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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/152 20210101AFI20231227BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20231227BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20231227BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20231227BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M50/107
H01M50/167
H01M50/186
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020562982
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047085
(87)【国際公開番号】W WO2020137373
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018244990
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原口 心
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 仰
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-067379(JP,A)
【文献】実開昭61-003665(JP,U)
【文献】実開昭58-065759(JP,U)
【文献】特開昭53-042329(JP,A)
【文献】特開昭61-233964(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/152
H01M 50/184
H01M 50/107
H01M 50/167
H01M 50/186
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極がセパレータを介して巻回された電極体と、
電解質と、
前記電極体及び前記電解質を収容する有底筒状部、及び前記有底筒状部の開口側の端部から径方向の内方側に折り曲げられて前記内方側に延びる環状の肩部を有する外装缶と、
前記肩部にガスケットを介してかしめ固定された封口体と、を備え、
前記ガスケットが、前記肩部における前記径方向の前記内方側の先端部と前記封口体の間から延出する延出部を含み、
前記肩部における軸方向の前記電極体側とは反対側の第1表面と、前記封口体における前記軸方向の前記電極体側とは反対側の第2表面とを結ぶ任意の直線の全てに、前記ガスケットが交差する、円筒形電池。
【請求項2】
前記第2表面が、前記径方向の内側に行くにしたがって前記軸方向の前記電極体側とは反対側に移動する第1傾斜面部を含み、
前記延出部が、前記第1傾斜面部によって前記軸方向の前記電極体側とは反対側に曲げられている、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項3】
前記第1傾斜面部が、環状の傾斜面部である、請求項2に記載の円筒形電池。
【請求項4】
前記封口体が、前記第1表面よりも前記軸方向の前記電極体側に位置し、
前記第2表面が、前記径方向の内側に行くにしたがって前記軸方向の前記電極体側に移動する環状の第2傾斜面部を前記第1傾斜面部よりも前記径方向の内方側に含む、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の円筒形電池。
【請求項5】
前記ガスケットにおいて最も前記軸方向の前記電極体側とは反対側に位置する第1箇所が、前記肩部において最も前記軸方向の前記電極体側とは反対側に位置する第2箇所よりも前記軸方向の前記電極体側に位置する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形電池としては、特許文献1に記載されているものがある。この円筒形電池は、電極体、電解液、外装缶、ガスケット、及び封口体を備える。外装缶は、有底筒状部と、有底筒状部の開口側の端部から径方向の内方側に折り曲げられて内方側に延びる環状の肩部を有する。電極体及び電解液は、有底筒状部に収容される。また、封口体は、肩部にガスケットを介してかしめ固定される。外装缶は、負極端子の役割を果たし、封口体における軸方向の電極体側とは反対側の表面は、正極端子の役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-320562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属板等の板状の導体部材を工場等で誤って円筒形電池上に落下させたりしたとき、円筒形電池の肩部と封口体との間に短絡が生じる可能性があるが、このような短絡を抑制することが好ましい。また、円筒形電池の搬送中にも、そのような外装缶と封口体との間の短絡を抑制することが好ましい。
【0005】
