(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】閉断面構造部材及び建物
(51)【国際特許分類】
E04C 3/06 20060101AFI20231227BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20231227BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E04C3/06
E04B1/24 Q
E04B1/58 506R
(21)【出願番号】P 2020108004
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 祥
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047956(JP,A)
【文献】実開昭57-102624(JP,U)
【文献】特開2007-332549(JP,A)
【文献】特開2003-119891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/06
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの第1側壁部が直交して形成された第1直角部を含む長尺状の第1部材と、
前記2つの第1側壁部とそれぞれ積重可能な2つの第2側壁部が直交して形成されると共に前記第1直角部と対向可能な第2直角部を含み、前記第1直角部と前記第2直角部が対向して配置された状態で、前記第1部材との間で閉断面部を形成する長尺状の第2部材と、
前記2つ
の第1側壁部及び前記2つの第2側壁部のうち、少なくとも一方が
他方を越えて前記閉断面部の外側へ張り出し当該閉断面部の外側で前記第1部材と前記第2部材が固定される固定部と、
を含んで構成された閉断面構造部材。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材は、長手方向に対して直交する方向に沿って切断された断面形状がL字状を成している請求項1に記載の閉断面構造部材。
【請求項3】
前記第1部材及び前記第2部材は、長手方向に対して直交する方向に沿って切断された断面形状がZ字状を成している請求項1に記載の閉断面構造部材。
【請求項4】
前記第1部材は前記第2部材よりも大きく形成されている請求項2に記載の閉断面構造部材。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の閉断面構造部材が梁部材として適用され、ブラケットを介して、前記梁部材が互いに対向して配置された一対の大梁に固定されている建物。
【請求項6】
前記梁部材は、小屋裏に適用され、互いに対向する一対の天井大梁間において、前記天井大梁と同じ高さとなるように配置されている請求項5に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉断面構造部材及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、対向する大梁間に架け渡される梁(梁部材)が、それぞれリップ溝形形状を成す2つの梁材が向かい合って咬合されて形成されると共に、当該梁部材の両端と大梁とが、ガセットプレートによって連結された梁構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、ガセットプレートを塑性変形させることによって、梁部材の軸方向の寸法誤差を吸収し、これにより、様々な板厚の大梁に対応できると共に、大梁の加工誤差に対応できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、2つの梁材は、向かい合って咬合された状態でタッピングビスによって固定されている。すなわち、上記先行技術では、2つの梁材を固定することによって一体化させる必要がある。
【0005】
ここで、2つの梁材が咬合された状態で形成された閉断面部において、孔加工する場合、2つの部材において予め孔加工が施されるが、2つの部材を組み合わせた際に孔加工の位置において誤差が生じやすい。また、梁材を形成する工場から組み立てる工場へ当該梁材を輸送する際、梁材はリップ溝形形状を成しているため輸送効率が悪い。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、輸送効率がよく、加工性を向上させることが可能な閉断面構造部材及び建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る閉断面構造部材は、2つの第1側壁部が直交して形成された第1直角部を含む長尺状の第1部材と、前記2つの第1側壁部とそれぞれ積重可能な2つの第2側壁部が直交して形成されると共に前記第1直角部と対向可能な第2直角部を含み、前記第1直角部と前記第2直角部が対向して配置された状態で、前記第1部材との間で閉断面部を形成する長尺状の第2部材と、前記第1側壁部及び前記第2側壁部のうち、少なくとも一方が前記閉断面部の外側へ張り出し当該閉断面部の外側で前記第1部材と前記第2部材が固定される固定部と、を含んで構成されている。
