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特許7410891基礎インスリン滴定のための投与推奨を提供するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】基礎インスリン滴定のための投与推奨を提供するシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/17 20180101AFI20231227BHJP
【FI】
G16H20/17
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572769
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2019067000
(87)【国際公開番号】W WO2020002428
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】18182712.2
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/690,157
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/020,478
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミゲリク, アラン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, トーマス デデンロース
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェッツ, オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】イマンバエフ, アヌアル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オルデン, ブラッド ウォーレン
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/007172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真性糖尿病を治療するために対象者に長時間作用型または超長時間作用型インスリン調節日投与推奨(ADDR)を提供するためのシステムであって、前記システムが1つ以上のプロセッサおよびメモリを含み、前記メモリが、
-前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、投与ガイダンス要求(DGR)の受信に応答して方法を実行する命令を含み、前記命令が、
-第1のデータ構造を取得することであって、
(i)前記対象者のグルコース上限目標範囲レベル(UTR)、および
(ii)前記対象者のグルコース下限目標範囲レベル(LTR)を含む、第1のデータ構造を取得すること、
-第2のデータ構造を取得することであって、
(i)現在の投与ガイダンスベースライン(DGB)、および
(ii)どの時点で前記DGBが作成されたかを表す対応するDGBタイムスタンプを含み、
前記現在のDGBが、(a)最新のADDR、または(b)開始基礎投与(SBD)に対応する、第2のデータ構造を取得すること、
-時間的経過にわたって取得された前記対象者の複数のグルコース測定値を含む、第1のデータセットを取得し、それによって血糖履歴(BGH)を確立することであって、前記複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定が、
(i)血糖(BG)レベル、および
(ii)前記時間的経過中のどの時点で前記それぞれのグルコース測定が行われたかを表す対応する血糖タイムスタンプ(BGT)を含む、血糖履歴(BGH)を確立すること、
-前記対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)を含む、第2のデータセットを取得することであって、前記対象者の基礎インスリン注射履歴が、前記時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含み、前記複数の注射における各それぞれの注射について、
(i)対応する注射量(IA)、および
(ii)前記時間的経過中のどの時点で前記それぞれの注射が発生したかを表す注射タイムスタンプ(IT)を含む、第2のデータセットを取得すること、
-第3のデータ構造を取得することであって、
前記対象者の注射データ再読込タイムスタンプ(IDR)を含む、第3のデータ構造を取得すること、
-前記第1のデータ構造、前記第2のデータ構造、前記第3のデータ構造、前記第1のデータセット、および前記第2のデータセットを評価し、それによってそれらが、
(i)前記対象者の前記グルコース上限および下限目標範囲レベル、
(ii)前記現在の投与ガイダンスベースラインおよび前記対応する血糖タイムスタンプ、
(iii)前記対象者の前記注データ再読込タイムスタンプ、
(iv)前記時間的経過にわたって取得された前記対象者の前記複数のグルコース測定値、ならびに
(v)前記対象者の前記基礎インスリン注射履歴を含む、評価情報のセットを集合的に含むかを決定することを含み、
-前記第1のデータ構造、前記第2のデータ構造、前記第3のデータ構造、前記第1のデータセット、および前記第2のデータセットが、前記評価情報のセットを集合的に含むと決定され、前記対象者の基礎インスリン注射履歴が、過去8時間以内に前記対象者に基礎インスリン注射が投与されていないことを示し、かつ前記投与ガイダンス要求が、前記注射データ再読込タイムスタンプから所定の制限時間内に受信された場合に、前記方法は、前記長時間作用型または超長時間作用型インスリンADDRを提供することをさらに含み、前記長時間作用型または超長時間作用型インスリンADDRが、前記第1のデータ構造、前記第2のデータ構造、前記第1のデータセット、および前記第2のデータセットからのデータに基づいて計算されるか、あるいは
-前記第1のデータ構造、前記第2のデータ構造、前記第3のデータ構造、前記第1のデータセット、および前記第2のデータセットが、前記評価情報のセットを集合的に含まないと決定された場合、前記対象者の基礎インスリン注射履歴が、過去8時間以内に前記対象者に基礎インスリン注射が投与されていることを示した場合、または前記投与ガイダンス要求が、前記対象者の注射データ再読込タイムスタンプから前記所定の制限時間後に受信された場合に、長時間作用型または超長時間作用型インスリンADDRが提供されない、システム。
【請求項2】
前記命令が、
-ADDRを計算する前に、更新確認を実行して、前記投与ガイダンス要求が、前記DGBタイムスタンプから所定の制限時間内に受信されたかを確認し、前記投与ガイダンス要求が、前記DGBタイムスタンプから前記所定の制限時間後に受信された場合に、ADDRが提供されないことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記命令が、
-ADDRを計算する前に、1回以上の投与事象確認を実行して、前記対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)中の個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、予め決定された順守要件のセットに適合するかを決定することをさらに含み、
-前記対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)中の前記個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、前記予め決定された順守要件のセットに適合する場合に、前記ADDRを計算し、
-前記対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)中の前記個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、前記予め決定された順守要件のセットに適合しないが、所定の予め定義された非順守状態に適合する場合に、その非順守状態に対応する予め定義されたADDRを提供し、
-前記対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)中の前記個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、前記予め決定された順守要件のセットに適合せず、かつ所定の予め定義された非順守状態に適合しない場合に、エラーメッセージを提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記命令が、
-前記血糖履歴(BGH)に基づき、所定の数の24時間の期間の各24時間について、滴定グルコースレベル値(TGL)を決定することと、
-ADDRを計算する前に、TGL確認を実行して、前記所定の数の期間についての前記個々のTGLの数および値が、予め決定された順守要件のセットに適合するかを決定することと、をさらに含み、
-前記個々のTGLの数および値が、前記予め決定された順守要件のセットに適合する場合に、ADDRを計算し、
-前記個々のTGLの数および値が、前記予め決定された順守要件のセットに適合しないが、所定の予め定義された非順守状態に適合する場合に、その非順守状態について予め定義されたADDRを提供し、
-前記個々のTGLの数および値が、前記予め決定された順守要件のセットに適合せず、かつ所定の予め定義された非順守状態に適合しない場合に、エラーメッセージを提供する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記取得された第1のデータセットが、各24時間の期間について前記対象者の複数のグルコース測定値を含むCGMデータセットであり、前記命令が、
-前記複数のグルコース測定値が、1日のTGL値を決定することができる、完全性に関する要件のセットを集合的に満たすかを、各24時間の期間について評価すること、
-前記完全性に関する要件のセットを満たしていた各24時間の期間について、1日のTGL値を計算すること、
-少なくとも2つの計算された1日のTGL値の平均を取ることによって全体的なTGLを計算することをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1日のTGLが、対応する日の前記血糖(BG)レベルにわたって予め決定された時間量のスライディングウィンドウについて最も低いBG平均として決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記血糖履歴(BGH)が予め決定された長さの1つ以上のギャップを含む場合に、前記対象者の再構成された血糖履歴を計算することをさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
取得された前記第1のデータセットが、前記時間的経過中の各日について前記対象者の空腹時血糖測定値を表すBG値を含み、前記命令が、
-空腹時BG値とみなされる要件のセットを満たすかを各BG値について評価することと、
-空腹時BG値とみなされることに関して要件のセットを満たしていた各空腹時BG値について、対応する1日のTGL値を作成することと、
-少なくとも2つの1日のTGL値の平均を取ることによって全体的なTGLを計算することと、をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記全体的なTGLが、前記対象者の前記UTRよりも大きい場合に、更新される調整日投与推奨が、決定された投与ガイダンスベースラインに、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを加えたものとして決定される、請求項5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記全体的なTGLが、前記対象者の前記UTRと前記対象者の前記LTRとの間にある場合に、更新される調整日投与推奨が、決定された投与ガイダンスベースラインであると決定される、請求項5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記全体的なTGLが、前記対象者の前記LTRよりも低い場合に、更新される調整日投与推奨が、決定された投与ガイダンスベースラインから、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを差し引いたものとして決定される、請求項5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記調節日投与推奨を変更するように、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンが、少なくとも1IU、2IU、4IU、6IU、および8IUのセットから選択される、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記時間的経過中の予め定義された期間内にタイムスタンプを有する前記対象者の基礎インスリン注射履歴内の任意の注射を1つの注射と組み合わせることをさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、
-前記第1のデータ構造、前記第2のデータ構造、前記第3のデータ構造、前記第1のデータセット、および前記第2のデータセットが、前記評価情報のセットを集合的に含まないと決定した場合(すなわち、所定のデータ型が存在し、指定された範囲内にある)、または前記投与ガイダンス要求が、前記対象者の注射データ再読込タイムスタンプから前記所定の制限時間後に受信された場合に、識別された失敗した情報に対応する1つ以上のエラーメッセージが提供されることをさらに含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、糖尿病に対するインスリン治療の管理において、患者および医療従事者を支援するためのシステムおよび方法に関するものであり、ここで、規定の基礎注射は、血糖値のデータセットに基づいて滴定される。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病(DM)は、高血糖につながるインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性である。2型真性糖尿病は、正常な生理的インスリン分泌の進行性の妨害を特徴とする。健康な個体では、膵β細胞による基礎インスリン分泌が連続的に起こり、食間で長期間にわたって定常グルコースレベルを維持する。健康な個体では、食事に応じて初期の第1相スパイクでインスリンが急速に放出され、2~3時間後に基礎レベルに戻る長時間のインスリン分泌が続く、食事による分泌もある。何年も制御不良な高血糖が続くと、複数の健康上の合併症を引き起こす可能性がある。真性糖尿病は、世界中の早期罹患率および死亡率の主な原因の1つである。
【0003】
血糖/血漿グルコースの効果的な制御は、これらの合併症の多くを予防または遅延させることができるが、一度確立されるとそれらを元に戻すことができない可能性がある。したがって、糖尿病の合併症を予防するための努力において良好な血糖コントロールを達成することは、1型および2型糖尿病の治療における主要な目標である。インスリン薬剤治療レジメンを施すために、調節可能なステップサイズ、ならびに生理学的パラメータ推定および所定の空腹時血糖標的値を用いるスマートタイトレータが開発されている。
【0004】
研究はまた、心血管疾患リスクの低下における糖化ヘモグロビン(HbA1)の減少の役割も支持する(Nathan et al.N Engl.J Med.2005.353:2643-2653、Selvin et al.Ann.Intern.Med.2004.141:421-431)。HbA1cレベルが7%を下回るという一般的な目標は、多くの糖尿病組織(例:米国糖尿病学会(ADA))によって推奨されている。(UK Prospective Diabetes Study(UKPDS))群では、患者の50%が2型糖尿病の診断から6年以内にHbA1cレベルを7%を下回るように維持するためにインスリン療法を受けていた。
【0005】
糖尿病には多くの非インスリン治療選択肢が存在するが、疾患が進行するにつれて、最も確実な反応は通常インスリンによるものである。糖尿病は、進行性β細胞喪失に関連しているため、多くの患者、特に長期にわたる疾患を有する者は、高血糖の程度(例えば、HbA1c≧8.5%)により、別の薬剤が十分な利益をもたらす可能性が低いため、最終的にインスリンに移行する必要がある。
【0006】
大半の患者は、血糖検査およびインスリン注射に対する高い需要に起因する不快感および不便さのため、注射療法を開始することに抵抗を示す。従来、血糖制御を改善するためのインスリンの使用は、医療専門家によって提供された。インスリンが適応となるプライマリケアを受ける患者の数が増える中、同じ環境での処方はエンドユーザにとってはるかに便利に思われる。しかし、医師および患者の両方からの心理的抵抗のために、インスリン療法が時間通りに開始されないことがよくある。
【0007】
米国糖尿病学会(ADA)および欧州糖尿病学会(EASD)の合意声明は2012年に更新され、2型糖尿病(T2DM)の高血糖管理のための患者中心のアプローチおよび個別化されたHbA1c治療目標を強調した。メトホルミン療法後に個別のHbA1cレベルの目標が達成されなかった場合、インスリンを二重併用療法の選択肢の1つとみなすことが推奨された。この選択は、副作用を最小限に抑えつつ血糖制御を改善するという優先目標とともに、患者および薬剤の特性に基づいて行うことができる。3剤併用を考慮すると、インスリンは、特にHbA1cレベルが非常に高い(≧9.0%)場合に、大半の他の薬剤(例えば、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト)よりも効果的である可能性が高い(Inzucchi et al.,Management of hyperglycemia in type 2 diabetes:a patient-centered approach:position statement of the American Diabetes Association(ADA)and the European Association for the Study of Diabetes(EASD).Diabetes Care 2012.35:1364-79)。
【0008】
理想的なインスリンレジメンは、インスリン分泌の生理学的プロファイルを可能な限り模倣することを目的とする。インスリンプロファイルには、継続的な基礎分泌および食後の食事による急上昇という2つの主要な要素がある。基礎分泌は一晩中および空腹時のグルコースを制御し、一方、食事による急上昇は食後の高血糖を制御する。
【0009】
発症時期および作用期間に基づき、注射可能製剤は、基礎(長時間作用型類似体[例えば、インスリンデテミルおよびインスリングラルギン]および超長時間作用型類似体[例えば、インスリンデグルデック])、および中間作用型インスリン[例えば、イソファンインスリンなど]、および食事(速効型類似体[例えば、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、およびインスリンリスプロ])に大別される。前混合型インスリン製剤には、基礎および食事インスリン成分の両方が組み込まれる。
【0010】
推奨されるインスリンレジメンには、(1)複数回注射レジメン:1日1回または2回の長時間作用型インスリンによる食事前の速効型インスリン、(2)食事の前に1日1回または2回の前混合型類似体またはヒト前混合型インスリン、(3)1日1回または2回の中間型または長時間作用型インスリンなど様々なものがある。しかしながら、可能な場合、長時間作用型インスリン療法は、単独で、または経口抗糖尿病薬(OAD)と組み合わせて、血糖測定およびインスリン注射によって引き起こされる患者の負担および不快感を軽減するため、通常、2型糖尿病患者にとって最適な初期レジメンである。
【0011】
United Kingdom Prospective Diabetes Studyからの最近のデータは、厳格な血糖制御の重要性を示唆しており(Holman et al.,10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes.N Engl.J Med 2008;359:1577-1589)、現在の治療ガイドラインでは、2型糖尿病患者の早期インスリン治療が求められている(Nathan et al.,Management of hyperglycemia in type 2 diabetes:a consensus algorithm for the initiation and adjustment of therapy:update regarding thiazolidinediones:a consensus statement from the American Diabetes Association and the European Association for the Study of Diabetes.Diabetes Care 2008;31:173-175)。しかしながら、長時間作用型基礎インスリンの最適な開始方法および滴定方法は、依然として決定されている。証拠は、多くの患者が目標レベルのグルコース制御を達成するために十分なインスリン投与を大半が有していないことを示唆している(最適以下の投与のままであり、治療目標に到達できない)(UKPDS)。
【0012】
次第に明らかになっているのは、治療目標達成の動機づけには、患者のエンパワーメントが不可欠だということである。自己滴定レジメンは、患者のエンパワーメントを促進し、患者の治療への関与を高めることができ、その結果血糖制御の改善につながる可能性がある。最近まで、2型糖尿病の臨床治験におけるインスリンの滴定は、通常、血糖値の目的範囲に関する簡単な記述により、治験責任医師の判断に任されていた。2型糖尿病の治験では、平均血糖コントロール達成率は通常、望ましくないものであった。それ以降、様々な条件下で様々なアルゴリズムを用いて多くの試験が実施され、報告されている。
【0013】
過去10年間に、2型糖尿病患者を対象者として長期作用型または中間作用型インスリンを開始する複数の試験で、様々なインスリン滴定アルゴリズムが適用されており、これは多くの場合目標達成に向けた治療と称される。いくつかの治験は、アルゴリズム開発以外の主要な目的のために設計されているため、1つの特定のアルゴリズムを使用した。それらの場合のアルゴリズムのメリットの解釈はやや困難であり、交差治験比較に頼らなければならない。アルゴリズムの数値に加えて、様々な要因が達成結果に影響する。
【0014】
基礎インスリン滴定のアルゴリズムおよびその実施は、あらゆる投与決定に対する完全なリアルタイムな医療従事者による制御から、着実に進化してきた。医療従事者は従来から、推定インスリン感受性および臨床で決定されたその他の要因に関して、目標滴定レベルを選択してきた。したがって、治療結果に影響を及ぼす要因であるとしても、生理学的パラメータの変化、薬剤に対する予期せぬ反応性、または服薬順守のレベルに基づいて、医療従事者への来院ごとに目標が更新されない。より柔軟な滴定アプローチへの第1のステップは、全患者について1つのアルゴリズムを受け入れることであり、これは当時、ほとんどの治験責任医師によって根治的であると考えられていた。第2のステップは、受け入れアルゴリズムの適用となった。
【0015】
糖尿病制御および合併症試験(The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus.The Diabetes Control and Complications Trial Research Group.N Engl J Med 1993;329:977-86)、UKPDS(Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes(UKPDS 33)、UK Prospective Diabetes Study(UKPDS)Group.Lancet 1998;352:837-53)、the Veterans Affairs Diabetes Trial(Duckworth W,Abraira C,Moritz T,et al.Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes.N Engl J Med 2009;360:129-39)、糖尿病および血管疾患における作用:プレテラクスおよびグリクラジド修正放出制御評価治験(ADVANCE Collaborative Group,Patel A,MacMahon S,et al.Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes.N Engl.J Med 2008;358:2560-72)、ならびに日本人患者を対象者とした試験(Ohkubo et al.,Intensive insulin therapy prevents the progression of diabetic microvascular complications in Japanese patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus:a randomized prospective 6-year study.Diabetes Res.Clin.Pract.1995;28:103-17)などの管理された臨床治験は、集中的な血糖制御が微小血管合併症のリスクを有意に低下させることを示した。
【0016】
大半の基礎インスリン滴定アルゴリズムに共通するのは、投与変更が、朝の空腹時の自己モニタリング血液または血漿グルコースの様々な日数の平均値に基づいていることである。この一般的なテーマからは、多くのバリエーションが存在する。
【0017】
開始投与は、10U、20U、またはHolmanおよびTurne(Holman RR,Turner RC.A practical guide to basal and prandial insulin therapy.Diabet.Med.1985 January;2(1):45-53)の式を使用する朝の空腹時の血漿グルコース(FPG)に基づいており、これは(FPG(mg/dl)-50)/10であり、通常は20Uをわずかに下回る。これらの選択肢内では、達成された血糖制御および低血糖率に任意の差異は認められない。
【0018】
診療所が個々の患者のインスリン投与を滴定しなければならない場合、多くの場合、滴定投与の変更頻度には自然制限がある。したがって、診療所は血糖制御が不良な時に長時間放置されないように、高平均グルコース値で大幅な投与増量を行わなくてはならない。しかしながら、患者単独でも容易に滴定することができることが多く、1型糖尿病の患者には長い伝統がある。より頻繁な滴定により、高グルコースレベルでは高投与ステップの必要性が減る可能性があり、ステップ数の観点からアルゴリズムを簡略化することができる。
【0019】
早期の滴定プロトコルは、通常、1週間分の空腹時血液/血漿測定値の平均に基づいてインスリン投与を滴定した。後期の治験は、週3回の平均空腹時血液/血漿測定値に基づく投与調節に基づく。
【0020】
極端なのはインサイト(Gerstein et al.,A randomized trial of adding insulin glargine vs.avoidance of insulin in people with Type 2 diabetes on either no oral glucose-lowering agents or submaximal doses of metformin and/or sulphonylureas.The Canadian INSIGHT(Implementing New Strategies with Insulin Glargine for Hyperglycaemia Treatment)Study.Diabet.Med.2006;23(7):736-42)であり、これは患者が毎朝1単位のインスリンを滴定する1ステップだけを有する。
【0021】
診療所への連絡は、最初は隔週で行ったが、4週間後には4週間ごと、12週間後には6週間ごとに行った。したがって、標準的な臨床診療と比較して、臨床管理が全く厳しくなれば、臨床管理は最小限であった。患者へは「初回投与10単位から開始し、FPG(FPG)≦5.5mmol/リットル(99mg/dl)に達するまで1日1単位増量するアドバイス」を指導した。インスリン最終投与は38UおよびHbA1c7.0%であった。有効性の観点からは、これは「優れた」結果である。したがって、インスリン療法の主目的である血糖制御を改善するため、インスリン投与の滴定の頻度がますます高まっている傾向にある。
【0022】
現在の基礎インスリン類似体の糖尿病治療ガイドラインおよび製品ラベルは、定期的な血糖自己測定を推奨している(American Diabetes Association.Standards of Medical Care in Diabetes-2012.Diabet.Care.2012;35(Suppl.1):S11-63、International Diabetes Federation Clinical Guidelines Task Force.Global Guideline for Type 2 Diabetes.2005.www.idf.org/webdata/docs/IDF%20GGT2D.pdf(2012年12月19日アクセス)からインターネットで入手可能、Canadian Diabetes Association Clinical Practice Guidelines Expert Committee.Canadian Diabetes Association.Can J Diabetes.2008;32(Suppl1):S1-201、Meneghini et al.,The usage of a simplified self-titration dosing guideline(303 Algorithm)for insulin detemir in patients with type 2 diabetes-results of the randomized,controlled PREDICTIVETM 303 study.Diabet.Obes.Metab.2007;9:902-13、Davies et al.,Improvement of glycemic control in subjects with poorly controlled type 2 diabetes.Diabet.Care.2005;28:1282-8、およびLANTUS(登録商標)(insulin glargine[rDNA origin] injection).Sanofi-Aventis U.S.LLC,Bridgewater,NJ,USA;2007.Health Care Professional.Dosing & Titration.www.lantus.com/hcp/titration.aspx.(2012年11月13日アクセス)からインターネットで入手可能、糖尿病を有する人々が適切な血糖制御を維持し、より積極的に医療に関与できるようにするため(Benjamin EM.Self-monitoring of blood glucose:the basics.Clin Diabetes.2002;20(1):45-7、Schnell et al.,Consensus statement on self-monitoring of blood glucose in diabetes.Diabetes,Stoffwechsel und Herz.2009;4:285-9;and American Diabetes Association.Insulin administration.Diabetes Care.2012;35:S1)。インスリン投与もまた、通常、血糖の結果に基づくアルゴリズムに従って、必要に応じて決定および滴定される(American Diabetes Association.Standards of Medical Care in Diabetes-2014.Diabetes Care.2014;37 Suppl.1)。インスリン投与は患者ごとに個別に決定する。投与ステップ(滴定モデル)、血糖目標、および絶対インスリン投与は、一般に医療従事者(HCP)によって、個人ごとに個別に調整された方法で決定される。
【0023】
