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特許7410878鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20231227BHJP
   C03C 8/02 20060101ALI20231227BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231227BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20231227BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20231227BHJP
   C03C 17/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C09D11/36
C03C8/02
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
C09D11/322
C09D11/38
C03C17/04 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020562123
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2019062357
(87)【国際公開番号】W WO2019219691
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】1870565
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100186912
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】ティボー ゲドン
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ルコント
(72)【発明者】
【氏名】シャルレーヌ セーム
(72)【発明者】
【氏名】パブロ ビラト
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05326728(US,A)
【文献】国際公開第2016/110724(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208493(WO,A1)
【文献】特表2013-531776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098903(US,A1)
【文献】特表2014-503281(JP,A)
【文献】特開平11-043352(JP,A)
【文献】米国特許第06043171(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフリット、有機溶媒、分散剤、及び界面活性剤を含有する、鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インクであって、
前記ガラスフリットが、前記ガラスフリットの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有することを特徴とする、鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インク:
35~50%のSiO
15~25%のAl
1.5~4%のLiO、
22~32%のB
0~2%のNaO、
2~5%のKO、
1~5%のCaO、
1~4%のZrO
【請求項2】
前記ガラスフリットが、前記鉱物インクの50~65重量%に相当する、請求項1に記載の鉱物インク。
【請求項3】
前記鉱物インクが、さらに、鉱物顔料を含有する、請求項1又は2に記載の鉱物インク。
【請求項4】
前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の重量パーセントの合計が、前記鉱物インクの50~80重量%に相当する、請求項に記載の鉱物インク。
【請求項5】
前記ガラスフリットの重量パーセントが、前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の重量パーセントの合計の65~90重量%に相当する、請求項3又は4に記載の鉱物インク。
【請求項6】
前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の混合物の粒子サイズ分布のD90が、1μmと2μmの間である、請求項3~5のいずれか一項に記載の鉱物インク。
【請求項7】
前記有機溶媒が、前記有機溶媒、前記分散剤、及び前記界面活性剤の重量パーセントの合計の70~90%重量%に相当する、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物インク。
【請求項8】
前記有機溶媒が、少なくとも一つのアルコール官能基を有し、常温で液体である有機化合物、又は少なくとも一つのアルコール官能基を有し、常温で液体である有機化合物の混合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物インク。
【請求項9】
前記分散剤が、少なくとも一つの酸官能基を有する共重合体、又は少なくとも一つの酸官能基を有する共重合体の混合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物インク。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ポリエーテル、又はポリエーテルの混合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物インク。