【0008】
第1の態様に係る閉断面構造部材では、第1部材と、第2部材と、第1部材と第2部材を固定する固定部と、を含んで構成されている。第1部材及び第2部材は、長尺状を成しており、第1部材は、2つの第1側壁部が直交して形成された第1直角部を含んで構成されている。一方、第2部材は、2つの第1側壁部とそれぞれ積重可能な2つの第2側壁部が直交して形成されており、第1直角部と対向可能な第2直角部を含んで構成されている。そして、第1直角部と第2直角部が対向して配置された状態で、第1部材と第2部材とで閉断面部が形成される。そして、固定部では、第1側壁部及び第2側壁部のうち、少なくとも一方が閉断面部の外側へ張り出し、当該閉断面部の外側で第1部材と第2部材が固定される。
【0009】
このように、本態様では、第1部材の一部を構成する2つの第1側壁部と第2部材の一部を構成する2つの第2側壁部とはそれぞれ積重可能とされている。これにより、本態様では、第1部材と第2部材との間に生じるデッドスペースの形成を抑制することが可能となる。
【0010】
そして、第1部材の第1側壁部と第2部材の第2側壁部とを積重させた状態で、第1部材及び第2部材を輸送することで、例えば、第1部材と第2部材の間で閉断面部が形成された状態で複数の閉断面構造部材を輸送する場合と比較して、本態様では、デッドスペースが少なくなり、効率よく輸送することが可能となる。
【0011】
さらに、本態様では、固定部において、第1部材の第1側壁部及び第2部材の第2側壁部のうち、少なくとも一方が閉断面部の外側へ張り出し当該閉断面部の外側で第1部材と第2部材が固定される。
【0012】
例えば、比較例として、溝形鋼を組み合わせて閉断面部を形成し、当該閉断面部内で締結固定が成される場合、内側の部材は外側の部材によって覆われているため、内側の部材において孔加工の位置を確認することは困難である。
【0013】
これに対して、本態様では、第1部材と第2部材が閉断面部の外側で固定されるため、固定部は外部に露出することになる。したがって、第1部材と第2部材を固定する際に加工がしやすい。
【0014】
第2の態様に係る閉断面構造部材は、第1の態様に係る閉断面構造部材において、前記第1部材及び前記第2部材は、長手方向に対して直交する方向に沿って切断された断面形状がL字状を成している。
【0015】
第2の態様に係る閉断面構造部材では、第1部材及び第2部材の断面形状がL字状を成している。本態様では、第1部材を構成する2つの第1側壁部が直交して形成された第1直角部と、第2部材を構成する2つの第2側壁部が直交して形成された第2直角部とが対向して配置された状態で、第1部材と第2部材の間で閉断面部が形成される。
【0016】
このとき、当該2つの第1側壁部のうち一方の第1側壁部の先端部が、当該2つの第2側壁部のうち一方の第2側壁部から張り出すように配置されると共に、当該2つの第2側壁部のうち他方の第2側壁部の先端部が、当該2つの第1側壁部のうち他方の第1側壁部から張り出すように配置される。
【0017】
これにより、第1部材の一方の第1側壁部の先端部及び第2部材の他方の第2側壁部の先端部は、第1部材と第2部材との間で形成される閉断面部の外側に張り出すこととなる。この状態で、例えば、溶接等により、第1部材の一方の第1側壁部と第2部材の一方の第2側壁部とが接合(固定)され、第1部材の他方の第1側壁部と第2部材の他方の第2側壁部とが接合(固定)される。
【0018】
第3の態様に係る閉断面構造部材は、第1の態様に係る閉断面構造部材において、前記第1部材及び前記第2部材は、長手方向に対して直交する方向に沿って切断された断面形状がZ字状を成している。
【0019】
第3の態様に係る閉断面構造部材では、第1部材及び第2部材の断面形状がZ字状を成している。すなわち、本態様では、第1部材において、2つの第1側壁部のうち一方の第1側壁部の先端からは、他方の第1側壁部と反対側へ向かって張り出す第1フランジ部が形成されると共に、第2部材において、2つの第2側壁部のうち一方の第2側壁部の先端からは、他方の第2側壁部と反対側へ向かって張り出す第2フランジ部が形成される。
【0020】
そして、本態様では、第1部材を構成する2つの第1側壁部が直交して形成された第1直角部と、第2部材を構成する2つの第2側壁部が直交して形成された第2直角部とが対向して配置された状態で、第1部材と第2部材の間で閉断面部が形成される。
【0021】
このとき、当該第1部材の第1フランジ部が第2部材の2つの第2側壁部のうち他方の第2側壁部の先端部と重なると共に、第2部材の第2フランジ部が第1部材の2つの第1側壁部のうち他方の第1側壁部の先端部と重なる。
