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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231227BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231227BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20231227BHJP
   B60W 30/085 20120101ALI20231227BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60T7/12 C
B60W30/09
B60W30/085
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020130852
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027066
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】泉 祐介
(72)【発明者】
【氏名】松本 有史
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046413(JP,A)
【文献】特開2014-178836(JP,A)
【文献】特開2007-334598(JP,A)
【文献】特開2007-128227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(M1)が自車線(L1)を直進する状態から対向車線(L2)を横切る側に右左折する場合において、前記対向車線を直進する対向車両(M2)との衝突抑制を図るべく安全装置(30)を作動させる車両制御装置(22)であって、
前記自車両が前記右左折のために旋回し、かつ前記対向車線を横切る前の右左折旋回状態であることを判定する判定部と、
前記右左折旋回状態であると判定された場合に、前記対向車両の直進進行方向に直交する方向である横方向(DY)において当該対向車両の直進進路に沿って定められる車両通行エリア(ER1)までの距離である横方向距離を、前記横方向における前記自車両の速度である横方向速度で割った横衝突時間(CTT)に基づいて、前記安全装置を作動させる制御部と、を備え
前記判定部は、
前記自車両が直進状態から前記右左折のための旋回を開始して前記右左折旋回状態になったことを判定する旋回開始判定部と、
旋回を開始したとの判定後に前記自車両が前記車両通行エリアまで前進したこと、又は前記車両通行エリア内の所定位置まで前進したことに基づいて、前記右左折旋回状態が終了したことを判定する旋回終了判定部と、を有し、
前記制御部は、前記自車両が旋回を開始したと判定されてから、その旋回が終了したと判定されるまでの期間において、前記対向車線において前記自車両から所定の距離範囲で定められる所定の直進エリア(ER2)内に前記対向車両が存在していることを条件に、前記横衝突時間に基づいて、前記安全装置を作動させる車両制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記自車両の旋回開始から旋回終了までの期間であり、かつ前記直進エリア内に前記対向車両が存在している場合に、前記横衝突時間が所定時間よりも短ければ、前記安全装置を作動させる請求項に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記直進エリアにおける前記自車両からの距離範囲を、前記対向車両の速度に基づいて設定する設定部を備える請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記旋回終了判定部は、前記自車両の旋回開始の時点からの当該自車両の移動距離、及び前記自車両の旋回開始の時点からの経過時間の少なくともいずれかを用い、前記自車両が前記車両通行エリアを横切る際に当該車両通行エリアの一端から他端までの間の所定位置まで前進したか否かを判定することにより、前記右左折旋回状態が終了したことを判定する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記自車両の進行方向前方に存在する他車両との間の相対距離を、前記自車両と前記他車両との相対速度で割った相対衝突時間(TTC)に基づいて前記安全装置を作動させる衝突抑制制御である第1制御と、前記横衝突時間に基づいて前記安全装置を作動させる衝突抑制制御である第2制御とを実施するものであり、