【請求項11】
下記の工程を含む、鉱物インクの製造方法:
a.ガラスフリットの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有する、前記ガラスフリットを提供すること;
35~50%のSiO
15~25%のAl
1.5~4%のLiO、
22~32%のB
0~2%のNaO、
2~5%のKO、
1~5%のCaO、
1~4%のZrO
b.前記ガラスフリットを鉱物顔料と混合すること;
c.工程(b)で得た混合物に、有機溶媒と分散剤を加えること;
d.前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の混合物の粒子サイズ分布のD90が1μmと2μmの間になるまで、工程(c)で得た混合物を再循環ミリングすること;
e.工程(d)で得たミリングされた調整物に、界面活性剤を加えること。
【請求項12】
下記の工程を含む、エナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法:
a.ガラス-セラミックマザーガラスの板を提供すること;
b.請求項1~10のいずれか一項に記載の鉱物インクのインクジェット印刷の方法によって、マザーガラスの前記板の表面に、未焼成エナメルを堆積すること;
c.次のセラミック化サイクルにしたがって、前記未焼成エナメルを有するガラス-セラミックマザーガラスの前記板を熱処理すること:
i.650~860℃の間で、15分から4時間にわたり、核生成を維持し、
ii.860~1100℃の間で、10分から2時間にわたり、成長を維持する。
【請求項13】
前記インクジェット印刷法が、ドロップ・オン・デマンド型のインクジェット印刷法である、請求項12に記載のエナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法。
【請求項14】
ガラス-セラミックマザーガラスの前記板が、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスで形成され、前記リチウムアルミノケイ酸塩ガラスが、前記ガラスの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有する、請求項12又は13に記載のエナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法:
SiO 52~75%、
Al 12~27%、
LiO 1.5~5.5%、
NaO 0~3%、
O 0~3%、
CaO 0~5%、
MgO 0~5%、
SrO 0~5%、
BaO 0~5%、
ZnO 0~5%、
TiO 1~6%、
ZrO 0~3%、
0~8%。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インクに関する。それは、また、そのような鉱物インクを用いた、エナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス又はガラス-セラミックのような鉱物基材に、複雑なエナメル加工を施した装飾品を、少量生産で、生産する要求は、スクリーン印刷法に基づく現在の方法よりも一層適応性のある、新規のエナメル化プロセスを必要としている。非接触のデジタル印刷技術は、この要求に応える。それらは、その製品の幾何学的制約に適応し得るものであり、また、あらゆる種類の装飾様式に、技術的にはわずかな難しさで、適応し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スクリーン印刷法とは異なり、それらは、それぞれの装飾パターンに特有で、エナメルを堆積しなければならない基材の形状に適応したスクリーンの設計及び製造を必要としない。それらは、例えば、キッチン調理台をエナメル加工する際、大きなサイズ及び/又は異なるものであろう装飾を有する可変サイズの表面を、より迅速にエナメル加工することができる。それらは、特に4色プロセスによって、原色の縮小セットで補うことで再現可能な拡張全域色を提供する。そのため、それらは、スクリーン印刷法では異なるスクリーンを必要とする多色装飾エナメルの堆積を簡略化する。それらは、さらに、テンプレートとして用いられるデジタルイメージの助けをかりて、装飾をパーソナライズするために、デジタルイメージプロセッシング装置とインターフェイスで接続されていてもよい。
【0004】
非接触デジタル印刷法のうち、インクジェット法は、あらゆるタイプのガラス又はガラス-セラミックサポートに複雑な装飾をエナメル加工するのに特に適している。インクジェット印刷法は、二つの主たる技術的変化形を有している:
-「連続ジェット」と呼ばれる同期技術的変化形で、基材に対してインク滴の連続ジェットの放出に基づくもの;
-「ドロップ-オン-デマンド」と呼ばれる非同期技術変化形で、パターンの印刷に厳密になくてはならない滴の放出に基づくもの。
【0005】
「連続ジェット」変化形では、加圧されたオリフィスから生じたジェットの分断によって、インク滴が生み出される。滴のサイズは、主として、オリフィスの直径及びジェットの速度で決まる。一旦形成されると、滴は、電極を用いて、誘導によって帯電され、そして、ノズル出口に設置された屈折プレート間で生じさせられた電場の助けをかりて、定められた方向に屈折する。
【0006】