インスリン療法が管理しがたい、または複雑すぎるという患者およびHCPの認識を含め、インスリンによる血糖目標の達成を妨げる課題が存在する(Peyrot et al.,Factors associated with injection omission/non-adherence in the Global Attitudes of Patients and Physicians in Insulin Therapy Study.Diabet.Obes.Metab.2012;14:1081-7、およびPeyrot et al.,Insulin adherence behaviors and barriers in the multinational Global Attitudes of Patients and Physicians in insulin therapy study.Diabet.Med.2012;29:682-90)。糖尿病の管理およびインスリンの滴定に積極的な役割を果たす患者は、自身のセルフケアに責任を持ち、自身の行動が自身の疾患に影響を及ぼすと強く信じ、より良い治療結果をもたらすことができる可能性がある(Norris et al.,Self-management education for adults with type 2 diabetes:a meta-analysis on the effect of glycemic control.Diabetes Care.2002;25:1159-71、Kulzer et al.,Effects of self-management training in type 2 diabetes:a randomized,prospective trial.Diabet.Med.2007;24:415-23、Anderson et al.Patient empowerment:results of a randomized controlled trial.Diabetes Care.1995;18:943-9)。糖尿病患者にとってセルフケアが最適に行えるかを判断する際には、治療計画の策定時に頻繁なグルコース検査のコストおよび負担を考慮する必要があり、これは、健康、生活の質(QoL)、制御不良の糖尿病の経済的負担に加えると、これらの検査が重要な要因となる可能性があるためである。
【0024】
自己測定血糖(SMBG)検査の費用を調査する多くの研究で、それが糖尿病関連支出の大部分を含むことが分かった(Liebl et al.,Direct costs and health-related resource utilisation in the 6 months after insulin initiation in German patients with type 2 diabetes mellitus in 2006:INSTIGATE study.Curr Med Res Opin.2008;24:2349-58、Yeaw et al.,Self-monitoring blood glucose test strip utilization in Canada.Diabetes.2012;61(Suppl 1):A35、Yeaw et al.,Cost of self-monitoring of blood glucose in Canada among patients on an insulin regimen for diabetes.Diabetes Ther.Epub June 27 2012.doi:10.1007/s13300-012-0007-6、およびYeaw et al.,Cost of self-monitoring of blood glucose in the United States among patients on an insulin regimen for diabetes.J Manag.Care Pharm.2012;18:21-32)。45,000人を超える患者を含む米国の遡及的データベース解析では、検査は糖尿病治療費用の27%を占め、血糖値検査およびインスリン関連費用の合計は2,850米ドル/患者/年であり、血糖値検査単独に起因するのは772米ドル/患者/年であった(Yeaw et al.,Cost of self-monitoring of blood glucose in the United States among patients on an insulin regimen for diabetes.J Manag.Care Pharm.2012;18:21-32)。他の国では、検査には糖尿病治療費の割合がさらに高くなっており、例えば、カナダでは40%であり、(Yeaw et al.,Self-monitoring blood glucose test strip utilization in Canada.Diabetes.2012;61(Suppl 1):A35、Yeaw et al.,Cost of self-monitoring of blood glucose in Canada among patients on an insulin regimen for diabetes.Diabetes Ther.Epub June 27 2012.doi:10.1007/s13300-012-0007-6)、ドイツでは42%である(Liebl et al.,Direct costs and health-related resource utilization in the 6 months after insulin initiation in German patients with type 2 diabetes mellitus in 2006:INSTIGATE study.Curr Med Res Opin.2008;24:2349-58)。
【0025】
この背景セクションに開示された情報は、本発明の一般的な背景の理解の改良のみを目的としており、この情報が当業者に既に公知の先行技術を形成するという認識またはいかなる形態の提案として解釈されるべきではない。
【0026】
上記に関連して、米国でインスリン療法を受けた2型糖尿病患者の60%以上が、推奨されるHbA1cの目標と、数年間にわたる滴定期間を達成していないと推定されている。これらの制御不良の糖尿病を有する人々は、糖尿病合併症の発生率が有意に高くなっており、例えば、糖尿病により、世界のどこかで30秒ごとに脚が切断されると推定されている。インスリン滴定が失敗した理由として、インスリン療法の管理に対する患者の信頼の欠如、低血糖症に対する患者および医療従事者(HCP)の恐れ、曖昧な処方情報による不確実性が報告されている。
【0027】
収集された患者関連治療データに基づいて改善された医療ガイダンスを提供する目的に関連して、WO2019/072818は、ユーザが治療をより適切に管理できるように提供されたポータブル医療データハブを開示する。ポータブル医療データハブは、複数の医療デバイスが治療に関与する場合に、ユーザが、複数の医療デバイスから、例えば、クラウドベースのシステムなどの外部データ解析システムに、ユーザフレンドリな方法で情報を取得することを可能にするので、ユーザがより適切に自身を治療することを可能にし得る。
【0028】
上記を考慮して、本発明の目的は、2型糖尿病を有する患者およびその医療従事者(HCP)が、血糖測定値および以前に記録された投与で記録されたインスリン量に応じて、基礎インスリンを安全、容易、および効率的に滴定することを支援する、糖尿病管理システムでの使用に好適なシステムおよび方法を提供することである。クラウドベースの大規模な糖尿病管理システムの一部として使用されるよう適応されたバックエンドエンジンを提供することが特定の目的である。
【発明の概要】
【0029】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処するか、または以下の開示および例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する実施形態および態様が記載される。
【0030】
したがって、本発明の第1の態様では、真性糖尿病を治療するために対象者に長時間作用型または超長時間作用型インスリン調整日投与推奨(ADDR)を提供するシステムが提供され、システムは、1つ以上のプロセッサおよびメモリを含む。メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、クライアントからの投与ガイダンス要求の受信に応答して方法を実行する命令を含む。命令は、対象者のグルコース上限目標範囲レベルおよび対象者のグルコース下限目標範囲レベルを含む第1のデータ構造を取得するステップと、現在の投与ガイダンスベースライン(DGB)、およびどの時点でDGBが作成されたかを表す対応するDGBタイムスタンプを含み、現在のDGBが、最新の調整日投与推奨、または開始基礎投与に対応する、第2のデータ構造を取得するステップと、を含む。命令は、第1および第2のデータセットを取得するステップを含み、第1のデータセットは、時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値を含み、それによって血糖履歴を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定は、血糖レベルおよび時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す対応する血糖タイムスタンプを含み、第2のデータセットは、対象者の基礎インスリン注射履歴を含み、注射履歴は、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含み、複数の注射における各それぞれの注射について、対応する注射量および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射が発生したかを表す注射タイムスタンプを含む。命令は、対象者の注射データ再読込タイムスタンプを含む、第3のデータ構造を取得するステップを含む。命令は、第1のデータ構造、第2のデータ構造、第3のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットを評価するステップをさらに含み、それによってそれらが、対象者のグルコース上限および下限目標範囲レベル、現在の投与ガイダンスベースラインおよび対応するタイムスタンプ、対象者の注射履歴再読込タイムスタンプ、時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値、ならびに対象者の注射履歴を含む、評価情報のセットを集合的に含むかを決定する。第1のデータ構造、第2のデータ構造、第3のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含むと決定された場合、かつ投与ガイダンス要求が、注射データ再読込タイムスタンプから所定の制限時間内に受信された場合に、方法は、長時間作用型または超長時間作用型インスリン調整日投与推奨を提供することをさらに含み、推奨は、第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットからのデータに基づいて計算されるか、あるいは第1のデータ構造、第2のデータ構造、第3のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含まないと決定された場合、または投与ガイダンス要求が、注射履歴再読込タイムスタンプから所定の制限時間後に受信された場合に、長時間作用型または超長時間作用型インスリン調整日投与推奨が提供されない。
【0031】
第1のデータ構造、第2のデータ構造、第3のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含まないと決定された場合(すなわち、所定のデータ型が存在し、指定された範囲内にある)、または投与ガイダンス要求が、注射履歴再読込タイムスタンプから所定の制限時間後に受信された場合に、識別された失敗した情報に対応する1つ以上のエラーメッセージが提供される。
【0032】
上記の方法によって、長時間作用型または超長時間作用型インスリン調整日投与推奨を効率的かつ安全に処理するための投与ガイダンス要求を可能にするシステムが提供される。システムを実装すると、クライアントおよびオペレーティングシステムの形で相互作用システムと組み合わせて使用されるバックエンドエンジンを提供し、2型糖尿病を有する患者およびその医療従事者が、血糖値および以前に記録された投与で記録されたインスリンの量に応じて、基礎インスリンを滴定することを支援できる。
【0033】
例示的な実施形態では、命令は、ADDRを計算する前に、更新確認を実行して、投与ガイダンス要求が、DGBタイムスタンプから所定の制限時間、例えば3、4、5、6、または7日間内に受信されたかを確認し、投与ガイダンス要求が、DGBタイムスタンプから所定の制限時間後に受信された場合に、ADDRが提供されないステップをさらに含む。この場合、患者は、新たな開始基礎投与値を設定し、したがって新たな滴定レジメンを開始する必要があり得る。
【0034】
このように、患者は高度な滴定レジメンに「積極的に」参加しており、「非従者」からの投与ガイダンス要求は拒否され、それによってレジメンの順守が促進されることが保証される。
【0035】
例示的な実施形態では、命令は、ADDRを計算する前に、1回以上の投与事象確認を実行して、注射履歴中の個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、予め決定された順守要件のセットに適合するかを決定するステップをさらに含み、注射履歴中の個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、予め決定された順守要件のセットに適合する場合に、ADDRを計算し、注射履歴中の個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、予め決定された順守要件のセットに適合しないが、所定の予め定義された非順守状態に適合する場合に、その非順守状態に対応する予め定義されたADDRを提供し、注射履歴中の個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、予め決定された順守要件のセットに適合せず、かつ所定の予め定義された非順守状態に適合しない場合に、エラーメッセージを提供する。
【0036】
このように、投与ガイダンスの規則は、所定の種類の薬物に対する所定の滴定レジメンの要件に特に適合するように設計することができる。
【0037】
同様に、命令は、血糖履歴に基づき、所定の数の24時間の各24時間の期間について、滴定グルコースレベル値(TGL)を決定することと、ADDRを計算する前に、TGL確認を実行して、所定の数の期間についての個体のTGLの数および値が、予め決定された順守要件のセットに適合するかを決定することと、ををさらに含み、個々のTGLの数および値が、予め決定された順守要件のセットに適合する場合に、ADDRを計算し、個々のTGLの数および値が、予め決定された順守要件のセットに適合しないが、所定の予め定義された非順守状態に適合する場合に、その非順守状態について予め定義されたADDRを提供し、個々のTGLの数および値が、予め決定された順守要件のセットに適合せず、かつ所定の予め定義された非順守状態に適合しない場合に、次にエラーメッセージを提供する。
【0038】
このように、追加の投与ガイダンスの規則は、所定の種類の薬物に対する所定の滴定レジメンの要件に特に適合するように設計することができる。
【0039】
取得された第1のデータセットは、各24時間の期間について対象者の複数のグルコース測定値を含むCGMデータセットであり得、命令は、複数のグルコース測定値が、1日のTGL値を決定することができる、完全性に関する要件のセットを集合的に満たすかを、各24時間の期間について評価すること、完全性に関する要件のセットを満たしていた各24時間の期間について、1日のTGL値を計算すること、少なくとも2つの計算された1日のTGL値の平均を取ることによって全体的なTGLを計算することをさらに含む。
【0040】
1日のTGLは、対応する日のBG値にわたって予め決定された時間量、例えば60、120、または180分のスライディングウィンドウについて最も低いBG平均として決定され得る。
【0041】
方法は、血糖履歴時間的経過が予め決定された長さの1つ以上のギャップを含む場合に、対象者の再構成された血糖履歴を計算するステップをさらに含む。
【0042】
代替的に、取得された第1のデータセットは、時間的経過中の各日について対象者の空腹時血糖測定値を表すBG値を含み得、命令は、空腹時BG値とみなされる要件のセットを満たすかを各BG値について評価すること、例えば、空腹時値を示す朝の時間範囲内のタイムスタンプを提供することと、空腹時BG値とみなされることに関して要件のセットを満たしていた各空腹時BG値について、対応する1日のTGL値を作成することと、少なくとも2つの1日のTGL値の平均を取ることによって全体的なTGLを計算することと、をさらに含む。
【0043】
ADDR自体の提供は、滴定規則を実装する方法に基づき得、全体的なTGLが、対象者のUTRよりも大きい場合に、更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインに、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを加えたものとして決定される。
【0044】
全体的なTGLが、対象者のUTRと対象者のLTRとの間にある場合に、更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインであると決定される。
【0045】
全体的なTGLが、対象者のLTRよりも小さい場合に、更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインから、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを差し引いたものとして決定される。
【0046】
調節日投与推奨を変更するように、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、少なくとも1IU、2IU、4IU、6IU、および8IUのセットから選択される。
【0047】
例えば、分割問題の問題に対処するため、方法は、時間的経過中の予め定義された期間内にタイムスタンプを有する注射履歴内の任意の注射を1つの注射と組み合わせることをさらに含み得る。追加的に、および注射を組み合わせる前に、本方法は、排出されたが注射された投与、例えば、プライミングおよびエアショットとはみなすことができない注射を認識して、その後無視するように適合されたフィルタリングプロセスが適用され得る。
【0048】
本発明の第2の態様では、長時間作用型または超長時間作用型のインスリン、例えば、それによって糖尿病を治療するためのシステムが提供される。時間的経過にわたる治療を必要とする対象者の複数のグルコース測定値が記録される。複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す対応する血糖タイムスタンプも記録される。データ構造は、対象者から取得される。デバイスは、グルコース測定値およびデータ構造を使用して、インスリンの更新される調整日投与推奨を対象者に提供し、投与ガイダンス要求の受信に応答して続行する。
【0049】
いくつかの実施形態では、デバイスは、対象者の目標グルコース濃度および実際のグルコース濃度の変化に応じて、インスリンの調整日投与推奨を自律的に更新し得る。
【0050】
したがって、本開示の一態様は、投与ガイダンス要求の受信に応答して、2型糖尿病の治療に使用される、長時間作用型または超長時間作用型インスリン(例えば、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク)を投与するためのデバイスを提供する。
【0051】
本開示の一態様では、デバイスは、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットを収集することを含む。いくつかの実施形態では、第1のデータ構造は、少なくとも対象者の体重、対象者の上限目標グルコース範囲、対象者の下限目標グルコース範囲、および対象者の過度の基礎化限界を含む。いくつかの実施形態では、第2のデータ構造は、少なくとも最新の調整日投与推奨および開始基礎投与を含む。いくつかの実施形態では、第1のデータセットは、少なくとも時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値を含み、血糖値履歴を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応する血糖タイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1のデータセットは、過去の低血糖事象(HYPO)のデータを含み、各低血糖事象について、対応する事象タイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれ事象が発生したかを表す。
【0053】
いくつかの実施形態では、第2のデータセットは、少なくとも対象者の基礎インスリン注射履歴を含み、これは時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含み、複数の注射における各それぞれの注射について、対応する投与事象量および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射が発生したかを表す注射タイムスタンプ、および対象者の最後の注射データ再読込を含む。
【0054】
本開示の別の態様では、デバイスは、様々なデータを得るために、対象者の少なくとも第1のデータ構造を収集する。いくつかの実施形態では、第1のデータ構造は、対象者の体重、対象者の上限目標グルコース範囲、対象者の下限目標グルコース範囲、対象者の過度の基礎化限界、最新の調整日投与推奨および/または対象者の開始インスリン基礎投与、対象者の基礎インスリン注射履歴、ならびに対象者の最後の注射データ再読込のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、注射履歴は、時間的経過の全部または一部の間に複数の注射を含む。複数の注射における各それぞれの注射について、対応する注射投与量および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射事象が発生したかを表す注射タイムスタンプが記録される。
【0055】
デバイスは、少なくとも評価情報のセット(例えば、第1のデータセット、第2のデータセット、第1のデータ構造、および第2のデータ構造)が収集された場合に、調整日投与推奨を対象に提供することによって続行する。本開示の別の態様は、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの調整日投与推奨を更新することが繰り返されることを提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、以下の構造(I)を有する。長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合した側鎖を含み、側鎖は以下の一般式であり、
-W-X-Y-Z
式中、Wは、
(i)残基が、そのカルボン酸基のうちの1つと共に、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基と一緒に、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と一緒に形成される、側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基、
(ii)アミド結合を介した鎖が、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合し、Wのアミノ酸残基が、Wが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも1つのアミノ酸残基を有するような中立側鎖を有するアミノ酸残基および側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択される、アミド結合を介して一緒に結合した2、3、または4つのα-アミノ酸残基で構成される鎖、または
(iii)XからB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合であり、式中、Xは、
(i)-CO-、
(ii)-COCH(COOH)CO-、
(iii)-CON(CH2COOH)CH2CO-、
(iv)-CON(CH2COOH)CH2CON(CH2CO OH)CH2CO-、
(v)-CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-、
(vi)-CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-、
(vii)-CONHCH(COOH)(CH2)4NHCO-、
(viii)-CON(CH2CH2COOH)CH2CO-、または
(ix)-CON(CH2COOH)CH2CH2CO-であり、
ただし、
(a)Wがアミノ酸残基またはアミノ酸残基の鎖である場合、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基とアミド結合を形成するか、または
(b)Wが共有結合である場合、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、B鎖中のN末端のa-アミノ基もしくは親インスリンのB鎖に存在するLys残基のアミノ基とアミド結合を形成し、
式中、Yは、
(i)a-(CH2)m-であって、式中、mが6~32の範囲内の整数である、a-(CH2)m-、
(ii)1、2、または3つの-CH=CH-基、および鎖中の炭素原子の総数が10~32の範囲内にあるように、十分な数の-CH2-基を含む二価炭化水素鎖、または
(iii)式-(CH2)vC6H(CH2)w-の二価炭化水素鎖であって、式中、vおよびwが整数であるか、もしくはvおよびwの合計が6~30の範囲内にあるように、それらのうちの1つがゼロである、二価炭化水素鎖であり、
式中、Zは、
(i)-COOH、
(ii)-CO-Asp、
(iii)-CO-Glu、
(iv)-CO-Gly、
(v)-CO-Sar、
(vi)-CH(COOH)2、
(vii)-N(CH2COOH)2、
(viii)-S03H、または
(ix)-P03Hであり、
その任意のZn2+複合体であるが、ただしWが共有結合であり、Xが-CO-である場合、Zは-COOHとは異なる。
【0057】
いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリンまたは超長時間作用型インスリンは、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク)である。いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリンまたは超長時間作用型インスリンは、中立プロタミンハゲドルンインスリン、レンテインスリン、ウルトラレンテインスリン、グラルギンインスリン、デテミルインスリン、ヒプリンボビンレンテ、およびヒプリンボビンPZIからなる群から選択される。
【0058】
本開示の一態様では、長時間作用型インスリンまたは超長時間作用型インスリンの使用について、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤と共に、同時または連続のいずれかで投与される。いくつかのの実施形態では、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤は、インスリン、増感剤(ビグアナイドおよびチアゾリジンジオンなど)、分泌促進剤(スルホニル尿素および非スルホニル尿素分泌促進剤など)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、およびペプチド類似体(注射可能なインクレチン模倣物、胃抑制ペプチド類似体、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、および注射可能なアミリン類似体など)からなる群から選択される薬剤であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク)であり、リラグルチドと共に同時または連続的に投与される。
【0059】
本開示の一態様では、デバイスは、対象者の注射履歴が、当日の投与事象タイムスタンプを有する対象者の1つ以上の投与事象を含む場合を除き、対象者の投与ガイダンス推奨をさらに更新する。
【0060】
本開示の別の態様では、デバイスは、血糖履歴時間的経過がギャップを含む場合に、対象者の再構成された血糖履歴をさらに計算する。再構成された血糖履歴は、各暦日の血糖履歴に基づいて計算した。
【0061】
いくつかの実施形態では、デバイスは、(i)投与ガイダンスベースラインに相当する注射量の1回以上の注射が生じる、(ii)1回以上の注射が投与ガイダンスベースライン以降で生じ、1回以上の注射の場合、当日および過去2日または3日または4日間にわたって生じる、(iii)投与ガイダンスベースライン以上の注射量を伴う1回以上の投与事象が生じるまで、方法が投与ガイダンス推奨の再推奨を提供することをさらに含むことをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
以下において、本発明の下記の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0063】
図1A】投与ガイダンス推奨を提供するシステムの第1の実施形態のプロセスおよび特徴のフローチャートを示す。
図1B】投与ガイダンス推奨を提供するシステムの第1の実施形態のプロセスおよび特徴のフローチャートを示す。
図2A】CGMデータに基づいてTGL値がどのように決定されるかを示す。
図2B】CGMデータに基づいてTGL値がどのように決定されるかを示す。
図3】対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するためのレジメンモニタデバイス、患者データを収集するためのデータ収集デバイス、対象者からのグルコースデータを測定する1つ以上のグルコースセンサ、および規定のインスリン薬剤レジメンに従ってインスリン薬剤を注射するために対象者によって使用される1つ以上のインスリンペンを含む、例示的なシステムトポロジーを示し、本開示の一実施形態によれば、上記で特定された構成要素は、任意で通信ネットワークを介して相互接続される。
図4】本開示の一実施形態による、規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するためのデバイスを示す。
図5A-5H】本開示の様々な実施形態による、規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するためのシステムのプロセスおよび特徴のフローチャートを集合的に提供する。
図6A-6D】本開示の一実施形態による、対象者に対する投与ガイダンス要求を集合的に示す。
図7】本開示の一実施形態による、規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するための、接続されたインスリンペン(複数可)、連続グルコースモニタ(複数可)、メモリ、およびプロセッサの例示的な統合システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
糖尿病は、世界の健康に関して流行、拡大している。糖尿病は、確立された滴定治療レジメンおよび医薬品により効果的に管理することができるが、最新の滴定推奨事項へのアクセスはは依然として限られている。本開示は、自己滴定を促進し、患者のエンパワーメントを強化するとともに、治療結果を低下させることなく、投与調節に必要な医師診察の頻度を低減することによって、治療コストを大幅に低減する、基礎的滴定のための患者中心のガイダンスシステムを提供する。
【0065】
患者の血糖(BG)レベルが所定の目標範囲内であることを保証する投与サイズを決定することは、基礎インスリン治療レジメンの滴定法の基本的目的である。比較的低い開始基礎投与に基づいて、投与は、目標範囲内の血糖レベルの治療目標まで調節される(主に上方)。
【0066】
基礎インスリン治療の滴定レジメンの基本的な設定は単純に見えるが、実際には、設定された目標を達成するために基礎インスリンを開始した患者の大部分にとって課題であることが示されている。
【0067】
課題には、適切な時点での血糖値の決定すること、決定された血糖値を適切に記録すること、適切な時点で適切な量のインスリンを摂取すること、適切な投与のサイズおよび時間を適切に記録すること、ならびに調整された基礎投与を正しく計算することの困難さが含まれ得る。また、患者が正しい時間に正しい投与を服用せず、注射しなかった分を補おうとすると、さらなるリスクが生じ、インスリンの注射量が多すぎるか少なすぎるかのどちらかとなり、いずれも滴定プロセスの成功に有害となる。
【0068】
それに応じて、患者がBG値の記録を容易にするシステムおよび設定を提供し、注射の投与ログの記録を容易にし、調整された投与推奨を正確に計算しやすくし、治療レジメン中に患者が起こしたエラーおよびミスを、より容易にかつ安全に適切に補償することを可能にする。
【0069】
以下に記載するシステム設定は、クラウドベースの大規模な糖尿病管理システムの一部として使用されるように適合されたバックエンドエンジンとして実装されるように設計されている。このようなクラウドベースのシステムにより、エンジンを常に最新の状態にすることができ(例えば、患者のスマートフォンなどで完全に稼働するアプリベースのシステムとは対照的に)、機械学習および人工知能などの高度な方法を実装することができるか、またデータをより大きな「デジタルヘルス」設定で他のサービスと組み合わせて使用することができる。このようなクラウドベースのシステムは、理想的には、推奨投与を求める大量の患者の要求を処理するため、目的のサービスを可能な限り迅速に提供し、利用可能なリソースを効果的に使用するようにシステムを設定することが重要である。
