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特許7410849線状物の先端移動方法、および、制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】線状物の先端移動方法、および、制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020501732
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005611
(87)【国際公開番号】W WO2019163671
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-11-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2018031263
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北井 基善
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】大山 健
【審判官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-94471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドで把持した線状物の先端を目標位置に移動させる際の、線状物の先端移動方法であって、
前記目標位置が孔であり、
前記線状物は先端が曲がっており、
前記ロボットハンドで把持した前記線状物の前記先端の位置を計測する工程および前記先端の向きを計測する工程と、
計測した前記先端の位置に基づき、前記先端を前記目標位置に移動させる工程と、
計測した前記先端の向きに基づき、前記先端の向きを前記孔の中心軸の方向に一致させる工程と、
前記先端の向きと前記孔の中心軸の方向が一致した状態で前記孔の中心軸の方向に沿って前記先端を移動させることにより、前記先端を前記孔の内部に挿入する工程と、
を備える、線状物の先端移動方法。
【請求項2】
前記先端の向きは、前記先端から所定距離位置までの前記線状物の形状に基づいて決定する、請求項1に記載の線状物の先端移動方法。
【請求項3】
前記先端を前記目標位置に移動させる工程は、前記先端が予め定めた手前位置を通過し、前記手前位置における前記先端の向きを前記孔の中心軸の方向に一致させて、前記先端を移動させる、請求項1または請求項2のいずれかに記載の線状物の先端移動方法。
【請求項4】
ロボットに設けられたロボットハンドによる線状物の先端の目標位置への移動を制御する制御装置であって、
前記目標位置が孔であり、
前記線状物は先端が曲がっており、
前記線状物の三次元形状を取得する三次元カメラから前記線状物の三次元形状を取得し、
前記三次元形状から前記線状物の先端の位置および前記先端の向きを取得し、
前記線状物の前記先端の位置および前記先端の向きに基づき、前記先端の向きを前記孔の中心軸の方向に一致させて前記先端を前記孔の中心軸まで移動させ、前記先端の向きと前記孔の中心軸の方向が一致した状態で前記孔の中心軸の方向に沿って前記先端を移動させることにより、前記先端を前記孔の内部に挿入するための情報を前記ロボットハンドを有する前記ロボットに通知する、制御装置。
【請求項5】
前記制御装置が前記三次元カメラに含まれる、請求項4に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットハンドを用いて線状物を把持した場合の、線状物の先端移動方法、制御装置、および、三次元カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を三次元カメラ等で認識して自律的に把持するロボットの普及が進んでいる。線状物を把持することについては、たとえば特開2014-176917号公報(特許文献1)に、線状体の組み付け作業を行なうロボット装置であって、一端が固定された線状体の固定端近傍を把持したのち、把持部を所定の軌跡でスライドさせて他端に移動させる装置が記載されている。これにより、線状物の一例である電線に付いた癖等により正確に推定することが困難な他端を素早く把持できるとされる。
【0003】
特開2016-192138号公報(特許文献2)には、ワイヤーハーネスの製造方法および画像処理方法に関する発明が開示され、ワイヤーハーネスを製造する過程において、電線集合体の三次元形状が測定されることによって加工位置が特定される加工位置特定処理が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-176917号公報
