(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20231227BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20231227BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F04D29/42 L
F04D29/42 M
F04D29/70 L
B60H1/00 102F
(21)【出願番号】P 2021014512
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 久善
(72)【発明者】
【氏名】金森 亮介
(72)【発明者】
【氏名】原 敬介
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0170147(US,A1)
【文献】特開2005-98657(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0101616(KR,A)
【文献】特開2012-211538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/70
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の遠心送風機(1,101,201,301)であって、
モータ(2)と、
周方向翼列を形成する複数の翼(3a)を有し、前記モータ(2)により軸方向に延びる回転軸線(Ax)周りに回転駆動されて、前記翼列の半径方向内側の空間の空気を遠心方向に向けて吹き出す羽根車(3)と、
前記羽根車(3)を収容するスクロ-ルハウジング(10)であって、前記軸方向に開口する吸込口(10a)と周方向に開口する吐出口(10b)とを有し、前記羽根車(3)の回転により、前記吸込口(10a)から吸い込んだ空気を前記吐出口(10b)から送り出すスクロールハウジング(10)と、
前記スクロールハウジング(10)の内部空間を前記軸方向に分割する仕切壁(15)と、
前記スクロールハウジング(10)に挿入された分離筒(30,230,330)であって、前記吸込口(10a)から前記スクロールハウジング(10)内に吸入される空気の流れを、前記分離筒(30,230,330)の外側を通る第1空気流と、前記分離筒(30,230,330)の内側を通る第2空気流と、に分割する分離筒(30,230,330)と、
前記スクロールハウジング(10)に接続され、車両の外気を取り込むための外気導入口(21)と、車両の内気を取り込むための内気導入口(22)と、前記外気導入口(21)及び前記内気導入口(22)と前記スクロールハウジング(10)との間の空気通路となる内部空間と、を有する空気取入ハウジング(20,120,220,320)と、
前記空気取入ハウジング(20,120,220,320)の前記内部空間に、濾過面が当該内部空間を流れる空気を横切るように配置されたフィルタ(40,140)と、
前記外気導入口(21)及び前記内気導入口(22)と前記フィルタ(40,140)との間で動作して、前記外気導入口(21)の一部である第1外気導入口部分(21a)から前記内部空間に導入される外気と前記内気導入口(22)の一部である第1内気導入口部分(22a)から前記内部空間に導入される内気との割合を調節する第1ロータリドア(28a)と、
前記外気導入口(21)及び前記内気導入口(22)と前記フィルタ(40,140)との間で動作して、前記外気導入口(21)の他の一部である第2外気導入口部分(21b)から前記内部空間に導入される外気と前記内気導入口(22)の他の一部である第2内気導入口部分(22b)から前記内部空間に導入される内気との割合を調節する第2ロータリドア(28b)と、
前記外気導入口(21)及び前記内気導入口(22)と前記フィルタ(40,140)との間で動作して、前記外気導入口(21)のさらに他の一部である第3外気導入口部分(21c)から前記内部空間に導入される外気と前記内気導入口(22)のさらに他の一部である第3内気導入口部分(22c)から前記内部空間に導入される内気との割合を調節する第3ロータリドア(28c)と、
を備え、
前記第1ロータリドア(28a)と前記第2ロータリドア(28b)と前記第3ロータリドア(28c)とは、この順で並んでおり、
前記空気取入ハウジング(20,120,220,320)の内部空間は、前記第1ロータリドア(28a)の動作範囲である第1空間(20A1)と、前記第1空間(20A1)に隣接する空間で前記第2ロータリドア(28b)の動作範囲である第2空間(20A2)と、前記第2空間(20A2)に隣接する空間で前記第3ロータリドア(28c)の動作範囲である第3空間(20A3)とを含み、
前記フィルタ(40,140)は、前記第1空間(20A1)に対面する第1領域(51)と、前記第2空間(20A2)に対面する第2領域(52)と、前記第3空間(20A3)に対面する第3領域(53)とを有し、
前記第1領域(51)は、前記軸方向に見て前記スクロールハウジング(10)の舌部(10T)と重なり、
前記第2領域(52)は、前記軸方向に見て前記回転軸線(Ax)を含み、
前記第3領域(53)は、前記第2領域(52)に対して前記第1領域(51)とは反対側に位置し、
前記第1領域(51)の濾過面の面積よりも、前記第3領域(53)の濾過面の面積の方が大きい、遠心送風機(1,101,201,301)。
【請求項2】
前記フィルタ(40)を前記軸方向に垂直な投影面に垂直投影した場合に、前記投影面において、前記第1領域(51)によって覆われる領域の面積よりも、前記第3領域(53)によって覆われる領域の面積の方が大きい、請求項1に記載の遠心送風機(1,201,301)。
【請求項3】
前記フィルタ(140)は、プリーツ形状となるように複数の折り目(42)が形成され、前記複数の折り目(42)によって複数の区画(43)に分割された濾材(41)を含み、
前記第1領域(51)における前記区画(43)の数よりも、前記第3領域(53)における前記区画(43)の数の方が多い、請求項1又は2に記載の遠心送風機(1,101,201,301)。
【請求項4】
前記第1領域(51)における隣り合う折り目(42,42)同士の間隔よりも、前記第3領域(53)における隣り合う折り目(42,42)同士の間隔の方が狭い、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遠心送風機(101,201)。
【請求項5】
前記スクロールハウジング(10)の前記吸込口(10a)と前記第1領域(51)との距離よりも、前記吸込口(10a)と前記第3領域(53)との距離の方が短い、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の遠心送風機(301)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタを備えた遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用の空調装置で用いられる遠心送風機は、羽根車と、羽根車を収容するスクロールハウジングとを備え、スクロールハウジングに分離筒が挿入されたタイプの存在が知られている。また、遠心送風機は、スクロールハウジングに接続された空気取入ハウジングと、空気取入ハウジング内に配置されたフィルタとを備えている。空気取入ハウジングには、外気導入口と内気導入口とが形成されている。フィルタは、外気導入口及び内気導入口と分離筒との間に配置されている。特許文献1及び2には、このような遠心送風機が開示されている。