【0070】
全体として、2型糖尿病を有する患者およびその医療従事者(HCP)が、血糖値および以前に記録された投与で記録されたインスリン量に応じて、基礎インスリンを滴定することを支援する、糖尿病管理システムが提供される。完全なシステムは、クライアントおよびオペレーティングシステムの形態で相互作用するシステムと組み合わせて使用される本発明の主要な態様であるバックエンドエンジン(「エンジン」)を含む。
【0071】
クライアントは、エンジンの観点から投与ガイダンスを要求するソフトウェア構成要素である。クライアントは、必要なデータ(例えば、CGMデータ、注射データ、患者パラメータ)を収集し、エンジンからの要素ガイダンスを要求する。次にクライアントは、エンジンから応答を受信する。典型的な設定では、クライアントは、患者の医療デバイスとクラウドとの間のインターフェースとして作用する専用データハブであってもよく、または患者のスマートフォン上で動作するアプリであってもよい。クラウドオペレーティングシステムは、エンジンに、機能するために必要な最小限のリソース(メモリ、処理など)を提供する。クラウド・オペレーティング・システムは、エンジンがインストールされた環境として機能し、その展開を可能にする。
【0072】
真性糖尿病を治療する対象者のための長時間作用型または超長時間作用型インスリン調整日投与推奨(ADDR)を提供するためのシステムの以下の実施形態において、システムは、クラウドベースの大規模な糖尿病管理システムとしての実施に好適である。
【0073】
より詳細には、真性糖尿病を治療する対象者のための長時間作用型または超長時間作用型インスリン調整日投与推奨(ADDR)を提供するシステムが提供される。システムは、1つ以上のプロセッサおよびメモリを含み、メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、投与ガイダンス要求(DGR)の受信に応答して方法を実行する命令を含む。
【0074】
命令は、対象者のグルコース上限目標範囲レベル(UTR)、および対象者のグルコース下限目標範囲レベル(LTR)を含む第1のデータ構造を取得することと、現在の投与ガイダンスベースライン(DGB)、およびどの時点でDGBが作成されたかを表す対応するDGBタイムスタンプを含む第2のデータ構造を取得することと、を提供する。現在のDGBは、最新の調整日投与推奨、または開始基礎投与のいずれか、すなわち患者の担当医によって一般的に設定される基礎投与に対応し得る。上述したように、これらのデータ構造は、それぞれ患者のBGレベルの目標範囲である滴定レジメンの開始点(開始投与)を表す。
【0075】
更新されるADDRを計算できるようにするために、命令は、第1および第2のデータセットを取得することを提供する。第1のデータセットは、時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値を含み、それによって血糖履歴(BGH)を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定が、血糖(BG)値、および時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す対応する血糖タイムスタンプ(BGT)を含む。BG値は、独立のBG値の形態であり得、典型的には、朝に取得され、空腹時のBGを表す1日の測定値である。この場合、各BG値は、更新されるADDRの計算の基となる1日滴定グルコースレベル値(TGL)と称されるものを表す。あるいは、第1のデータセットは、皮膚装着型連続グルコースモニタリング(CGM)デバイス(例えば、5分毎にBG値を提供する)の使用によって、毎日にわたって収集された多数のBG値を含み得る。以下でより詳細に説明するように、CGMデータに基づいて、適切なアルゴリズムを使用して毎日のTGLを決定することができる。
【0076】
第2のデータセットは、対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)を含み、履歴は、対応する注射量(IA)、および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射が発生したかを表す注射タイムスタンプ(IT)により特徴付けされるそれぞれの注射を伴う時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含む。注射履歴が最新であることを保証するために、注射履歴再読込タイムスタンプを含む第3のデータ構造を取得することができる。注射データは、患者によって手動で取り込まれたか、または投与記録回路を備えた薬物送達デバイスを使用して取り込まれ得る。後者の場合、排出された投与に留意する必要があり、必ずしも注射された投与が記録されるとは限らない。実際に、この不正確さは、手動で生成された投与ログにも適用される可能性がある。注射されていないプライミング/エアショットの問題については、以下に記載する。
【0077】
命令はさらに、データ構造およびデータセットを評価し、それによって、投与ガイダンス要求に必要な全てのデータタイプが存在し、指定範囲内にあるかを決定することを提供する。これには、BGデータ、注射データ、目標グルコース範囲の上限および下限、ならびに最新の調整日投与推奨または開始基礎投与が含まれる。これは、何かが欠けている、または明らかに間違っている、または不十分である場合に、リソースが要求を処理しようと試みて無駄にならないようにするためである。要求が、データタイプを欠くか、または正常とみなされるものよりも1桁大きいパラメータを有する場合、エンジンは、対応するエラーメッセージを返す。全てのデータタイプが存在し、範囲内にある場合(品質および/または数量はここでは考慮されない)、確認はデータを引き継ぎ、さらなる処理を行う。
【0078】
ADDRを計算する前に、いくつかのデータ確認が実行され得、例えば、投与ガイダンス要求が、注射履歴再読込タイムスタンプから所定の制限時間内に受信されたかを確認する再読込確認し、投与ガイダンス要求が、DGBタイムスタンプから所定の制限時間内に受信されたかを確認する更新確認を実行する。
【0079】
さらに、1回以上の投与事象確認が実行され得、注射履歴(IH)中の個々の注射の数、タイミング、およびサイズが、予め決定された順守要件のセットに適合するかを決定する。
【0080】
本発明の例示的な実施形態の基本的な構成要素を記載したが、特定の実施形態は、図1を参照して記載され、フローチャートは、保存された命令が実行される場合に、どのように投与ガイダンス要求(DGR)が受信され、処理されるかを示す。機能の数、機能の順序、および特定の機能、例えば、各付与機能に組み込まれたルールは全て例示的なものである。例示的な実施形態では、記載された規則は、Nordisk A/SからのTresiba(登録商標)の滴定ラベル推奨事項に対応する。
【0081】
1.1 有効な要求確認
この機能は、上記に記載され、投与ガイダンス要求に必要な全てのデータタイプ(すなわち、クライアント入力データ)が指定範囲内に存在することを確認する。要求に適切なデータがない場合、機能はエラー メッセージを返す。それ以外の場合、確認はデータに沿って通過する。
【0082】
所与の設定については、確認に合格する要求には、追加の入力データ、例えばタイムスタンプ、所定の期間の最大基礎限界などを伴う報告された低血糖事象を含む「低履歴」、例えば1日または1週間あたり、要求時間(TOR)、個々の投与ガイダンス要求の一意の識別子、およびクライアントの一意の識別子を必要とし得る。
【0083】
1.2 最後の注射データ再読込確認
この機能は、注射履歴データが、例えば、直前の30秒など、所定の制限時間内に再読込されていることを確認し、これは、注射履歴データの最新の記録があることを確認するためのものである。
【0084】
1.3 注射履歴確認
この機能は、過去8時間以内に既に投与事象があったかを確認する。その場合、別の注射を推奨することは、Tresibaのラベル表示に違反し(すなわち、1日1回、少なくとも8時間の間隔を空けて注射すること)、ユーザを低血糖事象のリスクにさらすことになる。過去8時間以内に投与事象がない場合、確認はデータに沿って次の機能へ通過する。
【0085】
1.4 補充注射確認
Tresiba(登録商標)のラベルには、ユーザは1日1回、少なくとも8時間の間隔を空けて注射を受ける必要があると記載されている。ただし、患者が1日の服用を忘れた場合、その忘れた分は、通常の予定投与(8時間以上間隔を空けて服用)に加えて翌日に服用することができる。これに対応して、この機能は最初に、暦日内に投与事象が既に発生しているかを確認する。その場合は、前の暦日が投与事象のない日であるかを確認し、これが真実であれば確認に合格する。前の暦日に記録された投与事象がある場合、確認はエラーメッセージを返し、推奨投与を示さない。
【0086】
1.5 記録された低血糖事象確認
この機能は、リクエストと共に受信したデータ構造が、1つ以上の記録された低血糖事象に関する指標を含むかを確認する。1つ以上の低血糖事象が、予め設定された制限時間内に記録された場合、新しいADDRは計算されないが、現在のDGBは2UIのインスリンで調整される。低血糖事象は、患者によって手動で記録され得、および/またはCGMがBGデータ捕捉に使用される場合に自動的に登録され得る。後者の場合、患者は事象の確認を求められることがある。
【0087】
1.6 BGデータ品質確認
BGデータが、個々のBG測定値、例えば、空腹時BGに基づいて提供される場合、機能は、例えば、過去4日間に少なくとも3つの有効なBG値など、有効なBG値が、指定された最近の日数のうち、指定された日数の間記録されていることを確認する。BGデータがCGM測定値に基づいて提供される場合、CGMデータ品質確認を実行して、誤った滴定グルコースレベルの決定につながり得る許容できないデータギャップがないことを確認することができる。許容できないレベルのCGMデータ品質についての例示的な基準を以下に記載する。データ品質が最小閾値を満たすことができない場合、この機能はエラーメッセージを返し、投与ガイダンス要求は続行しない。あるいは、CGMデータ内のギャップを埋めることも可能である。これは、データ内にギャップがある(例えば、新しいセンサが準備されている)にもかかわらず、投与ガイダンス要求が次のCGMデータ品質確認に合格する確率を増加させるためである。適切な数学的アプローチの例を、以下により詳細に記載する。
【0088】
1.7 投与事象の識別
NovoPen(登録商標)6などの統合投与記録機能を備えるペンデバイスでは、その使用説明書に従って、患者はインスリンが押し出されるまでデバイスを刺激する必要がある。これらのプライミング「注射」(または「エアショット」)は、ペンによる実際の身体注射と区別されず、エンジンの観点からは、身体に個別に注射されたものとして見られる。患者が実際に注射した回数は、投与ガイダンスシステムによって、患者が投与調節レジメンを順守しているかを判断するために確認することができるパラメータの1つであるため、このようなプライミング「注射」をフィルタで除去できることが妥当である。このフィルタリングは、投与記録回路(NovoPen(登録商標)6に統合されたか、またはペン型デバイスに装着されるアドオン記録デバイスとして提供されるかを問わない)において行われ得、患者のスマートフォンアプリにおいて、通常、ADDRの要求の一部として送信される前に注射データおよびBGデータを受信および収集するよう適合されるデバイス、またはクラウドエンジンにおいて行われる。フィルタリングは通常、投与サイズに基づいて行われる(プライミング投与は通常、注射投与よりも(かなり)小さい、注射間の時間である)。この解析を実行する多くのアルゴリズムは、例えば、US 2019/0035500に開示されるように公知である。フィルタリングは、後続のフィルタリングでは何もフィルタリングされないため、複数のレベルで実装できる。「分割投与」、すなわち、患者が2回に分けて投与する(通常)高投与を「投与事象」に組み合わせる必要がある2回に分けて投与する場合も同様の考慮事項が適用され、投与事象の数に基づいて滴定レジメンを危険にさらす2回の個別の投与として数えないようにするように、以下を参照されたい。
【0089】
1.8 投与事象確認
この機能は、患者が注射のルーチンを十分に順守しているかを確認する。これは、最新のADDR以降少なくとも3回の投与事象を検出し、今日から過去4暦日のウィンドウまでに発生したことを確認する。確認中のこの追加の暦日は、通常予定される投与に加えて、投与のない日(例えば、忘れた日)を許容し、翌日に服用することができる。この時間枠に3回未満の投与事象がある場合(患者が複数日忘れたため)、この確認は失敗し、最新のADDRが再推奨される。また、単一のADDRのみが分配されることを保証し、それ以降に行われたいかなる注射も伴わないADDRに対して繰り返し要求するシナリオでは推奨のみが続く。
【0090】
1.9 DGB確認
この機能は、いつ最新のADDRが作成されたか、またはいつ開始基礎投与(SBD)値が設定されたかを確認する。最新のADDRが現在および過去7暦日以内に行われた場合、確認は合格となる。最新のADDRがこれより古い場合、新しいSBD量を入力し、投与ガイダンス要求プロセスをこの新しいポイントから再開する必要がある。新しいSBDは、現在のDGBとみなされる。
【0091】
1.10 順守確認
この機能は、データセット内の3つの最新の投与事象の注射量を確認し、それぞれが最新のADDRの量と少なくとも同じか、それ以上であることを確認する。いずれかの投与事象がこの量未満である場合、確認は失敗し、最新のADDRから量を再推奨する。これにより、過少投与による血糖レベルの上昇に基づいてエンジンが滴定されないことが保証される。
【0092】
1.11 多すぎる投与の確認
この機能は、過去48時間に、Tresiba(登録商標)ラベルの推奨に反する2回を超える投与事象があるかを確認する。過去48時間に2回を超える投与事象が記録されている場合、…XXX
【0093】
1.12 1日のTGLを決定する
BGデータが、個々のBG測定値、例えば、空腹時BGに基づいて提供される場合、機能は、有効なBG値が指定された時間範囲内に記録されていることを確認する。BGデータがCGM測定値に基づいて提供される場合、この機能はCGMデータセットを見て、可能であれば、例えば、TORから4日など、最新のADDRからの毎日または最大日数までのTGLを決定し、これは投与ガイダンス期間である。「日」は、暦日(一部の日は部分的)であるか、または例えば、TORなどから計算される24時間の期間であり得、下記を参照されたい。これは、例えば、3時間の「スライドウィンドウ」を、CGM測定値の1つのデータポイントにわたって適用することによって行い、図2Aおよび2Bを参照されたく、現在の時刻から最終投与調整時までの各3時間間隔の平均を計算する。例示的な実施形態では、1日のTGLは、以下に記載されるように、BGHデータ品質試験に合格した日間のみ決定される。各日の3時間の最小平均値は、TGL値として記録し、滴定に使用する。
【0094】
1.13 1日のTGL確認
この確認は、目標グルコース範囲パラメータの下限を下回る毎日のTGLを検索する。その場合、最新で与えられたADDRから2IUで次のADDRが減少する。そうでない場合、確認は次の機能に通過する。
【0095】
1.14 TGL平均決定
投与ガイダンス期間(例えば、過去4日間)について、有効な1日のTGL値の少なくとも最小数、例えば2つを決定した場合、少なくとも2つのTGL値の平均が計算される。
【0096】
1.15 滴定決定
この機能は全体的なTGL平均を利用し、それが目標範囲内にある場合、滴定決定は最新のADDRから+0IUとなる。TGL平均が目標範囲の上限を上回る場合、次のADDRは最新のADDRから2IU増加する。TGL平均が目標範囲の上限を下回る場合、次のADDRは最新のADDRから2IU減少する。
【0097】
1.16 最大制限確認
過量投与を防止するために、この機能は、所定の期間における所定の最大投与、例えば、先週のTresiba(登録商標)の300IUの最大投与を超過していないことを確認する。また、患者固有の値も要求データに含まれ得る。あるいは、機能は、次のADDRが患者の「過度の基礎化」制限(BW(kg)*OBL(IU/kg))を超えるかを確認し得る。そのためには、対象者の体重(BW)、および対象者の過度の基礎化限界(OBL)が、リクエストと共に受信したデータの一部として提供されていることが必要となる。
【0098】
1.17 出力
投与ガイダンス要求への応答としてのエンジンからの主出力は、実際はクライアントによって受信されたADDRであるが、例えば、CGM値および特定のエラーまたは警告メッセージ、または信頼性および安全性を改善するための検証データに基づいてエンジンによって計算されるTGL値など、患者の治療に直接関連する追加情報は、患者にとって有用であり得る。対応するように、出力は、以下のタイプのデータのうちの一つ以上を含み得る:ユーザID、処理ID、ADDR、日TGL、全体的なTGL、投与事象履歴、低血糖症履歴、警告およびエラーコード。
【0099】
上記「1.6BGデータ品質確認」を参照し、以下では、許容できないレベルのCGMデータ品質の例示的な基準について記載する。
【0100】
一般に、CGMデバイスを使用してT2DM患者にインスリン投与ガイダンスを提供する意思決定支援システムについては、上記のシステムは、インスリン、グルコース、および患者データを取り込み、患者がより正常な生活を送ることができるように、現在の基礎インスリン量を解析し、推奨するための後置投与ガイダンスエンジンである。
【0101】
取り込まれるグルコースデータは、連続的なグルコースモニタからであり得る。Dexcom G5などの現在のCGMは、5分ごとに連続的にデータを報告し、この連続するデータのストリームから滴定グルコースレベル(TGL)を決定し、最終的に推奨投与を決定するのはエンジンのタスクである。残念ながら、今日のCGMにはデータを保存するメモリがなく、受信側デバイス、例えば、患者のスマートフォンで起動しているモバイルアプリなどが受信していないデータは失われる。これは、TGLを安全に決定しながら、実際の使用で発生する可能性が高いこれらのギャップに対処する上で、課題となる。表1は、CGMデータのギャップを安全に処理するための実行か中止かを決める第1の例を示す。
【0102】
以下では、さらに例として、BGHデータ品質試験について記載する。
【0103】
投与ガイダンス期間(DG_PERIOD)は、要求時からDGBのタイムスタンプまでの期間として、例えば、最大~96:00時間として定義できる。DG_PERIODのBGHデータは、以下の可能な増分に分割される。BGH_PERIOD_1:0~24:00時間、BGH_PERIOD_2:-24:00~-48:00時間、BGH_PERIOD_3:-48:00~DGB時間/-72:00時間、およびBGH_PERIOD_4:-72:00~DGB時間/-96:00時間。
【0104】
データ品質試験を実行するため、各BGH_PERIODは重複しない6時間間隔に分割される。各間隔は、1つ以上のVALID_TGLの存在が、50%を超えるBGHデータポイントが存在する時間枠として定義されるか確認する。ウィンドウは、例えば3時間であり得る。6時間間隔に1つ以上のVALID_TGLがない場合、BGH_PERIOD全体がデータ品質試験に失敗となり、すなわち、各BGH_PERIODは個別に試験され、独自の合否決定が行われる。CGMデータ品質試験に関するさらなる詳細は、WO 2018/228932に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
上記のように、「投与事象」を作成するために投与を組み合わせる必要があり得る。例示的な実施形態では、例えば60分の実行中のDE_WINDOW内に収まるIH内の全ての注射は、現在の時間から始まるDOSE_EVENT量に集約される。DG_PERIOD内の注射のみがDOSE_EVENTに集約される。DOSE_EVENTタイムスタンプは、例えば、DE_WINDOW内の最新の注射のタイムスタンプである。表示されているように、プライミングおよびエアショットの放出事象が、DGRの一部として提出される前にIHから除外されない場合、これらの未注射投与は、注射投与の一部として計算される。あるいは、エンジンは、EP出願18198410.5に記載されるように、例えば、接続型ペンに対するルールベースのフロー確認検出など、その所有者フィルタ機能を備え得る。
【0106】
開示されたエンジンが安全であるだけでなく、標的とする患者の治療にも有効であることを保証するために、以前にTGLを決定できず、システムが投与ガイダンス推奨を決定することができなかったCGMデータの特定のギャップを埋めるために、追加のデータ処理ステップが適用され得る。データギャップ充填方法を利用することにより、エンジンは、基礎インスリン投与ガイダンスを分配するためにシステムが安全かつ有効である一方で、データがギャップを有することができる、より現実的な「現実世界」環境で、基礎投与ガイダンスを計算できる場合がある。
【0107】
より詳細には、以下の方法の主概念は、グルコースプロファイルの最低準定常状態を定義し、それらに関してデータ間隔を埋めることである。提案されているモデルは、患者の一般的な傾向および典型的な行動を考慮に入れている。
【0108】
このモデルは、基礎療法のみを用いた研究開始時の2週間のCGMデータを使用した臨床試験の患者のCGMデータに基づいて開発された。データの解析は、患者の少なくとも30%がCGMデータにかなり大きなギャップを有することを示した。これらのギャップは、昼および夜の異なる時間であった。プロジェクトのリスク解析によると、これらのギャップは、絶食期間中にギャップが生じる可能性があるため、アルゴリズムの投与決定に重大な影響を及ぼすリスクがあり、その結果、滴定アルゴリズムがTGLを正しく特定できなくなり、誤った推奨を行い得る。解析を実行し、提案されたアプローチがCGMノイズに依存せず、低血糖事象に至らなかったことを確認することがタスクであった。
【0109】
CGMデータギャップ充填処理ステップは、いくつかのステップで構成される。第1に、CGMストリームで使用可能なデータ量を確認する。要件は、TGLの特定および滴定に必要な過去X日内に少なくとも30%のデータを有することである(例えば、現在のアルゴリズムの実装ではX=3)。第2に、CGMデータのギャップを特定し、それらをギャップに格納する必要がある。1~72の欠損点(1欠損点=2間隔=10分間ギャップ)まで補充できる。72の欠損点のギャップが大きく見えても、ギャップ充填アルゴリズムはCGMデータを正しく再構成できた。
【0110】
データ解析により、90パーセンタイルおよび75パーセンタイルの隣接点間の絶対値の差は、血糖変動の大きいユーザでは約10mg/dlおよび6mg/dlであり、一方で血糖変動の少ないユーザでは5mg/dlおよび3mg/dlのみであることが示された。
【0111】
次の論理ステップは、7~360分間の全てのギャップを見つけることである。再構成プロセスは、全てのギャップを個別に処理する。アルゴリズムは、以下のとおりである:
・ギャップの前の最後の点および後の最初の1つを取得する
・75パーセンタイルで特定のユーザの典型的なCGM変化率(ROC)を見つけ、
・最後の(最初の)点の値からROCを引いたものに欠損点の数(それぞれx3およびx4で示される)を引いた差として、最後の点および最初の点の差の最大値を計算し、
・2つの線の交点を見つけ、時間の値を保存する。
【0112】
時として、|x1-x2|の差がROC×欠損点の数よりも大きい場合、交点は時間間隔(t1、t2)の範囲外となる。90%パーセンタイルROCでアルゴリズムルーチンの上記の部分を繰り返す必要がある。アルゴリズムが90%パーセンタイルROCとの時間間隔(t1、t2)内で交点を達成できない場合、点は直線で接続される。その数理的な記述は、ギャップの時間が小さく、高血糖指数の食事から上昇している場合、最悪の場合のシナリオは直線(V字型の線の退化した場合)となる。
【0113】
さらに、データ解析では、真の絶食期間の値が、ある程度の妥当な量の点とともに谷を形成することが示されている。
【0114】
機械学習クラスタリング手法k-平均値を使用すると、点のクラスタを見つけることができる。クラスタ重心の無作為初期化を伴う標準k-平均アルゴリズムを使用した。クラスタを見つけるには、CGMデータを調整する必要がある。CGMデータを選別する最も簡単な方法は、ストリームの30パーセンタイルを超える全てのデータを無視することである。このアプローチの利点は、クラスタを見つけるのに十分なデータポイントが依然として存在する一方で、入力データに基づくカットオフラインがシフトすることである。
【0115】
クラスタ重心を定義することは、非常に強力なツールであり、クラスタ重心の最小値を見つけることで、クラスタの点が、より低く、より接近する傾向にある。最後のステップでは、最小クラスタの最小を定義し、この値xを格納する。
【0116】
クラスタ重心のギャップを定義した後、V字型の曲線で再充填することができ、Vの頭部は点[t、x]で定義される。患者の体は完全に再現できないため、全ての非線形は線で近似できる。
【0117】
所定のBGデータセットがBGデータ品質確認に合格すると、1日のTGL決定が実行されるであろう。その目的として、以下の2つの概念を記載する。上記の例示的な実施形態とは対照的に、60分のスライディングウィンドウを利用した。
【0118】
アプローチ1:
60分間のグルコースレベルの最低平均値(すなわち、24時間中に5分間隔で連続288回、13回測定した場合の最低値)を選択してTGLを検出する。このアプローチは、以下の式を使用して5分間隔の12回の連続する測定値の移動平均(MA)を計算し、
式中、Gは、グルコース測定値であり、添字iは、現在の試料である。00:00~23:59までの24時間の最小MA60min,iが、TGLであると決定される。このアプローチは、b)不規則な日課(シフト勤務者など)を有する人々、およびc)日課が通常の習慣から逸脱している人々(朝食をとらないなど)を軽減するという仮説を立てている。
【0119】
アプローチ2:
04.00~10.00の時間間隔で第1の急な曲線を特定することにより、TGLを検出し、これは朝食を表すと想定され、TGLを-90分~-60分の時間間隔での平均グルコースレベルとして決定する。このアプローチは、Dassauらが記載した後方差分を計算する。CGMデータを使用した食事検出のための[XX]:
式中、Gはグルコース測定値であり、tは、時間であり、Δtは、2つの試料間隔間の時間差であり、ならびに添字i,i-1およびi-2は、現在および2つの以前の試料である。dG/dtは、予め定義された期間内の全ての点について計算する。食事の開始は、dG/dtが最大になる場所と定義する。次にTGLは、-90分~-60分の時間間隔における測定値の平均として計算される。このアプローチは、a)規則的で予測可能な生活習慣を有する人ではより強固であると仮定されているが、生活習慣の不規則性が存在する場合には強固性は低くなる。
【0120】
この2つのアプローチは、複数のシナリオを作成し、(例えば、「典型的な」で予測可能な生活習慣を有する人々、「非定型的な」日常生活習慣を有する人々、インスリン感受性の変化、およびCGMセンサの偏差について)、各シナリオについて、仮想患者モデルに基づいてCGMデータセットを生成することにより、互いに対して検証した。
【0121】
次に、シミュレータからの継続的なグルコース出力に基づいて、結果の測定値を計算した。結果の測定値は、臨床治験の結果と比較した生理学的モデルの性能を評価し、治療決定アルゴリズムの安全性および性能を比較するために使用した。
【0122】
結果の測定1:重度の低血糖事象の頻度
結果の測定2:高すぎるまたは低すぎる推奨投与の重症度
結果の測定3:範囲内の時間
2つのアプローチをランク付けすると、アプローチ1は全てのシミュレーション試験で最良のパフォーマンスを示した。対応するように、アプローチ1はTGLを検出および決定するための実行可能な手段であると評価され、CGMに基づく基礎インスリンの滴定を実施するための安全なアプローチであると評価される。
【0123】
アプローチ1の実際的な適用は、インスリン投与要求についての要求に対して24時間の期間以前の3つを使用することである。すなわち、推奨投与時間=投与時間=t0。3つの移動平均は、1)t-24時間~t0、2)t-48時間~t-24時間、および3)t-72時間~t-48時間の間に見出される。TGL期間の間には、例えばTGL期間の間に少なくとも8時間など、時間差が必要である。これは、同じTGL期間が2つの24時間期間で使用されるシナリオを回避するためである。
【0124】
以下では、基礎インスリン投与推奨を安全かつ確実に実施するために、CGMからどのようなデータ品質が必要であるかを評価する。以下の前提が適用される:
・適応:T2DMを有する患者の基礎インスリン滴定
・滴定アルゴリズム:「シンプル」2-0-2アルゴリズム
・TGLの検出および決定へのアプローチ:アプローチ1、上記を参照されたい
・試験で使用される基礎インスリンはインスリンデグルデクであり、9時間の中央値のtmax、およそ25時間のt1/2を伴う非常に平坦な作用プロファイルを有する。
【0125】
原則として、これらの前提を考慮すると、TGLを検出および決定するための保守的なアプローチと組み合わせた保守的な滴定アルゴリズムは、それ自体で安全な自動基礎インスリン滴定を提供する必要がある。しかしながら、以下では、欠失箇所のあるCGMデータを用いて評価する。
【0126】
欠失箇所および最適化されたCGMデータ品質を伴うGCMデータの使用案は、公表済みの臨床治験NN1218-3853の既存の臨床GCMデータを使用して評価する:「2型糖尿病(onset(登録商標)2)を有する成人におけるインスリングラルギンおよびメトホルミンと組み合わせたインスリンアスパルトと比較したFIAspの有効性および安全性」。この治験のCGMデータは、以下の理由で適用可能である:
・治験には2型糖尿病患者のみが含まれる
・治験は、基礎インスリンが滴定される8週間の導入期間を有する
・8週間の導入期間終了時には、67対象者についてのCGMデータが14日間にわたって存在する
・使用したCGMデバイスはDexcom G4である
【0127】
食事、運動、睡眠、インスリン注射の典型的なスケジュールでの日常生活における糖尿病患者におけるBGの最大頻度(バンドエッジ頻度とも称される)は、0.9 10~3Hzである(K.-D.K.B.T.Gough DA,「Frequency characterization of blood glucose dynamics.Ann Biomed Eng.2003;31:91-97」)。したがって、内因性BG動態は、およそ18分(バンドエッジ頻度の逆数)より速くはない。したがって、約20分の連続データよりも短いデータギャップの欠損は、推奨投与の安全性に影響を及ぼさない。
【0128】
これらの考慮事項に基づいて、上記の表1に示すように、欠損CGMデータに基づくアクションのルールセットを提案できる。
【0129】
917個の個々のCGMデータセットNN1218-3853のうち、134個は、3日間連続でCGMデータがない最初の2日間に関するため、アクションは推奨されず、CGM値を含まない16個のデータセットは、以下の表に含まれない。残りの767個のデータセットのうち、推奨事項は表2に示され、継続的に期待できるものを表す必要がある。
【0130】
全体として、エンジンが3つの24時間のCGMデータに基づいて推奨投与を提供する時間の76%、アプリが2つの24時間のCGMデータに基づいて推奨投与を提供する時間の19%、および4%の時間でのみ、欠損CGMデータの量に基づく推奨投与を提供するアプリを省略する。
【0131】
図1を参照して、クラウドベースの大規模糖尿病管理システムの一部として使用されるよう適合されたバックエンドエンジンを提供するシステムが記載されている。
【0132】
対応する「フロントエンド」システムセットアップのための以下の例示的な実施形態において、バックエンドエンジンに入力データを提供するフロントエンドシステムを記載する。
【0133】
より詳細には、本システムは、皮膚装着型CGMユニット、投与記録機能を有する薬物送達注射デバイス、ならびに薬物送達デバイスからデータを無線で受信するよう適合された投与推奨アプリを実行するスマートフォンの形態の患者ユニット、および基礎インスリン滴定レジメンのための調整日投与推奨(ADDR)を要求し受信するためのクラウドエンジンと協働するCGMユニットおよび機能を含む。
【0134】
皮膚装着型CGMユニットは、BGデータのストリームを提供し、それを患者ユニットに無線で通信し、そこにBGログを作成するために保存する。BG値は、患者ユニットによって追加される対応するタイムスタンプで測定されるので、例えば5分毎に、アドホックに送信され得る。CGMユニットは、例えば、Dexcom G4またはG5デバイスであり得る。
【0135】
