(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ドナー改変細胞の選択のための調節可能スイッチ
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20231227BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231227BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20231227BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20231227BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20231227BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20231227BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231227BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20231227BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20231227BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P37/06
A61K31/519
C12N5/0781 ZNA
C12N5/0783
C12N5/0789
C12N15/09 Z
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020524723
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 US2018042630
(87)【国際公開番号】W WO2019018491
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520019850
【氏名又は名称】シーエスエル・ベーリング・ジーン・セラピー・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520019861
【氏名又は名称】シーエスエル・ジーン・セラピー・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ウォルター・アルマ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・バートレット
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ランドール・ブレトン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・フィリップ・シモンズ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヤン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】Molecular Therapy,2017年05月,25(5S1),pp.63-64,134.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61P 37/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-
HPRTが欠損している改変リンパ球の集団と、
-MTX、
とを含む医薬組成物であって、
ここで、前記医薬組成物は、
HSCグラフトを患者に投与した後に前記改変リンパ球の集団を該患者に投与するステップ;
および
前記改変リンパ球の集団の投与により、移植片対宿主病(GVHD)またはGVHD症状である副作用が生じた場合に、MTXを投与するステップ、
により投与される、前記医薬組成物。
【請求項2】
HPRT欠損リンパ球は、HPRT遺伝子のノックダウンを通じて、またはHPRT遺伝子のノックアウトを通じて生成される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
生成されたHPRT欠損リンパ球
は、HPRT欠損リンパ球をプリン類似体と接触させることにより
生成されたものであり、該プリン類似体は、6TG、6-MP、またはAZAから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
6TGの量は、約1から約15μg/mLの間である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
生成されたHPRT欠損リンパ球
は、リンパ球を6-TG、6-MP、またはAZAから選択されるプリン類似体、および、キサンチン酸化酵素阻害剤の両方と接触させる
ことにより生成されたものであり、該キサンチン酸化酵素阻害剤は、アロプリノールである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
HSCグラフトは、骨髄破壊的前処置後に患者に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
改変リンパ球は、単一ボーラスとして、または複数用量で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
改変リンパ球の各用量は、細胞約0.1×10
6個/kgから細胞約240×10
6個/kgを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
改変リンパ球の合計投薬量は、細胞約0.1×10
6個/kgから細胞約730×10
6個/kgを含む、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
改変リンパ球の投与は、HSCグラフトの投与の2から4週間後に行われる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
MTXは、GVHDの診断で、特に用量設定された用量で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
投与されるMTXの量は、約2mg/m
2/注入から約100mg/m
2/注入の範囲である、請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/533,707号、2017年7月18日出願の利益を主張するものであり、その開示はその全体をそれぞれ参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
開示の分野
本開示は、一般に分子生物学の分野、具体的にはベクターおよびベクターによって形質導入された宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0003】
他では致死性の疾患のための治療選択肢としての同種幹細胞移植(allo-SCT)の使用は、増加し続けている。しかし、移植片対宿主病(GVHD)は、allo-SCTの主な合併症であり続けており、約40~60%に至るallo-SCT患者を冒している。GVHDは、免疫コンピテント細胞、すなわちTリンパ球が、宿主細胞上の膜抗原を認識する場合に生じると考えられている。これらの膜抗原として、ヒト白血球抗原系によって提示される主要および非主要組織適合性抗原などの一連の宿主ポリペプチドが挙げられる。これらのポリペプチドの多型性はT細胞活性化および種々の細胞エフェクター機序を通じて最終的に組織損傷を引き起こすと考えられている。ドナー免疫細胞の活性化は、強い移植前処置に伴う組織損傷部位から放出されるサイトカインによっても増大される(「サイトカインストーム」)。
【0004】
急性GVHD(aGVHD)は、移植術後の最初の100日間に通常生じる一方で、慢性GVHD(cGVHD)の発症は後に観察される。急性および慢性の両方のGVHDの発症期間における変化が、急性症例が移植術後約100日で生じ、慢性症例が通常より早期に認められて観察された。急性および慢性GVHDの伝統的パターンからのこれらの変化は、前処置強度の低減、および幹細胞供給源としての末梢血液の使用の状況下で特に観察された。本明細書において使用される、用語「GVHD」は、急性および慢性の両方の移植片対宿主病を包含する。
【0005】
造血前駆細胞または幹細胞移植術(HSCT)の目標は、免疫および/または造血性のキメラ化が生じる、レシピエント宿主内でのドナー細胞の良好な生着を達成することである。典型的にはそのような移植は、白血病、骨髄不全症候群および遺伝性障害(例えば、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫不全障害およびムコ多糖症などの代謝性蓄積症)ならびに低悪性度リンパ腫などの障害の処置において使用される。キメラ化は、同種または異種ドナー由来の主要組織適合性抗原(MHC)分子を保有するドナー細胞集団、およびレシピエント由来の細胞集団を用いた、レシピエントの血液免疫系の種々のコンパートメントの再構築または、代替的に、同種もしくは異種骨髄ドナーだけに由来するMHC分子を保有する細胞集団を用いて再構成することができるレシピエントの血液免疫系コンパートメントである。キメラ化は、100%(同種または異種細胞による総置き換え)から分子法によってだけ検出可能である低レベルまで変化してよい。キメラ化レベルは、経時的に変化する場合があり、永続的または「一過性」であってよい。
【0006】
ドナー白血球輸注入(DLI)は、同種移植後に再発または残存疾患を処置するため、混合から完全ドナーキメラ化に転換するため、T細胞枯渇移植後の「追加輸注」として完全免疫機能を回復させるため、および再発に対する予防としての先制治療として使用されている。DLI後の主な合併症として、急性および慢性GVHDならびに、骨髄無形成または免疫抑制の使用に伴う感染が挙げられる。ほとんどの治験において、DLIの評価可能なレシピエントの約60%に至るまでがGVHDを発症する。GVHDは、すべてではないが一部の研究においてGVT活性および応答と相関する。
【0007】
数年にわたって、GVHD予防および処置のために、免疫抑制性薬物療法、移植工学および細胞療法などのいくつかの方法が提案された。実際に、移植後免疫不全を予防もしくは軽減するためにDLI後のGVHDを最小化する、または残存もしくは再発疾患において移植片対悪性腫瘍(GVM)を誘導するためのいくつかの手法が存在する。例えば、GVHDを最小化すると考えられる1つの手法は、低用量DLIの投与に続く用量漸増を含む。DLIへの従来の手法は、さまざまな数のCD3+T細胞を含有する単一「バルク」用量を注入することであるが、これは、急性および慢性GVHDの顕著な発生率および時に死亡と関連すると考えられている。一方、低細胞数で開始し、必要に応じてさまざまな時間間隔で投薬量を漸増させる、複数のアリコートでのドナーリンパ球の輸注は、GVHDの発生率を低減できる。(非特許文献1を参照されたい)。用量漸増レジメンの使用の基礎となる前提は、GVHDの発生率が投与される総細胞用量と共に増加することである。したがって、寛解を誘導できる最小限の細胞用量の同定は、GVHDに対するリスクを低減すると考えられている。
【0008】
代替的に、GVHDは、GVHDを媒介する原因となるほとんどの細胞を含むと考えられているCD8+リンパ球の枯渇を通じて低減できると考えられている(すなわち、GVHエフェクター細胞の枯渇)。結果は、移植片対白血病活性を最小限のGVHDを伴って保持できることを示唆している。少数の患者においては、応答の大部分は維持されているが、この手法の臨床的影響全体は、処置されていないDLIとの直接比較を必要としている。
【0009】
GVHDは、GVHDエフェクター細胞の不活性化を通じて低減できるとも考えられている。実際に、照射されたドナーT細胞DLIは、細胞が注入時にGVM効果を誘導するが、allo-抗原への応答において増殖できないという仮説に基づいている。付加的に、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子を発現するドナーT細胞の使用に続く、ガンシクロビル処置は、骨髄移植術後に生じるアロ反応性の調節に関係するその効果について研究された。
【0010】
カルシニューリン阻害剤とメトトレキサート(MTX)との組合せ療法は、GVHDの発生率および重症度を低減するために良好に使用されており、GVHD予防のための標準治療である。GVHD予防のために使用された最古の薬物の1つMTXは、ジヒドロ葉酸還元酵素ならびにチミジル酸およびプリンの産生を阻害し、それによりT細胞応答および増殖ならびに接着分子の発現を抑制すると考えられている。
【0011】
これらの戦略の一部は、GVHDの発生率を低減するために有効であるが、これらの戦略は、しばしばGVM効果の顕著な低減を伴い、それによりHSCTの全体的な効能を危うくする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Mackinnon S,Papadopoulos EB,Carabasi MHら、Adoptive immunotherapy evaluating escalating doses of donor leukocytes for relapse of chronic myeloid leukemia after bone marrow transplantation: separation of graft-versus-leukemia responses from graft-versus-host disease.Blood.1995;86:1261~1268
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様は、ドナーサンプルからHPRT欠損リンパ球を生成するステップ;改変リンパ球の集団を提供するためにex vivoでHPRT欠損リンパ球をポジティブ選択するステップ;HSCグラフトを患者に投与するステップ;HSCグラフトの投与後に改変リンパ球の集団を患者に投与するステップ;および副作用が生じた場合に、場合によりMTXを投与するステップを含む、副作用を軽減する一方で、その処置を必要とする患者にリンパ球注入の利益を提供する方法である。
【0014】
一部の実施形態では、HPRT欠損リンパ球は、HPRT遺伝子のノックダウンを通じて生成される。一部の実施形態では、HPRT欠損リンパ球は、HPRT遺伝子のノックアウトを通じて生成される。一部の実施形態では、ポジティブ選択は、生成されたHPRT欠損リンパ球をプリン類似体(例えば、6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6-MP)またはアザチオプリン(AZA))と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、ポジティブ選択は、生成されたHPRT欠損リンパ球をプリン類似体および第2の薬剤と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、プリン類似体は6TGである。一部の実施形態では、6TGの量は、約1から約15μg/mLの間である。一部の実施形態では、HSCグラフトは、骨髄破壊的前処置後に患者に投与される。一部の実施形態では、改変リンパ球は、単一ボーラスとして投与される。一部の実施形態では、改変リンパ球は、複数用量として投与される。一部の実施形態では、各用量は、細胞約0.1×106個/kgから細胞約240×106個/kgを含む。一部の実施形態では、改変リンパ球の合計投薬量は、細胞約0.1×106個/kgから細胞約730×106個/kgを含む。一部の実施形態では、改変リンパ球の投与は、HSCグラフトの投与の1から14日後に行われる。一部の実施形態では、改変リンパ球の投与は、HSCグラフトの投与の2から4週間後に行われる。一部の実施形態では、改変リンパ球の投与は、HSCグラフトの投与と同時に行われる。一部の実施形態では、MTXは、GVHDの診断で場合により投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、MTXは用量設定された用量で投与される。
【0015】
本開示の別の態様は、ドナーサンプルからHPRT欠損リンパ球を生成するステップ;改変リンパ球の集団を提供するためにex vivoでHPRT欠損リンパ球をポジティブ選択するステップ;HSCグラフトを患者に投与することによって少なくとも部分的な移植片対悪性腫瘍効果を誘導するステップ;残存疾患または疾患再発の検出後に改変リンパ球の集団を患者に投与するステップ;および場合によりGVHDの少なくとも1つの症状を抑制するためにMTXの少なくとも1用量を投与するステップを含む、その処置を必要とする患者においてがん(例えば、血液学的がん)を処置する方法である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、MTXは、GVM効果の少なくとも一部を維持するための量で投与される。
【0016】
本開示の別の態様は、抗腫瘍性キメラ受容体を含み、HPRT欠損であるCAR T細胞を生成するステップ;投与のためのCAR-T細胞の集団を提供するためにex vivoでHPRT欠損CAR-T細胞をポジティブ選択するステップ;CAR-T細胞の集団を患者に投与するステップ;および場合によりGVHDまたはサイトカイン放出症候群の少なくとも1つの症状を抑制するためにMTXの少なくとも1用量を投与するステップを含む、その処置を必要とする患者においてがんを処置する方法である。一部の実施形態では、HPRT欠損CAR-T細胞は、HPRT遺伝子のノックダウンを通じて生成される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。
【0017】
本開示の別の態様は、HPRT欠損である腫瘍抗原特異的T細胞を生成するステップ;投与のための腫瘍抗原特異的T細胞の集団を提供するためにex vivoでHPRT欠損腫瘍抗原特異的T細胞をポジティブ選択するステップ;改変腫瘍抗原特異的T細胞の集団を患者に投与するステップ;および場合によりGVHDの少なくとも1つの症状を抑制するためにMTXの少なくとも1用量を投与するステップを含む、その処置を必要とする患者においてがんを処置する方法である。