【0003】
特許文献1及び2に記載の遠心送風機は、互いに性質の異なる2種類の空気(車両の内気と外気)を同時に送風する内外気二層流モードで運転することができる。具体的には、上記遠心送風機は、内気導入口から導入された内気がフィルタを通過して分離筒の内部に進入すると同時に、外気導入口から導入された外気がフィルタを通過して分離筒の外部を流れるように、遠心送風機内を流れる空気を制御することができる。
【0004】
ところで、このような遠心送風機の送風効率を改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-44739号公報
【文献】国際公開第2020-065164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、送風効率が改善された遠心送風機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好適な一実施形態によれば、
車両用の遠心送風機であって、
モータと、
周方向翼列を形成する複数の翼を有し、前記モータにより軸方向に延びる回転軸線周りに回転駆動されて、前記翼列の半径方向内側の空間の空気を遠心方向に向けて吹き出す羽根車と、
前記羽根車を収容するスクロ-ルハウジングであって、前記軸方向に開口する吸込口と周方向に開口する吐出口とを有し、前記羽根車の回転により、前記吸込口から吸い込んだ空気を前記吐出口から送り出すスクロールハウジングと、
前記スクロールハウジングの内部空間を前記軸方向に分割する仕切壁と、
前記スクロールハウジングに挿入された分離筒であって、前記吸込口から前記スクロールハウジング内に吸入される空気の流れを、前記分離筒の外側を通る第1空気流と、前記分離筒の内側を通る第2空気流と、に分割する分離筒と、
前記スクロールハウジングに接続され、車両の外気を取り込むための外気導入口と、車両の内気を取り込むための内気導入口と、前記外気導入口及び前記内気導入口と前記スクロールハウジングとの間の空気通路となる内部空間と、を有する空気取入ハウジングと、
前記空気取入ハウジングの前記内部空間に、濾過面が当該内部空間を流れる空気を横切るように配置されたフィルタと、
前記外気導入口及び前記内気導入口と前記フィルタとの間で動作して、前記外気導入口の一部である第1外気導入口部分から前記内部空間に導入される外気と前記内気導入口の一部である第1内気導入口部分から前記内部空間に導入される内気との割合を調節する第1ロータリドアと、
前記外気導入口及び前記内気導入口と前記フィルタとの間で動作して、前記外気導入口の他の一部である第2外気導入口部分から前記内部空間に導入される外気と前記内気導入口の他の一部である第2内気導入口部分から前記内部空間に導入される内気との割合を調節する第2ロータリドアと、
前記外気導入口及び前記内気導入口と前記フィルタとの間で動作して、前記外気導入口のさらに他の一部である第3外気導入口部分から前記内部空間に導入される外気と前記内気導入口のさらに他の一部である第3内気導入口部分から前記内部空間に導入される内気との割合を調節する第3ロータリドアと、
を備え、
前記第1ロータリドアと前記第2ロータリドアと前記第3ロータリドアとは、この順で並んでおり、
前記空気取入ハウジングの内部空間は、前記第1ロータリドアの動作範囲である第1空間と、前記第1空間に隣接する空間で前記第2ロータリドアの動作範囲である第2空間と、前記第2空間に隣接する空間で前記第3ロータリドアの動作範囲である第3空間とを含み、
前記フィルタは、前記第1空間に対面する第1領域と、前記第2空間に対面する第2領域と、前記第3空間に対面する第3領域とを有し、
前記第1領域は、前記軸方向に見て前記スクロールハウジングの舌部と重なり、
前記第2領域は、前記軸方向に見て前記回転軸線を含み、
前記第3領域は、前記第2領域に対して前記第1領域とは反対側に位置し、
前記第1領域の濾過面の面積よりも、前記第3領域の濾過面の面積の方が大きい、遠心送風機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明の実施形態によれば、遠心送風機の送風効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態による遠心送風機の斜視図である。
【
図2】
図1に示す遠心送風機の子午断面を含む縦断面図である。
【
図3】
図2における切断面と直交する切断面で切断した、遠心送風機の子午断面を含む縦断面図である。
【
図5】ロータリドアの動作範囲を説明するための図である。
【
図7】
図3のI-I線に沿った遠心送風機の断面図である。
【
図8】
図3に対応する図であって、第2の実施形態による遠心送風機の縦断面図である。
【
図9】
図8のII-II線に沿った遠心送風機の断面図である。
【
図10】
図3に対応する図であって、第3の実施形態による遠心送風機の縦断面図である。
【
図11】
図3に対応する図であって、第4の実施形態による遠心送風機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下に添付図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態による遠心送風機の斜視図である。
図2及び
図3は、
図1に示す遠心送風機の断面を模式的に示す図である。ただし、
図3は、
図2における断面と直交する断面を示す図である。なお、
図2及び
図3並びにその他の図において、紙面に垂直な方向に沿って延びる矢印を、円の中に点を設けた記号により示した。
【0012】
図1乃至
図3に示す遠心送風機1は、車両用空調装置に組み込まれる遠心送風機であり、モータ2と、モータ2によって回転駆動される羽根車3と、羽根車3を収容するスクロールハウジング10と、空気取入ハウジング20と、を有する。
【0013】
なお、本明細書において、説明の便宜上、モータ2及び羽根車3の回転軸線Axの方向を「軸方向」または「上下方向」と呼び、
図2及び
図3の上側及び下側をそれぞれ「軸方向の一側」あるいは「上側」及び「軸方向の他側」あるいは「下側」と呼ぶ。しかしながら、このことによって、遠心送風機が実際に車両に組み込まれた場合に回転軸線Axの方向が鉛直方向に一致するものと限定されるわけではない。また、本明細書においては、特別な注記が無い限り、回転軸線Ax上の任意の点を中心として回転軸線Axと直交する平面上に描かれた円の半径の方向を半径方向と呼び、当該円の円周方向を周方向または円周方向と呼ぶ。
【0014】
羽根車3は、その外周部分に、周方向に並んだ翼列を形成する複数の翼3aを有している。羽根車3は、モータ2の回転軸2aに接続されて回転軸線Ax周りに回転駆動され、羽根車3の翼列の半径方向内側の空間の空気を、遠心方向に向けて吹き出す。
【0015】