前記右左折旋回状態でないと判定された場合に前記第1制御を実施し、前記右左折旋回状態であると判定された場合に前記第1制御から前記第2制御への切替を実施する請求項1からのいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周辺の他車両を検出し、検出された他車両と自車両との衝突を予測する装置が知られている(例えば、特許文献1)。この装置では、自車両と他車両との相対距離を相対速度で割った衝突時間である相対衝突時間に基づいて、自車両と他車両との衝突を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-121491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば左側通行道路の交差点において、直進状態の自車両が右折する場合、すなわち対向車線を横切る側に旋回する場合には、自車両の走行進路と、対向車線を直進する対向車両の走行進路とが交差する。この場合、自車両が旋回している際に対向車両が高速で直進してくるシーンでは、相対速度が大きくなるため相対衝突時間が短くなり、相対距離によらず安全装置が不要に作動されることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車両が対向車線を横切る側に右左折する場合における安全装置の不要作動を抑制できる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段は、自車両が自車線を直進する状態から対向車線を横切る側に右左折する場合において、前記対向車線を直進する対向車両との衝突抑制を図るべく安全装置を作動させる車両制御装置であって、前記自車両が前記右左折のために旋回し、かつ前記対向車線を横切る前の右左折旋回状態であることを判定する判定部と、前記右左折旋回状態であると判定された場合に、前記対向車両の直進進行方向に直交する方向である横方向において当該対向車両の直進進路に沿って定められる車両通行エリアまでの距離である横方向距離を、前記横方向における前記自車両の速度である横方向速度で割った横衝突時間に基づいて、前記安全装置を作動させる制御部と、を備える。
【0007】
例えば左側通行道路の交差点を右折する場合において、仮に自車両と対向車両との相対距離を相対速度で割った衝突時間である相対衝突時間に基づいて安全装置が作動される構成であると、対向車両が高速で直進してくる際に、相対速度が大きくなるため相対衝突時間が短くなり、相対距離によらず安全装置が不要に作動されることが懸念される。
【0008】
この点、上記構成では、自車両が右左折のために旋回し、かつ対向車線を横切る前の右左折旋回状態であることを判定し、右左折旋回状態であると判定された場合に、対向車両の直進進行方向に直交する方向である横方向において当該対向車両の直進進路に沿って定められる車両通行エリアまでの距離である横方向距離を、横方向における自車両の速度である横方向速度で割った横衝突時間に基づいて、安全装置を作動させるようにした。この場合、横衝突時間は、右左折旋回状態の自車両が、対向車線を横切る際に対向車両との衝突の可能性が生じるまでの所要時間として算出され、仮に対向車両が高速で直進してくる状況にあっても、安全装置の不要な作動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運転支援装置の全体構成図。
図2】右直シーンにおける自車両と対向車両の位置関係を示す図。
図3】衝突抑制制御の処理手順を示すフローチャート。
図4】旋回判定処理を示すフローチャート。
図5】相対衝突時間TTCの算出方法を説明する図。
図6】横衝突時間CTTの算出方法を説明する図。
図7】対向車両の速度と距離D2との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明に係る車両制御装置を、車載の運転支援装置100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置100は、カメラ11と、レーダ装置12と、画像処理ECU21と、車両制御装置としての車両ECU22と、安全装置30と、を備えている。
【0012】
カメラ11は、単眼カメラである。カメラ11は、例えば自車両の前端、後端、及び両側面にそれぞれ取り付けられており、自車両周辺を撮像する。カメラ11は、撮像した撮像画像の画像情報を画像処理ECU21に送信する。
【0013】
レーダ装置12は、ミリ波帯の高周波信号(超音波)を送信波とする測距装置である。レーダ装置12は、例えば自車両の前端、後端、及び両側面にそれぞれ搭載されており、自車両周辺の物体までの距離を計測する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体上の複数の検出点を検出し、これにより当該物体までの距離を計測する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出する。物体までの距離及び物体の方位が算出できれば、その物体の自車両に対する相対位置を特定することができる。
【0014】