【0022】
これにより、第1部材の第1フランジ部及び第2部材の他方の第2側壁部の先端部、第2部材の第2フランジ部及び第1部材の他方の第1側壁部の先端部は、第1部材と第2部材との間で形成される閉断面部の外側に張り出すこととなる。この状態で、例えば、ボルト等により、第1部材の第1フランジ部と第2部材の他方の第2側壁部の先端部とが締結(固定)され、第2部材の第2フランジ部と第1部材の他方の第1側壁部の先端部とが締結(固定)される。
【0023】
第4の態様に係る閉断面構造部材は、第2の態様に係る閉断面構造部材において、前記第1部材は前記第2部材よりも大きく形成されている。
【0024】
第4の態様に係る閉断面構造部材では、第1部材及び第2部材の断面形状がL字状を成し、第1部材は第2部材よりも大きく形成されている。このため、第1部材の上に第2部材を積重させることができる。これにより、荷姿をコンパクトにすることができる。
【0025】
また、本態様では、第1部材を構成する2つの第1側壁部が直交して形成された第1直角部と、第2部材を構成する2つの第2側壁部が直交して形成された第2直角部とが対向して配置された状態で、第1部材と第2部材の間で閉断面部が形成される。
【0026】
このとき、当該第1部材の2つの第1側壁部のうち一方の第1側壁部が、当該第2部材の2つの第2側壁部のうち一方の第2側壁部から張り出すように配置されると共に、当該第1部材の2つの第1側壁部のうち他方の第1側壁部が、当該第2部材の2つの第2側壁部のうち他方の第2側壁部から張り出すように配置される。
【0027】
これにより、一方の第1側壁部及び他方の第1側壁部は、第1部材と第2部材との間で形成される閉断面部の外側に張り出すこととなる。この状態で、例えば、溶接等により、第1部材の一方の第1側壁部と第2部材の一方の第2側壁部とが接合(固定)され、第1部材の他方の第2側壁部と第2部材の他方の第2側壁部とが接合(固定)される。
【0028】
第5の態様に係る建物は、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係る閉断面構造部材が梁部材として適用され、ブラケットを介して、前記梁部材が互いに対向して配置された一対の大梁に固定されている。
【0029】
第5の態様に係る建物では、第1部材と第2部材とで閉断面部を形成することによって、当該閉断面構造部材は、梁部材として十分な剛性を得ることができる。そして、ブラケットを介して、当該梁部材が互いに対向して配置された一対の大梁に固定されている。
【0030】
本態様では、当該梁部材を構成する第2部材の第2側壁部と第1部材の第1側壁部を積重させた状態で、第1部材及び第2部材を輸送することができる。このため、第1部材と第2部材の間で閉断面部が形成された状態で複数の梁部材を輸送する場合と比較して、デッドスペースが少なくなり、効率よく輸送することが可能となる。
【0031】
さらに、本態様では、第1部材と第2部材が閉断面部の外側で固定されるため、固定部は外部に露出する。したがって、第1部材と第2部材を固定する際に加工がしやすい。そして、このようにして形成された梁部材は、ブラケットを介して一対の大梁に固定することができる。
【0032】
第6の態様に係る建物は、第5の態様に係る建物において、前記梁部材は、小屋裏に適用され、互いに対向する一対の天井大梁間において、前記天井大梁と同じ高さとなるように配置されている。
【0033】
第6の態様に係る建物では、梁部材が小屋裏に適用されており、一対の天井大梁間において、当該天井大梁と同じ高さとなるように配置される。
【0034】
例えば、天井大梁の上方側に梁部材が配置された場合、小屋裏の床部では、当該梁部材が突設された状態となる。つまり、小屋裏空間がその分狭くなってしまう。これに対して、本態様では、互いに対向する一対の天井大梁と同じ高さとなるように梁部材が配置された場合、小屋裏の床部では当該梁部材が突設しない。したがって、本態様では、小屋裏の床面の凹凸を抑制し、小屋裏空間において十分なスペースを確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、第1の態様の閉断面構造部材は、輸送効率がよく、加工性を向上させることができる、という効果を有する。
【0036】
第2の態様の閉断面構造部材は、第1部材及び第2部材の形状が簡易的であり、第1部材と第2部材を積重させた状態で、デッドスペースが少なく輸送効率がよい、という効果を有する。
【0037】
第3の態様の閉断面構造部材は、第1部材と第2部材とを締結固定することができるため、溶接設備が不要であり、また、現場で固定作業を行うことができる、という効果を有する。
【0038】
第4の態様の閉断面構造部材は、第1部材と第2部材を積重させた状態で、荷姿をよりコンパクトにすることができ、デッドスペースをさらに少なくすることができる、という効果を有する。
