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特許7410876血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法
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  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図1
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図2A-2B
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図3
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図4
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図5
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図6A
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図6B
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図7
  • 特許-血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】血管閉塞のためにその場凝固複合コアセルベートを使用する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/01 20060101AFI20231227BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20231227BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61M25/01
A61M25/14
A61M25/00
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2020561602
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019015127
(87)【国際公開番号】W WO2019147922
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】62/622,195
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520273979
【氏名又は名称】フルイデックス メディカル テクノロジー,リミティッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FLUIDX MEDICAL TECHNOLOGY, LLC
【住所又は居所原語表記】5010 Heuga Court, Park City, UT 84095, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ショーン パトリック フォイチック
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル スチュワート
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529118(JP,A)
【文献】特表2002-538848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0269715(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/14
A61M 25/00
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の血管内にカテーテルを固定するための方法に使用するためのキットであって、
前記キットが、
第1のカテーテル及び第2のカテーテル、並びに、
前記第2のカテーテルを前記血管の内壁に付着させるための組成物であって、水、少なくとも1つのポリカチオン、少なくとも1つのポリアニオン、及び1価イオンを含み、水中での前記1価イオンの濃度は、前記ポリカチオンと前記ポリアニオンの結合を防ぐのに十分であり、前記組成物中での前記1価イオンの濃度が、前記血管中の前記1価イオンの濃度より高い、前記組成物
を含み、
前記方法が、
(a)対象の血管中に、前記第1のカテーテル及び前記第2のカテーテルを挿入する工程であって、前記第2のカテーテルが、前記第1のカテーテルより前記血管中にさらに伸長される工程と;
(b)前記第1のカテーテル中に前記組成物を注入する工程であって、前記組成物は、前記血管内において凝固し、前記第2のカテーテルを前記血管の内壁に付着させる工程と
を含む、
前記キット。
【請求項2】
前記第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、同軸カテーテルである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第2のカテーテルが、オクルージョンバルーンカテーテルを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記方法において、前記第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、前記血管内において並列して配置される、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記第1のカテーテルの直径が、前記第2のカテーテルの直径より大きい、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記方法において、前記第2のカテーテルの先端が、前記第1のカテーテルの先端を越えて伸長する、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記方法の工程(b)において、前記組成物が、前記血管を完全にシールする、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記方法において、前記第1のカテーテルが、前記血管から取り外される、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
塞栓を生じさせるさらなる組成物をさらに含み、
前記方法において、前記第2のカテーテルが、取り外され、生じた孔には、前記さらなる組成物が充填されて、前記塞栓を生じさせる、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
生物活性剤をさらに含み、
前記方法が、前記第2のカテーテル中に前記生物活性剤を注入することをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
対象の血管内にカテーテルを固定するための方法に使用するためのキットであって、
前記キットが、
第1の内腔及び第2の内腔を含むカテーテルであって、前記カテーテルが、前記第1の内腔からの外側の第1の開口部を含み、前記外側の第1の開口部は前記カテーテルの側壁に配置されている、前記カテーテル、並びに、
前記カテーテルを前記血管の内壁に付着させるための組成物であって、前記組成物が、水、少なくとも1つのポリカチオン、少なくとも1つのポリアニオン、及び1価イオンを含み、水中での前記1価イオンの濃度は、前記ポリカチオンと前記ポリアニオンの結合を防ぐのに十分であり、前記組成物における前記1価イオンの濃度が、前記血管中の前記1価イオンの濃度より高い、前記組成物
を含み、
前記方法が、
(a)対象の血管中に、前記カテーテルを挿入する工程と;
(b)前記カテーテルの前記第1の内腔中に前記組成物を注入する工程であって、前記組成物は、前記血管内において凝固し、前記カテーテルを前記血管の内壁に付着させる工程と
を含む、
前記キット。
【請求項12】
前記方法の工程(b)において、前記組成物が、前記血管を完全にシールする、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
塞栓を生じさせるさらなる組成物をさらに含み、
前記方法において、前記カテーテルが、取り外され、生じた孔には、前記さらなる組成物が充填されて、前記塞栓を生じさせる、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
生物活性剤をさらに含み、
前記方法が、前記カテーテルの前記第2の内腔中に前記生物活性剤を注入することをさらに含む、請求項11に記載のキット。
【請求項15】
前記組成物中の1価イオンの濃度が、前記血管内の血液中に存在する1価イオンの濃度より1.5~10倍高い、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項16】
イオンを生成する前記塩が、一価塩を含む、請求項1、11、又は15のいずれか一項に記載のキット。
【請求項17】
前記一価塩が、塩化ナトリウムである、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記組成物において、ポリカチオン溶液対前記ポリアニオンの総正/負電荷比が、4~0.25であり、前記組成物中の1価イオンの濃度が、0.5M~2.0Mである、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項19】
前記ポリカチオンが、2つ以上のアミン基を有する化合物を含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項20】
前記ポリカチオンが、2つ以上のペンダントアミノ基を含むポリアクリレートを含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項21】
前記アミノ基が、アルキルアミノ基、ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾール、又は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、若しくは第四級アミンから選択される1つ以上のアミノ基で置換される芳香族基を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記ポリカチオンが、2つ以上のグアニジニル側鎖を含有する天然ポリマー又は合成ポリマーである、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項23】
前記ポリカチオンが、アクリレート又はメタクリレート骨格及び2つ以上のグアニジニル側鎖を含む合成ポリグアニジニルポリマーである、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項24】
前記ポリアニオンが、2つ以上のカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基を含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項25】
前記ポリアニオンが、ポリホスフェートを含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項26】
前記ポリホスフェートが、天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記ポリホスフェートが、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートを含む、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記ポリホスフェートが、ヘキサメタリン酸塩である、請求項25に記載のキット。
【請求項29】
前記ポリホスフェートが、ヘキサメタリン酸ナトリウムである、請求項25に記載のキット。
【請求項30】
前記組成物が、造影剤又は可視化剤をさらに含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項31】
前記組成物が、強化成分をさらに含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項32】
前記組成物が、1つ以上の生物活性剤をさらに含む、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項33】
前記生物活性剤が、核酸、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、MAB断片、モノクローナル抗体、血管新生阻害剤、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記ポリカチオンが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるモノマーと、式XX
【化1】

(式中、Rが、水素又はアルキル基であり、Xが、酸素又はNRであり、ここで、Rが、水素又はアルキル基であり、mが、1~10である)の化合物、又はその薬学的に許容される塩との間の重合生成物を含むポリグアニジニルコポリマーであり、
前記モノマーに対する式Iの化合物のモル比が、1:1~10:1であり、
前記ポリグアニジニルコポリマーが、5kg/mol~80kg/molのモル質量を有し、
ポリグアニジニルコポリマー対ポリホスフェートの電荷比が、0.5:1~1.5:1である、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項35】
がメチルであり、XがNHであり、mが3であり、前記モノマーが、メタクリルアミドである、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記方法において、前記固定されたカテーテルが、動脈瘤、静脈瘤、又は動静脈奇形への血流を低減又は阻害する、請求項1又は11に記載のキット。
【請求項37】
前記対象が腫瘍を有する、請求項1又は11に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月26日に出願された米国仮特許出願第62/622,195号に対する優先権を主張するものである。この仮特許出願は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の相互参照
本明細書に記載されるタンパク質は、配列識別子番号(配列番号)によって参照される。配列番号は、配列識別子<400>1、<400>2などに数値的に対応する。書面によるコンピュータ可読フォーマット(CFR)の配列表は、全体が参照により援用される。
【背景技術】
【0003】
その場ゲル化系の潜在的な臨床的用途としては、経動脈的及び経静脈的塞栓術が挙げられる。経動脈的塞栓術は、マイクロカテーテルが、臨床医によって動脈内に挿入され、次に、標的治療領域に誘導されて、次に、典型的に送達される塞栓剤の遠位の血流を選択的に遮断するように塞栓剤を送達する手術である。経動脈的塞栓術は、例えば、肝臓、腎臓、頭部、頸部、結腸を含むがこれらに限定されない腫瘍の血管を切除する(devascularize);動脈瘤を閉塞する、ステントグラフトと天然の血管系との間のエンドリークを閉塞する;動静脈奇形を閉塞する;消化管出血を含むがこれに限定されない遠位微小血管出血を閉塞する;筋腫に栄養供給する血流を治療的に閉塞若しくは減速する;良性前立腺過形成(BPH)及び勃起障害の治療のために前立腺への血流を閉塞若しくは減速する;及び他の同様の使用など、異常な血管系を治療するのに使用される。
【0004】
現在の塞栓剤には、重大な欠点がある。シアノアクリレート(CA)接着剤が、ある場合には、塞栓剤として使用される。シアノアクリレートモノマーは、血管内で水と接触すると、急速に重合して硬質樹脂になった。CAは、制御するのが困難であり、急速に重合し、カテーテルの末端を血管に接着させて、カテーテルの取り外しを困難にし得る。CAはまた、臨床医が注入したり、CAを設置したりすることが可能でなく、次に、臨床医が、新たに注入されたCAがカテーテル先端に粘着するリスクなしに、カテーテル先端を用いて、最近注入されたCAを血管内にドッタリング(dotter)又は圧縮(compact)することが可能でない。Onyx(登録商標)は、エチレンビニルアルコールの注入可能なジメチルスルホキシド(DMSO)溶液である。それが水様性の生理環境に注入されると、DMSO溶媒は、材料から拡散して、水に不溶性のエチレンビニルアルコールを沈殿させる。Onyx(登録商標)の欠点は、DMSO溶媒の毒性のため、少量でしか使用できないことである。Onyx(登録商標)の注入速度は限定されるため、前方流及び遠位への浸透を制御することが困難になり得る。DMSOは、典型的に、注入の際に凝集して、凝固及び目的とする制御の予測可能性を低下させる。DMSOは、CAと同様の他の送達問題を有する。
【0005】
粒子などの他の塞栓剤は、予測不可能な送達及び制御につながる傾向があり、最適でない血管標的化をもたらす。粒子はまた、遠位に流れ、カテーテルの遠位の血管系に完全に充満して、栓の遠位に塞栓を含まずに血液を停滞した状態に保ちながら個別の長さについて塞栓が血管をシールする栓を臨床医が形成する能力を低下させるか又は形成できなくする。液体の塞栓剤は、より良好な遠位への浸透を提供するが、カテーテルを、所定の位置又は塞栓部位に潜在的に接着させるリスクを有する。
【0006】
血管系内の正確な位置への、薬物、流体、及び他の物質の標的化され且つ集中した送達は、臨床上の課題である。血流は、薬剤を、目的とする標的血管及び/又は部位から離れて下流に運んで、より少ない量の薬物、又は材料が、標的に注入され得る。さらに、血管中に放出され、標的から離れて下流に流れるいずれかの材料が、身体の健康な非標的化部位に意図しない結果をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
カテーテルなどの医療機器を血管内に固定するために、固体接着剤をその場で生成する流体複合コアセルベートの使用が本明細書に記載される。固定された機器は、生物活性剤の標的化された送達を可能にする。固定された機器は、血管内の血流を低減又は防止することによって、塞栓剤として機能し得る。さらに、その場で生成される固体接着剤から生成される塞栓は、制御された形で放出され得る1つ以上の生物活性剤も含み得る。
【0008】
本発明の利点は、一部が以下の説明において記載され、一部がその説明から明らかになり、又は以下に記載される態様の実施によって分かるであろう。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組合せによって実現及び達成されるであろう。上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例示的及び説明的なものであるに過ぎず、限定的なものではないことが理解されるべきである。
【0009】
本明細書に組み込まれて、その一部を構成する添付の図面は、以下に記載されるいくつかの態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】様々な濃度のNaCl中で混合されたプロタミン及びヘキサメタホスフェートの水溶液を示す。1100~1200mMのNaClに、複合コアセルベートが非流動性のゲルになる臨界イオン強度(I)が存在する。コアセルベートの粘度は、Icritを超えると、Iの増大と共に低下する。ゲルの硬さは、Icritを下回ると増大する。形態は、イオン強度を変化させることによって相互転換可能である。
図2A】37℃におけるある範囲のNaCl濃度にわたるPRT/IP6高分子電解質混合物の状態図を示す。
図2B】21℃におけるある範囲のNaCl濃度にわたるPRT/IP6高分子電解質の状態図を示す。
図3-6】シングル及びデュアルカテーテルを血管内に固定するためのその場凝固複合コアセルベートの使用を示す。
図7】デュアルカテーテル用途におけるその場凝固複合コアセルベートの使用を示す。
図8】その場凝固複合コアセルベートの使用が、血管からのカテーテルの取り外し時にカテーテルに付着しないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法が開示及び記載される前に、以下に記載される態様が、特定の化合物、合成方法、又は使用に限定されず、したがって、当然ながら異なり得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語が、特定の態様を説明することを目的としているに過ぎず、限定的であることは意図されていないことも理解されるべきである。