【文献】特開2016-192138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットハンドで線状物としてたとえば電線等を保持し、所定のターゲット位置に電線の先端を移動させる制御を行なう場合が考えられる。たとえば、対象物に設けられた貫通孔に、その電線の先端を挿入する制御が想定される。ロボットハンド側では、ロボットハンドで把持した領域から先端側に向っては、その線状物は真っ直ぐに延びていると認識している。
【0006】
しかしながら、実際には、ロボットハンドで把持した領域から先端側に向って、線状物が曲がっている場合が想定される。そのような場合には、線状物の先端位置を認識した後に、ロボットハンド側の移動を実施して、対象物に設けられた貫通孔に、その電線の先端を移動させる必要がある。
【0007】
この発明は、上記課題を解決することを目的としており、ロボットハンドで線状物を保持した場合の、線状物の先端移動方法、制御装置、および、三次元カメラに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この線状物の先端移動方法においては、ロボットハンドで把持した線状物の先端を目標位置に移動させる際の、線状物の先端移動方法であって、上記ロボットハンドで把持した上記線状物の上記先端の位置を計測する工程と、計測した上記先端の位置に基づき、上記先端を上記目標位置に移動させる工程と、を備える。
【0009】
他の形態においては、上記先端の位置を計測する工程は、さらに、上記先端の向きも計測する工程を含む。
【0010】
他の形態においては、上記先端を上記目標位置に移動させる工程は、上記先端の向きを所定の向きに一致させる工程を含む。
【0011】
他の形態においては、上記先端の向きは、上記先端から所定距離位置までの上記線状物の形状に基づいて決定する。
【0012】
他の形態においては、上記先端を上記目標位置に移動させる工程は、上記目標位置が孔である。
【0013】
他の形態においては、上記先端を上記目標位置に移動させる工程は、上記先端が予め定めた手前位置を通過し、上記手前位置における上記先端の向きを所定の向きに一致させて、上記先端を移動させる。
【0014】
この制御装置においては、ロボットに設けられたロボットハンドによる線状物の移動を制御する制御装置であって、上記線状物の三次元形状を取得する三次元カメラから上記線状物の三次元形状を取得し、上記三次元形状から上記線状物の先端の位置を取得し、上記線状物の上記先端の位置に基づき、上記先端を目標位置に移動させるための情報を上記ロボットハンドを有する上記ロボットに通知する。
【0015】
他の形態においては、当該制御装置は、上記線状物の上記三次元形状から上記線状物の上記先端の向きを計測し、上記線状物の上記先端の向きを所定の向きに一致させて上記目標位置まで移動させるための情報を上記ロボットハンドを有する上記ロボットに通知する。
【0016】
この三次元カメラにおいては、ロボットに設けられたロボットハンドによる線状物の移動を制御する際に用いられる、上記線状物の三次元形状を取得する三次元カメラであって、当該三次元カメラは、制御装置を含み、上記制御装置は、上記三次元カメラから上記線状物の三次元形状を取得し、上記三次元形状から上記線状物の先端の位置を取得し、上記線状物の上記先端の位置に基づき、上記先端を目標位置に移動させるための情報を上記ロボットハンドを有する上記ロボットに通知する。
【発明の効果】
【0017】
この線状物の先端移動方法、制御装置、および、三次元カメラによれば、ロボットハンドで把持した領域から先端側に向って、線状物が曲がっている場合であっても、線状物の先端位置を認識した後に、ロボットハンド側の移動を実施して、対象物に設けられた貫通孔に、その電線の先端を移動させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】関連技術における線状物把持方法を実行する全体システムを示す図である。
図2】関連技術における線状物把持方法の工程フロー図である。
図3】関連技術における線状物把持方法の判定工程の工程フロー図である。
図4】関連技術における第1干渉領域および第1拡張干渉領域を示す図である。
図5】関連技術における第2干渉領域および第2拡張干渉領域を示す図である。
図6】関連技術における第1干渉領域の大きさを説明するための図である。
図7】関連技術における第1判定工程を説明するための図である。
図8】関連技術における第1予備判定工程を説明するための図である。
図9】実施の形態における線状物の先端移動方法を説明する概略図である。
図10】実施の形態における線状物の他の先端移動方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に基づいた実施の形態の先端曲り量計測方法について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。図においては、実際の寸法比率では記載しておらず、構造の理解を容易にするために、一部比率を異ならせて記載している。
【0020】