薬物送達注射デバイスは、例えば、Novo Nordisk A/Sによって提供されるNovoPen(登録商標)6ペンデバイスのように、統合された投与記録回路を含むか、またはWO2019/0057911に開示されたタイプのアドオン投与記録デバイスと組み合わせた薬物送達注射デバイスを含む組み立てられた形態であり得る。薬物送達注射デバイスは、例えば、NFCまたはBluetooth(登録商標)を使用して無線でデータを送信し得る。排出される各投与は、薬物送達注射デバイスによって決定され、対応するタイムスタンプが追加されて投与ログが作成される。薬物送達注射デバイスは、各薬物送達事象の終了時に、および/またはそのように要求された場合、例えば、デバイスまたは患者ユニットの作動によって開始されるようにデータを送信するように設定され得る。最新の投与に加えて、要求ログの全てまたは一部も送信され得る。投与推奨アプリは、例えば、欠損データに対処するため、ユーザがデータを手動で入力することも可能であり得る。調整日の推奨投与の更新が必要な場合、患者はアプリを使用してこれを要求し、その結果、例えば、Wi-Fiおよびルーターまたは電話ベースのデータ送信によって、上記のクラウドエンジンに投与ガイダンス要求が送信される。上記のように、要求は、処理のために対象者の最近の注射履歴再読込タイムスタンプを含む必要がある。例えば、要求を送信する直前に、患者は、例えばデバイスの作動によって、薬物送達デバイスから投与ログを強制的に再送することによって、投与ログを更新することができる。さらに、患者は、記録されていない投与が注射されたかを示すように促される。要求が送信されると、システム設定により、回答が即座に、例えば理想的には数秒以内に受信されるようにする必要がある。
【0136】
以下の本発明のさらなる例示的な実施形態において、本開示は、対象者に関連する情報を含むデータセットに関するデータ取得に依拠する。
【0137】
薬物ならびにシステム設定およびシステム構成要素に関して具体的に開示される以下の詳細は、対応する効果と共に、本発明の上述の第1の例示的な実施形態と組み合わせて利用され得ることに留意されたい。
【0138】
データセット(複数可)は、対象者の体重、対象者の上限目標グルコース範囲、対象者の下限目標グルコース範囲、対象者の過度の基礎化限界、対象者の最新の調整日推奨投与および/または開始基礎投与、対象者の基礎インスリン注射履歴を含み、注射履歴は、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含み、複数の注射における各それぞれの注射について、投与事象タイムスタンプ-対象者の最後の注射データの再読込は、対応する注射量および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射事象が発生したかを表し、対象者の複数のグルコース測定値は、時間的経過にわたって取得され、血糖値の履歴を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応するグルコースタイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す。
【0139】
図3は、そのようなデータを取得するための統合システム502の例を示し、図5は、そのようなシステム502の詳細を提供する。統合システム502は、対象者のグルコースデータの自律的なアルゴリズム分類を実施するための、1つ以上の接続されたインスリンペン104、1つ以上のグルコースモニタ102、メモリ506、および、およびプロセッサ(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、グルコースモニタ102は、連続グルコースモニタである。
【0140】
ここで、実施形態について詳細に参照し、その実施例を添付図面に図示する。次の詳細な説明では、本開示の完全な理解を提供するために多数の特定な詳細が記載されている。しかしながら、本開示はこれらの特定な詳細なしに実施され得ることが、当業者には明らかであろう。
【0141】
定義
また当然のことながら、第1、第2などの用語は本明細書では様々な要素を記述するために使用され得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、第1のフィルタは、本開示の範囲から逸脱することなく、第2のフィルタと称され得、同様に、第2のフィルタは、第1のフィルタと称され得る。第1のフィルタおよび第2のフィルタは両方ともフィルタであるが、同じフィルタではない。さらに、「対象者」、「個体」、および「ユーザ」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒトを指す。好ましくは、個体は成人個体である。
【0142】
インスリンペンという用語は、インスリンの統一性のない投与を適用するのに好適な注射デバイスを意味し、注射デバイスが、投与に関係するデータのログおよび通信用に適合される。
【0143】
本開示で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的とし、本発明を限定することを意図していない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数形も同様に含むことが意図される。本明細書で使用される場合、用語「および/または」とは、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の可能性のある任意および全ての組み合わせを指し、包含することも理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」とは、記載される特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または付加を除外しないことがさらに理解されるであろう。
【0144】
本明細書で使用される場合、用語「場合(if)」とは、文脈に応じて、「ときに(when)」または「際に(upon)」または「決定に応じて(in response to determining)」または「検出に応じて(in response to detecting)」を意味すると解釈され得る。同様に、語句「決定される場合」または「〔記載の状態または事象〕が検出される場合」とは、文脈に応じて、「決定する際に(upon determining)」、または「決定に応じて(in response to determining)」、または「〔記載の状態または事象〕を検出する際に(in response to detecting[the stated condition or event])」、または「〔記載の状態または事象〕の検出に応じて(in response to detecting[the stated condition or event])」を意味すると解釈され得る。
【0145】
「アルキル」という用語は、それ自体、または別の置換基の一部として、特に明記されない限り、直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせであり、これは、完全に飽和、一価または多価不飽和であり得、指定された炭素原子の数を有する二価、三価、および多価ラジカルを含み得る(例えば、C1-C10は、1~10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素ラジカルの例としては、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体が含まれる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、限定されないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高次の同族体および異性体が含まれる。「アルキル」という用語は、特に断りのない限り、「ヘテロアルキル」など、以下でより詳細に定義されるアルキルの誘導体を任意に含むことも意味する。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。例示的なアルキル基としては、一価不飽和C9-10、オレオイル鎖、または二価不飽和C9-10、12-13リノエイル鎖が含まれる。
「アルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるがこれに限定されないアルカンに由来する二価ラジカルを意味し、さらに「ヘテロアルキレン」として以下に記載される基を含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基が本発明において好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、短鎖アルキルまたはアルキレン基であり、一般に8個以下の炭素原子を有する。
【0146】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、その従来の意味で使用され、それぞれ酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残りの部分と結合するアルキル基を指す。
【0147】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体または他の用語と組み合わせて、特に明記されない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンを表す。さらに、ヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りの部分と結合する位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、これらに限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれる。さらなる例示的なシクロアルキル基としては、ステロイド、例えば、コレステロールおよびその誘導体が含まれる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定されないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが含まれる。
【0148】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それ自体、または別の置換基の一部として、特に明記されない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C1-C4)アルキル」という用語は、これらに限定されないが、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0149】
「アリール」という用語は、特に明記しない限り、単一または複数環(好ましくは1~3個の環)であり得る多価不飽和の芳香族置換基を意味し、それらは互いに融合されるか、または共有結合される。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、S、Si、およびBから選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール置換基(または環)を指し、窒素原子および硫黄原子は任意に酸化され、窒素原子は任意に四級化される。例示的なヘテロアリール基は、6員アジン、例えば、ピリジニル、ジアジニル、およびトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分と結合することができる。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾール、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが含まれる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、以下に記載される許容可能な置換基の群から選択される。
【0150】
簡潔にするために、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用される場合の用語「アリール」は、上記に定義されるアリール、ヘテロアリール、およびヘテロアレン環を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)で置換されるアルキル基を含む、アリール基がアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル等)と結合するラジカルを含むことを意味する。
【0151】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール、および「ヘテロアリール」)のそれぞれは、任意で示された種の置換型および非置換型の両方を含むことを意味する。これらの種の例示的な置換基を以下に提供する。
【0152】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカルの置換基(多くの場合アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称されるそれらの基を含む)は、一般に「アルキル基置換基」と称され、式中、m’が、かかるラジカルにおける炭素原子の総数である、ゼロから(2m’+1)の範囲数のH、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、ハロゲン、-SiR’R”R”’、OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、NR C(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、NRSO2R’、-CN、および-NO2から選択されるがこれらに限定されない様々な基のうちの1つ以上であり得る。R’、R”、R”’、およびR””は、好ましくはそれぞれ独立して、水素、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、例えば、1~3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が1つを超えるR基を含む場合、例えば、R基のそれぞれは、これらの基が1つを超えて存在する場合、各R’、R”、R’”、およびR””基と同様に独立して選択される。R’およびR’’が同一の窒素原子と結合される場合、それらは窒素原子と組み合わせて、5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は、限定されないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意味する。置換基の上記の考察から、当業者は、「アルキル」という用語は、ハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)などの水素基以外の基と結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解するであろう。これらの用語は、例示的な「アルキル基置換基」とみなされる基を包含し、例示的な「置換アルキル」および「置換ヘテロアルキル」部分の構成要素である。
【0153】
アルキルラジカルについて記載される置換基と同様に、アリールヘテロアリールおよびヘテロアレン基の置換基は、一般的に「アリール基置換基」と称される。置換基は、例えば、限定されないが、ゼロから芳香環系の開いた原子価の総数までの範囲数の置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R”’、OC(O)R’、-C(O)R’、CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、NR-C(NR’R”R’”)=NR””、NR C(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、NRSO2R’、-CNおよびNO2、R’、N3、CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1-C4)アルキルを含む炭素またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、またはB)を介してヘテロアリールまたはヘテロアレーン核と結合した基から選択される。上述の各基は、ヘテロアレン核またはヘテロアリール核に直接、またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、またはB)を介して結合され、R’、R”、R”’、およびR””は、好ましくは、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから独立して選択される。本発明の化合物が1つを超えるR基を含む場合、例えば、R基のそれぞれは、これらの基が1つを超えて存在する場合、各R’、R”、R’”、およびR””基と同様に独立して選択される。
【0154】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)、ホウ素(B)およびリン(P)を含む。
【0155】
記号「R」は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す一般的な略語である。
【0156】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載される任意の化合物において、絶対立体化学が明示的に示されていない場合、各中心は独立して、R配置もしくはS配置、またはそれらの混合物であり得ることが理解される。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であり得るか、または立体異性体混合物であり得る。さらに、EまたはZとして定義され得る幾何学的異性体を生成する1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載される任意の化合物において、各二重結合は独立して、それらの混合物であるEまたはZであり得ることが理解される。同様に、記載される任意の化合物において、全ての互変異性形態も包含されることが意図されることが理解される。
【0157】
インスリン分子内の修飾は、鎖(AまたはB)、位置、および天然アミノ酸残基を置換するアミノ酸残基の1文字または3文字のコードを述べることで表わされる。「desB30」または「B(1-29)」は、天然インスリンB鎖、またはB30アミノ酸を欠くその類似体を意味し、「A(1-21)」は、天然インスリンA鎖を意味する。したがって、例えば、A21Gly、B28Asp、desB30ヒトインスリンは、A鎖の21位のアミノ酸がグリシンで置換され、B鎖の28位のアミノ酸がアスパラギン酸で置換され、かつB鎖の30位のアミノ酸が欠失している、ヒトインスリンの類似体である。
【0158】
本明細書では、「アミノ酸残基」という用語は、形式上、ヒドロキシ基がカルボキシ基から除去されている、かつ/または形式上、水素原子がアミノ基から除去されている、アミノ酸である。
【0159】
インスリン類似体の例としては、B鎖の28位のProがAsp、Lys、Leu、Val、もしくはAlaで置換され、かつ/またはB29位のLysがPro、Glu、もしくはAspで置換されるようなものが含まれる。さらに、B3位のAsnは、Thr、Lys、Gln、Glu、またはAspで置換され得る。A21位のアミノ酸残基は、Glyで置換され得る。また、1つ以上のアミノ酸は、例えば、LysなどのA鎖/またはB鎖のC末端に付加され得る。B1位のアミノ酸は、Gluで置換され得る。B16位のアミノ酸は、GluまたはHisで置換され得る。インスリン類似体のさらなる例は、欠失類似体、例えば、ヒトインスリン中のB30アミノ酸が欠失されている(des(B30)ヒトインスリン)類似体、ヒトインスリン中のB1アミノ酸が欠失されている(des(B1)ヒトインスリン)インスリン類似体、des(B28-B30)ヒトインスリン、およびdes(B27)ヒトインスリンである。A鎖および/またはB鎖がN末端伸長を有するインスリン類似体、ならびにA鎖および/またはB鎖が、B鎖のC末端に付加された2つのアルギニン残基を有するなどのC末端伸長を有するインスリン類似体もインスリン類似体の例である。さらなる例は、言及された変異の組み合わせを含むインスリン類似体である。A14位のアミノ酸がAsn、Gln、Glu、Arg、Asp、Gly、またはHisであり、B25位のアミノ酸がHisであり、任意で1つ以上の追加の変異をさらに含むインスリン類似体は、インスリン類似体のさらなる例である。A21位のアミノ酸残基がGlyであり、インスリン類似体が2つのアルギニン残基でC末端でさらに伸長されている、ヒトインスリンのインスリン類似体は、インスリン類似体の例でもある。
【0160】
本発明によれば、基礎インスリンは、長時間作用型インスリンおよび超長時間作用型インスリンを含むか、またはそれからなる。
【0161】
「長時間作用型インスリン」には、天然に発生するインスリンの誘導体または類似体が含まれ、生理学的条件において、少なくとも部分的に、天然に発生するインスリンのインスリン受容体結合、好ましくは、天然に発生するインスリンのインスリン受容体結合の少なくとも0.01%、例えば、天然に発生するインスリンのインスリン受容体結合の少なくとも0.1%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、もしくは少なくとも150%、および/または少なくとも部分的に、天然に発生するインスリンの能力、好ましくは、天然に存在するインスリンの能力の少なくとも25%、例えば、天然に発生するインスリンの能力の少なくとも少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、もしくは150%を示し、かつ皮下注射した場合、生理学的条件で少なくとも5時間~18時間未満、例えば、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12.5時間、12.5時間超、少なくとも15時間、または少なくとも17.5時間、および18時間未満、5~17.5時間、10~17.5時間または15~17.5時間の平均終末半減期を示す。
【0162】
好ましくは、「長時間作用型インスリン」はまた、対象者の24時間の期間にわたる平均インスリン濃度(AUCF%)からの最大偏差を、≦±20、例えば≦±18、≦±17、≦±16、≦±15、≦±14、≦±13、≦±12、≦±11、≦±10、≦±9、≦±8、≦±7、≦±6、≦±5、≦±4、≦±3、≦±2、≦±1、≦±0.5、≦±0.1で誘発する。
【0163】
「超長時間作用型」インスリンには、天然に発生するインスリンの誘導体または類似体が含まれ、生理学的条件において、少なくとも部分的に、天然に発生するインスリンのインスリン受容体結合、好ましくは、天然に発生するインスリンのインスリン受容体結合の少なくとも0.01%、例えば、天然に発生するインスリンのインスリン受容体結合の少なくとも0.1%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、もしくは少なくとも150%、および/または少なくとも部分的に、天然に発生するインスリンの能力、好ましくは、天然に存在するインスリンの能力の少なくとも25%、例えば、天然に発生するインスリンの能力の少なくとも少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、もしくは150%を示し、皮下注射した場合、生理学的条件で少なくとも18時間、例えば、18時間超、少なくとも20時間、20時間超、22時間超、少なくとも22.5時間、または24時間超、少なくとも25時間、少なくとも27.5時間、少なくとも30時間、少なくとも32.5、少なくとも35時間、少なくとも37.5時間、または少なくとも40時間、または18~40時間、20~40時間、24時間~40時間の平均終末半減期を示す。
【0164】
好ましくは、「超長時間作用型インスリン」はまた、対象者の24時間の期間にわたる平均インスリン濃度(AUCF%)からの最大偏差を、≦±20、例えば≦±18、≦±17、≦±16、≦±15、≦±14、≦±13、≦±12、≦±11、≦±10、≦±9、≦±8、≦±7、≦±6、≦±5、≦±4、≦±3、≦±2、≦±1、≦±0.5、≦±0.1で誘発する。
【0165】
原則として、インスリンの半減期が長いほど、投与間隔(すなわち、注射間の時間間隔)にわたってグルコース低下作用がより安定し、均等に分布する。
【0166】
本発明によれば、基礎インスリンは、長時間作用型インスリンおよび超長時間作用型インスリンを含むか、またはそれからなる。
【0167】
本発明によれば、基礎インスリンは、該対象者において有益な血糖制御を達成する量で投与される。
【0168】
本発明によれば、該対象者における有益な血糖制御は、該基礎インスリンの投与後、少なくとも該対象者におけるHbA1c(グリコシル化ヘモグロビン)レベルによって決定される。
【0169】
本発明による基礎インスリンの使用およびその投与により、それを必要とする患者の割合がHbA1cの目標値に達する改善を達成することができる。
【0170】
本明細書で使用される場合、「U」という用語は、インスリンの単位(またはその類似体または誘導体)を指す。以下の番号の「U」の表記は、流体量1mlあたりの単位数で測定した濃度を示す(Joslin’s Diabetes Deskbook,2nd edition,Chapter 9 Using insulin to treat diabetes-general principles,page 268)。「U」の意味に関する詳細は、EMAの「「国際単位」または「単位」の使用に特に関連したインスリン類似体含有製品の効力標識に関するガイドライン」と題された文書(EMEA/CHMP/BWP/124446/2005)に記載されている(http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2009/09/WC500003654.pdfを参照されたい)。「IU」とは、WHO生物標準化専門家委員会(WHO Expert Committee on Biological Standardization)により定義されるヒトインスリンの国際単位を意味する。IUは、標準化されたパラメータである。市販のインスリンについては、ラベルは、特定のインスリン類似体の1U(単位)の含有量を示す。
【0171】
本明細書で使用される場合、「投与期間」という用語は、長時間作用型または超長時間作用型インスリンが所与の投与で投与される期間を意味する。
【0172】
「糖尿病」または「真性糖尿病」という用語は、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、妊娠糖尿病(妊娠中)、および高血糖を引き起こすその他の状態を含む。この用語は、膵臓が不十分な量のインスリンを産生する、または体の細胞がインスリンに適切に反応せず、細胞がグルコースを吸収するのを妨げる代謝性疾患に対して使用されます。その結果、血液中にグルコースが蓄積する。
【0173】
[発明を実施するための形態]
本開示に従って、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調整するためのシステム48の詳細な記載は、図3および4と併せて記載する。したがって、図3および4は、本開示によるシステムのトポロジーを集合的に示している。トポロジーでは、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するためのレジメンモニタリングデバイス(「レジメンモニタデバイス250」)(図3および4)、データ収集のためのデバイス(「データ収集デバイス200」)、対象者に関連する1つ以上のグルコースセンサ102(図3および7)、およびインスリン薬剤を対象者に注射するための1つ以上のインスリンペン104(図3および7)が存在する。本開示を通して、データ収集デバイス200およびレジメンモニタデバイス250は、明確にするためだけに別個のデバイスとして参照される。すなわち、データ収集デバイス200の開示された機能およびレジメンモニタデバイス250の開示された機能は、図1に示されるように、別個のデバイスに含まれる。しかしながら、実際には、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200の開示された機能およびレジメンモニタデバイス250の開示された機能は、単一デバイスに含まれることが理解されよう。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200の開示された機能および/またはレジメンモニタデバイス250の開示された機能は、単一デバイスに含まれ、この単一デバイスは、グルコースモニタ102またはインスリンペン104である。
【0174】
図3を参照すると、レジメンモニタデバイス250は、対象者の規定のインスリンレジメンにおいて長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調整する。これを行うために、レジメンモニタデバイス250と電気的に通信しているデータ収集デバイス200は、常時対象者に装着される1つ以上のグルコースセンサ102から発せられる自動的グルコース測定値を受信する。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200はまた、インスリン薬剤を注射するために対象者によって使用される、1つ以上のインスリンペン104からインスリン薬剤注射データを受信する。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200は、かかるデータをグルコースセンサ(複数可)102および対象者によって使用されるインスリンペン104から直接受信する。例えば、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200は、無線周波数信号を通じて無線でこのデータを受信する。いくつかの実施形態では、かかる信号は、802.11(WiFi)、Bluetooth、またはZigbee基準に従っている。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200は、かかるデータを直接受信し、データを解析し、解析したデータをレジメンモニタデバイス250へ通過させる。いくつかの実施形態では、グルコースセンサ102および/またはインスリンペン104は、RFIDタグを含み、RFID通信を使用してデータ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250と通信する。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200はまた、対象者の生理学的測定値210を取得または受信する(例えば、着用可能な生理学的測定デバイスから、磁力計またはサーモスタットなどのデータ収集デバイス200内の測定デバイスから)。本発明のいくつかの実施形態では、該インスリンペンデバイスは、FlexPen(登録商標)(複数可)またはFlexTech(登録商標)(複数可)である。FlexPen(登録商標)およびFlexTouch(登録商標)は、Novo Nordisk A/Sの商標である。
【0175】
いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/もしくはレジメンモニタデバイス250は対象者に近接しておらず、ならびに/または無線機能を有していないか、またはかかる無線機能は、グルコースデータ、インスリン薬剤注射データ、および/もしくは生理学的測定データを取得する目的で使用されない。かかる実施形態では、通信ネットワーク106は、グルコースセンサ102からのグルコース測定値をデータ収集デバイス200および/もしくはレジメンモニタデバイス250へ、1つ以上のインスリンペン104からのインスリン薬剤注射データをデータ収集デバイス200および/もしくはレジメンモニタデバイス250へ、ならびに/または1つ以上の生理学的測定デバイス(図示せず)からの生理学的測定値データをデータ収集デバイス200および/もしくはレジメンモニタデバイスに通信するために使用され得る。
【0176】
