形成されたpnダイオードが先にブレークダウンして、電流を流す。これにより、終端部がブレークダウンすることを回避し、終端部のブレークダウンにより半導体装置1が損傷することを回避できる。
【0035】
そして、半導体装置1においては、n形半導体領域23が金属層31の直下域にのみ設けられており、金属層32の直下域には設けられていない。このため、金属層31の直下域に形成されたpnダイオードに電界が集中し、このpnダイオードが先にブレークダウンしやすい。これにより、終端部のブレークダウンをより確実に回避できる。したがって、半導体装置1は電圧サージ耐量が高い。
【0036】
このように、本実施形態によれば、順方向のサージ電圧が印加されたときの電流サージ耐量と、逆方向のサージ電圧が印加されたときの電圧サージ耐量の双方を向上させることができる。この結果、サージ耐量が高い半導体装置1を実現することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図3は、本実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図4は、
図3に示すB-B'線による断面図である。
【0038】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る半導体装置2は、第1の実施形態に係る半導体装置1(
図1及び
図2参照)と比較して、金属層31が小さく、金属層32が大きい。すなわち、半導体装置2においては、Z方向から見て、金属層31の面積は金属層32の面積よりも小さい。一例では、第1の実施形態においては、Z方向から見て、金属層31及び32の直径は共に13μmである。一方、本実施形態においては、金属層31の直径は7μmであり、金属層32の直径は19μmである。
【0039】
また、p+形半導体領域27、p形半導体領域26の円状部分26c、及び、n形半導体領域23は、金属層31の直下域に設けられており、Z方向から見て、p+形半導体領域27、円状部分26c及びn形半導体領域23の形状及び大きさは、金属層31と略等しい。このため、本実施形態に係る半導体装置2は、半導体装置1と比較して、p+形半導体領域27、円状部分26c及びn形半導体領域23も小さい。
【0040】
本実施形態によれば、n形半導体領域23を小さくすることにより、順電圧が印加されたときに、n形半導体領域23とp形半導体領域26により形成されるpnダイオードがより導通しやすくなる。これは、pnダイオードが小型化することにより、電界がより集中するためと推定される。この結果、電流サージ耐量が増加する。また、n形半導体領域23を小さくすることにより、逆電圧が印加されたときに、n形半導体領域23とp形半導体領域26により形成されるpnダイオードがよりブレークダウンしやすくなる。これにより、セル部において円滑にブレークダウンが進行し、終端部のブレークダウンをより確実に回避することができる。この結果、電圧サージ耐量が増加する。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0041】
<第1の比較例>
次に、第1の比較例について説明する。
図5は、本比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
図5に示すように、本比較例に係る半導体装置101は、第1の実施形態に係る半導体装置1(
図1及び
図2参照)と比較して、n形半導体領域23が設けられていない点が異なっている。
【0042】
半導体装置101においては、n形半導体領域23が設けられていないため、pnダイオードは、n-形半導体領域22とp形半導体領域26の接合部分にのみ形成される。このため、逆電圧が印加されたときに、pnダイオードがブレークダウンしにくい。この結果、逆方向のサージ電圧が印加されたときに、セル部で円滑にブレークダウンが起こらず、終端部がブレークダウンする可能性がある。終端部がブレークダウンすると、半導体装置101が損傷を受ける可能性がある。
【0043】
<第2の比較例>
次に、第2の比較例について説明する。
図6は、本比較例に係る半導体装置を示す断面図である。
図6に示すように、本比較例に係る半導体装置102は、第1の実施形態に係る半導体装置1(
図1及び
図2参照)と比較して、n形半導体領域23が金属層31の直下域と金属層32の直下域の双方に設けられている点が異なっている。
【0044】
半導体装置102においては、n形半導体領域23が金属層31の直下域と金属層32の直下域の双方に設けられているため、順方向のサージ電圧が印加されたときに、電界が集中にしにくく、pnダイオードが導通しにくい。このため、サージ電流が終端部を流れ、終端部が損傷を受ける可能性がある。
【0045】
<試験例>
次に、上述の実施形態の効果を示す試験例について説明する。
図7(a)は、横軸に順方向電圧をとり縦軸に順方向電流をとって半導体装置の特性を示すグラフであり、
図7(b)は横軸に逆方向電圧をとり縦軸に逆方向電流をとって半導体装置の特性を示すグラフである。
【0046】
図7(a)に示すように、上述の半導体装置に印加する順方向電圧を増加させていくと、まずショットキーバリアダイオードが導通する。順方向電圧をさらに増加させていくと、pnダイオードが導通し、伝導度が変調する。
【0047】
第1の実施形態に係る半導体装置1において伝導度変調が発生する伝導度変調電圧vf1は、第2の比較例に係る半導体装置102において伝導度変調が発生する伝導度変調電圧vf102よりも低かった。したがって、半導体装置1は半導体装置102よりも電流サージ耐量が高いといえる。また、第2の実施形態に係る半導体装置2において伝導度変調が発生する伝導度変調電圧vf2は、伝導度変調電圧vf1よりも低かった。したがって、半導体装置2は半導体装置1よりも電流サージ耐量が高いといえる。
【0048】
図7(b)に示すように、上述の半導体装置に印加する逆方向電圧を増加させていくと、所定の電圧に到達したときに、ブレークダウンが発生して電流を流す。第1の実施形態に係る半導体装置1のブレークダウン電圧vb1は、第1の比較例に係る半導体装置101のブレークダウン電圧vb101よりも低かった。したがって、半導体装置1は半導体装置101よりも電流サージ耐量が高いといえる。また、第2の実施形態に係る半導体装置2のブレークダウン電圧vb2は、第1の実施形態に係る半導体装置1のブレークダウン電圧vb1よりも低かった。したがって、半導体装置2は半導体装置1よりも電圧サージ耐量が高いといえる。
【0049】
なお、第1及び第2の実施形態においては、金属層31及び32が六方最密状に配列された例を示したが、本発明はこれには限定されない。金属層31及び32は他のパターンにしたがって配列されていてもよい。また、金属層31及び32はランダムに配列されていてもよい。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、サージ耐量が高い半導体装置を実現することができる。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1、2:半導体装置
10:カソード電極
20:半導体部分
21:n+形半導体領域
22:n-形半導体領域
23:n形半導体領域
26:p形半導体領域
26a:枠状部分
26b:線状部分
26c:円状部分
27:p+形半導体領域
28:p-形半導体領域
30:アノード電極
31、32:金属層
40:絶縁膜
101、102:半導体装置
vb1、vb2、vb101:ブレークダウン電圧
vf1、vf2、vf102:伝導度変調電圧