(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞の細胞培養法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20231227BHJP
【FI】
C12N5/0775
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021042409
(22)【出願日】2021-03-16
(62)【分割の表示】P 2017546094の分割
【原出願日】2016-03-04
【審査請求日】2021-04-14
(32)【優先日】2015-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2015-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・シモンズ
(72)【発明者】
【氏名】コルビー・サイア
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0329087(US,A1)
【文献】国際公開第2007/080919(WO,A1)
【文献】特開2008-148643(JP,A)
【文献】特表2013-529917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0232777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0055078(US,A1)
【文献】Int. J. Dev. Biol.,2011年,vol.55,p.181-187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清、血小板由来成長因子(PDGF)及び線維芽細胞増殖因子2(FGF2)を含まない対照培地に対して、第0日と第7日の間で幹細胞増殖をインビトロで促進する方法であって:
血小板由来成長因子(PDGF
-BB)、上皮成長因子(EGF)及び線維芽細胞増殖因子2(FGF2)を含むウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地中において、間葉系統前駆細胞または間葉系幹細胞の集団を培養することを含み、ここでのPDGF
-BBのレベルが3.0ng/mL~120ng/mLであり、EGFのレベルが0.08ng/mL~7ng/mLであり、FGF2のレベルが2pg/mL~
1ng/mLであり、前記細胞培養培地が、前記間葉系統前駆細胞または間葉系幹細胞を未分化状態に維持
する前記方法。
【請求項2】
前記PDGF-BBのレベルが、9.0ng/mL~60ng/mLである、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記PDGF-BBのレベルが、10ng/mLである、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記EGFのレベルが、5ng/mLである、請求項1~
3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記EGFのレベルが、0.4ng/mL~1.6ng/mLである、請求項1~
3の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞培養培地が、アルファ最小必須培地またはウシ胎仔血清フリーの増殖培地を含有する、請求項1~
5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項1~
6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養培地が、少なくとも3%のヒト血清を含む、請求項1~
7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
血清、血小板由来成長因子(PDGF)及び線維芽細胞増殖因子2(FGF2)を含まない対照培地に対して、第0日と第7日の間で、間葉系統前駆細胞または間葉系幹細胞増殖をインビトロで促進するためのウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地であって:
基礎培地と;
血小板由来成長因子(PDGF
-BB)と;
上皮成長因子(EGF)と;
線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と;
を含有し、
前記PDGF
-BBのレベルが3ng/mL~120ng/mLであり、EGFのレベルが0.08ng/mL~7ng/mLであり、FGF2のレベルが2pg/mL~
1ng/mLで
ある前記細胞培養培地。
【請求項10】
前記PDGF-BBのレベルが10ng/mLである、請求項
9に記載の培養培地。
【請求項11】
前記EGFのレベルが5ng/mLである、請求項
9または10に記載の培養培地。
【請求項12】
少なくとも3%のヒト血清を含む、請求項
9~
11の何れか1項に記載の培養培地。
【請求項13】
前記細胞培養培地が前記間葉系統前駆細胞または間葉系幹細胞を未分化状態に維持する、請求項
9~
12の何れか1項に記載の培養培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウシ胎仔血清(FBS)フリーの細胞培養の際に、幹細胞の増殖を促進する方法、細胞培養培地及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多能性間葉系幹細胞(MSC)は、その高い増殖能及び分化能、並びに免疫調節及び他の有益な特性のために、治療応用のための魅力的な候補として提案されている(Caplan AI (2007) J. Cell Physiol., 213, 341-347; Prockop DJ (2007) Clin Pharmacol Ther., 82, 241-243)。間葉系幹細胞(MSC)の疎集団は、治療適用に適した細胞数を生成させるために、エクスビボでの増殖が必要とされることが多い。
【0003】
MSCを単離及び増殖させるために使用される従来の培地は、その刺激性成長因子の高い含量の故に、ウシ胎仔血清を補充した定義された基礎培地(例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)またはα-改変最小必須培地(α-MEM))からなっている。これらの培地は、一般に、複数の継代についてMSCの増殖を支持すると報告されているが、ウシ胎仔血清に関連した潜在的リスクの故に懸念が生じてきている(Dimarakis & Levicar (2006) Stem Cells., 24, 1407-1408; Mannello & Tonti (2007) Stem Cells., 25, 1603-1609)。特に、ウシ胎仔血清は、プリオン、ウイルス及び人畜共通感染因子等の有害な汚染物質を含み、免疫反応を誘発し得る。更に、ウシ胎仔血清の不十分に定義された性質、及びバッチ間での高いバラツキは培地の一貫性のない増殖サポート特性を生じ、細胞産生プロセスの標準化を困難にする。
【0004】
ヒト血清及び血小板溶解物のようなヒト由来のサプリメントが、ウシ胎仔血清の代わりに研究されてきた。ヒト血清は、一般的に、その入手可能性が不十分で、且つ成長促進能力が一貫していないため、適切な代替品とは考えられていない。最近では、血小板溶解物(hPL)及び血小板リッチな血漿のような、ヒト血小板由来のサプリメントが優れた選択肢として提案されている(Doucet et al. (2005) J Cell Physiol., 205, 228-236; Muller et al. (2006), Cytotherapy., 8, 437-444; Capelli et al. (2007) Bone Marrow Transplant., 40, 785-91; Lange et al. (2007) J Cell Physiol., 213, 18-26; Reinisch et al. (2007) Regen Med., 2, 371-82)。これらの研究は、プールされたヒト血小板誘導体がかなりの増殖促進特性を有することを示したが、それらのMSC増殖に対する影響は一貫していない(Bieback et al. (2008) Transfus Med Hemother., 35, 286-294)。更に、これらhPL製剤の高いコストは、商業的細胞培養にとっては法外に高価であり得る。
【0005】
従って、ウシ胎仔血清を含まない細胞培養におけるMSCの単離及び迅速な増殖の両方をサポートする、費用効果の高い方法の必要性は依然として満たされないまま残されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明者等は、ウシ胎仔血清を含まない培養条件下でのMSCの増殖のためには、血小板由来成長因子(PDGF)が必要であることを見出した。本発明者等はまた、線維芽細胞成長因子2(FGF2)及びPDGFが、ウシ胎仔血清を含まない培養条件下でのMSC増殖を相乗的に促進することを見出した。驚くべきことに、この相乗効果は、FGF2が非常に低いレベルで存在するときに維持される。従って、本発明者等は、成長因子の特定の組み合わせを用いたウシ胎仔血清を含まない培養条件下において、インビトロでの幹細胞増殖を増大させ得ることを見出した。これらの知見は、本開示の方法、培地及び組成物が適切で且つコスト効果の高い血清代替物を提供するものであり、該代替物は幹細胞培養の効率を増大させるためにも適切であり得ることを示唆している。
【0007】
従って、一例において、本開示は幹細胞増殖をインビトロで促進する方法に関し、該方法はPDGF及びFGF2を含有するウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地中において、間葉系統幹細胞の集団を培養することを含み、ここでのFGF2のレベルは約6ng/mL未満である。別の例において、本開示は、間葉系統前駆細胞増殖をインビトロで促進する方法に関する。別の例において、本開示は、間葉系統幹細胞増殖をインビトロで促進する方法に関する。
【0008】
PDGF、FGF2及び任意の他の培地成分は、本開示の方法で使用するための幹細胞培養培地中に、または幹細胞培養培地に添加するための組成物中に提供され得る。従って、別の例において、本開示は、ウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地を提供するものであり、該細胞培養培地は、
基礎培地と;
血小板由来成長因子(PDGF)と;
線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と;
を含有し、ここでの前記培地中のFGF2のレベルは、約6ng/mL未満である。
【0009】
別の例において、前記培地中のFGF2のレベルは、約2pg/mL~40pg/mLである。別の例において、前記培地中のFGF2のレベルは約20pg/mLである。
【0010】
別の例において、前記PDGFは、PDGF-BBまたはPDGF-ABである。一例において、前記PDGFはPDGF-BBである。別の例において、前記培地中のPDGF-BBのレベルは、約3.0ng/mL~約120ng/mLである。別の例において、前記培地中のPDGF-BBのレベルは、約9ng/mL~約60ng/mLである。別の例において、培地中のPDGF-BBのレベルは、少なくとも約30ng/mLである。
【0011】
本発明者等はまた、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)が、他の増殖因子と相乗的に作用してMSC増殖を促進することも見出した。従って、これらの成長因子もまた、本開示の方法、細胞培養培地及び組成物において使用することができる。一例において、前記細胞培養培地は、上皮成長因子(EGF)を更に含む。一例において、前記細胞培養培地中のEGFのレベルは、約0.08ng/mL~約7ng/mLである。例えば、前記細胞培養培地中のEGFのレベルは、少なくとも約5ng/mLである。別の例において、前記細胞培養培地中のEGFのレベルは、約0.2ng/mL~約3.2ng/mLである。別の例において、前記細胞培養培地中のEGFのレベルは、約0.4ng/mL~約1.6ng/mLである。別の例において、EGFのレベルは、少なくとも約0.8ng/mLである。
【0012】
別の例において、前記培地は間葉系幹細胞を培養するためのものである。別の例において、前記培地は、間葉系統前駆細胞を培養するためのものである。
【0013】
一例において、前記基礎培地は、アルファ最小必須培地、またはStemSpan(商標)のようなウシ胎仔血清フリーの増殖培地である。
【0014】
別の例において、前記細胞培養培地は、幹細胞を未分化状態に維持する。
【0015】
別の例において、本開示は、ウシ胎仔血清フリーの幹細胞培養培地に添加するための組成物であって、該組成物は
血小板由来成長因子(PDGF)と;
線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と;
