(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】空錠、開閉装置及び荷物棚
(51)【国際特許分類】
E05C 1/16 20060101AFI20231227BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20231227BHJP
E05B 55/00 20060101ALI20231227BHJP
E05B 37/02 20060101ALN20231227BHJP
E05B 65/00 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
E05C1/16 A
B61D37/00 F
E05B55/00
E05B37/02 Z
E05B65/00 D
E05B65/00 T
(21)【出願番号】P 2020100761
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】川中 勝男
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隼
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-38700(JP,U)
【文献】特開平8-60922(JP,A)
【文献】特開平8-291658(JP,A)
【文献】特開平9-256696(JP,A)
【文献】登録実用新案第3219021(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライクに所定方向に向かって係合可能な進出位置と、当該ストライクに係合不可な後退位置との間を往復するラッチと、
前記ラッチを前記進出位置に復帰させるように付勢するばねと、を備える空錠において、
前記ラッチの前記進出位置から前記後退位置への退避時に前記ストライクに前記所定方向に対向する待機位置にあり、当該ストライクとの当該所定方向の当接によって当該待機位置から退避する復帰トリガと、
前記ラッチの前記進出位置から前記後退位置への退避に連動して当該ラッチを前記後退位置に保持するロック位置まで移動し、前記復帰トリガの前記待機位置からの退避に連動して当該ラッチの進出を許すフリー位置まで移動するストッパと、を備えることを特徴とする空錠。
【請求項2】
前記ラッチと前記復帰トリガとを案内するラッチケースと、
前記復帰トリガを前記待機位置へ復帰させるように付勢する第1復帰ばねと、
前記ストッパを前記ロック位置に復帰させるように付勢する第2復帰ばねと、
を備え、
前記第1復帰ばねが、前記ラッチケースと前記復帰トリガとの間に介在しており、
前記第2復帰ばねが、前記ラッチの凹部に収容されており、
前記ストッパが、前記ラッチの凹部から突出した前記ロック位置と、当該凹部に没入した前記フリー位置との間を移動するものであり、
前記ロック位置の前記ストッパが、前記待機位置で前記ラッチケースに抜け止めされた前記復帰トリガと係合することで前記ラッチを前記後退位置に保持し、当該待機位置から退避する当該復帰トリガから当該ラッチの前記凹部に押し込まれることで前記フリー位置に移動する請求項1に記載の空錠。
【請求項3】
開閉操作を受ける開閉体と、請求項1又は2に記載の空錠と、前記ラッチの前記進出位置から前記後退位置への退避に連動して施錠待機状態に切り替わる補助錠と、を備え、
前記空錠と前記補助錠が、前記開閉体に配置されており、前記空錠が、前記ラッチを前記進出位置から前記後退位置に退避させる操作を受ける操作部を有する開閉装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉装置を備える荷物棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空錠、この空錠と補助錠によって開閉体を施錠する開閉装置、及びこの開閉装置を備える荷物棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、荷物棚等の出入口を開閉する扉、シャッター等の開閉体においては、非施錠時に開閉体が勝手に開放することを防ぐため、施錠機能をもたない空錠が利用されている。