【0018】
本開示の別の態様は、(i)HPRT欠損である改変T細胞を患者に投与するステップ(HSCグラフト後など);および(ii)副作用の発症でMTXを患者に投与するステップを含む、患者において副作用を軽減する一方で、リンパ球注入の利益を提供する方法である。一部の実施形態では、副作用は、aGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される。一部の実施形態では、改変T細胞は、単一用量で投与される。一部の実施形態では、単一用量で投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約730×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、改変T細胞は、複数用量にわたって投与される。一部の実施形態では、用量あたりに投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約240×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、MTXは単一用量として投与される。一部の実施形態では、複数用量のMTXが投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。
【0019】
本開示の別の態様は、(i)HPRT欠損である改変T細胞を患者(HSCグラフト後など)に投与するステップ;および(ii)副作用の発症について患者をモニタリングするステップを含む、幹細胞移植術後に患者において移植片対悪性腫瘍効果を誘導する方法である。一部の実施形態では、副作用はaGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される。一部の実施形態では、方法は、副作用の発症でMTXを患者に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、改変T細胞は単一用量で投与される。一部の実施形態では、単一用量で投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約730×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、改変T細胞は、複数用量にわたって投与される。一部の実施形態では、用量あたりに投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約240×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、MTXは単一用量として投与される。一部の実施形態では、複数用量のMTXが投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。
【0020】
本開示の別の態様は、(i)HPRT欠損である遺伝子改変養子免疫治療をそれを必要とする対象に投与するステップ;(ii)副作用の発症について対象をモニタリングするステップ;および(iii)副作用の発症でMTXを投与するステップを含む、がんを処置する方法である。一部の実施形態では、遺伝子改変養子免疫治療は、CAR改変細胞、自己および同種CAR改変細胞、自己TCR改変細胞ならびに同種TCR-改変細胞からなる群から選択される。
【0021】
本開示の別の態様は、(i)HPRT欠損であるCAR-T細胞をそれを必要とする対象に投与するステップ;および(ii)副作用の発症について対象をモニタリングするステップを含む、がんを処置する方法である。一部の実施形態では、副作用は、aGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される。一部の実施形態では、方法は、副作用の発症でMTXを投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、改変T細胞は、単一用量で投与される。一部の実施形態では、単一用量で投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約730×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、改変T細胞は、複数用量にわたって投与される。一部の実施形態では、用量あたりに投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約240x106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、MTXは、単一用量として投与される。一部の実施形態では、複数用量のMTXが投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。
【0022】
本開示の別の態様は、(i)HPRT欠損であるTCR-改変T細胞をそれを必要とする対象に投与するステップ;および(ii)副作用の発症について対象をモニタリングするステップを含む、がんを処置する方法である。一部の実施形態では、副作用は、aGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される。一部の実施形態では、方法は、副作用の発症でMTXを投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、改変T細胞は、単一用量で投与される。一部の実施形態では、単一用量で投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約730×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、改変T細胞は、複数用量にわたって投与される。一部の実施形態では、用量あたりに投与される改変T細胞の量は、約0.1×106個/kg体重から約240×106個/kg体重の範囲である。一部の実施形態では、MTXは、単一用量として投与される。一部の実施形態では、複数用量のMTXが投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。
【0023】
本開示の別の態様は、対象に改変T細胞の治療有効量を投与すること、およびGVHDの発症でMTXを投与することによって対象において移植片対宿主病を軽減する一方で、移植片対悪性腫瘍効果を保つ方法である。一部の実施形態では、移植片対悪性腫瘍効果は、移植片対白血病効果である。
【0024】
本開示の別の態様は、HPRT欠損である改変T細胞(例えばHPRT欠損であるもの)の治療有効量を患者に投与するステップ;改変T細胞の投与から生じる副作用の発症をモニタリングするステップ;および患者におけるがん細胞を除去するまたは数を低減するために有効な移植片対悪性腫瘍反応を維持しながら、副作用を抑制、低減または管理するためにMTXを投与するステップを含む、同種造血細胞移植を受けたがんを有する患者を処置する方法である。一部の実施形態では、方法は、副腎皮質ステロイドの治療有効量を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、「有効量」は、DLIの結果として生じる移植片対宿主病(GVHD)に関連する1つまたはそれ以上の望ましくない症状を低減または除去する量である。一部の実施形態では、改変T細胞は、ボーラス輸注として投与される。他の実施形態では、改変T細胞の複数投与が提供される、すなわち複数輸注が投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、
図1に例示されるような本明細書に記載の方法により産生される。一部の実施形態では、MTXの単一投薬量は、投与される。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、GVHDの発症の重症度に依存し、その関連で、MTXの用量(または投薬量)は、GVHD症状の所望の低減および/または所望のレベルのGVM効果を達成するように用量設定される。
【0025】
本開示の別の態様は、(i)がんを有する患者に実質的に精製された、HPRT欠損である改変T細胞の治療有効量を投与するステップ;ならびに(ii)がんの存在についておよびGVHDの発症について患者をモニタリングするステップを含む、がんを処置する方法である。一部の実施形態では、MTXの治療有効量がGVHDの発症で投与される。
【0026】
出願人は、遺伝子改変異種性T細胞集団が、易感染性移植術患者(例えば、重度のクローン病、過敏性腸症候群または再生不良性貧血を有する者)のためのさらに完全な免疫学的再構築を提供できることを見出した。付加的に、GVMエフェクター細胞の抗原特異性が完全に明らかでないことから、T細胞レパートリー全体の使用がGVM効果を得るための最良の選択肢であると考えられている。
【0027】
さらに、他の「オフスイッチ」法と比較して、開示された方法により処置された細胞は、「自殺遺伝子」を発現する必要がない(例えば、Di Stasi A, Tey SK,Dotti G,Fujita Y,Kennedy-Nasser A,Martinez C,Straathof K,Liu E,Durett AG,Grilley B,Liu H,Cruz CR,Savoldo B,Gee AP,Schindler J,Krance RA,Heslop HE,Spencer DM,Rooney CM,Brenner MK.Inducible apoptosis as a safety switch for adoptive cell therapy.N Engl J Med. 2011 Nov 3;365(18):1673~83;Xu K,Zhu F,Du B,Gao F,Cheng H,Pan X.Prophylaxis of graft-versus-host disease by lentiviral-mediated expression of herpes simplex virus-thymidine kinase and ganciclovir treatment.Transplant Proc.2008 Oct;40(8):2665~9;およびPhilip B,Kokalaki E,Mekkaoui L,Thomas S,Straathof K,Flutter B,Marin V,Marafioti T,Chakraverty R,Linch D,Quezada SA,Peggs KS,Pule M.A highly compact epitope-based marker/suicide gene for easier and safer T-cell therapy. Blood. 2014 Aug 21;124(8):1277~87を参照されたい、その開示はそれら全体をそれぞれ参照によって本明細書に組み入れる)。むしろ、開示される方法は、内在性遺伝子のノックダウンまたはノックアウトを提供し、血液細胞に望ましくない作用を生じず、全体的に優れた結果をもたらす。出願人は、遺伝子改変細胞のex vivoでの6TG化学選択により、MTX投薬を介したin vivoでの細胞の定量的排除を可能にする非常に高い純度の操作された細胞が存在することを提示する。加えて、開示された方法による処置は、「キルスイッチ」が組み込まれていない治療よりもドナーT細胞のさらに高い用量の可能性およびさらに攻撃的な治療を提供する。さらに、改変T細胞の数を制御するためのMTXの使用は、GVHDを処置する既存の方法と臨床的に合致する、すなわちMTXは、開示される改変T細胞を受けていない患者においてGVHD症状を軽減することを助けるために使用される。
【0028】
最後に出願人は、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子を用いて形質導入されたドナーリンパ球と比較して、開示された方法による処置が、細胞の排除を生じ、将来の注入の可能性を妨げる免疫原性を含む制限を軽減することを提示する(その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れるZhou X,Brenner MK.Improving the safety of T-Cell therapies using an inducible caspase-9 gene.Exp Hematol.2016 Nov;44(11):1013~1019を参照されたい)。同様に本方法は、GVHD以外の同時に発生している臨床状態のためのガンシクロビルの使用を、HSV-tkドナーリンパ球の望ましくないクリアランスを生じることなく可能にする(例えばガンシクロビルは、現在記載される方法が利用される場合、allo-HSCT状況において好発するCMV感染を管理するために投与されることから排除されない)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】改変T細胞を調製するステップおよびこれらの改変T細胞をそれを必要とする患者に投与するステップを例示するフローチャートである。
【
図2】改変T細胞を調製するステップおよびこれらの改変T細胞を幹細胞グラフト後の患者に、患者の免疫系が少なくとも部分的に再構築されるように投与するステップを例示するフローチャートである。
【
図3】改変T細胞を調製するステップおよびこれらの改変T細胞を幹細胞グラフト後の患者に、改変T細胞がGVM効果を誘導することを助けるように投与するステップを例示するフローチャートである。
【
図4】改変T細胞(HRPT-欠損であるCAR-T細胞)を調製するステップおよびこれらの改変T細胞をそれを必要とする患者に投与するステップを例示するフローチャートである。
【
図5】プリンアサルベージ経路を例示する図である。
【
図6】dTTPの合成についてのデノボ経路を例示する図である。
【
図7】6TGの存在下でのHPRT欠損細胞の選択を例示する図である。
【
図8】7skプロモーターによって駆動されるsh734(配列番号1)を例示する図である。
【
図9A】K562細胞での6TG(ex vivo)を用いたポジティブ選択の効果を例示する図である。
【
図9B】K562細胞での6TG(ex vivo)を用いたポジティブ選択の効果を例示する図である。
【
図10A】CEM細胞での6TG(ex vivo)を用いたポジティブ選択の効果を例示する図である。
【
図10B】CEM細胞での6TG(ex vivo)を用いたポジティブ選択の効果を例示する図である。
【
図11A】K562細胞でのMTXを用いたネガティブ選択の効果を例示する図である。
【
図11B】K562細胞でのMTXを用いたネガティブ選択の効果を例示する図である。
【
図12A】CEM細胞でのMTXを用いたネガティブ選択の効果を例示する図である。
【
図12B】CEM細胞でのMTXを用いたネガティブ選択の効果を例示する図である。
【
図13】K562細胞でのMTXを用いたネガティブ選択の効果を例示する図である。
【
図14】6TGからの毒性代謝物の形成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
配列表
本明細書で提供される核酸配列は、37 C.F.R.1.822に定義されるヌクレオチド塩基についての標準的略号を使用して示されている。配列表は、参照によって本明細書に組み入れる1KB未満の2018年7月13日に作成された「2018-07-13_Calimmune-036WO_ST25.txt」と名付けられたASCII text fileとして提出される。
【0031】
詳細な説明
開示される方法は、一般に、免疫再構築を加速する、GVM効果を誘導する、および/または腫瘍細胞を標的化するように設計されたT細胞治療の副作用を予防する、処置する、抑制する、管理するまたは他の形で軽減することを対象とする。
【0032】
定義
本明細書において使用される、単数形用語「a」、「an」および「the」は、内容が他を明確に示さない限り複数の参照対象を含む。同様に、語「または」は、内容が他を明確に示さない限り「および」を含むことが意図される。したがって、例えば「細胞(a cell)」を参照することは、複数のそのような細胞を含み、「タンパク質(the protein)」を参照することは、1つまたはそれ以上のタンパク質および当業者に公知のその等価物を参照することを含むなど。本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、他に明確に示されない限り、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0033】
本明細書において、明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つまたはそれ以上の要素のリストを参照した句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける任意の1つまたはそれ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されるそれぞれの少なくとも1つおよびすべての要素を必ずしも含まず、要素のリスト中の要素の任意の組合せを排除しないと理解されるべきである。この定義は、句「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内に具体的に同定された要素以外に要素が、場合により存在することも、具体的に列挙された要素に関連する、しないに関わらず可能にする。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、場合により1つより多くを含んで少なくとも1つのAをBが存在せずに指す場合があり(および、場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態では、場合により1つより多くを含んで少なくとも1つのBをAが存在せずに指す場合があり(および、場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、場合により1つより多くを含んで少なくとも1つのA、および場合により1つより多くを含んで少なくとも1つのBを(および場合により他の要素を含んで)を指す場合がある;など。