スクロールハウジング10は、軸方向に見て、全体として螺旋形状に形成されている。スクロールハウジング10は、軸方向に開口する吸込口10aと、周方向に開口する吐出口10bとを有している。スクロールハウジング10を軸方向に見た場合、吐出口10bはスクロールハウジング10の外周面の概ね接線方向に延びている(
図7参照)。スクロールハウジング10は、羽根車3の回転により、吸込口10aから吸い込んだ空気を吐出口10bから送り出す。図示された例では、吸込口10aは、軸方向の上側(軸方向の一側)に開口している。
【0016】
スクロールハウジング10には、スクロールハウジング10の内部空間を軸方向に分割する仕切壁15が設けられている。仕切壁15は、スクロールハウジング10の外周壁から半径方向内側に向けて延びており、スクロールハウジング10の内部空間のうち、スクロールハウジング10の内周面と羽根車3の外周面との間の領域を上下に(軸方向に)分割している。また、仕切壁15は、吐出口10bの内部を上下に分割している。このようにして、仕切壁15は、スクロールハウジング10の内部空間を、第1空気流路11及び第2空気流路12に分割する。
【0017】
第1空気流路11は、仕切壁15の上側(軸方向の一側)に位置する。第1空気流路11を流れる空気は、車両のデフロスタ吹出口及び/またはベント吹出口に送り出され得る。第2空気流路12は、仕切壁15の下側(軸方向の他側)に位置する。第2空気流路12を流れる空気は、車両のフット吹出口に送り出され得る。
【0018】
図1乃至
図3に示す例において、遠心送風機1は、片吸込型の遠心送風機である。第1空気流路11と第2空気流路12とは、第2吸込口12aを介して連通している。第2吸込口12aは、仕切壁15の半径方向内側の縁部によって画成される。第2吸込口12aを通じて、羽根車3の下半部が第2空気流路12に挿入されている。
【0019】
羽根車3には、内側偏向部材6が一体に成形されている。内側偏向部材6は、コーン部と呼ばれることもある。この内側偏向部材6は、幾何学的な意味における回転体である。図示された例では、羽根車3の下端に接続された側周部6aと、円板形の中央部6bとを有している。中央部6bはモータ2の回転軸2aに連結されている。なお、中央部6bは必ずしも円板状でなくともよく、周知のボス形状であってもよい。
【0020】
図2及び
図3に示すように、スクロールハウジング10内には、吸込口10aを通じて、分離筒30が挿入されている。分離筒30は、吸込口10aからスクロールハウジング10内に吸入される空気の流れを、分離筒30の外側を通る第1空気流と、分離筒30の内側を通る第2空気流と、に分割する。
【0021】
図4には、分離筒30の斜視図が示されている。
図4に示すように、分離筒30は、入口側端部(上部)31と、入口側端部31に下方から接続する胴部(中央部)32と、胴部32に下方から接続する出口側端部(下部)33と、を有している。入口側端部31の軸方向に垂直な断面は、概ね矩形である。入口側端部31の上端は、互いに平行に延びる第1縁部31a及び第2縁部31bと、第1縁部31a及び第2縁部31bの一端を接続する第3縁部31cと、第1縁部31a及び第2縁部31bの他端を接続する第4縁部31dと、を有する。分離筒30の断面形状は、入口側端部31から胴部32に近づくに従って、矩形から円形(又は、概ね円形)に滑らかに推移する。分離筒30の出口側端部33は、下端に近づくに従って拡径するフレア形状を有している。
【0022】
分離筒30の全体が樹脂射出成形により一体成形されていてもよい。これに代えて、分離筒30の入口側端部31と、分離筒30の胴部32及び出口側端部33を別々に成形した後に、両者を連結してもよい。
【0023】
図2及び
図3に示すように、入口側端部31は、スクロールハウジング10の外側(吸込口10aよりも上側)に位置している。また、胴部32は、吸込口10aの半径方向内側及び羽根車3の翼列の半径方向内側を通って軸方向に延びている。出口側端部33は、その下端が軸方向においてスクロールハウジング10の仕切壁15と略同じ位置になるように、設けられている。
【0024】
上述したように、分離筒30は、スクロールハウジング10内に吸入される空気の流れを、分離筒30の外側の第1通路30Aを通る第1空気流と、分離筒30の内側の第2通路30Bを通る第2空気流とに分割する。第1空気流は、吸込口10aのうちの分離筒30の外周面より外側のリング状領域を通って羽根車3の翼列の半径方向内側に流入する。第2空気流は、分離筒30の上端から分離筒30の内側に入り、第2吸込口12aを通って羽根車3の翼列の半径方向内側に流入する。分離筒30の出口側端部33は、流入した第1空気流を半径方向外向きに転向して第1空気流路11に案内するとともに、流入した第2空気流を半径方向外向きに転向して第2空気流路12に案内する。
【0025】
スクロールハウジング10の上側には、空気取入ハウジング20が、吸込口10aを覆うように配置されている。スクロールハウジング10と空気取入ハウジング20とは、一体成形されていてもよいし、別々に作製された後にネジ止め、接着、嵌め込み等の手法により連結されてもよい。なお、好適な一実施形態においては、分離筒30は、スクロールハウジング10及び空気取入ハウジング20とは別体の部品であり、空気取入ハウジング20によって所定位置に支持される。
【0026】
空気取入ハウジング20の内部空間は、スクロールハウジング10の吸込口10aに連通している。言い換えると、吸込口10aは、空気取入ハウジング20の内部空間に向けて開口している。
図1に示すように、空気取入ハウジング20は、概ね前方に向けて開口する外気導入口21と、概ね後方に向けて開口する内気導入口22とを有する。外気導入口21は、車両に設けられた外気導入路の出口(図示せず)と連結されており、車両の外気を空気取入ハウジング20内に導入することができる。内気導入口22は車両の室内に開口しており、車両の内気を空気取入ハウジング20内に導入することができる。
【0027】
外気導入口21は、第1外気導入口部分21aと第2外気導入口部分21bと第3外気導入口部分21cとを有する。第1外気導入口部分21aは、外気導入口21の一部をなす。第2外気導入口部分21bは、外気導入口21の他の一部をなす。第3外気導入口部分21cは、外気導入口21のさらに他の一部をなす。第1外気導入口部分21a、第2外気導入口部分21b及び第3外気導入口部分21cは、後述するロータリドア28a,28b,28cの旋回軸線Bxの延びる方向に沿って、この順で並んでいる。
【0028】
内気導入口22は、第1内気導入口部分22aと第2内気導入口部分22bと第3内気導入口部分22cとを有する。第1内気導入口部分22aは、内気導入口22の一部をなす。第2内気導入口部分22bは、内気導入口22の他の一部をなす。第3内気導入口部分22cは、内気導入口22のさらに他の一部をなす。第1内気導入口部分22a、第2内気導入口部分22b及び第3内気導入口部分22cは、上記旋回軸線Bxの延びる方向に沿って、この順で並んでいる。第1内気導入口部分22aは、第1外気導入口部分21aに対向している。第2内気導入口部分22bは、第2外気導入口部分21bに対向している。第3内気導入口部分22cは、第3外気導入口部分21cに対向している。
【0029】