開閉体の外部には、ドアノブ、レバーハンドル、引手、摘みなどの操作部が配置され、開閉体の内部にラッチ等を収容するラッチケースが配置されている。出入口の枠側には、ラッチに対応するストライクが配置されている。ドアノブ等の操作部を手で把持して又は摘んで回す、引っ張る又は押す操作を行うと、その操作力でラッチがストライクから退避する。そのまま続けて操作部を引っ張る又は押すなどの開放操作をさらに行うと、開閉体を開放することができる。操作部から手を離すと、ラッチケース内のばねの力によって、ラッチは、開閉体の開放方向にストライクと係合可能な進出位置まで復帰し、これに伴い、操作部も復帰する(例えば、特許文献1)。
【0003】
開閉体の施錠を行う場合、空錠に連動する補助錠が併用されている。利便性と防犯性を考慮し、補助錠としては、補助錠を解錠した後、操作部でラッチを退避させると、これに連動して補助錠が自動的に施錠待機状態に切り替わるものがある。
【0004】
特許文献2の錠前は、補助錠としてダイヤル錠を備え、ダイヤル錠を解錠番号に合せた後、操作部である摘みを回してラッチが退避する際、ダイヤル錠がリセットされる。摘みを回した状態のまま開閉体を開放すると、その後、操作部から手を離してもラッチが後退位置に保持される状態となり、再び開閉体を閉止すると、ラッチの保持が解除されてラッチが進出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-196986号公報
【文献】特開2010-281156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の空錠は、ドアノブ、レバーハンドル等のように操作部を把持又は掴んで開閉体を開放させることが前提になっている。このため、操作部でラッチを退避させた後、開閉体を開放させる前に操作部から手を離すことは、通常、起こらないと考えられる。
【0007】
しかしながら、操作部でラッチを退避させた後、開閉体を開放させる前に、うっかり操作部から手を離してしまうと、ラッチがばね力で不意にストライクに進出してしまう問題がある。例えば、操作部が開閉体の開放操作に適した形態でなく、開閉体の一部を掴む手の親指を操作部に掛けてラッチを退避させ、その手で開閉体を開放させる構造の場合、ラッチを退避させた後、その手で開閉体の開放を行う前に開閉体を掴みなそうとして親指が操作部から外れてしまい、ラッチが不意に進出してしまう事態が懸念される。
【0008】
特に、前述のような補助錠と併用する場合、操作部でラッチを退避させると、補助錠が自動的に施錠可能な状態になるので、開閉体の開放前に不意にラッチが進出してしまうと、補助錠がラッチを進出位置に保持する施錠状態になってしまい、再度、補助錠の解錠操作からやり直す手間が生じる問題がある。
【0009】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、ラッチを退避させる操作部を操作しながら開閉体を開放させることが困難な用途の場合でも、操作性に優れた空錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、この発明は、ストライクに所定方向に向かって係合可能な進出位置と、当該ストライクに係合不可な後退位置との間を往復するラッチと、前記ラッチを前記進出位置に復帰させるように付勢するばねと、を備える空錠において、前記ラッチの前記進出位置から前記後退位置への退避時に前記ストライクに前記所定方向に対向する待機位置にあり、当該ストライクとの当該所定方向の当接によって当該待機位置から退避する復帰トリガと、前記ラッチの前記進出位置から前記後退位置への退避に連動して当該ラッチを前記後退位置に保持するロック位置まで移動し、前記復帰トリガの前記待機位置からの退避に連動して当該ラッチの進出を許すフリー位置まで移動するストッパと、を備える構成を採用した。
【0011】