「ドロップ-オン-デマンド」変化形では、インクが貯蔵されているリザーバ中で存在している圧力が、表面張力に打ち勝つのに不充分である。それによって、リザーバのオリフィスで、インクは、凸状又は凹状のメニスカスを形成する。静電気的摘出又は機械的摘出のいずれかによって、インクはリザーバから摘出されてよい。静電気的摘出の場合には、メニスカスの凸状表面を変形するように、リザーバのオリフィスとノズルの間で静電場を適用する。静電気力が毛細管力を上回ると、オリフィスから一つ以上の滴が噴出され、滴の大きさ及び数は、適用された静電気場の強さによって決まる。機械的摘出の場合には、インクリザーバ内での圧力は、大気圧よりも低い。インクがオリフィスで形成するメニスカスは凹状である。リザーバの体積の急激な変化、例えば、圧電素子の助けをかりてリザーバの壁を構成するメンブレンを移動する影響下で、インク滴の排出が増加する。
【0007】
スクリーン印刷法用に製造された鉱物ペーストは、インクジェット印刷法で直接的に用いられることは一般的にはできない。通常、樹脂、特に、アクリル樹脂、及び/又はベジタブルオイルのような脂肪を含む物質に基づいており、それらは、粘性が過剰に高く、それらの表面張力は過剰に高い。それらは、インクジェット印刷、特に、「ドロップ-オン-デマンド」印刷には適していない。逆に、鉱物インクは、一般的にスクリーン印刷法にはあまり適していない。
【0008】
ガラス又はガラス-セラミック製品の表面にインクジェット印刷でエナメルを堆積するには、エナメルが、コロイド懸濁液、又は、通常、有機液相中で、細かく分断された鉱物固相の分散液で準備される必要がある。この鉱物インクには、インクジェット印刷法と互換性がある、密度、粘性、及び表面張力を有する必要がある。これらのパラメータの値は、用いられる印刷装置によって決められ、得られる装飾パターン品質を決定づける。
【0009】
コロイド懸濁液の鉱物固相は、通常、ガラスフリットを有しており、任意で、鉱物顔料を有している。鉱物固相を構成する粒子のサイズは、一般的にマイクロメートル、あるいは、さらに、サブマイクロメートルである。液相は、主として溶媒、一般的には、有機溶媒を含有する。溶媒の種類と量は、鉱物インクのレオロジー特性、表面張力、及び乾燥挙動の一部を決定する。固相の凝集及び/又は沈殿を防ぐ分散剤、並びに鉱物インクの表面張力を調整するための界面活性剤を加えてもよい。
【0010】
鉱物基材への堆積後、鉱物インクは乾燥され、そして、焼成熱処理に供される。インクの乾燥は、常温で行われる。乾燥時間は、堆積されたインクの量に応じて決められる。
【0011】
工業生産ラインは、乾燥時間の削減及びエナメル加工された部品の生産率の向上のため、しばしば、乾燥装置を備える。1000の印刷ノズルを備えるインクジェット印刷装置には、対流乾燥装置が一般的には適している。一方、印刷ノズルの数がより多い場合、例えば、2000の印刷ノズルでは、電磁放射乾燥装置、例えば、乾燥温度が一般的に100~150℃の赤外線放射乾燥装置を用いることができる。
【0012】
耐久性のためには、エナメルは、特に、堆積される基材に密着していなければならないし、基材が使用される条件下で暴露され得る機械的及び化学的応力に耐えなければならない。
【0013】
しかし、セラミック、ガラス、又はガラス-セラミックでできており、作品若しくは調理機器表面として、又は調理機器周りで使用される鉱物基材に、インクジェット印刷で堆積されている現行の鉱物インクでは、食品又は洗浄剤に対して耐久性のあるエナメルが得られていない。これらの製品への繰り返しの露出と加熱サイクルとの組合せの影響によって、長中期で、その劣化が増大する。さらに、これらの鉱物インクは、それらが堆積される鉱物基材が製造される際に暴露される高温に耐えるものでない。特に、それらは、800℃を超える温度に耐えるものでない。さらに、基材への不充分な密着によって、これらのエナメルは、上述したのと同様な不都合を有する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこれらの課題を解決する。それは、鉱物基材へのインクジェット印刷用の、下記を含有する鉱物インクに関する:
ガラスフリット、
有機溶媒、
分散剤、及び
界面活性剤
を含有し、
前記ガラスフリットが、前記ガラスフリットの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有することを特徴とする:
35~50%のSiO
15~25%のAl
1.5~4%のLiO、
22~32%のB
0~2%のNaO、
2~5%のKO、
1~5%のCaO、
1~4%のZrO
また、本発明は、次の態様をとり得る。
[態様1]ガラスフリット、有機溶媒、分散剤、及び界面活性剤を含有する、鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インクであって、
前記ガラスフリットが、前記ガラスフリットの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有することを特徴とする、鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インク:
35~50%のSiO
15~25%のAl
1.5~4%のLi O、
22~32%のB
0~2%のNa O、
2~5%のK O、
1~5%のCaO、
1~4%のZrO
[態様2]前記鉱物インクが、さらに、鉱物顔料を含有する、態様1に記載の鉱物インク。
[態様3]前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の重量パーセントの合計が、前記鉱物インクの50~80重量%に相当する、態様1又は2に記載の鉱物インク。