また、レーダ装置12は、物体で反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、物体の相対速度を算出する。これにより、自車両周辺に存在している物体が静止物又は移動物であると検知される。具体的には、物体の相対速度と自車両の車速である自車速度との和がゼロとなる場合に、物体が静止物であると検知され、物体の相対速度と自車速度との和がゼロでない場合に、物体が移動物であると検知される。レーダ装置12は、自車両周辺の静止物及び移動物の検知情報を車両ECU22に送信する。
【0015】
ECU21,22は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた制御装置である。ECU21,22は、各種信号を取得し、取得した情報に基づき、各種制御を実施する。
【0016】
画像処理ECU21は、カメラ11の撮像画像に基づいて、自車両周辺の移動物を検知する。具体的には、画像処理ECU21は、カメラ11の撮像画像に写る各物体の自車両に対する相対位置を算出する。また、画像処理ECU21は、この相対位置に基づいて、各物体の移動速度を算出する。画像処理ECU21は、カメラ11から所定周期毎に送信される画像情報に基づき、物体のオプティカルフローを算出し、算出したオプティカルフローに基づいて当該物体の移動速度を算出する。ここで、オプティカルフローとは、画像中において輝度変化した境界線を構築する点としての境界点を複数検出し、検出した複数の境界点を動きベクトルとして表したものである。これにより、自車両周辺に存在している移動物が検知される。
【0017】
そして、画像処理ECU21は、相対位置及び相対速度に基づいて、移動物の移動進路を算出する。つまり、画像処理ECU21は、カメラ11の撮像画像に基づいて移動物の移動進路を算出する。画像処理ECU21は、移動物の検知情報を車両ECU22に送信する。なお、検知情報には、検知された移動物の自車両に対する相対位置、相対速度、及び移動進路の情報が含まれる。
【0018】
車両ECU22は、レーダ装置12及び画像処理ECU21から送信される自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、安全装置30を作動させる。安全装置30は、自車両と物体との衝突抑制、具体的には衝突回避又は衝突被害の軽減を図る装置であり、ブレーキ装置31と、シートベルト装置32と、警報装置33と、を備えている。
【0019】
ブレーキ装置31は、車両ECU22から出力される衝突回避信号に基づいて、自車両を減速させる。シートベルト装置32は、車両ECU22から出力される衝突回避信号に基づいて、シートベルトを巻き取ってシートベルトを緊張させる。警報装置33は、車両ECU22から出力される衝突回避信号に基づいて、運転者等に衝突可能性を報知する装置であり、例えば自車の車室内に設置されたスピーカやブザー等の聴覚的に報知する装置、ディスプレイ等の視覚的に報知する装置が存在する。
【0020】
車両ECU22には、ヨーレートセンサ13、操舵角センサ14、車速センサ15が接続されている。ヨーレートセンサ13は、たとえば自車両の中央位置に設けられており、自車両の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号を車両ECU22に出力する。操舵角センサ14は、たとえば車両のステアリングロッドに取り付けられており、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化量に応じた操舵角信号を車両ECU22に出力する。車速センサ15は、たとえば自車両のホイール部分に取り付けられており、車輪の回転方向を検出するとともに、車輪速度に応じた車速信号を車両ECU22に出力する。
【0021】
例えば車両ECU22は、自車両周辺の移動物としての他車両を検出し、自車両と他車両との相対距離RTDを相対速度RVで割った衝突時間である相対衝突時間TTCに基づいて安全装置30を作動させる衝突抑制制御を実施する。ここで相対距離RTDとしては、レーダ装置12から送信される相対距離と画像処理ECU21から送信される相対距離とを結合(フュージョン)させた距離を用いることができる。また、相対速度RVとしては、レーダ装置12から送信される相対速度と画像処理ECU21から送信される相対速度とを結合(フュージョン)させた速度を用いることができる。
【0022】
ところで、図2に示すように、自車線L1を直進する自車両M1が、交差点CRにおいて右折することで、対向車線L2を横切る側に旋回することがある。この場合、自車両M1の走行進路と、対向車線L2を直進する他車両である対向車両M2の走行進路とが交差することから、車両ECU22は、対向車両M2との衝突抑制を図るべく安全装置30を作動させる。ここで、相対衝突時間TTCに基づいて安全装置30が作動される構成では、自車両M1が旋回している際に対向車両M2が高速で直進してくるシーン、すなわちいわゆる右直シーンにおいて、相対速度RVが大きくなるため相対衝突時間TTCが短くなり、相対距離RTDによらず安全装置30が不要に作動されることが懸念される。
【0023】