上記構成によれば、ラッチがストライクに係合可能な所定方向と、開閉体の開放方向とを対応させて空錠を開閉体に配置し、操作部でラッチを退避させる開閉装置を構築することができる。そのラッチを退避させる操作を行うと、これを利用した連動でストッパがロック位置に移動してラッチを後退位置に保持するので、その後、開閉体を開放させる前に操作部から手を離しても、ラッチが不意に進出することはない。その後、開閉体を開放させると、復帰トリガがストライクと当接し、その当接を利用した連動でストッパがフリー位置に移動し、ラッチがばねの力で進出可能な状態になる。このため、その後に開閉体を閉止させると、ばねの力でラッチがストライクに進出することができる。
【発明の効果】
【0012】
したがって、この発明は、上記構成の採用により、ラッチを退避させる操作部を操作しながら開閉体を開放させることが困難な用途の場合でも操作性に優れた空錠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、この発明の実施形態に係る空錠のラッチが進出位置にある状態を示す断面図、(b)は、そのラッチが後退位置にある状態を示す断面図
【
図2】この発明の実施形態に係る開閉装置を示す正面図
【
図3】
図2の開閉装置を備える荷物棚の概略を
図2中のIII-III線で示す断面図
【
図6】(a)は、
図2の開閉体の左側面、(b)は、
図2の開閉体の左端部の拡大図
【
図9】(a)は、
図1(a)の状態のときのインナーケースとラッチとストッパの関係を示す斜視図、(b)は、
図1(b)の状態のときのインナーケースとラッチとストッパの関係を示す斜視図
【
図11】
図10の状態からラッチが後退位置まで退避したときの様子を示す断面図
【
図12】
図11の状態から開閉体が更に開放したときを示す断面図
【
図14】
図1(b)の状態で操作部から指を離したときを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一例としての実施形態に係る空錠、開閉装置及び荷物棚を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図2、
図3に示す荷物棚は、天板1と、底板2と、一対の側板3で囲まれた荷物出入口を開閉装置10で開閉可能に構成されている。以下、その荷物出入口が開放している方向を荷物棚の正面とし、その正面から背面に向かって左右となる方向を左右方向という。
図2では、開閉装置10を抜粋してその正面を示している。
【0016】
その開閉装置10は、天板1に固定された揺動支持部11と、揺動支持部11の揺動中心R回りに揺動する左右一対のアーム部12と、これらアーム部12間に亘る開閉体13と、開閉体13を下から受ける受け座14と、開閉体13に配置された空錠20と、開閉体13に配置された補助錠30と、を備える。
【0017】
揺動支持部11の揺動軸(図示省略)は、水平かつ左右方向に向いている。開閉体13は、開閉方向に揺動させる操作を受けるバー部からなる。その開閉方向は、前述の揺動軸を中心として揺動する方向である。開閉体13は、手で掴んで揺動させることが可能な太さの筒体になっている。開放操作は、前述の揺動軸を中心として上昇側に開閉体13を揺動させる操作であり、閉止操作は、逆に下降側に開閉体13を揺動させる操作である。
【0018】
この荷物棚は、鉄道車両、ホテルロビー等にトランクケース置き場として設置することを想定したものである。トランクケースのような大型の荷物の場合、開閉体13を手で握れる太さ程度のバー状の開閉体13を採用しても、天板1と底板2の中間高さに開閉体13があれば、荷物出入口から荷物を底板2に置けなくすることが可能であるので、問題ない。
【0019】
揺動支持部11の取り付け位置及びアーム部12の長さは、前述の開閉操作の際、開閉体13が天板1、底板2及び側板3から食み出すことがないように設定されている。受け座14は、側板3に取り付けられている。
【0020】
空錠20は、
図4に示すように、彫込み形にユニット化されている。空錠20は、
図2、
図3に示す開閉体13の左端部に取り付けられている。
【0021】
図2に示す左側の受け座14は、空錠20に対応のストライクとして機能する。受け座14は、