【0012】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語が言及される。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される際、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」が、複数の指示対象を含むことが留意されなければならない。したがって、例えば、「医薬担体(a pharmaceutical carrier)」への言及は、2つ以上のこのような担体の混合物などを含む。
【0014】
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は、後に記載される事象又は状況が起こっても又は起こらなくてもよく、この記載が、事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「任意に置換される低級アルキル」という語句は、低級アルキル基が、置換されても又は置換されなくてもよく、この記載が、非置換の低級アルキル及び置換がある低級アルキルの両方を含むことを意味する。
【0015】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行する「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関連して、及び他の終点と関係なく、有意であることがさらに理解されるであろう。
【0016】
本明細書及び最後の特許請求の範囲における、組成物又は物品中の特定の要素又は成分の重量部への言及は、重量部が表される組成物又は物品中のその要素又は成分と任意の他の要素又は成分との間の重量関係を示す。したがって、2重量部の成分X及び5重量部の成分Yを含有する化合物において、X及びYは、2:5の重量比で存在し、さらなる成分が化合物に含まれるかどうかに関係なくこのような比率で存在する。
【0017】
成分の重量パーセントは、相反することが特に記載されない限り、成分が含まれる配合物又は組成物の総重量を基準にする。
【0018】
本明細書において使用される際の「アルキル基」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどの、1~25個の炭素原子の分枝鎖状又は非分枝鎖状飽和炭化水素基である。より長鎖のアルキル基の例としては、限定はされないが、パルミテート基が挙げられる。「低級アルキル」基は、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0019】
本明細書において使用される際の「シクロアルキル基」という用語は、少なくとも3つの炭素原子から構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、限定はされないが、環の炭素原子の少なくとも1つが、窒素、酸素、硫黄、又はリンなどのヘテロ原子で置換された、上記で定義されるシクロアルキル基である。
【0020】
本明細書において使用される際の「アリール基」という用語は、限定はされないが、ベンゼン、ナフタレンなどを含む任意の炭素系芳香族基である。「アリール基」という用語は、「ヘテロアリール基」も含み、これは、芳香族基の環内に少なくとも1つのヘテロ原子が組み込まれた芳香族基として定義される。ヘテロ原子の例としては、限定はされないが、窒素、酸素、硫黄、及びリンが挙げられる。一態様において、ヘテロアリール基は、イミダゾールである。アリール基は、置換されているか又は非置換であり得る。アリール基は、限定はされないが、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、又はアルコキシを含む1つ以上の基で置換され得る。
【0021】
「求核基」という用語は、活性化エステルと反応することが可能な任意の基を含む。例としては、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、及びそれらの対応するアニオンが挙げられる。
【0022】
「カルボキシル基」という用語は、カルボン酸及びその対応する塩を含む。
【0023】
本明細書において使用される際の「アミノ基」という用語は、式-NHRR’として表され、式中、R及びR’が、アルキル、アリール、カルボニル、ヘテロシクロアルキルなどを含む任意の有機基であり得、ここで、R及びR’が、別個の基又は環の一部であり得る。例えば、ピリジンは、R及びR’が芳香環の一部であるヘテロアリール基である。
【0024】
本明細書において使用される際の「治療する」という用語は、既存の病態の症状を保持又は低減することであると定義される。本明細書において使用される際の「予防する」という用語は、疾患又は障害の1つ以上の症状の発生の可能性をなくす又は低減することであると定義される。本明細書において使用される際の「低減する」という用語は、本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートが、活性を完全になくす、又は複合コアセルベートの非存在下における同じ活性と比較した際に活性を低減する能力である。
【0025】
「対象」は、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、モルモット、ネコ、ウサギ、ウシを含む哺乳動物、並びにニワトリ、両生類、及びは虫類を含む非哺乳動物を指す。
【0026】
「生理的条件」は、対象内のpH、温度などの条件を指す。例えば、ヒトの生理的pH及び温度はそれぞれ、7.2及び37℃である。
【0027】
その場凝固複合コアセルベート
水溶液中で反対の正味電荷を有する高分子電解質は、溶液の条件及び電荷比に応じて、いくつかのより高次のモルフォロジーに結合し得る。それらは、正味の表面電荷を有する高分子電解質複合体の安定したコロイド懸濁液を形成し得る。同様の表面電荷の間の反発は、懸濁液をさらなる結合から安定化させる。高分子電解質の電荷比が、平衡しているか、又はほぼ平衡している場合、最初の複合体は、さらに凝集し、高密度の流体相中に沈降することができ、ここで、反対のマクロイオンは、ほぼ等しい。このプロセスは、複合コアセルベーションと呼ばれ、高密度の流体モルフォロジーは、複合コアセルベートと呼ばれる。さらに記述的には、このプロセスは、2つの反対に帯電した高分子電解質の水溶液から、2つの液相、高分子電解質枯渇相と平衡にある高密度の濃縮高分子電解質相への結合マクロ相分離である。水性コアセルベート相は、水性枯渇相中に分散され得るが、水中の油滴のように、急速に再び沈降する。高分子電解質対の間の引力が反発力より強い場合、対になった高分子電解質から複合コアセルベート中への自然な脱混合が起こる。熱力学的には、複合コアセルベーションを駆動する自由エネルギーの正味の負電荷は、主に、完全に溶媒和された高分子電解質の配位エントロピーの損失を上回る、マクロイオンが結合するときに放出される小さい対イオンのエントロピーの利得に由来する。
【0028】
反対の正味電荷を有する高分子電解質から生成され得る異なるモルフォロジーの非限定的な例が、図1及び2に示される。図2A及び2Bの状態図に示されるように、高分子電解質の電荷比、温度、塩濃度、及びpHなどの可変のパラメータが、ゲル、複合コアセルベート、又は透明な均一な溶液(すなわち、相分離なし)の形成をもたらし得る(図1)。高分子電解質を、流体複合コアセルベートが形成される状態図の領域で混合することによって、本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートは、流体形態で調製され得る。流体形態が、状態図のゲル領域(図2)に相当する環境に導入される場合、その場凝固複合コアセルベートが新たな溶液条件と平衡するにつれて、流体形態は、固化して固体ゲルになるであろう。「ゲル」という用語は、本明細書において、流体によってその全体積にわたって拡大される非流体コロイドネットワーク又はポリマーネットワークとして定義される。IUPAC.Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the “Gold Book”).Compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson.Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997)。逆に、本明細書に記載される流体複合コアセルベートは、液体である。したがって、本明細書に記載される流体複合コアセルベートは、流体複合コアセルベート及びゲル中のポリカチオン及びポリアニオンが同一であることにもかかわらず、その場で生成される対応するゲルと比較して、完全に異なるモルフォロジーを有する。
【0029】
以下の態様が、本明細書に記載され、以下により詳細に説明される。
【0030】
固定されるカテーテル及びその用途
上記で説明されるように、その場凝固複合コアセルベートは、低い粘度を有する流体であり、容易に注入可能である。その場凝固複合コアセルベートは、水性であり、例えば、DMSOなどの潜在的に毒性の溶媒の必要がない。
【0031】
本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートは、適用部位のイオン強度より高いイオン強度で流体であるが、対象の血管内に導入されるときのイオン強度で不溶性のイオン性ヒドロゲルである。流体の、高いイオン強度の複合コアセルベートが、より低いイオン強度の適用部位に導入される場合、複合コアセルベートは、複合コアセルベート中の塩濃度が血管中の塩濃度と平衡するにつれて、血管内で、その場で固体又はゲル(すなわち、塞栓)を形成する。その後形成される固体又はゲルは、接着剤として働く血管内の非流体の不水溶性材料である。接着剤は、血管を通る血流を部分的に又は完全に妨げる塞栓として機能し得る。
【0032】
その場凝固複合コアセルベートは、生理的条件下で、その場で固体又はゲルを形成し得る。生理的イオン強度は、約300mOsm/Lである。したがって、300mOsm/Lを超えるイオン強度を有するその場凝固複合コアセルベートが、対象の血管内に導入される場合、流体複合コアセルベートは、適用部位において接着性固体又はゲルに変換される。一態様において、血管内に存在する血液は、1つ以上の一価塩を有し、ここで、一価塩の濃度は、500mM未満、又は150mM~500mM未満である。別の態様において、血液中の一価塩のイオン濃度は、150mM~600mMであり、複合コアセルベート組成物の一価塩の濃度は、600mM超~2Mである。
【0033】
本明細書に記載される流体複合コアセルベートが接着性固体又はゲルに変換される能力により、医療機器が血管内に固定されるのが可能になる。一実施形態において、カテーテルは、血管の内壁に固定され得る。別の態様において、2つのカテーテルが、血管内に挿入され、その後、その場凝固複合コアセルベートを用いて血管の内壁に固定され得る。この態様において、カテーテルは、血管内に固定され、長期間にわたって1つ以上の生物活性剤のための送達デバイスとして使用され得る。
【0034】
図3~6は、カテーテルを血管内に固定するために、その場凝固複合コアセルベートを使用するためのいくつかの実施形態を示す。一態様において、第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、対象の血管内に挿入され得、ここで、第2のカテーテルは、第1のカテーテル(近位)より血管(遠位)中にさらに伸長される。
【0035】
一態様において、第1のカテーテル及び第2のカテーテルは、同軸カテーテルの一部である。この特徴は、同軸カテーテル30として図3に示され、ここで、第2のカテーテル31は、第1のカテーテル32に挿入される。同軸カテーテル30は、血管33内に挿入され、相応に位置決めされる。血管内に入ると、第2のカテーテル31は、第1のカテーテル32から伸長され得る。この時点で、その場凝固複合コアセルベートは、開口部34aのみを介して第1のカテーテル32に注入される。流体複合コアセルベートが、第1のカテーテルの開口部34bを出るとき、固体塞栓又は栓35が形成される。さらに、塞栓又は栓は、第2のカテーテル31を、血管の内壁に付着させる。第1のカテーテル32は、取り外すことができ、第2のカテーテル31は、血管内に固定されたままである。図3中の実施形態の変形が、図4に示される。この実施形態において、第2のカテーテルは、オクルージョンバルーンカテーテル40である。血管内に固定されると、1つ以上の生物活性剤が、第2のカテーテル31に注入され、標的化部位に送達され得る。
【0036】
2つのカテーテルシステムの別の態様が、図5に示される。この実施形態において、第1のカテーテル50及び第2のカテーテル51は、互いに姉妹である(sistered to one another)。一態様において、第2のカテーテルが血管に固定された後、第1のカテーテルを血管から取り外すことができるように、第1及び第2のカテーテルは、互いに物理的に結合されない。図5に示されるように、第2のカテーテル51は、第1のカテーテル50に対して血管中にさらに伸長される。この時点で、その場凝固複合コアセルベートは、開口部52aを介して第1のカテーテル50に注入される。流体複合コアセルベートが、第1のカテーテルの開口部52bを出るとき、固体塞栓又は栓53が形成される。さらに、塞栓又は栓は、第2のカテーテル51を、血管の内壁に付着させる。第1のカテーテル50は、取り外すことができ、第2のカテーテル51は、血管内に固定されたままである。血管内に固定されると、1つ以上の生物活性剤は、第2のカテーテル51に注入され、標的化部位に送達され得る。
【0037】
他の態様において、単一のカテーテルが、血管内に固定され得る。この実施形態の一例が、図6A及び6Bに示される。図6A及び6Bを参照すると、カテーテル60は、第1の内腔61及び第2の内腔62を有する。カテーテル60は、第1の内腔61にアクセスする外側開口部63も有する。カテーテル60は、血管64に挿入され、相応して位置決めされる。この時点で、その場凝固複合コアセルベートは、第1の内腔61中で、カテーテル60中に注入される。流体複合コアセルベートが、カテーテル60の開口部63を出るとき、固体塞栓又は栓65が形成される。さらに、塞栓又は栓は、カテーテル60を、血管の内壁に付着させる。血管内に固定されると、1つ以上の生物活性剤は、第2の内腔62に注入され、標的化部位に送達され得る。
【0038】
上述される実施形態のいずれにおいても、カテーテルは、塞栓及び血管から取り外すことができる。塞栓中に生じた孔には、その後、さらなるその場凝固複合コアセルベートが充填されて、孔が封じられ、塞栓が保存され得る。
【0039】
カテーテルなどの送達デバイスを血管内に固定するためのその場凝固複合コアセルベートの使用は、選択肢及び多くの潜在的利益を臨床医に提供する。生物活性剤及び他の材料の、血管系内の正確な位置への標的化された及び集中した送達は、臨床上の難題である。血流は、薬剤を、意図される標的血管及び/又は部位から離れて下流に運んで、より少ない量の生物活性剤又は材料が、標的中に注入され得る。さらに、血管中に放出され、標的から離れて下流に流れるいずれかの材料が、身体の健康な非標的化部位における意図しない結果をもたらし得る。
【0040】
生物活性剤又は他の材料の特異的及び制御送達は、固定されたカテーテルを通して、標的化部位中に直接送達され得る。標的化された注入は、生物活性剤の有効性を高めることができ、血管系中の流れによる生物活性剤の損失を最小限に抑えることができる。さらに、血管内に固定されるカテーテルは、他の材料及び/又はデバイスの、特定の標的血管及び/又は部位への送達のための入り口として働き得る。
【0041】
本明細書に記載される方法を用いて対象に投与され得る生物活性剤は、限定はされないが、抗生物質、鎮痛剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、診断媒体、放射性同位体、他の流体(ガスないし液体)を含む任意の薬物であり得る。薬剤はまた、自己若しくは同種(同種異系)細胞、多血小板血漿(PRP)、又は他の同様の組織であり得る。
【0042】
別の態様において、生物活性剤は、核酸であり得る。核酸は、オリゴヌクレオチド、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はペプチド核酸(PNA)であり得る。対象とする核酸は、天然に存在する細胞から得られる核酸、組み換えにより産生された核酸、又は化学的に合成された核酸などの、任意の源からの核酸であり得る。例えば、核酸は、cDNA若しくはゲノムDNA、又は天然DNAのものに相当するヌクレオチド配列を有するように合成されたDNAであり得る。核酸はまた、核酸の突然変異又は改変された形態(例えば、少なくとも1つの核酸残基の改変、欠失、置換又は付加によって天然DNAと異なるDNA)又は天然に存在しない核酸であり得る。
【0043】
別の態様において、生物活性剤は、血管新生阻害剤であり得る。血管新生阻害剤は、一般に、疎水性分子であり、その場凝固液体複合コアセルベートは、水性環境におけるこれらの分子の送達を可能にする。一態様において、本明細書に開示されるコアセルベートは、高い局所濃度の血管新生阻害剤の送達のための有効なビヒクルである。
【0044】
一態様において、血管新生阻害剤は、その場凝固液体複合コアセルベートの0.1mg/mL~100mg/mLの量で存在する。さらにこの態様において、血管新生阻害剤は、その場凝固液体複合コアセルベートの約0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4.、4.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg/mLで存在し、ここで、任意の値は、ある範囲(例えば、0.1~10mg/mLなど)の下端点及び上端点であり得る。
【0045】
一態様において、血管新生阻害剤は、FDAに認可された血管新生阻害剤である。一態様において、血管新生阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。理論に制約されるのを望むものではないが、血管新生は、大部分が、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を介した細胞シグナル伝達によって開始及び維持される。一態様において、RTKは、内皮細胞の血管透過性、増殖、及び移動を刺激するVEGF;出芽内皮を支持する周皮細胞及び平滑筋細胞を動員するPDGF;並びに内皮細胞、平滑筋細胞、及び線維芽細胞の増殖を刺激するFGFを含む、いくつかの血管新生プロモーターのための受容体を含む。
【0046】
一態様において、血管新生阻害剤は、スニチニブリンゴ酸塩(SUN)、パゾパニブ塩酸塩(PAZ)、ソラフェニブトシル酸塩(SOR)、バンデタニブ(VAN)、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せなどのTKIである。
【0047】
一態様において、TKIなどの血管新生阻害剤を含むことは、その場凝固液体複合コアセルベートの材料特性又は硬化反応に影響を与えない。別の態様において、経口投与されるときのTKIの有効血漿濃度は、50ng/mL程度である。さらにこの態様において、本明細書に記載されるコアセルベートは、高い濃度のTKIを、血管増生腫瘍(hypervascular tumor)中に直接送達することを可能にすると同時に、腫瘍への血液供給を遮断する。
【0048】
代替的な態様において、ヒト化抗VEGF及び抗VEGFR Fab’断片が、その場凝固液体複合コアセルベートに組み込まれ得る。この態様において、静電相互作用は、放出速度を制御し得る。一態様において、Fab’断片の天然電荷が、コアセルベートの高分子電解質成分と相互作用するのに十分である。別の態様において、Fab’断片の天然電荷が、コアセルベートの高分子電解質成分と相互作用するのに不十分であり、Fab’断片は、マレアミドコンジュゲーション化学を用いて、短い高分子電解質を反応性スルフヒドリル基に結合することによって、電荷密度を増加させるように修飾される。
【0049】
一態様において、血管新生阻害剤は、抗VEGF抗体である。さらに他の態様において、抗VEGF抗体は、ベバシズマブであるか、又はバイオシミラー抗VEGF抗体であるか、又は例えば、ラニビズマブなどの抗VEGF抗体誘導体である。
【0050】
一態様において、固定されたカテーテルは、対象の血管内の血流を低減又は阻害するのに使用され得る。その場凝固液体複合コアセルベートは、カテーテルの周りにシールを形成し、ここで、カテーテル及び固体接着剤は一緒に、血流が血管を通るのを防ぐための塞栓剤として働く。塞栓としての固定されたカテーテルの使用は、腫瘍、動脈瘤、静脈瘤、動静脈奇形、又は他の血管障害への血流を阻害するための、止血又は人工塞栓の生成を含む多くの用途を有する。