そこで、本開示の目的は、外装缶と封口体との短絡を抑制できる円筒形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る円筒形電池は、正極と負極がセパレータを介して巻回された電極体と、電解質と、電極体及び電解質を収容する有底筒状部、及び有底筒状部の開口側の端部から径方向の内方側に折り曲げられて内方側に延びる環状の肩部を有する外装缶と、肩部にガスケットを介してかしめ固定された封口体と、を備え、ガスケットが、肩部における径方向の内方側の先端部と封口体の間から延出する延出部を含み、肩部における軸方向の電極体側とは反対側の第1表面と、封口体における軸方向の電極体側とは反対側の第2表面とを結ぶ任意の直線の全てに、ガスケットが交差する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る円筒形電池によれば、外装缶と封口体との短絡を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る円筒形電池の軸方向の断面図である。
図2図2は、上記円筒形電池の電極体の斜視図である。
図3図3は、上記円筒形電池の封口体周辺部において中心軸の片側に位置する部分の拡大断面図である。
図4図4は、参考例の円筒形電池における図3に対応する拡大断面図である。
図5図5は、変形例の円筒形電池における図3に対応する拡大断面図である。
図6図6は、他の変形例の円筒形電池における図3に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る円筒形電池の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示の円筒形電池は、一次電池でもよく、二次電池でもよい。また、水系電解質を用いた電池でもよく、非水系電解質を用いた電池でもよい。以下では、一実施形態である円筒形電池10として、非水電解質を用いた非水電解質二次電池(リチウムイオン電池)を例示するが、本開示の円筒形電池はこれに限定されない。
【0010】
以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。以下の実施形態では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。本明細書では、説明の便宜上、電池ケース15の軸方向に沿った方向を高さ方向とし、高さ方向の封口体17側を「上」とし、高さ方向の外装缶16の底側を「下」とする。以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る円筒形電池10の軸方向の断面図であり、図2は、円筒形電池10の電極体14の斜視図である。図1に示すように、円筒形電池10は、巻回型の電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。図2に示すように、電極体14は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12の間に介在するセパレータ13を含み、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。再度、図1を参照して、電池ケース15は、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17で構成される。また、円筒形電池10は、外装缶16と封口体17との間に配置される樹脂製のガスケット28を備える。
【0012】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有してもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、LiPF等のリチウム塩が使用される。
【0013】
図2に示すように、電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13とを有する。また、電極体14は、正極11に接合された正極リード20と、負極12に接合された負極リード21を有する。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、正極11より長手方向及び幅方向(短手方向)に長く形成される。また、2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0014】
正極11は、正極集電体と、集電体の両面に形成された正極合剤層とを有する。正極集電体には、アルミニウム、アルミニウム合金など、正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含む。正極11は、例えば正極集電体上に正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0015】
正極活物質は、リチウム含有金属複合酸化物を主成分として構成される。リチウム含有金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好ましいリチウム含有金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含有する複合酸化物である。
【0016】
正極合剤層に含まれる導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合剤層に含まれる結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0017】
負極12は、負極集電体と、集電体の両面に形成された負極合剤層とを有する。負極集電体には、銅、銅合金など、負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、及び結着剤を含む。負極12は、例えば負極集電体上に負極活物質、及び結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0018】