図5に示すように、左右方向に深さをもった受け口14aと、受け口14aの上縁から上方に延びる摺動面14bと、開閉体13の下降限界を定める座面14cとを有する。受け口14aが二列に並んでいるが、図示例において使用されるのは、正面側の受け口14aであり、他の受け口14aは、左右勝手違い(図示例の場合、開閉体13の右側に空錠20を配置する場合)にも同形の受け座14をストライクとして利用できるようにするためのものである。
【0022】
図1、
図4、
図6に示すように、空錠20は、ラッチケース21と、ラッチ22と、ばね23と、操作部24と、復帰トリガ25と、第1復帰ばね26と、ストッパ27と、第2復帰ばね28と、を備える。
【0023】
ラッチケース21は、アウターケース21aと、アウターケース21aの内側に挿入されたインナーケース21bとを有する。アウターケース21aとインナーケース21bは、それぞれ有底筒状になっている。インナーケース21bは、ラッチ22を進退方向に案内するガイド筒部と、ばね23を受ける筒底部と、第1復帰ばね26の一端を受ける段部21dとを有する。インナーケース21bのガイド筒部と、このガイド筒部に対面するアウターケース21aの筒壁部とが、復帰トリガ25を進退方向に案内するガイド筒部を成している。インナーケース21bのガイド筒部には、復帰トリガ25とストッパ27の移動空間を形成するための切欠き部21cが設けられている。
【0024】
ラッチ22は、ストライクとして機能する受け座14の受け口14aに所定方向に向かって係合可能な進出位置と、受け口14aに係合不可な後退位置との間を直線方向に往復する。所定方向は、開閉体13の開放方向に相当する。ラッチ22の進退方向は、左右方向に相当し、進出方向は左方向、退避方向は、右方向に相当する。
【0025】
ラッチ22は、
図1、
図4に示すように、三角ラッチ形のラッチボルトになっている。ラッチ22は、左右方向に沿って延びる平坦面と、この平坦面の左縁から下方に向かって右方へ後退する斜面とで三角状に形成された先端部を有する。ラッチ22は、その先端部においてラッチケース21から進出方向に突出することになる。また、ラッチ22は、シャフト部22aを有する。シャフト部22aは、ラッチケース21の筒底部を貫通して退避方向に延びている。シャフト部22aに取り付けられた止め輪により、ラッチ22がラッチケース21に対して進出方向に向かって抜け止めされる。シャフト部22aは、操作部24の脚と連結され、
図6に示す補助錠30と連結される。
【0026】
図1に示すばね23は、ラッチ22を進出位置に復帰させるように付勢する。ばね23の付勢力は、ラッチ22が進出位置から退避する程に大きくなる。ばね23は、ラッチ22の右端部と、インナーケース21bの筒底部との間に介在するコイルばねになっている。
【0027】
操作部24は、ラッチ22を進出位置から後退位置に退避させる操作を受けて、ラッチ22に伝達する。操作部24は、開閉体13に対してラッチ22の進退方向と同方向に移動させられるスライダになっている。操作部24は、開閉体13の正面に露出する指掛け部位に指を掛けて、
図1(a)、
図6に示す待受け位置から右方向にスライドさせることができる。なお、復帰トリガ25とストッパ27がない場合は、操作部24から指を離すと、ばね23の弾性反発により、ラッチ22が進出位置に復帰させられ、これと一体に操作部24が左方向に移動させられて待受け位置に戻ってしまうが、後述するように復帰トリガ25とストッパ27を設けることで、操作部から手を離してもラッチ22が進出位置に復帰することを阻止できる。
【0028】
ラッチ22は、
図1、
図7、
図8に示すように、シャフト部22aをラッチ22の内部に左右方向に摺動自在に遊嵌し、また、ストッパ27と第2復帰ばね28をラッチ22に組み込むため、ラッチ本体221とラッチカバー222の二分割構造とされている。ラッチ22は、インナーケース21bの切欠き部21cと対向する位置に凹部22bを有する。凹部22bは、ラッチ22の内部に第2復帰ばね28を収容すると共に、ストッパ27を没入させるためのものである。
