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特許7410801建物ユニットの接合構造及び建物ユニットの接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】建物ユニットの接合構造及び建物ユニットの接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
E04B1/348 N
E04B1/348 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020098937
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191934
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 拓也
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214446(JP,A)
【文献】特開2004-257115(JP,A)
【文献】特開平09-317024(JP,A)
【文献】特開平07-062726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形箱状に形成され、建物の上階部分において水平方向に隣接して配置された2つの建物ユニットと、
前記2つの建物ユニットの対向する側面部にそれぞれ配置され、当該側面部に対して垂直方向に立設する立上り部をそれぞれ備えると共に、当該立上り部同士を締結部材で接合することにより前記2つの建物ユニットを連結する一対の連結部材と、
前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込まれ、一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第1位置決め手段と、を有し、
前記第1位置決め手段は、前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込まれる差込部と、当該差込部の一端から折れ曲がり、前記立上り部に高さ方向の上方から重ねられる重なり部と、前記差込部の先端に形成され、差込方向の先端側に開放されることにより前記締結部材が通されるスリット部と、を有する少なくとも1枚のL型ブラケットで構成されており、
前記第1位置決め手段は、前記立上り部の上面に前記重なり部が重ねられた状態で、前記スリット部が前記締結部材との干渉を避けて配置されるように前記スリット部の深さが設定されている、
建物ユニットの接合構造。
【請求項2】
矩形箱状に形成され、水平方向に隣接して配置された2つの建物ユニットと、
前記2つの建物ユニットの柱の仕口間の対向する側面部にそれぞれ配置され、当該側面部に対して垂直方向に立設する立上り部をそれぞれ備えると共に、当該立上り部同士を締結部材で接合することにより前記2つの建物ユニットを連結する一対の連結部材と、
前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込まれ、一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第1位置決め手段と、を有し、
前記一対の連結部材の各々は、対向する前記側面部の一方に接合される接合部と、前記接合部の一端から対向する前記側面部の他方へ向かって延びる前記立上り部と、高さ方向の上端部及び下端部において、前記接合部と前記立上り部とを水平方向に繋ぐ一対のスチフナ部と、を備えており、
一対の前記連結部材の一方に設けられた前記スチフナ部と、一対の前記連結部材の他方に設けられた前記スチフナ部は、前記立上り部の締結箇所を中心に対称に配置されることにより、前記高さ方向から見て矩形状の領域を補強している
建物ユニットの接合構造。
【請求項3】
前記一対の連結部材には、前記2つの建物ユニットの一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第2位置決め手段が設けられており、
前記第2位置決め手段は、一方の連結部材の前記立上り部から他方の連結部材の立上り部へ突出したガイドピンと、前記他方の連結部材の立上り部に形成され、前記ガイドピンが挿通されるガイドホールによって構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の建物ユニットの接合構造。
【請求項4】
前記一対の連結部材には、前記2つの建物ユニットの一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第3位置決め手段が設けられており、