[態様4]前記ガラスフリットの重量パーセントが、前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の重量パーセントの合計の65~90重量%に相当する、態様2又は3に記載の鉱物インク。
[態様5]前記有機溶媒が、前記有機溶媒、前記分散剤、及び前記界面活性剤の重量パーセントの合計の70~90%重量%に相当する、態様1~4のいずれかに記載の鉱物インク。
[態様6]前記有機溶媒が、常温で液体である有機化合物、又は少なくとも一つのアルコール官能基を有し、常温で液体である有機化合物の混合物である、態様1~5のいずれかに記載の鉱物インク。
[態様7]前記分散剤が、共重合体、又は少なくとも一つの酸官能基を有する共重合体の混合物である、態様1~6のいずれかに記載の鉱物インク。
[態様8]前記界面活性剤が、ポリエーテル、又はポリエーテルの混合物である、態様1~7のいずれかに記載の鉱物インク。
[態様9]前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の混合物の粒子サイズ分布のD90が、1μmと2μmの間である、態様1~8のいずれかに記載の鉱物インク。
[態様10]下記の工程を含む、鉱物インクの製造方法:
a.ガラスフリットの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有する、前記ガラスフリットを提供すること;
35~50%のSiO
15~25%のAl
1.5~4%のLi O、
22~32%のB
0~2%のNa O、
2~5%のK O、
1~5%のCaO、
1~4%のZrO
b.前記ガラスフリットを鉱物顔料と混合すること;
c.工程(b)で得た混合物に、有機溶媒と分散剤を加えること;
d.前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の混合物の粒子サイズ分布のD90が1μmと2μmの間になるまで、工程(c)で得た混合物を再循環ミリングすること;
e.工程(d)で得たミリングされた調整物に、界面活性剤を加えること。
[態様11]下記の工程を含む、エナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法:
a.ガラス-セラミックマザーガラスの板を提供すること;
b.態様1~9のいずれかに記載の鉱物インクのインクジェット印刷の方法によって、マザーガラスの前記板の表面に、未焼成エナメルを堆積すること;
c.次のセラミック化サイクルにしたがって、前記未焼成エナメルを有するガラス-セラミックマザーガラスの前記板を熱処理すること:
i.650~860℃の間で、15分から4時間にわたり、核生成を維持し、
ii.860~1100℃の間で、10分から2時間にわたり、成長を維持する。
[態様12]前記インクジェット印刷法が、ドロップ・オン・デマンド型のインクジェット印刷法である、態様11に記載のエナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法。
[態様13]ガラス-セラミックマザーガラスの前記板が、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスで形成され、前記リチウムアルミノケイ酸塩ガラスが、前記ガラスの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有する、態様11又は12に記載のエナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法:
SiO 52~75%、
Al 12~27%、
Li O 1.5~5.5%、
Na O 0~3%、
O 0~3%、
CaO 0~5%、
MgO 0~5%、
SrO 0~5%、
BaO 0~5%、
ZnO 0~5%、
TiO 1~6%、
ZrO 0~3%、
0~8%。
[態様14]態様11~13のいずれかに記載の製造方法を用いて得られる、エナメル加工されたガラス-セラミック板。
[態様15]態様14に記載のエナメル加工されたガラス-セラミック板を有する、調理器具。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従う鉱物インクは、ガラス、セラミック、及びガラス-セラミックでできた鉱物基材へのインクジェット印刷による堆積に好適である。
【0016】
本発明に従う鉱物インクの一つの優れた効果としては、それらをインクジェット印刷装置で用いたとき、拡張全域色を実現可能な原色のセットを創出することができることである。そして、好適な鉱物顔料を選択することによって、本発明の鉱物インクの助けをかりて、原色のそれぞれが策定され得る。そして、例えば、それに限定されないが、CYMB(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4原色のモデルに従う4色プロセスによって、あるいは、その他に、CMYBW(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト)の5原色モデルに従う5原色のセットによって、全域での製造が行われ得る。本発明に従う鉱物インクは、様々なレベルのグレーを得られる原色のモデルに特に適する。
【0017】
本発明に従う鉱物インクの別の優れた効果は、鉱物相と有機相の間の相乗効果に関連する。
【0018】
本開示に従う鉱物インクがインクジェット印刷法に用いられるとき、従来技術のインクを用いて得られたものと比較して、特に細かいグラフィック要素を有するエナメル模様の製造を可能にする。例えば、本発明に従う鉱物インクは、0.05mmオーダーの幅を有する同種の線、又は0.05mmオーダーの直径を有する同種のドットを創出することができる。エナメルの厚さは、μmのオーダーに達することができる。