を含有し、
ここでの前記FGF2は、約6ng/mL未満のレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で組成物中に存在する。別の例において、FGF2は、約5pg/mL~40pg/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で、前記組成物中に存在する。別の例において、FGF2は、約20pg/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で、前記組成物中に存在する。
【0016】
別の例において、前記組成物中のPDGFは、PDGF-BBまたはPDGF-ABである。一例において、前記組成物中のPDGFはPDGF-BBである。別の例において、該PDGF-BBは、約7.5ng/mL~約120ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在する。別の例において、該PDGF-BBは、約15ng/mL~約60ng/mLでのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在する。別の例において、該PDGF-BBは、少なくとも約30ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在する。
【0017】
別の例において、前記細胞組成物は更に、上皮成長因子(EGF)を含んでいる。一例において、EGFは、約0.1ng/mL~約7ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で、前記組成物中に存在する。例えば、EGFは、約5ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在し得る。一例において、EGFは、約0.2ng/mL~約3.2ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在する。別の例において、EGFは、約0.4ng/mL~約1.6ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在する。別の例において、EGFは、約0.8ng/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるために十分な量で、前記組成物中に存在する。
【0018】
別の例において、前記組成物は、間葉系統前駆細胞の培養に適した培地に添加される。別の例において、前記組成物は、間葉系幹細胞の培養に適した培地に添加される。別の例において、前記組成物は、間葉系統前駆細胞の培養に適した培地に添加される。
【0019】
別の例において、前記組成物は、アルファ最小必須培地、またはStemSpan(商標)のようなウシ胎仔血清フリー増殖培地に添加される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】MPC増殖に対する、成長因子の抗体中和の影響。
【
図3】MPC増殖に対する、成長因子の組み合わされた抗体中和の影響。
【
図4】可変濃度のPDGF-BB、EGF及びFGF2を補充したイーグルアルファMEMを用いた、組織培養プラスチック上での細胞培養後のMPC増殖。
【
図5】可変濃度のPDGF-BB、EGF及びFGF2を補充したイーグルアルファMEMを用いた、フィブロネクチン上での細胞培養後のMPC増殖。
【
図6】可変濃度のPDGF-BB、EGF及びFGF2を補充したイーグルアルファMEMを用いた、3%hPL上での細胞培養後のMPC増殖。
【
図7】可変濃度のPDGF-BB、EGF及びFGF2を補充したStemSpan(商標)を用いた、組織培養プラスチック上での細胞培養後のMPC増殖。
【
図8】可変濃度のPDGF-BB、EGF及びFGF2を補充したStemSpan(商標)を用いた、フィブロネクチン上での細胞培養後のMPC増殖。
【
図9】可変濃度のPDGF-BB、EGF及びFGF2を補充したStemSpan(商標)を用いた、3%hPL上での細胞培養後のMPC増殖。
【
図10】PDGF(P)、FGF(F)、EGF(E)またはそれらの組み合わせ(PEF)を含有する培地中での細胞増殖。
【
図11】細胞増殖後の、細胞培養培地中におけるサイトカインレベル。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的技術及び定義
特に別途定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は、当該技術(例えば、細胞培養、分子生物学、幹細胞培養、タンパク質化学、及び生化学)における通常の専門家が一般的に理解するのと同じ意味を有するものと解される。
【0022】
別途指示されない限り、本開示において利用される細胞培養技術及びアッセイは、当業者に周知の標準的な手順である。このような技術は、下記出典の文献を通して記載され且つ説明されている:例えば、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (editors), and F.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, including all updates until present), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988),及びJ.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現時点までの全ての更新を含む)である。
【0023】
「及び/または」の用語、例えば「X及び/またはY」などの用語は、「X及びY」または「XまたはY」の何れかを意味すると理解され、両方の意味または何れかの意味についての明確な裏付けを提供するように解釈されるべきである。
【0024】
本明細書で使用する「約」の用語は、反対の記載がない限り、指定値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を意味する。
【0025】
「レベル」の用語は、本開示の細胞培養培地及び組成物中に存在する特定の物質の量を定義するために使用される。例えば、特定の濃度、重量、パーセンテージ(例えばv/v%)または比を用いて、特定の物質のレベルを定義することができる。
【0026】
本開示の文脈において、「十分な」の用語は、幹細胞培養培地に溶解されたときに特定の濃度を与える量を定義するために使用される。「十分な量」は、必要とされる培養培地の容量によって決定される。例えば、幹細胞培養培地中のFGF2の必要濃度が約10pg/mLであり、且つ500mLの細胞培地が必要とされるならば、十分な量は約5ngであろう。
【0027】
本明細書の全体を通して、「含む(comprise)」の用語またはその変形、例えば「主語が三人称単数のとき変形(comprises)」もしくは「現在進行形(comprising)」は、記載された要素、整数もしくは工程、または一群の要素、整数もしくは工程を含むことを意味すると理解されるが、他の要素、整数もしくは工程、または他の一群の要素、整数、もしくは工程を排除するものではない。
【0028】
本明細書の全体を通して、別段の記載がない限り、または文脈上他の意味を必要としない限り、単一の工程もしくは物質の組成物、一群の工程もしくは一群の物質の組成物は、1及び複数(即ち、1以上)のこれら工程、物質の組成物、複数群の工程もしくは複数群の物質の組成物を包含するものと解釈されるべきである。
【0029】
当業者であれば、本明細書に記載された開示は、具体的に記載されたもの以外の変形及び改変を受け易いことを理解するであろう。本開示は、そのような全ての変形及び改変を含むことが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に言及もしくは指定される全ての工程、特徴、組成物及び化合物、並びに前記工程または特徴の任意の2以上の組み合わせを含むものである。
【0030】
本開示は、ここに記載した例示のみの目的を意図した特定の実施形態によって、その範囲を制限されるものではない。本発明の範囲内において、機能的に均等な生成物、組成物及び方法は、本明細書に記載した開示の範囲内にあることは明らかである。
【0031】
本明細書に開示された如何なる例も、別途特に明記しない限り他の例にも適用され、逆も同様と解釈されるべきである。
【0032】
間葉系統前駆細胞
本明細書中で使用するとき、「間葉系統前駆細胞または幹細胞」の用語は、未分化の多能性細胞を意味し、これは多分化能を維持しながら自己再生する能力を有し、且つ間葉起源の多くの細胞型、例えば骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、または非中胚葉起源、例えば肝細胞、神経細胞及び上皮細胞の何れかのへと分化する能力を有する。疑義を回避するために、「間葉系統前駆細胞」は、骨、軟骨、筋肉及び脂肪細胞のような間葉細胞、及び繊維性結合組織に分化できる細胞を言う。
【0033】
「間葉系統前駆細胞または幹細胞」の用語は、親細胞及びその未分化子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉系前駆細胞、多能性間質細胞、間葉系幹細胞(MSC)、血管周囲間葉系前駆細胞、及びそれらの未分化子孫をも含む。
【0034】
間葉系前駆細胞または幹細胞は、自己、異種、同系または同種であり得る。自己由来細胞は、それらが再移植される同じ個体から単離される。同種異系細胞は、同じ種のドナーから単離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系または同起源の細胞は、双子、クローンまたは高度に近交系の研究動物モデルのような、遺伝的に同一の生物から単離される。
【0035】
間葉系統前駆細胞または幹細胞は、主に骨髄に存在するが、例えば臍帯血及び臍帯、成人末梢血、脂肪組織、海綿骨及び歯髄を含む多様な宿主組織にも存在することが示されている。
【0036】
一例において、間葉系統前駆体または幹細胞は、STRO-1+間葉系前駆細胞である。本明細書中で使用される場合、「STRO-1+多能性細胞」の語句は、多能性細胞コロニーを形成できるSTRO-1+及び/またはTNAP+前駆細胞を意味すると解釈される。
【0037】
STRO-1+多能性細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靱帯、腱、骨格筋、真皮及び骨膜中に見られ;また中胚葉及び/または内胚葉及び/または外胚葉のような生殖系列に分化することができる。従って、STRO-1+多能性細胞は多数の細胞型に分化でき、該細胞が体には脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織及び線維性結合組織が含まれるが、それらに限定されない。これら細胞が導入される特定の分化系統コミットメント及び分化経路は、機械的影響及び/または内因性生物活性因子(例えば、成長因子、サイトカイン)、及び/または宿主組織により樹立された局部的微小環境条件に由来する種々の影響に依存する。
【0038】
間葉系統前駆体または幹細胞は、宿主組織から単離し、STRO-1+細胞の選択によって富化することができる。例えば、被験体からの骨髄吸引物を、STRO-1またはTNAPに対する抗体で更に処理して、間葉系統統前駆細胞または幹細胞の選択を可能にすることができる。一例において、間葉系統前駆体または幹細胞は、(Simmons&Torok-Storb、1991)に記載されたSTRO-1抗体を用いて富化することができる。
【0039】
「富化された」、「富化」またはそれらの変形である用語は、ここでは、1つの特定の細胞型の割合または幾つかの特定の細胞型の割合が、未処理の細胞の集団(例えば、それらの本来の環境における細胞)と比較して増大された細胞集団を記述するために用いられる。一例において、STRO-1+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%または0.5%または1%または2%または5%または10%または15%または20%または25%または30%または50%または75%のSTRO-1+細胞を含んでいる。これに関して、「STRO-1+細胞について富化された細胞の集団」の用語は、「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞集団」の用語を明示的に裏付けるように解され、ここでのX%は本明細書に記載されたパーセンテージである。STRO-1+細胞は、幾つかの例において、クローン原性コロニーを形成することができ、例えば、CFU-F(線維芽細胞)またはそのサブセット(例えば、50%または60%または70%または80%または90%または95%)は、この活性を有することができる。
【0040】