前記第3位置決め手段は、前記一対の連結部材のうち一方の前記連結部材の前記立上り部の下端部から水平方向に延在し、他方の前記連結部材の前記立上り部を下方側から支持するガイドプレートによって構成されている、
請求項1に記載の建物ユニットの接合構造。
【請求項5】
前記2つの建物ユニットは、基礎上に据え付けられた建物本体の一部を形成する第1建物ユニットと、前記一対の連結部材を介して当該第1建物ユニットに片持ち支持された第2建物ユニットと、で構成されている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の建物ユニットの接合構造。
【請求項6】
請求項1に記載された建物ユニットの接合構造に適用される建物ユニットの施工方法であって、
前記2つの建物ユニットの前記側面部に前記一対の連結部材をそれぞれ接合する連結部材の接合工程と、
前記2つの建物ユニットのうち一方の建物ユニットを他方の建物ユニットを対向する位置に吊り上げた状態にし、前記一対の連結部材の前記立上り部同士を前記締結部材で仮留めする仮留め工程と、
前記立上り部が仮留めされた状態で、前記第1位置決め手段の前記差込部を前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込んで前記締結部材を前記スリット部に通し、
前記第1位置決め手段の前記重なり部を前記立上り部の上面に重ね、
一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの水平方向の位置決めをガイドする水平位置調整工程と、
を備える建物ユニットの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニットの接合構造及び建物ユニットの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物ユニットの側面に張出ユニット(バルコニーユニット)が接合される構造が開示されている。この張出ユニットは、バルコニーの床を形成する床パネルとの対向する側縁に立設した袖壁パネルを備えており、袖壁パネルの上端付近及び下端付近に建物ユニットとの接合部が設けられている。
【0003】
具体的には、袖壁パネルの上端付近には、建物ユニット側に突出した引掛け片が設けられており、張出ユニットは、建物ユニットの高さに吊り上げられた後、引掛け片が建物ユニット上に載置される位置まで移動される。引掛け片が建物ユニット上に載置されると、張出ユニットが建物ユニットに仮固定され、接合位置の位置決めがなされる。その後、当該引掛け片と建物ユニットの上端とを固定し、更に、袖壁パネルの下端付近に設けられた接合手段と建物ユニットの下端とを接合することにより張出ユニットが建物ユニットに接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-074246号公報
【0005】
ところで、建物ユニットの上方側には、他の建物ユニットや屋根パネル等の部材が連結されることにより、上階側の居住空間や建物の屋根が形成される。
【0006】
ここで、上記先行技術では、張出ユニット側から延びる引掛け部が建物ユニット上に載置される構造であるため、張出ユニットの引掛け部と建物ユニットの上方側の部材とが干渉してしまう。従って、干渉を避けようとすると、上記先行技術は建物設計に与える制約が大きい。
【0007】
そこで、建物ユニットの上方側の部材との干渉を避けるために、建物ユニットと張出ユニットにおいて、互いに対向する側面に接合部を設ける構成が考えられるが、側面同士を接合させる場合、吊り上げられた状態の張出ユニットの位置決めが困難になるため、これを容易にするための手段を設けることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、建物設計に与える制約を低減させると共に一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めを容易にする建物ユニットの接合構造及び建物ユニットの接合方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る建物ユニットの接合構造は、矩形箱状に形成され、水平方向に隣接して配置された2つの建物ユニットと、前記2つの建物ユニットの対向する側面部にそれぞれ配置され、当該側面部に対して垂直方向に立設する立上り部をそれぞれ備えると共に、当該立上り部同士を締結部材で接合することにより前記2つの建物ユニットを連結する一対の連結部材と、前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込まれ、一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第1位置決め手段と、を有している。
【0010】