ネットワーク106の例としては、限定されないが、World Wide Web(WWW)、イントラネットおよび/または無線ローカルエリアネットワーク(LAN)および/もしくはメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)などの無線ネットワーク、ならびに無線通信による他のデバイスなどが含まれる。無線通信は、任意に、限定されないが、汎欧州デジタル移動電話方式(Global System for Mobile Communications)(GSM)、高速データGSM環境(EDGE)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)、高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)、エボリューションデータオンリー(EV-DO)、HSPA、HSPA+、デュアルセルHSPA(DC-HSPDA)、ロングタームエボリューション(LTE)、近距離無線通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、Bluetooth、Wireless Fidelity(Wi-Fi)(例えば、IEEE802.11a、IEEE802.11ac、IEEE802.11ax、IEEE802.11b、IEEE 802.11g、および/またはIEEE802.11n)、ボイスオーバーインターネットプロトコル(VoIP)、Wi-MAX、電子メール用プロトコル(例えば、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)、および/またはポストオフィスプロトコル(POP))、インスタントメッセージング(例えば、エクステンシブルメッセージングアンドプレゼンスプロトコル(XMPP)、インスタントメッセージングアンドプレゼンスレバレッジングエクステンション用セッション初期化プロトコル(SIMPLE)、インスタントメッセージングアンドプレゼンスサービス(IMPS))、および/またはショートメッセージサービス(SMS)、または本開示の出願日には未開発である通信プロトコルを含む任意の他の好適な通信プロトコルを含む、複数の通信基準、プロトコル、および技術のうちのいずれかを使用する。
【0177】
いくつかの実施形態では、対象者に取り付けられた単一グルコースセンサ102が存在し、データ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250は、グルコースセンサ102の一部である。すなわち、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250、ならびにグルコースセンサ102は、単一デバイスである。
【0178】
いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250は、インスリンペンの一部である。すなわち、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250、ならびにインスリンペン104は、単一デバイスである。
【0179】
もちろん、システム48の他のトポロジーが可能である。例えば、通信ネットワーク106に依存するのではなく、1つ以上のグルコースセンサ102および1つ以上のインスリンペン104は、情報をデータ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250に直接無線で送信し得る。さらに、データ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250は、ポータブル電子デバイス、サーバコンピュータ構成する、または実際にはネットワークで連結されているいくつかのコンピュータを構成し得るか、またはクラウドコンピューティングコンテキストの仮想マシンを構成し得る。したがって、図1に示されている例示的なトポロジーは、単に、当業者に容易に理解される様式で本開示の実施形態の特色を説明するのに役立つ。
【0180】
図3に開示されるシステム48はスタンドアローンで動作することができるが、いくつかの実施形態では、電子医療記録と連結して任意の方式で情報を交換することもできる。
【0181】
図4を参照すると、典型的な実施形態では、レジメンモニタデバイス250は、1つ以上のコンピュータを含む。図4に図示する目的のために、レジメンモニタデバイス250は、対象者の規定のインスリンレジメンに対する過去の順守を評価するための全ての機能を含む単一コンピュータとして表される。しかしながら、本開示はそのように限定されない。いくつかの実施形態では、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するための機能は、任意の数のネットワーク化コンピュータにわたって広がる、かつ/またはいくつかのネットワーク化コンピュータのそれぞれに存在する、かつ/または通信ネットワーク106にわたってアクセス可能な遠隔位置で1つ以上の仮想マシン上にホストされる。広範な異なるコンピュータトポロジーのうちのいずれかがアプリケーション用に使用され、全てのかかるトポロジーが本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0182】
いくつかの実施形態では、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するための例示的なレジメンモニタデバイス250は、1つ以上の処理ユニット(CPU)274、ネットワークまたは他の通信ネットワークインターフェース284、メモリ192(例えば、無作為アクセスメモリ)、1つ以上のコントローラ288によって任意にアクセスされる1つ以上の磁気ディスク記憶媒体および/または持続的デバイス290、前述の構成要素を相互接続するための1つ以上の通信バス213、ならびに前述の構成要素に電力供給するための電源276を含む。いくつかの実施形態では、メモリ192内のデータは、キャッシュなどの既知の演算技法を使用する、不揮発性メモリ290とシームレスに共有される。いくつかの実施形態では、メモリ192および/またはメモリ290は、中央処理ユニット(複数可)274に対して遠隔に位置する大量記憶媒体を含む。言い換えれば、メモリ192および/またはメモリ290に保存される一部のデータは、実際に、レジメンモニタデバイス250の外部であるが、ネットワークインターフェース284を使用してインターネット、イントラネット、または他の形態のネットワークもしくは電子ケーブル(図2に要素106として図示されている)を介して、レジメンモニタデバイス250によって電子的にアクセスされることができるコンピュータにホストされ得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するためのレジメンモニタデバイス250のメモリ192は、
-様々な基本システムサービスを取り扱うための手順を含むオペレーティングシステム202、
-インスリンレジメンモニタリングモジュール204、
-第1のデータ構造208であって、その第1のデータ構造が、対象者210(例えば、210-1、210-2、および210-X)の生理学的測定値を含む、第1のデータ構造208、
-第2のデータ構造218であって、その第2のデータ構造が、対象者の開始基礎投与220、対象者に対する複数の調整日投与推奨222、および複数の調整日投与推奨の各それぞれの調整日投与推奨222(例えば、222-1、222-2、および222-M)について、どの時点でそれぞれの調整日投与推奨が行われたかを表すタイムスタンプ223を表す、第2のデータ構造218、
-第1のデータセット224(例えば、血糖履歴)であって、第1のデータセットが、時間的経過にわたる対象者の複数のグルコース測定値、および複数のグルコース測定値の各それぞれのグルコース測定値230(例えば、226-1、226-2、および226-N)について、どの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表すタイムスタンプ228を含む、第1のデータセット224、
-第2のデータセット230(例えば、基礎インスリン注射履歴)であって、その第2のデータセットが、複数のインスリン薬剤記録であって、複数のインスリン薬剤記録(例えば、232-1、232-2、232-S)における各それぞれのインスリン薬剤記録232が、インスリン薬剤が対象者に注射される1つ以上のインスリンペン104に関連するそれぞれのインスリン薬剤注射事象234、およびどの時点でそれぞれの薬剤注射事象232が発生したかを表す注射事象タイムスタンプ236を含む、複数のインスリン薬剤記録を含む、第2のデータセット230を保存する。
【0184】
いくつかの実施形態では、インスリンレジメンモニタリングモジュール204は、任意のブラウザ(電話、タブレット、ラップトップ/デスクトップ)内でアクセス可能である。いくつかの実施形態では、インスリンレジメンモニタリングモジュール204は、ネイティブデバイスフレームワーク上で実行され、AndroidまたはiOSなどのオペレーティングシステム202を実行するレジメンモニタデバイス250上にダウンロードすることが可能である。
【0185】
いくつかの実装では、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するための、レジメンモニタデバイス250の、上述の識別データ要素またはモジュールのうちの1つ以上が、先述の記憶デバイスのうちの1つ以上に保存され、上述の機能を実施するための一組の命令に対応する。上述の識別されたデータ、モジュール、またはプログラム(例えば、一組の命令)は、別個のソフトウェアプログラム、手順、またはモジュールとして実装される必要はなく、これらのモジュールのさまざまなサブセットを、さまざまな実装で組み合わせるかまたはそうでなければ再配置され得る。いくつかの実装では、メモリ192および/または290は、上述の識別されたモジュールのサブセットおよびデータ構造を任意に保存する。さらに、いくつかの実施形態では、メモリ192および/または290は、上述されていない追加のモジュールおよびデータ構造を保存する。
【0186】
いくつかの実施形態では、対象者の規定のインスリンレジメン212における長時間作用型インスリン薬剤投与量216を自律的に調節するためのレジメンモニタデバイス250は、スマートフォン(例えば、iPhone)、ラップトップ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、または他の形態の電子デバイス(例えば、ゲーム機)である。いくつかの実施形態では、レジメンモニタデバイス250は、可動性ではない。いくつかの実施形態では、レジメンモニタデバイス250は、可動性である。
【0187】
いくつかの実施形態では、レジメンモニタデバイス250は、スマートフォンである。他の実施形態では、レジメンモニタデバイス250は、スマートフォンではないが、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、緊急車両コンピュータ、または他の形態もしくは有線もしくは無線ネットワークのデバイスである。いくつかの実施形態では、レジメンモニタデバイス250は、図4に示されるレジメンモニタデバイス250に見られる回路、ハードウェア構成要素、およびソフトウェア構成要素のうちのいずれかまたは全てを有する。簡潔性および明瞭性の観点では、レジメンモニタデバイス250にインストールされる追加のソフトウェアモジュールをより強調するために、レジメンモニタデバイス250の可能な構成要素のうちのいくつかのみが示される。
【0188】
レジメンモニタデバイス250は、空腹時および食後の血漿グルコースを制御するために、可能な限り正常な生理的インスリン分泌とできるだけ近い状態で一致させるために使用される、対象者の規定のインスリンレジメン212を含む第1のデータ構造210にアクセスおよび/または保存する。本開示では、規定のインスリンレジメン212は、長時間作用型インスリン薬剤投与216を指定する基礎インスリン薬剤投与レジメン214を含む。第1のデータ構造210はさらに、長時間作用型インスリン薬剤投与量を計算するために基礎として使用される、当初の目標空腹時血糖レベル226を指定する。
【0189】
いくつかの実施形態では、グルコース測定値226は、自律的に測定される。ABBOTT(「LIBRE」)によるFREESTYLE LIBRE CGMは、対象者の自律的なグルコース測定を行うためにグルコースセンサ102として使用され得る、グルコースセンサの例である。LIBREは、近づけると、近距離無線通信を介して最高8時間分のデータをリーダーデバイス(例えば、データ収集デバイス200および/またはレジメンモニタデバイス250)に送ることができる、皮膚上のコインサイズのセンサを用いる較正不要のグルコース測定を可能にする。LIBREは、全日常生活活動において14日間着用することができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリン薬剤は、基礎インスリン薬剤投与量レジメン214によって特定され、12~24時間の作用持続時間を有する単一インスリン薬剤、または集合的に12~24時間の作用持続時間を有するインスリン薬剤混合物からなる。かかる長時間作用型インスリン薬剤の例としては、限定されないが、Insulin Degludec(商品名Tresiba、NOVO NORDISK開発)、NPH(Schmid,2007,“New options in insulin therapy.J Pediatria(Rio J).83(Suppl5):S146-S155)、Glargine(LANTUS,March 2,2007,インスリングラルギン[rDNA由来]注射物、[処方情報]、Bridgewater,New Jersey:Sanofi-Aventis)、およびDetermir(Plank et al.,2005,「A double-blind, randomized,dose-response study investigating the pharmacodynamic and pharmacokinetic properties of the long-acting insulin analog detemir,」Diabetes Care 28:1107-1112)が含まれる。
【0191】
いくつかの実施形態では、第1のデータセット228における複数のグルコースレベル(例えば、値P)は、過去4時間、過去12時間、過去24時間、過去2日間、過去1週間、または過去2週間において対象者から測定されたグルコースレベルに限定される。言い換えれば、いくつかの実施形態では、第1のデータセット228は、過去4時間、過去12時間、過去24時間、過去2日間、過去1週間、または過去2週間からの対象者のグルコース測定値のみを有する。
【0192】
ここで、対象者の規定のインスリンレジメンにおける長時間作用型インスリン薬剤投与量を自律的に調節するためのシステム48およびデバイス250の詳細が開示されており、本開示の一実施形態によるシステムのプロセスおよび特徴のフローチャートに従い、図5A~5Hを参照して詳細が開示される。いくつかの実施形態では、システムのかかるプロセスおよび特徴は、図4に図示されるインスリンレジメンモニタリングモジュール204によって実行される。
【0193】
図5Aのブロック302を参照して、本開示の目標は、データ収集デバイス200およびレジメンモニタリングデバイス250などのデバイスを使用して、真性糖尿病を治療する対象者のための長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨を提供することである。図4に示すように、デバイスは、1つ以上のプロセッサ274およびメモリ192/290を含む。メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、投与ガイダンス要求の受信に応答して方法を実行する命令を含む。本発明のいくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも20歳である対象者を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明は、肥満度指数が35kg/m2以下の対象者を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明は、肥満度指数が約25kg/m2の対象者を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1年間、例えば少なくとも5年間、例えば少なくとも10年間、糖尿病に罹患している対象者を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明は、26週間の治療後、対象者について7以下のベースラインHbA1cレベルを達成することができる。いくつかの実施形態では、本発明による使用のための長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、インスリンペンデバイスの使用などによって、注射によって送達される。
【0194】
ブロック304を参照すると、いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、構造(I)の構造を有する。長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合した側鎖を含み、側鎖は以下の一般式であり、
-W-X-Y-Z
式中、Wは、
(i)残基が、そのカルボン酸基のうちの1つと共に、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基と一緒に、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と一緒に形成される、側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基、
(ii)アミド結合を介した鎖が、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合し、Wのアミノ酸残基が、Wが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも1つのアミノ酸残基を有するような中立側鎖を有するアミノ酸残基および側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択される、アミド結合を介して一緒に結合した2、3、または4つのα-アミノ酸残基で構成される鎖、または
(iii)XからB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合であり、式中、Xは、
(i)-CO-、
(ii)-COCH(COOH)CO-、
(iii)-CON(CH2COOH)CH2CO-、
(iv)-CON(CH2COOH)CH2CON(CH2COOH)CH2CO-、
(v)-CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-、
(vi)-CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-、
(vii)-CONHCH(COOH)(CH2)4NHCO-、
(viii)-CON(CH2CH2COOH)CH2CO-、または
(ix)-CON(CH2COOH)CH2CH2CO-であり、
ただし、
(a)Wがアミノ酸残基またはアミノ酸残基の鎖である場合、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基とアミド結合を形成するか、または
(b)Wが共有結合である場合、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、B鎖中のN末端のa-アミノ基もしくは親インスリンのB鎖に存在するLys残基のアミノ基とアミド結合を形成し、
式中、Yは、
(i)a-(CH2)m-であって、式中、mが6~32の範囲内の整数である、a-(CH2)m-、
(ii)1、2、または3つの-CH=CH-基、および鎖中の炭素原子の総数が10~32の範囲内にあるように、十分な数の-CH2-基を含む二価炭化水素鎖、または
(iii)式-(CH2)vC6H(CH2)w-の二価炭化水素鎖であって、式中、vおよびwが整数であるか、もしくはvおよびwの合計が6~30の範囲内にあるように、それらのうちの1つがゼロである、二価炭化水素鎖であり、
式中、Zは、
(i)-COOH、
(ii)-CO-Asp、
(iii)-CO-Glu、
(iv)-CO-Gly、
(v)-CO-Sar、
(vi)-CH(COOH)2、
(vii)-N(CH2COOH)2、
(viii)-S03H、または
(ix)-P03Hであり、
その任意のZn2+複合体であるが、ただしWが共有結合であり、Xが-CO-である場合、Zは-COOHとは異なる。
【0195】
代替的または追加的実施形態では、側鎖-W-X-Y-Zは、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基に結合と結合される。
【0196】
代替的または追加的実施形態では、側鎖-W-X-Y-Zは、親インスリンのB鎖に存在するLys残基のεアミノ基に結合と結合される。
【0197】
代替的または追加的実施形態では、側鎖-W-X-Y-Zは、B鎖の28位に存在するLys残基のεアミノ基と結合される。
【0198】
代替的または追加的実施形態では、側鎖-W-X-Y-Zは、B鎖の29位に存在するLys残基のεアミノ基と結合される。
【0199】
代替的または追加的実施形態では、側鎖-W-X-Y-Zは、B鎖の30位に存在するLys残基のεアミノ基と結合される。
【0200】
側鎖-W-X-Y-Zの副構造Wは、共有結合とすることができる。代替的に、Wは、側鎖にカルボン酸基を有し、合計4~10個の炭素原子を含むα-アミノ酸の残基であり得る。具体的には、Wはα-アミノ酸の残基であり、遺伝暗号によってコード化することができる。したがって、Wは、例えば、α-Asp、β-Asp、αGlu、およびγ-Gluからなる群から選択することができる。Wのさらなる選択肢は、例えば、α-hGluおよびδ-hGluである。
【0201】
代替的または追加的実施形態では、Wは、2つのα-アミノ酸残基からなる鎖であり、そのうちの1つは4~10個の炭素原子と、側鎖のカルボン酸基とを有し、一方、他方は2~11個の炭素原子を有するが、遊離カルボン酸基は有しない。遊離カルボン酸基を含まないα-アミノ酸残基は、中立でコード可能なα-アミノ酸残基であり得る。本実施形態によるWの例は、α-Asp-Gly、Gly-α-Asp、β-Asp-Gly、Gly-β-Asp、α-Glu-Gly、Gly-α-Glu、γ-Glu-Gly、Gly-γ-Glu、α-hGlu-Gly、Gly-α-hGlu、δ-hGlu-Gly、およびGly-δ-hGluである。
【0202】
代替的または追加的実施形態では、Wは、2つのα-アミノ酸残基からなる鎖であり、独立して4~10個の炭素原子を有し、その両方が側鎖にカルボン酸基を有する。これらのα-アミノ酸残基のうちの1つ、またはこれらの両方は、コード可能なα-アミノ酸残基であり得る。この実施形態によるWの例は、α-Asp-α-Asp、α-Asp-α-Glu、α-Asp-α-hGlu、α-Asp-β-Asp、α-Asp-γ-Glu、α-Asp-δ-hGlu、β-Asp-α-Asp、β-Asp-α-Glu、β-Asp-α-hGlu、β-Asp-β-Asp、β-Asp-γ-Glu、β-Asp-δ-hGlu、α-Glu-α-Asp、α-Glu-α-Glu、α-Glu-α-hGlu、α-Glu-β-Asp、α-Glu-γ-Glu、α-Glu-δ-hGlu、γ-Glu-α-Asp、γ-Glu-α-Glu、γ-Glu-α-hGlu、γ-Glu-β-Asp、γ-Glu-γ-Glu、γ-Glu-δ-hGlu、α-hGlu-α-Asp、α-hGlu-α-Glu、α-hGlu-α-hGlu、α-hGlu-β-Asp、α-hGlu-γ-Glu、α-hGlu-δ-hGlu、δ-hGlu-α-Asp、δ-hGlu-α-Glu、δ-hGlu-α-hGlu、δ-hGlu-β-Asp、δ-hGlu-γ-Glu、およびδ-hGlu-δ-hGluである。
【0203】
代替的または追加的実施形態では、Wは、3つのα-アミノ酸残基からなる鎖であり、独立して4~10個の炭素原子を有し、鎖のアミノ酸残基は、鎖が側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも1つの残基を有するような中立側鎖を有する残基および側鎖にカルボン酸基を有する残基の群から選択される。一実施形態では、アミノ酸残基は、コード化可能な残基である。
【0204】
代替的または追加的実施形態では、Wは、4つのα-アミノ酸残基からなる鎖であり、独立して4~10個の炭素原子を有し、鎖のアミノ酸残基は、鎖が側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも1つの残基を有するような中立側鎖を有するおよび側鎖にカルボン酸基を有する残基の群から選択される。一実施形態では、アミノ酸残基は、コード化可能な残基である。
【0205】
代替的または追加的実施形態では、Wは、尿素誘導体を介してB鎖のLys残基のε-アミノ基と結合することができる。
【0206】
側鎖-W-X-Y-Zの副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式-CO-の基であり得る。
【0207】
代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式COCH(COOH)CO-の基であり得る。
【0208】
代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式CON(CH2COOH)CH2CO-の基であり得る。
【0209】
代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式CON(CH2 CH2COOH)CH2CO-の基であり得る。
【0210】
本発明の長時間作用型インスリンの代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式CON(CH2COOH)CH2 CH2CO-の基であり得る。
【0211】
代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式CON(CH2COOH)CH2CON(CH2COOH)CH2CO-の基であり得る。
【0212】
代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-の基であり得る。
【0213】
代替的または追加的実施形態では、側鎖の副構造Xは、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基と、またはWが共有結合である場合、B鎖のN末端α-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成する、式CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-の基であり得る。側鎖-W-X-Y-Zの副構造Yは、式(CH2)m-の基とすることができ、式中、mは、6~32、8~20、12~20、または12~16の範囲の整数である。
【0214】
代替的または追加的実施形態では、Yは、1、2または3つのCH=CH-基、および鎖中の炭素原子の総数が6~32、10~32、12~20、または12~16の範囲内にあるように、十分な数のCH2基を含む二価炭化水素鎖である。
【0215】
代替的または追加的実施形態では、Yは、式(CH2)vC6H4(CH2)Wの二価炭化水素鎖であり、式中、vおよびwは整数であるか、またはvおよびwの合計が6~30、10~20、もしくは12~16の範囲内にあるように、それらのうちの1つがゼロである。
【0216】
代替的または追加的実施形態では、側鎖-W-X-Y-Zの副構造Zは、-COOHであり、ただし、Wが共有結合であり、Xが-CO-である場合、Zは-COOHとは異なる。一実施形態では、Zは、-COOHである。別の実施形態では、Zは、-CO-Aspである。別の実施形態では、Zは、-CO-Gluである。別の実施形態では、Zは、-CO-Glyである。別の実施形態では、Zは、-CO-Sarである。別の実施形態では、Zは、-CH(COOH)2である。別の実施形態では、Zは、-N(CH2COOH)2である。別の実施形態では、Zは、-SO3Hである。別の実施形態では、Zは、-PO3Hである。
【0217】
代替的または追加的実施形態では、Wは、α-Asp、β-Asp、α-Glu、γ-Gluからなる群から選択され、Xは、-CO-または-COCH(COOH)COであり、Yは、-(CH2)m-であり、式中、mは、12~18の範囲内の整数であり、Zは、-COOHまたは-CH(COOH)2である。
【0218】
代替的に、長時間作用型または超長時間作用型インスリン、好ましくは超長時間作用型インスリンは、該誘導体が、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合した側鎖を有し、側鎖は以下の一般式であり、
-W-X-Y-Z
式中、Wは、
残基が、そのカルボン酸基のうちの1つと共に、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基と一緒に、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と一緒に形成される、側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基であり、α-アミノ酸残基は、α-Asp、β-Asp、α-Glu、γ-Glu、α-hGlu、およびδ-hGluからなる群から選択され、
Xは、-CO-であり、
Yは、-(CH2)m-であり、式中、mは6~32の範囲内の整数であり、
Zは、-COOHであり、
その任意のZn2+複合体である。
【0219】
本明細書で親インスリンとも称されるインスリン誘導体のインスリン部分は、ヒトインスリンまたはブタインスリンなどの天然に発生するインスリンであり得る。代替的に、親インスリンは、インスリン類似体であり得る。親インスリン類似体の1つの群では、A21位のアミノ酸残基はAsnである。親インスリン類似体の別の群では、A21位のアミノ酸残基はGlyである。この類似体の群からの特定の例は、GlyA21ヒトインスリン、GlyA21 des(B30)ヒトインスリン、およびGlyA21ArgB31ArgB32ヒトインスリンである。
【0220】
親インスリン類似体の別の群では、B1位のアミノ酸残基は欠失されている。親インスリン類似体のこの群からの特定の例は、des(B1)ヒトインスリンである。
【0221】
親インスリン類似体の別の群では、B30位のアミノ酸残基は欠失されている。親インスリン類似体のこの群からの特定の例は、des(B30)ヒトインスリンである。
【0222】
親インスリン類似体の別の群では、B28位のアミノ酸残基はAspである。親インスリン類似体のこの群からの特定の例は、AspB28ヒトインスリンである。
【0223】
親インスリン類似体の別の群では、B28位のアミノ酸残基はLysであり、B29位のアミノ酸残基はProである。親インスリン類似体のこの群からの特定の例は、LysB28ProB29ヒトインスリンである。
【0224】
親インスリン類似体の別の群では、B30位のアミノ酸残基はLysであり、B29位のアミノ酸残基は、Cys、Met、Arg、およびLysを除く任意のコード可能なアミノ酸である。一例は、B29位のアミノ酸残基がThrであり、B30位のアミノ酸残基がLysであるインスリン類似体である。親インスリン類似体のこの群からの特定の例は、ThrB29LysB30ヒトインスリンである。
【0225】
親インスリン類似体の別の群では、B3位のアミノ酸残基はLysであり、B29位のアミノ酸残基はGluである。親インスリン類似体のこの群からの特定の例は、LysB3GluB29ヒトインスリンである。
【0226】
一実施形態では、親インスリンは、ヒトインスリン、des(B1)ヒトインスリン、des(B30)ヒトインスリン、GlyA21ヒトインスリン、GlyA21des(B30)ヒトインスリン、AspB28ヒトインスリン、ブタインスリン、LysB28ProB29ヒトインスリン、GlyA21ArgB31ArgB32ヒトインスリン、およびLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択される。
【0227】
本発明において有用な’347誘導体の例は、以下の化合物である:
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)14CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)15CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)17CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)18CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-Glu-N-(γ-Glu))des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(Asp-OC(CH2)16CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(Glu-OC(CH2)14CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(Glu-OC(CH2)14CO-)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(Asp-OC(CH2)16CO-)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-α-Glu-N-(β-Asp))des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(Gly-OC(CH2)13CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(Sar-OC(CH2)13CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)13CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
(NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)13CO)-β-Asp)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)13CO)-α-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-D-Glu)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)14CO)-β-D-Asp)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(N-HOOC(CH2)16CO-β-D-Asp)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-(N-HOOC(CH2)14CO-IDA)des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-[N-(HOOC(CH2)16CO)-N-(カルボキシエチル)-Gly]des(B30)ヒトインスリン、
NεB29-[N-(HOOC(CH2)14CO)-N-(カルボキシエチル)-Gly] des(B30)ヒトインスリン、および
NεB29-[N-(HOOC(CH2)14CO)-N-(カルボキシエチル)-β-Ala] des(B30)ヒトインスリン。
【0228】
本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)14CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)15CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。一実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)17CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)18CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-Glu-N-(γ-Glu))des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(Asp-OC(CH2)16CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(Glu-OC(CH2)14CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(Glu-OC(CH2)14CO-)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(Asp-OC(CH2)16CO-)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-α-Glu-N-(β-Asp))des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(Gly-OC(CH2)13CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(Sar-OC(CH2)13CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)13CO)-γ-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、(NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)13CO)-β-Asp)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)13CO)-α-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)16CO)-γ-D-Glu)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)14CO)-β-D-Asp)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(Nα-(HOOC(CH2)14CO)-β-D-Asp)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(N-HOOC(CH2)16CO-β-D-Asp)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-(N-HOOC(CH2)14CO-IDA)des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-[N-(HOOC(CH2)16CO)-N-(カルボキシエチル)-Gly]des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-[N-(HOOC(CH2)14CO)-N-(カルボキシエチル)-Gly]des(B30)ヒトインスリンである。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、NεB29-[N-(HOOC(CH2)14CO)-N-(カルボキシエチル)-β-Ala]des(B30)ヒトインスリンである。
【0229】
本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、本質的に亜鉛を含まない化合物の形態または亜鉛複合体の形態で提供される。六量体インスリンまたはインスリン誘導体の亜鉛複合体が提供される場合、2つのZn2+イオン、3つのZn2+イオン、または4つのZn2+イオンが各インスリン六量体と結合され得る。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンは、亜鉛複合体の形態の六量体インスリンまたはインスリン誘導体であり、各インスリン六量体は、2つの亜鉛イオン、3つの亜鉛イオン、4つの亜鉛イオン、5つの亜鉛イオン、6つの亜鉛イオン、7つの亜鉛イオン、8つの亜鉛イオン、9つの亜鉛イオン、または10個の亜鉛イオンと結合する。インスリン誘導体の亜鉛複合体の溶液は、そのような種の混合物を含む。
【0230】
’347誘導体に関連する調製、製剤化、薬理作用、および他の特徴に関する詳細は、WO2005/012347に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0231】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン化合物は、ヒトインスリンと本質的に類似する全体的な疎水性を有する。
【0232】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン化合物は、約0.02~約10、約0.1~約5、約0.5~約5、または約0.5~約2の範囲の疎水性指数k’relを有する。
【0233】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン化合物は、生理学的pH値、例えば、約6.5~約8.5の間隔のpH値で可溶性である。
【0234】
本発明によるインスリン様化合物が「生理学的pH値で可溶性」であると述べられる場合、それは、インスリン誘導体が、生理学的pH値で完全に溶解される注射可能なインスリン組成物を調製するために使用され得ることを意味する。そのような好ましい可溶性は、インスリン様化合物単独の固有の特性によるもの、またはインスリン誘導体とビヒクルに含有される1つ以上の成分との間の有利な相互作用の結果によるものであり得る。
【0235】
ブロック306を参照すると、いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))である。
【0236】
ブロック308を参照すると、いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリンまたは超長時間作用型インスリンは、a)中立プロタミンハゲドルンインスリン(NHPインスリン)(Humulin(登録商標)N,Novolin(登録商標)ge NPH)、b)レンテインスリン(Humulin(登録商標)L, Novolin(登録商標)、geレンテ)、c)ウルトラレンテインスリン(Humulin(登録商標)U,Novolin1M geウルトラレンテ)、e)デテミルインスリン(Levemir(登録商標))、f)ヒプリンボビンレンテ、およびg)ヒプリンボビンPZIからなる群から選択される。本発明の代替的または追加的実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン、好ましくは超長時間作用型インスリンは、WO2005/012347に開示されている化合物のうちのいずれか1つ以上であり、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの事例では、これらの化合物は「’347誘導体」と称される。
【0237】
ブロック310を参照すると、いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの使用について、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤と共に、同時または連続のいずれかで投与される。
【0238】
ブロック312を参照すると、いくつかのの実施形態では、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤は、インスリン、増感剤(ビグアナイドおよびチアゾリジンジオンなど)、分泌促進剤(スルホニル尿素および非スルホニル尿素分泌促進剤など)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、およびペプチド類似体(注射可能なインクレチン模倣物、胃抑制ペプチド類似体、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、および注射可能なアミリン類似体など)からなる群から選択される薬剤であるか、またはそれを含む。本発明の代替的または追加的実施形態では、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加的薬剤は、リラグルチドであるか、またはそれを含む。
【0239】
ブロック313を参照すると、いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))であり、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、リラグルチドと共に同時または連続的に投与される。いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン、および糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤は、同じ製剤中に同時に投与され得る。
【0240】
ブロック314を参照すると、いくつかの実施形態では、真性糖尿病は、2型真性糖尿病である。本発明の代替的または追加的実施形態では、インスリンの投与が有益となるであろう疾患または状態は、真性糖尿病、例えば1型真性糖尿病または2型真性糖尿病、高血糖を特徴とする他の状態(糖尿病前症、耐糖能障害、代謝症候群、肥満、悪液質、インビボベータ細胞損失/死亡、過度の食欲および炎症など)からなる群から選択される。
【0241】
図5Bのブロック316を参照すると、いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨は、特定のグルコース目標値を達成することである。いくつかの実施形態では、本発明は、治療前のベースラインHbA1cレベルが7%を超える、例えば約8%または9%である対象者を治療するために使用される。
【0242】
図5Bのブロック318を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、無線受信機をさらに含み、第1のデータセットは、対象者に取り付けられたグルコースセンサから無線で取得され、および/または第2のデータセットは、1つ以上のインスリンペンから無線で取得される。
【0243】
ブロック320を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、第1のデータ構造を取得することによって進行し、少なくとも(i)対象者の体重、(ii)対象者の上限目標グルコース範囲、(iii)対象者の下限目標グルコース範囲、および(iv)対象者の過度の基礎化限界を含む。
【0244】
ブロック322を参照すると、いくつかの実施形態では、過度の基礎化限界は、少なくとも1.0~0.5単位/kg、1.5~1.0単位/kg、0.75~0.25単位/kg、0.5~0単位/kg、または2.0~0.75単位/kgの範囲内である。
【0245】
ブロック324を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、第1のデータ構造を取得することによって進行し、少なくとも(i)対象者の体重、(ii)対象者の上限目標グルコース範囲、(iii)対象者の下限目標グルコース範囲、および(iv)対象者の過度の基礎化限界を含む。
【0246】
ブロック326を参照すると、いくつかの実施形態では、開始基礎投与量は、少なくとも直前の1日間、直前の4日間、直前の7日間、または直前の10日間以内に更新される。
【0247】
ブロック328を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、第1のデータセットを取得することによって進行し、少なくとも時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値を含み、血糖値履歴を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応する血糖タイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す。
【0248】
ブロック330を参照すると、いくつかの実施形態では、時間的経過は、当日および過去4日間を含む。
【0249】
図5Cのブロック332を参照すると、いくつかの実施形態では、時間的経過は、当日および直前の過去1日から10日の間を含む。
【0250】
ブロック333を参照すると、いくつかの実施形態では、血糖履歴時間的経過がギャップを含む場合、各暦日の血糖履歴に基づいて、再構成された血糖履歴を計算する。
【0251】
ブロック334を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、再構成された血糖履歴データの品質確認を実行し、データ品質確認が失敗した場合に、投与ガイダンス推奨は更新されない。
【0252】
ブロック335を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、更新される血糖履歴を第1のデータ構造に保存する。
【0253】
ブロック336を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、第2のデータセットを取得することによって進行し、(i)注射履歴が、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含む、対象者の基礎インスリン注射履歴、複数の注射における各それぞれの注射について、(ii)対応する投与事象量、および(iii)時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射事象が発生したかを表す投与事象タイムスタンプを含み、第2のデータセットは、(iv)対象者の最後の注射データ再読込をさらに含む。
【0254】
ブロック338を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、最後の注射データ再読込を、直前の30秒以内、直前の1分間以内、または直前の5分間以内で更新する。
【0255】
ブロック340を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、最後の注射データ再読込を、直前の30秒間以内、直前の1分間以内、または直前の5分間以内で更新する。
【0256】
ブロック342を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、時間的経過の5分間の期間以内にタイムスタンプを有する注射履歴内の任意の注射を1つの注射と組み合わせる。しかしながら、デバイスはまた、時間的経過の60分間または120分間の期間以内にタイムスタンプを有する注射履歴内の任意の注射を1つの注射と組み合わせることができる。
【0257】
図5Dのブロック344を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットを評価することによって進行し、それらが少なくとも(i)対象者の体重、(ii)時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値、(iii)対象者の注射履歴、(iv)対象者の最後の調整日用量推奨および/または開始長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与、(v)対象者の過度の基礎化限界、(vi)対象者の最後の注射データ再読込、(vii)対象者の上限目標グルコース範囲、および(viii)対象者の下限目標グルコース範囲を含む評価情報のセットを集合的に含むかを決定する。
【0258】
ブロック346を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含むと決定された場合に、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨を提供する。
【0259】
ブロック348を参照すると、いくつかの実施形態では、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含まないと決定された場合に、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨の更新は行われない。
【0260】
ブロック350を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、対象者の注射履歴が、直前の4時間以内、直前の8時間以内、直前の12時間以内、または直前の16時間以内に注射タイムスタンプを有する対象者の1回以上の注射を含まない限り、対象の投与ガイダンス推奨を更新する。
【0261】
ブロック352を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、対象者の注射履歴が、当日中に注射タイムスタンプを有する対象者の1回以上の注射を含まない限り、対象者の投与ガイダンス推奨を更新する。
【0262】
ブロック354を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、当日中に少なくとも1回の注射が発生し、注射履歴時間的経過の直前の1日間に注射が発生しなかった場合に、対象者の推奨用量ガイダンスを更新する。
【0263】
図5Eのブロック356を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、投与ガイダンス推奨の再推奨を提供する。
【0264】
ブロック358を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、(i)投与ガイダンスベースラインに相当する注射量の1回以上の注射が生じる、(ii)1回以上の注射が投与ガイダンスベースライン以降で生じ、1回以上の注射の場合、当日および過去2日または3日または4日間にわたって生じる、および/または(iii)投与ガイダンスベースライン以上の注射量を伴う1回以上の投与事象が生じるまで、方法が投与ガイダンス推奨の再推奨を提供することをさらに含むことを提供しない。
【0265】
ブロック360を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、1日の滴定グルコースレベルおよび全体的な滴定グルコースレベルを計算する。
【0266】
ブロック362を参照すると、いくつかの実施形態では、各暦日に対する1日の滴定グルコースレベルは、注射履歴時間的経過中の任意の予め決定された第1の期間における再構成された血糖履歴データの最低平均を選択し、投与ガイダンスベースラインのタイムスタンプよりも古いタイムスタンプを有する任意の再構成された血糖履歴データを除外することによって計算される。
【0267】
ブロック364を参照すると、いくつかの実施形態では、注射履歴時間的経過中で第2の予め決定された期間よりも大きいギャップがある場合、1日の滴定グルコースレベルは計算されない。
【0268】
ブロック366を参照すると、いくつかの実施形態では、予め決定された第2の期間は、10分間~40分間の間である。
【0269】
ブロック368を参照すると、いくつかの実施形態では、注射履歴時間的経過中で第2の予め決定された期間よりも大きいギャップがある場合、1日の滴定グルコースレベルは計算されない。
【0270】
ブロック370を参照すると、いくつかの実施形態では、予め決定された第3の期間は、1時間~5時間の間、または1時間~15時間の間である。
【0271】
図5Fのブロック372を参照すると、いくつかの実施形態では、注射履歴時間的経過中にギャップが存在し、これらのギャップが注射履歴時間的経過中の任意の暦日内で、少なくとも予め決定された第2の期間の長さであり、予め決定された第3の期間の長さ未満である場合、1日の滴定グルコースレベル平均化は、再構成された血糖履歴データを平均化する場合に、ギャップを含む任意の予め決定された第1の期間を省略する。
【0272】
ブロック374を参照すると、いくつかの実施形態では、予め決定された数の血糖測定値は、20~100の間である。
【0273】
ブロック376を参照すると、いくつかの実施形態では、注射履歴時間的経過中の任意の暦日が、予め決定された第3の期間よりも長いギャップを含む場合、または予め決定された数を超える血糖値測定値がない場合、1日の滴定グルコースレベルは計算されない。
【0274】
ブロック378を参照すると、いくつかの実施形態では、予め決定された第1期間は、15分間~120分間の間である。
【0275】
ブロック380を参照すると、いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルは、1日の滴定グルコースレベルの平均を取ることによって計算され、全体的な滴定グルコースレベルが決定できない場合、投与ガイダンス推奨は更新されない。
【0276】
図5Gのブロック382を参照すると、いくつかの実施形態では、更新される調整日投与推奨の要求を受信することに応答して、デバイスは、更新される調整日投与推奨のための注射量を決定するための新しい推奨手順を実行し、更新される調整日投与推奨機能は、少なくとも滴定グルコースレベルおよび最大基礎限界に基づいている。
【0277】
ブロック384を参照すると、いくつかの実施形態では、滴定グルコースレベルは、(i)上限目標グルコース範囲よりも大きい全体的滴定グルコースレベル、(ii)下限目標グルコース範囲以上である全体的滴定グルコースレベルおよび上限目標グルコース範囲以下である全体的滴定グルコースレベル、ならびに/または(iii)下限目標グルコース範囲より小さい1日の滴定グルコースレベルのうちのいずれか1つを含む。
【0278】
ブロック385を参照すると、いくつかの実施形態では、更新される調整日投与推奨を決定するために使用される上限目標グルコース範囲は、80~180mg/dL、90~180mg/dL、100~180mg/dL、90~200mg/dL、90~250mg/dL、または90~300mg/dLの範囲内である。
【0279】
ブロック386を参照すると、いくつかの実施形態では、更新される調整日投与推奨を決定するために使用される下限目標グルコース範囲は、50~70mg/dL、71~90mg/dL、71~100mg/dL、または61~90mg/dLの範囲内である。
【0280】
ブロック388を参照すると、いくつかの実施形態では、最大基礎限界は、過度の基礎化限界に対象者の体重を乗じた値からなる。
【0281】
ブロック390を参照すると、いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルが、対象者の上限目標グルコース範囲よりも大きく、最新の調整日投与推奨が対象者の最大基礎限界よりも小さい場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインに、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを加えたものとして決定される。
【0282】
ブロック391を参照すると、いくつかの実施形態では、調節日投与推奨を変更するように、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、少なくとも1単位、2単位、4単位、6単位、および8単位のセットから選択される。
【0283】
図5Hのブロック392を参照すると、いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルが、対象者の上限目標グルコース範囲よりも大きく、最新の調整日投与推奨が対象者の最大基礎限界以上である場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインであると決定される。
【0284】
ブロック394を参照すると、いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルが、対象者の上限目標グルコース範囲と対象者の下限目標グルコース範囲との間にある場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインであると決定される。
【0285】
ブロック396を参照すると、いくつかの実施形態では、1日の滴定グルコースレベルが、対象者の下限目標グルコース範囲よりも小さい場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインから、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを差し引いたものとして決定される。
【0286】
ブロック397を参照すると、いくつかの実施形態では、調節日投与推奨を変更するように、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、少なくとも1単位、2単位、4単位、6単位、および8単位のセットから選択される。
【0287】
ブロック398を参照すると、いくつかの実施形態では、デバイスは、少なくとも直前の1日間、直前の4日間、直前の7日間、または直前の10日間内に更新される調整日投与推奨を提供する。
【0288】
図6A~6Dは、調整日投与推奨を対象者に提供するための方法400(例えば、電子デバイスで実行される)の例を示す。いくつかの実施形態では、図6A~6Dの方法は、対象者が調整日投与推奨を以前に提供されていない場合に実行される。いくつかの実施形態では、図4の方法は、以前に提供された調整日投与推奨の再推奨を提供するために実行される。いくつかの実施形態では、図 6A~6Dの方法は、更新される調整日投与推奨を提供するために実行され、その後、1つ以上の以前の調整日投与推奨を提供する。
【0289】
図6Aを参照すると、デバイスは、投与ガイダンス要求402を受信する。いくつかの実施形態では、投与ガイダンス要求は、自動的に生成される。いくつかの実施形態では、ユーザは、投与ガイダンスについて特定の要求を実行する。デバイスは進行し、要求が有効であることの確認404を行う(例えば、デバイスは、要求に必要または必要なデータが要求に含まれていることを確認する-例えば、対象者の体重、対象者の上限目標グルコース範囲、対象者の下限目標グルコース範囲、対象者の過度の基礎化限界、以前の調整日投与および/または開始基礎インスリン投与、対象者の血糖履歴、対象者の基礎インスリン注射履歴、ならびに対象者の注射データ再読込のうちの1つ以上)。投与ガイダンス要求に必要なデータが含まれていない場合、デバイスはプロセス405を終了し、ガイダンスは提供されず、任意で、適切なデータを後で返すようにユーザに通知する。いくつかの実施形態では、デバイスは、どのデータが欠落しているかをユーザに通知するか、またはユーザがその医療デバイスについて支援を求めることを提案する。投与ガイダンス要求に適切な情報が含まれている場合、デバイスは、最後の注射データ再読込のタイムスタンプを確認406を行う。いくつかの実施形態では、デバイスは、最後の注射データ再読込が30秒間より前、または1分間より前、または5分間より前に発生した場合に、ガイダンスを提供しない。確認406が、注射データの再読込が適切な期間内に行われたことを示す場合、プロセスは継続される。
【0290】
デバイスは進行し、対象者の注射履歴の確認408を実行する。いくつかの実施形態では、対象者の注射履歴が、直前の4時間以内、直前の8時間以内、直前の12時間以内、または直前の16時間以内の注射タイムスタンプを有する1回以上の注射のタイムスタンプを含む場合、デバイスは、投与ガイダンス要求が補充注射のためのものであるかの確認410を行う。注射履歴中の以前の暦日が注射タイムスタンプを欠く場合、デバイスはプロセスを進行する。注射履歴中の以前の暦日が注射タイムスタンプを含む場合、デバイスはプロセス405を終了し、ガイダンスは提供されず、任意で後で返すようにユーザに通知する。注射履歴中の最新の注射タイムスタンプが4時間より前、または8時間より前、または12時間より前、または16時間より前に発生した場合に、デバイスは進行する。
【0291】
デバイスは、血糖履歴データの変換の実行412を行う。いくつかの実施形態では、この血糖履歴データのこの再構成は、欠損するデータのギャップを埋めることである(例えば、血糖測定値が完全に更新または記録されていない場合)。デバイスは、再構成された血糖測定値414(いくつかの実施形態では、血糖測定値は、連続的なグルコースモニタリングデータからなる)を進行し、データの品質確認416を実行する。品質確認が失敗した場合(例えば、血糖測定値および/または再構成された血糖測定値が不十分なとみなされる場合)、デバイスはプロセス405を終了し、ガイダンスを提供せず、任意で血糖モニタリングデバイスが困難に直面するか、または調整する必要があることをユーザに通知する。いくつかの実施形態では、品質確認は、総1日グルコースレベルを決定するのに十分な血糖または再構築された血糖データがあるかを評価する。品質確認で、血糖値データおよび/または再構成された血糖データが承認された場合に、デバイスは進行する。
【0292】
デバイスは、注射履歴再構成418を実行する。いくつかの実施形態では、再構成は、互いに5分以内に発生する、または互いに10分以内に発生する、または互いに15分以内に発生する全ての注射事象の注射量を、1つの注射事象と組み合わせることからなる(例えば、プライミング注射が、将来の計算のために別個の量として記録されないようにする)。デバイスは進行する。
【0293】
デバイスは、注射事象確認422を実行する。いくつかの実施形態では、注射事象確認は、以前の投与ガイダンス推奨が対象に提供されてから3回以上の注射事象が発生したかを決定することからなる。いくつかの実施形態では、注射事象確認は、現在の暦日および直前の4暦日中に3回以上の注射事象が発生したかを決定することからなる(例えば、以前の投与ガイダンス推奨に対する対象者の順守を確実にするため)。いくつかの実施形態では、注射事象確認は、投与ガイダンスベースライン以上の注射量で3回以上の注射事象が投与されたかを決定することからなる。いくつかの実施形態では、注射事象確認は、組み合わせられた他の実施形態のうちのいずれかまたはいずれかの全ての特徴からなる。デバイスは、対象者が注射事象確認に失敗したと決定した場合に、プロセス423を終了し、以前の投与ガイダンス推奨の再推奨を提供する。デバイスは、対象者が注射事象確認を順守したと決定した場合に、デバイスは進行する。
【0294】
デバイスは、調整日投与推奨確認424を実行する。いくつかの実施形態では、調整日投与推奨確認は、最新の調整日投与推奨が、直前の3暦日以内、直前の5暦日以内、直前の7暦日以内、直前の10暦日以内、または直前の14暦日以内に行われたかを決定することからなる。デバイスは、対象者が調整日投与推奨確認に失敗したと決定した場合に、デバイスはプロセス425を終了し、投与ガイダンス推奨のための新しい開始投与を決定する。デバイスは、対象者が調整日投与推奨確認を順守したと決定した場合に、デバイスは進行する。
【0295】