空気取入ハウジング20の内部空間は、外気導入口21及び内気導入口22とスクロールハウジング10との間の空気通路を形成する。空気取入ハウジング20の内部空間は、外気導入口21及び内気導入口22に連通する上流側空間20Aと、上流側空間20Aの下側に接続する下流側空間20Bと、を含んでいる。下流側空間20Bには、後述するフィルタ40が配置される。上流側空間20Aには、第1ロータリドア28a、第2ロータリドア28b及び第3ロータリドア28cが配置されている。ロータリドア28a,28b,28cは、図示しないアクチュエータにより、左右方向に延びる旋回軸線Bxの周りを回転可能である。
【0030】
第1ロータリドア28a、第2ロータリドア28b及び第3ロータリドア28cは、旋回軸線Bxの延びる方向に沿って、この順で並んでいる。第1ロータリドア28aは、第1外気導入口部分21aと第1内気導入口部分22aとの間に配置されている。第2ロータリドア28bは、第2外気導入口部分21bと第2内気導入口部分22bとの間に配置されている。第3ロータリドア28cは、第3外気導入口部分21cと第3内気導入口部分22cとの間に配置されている。
【0031】
各ロータリドア28a,28b,28cは、旋回軸線Bxを中心とする円弧形の断面を有する円弧壁29aと、一対の側壁29b,29cと、を有する。側壁29b,29cは、扇形状をなし、旋回軸線Bxと円弧壁29aとの間を旋回軸線Bxに略垂直な面に沿って広がっている。側壁29bの円弧状の縁部が、円弧壁29aの円弧状の縁部の一方に接続されている。側壁29cの円弧状の縁部が、円弧壁29aの円弧状の縁部の他方に接続されている。
【0032】
第1ロータリドア28aは、上流側空間20A内において旋回軸線Bxの周りを回転することにより、その円弧壁29aが第1外気導入口部分21aを閉塞する第1位置と、その円弧壁29aが第1内気導入口部分22aを閉塞する第2位置との間を動作可能である。
図1では、第1ロータリドア28aは、第2位置に配置されている。このような第1ロータリドア28aは、第1外気導入口部分21aの開口面積及び第1内気導入口部分22aの開口面積を調節可能である。したがって、第1ロータリドア28aは、第1外気導入口部分21aから上流側空間20Aに導入される外気と第1内気導入口部分22aから上流側空間20Aに導入される内気との割合を調節可能である。第1外気導入口部分21a又は第1内気導入口部分22aから上流側空間20Aに導入された外気又は内気は、第1ロータリドア28aの一対の側壁29b,29cの間を通って下流側空間20Bに流入する。第1ロータリドア28aの動作範囲は、第1位置から第2位置まで移動する第1ロータリドア28aの円弧壁29aの軌跡によって囲まれる空間(
図5で二点鎖線で囲まれる空間)である。本明細書では、第1ロータリドア28aの動作範囲を「第1空間20A1」とも呼ぶ。
【0033】
第2ロータリドア28bは、上流側空間20A内において旋回軸線Bxの周りを回転することにより、その円弧壁29aが第2外気導入口部分21bを閉塞する第1位置と、その円弧壁29aが第2内気導入口部分22bを閉塞する第2位置との間を動作可能である。
図1及び
図2では、第2ロータリドア28bは、第1位置に配置されている。このような第2ロータリドア28bは、第2外気導入口部分21bの開口面積及び第2内気導入口部分22bの開口面積を調節可能である。したがって、第2ロータリドア28bは、第2外気導入口部分21bから上流側空間20Aに導入される外気と第2内気導入口部分22bから上流側空間20Aに導入される内気との割合を調節可能である。第2外気導入口部分21b又は第2内気導入口部分22bから上流側空間20Aに導入された外気又は内気は、第2ロータリドア28bの一対の側壁29b,29cの間を通って下流側空間20Bに流入する。第2ロータリドア28bの動作範囲は、第1位置から第2位置まで移動する第2ロータリドア28bの円弧壁29aの軌跡によって囲まれる空間(
図5で二点鎖線で囲まれる空間)である。本明細書では、第2ロータリドア28bの動作範囲を「第2空間20A2」とも呼ぶ。
【0034】
第3ロータリドア28cは、上流側空間20A内において旋回軸線Bxの周りを回転することにより、その円弧壁29aが第3外気導入口部分21cを閉塞する第1位置と、その円弧壁29aが第2内気導入口部分22bを閉塞する第2位置との間を動作可能である。
図1では、第3ロータリドア28cは、第2位置に配置されている。このような第3ロータリドア28cは、第3外気導入口部分21cの開口面積及び第3内気導入口部分22cの開口面積を調節可能である。したがって、第3ロータリドア28cは、第3外気導入口部分21cから上流側空間20Aに導入される外気と第3内気導入口部分22cから上流側空間20Aに導入される内気との割合を調節可能である。第3外気導入口部分21c又は第3内気導入口部分22cから上流側空間20Aに導入された外気又は内気は、第3ロータリドア28cの一対の側壁29b,29cの間を通って下流側空間20Bに流入する。第3ロータリドア28cの動作範囲は、第1位置から第2位置まで移動する第3ロータリドア28cの円弧壁29aの軌跡によって囲まれる空間(
図5で二点鎖線で囲まれる空間)である。本明細書では、第3ロータリドア28cの動作範囲を「第3空間20A3」とも呼ぶ。
【0035】
ロータリドア28a,28b,28cの側壁29b,29c及び分離筒30は、互いに対して、次のように配置されている。すなわち、第1外気導入口部分21a又は第1内気導入口部分22aから空気取入ハウジング20内に導入された空気、並びに、第3外気導入口部分21c又は第3内気導入口部分22cから空気取入ハウジング20内に導入された空気のほぼ全てが分離筒30の外側の第1通路30Aを通るように、第1ロータリドア28a及び第3ロータリドア28cの側壁29b,29cと分離筒30とは、互いに対して配置されている。また、第2外気導入口部分21b又は第2内気導入口部分22bから空気取入ハウジング20内に導入された空気のほぼ全てが分離筒30の内側の第2通路30Bを通るように、第2ロータリドア28bの側壁29b,29cと分離筒30とは、互いに対して配置されている。より具体的には、各ロータリドア28a,28b,28cの側壁29b,29cは、分離筒30の入口側端部31の第1縁部31a及び第2縁部31bが延びる方向及び回転軸線Axが延びる方向に広がる平面に平行である。また、第1ロータリドア28a及び第2ロータリドア28bの互いに隣り合う側壁29c,29bと分離筒30の第1縁部31aとが、空気取入ハウジング20の内部空間を流れる空気の流れ方向(概ね軸方向)に整列している。また、第2ロータリドア28b及び第3ロータリドア28cの互いに隣り合う側壁29b,29cと分離筒30の第2縁部31bとが、空気取入ハウジング20の内部空間を流れる空気の流れ方向に整列している。
【0036】
次に、
図2、
図3並びに
図6及び
図7を参照して、フィルタ40について説明する。上述したように、フィルタ40は、空気取入ハウジング20の下流側空間20Bに、その濾過面が下流側空間20Bを流れる空気を横切るように配置されている。フィルタ40は、空気取入ハウジング20の内部空間に流入した空気中のダスト、パーティクル等の汚染物質や異臭を除去するために設けられている。フィルタ40は、空気取入ハウジング20内に設けられたスロットまたはレール(図示せず)によって、ロータリドア28a,28b,28cと分離筒30の入口側端部31との間に保持されている。フィルタ40は、空気取入ハウジング20に設けられた挿入口20M(