第1の態様に係る建物ユニットの接合構造では、水平方向に隣接して配置された2つの建物ユニットの対向する側面部が一対の連結部材で連結されている。一対の連結部材は、対向する側面部にそれぞれ配置され、各々の側面部に対して垂直方向に立設する立上り部を有している。そして、2つの建物ユニットは、一対の連結部材の立上り部同士を締結部材で接合することにより、連結されている。このように、2つの建物ユニットの側面部同士を連結させるため、一方の建物ユニットが他方の建物ユニットの上方側の部材に干渉することを回避することができ、建物設計に与える制約が低減される。
【0011】
ところで、一対の連結部材の配置は、建物ユニット側の実寸のばらつきなどによって設計上の基準位置から僅かにずれた位置に配置されることがあり、一対の連結部材の立上り部の間に間隙が形成されることがある。
【0012】
ここで、本発明では、一対の連結部材の間に第1位置決め手段を差し込んで、一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの水平方向の位置決めをガイドする。これにより、一方の建物ユニットがクレーン等で吊り上げられ、不安定な状態であっても、立上り部の間に差し込むという簡単な動作で建物ユニットの実寸のばらつきを吸収することができる。これにより、一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの水平方向の位置決めを行う作業が容易になる。
【0013】
第2の態様に係る建物ユニットの接合構造は、第1の態様に記載の構成において、前記第1位置決め手段には、差込方向の先端側に開放されたスリット部が形成されており、前記締結部材が前記スリット部に通されることにより前記締結部材との干渉を避けて前記立上り部の間に差し込み可能に構成されている。
【0014】
第2の態様に係る第1位置決め手段には、締結部材が通されるスリット部が形成されており、締結部材との干渉を避けて立上り部の間に差し込み可能に構成されている。これにより、一対の連結部を材締結部材で仮留めした後に立上り部の間に第1位置決め手段を差し込むことができるため、施工性に優れる。また、第1位置決め部材は、締結部材による締結点の数や、立上り部の寸法が異なる複数種類の連結部材に対しても1種類のサイズで対応できるため、汎用性及び生産性に優れる。
【0015】
第3の態様に係る建物ユニットの接合構造は、第1の態様又は第2の態様に記載の構成において、前記第1位置決め手段は、前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込まれる差込部と、当該差込部の一端から折れ曲がり、前記立上り部の間から露出される重なり部とを有する少なくとも1枚のL型ブラケットで構成されており、前記L型ブラケットは、前記重なり部で位置合わせして前記立上り部の間に複数枚を重ねて挿入可能とされている。
【0016】
第3の態様に係る第1位置決め手段は、立上り部の間に差し込まれる差込部と、立上り部の間から露出された重なり部と、を有する少なくとも1枚のL型ブラケットで構成されている。このL型ブラケットは、重なり部で位置合わせすることにより、立上り部の間に複数枚を重ねて挿入可能に構成されている。これにより、L型ブラケットの枚数を調整することで建物ごとに異なる実寸のばらつきにも容易に対応することができ、汎用性及び生産性に優れる。
【0017】
第4の態様に係る建物ユニットの接合構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記一対の連結部材には、前記2つの建物ユニットの一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第2位置決め手段が設けられており、前記第2位置決め手段は、一方の連結部材の前記立上り部から他方の連結部材の立上り部へ突出したガイドピンと、前記他方の連結部材の立上り部に形成され、前記ガイドピンが挿通されるガイドホールによって構成されている。
【0018】
第4の態様に係る第2位置決め手段は、一方の連結部材から突出したガイドピンを他方の連結部材に形成されたガイドホールに挿通させることにより双方の立上り部の位置を合わせて一対の連結部材を仮留めすることができる。これにより、一対の連結部材の立上り部を締結部材で接合する際の位置決めが容易になる。
【0019】
第5の態様に係る建物ユニットの接合構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記2つの建物ユニットの一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めをガイドする第3位置決め手段が設けられており、前記第3位置決め手段は、前記一対の連結部材のうち一方の前記連結部材の前記立上り部の下端部から水平方向に延在し、他方の前記連結部材の前記立上り部を下方側から支持するガイドプレートによって構成されている。