デバイスは、順守確認426を実行する。いくつかの実施形態では、順守確認は、対象者が調整日投与推奨を順守したかを決定することからなる(例えば、最新の調整日投与推奨と少なくとも同じ注射量を伴う3回以上の注射事象を投与することによって)デバイスは、対象者が順守確認に失敗したと決定した場合に、プロセス423を終了し、以前の投与ガイダンス推奨の再推奨を提供する。デバイスは、対象者が調整日投与推奨確認を順守したと決定した場合に、デバイスは進行する。
【0296】
デバイスは、過剰な再構成された血糖履歴データ428の除去を実行する。いくつかの実施形態では、過剰な血糖履歴除去は、検討から1つ以上の以前の日のデータ(例えば、最新の調整日投与推奨よりも古いデータ)を除去することからなる。
【0297】
機器は、変更された再構成された血糖履歴データに含まれる各暦日について、滴定グルコースレベル432を決定する。いくつかの実施形態では、1日の滴定グルコースレベルは、注射履歴時間的経過中の任意の予め決定された第1の期間における再構成された血糖履歴データの最低平均を選択し、投与ガイダンスベースラインのタイムスタンプよりも古いタイムスタンプを有する任意の再構成された血糖履歴データを除外することによって計算される。いくつかの実施形態では、再構成された血糖データ中に、注射履歴時間的経過中の第2の予め決定された期間よりも大きいギャップがある場合、デバイスは、1日の滴定グルコースレベル433を計算しない。いくつかの実施形態では、注射履歴時間的経過中にギャップが存在し、これらのギャップが注射履歴時間的経過中の任意の暦日内で、少なくとも予め決定された第2の期間の長さであり、予め決定された第3の期間の長さ未満である場合、1日の滴定グルコースレベル平均化は、再構成された血糖履歴データを平均化する場合に、ギャップを含む任意の予め決定された第1の期間を省略する。いくつかの実施形態では、注射履歴時間的経過中の任意の暦日が、予め決定された第3の期間よりも長いギャップを含む場合、または予め決定された数を超える血糖値測定値がない場合、デバイスは、1日の滴定グルコースレベルを計算しない。いくつかの実施形態では、予め決定された第1期間は、15分間~120分間の間である。いくつかの実施形態では、予め決定された第2の期間は、10分間~40分間の間である。いくつかの実施形態では、予め決定された第3の期間は、1時間~15時間の間である。いくつかの実施形態では、予め決定された数の血糖測定値は、20~100の間である。
【0298】
デバイスは、1日の滴定グルコース確認436を実行する。いくつかの実施形態では、1日の滴定グルコース確認は、1日の滴定グルコースレベルを対象者の下限目標グルコース範囲と比較することからなる。いくつかの実施形態では、注射履歴からの任意の1日の滴定グルコースレベルが、対象者の下限目標グルコース範囲よりも小さい場合に、デバイスは進行し、最新の調整日投与推奨から予め決定された単位数の基礎インスリン448を差し引くことにより、更新される調整投与推奨452を提供する。いくつかの実施形態では、1日の滴定グルコースレベルが全て対象者の下限目標グルコース範囲以上である場合に、デバイスは進行し、全体的な滴定グルコースレベル計算438を実行する。いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベル計算は、全ての1日の滴定グルコースレベルの平均を取ることからなる。
【0299】
デバイスは、次の調整日投与推奨計算442を実行する。いくつかの実施形態では、次の調節日投与推奨は、全体的な1日滴定グルコースレベルを上限目標グルコース範囲と比較することからなる。いくつかの実施形態では、全体的な1日滴定グルコースレベルが、上限目標グルコース範囲よりも大きい場合に、デバイスは進行し、最新の調整日投与推奨に予め決定された単位数の基礎インスリン444を加えることにより、更新される調整日投与推奨449を計算する。デバイスは続行し、過度の基礎化確認450を実行する。デバイスは、最新の調整日投与推奨が対象者の最大基礎限界以上であると決定した場合に、デバイスはプロセスを終了し、最新の調整日投与推奨の再推奨423を提供する。デバイスは、最新の調整日投与推奨が対象者の最大基礎限界未満であると決定した場合に、デバイスは更新された調整日投与推奨として、計算した調整日投与推奨444を提供する。いくつかの実施形態では、全体的な1日の滴定グルコースレベルが上限目標グルコース範囲以下である場合に、デバイスは進行し、最新の調整日投与推奨423の再推奨を提供する。いくつかの実施形態では、調整日投与推奨を変更するように、予め決定された単位数のインスリンは、少なくとも1単位、2単位、4単位、および6単位のセットから選択される。
【0300】
図を参照すると、統合システム502を用いて、対象者の自律的なタイムスタンプされたインスリン注射および血糖測定値の取得520が行われる。また、いくつかの実施形態では、規定のインスリンレジメンを対象者に適用するために使用される1つ以上のインスリンペン104からのデータは、複数の記録として取得入540が行われる。各記録は、対象者が規定のインスリン薬剤投与量レジメンの一部として受けた、注射された長時間作用型または超長時間作用型インスリン薬剤の量を特定するタイムスタンプされた事象を含む。グルコース測定値(例えば、血糖履歴)は、品質評価504で評価され、必要に応じて、再構成された血糖履歴が計算される。血糖履歴または再構成された血糖履歴は、非一時的記憶506に保存される。メモリ506は、1つ以上のプロセッサによって実行されると、投与ガイダンス要求の受信に応答して方法を実行する命令を含む。このように、グルコースデータは、対象者に関するさらなるデータ(例えば、対象者パラメータ512)と共に解析508が行われ、投与ガイダンス推奨(DGR)は、本開示の方法に従って提供510(例えば、長時間作用型インスリン薬剤投与を調節するために)が行われる。
【0301】
いくつかの実施形態では、投与ガイダンス要求は、少なくとも(i)対象者の体重(BW)、(ii)対象者の上限目標グルコース範囲(UTR)、(iii)対象者の下限目標グルコース範囲(LTR)、および(iv)対象者の過度の基礎化限界(OBL)を含む第1のデータ構造(例えば、対象者パラメータ)512を取得することを含む。いくつかの実施形態では、投与ガイダンス要求はまた、少なくとも(i)最新の調整日投与推奨(ADDR)および/または(ii)開始基礎投与(SBD)を含む第2のデータ構造226(投与ガイダンスベースライン)を取得することを含む。いくつかの実施形態では、投与ガイダンス要求はまた、第1のデータセット520を取得することを含み、それは少なくとも時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値を含み、血糖値履歴(BGH)を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応する血糖タイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す。いくつかの実施形態では、投与ガイダンス要求はまた、第2のデータセット540を取得することを含み、(i)注射履歴が、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含む、対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)、複数の注射における各それぞれの注射について、(ii)対応する投与事象量(IU)、および(iii)時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射事象が発生したかを表す投与事象タイムスタンプ(UTC)を含み、第2のデータセットは、(iv)対象者の最後の注射データ再読込をさらに含む。
【0302】
いくつかの実施形態では、投与ガイダンス要求はまた、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットを評価することを含み、それらが少なくとも(i)対象者の体重、(ii)時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値、(iii)対象者の注射履歴、(iv)対象者の最後の調整日用量推奨および/または開始長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与、(v)対象者の過度の基礎化限界、(vi)対象者の最後の注射データ再読込、(vii)対象者の上限目標グルコース範囲、および(viii)対象者の下限目標グルコース範囲を含む評価情報のセットを集合的に含むかを決定する。少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含まないと決定された場合に、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨の更新は行われない。少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含むと決定された場合に、方法は、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨510を提供することをさらに含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリンまたは超長時間作用型インスリンの投与は、1つのデータ構造を含み、1つのデータ構造は、(a)時間的経過にわたって取得された、治療を必要とする対象者の複数のグルコース測定値を記録することを含み(520)、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応するグルコースタイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す。投与は、(b)(i)対象者の体重、(ii)対象者の上限目標グルコース範囲、(iii)対象者の下限目標グルコース範囲、(iv)対象者の過度の基礎化限界、(v)対象者の最新の調整日投与推奨および/または開始インスリン基礎投与、(vi)注射履歴が、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含み、複数の注射における各それぞれの注射について、対応する注射量および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射が発生したかを表す注射タイムスタンプ、ならびに(vii)対象者の最後の注射データの再読込のデータ構造を取得すること(512)で続行する。投与は、(c)血糖測定値(例えば、血糖履歴または再構成された血糖履歴)の使用により続行され、上記のデータ構造は、(d)長時間作用型または超長時間作用型インスリン注射量の更新される調整日投与推奨(510)を対象者に提供する。
【0304】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの投与の更新される調整日投与推奨の提供は、1日間もしくは少なくとも1日間、例えば、2日間もしくは少なくとも2日間、3日間もしくは少なくとも3日間、4日間もしくは少なくとも4日間、5日間もしくは少なくとも5日間、6日間もしくは少なくとも6日間、7日間もしくは少なくとも7日間、8日間もしくは少なくとも8日間、9日間もしくは少なくとも9日間、10日間もしくは少なくとも10日間、11日間もしくは少なくとも11日間、12日間もしくは少なくとも12日間、13日間もしくは少なくとも13日間、14日間もしくは少なくとも14日間、15日間もしくは少なくとも15日間の投与期間に対して、または1日間~15日間の間、例えば、1日間~13日間の間、2日間~12日間の間、3日間~11日間の間、4日間~10日間の間、5日間~9日間の間の投与期間に対して、または6~8日間の間の投与期間に対して実行される。
【0305】
インスリンの投与は、例えば、体重(および/または身長)、空腹時血糖および性別(以後、高速血糖および/またはHbA1cレベルの結果に従って経験的に調整される)に基づいて計算され得る、様々な方法を介して決定され得る。初期投与標準または経験的に決定された投与を施した後、必要に応じて、目標血糖/血漿および/またはHbA1cレベルに到達して維持するために、血糖/血漿測定値に基づいて、さらなる投与が事前に決定された増分によって調整される滴定法を使用することがますます一般的になっている。ただし、このような滴定モデルは、常にガイダンスとしてのみ提供され、個々の調整はケースバイケースを基本として適用可能である。
【0306】
特定の実施形態
一様態では、本開示は、真性糖尿病を治療するために対象者に長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨を提供するためのデバイスを提供し、システムは、1つ以上のプロセッサおよびメモリを含み、メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、少なくとも(i)対象者の体重(BW)、(ii)対象者の上限目標グルコース範囲、(iii)対象者の下限目標グルコース範囲、および(iv)対象者の過度の基礎化限界(OBL)を含む第1のデータ構造を取得すること、少なくとも(i)最新の調整日投与推奨(ADDR)および/または(ii)開始インスリン基礎投与(SBD)を含む第2のデータ構造を取得することを含む、投与ガイダンス要求(DGR)の受信に応答して方法を実行する命令を含み、第1のデータセットを取得することは、時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値を含み、血糖履歴(BGH)を確立し、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応する血糖タイムスタンプは、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表し、第2のデータセットを取得することは、(i)注射履歴が、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含む、対象者の基礎インスリン注射履歴(IH)、複数の注射における各それぞれの注射について、(ii)対応する注射量(IU)、および(iii)時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射事象が発生したかを表す注射タイムスタンプ(UTC)を含み、第2のデータセットは、(iv)対象者の最後の注射データ再読込をさらに含み、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットを評価して、それらが少なくとも(i)対象者の体重、(ii)時間的経過にわたって取得された対象者の複数のグルコース測定値、(iii)対象者の注射履歴、(iv)対象者の最後の調整日用量推奨および/または開始長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与、(v)対象者の過度の基礎化限界、(vi)対象者の最後の注射データ再読込、(vii)対象者の上限目標グルコース範囲、および(viii)対象者の下限目標グルコース範囲を含む評価情報のセットを集合的に含むかを決定し、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含まないと決定された場合に、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨の更新は行われず、少なくとも第1のデータ構造、第2のデータ構造、第1のデータセット、および第2のデータセットが、評価情報のセットを集合的に含むと決定された場合に、方法は、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨を提供することをさらに含む。
【0307】
一態様では、本開示は、真性糖尿病の治療に使用するための長時間作用型または超長時間作用型インスリンを提供し、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの投与は、(a)時間的経過にわたって取得された、治療を必要とする対象者の複数のグルコース測定値を記録するステップであって、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定について、対応する血糖タイムスタンプが、時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す、ステップと、(b)少なくとも(i)対象者の体重(BW)、(ii)対象者の上限目標グルコース範囲(UTR)、(iii)対象者の下限目標グルコース範囲(LTR)、(iv)対象者の過度の基礎化限界(OBL)、(v)対象者の最新の調整日投与推奨(ADDR)および/または開始インスリン基礎投与(SBD)、(vi)注射履歴が、時間的経過の全てまたは一部の間に複数の注射を含み、複数の注射における各それぞれの注射について、対応する注射量および時間的経過中のどの時点でそれぞれの注射が発生したかを表す注射タイムスタンプ(UTC)、ならびに(vii)対象者の最後の注射データの再読込(IDR)を含む、データ構造を取得するステップと、(c)グルコース測定値および該データ構造を使用する、ステップと、(d)長時間作用型または超長時間作用型インスリン注射量の更新される調整日投与推奨を対象者に提供する、ステップとを含むか、またはそれらからなる。
【0308】
一態様では、本開示は、ステップ(d)を提供することが、1日間もしくは少なくとも1日間、例えば、2日間もしくは少なくとも2日間、3日間もしくは少なくとも3日間、4日間もしくは少なくとも4日間、5日間もしくは少なくとも5日間、6日間もしくは少なくとも6日間、7日間もしくは少なくとも7日間、8日間もしくは少なくとも8日間、9日間もしくは少なくとも9日間、10日間もしくは少なくとも10日間、11日間もしくは少なくとも11日間、12日間もしくは少なくとも12日間、13日間もしくは少なくとも13日間、14日間もしくは少なくとも14日間、15日間もしくは少なくとも15日間の投与期間に対して、または1日間~15日間の間、例えば、1日間~13日間の間、2日間~12日間の間、3日間~11日間の間、4日間~10日間の間、5日間~9日間の間の投与期間に対して、または6~8日間の間の投与期間に対して実行される。
【0309】
いくつかの実施形態では、該インスリンの投与は、ステップ(a)~(d)および以下のステップを含むか、またはそれらからなり、(e)ステップ(a)~(d)を繰り返す。
【0310】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)~(c)は同じ日に実行され、ステップ(d)では、該インスリンは、1~15日間、好ましくは5~9日間、6~8日間、または最も好ましくは7日間の間の投与期間で投与され、ステップ(a)~(c)と同じ日に開始され、該ステップ(a)~(d)は、該個体が必要とする限り連続的に繰り返される。
【0311】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン、好ましくは超長時間作用型インスリンは、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合した側鎖を有し、側鎖は以下の一般式であり、
-W-X-Y-Z
式中、Wは、(i)残基が、そのカルボン酸基のうちの1つと共に、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基と一緒に、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と一緒に形成される、側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基であり、α-アミノ酸残基は、α-Asp、β-Asp、α-Glu、γ-Glu、α-hGlu、およびδ-hGluからなる群から選択され、(ii)アミド結合を介した鎖が、B鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合し、Wのアミノ酸残基が、Wが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも1つのアミノ酸残基を有するような中立側鎖を有するアミノ酸残基および側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択される、アミド結合を介して一緒に結合した2、3、または4つのα-アミノ酸残基で構成される鎖、または(iii)XからB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基または親インスリンのB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合であり、式中、Xは、
(i)-CO-、
(ii)-COCH(COOH)CO-、
(iii)-CON(CH2COOH)CH2CO-、
(iv)-CON(CH2COOH)CH2CON(CH2COOH)CH2CO-、
(v)-CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-、
(vi)-CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CON(CH2CH2COOH)CH2CH2CO-、
(vii)-CONHCH(COOH)(CH2)4NHCO-、
(viii)-CON(CH2CH2COOH)CH2CO-、または
(ix)-CON(CH2COOH)CH2CH2CO-であり、
ただし、(a)Wがアミノ酸残基またはアミノ酸残基の鎖である場合、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、Wのアミノ基とアミド結合を形成するか、または(b)Wが共有結合である場合、下線付きカルボニル炭素からの結合を介して、B鎖中のN末端のa-アミノ基もしくは親インスリンのB鎖に存在するLys残基のアミノ基とアミド結合を形成し、式中、Yは、(i)a-(CH2)m-であって、式中、mが6~32の範囲内の整数である、a-(CH2)m-、(ii)1、2、または3つの-CH=CH-基、および鎖中の炭素原子の総数が10~32の範囲内にあるように、十分な数の-CH2-基を含む二価炭化水素鎖、または(iii)式-(CH2)vC6H(CH2)w-の二価炭化水素鎖であって、式中、vおよびwが整数であるか、もしくはvおよびwの合計が6~30の範囲内にあるように、それらのうちの1つがゼロである、二価炭化水素鎖であり、式中、Zは、(i)-COOH、(ii)-CO-Asp、(iii)-CO-Glu、(iv)-CO-Gly、(v)-CO-Sar、(vi)-CH(COOH)2、(vii)-N(CH2COOH)2、(viii)-S03H、または(ix)-P03Hであり、その任意のZn2+複合体であるが、ただしWが共有結合であり、Xが-CO-である場合、Zは-COOHとは異なる。
【0312】
いくつかの実施形態では、該インスリンは、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))である。
【0313】
いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリンまたは超長時間作用型インスリンは、a)中立プロタミンハゲドルンインスリン(NHPインスリン)(Humulin(登録商標)N,Novolin(登録商標)ge NPH)、b)レンテインスリン(Humulin(登録商標)L, Novolin(登録商標)、geレンテ)、c)ウルトラレンテインスリン(Humulin(登録商標)U,Novolin1M geウルトラレンテ)、e)デテミルインスリン(Levemir(登録商標))、f)ヒプリンボビンレンテ、およびg)ヒプリンボビンPZIからなる群から選択される。
【0314】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの使用について、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤と共に、同時または連続のいずれかで投与される。
【0315】
いくつかのの実施形態では、糖尿病の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤は、インスリン、増感剤(ビグアナイドおよびチアゾリジンジオンなど)、分泌促進剤(スルホニル尿素および非スルホニル尿素分泌促進剤など)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、およびペプチド類似体(注射可能なインクレチン模倣物、胃抑制ペプチド類似体、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤、および注射可能なアミリン類似体など)からなる群から選択される薬剤であるか、またはそれを含む。
【0316】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、LysB29(Nc-ヘキサデカンジオイル-y-Glu)des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))であり、長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、リラグルチドと共に同時または連続的に投与される。
【0317】
いくつかの実施形態では、真性糖尿病は、2型真性糖尿病である。
【0318】
いくつかの実施形態では、時間的経過は、当日および過去4日間を含む。
【0319】
いくつかの実施形態では、時間的経過は、当日および直前の過去1日から10日の間を含む。
【0320】
いくつかの実施形態では、方法は、最後の注射データ再読込を、直前の30秒間以内、直前の1分間以内、または直前の5分間以内で更新することをさらに含む。
【0321】
いくつかの実施形態では、方法は、対象者の注射履歴が、直前の4時間以内、直前の8時間以内、直前の12時間以内、または直前の16時間以内に注射タイムスタンプを有する対象者の1回以上の注射を含まない限り、対象の投与ガイダンス推奨を更新することをさらに含む。
【0322】
いくつかの実施形態では、方法は、対象者の注射履歴が、当日中に注射タイムスタンプを有する対象者の1回以上の注射を含まない限り、対象者の投与ガイダンス推奨を更新することをさらに含む。
【0323】
いくつかの実施形態では、方法は、当日中に少なくとも1回の注射が発生し、注射履歴時間的経過の直前の1日間に注射が発生しなかった場合に、対象者の推奨用量ガイダンスを更新することをさらに含む。
【0324】
いくつかの実施形態では、方法は、時間的経過中の5分間の期間以内にタイムスタンプを有する注射履歴内の任意の注射を1つの注射と組み合わせることをさらに含む。
【0325】
いくつかの実施形態では、方法は、血糖履歴時間的経過がギャップを含む場合、対象者の再構成された血糖履歴を計算することをさらに含み、再構成された血糖履歴は、各暦日の血糖履歴に基づいて計算される。
【0326】
いくつかの実施形態では、方法は、再構成された血糖履歴データの品質確認を実行することをさらに含み、データ品質確認が失敗した場合に、投与ガイダンス推奨は更新されない。
【0327】
いくつかの実施形態では、方法は、(i)投与ガイダンスベースラインに相当する注射量の1回以上の注射が生じる、(ii)1回以上の注射が投与ガイダンスベースライン以降で生じ、1回以上の注射の場合、当日および過去2日または3日または4日間にわたって生じる、(iii)投与ガイダンスベースライン以上の注射量を伴う1回以上の投与事象が生じるまで、方法が投与ガイダンス推奨の再推奨を提供することをさらに含む、提供することをさらに含む。
【0328】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも開始基礎投与および最新の調整日投与推奨を含むパラメータのセットから投与ガイダンスベースラインを選択することをさらに含み、選択されたパラメータは現在の時間に最も近いタイムスタンプを有する。
【0329】
いくつかの実施形態では、方法は、1日の滴定グルコースレベルおよび全体的な滴定グルコースレベルを計算することをさらに含み、(i)各暦日に対する1日の滴定グルコースレベルは、血糖履歴時間的経過中の任意の予め決定された第1の期間における再構成された血糖履歴データの最低平均を選択し、投与ガイダンスベースラインのタイムスタンプよりも古いタイムスタンプを有する任意の再構成された血糖履歴データを除外することによって計算され、血糖履歴時間的経過中で第2の予め決定された期間よりも大きいギャップがある場合、1日の滴定グルコースレベルは計算されず、血糖履歴時間的経過中にギャップが存在し、これらのギャップが血糖履歴時間的経過中の任意の暦日内で、少なくとも予め決定された第2の期間の長さであり、予め決定された第3の期間の長さ未満である場合、1日の滴定グルコースレベル平均化は、再構成された血糖履歴データを平均化する場合に、ギャップを含む任意の予め決定された第1の期間を省略し、血糖履歴時間的経過中の任意の暦日が、予め決定された第3の期間よりも長いギャップを含む場合、または予め決定された数を超える血糖値測定値がない場合、1日の滴定グルコースレベルは計算されず、(ii)全体的な滴定グルコースレベルは、1日の滴定グルコースレベルの平均を取ることによって計算され、全体的な滴定グルコースレベルが決定できない場合、投与ガイダンス推奨は更新されない。
【0330】
いくつかの実施形態では、予め決定された第1期間は、15分間~120分間の間である。
【0331】
いくつかの実施形態では、予め決定された第2の期間は、10分間~40分間の間である。
【0332】
いくつかの実施形態では、予め決定された第3の期間は、1時間~5時間の間、または1時間~15時間の間である。
【0333】
いくつかの実施形態では、予め決定された数の血糖測定値は、20~100の間である。
【0334】
いくつかの実施形態では、方法は、更新される調整日投与推奨の要求を受信することに応答して、更新される調整日投与推奨のための注射量を決定するための新しい推奨手順を実行することをさらに含み、更新される調整日投与推奨機能は、少なくとも滴定グルコースレベルおよび最大基礎限界に基づいている。
【0335】
いくつかの実施形態では、滴定グルコースレベルは、(i)上限目標グルコース範囲よりも大きい全体的滴定グルコースレベル、(ii)下限目標グルコース範囲以上である全体的滴定グルコースレベルおよび上限目標グルコース範囲以下である全体的滴定グルコースレベル、(iii)下限目標グルコース範囲より小さい1日の滴定グルコースレベルの(i)、(ii)、(iii)のうちのいずれか1つを含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、最大基礎限界は、過度の基礎化限界に対象者の体重を乗じた値からなる。
【0337】
いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルが、対象者の上限目標グルコース範囲よりも大きく、最新の調整日投与推奨が対象者の最大基礎限界よりも小さい場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインに、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを加えたものとして決定される。
【0338】
いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルが、対象者の上限目標グルコース範囲よりも大きく、最新の調整日投与推奨が対象者の最大基礎限界以上である場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインであると決定される。
【0339】
いくつかの実施形態では、全体的な滴定グルコースレベルが、対象者の上限目標グルコース範囲と対象者の下限目標グルコース範囲との間にある場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインであると決定される。
【0340】
いくつかの実施形態では、1日の滴定グルコースレベルが、対象者の下限目標グルコース範囲よりも小さい場合に、次に更新される調整日投与推奨は、決定された投与ガイダンスベースラインから、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンを差し引いたものとして決定される。
【0341】
いくつかの実施形態では、調節日投与推奨を変更するように、予め決定された単位数の長時間作用型または超長時間作用型インスリンは、少なくとも1単位、2単位、4単位、6単位、および8単位のセットから選択される。
【0342】
いくつかの実施形態では、長時間作用型または超長時間作用型インスリン投与ガイダンス推奨は、特定のグルコース目標値を達成することである。
【0343】
いくつかの実施形態では、デバイスは、無線受信機をさらに含み、第1のデータセットは、対象者に取り付けられたグルコースセンサから無線で取得され、および/または第2のデータセットは、1つ以上のインスリンペンから無線で取得される。
【0344】
いくつかの実施形態では、方法は、更新された血糖履歴を第1のデータ構造に保存することをさらに含み、方法は繰り返すことを基本としてで繰り返される。