図3参照)を通じて、空気取入ハウジング20の内部空間に挿入される。
【0037】
フィルタ40は、空気取入ハウジング20の内部空間に流入した空気中の汚染物質を捕捉する濾材41と、濾材41を保持する一対の端板48,49と、を含む。濾材41は、例えば不織布により形成されている。濾材41の材料は、例えばポリプロピレンやポリエステル、ナイロン等の樹脂の繊維が用いられる。また、端板48,49は、例えばポリエステルやポリプロピレンにより形成されている。
【0038】
図示された例では、濾材41はプリーツ形状をなす(
図3及び
図6参照)。より具体的には、濾材41には、山折りの折り目42と谷折りの折り目42とが交互に形成されている。濾材41は、山折りの折り目42及び谷折りの折り目42によって分割された複数の区画43を有する。区画43は、フィルタ40の濾過面を形成する。以下では、山折りの折り目42及び谷折りの折り目42が延びる方向D1を、「第1方向D1」とも呼ぶ。また、山折りの折り目42及び谷折りの折り目42が並ぶ方向D2を、「第2方向D2」とも呼ぶ。フィルタ40は、第1方向D1及び第2方向D2に広がる仮想平面Pが下流側空間20Bを流れる空気を横切るように、配置されている。図示された例では、フィルタ40は、その仮想平面Pが回転軸線Axに直交するように配置されている。また、フィルタ40は、その第1方向D1が分離筒30の入口側端部31の第1縁部31a及び第2縁部31bが延びる方向に一致するように、配置されている。
【0039】
なお、
図3に示す例では、隣り合う折り目42同士の距離L(各区画43の幅)は、濾材41内において均一である。このため、複数の区画43の面積は互いに等しい。さらに、プリーツ形状に折られた濾材41において、第2方向D2に沿った隣り合う折り目42同士の間隔G(プリーツ形状のピッチ)は、濾材41内において均一である。
【0040】
濾材41は、第1領域51、第2領域52及び第3領域53を含む。第1領域51、第2領域52及び第3領域53は、第2方向D2に沿ってこの順で並んでいる。
図3に示すように、第1領域51は、第1空間20A1に対面している。また、
図7に示すように、第1領域51は、軸方向に見てスクロールハウジング10の舌部10Tと重なる。舌部10Tは、螺旋形状をなすスクロールハウジング10の巻き始めの部分である。
図3に示すように、第2領域52は、第2空間20A2に対面している。また、
図7に示すように、第2領域52は、軸方向に見て回転軸線Axを含む。
図3に示すように、第3領域53は、第3空間20A3に対面している。また、第3領域53は、第2領域52に対して第1領域51とは反対側に位置している。
【0041】
端板48,49は、第1方向D1における濾材41の両端部に固定されて、濾材41をプリーツ形状に維持する。端板48,49は、それぞれ、第2方向D2に接合部の無い単一のエレメントからなる。これにより、各端板48,49が第2方向D2に接合部を有する複数のエレメントからなる場合と比較して、フィルタ40の生産性を向上させることができるとともに、フィルタ40の強度を向上させることができる。
【0042】
次に、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1の動作について説明する。
【0043】
遠心送風機1の第1の動作モードでは、第1~第3内気導入口部分22a,22b,22cがロータリドア28a,28b,28cによって閉じられ、第1~第3外気導入口部分21a,21b,21cが開かれる。この状態は図示されていない。この場合、第1外気導入口部分21a及び第3外気導入口部分21cから第1空間20A1及び第3空間20A3に導入された外気は、それぞれフィルタ40の第1領域51及び第3領域53を通過して、分離筒30の外側の第1通路30Aを通り、羽根車3の翼列の上半部に流入する第1空気流を形成する。また、第2外気導入口部分21bから第2空間20A2に導入された外気は、フィルタ40の第2領域52を通過して、分離筒30の内側の第2通路30Bを通り、羽根車3の翼列の下半部に流入する第2空気流を形成する。第1の動作モードは、外気モードと呼ばれることもある。
【0044】
第2の動作モードでは、第1内気導入口部分22a、第2外気導入口部分21b及び第3内気導入口部分22cがロータリドア28a,28b,28cによって閉じられ、第1外気導入口部分21a、第2内気導入口部分22b及び第3外気導入口部分21cが開かれる。この状態は
図1乃至
図3に示されている。この場合、第1外気導入口部分21a及び第3外気導入口部分21cから第1空間20A1及び第3空間20A3に導入された外気は、それぞれフィルタ40の第1領域51及び第3領域53を通過して、分離筒30の外側の第1通路30Aを通り、羽根車3の翼列の上半部に流入する第1空気流を形成する。また、第2内気導入口部分22bから第2空間20A2に導入された内気は、フィルタ40の第2領域52を通過して、分離筒30の内側の第2通路30Bを通り、羽根車3の翼列の下半部に流入する第2空気流を形成する。第2の動作モードは、内外気二層流モードと呼ばれることもある。
【0045】
第2の動作モード(内外気二層流モード)は、例えば、デフフットモードでの運転を行うときに用いられる。このときには、相対的に水分量の少ない外気が車室のデフロスト吹出口から車両のフロントウインドウ(図示せず)に向けて吹き出され、相対的に水分量の多い内気が車室のフット吹出口(図示せず)から乗員の足元に向けて吹き出される。
【0046】
第3の動作モードでは、第1~第3外気導入口部分21a,21b,21cがロータリドア28a,28b,28cによって閉じられ、第1~第3内気導入口部分22a,22b,22cが開かれる。この状態は図示されていない。この場合、第1内気導入口部分22a及び第3内気導入口部分22cから第1空間20A1及び第3空間20A3に導入された内気は、それぞれフィルタ40の第1領域51及び第3領域53を通過して、分離筒30の外側の第1通路30Aを通り、羽根車3の翼列の上半部に流入する第1空気流を形成する。また、第2内気導入口部分22bから第2空間20A2に導入された内気は、フィルタ40の第2領域52を通過して、分離筒30の内側の第2通路30Bを通り、羽根車3の翼列の下半部に流入する第2空気流を形成する。第3の動作モードは、内気モードと呼ばれることもある。
【0047】
ところで、このような構成を有する遠心送風機の送風効率を向上させることが望まれている。このようなニーズを考慮して、本実施の形態の遠心送風機1は、送風効率を向上させるための工夫がなされている。
【0048】
まず、一般に、螺旋形状をなすスクロールハウジングにおいて、吸入口から吸い込み得る空気の流量は、スクロールハウジングの舌部の近傍において最も少なく、舌部を基準としたスクロールハウジングの巻き角が大きくなるにつれて多くなる。この結果、吸入口に対面してフィルタを配置した場合、当該フィルタの第1領域に吸い寄せられる空気の量よりも、当該フィルタの第3領域に吸い寄せられる空気の量の方が多くなる。このような遠心送風機において、第1領域の濾過面の面積と第3領域の濾過面の面積とが等しい場合、第3領域を通過する空気の通気抵抗が第1領域を通過する空気の通気抵抗よりも高くなる。このことは、遠心送風機の送風効率を損なわせる。