【0051】
別の態様において、その場凝固液体複合コアセルベートは、1つ以上の生物活性剤を含み得る。したがって、一態様において、カテーテルの周りに形成される塞栓は、生物活性剤を持続的に送達することができる。したがって、一態様において、第1の生物活性剤が、固定されたカテーテルを通して投与され得る一方、第2の生物活性剤は、塞栓から時間とともに放出され得る。この態様において、第1及び第2の生物活性剤は、同じか又は異なる薬剤であり得る。本明細書に記載される生物活性剤のいずれも、本出願において使用され得る。
【0052】
別の態様において、コアセルベートは、例えば、ドキソルビシンなどの水溶性化学療法剤を含む。一態様において、化学療法剤は、その場凝固液体複合コアセルベートの0.001mg/mL~100mg/mLの量で存在する。さらにこの態様において、血管新生阻害剤は、その場凝固液体複合コアセルベートの約0.001、0.05、0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4.、4.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg/mLで存在し、ここで、任意の値は、ある範囲(例えば、0.1~10mg/mLなど)の下端点及び上端点であり得る。
【0053】
別の態様において、本明細書に記載されるその場凝固液体複合コアセルベートは、複合コアセルベートが対象に投与される部位における炎症を軽減又は防止するために、抗炎症剤と組み合わせて1つ以上の生物活性剤を含み得る。一態様において、抗炎症剤は、限定はされないが、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキセン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、オキサプロジン、エトドラク、ケトロラク、ナブメトン、又は他の非選択的非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)を含むNSAIDである。別の態様において、抗炎症剤は、限定はされないが、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、CS-502、JTE-522、L-745,337、及びNS398)を含むCOX-2阻害剤である。別の態様において、抗炎症剤は、限定はされないが、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、フルドロコルチゾン酢酸エステル、及び酢酸デオキシコルチコステロンを含むコルチコステロイドである。
【0054】
本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートを生成するのに使用される成分並びにそれらの用途が以下に示される。全体が参照により援用される国際公開出願番号国際公開第2016/011028号パンフレットに開示される成分が、本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートを生成するのに使用され得る。
【0055】
I.ポリカチオン
ポリカチオンは、一般に、特定のpHにおいて複数のカチオン性基を有するポリマー主鎖から構成される。カチオン性基は、ポリマー主鎖のペンダントであり得、及び/又はポリマー主鎖内に組み込まれ得る。特定の態様において、(例えば、生物医学的用途)、ポリカチオンは、カチオン性基又はpHを調整することによってカチオン性基に容易に変換され得る基を有する任意の生体適合性ポリマーである。一態様において、ポリカチオンは、ポリアミン化合物である。ポリアミンのアミノ基は、分枝鎖状又はポリマー主鎖の一部であり得る。アミノ基は、選択されたpHでプロトン化されて、カチオン性アンモニウム基を生成することができる、第一級、第二級、又は第三級アミノ基であり得る。一般に、ポリアミンは、その等電点(pI)(ポリマーが正味の中性電荷を有するpHである)に反映されるように、関連するpHにおいて負電荷に対して非常に過剰な正電荷を有するポリマーである。ポリカチオン上に存在するアミノ基の数は、最終的に、特定のpHにおけるポリカチオンの電荷密度を決定する。例えば、ポリカチオンは、10~90モル%、10~80モル%、10~70モル%、10~60モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、又は10~20モル%のアミノ基を有し得る。一態様において、ポリアミンは、約7のpHで過剰な正電荷を有し、pIは、7より大幅に高い。以下に説明されるように、さらなるアミノ基が、pI値を増大するために、ポリマーに組み込まれ得る。
【0056】
一態様において、アミノ基は、ポリカチオンに結合されたリジン、ヒスチジン、又はアルギニンの残基から誘導され得る。例えば、アルギニンは、グアニジニル基を有し、ここで、グアニジニル基は、本明細書において有用な好適なアミノ基である。任意のアニオン性対イオンが、カチオン性ポリマーとともに使用され得る。対イオンは、組成物の必須成分と物理的及び化学的に適合性であるべきであり、その他の点では、生成物の性能、安定性又は審美性を過度に損なわない。このような対イオンの非限定的な例としては、ハロゲン化物(例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物)、サルフェート、メチルサルフェート、アセテート及び他の一価カルボン酸が挙げられる。
【0057】
一態様において、ポリカチオンは、天然の生物から産生される正に帯電したタンパク質であり得る。例えば、組み換えP.カリフォルニカ(P.californica)タンパク質が、ポリカチオンとして使用され得る。一態様において、Pc1、Pc2、Pc4~Pc18(配列番号1~17)が、ポリカチオンとして使用され得る。タンパク質中に存在するアミノ酸のタイプ及び数は、所望の溶液特性を得るために変化し得る。例えば、Pc1は、リジンが豊富である一方(13.5モル%)、Pc4及びPc5は、ヒスチジンが豊富である(それぞれ、12.6及び11.3モル%)。
【0058】
別の態様において、ポリカチオンは、例えば、細菌、酵母、ウシ、ヤギ、タバコなどの異種宿主において、遺伝子又は改変遺伝子又はいくつかの遺伝子からの部分を含有する複合遺伝子の人工的な発現によって産生される組み換えタンパク質である。
【0059】
別の態様において、ポリカチオンは、生分解性ポリアミンであり得る。生分解性ポリアミンは、合成ポリマー又は天然ポリマーであり得る。ポリアミンが分解し得る機構は、使用されるポリアミンに応じて異なるであろう。天然ポリマーの場合、ポリマー鎖を加水分解し得る酵素が存在するため、それらは生分解性である。例えば、プロテアーゼは、ゼラチンのような天然タンパク質を加水分解し得る。合成生分解性ポリアミンの場合、それらは、化学的に不安定な結合も有する。例えば、β-アミノエステルは、加水分解可能なエステル基を有する。ポリアミンの性質に加えて、ポリアミンの分子量及び接着剤の架橋密度などの他の考慮事項が、生分解性の速度を調節するために変化され得る。
【0060】
一態様において、生分解性ポリアミンは、多糖、タンパク質、又は合成ポリアミンを含む。1つ以上のアミノ基を有する多糖が、本明細書において使用され得る。一態様において、多糖は、キトサン又は化学修飾キトサンなどの天然多糖である。同様に、タンパク質は、合成又は天然化合物であり得る。別の態様において、生分解性ポリアミンは、ポリ(β-アミノエステル)、ポリエステルアミン、ポリ(ジスルフィドアミン)、混合ポリ(エステル及びアミドアミン)、及びペプチド架橋ポリアミンなどの合成ポリアミンである。
【0061】
ポリカチオンが合成ポリマーである場合、様々な異なるポリマーが使用され得るが;例えば、生物医学的用途などの特定の用途において、ポリマーが生体適合性であり、細胞及び組織に対して非毒性であることが望ましい。一態様において、生分解性ポリアミンは、アミン修飾天然ポリマーであり得る。例えば、アミン修飾天然ポリマーは、1つ以上のアルキルアミノ基、ヘテロアリール基、又は1つ以上のアミノ基で置換された芳香族基で修飾されたゼラチンであり得る。アルキルアミノ基の例が、式IV~VIに示される。
【化1】

式中、R13~R22が、独立して、水素、アルキル基、又は窒素含有置換基であり;
s、t、u、v、w、及びxが、1~10の整数であり;
Aが、1~50の整数であり、
ここで、アルキルアミノ基は、天然ポリマーに共有結合される。一態様において、天然ポリマーが、カルボキシル基(例えば、酸又はエステル)を有する場合、カルボキシル基は、アルキルジアミノ化合物と反応されて、アミド結合を生成し、アルキルアミノ基をポリマーに組み込むことができる。したがって、式IV~VIを参照すると、アミノ基NR13は、天然ポリマーのカルボニル基に共有結合される。
【0062】
式IV~VIに示されるように、アミノ基の数は異なり得る。一態様において、アルキルアミノ基は、-NHCHNH、-NHCHCHNH、-NHCHCHCHNH、-NHCHCHCHCHNH、-NHCHCHCHCHCHNH、-NHCHNHCHCHCHNH、-NHCHCHNHCHCHCHNH、-NHCHCHCHNHCHCHCHCHNHCHCHCHNH、-NHCHCHNHCHCHCHCHNH、-NHCHCHNHCHCHCHNHCHCHCHNH、又は-NHCHCHNH(CHCHNH)CHCHNHであり、ここで、dが、0~50である。
【0063】
一態様において、アミン修飾天然ポリマーは、芳香族基に直接又は間接的に結合された1つ以上のアミノ基を有するアリール基を含み得る。或いは、アミノ基は、芳香環に組み込まれ得る。例えば、芳香族アミノ基は、ピロール、イソピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、又はインドールである。別の態様において、芳香族アミノ基は、ヒスチジン中に存在するイソイミダゾール基を含む。別の態様において、生分解性ポリアミンは、エチレンジアミンで修飾されたゼラチンであり得る。
【0064】
別の態様において、ポリカチオンは、カチオン性界面活性剤を用いて形成されるポリカチオン性ミセル又は混合ミセルであり得る。カチオン性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤と混合されて、様々な電荷密度を有するミセルを形成することができる。ミセルは、多価ミセルを形成する疎水性相互作用のため、ポリカチオン性である。一態様において、ミセルは、ポリアニオン上に存在する活性化エステル基と反応することが可能な複数のアミノ基を有する。
【0065】
非イオン性界面活性剤の例としては、直鎖状又は分枝鎖状配置の、約8~約20個の炭素原子を含有する、脂肪アルコールなどの高級脂肪族アルコールを、約3~約100モル、好ましくは、約5~約40モル、最も好ましくは、約5~約20モルのエチレンオキシドと縮合させた縮合生成物が挙げられる。このような非イオン性のエトキシ化脂肪アルコール界面活性剤の例は、Union Carbide製のTergitol(商標)15-Sシリーズ及びICI製のBrij(商標)界面活性剤である。Tergitol(商標)15-S界面活性剤は、C11~C15第二級アルコールポリエチレングリコールエーテルを含む。Brij(商標)97界面活性剤は、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルであり;Brij(商標)58界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルであり;Brij(商標)76界面活性剤は、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテルである。
【0066】
非イオン性界面活性剤の別の有用な種類としては、直鎖状又は分枝鎖状配置の、約6~12個の炭素原子を含有する1モルのアルキルフェノールと、エチレンオキシドとのポリエチレンオキシド縮合物が挙げられる。非反応性の非イオン性界面活性剤の例は、Rhone-Poulenc製のIgepal(商標)CO及びCAシリーズである。Igepal(商標)CO界面活性剤は、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む。Igepal(商標)CA界面活性剤は、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む。
【0067】
炭化水素非イオン性界面活性剤の別の有用な種類としては、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド又はブチレンオキシドのブロックコポリマーが挙げられる。このような非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤の例は、BASF製のPluronic(商標)及びTetronic(商標)シリーズの界面活性剤である。Pluronic(商標)界面活性剤は、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマーを含む。Tetronic(商標)界面活性剤は、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマーを含む。
【0068】
他の態様において、非イオン性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びステアリン酸ポリオキシエチレンを含む。このような脂肪酸エステル非イオン性界面活性剤の例は、ICI製のSpan(商標)、Tween(商標)、及びMyj(商標)界面活性剤である。Span(商標)界面活性剤は、C12~C18ソルビタンモノエステルを含む。Tween(商標)界面活性剤は、ポリ(エチレンオキシド)C12~C18ソルビタンモノエステルを含む。Myj(商標)界面活性剤は、ステアリン酸ポリ(エチレンオキシド)を含む。
【0069】
一態様において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル-フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ラウリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸ポリエチレングリコール、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックコポリマー、ラウリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミド、ラウリルアミン酢酸塩、硬質牛脂プロピレンジアミンジオレイン酸塩、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、フルオロ脂肪族ポリマーエステル、ポリエーテル-ポリシロキサンコポリマーなどを含み得る。
【0070】
カチオン性ミセルを作製するのに有用なカチオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩及び第四級アンモニウム塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤の非限定的な例としては、26個までの炭素原子を有し得る第四級アンモニウム界面活性剤が挙げられ、これらとしては、米国特許第6,136,769号明細書に記載されるようなアルコキシレート第四級アンモニウム(AQA)界面活性剤;米国特許第6,004,922号明細書に記載されるようなジメチルヒドロキシエチル第四級アンモニウム;ジメチルヒドロキシエチルラウリルアンモニウムクロリド;国際公開第98/35002号パンフレット、国際公開第98/35003号パンフレット、国際公開第98/35004号パンフレット、国際公開第98/35005号パンフレット、及び国際公開第98/35006号パンフレットに記載されるようなポリアミンカチオン性界面活性剤;米国特許第4,228,042号明細書、同第4,239,660号明細書、同第4,260,529号明細書及び米国特許第6,022,844号明細書に記載されるようなカチオン性エステル界面活性剤;並びに米国特許第6,221,825号明細書及び国際公開第00/47708号パンフレットに記載されるようなアミノ界面活性剤、特に、アミドプロピルジメチルアミン(APA)が挙げられる。
【0071】
一態様において、ポリカチオンは、1つ以上のペンダントアミノ基を有するポリアクリレートを含む。例えば、ポリカチオンの骨格は、限定はされないが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドなどを含むアクリレートモノマーの重合から誘導され得る。一態様において、ポリカチオン骨格は、ポリアクリルアミドから誘導される。他の態様において、ポリカチオンは、ブロックコポリマーであり、ここで、コポリマーのセグメント又は部分は、コポリマーを生成するのに使用されるモノマーの選択に応じて、カチオン性基又は中性基を有する。
【0072】
他の態様において、ポリカチオンは、デンドリマーであり得る。デンドリマーは、分枝鎖状ポリマー、マルチアーム型(multi-armed)ポリマー、星形ポリマーなどであり得る。一態様において、デンドリマーは、ポリアルキルイミンデンドリマー、混合アミノ/エーテルデンドリマー、混合アミノ/アミドデンドリマー、又はアミノ酸デンドリマーである。別の態様において、デンドリマーは、ポリ(アミドアミン)、又はPAMAMである。一態様において、デンドリマーは、3~20個のアームを有し、ここで、各アームは、アミノ基を含む。
【0073】
一態様において、ポリカチオンは、ポリアミノ化合物である。別の態様において、ポリアミノ化合物は、10~90モル%の第一級アミノ基を有する。さらなる態様において、ポリカチオンポリマーは、式I
【化2】

(式中、R、R、及びRが、独立して、水素又はアルキル基であり、Xが、酸素又はNRであり、ここで、Rが、水素又はアルキル基であり、mが、1~10である)の少なくとも1つの断片、又はその薬学的に許容される塩を有する。別の態様において、R、R、及びRがメチルであり、mが2である。式Iを参照すると、ポリマー主鎖は、ペンダント-C(O)X(CHNR単位を有するCH-CR単位から構成される。一態様において、ポリカチオンは、カチオン性第一級アミンモノマー(3-アミノ-プロピルメタクリレート)及びアクリルアミドのラジカル重合生成物であり、ここで、分子量は、10~200kdであり、5~90mol%の第一級モノマー濃度を有する。
【0074】
別の態様において、ポリカチオンは、プロタミンである。プロタミンは、精子形成の際のクロマチンの精子頭部への凝縮において役割を果たす、アルギニンが豊富なポリカチオン性タンパク質である。水産業の副産物として、魚の精子から精製される市販のプロタミンは、容易に大量に入手可能であり、比較的安価である。本明細書において有用なプロタミンの非限定的な例は、サルミンである。サケの精子から単離されるプロタミンであるサルミンのアミノ酸配列は、配列番号18である。32のアミノ酸のうち、21は、アルギニン(R)である。Rの側鎖におけるグアニジニル基は、約12.5のpKを有するため、サルミンは、生理的に適切なpHで高密度に帯電したポリカチオンになる。サルミンは、約4,500g/molの分子量及びカルボキシ末端における単一の負電荷を有する。別の態様において、プロタミンは、クルペインである。
【0075】
一態様において、プロタミンは、本明細書に記載される1つ以上の架橋性基により誘導体化され得る。例えば、サルミンは、1つ以上のアクリレート又はメタクリレート基を含むように誘導体化され得る。この態様において、サルミンは、架橋性ポリカチオンを形成するために、C末端カルボキシレートにおいて単一のメタクリルアミド基により誘導体化されている。
【0076】
一態様において、ポリカチオンは、天然ポリマーに存在する1つ以上のアミンがグアニジン基で修飾された天然ポリマーである。別の態様において、ポリカチオンは、1つ以上のグアニジニル側鎖を含有する合成ポリマーである。例えば、ポリカチオンは、アクリレート又はメタクリレート骨格及び1つ以上のグアニジニル側鎖を有する合成ポリグアニジニルポリマーであり得る。別の態様において、ポリカチオンポリマーは、式XX
【化3】

(式中、Rが、水素又はアルキル基であり、Xが、酸素又はNRであり、ここで、Rが、水素又はアルキル基であり、mが、1~10である)の少なくとも1つの断片、又はその薬学的に許容できる塩を有する。一態様において、式Iの化合物において、Rがメチルであり、XがNHであり、mが3である。別の態様において、モノマーは、メタクリルアミドである。
【0077】