【0029】
また、ラッチ22は、
図1、
図7、
図9に示すように、左右方向に延びる溝部22cを有する。溝部22cの溝底面は、凹部22bの開口縁と交差し、かつインナーケース21bの切欠き部21cと対向する。
【0030】
図1、
図10、
図11に示すように、復帰トリガ25は、ラッチ22の進出位置から後退位置への退避時、受け口14aの上縁に所定方向(開閉体13の開放方向)に対向する待機位置と、
図12中に二点鎖線で示すように、受け口14aから脱出した解除位置との間を直線方向に往復する。その直線方向は、左右方向に相当する。
【0031】
図1に示す第1復帰ばね26は、復帰トリガ25を待機位置へ復帰させるように付勢する。第1復帰ばね26は、インナーケース21bの段部21dと、復帰トリガ25の段部25cとの間に介在するコイルばねになっている。第1復帰ばね26の付勢力は、復帰トリガ25が待機位置から退避する程に大きくなる。
【0032】
復帰トリガ25は、ラッチケース21の切欠き部21cに通してラッチ22の溝部22cに挿入される凸部25aを有する(
図13参照)。復帰トリガ25は、待機位置にあるとき、凸部25aにおいて切欠き部21cに係止されることにより、ラッチケース21に対して抜け止めされている。
【0033】
復帰トリガ25は、
図1、
図10、
図11に示す待機位置にあるとき、左方向に凸の山形に形成された先端部においてラッチケース21から突出し、受け座14と上下方向に臨む。復帰トリガ25の山形先端部の上側斜面が受け口14aの上縁に上方に向かって当接すると、その反力から生じる右方向の分力によって復帰トリガ25が待機位置から解除位置まで退避する。
【0034】
ストッパ27は、
図1(b)、
図7、
図8、
図9(b)に示すようにラッチ22の凹部22bから突出したロック位置と、
図1(a)、
図9(a)に示すように凹部22bに没入したフリー位置との間を移動する。ストッパ27は、
図8に示すようにラッチ本体221の凹部22b内に常在する基部と、ロック位置のときに凹部22bから突出する先端部とからなる。ストッパ27の基部は、ロック位置においてラッチカバー222の開口縁に係止されることによって、それ以上、ストッパ27の先端部が凹部22bから突出できないように抜け止めされている。ロック位置のストッパ27は、
図1(b)、
図9(b)に示すように、その先端部においてインナーケース21bの切欠き部21cに突入する。
【0035】
図1に示す第2復帰ばね28は、ストッパ27をロック位置に復帰させるように付勢する。第2復帰ばね28は、ラッチ22の凹部22bの凹底面とストッパ27の基部との間に介在するコイルばねになっている。第2復帰ばね28の付勢力は、ストッパ27が凹部22bに没入する程に大きくなる。
【0036】
ストッパ27は、待機位置でラッチケース21の切欠き部21cに抜け止めされた復帰トリガ25の凸部25aと係合することでラッチ22を後退位置に保持する。また、ストッパ27は、待機位置から退避する復帰トリガ25の凸部25aの斜面に押される。凸部25aの斜面25bがストッパ27の先端部に右方向に向かって当接すると、その反力から生じる分力によって、ストッパ27がラッチ22の凹部22bに押し込まれてフリー位置に移動する。
【0037】
図6に示すように、補助錠30は、開閉体13の内部に収容されている。補助錠30は、ラッチ22の進出位置から後退位置への退避に連動して施錠待機状態に切り替わり、施錠待機状態のときのラッチ22の後退位置から進出位置への進出に連動して、ラッチ22を進出位置に保持する施錠状態に切り替わる。補助錠30は、開閉体13の正面にダイヤル部を有するダイヤル錠になっている。図示では、補助錠30として、符号錠の一種であるダイヤル錠を例示したが、このような機能の補助錠は様々なものが周知であるので、適宜のものを採用すればよく、その内部構造の詳細説明を省略する。
【0038】
この荷物棚の未利用時、
図2、
図6に示す補助錠30は施錠状態にあって、開閉体13は、
図3中に実線で描く閉止位置にあり、
図1(a)、