そこで、本実施形態では、衝突抑制制御において、自車両M1が右折のために旋回し、かつ対向車線L2を横切る前の右折旋回状態であることを判定し、右折旋回状態であると判定された場合に、相対衝突時間TTCに代えて横衝突時間CTTに基づいて安全装置30を作動させるようにした。ここで横衝突時間CTTは、対向車両M2の直進進行方向DXに直交する方向である横方向DYにおいて対向車両M2の直進進路に沿って定められる車両通行エリアER1(図6参照)までの距離である横方向距離CTDを、横方向DYにおける自車両M1の速度である横方向速度CVで割った時間である。この場合、横衝突時間CTTは、自車両M1が右折旋回状態にあり、かつ対向車両M2が交差点CRを直進する右直シーンにおいて、自車両M1が対向車線L2を横切る際に対向車両M2との衝突の可能性が生じるまでの所要時間として算出され、仮に対向車両M2が高速で直進してくる状況にあっても、安全装置30の不要な作動を抑制できる。なお、本実施形態において、右折は「右左折」の一例であり、右折旋回状態は「右左折旋回状態」の一例である。
【0024】
図3に、本実施形態の衝突抑制制御処理のフローチャートを示す。車両ECU22は、自車両M1の走行時において、所定周期毎に衝突抑制制御処理を繰り返し実施する。
【0025】
図3では、まずステップS11において、レーダ装置12及び画像処理ECU21から送信される移動物の検知情報に基づいて、対向車線L2を直進する対向車両M2が存在しているか否かを判定する。ステップS11で否定判定すると、本処理を終了する。また、ステップS11で肯定判定すると、ステップS12において、対向車両M2の位置情報として、対向車両M2の相対位置を取得する。
【0026】
その後、ステップS13では、自車両M1が右折旋回状態になっているか否かを判定する旋回判定処理を実施する。その旋回判定処理を、図4のフローチャートにより説明する。
【0027】
図4において、ステップS31では、自車両M1の右折旋回が開始される前である否かを判定する。このとき、自車両M1が直進走行している場合、又は自車両M1が直進状態から旋回状態に移行する移行開始時点では、ステップS31で肯定判定してステップS32に進む。また、既に右折旋回の開始後であると判定されている場合には、ステップS31で否定判定してステップS34に進む。
【0028】
ステップS32では、自車両M1が直進状態から右折のための旋回を開始したか否か、すなわち右折旋回状態になったか否かを判定する。具体的には、自車両M1のウインカが右折指示されており、かつ自車両M1の旋回半径が所定の旋回判定値よりも小さくなっていれば、自車両M1が右折旋回を開始したとしてステップS32で肯定判定する。なお、本実施形態において、ステップS32の処理が「旋回開始判定部」に相当する。
【0029】
自車両M1の旋回半径が旋回判定値よりも小さくなっているか否かは、例えば自車両M1の走行経路における推定Rが所定値よりも小さいか否かに基づいて判定されるとよい。推定Rは、ヨーレートセンサ13により検出されたヨーレートを、車速センサ15により検出された車速で割ることで算出される。なお、自車両M1の旋回半径が旋回判定値よりも小さくなっているか否かを、操舵角センサ14により検出された操舵角が所定値よりも大きいか否かに基づいて判定することも可能である。
【0030】
なお、ステップS32において、自車両M1が右折旋回状態になったか否かの判定において、操舵角センサ14により検出された操舵角を用い、自車両M1が右折旋回状態になる前に自車両M1が直進していたこと、すなわち、自車両M1がふらつき状態でなかったことを判定してもよい。これにより、自車両M1の右折旋回状態とふらつき状態とを区別することが可能である。
【0031】
ステップS32で肯定判定するとステップS33に進む。ステップS33では、自車両M1が右折旋回状態になった旨を判定する。ステップS32で否定判定した場合には、そのまま本処理を終了する。例えば自車両M1が直進走行している場合には、ステップS32が否定される。
【0032】
また、ステップS34では、自車両M1の右折旋回の開始後において自車両M1が少なくとも車両通行エリアER1まで前進し、右折旋回状態が終了したか否かを判定する。この場合、自車両M1が、旋回開始後に車両通行エリアER1まで前進したこと、又は車両通行エリアER1内の所定位置まで前進したことに基づいて、右折旋回状態が終了したことを判定する。具体的には、自車両M1の旋回開始の時点からの自車両M1の移動距離が所定距離になった場合に、自車両M1が、車両通行エリアER1又は車両通行エリアER1内の所定位置まで前進したとして、右折旋回状態が終了したと判定する。なお、本実施形態において、ステップS32の処理が「旋回終了判定部」に相当する。
【0033】