【0345】
いくつかの実施形態では、更新される調整日投与推奨を決定するために使用される上限目標グルコース範囲は、80~180mg/dL、90~180mg/dL、100~180mg/dL、90~200mg/dL、90~250mg/dL、または90~300mg/dLの範囲内である。
【0346】
いくつかの実施形態では、更新される調整日投与推奨を決定するために使用される下限目標グルコース範囲は、50~70mg/dL、71~90mg/dL、71~100mg/dL、または61~90mg/dLの範囲内である。
【0347】
いくつかの実施形態では、方法は、開始基礎投与量が、少なくとも直前の1日間、直前の4日間、直前の7日間、または直前の10日間以内に更新することをさらに含む。
【0348】
いくつかの実施形態では、方法は、更新される調整日投与推奨が、少なくとも直前の1日間、直前の4日間、直前の7日間、または直前の10日間以内に提供することをさらに含む。
【0349】
いくつかの実施形態では、過度の基礎化限界は、少なくとも1.0~0.5単位/kg、1.5~1.0単位/kg、0.75~0.25単位/kg、0.5~0単位/kg、または2.0~0.75単位/kgの範囲内である。
【実施例
【0350】
実施例1-2型糖尿病における1日1回のインスリンデグルデク:簡易的または段階的滴定(BEGINTM:1度の簡易的使用)
【0351】
要約
導入インスリンデグルデク(IDeg)は、フラットで超長時間作用型プロファイルを有する新しい基礎インスリンであり、現在利用可能な基礎インスリンよりも頻度の低い自己測定血糖(SMBG)測定によるより簡易的な滴定アルゴリズムを用いて投与することが可能である。
【0352】
方法:26週間で、多施設、非盲検、無作為化した標的に対する治療の研究では、2つの異なる患者主導の滴定アルゴリズム:1回の朝食前SMBG測定(N=111)に基づく投与調整を伴う、「簡易的」アルゴリズム(IDeg簡易的)対3回の連続する朝食前SMBG値(N=111)に基づく調整を伴う、「段階的」アルゴリズム(IDeg段階的)を使用して、2型糖尿病を有するインスリン未処置の対象者にメトホルミンと組み合わせて1日1回投与したIDegの有効性および安全性を比較した。IDegを、両方の群で週1回の投与滴定を伴い、FlexTouch(登録商標)インスリンペン(Novo Nordisk A/S、Bagsvaerd、Denmark)を使用して投与した。
【0353】
結果:グリコシル化ヘモグロビンは、両群でベースラインから26週目まで減少した(-1.09%、IDeg簡易的;-0.93%、IDeg段階的)。IDeg簡易的は、HbA1cの低下においてIDeg段階的に対して非劣性であった[推定治療差(IDeg簡易的-IDeg段階的):-0.16%-ポイント[-0.39;0.07]95%CI)。空腹時血漿グルコースは減少(-3.27mmol/L、IDeg簡易的;-2.68mmol/L、IDeg段階的)し、両群間に有意差はなかった。確認した低血糖(1.60、IDeg簡易的;1.17、IDeg段階的事象/曝露の患者年[PYE])および夜間の確認した低血糖症(0.21、IDeg簡易的;0.10、IDeg段階的事象/PYE)の割合は低く、両群間に有意差はなかった。26週間後の1日インスリン投与は、0.61U/kg(IDeg簡易的)および0.50U/kg(IDeg段階的)であった。26週目までに群間で体重変化に有意な差は見られず(+1.6kg、IDeg簡易的;+1.1kg、IDeg段階的)、有害事象プロファイルに臨床的に関連する差はなかった。
【0354】
結論:IDegは有効であり、簡易的または段階的滴定アルゴリズムのいずれかを使用して十分に許容的であった。アルゴリズムの選択は個々の患者の特性と目標に基づいて行う必要がありますが、簡易的滴定アルゴリズムを使用して良好な血糖制御を達成する能力は、自己滴定、利便性の向上、およびコスト削減を通して患者のエンパワーメントを可能にする。
【0355】
導入
自己測定血糖(SMBG)検査の費用を調査する多くの研究で、それが糖尿病関連の支出の大部分を占めることが明らかになっている[15~18]。45,000人を超える患者を含む米国の遡及的データベース解析では、検査は糖尿病治療費用の27%を占め、血糖値検査およびインスリン関連費用の合計は2,850米ドル/患者/年であり、血糖値検査単独に起因するのは772米ドル/患者/年であった[18]。他の国では、検査は糖尿病治療費の割合がさらに高くなっている(例えば、カナダでは40%[16、17]、ドイツでは42%[15])。
【0356】
インスリンデグルデク(IDeg)は、フラットで超長時間作用型プロファイルを有する新しい基礎インスリンであり(現在、欧州、日本、メキシコ、および他の国々で承認されている)、これにより対象者は低血糖エピソードを減らして、血糖目標に近いグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを達成できる可能性があり得る[19~21]。したがって、IDegは、単一の朝食前SMBG値に基づいて週1回で滴定できると仮説され、自己滴定を助長し、患者のエンパワーメントを強化するだけでなく、投与調整に必要な血糖測定の頻度を低減することによって治療コストを大幅に削減する、簡易的で患者に焦点を合わせた滴定アルゴリズムを提供する。この研究では、26週間の治療後、2型糖尿病を有するインスリン未処置の対象者において、1日1回(OD)投与したIDegとメトホルミンについての2つの異なる自己滴定アルゴリズムの有効性および安全性を比較した:単一の朝食前SMBG測定に基づいて4単位[U]の投与調整が行われる「簡易的」アルゴリズムを、3回の連続する朝食前SMBG読み取り値の最低に基づいて2U(表2)の増分で投与調整が行われる「段階的」アルゴリズムと比較した。両群とも、IDegを週に1回調整した。この治験の目的は、IDeg第3a相開発プログラムで以前に採用されたものよりも少ないSMBG試験を伴う、より簡易的化した滴定スケジュールで良好な血糖制御を達成できるかを調査することにより、臨床診療におけるIDegの使用に関する追加のガイダンスを提供することであった。
【0357】
方法
本研究は、ヘルシンキ宣言(2008年)[22]およびICH医薬品の臨床試験の実施に関する基準(1996年)ガイドライン[23]に従って実施され、あらゆる研究関連の活動の開始前に適切な倫理委員会による事前の承認および患者の同意を書面にて事前に得た。適格な参加者には、2型糖尿病を有し、HbA1cが7.0~10.0%(包括的に)、および肥満度指数(BMI)が45.0kg/m2以内の18歳以上のインスリン未処置の男性または女性が含まれ、1000mg/日以上のメトホルミンを単独で、または1つまたは2つの他の経口糖尿病治療剤(OAD)(スルホニル尿素[SU]またはグリニド、ジペプチジルペプチダーゼ-4[DPP-4]阻害剤、□-グルコシダーゼ阻害剤またはチアゾリジンジオン[TZD]を含む)と組み合わせて、無作為化前の12週間以上で変更せずに投与した。参加者は、無作為化前の12週間以内にグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストを使用した、グルコース代謝を妨げる可能性のある治療を開始もしくは大幅に変更した、2型糖尿病以外の重度の疾患を有した、妊娠中または授乳中であった、または再発性の重度の低血糖/低血糖無症候性を有した場合は不適格とした。同意の撤回、包括/除外基準の不充足(誤って無作為化された)、不順守、または安全性上の懸念から治験責任医師の判断により、対象者は治験参加を中止することができる。無作為化後に中止した対象者については、補充しないこととした。この治験は、clinicaltrials.gov:NCT01326026に登録されている。
【0358】
研究デザインおよび治療
これは、メトホルミンと組み合わせた2つの異なる滴定アルゴリズムを使用して調整した、IDeg OD[IDeg 100U/mL、FlexTouch(登録商標)ペン、Novo Nordisk A/S、Bagsvaerd、Denmark]の有効性および安全性を比較した、多国籍(米国、スペイン、フィンランド、およびドイツで実施した)、第3b相、多施設、2群、並行群、非盲検、無作為化した標的に対する治療研究である。治験は26週間の期間で構成され、総研究期間はおよそ28週間(1週間のスクリーニングおよび7日間の追跡調査期間を含む)であった。メトホルミン以外の全てのOADを中止した後、対象者は、以下に定義するように、IDeg簡易的またはIDeg段階的インスリン自己滴定アルゴリズムに対して相互作用的音声/ウェブ応答システム(IV/WRS)によって1:1で無作為化した。対象者に、それぞれのアルゴリズムに従って自己滴定し、治験前メトホルミン投与を継続するように命令した。無作為化の第4週および第12週の時点で、両治療群の対象者は、HCPによる食事および運動カウンセリングを受けた。健康的な食事および運動計画を維持することの重要性を、各来院時に強調した。
【0359】
Novo Nordisk A/Sの安全性委員会は、治療を盲検化し、安全性調査を継続したが、必要に応じて、独立した臨時グループによるデータの盲検解除を要請できる。盲検インスリン滴定調査をNovo Nordisk A/Sにより実施した。
【0360】
IDegを両群とも10Uの開始投与でODを投与した。対象者が注射の間に最小8時間~最大40時間を維持する限り、注射期間の日々の変動は許容した。IDeg投与の自己調整は、表2に概説されるアルゴリズムに従って、両群で週1回実行した。IDeg簡易的群において、投与調整は、単一の朝食前SMBG測定に基づく。IDeg段階的群において、投与調整は、3回の連続する日の朝食前SMBG測定の最低に基づく。
【0361】
有効性および安全性評価
HbA1cは、来院1(スクリーニング)、2(無作為化)、14(第12週)および28(第26週)において、Bio-Radの高速液体クロマトグラフィーを使用して解析した。空腹時血漿グルコース(FPG)の血液試料は、来院2、14、および28でヘキソキナーゼ-UV法を使用して評価した。初診時、対象者にSMBG測定用の血糖測定器および使用説明を提供し、血糖測定は、本報告書で示したPG相当値を得るために、血糖センサを血漿グルコース値に較正して行った。対象者は、無作為化後の1週の朝食前にSMBG測定を実施し、来院2、14、および28の前に8ポイントのSMBGプロファイルも実施した。
【0362】
有害事象(AE)および低血糖エピソードを研究全体を通じて記録し、確認した低血糖を、重度の低血糖エピソード(他の人の支援が必要)およびPG値が3.1mmol/L(56mg/dL)未満のエピソードとして定義した。夜間に確認した低血糖エピソードは、00:01時から05:59時(包括的)の間に発生したエピソードである。実験室安全性変数、インスリン投与、および体重は、事前に指定さした間隔で記録した。2つの患者報告結果(PRO)質問票(デバイス固有の質問票IおよびII)を来院14および28で自己記入し、追加の治験エンドポイントとしてFlexTouch(登録商標)ペンに対する対象者の満足度を評価した。FlexTouch(登録商標)に対する患者の満足度を評価するために使用したPRO質問票は、FlexPen(登録商標)デバイス(Novo Nordisk A/S、Bagsvaerd、Denmark)に対する満足度を評価するために他の治験で以前使用されていた[24、25]。
【0363】
統計方法
218人の対象者で、プロトコルごとの(PP)解析セットの評価で0.4%の非劣性を示す85%の力があり(12週間を超える治療に曝露され、主要エンドポイントを導き出すために必要な有効な評価を受けた、主要なプロトコル違反のない全ての対象者として定義した)、PP解析セットに含まれないと予想される合計15%を占める。試料サイズは、サイズ2.5%の片側検定およびゼロ平均処理差の仮定の下でt統計を使用して決定した。データは、主要解析ではアルファ=0.025での非劣性の片側検定、および全ての他の解析ではアルファ=0.050での両側検定の95%信頼区間(CI)およびP値を使用して報告した。全ての有効性および患者の報告した結果のエンドポイントの統計解析は、全ての無作為化した対象者として定義した完全な解析セット(FAS)に基づいており、特に記載がない限り、治療企図(ITT)の原則に従った。HbA1cの変化に対する結果の頑健性を、PP解析セットの追加解析によって調査した。さらに、治験を完了した全対象者のセットの追加解析、ならびに治療のみおよびベースラインHbA1cを共変量とするFASに基づく単純なモデルを使用して頑健性を検討した。安全性エンドポイントは、安全性解析集団(SAS)に基づき要約し、1回以上のIDeg投与を受けた全対象者と定義し、FASに基づき解析した。
【0364】
26週間後のHbA1cのベースラインからの変化を、固定因子としてスクリーニング時の治療、地域、性別、および抗糖尿病療法、ならびに共変量として年齢およびベースラインHbA1cを用いた分散解析(ANOVA)法を使用して解析した。HbA1cの平均変化に対する治療差(IDeg簡易的-IDeg段階的)の両側95%CIの上限が0.4%以下であれば非劣性が確認されたものと判断した。FPGの変化および体重の変化を、主解析と同様のANOVAモデルを用いて解析したが、各測定項目における共変量をベースライン値とした。応答者エンドポイント(目標HbA1cを達成した対象者の割合および低血糖を伴わずに目標を達成した割合)を、主要解析と同じ因子および共変量を使用したロジスティック回帰モデルを用いて解析した。8ポイントのSMBGプロファイルには、朝食、昼食、および主夕食の開始前と開始90分後、就寝前、および翌日の朝食前の測定値が含まれる。スクリーニング時の治療、時間、治療と時間の相互作用、糖尿病治療、固定因子としての性別および領域、共変量としての年齢、ならびに無作為効果としての対象者の混合有効モデルを、8ポイントSMBGプロファイルデータに適合させた。このモデルから、治療による平均プロファイルおよび関連する治療差を推定し、調査した。治療に起因するAE、低血糖エピソード、実験室パラメータ、身体検査、心電図(ECG)、眼底検査/眼底撮影法、バイタルサイン、PRO(デバイス固有の質問票IおよびII)、およびインスリン投与を、記述統計で要約した。治療に起因する確認したおよび夜間に確認した低血糖エピソードの数を、対数リンク関数を備えた負の二項回帰モデル、および低血糖エピソードがオフセットとして治療下で発生したと考慮された期間の対数を使用して解析し、モデルには、固定因子としてのスクリーニング時の治療、性別、地域、および抗糖尿病治療、ならびに共変量としての年齢が含まれる。
【0365】
結果
対象者属性およびベースライン
参加者を、IDeg簡易的(N=111)およびIDeg段階的群(N=111)に1:1で割り当てた。無作為化した222人の患者うち、221人(99.5%)が治験剤を受けた。IDeg簡易的群の平均体重がわずかに高く、女性対象者が多かったことを除いて、ベースライン時に十分に一致した。IDeg段階的群の対象者は、糖尿病の平均期間がわずかに長かった。両群の参加者の大多数は、ベースライン時に2つのOADを服用しており(61/111例、55%)、各群の約21%が2つを超えるOADを服用しており、各群の約24%が1つのOADを服用していた。メトホルミン以外の治験前OADで最も多かったのはSUであった。大多数の対象者(89.2%[99/111]、IDeg簡易的;88.3%[98/111]、IDeg段階的)が治験を完了した。4人のIDeg簡易的対象者および3人のIDeg段階的対象者をAEのために中止し、5人のIDeg簡易的対象者および7人のIDeg段階的対象者を中止基準を満たしたため中止し、各群における3人を「その他」に分類される理由により中止した。
【0366】
HbA1cは、両群でベースラインから第26週まで、IDeg簡易的では7.0%から-1.09に、IDeg段階的では7.2%から-0.93%に減少した(図2a)。IDeg簡易的は、推定治療差(ETD)の95%CIの上限が0.4%未満であったため、HbA1cの低下においてIDeg段階的に対して非劣性であった:ETD(IDeg簡易的-IDegStep段階的)-0.16%-ポイント[-0.39;0.07]95%CI。結果の頑健性を測定するための解析は、FASの結果と一致していた。IDeg段階的(41.4%[46/111])よりも有意に多くのIDeg簡易的(56.8%[63/111])の対象者が、治験終了時に7.0%未満のHbA1cを達成した;推定されるオッズ比(IDeg簡易的/IDeg段階的):1.93[1.04;3.55]95%CI(P=0.0356)。低血糖を確認せずに7.0%未満のHbA1cを達成した患者の割合に有意差はなかった(40.6%[43/106]IDeg簡易的;34.6%[36/104]IDeg段階的);推定されるオッズ比(IDeg簡易的/IDeg段階的):1.26[0.69;2.29]95%CI。
【0367】
FPGは、両群でベースラインから第26週まで、IDeg簡易的では6.1mmol/Lから3.27に、IDeg段階的では6.8mmol/Lから2.68%に減少した(図2b)。群間で有意差は認められなかった:ETD(IDeg簡易的-IDeg段階的):-0.57mmol/l[-1.30;0.17]95%CI。FPGの最も顕著な低下は、最初の12週間に発生した。8ポイントSMBGプロファイルの群間差は、ベースラインまたは治験終了時の8つの測定時点のいずれにおいても認められなかった(図2c)。
【0368】
確認した低血糖の発生率は、IDeg簡易的およびIDeg段階的でそれぞれ1.60および1.17事象/患者年(PYE)と低く(図3a)、群間で有意差は認められなかった(P=0.4273)。重度の低血糖エピソードが、IDegによる最後の治療から5日後に、IDeg簡易的群で1件発生した。夜間に確認した低血糖の発生率は、PYEあたり0.21(IDeg簡易的)および0.10(IDeg段階的)事象と非常に低く(図3b)、群間で有意差は認められなかった(P=0.2047)。
【0369】
26週間後に観察した1日インスリン投与は、IDeg簡易的群で62U(0.61U/kg)、IDeg段階的群で48U(0.50U/kg)であった。最大第4週までの平均投与は類似しており、その後の簡易的群の平均投与はより高かった。週あたりのIDeg投与の増加は、第14週にIDeg段階的群で横ばいになり始めた。対象者は、IDeg段階的群で4Uを超える増分で投与を調整することを許可されたが、1週の平均増分の増加は3U以下であった。
【0370】
平均ベースライン体重は、IDeg段階的群(91.3kg)よりもIDeg簡易的群(95.7kg)の方が高かった。両群において、ベースラインから第26週まで体重のわずかな増加を観察した:IDeg簡易的:(+1.6kg、第26週の平均体重97.3kg)、IDeg段階的(+1.1kg、第26週の平均体重92.4kg)、体重変化に統計的に有意な差はない:ETD(IDeg簡易的-IDeg段階的)0.46kg[-0.35;1.26]95%CI。バイタルサイン、ECG、眼底検査、身体検査、または実験室パラメータに関して、ベースラインから試験終了時まで、または投与群間で臨床的に関連する差は認められなかった(データは示さず)。
【0371】
本治験中に安全性の懸念は提起されなかった。報告されたAEおよび重篤なAE(SAE)の割合の概要については、表4を参照されたい。AEおよびSAEは、群間で同様に分布した。大多数のAEの重症度は軽度または中等度であり、治験責任医師が治験薬と関連があるかもしれないまたはおそらく関連ありと分類したAEの発現率は低かった[10.0%(IDeg簡易的);7.2%(IDeg段階的)]。注射部位反応(ISR)は、IDeg簡易的が2.7%(3事象を伴う3人)、IDeg段階的が4.5%(16事象を伴う5人)の対象者で報告され、1人の対象者がIDeg段階的群の16の合計事象のうち9つを報告し、「疼痛」が第9のISRとして報告された。5%以上の対象者でSAEは報告されず、治験責任医師により治験薬と関連ありと判断されたものはなかった。本研究では、IDeg段階的で治療した参加者で治験剤を開始してから154日後に、肝転移のために1人の死亡が発生した(原発がんは小細胞肺がんの可能性があると報告された)。治験責任医師により、本事象は治療に関連する可能性は低いと判断された。他に1件のSAE新生物事象[星状細胞腫(IDeg簡易的)、および主要有害心血管系有害事象[冠動脈狭窄(IDeg簡易的)、急性心筋梗塞(IDeg簡易的)、および冠動脈閉塞(IDeg段階的)]が発現したが、これら3件はいずれも治験責任医師により治療に関連している可能性は低いと考慮された。IDegに関連する投薬エラーは報告されなかった。
【0372】
デバイス固有の質問票では、第12週および第26週での90%を超える対象者が、FlexTouch(登録商標)デバイスに対する最高レベルの満足度(回答カテゴリ1または2)を示した。26週間の時点で、98%の対象者がFlexTouch(登録商標)の使用に問題がないと報告し、100%の対象者がペンを推奨すると回答した。質問票の結果の詳細については、表5を参照されたい(表5には、本治験で調査した全質問のサブセットが含まれる)。
【0373】
考察
簡易的および段階的滴定アルゴリズムはどちらも、IDegを用いて血糖目標を達成するために有効な忍容性の高い方法であり、これにより、簡易的アルゴリズムを用いた週1回のSMBG測定、または段階的アルゴリズムを用いた3回の測定に基づく滴定が、2型糖尿病を有する患者に好適な選択肢を提供することを示す。簡易的アルゴリズムを使用する滴定は、HbA1cの改善に関して段階的アルゴリズムを使用する滴定に劣らないことが示され、いずれの方法もFPGの低下は同程度であった。両群の試験終了時HbA1cおよびHbA1cのベースラインからの変化は、2型糖尿病を有する患者を対象とした同様の以前の第3a相(BEGINTM)治験においてIDegで見られた値と同様であった。これらの以前の治験の全ては、HbA1cの変化に関する非劣性によって示されるように、IDegおよびインスリングラルギンの間で同様の有効性を示し、26週間または52週間の期間で、インスリン未処置の対象者を登録し(インスリンアスパルトの食事を伴う投与におけるBEGINTM基礎ボーラスT2研究を除く[26])、段階的アルゴリズムと同様の滴定アルゴリズムを利用したが、3回の連続する日の朝食前のSMBG測定値の平均に基づく1週の滴定を用いた。
【0374】
IDeg投与は、IDeg簡易的群でより迅速に増加したが、インスリン投与の増加は、アルゴリズム間の差別化のポイントを反映して、IDeg段階的群でより早く減少し、朝食前SMBG値が目標に近づいたため、段階的アルゴリズムは、IDeg簡易的群で推奨される4Uの増加に対して2Uのより少ない投与増加が可能となった。インスリンの投与は、IDeg段階的群よりもIDeg簡易的群の方が試験終了時に高かったため、FPGおよび低血糖群でみられた有意差のない差を説明できる可能性がある。FPG値は、IDeg簡易的群では、より長期間にわたって数値的に低く、これらの率は治療期間全体を表しているため、これは観察された低血糖率に影響を及ぼした可能性がある。また、FPGのIDeg簡易的群とIDeg段階的群との間のわずかな有意差も、7%未満のHbA1c目標の達成における群間差にも寄与した可能性が高い。なお、低血糖が確認されていないHbA1cの目標達成には、群間で有意差は認められなかったことに留意することが重要である。
【0375】
簡易的群アルゴリズムは、IDegを滴定するための簡単で患者に優しい方法を提供し、さらに、1週間のSMBG値に基づいて、4Uの増加または減少を伴ってIDeg投与を調整する能力により、滴定測定の経済的および時間的負担ならびに不便さが大幅に軽減され得る。低血糖エピソードの発生率は非常に低く、簡易的群と段階的群との間に有意差はなかった。図3aおよび図3bにそれぞれ示されるように、ここで示された治験終了時に確認したおよび夜間に確認した低血率は、2型糖尿病を有する患者を対象としたBEGINTM治験でIDegをODで投与した率と同等または低く、またこの率は、インスリンデグルデク開発プログラムの他の研究で比較対照インスリングラルギンで見られたものよりも低かったか、または類似していた。[26~29]
【0376】
両治療群の対象者は、それぞれのアルゴリズムに厳密に順守した。所与の治療計画を順守する患者の能力および意欲は、インスリン療法の成功における重要な要素である。医師および患者の調査によると、患者がインスリン注射を行わなかったり省略したりした顕著な理由として「多忙すぎる」および「レジメンが複雑すぎる」が特定されており、患者の17%がインスリン投与の調整が困難であると報告しており、60%の患者がインスリンレジメンが制限的であると考えている[10~11]。患者が自身の投与レジメンにより満足し、受け入れれば、長期的に治療を継続する意思が高まったという前提を支持する証拠がある[12~14]。さらに、患者のエンパワーメントは、基礎インスリンの自己調整および治療レジメンのより良い順守を促進する滴定アルゴリズムによって強化され、健康転帰の改善につながる可能性がある。標的への強化および制御による糖尿病における予測可能な結果および経験:インスリンデテミルによる国際間変動性評価(PREDICTIVETM)303では、患者がSMBGを毎日検査し、過去3日間の値の平均に基づいて3日ごとにその投与を調整することは、6か月の期間にわたる標準治療の医師主導の調整と比較して、HbA1cが大幅に低下することが示され[4]、したがって、簡易的な自己滴定法は、対象者の血糖目標を達成するのを支持するというさらなる証拠を提供する。さらに、投与を施すのに使用されるインスリン送達デバイスの患者の受け入れは、所与の治療レジメンの順守および持続性に影響を及ぼすと考えられる要因である[30~33]。利便性に対する肯定的な認識も、ペンの使用継続に重要な役割を果たすことが報告されている[34]。この治験では、FlexTouch(登録商標)インスリンペンデバイスに対する高い満足度が両治療群で報告され、全ての対象者が他の人にペンを推奨することを示した。これは、同じデバイスを使用する他のIDeg治験における患者の経験を反映しており、大多数の患者が、ペンの使用が容易で、FlexTouch(登録商標)に高い満足度があると報告した[35~39]。
【0377】
結論
2型糖尿病を有する患者における良好な血糖制御を達成することは、糖尿病合併症を予防または制限し、これらの合併症に起因する医療利用の増強によるコストを管理する重要な方法である。SMBGは有効的な糖尿病管理に不可欠な要素であるが、血糖測定器、試験ストリップ、ランセット、アルコールワイプは、継続的な費用を含む消耗品であり、これらの費用の主な要因として試験ストリップが特定されている[15~18]。臨床的結果を損なうことなくSMBG測定数を減らすことができる新しい薬剤および治療レジメンは、現在のアルゴリズムが混乱または煩雑であると考えられる基礎インスリン治療を受けている全ての患者に有益である可能性が高い。これらの患者は、より簡易的なレジメンを順守する可能性が高く、最終的には健康結果の改善および医療費の低減につながる。本治験は、簡易的または段階的アルゴリズムのいずれかを使用して滴定されたIDegが、良好な血糖制御につながり、忍容性が高く、患者のニーズに最適な個々の滴定レジメンを提供することを示している。
データは、数値(%)または平均(SD)として表される。
OAD経口抗糖尿病薬、Metメトホルミン、SUスルホニル尿素、TZDチアゾリジンジオン、DPP-4Iジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、アルファグルコシダーゼ阻害剤、FPG空腹時血漿グルコース、IDegインスリンデグルデク、SD標準偏差、HbA1c グリコシル化ヘモグロビン。
【0378】
最初の曝露後、および最後の曝露から7日以内に発生する治療に起因する事象。安全性解析セット。n事象を伴う患者の数、%事象を伴う患者の割合、E事象の数、R100患者年あたりの事象数。
【0379】
データはFASに基づいており、治療群とは無関係に要約されている。%質問票に回答したITT人口に基づく割合。質問1~8のカテゴリ:1=非常に簡単、2=少し簡単、3=どちらとも言えない、4=少し難しい、5=非常に難しい。質問9~10のカテゴリ:1=非常に、2=ある程度、3=少し、4=あまり、5=全くない(自信がある)。N数、Wk週、ITT治療企図。
【0380】
データはFASに基づいており、治療群とは無関係に要約されている。質問1~2のカテゴリ:1=いいえ、2=はい。N数、Wk週、NA該当なし、ITT治療企図。
【0381】
実施例2:グルコース測定値を使用して空腹時の事象がインスリンレジメンに順守しているか決定する。いくつかの実施形態では、複数のグルコース測定値を含む第1のデータセット224を取得した。いくつかの実施形態では、グルコース測定値は、例えば連続グルコースモニタ102によって自律的に取得される。この実施例では、自律的なグルコース測定に加えて、インスリン投与事象は、規定のインスリンレジメン212を適用するために対象によって使用される1つ以上のインスリンペン104からインスリン薬剤記録232の形態で取得した。これらのインスリン薬剤記録232は、任意の形式であり得、実際に、複数のファイルまたはデータ構造にわたって分散され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、インスリン投与ペンの最近の進歩を利用しており、これは、過去に投与されたインスリン薬剤のタイミングおよび量を記憶できるという意味で「スマート」になっている。このようなインスリンペン104の一例は、NovoPen(登録商標)5である。このようなペンは、患者が投与量を記録するのを助け、二重投与を防止する。インスリンペンは、インスリン薬剤の投与量およびタイミングを送信および受信することができ、したがって、連続的なグルコースモニタ102、インスリンペン104、および本開示のアルゴリズムの統合を可能にすることが企図される。したがって、1つ以上のインスリンペン104からのそのようなデータの無線取得を含む、1つ以上のインスリンペン104からのインスリン薬剤記録232が企図される。
【0382】
一部の実施形態では、各インスリン薬剤記録232は、(i)1つ以上のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペンを使用して対象者に注射されたインスリン薬剤の量を含む、それぞれのインスリン薬剤注射事象234と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射事象の発生時に、それぞれのインスリンペン104によって自動的に生成される、対応する電子タイムスタンプ236と、を含む。
【0383】
引用された参考文献および代替的な実施形態
本明細書に引用された全ての参考文献は、各個々の出版物、または特許、または特許出願が、全て目的のためにその全体が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示されるのと同じ程度の範囲で、それらの全体が参照により、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0384】
全ての見出しおよび小見出しは、本明細書では便宜上使用されているだけであり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0385】
本明細書で提示する任意のおよびいっさいの例または例示的な語句(例えば「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより明瞭にするという意図しかなく、特に明記しない限り、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいずれの語句も、特許の範囲にない任意の要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈すべきではない。
【0386】
本明細書の特許文書の引用および組み込みは、便宜上行われているだけであり、こうした特許文書の有効性、特許性および/または執行可能性のいっさいの観点を反映するものではない。
【0387】
本発明は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に埋め込まれたコンピュータプログラム機構を備えるコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。例えば、コンピュータプログラム製品は、図3および4の任意の組み合わせで示される、および/または図7に記載されるプログラムモジュールを含むことができる。これらのプログラムモジュールは、CD-ROM、DVD、磁気ディスク記憶媒体製品、USBキー、または任意の他の非一時的コンピュータ可読データもしくはプログラム記憶媒体製品に保存することができる。
【0388】
本発明の多くの修正および変形を、当業者に明らかであるように、その趣旨および範囲を逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載される特定の実施形態は、例証としてのみ提供される。本発明およびその実用的用途の原理を最もよく説明するために実施形態を選択して説明したが、それにより、特定の用途に適した様々な修正を用いて、当業者が本発明および様々な実施形態を最良に利用できるようになる。本発明は、添付の特許請求の範囲の条件と、そのような請求の範囲が適用されるあらゆる等価物によってのみ限定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図7