【0019】
インクジェット印刷法においては、用いられる鉱物インクの組成によって決定づけられるサイズの望まない液滴を放出することがある。これらの液滴が非常に大きいと、印刷された模様のグラフィック要素間に、2次的に、「ボンド」又は「ブリッジ」を生じ、その美観を損ね、堆積用に用いられた基材において、エナメル及び使用中の基材の耐久性を損ねる局所的なマイクロクラッキング現象が増加する。従来技術の鉱物インクでは、望まない液滴のサイズが非常に大きくなり、数十マイクロメーターの2次エナメルボンドの形成が増加することがある。本発明に従うインクの別の利点は、望まない液滴の形成を制限し、非常にシャープな模様を得ること、及び、局所的なマイクロクラッキング現象を制限することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
有機溶媒、分散剤、界面活性剤、及びガラスフリットの重量割合は、鉱物インクの特性が、インクジェット印刷に用いられる装置に適するように、調整される。
【0021】
特に、表演張力は、好ましくは、25℃で、20~50mN.m-1の間であり、好ましくは、25~32mN.m-1の間である。
【0022】
鉱物インクはせん断減粘性(shear-thinning properties)を有し、これは、せん断速度減粘性(shear rate thinning properties)とも呼ばれ、せん断とともに粘度が減少する割合である。粘度は、25℃で、20~100mPa.sの間であり、好ましくは、20~30mPa.sの間である。
【0023】
鉱物インク中のガラスフリットの重量割合は、有利には、50~65%の間である。有機溶媒は、好ましくは、鉱物インクの、有機溶媒、分散剤、及び界面活性剤の混合物の重量に対して、80%である。用いられるインクジェット装置の技術的制約と、製造上の制約に従って、有機溶媒の種類と量を調整してもよい。
【0024】
本発明に従う鉱物インクを乾燥し焼成した後に得たエナメルは、特に、汚れ、及び、金属摩耗のような機械的応力に対して耐久性を有している。本発明に従う鉱物インクを用いてエナメルを形成するためには、鉱物インクを乾燥する温度は、好ましくは、25~150℃の間である。焼成熱処理の温度は、好ましくは、650℃以上である。その温度は、1100℃を超えないことが好ましい。それに加え、鉱物基材へのエナメルの密着は、最適ではない危険性がある。特に、それは、摩耗又は摩擦のような機械的応力に対しては、耐久性に劣る。
【0025】
本発明の鉱物インクの特定の一実施態様によれば、有機溶媒は、有機溶媒、分散剤、及び界面活性剤の合計重量パーセントに対して、有利には70~90%の間である。そのような量の溶媒は、ほとんどのインクジェット印刷装置に好適である。
【0026】
有機溶媒は、少なくとも一つのアルコール官能基を有し、常温で液体である有機化合物、又は、少なくとも一つのアルコール官能基を有し、常温で液体である有機化合物の混合物であってよい。
【0027】
アルコール官能基を有する有機化合物の選択は、インクジェット印刷のための方法及び/又は装置によって決まる。鉱物基材への鉱物インクの堆積速度が遅い場合には、方法及び/又は装置の操作圧力及び温度条件下で、飽和蒸気圧が低い溶媒又は溶媒の混合物を使用することが有利である。つまり、標準的な温度及び圧力の条件下では、溶媒又は溶媒の混合物が過剰に速く蒸発するのを防ぐため、それらの沸点を高くすることができる。有機溶媒の例としては次のものがあるが、これに限定されない:メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールメチルエーテル又はジプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールエーテル類。
【0028】
分散剤は、少なくとも一つの酸官能基を有する共重合体又は少なくとも一つの酸官能基を有する共重合体の混合物が好ましい。分散剤は、固相の凝集及び/又は沈殿を防ぐ。それは、有機溶媒、分散剤、及び界面活性剤の重量%の合計に対して、3~7重量%、多くて10重量%であることが好ましい。一つ以上の酸官能基を有する共重合体のアルキルアンモニウム塩は、分散剤の例であるが、これに限られない。
【0029】
表面活性剤は、ポリエーテル又はポリエーテルの混合物が好ましい。それは、有機溶媒、分散剤、及び界面活性剤の重量%の合計に対して、0.05~0.5重量%であることが好ましい。
【0030】
本発明に従う鉱物インクは、着色鉱物顔料の添加なしで用いられてもよい。着色鉱物顔料を含有せずに本発明の鉱物インクが使用されて達成し得るエナメルの色は、堆積される鉱物基材の色によって決定される。例として、黒又は茶色の暗いガラス-セラミック板に、約2.8μmの最終厚さを有するエナメルを施すと、CIE 1976(L)色空間で表されるカラーパラメタは、D65光源及び10°観測角で、L=27.22、a=0.65、b=-0.88であってよい。
【0031】
本発明の一態様において、鉱物インクは、エナメルに色合い又は色彩を与えるため、さらに、鉱物顔料を含有してもよい。鉱物顔料は、鉱物インク及びエナメルの色彩を調整することができる。鉱物顔料は、金属酸化物、及び/又は、エナメルを形成するための鉱物インクの熱処理中に酸化する金属若しくは合金をベースとしてよい。鉱物顔料の例としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、スピネル、又はドープされたアルミナであるが、これに限られない。