さらなる態様において、モノマーに対する式Iのグアニジニルモノマーのモル比が、1:1~10:1であるか、又は1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、若しくは10:1であり、ここで、任意の比率が、ある範囲(例えば、2:1~5:1など)の下端点及び上端点であり得る。一態様において、モノマーに対する式Iのグアニジニルモノマーのモル比が、3:1~4:1である。
【0078】
ポリグアニジニルコポリマーは、例えば、RAFT重合(すなわち、可逆的付加開裂連鎖移動重合)又はラジカル重合などの他の方法などの、文献において公知の重合技術を使用することによって合成され得る。さらなる態様において、この重合反応は、水性環境中で行われ得る。
【0079】
一態様において、ポリグアニジニルコポリマーの分子量分布が、5kDa~100kDaの平均分子量前後で分布しているか、又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100kDaであり得、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、10~30kDaなど)の下端点及び上端点であり得る。
【0080】
別の態様において、制御されたM及び狭い多分散性指数(PDI)を有する複数のコポリマーが、RAFT重合によって合成され得る。一態様において、コポリマーは、約2kg/mol~約80kg/molの平均分子量(M)を有するか、又は約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、若しくは80kg/molであり得、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、10~25kg/molなど)の下端点及び上端点であり得る。
【0081】
別の態様において、ポリグアニジニルコポリマーは、多峰性(multimodal)ポリグアニジニルコポリマーである。「多峰性ポリグアニジニルコポリマー」という用語は、分布曲線が、少なくとも2つ以上の分子量単峰性分布曲線の総和である、ポリグアニジニルコポリマーである。一態様において、ポリグアニジニルコポリマーは、5~100kDaのモードでポリグアニジニルコポリマー分子量の多峰性分布を有するか、又は約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100kDaであり得、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、10~30kDaなど)の下端点及び上端点であり得る。
【0082】
別の態様において、グアニジニル側基の数は、約50~約100mol%で変化し得るか、又は約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100mol%であり得、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、60~90mol%など)の下端点及び上端点であり得る。一態様において、グアニジニル側基は、ポリグアニジニルコポリマーの約70~約80mol%である。逆に、コモノマー濃度は、約50~約0mol%で変化し得るか、又は約50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、若しくは0mol%であり得、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、10~40mol%など)の下端点及び上端点であり得る。一態様において、コポリマーのM、PDI、及び構造が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、H NMR、及び13C NMR又は他の一般的な技術によって確認され得る。本明細書において有用なコポリマーを調製及び特性評価するための例示的な手順が、以下の実施例に示される。
【0083】
II.ポリアニオン
ポリカチオンと同様に、ポリアニオンは、合成ポリマーであるか又は天然に存在し得る。天然ポリアニオンの例としては、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、及びヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンが挙げられる。他の態様において、中性pHにおいて正味の負電荷を有する酸性タンパク質又は低いpIを有するタンパク質が、本明細書に記載される天然ポリアニオンとして使用され得る。アニオン性基は、ポリマー主鎖のペンダントであり得、及び/又はポリマー主鎖内に組み込まれ得る。
【0084】
ポリアニオンが合成ポリマーである場合、それは、一般に、アニオン性基又はpHを調整することによってアニオン性基に容易に変換され得る基を有する任意のポリマーである。アニオン性基に変換され得る基の例としては、限定はされないが、カルボキシレート、スルホネート、ボロネート、サルフェート、ボレート、ホスホネート、又はホスフェートが挙げられる。上述される考慮事項が満たされる場合、任意のカチオン性対イオンが、アニオン性ポリマーとともに使用され得る。
【0085】
一態様において、ポリアニオンは、ポリホスフェートである。別の態様において、ポリアニオンは、5~90モル%のホスフェート基を有するポリホスフェート化合物である。例えば、ポリホスフェートは、例えば、DNA、RNA、又はホスビチン(卵タンパク質)、象牙質(天然歯のリンタンパク質)、カゼイン(リン酸化乳タンパク質)、若しくは骨タンパク質(例えばオステオポンチン)のような高度にリン酸化されたタンパク質などの天然化合物であり得る。
【0086】
或いは、ポリホスホセリンは、アミノ酸セリンを重合させ、次に、ポリペプチドを化学的にリン酸化することによって作製される合成ポリペプチドであり得る。別の態様において、ポリホスホセリンは、ホスホセリンの重合によって生成され得る。一態様において、ポリホスフェートは、タンパク質(例えば、天然のセリン又はトレオニンが豊富なタンパク質)を化学的又は酵素的にリン酸化することによって生成され得る。さらなる態様において、ポリホスフェートは、限定はされないが、セルロース又はデキストランなどの多糖を含む多価アルコールを化学的にリン酸化することによって生成され得る。
【0087】
別の態様において、ポリホスフェートは、合成化合物であり得る。例えば、ポリホスフェートは、ペンダントホスフェート基がポリマー主鎖に結合されるか及び/又はポリマー主鎖(例えば、ホスホジエステル骨格)中に存在するポリマーであり得る。
【0088】
別の態様において、ポリアニオンは、アニオン性界面活性剤を用いて形成されるミセル又は混合ミセルであり得る。アニオン性界面活性剤は、上述される非イオン性界面活性剤のいずれかと混合されて、様々な電荷密度を有するミセルを形成することができる。ミセルは、多価ミセルを形成する疎水性相互作用のため、ポリアニオン性である。
【0089】
他の有用なアニオン性界面活性剤としては、限定はされないが、以下のアルカリ金属及び(アルキル)アンモニウム塩が挙げられる:1)ドデシル硫酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム、及びドデカンスルホン酸カリウムなどの、アルキル硫酸塩及びアルキルスルホン酸塩;2)直鎖状又は分枝鎖状脂肪族アルコール及びカルボン酸のポリエトキシ化誘導体の硫酸塩;3)ラウリルベンゼン-4-スルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼン又はアルキルナフタレンスルホン酸塩及び硫酸塩、並びにエトキシ化及びポリエトキシ化アルキル及びアラルキルアルコールカルボン酸塩;5)アルキルサルコシネート及びアルキルグリシネートなどのグリシネート;6)ジアルキルスルホコハク酸塩を含むスルホコハク酸塩;7)イソチオネート(isothionate)誘導体;8)Nメチル-N-オレイルタウリンナトリウムなどのN-アシルタウリン誘導体);9)アルキル及びアルキルアミドアルキルジアルキルアミンオキシドを含むアミンオキシド;及び10)エトキシ化ドデシルアルコールリン酸エステルなどのアルキルリン酸モノ又はジエステル、ナトリウム塩。
【0090】
好適なアニオン性スルホネート界面活性剤の代表的な市販の例としては、例えば、Henkel Inc.(Wilmington,Del.)からTEXAPON(商標)L-100として、又はStepan Chemical Co(Northfield,Ill.)からPOLYSTEP(商標)B-3として入手可能なラウリル硫酸ナトリウム;Stepan Chemical Co.(Northfield,Ill.)からPOLYSTEP(商標)B-12として入手可能な25ラウリルエーテル硫酸ナトリウム;Henkel Inc.(Wilmington,Del.)からSTANDAPOL.TM.Aとして入手可能なラウリル硫酸アンモニウム;及びRhone-Poulenc,Inc.(Cranberry,N.J.)からSIPONATE(商標)DS-10として入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、Cytec Industries(West Paterson,N.J.)から市販されている商標AEROSOL(商標)OTを有するジアルキルスルホスクシネート;メチルタウリンナトリウム(日光ケミカルズ株式会社(Nikko Chemicals Co.)(東京、日本)から商品名NIKKOL(商標)CMT30で入手可能);Clariant Corp.(Charlotte,N.C.)から入手可能なナトリウム(C14~C17)第二級アルカンスルホネート(α-オレフィンスルホネート)であるHostapur(商標)SASなどの第二級アルカンスルホネート;Stepan Companyから商品名ALPHASTE(商標)PC48で入手可能なナトリウムメチル-2-スルホ(C12~16)エステル及び二ナトリウム2-スルホ(C12~C16)脂肪酸などのメチル-2-スルホアルキルエステル;ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(商品名LANTHANOL(商標)LAL)及びラウレススルホコハク酸二ナトリウム(STEPANMILD(商標)SL3)として、いずれもStepan Companyから入手可能なアルキルスルホ酢酸塩及びアルキルスルホコハク酸塩;Stepan Companyから商品名STEPANOL(商標)AMで市販されているラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸塩、及び又はStepan Chemical Co.からBIO-SOFT(登録商標)AS-100で販売されているドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。一態様において、界面活性剤は、C12~C16スルホネートの混合物を含有するα-オレフィンスルホン酸二ナトリウムであり得る。一態様において、Pilot Corp.によって製造されるCALSOFT(商標)AOS-40は、本明細書において界面活性剤として使用され得る。別の態様において、界面活性剤は、アルキルジフェニルオキシドジスルホネートである、Dow Chemicalによって製造されるDOWFAX 2A1又は2Gである。
【0091】
好適なアニオン性ホスフェート界面活性剤の代表的な市販の例としては、Clariant Corp.から商品名HOSTAPHAT(商標)340KLで市販されている一般にトリラウレス-4-リン酸と呼ばれるモノ-、ジ-及びトリ-(アルキルテトラグリコールエーテル)-o-リン酸エステルの混合物、並びにCroda Inc.(Parsipanny,N.J.)から商品名CRODAPHOS(商標)SGで入手可能なPPG-5セチル10リン酸が挙げられる。
【0092】
好適なアニオン性アミンオキシド界面活性剤の代表的な市販の例としては、商品名AMMONYX(商標)LO、LMDO、及びCO(ラウリルジメチルアミンオキシド、ラウリルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びセチルアミンオキシドである)で、全てStepan Companyから市販されているものが挙げられる。
【0093】
一態様において、ポリアニオンは、1つ以上のペンダントホスフェート基を有するポリアクリレートを含む。例えば、ポリアニオンは、限定はされないが、アクリレート、メタクリレートなどを含むアクリレートモノマーの重合から誘導され得る。他の態様において、ポリアニオンは、ブロックコポリマーであり、ここで、コポリマーのセグメント又は部分は、コポリマーを生成するのに使用されるモノマーの選択に応じて、アニオン性基及び中性基を有する。
【0094】
一態様において、ポリアニオンは、2つ以上のカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基を含む。
【0095】
別の態様において、ポリアニオンは、式XI
【化4】
(式中、Rが、水素又はアルキル基であり;
nが、1~10であり;
Yが、酸素、硫黄、又はNR30であり、ここで、R30が、水素、アルキル基、又はアリール基であり;
Z’が、アニオン性基又はアニオン性基に変換され得る基である)で表される少なくとも1つの断片、又はその薬学的に許容される塩を有するポリマーである。
【0096】
一態様において、式XI中のZ’は、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、置換若しくは非置換ホスフェート、又はホスホネートである。別の態様において、式XI中のZ’は、サルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、置換若しくは非置換ホスフェート、又はホスホネートであり、式XI中のnは2である。
【0097】
一態様において、ポリアニオンは、複数のホスフェート基を有する無機ポリホスフェートである(例えば、NaPO、ここで、nが、3~10であるか、又は3、4、5、6、7、8、9、若しくは10である)。無機ホスフェートの例としては、限定はされないが、グラハム塩、ヘキサメタリン酸塩、及びトリリン酸塩が挙げられる。これらの塩の対イオンは、例えば、Na、K、NH 、又はそれらの組合せなどの一価カチオンであり得る。一態様において、ポリアニオンは、ヘキサメタリン酸ナトリウムである。
【0098】
別の態様において、ポリアニオンは、リン酸化糖である。糖は、ヘキソース又はペントース糖であり得る。さらに、糖は、部分的に又は完全にリン酸化され得る。一態様において、リン酸化糖は、イノシトール6リン酸(IP6)である。
【0099】
III.イオンを生成する塩
水中でイオンを生成する任意の塩が、本明細書に記載される複合コアセルベートにおいて使用され得る。塩の濃度及び属性(identity)は、その場液体複合コアセルベートが使用される用途及び条件(例えば、塩のpH、価数など)に応じて異なり得る。
【0100】
一態様において、塩は、一価塩である。一価塩は、水中で一価イオンを生成する任意の塩であり得る。一態様において、一価塩は、例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組合せなどの生体適合性塩であり得る。
【0101】
別の態様において、塩は、水中で両性イオンを生成する。例えば、塩は、溶液のpHを変化させることによって、両性イオンを生成し得る。一態様において、アミノ酸塩が、本明細書に記載される複合コアセルベート中で両性イオンを生成し得る。
【0102】
別の態様において、化合物は、2以上の正又は負電荷を有するイオンを生成する多価塩であり得る。一態様において、多価塩は、2つ以上のカルボン酸基を有する化合物の塩(例えば、酒石酸塩、クエン酸塩など)であり得る。別の態様において、多価塩は、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)であり得る。
【0103】
別の態様において、イオンを生成する塩は、対象の投与部位におけるイオンの濃度より1.5~10倍高い濃度で存在する。対象中に存在するイオンの濃度は、対象中で変化し得るため;複合コアセルベート中でイオンを生成する塩の濃度は、特定の用途に合わせることができる。一態様において、複合コアセルベート中の塩濃度は、対象の投与部位におけるイオンの濃度より1.5、2、2.5、3、3.4、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10倍高く、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、2.5~7.5など)の下端点及び上端点であり得る。別の態様において、塩濃度は、約150~約1500mMであり得るか、又は約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1150、1200、1250、1300、1400、若しくは1500mMであり得、ここで、任意の値が、ある範囲(例えば、1,000~1,400mMなど)の下端点及び上端点であり得る。一態様において、塩はNaClであり、濃度は約1200mM(1.2M)である。
【0104】
一態様において、その場凝固液体複合コアセルベートは、非経口若しくは静脈内投与に使用され得る高張生理食塩溶液中で又は対象への注入によって配合され得る。一態様において、その場凝固液体複合コアセルベートは、リンゲルデキストロース(Ringer’s dextrose)、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は対象に安全に投与され得る他の緩衝生理食塩溶液中で配合され得、ここで、生理食塩水濃度は、それが生理的条件における生理食塩水濃度より高くなるように調整されている。
【0105】
IV.生物活性剤
本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートは、1つ以上の生物活性剤を含み得る。生物活性剤は、限定はされないが、抗生物質、鎮痛剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、診断媒体、放射性同位体、他の流体(ガスないし液体)を含む任意の薬物であり得る。薬剤はまた、自己又は同種(同種異系)細胞、多血小板血漿(PRP)、又は他の同様の組織であり得る。
【0106】
別の態様において、生物活性剤は、核酸であり得る。核酸は、オリゴヌクレオチド、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はペプチド核酸(PNA)であり得る。対象とする核酸は、天然に存在する細胞から得られる核酸、組み換えにより産生された核酸、又は化学的に合成された核酸などの、任意の源からの核酸であり得る。例えば、核酸は、cDNA若しくはゲノムDNA、又は天然DNAのものに相当するヌクレオチド配列を有するように合成されたDNAであり得る。核酸はまた、核酸の突然変異又は改変された形態(例えば、少なくとも1つの核酸残基の改変、欠失、置換又は付加によって天然DNAと異なるDNA)又は天然に存在しない核酸であり得る。
【0107】
別の態様において、生物活性剤は、血管新生阻害剤であり得る。血管新生阻害剤は、一般に、疎水性分子であり、その場凝固液体複合コアセルベートは、水性環境におけるこれらの分子の送達を可能にする。一態様において、本明細書に開示されるコアセルベートは、高い局所濃度の血管新生阻害剤の送達のための有効なビヒクルである。
【0108】
一態様において、血管新生阻害剤は、その場凝固液体複合コアセルベートの0.1mg/mL~100mg/mLの量で存在する。さらにこの態様において、血管新生阻害剤は、その場凝固液体複合コアセルベートの約0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4.、4.5、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg/mLで存在し、ここで、任意の値は、範囲(例えば、0.1~10mg/mLなど)の下端点及び上端点であり得る。
【0109】
一態様において、血管新生阻害剤は、FDAに認可された血管新生阻害剤である。一態様において、血管新生阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。理論に制約されるのを望むものではないが、血管新生は、大部分が、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を介した細胞シグナル伝達によって開始及び維持される。一態様において、RTKは、内皮細胞の血管透過性、増殖、及び移動を刺激するVEGF;出芽内皮を支持する周皮細胞及び平滑筋細胞を動員するPDGF;並びに内皮細胞、平滑筋細胞、及び線維芽細胞の増殖を刺激するFGFを含む、いくつかの血管新生プロモーターのための受容体を含む。