【0039】
第5の態様の建物は、建設時において、輸送効率がよく、加工性を向上させることができる、という効果を有する。
【0040】
第6の態様の建物は、小屋裏の床面のフラットに形成することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材を構成する、(A)は、第1部材及び第2部材がそれぞれ適用された複数の長尺部材を示す斜視図であり、(B)は、当該複数の長尺部材が積重された状態を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材の建物側への固定方法(1)を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材の建物側への固定方法(2)を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材の建物側への固定方法(3)を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材の建物側への固定方法(4)を示す断面図である。
【
図7】(A)は、第1実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材が小屋裏に適用された状態を示す斜視図であり、(B)は、当該小屋裏に床材が敷設された状態を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材を構成する、(A)は、第1部材及び第2部材がそれぞれ適用された複数の長尺部材を示す斜視図であり、(B)は、当該複数の長尺部材が積重された状態を示す斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材を示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態に係る閉断面構造部材が適用された梁部材を構成する、(A)は、第1部材及び第2部材がそれぞれ適用された複数の長尺部材が積重された状態を示す端面図であり、(B)は、当該複数の長尺部材で形成された梁部材を示す端面図である。
【
図11】(A)~(C)は、比較例としての閉断面構造部材を示す端面図である。
【
図12】(A)、(B)は、比較例であり、
図7(A)、(B)にそれぞれ対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態に係る閉断面構造部材について説明する。
<第1実施形態>
【0043】
(閉断面構造部材の構成)
まず、本発明の第1の実施形態に係る閉断面構造部材の構成について説明する。
【0044】
図1(A)には、本実施形態に係る閉断面構造部材としての梁部材10を構成する長尺部材(第1部材)12及び長尺部材(第2部材)14の斜視図が示されており、
図1(B)には、長尺部材12の上に長尺部材14が積重された状態を示す斜視図が示されている。
【0045】
図1(A)、(B)に示されるように、本実施形態では、長尺部材12と長尺部材14とは同じものであるが、説明の便宜上、これらを区別して説明する。長尺部材12及び長尺部材14は鋼板で形成されており、長手方向に対して直交する方向に沿って切断された断面形状がそれぞれL字状を成している。そして、長尺部材12と長尺部材14とは、面接触可能な状態で積重可能とされている。
【0046】
図1(A)に示されるように、本実施形態では、長尺部材12は、縦壁部(第1側壁部)16と横壁部(第1側壁部)18とが略直交して形成された直角部(第1直角部)20を含んで構成されている。そして、縦壁部16と横壁部18が交わる交点Pを起点とすると、縦壁部16の方が横壁部18よりも長く形成されている。
【0047】
前述のように、本実施形態では、長尺部材12と長尺部材14とは同じものであるため、長尺部材12と同様に、長尺部材14もまた、縦壁部(第2側壁部)22と横壁部(第2側壁部)24とが略直交して形成された直角部(第2直角部)26を含んで構成されている。そして、縦壁部22と横壁部24が交わる交点Qを起点とすると、縦壁部22の方が横壁部24よりも長く形成されている。
【0048】
ここで、
図2には、梁部材10の斜視図が示されている。
図2に示されるように、梁部材10は、長尺部材12の直角部20と長尺部材14の直角部26とが対向して配置された状態で、長尺部材12と長尺部材14の間で閉断面部30が形成されている。
【0049】
当該梁部材10は、長尺部材12の横壁部(一方の第1側壁部)18に長尺部材14の縦壁部(一方の第2側壁部)22を当接させた状態で、当該横壁部18の先端部18Aが、長尺部材14の縦壁部22から張り出すように配置されている。また、長尺部材14の横壁部(他方の第2側壁部)24に長尺部材12の縦壁部(他方の第1側壁部)16を当接させた状態で、当該横壁部24の先端部24Aが、長尺部材12の縦壁部16から張り出すように配置されている。