【0049】
このような点を考慮して、本実施形態の遠心送風機1は、第1領域51の濾過面の面積よりも第3領域53の濾過面の面積の方が大きくなるように、構成されている。第1領域51の濾過面の面積よりも第3領域53の濾過面の面積を大きくすることで、第1領域51の濾過面の面積と第3領域53の濾過面の面積とが等しい場合と比較して、第3領域53を通過する空気の通気抵抗の上昇を抑制することができる。この結果、遠心送風機1の送風効率を向上させることができる。
【0050】
図3及び
図7に示す例では、フィルタ40を軸方向に垂直な投影面に垂直投影した場合に、投影面において、第1領域51によって覆われる領域の面積よりも、第3領域53によって覆われる領域の面積の方が大きい。具体的には、
図7に示すように、旋回軸線Bxの延びる方向に沿った第1ロータリドア28aの幅W1よりも、旋回軸線Bxの延びる方向に沿った第3ロータリドア28cの幅W3の方が大きい。したがって、旋回軸線Bxの延びる方向に沿った第1空間20A1の幅W1よりも、旋回軸線Bxの延びる方向に沿った第3空間20A3の幅W3の方が大きい。また、上述したように、
図3に示す例では、隣り合う折り目42同士の間隔G(プリーツ形状のピッチ)は、濾材41内において均一である。このため、第1領域51における区画43の数よりも、第3領域53における区画43の数の方が多い。
図3に示す例では、第1領域51は6つの区画43を含むのに対し、第3領域53は8つの区画43を含んでいる。この結果、第1領域51の濾過面の面積よりも第3領域53の濾過面の面積の方が大きい。
【0051】
以上に説明してきた第1の実施形態において、車両用の遠心送風機1は、モータ2と、羽根車3と、スクロールハウジング10と、仕切壁15と、分離筒30と、空気取入ハウジング20と、フィルタ40と、第1ロータリドア28aと、第2ロータリドア28bと、第3ロータリドア28cと、を備えている。
羽根車3は、周方向翼列を形成する複数の翼3aを有し、モータ2により軸方向に延びる回転軸線Ax周りに回転駆動されて、上記翼列の半径方向内側の空間の空気を遠心方向に向けて吹き出す。
スクロールハウジング10は、羽根車3を収容するスクロ-ルハウジング10であって、上記軸方向に開口する吸込口10aと周方向に開口する吐出口10bとを有し、羽根車3の回転により、吸込口10aから吸い込んだ空気を吐出口10bから送り出す。
仕切壁15は、スクロールハウジング10の内部空間を上記軸方向に分割する。
分離筒30は、スクロールハウジング10に挿入され、吸込口10aからスクロールハウジング10内に吸入される空気の流れを、分離筒30の外側を通る第1空気流と、分離筒30の内側を通る第2空気流と、に分割する。
空気取入ハウジング20は、スクロールハウジング10に接続され、車両の外気を取り込むための外気導入口21と、車両の内気を取り込むための内気導入口22と、外気導入口21及び内気導入口22とスクロールハウジング10との間の空気通路となる内部空間と、を有する。
フィルタ40は、空気取入ハウジング20の内部空間に、濾過面が当該内部空間を流れる空気を横切るように配置されている。
第1ロータリドア28aは、外気導入口21及び内気導入口22とフィルタ40との間で動作して、外気導入口21の一部である第1外気導入口部分21aから上記内部空間に導入される外気と内気導入口22の一部である第1内気導入口部分22aから上記内部空間に導入される内気との割合を調節する。
第2ロータリドア28bは、外気導入口21及び内気導入口22とフィルタ40との間で動作して、外気導入口21の他の一部である第2外気導入口部分21bから上記内部空間に導入される外気と内気導入口22の他の一部である第2内気導入口部分22bから上記内部空間に導入される内気との割合を調節する。
第3ロータリドア28cは、外気導入口21及び内気導入口22とフィルタ40との間で動作して、外気導入口21のさらに他の一部である第3外気導入口部分21cから上記内部空間に導入される外気と内気導入口22のさらに他の一部である第3内気導入口部分22cから上記内部空間に導入される内気との割合を調節する。
第1ロータリドア28aと第2ロータリドア28bと第3ロータリドア28cとは、この順で並んでいる。
空気取入ハウジング20の内部空間は、第1ロータリドア28aの動作範囲である第1空間20A1と、第1空間20A1に隣接する空間で第2ロータリドア28bの動作範囲である第2空間20A2と、第2空間20A2に隣接する空間で第3ロータリドア28cの動作範囲である第3空間20A3とを含んでいる。
フィルタ40は、第1空間20A1に対面する第1領域51と、第2空間20A2に対面する第2領域52と、第3空間20A3に対面する第3領域53とを有している。
第1領域51は、上記軸方向に見て、スクロールハウジング10の舌部10Tと重なっている。
第2領域52は、上記軸方向に見て、回転軸線Axを含んでいる。
第3領域53は、第2領域52に対して第1領域51とは反対側に位置している。
第1領域51の濾過面の面積よりも、第3領域53の濾過面の面積の方が大きい。
【0052】
このような遠心送風機1によれば、フィルタ40の第1領域51と比較してフィルタ40の第3領域53により多くの空気が吸い寄せられるが、第3領域53の濾過面の面積が第1領域51の濾過面の面積よりも大きいことにより、第3領域53を通過する空気の通気抵抗の上昇を抑制することができる。この結果、遠心送風機1の送風効率を向上させることができる。
【0053】
第1の実施形態では、フィルタ40を軸方向に垂直な投影面に垂直投影した場合に、上記投影面において、第1領域51によって覆われる領域の面積よりも、第3領域53によって覆われる領域の面積の方が大きい。これにより、第1領域51の濾過面の面積よりも、第3領域53の濾過面の面積の方が大きい。
【0054】
より具体的には、第1の実施形態では、フィルタ40は、プリーツ形状となるように複数の折り目42が形成され、複数の折り目42によって複数の区画43に分割された濾材41を含んでいる。第1領域51における隣り合う折り目42,42同士の間隔G(プリーツ形状のピッチ)と、第3領域53における隣り合う折り目42,42同士の間隔Gとは、等しい。この結果、第1領域51における区画43の数よりも、第3領域53における区画43の数の方が多い。これにより、第1領域51の濾過面の面積よりも、第3領域53の濾過面の面積の方が大きい。
【0055】
<第2の実施形態>
次に、
図8及び
図9を参照して、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態による遠心送風機101の子午断面を示す図である。
図9は、
図8のII-II線に沿った遠心送風機101の断面図である。
図8に示す遠心送風機101は、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1と比較して、上記投影面において、第1領域51によって覆われる領域の面積と第3領域53によって覆われる領域の面積とが等しい点で、異なっている。また、フィルタ140の隣り合う折り目42,42同士の間隔Gが第1領域51と第3領域53とで異なる点で、異なっている。その他の点は、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1と略同一である。