負極活物質には、一般的に、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素材料が用いられる。好ましい炭素材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛などの黒鉛である。負極合剤層には、負極活物質として、Si含有化合物が含まれていてもよい。また、負極活物質には、Si以外のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が用いられてもよい。
【0019】
負極合剤層に含まれる結着剤には、正極11の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)又はその変性体を用いる。負極合剤層には、例えばSBR等に加えて、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコールなどが含まれていてもよい。
【0020】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、セルロースなどが好ましい。セパレータ13は、単層構造、積層構造のいずれでもよい。セパレータ13の表面には、耐熱層などが形成されてもよい。なお、負極12は電極体14の巻き始め端を構成してもよいが、一般的にはセパレータ13が負極12の巻き始め側端を超えて延出し、セパレータ13の巻き始め側端が電極体14の巻き始め端となる。
【0021】
図1及び図2に示す例では、正極リード20は、正極芯体における巻回方向の中央部等の中間部に電気的に接続され、負極リード21は、負極芯体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続される。しかし、負極リードは、負極芯体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続されてもよい。又は、電極体が2つの負極リードを有して、一方の負極リードが、負極芯体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続され、他方の負極リードが、負極芯体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続されてもよい。又は、負極芯体における巻回方向の巻き終わり側端部を外装缶の内面に当接させることで、負極と外装缶を電気的に接続してもよい。
【0022】
図1に示すように、円筒形電池10は、電極体14の上側に配置される絶縁板18と、電極体14の下側に配置される絶縁板19を有する。図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って、外装缶16の底部側に延びる。正極リード20は封口体17の底板である端子板23の下面に溶接等で接続され、端子板23と電気的に接続された封口体17の天板である弁体27が正極端子となる。また、負極リード21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0023】
外装缶16は、有底筒状部を有する金属製容器である。外装缶16と封口体17との間は環状のガスケット28で密封され、電池ケース15の内部空間が密閉される。ガスケット28は、電池内部の気密性を保つためのシール材の役割を有し、電解液の漏液が起こらないようにする役割を有する。また、ガスケット28は、外装缶16と封口体17との短絡を防止する絶縁材としての役割も有する。外装缶16は、例えば側面部を外側からスピニング加工して形成された溝入れ部22を有する。溝入れ部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。外装缶16は、電極体14と非水電解質とを収容する有底筒状部30、及び環状の肩部33を有し、肩部33は、有底筒状部30の開口側の端部から径方向の内方側に折り曲げられて該内方側に延びる。肩部33は、外装缶16の上端部を内側に折り曲げて封口体17の周縁部31に加締める際に形成される。
【0024】
次に、封口体17について説明する。図3は、円筒形電池10の封口体周辺部において中心軸の片側に位置する部分の拡大断面図である。図3に示すように、封口体17は、電極体14側から順に、端子板23、環状の絶縁板25、弁体27が積層された構造を有する。弁体27は、平面視で円形をなしている。弁体27は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をプレス加工することで作製できる。アルミニウム及びアルミニウム合金は可撓性に優れるため弁体27の材料として好ましい。
【0025】
弁体27は、平面視で円形をなし、その中央部27aと外周部27bをつなぐ中間部に薄肉部27cが形成されている。電池内圧が上昇したときに薄肉部27cが反転し、破断することで弁体27が防爆弁として機能する。中央部27aを端子板23に向けて突出するように形成することで、弁体27と端子板23との接続を容易にしている。
【0026】
絶縁板25は、平面視で円環状に形成され、中央に貫通孔25aを有する。絶縁板25は、弁体27の外周部27bにおいて下側に突出するように形成された突起部27dに嵌め込み固定される。絶縁板25は絶縁性を確保するために設けられ、電池特性に影響を与えない材料で構成されると好ましい。絶縁板25の材料としては、ポリマー樹脂が挙げられ、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が例示される。絶縁板25は、それを高さ方向に貫通する通気孔25bを外周側に有する。また、絶縁板25は、下側に延びる環状のスカート部25cを外周縁部に有する。