以下の説明においては、線状物の一例として電線を用いた場合について説明しているが、電線に限定されるものではない。この説明での線状物とは、細長い形状を有する物体であれば何でもよい。線状物の一例としては、電線、ワイヤーハーネス、はんだ、紐、糸、繊維、ガラス繊維、光ファイバ、チューブ、乾麺等が挙げられる。細線を束にした電線に限定されず、一本線から構成される電線等も含まれる。特に、たわみが生じるなどして形状が変化する線状物や、直線ではない線状物の場合、本実施の形態の効果がより顕著に表れる。
【0021】
(関連技術:線状物把持方法および制御装置)
以下、図1から図8を参照して、関連技術として、線状物把持方法および制御装置の一例について説明する。
【0022】
図1において、線状物把持方法を実施するための全体システム10は、ロボット20と、三次元カメラ31と、制御装置32とを有する。作業空間には、電線W1、電線W2、電線W3から構成されるワイヤーハーネスWが配置されている。
【0023】
ロボット20としては、公知の多関節ロボットを好適に利用することができる。ロボットのアーム21の先端にはロボットハンド22が備えられており、ロボットハンドの一対の把持部23、23で線状物を把持する。
【0024】
三次元カメラ31は、電線W1、電線W2、電線W3の三次元形状を計測できるものであれば特に限定されない。好ましくはステレオカメラを用いる。ステレオカメラは線状物の三次元形状を高速に計測するのに好ましい。
【0025】
ステレオカメラは2台のカメラを含み、異なる視点から撮像された2枚の画像上で計測したい点の対応点を求め、2台のカメラの位置関係から3角測量の原理によって計測点の三次元位置を算出する。ステレオ方式による線状物の三次元計測に関しては、たとえば、特開平2-309202号公報には、多数の線状物を2台のカメラで撮像し、2つの画像中の輝線の傾きと輝線間の距離を特徴として照合することにより対応点を決定することが記載されており、これによって、対応点の決定にかかる処理時間を短縮できるとされる。
【0026】
ステレオ方式において、一方の画像の視点と計測点を結ぶ直線を他方の画像上に(特願2017―221045号参照)投影した直線をエピポーラ線といい、一方の画像上の点に対応する他方の画像上の対応点は必ず他方の画像上のエピポーラ線上に投影されている。
【0027】
このことを利用して、線状物の上のある点の対応点を求めるには、他方の画像上で線状物とエピポーラ線の交点を求めればよく、高速に線状物の三次元形状を計測できる。線状物が互いに異なる色に色分けされている場合には、カラーカメラを用いることにより、画像から該当する色を抽出してから対応点を求めることで、各線状物の三次元形状をより高速に求めることができる。
【0028】
制御装置32は、図示しない通信部によって三次元カメラ31と通信し、ステレオカメラから電線W1、電線W2、電線W3の三次元形状を取得する。制御装置は図示しない演算部によって、ステレオカメラから取得した三次元形状に基づいて、ロボットハンド22が線状物を把持する際に他の線状物と干渉するか否かを判定し、把持すべき目標線状物を決定するための各種演算を行なう。
【0029】
制御装置は上記通信部を介して、演算結果に基づいて、把持すべき目標線状物の把持位置をロボット20に通知する。把持位置をロボット20に直接通知するだけでなく、制御装置32とロボット20との間にロボットの動作を制御する別の装置(たとえば、ロボットコントローラや制御用パソコン等)を設け、それらの装置に対して通知しても良い。
【0030】
図2を参照して、本関連技術の線状物把持方法を以下に説明する。この関連技術の線状物把持方法は、複数の電線W1、電線W2、電線W3の三次元形状を計測する工程(S1)、計測された三次元形状に基づいてロボットハンド22が線状物を把持する際に他の線状物が干渉するか否かを判定する判定工程(S2)、判定工程S2における判定結果に基づいて決定された目標線状物を把持する工程(S3)を含む。
【0031】
複数の電線W1、電線W2、電線W3の三次元形状を計測する工程S1は三次元カメラ31によって実施される。ステレオカメラは線状物のある作業空間を撮像し、2枚の画像を演算処理して電線W1、電線W2、電線W3のそれぞれの三次元形状を取得する。線状物の三次元形状は、直交座標系または斜交座標系で表され、好ましくは直交座標で表される。
【0032】
判定工程S2は制御装置32によって実施される。判定工程については詳細を後述する。
【0033】
目標線状物を把持する工程S3はロボット20によって実施される。ロボットは、把持すべき目標線状物の把持位置を制御装置32から通知され、ロボットアーム21およびロボットハンド22を移動させて把持動作を実行する。
【0034】
以下に判定工程S2を詳細に説明する。
図3を参照して、本関連技術の判定工程S2では、線状物の三次元形状の取得(S21)、注目線状物の選択(S22)、注目線状物の把持位置の決定(S23)、ロボットハンド待機位置の取得(S24)、各種干渉領域の設定(S51~S54)と各種干渉判定(S61~S64)を実施する。
【0035】
制御装置32はまず、三次元カメラ31から電線W1、電線W2、電線W3の三次元形状を取得する(S21)。