【0050】
すなわち、当該梁部材10では、長尺部材12の横壁部18の先端部18A及び長尺部材14の横壁部24の先端部24Aは、長尺部材12と長尺部材14との間で形成される閉断面部30の外側に張り出している。
【0051】
この状態で、例えば、溶接等により、当該閉断面部30の外側で、長尺部材14の縦壁部16が長尺部材12の横壁部18に接合(固定)されている(接合部32)。また、長尺部材12の縦壁部16が長尺部材14の横壁部18に接合(固定)されている。以上のようにして、本実施形態では、梁部材10が形成されている。
【0052】
(建物)
次に、本実施形態に係る梁部材10において、建物34側への固定方法について説明する。
【0053】
例えば、当該梁部材10の建物34側への固定方法(1)として、
図3にはその斜視図が示されている。
図3に示されるように、建物34側に設けられた溝形鋼の大梁36に対して、当該梁部材10を固定する場合、鋼板で形成されたブラケット38が用いられる。つまり、本実施形態では、ブラケット38を介して、梁部材10が大梁36に固定される。
【0054】
なお、本実施形態では、当該ブラケット38は、正面視で略T字状を成す板材であり、ブラケット38の頭部38Aに大梁36が固定され、ブラケット38の首部38Bに梁部材10が固定される。
【0055】
具体的に説明すると、ブラケット38の頭部38Aは、図示はしないが、大梁36の上フランジ部36A及び下フランジ部36Bの内面側に溶接されており、ブラケット38の首部38Bには、ボルト42が設けられている。一方、梁部材10の長手方向の端部10Aには、当該梁部材10の一部を構成する長尺部材14の縦壁部22に、当該ボルト42が挿通可能な固定孔(図示省略)が形成されている。また、当該長尺部材14の縦壁部22には、当該固定孔に対応してナット(図示省略)が設けられている。
【0056】
以上のような構成により、当該ボルト42及び当該ナットを介して、梁部材10がブラケット38に締結される。このように、本実施形態では、当該ブラケット38を介して、梁部材10が大梁36に固定される。
【0057】
なお、ここでは、ブラケット38が大梁36に対して溶接されると共に、ボルト42及びナットを介して梁部材10をブラケット38に締結させたが、固定方法についてはこれに限るものではない。
【0058】
例えば、当該梁部材10の建物34側への固定方法(2)として、
図4にはその斜視図が示されている。
図4に示されるように、本実施形態では、側面視で逆L字状を成す板状のブラケット44が用いられてもよい。なお、本実施形態では、ブラケット44の一方側44Aに梁部材10が固定され、ブラケット44の他方側44Bに大梁36の上フランジ部36Aが固定される。
【0059】
具体的に説明すると、梁部材10の長手方向の端面10Bをブラケット44の一方側44Aに当接させた状態で、当該梁部材10がブラケット44に溶接されている。また、ブラケット44の他方側44Bには、ボルト46が設けられている。一方、大梁36の上フランジ部36Aには、固定孔(図示省略)が形成されている。また、大梁36の上フランジ部36Aには、当該固定孔に対応してナット(図示省略)が設けられている。
【0060】
以上のような構成により、当該ボルト46及び当該ナットを介して、ブラケット44が大梁36に締結される。このように、本実施形態では、当該ブラケット44を介して、梁部材10が大梁36に固定される。
【0061】
また、以上の実施形態では、1つのブラケット38(
図3参照)、ブラケット44(
図4参照)に対して、それぞれ大梁36及び梁部材10が固定されるようになっているが、これに限るものではない。
【0062】
例えば、当該梁部材10の建物34側への固定方法(3)として、
図5にはその斜視図が示されている。
図5に示されるように、ブラケット48には大梁36が固定され、ブラケット50には梁部材10が固定される。そして、当該ブラケット48と当該ブラケット50を結合させることによって、当該ブラケット48及びブラケット50を介して、梁部材10が大梁36に固定されるようにしてもよい。
【0063】
具体的に説明すると、ブラケット48は、正面視で略逆L字状を成す板材であり、ブラケット48の一方側48Aが大梁36の上フランジ部36A及び下フランジ部36Bの内面側に溶接される。また、ブラケット48の他方側48Bには、ボルト52が設けられている。
【0064】
一方、ブラケット50は、平面視で略T字状を成しており、梁部材10の長手方向の端部10Aをブラケット50の頭部50Aに当接させた状態で、当該梁部材10がブラケット50に溶接されている。そして、ブラケット50の首部50Bには、固定孔(図示省略)が形成されている。また、ブラケット50の首部50Bには、当該固定孔に対応してナット(図示省略)が設けられている。