【0110】
一態様において、血管新生阻害剤は、スニチニブリンゴ酸塩(SUN)、パゾパニブ塩酸塩(PAZ)、ソラフェニブトシル酸塩(SOR)、バンデタニブ(VAN)、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せなどのTKIである。
【0111】
一態様において、TKIなどの血管新生阻害剤を含むことは、その場凝固液体複合コアセルベートの材料特性又は硬化反応に影響を与えない。別の態様において、経口投与されるときのTKIの有効血漿濃度は、50ng/mL程度である。さらにこの態様において、本明細書に記載されるコアセルベートは、高い濃度のTKIを、血管増生腫瘍中に直接送達することを可能にすると同時に、腫瘍への血液供給を遮断する。
【0112】
代替的な態様において、ヒト化抗VEGF及び抗VEGFR Fab’断片が、その場凝固液体複合コアセルベートに組み込まれ得る。この態様において、静電相互作用は、放出速度を制御し得る。一態様において、Fab’断片の天然電荷が、コアセルベートの高分子電解質成分と相互作用するのに十分である。別の態様において、Fab’断片の天然電荷が、コアセルベートの高分子電解質成分と相互作用するのに不十分であり、Fab’断片は、マレアミドコンジュゲーション化学を用いて、短い高分子電解質を反応性スルフヒドリル基に結合することによって、電荷密度を増加させるように修飾される。
【0113】
一態様において、血管新生阻害剤は、抗VEGF抗体である。さらに他の態様において、抗VEGF抗体は、ベバシズマブであるか、又はバイオシミラー抗VEGF抗体であるか、又は例えば、ラニビズマブなどの抗VEGF抗体誘導体である。
【0114】
V.造影剤
一態様において、本明細書に開示されるその場凝固液体複合コアセルベートは、造影剤とともに配合される。さらなる態様において、造影剤は、X線造影剤である。さらにこの態様において、X線造影剤は、タンタル金属粒子(Ta)、金粒子、又はヨウ化物塩(例えば、ヨウ化ナトリウム)であり得る。一態様において、30%(w/w)までのTaが、配合物に含まれ得る。一態様において、Taを含むことは、手術室中の介入放射線医にとって有益であり得る。別の態様において、造影剤は、蛍光透視造影剤であり得る。さらにこの態様において、蛍光透視造影剤は、酸化タンタル(TaO、Ta)粒子であり得る。一態様において、造影剤は、0.5μm~50μm、1μm~25μm、1μm~10μm、又は1μm~5μmの粒度を有するタンタル粒子であり得る。別の態様において、造影剤は、10%~60%、20%~50%、又は20%~40%の量のタンタル粒子である。
【0115】
VI.架橋性基
特定の態様において、ポリカチオン及びポリアニオンは、硬化の際に2つのポリマー間の架橋が新たな共有結合を生じるのを可能にする基を含有し得る。架橋の機構は、架橋基の選択に応じて異なり得る。一態様において、架橋基は、求電子基及び求核基であり得る。例えば、ポリアニオンは、1つ以上の求電子基を有することができ、ポリカチオンは、求電子基と反応して、新たな共有結合を生じることが可能な1つ以上の求核基を有し得る。求電子基の例としては、限定はされないが、無水物基、エステル、ケトン、ラクタム(例えば、マレイミド及びスクシンイミド)、ラクトン、エポキシド基、イソシアネート基、及びアルデヒドが挙げられる。求核基の例は、以下に示される。一態様において、ポリカチオン及びポリアニオンは、マイケル付加によって互いに架橋することができる。例えば、ポリカチオンは、例えば、ポリアニオン上に存在するオレフィン基と反応し得るヒドロキシル又はチオール基などの1つ以上の求核基を有し得る。
【0116】
一態様において、ポリアニオン上の架橋基は、オレフィン基を含み、ポリカチオン上の架橋基は、オレフィン基と反応して、新たな共有結合を生じる求核基を含む。別の態様において、ポリカチオン上の架橋基は、オレフィン基を含み、ポリアニオン上の架橋基は、オレフィン基と反応して、新たな共有結合を生じる求核基を含む。
【0117】
別の態様において、ポリカチオン及びポリアニオンはそれぞれ、化学線架橋性基を有する。本明細書において使用される際、硬化又は重合に関連する「化学線架橋性基」は、ポリカチオンとポリアニオンとの間の架橋が、例えば、UV照射、可視光照射、電離放射線(例えば、ガンマ線又はX線照射)、マイクロ波照射などの化学線照射によって行われることを意味する。化学線硬化法は、当業者に周知である。化学線架橋性基は、例えば、オレフィン基などの不飽和有機基であり得る。本明細書において有用なオレフィン基の例としては、限定はされないが、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基、ビニル基、ビニルエステル基、又はスチレニル基が挙げられる。別の態様において、化学線架橋性基は、アジド基であり得る。例えば、アジド基を介した光活性化架橋によって、ポリカチオンとポリアニオンとの間の架橋が生じ得る。
【0118】
ポリカチオン及びポリアニオンとして使用され得る上述されるポリマー(合成又は天然)のいずれも、化学線架橋性基を含むように修飾され得る。
【0119】
別の態様において、架橋性基は、酸化剤の存在下で酸化を起こすことが可能なジヒドロキシ置換芳香族基を含む。一態様において、ジヒドロキシ置換芳香族基は、酸化されて対応するキノンになることが可能なオルト-ジヒドロキシ芳香族基である。別の態様において、ジヒドロキシル置換芳香族基は、例えば、DOPA及びカテコール(3,4ジヒドロキシフェノール)などの、ジヒドロキシフェノール又はハロゲン化ジヒドロキシフェノール基である。例えば、DOPAの場合、それは、酸化されて、ドーパキノンになり得る。ドーパキノンは、隣接するDOPA基又は別の求核基のいずれかと反応することが可能である。酸素又は限定はされないが、過酸化物、過ヨウ素酸塩(例えば、NaIO)、過硫酸塩、過マンガン酸塩、二クロム酸塩、遷移金属酸化剤(例えば、Fe+3化合物、四酸化オスミウム)、若しくは酵素(例えば、カテコールオキシダーゼ)を含む他の添加剤などの酸化剤の存在下で、ジヒドロキシル置換芳香族基は、酸化され得る。
【0120】
一態様において、ポリアニオンは、2つ以上のモノマーの間の重合生成物であり、ここで、モノマーの1つが、モノマーに共有結合されたジヒドロキシ芳香族基を有する。例えば、ポリアニオンは、(1)ホスフェートアクリレート及び/又はホスフェートメタクリレートと、(2)第2のアクリレート又は第2のメタクリレートに共有結合されたジヒドロキシ芳香族基を有する第2のアクリレート及び/又は第2のメタクリレートとの間の重合生成物であり得る。別の態様において、ポリアニオンは、メタクリルオキシエチルホスフェートとドーパミンメタクリルアミドとの間の重合生成物である。これらのポリマーのそれぞれにおいて、ペンダントオルト-ジヒドロキシフェニル残基を含有するアクリレートが、適切なモノマーと重合されて、ペンダントオルト-ジヒドロキシフェニル残基を有するポリアニオンを生成する。オルト-ジヒドロキシフェニル基の酸化は、反応性中間体であるオルトキノン基をもたらし、マイケル型付加によって、例えば、アミノ、ヒドロキシル、又はチオール基などの求核基と架橋(すなわち、反応)して、新たな共有結合を形成することができる。例えば、ポリカチオン上のリシル基は、ポリアニオン上のオルトキノン残基と反応して、新たな共有結合を生じることができる。例えば、チロシン又はアルキルフェノール基などの他の基が、本明細書において使用され得る。アルキルフェノール基は、Hの存在下で、ペルオキシダーゼ酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼと架橋され得る。本明細書に記載される接着性複合コアセルベートの使用に関する架橋の重要性は、以下に説明される。
【0121】
特定の態様において、上記で使用される酸化剤は、安定化され得る。例えば、酸化還元活性でない、過ヨウ素酸塩との複合体を形成する化合物が、安定化された酸化剤をもたらし得る。言い換えると、過ヨウ素酸塩は、非酸化形態で安定化され、複合体である間、オルト-ジヒドロキシ置換芳香族基を酸化させることができない。複合体は、可逆的であり、非常に高い安定性定数を有するとしても、少量の非複合体化過ヨウ素酸塩が形成される。オルト-ジヒドロキシル置換芳香族基が、少量の遊離過ヨウ素酸塩に対して化合物と競合する。遊離過ヨウ素酸塩が酸化されるにつれて、平衡複合体からさらに放出される。一態様において、六員環上にシス,シス-1,2,3-トリオール群を有する糖は、競合的な過ヨウ素酸塩複合体を形成し得る。安定した過ヨウ素酸塩複合体を形成する特定の化合物の一例は、1,2-O-イソプロピリデン-α-D-グルコフラノース(A.S.Perlin and E.VON Rudloff,Canadian Journal of Chemistry.Volume 43(1965))である。安定化された酸化剤は、架橋の速度を制御することができる。理論に制約されるのを望むものではないが、安定化された酸化剤は、酸化の速度を遅くして、接着剤が不可逆的に硬化する前に酸化剤を加え、基材を位置決めする時間を提供する。
【0122】
他の態様において、ポリカチオン及び/又はポリアニオン上に存在する架橋剤は、遷移金属イオンと配位錯体を形成することができる。一態様において、ポリカチオン及び/又はポリアニオンは、遷移金属イオンに配位することが可能な基を含み得る。配位する側鎖の例は、カテコール、イミダゾール、ホスフェート、カルボン酸、及び組合せである。配位及び解離の速度は、配位基の選択、遷移金属イオン、及びpHによって制御され得る。したがって、上述される共有結合による架橋に加えて、架橋は、静電結合、イオン結合、配位結合、又は他の非共有結合によって起こり得る。例えば、鉄、銅、バナジウム、亜鉛、及びニッケルなどの遷移金属イオンが、本明細書において使用され得る。一態様において、遷移金属は、適用部位において水性環境中に存在する。
【0123】
特定の態様において、その場凝固複合コアセルベートは、多価架橋剤も含み得る。一態様において、多価架橋剤は、マイケル付加反応によって、ポリカチオン及びポリアニオン上に存在する架橋性基(例えば、オレフィン基)と反応して、新たな共有結合を生じる2つ以上の求核基(例えば、ヒドロキシル、チオールなど)を有する。一態様において、多価架橋剤は、ジ-チオール又はトリ-チオール化合物である。
【0124】
VII.強化成分
本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートは、任意に、強化成分を含み得る。「強化成分」という用語は、本明細書において、強化成分を含まない同じコアセルベートと比較したときに、コアセルベートの硬化前又は硬化後のその場凝固複合コアセルベートの、本明細書に記載される流体複合コアセルベートの1つ以上の特性(例えば、凝集性、破壊靱性、弾性率、硬化後の寸法安定性、粘度など)を強化又は調節する任意の成分として定義される。強化成分がコアセルベートの機械的特性を強化し得るモードは、様々であり得、コアセルベートの意図される用途並びにポリカチオン、ポリアニオン、及び強化成分の選択に依存するであろう。例えば、コアセルベートを硬化すると、コアセルベート中に存在するポリカチオン及び/又はポリアニオンは、強化成分と共有結合により架橋することができる。他の態様において、強化成分は、コアセルベート内の空間又は「相」を占有することができ、これは、最終的に、コアセルベートの機械的特性を増大させる。本明細書において有用な強化成分の例が、以下に示される。
【0125】
一態様において、強化成分は、重合性モノマーである。複合コアセルベート内に捕捉された重合性モノマーは、相互侵入(interpenetrating)ポリマーネットワークを生成するために重合を起こすことが可能な任意の水溶性モノマーであり得る。特定の態様において、相互侵入ネットワークは、ポリアニオン上に存在する活性化エステル基と反応(すなわち、架橋)し得る求核基(例えば、アミノ基)を有し得る。重合性モノマーの選択は、用途に応じて異なり得る。分子量などの要因が、水中の重合性モノマーの溶解特性並びに得られるコアセルベートの機械的特性を調節するために変更され得る。
【0126】
重合性モノマー上の官能基の選択により、重合のモードが決定される。例えば、重合性モノマーは、例えば、ラジカル重合及びマイケル付加反応などの機構による重合を起こし得る重合性オレフィンモノマーであり得る。一態様において、重合性モノマーは、2つ以上のオレフィン基を有する。一態様において、モノマーは、上記で定義される1つ又は2つの化学線架橋性基を含む。
【0127】
水溶性重合性モノマーの例としては、限定はされないが、ヒドロキシアルキルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシアルキルアクリレート、N-ビニルピロリドン、N-メチル-3-メチリデン-ピロリドン、アリルアルコール、N-ビニルアルキルアミド、N-ビニル-N-アルキルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、(低級アルキル)アクリルアミド及びメタクリルアミド、並びにヒドロキシル置換(低級アルキル)アクリルアミド及びメタクリルアミドが挙げられる。一態様において、重合性モノマーは、ジアクリレート化合物又はジメタクリレート化合物である。別の態様において、重合性モノマーは、ポリアルキレンオキシドグリコールジアクリレート又はジメタクリレートである。例えば、ポリアルキレンは、エチレングリコールのポリマー、プロピレングリコールのポリマー、又はそれらのブロックコポリマーであり得る。一態様において、重合性モノマーは、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリエチレングリコールジメタクリレートである。一態様において、ポリエチレングリコールジアクリレート又はポリエチレングリコールジメタクリレートは、200~2,000、400~1,500、500~1,000、500~750、又は500~600のMを有する。
【0128】
特定の態様において、相互侵入ポリマーネットワークは、医療用途のために生分解性及び生体適合性である。したがって、重合性モノマーは、重合の際に生分解性及び生体適合性相互侵入ポリマーネットワークが生成されるように選択される。例えば、重合性モノマーは、切断可能なエステル結合を有し得る。一態様において、重合性モノマーは、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)であり、これは、生体適合性相互侵入ネットワークを生成するであろう。他の態様において、生分解性架橋剤は、例えば、アルキルメタクリルアミドなどの生体適合性水溶性モノマーを重合させるのに使用され得る。架橋剤は、ペプチドのように酵素的に分解可能であり得、又はエステル若しくはジスルフィド結合を有することによって化学的に分解可能であり得る。別の態様において、強化成分は、天然若しくは合成繊維であり得る。
【0129】
他の態様において、強化成分は、不水溶性充填剤であり得る。充填剤は、粒子(マイクロ及びナノ)から繊維材料まで、様々な異なるサイズ及び形状を有し得る。充填剤の選択は、その場凝固複合コアセルベートの用途に応じて異なり得る。
【0130】
本明細書において有用な充填剤は、有機及び/又は無機材料から構成され得る。一態様において、ナノ構造は、炭素のような有機材料、又は限定はされないが、ホウ素、モリブデン、タングステン、ケイ素、チタン、銅、ビスマス、炭化タングステン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、窒化ホウ素、酸化ジスプロシウム、酸化水酸化鉄(III)、酸化鉄、酸化マンガン、二酸化チタン、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、又はそれらの任意の組合せを含む無機材料から構成され得る。
【0131】
特定の態様において、充填剤は、ポリカチオン及び/又はポリアニオンと反応(すなわち、架橋)するために官能化され得る。例えば、充填剤は、アミノ基又は活性化エステル基により官能化され得る。他の態様において、2つ以上の異なるタイプの充填剤を使用することが望ましい。例えば、炭素ナノ構造が、1つ以上の無機ナノ構造と組み合わせて使用され得る。
【0132】
一態様において、充填剤は、金属酸化物、セラミック粒子、又は不水溶性無機塩を含む。本明細書において有用な充填剤の例としては、以下に列挙される、SkySpring Nanomaterials,Inc.によって製造されるものが挙げられる。
【0133】
金属及び非金属元素
Ag、99.95%、100nm
Ag、99.95%、20~30nm
Ag、99.95%、20~30nm、PVP被覆
Ag、99.9%、50~60nm
Ag、99.99%、30~50nm、オレイン酸被覆
Ag、99.99%、15nm、10重量%、自己分散性
Ag、99.99%、15nm、25重量%、自己分散性
Al、99.9%、18nm
Al、99.9%、40~60nm
Al、99.9%、60~80nm
Al、99.9%、40~60nm、低酸素
Au、99.9%、100nm
Au、99.99%、15nm、10重量%、自己分散性
B、99.9999%
B、99.999%
B、99.99%
B、99.9%
B、99.9%、80nm
ダイヤモンド、95%、3~4nm
ダイヤモンド、93%、3~4nm
ダイヤモンド、55~75%、4~15nm
黒鉛、93%、3~4nm
スーパー活性炭、100nm
Co、99.8%、25~30nm
Cr、99.9%、60~80nm
Cu、99.5%、300nm
Cu、99.5%、500nm
Cu、99.9%、25nm
Cu、99.9%、40~60nm
Cu、99.9%、60~80nm
Cu、5~7nm、分散体、油溶性
Fe、99.9%、20nm
Fe、99.9%、40~60nm
Fe、99.9%、60~80nm
カルボニル-Fe、マイクロサイズ
Mo、99.9%、60~80nm
Mo、99.9%、0.5~0.8μm
Ni、99.9%、500nm(調整可能)
Ni、99.9%、20nm
炭素で被覆されたNi、99.9%、20nm
Ni、99.9%、40~60nm
Ni、99.9%、60~80nm
カルボニル-Ni、2~3μm
カルボニル-Ni、4~7μm
カルボニル-Ni-Al(Niシェル、Alコア)
カルボニル-Ni-Fe合金
Pt、99.95%、5nm、10重量%、自己分散性
Si、立方晶、99%、50nm
Si、多結晶、99.99995%、塊
Sn、99.9%、<100nm
Ta、99.9%、60~80nm
Ti、99.9%、40~60nm
Ti、99.9%、60~80nm
W、99.9%、40~60nm
W、99.9%、80~100nm
Zn、99.9%、40~60nm
Zn、99.9%、80~100nm
【0134】
金属酸化物
AlOOH、10~20nm、99.99%
Alα、98+%、40nm
Alα、99.999%、0.5~10μm
Alα、99.99%、50nm
Alα、99.99%、0.3~0.8μm
Alα、99.99%、0.8~1.5μm
Alα、99.99%、1.5~3.5μm
Alα、99.99%、3.5~15μm
Alγ、99.9%、5nm
Alγ、99.99%、20nm
Alγ、99.99%、0.4~1.5μm
Alγ、99.99%、3~10μm
Alγ、押出物
Alγ、押出物
Al(OH)、99.99%、30~100nm
Al(OH)、99.99%、2~10μm
アルミニウムイソプロポキシド(AIP)、C21Al、99.9%
AlN、99%、40nm
BaTiO3、99.9%、100nm
BBr、99.9%
、99.5%、80nm
BN、99.99%、3~4μm
BN、99.9%、3~4μm
C、99%、50nm
Bi、99.9%、<200nm
CaCO、97.5%、15~40nm
CaCO、15~40nm
Ca(PO、20~40nm
Ca10(PO(OH)、98.5%、40nm
CeO、99.9%、10~30nm
CoO、<100nm
Co、<100nm
Co、50nm
CuO、99+%、40nm
Er、99.9%、40~50nm
Feα、99%、20~40nm
Feγ、99%、20~40nm
Fe、98+%、20~30nm
Fe、98+%、10~20nm
Gd、99.9%<100nm
HfO、99.9%、100nm
In:SnO=90:10、20~70nm
In、99.99%、20~70nm
In(OH)、99.99%、20~70nm
LaB、99.0%、50~80nm
La、99.99%、100nm
LiFePO、40nm
MgO、99.9%、10~30nm
MgO、99%、20nm
MgO、99.9%、10~30nm
Mg(OH)、99.8%、50nm
Mn、98+%、40~60nm
MoCl、99.0%
Nd、99.9%、<100nm
NiO、<100nm
Ni、<100nm
Sb、99.9%、150nm
SiO、99.9%、20~60nm