【0020】
第5の態様に係る第3位置決め手段は、一方の連結部材の立上り部の下端部から水平方向に延在するガイドプレートによって構成されている。他方の連結部材は、ガイドプレートによって立上り部が下方側から支持されることにより一方の連結部材に仮留めされる。また、ガイドプレートに案内されて双方の立上り部の位置合わせが行われる。これにより、一対の連結部材の立上り部を締結部材で接合する際の位置決めが容易になる。
【0021】
第6の態様に係る建物ユニットの接合構造は、第1の態様~第5の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記2つの建物ユニットは、基礎上に据え付けられた建物本体の一部を形成する第1建物ユニットと、前記一対の連結部材を介して当該第1建物ユニットに片持ち支持された第2建物ユニットと、で構成されている。
【0022】
第6の態様に係る建物ユニットの接合構造では、基礎上に据え付けられた建物本体の一部を形成する第1建物ユニットと、第1建物ユニットに片持ち支持された第2建物ユニットとが一対の連結部材を介して連結されている。ところで、第1建物ユニットのように基礎上に据え付けられる建物ユニットは、施工時にクレーン等で吊り上げてから基礎の高さや位置を基準に位置決めを行うことができる。一方、第2建物ユニットのように建物本体側のユニットに片持ち支持されたユニットは、位置決めの基準となる基礎を有しないので建物ユニットの位置決めに高精度の施工技術が要求される。
【0023】
ここで、本発明では、上述した通り、一対の連結部材に対応して設けられた位置決め手段により、クレーンで吊り上げられた状態の建物ユニットの位置決めを用意に行うことができる。これにより、第1建物ユニットに片持ち支持された第2建物ユニットの位置決めが容易になる。
【0024】
第7の態様に係る建物ユニットの接合方法は、第2の態様~第6の態様の何れか1態様に記載された建物ユニットの接合構造に適用される建物ユニットの施工方法であって、前記2つの建物ユニットの前記側面部に前記一対の連結部材をそれぞれ接合する連結部材の接合工程と、前記2つの建物ユニットのうち一方の建物ユニットを他方の建物ユニットを対向する位置に吊り上げた状態にし、前記一対の連結部材の前記立上り部同士を前記締結部材で仮留めする仮留め工程と、前記立上り部が仮留めされた状態で、前記第1位置決め手段を前記一対の連結部材の前記立上り部の間に差し込んで一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの水平方向の位置決めをガイドする水平位置調整工程と、を備えている。
【0025】
第7の態様に係る建物ユニットの接合方法では、上述した通り、一対の連結部を材締結部材で仮留めした後に立上り部の間に第1位置決め手段を差し込むことができるため、施工性に優れる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、第1の態様に係る建物ユニットの接合構造によれば、建物設計に与える制約を低減させると共に一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの位置決めを容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0027】
第2の態様に係る建物ユニットの接合構造によれば、施工性、汎用性、生産性を高めることができるという優れた効果を有する。
【0028】
第3の態様に係る建物ユニットの接合構造によれば、汎用性及び生産性に優れるという優れた効果を有する。
【0029】
第4の態様及び第5の態様に係る建物ユニットの接合構造によれば、一対の連結部材の立上り部を締結部材で接合する際の位置決めが容易になるという優れた効果を有する。
【0030】
第6の態様に係る建物ユニットの接合構造によれば、第1建物ユニットに片持ち支持された第2建物ユニットの位置決めを容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0031】
第7の態様に係る建物ユニットの接合方法によれば、施工性を高めることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態に係る建物ユニットの接合構造が適用された建物の斜視図である。
図2図1に示す建物を側方から見た状態を一部示す部分側面図である。
図3図2の3-3線に沿って切断した断面図である。
図4】第1実施形態に係る一対の連結部材の分解斜視図である。
図5】(A)は、第1実施形態に係る第1位置決め手段が複数のスペーサ部材で構成される状態を拡大して示す拡大平面図であり、(B)は、図5(A)に示すスペーサ部材の拡大側面図である。