【0065】
以上のような構成により、当該ボルト52及び当該ナットを介して、ブラケット48とブラケット50とが締結される。このように、本実施形態では、当該ブラケット48、50を介して、梁部材10が大梁36に固定される。
【0066】
なお、上記以外にも、当該梁部材10の建物34側への固定方法(4)として、
図6にはその断面図が示されている。
図6に示されるように、大梁36に固定されるブラケット56において、梁部材10だけでなく他の小梁54も当該大梁36に固定するためのブラケットとして兼用可能とされるように形成されてもよい。この場合、当該ブラケット56には、小梁54を溶接するための接合部58が設けられる。
【0067】
(閉断面構造部材の作用及び効果)
次に、本発明の第1の実施形態に係る閉断面構造部材の作用及び効果について説明する。
【0068】
本実施形態では、
図1(A)に示されるように、梁部材10を構成する長尺部材12、14は、その断面形状がそれぞれL字状を成している。そして、本実施形態では、
図1(B)に示されるように、長尺部材12の横壁部18と長尺部材14の横壁部24、長尺部材12の縦壁部16と長尺部材14の縦壁部22とは、面接触可能な状態でそれぞれ積重可能とされている。
【0069】
例えば、比較例として、
図11(A)~(C)には、梁部材204、210を示す端面図が示されている。
図11(A)に示されるように、リップ溝形鋼200、202を組み合わせて形成された梁部材204の場合、当該梁部材204をそのまま輸送するとなると、リップ溝形鋼200とリップ溝形鋼202とで形成された閉断面部206がデッドスペースとなり、輸送効率が悪くなる。
【0070】
仮に、
図11(B)に示されるように、リップ溝形鋼200とプレート208を組み合わせて形成される梁部材210において、輸送後に当該梁部材210を形成するとしても、リップ溝形鋼200によって形成される空間部212は、やはりデッドスペースとなるため、輸送効率は悪い。
【0071】
これに対して、本実施形態では、
図1(B)に示されるように、長尺部材12の横壁部18と長尺部材14の横壁部24、長尺部材12の縦壁部16と長尺部材14の縦壁部22とが、面接触された状態でそれぞれ積重される。これにより、本実施形態では、長尺部材12と長尺部材14との間に生じるデッドスペースの形成を抑制することが可能となる。
【0072】
そして、長尺部材12と長尺部材14とを積重させた状態で長尺部材12及び長尺部材14を輸送することで、長尺部材12及び長尺部材14を曲げ加工する工程から組み立てる工程へ輸送する場合等に、部材同士を重ねることができるため、デッドスペースが少なくなり、効率よく輸送することが可能となる。
【0073】
また、長尺部材12及び長尺部材14の断面形状は、それぞれL字状を成しており、長尺部材12及び長尺部材14の形状が簡易的である。したがって、複雑な形状を成す長尺部材と比較して製造コストを削減することが可能となる。
【0074】
さらに、本実施形態では、
図2に示されるように、梁部材10を構成する長尺部材12の直角部20と、長尺部材14の直角部26とが対向して配置された状態で、長尺部材12と長尺部材14の間で閉断面部30が形成されている。このように、本実施形態では、当該梁部材10が、長尺部材12と長尺部材14とで閉断面部30を形成することによって、梁部材として十分な剛性を得ることができる。
【0075】
一方、本実施形態では、梁部材10は、長尺部材12の横壁部18の先端部18Aが長尺部材14の縦壁部22から張り出すように配置され、長尺部材14の横壁部24の先端部24Aが長尺部材12の縦壁部16から張り出すように配置されている。
【0076】
すなわち、本実施形態では、梁部材10において、長尺部材12の横壁部18の先端部18A及び長尺部材14の横壁部24の先端部24Aは、長尺部材12と長尺部材14との間で形成される閉断面部30の外側に張り出している。そして、当該閉断面部30の外側で、長尺部材14の縦壁部16が長尺部材12の横壁部18に固定されると共に、長尺部材12の縦壁部16が長尺部材14の横壁部18に固定されている。
【0077】
例えば、比較例として、
図11(C)に示されるように、2つのリップ溝形鋼200、202を組み合わせて形成された梁部材204において、閉断面部206内で締結固定(固定部213)が成される場合、当該固定部213では、内側に配置されたリップ溝形鋼202は、外側に配置されたリップ溝形鋼200によって覆われている。
【0078】
このため、内側のリップ溝形鋼202側において、孔部202Aの位置を確認することは困難である。特に、内側のリップ溝形鋼202側にナットが溶接されている場合、組み合わせた後に外側のリップ溝形鋼200と内側のリップ溝形鋼202を同時に貫通させることができない。
【0079】