【0034】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などは、互換的に用いられ、同じ意味を有する。同様に「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」なども互換的に用いられ、同じ意味を有する。詳細には、それぞれの用語は、「含む(comprising)」の通常の米国特許法定義と一致して定義され、したがって、オープンタームの意味「少なくとも次のもの」であると解釈され、追加的特性、限定、態様などを排除しないとも解釈される。したがって、例えば「コンポーネントa、bおよびcを有するデバイス」は、デバイスが少なくともコンポーネントa、bおよびcを含むことを意味する。同様に句:「ステップa、bおよびcを含む方法」は、方法が少なくともステップa、bおよびcを含むことを意味する。さらに、ステップおよび工程は本明細書において特定の順序で説明される場合があるが、当業者はステップおよび工程の順序は変化する場合があることを認識する。
【0035】
本明細書の、明細書においておよび特許請求の範囲において使用される場合、「または」は、上に定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、数または要素のリストの少なくとも1つだけでなく、1つより多くの、および場合により、追加的な列挙されていない項目の含有として解釈されるべきである。「1つだけ」または「厳密に1つ」または、特許請求の範囲において使用される場合「からなる」などのそうでないと明確に示される用語だけが、数または要素のリストの厳密に1つの要素の含有を指す。一般に、本明細書において使用される、用語「または」は、「いずれか」、「の1つ」、「1つだけ」または「厳密に1つなどの」排他的用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち「一方または他方だが両方ではない」)を示しているとして単に解釈されるべきである。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有する。
【0036】
本明細書において使用される、用語「投与」は、それが対象もしくは患者、プラセボ対象、研究対象、実験対象、細胞、組織、器官または生物学的液に適用される場合、外来性リガンド、試薬、プラセボ、小分子、医薬品、治療剤、診断剤または組成物の対象、細胞、組織、器官または生物学的液などへの接触を非限定的に指す。「投与」は、例えば、治療用、薬物動態的、診断的、研究、プラセボおよび実験方法を指すことができる。細胞の処置は、試薬の細胞への接触および試薬の液体への接触を包含し、ここで液体は細胞と接触している。「投与」は、例えば、細胞の試薬、診断的、結合組成物によるまたは別の細胞による、in vitroおよびex vivoでの処置も包含する。
【0037】
「同種T細胞」は、レシピエントにマッチする組織HLA型を有するドナー由来のT細胞を指す。典型的には、マッチングは、HLA遺伝子の3つ以上の遺伝子座での変動に基づいて実施され、これらの遺伝子座での完全なマッチは好ましい。一部の場合では、同種移植ドナーは、血縁(通常、密接にHLAマッチした同胞)、同系(患者の一卵性の「全く同じ」双生児)または非血縁(血縁ではなく、非常に密接した程度のHLAマッチを有することが見出されているドナー)である場合がある。HLA遺伝子は、2つのカテゴリー(I型およびII型)に入る。一般にI型遺伝子(すなわちHLA-A、HLA-BまたはHLA-C)のミスマッチは、移植片拒絶のリスクを増加させる。HLA II型遺伝子(すなわちHLA-DRまたはHLA-DQB1)のミスマッチは、移植片対宿主病のリスクを増加させる。
【0038】
本明細書において使用される、用語「CAR T」または「CAR-T細胞」は、T細胞表面にキメラ抗原受容体(CAR)を発現するための方法を通じて改変されたT細胞またはその集団を指す。CARは、T細胞活性化ドメインの細胞内部分に作動可能に連結されて(例えば、融合、1つまたはそれ以上のジスルフィド結合によって連結された別々の鎖などとして)発現され、所望の標的に予め定義された結合特異性を有するポリペプチドである。
【0039】
本明細書において使用される、用語「有効量」または「治療有効量」は、医学的状態または障害の症状または徴候を回復、抑制、管理、逆行、軽減、予防または診断できる量を非限定的に包含する。他に明確にまたは内容から示されない限り、「有効量」は、状態を回復、抑制、管理または逆行させるために十分な最小限の量に限定されない。
【0040】
本明細書において使用される、用語「造血細胞移植」または「造血細胞移植術」は、骨髄移植術、末梢血幹細胞移植術、臍静脈血移植術または任意の他の多能性造血幹細胞の供給源を指す。同様に、用語「幹細胞移植」または「移植」は、薬学的に許容される担体と接触している(例えば、懸濁されている)幹細胞を含む組成物を指す。そのような組成物は、カテーテルを通じて対象に投与することができる。
【0041】
本明細書において使用される場合、「HPRT」は、HPRT1遺伝子によってコードされ、プリン代謝に関与する酵素である。HPRT1は、X染色体に位置付けられ、それにより男性では単一コピーで存在する。HPRT1は、5-ホスホリボシル1-ピロホスフェートから5-ホスホリボシル基をプリンに移行することによって、ヒポキサンチンのイノシンモノホスフェートへのおよびグアニンのグアノシンモノホスフェートへの転換を触媒するトランスフェラーゼをコードしている。酵素は、新たなプリン合成における使用のために分解されたDNAからプリンをサルベージするように主に機能する(
図5を参照されたい)。
【0042】
本明細書において使用される、用語「ノックダウン(knock down)」または「ノックダウン(knockdown)」は、遺伝子発現へのRNAiの効果を参照して使用される場合、遺伝子発現のレベルが阻害されている、またはRNAiの非存在以外は実質的に同じ条件下で検討された場合に一般に観察されるレベル未満に低減されていることを意味する。
【0043】
本明細書において使用される、用語「ノックアウト(knock out)または「ノックアウト(knockout)」は、内在性遺伝子の発現の部分的なまたは完全な抑制を指す。これは、一般に、遺伝子の一部を欠失させることによって、または第2の配列を用いて一部を置き換えることによって達成されるが、終止コドンの導入、重要なアミノ酸の変異、イントロン接合部の除去などの遺伝子への他の改変によっても生じる場合がある。したがって「ノックアウト」構築物は、細胞に導入された場合に、細胞中の内在性DNAによってコードされるポリペプチドまたはタンパク質の発現の抑制(部分的または完全な)を生じるDNA構築物などの核酸配列である。一部の実施形態では、「ノックアウト」は、点変異、挿入、欠失、フレームシフトまたはミスセンス変異などの変異を含む。
【0044】
本明細書において使用される、用語「レンチウイルスベクター」は、レンチウイルスに由来し、形質導入を介して細胞に遺伝材料を移行するために使用される核酸の任意の形態を意味して使用される。用語は、DNAおよびRNAなどのレンチウイルスベクター核酸、これらの核酸の被包性形態およびウイルスベクター核酸がパッケージされているウイルス粒子を包含する。
【0045】
本明細書において使用される、用語「対象」または「患者」は、哺乳動物を含む脊椎動物を指す。ヒト、ホモ・サピエンスは、対象または患者であると見なされる。
【0046】
本明細書において使用される、用語「T細胞受容体」または「TCR」は、抗原の提示への応答においてT細胞の活性化に関与する膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、主要組織適合性抗原分子に結合した抗原の認識に関与すると考えられている。TCRは、アルファ(a)およびベータ(β)鎖のヘテロ二量体からなるが、一部の細胞ではTCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタ形態で存在する場合があり、構造的に類似しているが解剖学的位置および機能が異なる。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変および定常ドメインからなる。一部の実施形態では、TCRは、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞およびガンマデルタT細胞が挙げられるTCRを含む任意の細胞上で改変される。
【0047】
本明細書において使用される、用語「TCR-改変T細胞」または「改変TCTTCR T細胞」は、変化した特異性を有するまたは機能性TCRの発現を欠いているT細胞を意味する。一部の実施形態では、TCR-改変T細胞は、増強された腫瘍殺活性を有するように改変されている、すなわちそれらは、抗原保有腫瘍細胞を効率的に認識するように改変されている。
【0048】
本明細書において使用される、用語「用量設定」は、患者応答に基づいた用量の連続的調整を指す。例えば、投薬量は、所望の臨床効果が観察されるまたは達成されるまで調整される。
【0049】
本明細書において使用される、用語「形質導入する」または「形質導入」は、トランスフェクションによってよりむしろ感染の手段によって、ウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用する遺伝子(複数可)の送達を指す。例えば、レトロウイルスベクター(細胞への核酸の導入のためのベクターとして使用される改変レトロウイルス)によって運ばれる抗HIV遺伝子は、感染およびプロウイルス組み込みを通じて細胞に形質導入できる。したがって、「形質導入遺伝子」は、レンチウイルスまたはベクター感染およびプロウイルス組み込みを介して細胞に導入された遺伝子である。ウイルスベクター(例えば、「形質導入ベクター」)は、「標的細胞」または宿主細胞に遺伝子を形質導入する。
【0050】
本明細書において使用される、用語「処置(treatment)」、「処置する(treating)」または「処置する(treat)」は、具体的な状態に関して、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症状を完全にもしくは部分的に予防する観点から予防的であってよく、ならびに/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害作用についての部分的なもしくは完全な治癒の観点から治療的であってよい。本明細書において使用される「処置」は、対象、特にヒトにおける疾患の任意の処置を網羅し:(a)疾患の素因を有するがそれを有するとまだ診断されていない対象において疾患発症を予防すること;(b)疾患を阻害する、すなわちその発達を停止させること;ならびに(c)疾患を緩和する、すなわち、疾患の退縮を生じさせる、および/または疾患の1つもしくはそれ以上の症状を緩和することが挙げられる。「処置」は、疾患または状態の非存在でも、薬理学的効果を提供するための薬剤の送達または治療の投与も包含できる。一部の実施形態で使用される用語「処置」は、宿主における、好ましくは哺乳動物対象における、より好ましくはヒトにおける疾患または障害を軽減するための本開示の化合物の投与を指す。したがって、用語「処置」は:特に宿主が疾患にかかる素因を有するが疾患を有するとまだ診断されていない場合、宿主において障害が生じることを予防すること;障害を阻害すること;および/または障害を緩和するもしくは逆行させることを含み得る。本開示の方法が障害を予防するために方向付けられている限り、用語「予防」が、疾患状態が完全に妨げられることを要求しないことは理解される。むしろ本明細書において使用される、用語、予防するは、障害に感受性である集団を同定する当業者の能力を指し、その結果、本開示の化合物の投与は、疾患の発症に先行して行うことができる。用語は、疾患状態が完全に回避されなければならないことを意味しない。
【0051】
本明細書において使用される、用語「ベクター」は、細胞への別の核酸分子の侵入、例えば、移行、輸送などを媒介できる核酸分子を指す。移行された核酸は、ベクター核酸分子に一般に連結、例えば挿入される。ベクターは、自律的複製を方向付ける配列を含む場合がある、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするために十分な配列を含む場合がある。当業者に明らかであるとおり、ウイルスベクターは、移行された核酸の侵入を媒介する核酸(複数可)に加えて種々のウイルスコンポーネントを含む場合がある。多数のベクターが当技術分野において公知であり、これだけに限らないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターの例として、これだけに限らないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)などが挙げられる。
【0052】
HPRT欠損T細胞(「改変T細胞」)の調製
本開示の一態様は、HPRT欠損T細胞(本明細書において「改変T細胞」とも称される)の産生方法である。
図1を参照して、細胞、すなわちリンパ球(T細胞)は、最初にドナーから回収される(ステップ110)。造血幹細胞(HSC)もドナーから回収される実施形態では、T細胞は、HSCグラフトが回収される同じドナーからまたは異なるドナーから回収される。これらの実施形態では、細胞は、HSCグラフトのための細胞と同じ時期にまたは異なる時期に回収される。一部の実施形態では、細胞は、同じ動員された末梢血液HSC採取物から回収される。一部の実施形態では、これは、CD34陰性画分(CD34陽性細胞はドナーグラフトのための標準治療により回収される)または、前駆T細胞グラフトが予測される場合はCD34陽性HSCグラフトの一部であってよい。
【0053】
当業者は、細胞が任意の手段によって回収できることを理解する。例えば、細胞は、アフェレーシス、白血球アフェレーシスまたは単に静脈血採血を通じて回収される。HSCグラフトが改変のための細胞と同時に回収される実施形態では、HSCグラフトは、操作および回収されたT細胞の試験のための時間を取るために凍結保存される。
【0054】
細胞の回収後、T細胞は単離される(ステップ120)。T細胞は、当業者に公知の手段によって回収された細胞の凝集物から単離される。例えば、CD3+細胞は、CD3マイクロビーズおよびMACS分離システム(Miltenyi Biotec)を介して回収された細胞から単離される。CD3マーカーは、すべてのT細胞上に発現され、T細胞受容体と会合すると考えられている。ヒト末梢血液リンパ球の約70から約80%および胸腺細胞の約65~85%は、CD3+であると考えられている。一部の実施形態では、CD3+細胞は、CD3 MicroBeadsを用いて磁気的に標識される。次に細胞懸濁物は、MACS Separatorの磁場に置かれたMACSカラムにロードされる。磁気的に標識されたCD3+細胞は、カラムに保持される。未標識細胞は、素通りし、この細胞画分は、CD3+細胞が枯渇されている。磁場からカラムを外した後、磁気的に保持されたCD3+細胞は、ポジティブ選択された細胞画分として溶出される。
【0055】
代替的に、CD62L+T細胞は、IBA life sciences CD62L Fab Streptamer Isolation Kitを介して回収された細胞から単離できる。ヒトCD62L+T細胞の単離は、ポジティブ選択によって実施される。PBMCは、magnetic CD62L Fab Streptamersを用いて標識される。標識された細胞は、磁石の側の管壁に向かって移動して強力な磁石で単離される。このCD62L陽性細胞画分は回収され、細胞は、強力な磁石中でのビオチンの添加によってすべての標識試薬から開放される。magnetic Streptamersは、管壁に向かって移動し、標識不含有細胞は上清に残る。ビオチンは、洗浄によって除去される。得られた細胞調製物は、90%を超える純度を有してCD62L+T細胞が高度に濃縮されている。枯渇ステップもカラムも必要ない。
【0056】
代替的実施形態では、T細胞は、ステップ120で単離されず、むしろステップ110で回収された細胞の凝集物が続く改変のために使用される。一部の実施形態では、細胞の凝集物は、続く改変のために使用される一方で、一部の場合では改変法は、細胞の総凝集物内の特定の細胞集団に対して特異的である場合がある。これは、多数の方法;例えば、標的化遺伝子ベクター送達による、または、例えば特定の細胞型、すなわちT細胞へのHPRTに対するshRNAの標的化発現による、特定の細胞型への標的化遺伝子改変で行うことができる。
【0057】
T細胞の単離に続いて、T細胞は、HPRT活性を減少させる(ステップ130)、すなわちHPRT遺伝子の発現を減少させるために処置される。T細胞は、いくつかの方法により改変される。一部の実施形態では、T細胞は、RNA干渉技術を利用して改変できる。近年RNA干渉(RNAi)は、配列特異的二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)を含む複雑なマルチステップ酵素工程を通じた相同性転写物の分解を引き起こすことによる、遺伝子発現の転写後サイレンシングのための重要な遺伝的手法になっている。一部の実施形態では、T細胞は、HPRT遺伝子に標的化されたshRNAをコードするベクター、例えばレンチウイルスベクターを用いた形質導入によって改変される。一部の実施形態ではshRNAは、miRNAフレームワーク(amiRNA)内に埋め込まれ、他の実施形態ではshRNAは、ダイサー非依存性Ago-shRNA設計のものであってよい。本明細書では、前駆体shRNA構築物は、siRNA二本鎖を生成するように細胞内プロセスされる。レンチウイルスベクターは、それらが、分裂性または非分裂に関わらず、多種多様な主要細胞型に効率的に感染する能力を提供し、標的細胞ゲノムへの安定なベクター組み込みを達成でき、それにより細胞表現型の長期の改変を可能にすることから、この目的のための強力で多目的なツールとして現れた。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは自己不活性型レンチウイルスベクターである。好適なレンチウイルスベクターを調製するための方法は、Hacke Kら、Genetic modification of mouse bone marrow by lentiviral vector-mediated delivery of hypoxanthine-Guanine phosphoribosyltransferase short hairpin RNA confers chemoprotection against 6-thioguanine cytotoxicity,Transplant Proc.2013 Jun;45(5):2040~4によって記載され、その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる。代替的実施形態では、T細胞は、ノンインテグレーティングレンチウイルスベクターまたは他のウイルスベクター(AAVベクター)を用いる形質導入によって改変できる。