図6】第1実施形態に係る建物ユニットの接合方法を説明するための図である。
図7】第2実施形態に係る一対の連結部材の分解斜視図である。
図8】第3実施形態に係る一対の連結部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
以下、図1図6を用いて、第1実施形態に係る建物ユニットの接合構造が適用された建物10について説明する。
【0034】
図1に示されるように、建物10は、ユニット建物とされており、基礎11の上に複数の建物ユニットを据え付けて構成される建物本体12を有している。この建物本体12の上階部分(二階部分)は、下階部分(1階部分)の建物ユニット14の上に組付けられた建物ユニット16で構成されている。また、建物ユニット16には、建物のバルコニーや張出部等を形成するキャンチユニット18が連結されている。キャンチユニット18は、建物ユニット16と水平方向に隣接して配置され、建物ユニット16の側面に片持ち支持されている。なお、本実施形態では、建物ユニット16とキャンチユニット18が、本発明における「2つの建物ユニット」に相当する。また、建物ユニット16が「第1建物ユニット」に相当し、キャンチユニット18が「第2建物ユニット」に相当する。
【0035】
建物ユニット16は、四隅に立設する4本の柱20と、これらの柱20の下端に接合された矩形枠状の床フレーム22と、これらの柱20の上端に接合された矩形枠状の天井フレーム24を備えた直方体状の矩形箱状とされている。
【0036】
床フレーム22及び天井フレーム24は、各々短辺側に対向して配置された2本の大梁(符号省略)の端部と長辺側に対向して配置された2本の大梁(符号省略)の端部とが有底筒状の仕口26を介して接合されている。床フレーム22及び天井フレーム24を構成する大梁は、鉄製のチャンネル鋼で構成されている。各大梁の端部は、仕口26の側面に溶接されることにより接合されている。更に、これらの仕口26は、開放側の端部が角鋼管で構成された4本の柱20の上端及び下端にそれぞれ装着されている。これにより、床フレーム22及び天井フレーム24が、仕口26を介して柱20の上端部及び下端部にそれぞれ接合される。このように、仕口26は、柱20と大梁、後述する連結部材40の接合部として設けられ、閉塞側の端部に溶接されたベースプレート(符号省略)と筒状の側面の内側に溶接された補強用のダイアフラム(不図示)によって剛性が高められている。
【0037】
キャンチユニット18は、直方体状の矩形箱状に構成され、基本的に建物ユニット16と同様の構造とされている。よって、詳細な説明は割愛する。キャンチユニット18は、建物ユニット16と同様に四隅に立設する4本の柱30と、これらの柱30の下端に接合された矩形枠状の床フレーム32と、これらの柱30の上端に接合された矩形枠状の天井フレーム34を備えている。また、床フレーム32及び天井フレーム34が、仕口36を介して柱30の上端部及び下端部にそれぞれ接合されている。
【0038】
図2に示されるように、建物ユニット16とキャンチユニット18は、対向して配置された各々の側面部16Sと側面部18Sとが一対の連結部材40を介して連結されている。一対の連結部材40は、対向して配置された各々の側面部16S、18Sの四隅に対応して4箇所に配置されており、それぞれが、建物ユニット16の仕口26とキャンチユニット18の仕口36とを連結している。
【0039】
図3には、建物ユニット16の床フレーム22の仕口26とキャンチユニット18の床フレーム32の仕口36とを連結する一対の連結部材40の断面が示されている。この図に示されるように、一対の連結部材40は、建物ユニット16側の仕口26の側面に接合された連結部材40Aと、キャンチユニット18側の仕口36の側面に接合された連結部材40Bと、を備えている。また、連結部材40A、40Bは、締結部材としてのボルト46とナット48を用いて締結されている。
【0040】
建物ユニット16側の連結部材40Aは、仕口26の側面に接合される接合部42と、仕口26の側面に対して垂直な方向に延在する立上り部44とを備えている。これらの接合部42及び立上り部44は、大小2枚のL型ブラケット50A、50Bが一組となって構成されている。2枚のL型ブラケット50A、50Bは、それぞれが仕口26の側面に沿って配置されるフランジ部52A、52Bと、フランジ部52A、52Bの幅方向の一端から垂直に折り曲げられたウエブ部54A、54Bによって平面視でL字状に形成されている。フランジ部52A、52Bは、複数のボルト56と複数のウェルドナット58を用いて仕口26に固定されており、連結部材40Aの接合部42を構成している。また、ウエブ部54A、54Bは、重なり合った状態でキャンチユニット18側の仕口36に向かって延在し、連結部材40の立上り部44を構成している。このウエブ部54A、54Bには、締結部材としてのボルト46が挿通する締結孔60が同軸的に設けられている。この締結孔60は、連結部材40Aの高さ方向に沿って上下に2箇所設けられている。