【0036】
次に、制御装置32は、ロボットハンド22で把持しようとする注目線状物を選択する(S22)。以下において、電線W1を把持しようとする注目線状物、電線W2と電線W3を注目線状物以外の線状物(他の線状物)として説明する。制御装置は、電線の色などの指定を外部から受けて、その指示に基づいて注目線状物を決定してもよい。好ましくは、制御装置は自律的(特願2017―221045号参照)に注目線状物を選択する。
【0037】
たとえば、電線W1、電線W2、電線W3が台の上に置かれている場合、取得した三次元形状に基づいて最も高い位置、すなわち最も上にある線状物を注目線状物として選択することができる。線状物が重なり合って置かれている場合でも、上にある線状物ほど、その線状物を把持するときに他の線状物が干渉する確率が低いからである。
【0038】
次に、制御装置32は、注目すべき電線W1の把持位置を決定する(S23)。たとえば、注目線状物の先端から何mmというような予め定められた条件に基づいて、制御装置が注目線状物の把持位置を三次元座標として算出する。
【0039】
次に、制御装置32は、ロボットハンド22の待機位置を取得する(S24)。ロボットハンド22の待機位置が予め定められている場合は、その座標を待機位置として取得する。待機位置を線状物の三次元形状に基づいて決定する場合、たとえば線状物から所定距離離れた上方に決定するなどの場合は、演算により待機位置を取得する。
【0040】
制御装置32はロボットハンド22の現在位置をロボット20から取得し、ロボットハンド22の現在位置が待機位置と異なる場合は、ロボットハンド22を待機位置に移動させる。ロボットハンド22の待機位置と電線W1の把持位置を結ぶ線分が、ロボットハンド22が把持動作を実行するときのおおよその移動経路を与える。
【0041】
次に、制御装置32は、ロボットハンド22と他の電線W2、電線W3との干渉判定のために、注目線状物の把持位置を含むいくつかの干渉領域を設定する。図3では、第1干渉領域、第1拡張干渉領域、第2干渉領域、第2拡張干渉領域の順に設定している。すべての他の線状物の1本毎に、当該他の線状物が上記それぞれの干渉領域に含まれるか否かを判定する干渉判定を行なう。
【0042】
各線状物についての干渉判定は、線状物上の点または線分を長さ方向にずらしながら、その点が干渉領域内にあるかまたはその線分が干渉領域と交差するかを判定することによって行なうことができる。図3では、第2拡張干渉領域に対する第2予備判定、第2干渉領域に対する第2判定、第1拡張干渉領域に対する第1予備判定、第1干渉領域に対する第1判定の順に実施している。以下に、図3の順番とは異なるが、各干渉領域とその領域に対する干渉判定とについて説明する。
【0043】
図4を参照して、第1干渉領域51に対する第1判定工程S61は、ロボットハンド22が電線W1を把持するときに他の電線W2、W3と干渉するか否かを判定する。
【0044】
第1干渉領域51は、電線W1の把持位置Pを含み、所定の形状および所定の大きさを有する平面状の領域である。第1干渉領域は、その中心に把持位置Pを含むことが好ましい。第1干渉領域の形状は特に限定されないが、好ましくは、多角形、円または楕円とする。第1干渉領域が多角形の場合は、好ましくは4角形、より好ましくは正方形である。計算の負荷が軽くなり、高速な判定が可能となるからである。第1干渉領域が多角形の場合、線状物の三次元形状を表す座標系(以下、単に「座標系」という)のいずれか2本の軸がなす平面に平行な辺を有する正方形を第1干渉領域とするのが特に好ましい。
【0045】
後述する第1拡張干渉領域をより小さくして第1予備判定の効率を向上できるからである。第1干渉領域が多角形でない場合は、好ましくは円である。同じく、計算の負荷が軽くなり、高速な判定が可能となるからである。
【0046】
第1干渉領域51の大きさは、大きすぎると実際には干渉しないのに干渉すると誤判定する確率が増大する。図6を参照して、ロボットハンド22の最大断面に外接する最小の円を円C1とすると、第1干渉領域は、好ましくは、円C1の2.0倍の直径を有する円に内包される大きさであり、より好ましくは、円C1と同じ大きさの円に内包される大きさである。
【0047】
一方、第1干渉領域が小さすぎると、実施には干渉するのに干渉しないと誤判定する確率が増大する。図6を参照して、ロボットハンド22が線状物を把持するために動作させる把持部23の最大断面に外接する最小の円を円C2とすると、第1干渉領域は、好ましくは、円C2(特願2017―221045号参照)と同じ大きさの円を内包できる大きさである。
【0048】
第1干渉領域51は、好ましくは、電線W1と直交する。第1干渉領域が注目線状物と直交するとは、把持位置Pにおいて注目線状物が伸びる方向が第1干渉領域と直角をなすことをいう。第1干渉領域を含む平面の方程式が容易に求められるからである。また、ロボットハンド22で線状物を把持する場合、線状物を真横から、つまり線状物と直角の方向から把持することが多いからである。注目線状物と直交する第1干渉領域内に他の線状物が存在する場合には、ロボットハンド22が注目線状物を真横から把持しない場合であっても、ロボットハンド22が当該他の線状物と干渉する蓋然性が高いからである。