【0027】
端子板23は、平面視で絶縁板25より小径の円形の外形を有し、中央部23aが薄肉部となっている。端子板23は、絶縁板25を挟んで弁体27に対向配置される。端子板23は、その外周面を絶縁板25のスカート部25cの内周面に内嵌して固定することで絶縁板25に取り付けられる。弁体27と端子板23は、絶縁板25の貫通孔25aを介して、中心部同士が接続される。
【0028】
端子板23は、弁体27と同様にアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されると好ましく、そのようにすると、弁体27と端子板23の中央部同士の接続を容易に実行できる。接続方法としては、冶金的接合を用いることが好ましく、冶金的接合としてレーザー溶接が例示される。端子板23の外周側には、端子板23を高さ方向に貫通する通気孔23bが形成されている。通気孔23bは、絶縁板25の通気孔25bに連通している。なお、図3に示すように、スカート部25cの内周面は、下側に行くにしたがって内径が小さくなる円錐台形状でもよく、端子板23の外周面が、その内周面に対応する円錐台形状でもよい。そのような場合、端子板23を、スカート部25cに圧入固定することで、弁体27に対する端子板23の位置ズレを確実に防止できる。
【0029】
次に、ガスケット28の構造(形状)、及び、外装缶16の肩部33と封口体17に対するガスケット28の位置関係について説明する。図3に示すように、ガスケット28は、外装缶16の肩部33における内方側の先端部33aと封口体17の間から延出する環状の延出部29を有する。また、封口体17の上面41には、肩部33よりも径方向の内方側に位置する内方側部分40において径方向の内側に行くにしたがって下側(高さ方向の電極体14側とは反対側)に移動する環状の第1傾斜面部41aが含まれる。延出部29は、第1傾斜面部41aを被覆する被覆部39を有する。被覆部39は、第1傾斜面部41aに沿うように延在し、延出部29が、第1傾斜面部41aからの垂直抗力で上側に曲げられる。
【0030】
封口体17の上面41は、更に第2傾斜面部41bを含む。第2傾斜面部41bは、第1傾斜面部41aの内方側の端部に繋がり、径方向の内側に行くにしたがって下側に移動するように傾斜する。また、肩部33の上面47(肩部33における高さ方向の電極体14側とは反対側の外面)は、封口体17よりも上側に位置する。肩部33の上面47は、第3傾斜面部47aを含み、第3傾斜面部47aは、径方向の内側に行くにしたがって下側に移動するように傾斜する。実施形態では、図3に示す断面図において、第2傾斜面部41bと第3傾斜面部47aが略同一の直線上に位置している。
【0031】
肩部33の上面47と封口体17の上面41を結ぶ任意の直線の全てに、ガスケット28が交差する。それらその任意の直線には、例えば、図3に示す断面において、肩部33の上面47における最も上側の肩部上端60と、封口体17の上面41において最も上側に位置している箇所のうちで肩部上端60から最も離れた封口体上端(図示せず)とを結ぶ直線Lが含まれる。ここで、その封口体上端は、図3の断面において中心軸Pに対して第1傾斜面部41aと第2傾斜面部41bとの交点61に線対称な点である。肩部33の上面47は、第1表面を構成し、封口体17の上面41は、第2表面を構成する。
【0032】
上記の任意の直線には、例えば、図3に示す断面において、第2傾斜面部41b及び第3傾斜面部47aを含む直線Lも含まれる。図3において、直線Lは、高さ方向に直交すると共に肩部上端(外装缶16において最も上側に位置する点)60を通過する直線である。図3に一点鎖線の円で示す部分拡大図に示すように、延出部29において最も上側に位置する延出部上端(ガスケット28の上端)65は、直線Lよりも高さ方向下側(高さ方向の電極体14側)に位置し、延出部上端65は、肩部上端60よりも下側に位置する。延出部上端65は、第1箇所を構成し、肩部上端60は、第2箇所を構成する。
【0033】
以上、本開示の円筒形電池10によれば、ガスケット28が、肩部33における内方側の先端部33aと封口体17の間から延出する延出部29を含み、肩部33の上面47と、内方側部分の上面とを結ぶ任意の直線の全てに、ガスケット28が交差する。したがって、平板状の導体板が肩部33の上面47と封口体17の上面41に跨って位置することが不可能になる。よって、平板状の導体板に起因する肩部33と封口体17の短絡を顕著に抑制できる。
【0034】
詳しくは、図4、すなわち、参考例の円筒形電池310における図3に対応する拡大断面図に示すように、封口体317において肩部333よりも径方向の内方側に位置する内方側部分340の上面341と、肩部333の上面347とを結ぶ任意の直線が、ガスケット328の延出部329に交差しない直線L11を含んでいる場合、その直線L11を含む下面380を有する導体板(金属板)385は、肩部333の上面347と封口体317の上面341に跨って位置することが可能になり、導体板(金属板)385を介して肩部347と封口体317の短絡が生じ易くなる。これに対し、図3に示す本開示の円筒形電池10のように、封口体17の上面41と肩部33の上面47とを結ぶ任意の直線の全てに、ガスケット28が交差する場合には、図4に示すような導体板の配置が延出部329によって妨げられて不可能になる。よって、電池外部に存在する導体部材に起因する外装缶16と封口体17の短絡を顕著に抑制できる。
【0035】
また、内方側部分40の上面41が径方向の内側に行くにしたがって高さ方向(軸方向)の電極体14側とは反対側に移動する第1傾斜面部41aを含んでもよく、ガスケット28が、第1傾斜面部41aの少なくとも一部に接触してその少なくとも一部を被覆する被覆部39を有してもよい。