【0032】
ガラスフリットと鉱物顔料の合計重量%は、有利には、鉱物インクに対して、50~80重量%である。約80%を超えると、鉱物インクで固相分が過剰に多くなり、インクジェット印刷に鉱物インクを使用することへの技術的困難の原因になり得る。約50%を下回ると、インクジェット印刷で堆積した後、基材全体にわたって固形分が過剰に分散し、基材全体にわたって得られたエナメルが不均一に分布する危険性がある。得られたエナメルの色彩が均一でない危険性がある。
【0033】
ガラスフリットと鉱物顔料の重量%の合計に対して、ガラスフリットは65~90重量%であることが好ましい。この範囲は、満足のいく色彩を有している均質なエナメルを得るための最適な範囲であることが実験的に観測されている。ガラスフリットが65重量%未満であると、基材へのエナメルの密着が充分でない。提示した範囲は目安である。それらは、特に、鉱物インクによって提供される色彩の強度又は飽和度、及び、エナメルに要求される美観効果に依存する。
【0034】
特定の一態様では、ガラスフリットと鉱物顔料の混合物の粒子サイズ分布のD90が1μmと2μmの間である。D90は、ISO規格13320:2009に従うレーザー粒径分析法で求められた粒子サイズ分布から算出される。それは、混合物粒子の合計体積率の90%が示す粒子サイズに相当する。すなわち、ガラスフリットと鉱物顔料の混合物粒子のうち、体積率で90%は、1μmと2μmの間の粒子サイズを有している粒子からなる。
【0035】
鉱物基材へのインクジェット印刷用鉱物インクは、焼成後にエナメルを形成するまで、鉱物基材への堆積物の構造及び形状を維持するために用いる、バインダー又は有機及び/又は無機バインダーの混合物を含有してもよい。バインダーの例としては、有機ドル-ゲルタイプバインダー又はアクリル系樹脂がある。
【0036】
本発明の特定の一態様では、鉱物インクは、そのような有機及び/又は無機バインダーを含有しない。具体的には、それを含有することを除外しないが、本発明の鉱物インクは、正確な輪郭を有し、歪みのないエナメルを形成するのに、そのような有機及び/又は無機バインダーを必要としない。
【0037】
本発明は、また、鉱物インクの製造方法に関する。その方法は、次の工程を含む:
a.ガラスフリットの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有する、前記ガラスフリットを提供すること;
35~50%のSiO
15~25%のAl
1.5~4%のLiO、
22~32%のB
0~2%のNaO、
2~5%のKO、
1~5%のCaO、
1~4%のZrO
b.前記ガラスフリットを鉱物顔料と混合すること;
c.工程(b)で得た混合物に、有機溶媒と分散剤を加えること;
d.前記ガラスフリットと前記鉱物顔料の混合物の粒径分布のD90が1μmと2μmの間になるまで、工程(c)で得た混合物を再循環ミリングすること;
e.工程(d)で得たミリングされた調整物に、界面活性剤を加えること。
【0038】
工程(a)で提供されたガラスフリットは、従来から知られているガラス製品の製造方法に従って得ることが一般的である。特に、それは、所望の組成を有する液体ケイ酸塩を水冷することによって得てもよい。この液体ケイ酸塩は、一般的には、ガラスバッチ材料の混合物を高温溶解することによって形成される。混合物のバッチ材料は、ガラスフリットの組成に組み込まれる元素を有している。それらは、混合物が溶解されると、溶融ケイ酸塩がガラスフリットとして所望の組成を有するように配合されている。
【0039】
本発明に従う鉱物インクは、特に、ガラス-セラミック板に装飾エナメルを堆積するのに好適である。ガラス-セラミックは、結晶質又は結晶が内部に分散しているアモルファス相を有する複合材料である。それは、一般的に、「マザーガラス」と呼ばれるガラスの熱処理によって得られ、制御された方法で、その体積中で結晶化する。ガラスが部分的に結晶化するこの処理は、「セラミック化処理」又は単に「セラミック化」と呼ばれる。ガラス-セラミックの最終的な物理化学特性は、マザーガラス及びゼラミゼーション処理によって決定づけられる。
【0040】
本発明の鉱物インクは、セラミック化処理の前に、ガラス-セラミックのマザーガラスの板に、直接、インクジェット印刷で堆積されてもよい。本発明に従う鉱物インクを用いてガラス-セラミック基材を製造する方法には、鉱物インクからエナメルを形成するのに好適な熱処理工程を含む必要は必ずしもない。この観点では、エナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法にも関係する本発明は、次の工程を含む:
a.ガラス-セラミックのマザーガラスの板を提供すること;
b.上述したいずれか一つの態様に従う鉱物インクのインクジェット印刷法でマザーガラス板の表面に未焼成エナメルを堆積すること;
c.次のセラミック化サイクルに従って、未焼成エナメルを有するガラス-セラミックマザーガラスの板を熱処理すること;
i.650~860℃の間で15分から4時間にわたり、核生成を維持し、
ii.860~1100℃の間で10分から2時間にわたり、結晶成長を維持する。
【0041】
本発明の鉱物インクは、乾燥し約850℃で30分にわたり焼成される前に、ガラス-セラミック板に、直接、インクジェット印刷で堆積されてもよい。この態様では、上述した製造方法の温度よりも低い温度に、乾燥された鉱物インクを暴露することによって、ある特定の特性、特に、色彩に関するものを付加してもよい。
【0042】