なお、ステップS34において、自車両M1の旋回開始の時点からの自車両M1の移動距離に代えて、自車両M1の旋回開始の時点からの経過時間を用い、その経過時間に基づいて、自車両M1が、車両通行エリアER1又は車両通行エリアER1内の所定位置まで前進したこと、すなわち、右折旋回状態が終了したことを判定してもよい。また、旋回開始時からの自車両M1の移動距離による判定と、旋回開始時からの経過時間のよる判定とをそれぞれ行う構成とし、それらのうちいずれか早い成立に基づいて、自車両M1が、車両通行エリアER1又は車両通行エリアER1内の所定位置まで前進したことを判定してもよい。
【0034】
要するに、ステップS34では、自車両M1の旋回開始の時点からの自車両M1の移動距離及び経過時間の少なくともいずれかを用い、自車両M1が、その進行経路上で車両通行エリアER1の一端から他端までの間の所定位置まで前進したか否かを判定することにより、右折旋回状態が終了したことを判定するものであればよい。
【0035】
その他、以下の手法により自車両M1の右折旋回状態が終了したことを判定してもよい。例えば、自車両M1の旋回半径が所定の旋回終了判定値よりも大きくなっている場合に、自車両M1の右折旋回状態が終了したと判定してもよい。この場合、自車両M1の走行経路における推定Rが所定値よりも大きい場合、又は操舵角センサ14により検出された操舵角が所定値よりも小さい場合に、自車両M1の旋回半径が旋回終了判定値よりも大きくなっていると判定する。
【0036】
ステップS34で肯定判定するとステップS35に進む。ステップS35では、自車両M1の右折旋回状態が終了した旨を判定する。ステップS34で否定判定した場合には、そのまま本処理を終了する。
【0037】
図3に戻り、ステップS14では、ステップS13での判定結果が、今現在、右折旋回状態であるとするものか否かを判定する。そして、右折旋回状態であれば、ステップS14を肯定してステップS15に進み、右折旋回状態でなければ、ステップS14を否定してステップS21に進む。
【0038】
ステップS15では、自車両M1の右折旋回の開始時に、対向車線L2における所定の右直エリアER2内に対向車両M2が存在しているか否か、すなわち右直シーンであるか否かを判定する。図2に示すように、右直エリアER2は、対向車線L2において自車両M1から所定の距離範囲(距離D1~距離D2の範囲)で定められるものであり、より具体的には、自車両M1が右折のために交差点内で待機する場合に、対向車線L2の交差点手前位置に右直エリアER2が定められるようになっている。なお、本実施形態において、右直エリアER2が「直進エリア」に相当する。
【0039】
そして、右直エリアER2内に対向車両M2が存在していれば、ステップS15を肯定してステップS16に進み、右直エリアER2内に対向車両M2が存在していなければ、ステップS15を否定してステップS21に進む。この場合、対向車両M2に対向車両M2が存在していても、その対向車両M2が右直エリアER2外であれば、ステップS15が否定される。
【0040】
ここで、自車両M1が右折旋回状態でない、又は右直シーンでないと判定された場合、すなわちステップS14,S15のいずれかで否定判定された場合には、ステップS21~S23において、相対衝突時間TTCに基づいて安全装置30を作動させる衝突抑制制御を実施する。以下、ステップS21~S23の衝突抑制制御を第1制御とよぶ。
【0041】
第1制御では、まずステップS21において、相対衝突時間TTCを算出する。相対衝突時間TTCは、相対距離RTD及び相対速度RVを用いて、以下の(式1)のように表される。
【0042】
TTC=RTD/RV・・・(式1)
図5に示すように、相対距離RTDは、自車両M1の進行方向における自車両M1と対向車両M2との間の距離である。
【0043】
ステップS22では、ステップS21で算出された相対衝突時間TTCが、所定の第1時間閾値Tthよりも短いか否かを判定する。ステップS22で肯定判定すると、ステップS23において、安全装置30を作動させ、本処理を終了する。一方、ステップS22で否定判定すると、安全装置30を作動させることなく本処理を終了する。
【0044】
一方、自車両M1が右折旋回状態であり、かつ右直シーンであると判定された場合、すなわちステップS14,S15で共に肯定判定された場合には、ステップS16~S18において、横衝突時間CTTに基づいて安全装置30を作動させる衝突抑制制御を実施する。以下、ステップS16~S18の衝突抑制制御を第2制御とよぶ。
【0045】
第2制御では、まずステップS16において、横衝突時間CTTを算出する。横衝突時間CTTは、横方向距離CTD及び横方向速度CVを用いて、以下の(式2)のように表される。
【0046】
CTT=CTD/CV・・・(式2)
図6に示すように、横方向距離CTDは、横方向DYにおいて、自車両M1から、対向車両M2の直進進路に沿って定められる車両通行エリアER1までの距離である。車両通行エリアER1は、自車両M1側の境界部(図の左端)が、対向車両M2の自車両M1側の側方端部を基準として定められ、横方向DYに車幅相当の幅寸法を有するエリアであり、対向車両M2の直進進行方向DXに沿って延びるように設定される。
【0047】