【0041】
大きい方のL型ブラケット50Aと小さい方のL型ブラケット50Bは、高さ方向(建物ユニットの高さ方向)の寸法とウエブ部54A、54Bの幅方向の寸法が同一に設定されている。一方、フランジ部52A、52Bの幅方向の寸法は、小さい方のL型ブラケット50Bの方が大きい方のL型ブラケット50Aよりも短く設定されている。これにより、フランジ部52A、52Bと仕口26との締結点が、仕口26の側面の幅中心線に対して対象に配置されている。
【0042】
また、小さいほうのL型ブラケット50Bには、フランジ部52Bとウエブ部54Bを繋ぐ補強用のスチフナ部62が高さ方向の上端と下端に設けられている。
【0043】
一方、キャンチユニット18側の連結部材40Bは、建物ユニット16側の連結部材40Aに対向して配置され、連結部材40Aに対して上下逆向きに反転した姿勢で配置されている。この連結部材40Bの構造は、連結部材40Aの構造と同一であるため詳細な説明を割愛する。連結部材40Bは、連結部材40Aに対して反転した姿勢で対向して配置されているため、立上り部44が連結部材40Aの立上り部44に対して屋外側に配置される。連結部材40A、40Bの立上り部44は、設計上は、双方の向かい合う面同士が当接し、重なり合う位置を基準位置とされている。しかし、建物ユニット16とキャンチユニット18の実寸のばらつきに起因して、本実施形態のように、一対の連結部材40A、40Bの間に間隙tが生じる場合がある。このように、間隙tとして現れる建物ユニット間の実寸のばらつきを吸収するために、一対の連結部材40A、40Bに、第1位置決め手段M1が設けられている。
【0044】
図3図5に示されるように、第1位置決め手段M1は、一対の連結部材40の立上り部44の間に挿入されるスペーサ部材70で構成されている。スペーサ部材70は長尺状のL型ブラケットで構成されており、差込部72と重なり部74を備えている。差込部72は、建物ユニットの高さ方向に長尺に延び、下端部72Uを差込方向の先端側として一対の立上り部44の間の間隙tに上方側から差し込まれている。差込部72がスペーサとなって間隙tを埋めることにより、建物ユニット16とキャンチユニット18の水平方向(本実施形態では建物ユニットの桁方向)の実寸のばらつきが吸収される。これにより、建物ユニット16とキャンチユニット18の水平方向の位置決めが行われる。また、差込部72には、差込方向の先端側に開放されたスリット部76が形成されており、間隙tに差し込まれた状態では、スリット部76の内側に締結用のボルト46の軸部が配置される(図3参照)このようにして、差込部72は、ボルト46との干渉を回避して間隙tに差し込み可能に構成されている。
【0045】
一方、重なり部74は、差込部72の上端部から直角に折り曲げられて水平方向に延在している。この重なり部74は、差込部72を間隙tに差し込んだ状態で、間隙tの上方側に露出されている。この重なり部74は、差込部72を間隙tに差し込むために上方側から入力される外力を効果的に受ける受け面とされている。また、図5(A)に示されるように、重なり部74は、複数枚のスペーサ部材70を重ねて間隙tに挿入する場合、複数のスペーサ部材70の位置合わせを行うためのガイド面とされている。
【0046】
すなわち、第1位置決め手段M1は、建物10の個体差によって異なる間隙tの幅に対応するために、間隙tに差し込まれるスペーサ部材70の枚数を調整している。この際、スペーサ部材70を誤った方向に差し込んで締結用のボルト46と干渉することを回避するために、各スペーサ部材70の重なり部74を重ねて位置合わせしながら、間隙tに差し込まれる。これにより、複数のスペーサ部材70を重ねても、まとまりがよく、施工性に優れる(図5(B)参照)。
【0047】
上記構成によれば、建物ユニット16へキャンチユニット18を接合する手順は、図6に示すとおりである。すなわち、図6(A)に示されるように、先ず、一対の連結部材40を予め建物ユニット16とキャンチユニット18の対向する側面部16S、18Bに接合する(連結部材の接合工程)。建物ユニット16を建物本体12に据え付けた後、キャンチユニット18をクレーン等で吊り上げて、建物ユニット16の側面部16Bに斜め方向から挑ませる。そして、一対の連結部材40の立上り部44が重なるように、キャンチユニット18の側面部18Sを建物ユニット16の側面部16Sに対向して配置する。
【0048】
次いで、図6(B)に示されるように、一対の連結部材40の立上り部44同士をボルト46とナット48で仮留めする(仮留め工程)。仮留め工程により、作業中のキャンチユニット18の揺動が低減される。
【0049】