図8及び
図9に示す第2の実施形態において、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
上述したように、
図8及び
図9に示す遠心送風機101では、フィルタ140を上記軸方向に垂直な投影面に垂直投影した場合に、上記投影面において、第1領域51によって覆われる領域の面積と第3領域53によって覆われる領域の面積とが等しい。具体的には、第1ロータリドア28aの幅W1と第3ロータリドア28cの幅W3とが等しい。したがって、第1空間20A1の幅W1と第3空間20A3の幅W3とが等しい。その一方で、プリーツ形状に折られた濾材41において、第1領域51における隣り合う折り目42,42同士の間隔(第2方向D2に沿った間隔)G1よりも、第3領域53における隣り合う折り目42,42同士の間隔(第2方向D2に沿った間隔)G3の方が狭い。このため、第1領域51における区画43の数よりも、第3領域53における区画43の数の方が多い。
図8に示す例では、第1領域51は6つの区画43を含むのに対し、第3領域53は10の区画43を含んでいる。この結果、第1領域51の濾過面の面積よりも、第3領域53の濾過面の面積の方が大きい。
【0057】
このような遠心送風機101によっても、第3領域53における通気抵抗の上昇を抑制することができ、第3領域53を通過する空気の流量を増大させることができる。そして、遠心送風機101の送風効率を向上させることができる。さらに、第3空間20A3の幅W3を第1空間20A1の幅W1よりも大きくする必要が無いため、第2方向D2に沿った空気取入ハウジング20の寸法の増大を抑制することができる。
【0058】
以上に説明してきた第2の実施形態において、フィルタ140は、プリーツ形状となるように複数の折り目42が形成され、複数の折り目42によって複数の区画43に分割された濾材41を含んでいる。第1領域51における隣り合う折り目42,42同士の間隔G1よりも、第3領域53における隣り合う折り目42,42同士の間隔G3の方が狭い。このため、第1領域51における区画43の数よりも、第3領域53における区画43の数の方が多い。これにより、第1領域51の濾過面の面積よりも第3領域53の濾過面の面積の方が大きくすることができ、第3領域53を通過する空気の通気抵抗の上昇を抑制することができる。この結果、遠心送風機101の送風効率を向上させることができる。さらに、第1領域51における隣り合う折り目42,42同士の間隔G1よりも、第3領域53における隣り合う折り目42,42同士の間隔G3の方が狭いため、第1領域51の濾過面の面積よりも第3領域53の濾過面の面積の方が大きくすることによる空気取入ハウジング20の寸法の増大を、抑制することができる。
【0059】
<第3の実施形態>
次に、
図10を参照して、第3の実施形態について説明する。
図10は、第3の実施形態による遠心送風機201の子午断面を示す図である。
図10に示す遠心送風機201は、
図8及び
図9に示す遠心送風機101と比較して、上記投影面において、第1領域51によって覆われる領域の面積よりも、第3領域53によって覆われる領域の面積の方が大きい点で、異なっている。その他の点は、
図8及び
図9に示す遠心送風機101と略同一である。
図10に示す第3の実施形態において、
図8及び
図9に示す遠心送風機101と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
上述したように、
図10に示す遠心送風機201では、フィルタ140を上記軸方向に垂直な投影面に垂直投影した場合に、上記投影面において、第1領域51によって覆われる領域の面積よりも、第3領域53によって覆われる領域の面積の方が大きい。具体的には、第1ロータリドア28aの幅W1よりも、第3ロータリドア28cの幅W3の方が大きい。したがって、第1空間20A1の幅W1よりも、第3空間20A3の幅W3の方が大きい。さらに、プリーツ形状に折られた濾材41において、第1領域51における隣り合う折り目42,42同士の間隔G1よりも、第3領域53における隣り合う折り目42,42同士の間隔G3の方が狭い。このため、第1領域51における区画43の数よりも、第3領域53における区画43の数の方が多い。
図10に示す例では、第1領域51は5つの区画43を含むのに対し、第3領域53は10の区画43を含んでいる。この結果、第1領域51の濾過面の面積よりも第3領域53の濾過面の面積の方が大きい。
【0061】
このような遠心送風機201によっても、第3領域53における通気抵抗の上昇を抑制することができる。この結果、遠心送風機201の送風効率を向上させることができる。さらに、第1領域51における隣り合う折り目42,42同士の間隔G1よりも、第3領域53における隣り合う折り目42,42同士の間隔G3の方が狭いため、第2方向D2に沿った空気取入ハウジング20の寸法の増大を抑制することができる。
【0062】
なお、
図10に示す例では、第2空間20A2の第2方向D2における中央位置が、空気取入ハウジング220の第2方向D2における中央位置からずれている。この場合、
図10に示すように、分離筒230を、その入口側端部31が第2空間20A2と対面するように形成すればよい。これにより、第2方向D2に沿った空気取入ハウジング220の寸法の増大を抑制しつつ、第2空間20A2に取り込まれた空気と第1空間20A1及び第3空間20A3に取り込まれた空気とを、分離筒230で分離することができる。
【0063】
<第4の実施形態>
次に、
図11を参照して、第4の実施形態について説明する。
図11は、第4の実施形態による遠心送風機301の子午断面を示す図である。
図11に示す遠心送風機301は、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1と比較して、フィルタ40がスクロールハウジング10に対して傾いている点で、異なっている。その他の点は、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1と略同一である。
図11に示す第4の実施形態において、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
上述したように、
図11に示す遠心送風機301では、フィルタ40は、スクロールハウジング10に対して傾いている。言い換えると、フィルタ40の仮想面Pは、回転軸線Axに対して垂直な平面に対して傾いている。そして、スクロールハウジング10の吸込口10aと第1領域51との距離よりも、吸込口10aと第3領域53との距離の方が短い。
【0065】