これに対して、本実施形態では、
図2に示されるように、梁部材10において、長尺部材12と長尺部材14が閉断面部30の外側で固定(接合部32)されるため、当該接合部32が外部に露出する。このため、長尺部材12と長尺部材14を固定する際に加工がしやすい。
【0080】
また、例えば、
図3に示されるように、梁部材10にブラケット38を締結させる際、梁部材10の一部を構成する長尺部材14の縦壁部22には、ボルト42を挿通させるための固定孔(図示省略)が形成される。このように、本実施形態では、孔加工を行う場合でも、長尺部材14側のみの加工でよいため、部材同士の積重により生じる位置ずれが生じない。
【0081】
ところで、一般に、
図12(A)に示されるように、小屋裏214には、束材216が立設されている。当該束材216は束受け梁218によって支持されており、束受け梁218は、対向して配置された一対の天井大梁220の上に固定されるようになっている。
【0082】
近年では、この小屋裏214のスペースを書斎や子供部屋として活用するというニーズが増えている。しかしながら、前述のように、天井大梁220の上に束受け梁218を固定するとなると、
図12(B)に示されるように、小屋裏214に床材222が敷設された状態で束受け梁218は突出部224となり、床部226に段差ができてしまう。
【0083】
これに対して、本実施形態では、例えば、
図5に示されるように、ブラケット48、50を用いて、梁部材10が大梁36に固定される。このため、ブラケット48とブラケット50において、高さ方向の位置を変えることによって、大梁36の上フランジ部36Aと梁部材10の横壁部24とを略面一の状態とすることができる。
【0084】
したがって、本実施形態では、
図7(A)に示されるように、小屋裏70において、束材72を支持する束受け梁として当該梁部材10を適用させることによって、
図7(B)に示されるように、小屋裏70に床材74が敷設された状態で床部76をフラット面にすることができる。つまり、本実施形態では、小屋裏70の床面74Aの凹凸を抑制し、小屋裏70の空間において十分なスペースを確保することが可能となる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る閉断面構造部材について説明する。なお、第1実施形態と略同じ内容については、同じ符号を用いて説明を割愛する。
【0086】
図8(A)には、本実施形態に係る閉断面構造部材としての梁部材80を構成する長尺部材(第1部材)82及び長尺部材(第2部材)84の斜視図が示されており、
図8(B)には、長尺部材82の上に長尺部材84が積重された状態を示す斜視図が示されている。
【0087】
図8(A)、(B)に示されるように、長尺部材82と長尺部材84とは同じものであり、長手方向に対して直交する方向に沿って切断された断面形状がそれぞれZ字状を成しており、長尺部材82と長尺部材84とは、面接触可能な状態で積重可能とされている。
【0088】
図8(A)に示されるように、長尺部材82は、縦壁部16と横壁部18とが略直交して形成されており、横壁部18の先端からは、横壁部18と反対側へ向かって張り出すフランジ部86が形成されている。
【0089】
前述のように、長尺部材82と長尺部材84とは同じものであるため、長尺部材82と同様に、長尺部材84もまた、縦壁部22と横壁部24とが略直交して形成されており、横壁部24の先端からは、横壁部24と反対側へ向かって張り出すフランジ部88が形成されている。
【0090】
このため、本実施形態では、
図8(B)に示されるように、長尺部材82の横壁部18と長尺部材84の横壁部24、長尺部材82の縦壁部16と長尺部材84の縦壁部22、長尺部材82のフランジ部86と長尺部材84のフランジ部88とが、それぞれ面接触された状態で積重される。これにより、本実施形態では、長尺部材82と長尺部材84との間に生じるデッドスペースの形成を抑制することが可能となる。
【0091】
ここで、
図9には、梁部材80の斜視図が示されている。
図9に示されるように、梁部材80は、長尺部材82の直角部20と長尺部材84の直角部26とが、対向して配置された状態で、長尺部材82と長尺部材84の間で閉断面部30が形成されている。
【0092】
このとき、本実施形態では、当該長尺部材82のフランジ部86が長尺部材84の横壁部24の先端部24Aと重なり、長尺部材84のフランジ部88が長尺部材82の横壁部18の先端部18Aと重なる。そして、長尺部材82のフランジ部86及び長尺部材84の横壁部24の先端部24A、長尺部材84のフランジ部88及び長尺部材82の横壁部18の先端部18Aは、それぞれ長尺部材82と長尺部材84との間で形成される閉断面部30の外側に張り出す。
【0093】