一例において、前記細胞の集団は、選択可能な形態のSTRO-1+細胞を含んだ細胞調製物から富化される。これに関して、「選択可能な形態」の用語は、前記細胞が、STRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解される。該マーカーはSTRO-1であることができるが、そうである必要はない。例えば、STRO-2及び/またはSTRO-3(TNAP)及び/またはSTRO-4及び/またはVCAM-1及び/またはCD146及び/または3G5を発現する細胞(例えば、間葉前駆細胞)は、STRO-1(またSTRO-1brightであることができる)をも発現する。従って、細胞がSTRO-1+であるという指定は、細胞がSTRO-1発現によって選択されることを意味しない。一例において、該細胞は少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらはSTRO-3+(TNAP+)である。
【0041】
細胞またはその集団の選択についての言及は、必ずしも特定の組織源からの選択を必要としない。本明細書中に記載されるように、STRO-1+細胞は、多種多様な供給源から選択され得るか、単離され得るか、または富化され得る。即ち、幾つかの例において、これらの用語は、STRO-1+細胞(例えば、間葉系前駆細胞)を含む何れかの組織、または血管新生組織または周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)を含む組織、またはここに列記された何れか1以上の組織からの選択のための裏付けを提供する。
【0042】
一例において、本開示で使用される間葉系統前駆体または幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+及びこれらの組み合わせからなる群から個別にまたは集合的に選択される1以上のマーカーを発現する。
【0043】
「個別に」の用語の使用は、本開示が、列挙されたマーカーまたはマーカー群を別々に包含すること、また個々のマーカーまたはマーカー群が本明細書に別々に列挙されなくても、添付の特許請求の範囲がかかるマーカーまたはマーカー群を別々に且つ相互に可分的に定義し得ることを意味する。
【0044】
「集合的に」の用語の使用は、本開示が、記載されたマーカーまたはマーカー群の任意の数または組合せを包含すること、またマーカーまたはマーカー群のそのような数または組み合わせが本明細書に具体的に列記されていなくても、添付の特許請求の範囲は、そのような組み合わせまたはサブコンビネーションを他のマーカー及びマーカー群の任意の他の組み合わせから別々に、且つ可分的に定義できることを意味する。
【0045】
一例において、STRO-1+細胞は、STRO-1bright(syn.STRO-1bri)である。別の例において、STRO-1bri細胞は、STRO-1dimまたはSTRO-1intermediate細胞に対して優先的に富化される。別の例において、STRO-1bri細胞は更に、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/またはCD146+の1以上である。例えば、前記細胞は上記マーカーの1以上について選択され、及び/または上記マーカーの1以上を発現することが示される。これに関して、マーカーを発現することが示された細胞は特別に試験される必要はなく、むしろ以前に富化または単離された細胞は試験された後に使用することができ、単離または富化された細胞もまた同じマーカーを発現すると合理的に仮定することができる。
【0046】
一例において、間葉前駆細胞は、WO2004/85630において定義された血管周囲間葉前駆細胞であり、血管周囲マーカー3G5の存在を特徴とする。
【0047】
所与のマーカーについて「陽性」と称される細胞は、該細胞表面に前記マーカーが存在する程度に応じて、そのマーカーの低レベル(loもしくはdim)または高レベル(bright、bri)の何れかで前記マーカーを発現することができ、ここでこの用語は、細胞選別プロセスで使用される蛍光または他のマーカーの強度に関連する。lo(またはdimもしくはdull)及びbriの区別は、選別される特定の細胞集団に対して使用されるマーカーの関連において理解されるであろう。所与のマーカーについて「陰性」と称される細胞は、必ずしもその細胞に該マーカーが完全に存在しないわけではない。この用語は、マーカーが該細胞によって相対的に非常に低いレベルで発現されること、また検出可能に標識されたときに非常に低いシグナルを発生すること、或いはバックグラウンドレベルを超えるレベル、例えばアイソタイプ対照抗体を用いて検出されるレベルを超えるレベルで検出可能でないことを意味する。
【0048】
本明細書で使用される「bright(明るい)」または「bri」の用語は、検出可能に標識された場合に比較的高いシグナルを生成する細胞表面上のマーカーを指称する。理論に拘束されることを望むものではないが、「明るい」細胞は、サンプル中の他の細胞よりも多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1により認識される抗原)を発現することが提唱される。例えば、STRO-1bri細胞は、蛍光標識細胞分取(FACS)分析により決定されるFITC接合STRO-1抗体で標識された場合に、明るくない細胞(STRO-1dull/dim)よりも大きな蛍光シグナルを生成する。一例において、「明るい」細胞は、出発サンプル中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の例において、「明るい」細胞は、出発サンプルに含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%を構成する。一つの例において、STRO-1bright細胞は、「バックグラウンド」、即ちSTRO-1-である細胞に対して、2対数分(2 log magnitude)だけ高いSTRO-1の表面発現を有する。比較のために、STRO-1dim及び/またはSTRO-1intermediate細胞は、「バックグラウンド」よりも2対数分未満、典型的には約1対数分未満だけ高い、STRO-1の表面発現を有する。
【0049】
本明細書で使用する「TNAP」の用語は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することを意図する。例えば、この用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。一例において、TNAPはBAPである。一例において、本明細書で使用するTNAPは、2005年12月19日に受託番号PTA-7282としてブダペスト条約の規定の下にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されるSTRO-3抗体に結合できる分子を言う。
【0050】
更に、一例において、前記STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを生じさせることができる。
【0051】
一例において、有意な比率のSTRO-1+多能性細胞は、少なくとも2つの異なる生殖系列への分化が可能である。多能性細胞が分化決定され得る系統の非限定的な例には、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び肝細胞について多分化能である肝細胞前駆体;希突起膠細胞及び星状細胞へと進行するグリア細胞前駆体を生成し得る神経拘束細胞;ニューロンへと進行するニューロン前駆体;心筋及び心筋細胞の前駆体、グルコース応答性インスリン分泌膵臓β細胞株が含まれる。他の系列には、限定されるものではないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、並びに以下の細胞の前駆体が含まれる:即ち、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトのような皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、尿細管(renal duct)上皮細胞、平滑筋細胞及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靱帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質、心筋、平滑筋、骨格筋、血管周囲細胞、上皮細胞、神経膠細胞、神経細胞、星状細胞及び希突起膠細胞である。
【0052】
本開示の一態様において、現在記載されている間葉系統前駆体または幹細胞はMSCである。MSCは、均質な組成物であってもよく、またはMSCが富化された混合細胞集団であってもよい。均一なMSC細胞組成物は、接着性の骨髄または骨膜細胞を培養することにより得ることができ、該MSCは、独特なモノクローナル抗体で同定される特異的な細胞表面マーカーにより同定することができる。MSCが富化された細胞集団を得る方法は、例えば、米国特許第5,486,359号に記載されている。MSCの代替供給源には、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨膜が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
別の例において、前記間葉系統前駆細胞または幹細胞は、CD29+、CD54+、CD73+、CD90+、CD102+、CD105+、CD106+、CD166+、MHC1+のMSC(例えば、remestemcel-L)である。
【0054】
単離または富化された間葉系統前駆細胞または幹細胞は、培養によってインビトロで増殖させることができる。単離または富化された間葉系統前駆細胞または幹細胞は、凍結保存し、解凍し、続いて培養によりインビトロで増殖させることができる。
【0055】
一例において、単離または富化された間葉系統前駆細胞または幹細胞を、培養培地(無血清または血清補充済み)、例えば本開示による細胞培養培地に50,000生存細胞/cm2で播種し、37℃、20%O2において一晩、培養容器に付着させる。その後、必要に応じて前記培養培地を交換及び/または変更し、37℃、5%O2で更に68~72時間培養する。
【0056】
当業者が理解するように、培養された間葉系統前駆細胞または幹細胞は、インビボの細胞とは表現型が異なる。例えば、一実施形態において、それらは次のマーカー、即ち、CD44、NG2、DC146及びCD140bの1以上を発現する。培養された間葉系統前駆細胞または幹細胞もまた、インビボの細胞とは生物学的に異なり、インビボの殆ど非サイクリング(休止)状態の細胞と比較して、より高い増殖速度を有する。
【0057】
本開示の方法を使用して培養された間葉系統前駆細胞または幹細胞もまた、冷凍保存することができる。
【0058】
細胞増殖の促進
本開示の一態様は、インビトロ細胞培養において、幹細胞増殖を促進する方法に関する。本開示の関連において、「促進する」または「促進すること」の用語は、細胞増殖における増大または加速を規定するために使用される。
【0059】
増大及び/または加速された細胞増殖を同定する様々な方法が、当業者に利用可能である。例えば、細胞増殖の増大または加速は、例えば、MTTアッセイ、ブロモデオキシウリジン(BrdU)取り込みアッセイ、またはロッシュ社(Roche)から入手可能なxCELLigence(商標)システムのようなリアルタイム増殖アッセイ等の日常的に利用可能な細胞増殖アッセイを用いることにより、経時的に産生される細胞数に基づいて測定することができる。
【0060】
従って、当業者は、当技術分野で知られた慣用の増殖アッセイを実施することにより、本開示の方法を用いて細胞増殖が促進されるかどうかを容易に決定することができる。
【0061】
細胞増殖が促進されるかどうかを同定する一例において、細胞集団は、本開示による細胞培養培地またはPDGF及びFGF2を含まない同等の対照培地(即ち、本開示の培地は0pg/mLのPDGF及びFGF2を含む)の何れかにおいて培養され得る。培養培地の各々における細胞増殖は、培養中の期間(例えば、7日間)にわたって毎日、またはリアルタイムで追跡することができる。第0日と第7日の間で増加した細胞数または細胞増殖の加速は、細胞増殖が促進されたことを示している。
【0062】
細胞誘導の促進
幹細胞は非対称に分裂して2つの異なる娘細胞、すなわち、元の幹細胞のコピー1つと、最終的な非幹細胞へと分化するようにプログラムされた第2の娘細胞を生じる。例えば、多能性幹細胞は、1コピーの元の幹細胞、並びに間葉系細胞型へと分化するようにプログラムされた間葉系統前駆細胞へと分裂することができる。
【0063】
本開示はまた、インビトロ細胞培養において幹細胞誘導を促進する方法を包含する。例えば、本開示の方法は、多能性幹細胞からの間葉系統前駆細胞の誘導を促進するために使用され得る。細胞誘導を促進する文脈において、「促進する」または「促進すること」の用語は、幹細胞誘導における増大または加速を規定するために使用される。
【0064】
本開示の一態様は、インビトロで幹細胞誘導を促進する方法に関し、該方法は血小板由来成長因子(PDGF)及び線維芽細胞成長因子2(FGF2)を含有するウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地中において幹細胞集団を培養することを含み、ここでのFGF2のレベルは約6ng/mL未満である。