【0058】
一部の実施形態では、shRNAは、配列番号1のものに少なくとも80%配列同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、shRNAは、配列番号1のものに少なくとも90%配列同一性を有する配列を有する。さらに他の実施形態では、shRNAは、配列番号1のものに少なくとも95%配列同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、shRNAは、配列番号1のものに少なくとも97%配列同一性を有する配列を有する。さらにさらなる実施形態では、shRNAは、配列番号1のものに少なくとも98%配列同一性を有する配列を有する。またさらなる実施形態では、shRNAは、配列番号1のものに少なくとも99%配列同一性を有する配列を有する。他の好適なshRNA分子は、その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れるPCT公開第WO/2017/143266号に記載されている。
【0059】
他の実施形態では、遺伝子編集手法は、HPRTをノックアウトするために使用できる。例えば、単離された細胞は、HPRT-標的化CRISPR/Cas9 RNPを用いて処置される。一部の実施形態では、HPRT-標的化CRISP/Cas9 RNPは、ナノカプセル内に製剤化できる。Maeder MLら、Genome-editing Technologies for Gene and Cell Therapy,Mol Ther.2016 Mar;24(3):430~46)は、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ媒介法を含む、種々の遺伝子編集技術を記載しており、これらの開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる。遺伝子編集ツールも、AAVベクター、ノンインテグレーティングおよび非逆転写レンチウイルスベクターの方法ならびに他の物理的送達方法(例えば電気穿孔法、セルスクイージング、ソノポレーションなど)が挙げられる当業者に公知の任意の方法を介しても送達できる。トランスフェクション方法として、リン酸カルシウム、リポフェクタミン、フュージーン、デンドリマー、リポソーム(通常カチオン性リポソーム)が挙げられ、他のカチオン性ポリマー(例えば、DEAEもしくはPEI)も利用できる。送達を増加させるために生物学的にまたは化学的に機能化できる、または送達の物理的方法、例えば、マグノフェクションもしくは粒子衝撃において使用できる、ナノ粒子送達系が挙げられる、他の粒子に基づく方法も他に存在する。
【0060】
一部の実施形態では、電気穿孔法は、物質の取り込みを可能にする細胞膜中に一過性のポアを開くことによってなど核酸を真核細胞に導入するために使用される。電気穿孔法は、それにより、細胞膜にわたる電流が通過することによってDNA(またはRNA)が細胞に導入される方法である。
【0061】
ある特定のヌクレアーゼを使用する他の遺伝子編集技術は、その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国特許第8,895,264号および第9,22,105号に記載されている。一部の実施形態では、ゲノム中のHPRT遺伝子中の標的部位に結合するジンクフィンガータンパク質(ZFP)を利用することができ、ここでZFPは1つまたはそれ以上の操作されたジンクフィンガー結合ドメインを含む。一部の実施形態では、ZFPは、二量体化し、次に目的の標的ゲノム領域を切断する一対のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)として使用され、ここでZFNは、1つまたはそれ以上の操作されたジンクフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。一部の実施形態では、ゲノム中のHPRT遺伝子中の標的部位に結合するTALEタンパク質(転写活性化様エフェクター)を利用することができ、ここでTALEは、1つまたはそれ以上の操作されたTALE DNA結合ドメインを含む。一部の実施形態では、TALEは、目的の標的ゲノム領域を切断するヌクレアーゼ(TALEN)であり、ここでTALENは、1つまたはそれ以上の操作されたTALE DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。ZFNおよび/またはTALENの切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、種々の制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一部の実施形態では、切断ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、Fok I)由来である。
【0062】
ステップ130でT細胞が改変された後、HPRT欠損T細胞の集団は、選択される、および/または増殖される(ステップ140)。一部の実施形態では、培養物は、生着のための増強された能力を有する細胞(例えば、セントラルメモリーまたはT幹細胞表現型)を同時に選択および増殖させることができる。一部の実施形態では、培養期間は、14日間未満である。一部の実施形態では、培養期間は、7日間未満である。
【0063】
一部の実施形態では、細胞を選択および増殖させるステップは、HPRT欠損T細胞の集団をグアノシン類似体代謝拮抗薬(6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6-MP)またはアザチオプリン(AZA))などを用いてex vivoで処置することを含む。一部の実施形態では、T細胞は、6-チオグアニン(「6TG」)の存在下で培養され、それによりステップ130で改変されていない細胞を死滅させる。6TGは、細胞中でdGTP生合成を妨害できるグアニン類似体である。Thio-dGは、複製中にグアニンの位置でDNAに組み込まれる場合があり、組み込まれると、しばしばメチル化を生じる。このメチル化は、適切なミスマッチDNA修復を妨害でき、細胞周期停止および/またはアポトーシスの開始を生じる。6TGは、急速に分裂する細胞へのその毒性のためにある特定の種類の悪性腫瘍を有する患者を処置するために臨床で使用されている。6TGの存在下で、HPRTは、細胞中のDNAおよびRNAへの6TGの組み込みに関与する酵素であり、適切なポリヌクレオチド合成および代謝の遮断を生じる(
図7を参照されたい)。一方、サルベージ経路は、HPRT欠損細胞において遮断されている(
図7を参照されたい)。したがって細胞は、プリン合成のためのデノボ経路を使用する(
図6を参照されたい)。しかしHPRT野生型細胞では、細胞はサルベージ経路を使用し、6TGはHPRTの存在下で6TGMPに転換される。6TGMPは、リン酸化によってチオグアニンジホスフェート(TGDP)およびチオグアニントリホスフェート(TGTP)に転換される。同時にデオキシリボシル類似体が酵素リボヌクレオチド還元酵素を介して形成される。6TGが高度に細胞傷害性であることを考えると、それは、機能性HPRT酵素を有する細胞を死滅させるための選択剤として使用することができる。
【0064】
生成されたHPRT欠損細胞は、次にex vivoでプリン類似体と接触される。ノックアウト手法について、細胞中に残存HPRTがまだある可能性があり、HPRT-ノックダウン細胞はさまざまなプリン類似体に耐容性を示すことができるが、高投薬量/量では殺滅されると考えられている。この状況では、ex vivo選択のために使用されるプリン類似体の濃度は、約10nMから約5μMの範囲である。一部の実施形態では、濃度は、約100nMから約2.5μMの範囲である。他の実施形態では、濃度は、約200nMから約2μMの範囲である。さらに他の実施形態では、濃度は、約200nMから約1μMの範囲である。
【0065】
ノックアウト手法HPRTについて、HPRTは、HPRT-ノックアウト細胞から完全に除去できる、または完全に近く除去できると考えられており、生成されたHPRT欠損細胞は、プリン類似体に高度に耐容性である。この場合ex vivo選択のために使用されるプリン類似体の濃度は、約10nMから約100μMの範囲である。一部の実施形態では、濃度は、約10nMから約80μMの範囲である。他の実施形態では、濃度は、約10nMから約60μMの範囲である。さらに他の実施形態では、濃度は、約20nMから約40μMの範囲である。
【0066】
他の実施形態では、細胞の改変(例えば、HPRTのノックダウンまたはノックアウトを通じて)は、HPRT欠損細胞についてのex vivo選択が必要でない、すなわち6TGまたは他の同様の化合物を用いた選択が必要でないように十分効率的であり得る。
【0067】
一部の実施形態では、生成されるHPRT欠損細胞は、プリン類似体および、キサンチン酸化酵素(XO)の阻害剤であるアロプリノールの両方と接触される。XOを阻害することによって、より入手しやすい6TGがHPRTによって代謝される。6TGがHPRTによって代謝される場合、細胞に毒性の代謝物である6TGNを形成する(6TGNは、6-TGモノホスフェート(6TGMP)、ジホスフェート(6-TGDP)およびトリホスフェート(6TGTP)を包含する)。(
図14を参照されたい)。(例えば、Curkovicら、Low allopurinol doses are sufficient to optimize azathioprine therapy in inflammatory bowel disease patients with inadequate thiopurine metabolite concentrations.Eur J Clin Pharmacol.2013 Aug;69(8):1521~31;Gardinerら、Allopurinol might improve response to azathioprine and 6-mercaptopurine by correcting an unfavorable metabolite ratio.J Gastroenterol Hepatol.2011 Jan;26(1):49~54;Seinenら、The effect of allopurinol and low-dose thiopurine combination therapy on the activity of three pivotal thiopurine metabolizing enzymes:results from a prospective pharmacological study.J Crohns Colitis.2013 Nov;7(10):812~9;およびWallら、Addition of Allopurinol for Altering Thiopurine Metabolism to Optimize Therapy in Patients with Inflammatory Bowel Disease. Pharmacotherapy.2018 Feb;38(2):259~270を参照されたい、各開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる)。
【0068】
一部の実施形態では、アロプリノールは、生成されたHPRT欠損細胞にプリン類似体の導入より前に導入される。他の実施形態では、アロプリノールは、生成されたHPRT欠損細胞にプリン類似体の導入と同時に導入される。さらに他の実施形態では、アロプリノールは、生成されたHPRT欠損細胞にプリン類似体の導入後に導入される。
【0069】
選択および増殖後に、改変T細胞産生物は試験される。一部の実施形態では、改変T細胞産生物は、標準的放出試験(例えば、活性、マイコプラズマ、生存率、安定性、表現型など;Molecular Therapy: Methods & Clinical Development Vol. 4 March 2017 92~101を参照されたい、その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる)により試験される。
【0070】
他の実施形態では、改変T細胞産生物は、MTXまたはミコフェノール酸(MPA)への感受性について試験される。MTXおよびMPAの両方は、プリンのデノボ合成を阻害するが、異なる作用機序を有する。MTXは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、テトラヒドロ葉酸(THF)合成に関与する酵素を競合的に阻害すると考えられている。DHFRは、ジヒドロ葉酸の活性テトラヒドロ葉酸への転換を触媒する。葉酸は、DNA合成のために必要なヌクレオシドチミジンのデノボ合成のために必要である。同様に葉酸は、プリンおよびピリミジン塩基生合成のために不可欠であり、それにより合成は阻害される。ミコフェノール酸(MPA)は、イノシン-5’-モノホスフェート(IMP)からのグアノシン-5’-モノホスフェート(GMP)のデノボ合成ために不可欠である酵素イノシン-5’-モノホスフェートデヒドロゲナーゼ(IMPDH)の強力な、可逆性、非競合的阻害剤である。
【0071】
MTXまたはMPAは、したがってDNA、RNA、チミジル酸およびタンパク質の合成を阻害する。MTXまたはMPAは、DHFRを阻害することによってデノボ経路を遮断する。HPRT-/-細胞では、サルベージまたは機能性のデノボ経路はなく、プリン合成に至らず、それにより細胞は死滅する。しかし、HPRT野生型細胞は、機能性サルベージ経路を有し、それらのプリン合成は行われ、細胞は生存する。一部の実施形態では、改変T細胞はHPRT欠損である。一部の実施形態では、改変T細胞集団の少なくとも85%、MTXまたはMPAに感受性である。他の実施形態では、改変T細胞集団の少なくとも90%は、MTXまたはMPAに感受性である。さらに他の実施形態では、改変T細胞集団の少なくとも95%は、MTXまたはMPAに感受性である。
【0072】
ステップ110から140を通じて産生された改変T細胞のMTXまたはMPAへの感受性を考慮すると、MTXまたはMPAは、本明細書に記載されるHPRT欠損細胞を選択的に除去するために使用できる。
【0073】
改変T細胞を用いた処置
一部の実施形態では、ステップ110から140により調製された改変T細胞は、患者に投与される(ステップ150)。一部の実施形態では、改変T細胞(または本明細書に記載のCAR T細胞もしくはTCR T細胞)は、単一投与(例えば、単一ボーラス、または一定期間にわたる投与、例えば、約1から4時間またはそれ以上にわたる注入)で患者に提供される。他の実施形態では、改変T細胞の複数回の投与が行われる。改変T細胞の複数用量が投与される場合、各用量は同じまたは異なっていてよい(例えば、用量を漸増させる、用量を減少させる)。
【0074】
一部の実施形態では、改変T細胞の用量の量は、CD3陽性T細胞含有量/対象の体重kgに基づいて決定される。一部の実施形態では、改変T細胞の総用量は、約0.1×106/kg体重から約730×106/kg体重の範囲である。他の実施形態では、改変T細胞の総用量は、約1×106/kg体重から約500×106/kg体重の範囲である。さらに他の実施形態では、改変T細胞の総用量は、約1×106/kg体重から約400×106/kg体重の範囲である。さらなる実施形態では、改変T細胞の総用量は、約1×106/kg体重から約300×106/kg体重の範囲である。またさらなる実施形態では、改変T細胞の総用量は、約1×106/kg体重から約200×106/kg体重の範囲である。
【0075】
複数用量が提供される場合、投薬の頻度は、約1週間から約36週間の範囲であってよい。同様に、複数用量が提供される場合、改変T細胞の各用量は、約0.1×106/kg体重から約240×106/kg体重の範囲である。他の実施形態では、改変T細胞の各用量は、約0.1×106/kg体重から約180×106/kg体重の範囲である。他の実施形態では、改変T細胞の各用量は、約0.1×106/kg体重から約140×106/kg体重の範囲である。他の実施形態では、改変T細胞の各用量は、約0.1×106/kg体重から約100×106/kg体重の範囲である。他の実施形態では、改変T細胞の各用量は、約0.1×106/kg体重から約60×106/kg体重の範囲である。他の投薬戦略は、Gozdzik Jら、Adoptive therapy with donor lymphocyte infusion after allogenic hematopoietic SCT in pediatric patients,Bone Marrow Transplant,2015 Jan;50(1):51~5)によって記載されており、その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0076】
改変T細胞は、単独でまたは全体的処置戦略の一部として投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSC移植の約2から約4週間後などのHSC移植後に投与される。例えば、一部の実施形態では、改変T細胞は、移植後免疫不全を予防または軽減することを助けるためにHSC移植の投与後に投与される。改変T細胞は、短期間(例えば約3から約9ヵ月)の免疫再構築および/または防御を提供できると考えられている。別の例としておよび他の実施形態では、改変T細胞は、移植片対悪性腫瘍(GVM)効果または移植片対腫瘍(GVT)効果を誘導することを助けるためにがん治療の一部として投与される。さらなる例として、改変T細胞は、HPRT欠損であるCAR-T細胞またはTCR-改変T細胞であり、がん処置戦略の一部として投与される。これらの処置手段のそれぞれによる改変T細胞の投与は、本明細書により詳細に記載されている。当然のことながら当業者は、任意の基礎状態のための他の処置が、改変T細胞の投与に先立って、続いてまたは同時に存在してよいことを理解する。