ここで、一般に、遠心送風機の吹出口には空調装置の空気調和部が接続される。したがって、フィルタを空気取入ハウジングの内部空間に挿入するための挿入口を遠心送風機の吹出口の側に設けると、遠心送風機が空調装置に組み込まれた状態ではフィルタを空気取入ハウジングから出し入れすることが困難になる。具体的には、空気取入ハウジングのうち、フィルタの第1領域と第2方向D2に隣接する壁部に上記挿入口を設けると、フィルタを空気取入ハウジングから出し入れすることが困難になる。このため、上記挿入口は、空気取入ハウジングのうち、フィルタの第3領域と第2方向D2に隣接する壁部、又は、フィルタと第1方向D1に隣接する壁部に設けられる。また、一般に、空調装置が車両に組み込まれた状態において、遠心送風機の上方(軸方向の一側)には様々な装置が存在する。したがって、上記挿入口をフィルタの第3領域と第2方向D2に隣接する上記壁部に設ける場合、空気取入ハウジングからフィルタを斜め下方に引き抜く、或いは、空気取入ハウジングにフィルタを斜め下方から挿入することができれば、空調装置が車両に組み込まれた状態であっても、フィルタを空気取入ハウジングから出し入れすることが容易である。
【0066】
したがって、
図11に示すように、スクロールハウジング10の吸込口10aと第1領域51との距離よりも吸込口10aと第3領域53との距離の方が短くなるようにフィルタ40を空気取入ハウジング320内に設置すれば、フィルタ40を空気取入ハウジング320から出し入れすることが容易である。
【0067】
なお、
図11に示す例において、空気取入ハウジング320の上流側空間20Aには、隔壁構造体60が配置されている。
図11及び
図12に示すように、隔壁構造体60は、旋回軸線Bxに垂直な面に沿って広がる壁部61,62,63,64を含む。壁部61,62,63,64は、旋回軸線Bxが延びる方向に沿って、この順で互いから離間して配置されている。壁部61,62,63,64は、旋回軸線Bx及び回転軸線Axに平行な面に沿って広がる一対の壁部65,66の間に配置され、壁部65,66に接続されている。
図11から理解されるように、壁部62,63は、その下端が分離筒30の入口側端部31の第1縁部31a及び第2縁部31bに対面するように配置されている。壁部61は、フィルタ40の第2方向D2における一端に対面するように配置されている。壁部64は、フィルタ40の第2方向D2における他端に対面するように配置されている。壁部65は、フィルタ40の第1方向D1における一端に対面するように配置されている。壁部66は、フィルタ40の第1方向D1における他端に対面するように配置されている。
【0068】
このような隔壁構造体60によって、第2空間20A2に取り込まれた空気が、第2空間20A2とフィルタ40との間からフィルタ40の第1領域51又は第3領域53へ流れ込む虞が抑制される。あるいは、第1空間20A1又は第3空間20A3に取り込まれた空気が、第2空間20A2とフィルタ40との間からフィルタ40の第2領域52へ流れ込む虞が抑制される。したがって、遠心送風機301が内外気二層流モードで運転される場合に、フィルタ40に流れ込む内気と外気とが互いに混ざり合う虞が抑制される。
【0069】
なお、
図11に示す例において、分離筒330の入口側端部31の開口面は、フィルタ40の仮想面Pに沿って傾斜している。これにより、フィルタ40の第2領域52を通過した空気が、フィルタ40と分離筒330の入口側端部31との間から分離筒330の外側へ流れ出す虞が抑制される。また、フィルタ40の第1領域51及び第3領域53を通過した空気が、フィルタ40と分離筒330の入口側端部31との間から分離筒330の内側へ流れ込む虞が抑制される。したがって、遠心送風機301が内外気二層流モードで運転される場合に、フィルタ40を通過した内気と外気とが互いに混ざり合う虞が抑制される。
【0070】
以上に説明してきた第4の実施形態において、スクロールハウジング10の吸込口10aと第1領域51との距離よりも、吸込口10aと第3領域53との距離の方が短い。これにより、フィルタ40を空気取入ハウジング320から出し入れすることが容易である。
【0071】
<変形例>
以上、具体例を参照しながら第1~第4の実施形態を説明してきたが、以上の具体例が第1~第4の実施形態を限定することを意図していない。上述した第1~第4の実施形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0072】
例えば、上述した全ての遠心送風機1,101,201,301において、第1空間20A1、第2空間20A2及び第3空間20A3は、空気取入ハウジング20,120,220,320の上流側空間20Aを旋回軸線Bxに垂直な面に沿って広がる2つの隔壁によって隔てられていてもよい。この場合、各ロータリドア28a,28b,28cは、側壁29b,29cを有していなくてもよい。また、この場合、空間20A1,20A2,20A3を隔てる2つの隔壁は、それぞれ、分離筒30,230,330の入口側端部31の第1縁部31a及び第2縁部31bと、空気取入ハウジング20の上流側空間20Aを通過する空気の流れ方向に沿って整列するように配置される。これにより、第2空間20A2に導入された空気を分離筒30,230,330の内側へ案内することができ、また、第1空間20A1及び第3空間20A3に導入された空気を分離筒30,230,330の外側へ案内することができる。
【0073】
また、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1及び
図11に示す遠心送風機301において、濾材41はプリーツ形状をなしていなくてもよい。より具体的には、特許文献(実公平2-048110号公報)の
図1に開示されるような、断面山形の折曲部が平面波形に連続して並設されるような折り方であってもよい。
【0074】
また、
図1乃至
図3に示す遠心送風機1及び
図11に示す遠心送風機301において、第2空間20A2の第2方向D2における中央位置は、空気取入ハウジング20,320の第2方向D2における中央位置からずれていてもよい。この場合、
図10に示す遠心送風機220と同様に、分離筒30,330は、その入口側端部31が第2空間20A2と対面するように形成される。これにより、第2方向D2に沿った空気取入ハウジング20,320の寸法の増大を抑制しつつ、第2空間20A2に取り込まれた空気と第1空間20A1及び第3空間20A3に取り込まれた空気とを、分離筒30,330で分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る車両用の遠心送風機は、工業的に製造することができ、また商取引の対象とすることができるから、経済的価値を有して産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、101、201、301 遠心送風機
2 モータ
3 羽根車
10 スクロールハウジング
10a 吸込口
10b 吐出口
10T 舌部
20、120、220、320 空気取入ハウジング
20A1 第1空間
20A2 第2空間
20A3 第3空間
21 外気導入口
21a 第1外気導入口部分
21b 第2外気導入口部分
21c 第3外気導入口部分
22 内気導入口
22a 第1内気導入口部分
22b 第2内気導入口部分
22c 第3内気導入口部分
28a 第1ロータリドア
28b 第2ロータリドア
28c 第3ロータリドア
30、230、330 分離筒
31 入口側端部
40、140 フィルタ
41 濾材
42 折り目
43 区画
51 第1領域
52 第2領域
53 第3領域
Ax 回転軸線
P 仮想面