【0049】
図7を参照して、第1判定工程S61は、対象とする他の電線W2上の線分Lと第1干渉領域51との交差判定によって行なうことができる。線分Lは、電線W2の三次元形状を表す点群のうち隣り合う2点S、T間の線分とすることができる。線分Lが第1干渉領域と交差するなら、線分L上のどこかの点が第1干渉領域に含まれる。交差判定は公知の方法で行なうことができる。たとえば、第1干渉領域51を含む平面Uの法線ベクトルNと、把持位置Pから線分Lの両端S、TへのベクトルPSおよびPTとの内積を取り、2つの内積の符号が異なる場合は線分Lは平面Uと交差する。線分Lと平面Uが交差する場合は、その交点が第1干渉領域51内にあるか否かを判定すればよい。
【0050】
図4を参照して、第1拡張干渉領域52に対する第1予備判定工程S62は、第1判定に先だって実施され、ロボットハンド22と他の電線W2、W3が干渉しない場合を、より高速な計算で発見するために行なう。
【0051】
第1拡張干渉領域52は第1干渉領域51を内包する空間領域である。第1拡張干渉領域の形状や大きさは特に限定されないが、好ましくは、第1干渉領域を内包し、すべての辺が座標系のいずれかの軸に平行な6面体のうち最小のものを第1拡張干渉領域として設定する。座標系が直交座標系の場合は、この6面体は直方体である。これにより、座標の大小比較を行なうだけで、第1予備判定が実施できる。
【0052】
具体的には、図8を参照して、第1拡張干渉領域52の8つの頂点A~Hの座標を図8のとおりとし、線分Lの一方の端点Sの座標を(xS,yS,zS)とすると、x1≦xS≦x2、かつ、y1≦yS≦y2、かつ、z1≦zS≦z2、であれば点Sは第1拡張干渉領域内にあり、そうでなければ点Sは第1拡張干渉領域外にある。
【0053】
第1拡張干渉領域52が第1干渉領域51を内包するので、第1予備判定によってハンドと他の線状物が干渉しないとの結果が得られた場合は、第1判定を省略できる。
【0054】
図5を参照して、第2干渉領域53に対する第2判定工程(S63)は、ロボットハンド22が電線W1の把持位置Pまで移動する経路で、他の電線W2、電線W3と干渉するか否かを判定する。
【0055】
第2干渉領域53は、電線W1の把持位置Pとロボットハンド22の待機位置Qとを結ぶ線分PQを含み、線分PQの両側に広がり所定の幅を有する平面状の領域である。第2干渉領域は、その幅方向の中心に線分PQを含むことが好ましい。第2干渉領域の形状は、特に限定されないが、好ましくは長方形または平行四辺形であり、より好ましくは、線分PQを線対称の対称軸とする長方形である。計算の負荷を軽くして、より高速に判定するためである。
【0056】
第2干渉領域53の幅は、広すぎると実際には干渉しないのに干渉すると誤判定する確率が増大する。第2干渉領域の幅は、好ましくは、図6の円C1の直径以下である。一方、第2干渉領域の幅が狭すぎると、実施には干渉するのに干渉しないと誤判定する確率が(特願2017―221045号参照)増大する。第2干渉領域の幅は、好ましくは、図6の円C2の直径以上である。
【0057】
第2干渉領域53は、好ましくは、電線W1との交角が最大となるように設定される。ロボットハンド22が電線W1に接近する際に、把持部23、23がそのような平面内を進むことが多いからである。
【0058】
第2判定工程S63は、第1判定工程S61と同様に、対象とする他の電線W2上の線分Lと第2干渉領域53との交差判定によって行なうことができる。
【0059】
第2拡張干渉領域54に対する第2予備判定工程(S64)は、第2判定に先だって実施され、ロボットハンド22と他の電線W2、電線W3が干渉しない場合を、より高速な計算で発見するために行なう。
【0060】
第2拡張干渉領域54は第2干渉領域53を内包する空間領域である。第2拡張干渉領域の形状や大きさは特に限定されないが、好ましくは、第2干渉領域を内包し、すべての辺が座標系のいずれかの軸に平行な6面体のうち最小のものを第2拡張干渉領域として設定する。座標系が直交座標系の場合は、この6面体は直方体である。これにより、座標の大小比較を行なうだけで、第2予備判定が実施できる。
【0061】
第2拡張干渉領域54が第2干渉領域53を内包するので、第2予備判定によってハンドと他の線状物が干渉しないとの結果が得られた場合は、第2判定を省略できる。
【0062】
判定の対象とする線分Lを電線W2の長さ方向にずらしながら上記判定工程S61~S64を繰り返して、他の電線W2との干渉判定が完了したら、次の他の電線W3について同じ処理を行なう。
【0063】
すべての他の電線W2、W3が干渉領域51~54に含まれないと判定された場合は、制御装置32は電線W1の把持位置をロボットハンド22で把持する際に他の線状物の干渉がないと判定する。その後、電線W1を目標線状物として、その把持位置をロボット20に通知する。