【0065】
例えば、本開示の方法は、インビトロで間葉系統幹細胞誘導を促進する方法に関し、この方法は、多能性幹細胞の集団を、血小板由来成長因子(PDGF)及び線維芽細胞成長因子2(FGF2)を含有するウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地中において培養することを含み、ここでのFGF2のレベルは約6ng/mL未満である。
【0066】
別の例において、本開示の方法は、多能性幹細胞からの間葉系統前駆細胞の誘導を促進し、続いて、該誘導された間葉系統前駆細胞集団の増殖を促進するために使用され得る。
【0067】
増大及び/または加速された幹細胞誘導を同定する様々な方法が、当業者に利用可能である。例えば、増大または加速された間葉系統前駆細胞の誘導は、多能性幹細胞から経時的に産生された間葉系統前駆細胞の数に基づいて測定することができる。間葉系統前駆細胞は、特異的な表面マーカーによって特徴付けられ、その発現は、それらの単離及び免疫選択による精製を容易にする。これらのマーカーの例には、STRO-1+、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD146+、3G5+、またはそれらの組み合わせが含まれる。従って、当業者は免疫選択を使用して、当該集団中の間葉系統前駆細胞を精製及び計数することができるであろう。細胞数は、経時的に産生された間葉系統前駆細胞の数を同定し、間葉系統前駆細胞誘導が増大または加速されるかどうかを決定するために使用できるであろう。
【0068】
細胞誘導が促進されるかどうかを同定する別の例において、多能性幹細胞の集団は、本開示による細胞培養培地またはPDGF及びFGF2を含まない同等の対照培地(即ち、0pg/mLのPDGF及びFGF2を含む本開示の培地)の何れかにおいて培養することができる。培養培地の各々における間葉系統前駆細胞の誘導は、毎日または培養中(例えば7日間)の期間に亘って、細胞培養から間葉系統前駆細胞を免疫選択し、産生された細胞の数を決定することによってアッセイすることができる。対照細胞数に対する、第0日と第7日の間の間葉系前駆細胞数の増加は、細胞誘導が促進されたことを示す。
【0069】
細胞培養培地
本開示は、MSC増殖を促進する成長因子を含んだ、ウシ胎仔血清フリーの幹細胞培地を提供する。一実施形態において、本開示は、ウシ胎仔血清フリーの幹細胞培養培地に関し、該細胞培養培地は、
基礎培地と;
血小板由来成長因子(PDGF)と;
線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と
を含有する。
【0070】
本開示の文脈で使用される「培地」または「培地(複数)」の用語は、細胞を取り囲む環境の成分を含むものである。該培地は、細胞の増殖を可能にするのに適した条件に寄与し、及び/または該条件を提供する。培地は、固体、液体、気体、または相及び物質の混合物であってよい。培地は、液体増殖培地及び細胞増殖を維持しない液体培地を含み得る。培地にはまた、寒天、アガロース、ゼラチン及びコラーゲンマトリックス等のようなゼラチン状培地も含まれる。典型的な気体培地には、ペトリ皿または他の固体もしくは半固体支持体上で増殖する細胞が暴露される気相が含まれる。「培地」の用語はまた、未だ細胞と接触していなくても、細胞培養における使用が意図される物質をも意味する。
【0071】
本開示の培地は、基礎培地を用いて調製することができる。本開示の文脈において、「基礎培地」とは、細胞、例えばMSCへの曝露に適した成分補足されていない培地を言う。基礎培地には、例えば、イーグル最小必須培地(MEM)、アルファ改変MEM培地、StemSpan(商標)及びそれらの混合培地が含まれ、また幹細胞の培養に使用できるものであれば特に限定されない。
【0072】
更に、本開示の細胞培養培地は、脂肪酸または脂質、ビタミン、サイトカイン、酸化防止剤、緩衝剤、無機塩等のような任意の成分を含むことができる。
【0073】
本開示において使用される細胞培養培地は、全ての必須アミノ酸を含み、非必須アミノ酸も含み得る。一般に、アミノ酸は必須アミノ酸(Thr、Met、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Lys、His)、及び非必須アミノ酸(Gly、Ala、Ser、Cys、Gln、Asn、Asp、Tyr、Arg、Pro)に分類される。
【0074】
当業者であれば、最適な結果のために、前記基礎培地は重要な栄養素について、目的の細胞株が細胞増殖を増強するのに十分なレベルで利用可能であるために適切でなければならないことを理解するであろう。例えば、基礎培地中のグルコース(または他のエネルギー源)のレベルを増加させること、または培養過程の間にグルコース(または他のエネルギー源)を添加することが必要とされる可能性があり、このエネルギー源が枯渇すれば細胞増殖が制限されることが分かる。
【0075】
一例において、本開示の細胞培養培地はヒト由来の添加物を含有する。例えば、ヒト血清及びヒト血小板細胞溶解物を、本開示の方法において使用される細胞培養培地に添加することができる。
【0076】
一例において、本開示の細胞培養培地はヒト由来の添加物のみを含有する。従って、一例において、当該細胞培養培地はゼノフリーである。
【0077】
アスコルビン酸
アスコルビン酸は、培養中の様々な種類の細胞の増殖及び分化のために必須のサプリメントである。特定のアスコルビン酸誘導体は、溶液中、特に中性のpH及び37℃の通常の細胞培養条件下の溶液中において安定ではないので、今は「短時間作用性」であると理解されている。これらの短時間作用性誘導体は、急速にシュウ酸またはトレオニン酸へと酸化される。37℃の培養培地(pH7)において、酸化は、これら短時間作用性アスコルビン酸誘導体のレベルを24時間で約80~90%低下させる。従って、短時間作用性アスコルビン酸誘導体は、様々な細胞型の従来の細胞培養において、より安定な「長時間作用性」アスコルビン酸誘導体に置き換えられている。
【0078】
本開示の文脈において、「短時間作用性」の用語は、中性pH及び37℃の培養条件下での24時間の細胞培養後に、その約80~90%が酸化されるアスコルビン酸誘導体を包含する。一例において、短時間作用性L-アスコルビン酸誘導体はL-アスコルビン酸塩である。例えば、本開示の文脈において、L-アスコルビン酸ナトリウム塩は「短時間作用性」アスコルビン酸誘導体である。
【0079】
対照的に、「長時間作用性」の用語は、中性pH及び37℃の培養条件下において、24時間の細胞培養後に約80~90%が酸化されないアスコルビン酸誘導体を包含する。一例において、本開示の文脈では、L-アスコルビン酸-2-ホスフェートは「長時間作用性」アスコルビン酸誘導体である。長時間作用性アスコルビン酸誘導体の他の例には、テトラヘキシルデシルアスコルビン酸マグネシウムアスコルビルリン酸及び2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸が含まれる。本開示の細胞培養培地は、短時間作用性アスコルビン酸誘導体、長期作用性アスコルビン酸誘導体またはそれらの混合物を含有することができる。
【0080】
血清
従来、幹細胞は、少なくとも約10~15%v/vの血清、一般的にはウシ胎仔血清(FBS)(子ウシ胎仔血清(FCS)としても知られている)を補充した培地を用いて、細胞培養物中に維持されている。本開示の細胞培養培地は、ウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地である。従って、一実施形態では、細胞培養培地に非胎仔血清を補充する。例えば、培地に新生仔または成体血清を補充してよい
【0081】
別の実施形態において、細胞培養培地にはヒト血清を補充する。一例において、該細胞培養培地にヒト非胎仔血清を補充することができる。例えば、該細胞培養培地には、少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約3%v/v、少なくとも約4%v/v、少なくとも約5%v/v、少なくとも約6%v/v、少なくとも約7%v/v、少なくとも約8%v/v、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%v/vのヒト非胎仔血清を補充することができる。
【0082】
別の例においては、当該細胞培養培地にヒト新生児血清を補充することができる。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約3%v/v、少なくとも約4%v/v、少なくとも約5%v/v、少なくとも約6%v/v、少なくとも約7%v/v、少なくとも約8%v/v、少なくとも約9%v/vのヒト新生血清を補充することができる。一例において、ヒト新生児血清は、臍帯血「コードブラッド」から得られる。
【0083】
別の例において、当該細胞培養培地にヒト成人血清を補充することができる。例えば、該培養培地には、少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約3%v/v、少なくとも約4%v/v、少なくとも約5%v/v、少なくとも約6%v/v、少なくとも約7%v/v、少なくとも約8%v/v、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%v/vの成人血清を補充することができる。
【0084】
一例において、前記ヒト成人血清はヒトAB血清である。例えば、当該細胞培養培地には、少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約3%v/v、少なくとも約4%v/v、少なくとも約5%v/v、少なくとも約6%v/v、少なくとも約7%v/v、少なくとも約8%v/v、少なくとも約9%v/vのヒトAB血清を補充することができる。一例において、該細胞培養培地には少なくとも約3%のヒトAB血清が補充される。
【0085】
本開示の細胞培養培地はまた、既知の血清代替物を含み得る。血清代替物としては、例えば、アルブミン(例えば、脂質富化アルブミン)、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノールもしくは3´-チオールグリセロール、血小板溶解物、血小板富化血漿、または血清等価物を適切に含有するものが挙げられる。このような血清代替物は、例えば国際公開WO93/30679に記載された方法により調製でき、また市販品を用いることもできる。
【0086】
マイトジェン因子
本発明者等は、PDGF及びFGF2が、インビトロでのウシ胎仔血清フリーの細胞培養において幹細胞増殖を相乗的に促進することを見出した。
【0087】
PDGFは、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)に結合する細胞増殖及び分裂の調節因子である。化学的には、PDGFは、2つのA鎖(-AA)もしくは2つのB鎖(-BB)、またはこれら2つの組み合わせ(-AB)からなる二量体糖タンパク質である。PDGF-ABは、PDGFアルファ及びベータ受容体サブユニットに結合してPDGFアルファ・ベータ及びアルファ・アルファ受容体二量体を形成することが示されている。本開示の文脈において、PDGFは、PDGF-BB及びPDGF-ABを包含する。
【0088】
BFGF、FGFB、HBGF-2としても知られている塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)は、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバーである。FGF2は、細胞増殖及び分裂の調節因子でもある。PDGF及びFGF2は両者とも、細胞分裂を開始するように細胞を促す点において、マイトジェンとして分類することができる。
【0089】
一例において、本開示の方法は、血小板由来成長因子(PDGF)及び線維芽細胞増殖因子2(FGF2)を含有するウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地中で幹細胞集団を培養する工程を含み、ここでのFGF2のレベルは約6ng/mL未満である。例えば、FGF2レベルは約5ng/mL未満、約4ng/mL未満、約3ng/mL未満、約2ng/mL未満、約1ng/mL未満であり得る。他の例において、FGF2レベルは、約0.9ng/mL未満、約0.8ng/mL未満、約0.7ng/mL未満、約0.6ng/mL未満、約0.5ng/mL未満、約0.4ng/mL未満、約0.3ng/mL未満、約0.2ng/mL未満である。
【0090】