仮留め工程が完了した後、図6(C)に示されるように、立上り部44の間の間隙tに第1位置決め手段M1の差込部72を上方側から差し込むことにより、建物ユニット16とキャンチユニット18の水平方向の位置決めを行う(水平位置調整工程)。その後、ボルト46とナット48で一対の連結部材40の立上り部44同士を締結し、キャンチユニット18の建物ユニット16への接合が完了する。
【0050】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0051】
本実施形態では、建物ユニット16とキャンチユニット18の対向する側面部16S、18Sが、一対の連結部材40で連結されている。一対の連結部材40は、側面部16S、18Sにそれぞれ配置され、各々の側面部16S、18Sに対して垂直方向に立設する立上り部44を有している。そして、建物ユニット16とキャンチユニット18は、一対の連結部材40の立上り部44同士をボルト46とナット48で接合することにより連結されている。このように、側面部16S、18S同士を連結させるため、キャンチユニット18が建物ユニット16の上方側の部材と干渉することを回避することができる。その結果、建物設計に与える制約が低減される。
【0052】
また、本実施形態では、一対の連結部材40の間の間隙tに第1位置決め手段M1を構成するスペーサ部材70が差し込まれることにより、簡単な動作で建物ユニット16とキャンチユニット18間の水平方向の実寸のばらつきを吸収することができる。これにより、接合時にクレーン等で吊り上げられるキャンチユニット18のように建物ユニットが不安定に揺動する状態でも、一方の建物ユニットにおける他方の建物ユニットの水平方向の位置決めを行う作業が容易になる。
【0053】
また、本実施形態では、スペーサ部材70の差込部72に設けられたスリット部76により、差込部72とボルト46との干渉を回避しながら、差込部72を間隙tに差し込むことができる。これにより、一対の連結部材40をボルト46とナット48で仮留めした後、立上り部44の間に第1位置決め手段M1を差し込むことができる。その結果、キャンチユニット18の揺動の少ない環境で位置決め行われ、施工性に優れる。また、第1位置決め部材M1は、ボルト46による締結点の数や、立上り部44の他か方向の寸法が異なる複数種類の連結部材に対しても1種類のサイズで対応できるため、汎用性及び生産性に優れる。
【0054】
また、本実施形態の第1位置決め手段では、複数のスペーサ部材70を重なり部で位置合わせすることにより、立上り部44の間の間隙tに重ねて挿入することができる。これにより、スペーサ部材70の枚数を調整することで建物ごとに異なる実寸のばらつきにも容易に対応することができ、汎用性及び生産性に優れる。
【0055】
〔第2実施形態〕
以下、図7を用いて、第2実施形態に係る建物ユニットの接合構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この第2実施形態では、第1実施形態の第1位置決め手段M1に替えて、一対の連結部材40に第2位置決め手段M2が設けられている点に特徴がある。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0056】
第2位置決め手段M2は、一組のガイドピン80とガイドホール82によって構成されている。ガイドピン80は、建物ユニット16の側面部16Sに接合された一方の連結部材40Aの立上り部44に一体に形成されている。このガイドピン80は、連結部材40Aの立上り部44から対向する他方の連結部材40Bの立上り部44に向かって突出した円柱状に形成されており、水平方向を軸方向として配置されている。一方、ガイドホール82は、他方の連結部材40Bを貫通して形成され、上記ガイドピンと同軸的に設けられている。なお、ガイドピン80をキャンチユニット18側の連結部材40Bに設け、ガイドホール82を建物ユニット16側の連結部材40Aに設ける構成としてもよい。
【0057】
(作用・効果)
上記構成の第2位置決め手段M2では、一方の連結部材40Aから突出したガイドピン80を他方の連結部材40Bに形成されたガイドホール82に挿通させることにより双方の立上り部44の高さ方向の位置を合わせて一対の連結部材40を仮留めすることができる。すなわち、一対の連結部材40のみで高さ方向の位置決めが行われる。これにより、一対の連結部材40の立上り部44同士をボルト46で接合する際の位置決めが容易になる。
【0058】
〔第3実施形態〕
以下、図8を用いて、第3実施形態に係る建物ユニットの接合構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。この第3実施形態では、第1実施形態の第1位置決め手段M1に替えて、一対の連結部材40に第3位置決め手段M3が設けられている点に特徴がある。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0059】