【0064】
いずれかの第1判定または第2判定で線分Lが第1干渉領域または第2干渉領域に含まれると判定された場合は、制御装置32は電線W1の把持位置をロボットハンド22で把持する際に他の線状物の干渉があると判定する。以後の判定工程を省略して工程S22に戻り、注目線状物を変えて同じ処理を繰り返す。制御装置32が自律的に次の注目線状物を選択する場合は、たとえば、先に三次元カメラ31から取得した電線W1~W3の三次元形状に基づいて、次に高い位置にある線状物を注目線状物として選択することができる。
【0065】
何れの線状物に注目しても他の線状物と「干渉あり」と判定された場合は、線状物全体を回転させて向きを変えたり、線状物を振ったり振動させたりして線状物同士の位置関係を変化させてから、再度各工程を実施してもよい。各注目線状物の把持位置から最も近い他の線状物までの距離を干渉距離として計算しておき、干渉距離の長い線状物から把持するようにしてもよい。これにより、把持が成功しやすい順番で把持動作を実行するようロボットに指示することができる。干渉距離は、干渉判定における第1干渉領域または第2干渉領域と他の線状物との交点から把持位置までの距離を用いることで簡易に計算することができる。
【0066】
以上のとおり、本関連技術の線状物把持方法によれば、線状物と他の線状物が干渉するか否かの判定結果に基づいて把持動作を実行するので、複数の線状物から1本の線状物を(特願2017―221045号参照)選んでロボットハンド22で把持することが可能となる。
【0067】
ロボットハンド22の他の線状物との干渉の有無は、ロボットハンド22側のCADデータと線状物の三次元形状データを用いて、多面体との交差の有無を計算することによって実施してもよい。しかしこの方法は判定の正確さにおいて優れるが、時間のかかる処理である。
【0068】
この関連技術では、注目線状物以外の線状物が第1干渉領域内に存在するか否かを、平面状の第1干渉領域と線状物との交差判定によって判定できるので、計算量が少なく、干渉の有無を高速に判定できる。第1干渉領域内に注目線状物以外の線状物が存在しない場合は、ロボットハンド22が他の線状物と干渉しないで注目線状物を把持できる蓋然性が高い。第2干渉領域についても同様である。
【0069】
各判定工程を実施する順番は、第1予備判定を第1判定に先立って行ない、第2予備判定を第2判定に先立って行なう以外は、特に限定されない。上記実施形態では、第2判定工程を先に、第1判定工程を後で実施したが、この順番を逆にしてもよい。上記関連技術では、線分Lを線状物の長さ方向にずらしながら、1つの線分毎にすべての判定工程を実施したが、ある線状物について一つの判定工程(たとえば第2予備判定工程)を終えてから、改めて同じ線状物について他の判定工程(たとえば第2判定工程)を実施してもよい。
【0070】
上記関連技術では、ロボットハンド22の待機位置取得(S24)に先立って注目線状物を選択したが(S22)、先にロボットハンド22の待機位置を取得し、その待機位置に基づいて注目線状物を選択してもよい。その場合は、注目線状物として最も待機位置側にある線状物を選択できる。最も待機位置側にある線状物として、待機位置の座標と当該線状物の把持位置の座標との距離が最も短い線状物を選択してもよい。これにより、把持する際に他の線状物と干渉する可能性の低い線状物を優先的に選択できる点で好ましい。
【0071】
ロボットハンド22が線状物を把持する際の姿勢(把持姿勢)は、把持部と線状物が略直角をなすように把持することが好ましい。把持部に対して把持位置から先端側の線状物の向きが略垂直であれば、把持した後に加工機等に挿入する際もロボットの制御が容易になるからである。好ましくは、待機位置において、把持した際に把持部と線状物とが直角をなす向きになるように、ロボットハンド22の姿勢を調整する。その後、ロボットハンド22は、待機位置から把持位置に向かって第2干渉領域に沿って移動する。これにより、ロボットハンド22の姿勢、ロボットハンド22の移動方向、ならびに第1および第2干渉領域の平面の向きが一致するため、高精度な干渉判定が可能となる。
【0072】
本発明によって線状物を把持したロボットハンド22が当該線状物を種々の製造装置・加工装置まで搬送してもよい。たとえば、把持した電線の先端をロボットハンド22によって移動させ、被膜剥き加工機や端子圧着装置等に挿入してもよい。電線の先端をコネクタ等の各種部品に挿入しワイヤーハーネスを製造する工程に用いてもよい。
【0073】
(実施の形態:線状物の先端移動方法、制御装置、および、三次元カメラ)
次に、上記のように説明した、ロボット20に設けられたロボットハンド22が当該線状物を種々の製造装置・加工装置まで搬送する場合について検討する。具体的には、制御装置32(図1参照)により、ロボット20に設けられたロボットハンド22による線状物W1の移動を制御する。制御装置32は、線状物W1の三次元形状を取得する三次元カメラ31から線状物W1の三次元形状を取得し、この三次元形状から線状物W1の先端の位置を取得し、線状物W1の先端W1sの位置に基づき、先端W1sを目標位置に移動させるための情報をロボットハンド22を有するロボット20に通知することを想定している。