別の例において、FGF2のレベルは、約1pg/mL~100pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは約5pg/mL~80pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、約10pg/mL~40pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約10pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約11pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約12pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約13pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約14pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは少なくとも約15pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約16pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは少なくとも約17pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約18pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約19pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約20pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約21pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約22pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約23pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは少なくとも約24pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約25pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約26pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約27pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約28pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約29pg/mLである。別の例において、FGF2のレベルは、少なくとも約30pg/mLである。
【0091】
一例において、PDGFはPDGF-BBである。一例において、PDGF-BBのレベルは、約1ng/mL~150ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、約7.5ng/mL~120ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、約15ng/mL~60ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約10ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約15ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約20ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約21ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約22ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約23ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約24ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約25ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約26ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約27ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約28ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約29ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約30ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約31ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約32ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約33ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約34ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約35ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約36ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約37ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約38ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約39ng/mLである。別の例において、PDGF-BBのレベルは、少なくとも約40ng/mLである。
【0092】
別の例において、PDGFはPDGF-ABである。一例において、PDGF-ABのレベルは、約1ng/mL~150ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、約7.5ng/mL~120ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、約15ng/mL~60ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約10ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約15ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約20ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約21ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約22ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約23ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約24ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約25ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約26ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約27ng/mLである。他の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約28ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約29ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約30ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約31ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約32ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約33ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約34ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約35ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約36ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約37ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約38ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約39ng/mLである。別の例において、PDGF-ABのレベルは、少なくとも約40ng/mLである。
【0093】
本発明者等はまた、本開示の細胞培養培地に他の因子を加えて、細胞増殖を増大させ得ることも見出した。一例において、本開示の方法は、EGFを更に含むウシ胎仔血清フリー細胞培養培地中において、幹細胞の集団を培養することを含む。EGFは、その受容体EGFRに結合することによって細胞増殖を刺激する増殖因子である。一例において、本開示の方法は、EGFを更に含むウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地中において、幹細胞の集団を培養することを含む。一例において、EGFのレベルは約0.1~7ng/mLである。例えば、EGFのレベルは、少なくとも約5ng/mLであり得る。
【0094】
別の例では、EGFのレベルは、約0.2ng/mL~3.2ng/mLである。別の例において、EGFのレベルは、約0.4ng/mL~1.6ng/mLである。別の例において、EGFのレベルは、約0.2ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.3ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.4ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.5ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.6ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.7ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.8ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約0.9ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約1.0ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約1.1ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約1.2ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約1.3ng/mLである。別の例では、EGFのレベルは、少なくとも約1.4ng/mLである。
【0095】
一例において、PDGF-BBのレベルは少なくとも約3.2ng/mLであり、EGFのレベルは少なくとも約0.8ng/mLであり、FGF2のレベルは少なくとも約0.002ng/mLである。別の例では、PDGF-BBのレベルは少なくとも約9.6ng/mLであり、EGFのレベルは少なくとも約0.24ng/mLであり、FGF2のレベルは少なくとも約0.006ng/mLである。別の例では、PDGF-BBのレベルは少なくとも約16ng/mLであり、EGFのレベルは少なくとも約0.40ng/mLであり、FGF2のレベルは少なくとも約0.01ng/mLである。別の例では、PDGF-BBのレベルは少なくとも約32ng/mLであり、EGFのレベルは少なくとも約0.80ng/mLであり、FGF2のレベルは少なくとも約0.01ng/mLである。
【0096】
本開示はまた、PDGF及びFGF2を含む細胞培養培地を包含するものであり、ここでのFGF2のレベルは約6ng/mL未満である。例えば、FGF2レベルは、約5ng/mL未満、約4ng/mL未満、約3ng/mL未満、約2ng/mL未満、約1ng/mL未満であり得る。他の例において、FGF2レベルは、約0.9ng/mL未満、約0.8ng/mL未満、約0.7ng/mL未満、約0.6ng/mL未満、約0.5ng/mL未満、約0.4ng/mL未満、約0.3ng/mL未満、約0.2ng/mL未満である。
【0097】