【0077】
T細胞治療の副作用の抑制、管理または軽減
患者へのT細胞の投与は、本明細書に列挙されるものを含む望ましくない副作用を生じる場合がある。例えば、移植片対宿主病は、患者が改変T細胞(例えば、HPRTのノックダウンまたはノックアウトを介して)を含むT細胞を用いて処置された後に生じる可能性がある。本開示の一部の態様では、ステップ150での改変T細胞の投与後に患者は、これだけに限らないがGVHDを含むすべての副作用の発症についてモニターされる。GVHD(またはGVHDの症状)などの副作用が生じたときは、MTXまたはMPAは、患者に(in vivoで)ステップ160で、副作用、例えばGVHDを抑制する、低減する、管理するまたは他の形で軽減するための努力において改変T細胞の少なくとも一部を除去するために投与される。一部の実施形態では、MTXまたはMPAは、単一用量で投与される。他の実施形態では、MTXおよび/またはMPAの複数用量は投与される。
【0078】
本開示の改変T細胞は(ex vivoで選択され、患者または哺乳動物対象に投与されると)、MTX(またはMPA)へのそれらの感受性を考慮すると変調可能な「オン」/「オフ」スイッチとして役立ち得ると考えられている。調節可能スイッチは、任意の副作用が生じた患者へのMTXの投与を通じて、in vivoでの改変T細胞の少なくとも一部の選択的殺滅によって、免疫系再構築の制御を可能にする。この調節可能スイッチは、副作用が低減されたまたは他の形で軽減された後のさらなる免疫系再構築を可能にするために、MTX投与後に患者にさらなる改変T細胞を投与することによってさらに制御できる。同様に、調節可能スイッチは、副作用が生じたときにMTXの投与を通じたin vivoでの改変T細胞の少なくとも一部の選択的な殺滅によって移植片対悪性腫瘍効果の制御を可能にする。再度、GVM効果は、副作用が低減されるまたは他の形で軽減されると、患者への改変T細胞のさらなるアリコートの続く投薬によって微調整できる。この同じ原理は、CAR-T細胞治療またはTCR-改変T細胞を用いた治療に適用され、ここで再びCAR-T細胞またはTCR-改変T細胞は、MTX投与を通じて選択的にオン/オフできる。この観点から、当業者は、患者の処置を監督するすべての医療従事者は、副作用を食い止めるまたは耐容性を示すことができるもしくは許容できる範囲内に保ちながら、免疫系再構築および/またはGVM効果の平衡を保つことができることを理解する。上の理由から、有害作用を軽減する一方で、患者処置は増強される。
【0079】
一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約100mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約90mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約80mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約70mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約60mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約50mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約40mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約30mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約20mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約10mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約5mg/m2/注入である。またさらなる実施形態では、投与されるMTXの量は、約7.5mg/m2/注入である。
【0080】
一部の実施形態では、2回から6回の間の注入が行われ、注入は、同じ投薬量または異なる投薬量(例えば、投薬量を漸増させる、投薬量を減少させるなど)をそれぞれ含んでよい。一部の実施形態では、投与は週単位でまたは2ヵ月単位で行われる。
【0081】
さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は、管理されていない副作用、例えばGVHDが解決される一方で、少なくとも一部の改変T細胞および、免疫系を再構築する、がんを標的化するまたはGVM効果を誘導することへのそれらに随伴する効果を維持するように用量設定される。これに関して、副作用、例えばGVHDを回復させる一方で、改変T細胞の利益の少なくとも一部はまだ認められると考えられる。一部の実施形態では、追加的改変T細胞は、MTXを用いた処置後、すなわち副作用、例えばGVHDの解決、抑制または管理後に投与される。
【0082】
一部の実施形態では、対象は、HSC移植術後の副作用を管理または予防するなどのために、改変T細胞の投与に先立ってMTXの投与を受ける。一部の実施形態では、MTXを用いる既存の処置は、改変T細胞の投与に先立って停止され、次に、改変T細胞を用いた処置後の副作用の発症で同じまたは異なる投薬量で(および同じまたは異なる投薬スケジュールを使用して)再開される。これに関して当業者は、必要に応じておよび医療業界において公知の標準治療に一致してMTXを投与する場合がある。
【0083】
一部の実施形態では、代替的薬剤は、MTXまたはMPAのいずれかの代わりとして使用することができ、これだけに限らないがリババリン(IMPDH阻害剤);VX-497(IMPDH阻害剤)(Jain J,VX-497:a novel,selective IMPDH inhibitor and immunosuppressive agent,J Pharm Sci.2001 May;90(5):625~37を参照されたい);ロメトレキソール(DDATHF、LY249543)(GARおよび/またはAICAR阻害剤);チオフェン類似体(LY254155)(GARおよび/またはAICAR阻害剤)、フラン類似体(LY222306)(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Habeckら、A Novel Class of Monoglutamated Antifolates Exhibits Tight-binding Inhibition of Human Glycinamide Ribonucleotide Formyltransferase and Potent Activity against Solid Tumors,Cancer Research 54,1021~2026,Feb.1994を参照されたい);DACTHF(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Chengら、Design,synthesis,and biological evaluation of 10-methanesulfonyl-DDACTHF, 10-methanesulfonyl-5-DACTHF,and 10-methylthio-DDACTHF as potent inhibitors of GAR Tfase and the de novo purine biosynthetic pathway;Bioorg Med Chem.2005 May 16;13(10):3577~85を参照されたい);AG2034(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Boritzkiら、AG2034:a novel inhibitor of glycinamide ribonucleotide formyltransferase,Invest New Drugs.1996;14(3):295~303を参照されたい);LY309887(GARおよび/またはAICAR阻害剤)((2S)-2-[[5-[2-[(6R)-2-アミノ-4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イル]エチル]チオフェン-2-カルボニル]アミノ]ペンタン二酸);アリムタ(LY231514)(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Shihら、LY231514,a pyrrolo[2,3-d]pyrimidine-based antifolate that inhibits multiple folate-requiring enzymes,Cancer Res.1997 Mar 15;57(6):1116~23を参照されたい);dmAMT(GARおよび/またはAICAR阻害剤)、AG2009(GARおよび/またはAICAR阻害剤);フォロデシン(イムシリンH、BCX-1777;商標MundesineおよびFodosine)(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ[PNP]の阻害剤)(Kicskaら、Immucillin H,a powerful transition-state analog inhibitor of purine nucleoside phosphorylase,selectively inhibits human T lymphocytes,PNAS April 10,2001.98(8)4593~4598を参照されたい);ならびにイムシリン-G(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ[PNP]の阻害剤)が挙げられる。
【0084】
移植後免疫不全の予防
ヒト白血球抗原(HLA)マッチ同胞由来の造血幹細胞移植術が多数の血液疾患(悪性および非悪性)のための標準的処置様式になっているが、同種HSC移植術(allo-HSCT)は、慢性骨髄性白血病のための唯一の証明された根治療法のままである。この手順のために必要な多能性造血幹細胞は、血縁または非血縁ドナーの骨髄または末梢血液から通常得られる。歴史的に、同種HCTの最良の結果は、幹細胞ドナーがHLAマッチ同胞である場合に得られている。しかし、任意の所与の同胞対は、彼らの両親から同じHLAハロタイプを受け継ぐ機会は約25%しか有さない。これは、患者の約30%だけがそのようなマッチを有することを意味している。結果として、注目は幹細胞の他の供給源に向いている。HLAマッチ同胞を欠いている患者に関して、ドナーグラフトの代替的供給源として、適切なHLAマッチ成人非血縁ドナー、臍帯血幹細胞および部分的なHLAミスマッチまたはHLAハプロタイプ一致、血縁ドナーが挙げられる。どのドナー供給源を利用するかの判断は、臨床状況および個々の移植施設で使用される手法に大きく依存する。しかし、ほとんどすべての患者が、ドナーとして即座に利用可能である少なくとも1名のHLAハロタイプ一致ミスマッチ家族員(親、子または同胞)を有すると考えられている。
【0085】
HLAハロタイプ一致HSCTの主な課題は、移植片拒絶およびGVHDを高発生率で生じる激しい二方向性アロ反応性である。移植工学およびGVHDの薬学的予防における進歩は、HLAハロタイプ一致HCT後の移植片不全およびGVHDのリスクを低減し、この幹細胞供給源をHLAマッチ同胞を欠いている患者のための実行可能な選択肢にしている。しかし、これらの手法の両方が、移植片不全に無関係の死亡率の主な原因であるレシピエントを感染に感受性にする移植後免疫不全期間を生じる可能性があると考えられている。ドナーリンパ球は、特にT細胞枯渇マッチ移植のサブセットにおいておよび部分ミスマッチ移植の内容で、免疫再構築の誘導において中心的な治療上の役割を演じると考えられている。実際、DLIは、感染を予防または軽減するため、および完全ドナーキメラ化を確立するために幹細胞移植術後に使用できると考えられている。ウイルス、真菌および他の日和見感染に対してT細胞免疫の幅広いレパートリーを呈する成熟T細胞の添加は、臨床的利益を提供できる(例えば、Loren AW,Porter DL.Donor leukocyte infusions after unrelated donor hematopoietic stem cell transplantation. Curr Opin Oncol.2006 Mar;18(2):107~14;およびZhou Xら、Long-term outcome after haploidentical stem cell transplant and infusion of T-cells expressing the inducible caspase 9 safety transgene.Blood.2014 Jun 19;123(25):3895~905を参照されたい、その開示はその全体をそれぞれ参照によって本明細書に組み入れる)。
【0086】
本明細書に記すとおり、GVHDは、患者が幹細胞移植を用いて処置された後に生じる場合がある。これに対抗するために、本開示は、移植後免疫不全を予防または軽減する方法およびGVHDが生じた場合に低減する、抑制するまたは管理するための薬理学的手法を提供する。開示される手法は、上に記載されるHLAハロタイプ一致HSCTの実施と統合されると考えられている。一部の実施形態では、方法は、同種HSCT後の患者で免疫再構築を加速するために、HPRT欠損改変T細胞の注入を利用し、同時に宿主に少なくともいくらかの免疫を提供する一方で、MTXを用いる投薬を介してGVHDを抑制または管理できるようにする。
【0087】
図2は、症状の発症でGVHDを低減する、抑制するまたは管理する1つの方法を例示する。最初に、細胞はステップ210でドナーから回収される。細胞は、グラフト化のためのHSCを提供した(ステップ260を参照されたい)同じドナーから、または異なるドナーから回収される場合がある。次にリンパ球は、回収された細胞から単離され(ステップ220)、それらがHPRT欠損となるように処置される(ステップ230)。単離された細胞を処置する方法は、本明細書に記載されている。HPRT欠損である改変T細胞の集団に至るように、処置細胞は、本明細書に記載のようにポジティブ選択され、増殖される(ステップ240)。次に改変T細胞は、後の使用のために保存される。
【0088】
HSCグラフト(ステップ260)を受けることに先立って、患者は、標準治療(例えば、高線量前処置放射線、化学療法および/もしくはプリン類似体を用いる処置;または低線量前処置放射線、化学療法、および/もしくはプリン類似体を用いる処置)により、骨髄破壊的前処置を用いて処置される(ステップ250)。
【0089】
一部の実施形態では、患者は、移植前処置を用いた処置後、約24から約96時間の間にHSCグラフト(ステップ260)を用いて処置される。他の実施形態では、患者は、移植前処置を用いた処置後、約24から約72時間の間にHSCグラフトを用いて処置される。さらに他の実施形態では、患者は、移植前処置を用いた処置後、約24から約48時間の間にHSCグラフトを用いて処置される。一部の実施形態では、HSCグラフトは、CD34+細胞6×106個/kgより多くが標的で最小限CD34+細胞2×106個/kgを含む。
【0090】
HSCグラフト化後、ステップ240からの改変T細胞は、標準的輸注プロトコールに従って患者に投与される(ステップ270)。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約2から約8週間の間に投与される。他の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約2から約6週間の間に投与される。さらに他の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約2から約4週間の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約1日から約21日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約1日から約14日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約1日から約7日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフト後、約2日から約4日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフトと同時に、またはHSCグラフトの数時間以内(例えばHSCグラフト後1、2、3または4時間)に投与される。
【0091】
改変T細胞は、単一投与で輸注される。代替的に、改変T細胞は、一連の複数回投与にわたって輸注される。改変T細胞の複数回投与が行われる実施形態では、本明細書に記載のように同じまたは異なる量の改変T細胞が各投与で輸注される。
【0092】
改変T細胞の投与に続いて、患者はGVHDの発症についてモニターされる。症状が現れたら、MTXは、GVHDを逆行させる、抑制するまたは管理するために投与される(ステップ280)。MTXは、単一用量または複数用量で投与される。複数回のMTX投与が行われる場合、投薬量は、改変T細胞によって免疫系に提供される保護の一部を維持しながら、GVHDのバランスを保つように用量設定される。
【0093】