なお、車両通行エリアER1は、交差点CRを挟んで両側の対向車線L2を繋ぐエリアとして設けられていてもよく、かかる場合には、車両通行エリアER1の幅が対向車線L2と同じ幅で設定される。
【0048】
また、横方向速度CVは、自車速度の横方向成分であり、対向車両M2の直進進行方向DXと、旋回状態にある自車両M1の進行方向との間の角度θ、自車速度PVを用いて、以下の(式3)のように表される。
【0049】
CV=PV×sinθ・・・(式3)
ステップS17では、ステップS16で算出された横衝突時間CTTが、所定の第2時間閾値Cthよりも短いか否かを判定する。ステップS17で肯定判定すると、ステップS18において、安全装置30を作動させ、本処理を終了する。一方、ステップS17で否定判定すると、安全装置30を作動させることなく本処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS16~S18の処理が「制御部」に相当する。
【0050】
上記第2制御では、自車両M1が右折旋回状態であり、かつ右直シーンであると判定されている期間内において、横衝突時間CTTが所定時間としての第2時間閾値Cthよりも短ければ、安全装置30が作動されるものとなっている。
【0051】
第2制御に用いられる横衝突時間CTTは、自車速度PVの横方向成分である横方向速度CVに基づいて算出されるため、対向車両M2の対向車速に依存しない。そのため、自車両M1が右折旋回状態であり、かつ右直シーンであると判定される期間内において、対向車両M2が高速で直進してくることに起因して安全装置30の不要作動が生じるといった不都合が抑制される。
【0052】
また、衝突抑制制御処理では、自車両M1が右折旋回を開始したとの判定後に自車両M1が少なくとも車両通行エリアER1まで前進したことに基づいて、右折旋回状態が終了したと判定され、その終了判定に伴い、第2制御(横衝突時間CTTによる衝突抑制制御)から第1制御(相対衝突時間TTCによる衝突抑制制御)に切り替えられる。ここで、図2に示すように、自車両M1の走行車線が、右折旋回に伴いL1からL3に切り替えられる場合に、車線L3の対向車線L4に他車両M3が存在していることが考えられる。例えば、他車両M3が、対向車線L4を自車両M1側に直進していることが考えられる。この場合、自車両M1の右折旋回が終了した後も第2制御(横衝突時間CTTによる衝突抑制制御)が有効になっていると、他車両M3を対象に安全装置30が不要に作動されることが懸念される。この点、自車両M1の旋回終了判定に伴い第2制御が終了されるため、他車両M3に対する安全装置30の不要作動が抑制される。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0054】
・本実施形態では、自車両M1が右折旋回し、かつ対向車線L2を横切る前の右折旋回状態であることを判定した。そして、右折旋回状態であると判定された場合に、対向車両M2の直進進行方向DXに直交する方向である横方向DYにおいて対向車両M2の直進進路に沿って定められる車両通行エリアER1までの距離である横方向距離CTDを、横方向DYにおける自車両M1の横方向速度CVで割った横衝突時間CTTに基づいて、安全装置30を作動させるようにした。この場合、横衝突時間CTTは、右折旋回状態の自車両M1が、対向車線L2を横切る際に対向車両M2との衝突の可能性が生じるまでの所要時間として算出され、仮に対向車両M2が高速で直進してくる状況にあっても、安全装置30の不要な作動を抑制できる。
【0055】
・自車両M1が直進状態から右折旋回を開始して右折旋回状態になったことを判定するとともに、旋回を開始したとの判定後に自車両M1が少なくとも車両通行エリアER1まで前進したことに基づいて、右折旋回状態が終了したことを判定するようにした。また、自車両M1が旋回を開始したと判定されてから、その旋回が終了したと判定されるまでの期間において、対向車線L2において自車両M1から所定の距離範囲(D1~D2)で定められる所定の右直エリアER2内に対向車両M2が存在していることを条件に、横衝突時間CTTに基づいて、安全装置30を作動させるようにした。
【0056】
この場合、旋回開始後において、対向車両M2に対する適正な衝突抑制制御を実施することができる。また、横衝突時間CTTに基づく衝突抑制制御が、自車両M1の旋回開始から旋回終了までの期間、つまり右直シーン開始から右直シーン終了までの期間に限って行われることから、自車両M1の右折旋回が終了して別の走行車線に移行する場合に、その移行後の走行車線に他車両M3が存在していても、その他車両M3を回避対象として不要に安全装置30が作動されることを抑制することができる。
【0057】
・右直エリアER2を、対向車線L2における自車両M1からの所定の距離範囲で定めておき、その右直エリアER2内に対向車両M2が存在している場合に、横衝突時間CTTが所定時間(第2時間閾値Cth)よりも短ければ、安全装置30を作動させるようにした。この場合、自車両M1と、対向車線L2を直進してくる対向車両M2との間の距離を加味しつつ、横衝突時間CTTを用いて適正に安全装置30を作動させることができる。