SiO、99%、10~30nm、シランカップリング剤で処理される
SiO、99%、10~30nm、ヘキサメチルジシラザンで処理される
SiO、99%、10~30nm、チタンエステルで処理される
SiO、99%、10~30nm、シランで処理される
SiO、10~20nm、アミノ基で修飾される、分散性
SiO、10~20nm、エポキシ基で修飾される、分散性
SiO、10~20nm、二重結合で修飾される、分散性
SiO、10~20nm、二重層で表面修飾される、分散性
SiO、10~20nm、表面修飾される、超疎水性及び親油性、分散性
SiO、99.8%、5~15nm、表面修飾される、疎水性及び親油性、分散性
SiO、99.8%、10~25nm、表面修飾される、超疎水性、分散性
SiC、β、99%、40nm
SiC、β、ウイスカー、99.9%
Si、非晶質、99%、20nm
Siα、97.5~99%、繊維、100nm×800nm
SnO、99.9%、50~70nm
ATO、SnO:Sb=90:10、40nm
TiOアナターゼ、99.5%、5~10nm
TiOルチル、99.5%、10~30nm
TiOルチル、99%、20~40nm、SiOで被覆される、高疎水性
TiOルチル、99%、20~40nm、SiO/Alで被覆される
TiOルチル、99%、20~40nm、Alで被覆される、親水性
TiOルチル、99%、20~40nm、SiO/Al/ステアリン酸で被覆される
TiOルチル、99%、20~40nm、シリコーン油で被覆される、疎水性
TiC、99%、40nm
TiN、97+%、20nm
WO、99.5%、<100nm
WS、99.9%、0.8μm
WCl、99.0%
、99.995%、30~50nm
ZnO、99.8%、10~30nm
ZnO、99%、10~30nm、シランカップリング剤で処理される
ZnO、99%、10~30nm、ステアリン酸で処理される
ZnO、99%、10~30nm、シリコーン油で処理される
ZnO、99.8%、200nm
ZrO、99.9%、100nm
ZrO、99.9%、20~30nm
ZrO-3Y、99.9%、0.3~0.5um
ZrO-3Y、25nm
ZrO-5Y、20~30nm
ZrO-8Y、99.9%、0.3~0.5μm
ZrO-8Y、20nm
ZrC、97+%、60nm
【0135】
一態様において、充填剤は、ナノシリカである。ナノシリカは、幅広いサイズ範囲で複数の供給源から市販されている。例えば、水性のNexsilコロイドシリカは、Nyacol Nanotechnologies,Inc.から6~85nmの直径で入手可能である。アミノ修飾ナノシリカはまた、例えば、Sigma Aldrichから市販されているが、非修飾シリカより直径の範囲が狭い。ナノシリカは、コアセルベートの不透明度に寄与せず、これは、コアセルベートから製造される接着剤及び糊の重要な属性である。
【0136】
別の態様において、充填剤は、リン酸カルシウムから構成され得る。一態様において、充填剤は、式Ca(POOHで表されるヒドロキシアパタイトであり得る。別の態様において、充填剤は、置換ヒドロキシアパタイトであり得る。置換ヒドロキシアパタイトは、1つ以上の原子が別の原子で置換されたヒドロキシアパタイトである。置換ヒドロキシアパタイトは、式MYによって示され、ここで、Mが、Ca、Mg、Naであり;Xが、PO又はCOであり;Yが、OH、F、Cl、又はCOである。ヒドロキシアパタイト構造中の少量の不純物がまた、以下のイオン:Zn、Sr、Al、Pb、Baから存在し得る。別の態様において、リン酸カルシウムは、オルトリン酸カルシウムを含む。オルトリン酸カルシウムの例としては、限定はされないが、無水リン酸一カルシウム、リン酸一カルシウム一水和物、リン酸二カルシウム二水和物、無水リン酸二カルシウム、リン酸八カルシウム、βリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、スーパーαリン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、非晶質リン酸三カルシウム、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。他の態様において、リン酸カルシウムは、骨基質タンパク質を優先的に吸収することができるカルシウム欠損ヒドロキシアパタイトも含み得る。
【0137】
特定の態様において、充填剤は、1つ以上のアミノ又は活性化エステル基により官能化され得る。この態様において、充填剤は、ポリカチオン又はポリアニオンに共有結合され得る。例えば、アミノ化シリカは、活性化エステル基を有するポリアニオンと反応されて、新たな共有結合を形成することができる。
【0138】
他の態様において、充填剤がコアセルベートと静電結合を形成することができるように、充填剤は、帯電基を生成するように修飾され得る。例えば、アミノ基がプロトン化され、静電結合に利用できるように、アミノ化シリカが溶液に加えられ、pHが調整され得る。
【0139】
一態様において、強化成分は、ミセル又はリポソームであり得る。一般に、この態様において使用されるミセル及びリポソームは、コアセルベートを調製するためにポリカチオン及びポリアニオンとして使用されるミセル又はリポソームと異なる。ミセル及びリポソームは、上述される非イオン性、カチオン性、又はアニオン性界面活性剤から調製され得る。ミセル及びリポソームの電荷は、ポリカチオン又はポリアニオンの選択並びにコアセルベートの意図される使用に応じて異なり得る。一態様において、ミセル及びリポソームは、医薬品化合物などの疎水性化合物を可溶化するのに使用され得る。したがって、接着剤としての使用に加えて、本明細書に記載される接着性複合コアセルベートは、生物活性剤送達デバイスとして有効であり得る。
【0140】
VIII.開始剤
特定の態様において、その場凝固複合コアセルベートは、コアセルベート内に捕捉された1つ以上の開始剤も含む。本明細書において有用な開始剤の例としては、複合コアセルベート組成物中の異なる成分間の架橋を促進するための、熱開始剤、化学開始剤、又は光開始剤が挙げられる。
【0141】
光開始剤の例としては、限定はされないが、ホスフィンオキシド、過酸化物、過酸、アジド化合物、α-ヒドロキシケトン、又はα-アミノケトンが挙げられる。一態様において、光開始剤としては、限定はされないが、カンファーキノン、ベンゾインメチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、又はDarocure(登録商標)若しくはIrgacure(登録商標)タイプ、例えばDarocure(登録商標)1173若しくはIrgacure(登録商標)2959が挙げられる。参照により援用される欧州特許第0632329号明細書に開示される光開始剤が、本明細書において使用され得る。他の態様において、光開始剤は、限定はされないが、リボフラビン、エオシン、エオシンy、及びローズベンガルを含む水溶性光開始剤である。
【0142】
一態様において、開始剤は、正帯電官能基を有する。例としては、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]-二塩酸塩;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩脱水物(disulfate dehydrate);2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩;2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩;アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩;2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩及びそれらの組合せが挙げられる。
【0143】
別の態様において、開始剤は、油溶性開始剤である。一態様において、油溶性開始剤としては、有機過酸化物又はアゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物の例としては、ケトン過酸化物、ペルオキシケタール、ヒドロペルオキシド、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステルなどが挙げられる。油溶性開始剤として使用され得る有機過酸化物のいくつかの特定の非限定的な例としては、過酸化ラウロイル、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロ-テレフタレート、過酸化ジクミル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、過酸化ジ-t-ブチル、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジ-カーボネート、t-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、過酸化ベンゾイル、過酢酸t-ブチルなどが挙げられる。
【0144】
油溶性開始剤として使用され得るアゾ化合物のいくつかの特定の非限定的な例としては、2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサン-カルボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス-(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)などが挙げられる。
【0145】
一態様において、開始剤は、限定はされないが、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物を含む水溶性開始剤である。別の態様において、開始剤は、上記の過硫酸塩と還元剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムとの反応生成物;並びに4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)などの酸化還元開始剤である。
【0146】
特定の態様において、複数の開始剤を用いて、開始速度を高めるために開始剤系の吸収プロファイルを拡大することができる。例えば、異なる波長の光で活性化される2つの異なる光開始剤が用いられ得る。別の態様において、共開始剤が、本明細書に記載される開始剤のいずれかと組み合わせて使用され得る。一態様において、共開始剤は、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、又は4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。
【0147】
特定の態様において、開始剤及び/又は共開始剤は、ポリカチオン及び/又はポリアニオンに共有結合される。例えば、開始剤及び/又は共開始剤は、ポリカチオン及び/又はポリアニオンを作製するのに使用されるモノマーと共重合され得る。一態様において、開始剤及び共開始剤は、ポリカチオン及びポリアニオンを作製するのに使用される上述されるモノマーと共重合され得るアクリレート及びメタクリレート基(例えば、上記の共開始剤の例を参照)などの重合性オレフィン基を有する。別の態様において、開始剤は、ポリカチオン及びポリアニオンの骨格に化学的にグラフトされ得る。したがって、これらの態様において、光開始剤及び/又は共開始剤は、ポリマーに共有結合され、ポリマー主鎖のペンダントである。この手法は、配合を簡単にし、おそらく貯蔵性及び安定性を高めるであろう。
【0148】
他の態様において、開始剤及び/又は共開始剤は、流体複合コアセルベート内に静電結合される。
【0149】
IX.多価カチオン
その場凝固複合コアセルベートは、任意に、1つ以上の多価カチオン(すなわち、+2以上の電荷を有するカチオン)を含有し得る。一態様において、多価カチオンは、1つ以上のアルカリ土類金属から構成される二価カチオンであり得る。例えば、二価カチオンは、Ca+2及びMg+2の混合物であり得る。他の態様において、+2以上の電荷を有する遷移金属イオンが、多価カチオンとして使用され得る。多価カチオンの濃度により、コアセルベート形成の速度及び程度が決定され得る。理論に制約されるのを望むものではないが、流体中の粒子間の弱い凝集力が、過剰な表面負電荷を架橋する多価カチオンによって媒介され得る。本明細書において使用される多価カチオンの量は、変化し得る。一態様において、この量は、ポリアニオン及びポリカチオン中に存在するアニオン性基及びカチオン性基の数に基づく。
【0150】
X.塞栓剤
上述されるように、流体複合コアセルベートは、合成塞栓剤として使用され得る。しかしながら、他の態様において、本明細書に記載される流体複合コアセルベートは、1つ以上のさらなる塞栓剤を含み得る。市販の塞栓剤は、血管の塞栓のために使用される微粒子である。微粒子のサイズ及び形状は、変化し得る。一態様において、微粒子は、ポリマー材料から構成され得る。この一例は、Merit Medical Systems,Inc.によって製造されるBearin(商標)nsPVA粒子であり、これは、45μm~1,180μmのサイズ範囲のポリビニルアルコールから構成される。別の態様において、塞栓剤は、ポリマー材料から構成されるミクロスフェアであり得る。このような塞栓剤の例としては、40μm~1,200μmのサイズ範囲のゼラチンと架橋されたトリスアクリルから作製されたEmbosphere(登録商標)Microspheres;30μm~200μmのサイズ範囲のHepaSphere(商標)Microspheres(酢酸ビニル及びメチルアクリレートから作製された、球状の親水性ミクロスフェア);及び30μm~200μmのサイズ範囲のQuadraSphere(登録商標)Microspheres(酢酸ビニル及びメチルアクリレートから作製された、球状の親水性ミクロスフェア)(これらは全て、Merit Medical Systems,Inc.によって製造される)が挙げられる。別の態様において、ミクロスフェアには、造影剤として使用され得る1つ以上の金属が含浸され得る。この一例は、Merit Medical Systems,Inc.によって製造されるEmboGold(登録商標)Microspheresであり、これは、40μm~1,200μmのサイズ範囲の、2%の金元素が含侵されたゼラチンと架橋されたトリスアクリルから作製される。
【0151】
その場凝固複合コアセルベートの調製
本明細書に記載されるその場凝固複合コアセルベートの合成は、いくつかの技術及び手順を用いて行われ得る。コアセルベートを製造するための例示的な技術が、全体が参照により援用される国際公開出願番号国際公開第2016/011028号パンフレットにおいて提供される。一態様において、ポリカチオン及びポリアニオンは、希釈溶液として混合される。混合されると、ポリカチオン及びポリアニオンが結合するときに、混合チャンバ(例えば、チューブ)の底で凝集して流体/液相になり、凝縮相を生じる。凝縮相(すなわち、流体複合コアセルベート)は分離され、その場凝固複合コアセルベートとして使用される。
【0152】
一態様において、ポリカチオンの水溶液は、ポリカチオン対ポリアニオンの正/負電荷比が、4~0.25、3~0.25、2~0.25、1.5~0.5、1.10~0.95、1~1であるように、ポリアニオンの水溶液と混合される。ポリカチオン及びポリアニオン上の帯電基の数に応じて、ポリカチオン及びポリアニオンの量は、特定の正/負電荷比を得るために変化され得る。その場凝固複合コアセルベートは、水を含有し、水の量は、組成物の20重量%~80重量%である。
【0153】
ポリカチオン、ポリアニオン、及び一価塩を含有する溶液のpHは、複合コアセルベートの形成を最適化するために変化し得る。一態様において、その場凝固複合コアセルベートを含有する組成物のpHは、6~9、6.5~8.5、7~8、又は7~7.5である。別の態様において、組成物のpHは、7.2(すなわち、生理的pH)である。
【0154】
その場凝固複合コアセルベート中に存在する一価塩の量は、その場凝固複合コアセルベートが導入される環境中の一価塩の濃度に応じて異なり得る。一般に、複合コアセルベート中の一価塩の濃度が、環境中の一価塩の濃度より高い。例えば、生理的条件下でのNa及びKClの濃度は、約150mMである。したがって、その場凝固複合コアセルベートが、ヒト対象に投与される予定である場合、その場凝固複合コアセルベート中に存在する一価塩の濃度は、150mMより高いであろう。一態様において、その場凝固複合コアセルベート中に存在する一価塩は、0.5M~2.0Mの濃度である。別の態様において、一価塩の濃度は、0.5~1.8、0.5~1.6、0.5~1.4、又は0.5~1.2である。別の態様において、複合コアセルベート中の一価塩の濃度は、水性環境中の一価塩の濃度より1.5~2、1.5~3、1.5~4、1.5~5、1.5~6、1.5~7、1.5~8、1.5~9又は1.5~10倍高い。
【0155】
キット
本明細書に記載されるポリカチオン及びポリアニオンは、長期間にわたって乾燥粉末として貯蔵され得る。この特徴は、コアセルベートの調製、及び最終的には接着剤の調製(必要に応じて)に非常に有用である。
【0156】
一態様において、キットは、
(a)第1のカテーテル及び第2のカテーテル;
(b)少なくとも1つのポリカチオン及び少なくとも1つのポリアニオン(ここで、ポリカチオン対ポリアニオンの正/負電荷比が0.5~1.5である);及び
(c)0.5M~2.0Mの濃度の、水中でイオンを生成する塩
を含む。
【0157】
別の態様において、キットは、
(a)第1の内腔及び第2の内腔を含むカテーテルであって、第1の内腔からの外側の第1の開口部を含むカテーテル;
(b)少なくとも1つのポリカチオン及び少なくとも1つのポリアニオン(ここで、ポリカチオン対ポリアニオンの正/負電荷比が0.5~1.5である);及び
(c)0.5M~2.0Mの濃度の、水中でイオンを生成する塩
を含む。
【0158】
乾燥粉末として貯蔵される場合、水が、ポリカチオン及び/又はポリアニオンに加えられて、コアセルベートを生成することができる。ポリアニオン、ポリカチオン、及び水中でイオンを生成する塩のいずれも、キットにおいて使用され得る。一態様において、乾燥粉末を生成するために、ポリカチオン及びポリアニオンを凍結乾燥させる前に、ポリカチオン及びポリアニオンのpHは、それらが水中で混合されるとき、酸又は塩基を添加せずに所望のpHが生じるように調整され得る。例えば、水の添加時にそれに応じてpHを調整するポリカチオン粉末中に、過剰な塩基が存在し得る。
【0159】
キットは、本明細書に記載されるさらなる成分(例えば、強化成分、開始剤、生物活性剤、造影剤など)も含み得る。
【0160】
例示的な態様
態様(1)は、対象の血管内にカテーテルを固定するための方法であって、
(a)対象の血管中に、第1のカテーテル及び第2のカテーテルを挿入する工程であって、第2のカテーテルが、第1のカテーテルより血管中にさらに伸長される工程と;
(b)第1のカテーテル中に、その場凝固複合コアセルベートを注入して、第2のカテーテルを血管の内壁に付着させる接着剤を血管内に生成する工程とを含み、その場凝固複合コアセルベートが、少なくとも1つのポリカチオン、少なくとも1つのポリアニオン、及び水中でイオンを生成する塩を含み、複合コアセルベート中のイオンの濃度が、血管中のイオンの濃度より高い、方法を含む。
【0161】
態様(2)は、第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、同軸カテーテルである、態様(1)に記載の方法に関する。
【0162】
態様(3)は、第2のカテーテルが、オクルージョンバルーンカテーテルを含む、態様(1)に記載の方法に関する。
【0163】
態様(4)は、第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、互いに姉妹である、態様(1)に記載の方法に関する。
【0164】
態様(5)は、第1のカテーテルの直径が、第2のカテーテルの直径より大きい、態様(4)に記載の方法に関する。
【0165】
態様(6)は、第2のカテーテルの先端が、第1のカテーテルの先端を越えて伸長する、態様(5)に記載の方法に関する。
【0166】
態様(7)は、接着剤が、血管を完全にシールする、態様(1)に記載の方法に関する。
【0167】
態様(8)は、第1のカテーテルが、血管から取り外される、態様(1)に記載の方法に関する。
【0168】
態様(9)は、第2のカテーテルが、取り外され、生じた孔には、さらなるその場凝固複合コアセルベートが充填されて、塞栓を生じさせる、態様(1)に記載の方法に関する。
【0169】
態様(10)は、第2のカテーテル中に生物活性剤を注入することをさらに含む、態様(1)に記載の方法に関する。
【0170】