一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約100mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約90mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約80mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約70mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約60mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約50mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約40mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約30mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約20mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約10mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約5mg/m2/注入である。またさらなる実施形態では、投与されるMTXの量は、約7.5mg/m2/注入である。
【0094】
一部の実施形態では、2回から6回の間の注入が行われ、注入は、同じ投薬量または異なる投薬量(例えば、投薬量を漸増させる、投薬量を減少させるなど)をそれぞれ含んでよい。他の実施形態では、2回から4回の間の注入が行われる。一部の実施形態では、投与は週単位でまたは2ヵ月単位で行われる。
【0095】
残存または再発疾患における移植片対悪性腫瘍の誘導
白血病、リンパ腫およびミエローマを含む血液悪性腫瘍の処置は、通常化学療法および/または放射線治療の1つまたはそれ以上の形態を含む。これらの処置は、悪性細胞を破壊するが身体の健康な血液細胞も同様に破壊する。同種骨髄移植術(BMT)は、多数の血液悪性腫瘍の処置において有用で有効な治療である。同種BMTでは、非血縁または血縁(しかし、一卵性双生児ではない)ドナーからの骨髄(または、一部の場合では末梢血液)は、がん患者における健康な血液細胞を置き換えるために使用される。骨髄(または末梢血液)は、血液において見出されるすべてのさまざまな細胞型(例えば、赤血球、貪食細胞、血小板およびリンパ球)への前駆体である幹細胞を含有する。同種BMTは、回復性効果および治癒的効果の両方を有すると考えられている。回復性効果は、血液の細胞性コンポーネントを再配置する幹細胞の能力から生じる。同種BMTの治癒特性は、移植片対悪性腫瘍(GVM)効果(移植片対腫瘍効果(GVT)とも称される)に大きく由来する。ドナー由来の造血性細胞(具体的には、Tリンパ球)は、がん性細胞を攻撃すると考えられており、他の形態の処置の抑制効果を増強する。本質的にGVM効果はBMTに由来する血液細胞による残存腫瘍細胞への攻撃を含み、移植後に悪性腫瘍が戻りにくくしている。
【0096】
血液悪性腫瘍のための同種造血幹細胞移植術の効能は、移植片対悪性腫瘍効果を損なうことなく移植片対宿主病を抑制することの困難さによって限定される。DLIは、同種移植後に再発または残存疾患を処置するため、混合から完全ドナーキメラ化に転換するため、T細胞枯渇移植後の「追加輸注」として完全免疫機能を回復させるためにおよび先制治療として再発に対する予防として使用されている。実際にドナーリンパ球注入は、すべての細胞傷害性治療が失敗した場合でさえも多数の患者において完全で維持された寛解を誘導できるGVMの強力な劇的な例を提供した。DLIは、第2の同種HSCTよりもさらに安全な代替的選択肢であり得る一方で、GVHDは、著しい罹患率および死亡率を生じる一般的な合併症である(Porter D,Levine JE.Graft-versus-host disease and graft-versus-leukemia after donor leukocyte infusion.Semin Hematol.2006 Jan;43:53~61;Ciceri F,Bordignon C. Suicide-gene-Transduced donor T-cells for controlled graft-versus-host disease and graft-versus-tumor.Int J Hematol.2002 Nov;76:305~9を参照されたい)。不運なことにおよび本明細書に記載のとおり、急性GVHDは、患者の死のおよそ10%の原因になっている。実際に一部の場合では、DLI誘導GVHDは、非常に重症である場合があり、DLIレシピエントの約20%から約35%の間は、グレードIIIからIV急性GVHDを発症すると考えられている。このように、GVM効果を管理することは、GVM効果のGVHDへの深刻化を予防すると述べることができる。したがって、有益なGVM効果を最大化しながらGVHDの驚異を管理することは、同種BMT手順の範囲および有用性を広げる。
【0097】
本明細書に記載のとおり、GVHDを低減する従来の方法は、ドナーリンパ球注入の際に投与されるT細胞の数を管理することを含む。しかし、この方法は、GVM効果の減少を生じるだけでなく、免疫回復を遅らせる可能性があり、移植片拒絶の割合も増加させる可能性がある。これに対抗するため本開示の一部の態様は、少なくとも部分的にHPRT欠損であるように改変されたリンパ球を、患者に投与することによってGVM効果を刺激するまたは促すことによってがんを処置し、次いでGVHDの発症をモニタリングする方法である。GVHDの発症で、MTXの1回またはそれ以上の治療有効用量は、GVHDを抑制する、低減する、管理するまたは他の形で軽減するために投与される。一部の実施形態では、MTXの単一投薬量が投与される。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、GVHDの発症の重症度に依存し、その関連で、MTXの用量(または投薬量)は、GVHD症状の所望の低減を達成するように用量設定される(再度、任意のGVM効果の平衡をとることを意図して)。一部の実施形態では、GVMは、移植片対白血病効果(GVL)である。一部の実施形態では、改変T細胞は、単一投与の際に提供される。他の実施形態では、改変T細胞の複数回投与が提供される。一部の実施形態では、改変T細胞は、
図1に例示されるような本明細書に記載の方法(ステップ110から140まで)により産生される。
【0098】
図3は、症状の発症でGVHDを低減する、抑制するまたは管理する1つの方法を例示する。最初に、細胞をステップ310でドナーから回収される。細胞は、グラフト化のためのHSCを提供した(ステップ335を参照されたい)同じドナーから、または異なるドナーから回収される。次にリンパ球は、回収された細胞から単離され(ステップ320)、それらがHPRT欠損(ステップ330)になるように処置される。単離された細胞を処置する方法は、本明細書に記載されている。HPRT欠損である改変T細胞の集団に至るように、処置細胞は、本明細書に記載のように選択され、増殖される(ステップ340)。次に改変T細胞は、後の使用のために保存される。
【0099】
がん、例えば血液学的がんを有する患者は、提示およびがんのステージ分類時に患者に利用可能な標準治療により処置される(例えば、放射線および/またはバイオ医薬品を含む化学療法)(ステップ315)。患者は、HSC移植術についての候補であり、その場合、移植前処置(ステップ325)が実行される(例えば、高線量前処置放射線または化学療法による)。悪性腫瘍について、血液系を完全に、または可能な限り完全に近く「一掃」し、それにより可能な限り多くの悪性細胞を殺滅することが望まれると考えられている。そのような移植前処置の目標は、がん細胞を強く処置し、それによりがんを再発しにくくし、幹細胞移植片拒絶の機会を低減するように免疫系を不活性化し、ドナー細胞が骨髄に移動できるようにすることである。一部の実施形態では、前処置は、シクロホスファミド、シタラビン(AraC)、エトポシド、メルファラン、ブスルファンまたは高線量全身照射の1つまたはそれ以上の投与を含む。次に患者は、同種HSCグラフト(ステップ335)を用いて処置される。一部の実施形態では、同種HSCグラフトは、少なくとも部分的なGVM、GVTまたはGVL効果を誘導する。
【0100】
グラフト化後、患者は、残存または再発疾患についてモニターされる(ステップ350)。そのような残存または再発疾患自体が存在したら、改変T細胞(ステップ340で産生)は、GVM、GVTまたはGVT効果が誘導されるように、患者に投与される(ステップ360)。改変T細胞は、数回投与のコースでの単一投与で注入することができる。一部の実施形態では、改変T細胞はHSCグラフト後約1日から約21日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞はHSCグラフト後、約1日から約14日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞はHSCグラフト後、約1日から約7日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞はHSCグラフト後、約2日から約4日の間に投与される。一部の実施形態では、改変T細胞は、HSCグラフトと同時にまたはHSCグラフトの数時間以内(例えばHSCグラフト後1、2、3または4時間)に投与される。
【0101】
GVHDの症状が現れたら、MTXは、患者に単一用量または複数用量にわたって投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、GVHD発症の重症度に依存し、その関連でMTXの用量(または投薬量)は、GVHD症状の望ましい低減および/または望ましいレベルのGVM、GVTもしくはGVL効果を達成するために用量設定される。
【0102】
一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約100mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約90mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約80mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約70mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約60mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約50mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約40mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約30mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約20mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約10mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約5mg/m2/注入である。またさらなる実施形態では、投与されるMTXの量は、約7.5mg/m2/注入である。
【0103】
一部の実施形態では、2回から6回の間の注入が行われ、注入は、同じ投薬量または異なる投薬量(例えば、投薬量を漸増させる、投薬量を減少させるなど)をそれぞれ含んでよい。一部の実施形態では、投与は週単位でまたは2ヵ月単位で行われる。
【0104】
キメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞の選択および除外における使用のための調節可能スイッチ
キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原結合ドメインを膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に繋ぐことによって養子免疫治療のために設計される。これは、腫瘍細胞上に提示されている特定の抗原を認識し、これらの腫瘍細胞を特異的に溶解するようにT細胞を活性化するキメラ抗原受容体を発現しているT細胞の養子移行によって腫瘍細胞を根絶するための有用な抗腫瘍手法である。このCAR戦略の重要な態様は、腫瘍上に特異的または選択的に発現され、すべての腫瘍細胞上に存在し、細胞表面から脱落または調節されない膜エピトープである標的エピトープの選択である。しかし、理想的にはCART T細胞は、任意の哺乳動物(ヒトなど)レシピエントのために好適な一般的試薬または薬物として使用することができる。そのような様式で細胞を使用するために、CAR依存性エフェクター機能を損なうことなく、移植片対宿主応答におけるそれらの拒絶は予防されなければならない。
【0105】
対象におけるCAR-T細胞の使用の1つの欠点は、一部のレシピエントにおけるサイトカイン放出症候群(CRS)の惹起である。「サイトカインストーム」または近年、サイトカイン放出症候群(CRS)、とも称されるサイトカイン関連毒性は、CAR-T細胞治療の一般的で潜在的に致死性の合併症である。CRSは、CAR-T細胞移行などの現代の免疫治療を使用する臨床的利益を媒介するために典型的に必要とされる高レベルのCAR T細胞増殖および免疫活性化の結果として生じる場合がある非抗原特異的毒性である。症状発症の時期およびCRS重症度は、誘導剤および免疫細胞活性化の規模に依存する。症状発症は、T細胞注入後、典型的には数日から時に数週間で、最大in vivo T細胞増殖と同時に生じる。がんのための養子T細胞治療後のCRSの近年の報告において、症候群の発生率および重症度は、患者が大きな腫瘍負荷を有する場合に大きく、養子で移行され、増殖および活性化したCAR-T細胞集団によるTNF-ccなどの炎症誘発性サイトカイン産生物の発現による。養子T細胞治療に伴うCRSは、IFNy、IL-6およびTNFaレベルの上昇に一貫して関連しており、IL-2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-10、IL-8、IL-5およびフラクタルカインにおける増加も報告されている。
【0106】
本開示の別の態様は、HPRT欠損である改変CAR T細胞をそれを必要とする患者に投与することによる、がんを有する患者を処置する方法である。
図4は、がんを有する患者を処置し、次いで任意の有害な副作用を低減する、抑制するまたは管理する1つの方法を例示する。最初に細胞は、ステップ410でドナーから回収される。次にリンパ球は、回収された細胞から単離され(ステップ420)、HPRT欠損であるCAR-T細胞を提供するために改変される。
【0107】
T細胞へのCAR構築物の導入のための遺伝子改変は、例えばベクターなどの組換えDNAまたはRNA構築物を用いてT細胞組成物を形質導入する(または他の形で送達する)ことによって達成される。適切なDNA配列は、種々の手順によってベクターに挿入されるが、一般にDNA配列は、当技術分野において公知の手順によって適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(複数可)に挿入される。CAR構築物の導入に加えて、HPRT遺伝子をノックアウトするためのshRNAも(本明細書に記載などの)HPRT活性を同時にノックアウトするために使用できる他の方法に含まれる。
【0108】
米国特許第5,359,046号、第5,686,281号および第6,103,521号(その開示はその全体を参照によって本明細書に組み入れる)に記載されるとおり、キメラ受容体の細胞外ドメインは、任意の多種多様な細胞外ドメインまたは、リガンド結合および/もしくはシグナル伝達に関連する分泌タンパク質から得ることができる。細胞外ドメインは、モノマー、ホモ二量体、ヘテロ二量体または、非共有結合複合体中の多数のタンパク質と会合しているタンパク質の一部であってよい。具体的には細胞外ドメインは、次にCHIおよびヒンジ領域の存在のためにIg軽鎖に共有結合で結合できる、またはヒンジ、CH2およびCH3ドメインの存在により他のIg重/軽鎖複合体に共有結合で結合できる、Ig重鎖からなってよい。後者の場合、キメラ構築物に連結する重/軽鎖合体は、キメラ構築物の抗体特異性とは異なる特異性を有する抗体を構成できる。抗体の機能、望ましい構造およびシグナル伝達に応じて鎖全体を使用でき、または切断された鎖を使用でき、ここでCHI、CH2またはCH3ドメインの全体または一部は除去できる、またはヒンジ領域の全体もしくは一部は除去できる。
【0109】
CARの細胞外ドメインは、しばしば免疫グロブリンに由来する。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン遺伝子(複数可)または、抗原もしくはエピトープに特異的に結合できるその断片に由来する、それをモデルにしているまたは実質的にそれによってコードされているペプチドまたはポリペプチドを指す。例えばFundamental Immunology,3rd Edition,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993);Wilson(1994;J.Immunol.Methods 175:267~273;Yarmush (1992)J.Biochem.Biophys.Methods 25:85~97を参照されたい。用語、抗体は、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCHIドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCHIドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一腕のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544~546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む抗原結合部分、すなわち抗原に結合する能力を保持している「抗原結合部位」(例えば、断片、サブ配列、相補性決定領域(CDR))を含む。1本鎖抗体も用語「抗体」に参照により含まれる。
【0110】
抗腫瘍性キメラ受容体が利用される場合、腫瘍は、キメラ受容体によって認識される細胞表面抗原を有する限り任意の種類であってよい。具体的な実施形態では、キメラ受容体は、特異的モノクローナル抗体が存在するまたは生成することができる任意のがんに対してであってよい。具体的には、神経芽細胞腫、小細胞肺がん、メラノーマ、卵巣がん、腎細胞癌、結腸がん、ホジキンリンパ腫および急性リンパ性白血病(例えば、小児急性リンパ性白血病)などのがんは、キメラ受容体によって標的化される抗原を有する。この組成物および方法は、がんの処置、具体的には肺がん、メラノーマ、乳がん、前立腺がん、結腸がん、腎細胞癌、卵巣がん、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、白血病およびリンパ腫の処置における免疫治療において使用できる。本明細書に記載される組成物および方法は、本明細書以下に記載の化学療法、手術、放射線、遺伝子治療などのがんのための他の種類の治療と併せて利用できる。