【0036】
上記の構成によれば、ガスケット28の延出部29を第1傾斜面部41aからの力で斜め上方に変形させることができ、第1傾斜面部41aに沿わせるように斜め上方に延在させることができる。したがって、延出部29の高さ方向の長さを容易に増大させることができると共に、延出部29の位置も精密に位置決めできる。よって、上記任意の直線の全てに延出部29が交差する構成を容易に実現できる。
【0037】
また、封口体17が、肩部33の上面47よりも軸方向の電極体14側に位置してもよい。そして、内方側部分40の上面4が、径方向の内側に行くにしたがって高さ方向の電極体14側に移動する環状の第2傾斜面部41bを第1傾斜面部41aよりも径方向の内方側に含んでもよい。
【0038】
上記の構成によれば、封口体17の内方側部分40の上面41を高さ方向の電極体14側に配置させ易い。したがって、延出部29を高さ方向に余り突出させなくても、上記の任意の直線の全てにガスケット28が交差する構成を実現し易い。よって、円筒形電池10をコンパクトに構成し易い。
【0039】
ガスケット28において最も高さ方向の電極体14側とは反対側に位置する延出部上端65は、肩部33において最も高さ方向の電極体14側とは反対側に位置する肩部上端60よりも高さ方向の電極体14側に位置することが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、肩部33において最も上側に位置する肩部上端60が、ガスケット28において最も上側に位置する延出部上端65よりも上側に位置する。これにより、円筒形電池10における電極体14の収容体積が増加するため、体積エネルギー密度が高い円筒形電池10を実現し易い。
【0041】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、図3に示すように、ガスケット28の延出部29の上面が、径方向の内方側に行くにしたがって高さ方向の上側に移動している。しかし、図5、すなわち、変形例の円筒形電池110における図3に対応する拡大断面図に示すように、ガスケット128の電池組込前の形状を工夫することで、ガスケット128の延出部129の先端側188が高さ方向の上側に行くにしたがって径方向の外方側に突出するようにしてもよい。本変形例によれば、ガスケット128の体積を低減し易く、ガスケット128の材料費を低減し易い。なお、図5に示す直線Lと直線Lの定義は、図3に示す直線Lと直線Lの定義と同一である。
【0043】
上記実施形態では、内方側部分40の上面41が、径方向の内側に行くにしたがって高さ方向の下側に移動する環状の第1傾斜面部41aを含む場合について説明した。しかし、内方側部分の上面が、径方向の内側に行くにしたがって下側に移動する非環状の第1傾斜面部を含んでもよい。更には、封口体の内方側部分の上面は、傾斜面を有さなくてもよい。
【0044】
詳しくは、図6、すなわち、他の変形例の円筒形電池210における図3に対応する拡大断面図に示すように、封口体217が、弁体222上に配置されたキャップ221を備えてもよく、キャップ221が、径方向の中央部に高さ方向に膨出する膨出部230を有してもよい。より詳しくは、キャップ221が、円環部250と、円筒部251と、円板部252を有してもよい。また、円環部250と円板部252の夫々が、高さ方向に直交する平面上に略位置し、円筒部251が高さ方向に延在してもよい。そして、円筒部251が、円環部250の径方向内方の縁部と円板部252の外周縁部とを連結してもよい。
【0045】
また、円筒形電池210が、外装缶216と封口体217との間に環状のガスケット228を備え、ガスケット228が、肩部233における径方向の内方側の先端部233aと封口体217の間から延出する延出部229を含んでもよい。そして、その延出部229が、高さ方向上側に延在することで、肩部233の上面247と、封口体217の上面241とを結ぶ任意の直線の全てに、延出部229が交差するようにしてもよい。また、キャップ221の膨出部230が、肩部233の上面247よりも上側に位置してもよい。なお、図6に示す直線Lは、肩部233の上面247及びキャップ221の上面241の両方に接する直線であり、上記任意の直線に含まれる直線である。
【0046】
また、ガスケット28において最も高さ方向の電極体14側とは反対側に位置する延出部上端65が、肩部33において最も高さ方向の電極体14側とは反対側に位置する肩部上端60よりも高さ方向の電極体14側に位置する場合について説明した。しかし、ガスケットにおいて最も高さ方向(軸方向)の電極体側とは反対側に位置する第1箇所が、肩部において最も高さ方向の電極体側とは反対側に位置する第2箇所よりも高さ方向の上側に位置してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10,110,210 円筒形電池、 11 正極、 12 負極、 13 セパレータ、 14 電極体、 16,216 外装缶、 17,217 封口体、 28,128,228 ガスケット、 29,129,229 延出部、 30 有底筒状部、 33,233 肩部、 33a,233a 肩部における径方向の内方側の先端部、 39 被覆部、 41,241 内方側部分の上面(第2表面)、 41a 第1傾斜面部、 41b 第2傾斜面部、 47,247 肩部の上面(第1表面)、 60 肩部上端(第2箇所)、 65 延出部上端(第1箇所)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6