【0074】
図1に示した全体システム10においては、ロボットハンド22を有するロボット20、三次元カメラ31、および、制御装置32を有する構成としている。この制御装置32は、ロボット20および三次元カメラ31から独立した制御装置、ロボット20が備える制御装置、および、三次元カメラ31が備える制御装置のいずれであってもよい。
【0075】
上記したように、ロボットハンド22が線状物を把持する際の姿勢(把持姿勢)は、把持部と線状物が略直角をなすように把持することが好ましい。しかしながら、ある程度の柔軟性を有する線状物を用いた場合には、ロボットハンド22で把持した線状物の先端側が真っ直ぐに延びておらず、曲がっている場合が想定される。
【0076】
このような場合に、ロボットハンド22側が、線状物の先端側の曲りを認識しないまま線状物を搬送した場合には、所定の目標位置に線状物の先端を搬送できない状況となる。
【0077】
そこで、制御装置32は、線状物の三次元形状から線状物の先端の向きを計測し、線状物の先端の向きを所定の向きに一致させて目標位置まで移動させるための情報をロボットハンドを有するロボットに通知するようにするとよい。
【0078】
以下の実施の形態においては、線状物を把持したロボットハンド22による線状物を所定位置に搬送する場合の、線状物の先端曲り量計測方法について以下説明する。以下の説明では、所定位置への搬送の一例として、ターゲットTGに設けられた孔TGHに、線状物として電線W1の先端W1sを挿入させる場合について説明する。
【0079】
ここで、線状物の直径は、三次元カメラで認識できる範囲であればよく、好ましくは0.01mm~10cmである。ターゲットTGに設けられた孔TGHは、線状物を挿入することができる大きさであればよく、好ましくは直径が0.01mm~15cm、孔深さは線状物の直径の2倍以上が好ましい。
【0080】
図9を参照して、ロボットハンド22により電線W1を把持した状態を示している。さらに電線W1の先端W1sは、ロボットハンド22に対して略直角をなすように延びておらず曲がった状態となっている。
【0081】
ロボットハンド22により把持された電線W1の先端W1sの位置を計測する。この時、ロボットハンド22に対して略直角に延びる方向をL1とした場合に、電線W1の先端W1sがL1に対してどれだけずれているかの先端曲り量を計測してもよい。先端W1sの位置の計測においては、上述した三次元カメラ31を用いて三次元形状を計測できる。これにより、先端W1sの位置やズレ量X1を知ることができる。
【0082】
さらに、電線W1の先端W1sから所定距離位置(図9中の距離D1)までの形状を測定し、平均ベクトルを求めることで、電線W1の先端の延びる向きを決定することができる。また、電線W1の先端W1sと、先端W1sから孔への挿入長さの位置とを結ぶベクトルを先端の向きとしてもよい。
【0083】
これにより、ターゲットTGに設けられた孔TGHに先端W1sを挿入する際の適切な姿勢の向きが判定できる。電線W1の先端W1sから所定距離位置(図9中の距離D1)は、好ましくはターゲットTGに設けられた孔TGHの孔深さの0.3~10倍、より好ましくは、0.5~5倍である。先端からの曲り量を計測し、急峻に変化する点までをD1としてもよい。次に、電線W1の先端W1sの位置や先端曲り量の計測を終えると、その位置や先端曲り量をロボットハンド22の移動制御にフィードバックする。
【0084】
図9に示すように、先端W1sの位置や先端曲り量からフィードバック量を与えることで、先端W1sをターゲットTGに設けられた孔TGHに移動させることが可能である。この場合、孔TGHの孔深さが浅い場合には問題が生じることは少ない。しかし、孔TGHの孔深さが深い場合や孔TGHの直径が小さく電線W1の直径とあまり変わりない場合には、電線を孔に挿入できるような所定の向きに先端W1sの向きを一致させて移動させる必要がある。具体的には、孔TGHの中心軸TG-Aの延びる方向に沿って先端W1sを移動させる必要がある。
【0085】
そこで、図10に示すように、孔TGHの中心軸TG-Aの延長線上に位置する手前位置P11を予め定めておき、手前位置P11に先端W1sを移動させるとともに、孔TGHの中心軸TG-Aの方向と、電線W1の先端の向きとを一致させる移動を行なう。
【0086】
移動方法は、先端W1sを手前位置P11に移動させながら向きを一致させてもよいし、先端W1sを手前位置まで平行移動させてから、手前位置で向きを一致させるように電線W1を回転させてもよい。手前位置は、目標位置付近であることが好ましく、目標位置が孔である場合は、孔の中心軸の延びる線上であることが好ましい。目標位置が溝である場合は、溝の直上であることが好ましい。目標位置が端子台である場合は、端子をつなげる位置から端子をつなげる方向に延びる線上であることが好ましい。