【0111】
HPRT欠損である改変CAR T細胞の集団に至るために、処置された細胞は、本明細書に記載のように選択され、増殖される(ステップ440)。HPRT欠損である改変CAR T細胞は、ある特定の腫瘍細胞を標的化するために患者に投与できる(ステップ450)。CART T治療のいかなる副作用が生じても、MTXは、副作用を抑制、低減または管理するために患者(460)に投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、副作用の種類および/または重症度に依存し、その関連でMTXの用量(または投薬量)は、現れた副作用の望ましい低減を達成するために用量設定することができる。
【0112】
一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約100mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約90mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約80mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約70mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約60mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約50mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約40mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約30mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約20mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約10mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約5mg/m2/注入である。またさらなる実施形態では、投与されるMTXの量は、約7.5mg/m2/注入である。
【0113】
一部の実施形態では、2回から6回の間の注入が行われ、注入は、同じ投薬量または異なる投薬量(例えば、投薬量を漸増させる、投薬量を減少させるなど)をそれぞれ含んでよい。一部の実施形態では、投与は週単位でまたは2ヵ月単位で行われる。
【0114】
T細胞受容体改変(TCR)T細胞の選択および除外における使用のための調節可能スイッチ
本開示はHPRT欠損でもあるTCR-改変T細胞を使用して、疾患および障害を低減または回復または予防または処置する方法も対象とする。最初に細胞は、ドナーから回収される。次にリンパ球は、回収された細胞から単離され、HPRT欠損であるTCR-改変T細胞を提供するために改変される。TCR-改変T細胞治療のいかなる副作用が生じた場合も、MTXは、副作用を抑制、低減または管理するために患者に投与される。
【0115】
T細胞(Tリンパ球としても公知)は、組織および腫瘍環境に広く分布していることが見出されている。それらは、細胞性免疫において中心的役割を演じており、長く続く、抗原特異的なエフェクターおよび免疫メモリー応答を媒介できる。T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって他のリンパ球から識別される。TCRは、マルチサブユニット膜貫通複合体であり、T細胞の抗原特異的活性化を媒介する。TCRは、2つの異なるポリペプチド鎖、TCRαおよびβ鎖からなる。両鎖は、N末端可変領域および定常領域を有する。鎖は、ジスルフィド結合によって連結されており、各受容体は、単一の抗原結合部位を提供している。TCRの刺激は、抗原ペプチドをT細胞に提示し、TCR複合体に結合し、一連の細胞内シグナル伝達カスケードを誘導する抗原提示細胞上の主要組織適合性抗原分子(MHC)(高度に多型の遺伝子のファミリーを包含する遺伝子座によってコードされ、免疫応答を管理するタンパク質)によって引き起こされる。
【0116】
さらに詳細には、TCRは、一般に、リガンド認識に関与するTCRヘテロ二量体を形成する6個の異なる膜結合鎖からなる。TCRは、アルファ/ベータおよびガンマ/デルタ形態で存在し、構造的に類似しているが解剖学的位置および機能が異なる。一実施形態では、TCRをコードする核酸がTCRアルファおよびTCRベータ鎖をコードする核酸を含むなど、TCRは、TCRアルファおよびベータ鎖を含む。別の実施形態では、アルファもしくはベータ鎖または両方は、少なくとも1つのN-脱グリコシル化を含む。各鎖は、2つの細胞外ドメイン、可変および定常ドメインからなる。一実施形態では、TCRは、少なくとも1つのマウス定常領域を含む。定常ドメインは、細胞膜に近位であり、膜貫通ドメインおよび短い胞質側末端が続く。一実施形態では、同時刺激シグナル伝達ドメインは、4-IBB同時刺激シグナル伝達ドメインである。可変ドメインは、TCRが結合特異性を有する特定の抗原およびMHC分子の決定に寄与する。次に、固有の抗原MHC複合体に対するT細胞の特異性は、T細胞によって発現される特定のTCRに存在する。定常および可変ドメインそれぞれは、鎖内ジスルフィド結合を含む場合がある。一実施形態では、TCRは、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む。可変ドメインは、抗体の相補性決定領域(CDR)に類似している高度に多型のループを含む。TCR配列の多様性は、連結された可変(V)、多様性(D)、連結(J)および定常遺伝子の体細胞再編成を介して生成される。機能性アルファおよびガンマ鎖ポリペプチドは、再編成されたV-J-C領域によって形成される一方で、ベータおよびデルタ鎖は、V-D-J-C領域からなる。細胞外定常ドメインは、膜近位領域および免疫グロブリン領域を含む。
【0117】
TCRは、主要組織適合性抗原分子によって標的細胞上に提示されるタンパク質の短い近接アミノ酸配列を含む抗原リガンドを認識することによって、抗原性特異性をT細胞に付与する。MHCクラスIIについてのCD4およびMHCクラスIについてのCD8などの、T細胞によって発現されるアクセサリー接着分子も関与する。TCRは、MHC分子および抗原ペプチドの両方と接触することによってこのリガンドと相互作用する。シグナル伝達は、2つのヘテロ二量体(CD3δεおよびCD3γε)ならびに1つのホモ二量体(CD3ζζ)を形成する4つの異なるCD3タンパク質からなる会合したインバリアントなCD3複合体を通じてである。
【0118】
MHCクラスI分子によって提示されるそれらの同族ペプチドとの接触に続いて、未処置CD8+細胞傷害性T細胞は、活発に増殖し、それらがエフェクターT細胞として作用できるようにする表現型特性および機能的特性を獲得する;これらは、アポトーシス誘導リガンドまたは溶解性顆粒の放出を通じて抗原を発現している細胞を除去する。加えて、自己複製できる持続性メモリーT細胞が生成され、標的抗原の存在下での急速な増殖を可能にし、再曝露の際に持続性で、耐久性のある応答を提供する。適応免疫応答のオーケストレーターおよびエフェクターとしてのT細胞の機能は、TCRの特異性によって方向付けられる。
【0119】
T細胞は、複合体としてT細胞受容体全体を、内部移行し、選別し、静止T細胞では約10時間、刺激されたT細胞では3時間の半減期で分解する(von Essen, M.ら、2004.J.Immunol.173:384~393)。TCR複合体の適切な機能性化は、TCR複合体を構成するタンパク質の適切な化学量論比を必要とする。TCR機能もITAMモチーフを有する2つの機能的TCRゼータタンパク質を必要とする。そのMHC-ペプチドリガンドとの会合でのTCRの活性化は、すべて適切にシグナルを伝達するはずである、同じT細胞上でのいくつかのTCRの会合を必要とする。したがって、TCR複合体が、適切に会合しないまたは最適にシグナルを伝達できないタンパク質で不安定化されると、T細胞は、細胞応答を開始するために十分には活性化されなくなる。
【0120】
遺伝子的に改変されたTCR治療は、抗原認識工程を媒介する特異的TCRαおよびβ鎖の発現を通じてT細胞特異性を変更することに基づいている。腫瘍特異的TCRαおよびβ鎖は同定され、単離され、形質導入ベクターにクローニングされ、T細胞の形質導入は、腫瘍抗原特異的T細胞を作出する。一部の実施形態では、TCR発現は、特異的TCR(例えば、TCR-αおよびTCR-β)および/または初代T細胞中のCD3鎖をコードする核酸を標的化するshRNAを使用して改変される。これらのタンパク質の1つまたはそれ以上の発現を遮断することによって、T細胞は、TCR複合体の1つまたはそれ以上の重要なコンポーネントをもはや産生しない。初代T細胞中のshRNAの発現は、任意の従来の発現系、例えばレンチウイルス発現系を使用して達成できる。TCR-アルファ、TCR-ベータ、TCR-ガンマ、TCR-デルタ、CD3-ガンマ、CD3-デルタ、CD3-イプシロンまたはCD3-ゼータmRNAは、種々の標的化shRNAを使用して別々にまたは一緒に標的化できる。一部の実施形態では、遺伝子的に改変されたTCR T細胞は、本明細書に記載の抗HPRT shRNAを用いてHPRT遺伝子をノックダウンすることによってなどでHPRT欠損にされる。
【0121】
他の実施形態では、良好に腫瘍特異的なTCRを生成するために、適切な標的配列が最初に同定される。これは、微量の腫瘍反応性T細胞から単離できる、またはこれが不可能な場合、代替的技術を高度に活性の抗腫瘍T細胞抗原を生成するために使用できる。1つの手法は、ヒト抗原に対するTCRを発現するT細胞を生成するために、ヒト腫瘍タンパク質と共にヒト白血球抗原(HLA)系を発現するトランスジェニックマウスを免疫化することである(Stanislawskiら、2001)。代替的手法は、同種TCR遺伝子移行であり、ここで腫瘍特異的T細胞は、腫瘍寛解を経験している患者から単離され、反応性TCR配列は、同じ疾患を有するが非応答性である別の患者由来のT細胞に移行される(Gaoら、2000;de Witteら、2006)。最終的に、in vitro技術は、TCRの配列を変更するために使用することができ、弱く反応性の腫瘍特異的TCRと標的抗原との相互作用(アビディティー)の強度を増加させることによってそれらの殺腫瘍活性を増強する(Robbinsら、2008;Schmidら、2010)。
【0122】
遺伝的に改変されたTCR T細胞の生成に続いて、改変細胞は、その処置を必要とする患者に投与される。処置から副作用が生じた場合、MTXは、そのような副作用(例えばGVHDまたはGVHDの症状)を和らげるまたはなくすために投与される。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約100mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約90mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約80mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約70mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約60mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約50mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約40mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約30mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約20mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約10mg/m2/注入の範囲である。一部の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である。他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である。さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は、約5mg/m2/注入である。またさらなる実施形態では、投与されるMTXの量は、約7.5mg/m2/注入である。
【0123】
一部の実施形態では、2回から6回の間の注入が行われ、注入は、同じ投薬量または異なる投薬量(例えば、投薬量を漸増させる、投薬量を減少させるなど)をそれぞれ含んでよい。一部の実施形態では、投与は週単位でまたは2ヵ月単位で行われる。
【実施例1】
【0124】
CAR-T細胞をCAR構築物をHPRTに対するshRNAと共に用いて細胞に感染させることによって産生した。これは、異なるプロモーター(それぞれPol IIおよびPol III)によって駆動されるCARおよびshRNAを含む単一のレンチウイルスベクター中においてであった。HPRTを標的化するshRNAがmiRNAフレームワーク中にある場合、Pol IIプロモーター(恐らくまさに同じプロモーター)からも発現できると考えられている。
【0125】
次に形質導入されたCAR-T shHPRT細胞を、白血病患者に注入し、抗白血病応答を必要な場合モニターし、6TGを用いてCAR-T shHPRT細胞を増殖させた。効果が影響を与えたら、形質導入されたCAR-T shHPRT細胞を殺滅するためにメトトレキサートを使用するターンオフ戦略が検討される。このキルオフ戦略は、炎症性応答またはCAR-T shHPRT細胞の過度のクローン増殖が見られた場合に実行された。一部の抗白血病抗原が、通常の健康な細胞にも存在し、有害な作用を生じる場合があることは記されるべきである。したがって、この選択/自殺戦略を適用することは、効能/安全性プロファイルを増加させる。
【実施例2】
【0126】
血液学的悪性腫瘍のための同種骨髄移植では、ドナーT細胞は抗腫瘍効果のために骨髄移植に含まれる。移植前処置後に残存疾患を除去することは重要である。本実施例では、ドナーT細胞を、HPRTに対するshRNAを含有するレンチウイルスベクターを用いて、注入前に形質導入し、注入されたドナーT細胞の影響を評価した。移植片対白血病(GVL)効果をモニターし、結果として移植片対宿主病(GVHD)がある場合、メトトレキサートを用いた「キル」スイッチを使用してこれを回復させることができた。これは、結果としてのGVHDを伴わないGVLを可能にした。
【実施例3】
【0127】
同種骨髄移植術では、外来性の病原体感染のリスクを伴う免疫回復の遅れがある。これを警戒し、T細胞活性を維持するために、HPRTを含有するレンチウイルスベクターを用いて形質導入されたドナーT細胞を与えた。これは、骨髄移植された幹細胞由来のT細胞が造血系を再構築するまで、潜在的感染の補助的管理を長期間提供する。有害な炎症性応答またはAEに関連する任意の他のドナーT細胞がある場合、それらは、メトトレキサートを使用して除去された。これは、GVHDを伴わない抗感染免疫管理を可能にした。
【実施例4】
【0128】
患者は、白血病を有した。彼自身のまたはマッチした同種のT細胞を採取し、成長支持サイトカイン、例えばIL2またはIL7を含む組織培養物中で、増殖させ、その際3つのエレメント、すなわち腫瘍標的化、細胞溶解機序および、HPRTをノックダウンするためのコンポーネントを含むベクターを含有する自己不活性型レンチウイルスベクターを用いて形質導入した(導入遺伝子発現を導くように感染させた)。細胞1×106から2×108個/平方センチメートルでのこれらの遺伝子改変細胞を、1用量のIV Cytoxan、例えば500mg/平方メートルIV(導入されるCAR T細胞の場所を作るため)後、に患者に注入した。この例では、遺伝子改変CAR T細胞は、白血病にいくらかの効果を有した。白血病細胞負荷を、例えば差次的血球数によってモニターし、医師がさらなる腫瘍細胞殺滅を求める場合、これらの細胞を選択することによって腫瘍標的化CAR T細胞の相対数を増加させるために0.4mg/kg 6TGを患者にIVで与えた。CAR T細胞がそれらのポジティブ抗白血病効果を発揮したが、例えば炎症性サイトカインストームを生じる「過活性化」があった場合、次にメトトレキサートのIV注入、例えば総用量100mgを使用してCAR-T細胞がキルオフされる逆行が生じさせることができる。
【実施例5】
【0129】
6TG選択を用いたHPRTノックダウン対ノックアウト
ゼロ(0)日目にK562細胞をHPRTをノックダウンするように設計した核酸配列および緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸配列を含むベクターを用いて形質導入した(MOI=1/2/5);またはCRISPR/Cas9およびHPRTに対するsgRNAを含むナノカプセルを用いてトランスフェクトした(100ng/細胞5×10
4個)。6-TGを3日目から14日目に培地に添加した。培地は3から4日ごとに交換した。GFPをフローマシンおよびT7E1アッセイを用いて分析したInDel%で分析した。
図9Aは、形質導入したK562細胞のGFP+集団が6TGの処置下で3日目から14日目に増加した;一方、GFP+集団は、6-TG処置を伴わずにほとんど一定であったことを例示している。