一例において、当該細胞培養培地は、約1pg/mL~100pg/mLのFGF2を含む。別の例において、該細胞培養培地は、約5pg/mL~80pg/mLのFGF2を含む。別の例において、該細胞培養培地は、約10pg/mL~40pg/mLのFGF2を含む。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約10pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約11pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約12pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約13pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約14pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約15pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約16pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約17pg/mLのFGF2を含むことができる。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約18pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約19pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約20pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約21pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約22pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約23pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約24pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約25pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約26pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約27pg/mLのFGF2を含むことができる。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約28pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約29pg/mLのFGF2を含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約30pg/mLのFGF2を含み得る。
【0098】
一実施形態において、本開示の細胞培養培地にはPDGF-BBが補充される。例えば、当該細胞培養培地は、約1ng/mL~150ng/mLの間のPDGF-BBを含み得る。別の例において、該細胞培養培地は、約7.5ng/mL~120ng/mLのPDGF-BBを含み得る。別の例において、該細胞培養培地は、約15ng/mL~60ng/mLのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約10ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約15ng/mLのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約20ng/mLのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約21ng/mLのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約22ng/mLのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約23ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約24ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約25ng/mLのPDGF-BBを含有することができる。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約26ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約27ngのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約28ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約29ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約30ng/mLのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約31ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約32ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約33ng/mLのPDGF-BBを含有することができる。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約34ng/mLのPDGF-BBを含むことができる。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約35ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約36ngのPDGF-BBを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約37ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約38ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約39ng/mLのPDGF-BBを含み得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約40ng/mLのPDGF-BBを含み得る。
【0099】
一実施形態では、本開示の細胞培養培地は、PDGF-ABを補充される。例えば、細胞培養培地は、約1ng/mL~150ng/mLの間のPDGF-ABを含み得る。別の例において、細胞培養培地は、約7.5ng/mL~120ng/mLのPDGF-ABを含み得る。別の例において、細胞培養培地は、約15ng/mL~60ng/mLのPDGF-ABを含有し得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約10ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約15ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約20ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約21ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約22ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約23ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約24ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約25ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約26ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約27ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約28ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約29ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約30ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約31ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約32ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約33ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約34ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約35ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約36ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約37ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約38ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約39ng/mLのPDGF-ABを含み得る。例えば、細胞培養培地は、少なくとも約40ng/mLのPDGF-ABを含み得る。
【0100】
一実施形態において、本開示の細胞培養培地は、EGFを補充することもできる。例えば、該細胞培養培地は、約0.1ng/mL~7ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、EGFのレベルは、少なくとも約5ng/mLであり得る。
【0101】
別の例において、当該細胞培養培地は、約0.2ng/mL~3.2ng/mLのEGFを含有し得る。別の例において、該細胞培養培地は、約0.4ng/mL~1.6ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.2ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.3ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.4ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.5ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.6ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.7ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約0.8ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、当該細胞培養培地は、少なくとも約0.9ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、当該細胞培養培地は、少なくとも約1.0ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約1.1ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約1.2ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約1.3ng/mLのEGFを含有し得る。例えば、該細胞培養培地は、少なくとも約1.4ng/mLのEGFを含有し得る。
【0102】
例えば、当該細胞培養培地は、少なくとも約3.2ng/mLのPDGF-BB、少なくとも約0.08ng/mLのEGF及び少なくとも約0.002ng/mLのFGF2を含み得る。別の例において、該細胞培養培地は、少なくとも約9.6ng/mLのPDGF-BB、少なくとも約0.24ng/mLのEGF及び少なくとも約0.006ng/mLのFGF2を含み得る。別の例において、該細胞培養培地は、少なくとも約16ng/mLのPDGF-BB、少なくとも約0.40ng/mLのEGF及び少なくとも約0.01ng/mLのFGF2を含み得る。別の例において、細胞培養培地は、少なくとも約32ng/mLのPDGF-BB、少なくとも約0.80ng/mLのEGF及び少なくとも約0.02ng/mLのFGF2を含み得る。
【0103】