図10に示すように、ラッチ22が受け口14aに突入した進出位置にあり、復帰トリガ25が受け口14aに突入した待機位置にあり、ストッパ27が凸部25aに乗り上げてラッチ22の凹部22bに没入したフリー位置にある。
【0039】
補助錠30の解錠権限を事前予約等により確保した利用者は、先ず、
図6に示す補助錠30のダイヤル部を予約に伴って伝えられた解錠番号に合わせて補助錠30を解錠状態にする。
【0040】
その後、利用者が操作部24に指を掛けて右方向に移動させる操作を行うと、
図1(a)、
図10に示すラッチ22が、ばね23に抗して
図1(b)、
図11に示す後退位置まで退避する。このとき、補助錠30は、ダイヤル部をゼロリセットして自動的に施錠準備状態に切り替わり、また、第1復帰ばね26の抵抗で復帰トリガ25が待機位置に留まり、第2復帰ばね28の付勢を受けるストッパ27が凸部25aを右方向に滑り、凸部25aの斜面25bを下りつつ凹部22bからインナーケース21bの切欠き部21cに突入していき、切欠き部21cに抜け止めされた待機位置の復帰トリガ25と係合することでラッチ22を後退位置に保持する状態になる。
ここで、利用者が操作部24から指を離すと、
図14に示すように、操作部24とシャフト部22aは、補助錠30に内蔵する補助錠復帰ばね(図示省略)によって左方向に移動するが、ラッチ22は復帰トリガ25とストッパ27が係合しているため、ラッチ22が進出位置に復帰することが阻止されている。
【0041】
その後、利用者が開閉体13に開放操作を行うと、
図12に示すように、待機位置の復帰トリガ25の山形先端部の上側斜面が受け口14aの上縁に上方に向かって当接することによって復帰トリガ25が受け口14aから脱出した解除位置(図中二点鎖線で図示)まで退避する。このとき、
図15に示すように、退避する復帰トリガ25の凸部25aの斜面25bが、相対的にラッチ22に対して右方向に移動するため、ストッパ27をラッチ22の凹部22bに押すことになる。ストッパ27は、凸部25aの斜面25bから第2復帰ばね28に抗して凹部22bに押し込まれることにより、再び凹部22bに没入したフリー位置に移動する。このため、ラッチ22が左方向に進出可能な状態になる。
【0042】
ストッパ27が再び凹部22bに没入したとき、
図12に示すように、開閉体13は、ラッチ22が受け口14aに再突入できない揺動角まで上昇させられている。このため、ばね23の付勢を受けるラッチ22は、受け座14の摺動面14bを上方へ滑ることになり、また、受け口14aから脱出した復帰トリガ25の山形先端部も、第1復帰ばね26の付勢により左方向へ押されるが、摺動面14bを上方へ滑ることになる。
【0043】
開閉体13の上昇がさらに進むと、やがてラッチ22、復帰トリガ25が摺動面14bを上方へ通過し終え、それぞればね23、第1復帰ばね26の付勢を受けてさらに左方向に進出することになる。
【0044】
その後、利用者が荷物を底板2上に置き、開閉体13を手で掴んで閉止操作を行うと、ラッチ22、復帰トリガ25が開放操作時と逆方向に動作するだけであり、ストッパ27が復帰トリガ25の凸部25aでフリー位置まで押し込まれた状態に変わりはない。すなわち、ラッチ22の先端部の斜面、復帰トリガ25の山形先端部の下側斜面が、それぞれ摺動面14bの上縁と当接することで少し右方向に退避し、さらにそれぞれ摺動面14bを下方へ滑って受け口14aの上縁を下方に通過すると、ばね23、第1復帰ばね26の付勢で受け口14aに突入し、これにより、ラッチ22が進出位置に復帰し、復帰トリガ25が待機位置に復帰することになる(以下、適宜、図面参照のこと。)。
【0045】