【0058】
・自車両M1の右折旋回が終了して別の走行車線に移行する場合に、その移行後の走行車線における他車両M3を対象とする不要作動を抑制するには、自車両M1の旋回終了を適正に判定することが望ましい。この点、自車両M1の旋回開始の時点からの自車両M1の移動距離や経過時間を用いて、自車両M1の旋回が終了したことを判定したり、自車両M1が、その進行経路上で車両通行エリアER1の一端から他端までの間の所定位置まで前進したか否かを判定することにより、右折旋回状態が終了したことを判定するようにしたため、右折直後における不要作動を適切に抑制できる。
【0059】
・自車両M1が自車線L1を直進する状態では、自車両M1の進行方向前方に他車両が存在することから相対衝突時間TTCに基づいて安全装置30を作動させることが好ましい。本実施形態では、右直シーンでないと判定された場合に、相対衝突時間TTCに基づいて安全装置30を作動させる第1制御を実施し、右直シーンであると判定された場合に、横衝突時間CTTに基づいて安全装置30を作動させる第2制御への切替を実施するようにした。これにより、自車両M1の走行状態に応じた衝突時間を用いて、安全装置30を適正に作動させることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、自車両M1の右折旋回の開始時に、右直エリアER2内に対向車両M2が存在していると判定されたことを条件に、横衝突時間CTTに基づいて安全装置30を作動させる構成としたが、これを変更してもよい。例えば、自車両M1が右折旋回を開始してから、その旋回が終了するまでの期間内の中間時点でのタイミングで、右直エリアER2内に対向車両M2が存在していると判定されたこと条件に、横衝突時間CTTに基づいて安全装置30を作動させるようにしてもよい。この場合、右直エリアER2内の対向車両M2が所定時間以上、カメラ11又はレーダ装置12により検知されている場合に、右直シーンであると判定されるとよい。
【0062】
・右直エリアER2における自車両M1からの距離範囲を、対向車両M2の速度に基づいて設定する構成としてもよい。具体的には、車両ECU22は、図7に示す関係を用い、対向車両M2の速度に基づいて、右直エリアER2を規定する距離D2(図2参照)を可変に設定する。距離D1は固定値とする。この場合、対向車両M2の速度が大きいほど、距離D2が大きい値として設定されるため、対向車両M2が高速であるほど、右直エリアER2として広いエリア、すなわち直進進行方向DXに長いエリアが設定される。この場合、車両ECU22が「設定部」に相当する。
【0063】
自車両M1が交差点CRを右折旋回する場合には、対向車両M2が高速であるほど、交差点CRから遠い位置に存在する対向車両M2について自車両M1との衝突可能性が高まることになる。この点、右直エリアER2における自車両M1からの距離範囲(D1~D2)を、対向車両M2の速度に基づいて設定するようにすることで、対向車両M2の速度にかかわらず適正に安全装置30を作動させることができる。
【0064】
なお、図7に示す関係において、距離D2の最小値を「D1」とし、対向車両M2の速度がゼロの場合に、D2=D1としてもよい。この場合、対向車両M2の速度がゼロであれば、距離範囲(D1~D2)の幅がゼロになり、右直エリアER2が設定されないこととなる。この場合、交差点手前で停止状態になった対向車両M2を対象とする安全装置30の不要作動を抑制することができる。
【0065】
・上記実施形態では、車両の走行道路が左側通行道路である場合における衝突抑制制御処理の例を示したが、右側通行道路においても、左右を逆にすることで同等の処理を行うことができる。
【0066】
・上記実施形態では、単眼カメラであるカメラ11による検知結果とレーダ装置12による検知結果とを用いて物体検知を行う構成、すなわちフュージョン手法により物体を検知する構成を用いたが、これを変更してもよい。例えばカメラ11としてステレオカメラを用い、そのステレオカメラの検知結果に基づいて物体を検知する構成でもよい。
【0067】
・上記実施形態では、車両ECU22が車両制御装置に相当する例を示したが、これに限られず、画像処理ECU21と車両ECU22とを合わせたものが車両制御装置に相当してもよい。つまり、車両制御装置がカメラ11の撮像画像に基づいて、自車両周辺の移動物の検知情報を生成してもよい。
【0068】
・本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
22…車両ECU、30…安全装置、CTT…横衝突時間、DY…横方向、ER1…車両通行エリア、L1…自車線、L2…対向車線、M1…自車両、M2…対向車両。
図1
図2
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図5
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図7