第3位置決め手段M3は、キャンチユニット18側の連結部材40Bの下端部に溶接されたガイドプレート90によって構成されている。ガイドプレート90は、建物ユニットの高さ方向を板厚方向とする矩形板状の部材で構成されている。このガイドプレート90は、連結部材40Bを下方側から覆うように配置され、接合部42と立上り部44の下端部に沿ってT字状に溶接されている。そして、ガイドプレート90は、立上り部44の下端部から水平方向に延在し、組付け状態で、他方の連結部材40Aの立上り部44を下方側から支持している。なお、上記ガイドプレート90を、建物ユニット16側の連結部材40Aに設ける構成としてもよい。
【0060】
(作用・効果)
上記構成の第3位置決め手段M3は、施工時に、建物ユニット16側の連結部材40Aが、連結部材40Bに設けられたガイドプレート90によって下方側から支持される。これにより、双方の立上り部44の高さ方向の位置を合わせて一対の連結部材40を仮留めすることができる。これにより、一対の連結部材40の立上り部44をボルト46で接合する際の位置決めが容易になる。
【0061】
また、ガイドプレート90が、連結部材40の接合部42と立上り部44に沿って溶接、されるため、ガイドプレート90と連結部材40との溶接代が充分に確保され、一対の連結部材40(すなわち、建物ユニット16とキャンチユニット18)の仮留めに要求される強度を容易に確保することができる。
【0062】
[補足説明]
上記各実施形態では、建物ユニット16に片持ち支持されるキャンチユニット18を本発明の「第2建物ユニット」として説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の「第2建物ユニット」は、第1建物ユニットと同様に基礎上に据え付けられた建物ユニットでもよい。この場合であっても、基礎の上に載置する際、吊り上げた状態の建物ユニットと連結相手となる建物ユニットとの位置決めを第1位置決め手段M1~第3位置決め手段M3によって容易にすることができる。また、建物の基礎上で水平方向に隣接する建物ユニットを上記各実施形態に係る一対の連結部材40で連結する場合、当該連結部は、建物ユニット間を連結しない部分と比較して、構造上の剛性を高めることができる。このため、任意の位置を一対の連結部材40で連結することにより、建物のレイアウトを変更せずに構造計算上の安全性を高めることができ、建物設計の制約を低減させることができる。
【0063】
また、上記各実施施形態では、各連結部材40が平面視でT字状をなす向きとされたが、本発明はこれに限らない。上記各実施形態における連結部材40の向きを90°回転させて、側面視でT字状をなす向きに配置してもよい。この場合、締結部材としてのボルト46を2つの建物ユニットの上方側から挿入させることができる。この場合、上階の建物ユニットに本発明を適用した場合であっても、上階側の建物ユニットの天井フレームを足場にして上方側から作業を行うことができるため、施工性に優れる。
【0064】
また、上記各実施形態では、建物ユニット16とキャンチユニット18の対向する側面部16S、18Sの四隅の4箇所に一対の連結部材40を配置した。しかし、本発明はこれに限らず、一対の連結部材40は、側面部16S、18Sの連結点の数や位置は、適宜変更することができる。また、一対の連結部材40は、仕口26、36の側面に限らず、柱20、30又は梁における延在方向の任意の位置に接合してもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態では、第1位置決め手段M1のスペーサ部材70の差込部72にスリット部76を設ける構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、スリット部76に替えて、差込部72に締結孔60と同軸的に配置された挿通孔を設け、挿通穴をボルトの軸部が貫通する構成としてもよい。
【0066】
また、本発明は、上記各実施形態に示す各位置決め手段(M1~M3)を適宜組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 建物
16 建物ユニット(第1建物ユニット)
16S 側面部
18 キャンチユニット(第2建物ユニット)
18S 側面部
40 連結部材(40A、40B)
42 接合部
44 立上り部
46 ボルト(締結部材)
48 ナット(締結部材)
72 差込部
76 スリット部
80 ガイドピン
82 ガイドホール
90 ガイドプレート
M1 第1位置決め手段(スペーサ部材70)
M2 第2位置決め手段
M3 第3位置決め手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8