細胞増殖を増加させるために、本開示の細胞培養培地には他の因子を加えることができる。例えば、当該細胞培養培地には、上皮成長因子(EGF)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-1β(IL-1β)及び間質由来因子1α(SDF-1α)からなる群から選択される1以上の刺激因子を補充することができる。別の実施形態において、前記細胞はまた、該細胞の増殖をサポートするのに十分な量の少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養され得る。別の実施形態において、前記細胞は、ヘパリンまたはその誘導体の存在下で培養することができる。例えば、前記細胞培養培地は、約50ng/mLのヘパリンを含むことができる。他の例において、前記細胞培養培地は、約60ng/mLのヘパリン、約70ng/mLのヘパリン、約80ng/mLのヘパリン、約90ng/mLのヘパリン、約100ng/mLのヘパリン、約110ng/mLのヘパリン、約110ng/mLのヘパリン、約120ng/mLのヘパリン、約130ng/mL/mLのヘパリン、約140ng/mLのヘパリン、約150ng/mLのヘパリンまたはその誘導体を含有する。一例において、前記ヘパリン誘導体はサルフェートである。様々な形態のヘパリン硫酸が当該技術において知られており、ヘパリン硫酸2(HS2)が含まれる。HS2は、例えば、雄及び/または雌の哺乳動物の肝臓を含む様々な供給源から得ることができる。従って、例示的なヘパリン硫酸には、雄の肝臓ヘパリン硫酸(MML・HS)及び雌の肝臓ヘパリン硫酸(FML・HS)が含まれる
【0104】
別の例において、本開示の方法及び細胞培養培地は、幹細胞の増殖を促進する一方で、幹細胞を未分化状態に維持する。幹細胞は、特定の分化系統に分化決定されていない場合、未分化であると考えられる。先に議論したように、幹細胞は分化した細胞とそれらを区別する形態学的特徴を示す。更に、未分化の幹細胞は、分化状態を検出するためのマーカーとして使用され得る遺伝子を発現する。該ポリペプチド産物はまた、分化状態を検出するためのマーカーとして使用され得る。従って、当業者は、慣用的な形態学的、遺伝的及び/またはプロテオーム的な解析を用いて、本開示の方法が幹細胞を未分化の状態に維持するか否かを容易に決定することができる。
【0105】
組成物/キット
本開示の細胞培養培地は、細胞培養の前に、基礎培地と成長因子が一緒に混合されている完全培地として提供することができる。或いは、細胞培養培地成分を別々に提供し、細胞培養の前または最中に適切な基礎培地と混合することができる。従って、一実施形態において、本開示は、幹細胞培養培地に添加するための血清代用組成物を提供し、該組成物は、
血小板由来成長因子(PDGF)と;
線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と;
を含有し、ここで前記組成物が幹細胞培養培地に添加され、且つ幹細胞集団が該細胞培養培地中で培養される場合、培養培地中のFGF2のレベルは約6ng/mL未満である。他の例において、前記組成物が幹細胞培養培地に添加され、幹細胞集団が該細胞培養培地中で培養される場合、FGF2レベルは約5ng/mL未満、約4ng/mL未満、約3ng/mL未満、約2ng/mL未満、約1ng/mL未満である。他の例において、FGF2レベルは、約0.9ng/mL未満、約0.8ng/mL未満、約0.7ng/mL未満、約0.6ng/mL未満、約0.5ng/mL未満、約0.4ng/mL未満、約0.3ng/mL未満、約0.2ng/mL未満である。
【0106】
一例において、FGF2は、約1pg/mL~100pg/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。別の例において、FGF2は、約5pg/mL~80pg/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。別の例において、FGF2は、約10pg/mL~40pg/mLのレベルで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。例えば、FGF2は、少なくとも約10pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約11pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約12pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約13pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約14pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約15pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約16pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約17pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約18pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、約19pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約20pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約21pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約22pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約23pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約24pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約25pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約26pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約27pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約28pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約29pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、FGF2は、少なくとも約30pg/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。
【0107】
一実施形態において、PDGF-BBが本開示の組成物中に存在する。例えば、PDGF-BBは、約1ng/mL及び150ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。別の例において、PDGF-BBは、約7.5ng/mL及び120ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。別の例において、PDGF-BBは、約15ng/mL及び60ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約10ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約15ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約20ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約21ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約22ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約23ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約24ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約25ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約26ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約27ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約28ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約29ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約30ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約31ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約32ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約33ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約34ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約35ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約36ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約37ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約38ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約39ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-BBは、少なくとも約40ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。
【0108】
一実施形態において、本開示の組成物はPDGF-ABを含有する。例えば、PDGF-ABは、約1ng/mL及び150ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。別の例において、PDGF-ABは、約7.5ng/mL及び120ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。別の例において、PDGF-ABは、約15ng/mL及び60ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約10ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約15ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約20ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約21ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約22ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約23ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約24ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約25ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約26ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約27ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約28ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約29ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約30ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約31ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約32ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約33ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約34ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約35ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約36ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約37ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約38ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約39ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、PDGF-ABは、少なくとも約40ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。