図9Bは、K562細胞のHPRTノックアウト集団が6TGの処置下で3日目から14日目に増加し、6TGのより高い投薬量(900nM)は、300/600nMの6TGの投薬量と比較してより早い選択をもたらしたことを例示している。6TG選択工程は、300nMの6TGの同じ濃度、3日目から14日目でのHPRTノックダウン細胞(MOI=1)と比較してHPRTノックアウト細胞でさらに早く生じたことは記されるべきである。ノックダウンとノックアウトとの間の差異は、ノックアウト手法によるHPRTの完全な排除と比較して、RNAiノックダウン手法によるあるレベルの残存HPRTによって説明できた。したがって、HPRT-ノックアウト細胞は6TGに対してより高い耐容性を有すると考えられ、HPRT-ノックダウン細胞と比較して6TG(900nM)のより高い投薬量でさらに早く増殖すると考えられる。
【0130】
0日目にCEM細胞をHPRTをノックダウンするように設計した核酸配列および緑色蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターを用いて形質導入した、またはCRISPR/Cas9およびHPRTに対するsgRNAを含むナノカプセルを用いてトランスフェクトした。6-TGを3日目から17日目に培地に添加した。培地は3から4日ごとに交換した。GFPをフローマシンで分析し、InDel%をT7E1アッセイによって分析した。
図10Aは、形質導入したK562細胞のGFP+集団が6TGの処置で3日目から17日目に増加した;一方、GFP+集団は、6-TGを伴わずにほとんど一定であったことを例示している。
図10Bは、CEM細胞のHPRTノックアウト集団が6TGの処置下で3日目から17日目に増加し、6TGのより高い投薬量(900nM)は、300/600nMの6TGの投薬量と比較してより早い選択をもたらしたことを示している。6TG選択工程は、6TGの同じ濃度、3日目から17日目でのHPRTノックダウン細胞(MOI=1)よりむしろHPRTノックアウト細胞でさらに早く生じたことは記されるべきである。
【実施例6】
【0131】
MTXまたはMPAを用いたネガティブ選択
形質導入またはトランスフェクトしたK562細胞(実施例6からのものなど)をMTXを用いてまたは用いずに0日目から14日目まで培養した。培地は3から4日ごとに交換した。GFPをフローマシンで分析し、InDel%をT7E1アッセイによって分析した。
図11Aは、形質導入したK562細胞のGFP-集団が0.3uMのMTXの処置下で減少し;細胞の集団は、MTXを用いずに一定であったことを示している。
図11Bは、トラスフェクとしたK562細胞が0.3uMのMTX処置下でHPRT-KD集団と比較してより早いペースで除去されたことを例示している。
【0132】
形質導入またはトランスフェクトしたCEM細胞(実施例6からのものなど)をMTXを用いてまたは用いずに0日目から14日目まで培養した。培地は3から4日ごとに交換した。GFPをフローマシンで分析し、InDel%をT7E1アッセイによって分析した。
図12Aは、形質導入したK562細胞のGFP-集団が1uMのMPAまたは0.3uMのMTXまたは10uMのMPAの処置下で減少し、一方細胞の集団は、未処置群について一定であったことを示している。
図12Bは、CEM細胞のHPRTノックアウト集団が1uMのMPAまたは0.3uMのMTXまたは10uMのMPAの処置下でより早いペースで除去されたことを例示している。
【実施例7】
【0133】
K562細胞に対するMTXを用いたネガティブ選択
K562細胞を、それぞれ、希釈係数16でのTL20cw-GFPウイルススープ、希釈係数16でのTL20cw-Ubc/GFP-7SK/sh734(GFPおよび、HPRTをノックダウンするように設計したshRNAを連続的にコードするもの)ウイルススープおよび希釈係数16でのTL20cw-7SK/sh734-UBC/GFP(HPRTおよびGFPをノックダウンするように設計したshRNAを連続的にコードするもの)ウイルススープのいずれかを用いて形質導入した(
図13を参照されたい)。3日後、すべての細胞を0.3uMのMTXを含有する培地で培養した。同様に、
図13に示されるのは、希釈係数1024でのTL20cw-7SK/sh734-UBC/GFP(HPRTをノックダウンするために設計されたshRNAをコードする核酸をコードするもの)ウイルススープによって1ヵ月前に形質導入されたK562細胞であり、ここでGFP-sh734-形質導入細胞を300nMの6TGを用いてポジティブ選択した。6-TGは、90%を超えるGFP+集団に達する時までの間での選択であった。
図13に例示されるとおり、>90%のGFP+集団から開始して、GFPまたはGFP-sh734形質導入細胞は、GFP+集団の低減を示さなかった一方で、高希釈および低希釈レベルでのsh734-GFP形質導入細胞は、GFP+集団の除外を示した。sh734-GFP-形質導入細胞およびGFP-sh73-形質導入細胞についてVCNあたりの相対的sh734発現を測定した。結果は、メトトレキサートがsh734高発現レンチウイルスベクター(TL20cw-7SK/sh734-UBC/GFP)を用いて形質導入された細胞だけを除外でき、sh734低発現レンチウイルスベクター(TL20cw-UBC/GFP-7SK/sh734)を用いたものはできなかったことを示唆している。本実施例は、異なるベクター設計(同じshRNAを有するものであっても)は、shRNAヘアピンの発現に影響を有し、形質導入された細胞がMTXによって除外されるかどうかを決定できることを実証している。
【0134】
産業的適用可能性の提示
本開示は、医薬の分野、例えば遺伝子治療における産業的適用可能性を有する。
【0135】
追加的実施形態
追加的実施形態1.(i)HPRT欠損である改変T細胞を患者に投与するステップ;および(ii)副作用の発症でMTXを患者に投与するステップを含む、患者において副作用を軽減する一方で、リンパ球注入の利益を提供する方法。
【0136】
追加的実施形態2.副作用がaGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される、追加的実施形態1の方法。
【0137】
追加的実施形態3.改変T細胞が単一用量で投与される、追加的実施形態1の方法。
【0138】
追加的実施形態4.単一用量で投与される改変T細胞の量が、細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約730×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態3の方法。
【0139】
追加的実施形態5.改変T細胞が複数用量にわたって投与される、追加的実施形態1の方法。
【0140】
追加的実施形態6.投与される改変T細胞の量が、用量あたり細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約240×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態5の方法。
【0141】
追加的実施形態7.MTXが単一用量として投与される、追加的実施形態1の方法。
【0142】
追加的実施形態8.複数用量のMTXが投与される、追加的実施形態1の方法。
【0143】
追加的実施形態9.投与されるMTXの量が約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である、追加的実施形態1の方法。
【0144】
追加的実施形態10.投与されるMTXの量が約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である、追加的実施形態9の方法。
【0145】
追加的実施形態11.(i)副作用の低減についてモニタリングするステップ、および(ii)HPRT欠損である追加的改変T細胞を患者に投与するステップをさらに含む、追加的実施形態1の方法。
【0146】
追加的実施形態12.(i)HPRT欠損である改変T細胞を患者に投与するステップ;(ii)副作用の発症について患者をモニタリングするステップ;および(iii)副作用の発症でMTXを患者に投与するステップを含む、幹細胞移植術後に患者において移植片対悪性腫瘍効果を誘導する方法。
【0147】
追加的実施形態13.副作用がaGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される、追加的実施形態12の方法。
【0148】
追加的実施形態14.改変T細胞が単一用量で投与される、追加的実施形態12の方法。
【0149】
追加的実施形態15.単一用量で投与される改変T細胞の量が、細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約730×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態14の方法。
【0150】
追加的実施形態16.改変T細胞が複数用量にわたって投与される、追加的実施形態12の方法。
【0151】
追加的実施形態17.投与される改変T細胞の量が、用量あたり細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約240×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態16の方法。
【0152】
追加的実施形態18.MTXが単一用量として投与される、追加的実施形態12の方法。
【0153】
追加的実施形態19.複数用量のMTXが投与される、追加的実施形態12の方法。
【0154】
追加的実施形態20.投与されるMTXの量が約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である、追加的実施形態12の方法。
【0155】
追加的実施形態21.投与されるMTXの量が約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である、追加的実施形態20の方法。
【0156】
追加的実施形態22.幹細胞移植後に改変T細胞の治療有効量を対象に投与するステップ、GVHDの発症について患者をモニタリングするステップ、およびGVHDの発症でMTXを投与するステップを含む、対象における移植片対宿主病を軽減する一方で、移植片対悪性腫瘍効果を保つ方法。
【0157】
追加的実施形態23.移植片対悪性腫瘍効果が移植片対白血病効果である、追加的実施形態22の方法。
【0158】
追加的実施形態24.(i)HPRT欠損である遺伝子改変養子免疫治療をそれを必要とする対象に投与するステップ;(ii)副作用の発症について対象をモニタリングするステップ;および(iii)副作用の発症でMTXを投与するステップを含む、がんを処置する方法。
【0159】
追加的実施形態25.副作用がaGVHDまたはcGVHDからなる群から選択される、追加的実施形態24の方法。
【0160】
追加的実施形態26.改変T細胞が単一用量で投与される、追加的実施形態24の方法。
【0161】
追加的実施形態27.単一用量で投与される改変T細胞の量が、細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約730×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態26の方法。
【0162】
追加的実施形態28.改変T細胞が複数用量にわたって投与される、追加的実施形態24の方法。
【0163】
追加的実施形態29.投与される改変T細胞の量が、用量あたり細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約240×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態28の方法。
【0164】
追加的実施形態30.MTXが単一用量として投与される、追加的実施形態24の方法。
【0165】
追加的実施形態31.複数用量のMTXが投与される、追加的実施形態24の方法。
【0166】
追加的実施形態32.投与されるMTXの量が約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である、追加的実施形態24の方法。
【0167】
追加的実施形態33.投与されるMTXの量が約2.5mg/m2/注入から約7.5mg/m2/注入の範囲である、追加的実施形態32の方法。
【0168】
追加的実施形態34.遺伝子改変養子免疫治療が、CAR改変細胞、自己および同種CAR改変細胞、自己TCR改変細胞ならびに同種TCR改変細胞からなる群から選択される、追加的実施形態24の方法。
【0169】
追加的実施形態35.HPRT欠損である改変T細胞の治療有効量を患者に投与するステップ;改変T細胞の投与から生じる副作用の発症をモニタリングするステップ;および患者におけるがん細胞を除去するまたは数を低減するために有効な移植片対悪性腫瘍反応を維持しながら、副作用を抑制、低減または管理するためにMTXを投与するステップを含む、同種造血細胞移植を受けたがんを有する患者を処置する方法。
【0170】
追加的実施形態36.副腎皮質ステロイドの治療有効量を投与するステップをさらに含む、追加的実施形態35の方法。
【0171】
追加的実施形態37.がんを処置する方法であって、(i)がんを有する患者に実質的に精製された、HPRT欠損である改変T細胞の治療有効量を投与するステップ;ならびに(ii)がんの存在についておよびGVHDの発症について患者をモニタリングするステップを含み、MTXの治療有効量がGVHDの発症で投与される方法。
【0172】
追加的実施形態38.幹細胞移植後の患者における移植後免疫不全を予防するまたは軽減する方法であって、(i)HPRT欠損である改変T細胞を患者に投与するステップ;(ii)副作用の発症について患者をモニタリングするステップ;および(ii)副作用の発症で患者にMTXを投与するステップを含み、投与されるMTXの量が約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲である方法。
【0173】
追加的実施形態39.MTXが単一用量で投与される、追加的実施形態38の方法。
【0174】
追加的実施形態40.複数用量のMTXが投与される、追加的実施形態38の方法。
【0175】
追加的実施形態41.MTXの用量が用量設定される、追加的実施形態40の方法。
【0176】
追加的実施形態42.MTXを用いた処置後に追加的改変T細胞を投与するステップをさらに含む、追加的実施形態38の方法。
【0177】
追加的実施形態43.MTXを用いた処置後に投与される追加的改変T細胞の量が細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約240×106個/kg体重の範囲である、追加的実施形態42の方法。
【0178】
追加的実施形態44.両方とも幹細胞翻訳後に、(a)MTXに感受性である改変T細胞を患者に投与するステップ;(b)副作用の発症について患者をモニタリングするステップ;および(c)副作用の発症でMTXを患者に投与するステップを含む、(i)患者の免疫系を再構築すること、または(ii)GVM効果を誘導するまたは維持することの安全性を増強する方法。
【0179】
追加的実施形態45.(i)ドナーから回収された細胞からリンパ球を単離すること;(ii)単離されたリンパ球の少なくとも一部に6-チオグアニン細胞傷害性に対する化学防御を付与すること;(iii)単離されたリンパ球を6TGに接触させることによって6-チオグアニンに対する化学防御を有する単離されたリンパ球を選択するおよびその一部を増殖させることによってMTXに感受性である改変T細胞が産生される、追加的実施形態44の方法。
【0180】
追加的実施形態46.(i)ドナーから回収された細胞からリンパ球を単離すること;(ii)単離されたリンパ球の全集団内のHPRT欠損細胞の少なくとも集団を提供するように単離されたリンパ球を処理すること;ならびに(iii)単離されたリンパ球の全集団を6TGに接触させることによってHPRT欠損細胞の集団を選択および増殖させることによって産生される改変T細胞。
【0181】
追加的実施形態47.単離されたリンパ球の処置のステップが、単離されたリンパ球を、配列番号1のものに少なくとも80%配列同一性を有する核酸配列をコードする自己不活性型レンチウイルスベクターに接触させるステップを含む、追加的実施形態46の改変T細胞。
【0182】
追加的実施形態48.単離されたリンパ球を処置するステップが、単離されたリンパ球をCRISPR/Cas9 RNP、ジンクフィンガータンパク質、TALONSおよびARUCSからなる群から選択される遺伝子編集ツールと接触させることを含む、追加的実施形態46の改変T細胞。
【0183】
追加的実施形態49.ex vivo選択を実施するステップであって、ex vivo選択がHPRT欠損である遺伝子改変T細胞の集団を6TGを用いて処置するステップ;ex vivoで選択された改変T細胞をそれを必要とする患者に投与するステップ;およびin vivo選択を実施するステップであって、in vivo選択がMTXを患者に投与するステップを含む、患者において副作用を軽減する一方で、リンパ球注入の利益を提供する方法。
【0184】
追加的実施形態50.遺伝子改変T細胞が、配列番号1のものに少なくとも80%配列同一性を有する核酸配列をコードする自己不活性型レンチウイルスベクターを用いて単離リンパ球を処置することによって調製される、追加的実施形態49の方法。
【0185】
追加的実施形態51.遺伝子改変T細胞が、CRISPR/Cas9 RNPまたはジンクフィンガータンパク質からなる群から選択される遺伝子編集ツールを用いて単離されたリンパ球を処置することによって調製される、追加的実施形態49の方法。
【0186】
追加的実施形態52.MTXが、ex vivoで選択された改変T細胞を用いる処置由来の副作用の発症後に患者に投与される、追加的実施形態49の方法。
【0187】
追加的実施形態53.MTXを用いた処置後にex vivoで選択された改変T細胞の少なくとも1つの追加用量を投与するステップをさらに含む、追加的実施形態49の方法。
【0188】
追加的実施形態54.(i)HPRT欠損である改変T細胞を患者に投与するステップであって、改変T細胞の量が細胞約0.1×106個/kg体重から細胞約730×106個/kg体重の範囲であるステップ;(ii)副作用の発症について患者をモニタリングするステップ;および(iii)副作用の発症で患者にMTXを投与するステップであって、投与されるMTXの量が約2mg/m2/注入から約8mg/m2/注入の範囲であるステップを含む、幹細胞移植後の患者における移植後免疫不全を予防するまたは軽減する方法。
【配列表】