本発明に従う鉱物インクを用いて、エナメル加工されたガラス-セラミック板を製造する方法の一実施態様では、インクジェット印刷法は、ドロップ-オン-デマンド型のインクジェット印刷法である。特に、鉱物インクは、機械的摘出によるドロップ-オン-デマンド型のインクジェット印刷法に好適である。電気的パルスの影響下で、インクが貯蔵されているリザーバの壁を構成するメンブレンを動かす圧電素子を用いて、機械的摘出を行うことが好ましい。
【0043】
限定されない例として、エナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法のガラス-セラミックマザーガラスの板が、リチウムアルミノケイ酸ガラスで形成され、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスが、ガラスの重量パーセントとして表される、以下に定義される重量範囲の下記成分を含有する:
SiO 52~75%、
Al 12~27%、
LiO 1.5~5.5%、
NaO 0~3%、
O 0~3%、
CaO 0~5%、
MgO 0~5%、
SrO 0~5%、
BaO 0~5%、
ZnO 0~5%、
TiO 1~6%、
ZrO 0~3%、
0~8%。
【0044】
本発明の別の主題は、上述のいずれか一つの態様に従う製造方法を用いて得られる、エナメル加工されたガラス-セラミック板である。そのようなエナメル加工されたガラス-セラミック板は、調理器具の調理表面として、有利に用いることができる。特に、本発明に従う鉱物インクから表面に形成したエナメルは、このタイプの塗布として非常に適している。それらは、金属摩擦、特に、鍋の動きに関連する金属摩擦に対する高い抵抗性と、食品及び熱サイクルへの繰り返しの暴露に対する化学的及び機械的耐久性とを有する。この観点では、本発明は、また、上述の態様のいずれか一つに従うエナメル加工されたガラス-セラミック板の製造方法によって得られる、エナメル加工されたガラス-セラミック板を有する調理器具に関する。
【実施例
【0045】
本発明の特徴及び利点を、下記の実施例で説明する。
【0046】
本発明に従う鉱物インクの実施例E1の成分の特質及び配合を下記の表1に示す。成分の配合は、鉱物インクの重量%で表す。
【0047】
【表1】
【0048】
鉱物インクの固形分率は、鉱物インクの65重量%である。液体分率は、鉱物インクの35重量%である。
【0049】
ガラスフリットである原料1の成分の特質及び配合を下記の表2に示す。配合は、ガラスフリットの重量%で表す。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例E1の鉱物インクは、次の手順に従って製造された:
a.ガラス化可能な液体ケイ酸塩の混合物の急冷によって得られたガラスフリットである原料1を提供すること:
b.ガラスフリットを鉱物顔料と混合すること;
c.工程(b)で得られた混合物に、有機溶媒と分散剤を添加すること;
d.ガラスフリットと鉱物顔料の混合物の粒子サイズ分布のD90が1μmと2μmの間になるまで、工程(c)で得た混合物を湿式再循環ミリングすること;
e.工程(d)で得たミリングされた調整物に、界面活性剤を加えること。
【0052】
実施例1の鉱物インクの物理化学及びレオロジー特性を下記の表3に示す。
【0053】
WilhelmyとDu Nouy-Padday法に従う、キブロン社 EZPi テンシオメータを用いて、表面張力を測定した。ブルックフィールド法に従い、50s-1と100s-1の二つのずり速度について粘度を測定した。ISO規格13320:2009に従うレーザー粒子サイズ分析法で求められた粒子サイズ分布から、D90を算出する。
【0054】
【表3】
【0055】
比較のため、従来技術に従う二つの鉱物インクA及びBを再製作した。これら二つのインクA及びBに用いるガラスフリットの成分の特質及び配合を下記の表4に示す。配合は、ガラスフリットの重量%で示す。
【0056】
【表4】
【0057】
鉱物インクE1、A、及びBそれぞれを用いて、下記の工程を含む製造方法に従って、三つのエナメル加工されたガラス-セラミック板を製造した:
a.ガラス-セラミックマザーガラスの板を提供すること;
b.鉱物インクの液滴インクジェット印刷の技法によって、マザーガラスの板の表面に、未焼成エナメルを堆積すること;
c.常温又は赤外線放射乾燥装置の助けをかりて、エナメルを乾燥させること;
c.次のセラミック化サイクルにしたがって、未焼成エナメルを有するガラス-セラミックマザーガラスの板を熱処理すること:
i.650~860℃の間で、15分から4時間にわたり、結晶核生成を維持し、
ii.860~1100℃の間で、10分から2時間にわたり、結晶成長を維持する。
【0058】
無作為に曲がりくねった突起の組織を形成するように、鉱物インクを印刷した。2μmと3μmの間で無作為に厚さを変化させ、0.2mmと1mmの間で無作為に幅を変化させた。突起は、ドット、線、及び/又は曲線の形状であってよい。
【0059】
板の耐汚染性、そして、また、その洗浄性は、調理器具の調理面として又は作業面としてエナメル加工された板が使用される実際の条件をシミュレートする手順を用いて評価した。
【0060】
耐汚染性は、次の手順を用いて評価した。エネメル加工されたガラス-セラミック板を、先ず、調理表面として供される調理器具の中に挿入する。挽肉、卵、牛乳、砂糖、小麦粉、グリュイエールチーズ、及びトマトピューレの混合物を、100mlの水を含む鍋とガラス-セラミック板のエナメル加工された領域との間に配置する。混合物は、エナメル加工された領域に接触する。そして、混合物は、鍋から水が蒸発するまで加熱され、その後、さらに10分間で、炭化が始まり、ガラス-セラミック板に付着するようにする。混合物の適用及び加熱の工程を5回繰り返す。汚染の程度は、次の等級のスケールに従って、視覚的に評価される:
0:染みなし
1:少しの染み
2:目立つコントラストを伴う染み
3:非常に目立つコントラストを伴う染み
【0061】
汚染の程度は、また、次の総合指標を用いて表されてもよい。
【0062】
【数1】
【0063】
iは、汚染の程度であり、Ziは、百分率で表した、汚染の程度がiである表面の量である。汚染の程度Igが低いほど、エナメルの耐汚染性が高い。逆に、汚染の程度Igが高いほど、エナメルの耐汚染性が低い。
【0064】
調理板の洗浄用に特に設計された市販の洗剤を用いて、スクレイパで洗浄した後、次の等級のスケールに従って、エナメルの洗浄性を評価した:
a.簡単に洗浄;
b.やや洗浄しづらい;
c.洗浄しづらい。
【0065】
評価試験の結果を下記の表に集めた。
【0066】
【表5】
【0067】
表の結果は、本発明に従う鉱物インクを用いて得たエナメルは、従来技術に従う鉱物インクを用いて得たエナメルよりも、耐汚染性が高いことを示している。本発明に従う鉱物インクE1を用いて得たエナメルは、染みが少ない。その汚染の程度Igは0.1未満である。汚れで覆われているエナメル表面は少ない。一方、従来技術に従う鉱物インクA及びBを用いて得たエナメルは、非常に高い程度の汚染を有する。これらのエナメル表面の大部分は、著しい汚れで覆われている。
【0068】
本発明に従う鉱物インクE1を用いて得たエナメルは、また、鉱物インクA及びBを用いて得たエナメルよりも、容易に洗浄する。
【0069】
本発明に従う鉱物インクを用いたスクリーン印刷で得られたエナメルの耐金属摩擦性を比較するため、スクリーン印刷で堆積したエナメルを有する、エナメル加工されたガラス-セラミック板の比較例CEx1も製造した。
【0070】
先ず、エナメル粉及びパイン油ベースの溶剤を有する、スクリーン印刷用の鉱物ペーストを準備した。エナメル粉は、本発明の鉱物インクに用いられるのと同じ組成のガラスフリットを約70重量%、鉄、クロム、ニッケル、シリコン、及びコバルトの酸化物の混合物をベースとする黒色鉱物顔料を約30%含有する。エナメル粉の粒子サイズ分布のD90は、1μmと2μmの間である。
【0071】
そして、標準的なスクリーン印刷法を用いて、ガラス-セラミックマザーガラスに、鉱物ペーストを堆積した。次に、そのアセンブリを次のサイクルに従う熱処理に供した:
i.650~860℃の間で、15分から4時間にわたり、結晶核生成を維持し、
ii.860~1100℃の間で、10分から2時間にわたり、結晶成長を維持する。
【0072】
本発明の鉱物インクを用いて得られたエナメルを有する、エナメル加工されたガラス-セラミック板の別の実施例E2は、また、実施例E1に用いられたのと同一の方法に従って製造された。比較例CEx1のエナメルペーストと同じ鉱物顔料で置換された鉱物顔料であることを除き、実施例1と同じ鉱物インクを用いた。
【0073】
実施例E2及びCEx1の二つのガラス-セラミック板について、エナメルの耐金属摩擦性を、次の手順に従って評価した。先ず、ガラス-セラミック板のエナメル加工された領域の表面を、コイン並びに金属及び/又はエナメル鍋のようないくつかの金属要素を用いて、往復運動を伴って、連続して擦った。そして、調理板の洗浄用に特に設計された市販の種々の洗剤製品を用いて、表面を洗浄した。エナメル加工された表面の劣化を、~20のスケールで視覚的に評価する;程度0はエナメル表面が完全に劣化していることに相当し、程度20は劣化が全く発生していないことに相当する。すなわち、程度が高いほど、エナメルの耐金属摩擦性が高い。
【0074】
評価試験の結果は、下記の表6に集められる。これらは、本発明に従う鉱物インクE2を用いて得たのと同じエナメルは、スクリーン印刷法を用いて得た場合よりも、耐金属摩耗性が高いことを示している。
【0075】
【表6】
【0076】
これらの結果は、本発明に従う鉱物インクは、従来技術からの、エナメルペーストから又はスクリーン印刷用の鉱物インクから得たエナメルよりも、耐金属摩擦性及び耐汚染性、さらに洗浄性に優れるエナメルを形成することが可能であることを示している。
【0077】
本発明の鉱物インクについて、得られたエナメル及び基材の局所的なマイクロクラッキング現象に与える、模様のグラフィック要素の達成し得る大きさの影響を評価した。表7は、本発明に従う鉱物インク一つと、従来技術に従う別の二つの鉱物インクとの、三つのエネメル加工された板について得られた結果を集めたものである。これら二つの板は、前述の比較テストで用いられたのと同一の手順に従って製造された。エナメルの模様は、板の表面全体を覆うマーブルからなるイメージ印刷である。
【0078】
模様の厚みは、それぞれの鉱物インクで達成可能な最小の厚さである。
【0079】
局所的なマイクロクラッキング現象は、板のエナメル加工された面が引張になる3点曲げ法に従って、エナメル模様が破壊する荷重(MOR)を測定することによって評価した。それぞれの板について、10~20の試料を評価した。
【0080】
【表7】
【0081】
本発明に従う鉱物インクで得たMORの値は、従来技術のインクで得たものよりも、著しく高い。また、低い標準偏差を有しており、模様全体にわたって、MORがより均一であることを意味している。
【0082】
結果は、本発明に従う鉱物インクによって、従来技術に従うインクにはない、非常にシャープなグラフィック要素を得ることができることを示している。この高いシャープさは、装飾のよりよい美観と、局所的なマイクロクラッキング現象の制限に寄与し、エナメルのより高い耐久性及びより高い対汚染性に寄与する。