【0109】
一実施形態において、本開示の組成物はEGFを更に含有する。例えば、EGFは、約0.1ng/mL及び7ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約5ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。
【0110】
別の例において、EGFは、約0.2ng/mL及び3.2ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。別の例において、EGFは、約0.4ng/mL及び1.6ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.2ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.3ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.4ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.5ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.6ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.7ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.8ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約0.9ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約1.0ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約1.1ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約1.2ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約1.3ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。例えば、EGFは、少なくとも約1.4ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在し得る。
【0111】
一例において、PDGF-BB、EGF及びFGF2は、それぞれ、少なくとも約3.2ng/mL、0.08ng/mL及び0.002ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。一例において、PDGF-BB、EGF及びFGF2は、それぞれ、少なくとも約9.6ng/mL、0.24ng/mL及び0.006ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。一例において、PDGF-BB、EGF及びFGF2は、それぞれ少なくとも約16ng/mL、0.4ng/mL及び0.02ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。一例において、PDGF-BB、EGF及びFGF2は、それぞれ少なくとも約32ng/mL、0.8ng/mL及び0.01ng/mLで幹細胞培養培地に添加されるのに十分な量で存在する。
【0112】
一例において、本開示の組成物は、適切な溶媒中もしくは該溶媒と共に、または凍結乾燥形態で包装され得る。
【0113】
本明細書に開示される細胞培養培地及び/または組成物は、必要に応じて、特定の濃度を与えるために該組成物を細胞培養培地と混合する等、所望の目的についての書面による指示書と共に、適切な容器に包装することができる。
【0114】
当業者は、広く記載された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に対して多くの変形及び/または修正を行い得ることを理解するであろう。従って、本実施形態は全ての点で例示的であり、限定的ではないと看做されるべきである。
【0115】
本明細書において議論及び/または参照する全ての刊行物は、その全体を本明細書の一部として援用する。
【0116】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品等の議論は、単に本発明の文脈を提供することを目的とするものである。それは、これら事項の何れかまたは全てが、本願の各請求項の優先日前に存在していた本発明に関連する分野での先行技術的基礎の一部を形成し、または該分野において一般的な知識であったことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0117】
本出願は、2015年3月4日に出願されたAU2015900752、及び2015年3月5日に出願されたAU2015900777の優先権を主張し、その開示を本明細書の一部として援用する。
【実施例】
【0118】
実施例1:細胞培養培地における成長因子
ヒト血小板溶解物中における間葉系統前駆細胞(MPC)の連続的な増殖を評価するために、細胞増殖を測定する前に、ヒト血小板溶解物中で細胞を7日間培養した。血小板溶解物は、2つの別々のサプライヤ(サプライヤA及びサプライヤB)から得たものである。血小板溶解産物のパーセンテージは0~10%の範囲であった。7日目のMPC増殖を
図1に示す。細胞増殖は、サプライヤBから得た10%ヒト血小板溶解物中で細胞を増殖させた場合に最も高かいことが注目された。
【0119】
成長因子EGF、FGF2、VEGF、PDGF-AA及びPDGF-BBの濃度(pg/mL)は、サプライヤA及びBから得られたヒト血小板溶解物中において測定した。成長因子濃度(pg/mL)が表1に示されている。サプライヤBが最高濃度のEGF(8,036pg/mL)、最高濃度のPDGF-BB(46,432pg/mL)及び最低濃度のFGF2(199pg/mL)を有することが注目された。
【表1】
【0120】
実施例2:細胞増殖に対する成長因子の影響
細胞増殖に対するhPL中の成長因子の影響を評価するために、細胞集団を成長因子EGF、FGF2、VEGF、PDGF-AA及びPDGF-BBの抗体アンタゴニストに暴露させた。
【0121】
細胞集団を、単一の抗体アンタゴニスト、全ての抗体アンタゴニストの組み合わせ、またはIg抗体対照の何れかに曝露させた。抗体はR&Dシステムズから入手し、飽和濃度で添加した。抗体の添加後、細胞を3%hPL(PLTMax)中で5日間培養してから、細胞増殖を測定した。抗体アンタゴニストに暴露させた各細胞集団における細胞増殖レベルを、Ig対照抗体に曝露させた細胞集団における細胞増殖レベルと比較した。
【0122】
PDGF-BBの抗体中和は、試験した単一の抗マイトジェン抗体のうち、MPC増殖を有意に低下させる唯一の条件であった(
図2)。
【0123】
全ての抗体アンタゴニストの組み合わせは、細胞増殖のほぼ完全な抑制をもたらした(
図2)。従って、hPLによる細胞増殖の刺激は、この初期実験で調べた5つの増殖因子にほぼ完全に包含される。
【0124】
これらの結果はまた、他の成長因子の1つがPDGF-BB駆動のMPC増殖に寄与することを実証している。
【0125】
実施例3:細胞増殖に対する成長因子の影響
何れの他の成長因子がPDGF-BBによるMPC増殖に寄与しているかを評価するために、MPC細胞を、
図3に示す抗体の様々な組み合わせと共に培養した。
【0126】
抗体の添加後、細胞増殖を測定する前に、細胞を3%hPL(PLTMax)中で5日間培養した。抗体アンタゴニストに暴露された各細胞集団における細胞増殖のレベルを、Ig対照抗体に暴露された細胞集団及び抗体に曝露されない細胞集団における細胞増殖のレベルと比較した(
図3)。
【0127】
この研究は、PDGF-BB、EGF及びFGF2が、hPLによるMPC増殖を刺激することを実証する。更に、PDGF-BB及びEGFはそれぞれ、FGF2と相乗的に作用して細胞増殖を促進する。3%hPL中のFGF2の濃度は約6pg/mLであり、これは分裂促進用量未満であることが注目される。
【0128】
予想通り、Ig対照と共に培養された細胞集団と抗体に曝露されない細胞集団の間では、細胞増殖の差は観察されなかった。
【0129】
これらのデータは、化学的に定義され且つ完全にヒト化されたゼノフリーの細胞培養培地であって、その中では組換えマイトジェンによりMPC増殖が駆動される培地を開発するための基礎を提示する。
【0130】
実施例4:ウシ胎仔血清フリーの細胞培養培地の開発
出発基礎細胞培養培地は、アルファ改変イーグル最小必須培地(MEM)またはStemSpan(商標)を含んでいた。
【0131】
一般にイーグルのアルファMEMと称されるアールの平衡塩類(Earle’s balanced salts)を用いたイーグルMEMのアルファ改変は、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム及び追加のビタミン類を含んでいる。これらの改変は、ハイブリッドマウス及びハムスター細胞の増殖における使用について最初に記載された(Stanners et al. Nat New Biol., 230, 52 - 54, 1971)。
【0132】
StemSpan(商標)は、STEMCELLテクノロジーズ社から市販されているウシ胎仔血清フリーの造血細胞増殖培地である。StemSpan(商標)の組成は開示されていない。
【0133】
各培地に対して、PDGF-BB、EGF及びFGF2を含む組成物を以下の濃度まで添加した:
・PDGF-BB(3.2ng/mL)、EGF(0.08ng/mL)及びFGF2(0.002ng/mL)
・PDGF-BB(9.6ng/mL)、EGF(0.24ng/mL)及びFGF2(0.006ng/mL)
・PDGF-BB(16ng/mL)、EGF(0.4ng/mL)及びFGF2(0.01ng/mL)
・PDGF-BB(32ng/mL)、EGF(0.8ng/mL)及びFGF2(0.02ng/mL)
【0134】
組織培養プラスチック(
図4-アルファMEM;
図7-Stemspan(商標))、フィブロネクチン(
図5-アルファMEM;
図8-Stemspan(商標))、または3%hPL(
図6-アルファMEM;
図9-Stemspan(商標))上の上記培地(a~d)の各々において、MSC集団を培養した。
【0135】
成長因子を補充した培地中で培養した細胞集団における細胞増殖を、増殖因子を含まない基礎培地中で培養した細胞集団における細胞増殖と比較した。細胞増殖の最大増加は、PDGF-BB(32ng/mL)、EGF(0.8ng/mL)及びFGF2(0.02ng/mL)を添加したアルファMEMまたはStemSpan(商標)基礎培地中で培養した細胞で観察された。
【0136】
実施例5:ゼノフリーの細胞培養
凍結保存されたヒトMPCを解凍し、組換えヒト成長因子を補充したゼノフリー培地、または成長因子を含まないゼノフリー培地中において、96ウェルプレート上に1,000細胞/ウェルで播種した。
【0137】
増殖因子は、以下の濃度で提供された:
・PDGF-BB(P)-10ng/mL
・EGF(E)-5ng/mL
・FGF2(F)-1ng/mL
・PDGF、EGF、FGF2(PEF)
【0138】
培養物を、5%CO2、35~37℃において、IncuCyteズームライブイメージング顕微鏡(Essen Bioscience)を取り付けた加湿されたNuAireキュベーター内で、約120時間インキュベートした。培養期間中の集密のレベルを測定するために、細胞を6時間ごとに同時に撮像した。増殖速度は、経時的な集密のパーセンテージとして計算した(
図10)。
【0139】
実施例6:MPCからの細胞培養培地中におけるサイトカインレベルの比較
3つの異なるドナーからのMPCを、標準培地(アルファMEM+10%FBS)、またはアルファMEM+3%ヒトAB血清+PDGF-BB、EGF及びFGF2を含むウシ胎仔血清フリーの培地中において連続的に増殖させた。サイトカインレベルを、細胞増殖後の細胞培養培地中で測定した(
図11)。
【0140】
ウシ血清フリー培地で増殖させた3つのドナー細胞集団のうちの2つにおいて、Ang1レベルが上昇した。ウシ胎仔血清フリーの培地で増殖させた全てのドナー細胞集団において、Ang1:VEGF比が増加した。