態様(11)は、対象の血管内にカテーテルを固定するための方法であって、
(a)対象の血管中に、カテーテルを挿入する工程であって、カテーテルが、第1の内腔及び第2の内腔を含み、カテーテルが、第1の内腔からの外側の第1の開口部を含む、工程と;
(b)カテーテルの第1の内腔中に、その場凝固複合コアセルベートを注入して、カテーテルを血管の内壁に付着させる接着剤を血管内に生成する工程とを含み、その場凝固複合コアセルベートが、少なくとも1つのポリカチオン、少なくとも1つのポリアニオン、及び水中でイオンを生成する塩を含み、複合コアセルベート中のイオンの濃度が、血管中のイオンの濃度より高い、方法に関する。
【0171】
態様(12)は、接着剤が、血管を完全にシールする、態様(11)に記載の方法に関する。
【0172】
態様(13)は、カテーテルが、取り外され、生じた孔には、さらなるその場凝固複合コアセルベートが充填されて、塞栓を生じさせる、態様(11)に記載の方法に関する。
【0173】
態様(14)は、カテーテルの第2の内腔中に生物活性剤を注入することをさらに含む、態様(11)に記載の方法に関する。
【0174】
態様(15)は、複合コアセルベート中のイオンの濃度が、血管内の血液中に存在するイオンの濃度より1.5~10倍高い、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0175】
態様(16)は、イオンを生成する塩が、一価塩を含む、態様(1)、(11)、又は(15)に記載の方法に関する。
【0176】
態様(17)は、一価塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(16)に記載の方法に関する。
【0177】
態様(18)は、一価塩が、塩化ナトリウムである、態様(16)に記載の方法に関する。
【0178】
態様(19)は、塩が、両性イオンを生成する、態様(1)、(11)、又は(15)に記載の方法に関する。
【0179】
態様(20)は、塩が、アミノ酸又はその塩を含む、態様(19)に記載の方法に関する。
【0180】
態様(21)は、イオンを生成する塩が、多価塩を含む、態様(1)、(11)、又は(15)に記載の方法に関する。
【0181】
態様(22)は、ポリカチオン溶液対ポリアニオンの総正/負電荷比が、4~0.25であり、複合コアセルベート中のイオンの濃度が、0.5M~2.0Mである、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0182】
態様(23)は、複合コアセルベートが、7~7.5のpHを有する、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0183】
態様(24)は、ポリカチオンが、2つ以上のアミン基を有する化合物を含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0184】
態様(25)は、ポリカチオンが、生分解性ポリアミンを含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0185】
態様(26)は、生分解性ポリアミンが、多糖、タンパク質、組み換えタンパク質、又は合成ポリアミンを含む、態様(25)に記載の方法に関する。
【0186】
態様(27)は、生分解性ポリアミンが、アミン修飾天然ポリマーを含む、態様(25)に記載の方法に関する。
【0187】
態様(28)は、ポリカチオンが、2つ以上のペンダントアミノ基を含むポリアクリレートを含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0188】
態様(29)は、アミノ基が、アルキルアミノ基、(2)ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾール、又は1つ以上のアミノ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、若しくは第四級アミンで置換される芳香族基を含む、態様(28)に記載の方法に関する。
【0189】
態様(30)は、ポリカチオンが、プロタミンである、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0190】
態様(31)は、ポリカチオンが、サルミン又はクルペインである、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0191】
態様(32)は、ポリカチオンが、2つ以上のグアニジニル側鎖を含有する天然ポリマー又は合成ポリマーである、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0192】
態様(33)は、ポリカチオンが、アクリレート又はメタクリレート骨格及び2つ以上のグアニジニル側鎖を含む合成ポリグアニジニルポリマーである、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0193】
態様(34)は、ポリアニオンが、2つ以上のカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基を含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0194】
態様(35)は、ポリアニオンが、ポリホスフェートを含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0195】
態様(36)は、ポリホスフェートが、天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、態様(35)に記載の方法に関する。
【0196】
態様(37)は、ポリホスフェートが、ポリホスホセリンを含む、態様(35)に記載の方法に関する。
【0197】
態様(38)は、ポリホスフェートが、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートを含む、態様(35)に記載の方法に関する。
【0198】
態様(39)は、ポリホスフェートが、ホスフェートアクリレート及び/又はホスフェートメタクリレートと、1つ以上のさらなる重合性モノマーとの間の共重合生成物である、態様(35)に記載の方法に関する。
【0199】
態様(40)は、ポリホスフェートが、3~10個のホスフェート基を有する、態様(35)に記載の方法に関する。
【0200】
態様(41)は、ポリホスフェートが、無機ポリホスフェート又はリン酸化糖である、態様(35)に記載の方法に関する。
【0201】
態様(42)は、ポリホスフェートが、イノシトール6リン酸である、態様(35)に記載の方法に関する。
【0202】
態様(43)は、ポリホスフェートが、ヘキサメタリン酸塩である、態様(35)に記載の方法に関する。
【0203】
態様(44)は、ポリホスフェートが、ヘキサメタリン酸ナトリウムである、態様(35)に記載の方法に関する。
【0204】
態様(45)は、ポリカチオン及び/又はポリアニオンが、少なくとも1つの架橋性基を含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0205】
態様(46)は、複合コアセルベートが、造影剤又は可視化剤をさらに含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0206】
態様(47)は、造影剤が、タンタル粒子、金粒子、又はヨウ素を含む、態様(46)に記載の方法に関する。
【0207】
態様(48)は、複合コアセルベートが、強化成分をさらに含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0208】
態様(49)は、強化成分が、天然若しくは合成繊維、重合性モノマー、不水溶性充填剤、ナノ構造、ミセル、又はリポソームを含む、態様(48)に記載の方法に関する。
【0209】
態様(50)は、強化成分が、充填剤を含み、充填剤が、金属酸化物、セラミック粒子、又は不水溶性無機塩を含む、態様(49)に記載の方法に関する。
【0210】
態様(51)は、コアセルベートが、コアセルベート内に封入された1つ以上の生物活性剤をさらに含む、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0211】
態様(52)は、生物活性剤が、核酸、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、MAB断片、モノクローナル抗体、血管新生阻害剤、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(50)に記載の方法に関する。
【0212】
態様(53)は、生物活性剤が、血管新生阻害剤である、態様(51)に記載の方法に関する。
【0213】
態様(54)は、血管新生阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤を含む、態様(53)に記載の方法に関する。
【0214】
態様(55)は、チロシンキナーゼ阻害剤が、スニチニブリンゴ酸塩、パゾパニブ塩酸塩、ソラフェニブトシル酸塩、バンデタニブ、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(54)に記載の方法に関する。
【0215】
態様(56)は、血管新生阻害剤が、抗VEGF抗体を含む、態様(53)に記載の方法に関する。
【0216】
態様(57)は、抗VEGF抗体が、ベバシズマブである、態様(56)に記載の方法に関する。
【0217】
態様(58)は、血管新生阻害剤の量が、その場凝固液体複合コアセルベートの1mg/mL~100mg/mLである、態様(53)に記載の方法に関する。
【0218】
態様(59)は、生物活性剤が、水溶性化学療法剤を含む、態様(51)に記載の方法に関する。
【0219】
態様(60)は、生物活性剤が、ドキソルビシンである、態様(59)に記載の方法に関する。
【0220】
態様(61)は、生物活性剤が、抗炎症剤を含む、態様(51)に記載の方法に関する。
【0221】
態様(62)は、抗炎症剤が、NSAID、COX-2阻害剤、コルチコステロイド、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(61)に記載の方法に関する。
【0222】
態様(63)は、ポリカチオンが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるモノマーと、式XX
【化5】
(式中、Rが、水素又はアルキル基であり、Xが、酸素又はNRであり、ここで、Rが、水素又はアルキル基であり、mが、1~10である)の化合物、又はその薬学的に許容される塩との間の重合生成物を含むポリグアニジニルコポリマーであり、
モノマーに対する式Iの化合物のモル比が、1:1~10:1であり、
ポリグアニジニルコポリマーが、5kg/mol~80kg/molのモル質量を有し、
ポリグアニジニルコポリマー対ポリホスフェートの電荷比が、0.5:1~1.5:1である、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0223】
態様(64)は、Rがメチルであり、XがNHであり、mが3である、態様(63)に記載の方法に関する。
【0224】
態様(65)は、モノマーが、メタクリルアミドである、態様(63)に記載の方法に関する。
【0225】
態様(66)は、モノマーに対する式Iの化合物のモル比が、3:1~5:1である、態様(63)に記載の方法に関する。
【0226】
態様(67)は、ポリグアニジニルコポリマーの分子量分布が、5kDa~100kDaの平均分子量前後で分布している、態様(63)に記載の方法に関する。
【0227】
態様(68)は、ポリグアニジニルコポリマーが、5~100kDaのモードで、ポリグアニジニルコポリマー分子量の多峰性分布を含む、態様(63)に記載の方法に関する。
【0228】
態様(69)は、ポリアニオンが、ヘキサメタリン酸塩を含む、態様(63)に記載の方法に関する。
【0229】
態様(70)は、ポリアニオンが、ヘキサメタリン酸ナトリウムである、態様(63)に記載の方法に関する。
【0230】
態様(71)は、ポリアニオンが、イノシトール6リン酸である、態様(63)に記載の方法に関する。
【0231】
態様(72)は、複合コアセルベート中の塩が、対象中の一価イオンの濃度より1.5~10倍高い濃度でNaClである、態様(63)に記載の方法に関する。
【0232】
態様(73)は、ポリグアニジニルコポリマー対ポリアニオンの電荷比が、0.95:1~1.05:1である、態様(63)に記載の方法に関する。
【0233】
態様(74)は、コアセルベートが、コアセルベート内に封入された1つ以上の生物活性剤をさらに含む、態様(63)に記載の方法に関する。
【0234】
態様(75)は、生物活性剤が、核酸、抗生物質、鎮痛剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、MAB断片、モノクローナル抗体、血管新生阻害剤、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(74)に記載の方法に関する。
【0235】
態様(76)は、生物活性剤が、血管新生阻害剤である、態様(74)に記載の方法に関する。
【0236】
態様(77)は、血管新生阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤を含む、態様(76)に記載の方法に関する。
【0237】
態様(78)は、チロシンキナーゼ阻害剤が、スニチニブリンゴ酸塩、パゾパニブ塩酸塩、ソラフェニブトシル酸塩、バンデタニブ、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(77)に記載の方法に関する。
【0238】
態様(79)は、血管新生阻害剤が、抗VEGF抗体を含む、態様(76)に記載の方法に関する。
【0239】
態様(80)は、抗VEGF抗体が、ベバシズマブである、態様(79)に記載の方法に関する。
【0240】
態様(81)は、血管新生阻害剤の量が、その場凝固液体複合コアセルベートの1mg/mL~100mg/mLである、態様(76)に記載の方法に関する。
【0241】
態様(82)は、生物活性剤が、水溶性化学療法剤を含む、態様(74)に記載の方法に関する。
【0242】
態様(83)は、生物活性剤が、ドキソルビシンである、態様(82)に記載の方法に関する。
【0243】
態様(84)は、生物活性剤が、抗炎症剤を含む、態様(74)に記載の方法に関する。
【0244】
態様(85)は、抗炎症剤が、NSAID、COX-2阻害剤、コルチコステロイド、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(84)に記載の方法に関する。
【0245】
態様(86)は、その場凝固液体複合コアセルベートが、7~7.5のpHを有する、態様(63)に記載の方法に関する。
【0246】
態様(87)は、その場凝固液体複合コアセルベートが、造影剤又は可視化剤をさらに含む、態様(63)に記載の方法に関する。
【0247】
態様(88)は、造影剤が、タンタル粒子、金粒子、又はヨウ素を含む、態様(87)に記載の方法に関する。
【0248】
態様(89)は、その場凝固液体複合コアセルベートが、強化成分をさらに含む、態様(63)に記載の方法に関する。
【0249】
態様(90)は、強化成分が、コイル又は繊維を含む、態様(89)に記載の方法に関する。
【0250】
態様(91)は、強化成分が、天然若しくは合成繊維、重合性モノマー、不水溶性充填剤、ナノ構造、ミセル、又はリポソームを含む、態様(89)に記載の方法に関する。
【0251】
態様(92)は、強化成分が、充填剤を含み、充填剤が、金属酸化物、セラミック粒子、又は不水溶性無機塩を含む、態様(89)に記載の方法に関する。
【0252】
態様(93)は、イオンを生成する塩が、一価塩を含む、態様(63)に記載の方法に関する。
【0253】
態様(94)は、一価塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(93)に記載の方法に関する。
【0254】
態様(95)は、一価塩が、塩化ナトリウムである、態様(93)に記載の方法に関する。
【0255】
態様(96)は、固定されたカテーテルが、動脈瘤、静脈瘤、又は動静脈奇形への血流を低減又は阻害する、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0256】
態様(97)は、対象が哺乳動物である、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0257】
態様(98)は、対象が腫瘍を有する、態様(1)又は(11)に記載の方法に関する。
【0258】
態様(99)は、
(a)第1のカテーテル及び第2のカテーテル;
(b)少なくとも1つのポリカチオン及び少なくとも1つのポリアニオン(ここで、ポリカチオン対ポリアニオンの正/負電荷比が0.5~1.5である);及び
(c)0.5M~2.0Mの濃度の、水中でイオンを生成する塩
を含むキットに関する。
【0259】
態様(100)は、第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、同軸カテーテルである、態様(99)に記載のキットに関する。
【0260】
態様(101)は、第2のカテーテルが、オクルージョンバルーンカテーテルを含む、態様(99)に記載のキットに関する。
【0261】
態様(102)は、第1のカテーテル及び第2のカテーテルが、互いに姉妹である、態様(99)に記載のキットに関する。
【0262】
態様(103)は、第1のカテーテルの直径が、第2のカテーテルの直径より大きい、態様(102)に記載のキットに関する。
【0263】
態様(104)は、
(a)第1の内腔及び第2の内腔を含むカテーテルであって、第1の内腔からの外側の第1の開口部を含むカテーテル;
(b)少なくとも1つのポリカチオン及び少なくとも1つのポリアニオン(ここで、ポリカチオン対ポリアニオンの正/負電荷比が0.5~1.5である);及び
(c)0.5M~2.0Mの濃度の、水中でイオンを生成する塩
を含むキットに関する。
【0264】
態様(105)は、イオンを生成する塩が、一価塩を含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0265】
態様(106)は、一価塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(105)に記載のキットに関する。
【0266】
態様(107)は、一価塩が、塩化ナトリウムである、態様(105)に記載のキットに関する。
【0267】
態様(108)は、塩が、両性イオンを生成する、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0268】
態様(109)は、塩が、アミノ酸又はその塩を含む、態様(108)に記載のキットに関する。
【0269】
態様(110)は、イオンを生成する塩が、多価塩を含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0270】
態様(111)は、ポリカチオンが、2つ以上のアミン基を有する化合物を含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0271】
態様(112)は、ポリカチオンが、生分解性ポリアミンを含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0272】
態様(113)は、生分解性ポリアミンが、多糖、タンパク質、組み換えタンパク質、又は合成ポリアミンを含む、態様(112)に記載のキットに関する。
【0273】
態様(114)は、生分解性ポリアミンが、アミン修飾天然ポリマーを含む、態様(112)に記載のキットに関する。
【0274】
態様(115)は、ポリカチオンが、2つ以上のペンダントアミノ基を含むポリアクリレートを含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0275】
態様(116)は、アミノ基が、アルキルアミノ基、(2)ヘテロアリール基、グアニジニル基、イミダゾール、又は1つ以上のアミノ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、若しくは第四級アミンで置換される芳香族基を含む、態様(115)に記載のキットに関する。
【0276】
態様(117)は、ポリカチオンが、プロタミンである、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0277】