この空錠20は、上述のようなものであり、ストライク(受け座14の受け口14a)に所定方向に向かって係合可能な進出位置と、ストライク(受け座14の受け口14a)に係合不可な後退位置との間を往復するラッチ22と、ラッチ22を進出位置に復帰させるように付勢するばね23と、ラッチ22の進出位置から後退位置への退避時にストライク(受け座14の受け口14a)に所定方向に対向する待機位置にあり、ストライク(受け座14の受け口14a)との所定方向の当接によって待機位置から退避する復帰トリガ25と、ラッチ22の進出位置から後退位置への退避に連動してラッチ22を後退位置に保持するロック位置まで移動し、復帰トリガ25の待機位置からの退避に連動してラッチ22の進出を許すフリー位置まで移動するストッパ27と、を備えることにより、ラッチ22がストライク(受け座14の受け口14a)に係合可能な所定方向と、開閉体13の開放方向とを対応させて空錠20を開閉体13に配置し、操作部24でラッチ22を退避させる開閉装置10を構築することができる。そのラッチ22を退避させる操作を行うと、これを利用した連動でストッパ27がロック位置に移動してラッチ22を後退位置に保持するので、その後、開閉体13を開放させる前に操作部24から手を離しても、ラッチ22が不意に進出することはない。その後、開閉体13を開放させると、復帰トリガ25がストライク(受け座14の受け口14a)と当接し、その当接を利用した連動でストッパ27がフリー位置に移動し、ラッチ22がばね23の力で進出可能な状態になる。このため、その後に開閉体13を閉止させると、ばね23の力でラッチ22がストライク(受け座14の受け口14a)に進出することができる。したがって、この空錠20は、ラッチ22を退避させる操作部24を操作しながら開閉体13を開放させることが困難な用途の場合でも操作性に優れる。
【0046】
特に、この空錠20は、ラッチ22と復帰トリガ25とを案内するラッチケース21と、復帰トリガ25を待機位置へ復帰させるように付勢する第1復帰ばね26と、ストッパ27をロック位置に復帰させるように付勢する第2復帰ばね28と、を備え、第1復帰ばね26がラッチケース21と復帰トリガ25との間に介在しており、第2復帰ばね28がラッチ22の凹部22bに収容されており、ストッパ27が凹部22bから突出したロック位置と、凹部22bに没入したフリー位置との間を移動するものであり、ロック位置のストッパ27が、待機位置でラッチケース21に抜け止めされた復帰トリガ25と係合することでラッチ22を後退位置に保持し、待機位置から退避する復帰トリガ25から凹部22bに押し込まれることでフリー位置に移動する構造の採用により、ラッチ22の内部を利用してストッパ27と第2復帰ばね28を配置してラッチケース21の大型化を抑えつつ、ラッチ22と復帰トリガ25とストッパ27間の前述の連動を実現することができる。また、ラッチ22の脇に復帰トリガ25を配置し、強度確保上、幅を有するラッチ22の内部スペースを利用してストッパ27、第2復帰ばね28を配置してコンパクトにまとめた構造なので、手で握る太さ程度の開閉体13であっても開閉体13の内部にラッチケース21を配置することができる。
【0047】
また、この開閉装置10は、開閉操作を受ける開閉体13と、空錠20と、ラッチ22の進出位置から後退位置への退避に連動して施錠待機状態に切り替わる補助錠30と、を備え、空錠20と補助錠30が開閉体13に配置されており、空錠20がラッチ22を進出位置から後退位置に退避させる操作を受ける操作部24を有する構造の採用により、操作部24でラッチ22を退避させた後、操作部24から手を離しても、再度、補助錠30の解錠操作からやり直す手間が生じず、操作性に優れる。
【0048】
また、この荷物棚は、開閉装置10を備えることにより、補助錠30の解錠操作と、空錠20の操作部24でラッチ22を後退させる操作とを一度行えば、開閉体13を掴む手が操作部24から離れるか否かを問わず、開閉体13を掴んで開放方向に揺動させることができるので、荷物棚の無権限使用を開閉装置10で防止しつつ、正当利用者に使い勝手のよい荷物棚を提供することができる。
【0049】
なお、この発明に係る空錠、開閉装置は、住宅の戸口、窓等の扉、車両の貨物扉等の他の用途にも採用することができる。今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 開閉装置
13 開閉体
14a 受け口(ストライク)
20 空錠
21 ラッチケース
22 ラッチ
22b 凹部
23 ばね
24 操作部
25 復帰トリガ
26 第1復帰ばね
27 ストッパ
28 第2復帰ばね
30 補助錠