【0087】
その後、中心軸TG-Aの延びる線上に沿って先端W1sを移動させることにより、孔TGHの孔深さが深い場合や孔TGHの直径が小さい場合であっても、先端W1sを孔TGHの内部に挿通させることが可能となる。
【0088】
なお、孔TGHに電線W1を挿入できたかどうかをセンサ等で判断し、挿入に失敗していた場合には、電線W1を手前位置P11に戻して、再度電線W1の先端W1s位置と向きを計測し、孔TGHの中心軸TG-Aの延びる方向と電線W1の先端の向きとを合わせて、先端W1sを孔TGHに移動させてもよい。
【0089】
具体的な、電線W1の電線先端曲り量計測方法について以下説明する。たとえば、ロボットハンド22から長さ100mmの電線W1が出た状態と仮定する。
【0090】
[目標位置のティーチング]
事前に、ロボット座標系における目標位置の座標を登録する。ロボットハンド22に電線W1ではなく、100mmのまっすぐな棒B(図9参照)を把持させる。ロボットハンド22は、適当な位置をつかんでいるので、棒Bの突出長さは100±数mmである。この棒Bは、電線と同一直径にする。その後、上記の棒Bを三次元カメラでスキャンする。
【0091】
次に、ロボットハンド22から棒Bの先端の相対座標が計算できる。これをたとえば、P1のように基準データとして保持する。
【0092】
棒の先端を、電線W1を挿入したい孔位置まで移動させる。移動させた時の棒の先端位置が目標位置となる。目標位置は、孔の中に設定してもよいし、孔の入り口付近に設定してもよい。移動させた棒の先端のロボット座標系における座標を目標位置として登録する。これは、ロボットハンドの座標にP1を足すことで計算できる。この位置をP0と登録する。以上で目標位置のティーチングが終了する。
【0093】
[電線の移動]
ロボットハンド22に移動したい電線W1を把持させる。その後、電線W1を三次元カメラでスキャンする。
【0094】
ロボットハンド22から電線W1の先端W1sまでの相対座標が計算できる。これをたとえば、P2とすると、P0―P2で計算されるベクトルを移動ベクトルとしてロボットに通知し、ロボットが電線を移動させる。
【0095】
これにより、先端W1sと孔TGHとの位置が合うこととなる。
[電線の移動+方向変更]
ここで、P2は先端座標であることから、これに先端方向(Rx,Ry,Rz)を同時に計算すれば、上記したように、孔TGHの中心軸TG-Aの延びる方向と、電線W1の先端の延びる方向とを一致させることが可能となる。先端W1sの移動方法は、上記したように予め定めた手前位置P11まで平行移動させ、手前位置P11で電線W1の先端の向きを孔TGHの中心軸TG-Aの方向に一致させるよう回転し、その後、中心軸TG-Aの延びる線上に沿って先端W1sを移動させてもよい。また、手前位置P11を定めずに、電線W1の先端の延びる方向を孔TGHの中心軸TG-Aの延びる方向に一致させるよう回転させながら、初期位置から孔TGHへ移動させてもよい。先端W1sが目標位置P0に到達する際、先端W1sの向きが所定の向きに一致するように、線状物W1の先端W1sを所定位置に移動させる移動方法であればよい。
【0096】
線状物を所定位置へ搬送する一例として、ターゲットTGに設けられた孔TGHに、線状物として電線W1の先端W1sを挿入させる場合について説明したが、線状物および目標位置はこれに限定されない。目標位置が孔である具体例としては、電線の先端を検査する検査装置、電線の被膜を剥くワイヤーストリッパー、電線とコネクタを接続する加工機、電線の先端に圧着端子をかしめる加工装置などの所定位置が挙げられる。
【0097】
その他の実施例として、例えば、基板に配線をはんだ付けする場合、配線の向きや他の部品の位置に応じて、はんだの向きを制御する必要がある。この場合、線状物をはんだとして、目標位置をはんだ付けしたい基板の所定箇所または基板の所定箇所の直上付近として本発明を利用できる。
【0098】
また、端子付きの電線を端子台に移動させる場合には、端子を端子台につなげる向きに制約があるため、端子付き電線の向きを端子台につなげられる所定の向きに一致させるように移動させる必要がある。この場合、線状物は端子付きの電線、目標位置は端子台の所定箇所または所定箇所付近として本実施の形態を利用することができる。このように、目標位置は、孔に限定されず、所定の検査位置、加工作業位置、面や溝、またはこれらの直上付近の所定箇所でもよい。
【0099】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
10 線状物把持のための全体システム、20 ロボット、21 ロボットアーム、22 ロボットハンド、31 三次元カメラ(ステレオカメラ)、32 制御装置、51 第1干渉領域、52 第1拡張干渉領域、53 第2干渉領域、54 第2拡張干渉領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10