この状態で、ボルト90及び図示しないナットにより、長尺部材82のフランジ部86と長尺部材84の横壁部24の先端部24Aとが締結され、ボルト94及びナット96により、長尺部材84のフランジ部88と長尺部材82の横壁部18の先端部18Aとが締結されている。
【0094】
このように、本実施形態では、長尺部材82と長尺部材84とを締結固定することができるため、溶接設備が不要であり、また、現場で固定作業を行うことができる。
【0095】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る閉断面構造部材について説明する。なお、第1実施形態と略同じ内容については、同じ符号を用いて説明を割愛する。
【0096】
図10(A)には、本実施形態に係る閉断面構造部材としての梁部材100を構成する長尺部材(第1部材)102及び長尺部材(第2部材)104において、長尺部材102の上に長尺部材102が積重され、長尺部材104の上に長尺部材104が積重された状態を示す端面図が示されている。また、
図10(B)には、梁部材100の端面図が示されている。
【0097】
図10(A)に示されるように、本実施形態では、梁部材100の一部を構成する長尺部材102は長尺部材104よりも大きく形成されており、長尺部材102は、縦壁部(第1側壁部)106と横壁部(第1側壁部)108とが、略直交して形成された直角部(第1直角部)110を含んで構成されている。また、長尺部材104は、縦壁部(第2側壁部)112と横壁部(第2側壁部)114とが、略直交して形成された直角部(第2直角部)116を含んで構成されている。
【0098】
本実施形態では、長尺部材102同士、長尺部材104同士が、それぞれ面接触された状態でそれぞれ積重されると共に、長尺部材102の上に長尺部材104を積重させることができる。つまり、本実施形態では、長尺部材102の横壁部108と長尺部材104の横壁部114、及び長尺部材102の縦壁部106と長尺部材104の縦壁部112とが、それぞれ面接触された状態で積重させることができる。
【0099】
このように、本実施形態では、長尺部材104は長尺部材102よりも小さいため、積重された長尺部材102の上に積重された長尺部材104を積重させることができる。これにより、本実施形態では、長尺部材102、104の荷姿をよりコンパクトにすることができ、長尺部材102と長尺部材104との間に生じるデッドスペースの形成をさらに抑制することが可能となる。
【0100】
一方、
図10(B)に示されるように、梁部材100は、長尺部材102の直角部110と長尺部材104の直角部116とが、対向して配置された状態で長尺部材102と長尺部材104の間で閉断面部118が形成されている。
【0101】
当該梁部材100は、長尺部材102の横壁部108に長尺部材104の縦壁部112を当接させた状態で、当該横壁部108の先端部108Aは、長尺部材104の縦壁部112から張り出す。また、梁部材100は、長尺部材102の縦壁部106に長尺部材104の横壁部114を当接させた状態で、当該縦壁部106の先端部106Aは、長尺部材104の横壁部114から張り出す。
【0102】
つまり、長尺部材102の縦壁部106の先端部106A及び横壁部108の先端部108Aは、長尺部材102と長尺部材104との間で形成される閉断面部118の外側に張り出すこととなる。この状態で、溶接等により、長尺部材102の縦壁部106と長尺部材104の横壁部114とが接合され、長尺部材102の横壁部108と長尺部材104の縦壁部112とが接合される。
【0103】
なお、以上の実施形態では、本発明における閉断面構造部材の一例として梁部材について説明したが、閉断面構造部材が適用される部材であればよいため、梁部材に限るものではない。例えば、束材等に適用されてもよい。
【0104】
以上、本発明を実施するための一形態として一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 梁部材(閉断面構造部材)
12 長尺部材(第1部材)
14 長尺部材(第2部材)
16 縦壁部(第1側壁部)
18 横壁部(第1側壁部)
20 直角部(第1直角部)
22 縦壁部(第2側壁部)
24 横壁部(第2側壁部)
26 直角部(第2直角部)
30 閉断面部
32 接合部(固定部)
34 建物
36 大梁(天井大梁)
38 ブラケット
44 ブラケット
48 ブラケット
50 ブラケット
56 ブラケット
70 小屋裏
80 梁部材(閉断面構造部材)
82 長尺部材(第1部材)
84 長尺部材(第2部材)
90 ボルト(固定部)
94 ボルト(固定部)
96 ナット(固定部)
100 梁部材(閉断面構造部材)
102 長尺部材(第1部材)
104 長尺部材(第2部材)
106 縦壁部(第1側壁部)
108 横壁部(第1側壁部)
110 直角部(第1直角部)
112 縦壁部(第2側壁部)
114 横壁部(第2側壁部)
116 直角部(第2直角部)
118 閉断面部