態様(118)は、ポリカチオンが、サルミン又はクルペインである、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0278】
態様(119)は、ポリカチオンが、2つ以上のグアニジニル側鎖を含有する天然ポリマー又は合成ポリマーである、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0279】
態様(120)は、ポリカチオンが、アクリレート又はメタクリレート骨格及び2つ以上のグアニジニル側鎖を含む合成ポリグアニジニルポリマーである、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0280】
態様(121)は、ポリアニオンが、2つ以上のカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ボレート、ボロネート、ホスホネート、又はホスフェート基を含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0281】
態様(122)は、ポリアニオンが、ポリホスフェートを含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0282】
態様(123)は、ポリホスフェートが、天然ポリマー又は合成ポリマーを含む、態様(122)に記載のキットに関する。
【0283】
態様(124)は、ポリホスフェートが、ポリホスホセリンを含む、態様(122)に記載のキットに関する。
【0284】
態様(125)は、ポリホスフェートが、2つ以上のペンダントホスフェート基を含むポリアクリレートを含む、態様(122)に記載のキットに関する。
【0285】
態様(126)は、ポリホスフェートが、ホスフェートアクリレート及び/又はホスフェートメタクリレートと、1つ以上のさらなる重合性モノマーとの間の共重合生成物である、態様(122)に記載のキットに関する。
【0286】
態様(127)は、ポリホスフェートが、3~10個のホスフェート基を有する、態様(122)に記載のキットに関する。
【0287】
態様(128)は、ポリホスフェートが、無機ポリホスフェート又はリン酸化糖である、態様(122)に記載のキットに関する。
【0288】
態様(129)は、ポリホスフェートが、イノシトール6リン酸である、態様(122)に記載のキットに関する。
【0289】
態様(130)は、ポリホスフェートが、ヘキサメタリン酸塩である、態様(122)に記載のキットに関する。
【0290】
態様(131)は、ポリホスフェートが、ヘキサメタリン酸ナトリウムである、態様(122)に記載のキットに関する。
【0291】
態様(132)は、ポリカチオン及び/又はポリアニオンが、少なくとも1つの架橋性基を含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0292】
態様(133)は、キットが、造影剤又は可視化剤をさらに含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0293】
態様(134)は、造影剤が、タンタル粒子、金粒子、又はヨウ素を含む、態様(133)に記載のキットに関する。
【0294】
態様(135)は、キットが、強化成分をさらに含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0295】
態様(136)は、強化成分が、天然若しくは合成繊維、重合性モノマー、不水溶性充填剤、ナノ構造、ミセル、又はリポソームを含む、態様(135)に記載のキットに関する。
【0296】
態様(137)は、強化成分が、充填剤を含み、充填剤が、金属酸化物、セラミック粒子、又は不水溶性無機塩を含む、態様(135)に記載のキットに関する。
【0297】
態様(138)は、キットが、1つ以上の生物活性剤をさらに含む、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0298】
態様(139)は、生物活性剤が、核酸、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、MAB断片、モノクローナル抗体、血管新生阻害剤、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(138)に記載のキットに関する。
【0299】
態様(140)は、生物活性剤が、血管新生阻害剤である、態様(138)に記載のキットに関する。
【0300】
態様(141)は、血管新生阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤を含む、態様(140)に記載のキットに関する。
【0301】
態様(142)は、チロシンキナーゼ阻害剤が、スニチニブリンゴ酸塩、パゾパニブ塩酸塩、ソラフェニブトシル酸塩、バンデタニブ、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(141)に記載のキットに関する。
【0302】
態様(143)は、血管新生阻害剤が、抗VEGF抗体を含む、態様(140)に記載のキットに関する。
【0303】
態様(144)は、抗VEGF抗体が、ベバシズマブである、態様(143)に記載のキットに関する。
【0304】
態様(145)は、生物活性剤が、水溶性化学療法剤を含む、態様(138)に記載のキットに関する。
【0305】
態様(146)は、生物活性剤が、ドキソルビシンである、態様(145)に記載のキットに関する。
【0306】
態様(147)は、生物活性剤が、抗炎症剤を含む、態様(138)に記載のキットに関する。
【0307】
態様(148)は、抗炎症剤が、NSAID、COX-2阻害剤、コルチコステロイド、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(147)に記載のキットに関する。
【0308】
態様(149)は、ポリカチオンが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるモノマーと、式XX
【化6】
(式中、Rが、水素又はアルキル基であり、Xが、酸素又はNRであり、ここで、Rが、水素又はアルキル基であり、mが、1~10である)の化合物、又はその薬学的に許容される塩との間の重合生成物を含むポリグアニジニルコポリマーであり、
モノマーに対する式Iの化合物のモル比が、1:1~10:1であり、
ポリグアニジニルコポリマーが、5kg/mol~80kg/molのモル質量を有し、
ポリグアニジニルコポリマー対ポリホスフェートの電荷比が、0.5:1~1.5:1である、態様(99)又は(104)に記載のキットに関する。
【0309】
態様(150)は、Rがメチルであり、XがNHであり、mが3である、態様(149)に記載のキットに関する。
【0310】
態様(151)は、モノマーが、メタクリルアミドである、態様(149)に記載のキットに関する。
【0311】
態様(152)は、モノマーに対する式Iの化合物のモル比が、3:1~5:1である、態様(149)に記載のキットに関する。
【0312】
態様(153)は、ポリグアニジニルコポリマーの分子量分布が、5kDa~100kDaの平均分子量前後で分布している、態様(149)に記載のキットに関する。
【0313】
態様(154)は、ポリグアニジニルコポリマーが、5~100kDaのモードで、ポリグアニジニルコポリマー分子量の多峰性分布を含む、態様(149)に記載のキットに関する。
【0314】
態様(155)は、ポリアニオンが、ヘキサメタリン酸塩を含む、態様(149)に記載のキットに関する。
【0315】
態様(156)は、ポリアニオンが、ヘキサメタリン酸ナトリウムである、態様(149)に記載のキットに関する。
【0316】
態様(157)は、ポリアニオンが、イノシトール6リン酸である、態様(149)に記載のキットに関する。
【0317】
態様(158)は、ポリグアニジニルコポリマー対ポリアニオンの電荷比が、0.95:1~1.05:1である、態様(149)に記載のキットに関する。
【0318】
態様(159)は、キットが、1つ以上の生物活性剤をさらに含む、態様(149)に記載のキットに関する。
【0319】
態様(160)は、生物活性剤が、核酸、抗生物質、鎮痛剤、免疫調節剤、成長因子、酵素阻害剤、ホルモン、メディエーター、メッセンジャー分子、細胞シグナル伝達分子、受容体アゴニスト、腫瘍溶解剤、化学療法剤、受容体アンタゴニスト、MAB断片、モノクローナル抗体、血管新生阻害剤、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(159)に記載のキットに関する。
【0320】
態様(161)は、生物活性剤が、血管新生阻害剤である、態様(159)に記載のキットに関する。
【0321】
態様(162)は、血管新生阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤を含む、態様(161)に記載のキットに関する。
【0322】
態様(163)は、チロシンキナーゼ阻害剤が、スニチニブリンゴ酸塩、パゾパニブ塩酸塩、ソラフェニブトシル酸塩、バンデタニブ、カボザンチニブ、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(162)に記載のキットに関する。
【0323】
態様(164)は、血管新生阻害剤が、抗VEGF抗体を含む、態様(161)に記載のキットに関する。
【0324】
態様(165)は、抗VEGF抗体が、ベバシズマブである、態様(164)に記載のキットに関する。
【0325】
態様(166)は、生物活性剤が、水溶性化学療法剤を含む、態様(159)に記載のキットに関する。
【0326】
態様(167)は、生物活性剤が、ドキソルビシンである、態様(166)に記載のキットに関する。
【0327】
態様(168)は、生物活性剤が、抗炎症剤を含む、態様(159)に記載のキットに関する。
【0328】
態様(169)は、抗炎症剤が、NSAID、COX-2阻害剤、コルチコステロイド、又はそれらの任意の組合せを含む、態様(167)に記載のキットに関する。
【0329】
態様(170)は、キットが、造影剤又は可視化剤をさらに含む、態様(149)に記載のキットに関する。
【0330】
態様(171)は、造影剤が、タンタル粒子、金粒子、又はヨウ素を含む、態様(170)に記載のキットに関する。
【0331】
態様(172)は、キットが、強化成分をさらに含む、態様(149)に記載のキットに関する。
【0332】
態様(173)は、強化成分が、コイル又は繊維を含む、態様(172)に記載のキットに関する。
【0333】
態様(174)は、強化成分が、天然若しくは合成繊維、重合性モノマー、不水溶性充填剤、ナノ構造、ミセル、又はリポソームを含む、態様(172)に記載のキットに関する。
【0334】
態様(175)は、強化成分が、充填剤を含み、充填剤が、金属酸化物、セラミック粒子、又は不水溶性無機塩を含む、態様(172)に記載のキットに関する。
【実施例
【0335】
以下の実施例は、本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法を作製及び評価する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するように提示され、単に例示的であることが意図され、本発明者らが本発明であると見なすものの範囲を限定することは意図されない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保する努力がなされているが、いくらかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃で示されるか又は周囲温度であり、圧力は、大気圧又はほぼ大気圧である。反応条件、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、並びに他の反応範囲及び条件の多くの変化及び組合せが、記載されるプロセスから得られる生成物の純度及び収率を最適化するのに使用され得る。合理的及び日常的な実験のみが、このようなプロセス条件を最適化するために必要とされるであろう。
【0336】
試薬
N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMA)を、Polysciences,Inc.(カタログ番号21200)から入手した。1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩を、Chem-Ipex International(カタログ番号21678)から購入した。メタクリルアミド(MA;L15013)及び氷酢酸(カタログ番号36289)を、Alfa Aesarから入手した。4-メトキシフェノールを、TCI chemicals(カタログ番号M0123)から購入した。4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(V501;カタログ番号11590)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN;カタログ番号441090)を、Sigma-Aldrichから入手した。4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸を、Strem Chemicals(カタログ番号16-0422)から購入した。酢酸ナトリウムを、VWR(カタログ番号0602)から入手した。USPグレード塩化ナトリウム(NaCl;カタログ番号102892)を、MP Biosciencesから購入した。トリエチルアミン(TEA)を、Fischer Scientific(カタログ番号BP616-500)から入手した。タンタル金属粉末(1~5μmの粒度)を、Atlantic Equipment Engineers,Inc.(カタログ番号TA-101)から購入した。溶液を、超高純度ダブル脱イオン水中で作製した。
【0337】
N-(3-メタクリルアミドプロピル)グアニジウムクロリド(GPMA)の合成
フラスコに、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMA)(20g;112mmol)及び阻害剤4-メトキシフェノール(0.2g;1.6mmol)を充填した。DMF(112mL)を加えて、1Mの濃度でAPMAを溶解させた。TEA(18.7mL;134mmol)をフラスコに加え、混合物を、N下で5分間撹拌した。次に、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩(16.4g;112mmol)を加えた。混合物を、N下で、20℃で反応させた。16時間後、TEA・HCl塩を、ブフナー漏斗を用いて、真空ろ過によって反応混合物から分離した。モノマーを、ジエチルエーテルで3回抽出したところ、高密度の油が形成された。最後に、モノマーを収集し、減圧下で乾燥させた。生成物をプロトン及び炭素NMRによって確認した。H NMR(400MHz、D2O):δ(ppm)1.68(q,CH-CH-CH)、1.77(s,CH)、3.08(m,CH-N)、3.18(m,CH-N)、5.30(s,=CH)、5.55(s,=CH)。13C NMR:(400MHz、D2O)δ(ppm)17.74(CH)、27.62(CH)、36.62(CH-N)、38.71(CH-N)、121.13(C=CH)、138.83(CH=C)、156.6 2(C)、171.55(C=O).GPMAの形成も、ESI質量分析(185.1Da)によって確認した。
【0338】
GPMA及びメタクリルアミド(MA)のRAFT重合
連鎖移動剤(CTA)として4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸及び開始剤としてV-501を5:1モル比で使用して、RAFT重合を用いた。80:20(GPMA:MA)の一定のモル比及び20kDの分子量を目標とした。GPMA(9.12g、41mmol)、MA(0.88g、10mmol)、4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸(112mg、0.400mmol)、及びV-501(22.4mg;0.080mmol)を、1M(pH5.3)の酢酸緩衝液(52mL)に溶解させた。得られた溶液を、Nで2時間にわたってバブリングすることによって脱気してから、隔壁を密閉した。反応を、16時間にわたって70℃で進行させながら、N下に保った。得られたポリマーを冷却し、空気に曝し、アセトン中で沈殿させた。末端基の修飾のために、ポリマーを、メタノール(約100mL)に再溶解させ、AIBN(1.3g、8mmol)を加えた。溶液を脱気し、60℃で4時間にわたってN下で反応させた。生成物をアセトン中で沈殿させ、ろ過によって収集し、減圧下で乾燥させた。Pellicon 2 Minicassette(Biomax(登録商標)5kDa)を備えたMillipore限外ろ過システムを用いて、最終生成物を精製した。ポリマーを塩酸塩に変換するために、それを脱イオン水に溶解させ、pH3(HClで調整される)で20×体積の150mMのNaClで洗浄した。次に、さらなる20×体積交換を、脱イオン水を用いて行った。最後に、精製された保持液(retentate)を凍結乾燥させた。
【0339】
その場凝固複合コアセルベートの生成
特に断りのない限り、p(GPMA-co-MA)(PG)及びヘキサメタリン酸ナトリウム(MP)のコアセルベートを、X線造影剤として1~5μmのTa粉末(最終コアセルベートの30重量%)を加えて調製した。PG及びMPのストック水溶液はそれぞれ、100mg/mL及び200mg/mLであった。両方の溶液のpHを、7.2に調整した。脱イオン水、5MのNaCl、MP溶液、Ta粉末、及びPG溶液を、オーバーヘッドミキサーで混合しながら、連続して添加することによって、コアセルベーションを行った。この最終混合物において、PG濃度は、50mg/mLで一定であり;MP濃度は、計算された電荷密度及び1:2の電荷比に基づいて42mg/mLであった。脱イオン水及び5Mの塩の量を、800mMのNaCl濃度を形成するように調整した。PGの添加の直後に相分離が起こり、コアセルベートを、12時間にわたって沈降させた。その後、上清を取り出し、5MのNaClを、研和を用いて凝縮相へと混合して、コアセルベート中の全体的なNaCl濃度をその最終濃度(特に断りのない限り、1400mM)にした。
【0340】
カテーテル捕捉試験
カテーテル捕捉(entrapment)は、多くの臨床用塞栓剤で起こる深刻な問題である。上記で生成されたその場凝固複合コアセルベートを、カテーテル捕捉のリスクを決定するために評価した。2分及び24時間後にコアセルベートに埋め込まれたカテーテルを取り外すのに必要な力を、Instron 3342材料試験装置(Instron,Inc)を用いて測定した。カテーテルは、最小の力で、破砕又はコアセルベートの付着を伴わずに、2分及び24時間の時点でコアセルベートからきれいに取り外された。
【0341】
デュアルカテーテル試験
マイクロカテーテルの周りにその場凝固コアセルベートを配備するための「バディカテーテル(buddy-cath)」技術であるデュアルカテーテルを、(1)栓の遠位へのアクセスを保ちながら、コアセルベートにより血管を閉塞し、(2)カテーテルの取り外し時のコアセルベートの付着を観察するために調べた。
【0342】
50kgのブタモデルにおいて、コアセルベートを、右腎の下葉へのマイクロカテーテル(2.4F BSC Direxion)にわたってカテーテル(4F Terumo Glidecath)を通して配備した。コアセルベートが、マイクロカテーテルの周りに栓を形成し、閉塞を生じる(図7)。マイクロカテーテルを、2分間にわたって留置し、次に、マイクロカテーテルへのコアセルベートの付着の証拠を伴わずに取り外した(図8)。コアセルベートは、マイクロカテーテルの抜き出し後にマイクロカテーテルの経路/内腔をセルフシールした。
【0343】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書に記載される化合物、組成物及び方法をより十分に説明するために、全体が参照により本出願に援用される。
【0344】
本明細書に記載される化合物、組成物及び方法に対して、様々な変更及び変形を加えることができる。本明細書に記載される化合物、組成物及び方法の他の態様が、本明細書の検討並びに本明細書に開示される化合物、組成物及び方法の実施から明らかであろう。本明細書は例示的であると考えられることが意図される。
図1
図2A-2B】
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8